説明

高温ガスとの接触に適した装置

【課題】高温ガス、例えば水素及びテトラクロロシランとの接触に適した装置を提供する。
【解決手段】
反応器100は、テトラクロロシランの水素化に用いることができる。反応器100は、炭化ケイ素系の構成材料から調製される少なくとも1つの部品を有する。反応器100は、加圧可能シェル101と、加圧可能シェル101に囲まれた断熱材102と、断熱材102に囲まれた加熱要素106と、加熱要素106に囲まれた反応室107とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高温ガスとの接触に適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体グレードシリコンを調製するプロセスでは、シリコンは、水素の存在下でトリクロロシランガスを還元することにより、加熱された要素に堆積させることができる。しかしながら、このプロセスは、トリクロロシランガスの大部分が脱水素化されて、副産物のテトラクロロシランが形成されるという欠点を有している。この副産物のテトラクロロシランをトリクロロシランに転化し戻して、これを堆積プロセスに再循環させることができるのが望ましい。
【0003】
テトラクロロシランの水素化(テトラクロロシランのトリクロロシランへの転化)の様々なプロセスが、従来技術において公知である。たとえば、テトラクロロシランは600〜1200℃の温度において、平衡反応で水素と反応する。トリクロロシラン、他の副産物のクロロシラン、および塩化水素(HCl)が形成される。テトラクロロシランの水素化用の反応器は、プロセス中、高温ならびにクロロシランおよびHClなどの材料の腐食性に耐えることができねばならない。テトラクロロシランをトリクロロシランに転化するのに適した反応器は、加圧可能シェルと、加圧可能シェルに囲まれた断熱材と、断熱材に囲まれた加熱要素と、加熱要素に囲まれた、水素ガスをテトラクロロシランと反応させるための反応室とを備える。
【0004】
このような反応器では、反応室に供給される水素およびテトラクロロシランを完全に閉じ込めることは不可能であることが多い。これらのガスは、反応器のシールおよび継ぎ目から、絶縁材および他の構造要素を収容する周囲の空間に漏れる可能性がある。水素ガスがこれらの構造要素と接触すると、構造要素の組成物および接触部位の温度に応じて、いくつかの有害反応が起こり得る。たとえば、400〜1000℃の温度では、水素が炭素および炭素系の構成材料、たとえば、加熱要素および断熱材と反応して、メタンを生成する。メタンは、トリクロロシラン生成物の汚染を引き起こす。800℃より高い温度では、水素およびクロロシランの存在下で、炭素および炭素系の材料が、HClの遊離を伴って炭化ケイ素に転化される。この反応は、炭素および炭素系の要素の物理的完全性を低下させる。さらに、シリコンが反応器内の高温部品に堆積される。水素の濃度が85モル%より高い、水素およびテトラクロロシランを含む雰囲気下では、テトラクロロシランはケイ素元素に還元され、反応器の高温部品に堆積される。反応器におけるケイ素の堆積により、反応器内の熱移動が阻止されるとともに、反応器の部品が脆くなり、分解が困難になる可能性がある。また、水素ガスの熱伝導率は高いため、反応室と加圧可能シェルとの間の空間に水素ガスがあることにより、熱伝導率が低いガスと比較して、反応器からの熱損失が増し、シェルの温度が上昇する。
【0005】
テトラクロロシランをトリクロロシランに転化するための既存の反応器では、炭素および炭素系材料、たとえば黒鉛が、構成材料として用いられる。たとえば、可撓性の黒鉛プラットフォームと組み合わせた剛性の黒鉛フェルトを、クロロシランの水素化用の反応器の断熱材として用いることができる。剛性の黒鉛フェルトは、絶縁性を有する多孔性の炭素繊維炭素結合材料(porous carbon fiber carbon bonded material)である。しかしながら、剛性の黒鉛フェルトは、炭素化合物を生成する高温の水素による腐食(attack)を受けやすい。これらの炭素化合物は、上述のように、堆積プロセスにより生成されるケイ素を汚染する恐れがある。
【0006】
