説明

高温殺菌処理用深絞り包装体

【課題】 高温殺菌処理後に深絞り包装体のフランジ部がカールせず、かつ高温殺菌処理後においても開封性と透明性が良好なイージーピールタイプの高温殺菌処理用深絞り包装体の提供。
【解決手段】 底材及び蓋材が、それぞれ外層、中間層及び内層からなる積層フィルムにより形成され、前記底材は、少なくとも1層の無延伸ポリプロピレン樹脂層からなる外層と、少なくとも1層のポリアミド樹脂層及び耐熱性エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂(htEVOH)層を有する中間層と、少なくとも1層の凝集破壊性を有するイージーピール層からなる内層とにより構成され、前記蓋材は、少なくとも1層の無延伸ポリプロピレン樹脂層からなる外層と、少なくとも1層の二軸延伸ポリアミド樹脂層からなる中間層と、少なくとも1層のヒートシール樹脂層からなる内層とにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に包装後に高温で殺菌処理される、油揚げや総菜等の加工食品等の包装に好適な深絞り包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温で殺菌処理される深絞り包装体の底材用ハイバリアフィルムとしては、ナイロン、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂(EVOH)及びポリプロピレンからなる複合フィルムが使用されてきた。
しかしながら、ナイロンは高温殺菌処理中に収縮してしまうため、深絞り包装体のフランジ部(ヒートシール部)が底材側に大きくカールし、全体の見栄えが悪くなるという問題があった。また、120℃程度の温度で深絞り包装体を処理すると、フィルムが白化して透明性が低下し、場合によっては層間剥離を起こしてしまうという問題があった。また殺菌処理される深絞り包装体においては、イージーピール層は一般に蓋材に形成されていた。そのため、共押出法で作製された深絞り包装体は開封性が十分ではなく、かつ製造コストも嵩むという問題があった。
【特許文献1】特開11−300907号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術の上記課題を解決しようとするものであり、本発明は高温殺菌処理後に深絞り包装体のフランジ部がカールせず、かつ高温殺菌処理後においても開封性と透明性が良好なイージーピールタイプの高温殺菌処理用深絞り包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記問題を解決すべく、フィルムの層構成及び組成につき鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明の目的は、以下の構成を有する高温殺菌処理用深絞り包装体により達成される。
(1) 底材及び蓋材が、少なくとも外層、中間層及び内層で構成される積層フィルムによりそれぞれ形成されている深絞り包装体であって、前記底材は、少なくとも1層の無延伸ポリプロピレン樹脂層からなる外層と、少なくとも1層のポリアミド樹脂層及び耐熱性エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂(htEVOH)層を有する中間層と、少なくとも1層の凝集破壊性を有するイージーピール層からなる内層とで構成された積層フィルムにより形成され、前記蓋材は、少なくとも1層の無延伸ポリプロピレン樹脂層からなる外層と、少なくとも1層の二軸延伸ポリアミド樹脂層からなる中間層と、少なくとも1層のヒートシール樹脂層からなる内層とで構成された積層フィルムにより形成されていることを特徴とする高温殺菌処理用深絞り包装体。
(2) 前記底材の中間層が少なくとも1層のポリエチレン樹脂層又はポリプロピレン樹脂層をさらに有する(1)に記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
(3) 前記底材及び/又は蓋材の無延伸ポリプロピレン樹脂層を構成するポリプロピレン樹脂がポリプロピレンホモポリマーである(1)又は(2)に記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
(4) 前記ヒートシール樹脂が融点120℃以上145℃以下のポリプロピレン樹脂である(1)〜(3)のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
(5) 前記イージーピール層のイージーピール強度が25℃で1.96N/15mm幅以上11.8N/15mm幅以下であり、かつ前記底材の外層、中間層及び内層の層間剥離強度より小さい(1)〜(4)のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
(6) 前記底材の中間層が接着層をさらに有する(1)〜(5)のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
(7) 前記底材の外層又は前記蓋材の外層の厚みが30μm以上100μm以下である(1)〜(6)のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
(8) 前記htEVOH層の厚みが5μm以上30μm以下である(1)〜(7)のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
(9) 100℃以上125℃以下、5分以上120分以下の条件下で殺菌処理し、3日間静置した後のJIS K7105に準拠して測定されるヒートシールされた部分のヘーズ値が1%以下である(1)〜(8)のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
(10) 100℃以上125℃以下、5分以上120分以下の条件下で殺菌処理した後の前記底材及び/又は蓋材を構成する積層フィルムの層間剥離強度が0.98N/15mm幅以上である(1)〜(9)のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
(11) 前記底材及び/又は蓋材の外層と中間層との間に印刷層をさらに有する(1)〜(10)のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の包装体は、上記層構成を有する積層フィルムからなる底材及び蓋材により形成されているため、高温殺菌処理後もフランジ部がカールすることなく、かつ優れた印刷適性及び包装適性を有する深絞り包装体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の深絞り包装体について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0008】
