説明

高温ガス案内管、特に内燃機関の排ガス管との接続部のためのシール装置

高温ガスの接続部案内管、特に内燃機関の排ガス管のためのシール装置は、対応ガス通路をガス通路の外側に対してガス密に封じ込めるシール素子(9)を備える。シール装置(1)は、シール素子(9)の熱負荷を低減する手段(13,15,21,27,37,41)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温ガス案内管、特に内燃機関の排ガス管との接続部のために用い、関連するガス通路をガス通路の外側に対してガス密に封じ込める少なくとも1つのシール素子を備えるシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関分野の技術的進歩により、とりわけ小型で軽量の構成に関して、そして特に消費量最適化および性能向上に関して、排ガス・高温領域におけるシール結合部の耐用寿命に対する要求が増大している。このことは特に排気マニホールドとターボ過給器との間、排気マニホールドと触媒コンバータとの間またはターボ過給器と排ガス管との間の移行部におけるシール結合部に関していえる。これらの領域で生じる負荷は、関連するシール装置の耐用寿命の著しい低下をもたらす場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの問題点を考慮して、本発明の課題は、耐用寿命に対する要求を特に良く満たしている高温ガス案内管、特に排ガス管のためのシール装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この課題は請求項1に記載の特徴を有するシール装置により解決される。
【0005】
これによれば、本発明の本質的な特徴は、シール素子の熱過負荷に抗して作用する手段が設けられていることである。現在の装置で問題の領域において生じる場合があるような温度上昇は、まず耐用寿命の低下をもたらす。すなわち、シール素子の熱負荷を低減する手段が耐用寿命の本質的な改善をもたらすということである。
【0006】
熱負荷を低減するために設けられた手段が、シール素子および/またはシール装置の一部を形成する管結合部の接続フランジに直接に作用するように、装置を構成してもよい。
【0007】
このような構成は、シール素子自体もしくは接続フランジ、またはシール素子と接続フランジとに、放熱手段、すなわち、冷却作用を有する冷却構造部を設けることにより得られる。
【0008】
代替的に接続フランジ、シール素子、またはこれら両方と作用結合している断熱手段を設けてもよい。
【0009】
さらに、接続フランジ、シール素子、またはこれら両方と作用結合している複合的な冷却および断熱手段を備えるように装置を構成してもよい。
【0010】
放熱手段を使用した特に有利な実施例では、シール装置が液状またはガス状の冷却媒体のための空間を含むように装置を構成してもよい。
【0011】
この場合、冷却媒体のための空間は、1つ以上の冷却媒体通路を有していてもよい。
【0012】
冷却媒体のための空間は、少なくとも部分的にシール素子の内部に形成されていてもよく、この空間がシール素子の外部に位置する冷却通路に接続しているように装置を構成してもよい。
【0013】
特に有利な実施例では、外部に位置する冷却通路は、放熱のための外側冷却リブを備えていてもよい。
【0014】
これに対し代替的または付加的に、冷却通路は能動的な外部冷却回路に接続していてもよい。
【0015】
シール素子は、当接面またはフランジ面でシールする外側シール層により多層状に形成されていてもよく、冷却媒体および/または良好に熱伝導する中間層が、シール素子の外側シール層の間に位置している。
【0016】
断熱材が断熱手段としてフランジ面と、シール素子の対向面との間に設けられているように装置を構成してもよい。
【0017】
シールする外側シール層の間に良好に熱伝導する中間層が位置する実施例では、中間層における放熱面を形成する終端領域はシール層の外側端部を超えて外部に突出している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の基本原理を説明するための著しく簡略化した概略図である。
【図2】シール装置の一方側を著しく簡略化して示す第1実施例の拡大縦断面図である。
【図3】本発明によるシール装置の他の実施例を示す図2に類似した拡大縦断面図である。
【図4】本発明によるシール装置の他の実施例を示す図2に類似した拡大縦断面図である。
【図5】本発明によるシール装置の他の実施例を示す図2に類似した拡大縦断面図である。
【図6】本発明によるシール装置の他の実施例を示す図2に類似した拡大縦断面図である。
【図7】本発明によるシール装置の他の実施例を示す図2に類似した拡大縦断面図である。