加熱要素は、炭化ケイ素でコーティングされた炭素繊維複合材料(CFCC)を用いて調製されている。CFCCは炭素繊維の層からなり、これが硬化されてプラスチック様の「グリーン」体が形成され、次いで液体またはガスを含む炭素が浸透されて炭素マトリックスが形成される。次に、材料は、炭素を黒鉛化するためにさらに処理される。得られた材料は、化学蒸着法を用いて炭化ケイ素でコーティングされる。得られたコーティングされた材料が複合材料である。完全な円筒状のユニットが、単一の一体構造部品として形成されるか、またはねじなどの締結具でともに連結された複数の部品から構成される。炭素マトリックス、繊維、またはそれら両方と、クロロシランまたは水素との化学反応により破損が生じる場合がある。化学蒸着法により炭化ケイ素の薄層でコーティングされた黒鉛ブロックからなる筒も用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、炭化ケイ素でコーティングされた炭素および炭素系の構成材料は、種々の部品の面によっては炭化ケイ素で均一にコーティングすることが難しいという欠点がある。さらに、時間が経つと、クロロシランガス、水素ガス、またはそれらの両方が、割れ目またはコーティングが薄い領域から炭化ケイ素コーティングに浸透し、その下の炭素および炭素系材料の劣化を引き起こす可能性がある。これが起こると、ケイ素を汚染する多量の炭素化合物が生成され、最終的には部品が破損する。したがって、寿命が長い処理装置を設計することが依然として必要である。
【0008】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、高温ガス、例えば水素及びテトラクロロシランとの接触に適した装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る高温のガスと接触するための装置は、高温ガスとの接触に適した装置であって、高温ガスと接触する装置の少なくとも1つの部品が、炭化ケイ素系の構成材料からなる。
この装置は、加圧可能シェルと、加圧可能シェルに囲まれた断熱材と、断熱材に囲まれた加熱要素と、加熱要素に囲まれた反応室とを含む反応器を備える。
反応室は、反応室の上部を形成するダイバータと、加熱要素に囲まれた外筒と、外筒に囲まれた内筒と、ダイバータを外筒に連結する締結具とを備え、ガス流路が外筒と内筒との間に形成され、反応ゾーンが内筒の中央に形成され、かつ、加圧可能シェル、断熱材、加熱要素、外筒、内筒、ダイバータ、および締結具のうちの少なくとも1つは、炭化ケイ素系の構成材料からなる。この反応室で、水素ガスおよびテトラクロロシランを反応させることができる。
反応器はさらに、加圧可能シェルと断熱材との間に外室を備えていてもよい。
さらに熱交換器が備えられており、反応器が熱交換器に取り付けられていてもよい。
熱交換器、またはその部品は、SiC系の構成材料、たとえば、CMC、セラミックSiC、CVD SiC、またはSiC絶縁材でコーティングされたSiC材料からなる。
断熱材は、絶縁層と、任意に、ある場合には絶縁層により囲まれた熱シールドとを備える。
絶縁層は、SiC絶縁材からなる。
熱シールドは、渦巻状に巻かれたシートと、任意に、シートのラップ間にスペーサとを備える。
また、熱シールドは、CMCまたはセラミックSiC、あるいはそれらの組み合わせによって、1つの一体構造部品として形成することができる。
加熱要素は、CMCまたはセラミックSiC、あるいはそれらの組み合わせからなる。
ダイバータ、外筒、内筒、及び締結具は、セラミックSiCまたはCVD SiCからなる。
【0010】
この発明に係る加熱要素は、CMCまたはセラミックSiCを含むSiC系の構成材料からなる。杭柵の構造を有していてもよく、SiC系材料の1つの一体構造部品から形成されてもよい。
この加熱要素は、上述の反応器で用いることができ、過度の実験をせずに当業者が利用可能である。
【0011】
この発明に係る方法は、水素およびテトラクロロシランを含むガス混合物を上述の装置に通すことを含む。ガス混合物を装置に通す前に、熱交換器においてガス混合物を予熱することを含んでいてもよい。
これらの方法により、生成物が調製される。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、高温ガスと接触する装置の少なくとも1つの部品を、炭化ケイ素系の構成材料で形成することによって、高温ガス、例えばテトラクロロシラン及び水素との接触に用いるのに適した装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の装置の切欠側面図である。
