説明

高温における貯蔵性能を改良するためのアノード及びそれを備えてなるリチウム二次バッテリー

バッテリー用の、(a)アノード活性材料、(b)TiO2、及び(c)スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を含んでなるアノード、及びそれを備えてなるリチウム二次バッテリーを提供する。酸化チタン及びSBRをアノード活性材料と共に、本発明のアノード成分の一部として使用することにより、高温貯蔵中のアノード抵抗の増加、及びその抵抗によるバッテリー容量の低下が抑制され、それによって、バッテリーの全体的な性能が改良される。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、スピネル型構造のカソード活性材料を使用するバッテリーのアノードであって、高温貯蔵で発生するアノード抵抗の増加及びアノード抵抗によるバッテリー容量の低下を防止することができるアノードに、及び高温における貯蔵性能を改良するために該アノードを備えてなるリチウム二次バッテリーに関する。
【発明の背景】
【0002】
近年、電子装置の小型化及び軽量化が実現し、携帯電子装置の使用が一般化するにつれて、高いエネルギー密度を有するリチウム二次バッテリーの研究が活発に行われている。リチウム二次バッテリーは、リチウムイオンを挿入/放出(intercalation/deintercalation)することができる材料を使用するカソード及びアノード、及びカソードとアノードの間に導入された有機電解質または高分子電解質(polymer electrolyte)を含んでなる。リチウム二次バッテリーは、リチウムイオンがカソード及びアノードに挿入される、及びそこから放出される時にエネルギーを発生する。
【0003】
現在、この分野で公知のリチウム二次バッテリーのカソード活性材料は、リチウム-マンガン複合材料酸化物を、リチウム-コバルト複合材料酸化物と共に包含する。特に、マンガン系活性材料、例えばLiMn及びLiMnO、は、比較的低い製造コスト及び僅かな環境汚染で簡単に合成できるので、有利である。しかし、リチウム二次バッテリー用のリチウム-マンガン複合材料酸化物を40〜60℃で繰り返し充電及び放電するか、または長期間貯蔵すると、バッテリー抵抗の増加(出力の低下)及び容量低下のために、バッテリーの寿命が短縮される。
【0004】
上記の問題を解決するために、日本国公開第Hei 7-153496号明細書は、BaO、MgO、及びCaOからなる群から選択された少なくとも一種の化合物をリチウム-マンガン複合材料酸化物に添加することにより、マンガンイオンがバッテリーの電解質中に溶解するのを防止することを開示している。しかし、上記の問題を十分に解決することは、恐らく困難である。また、副効果、例えば非導電性化合物を加えることによる初期容量低下、も、高容量バッテリーを構成する場合に問題になる。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明は、上記の問題および他の未解決の技術的問題を解決するためになされたものである。
【0006】
本発明者らは、バッテリー用のカソード活性材料としてリチウム-マンガン複合材料酸化物を使用するリチウム二次バッテリーの充電/放電寿命及び容量保存の低下は、リチウム-マンガン複合材料酸化物から溶解したマンガンイオン(Mn2+)が、アノード及びセパレータフィルムの表面にそれぞれ蓄積するために引き起こされると予想している。そこで、本発明者らは、アノード中にある、従来、溶解したマンガンイオン(Mn2+)が主として還元される充電/放電箇所を有するアノード活性材料(例えば炭素質材料)の表面と比較して、容易に還元され得る別のアノード成分を包含することにした。これによって、本発明が完成した。
【0007】
この知見に基づき、本発明の目的は、アノード構成成分を含んでなるアノード及び該アノードを備えてなるリチウム二次バッテリーを提供することである。
【0008】
本発明の一態様により、上記及び他の目的は、バッテリー用の、(a)アノード活性材料、(b)TiO、及び(c)スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を含んでなるアノードを提供することにより達成される。
【0009】
本発明の別の態様では、上記及び他の目的は、該アノードを備えてなるリチウム二次バッテリーを提供することにより達成される。
【発明の詳細な説明】
【0010】
好ましい実施態様の詳細な説明
ここで、本発明をより詳細に説明する。
【0011】
