説明

高温自動探傷装置

【課題】傷部の検出精度を向上させた高温自動探傷装置を提供する。
【解決手段】被検査体2を搬送する搬送工程3と、この搬送工程3の中途部に設け、被検査体2を高周波誘導過熱コイル内に通過させて、被検査体2の表層部に渦電流を流して加熱し、表層部に温度変化を与える加熱工程4と、この加熱工程4により加熱後の表層部を検出装置7で探傷するとともに、検出装置7から取得した画像を画像処理することで表層部の傷部の有無を判定する探傷工程5とを備え、探傷工程5は、加熱工程4の前側に、表層部上のスケールを除去するデスケール装置10および渦電流を流す前の表層部の傷部を探傷する検出装置6を、それぞれ被検査体2の搬送方向順に設置し、被検査体2を、加熱工程4前後の両検出装置6,7から得た、渦電流を流す前後の表層部の画像を解析することにより、表層部の探傷を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体を搬送する搬送工程と、この搬送工程の中途部に設け、被検査体を高周波誘導過熱コイル内に通過させて、被検査体の表層部に渦電流を流して加熱し、表層部に温度変化を与える加熱工程と、この加熱工程により加熱後の表層部を検出装置で探傷するとともに、検出装置から取得した画像を画像処理することで表層部の傷部の有無を判定する探傷工程とを備える自動探傷装置に関し、より詳細には、探傷工程は、加熱工程の前側に、表層部上のスケールを除去するデスケール装置および渦電流を流す前の表層部を探傷する検出装置を、それぞれ被検査体の搬送方向順に設置し、被検査体を、加熱工程前後の両検出装置から得た、渦電流を流す前後の表層部の画像を解析することにより、表層部の探傷を行う自動探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査体であるビレットなど鋼材表層部の探傷方法には、例えば、CCDカメラなどによる光学的方法や、電磁超音波を用いて行うものがある。さらに、渦流探傷として、被検査部材を誘導コイル内に通過させ、表面部を高周波誘導加熱により加熱して、その表面温度を温度計などで測定し、表層部における傷部の温度が、傷部のない周囲の温度と異なる(被検査体が磁性材か、あるいは非磁性材であるかに関わらず、傷部への渦電流の浸透深さの差により、傷部の直線部分は、周囲部の温度より低くなる程度が異なり、傷部の端部は、周囲部の温度より高くなる程度が異なる)ため、この放射熱の違いに基づいて、表層部の傷部を検出する技術(例えば、特許文献1)が知られている。いずれの方法も鋼材の探傷面に探傷装置を接触させることなく、非接触にて探傷を行う方法である。
【0003】
ところで、鋼材表層部には酸化鉄などからなるスケールが付着している場合が多く、上述のような表層部の探傷方法では、一般的に前処理としてスケール除去が行われるが、この除去処理した部分や、さらには取扱跡(例えばロールがこすった跡など)を有する部分に光沢を生じることから、これらの部分では、放射率の低下に伴い測定温度が低下するため、これら部分に傷部がない場合でも、周囲の温度と比較して傷部を誤判定してしまうなど検出精度を低下させていた。そこで、被検査体に、極薄に粉体を被覆させ、その表層部の放射率を一定にし、高周波誘導加熱の表層部を温度計で測定することにより、傷部の検出精度を向上させたもの(例えば、特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−298846号公報
【特許文献2】特開平7−174732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献2のような探傷方法は、常に被検査体に被覆させる粉体を別途必要とするため、消耗品の大量消費や、散布および除去処理に手間を有するほか、表層部に均一に粉体を散布させることが難しく、傷部の検出精度を向上させることができないとう問題があった。また、被検査体の表層部には、傷部が軸方向や周方向など多方向に存在するため、上述した探傷方法では、誘導コイルの形状上、被検査体に一方向しか電流を流すことができず、表層部における軸方向または周方向のどちらか一方向の傷部しか検出することができないという問題もあった。
【0006】