【図2】この発明の絶縁材を含む反応器の部分断面図である。
【図3】この発明の加熱要素を含む反応器の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。尚、この実施の形態において、別記しない限り、量、比率、およびパーセンテージは全て重量に基づく。
図1は、この実施の形態に係る高温ガスと接触するための装置の切欠側面図を示す。反応器100は、熱交換器116に取り付けられている。熱交換器116は標準的な構造であってよく、たとえば、熱交換器116は、米国特許第2,821,369号、3,250,322号、および3,391,016号に開示される熱交換器と同一または同様であってよい。あるいは、熱交換器116は、SiC系材料、たとえば、CMC、セラミックSiC、CVD SiC、またはCVD SiCでコーティングされたセラミックSiCなどの別のSiC系材料と組み合わせた(たとえば別のSiC系材料でコーティングされた)SiC系材料から形成してもよい。
反応器100は、加圧可能シェル101を備える。加圧可能シェル101は、ステンレス鋼から形成される。加圧可能シェル101の内面は、断熱材102により加熱要素106から断熱される。断熱材102は、絶縁層103および熱シールド105を備える。断熱材102は、米国特許第5,126,112号に開示される構造と同一または同様であってよい。断熱材102は、標準的な高温断熱材料、たとえば、可撓性または剛性の炭素または黒鉛フェルト、および可撓性の黒鉛の厚い(solid)シートから形成される。あるいは、炭化ケイ素(SiC)系材料から形成される。絶縁層103および熱シールド105の一方または両方は、SiC系材料から形成される。反応器100はさらに、加圧可能シェルと絶縁層103との間に外室117を備える。
【0015】
ここで、CMCは、炭素繊維または炭化ケイ素繊維、あるいはそれらの組み合わせで強化された、炭化ケイ素マトリックスを含むセラミックマトリックス複合材料を意味する。CMCには、任意に、ケイ素または炭化ケイ素を浸透させることができる。CMCは、たとえば、米国特許第4,294,788号および第5,738,908号に記載されるように生成することができる。
【0016】
また、セラミックSiCは、炭化ケイ素粉末を高温で処理することを含むプロセスにより生成される炭化ケイ素を意味する。セラミックSiCは、任意に、緻密化またはコーティング、あるいはそれらの組み合わせにより、さらに処理することができる。セラミックSiCは、融解または気化ケイ素を浸透させることにより、たとえば、欧州特許第0532985号に記載されるプロセスにより、緻密化することができる。セラミックSiCは、化学蒸着法によりコーティングすることができる。セラミックSiCとしては、限定はされないが、ホットプレス炭化ケイ素、反応焼結炭化ケイ素、再結晶炭化ケイ素、および焼結炭化ケイ素が挙げられる。ホットプレス炭化ケイ素は、たとえば、熱および圧力を用いて炭化ケイ素粉末を圧縮することにより生成される。ホットプレス炭化ケイ素は、たとえば、米国特許第4,108,929号および第5,354,536号に記載されるように生成される。反応焼結炭化ケイ素は、たとえば、炭化ケイ素粉末を炭素および溶融ケイ素で処理することにより生成される。反応焼結炭化ケイ素は、たとえば、米国特許第3,495,939号および欧州特許第0532985号に記載されるように生成される。再結晶炭化ケイ素は、たとえば、炭化ケイ素粉末を結合剤すなわち樹脂で処理することにより生成される。再結晶炭化ケイ素は、たとえば、米国特許第5,840,639号および第5,925,310号に記載されるように生成される。焼結炭化ケイ素は、たとえば、炭化ケイ素粉末を焼結剤および結合剤すなわち樹脂で処理することにより生成される。焼結炭化ケイ素は、たとえば、米国特許第5,082,597号および第5,656,218号に記載されるように生成される。
【0017】
ここで、CVD SiCは、黒鉛などのマンドレル上に炭化ケイ素を化学蒸着させ、その後マンドレルを取り外すことを含むプロセスにより生成される炭化ケイ素を意味する。CVD SiCは、たとえば、米国特許第5,374,412号および第5,604,151号に記載されるように生成される。