本発明におけるバッテリー用アノードは、アノード活性材料に加えて、酸化チタン(TiO)及びスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を含んでなる。アノード成分として酸化チタン及びスチレン-ブタジエンゴムを併用することにより、スピネル型構造のカソード活性材料を使用するバッテリーの高温における貯蔵性能及び寿命特性を劇的に改良することができる。そのような現象は、下記のように類推することができるが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0012】
現在のバッテリー装置における最大の問題は、カソードから溶出したマンガンイオン(Mn2+)がアノードで還元されるので、アノード活性材料の充電/放電箇所がマンガンイオン(Mn2+)により遮断されることである。従って、電極抵抗が増加する。アノード成分として使用する酸化チタン(TiO)は、マンガンイオンの還元箇所を、アノード活性材料、例えば炭素質材料、の表面の代わりに、TiO表面に導く。これによって、酸化チタン(TiO)が、充電/放電箇所である炭素表面における抵抗増加、及び抵抗増加によるバッテリー容量の低下を防止する。
【0013】
即ち、充電により電子がアノードに入ると、アノード成分の中で電位が比較的高い材料が、電荷プロファイルに基づいて電子を優先的に保存する。従って、電位が約3.0〜3.2 Vである酸化チタンは、電位が約0.3〜0.5 Vである炭素質材料と比較して、充電の際により優れた電子保存性能を有する。その結果、カソードから溶出したマンガンイオンは、静電気的引力により、炭素質材料の代わりに、酸化チタンの表面に向かって移動し、電子を還元する。参考のため、カソードから溶出したマンガンイオンは、例えば1.87 V以下の特定の電圧でマンガンに還元される。そのような還元程度は、電圧依存性を示す。従って、酸化チタンは、マンガンイオンを還元箇所に導き、それによって、アノード活性材料中の充電/放電箇所は、蓄積されたマンガンの妨害無しに、リチウムの挿入及び放出を行うことができる。その結果、頻繁な充電/放電を行うことができ、高温における長期間の寿命特性及び優れた貯蔵性能を達成することができる。
【0014】
高温貯蔵の際に結合剤が熱硬化することによる電極間の劣化は、活性材料と集電装置の間、または活性材料同士の間の抵抗増加につながり、それによって、高温における貯蔵性が低下する。従来の結合剤として使用されるPVdFは、直鎖状の重合体であり、その長い鎖が物理的強度だけで絡み合う。従って、高温貯蔵中の硬化程度は、ある程度大きいので、高温における貯蔵性能が低下する。その上、そのような熱的不安定性は、アノード成分として結合剤と共に使用される酸化チタンによる高温貯蔵効果を相殺する一つの理由になる。
【0015】
対照的に、本発明で酸化チタンと共に使用するSBRは、各鎖が化学的に結合して存在する。従って、高温貯蔵の際の熱硬化程度は、ある程度小さいので、優れた熱的安定性が得られる。従って、SBRの優れた熱的安定性及び密着性により、酸化チタンによる高温貯蔵効果が最大限になり、それらの相乗効果が連続的に発揮される。
【0016】
本発明により、アノード成分の一つは、この分野で一般的に知られている、制限無しに使用できる酸化チタン(TiO)粒子である。類似の酸化ポテンシャルを有する金属酸化物、例えばLiTi12、SiOまたはそれらの混合物を使用することができる。
【0017】
炭素質材料と比較して、より高い電位を有する酸化チタンは、電荷プロファイルに基づき、炭素質材料より優先的に電流を保存することができる。その結果、酸化チタンは、カソードから溶出するマンガンイオンの還元箇所としての役割を忠実に果たすことができる。
【0018】
酸化チタンの粒子径には特に制限は無いが、可能であれば、マンガンイオンの還元箇所としての機能及びSBRとの相乗効果を増大させるために、大きな表面積を有するのが好ましい。例えば、酸化チタンは粒子径が1〜500 nmでよい。
【0019】
酸化チタンの含有量は、バッテリーの高温貯蔵効果及び容量増大効果を達成する範囲内に適切に調整することができる。しかし、可能であれば、酸化チタンの含有量は、アノード活性材料、例えば炭素質材料、100重量部に対して1〜10重量部の範囲内が好ましい。酸化チタンの含有量が1重量部未満の場合、バッテリーの高温貯蔵に対する望ましい改良効果は小さくなる。この含有量が10重量部を超えると、アノード活性材料の使用量が相対的に少なくなり、バッテリーの全体的な性能が低下する。
【0020】