【図8】本発明によるシール装置の他の実施例を示す図2に類似した拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1の概略図は、排ガス管系の接続箇所、例えば内燃機関のマニホールドとターボ過給器との間の移行部に本発明によるシール装置を挿入したところを示しており、シール装置1は、マニホールドの接続フランジ3とターボ過給器の接続フランジ5との間のシール部を形成している。システム作動中にシール装置1のシール素子に加えられる熱負荷を低減するための手段として、シール装置1は、シールする冷却構造体として形成されており、その構造を図2〜図8に示す実施例に基づき以下に詳細に説明する。既に述べたように、冷却構造体の機能原理によれば、能動的または受動的放熱部、断熱手段、または放熱部および断熱部とからなる複合部が設けられている。図1では、シール装置1は付加的に温度センサ手段7を備え、温度センサ手段7は能動的な冷却装置を利用して作動制御する。
【0020】
図2は、接続フランジ3と、接続フランジ5と、これらの接続フランジ間に組み込まれたシール素子9とにより形成されたシール装置1の第1実施例を示しており、シール素子9は多層状に構成されている。この場合、かしめられた薄板からなる2つの外側シール層11が設けられており、接続フランジ3および接続フランジ5にクリンプ部14がシールするように当接される。シール層11の間には、良好に熱伝導する材料、本実施例では銅薄板からなる良好に熱伝導する中間層13が位置している。図2に明らかに見ることができるように、クリンプ部14は、外側シール層11がシール素子9の外側端部から間隔をおいて内側の中間層13に当接しているように外側シール層11に形成されているが、シール層11は中間層13の両側に隣接する空間15が形成されるように外側端部に向けて発散している。この空間15は、ガス状または液状冷却媒体を収容するために規定されており、外側端部は閉鎖薄板17により閉鎖されている。この空間15は、接続薄板17の貫通開口19を介して外部の冷却通路21に接続されており、接続通路21は、図示の実施例では、冷却フィンを有する冷却体23の内部に収容されているか、または、能動的な冷却部が設けられている場合には、冷却媒体回路に接続されている。
【0021】
本実施例では、シール素子9の熱負荷の低減は放熱により行われ、特に熱搬送は、熱伝導性の中間層13の終端領域25を介して、空間15の内部の冷却媒体に向けて得られ、熱は冷却媒体から冷却通路21を介して外部に向けて放出される。
【0022】
図3は、断熱により熱負荷の低減を行う実施例を示している。シール素子9は同様にここでも、かしめられた薄板からなる外側シール層11により多層状に構成されており、外側シール層11は外側クリンプ部14で接続フランジ3および5にシールされている。しかしながら、シール層11における接続フランジ3および5に対向するその他の面は、作動時に高温となる接続フランジ3および5に直接に接触せず、断熱材27からなる環状体により断熱されている。環状体は、比較的肉厚に形成されており、雲母からなっていてよい。このような接続フランジ3および5とシール素子9との間の断熱は、作動中のシール素子9の温度の低減、ひいては熱負荷の低減をもたらす。
【0023】
図4の実施例は、シール素子9の熱負荷を低減するために図3の実施例に対応した断熱だけでなく、シール層11の間で良好に熱伝導する中間層13による付加的な放熱も行われる点で図3の実施例とは異なっており、中間層13の終端領域29は外部に向けて突出しており、これにより、例えば直接的な空気冷却により、または、図2に解決方法に対応してた冷却系(図示しない)により、外部に向けた付加的な放熱が可能である。
【0024】
図5は、冷却媒体のための空間15を用いて放熱を行う実施例を示しており、空間15は、外側シール層11の間に配置された内側環状体31の内部に位置する。内側環状体31は、符号33で概略的に示すように溶接された本体により形成されており、冷却媒体接続部(図示しない)を有していてもよい。外側シール層11は、ここでもかしめられた薄板により形成されており、接続フランジ3および5に対するそれぞれのクリンプ部14におけるシールは、小さい面によるシール接触によって得られ、これにより、フランジ3,5とシール層11との間には、小さい面による熱伝達領域しか生じない。排ガス流自体からシール素子9に作用する熱負荷は、空間15の内部の冷却媒体を介した放熱により低減される。
【0025】
図6は、シール素子9が一層で構成されている点を除いて図5の実施例に対応する実施例を示しており、環状体31は、冷却媒体のための空間15と、接続フランジ3および5に小さい面で当接する突出したシール領域35とを形成している。
【0026】