【0018】
加熱要素106は、標準的な構造、たとえば、外筒112、内筒113、ダイバータ114、および締結具115により形成される反応室107の外部の周りに位置する1つまたは複数のロッドまたはパネルを有する。あるいは、加熱要素106は、単一の一体構造部品であってもよい。加熱要素106は、炭素、黒鉛、または炭化ケイ素でコーティングされた炭素複合材料から形成される。あるいは、加熱要素106は、SiC系材料、たとえば、CMCまたはセラミックSiCから形成してもよく、再結晶炭化ケイ素、反応焼結炭化ケイ素、および焼結炭化ケイ素がこのような材料の例である。
【0019】
加熱要素106は、図示しない外部エネルギー源に接続する手段を提供する電極108に電気接続される。加熱要素106は、電気絶縁体109により、反応器100の残りの部分から電気的に絶縁される。電気絶縁体109は、標準的な耐高温性および耐薬品性の絶縁材料、たとえば、石英ガラスまたは窒化ケイ素から形成される。
【0020】
加熱要素106は、反応室107を取り囲む。図1では、反応室107は、2つの同心円状に配列された筒112、113、ダイバータ114、および締結具115により形成される、二重壁構造を有する。ダイバータ114は、反応室107の上部を形成する。締結具115は、ダイバータ114を外筒112に固定する。外筒112、内筒113、ダイバータ114、および締結具115は、高温反応器のための標準的な構成材料、たとえば、炭素、黒鉛、炭化ケイ素でコーティングされた炭素、および炭化ケイ素でコーティングされた黒鉛から、または炭化ケイ素でコーティングされた炭素繊維複合材料から形成される。あるいは、外筒112、内筒113、ダイバータ114、および締結具115のうちの1つまたは複数は、SiC系材料、たとえば、セラミックSiCまたはCVD SiC、あるいはセラミックSiCから形成される。締結具115は、セラミックSiCまたはCMC、あるいはセラミックSiCから形成される。好適な締結具115は、過度の実験をせずに当業者が入手可能である、ねじまたはその等価物である。
【0021】
当業者であれば、上記の構造は例示であり限定ではないということを認識するであろう。当業者は、本明細書の開示に基づいて、装置の1つまたは複数の部品のために、適した構造および適したSiC系の構成材料を選択することができるであろう。たとえば、外筒112、ダイバータ114、および締結具115は、セラミックSiCの、またはセラミックSiCと別のSiC系材料、たとえばCVD SiCとの組み合わせからなる、1つの一体構造部品から形成される。あるいは、外筒112および内筒113はそれぞれ、SiC系材料からなる2つ以上の部品から形成される。熱交換器116は、SiC系材料からなる1つの一体構造部品から形成されてもよく、またはSiC系材料からなる2つ以上の部品から形成されてもよい。加熱要素106は、セラミックSiCからなる1つの一体構造部品から形成される。反応室107は、単一壁構造を有する。さらに、SiC系材料の組み合わせを用いてもよく、たとえば、セラミックSiCなどの1つのSiC系材料をCVD SiCなどの別のSiC系材料でコーティングしたものを用いて、装置の部品を作製してもよい。
【0022】
図2は、断熱材102を含む反応器100の断面図である。図1に関して説明したように、反応器は加圧可能シェル101を備える。加圧可能シェル101の内面は、断熱材102により加熱要素106から断熱される。加熱要素106は、標準的な構造、たとえば、反応ゾーン107の外部の周りに位置する1つまたは複数のロッドまたはパネルを有する。加熱要素106は、炭素、黒鉛、または炭化ケイ素でコーティングされた炭素複合材料から形成される。あるいは、加熱要素106は、SiC系材料、たとえば、CMCまたはセラミックSiCから形成される。
【0023】
断熱材102は、熱シールド105および絶縁層103を備える。絶縁層103は、米国特許第5,126,112号に開示されるように、炭素系の剛性フェルトから形成される。あるいは、絶縁層103は、SiC絶縁材などのSiC系材料から形成される。
【0024】