従って、この発明の目的は、被検査体表層部を、回転磁界を有する誘導コイルで加熱し、その熱負荷前後の表層部を撮影した画像を処理解析することで、被検査体表層部の傷部判定を正確に行うとともに、多方向に存在する傷部を1サイクルで一度に検出可能とし、傷部の検出精度を向上させた高温自動探傷装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、請求項1に記載の発明は、被検査体を搬送する搬送工程と、該搬送工程の中途部に設け、前記被検査体を高周波誘導過熱コイル内に通過させて、前記被検査体の表層部に渦電流を流して加熱し、前記表層部に温度変化を与える加熱工程と、該加熱工程により加熱後の前記表層部を検出装置で探傷するとともに、前記検出装置から取得した画像を画像処理することで前記表層部の傷部の有無を判定する探傷工程とを備える自動探傷装置において、前記探傷工程は、前記加熱工程の前側に、前記表層部上のスケールを除去するデスケール装置および前記渦電流を流す前の前記表層部の傷部を探傷する検出装置を、それぞれ前記被検査体の搬送方向順に設置し、前記被検査体を、前記加熱工程前後の前記両検出装置から得た、前記渦電流を流す前後の前記表層部の画像を解析することにより、前記表層部の探傷を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動探傷装置において、前記被検査体は、1000度前後の高温体であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の自動探傷装置において、前記高周波誘導過熱コイルは、互いに直交させて設置し、前記高周波誘導過熱コイル内に回転磁界を発生させたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の自動探傷装置において、前記検出装置は、カメラまたはサーモグラフィーとしたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の自動探傷装置において、前記検出装置は、前記デスケール装置と、前記加熱工程前側の前記測定装置との間に設置した位置マーキング装置により前記表層部にマーキングした位置を探傷することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の自動探傷装置において、前記搬送工程の終端部には、前記探傷工程で判定した傷部にマーキングを行う高温用のNGマーキング装置を設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、被検査体を搬送する搬送工程と、この搬送工程の中途部に設け、被検査体を高周波誘導過熱コイル内に通過させて、被検査体の表層部に渦電流を流して加熱し、表層部に温度変化を与える加熱工程と、この加熱工程により加熱後の表層部を検出装置で探傷するとともに、検出装置から取得した画像を画像処理することで表層部の傷部の有無を判定する探傷工程とを備える自動探傷装置において、探傷工程は、加熱工程の前側に、表層部上のスケールを除去するデスケール装置および渦電流を流す前の表層部の傷部を探傷する検出装置を、それぞれ被検査体の搬送方向順に設置し、被検査体を、加熱工程前後の両検出装置から得た、渦電流を流す前後の表層部の画像を解析することにより、表層部の探傷を行うので、ビレットなど被検査体に渦電流を流し、加熱前後の同一表面位置を測定した検出画像を処理して、被検査体表面での酸化膜やローラ跡、あるいは画像のノイズなど放射率が高い部分と、強い放射強度を有する傷部とを識別するとともに、放射強度の高い位置を傷部として正確に判定することができる。従って、傷部の検出精度を向上させた高温自動探傷装置を提供することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、被検査体は、1000度前後の高温体であるので、鋼材(ビレット)など被検査体表層部の探傷を、被検査体製造直後の1000℃前後を有する高温時に実施でき、被検査体の生産能力の向上および、製造工程の上流に探傷データをフィードバックすることでビレットなど被検査体の品質向上を図ることができる。従って、被検査体の生産性および品質向上に寄与した高温自動探傷装置を提供することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、高周波誘導過熱コイルは、互いに直交させて設置し、高周波誘導過熱コイル内に回転磁界を発生させたので、被検査体表面の軸方向や周方向など多方向に有する傷部を一度に確実に検出することができる。従って、傷部の検出精度を向上させた高温自動探傷装置を提供することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、検出装置は、カメラまたはサーモグラフィーとしたので、簡単な構成により被検査体表層部を正確に探傷できるとともに、装置の設計に応じて検出装置を適宜選択することができる。従って、傷部の検出精度を向上させた高温自動探傷装置を提供することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、検出装置は、デスケール装置と、加熱工程前側の測定装置との間に設置した位置マーキング装置により表層部にマーキングした位置を探傷するので、加熱工程前後における被検査体の同一表面を検出装置で検出でき、それらを比較処理することで、傷部を正確に判定することができる。従って、傷部の検出精度を向上させた高温自動探傷装置を提供することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、搬送工程の終端部には、探傷工程で判定した傷部にマーキングを行う高温用のNGマーキング装置を設置したので、探傷工程により高精度で検出した被検査体表層部の傷部を正確にマーキングし、後工程で見逃すことなく確実に傷部を除去することができる。従って、傷部の除去精度を向上させた高温自動探傷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一例を示す、自動探傷装置の概略構成図である。
