説明

高温発生装置

【課題】無駄なエネルギ消費することなく、高温を発生する装置を提供する。
【解決手段】温度勾配が生じると熱音響エネルギを発生するエネルギ発生部10と、エネルギ発生部10で生じた熱音響エネルギを伝達するエネルギ伝達部30と、熱音響エネルギが伝搬すると、伝搬側が高温で、伝搬方向下流に行くにしたがって低温になる温度勾配を生ずる温度勾配発生部20とを有し、エネルギ発生部10の高温部分12及び/又は温度勾配発生部20の低温部分22を加熱することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高温を発生する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化触媒を活性化するために、排気浄化触媒を昇温する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−23856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前述した従来技術では、排気浄化触媒を昇温させるために燃料噴射量を増量する。そのため燃費が悪化し無駄にエネルギを消費することとなる。
【0004】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、無駄なエネルギ消費することなく、高温を発生する装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために本発明の実施形態に対応する符号を付するが、これに限定されるものではない。
【0006】
本発明は、温度勾配が生じると熱音響エネルギを発生するエネルギ発生部(10)と、前記エネルギ発生部(10)で生じた熱音響エネルギを伝達するエネルギ伝達部(30)と、前記熱音響エネルギが伝搬すると、伝搬側が高温で、伝搬方向下流に行くにしたがって低温になる温度勾配を生ずる温度勾配発生部(20)とを有し、前記エネルギ発生部(10)の高温部分(12)及び/又は前記温度勾配発生部(20)の低温部分(22)を加熱することを特徴とする。
【0007】
また前記温度勾配発生部(20)の低温部分(22)の温度が、前記エネルギ発生部(10)の高温部分(12)の温度と同等になるように加熱する等温化部(40)を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エネルギ発生部の高温部分及び/又は温度勾配発生部の低温部分を加熱するので、温度勾配発生部は、低温部分の温度を維持したまま温度勾配が生じて、熱音響エネルギ伝搬方向上流端部分が高温になる。また温度勾配発生部の低温部分の温度が、エネルギ発生部の高温部分の温度と同等になるように加熱すれば、温度勾配発生部の熱音響エネルギ伝搬方向上流端部分を非常に高い温度にすることができる。したがって廃熱を利用して温度勾配発生部の熱音響エネルギ伝搬側を高温にすることができる。このようにすれば、燃費を悪化させることなく排気浄化触媒を高温化したり、燃料から改質ガス(例えば水素ガス)を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下では図面等を参照して本発明を実施するための最良の形態についてさらに詳しく説明する。
【0010】
(第1実施形態)
本発明のポイントは、多数の平行通路を有する一対のスタックを使用して高温を得ようとする点である。そしてこの高温を得るために機関等から捨てられる廃熱を利用する。そこでまず初めに発明の理解を容易にするために、本発明によって高温を得られる理由について説明する。
【0011】
図1に示すように、流路半径rの多数の平行通路を有し、熱拡散係数αの流体(気体)が存在するスタックの前後に温度差(TH1>TC1)をつけて温度勾配を生じさせた場合には、スタックに自励的な発振が生じ、高温側から音響インテンシティIの進行波が生じることが知られている。
【0012】
その反対に、図2に示すように、流路半径rの多数の平行通路を有し、熱拡散係数αの流体(気体)が存在するスタックに音響インテンシティIの進行波が伝搬した場合に、流路半径rが熱境界層δに対して十分小さいとき(逆に言えば、熱境界層δが流路半径rに対して十分大きいとき)には、スタックに断熱変化が生じ、進行波と逆方向に熱の移動がおきて、スタックに温度勾配(TH2>TC2)が生じ、伝搬側が高温TH2になって反対側が低温TC2になることが知られている。すなわち、スタックに熱音響エネルギを伝搬すると、その熱音響エネルギはスタックの下流に行くにしたがって減衰するが、このときスタックには、伝搬側が高温で、スタックの下流に行くにしたがって低温となる温度勾配が生じる。このようにスタックは、伝搬してきた熱音響エネルギをスタックの温度に変換する、すなわち、熱音響エネルギをスタックで回収し熱エネルギに変換するのである。