ここで、SiC絶縁材は、繊維状または多孔質の炭素または炭素系の構成材料に、ケイ素含有原料ガスを浸透させて、個々の繊維または孔に炭化ケイ素のコーティングを施すか、あるいは個々の繊維を炭化ケイ素に転化するか、あるいはそれらそれらの組み合わせを行い、それにより、CMCと比較して比較的断熱性が高い炭化ケイ素を得ることを含むプロセスにより生成される炭化ケイ素を意味する。SiC絶縁材は、たとえば、米国特許第4,481,179号に記載されるように生成される。
【0025】
熱シールド105は、加熱要素106の周りに渦巻状に巻かれた連続シートから形成される。熱シールド105はさらに、ラップ間にスペーサ(図示せず)を備える。あるいは、熱シールド105は、SiC系材料、たとえばCMCまたはセラミックSiCから形成される。あるいは、熱シールド105は、SiC系材料、たとえば、CMCまたはセラミックSiCの、あるいはそれらの組み合わせの、1つの一体構造部品として形成されてもよい。
【0026】
当業者であれば、上述の断熱材の構造は例示であり限定ではないということを認識するであろう。たとえば、断熱材102は代替的に、単一の一体構造SiC系部品として形成することができる。当業者は、本明細書の開示に基づいて、断熱材の1つまたは複数の部品の設計のために、適した断熱材構造および適したSiC系の構成材料を選択することができるであろう。
【0027】
図3に示されるように、加熱要素106は外筒112を取り囲む。外筒112は内筒113を取り囲む。加熱要素106は、外筒112の周りに位置する1つまたは複数のロッドまたはパネルを備える。加熱要素106は、炭素、黒鉛、または炭化ケイ素でコーティングされた炭素複合材料から形成される。あるいは、加熱要素106は、SiC系の構成材料、たとえば、CMCまたはセラミックSiC、あるいはそれらの組み合わせから形成される。あるいは、加熱要素は、ロッドまたはパネルではなく、SiC系材料、たとえばセラミックSiCの1つの一体構造部品から形成されてもよい。あるいは、加熱要素106はCMCから形成されてもよい。
【0028】
当業者であれば、上述の加熱要素の構造は例示であり限定ではないということを認識するであろう。当業者は、本明細書の開示に基づいて、適当な加熱要素構造および加熱要素構造の1つまたは複数の部品に適したSiC系の構成材料を選択することができるであろう。
【0029】
次に、この実施の形態に係る高温ガスと接触するための装置の動作について説明する。
熱交換器116において、反応器100に供給されるガスがガス流路110に入る前に予熱される。ガスは反応室107のガス流路110を流れ、反応室107では加熱要素106によって、さらなる加熱が行われる。ガスは、反応ゾーン111へ流れを向けるダイバータ114によって向きを変えられる。加熱されたガスは、熱交換器116を通過し、入って来る供給ガスに熱が伝達される。
【実施例】
【0030】
次に、この実施の形態に係る装置を用いたテトラクロロシランの水素化を実施例として、この装置の効果を説明する。尚、以下の実施例は、この発明を当業者に例示することを意図しており、この発明の範囲を制限するものと解釈するべきではない。
【0031】
実施例1−SiC系部品
CVD SiCコーティングでコーティングされたセラミックSiC部品を、Hemlock Semiconductor Corporationのテトラクロロシラン水素化用の反応器に取り付ける。1000時間の通常動作の後、部品を取り外す。取り付け前と後のいずれも、基材またはベースコーティングに視認可能な変化はない。
【0032】
比較例1−炭素系部品
実施例1で用いられるものと同じ部品構造を、黒鉛から作製し、SiCの化学蒸着によりコーティングする。この部品を、Hemlock Semiconductor Corporationのテトラクロロシラン水素化用の反応器に取り付ける。1000時間の通常動作の後、この部品を取り外す。劣化および腐食が認められる。
【0033】
これまでは、炭素系部品および炭化ケイ素でコーティングされた炭素系部品は、高温ガスとの接触に適した反応器、たとえばテトラクロロシランの水素化用の反応器で用いられていたが、このような反応器での使用に適したSiC系部品は、十分なサイズおよび複雑な形状のSiC系部品の作製が困難であることから今まで利用可能ではなかった。本発明者等は、驚くべきことに、テトラクロロシランの水素化に用いられる反応器において、炭素および炭素系の反応器部品を、さらに炭化ケイ素でコーティングされたそのような部品でさえをも、SiC系部品で置き換えることによる利益を見出した。その利益とは、このような置換により、炭素系部品および炭化ケイ素でコーティングされた炭素系部品と比較して、SiC系部品を最初に取り付けた際に、トリクロロシラン生成物における炭素含有不純物の量を減らすことができることである。このような置換により、炭素系部品および炭化ケイ素でコーティングされた炭素系部品と比較して、長期間にわたって、トリクロロシラン生成物における炭素含有不純物の量を減らすこともできる。さらに、炭素系部品および炭化ケイ素でコーティングされた炭素系部品と比較して、SiC系部品の耐用期間を延ばすことができる。