【図2】高周波誘導加熱コイルを説明する加熱工程の平面模式図である。
【図3】検出位置のマーキングを示す被検査体表面の模式図である。
【図4】傷部の温度状態を説明する模式図である。
【図5】処理部における傷部判定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図 1は本発明の一例を示す自動探傷装置の概略構成図、図2は高周波誘導加熱コイル
を説明する加熱工程の平面模式図、図3は検出位置のマーキングを示す被検査体表面の模式図、図4は傷部の温度状態を説明する模式図、図5は処理部における傷部判定の説明図である。
【0021】
図1に示すように、この自動探傷装置1は、被検査体2として、例えば長尺鋼材などのビレットを搬送する搬送工程3と、この搬送工程3の中途部に設け、被検査体2の表層部に渦電流を流してこの表層部を加熱させる加熱工程4と、この加熱工程4により加熱後の表層部を探傷する探傷工程5とから構成される。
【0022】
まず、搬送工程3は、例えば、不図示の搬送ローラにより駆動するコンベア3aを備え、このコンベア3a上の被検査体2が、上流側から加熱工程4を含む下流方向(図例では右端側から左方向)に向けて搬送される。
【0023】
次に、加熱工程4は、図2に示すように、高周波誘導加熱コイルとして円形状の2つの貫通コイル4a,4bを、被検査体2の搬送方向に直交する線に対して、それぞれ正負45度の角度で、一方の貫通コイルを他方の貫通コイルの内側に内接交差させて設置する。従って、それら貫通コイル4a,4bの中心部を被検査体2が貫通して走行する。なお、貫通コイル4a,4bに負荷させる装置(高周波電源)として、例えば、MK22B型トランジスタインバータ(高周波熱錬製)などを用いることができる。
【0024】
これら貫通コイル4a,4bを90度ずらして交差設置させているのは、2つ貫通コイル4a,4b間で一様な回転磁界を発生させるためである。これら貫通コイル4a,4bに電流が流れると、一方の貫通コイルでは、被検査体2の軸方向(搬送方向)に磁場が作られるとともに、他方の貫通コイルでは、被検査体2の搬送方向と直交する周方向に磁場が生成される。
【0025】
そして、これら両コイル4a,4bに位相が90度ずれた正弦波電流が印加されると、被検査体2の軸方向および周方向の多方向に亘る平面内において一定の磁界強度で回転する回転磁界が生成される。
【0026】
次に、探傷工程5は、加熱工程4における被検査体2の搬送方向前後位置に、被検査体2表層部を探傷する、磁気シールドした例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラなどの検出装置6,7と、これら検出装置6,7の検出情報に基づいて被検査体2表層部の傷部を判定する、検出装置6,7に、図示しない画像処理装置(例えば、デクシス製 TAシリーズ)を介して接続した処理部(コントローラ)8とから構成される。なお、処理部(コントローラ)8は、前記画像処理装置に内設されていたり、あるいは前記画像処理装置とは別体に設けたいずれの構成であってもよい。
【0027】
なお、検出装置6,7は、強い回転磁界の影響を避けるため被検査物から一定距離(例えば、600〜2000mm)だけ離して設置されており、磁気シールドは、パーマロイ(鉄ニッケル合金)などから構成した箱体などを用い、この箱体内に検出装置6,7を内設させてもよい。
【0028】
また、本発明の自動探傷装置1では、加熱工程4の前方(上流)に位置する検出装置6のさらに前方には、検出装置6,7による検出位置を同一にするため、周知の高温用マーキングガンからなる検出位置マーキング装置9が設置される。
【0029】
また、検出位置マーキング装置9のさらに前方(上流)には、被検査体2の表面に付着する油分や塵芥などを、例えばショットブラストなど周知の方法で除去するデスケール装置10が設置される。
【0030】
また、加熱工程4の後方(下流)に位置する検出装置7のさらに後方には、探傷工程5で検出された傷部の位置を特定し、次工程でその傷部を除去するために、目視可能にマーキングする、周知の高温用マーキングガンからなるNGマーキング装置11が設置される。
【0031】