[底材]
本発明において、底材は、少なくとも1層の無延伸ポリプロピレン樹脂(以下「CPP」という)層からなる外層と、少なくとも1層のポリアミド樹脂(以下「PA」という)層及び少なくとも1層の耐熱性エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂(以下「htEVOH」という)層を有する中間層と、少なくとも1層のヒートシール樹脂層からなる内層とで構成される積層フィルムにより形成される。
【0009】
<外層(CPP層)>
底材の外層は少なくとも1層のCCP層で構成される。CCP層とは、CCPの50モル%以上をプロピレン単位成分が占める結晶性混合物を配向させることなく無延伸状態で形成された均一な厚みを有する層をいう。CPP層は、例えば10〜80μm程度の厚みであっても、低温(−30℃)から高温(+150℃)の広範囲に亘って優れた耐衝撃性やその他の物理的特性を示し、寸法形状の変化が少なく、かつ包装体が保存される環境(−20℃〜+80℃)に対する充分な適応性を有している。そのため、底材の外層としてCPP層を配することにより、高温殺菌処理によるカールや、波打ち現象を防止できる。
CCP層で使用可能なポリプロピレン樹脂としては、ホモポリマーやエチレン等とのランダムコポリマーが挙げられるが、フィルム形成時の腰を強くするためにはホモポリマーを用いることが好ましい。
【0010】
CPP層の厚みは特に限定されないが、底材の外層と中間層との間に印刷層を設ける場合は50μm以上、印刷層を設けない場合には30μm以上とすることが好ましい。印刷層を設ける場合、CCP層の厚みを50μm以上とすることにより良好な印刷ピッチを維持できる。また印刷層を設けない場合、CCP層の厚みを30μm以上とすることにより高温処理後に包装体のフランジ部が大きくカールすることを防止できる。CPP層の厚みの上限は特に限定されないが、深絞り成形性を考慮すれば、150μm以下、好ましくは120μm以下、さらに好ましくは100μm以下であることが望ましい。CCP層は底材の外層において少なくとも1層形成されていればよく、必要に応じて2層以上形成することもできる。
【0011】
<中間層>
(PA層)
底材の中間層は、耐ピンホール性と深絞り成形性を付与する目的で少なくとも1層のPA層を含む。中間層で用いられるPAは特に限定されないが、3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、ジアミンとジカルボン酸を主成分(50モル%以上)とするものを用いることが好ましい。PAが共重合体である場合、PA成分は80モル%以上、好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含まれていることが望ましい。またPAがポリマーブレンドである場合には、PA成分はポリマーブレンド質量全体の70質量%以上、好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含まれていることが望ましい。
【0012】
3員環以上のラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ラウロラクタム、α−ピロリドンなどが挙げられる。また重合可能なω−アミノ酸としては、例えば、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノヘプタン酸、ω−アミノノナン酸、ω−アミノウンドデカン酸、ω−アミノドデカン酸などが挙げられる。またジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トチメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トチメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,3/1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス−(4’−アミノシクロヘキシル)プロパンなどの脂環族ジアミン、及びメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。またジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ノナンジオン酸、デカンジオン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,2−体、1,3−体、1,4−体、1,5−体、1,6−体、1,7−体、1,8−体、2,3−体、2,6−体、2,7−体)、金属−イソフタルスルホン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0013】
PA層では、上記3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、ジアミンとジカルボン酸から誘導されるPAのホモポリマー又はコポリマーを各々単独で若しくは混合物として用いることができる。具体的に例示すると、例えば、4ナイロン、6ナイロン、7ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、46ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、610ナイロン、611ナイロン、6Tナイロン、6Iナイロン、MXD6ナイロン、6−66ナイロン、6−610ナイロン、6−611ナイロン、6−12ナイロン、6−612ナイロン、6−6Tナイロン、6−6Iナイロン、6−66−610ナイロン、6−66−12ナイロン、6−66−612ナイロン、66−6Tナイロン、66−6Iナイロン、6T−6Iナイロン、66−6T−6Iナイロン等が挙げられる。これらのPAはホモ樹脂であってもよく、また共重合体やこれらの混合物であってもよい。
【0014】
PA層は、耐ピンホール性の観点からナイロン系樹脂を用いることが好ましく、中でも6ナイロンや6−66ナイロンを用いることが特に好ましい。また、PA層は2層以上設けることもでき、その場合、各層が異なる種類のナイロン系樹脂で形成されていてもよい。
【0015】
PA層の厚みは2μm以上、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、上限は30μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。PA層の厚みの下限を2μm以上とすることにより良好な耐ピンホール性が得られ、また上限を30μm以下とすることによりフィルムのカット性と熱成形性を良好に維持することができる。