【符号の説明】
【0034】
100 反応器、101 加圧可能シェル、102 断熱材、103 絶縁層、105 熱シールド、106 加熱要素、107 反応室、108 電極、109 電気絶縁体、110 ガス流路、111 反応ゾーン、112 外筒、113 内筒、114 ダイバータ、115 締結具、116 熱交換器、117 外室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温ガスとの接触に適した装置であって、
加圧可能シェルと、
該加圧可能シェルに囲まれた断熱材であって、SiC絶縁材からなる絶縁層と、任意に、該絶縁層により囲まれた熱シールドとを有する断熱材と、
該断熱材に囲まれた加熱要素と、
該加熱要素に囲まれた反応室と
を含む反応器を備える装置。
【請求項2】
前記反応室は、
該反応室の上部を形成するダイバータと、
前記加熱要素に囲まれた外筒と、
該外筒に囲まれた内筒と、
前記ダイバータを前記外筒に連結する締結具と
を備え、
ガス流路が前記外筒と前記内筒との間に形成され、
反応ゾーンが前記内筒の中央に形成され、
前記加圧可能シェル、前記断熱材、前記加熱要素、前記外筒、前記内筒、前記ダイバータ、および前記締結具のうちの少なくとも1つは、炭化ケイ素系の構成材料からなる請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記反応器は、前記加圧可能シェルと前記断熱材との間に外室をさらに備える請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
熱交換器をさらに備え、
前記反応器は前記熱交換器に取り付けられる請求項1〜3のいずれか一項に記載の高温ガスとの接触に適した装置。
【請求項5】
前記熱シールドがあり、
該熱シールドは、
渦巻状に巻かれたシートと、
任意に、該シートのラップ間にスペーサと、
を備える請求項1〜3に記載の装置。
【請求項6】
前記熱シールドがあり、
該熱シールドは、CMCまたはセラミックSiC、あるいはそれらの組み合わせからなる請求項1または5に記載の装置。
【請求項7】
前記加熱要素は、CMCまたはセラミックSiC、あるいはそれらの組み合わせからなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ダイバータは、セラミックSiCまたはCVD SiCからなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記外筒は、セラミックSiCまたはCVD SiCからなる請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記内筒は、セラミックSiCまたはCVD SiCからなる請求項2〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記締結具は、セラミックSiCまたはCMCからなる請求項2〜10のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−136904(P2011−136904A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75636(P2011−75636)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【分割の表示】特願2004−59641(P2004−59641)の分割
【原出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【出願人】(503060684)ヘムロック・セミコンダクター・コーポレーション (17)
【Fターム(参考)】