本発明では、もう一つのアノード成分は、この分野で公知の、制限無しに使用できるスチレン-ブタジエンゴム(以下、SRBと呼ぶ)である。スチレン-ブタジエンゴムは、上に記載したように、熱硬化程度が小さいので、優れた熱的安定性を示すことができる。その上、バッテリー内部で溶解または変形する可能性があるスチレン-ブタジエンゴムは、電解質に対する含浸率が低いので、低いのが有利である。特に、ガラス転移温度(Tg)は、常温(25℃)以下であるのが好ましい。
【0021】
SBRの物理的特性は、スチレン含有モノマーとブタジエン含有モノマーの組成比を変化させることにより、ガラス状態とゴム状態の間で容易に変えることができる。その上、親水性官能基含有モノマーを、モノマーの含有量及び種類に応じて、SRBに容易に、様々に使用できる。それによって、他のベース材料と水素結合を形成することにより、密着性効果を2倍にすることができる。従って、SBRと他のベース材料、例えば電極との間の密着性を大きく改良することができる。従って、本発明のSBRは、マレイン酸、アクリル酸、アクリレート、カルボン酸、ニトリル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、アミド基、アミン基、アセテート基、及びハロゲン原子からなる群から選択された少なくとも一種の親水性官能基を含むのがより好ましい。
【0022】
本発明により、(a)ブタジエン含有モノマー及びスチレン含有モノマー、または(b)ブタジエン含有モノマー、スチレン含有モノマー及びこの分野で公知の親水性官能基含有モノマーを含んでなり、この技術分野で公知の重合方法により重合させたSBRを使用することができる。しかし、本発明はそれに限定されるものではない。親水性官能基含有モノマーには特に制限は無く、その例には、マレイン酸、アクリル酸、アクリレート、カルボン酸、ニトリル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、アミド基、アミン基、アセテート基、または一種以上の親水性官能基含有モノマーが挙げられる。
【0023】
ここで、スチレン含有モノマーとブタジエン含有モノマーの重量%比は、1:99〜99:1で変えることができるが、これに限定しない。従来、スチレン基の含有量が50重量%を超えないSBRが好ましい。
【0024】
SBRの平均分子量(MW)に制限は無いが、10,000〜1,000,000の平均分子量が好ましい。ゴムの状態に特に制限は無いが、ゴムが溶液状態に共重合するエマルションの形態が好ましい。このSBRは、それ自体エマルションの形態で、または水に分散させることにより、使用することができる。従って、追加有機溶剤の使用または溶剤除去工程が必要ないのが有利である。
【0025】
上記の成分と共に構成するアノードは、この分野で公知の典型的な電極成分、例えばアノード活性材料、を含んでなる。
【0026】
アノード活性材料としては、従来の二次バッテリーのアノードに使用する典型的なアノード活性材料を使用することができる。その例には、リチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コルク、活性炭、グラファイト、無定形炭素、金属酸化物またはリチウム吸着性材料、例えば炭素質材料、等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0027】
一般的に、リチウム二次バッテリーに使用するアノード活性材料は、グラファイト構造(層状に配置されたハニカム形状の六角形平面を有する構造)を有する軟質炭素、無定形部分と混合されたグラフェン構造を有する硬質炭素、及び天然グラファイトのように結晶構造が完全に層状に形成されたグラファイト、等に区分される。従って、アノード活性材料は、結晶性炭素としてグラファイト及び軟質炭素、及び無定形炭素として硬質炭素に分類することができる。本発明では、無定形炭素、好ましくは硬質炭素、をアノード活性材料の主要成分として使用することができる。これに関して、速度特性(rate characteristics)が優れており、カーボネート電解質の分解反応を抑制できるという利点がある。
【0028】
本発明のアノードを製造する方法には、特に制限は無く、この分野で公知の従来方法を使用することができる。即ち、アノード活性材料、酸化チタン、及びSBRを含むアノードスラリーを調製し、該スラリーを集電装置上に塗布し、該集電装置を乾燥させることにより、アノードを製造することができる。さらに、酸化チタンを、SBRを包含して容易に調製される、アノード活性材料の表面上に塗布するか、またはアノード表面上に塗布し、使用することができる。
【0029】