【0016】
(htEVOH層)
底材の中間層は、酸素バリアー性を付与する目的で、少なくとも1層のhtEVOH層を含む。htEVOH層で用いられるhtEVOHは、一般に使用されるEVOHとは異なり、フィルムを高温殺菌処理した際にフィルムの白化を防止できる程度の耐熱性を有するEVOHである。htEVOHとしては、例えば、耐熱水性を向上でき、かつ高温殺菌処理後のフィルムの白化を防止可能とした特開平4−304253号公報、特開平6−345919号公報等に記載されているhtEVOHを使用することが好ましい。
【0017】
htEVOH層の厚みは5μm以上、好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、上限は30μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μmである。EVOH層の厚みの下限を5μm以上とすることにより十分な酸素バリアー性と安定した製膜が可能となる。またEVOH層の上限を30μm以下とすることにより、良好な深絞り成形性が得られるほか、耐ピンホール性も得られる。
【0018】
(PE層又はPP層)
底材の中間層は、フランジ部の硬さを得る目的で、少なくとも1層のポリエチレン樹脂(PE)層又は少なくとも1層のポリプロピレン樹脂(PP)層をさらに有することができる。PP層で使用可能なPPとしては、ホモポリマーやエチレン等とのランダムコポリマーなどが挙げられる。フランジ部をより硬くする観点からはPPホモポリマーを用いることが好ましい。
【0019】
PE層で使用可能なPEは特に限定されず、種々のPEを用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチレンアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチル−メチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン系アイオノマー樹脂、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0020】
PE層及びPP層の厚みは、上記目的を達成できれば特に制限されないが、5μm以上、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、上限は100μm以下、好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0021】
<接着層>
底材の中間層は、各層の層間剥離強度を高める目的で、必要に応じて接着層を設けることができる。接着層として使用可能な接着性樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合物(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合物(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合物(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合物(EMA)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合物(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合物(EAA)、エチレン−メタアクリル酸共重合体(EMMA)、エチレン系アイオノマー(ION)等のエチレン共重合体系樹脂を例示でき、その他、変性ポリオレフィン系樹脂、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体若しくはエチレン系エラストマーに、アクリル酸若しくはメタアクリル酸等の一塩基性不飽和脂肪酸、又はマレイン酸、フマール酸若しくはイタコン酸などの二塩基性脂肪酸の無水物を化学的に結合させたものを例示できる。中でもPPをベースとした接着性樹脂を用いることが好ましい。
【0022】
接着層を設ける場合、接着層の厚みは、作業性、経済性、取扱い性の観点から5μm以上、好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、また上限は特に制限はないが、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。接着層の厚みが5μm以上であれば、層間剥離強度の向上させることができる。また接着層が厚すぎると、底材の総厚みが厚くなってしまうほか、製造コストも嵩むため上限は25μm以下であることが望ましい。
【0023】
底材の中間層は、上記PA層及びhtEVOH層、場合によりPP層又はPE層と、接着層とをそれぞれ少なくとも1層有すれば、その積層の順序や層数は特に限定されない。例えば、PA層とhtEVOH層とPP層又はPE層をそれぞれ1層ずつ外層側からこの順序で、あるいはその逆の順序で有していてもよい。またPA層同士若しくはhtEVOH層同士を連続して、又はPA層とhtEVOH層を交互に2層以上積層した後、さらにPP層又はPE層を積層してもよい。さらにPA層とhtEVOH層との間やPP層又はPE層とhtEVOH層又はPA層との間に1層以上の接着層を設けることもできる。PP層又はPE層は中間層において後述する内層(イージーピール層)側に配置することが好ましい。
【0024】
<内層>
底材の内層は、凝集破壊性を有するイージーピール層により構成される。ここで、凝集破壊性を有するとは、深絞り包装体を開封する際に、イージーピール層自身が破壊されて剥離し、破壊後のイージーピール層がイージーピール層の上層側(底材側)及び下層側(蓋材側)の双方に残ることをいう。イージーピール層を構成する樹脂は、蓋材の外層を構成するCPP層をヒートシール可能であり、120℃程度の高温殺菌処理に耐え、かつイージーピール強度を1.96N/15mm幅(200gf/15mm幅)以上11.8N/15mm幅(1200gf/15mm幅)であり、かつ底材の外層、中間層及び内層の層間剥離強度より小さい値をとるものであれば特に限定されない。
【0025】
イージーピール層は、例えば、種類の異なる次の樹脂A及び樹脂Bより構成することができる。すなわち、樹脂Aとしては、主成分がビカット軟化点90℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、融点100℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)及びこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。特に樹脂Aとしては、融点100℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を好適に用いることができる。一方、樹脂Bとしては、ポリプロピレン(PP)又はポリブチレン(PB)を用いることができる。樹脂BのPPは、ランダムコポリマー、ホモポリマー、ブロックコポリマー等のいずれも使用でき、中でもランダムコポリマーを好適に用いることができる。