【0013】
本発明は、このような特性を利用して高温を得ようとするものである。
【0014】
次に以上の特性を利用する高温発生装置について図3を参照しながら説明する。本実施形態では、発生した高温を利用して燃料を改質して、例えば水素ガスを生成する。図3は、本発明による高温発生装置の第1実施形態を説明する図である。
【0015】
高温発生装置1は、エネルギ発生部10と、温度勾配発生部20とを備え、それらをループ管30で連結する。
【0016】
エネルギ発生部10は、第1スタック11と、高温側熱交換器12と、低温側熱交換器13とを有する。
【0017】
第1スタック11は、多数の平行通路を有するハニカム体である。上述の通り、第1スタック11の前後に温度差(T2>T1)をつけて温度勾配を生じさせると、第1スタック11に自励的な発振が生じ、高温側から音響インテンシティIの進行波が生じる。
【0018】
高温側熱交換器12は、第1スタック11の一端に設けられる。高温側熱交換器12は、排ガス循環通路40を介して内燃機関60の排気管61に連通する。高温側熱交換器12は、排ガスの熱を第1スタック11に伝導する。高温側熱交換器12は、その排ガスの熱で第1スタック11の端部を高温(T2)にする。
【0019】
低温側熱交換器13は、高温側熱交換器12と反対側の第1スタック11に設けられる。低温側熱交換器13には、内燃機関60の冷却水が送通され、冷却水の冷熱を第1スタック11に伝導する。低温側熱交換器13は、その冷却水の冷熱で第1スタック11の端部を低温(T1)にする。
【0020】
温度勾配発生部20は、第2スタック21と、温度維持器22と、高温伝導体23とを有する。
【0021】
第2スタック21は、多数の平行通路を有するハニカム体である。上述の通り、流路半径rが熱境界層δに対して十分小さい状態(逆に言えば、熱境界層δが流路半径rに対して十分大きい状態)で、音響インテンシティIの進行波が伝搬すると、スタックには断熱変化が生じ、進行波と逆方向に熱の移動が生じ、温度勾配が発生する。すなわち、スタックに熱音響エネルギを伝搬すると、その熱音響エネルギは伝搬方向下流に行くにしたがって減衰する。またスタックに、伝搬側が高温で、伝搬方向下流に行くにしたがって低温となる温度勾配が生じる。このようにスタックは、伝搬してきた熱音響エネルギをスタックの温度に変換する、すなわち、熱音響エネルギをスタックで回収し熱エネルギに変換する。このとき、下流端部分の温度を所定温度に維持しておけば、その温度が維持されたまま温度勾配を生じるので、上流端部分は高温になる。本実施形態ではこの高温を利用して燃料を改質して、例えば水素ガスを生成する。
【0022】
温度維持器22は、第2スタック21の、熱音響エネルギ伝搬方向下流端部分に設けられる。温度維持器22は、排ガス循環通路40を介して高温側熱交換器12や、内燃機関60の排気管61に連通する。温度維持器22は、排ガスの熱を第2スタック21に伝導する。温度維持器22は、その排ガスの熱で第2スタック21の端部を所定温度(T2)に維持する。
【0023】
高温伝導体23は、第2スタック21の、熱音響エネルギ伝搬方向上流端部分に設けられ、第2スタック21で発生した熱を高温使用部51に伝導する。なお本実施形態では、高温使用部として、燃料を改質するための改質用触媒51を用いる。
【0024】
ループ管30は、エネルギ発生部10及び温度勾配発生部20を連結する。ループ管30は、エネルギ発生部10で発生した熱音響エネルギを温度勾配発生部20に伝達する。すなわち、エネルギ発生部10で発生した熱音響エネルギを温度勾配発生部20に伝達するエネルギ伝達部である。またループ管30は、温度勾配発生部20で減衰しきらなかった余剰の熱音響エネルギを、再びエネルギ発生部10へ伝搬する。ループ管30の内部には、プラントル数の小さな気体(例えばヘリウム)を充填しておくことが望ましい。プラントル数の小さな気体が充填されているほど大きな熱音響エネルギを得られ、小形化しても大きな熱音響エネルギが得られるからである。またループ管30の内部の圧力を大気圧よりも高圧にしておくことが望ましい。高圧ほど大きな熱音響エネルギを得られるからである。