本発明により、カソード、酸化チタン及びSBRを包含するアノード、電解質、及びセパレータフィルムを備えてなるリチウム二次バッテリーを提供する。リチウム二次バッテリーの例には、リチウム金属二次バッテリー、リチウムイオン二次バッテリー、リチウム重合体二次バッテリー、リチウムイオン重合体二次バッテリー、等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0030】
本発明のリチウム二次バッテリーは、この分野で公知の従来方法により、例えば多孔質セパレータフィルムをカソードとアノードとの間に配置し、続いて電解質を導入することにより、製造することができる。
【0031】
カソードは、この分野で公知の従来方法により、例えば、カソード活性材料を含むスラリーを調製し、該スラリーを集電装置に塗布し、該集電装置を乾燥させることにより、製造する。
【0032】
カソード活性材料としては、従来の二次バッテリー用カソードで使用できるカソード活性材料を使用することができる。その例には、リチウム遷移金属複合材料酸化物、例えばMがCo、Ni、MnであるLiM、またはCoNiMn(例えばリチウムマンガン複合材料酸化物、例えばLiMn、リチウムニッケル酸化物、例えばLiNiO、リチウムコバルト酸化物、例えばLiCoO、及びこれらの酸化物のマンガン、ニッケル、及びコバルトの部分が他の遷移金属で置換されている物質、またはリチウム含有バナジウム酸化物、等)、またはカルコゲニド化合物(例えば二酸化マンガン、二硫化チタン、二硫化モリブデン、等)、等が挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましい例には、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、Li(NiCoMn)O(式中、0<a<1、0<b<1、0<c<1、及びa+b+c=1)、LiNi1−YCo、LiCo1−YMn、LiNi1−YMn(式中、0≦Y≦1)、Li(NiCoMn)O(式中、0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−zNi、LiMn2−zCo(式中、0<Z<2)、LiCoPO及びLiFePOまたはそれらの混合物が挙げられる。特に、高温貯蔵によりマンガンイオンを溶出するスピネル型構造を有するリチウムマンガン系カソード活性材料を、制限無しに使用できるので有利である。その上、本発明のリチウム二次バッテリーは、自動車などに使用する動力源に必要とされる優れた速度特性を示す。従って、リチウム-マンガン酸化物は、低コストであるために活性材料として大量に使用できることに加えて、優れた高温安定性を有し、従って、カソード活性材料としてより好ましい。リチウム-マンガン酸化物の例には、式Li1+aMn2−a(式中、aは0〜0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnO、LiMn2−a(式中、MはCo、Ni、Fe、Cr、Zn、またはTaであり、aは0.01〜0.1である)、LiMnMO(式中、MはFe、Co、Ni、CuまたはZnである)、及びLi部分がアルカリ土類金属で置換されているLiMnが挙げられるが、これらに限定するものではない。しかし、本発明は、
これらの例に限定されるものではなく、これらの一種以上の混合物で使用できる。
【0033】
バッテリー用の電解質は、この分野で公知の従来の電解質成分、例えば電解質塩、及び有機溶剤を包含する。使用できる電解質塩は、Aで表され、ここでAには、アルカリ金属陽イオン、例えばLi、Na、及びK、またはそれらの組合せが挙げられ、Bには、PF、BF、Cl、Br、I、ClO、AsF、CHCO、CFSO、N(CFSO)、及びC(CFSO)、またはそれらの組合せが挙げられる。特に、リチウムイオンが好ましい。
【0034】
有機溶剤としては、従来の溶剤、例えば環状カーボネートおよび/または直鎖状カーボネートを使用することができる。例としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。さらに、有機溶剤のハロゲン誘導体も使用できる。
【0035】
さらに、充電/放電特性及び難燃性を改良するために、例えばピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサホスホリックトリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノン−イミン染料、N-置換されたオキサゾリジノン、N,N-置換されたイミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、ビニレンカーボネート、三塩化アルミニウム、等を電解質に加えることができる。必要であれば、不燃性を付与するために、電解質は、ハロゲン含有溶剤、例えば四塩化炭素及び三フッ化エチレン、をさらに包含することができる。さらに、高温貯蔵特性を改良するために、電解質は、二酸化炭素ガスをさらに包含することができる。