【0026】
樹脂Aと樹脂Bの含有率は、シール性及び開封性の観点から、イージーピール層全体の質量に対して樹脂Aを40質量%以上、好ましくは50質量%以上とすることが望ましく樹脂Aの上限を80質量%以下、好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下とすることが望ましい。一方、樹脂Bはイージーピール層全体の質量に対して20質量%以上、好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上とし、上限を60質量%以下、好ましくは50質量%以下とすることが望ましい。樹脂Aの含有率を40質量%以上(すなわち、樹脂Bの含有率を60質量%以下)とすることにより、良好なヒートシール性を維持することができる。一方、樹脂Aの含有率を80質量%以下(すなわち、樹脂Bの含有率を20質量%以上)とすることにより、適度なイージーピール強度が得られ、良好な開封性が得られる。
【0027】
イージーピール層のイージーピール強度は、上述のように1.96N/15mm幅(200gf/15mm幅)以上11.8N/15mm幅(1200gf/15mm幅)以下の範囲であり、かつ前記底材の外層、中間層及び内層の層間剥離強度より小さい数値である。好ましくは下限が2.94N/15mm幅以上、より好ましくは3.92N/15mm幅以上、さらに好ましくは4N/15mm幅以上である。一方、イージーピール強度の上限は、好ましくは9.8N/15mm幅以下、さらに好ましくは7.84N/15mm幅以下である。イージーピール強度が1.96N/15mm幅(200gf/15mm幅)以上あれば、高温殺菌処理時に破袋してしまう危険性もなく、また11.8N/15mm幅(1200gf/15mm幅)以下であれば、包装体の良好な開封性を維持できる。
【0028】
上記イージーピール層の厚みは、製膜性及び剥離時の外観性の点から3μm以上、好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、上限は15μm以下、好ましくは12μm以下、さらに好ましくは10μm以下とすることが望ましい。イージーピール層の厚みを3μm以上とすることにより、安定した製膜性が得られる。一方、イージーピール層の厚みを15μm以下とすることにより、包装体の開封時に毛羽立ちや膜残りの発生を抑えることができ、かつ良好な剥離外観が得られる。
【0029】
上記底材を構成する積層フィルムの総厚みは、開封性を考慮して300μm以下、好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下とし、下限は70μm以上、好ましくは80μm以上、さらに好ましくは90μm以上とすることが望ましい。積層フィルムの総厚みが300μm以下であれば、良好な成形性を維持できると共に、成形加熱工程の加熱時間が比較的短くて済み、かつ易開封性を維持できる。
【0030】
底材を構成する積層フィルムの外層、中間層及び内層の厚み比は、深絞り包装体を形成した場合にフランジ部のカールを抑える観点から、外層/中間層/内層=3〜7/2〜6/3〜7であることが好ましく、3.5〜6.5/2.5〜5.5/3.5〜6.5であることがより好ましく、4〜6/3〜5/4〜6であることがさらに好ましい。また、接着層を設ける場合には、外層:中間層:内層:接着層=2〜6/2〜6/2〜6/0.1〜3であり、2.5〜5.5:2.5〜5.5:2.5〜5.5/0.2〜2であることが好ましく、3〜5/3〜5/3〜5/0.3〜1.5であることがさらに好ましい。
【0031】
[蓋材]
本発明において、蓋材は、少なくとも1層の無延伸ポリプロピレン樹脂(CPP)層からなる外層と、少なくとも1層の二軸延伸ポリアミド樹脂層からなる中間層と、少なくとも1層のヒートシール樹脂層からなる内層とにより構成される積層フィルムで形成される。
【0032】
<外層(CPP層)>
蓋材の外層は、底材と同様、少なくとも1層のCPP層で構成される。CPP層で用いられるPPとしては、底材で記載したPPホモポリマーやエチレン等とのPPランダムコポリマーを用いることができる。蓋材を構成する積層フィルムの腰を強くする観点からは、PPホモポリマーを用いることが好ましい。特に、ヒートシール時は蓋材の外層より接触加熱されるため、蓋材の外層が熱板に取られないようにするためには、融点155℃以上、好ましくは158℃以上、さらに好ましくは160℃以上であり、上限が170℃以下、好ましくは165℃以下のPPホモポリマーを用いることが好ましい。
【0033】
CPP層の厚みは、底材の外層と同様、外層と中間層との間に印刷層を設ける場合には50μm以上、印刷層を設けない場合には30μm以上とすることが好ましい。外層と中間層の間に印刷層を設ける場合、CPP層の厚みを50μm以上とすることにより、良好な印刷ピッチを維持できる。また、外層と中間層の間に印刷層を設けない場合には、CPP層の厚みを30μm以上とすることにより、高温処理後に包装体のフランジ部が大きくカールすることもない。またCPP層の厚みの上限は特に限定されないが、積層フィルム総厚が厚くなりすぎてヒートシール性が低下しないようにする観点からは、150μm以下、好ましくは120μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。CCP層は蓋材の外層において少なくとも1層形成されていればよく、必要に応じて2層以上形成することもできる。
【0034】
<中間層(二軸延伸ポリアミド樹脂層)>
蓋材の中間層は、少なくとも1層の二軸延伸ポリアミド樹脂層で構成される。二軸延伸ポリアミド樹脂層とは、フィルム状又はシート状に成形されたポリアミド樹脂(PA)を二軸方向に延伸して得られたフィルムからなる層をいう。二軸延伸ポリアミド樹脂層で用いられるPAは、上述の底材で用いたPAを用いることができる。延伸倍率は、基本的に延伸効果が現れる倍率であれば特に限定されないが、通常、流れ方向を横方向とした場合、延伸温度50℃以上150℃以下で縦方向2.5倍以上、横方向3.0倍以上、好ましくは縦方向が2.7倍以上3.2倍以下、横方向が3.3倍以上4.0倍以下である。
【0035】
PA層を構成するPAとしては、市販の6ナイロン/MXD6ナイロン/6ナイロンの構成、又は6ナイロン/EVOH/6ナイロンの層構成を有するバリアナイロンも好適に用いることができる。
【0036】