【0025】
またループ管30でエネルギ発生部10及び温度勾配発生部20を連結することで、温度勾配発生部20で減衰しきらなかった余剰の熱音響エネルギを、再びエネルギ発生部10へ伝搬することができ、エネルギの損失を低く抑えることができる。
【0026】
さらにループ管30を、自動車の車体を構成する部材で形成すれば、搭載スペースを要しない。
【0027】
改質用触媒51は、燃料噴射弁52から噴射された燃料(例えばエタノール、メタノール、ガソリン、軽油、メタン、プロパン、ブタンなど)に改質熱を与えて改質ガス(例えば水素ガス)を生成する。
【0028】
通常、内燃機関の熱効率は30〜40%であり、その残りの多くは廃熱として捨てられる。しかし、その熱は温度として十分高いわけではなく、また集まった形ではないため、通常は大気中に捨てられてしまう。
【0029】
本実施形態によれば、内燃機関から排出される排ガスの熱(廃熱)を利用してエネルギ発生部10から熱音響エネルギを発生させるとともに、その熱音響エネルギによって温度勾配発生部20から高熱を発生させる。このように従来大気に捨てていた廃熱を利用するようにしたので、高い熱効率を得ることができるのである。
【0030】
(第2実施形態)
図4は、本発明による高温発生装置の第2実施形態を説明する図である。
【0031】
第1実施形態では、内燃機関から排出される排ガスの熱を利用していたが、燃料電池の発電時の廃熱を利用してもよい。
【0032】
廃熱の温度は、固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell;PEFC)であれば80℃前後であるが、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell;SOFC)であれば800℃以上と高温なる。したがって、廃熱を効果的に回収することで、非常に高効率かつクリーンなエネルギ源とすることができる。
【0033】
本実施形態によっても、燃料電池から排出される廃熱を利用してエネルギ発生部10から熱音響エネルギを発生させるとともに、その熱音響エネルギによって温度勾配発生部20から高熱を発生させる。このように従来大気に捨てていた廃熱を利用するようにしたので、高い熱効率を得ることができるのである。
【0034】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明と均等であることは明白である。
【0035】
上記説明おいては、高温使用部として燃料を改質するための改質用触媒を使用する場合を例示して説明したが、例えばディーゼル機関の排気通路に設けられ、粒子状物質(Particulate Matter)を捕捉するディーゼルパーティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter)の再生制御に使用してもよい。
【0036】
また上記説明では、希薄燃焼する内燃機関は、排気温度自体が低いので、排気浄化触媒が活性を失う温度まで低下する場合がある。本発明を用いれば、触媒の温度を高く維持することも可能である。
【0037】
さらに上記では、高温側熱交換器12及び温度維持器22が略同等温度になるように、高温側熱交換器12及び温度維持器22を排ガス循環通路(等温化部)40を介して連設していたが、連接することなく高温側熱交換器12及び温度維持器22をそれぞれ加熱しても第2スタック21の高温化という効果が得られる。ただし上述のように排ガス循環通路(等温化部)40を設ければ、温度維持器22の温度が高温側熱交換器12の温度と略同等になり、高温伝導体23を非常に高い温度にすることができ、また廃熱を利用するので、熱効率がよい。
【0038】
さらにまた上記第1実施形態では、等温化部を、排ガスを通流させる排ガス循環通路で構成していたが、高温側熱交換器12及び温度維持器22を連結する熱伝導率の高い材料で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の原理を説明する図である。
【図2】本発明の原理を説明する図である。
【図3】本発明による高温発生装置の第1実施形態を説明する図である。
【図4】本発明による高温発生装置の第2実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0040】
1 高温発生装置
10 エネルギ発生部
11 第1スタック
12 高温側熱交換器(高温部分)
13 低温側熱交換器(低温部分)
20 温度勾配発生部