【0036】
さらに、本発明のバッテリーを製造する際、セパレータフィルムとして、好ましくは多孔質セパレータフィルムを使用することができる。例えば、セパレータフィルムには、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリオレフィン系の多孔質セパレータフィルムが挙げられるが、これらに限定するものではない。無機粒子を配合した多孔質セパレータフィルムも使用できる。
【0037】
本発明のリチウム二次バッテリーの形状には特に制限は無く、例えば缶形状の円筒、正方形、小袋またはコインを挙げることができる。
【0038】
本発明のリチウム二次バッテリーは、優れた低温出力特性、高温貯蔵特性、速度特性、等を有する。場合により、リチウム二次バッテリーは、自動車、特にハイブリッド電気自動車用の動力源として使用するのが好ましい。しかし、本発明はこれに限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ここで、下記の例を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。これらの例は、本発明を説明するためにのみ記載するのであり、本発明の範囲及び精神を制限するものではない。
【0040】
[例1]
1-1.アノードの調製
(アノードの調製)
アノード活性材料としてグラファイト97重量部及び酸化チタン3重量部を使用し、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶剤に加えてアノードスラリーを形成した。次いで、アノードスラリーを銅集電装置上に塗布し、アノードを調製した。
【0041】
1-2.リチウム二次バッテリーの調製
(カソードの調製)
カソード活性材料としてLiMnを使用し、導電性材料及び結合剤をNMP溶剤に加えてカソードスラリーを形成した。次いで、カソードスラリーをアルミニウム集電装置上に塗布し、カソードを調製した。
【0042】
(電解質)
EC/EMC/DEC(体積比1:2:1)に1M LiPFを加えた溶液を電解質として使用した。
【0043】
(バッテリーの調製)
調製したカソードとアノードの間にポリオレフィンセパレータフィルムを配置した。次いで、電解質添加剤を加えた電解質をその間に導入し、バッテリーを調製した。
【0044】
[比較例1]
酸化チタン粒子を使用せず、SBRの代わりにPVdF結合剤を使用した以外は、例1と同様にリチウム二次バッテリーを調製した。
【0045】
[比較例2]
酸化チタン粒子を使用しなかった以外は、例1と同様にリチウム二次バッテリーを調製した。
【0046】
[比較例3]
SBRの代わりにPVdF結合剤を使用した以外は、例1と同様にリチウム二次バッテリーを調製した。
【0047】
[実験例1] リチウム二次バッテリーの評価
下記の実験を行い、本発明のアノードを備えてなるリチウム二次バッテリーの高温における貯蔵性能を評価した。
【0048】
例1で調製した酸化チタン及びSBRを含んでなるリチウム二次バッテリーを使用し、比較例1〜3で調製した、それぞれ成分を含まない、または一種類の成分しか含まないバッテリーを比較試料として使用した。
【0049】
各バッテリーを、3.0〜4.2 Vの電圧で、電流0.5 Cで充電した。バッテリーの初期容量を測定し、次いで、65℃で3日間貯蔵の前/後における容量を下記の方法で測定した。これらの値を比較した。0.5 Cに充電することにより測定したバッテリーの容量を50%放電させ、10 Cをバッテリーを通して10秒間流した。10秒間中の電圧低下を使用し、電池の抵抗を測定した。次いで、容量の計算を行った。結果を表1に示す。
【0050】
<表1>

酸化チタン 結合剤 容量保存(%)
例1 TiO SBR 92.1%
比較例1 X PVDF 82.8%
比較例2 X SBR 83.2%
比較例3 TiO PVDF 84.9%
【0051】
表1から分かるように、従来の方法で調製された、電解質添加剤を使用しない、比較例1のバッテリーは、高温貯蔵の後、約82.8%の容量保存を示した。それぞれTiO及びSBRを導入した比較例2及び3のバッテリーは、比較例1のバッテリーと比較して、高温貯蔵がある程度改良されている。
【0052】