蓋材における二軸延伸ポリアミド樹脂層(中間層)の厚みは、10μm以上、好ましくは12μm以上、さらに好ましくは15μm以上とし、上限を40μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下とすることが望ましい。中間層の厚みの下限を10μm以上とすることにより良好な耐ピンホール性が得られ、また上限を40μm以下とすることによりフィルムのカット性と熱成形性を良好に維持することができる。二軸延伸ポリアミド樹脂層は、蓋材の中間層において少なくとも1層形成されていればよく、必要に応じて2層以上形成することもできる。
【0037】
<内層(ヒートシール樹脂層)>
蓋材の内層はヒートシール樹脂層で構成されている。ヒートシール樹脂層は、熱可塑性樹脂を主成分として含有してなるヒートシール可能な樹脂層であれば特に限定されず、延伸又は未延伸フィルムで構成されていてもよい。ヒートシール樹脂として使用可能な熱可塑性樹脂は、蓋材の被着体である底材のイージーピール層(内層)の材質を考慮して適切なヒートシール強度となるように任意に選択できる。例えば、ヒートシール樹脂としてエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、エステル系樹脂との接着性を有するエチレン系樹脂、スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂との接着性を有するエチレン系樹脂等が挙げられる。
【0038】
前記エチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;さらにはエチレン−アクリル酸共重合体の金属中和物、エチレン−メタクリル酸共重合体の金属中和物等が挙げられる。該エチレン−メタクリル酸共重合体の金属中和物としては、例えば、そのカルボキシル基のうちの少なくとも10モル%、好ましくは10〜60モル%がナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで中和されているものが挙げられる。
【0039】
前記プロピレン系樹脂としては、高温殺菌処理時の耐熱性、透明性及び低温シール性を考慮すると、融点が120℃以上、好ましくは125℃以上であり、上限は145℃以下、好ましくは140℃以下、さらに好ましくは135℃以下のランダムコポリマー、又はメタロセン系の触媒を使用して重合反応を行ったポリプロピレン樹脂を好適に用いることができる。ポリプロピレン樹脂の融点の下限が120℃以上であれば、高温殺菌時の耐熱性が十分であり、また融点の上限が145℃以下であれば、シール温度を低く設定できるため、ヒートシール時における底材外層の熱板取られを防止できる。
【0040】
その他のプロピレン系樹脂としては、安価で、成形加工性、シール適性等に優れる観点から、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等が挙げられ、中でもプロピレン−エチレン共重合体、例えばエチレン由来成分含有率2〜10質量%のプロピレン−エチレン共重合体が好ましい。これら共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれもが使用できるが、ランダム共重合体が好ましい。
【0041】
また、前記スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレンの他、スチレンモノマーに対して少量のゴム分や他のビニル系単量体が共重合されているスチレン系共重合体等が挙げられる。他のビニル系単量体としては、例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のスチレン系モノマーや、アクリルニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。また、ゴム分の使用割合は通常0.1〜20質量%、他のビニル系単量体の使用割合は通常0.1〜30質量%である。スチレン系樹脂として好ましいものとしては、ポリスチレンや、ジエン系ゴムとスチレンの共重合体であるハイインパクトポリスチレン(HIPS)が挙げられる。
【0042】
蓋材の内層(ヒートシール樹脂層)の厚みは、適度なヒートシール性が得られれば特に限定されない。ヒートシール強度を考慮すれば、内層厚みは20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらに好ましい。また、内層が厚すぎると、積層フィルムの総厚みが厚くなり、ヒートシール性が悪くなってしまう場合があるため、上限は150μm以下、好ましくは120μm以下、さらに好ましくは100μm以下が望ましい。
【0043】
蓋材の外層において、ヒートシール層は少なくとも1層形成されていればよく、必要に応じて2層以上形成することもできる。
【0044】
蓋材の総厚みは、ヒートシール性を考慮して200μm以下、好ましくは150μm以下、さらに好ましくは120μm以下とし、下限を50μm以上、好ましくは70μm以上、さらに好ましくは80μm以上とすることが望ましい。蓋材の総厚みが200μm以下であれば、良好なヒートシール性を維持でき、またシール時間が比較的短くて済むため、良好な包装能力を維持できる。
【0045】
蓋材を構成する積層フィルムの外層、中間層及び内層の厚み比は、深絞り包装体を形成した場合にフランジ部のカールを抑える観点から、外層/中間層/内層=3〜10/1〜4/3〜10であることが好ましく、3.5〜8:1.2〜3:3.5〜8であることがより好ましく、4〜7/1.5〜2.5/4〜7であることがさらに好ましい。また、接着層を設ける場合には、外層/中間層/内層/接着層=3〜10/1〜4/3〜10/0.1〜1.5であり、3.5〜8/1.2〜3/3.5〜8/0.2〜1であることが好ましく、4〜7/1.5〜2.5/4〜7/0.3〜0.7であることがさらに好ましい。
【0046】
<印刷層>
本発明において、底材及び蓋材を構成する積層フィルムは、必要に応じて外層と中間層の間に印刷層を設けることができる。印刷層の厚みは特に限定はなく、0.5μm以上10μm以下、好ましくは1μm以上5μm以下の範囲で形成することができる。印刷層は、絵柄、文字等を表す層には限定されず、メジウム又は樹脂のみ(ビヒクル)よりなる無色透明の層であってもよい。また、メジウム又は樹脂のみ(ビヒクル)よりなる無色透明の層と、絵柄、文字等を表す層の二層よりなる層とすることもでき、必要に応じて帯電防止や紫外線吸収、紫外線遮蔽などの機能を有する層を有していてもよい。
【0047】