ここで、自動探傷装置1により、例えば、圧延などの製造工程を終えて間もない1000℃前後の高温を有する被検査体2の表層部の探傷を行う場合、搬送工程3上で搬送方向(図中では左方向)に搬送中の被検査体2は、まず、デスケール装置10において、被検査体2の表面に付着した油分や塵芥などが除去される。
【0032】
次いで、被検査体2は、検出位置マーキング装置9において、搬送先端部から後方へ向けて順次その表面に、図3に示すように、検出位置a1,a2,a3・・・として、例えば、検出装置6,7(CCDカメラなど)の画像における撮影面積の中心位置などにマーキングが施される。
【0033】
次いで、搬送工程3上を搬送される被検査体2は、検出装置6において、先端部から順に表面をマーキングされた各検出位置a1,a2,a3・・・を中心とする各表面b1,b2,b3・・・の画像c1,c2,c3・・・が順次撮影されるとともに、その撮影画像を検出データとして処理部8に伝えられる。
【0034】
次に、搬送工程3上の被検査体2は、先端部から順に、加熱工程4における貫通コイル4a,4bの内側を貫通移動する。このとき、上述したように、直交する貫通コイル4a,4bにより、被検査体2の軸方向(搬送方向)および、搬送方向と直交する周方向のそれぞれに磁場が生成されるため、両コイル4a,4bに位相が90度ずれた正弦波電流を印加すると、回転磁界により被検査体2の軸方向および周方向の多方向に亘る平面を加熱(高周波誘導加熱)させることができる。
【0035】
その結果、被検査体2の表面を探傷する際、表面を軸方向および周方向の多方向に亘って一度に加熱できるため、この加熱により、表面温度の放射強度が傷部有無で異なることから、表面上の多方向の傷部を一度に確実かつ効率的に探傷することができる。なお、この加熱工程4において、被検査体2の表面を、貫通コイル4a,4bの貫通前の温度約1000℃から、貫通後に約1100℃まで加熱させることができる。
【0036】
次に、加熱工程4で加熱された被検査体2は、検出装置7において、先端部から順に上述のように表面をマーキングした検出位置a1,a2,a3・・・を中心とする各表面b1,b2,b3・・・と同じ位置を、画像d1,d2,d3・・・として順次撮影するとともに、その撮影画像が検出データとして処理部8に伝えられる。
【0037】
このように、加熱工程4の前後において、被検査体2の表面を検出位置マーキング装置9でマーキングした位置を含むそれぞれ同じ位置の表面を、検出装置6,7により測定するため、後述するように加熱工程4前後の被検査体2における表面状態を比較処理して正確に探傷することができる。
【0038】
なお、上記実施例における圧延などの製造工程を終えて間もない鋼材などの被検査体2は、その表層部の温度が、キューリー温度の760℃を超えた1000℃以上を有するため、非磁性材料の特性を示すものである。そして、図4に示すように、高周波誘導加熱の電流は、傷部を避けて流れるため、傷部の温度は、その周辺部の温度よりも低くなる。さらに、傷部の温度を詳述すると、傷部の端部(側部、底部)には、電流が密集するため、周囲よりも温度が高くなるが、傷部の中枢部(直線部)には、電流が密集しないため、周囲よりも温度が低くなる。
【0039】
このことから、上記のような1000℃前後の高温を有する被検査体2表層部の傷部を探傷するには、検出装置7で撮影した被検査体2の表面の画像d1,d2,d3・・・から得られる、温度に比例した放射強度(シグナルの強さ)に基づいて、周囲より放射強度が低い部分を傷部と判定することができる。
【0040】
しかしながら、1000℃を超える被検査体2の表面には、空気中では短時間に酸化膜が生成したり、被検査体2の搬送中に擦ったローラ跡などが放射率に悪影響を与えることがあり、画像d1,d2,d3・・・から得られる放射強度のみからでは、それら部分を放射強度が弱い領域であると誤って測定され、傷部ではない部分を傷部と判定してしまい、探傷精度を低くする恐れがある。
【0041】
そこで、本願発明の自動探傷装置1では、処理部8が、検出装置6,7から得られた加熱工程4前後の被検査体2の同じ位置での表面の画像を処理して、被検査体2表面の傷部の判定を正確に行うものである。これは、例えば、検出装置6から得られた加熱工程4前の被検査体2の画像c1と、検出装置7から得られた加熱工程4後の被検査体2の画像d1とを、周知の技術で微分演算した後、差分処理する。
【0042】
具体的には、例えば、図5に示すように、処理部8は、加熱工程4後の画像d1の位置イに、周囲よりも放射強度が低い部分(斜線入の楕円部分)を有しているが、加熱工程4前の画像c1の位置イに、画像d1同様の放射強度が低い部分がなければ、画像d1の位置イを傷部と判定する。
【0043】