図7は、シール素子9が再び多層状になっている実施例を示し、かしめられた薄板からなる外側シール層11は、クリンプ部14の領域で接続フランジ3および5に当接してシールし、接触はここでも小さい面で得られる。シール層11の間には、この場合にも良好に熱伝導する中間層13が位置している。しかしながら、図2および図4の実施例とは異なり、中間層13における外部に向けて突出した終端領域29には、冷却面39を形成する冷却体37が一体的に接続しており、これに対して付加的に、冷却体37は、冷却媒体を含む内側冷却通路41をも備えており、この場合、能動的または受動的な冷却系が設けられていてもよい。
【0027】
最後に、図8は、シール素子9が一層で形成されている点を除いては図7の実施例に対応する実施例を示し、図6の実施例におけるような環状体31は、突出したシール部35により、接続フランジ3および5に小さい面による接触によってシールする。環状体31の終端領域29は直接に冷却体37に移行し、冷却体37は、図7の場合のように内側冷却通路41を有している。
【0028】
上述のような排ガス系において本発明を使用することにより、作動時に約100〜150℃だけシール素子の温度の低減を達成することができ、これにより、シール装置の耐用寿命が増大することが示された。高い冷却能力を有する冷却系を使用した場合にはさらに著しい温度低下を達成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温ガス案内管、特に内燃機関の排ガス管との接続部に用い、関連するガス通路をガス通路の外側に対してガス密に封じ込めるシール素子(9)を備えるシール装置において、
シール装置(1)が、シール素子(9)の熱負荷を低減する手段(13,15,21,27,37,41)を有することを特徴とするシール装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシール装置において、
前記手段が、前記シール素子(9)および/または前記シール装置(1)の一部を形成する接続フランジ(3,5)と作用結合しているシール装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシール装置において、
放熱手段(13,15,21,27,41)が設けられているシール装置。
【請求項4】
請求項2に記載のシール装置において、
断熱手段(27)が設けられているシール装置。
【請求項5】
請求項2に記載のシール装置において、
冷却および断熱をもたらす複合的な手段(13,27,29)が設けられているシール装置。
【請求項6】
請求項3または5に記載のシール装置において、
放熱手段が、液状またはガス状の冷却媒体のための空間(15)を備えるシール装置。
【請求項7】
請求項6に記載のシール装置において、
前記冷却媒体のための空間(15)が、少なくとも1つの冷却媒体通路(21,41)を有しているシール装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のシール装置において、
前記空間(15)が、少なくとも部分的にシール素子(9)の内部に形成されているシール装置。
【請求項9】
請求項8に記載のシール装置において、
前記空間(15)が、前記シール素子(9)の外部に位置する冷却通路(21,41)に接続しているシール装置。
【請求項10】
請求項9に記載のシール装置において、
外部に位置する前記冷却通路(21)が、放熱のために外部の冷却リブ(23)を備えるシール装置。
【請求項11】
請求項3から9までのいずれか一項に記載のシール装置において、
前記シール素子(9)が、それぞれ当接面またはフランジ面(3,5)でシールする外側シール層(11)によって多層状に形成されており、冷却媒体および/または良好に熱伝導する中間層(13)のための空間(15)が、前記シール素子(9)の外側シール層(11)の間に位置しているシール装置。
【請求項12】
請求項5から11までのいずれか一項に記載のシール装置において、
断熱手段として断熱材(27)が、フランジ面(3,5)とシール素子(9)の対向面と間に設けられているシール装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載のシール装置において、
良好に熱伝導する前記中間層(13)における放熱面を形成する終端領域(29)が、シール層(11)の外側端部を超えて外部に突出しているシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−526243(P2010−526243A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506813(P2010−506813)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000965
【国際公開番号】WO2008/135105
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509016830)エルリングクリンガー アーゲー (6)
【Fターム(参考)】