印刷層の形成は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等、公知の方法で行うことができるが、速乾性のある揮発乾燥型のインキを使用でき、巻取式輪転印刷機で高速印刷ができるなどの観点から、グラビア印刷により形成するのが好ましい。好ましい印刷法を例示すると、底材及び蓋材の内層及び中間層を共押出法でそれぞれ作製した後に、予め作製しておいた外層上にグラビア印刷により印刷し、次いでドライラミネート法により印刷層と中間層とが対向するようにラミネートすることにより(裏印刷)、印刷層を有する積層フィルムを作製することができ、外観に優れた底材又は蓋材が得られる。
【0048】
本発明において、底材及び蓋材の各層には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0049】
本発明の深絞り包装体は、高温殺菌処理した場合においてもフィルムが白化せず、かつ層間剥離(デラミネーション)を防止することができる。すなわち、本発明の深絞り包装体を100℃以上125℃以下、5分以上120分以下の条件下で殺菌処理し、3日間静置した後のJIS K7105に準拠して測定されたヒートシールされた部分(フランジ部)のヘーズ値は、15%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下である。 ヘーズ値が15%以下であれば、高温殺菌処理後の底材及び蓋材を構成する積層フィルムは良好な透明性と優れた外観性が得られ、美麗な印刷等が可能となる。ヘーズ値は、JIS K7105に準拠して測定することができる。なお、深絞り包装体のヒートシールされた部分(フランジ部)とは、深絞り包装体における底材の内層(イージーピール層)と蓋材の内層(ヒートシール樹脂層)とが接触する部分であって、シートシール(加熱処理)により密封される部分をいう。
【0050】
また、底材及び/又は蓋材を構成する積層フィルムは、100℃以上125℃以下、5分以上120分以下の条件下で殺菌処理した後の層間剥離強度が0.98N/15mm幅以上、好ましくは4.9N/15mm幅以上、さらに好ましくは9.8N/15mm幅以上である。上記条件下で処理した後における積層フィルムの層間剥離強度の上限は特に制限されないが、68.6N/15mm幅以下、好ましくは49N/15mm幅以下であることが望ましい。上記条件下で処理した後の積層フィルムの層間剥離強度が0.98N/15mm幅以上あれば、高温殺菌処理時に積層フィルムの剥離を抑えることができ、かつ剥離に起因するフィルムの白化も抑えることができる。層間剥離強度は、100℃以上125℃以下、5分以上120分以下の条件下で深絞り包装体を殺菌処理した後に切断した15mm幅の積層フィルムを常温で引張試験機により200mm/分の引張速度で180°方向に剥離したときの最大荷重を測定することにより求めることができる。
【0051】
[深絞り包装体の製造方法]
本発明の包装体を形成する底材及び蓋材の積層フィルムは、公知の方法を用いて作製することができる。例えば、押出ラミネーション法、共押出インフレーション法及び共押出Tダイ法等を用いることができ、特に底材の作製では押出ラミネーション法と共押出Tダイ法を組み合わせた方法を用い、蓋材の作製では押出ラミネーション法を用いることが好ましい。
【0052】
本発明の深絞り包装体は、深絞り包装機を用いて所望の大きさ及び形状に成形することができる。例えば、深絞り成形型で所望の形状及び大きさに成形した後(フィルム供給工程及びフィルム成形工程)、その中にスライスハム等の内容物を充填し(内容物充填工程)、さらにその上から蓋材フィルムでシールして(蓋材フィルム供給工程及びシール工程)、真空包装し(真空包装工程)、冷却し(冷却工程)、カットすることにより(切断工程)、深絞り包装体を作製することができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の深絞り包装体の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
[評価方法]
(1)フランジ部のカール評価
高温殺菌処理後、図2に示すように包装体10の底材20を上向きにして置いた場合における包装体10のヒートシールされた部分(フランジ部50)におけるカール60の有無を評価した。カールが3mm未満であるものを◎、カールが3mm以上5mm未満であるものを○、カールが5mm以上であるものを×として評価した。
(2)蓋材の熱板取られ
深絞り包装機でヒートシールを行う際に蓋材の外層(熱板に接触する面)がシール熱によって熱板に取られず(密着せず)、透明性及び光沢がいずれも良好なものを◎、透明性又は光沢性のいずれかがやや劣るものを○、熱板に取られて透明性及び光沢が悪くなるものを×として評価した。
(3)印刷性
底材及び蓋材の外層上にグラビア印刷した深絞り包装体の高温殺菌処理後の印刷性を評価した。ズレがなく印刷対象物をはっきりと視認できるものを◎、わずかなズレがあるが印刷対象物を視認できるものを○、ズレがあり印刷対象物が視認し難いものを×として評価した。
(4)層間剥離強度
120℃、30分の条件下で深絞り包装体を殺菌処理した後、底材を構成する積層フィルムを15mm幅に切断し、該フィルムを常温で引張試験機により200mm/分の引張速度で180°方向に剥離したときの最大荷重を測定した。4.9N/15mm幅以上のものを◎、0.98N/15mm幅以上4.9N/15mm幅未満のものを○、0.98N/15mm幅未満のものを×として評価した。
(5)ヘーズ値
120℃、30分の条件下で殺菌処理し、3日間静置した後の、150μmの底材と105μmの蓋材とを使用して作製した深絞り包装体のフランジ部(ヒートシール部)のヘーズ値をJIS K7105に準拠して測定した。ヘーズ値が10%以下のものを◎、10%より大きく15%以下のものを○、15%を超えるものを×として評価した。
【0055】
[実施例1]
<底材及び蓋材積層フィルムの作製>
共押出法及びドライラミネーション法により下記層構成を有する積層フィルムからなる底材及び蓋材の積層フィルムを作製した。底材は、中間層及び下層からなる共押出積層フィルム側に印刷した後、外層をドライラミネートして作製した。
なお、実施例及び比較例中の「/」は共押出法、「//」はドライラミネート法でそれぞれ作製したことを示す。
【0056】
(底材)
CPP(70μm)+印刷層(1μm)//Ny(30μm)/htEVOH(20μm)/ADPP(15μm)/EP1(15μm)
CPP:東セロ製トーセロCPレトルト用グレード
Ny:三菱エンジニアリングプラスチック製ノバミッド6Ny
htEVOH:日本合成化学製ソアノール
ADPP:三井化学製アドマー
EP1:ランダムコポリマーPP(50%)とLDPE(50%)との混合物
印刷層:サカタインクス製ラミオール
(蓋材)
ホモポリマーCPP(50μm)+印刷層(1μm)//スーパーニール(15μm)//ランダムコポリマーCPP(50μm)