21 第2スタック
22 温度維持器(低温部分)
23 高温伝導体(高温部分)
30 ループ管(エネルギ伝達部)
40 排ガス循環通路(等温化部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度勾配が生じると熱音響エネルギを発生するエネルギ発生部と、
前記エネルギ発生部で生じた熱音響エネルギを伝達するエネルギ伝達部と、
前記熱音響エネルギが伝搬すると、伝搬側が高温で、伝搬方向下流に行くにしたがって低温になる温度勾配を生ずる温度勾配発生部と、
を有し、
前記エネルギ発生部の高温部分及び/又は前記温度勾配発生部の低温部分を加熱する、
ことを特徴とする高温発生装置。
【請求項2】
前記温度勾配発生部の低温部分の温度が、前記エネルギ発生部の高温部分の温度と同等になるように加熱する等温化部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の高温発生装置。
【請求項3】
前記エネルギ発生部は、
多数の微細な平行通路を有し、温度勾配が生じると熱音響エネルギを発生する第1スタックと、
前記第1スタックの一端に設けられ、その端部を高温にする高温側熱交換器と、
前記第1スタックの他端に設けられ、その端部を低温にする低温側熱交換器と、
を備え、
前記温度勾配発生部は、
多数の微細な平行通路を有し、熱音響エネルギが伝搬すると内部に温度勾配が生じる第2スタックと、
前記第2スタックの、熱音響エネルギ伝搬方向下流端部分に設けられ、その端部を所定温度に維持する温度維持器と、
前記第2スタックの、熱音響エネルギ伝搬方向上流端部分に設けられ、その端部の温度を外部に伝導する高温伝導体と、
を備え、
前記等温化部は、温度勾配発生部の低温部分である温度維持器の温度を、エネルギ発生部の高温部分である高温側熱交換器の温度と同等にする、
ことを特徴とする請求項2に記載の高温発生装置。
【請求項4】
前記低温側熱交換器は、内燃機関、燃料電池又はモータを冷却する冷却水によって前記第1スタックの端部を低温にする、
ことを特徴とする請求項3に記載の高温発生装置。
【請求項5】
前記等温化部は、内燃機関から排出される排ガスの熱を、前記温度勾配発生部の低温部分及び前記エネルギ発生部の高温部分に伝導して、それらの低温部分及び高温部分の温度を同等にする、
ことを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の高温発生装置。
【請求項6】
前記等温化部は、燃料電池から排出される廃熱を、前記温度勾配発生部の低温部分及び前記エネルギ発生部の高温部分に伝導して、それらの低温部分及び高温部分の温度を同等にする、
ことを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の高温発生装置。
【請求項7】
前記エネルギ伝達部は、前記温度勾配発生部で減衰しきらなかった余剰の熱音響エネルギを、前記エネルギ発生部へ伝搬可能な閉ループ管で構成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の高温発生装置。
【請求項8】
前記エネルギ伝達部は、内部圧力が大気圧よりも高圧である、
ことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の高温発生装置。
【請求項9】
前記エネルギ伝達部は、プラントル数の小さな気体が封入されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の高温発生装置。
【請求項10】
前記エネルギ伝達部は、自動車の車体を構成する部材で形成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の高温発生装置。
【請求項11】
前記温度勾配発生部で発生した高温を、燃料を改質して水素を生成する改質装置に利用する、
ことを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の高温発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−263541(P2007−263541A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93393(P2006−93393)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】