対照的に、本発明により酸化チタンとSBRの両方を導入した例1のバッテリーでは、高温貯蔵後のバッテリーの容量保存が改良されていることが確認された。これは、アノード成分として酸化チタン及びスチレン-ブタジエンゴムを使用することにより、スピネル型構造のカソード活性材料を使用するバッテリーの高温貯蔵特性及び耐用寿命特性を劇的に改良できることを立証している。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上記の説明から明らかなように、本発明により、酸化チタン及びSBRをリチウム二次バッテリーにおけるアノード成分の一部として使用することにより、高温貯蔵中のアノード抵抗の増加、及びその抵抗によるバッテリー容量の低下が抑制され、それによって、バッテリーの全体的な性能が改良される。
【0054】
本発明の好ましい実施態様を例示のために開示したが、当業者には明らかなように、請求項に記載する本発明の範囲及び精神から離れることなく、様々な修正、追加及び置き換えが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー用のアノードであって、
(a)アノード活性材料と、
(b)TiOと、及び
(c)スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を含んでなる、アノード。
【請求項2】
前記TiOの粒子径が1〜500 nmである、請求項1に記載のアノード。
【請求項3】
前記TiOが、前記アノード活性材料100重量部に対して1〜10重量部の範囲内で含まれる、請求項1に記載のアノード。
【請求項4】
前記アノード活性材料が炭素質材料である、請求項1に記載のアノード。
【請求項5】
前記スチレン-ブタジエンゴム(SBR)の転移温度(Tg)が25℃以下である、請求項1に記載のアノード。
【請求項6】
前記スチレン-ブタジエンゴム(SBR)が、親水性官能基を含んでなる、請求項1に記載のアノード。
【請求項7】
前記親水性官能基が、他のベース材料と水素結合を形成する、請求項6に記載のアノード。
【請求項8】
前記スチレン-ブタジエンゴム(SBR)が、
(a)ブタジエン含有モノマー及びスチレン含有モノマー、または
(b)ブタジエン含有モノマー、スチレン含有モノマー、及びマレイン酸、アクリル酸、アクリレート、カルボン酸、ニトリル基、ヒドロキシル基、アセテート基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、アミド基、アミン基、及びハロゲン原子からなる群から選択された少なくとも一種の親水性官能基含有モノマーと重合しているゴムである、請求項1に記載のアノード。
【請求項9】
前記スチレン-ブタジエンゴム(SBR)の平均分子量が10,000〜1,000,000である、請求項1に記載のアノード。
【請求項10】
リチウム二次バッテリーであって、
カソードと、アノードと、電解質と、及びセパレータフィルムを備えてなり、
前記アノードが、請求項1〜9のいずれか一項に記載のアノードである、リチウム二次バッテリー。
【請求項11】
前記カソードが、カソード活性材料としてリチウム-マンガン複合材料酸化物を含んでなる、請求項10に記載のバッテリー。
【請求項12】
前記リチウム-マンガン複合材料酸化物が、
Li1+aMn2−a(式中、aは0〜0.33である)、
LiMnO、LiMn、LiMnO
LiMn2−a(式中、MはCo、Ni、Fe、Cr、Zn、またはTaであり、aは0.01〜0.1である)、
LiMnMO(式中、MはFe、Co、Ni、CuまたはZnである)、及び、
LiMn(Li部分がアルカリ土類金属で置換されている)からなる群から選択された少なくとも一種である、請求項10に記載のバッテリー。
【請求項13】
前記リチウム二次バッテリーが、マンガンイオン(Mn2+)を有してなり、
前記マンガンイオン(Mn2+)が、前記カソードから溶出し、
前記マンガンイオン(Mn2+)が、リチウムが可逆的に挿入/放出される前記アノード活性材料ではなく、TiOの表面で還元され、
前記アノードの抵抗が低下する、請求項10に記載のバッテリー。

【公表番号】特表2009−545128(P2009−545128A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522703(P2009−522703)
【出願日】平成19年7月21日(2007.7.21)
【国際出願番号】PCT/KR2007/003529
【国際公開番号】WO2008/013380
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】