ホモポリマーCPP:東セロ製トーセロCPレトルト用グレード
スーパーニール:三菱樹脂製6Ny/MXD6Ny/6Ny二軸延伸フィルム
ランダムコポリマーCPP:東セロ製トーセロCP
【0057】
<深絞り包装体の作製及び評価>
深絞り包装機(大森機械工業社製FV6300)を用いて上記底材及び蓋材の積層フィルムを用いてハンバーグを真空包装し、120℃×30分高温殺菌処理を行った後の包装体のフランジ部カールと熱取られを評価した。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例2]
底材における中間層のhtEVOH層の厚み、中間層の層構成及び内層を下記のように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、下記の底材及び蓋材の積層フィルムを作製し、深絞り包装機を用いて包装体を作製した後、高温殺菌処理を行い、フランジ部カール、底材印刷性及び熱板取られを評価した。結果を表1に示す。
(底材)
CPP(70μm)+印刷層(1μm)//htEVOH(25μm)/Ny(30μm)/ADPP(15μm)/EP2(10μm)
EP2:ランダムコポリマーPP(50%)と酢酸ビニル含量5%のEVA(50%)との混合物
(蓋材)
ホモポリマーCPP(50μm)+印刷層(1μm)//スーパーニール(15μm)//ランダムコポリマーCPP(50μm)
【0059】
[実施例3]
底材の外層の厚みと層構成、中間層のhtEVOH層の厚みと層構成、内層の厚みを下記のように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、下記の底材及び蓋材の積層フィルムを作製し、深絞り包装機を用いて包装体を作製した後、高温殺菌処理を行い、フランジ部カール、底材印刷性及び熱板取られを評価した。結果を表1に示す。
(底材)
CPP(50μm)//htEVOH(15μm)/Ny(30μm)/ADPP(10μm)/PP(40μm)/EP2(5μm)
PP:日本ポリプロ製ノバテックPP
(蓋材)
ホモポリマーCPP(50μm)+印刷層(1μm)//スーパーニール(15μm)//ランダムコポリマーCPP(50μm)
【0060】
[実施例4]
底材の外層の厚み、中間層のPP層の厚み及び内層を下記のように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、下記の底材及び蓋材の積層フィルムを作製し、深絞り包装機を用いて包装体を作製した後、高温殺菌処理を行い、フランジ部カール、底材印刷性及び熱板取られを評価した。結果を表1に示す。
(底材)
CPP(20μm)+印刷層(1μm)//htEVOH(15μm)/Ny(30μm)/ADPP(10μm)/PP(65μm)/EP1(10μm)
(蓋材)
ホモポリマーCPP(50μm)+印刷層(1μm)//スーパーニール(15μm)//ランダムコポリマーCPP(50μm)
【0061】
[実施例5]
蓋材の内層及び外層の厚みを下記のように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、下記の底材及び蓋材の積層フィルムを作製し、深絞り包装機を用いて包装体を作製した後、高温殺菌処理を行い、フランジ部カール、底材印刷性及び熱板取られ評価をした。結果を表1に示す。
(底材)
CPP(50μm)+印刷層(1μm)//Ny(30μm)/htEVOH(15μm)/ADPP(10μm)/PP(35μm)/EP1(10μm)
(蓋材)
ホモポリマーCPP(20μm)+印刷層(1μm)//スーパーニール(15μm)//ランダムコポリマーCPP(80μm)
【0062】
[実施例6]
蓋材の内層の組成を下記のように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、下記の底材及び蓋材の積層フィルムを作製し、深絞り包装機を用いて包装体を作製した後、高温殺菌処理を行い、フランジ部カール、底材印刷性及び熱板取られ評価をした。結果を表1に示す。
(底材)
CPP(50μm)+印刷層(1μm)//Ny(30μm)/htEVOH(20μm)/ADPP(5μm)/EP1(10μm)
(蓋材)
ホモポリマーCPP(50μm)+印刷層(1μm)//スーパーニール(15μm)//ホモポリマーCPP(50μm)
【0063】
[実施例7]
底材の内層の厚みを下記のように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、下記の底材及び蓋材の積層フィルムを作製し、深絞り包装機を用いて包装体を作製した後、高温殺菌処理を行い、フランジ部カール、底材印刷性及び熱板取られ評価をした。結果を表1に示す。
(底材)
CPP(50μm)+印刷層(1μm)//EVOH(15μm)/Ny(30μm)/ADPP(10μm)/PP(15μm)/EP1(30μm)
(蓋材)
ホモポリマーCPP(50μm)+印刷層(1μm)//スーパーニール(15μm)//ランダムコポリマーCPP(50μm)
【0064】
[比較例1]
底材の外層としてCPP層を設けず、Ny層とEVOH層の間に接着層を設け、かつ全層を共押出法により作製した以外は、実施例1と同様の方法により、下記の底材及び蓋材の積層フィルムを作製し、深絞り包装機を用いて包装体を作製した後、高温殺菌処理を行い、フランジ部カール、底材印刷性及び熱板取られを評価した。結果を表1に示す。
(底材)
Ny(20μm)/ADPP(10μm)/EVOH(50μm)/ADPP(10μm)/PP(35μm)/EP1(10μm)
(蓋材)
ホモポリマーCPP(50μm)+印刷層(1μm)//スーパーニール(15μm)//ランダムコポリマーCPP(50μm)
【0065】
[比較例2]
蓋材の内層の組成を下記のように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、下記の底材及び蓋材の積層フィルムを作製し、深絞り包装機を用いて包装体を作製した後、高温殺菌処理を行い、フランジ部カール、底材印刷性及び熱板取られ評価をした。結果を表1に示す。
(底材)
CPP(50μm)+印刷層(1μm)//Ny(30μm)/EVOH(20μm)/ADPP(5μm)/EP1(10μm)
EVOH:日本合成化学製ソアノール(38molタイプ)
(蓋材)
ホモポリマーCPP(50μm)+印刷層(1μm)//スーパーニール(15μm)//ランダムコポリマーCPP(50μm)
【0066】
[比較例3]
蓋材の内層の組成を下記のように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、下記の底材及び蓋材の積層フィルムを作製し、深絞り包装機を用いて包装体を作製した後、高温殺菌処理を行い、フランジ部カール、底材印刷性及び熱板取られ評価をした。結果を表1に示す。
(底材)
CPP(50μm)+印刷層(1μm)//Ny(30μm)/htEVOH(20μm)/ADPP(5μm)/EP1(10μm)
(蓋材)
ホモポリマーCPP(50μm)+印刷層(1μm)//スーパーニール(15μm)//OPP(50μm)
OPP:東セロ製トーセロOP
【0067】
【表1】

【0068】
表1より、実施例1〜3は、フランジ部のカールはフラットで、底材の中間印刷も可能であり、深絞り包装体成形時に蓋材熱板取られもなく、かつイージーピールの開封性も良好であり、全体として外観の良好な包装体であった。また、底材又は蓋材の外層の厚みがやや薄くなると、フランジ部のカールと印刷性がやや低下する傾向にある(実施例4及び5)。また、蓋材の内層をホモポリマーCPPとした場合には、ホモポリマーPPの融点が高く、ヒートシール時にシール温度を高くする必要があるため、蓋材外層のCPP層において熱板取られがみられ、透明性・光沢がやや低下した(実施例6)。また、底材のイージーピール層の厚みが厚くなると、剥離面に毛羽立ちや膜残りが見られ、開封性がやや低下した(実施例7)。
これに対し、比較例1の包装体は、底材の外層にCPP層を持たず、かつ積層フィルムを共押出法で作製しているため、外層及び中間層間の印刷が不可能であり、また、底材の外層がナイロン樹脂であるため、フランジ部が底材側に大きくカールし、見栄えが悪かった。また、比較例2の包装体は、底材の中間層で一般に使用されるEVOHを使用したため、高温殺菌処理後に包装体が白化し、また蓋材と底材のヒートシールが不十分であり、層間剥離が生じた。さらに比較例3の包装体は、蓋材の内層として延伸したポリプロピレン系樹脂を使用したため、イージーピール性が悪かった。
これより本発明の構成を有する深絞り包装体であれば、フランジ部がカールすることなく、蓋材の熱版取られもなく、かつ底材の印刷性及びイージーピール性が良好であり、さらに高温殺菌処理後においても白化せず、かつ層間剥離を起こさないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の包装体は、高温で処理してもフランジ部がカールせず、蓋材が熱板にとられることもなく、中間印刷が可能であり、かつ開封性が良好な高温殺菌処理用深絞り包装体として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】接合前の包装体を示す説明図である。
【図2】接合後の包装体を示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
10 包装体本体
20 底材
30 蓋材
40 内容物
50 フランジ部
60 カール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底材及び蓋材が、少なくとも外層、中間層及び内層で構成される積層フィルムによりそれぞれ形成されている深絞り包装体であって、
前記底材は、少なくとも1層の無延伸ポリプロピレン樹脂層からなる外層と、少なくとも1層のポリアミド樹脂層及び少なくとも1層の耐熱性エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂(htEVOH)層を有する中間層と、少なくとも1層の凝集破壊性を有するイージーピール層からなる内層とで構成された積層フィルムにより形成され、
前記蓋材は、少なくとも1層の無延伸ポリプロピレン樹脂層からなる外層と、少なくとも1層の二軸延伸ポリアミド樹脂層からなる中間層と、少なくとも1層のヒートシール樹脂層からなる内層とで構成された積層フィルムにより形成されていることを特徴とする高温殺菌処理用深絞り包装体。
【請求項2】
前記底材の中間層が少なくとも1層のポリエチレン樹脂層又はポリプロピレン樹脂層をさらに有する請求項1に記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
【請求項3】
前記底材及び/又は蓋材の無延伸ポリプロピレン樹脂層を構成するポリプロピレン樹脂がポリプロピレンホモポリマーである請求項1又は2に記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
【請求項4】
前記ヒートシール樹脂が融点120℃以上145℃以下のポリプロピレン樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
【請求項5】
前記イージーピール層のイージーピール強度が25℃で1.96N/15mm幅以上11.8N/15mm幅以下であり、かつ前記底材の外層、中間層及び内層の層間剥離強度より小さい請求項1〜4のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
【請求項6】
前記底材の中間層が少なくとも1層の接着層をさらに有する請求項1〜5のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
【請求項7】
前記底材の外層又は前記蓋材の外層の厚みが30μm以上100μm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
【請求項8】
前記htEVOH層の厚みが5μm以上30μm以下である請求項1〜7のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
【請求項9】
100℃以上125℃以下、5分以上120分以下の条件下で殺菌処理し、3日間静置した後のJIS K7105に準拠して測定されるヒートシールされた部分のヘーズ値が15%以下である請求項1〜8のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
【請求項10】
100℃以上125℃以下、5分以上120分以下の条件下で殺菌処理した後の前記底材及び/又は蓋材を構成する積層フィルムの層間剥離強度が0.98N/15mm幅以上である請求項1〜8のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。
【請求項11】
前記底材の外層と中間層及び/又は蓋材の外層と中間層との間に印刷層をさらに有する請求項1〜10のいずれかに記載の高温殺菌処理用深絞り包装体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−111305(P2006−111305A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300194(P2004−300194)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】