しかし、処理部8は、画像d1の位置イに、周囲よりも放射強度が低い部分を有するとともに、加熱工程4前にも関わらず、画像c1の位置イに放射強度が低い部分を有していれば、位置イには、酸化膜やローラ跡、あるいは画像のノイズなどの放射率が低い部分があるものとして、画像d1の位置イには傷部がないものと判定する。なお、処理部8は、両画像c1,d1の位置イに、周囲よりも放射強度が低い部分がなければ、画像d1の位置イには傷部がないものと判定する。
【0044】
そして、探傷工程5を終えた搬送工程3上の被検査体2は、自動探傷装置1の終端部において、先端部から順に、例えば、画像c1,d1を撮影した表面b1の位置イに傷部があれば、その傷部がNGマーキング装置11によりマーキングされる。
【0045】
なお、これら高温用のNGマーキング装置11や検出位置マーキング装置9は、特開平8−60032に記載したような周知の装置であるが、マーキング剤として、例えばチタン化合物粉末、特に二酸化チタン粉末、マグネシウム化合物粉末、特に炭酸マグネシウム粉末、ケイ素・マグネシウム化合物、特にタルク粉末を用いたものを、これら装置9,11であるマーキングガンから噴霧させるものであり、表面温度1000度以上の高温の被検査体2表面に、燃焼することなく付着でき、空気中において可及的に吸水することがない、本願発明の自動探傷装置1に用いる好適なものである。
【0046】
そして、マーキングされた傷部は、説明を省略する次工程で傷部除去が行われる。従って、探傷工程5により高精度で検出した被検査体2表層部の傷部を正確にマーキングし、後工程で見逃すことなく、確実に傷部を除去することができる。また、被検査体2は、自動探傷装置1の1度の探傷サイクルで、例えばその一方片側半分の探傷を行った後、被検査体2を一旦自動探傷装置1の上流へ戻す、あるいはさらに下流に設置した次の自動探傷装置において、被検査体2の他方片側半分の探傷が行われる。
【0047】
以上のような構成により、ビレットなど被検査体2に渦電流を流し、加熱前後の同一表面位置を測定した検出画像を処理して、処理部8が、被検査体2表面での酸化膜やローラ跡、あるいは画像のノイズなど放射率が低い部分と、低い放射強度を有する傷部とを識別するとともに、放射強度の高い位置を傷部として正確に判定することができる。
【0048】
そして、被検査体2表層部の探傷を、被検査体2製造直後の高温時に実施でき、被検査体2の生産能力の向上および、製造工程の上流に探傷データをフィードバックすることで被検査体の品質向上を図ることができる。
【0049】
なお、検出装置6,7は、上述した例のようなCCDカメラに限定されず、周知のサーモグラフィーを用いてもよい。この場合、上述同様に、加熱工程4前後の被検査体2における同一位置の表面状態を、放射強度(赤外線)差による表面温度を色分けして示す熱分布画像として検出測定できる。
【0050】
従って、処理部8は、上記熱分布画像から、周囲の温度よりも高温表示される部分を傷部と判定することができるが、この場合においても上記同様に、加熱工程4前後の被検査体2表面(同一位置)の熱分布画像を処理することで、処理部8が、被検査体2表面での酸化膜やローラ跡、あるいは画像のノイズなど放射率が高い部分と、高い表面温度を有する傷部とを識別するとともに、表面温度の高い位置を傷部として正確に判定することができる。
【0051】
なお、上述では、1000℃前後の温度を有する非磁性体(760℃より高温)を示す被検査体の探傷について説明したが、本願発明の自動探傷装置1では、760℃よりも低温の磁性体を示す被検査体についても上述同様にしてその表層部を正確に探傷することができる。
【0052】
この磁性体を示す被検査体は、非磁性体に比べて高周波誘導加熱の電流浸透深さが浅くなり、磁性体の傷部への電流浸透深さは、非磁性体の傷部に比べて浅くなるが、電流が、傷部を避けて流れることには変わりない。さらに傷部の端部(側部、底部)には、電流が密集するため、周囲よりも温度が高くなるが、傷部の中枢部(直線部)には、電流が密集しないため、周囲よりも温度が低くなる。このことから、処理部8において、上述同様に傷部の判定を行うことができる。
【0053】
以上詳述したように、本願発明の自動探傷装置1は、被検査体2を搬送する搬送工程3と、この搬送工程3の中途部に設け、被検査体2を高周波誘導過熱コイル内に通過させて、被検査体2の表層部に渦電流を流して加熱し、表層部に温度変化を与える加熱工程4と、この加熱工程4により加熱後の表層部を検出装置7で探傷するとともに、検出装置7から取得した画像を画像処理することで表層部の傷部の有無を判定する探傷工程5とを備え、探傷工程5は、加熱工程4の前側に、表層部上のスケールを除去するデスケール装置10および渦電流を流す前の表層部の傷部を探傷する検出装置6を、それぞれ被検査体2の搬送方向順に設置し、被検査体2を、加熱工程4前後の両検出装置6,7から得た、渦電流を流す前後の表層部の画像を解析することにより、表層部の探傷を行うものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、金属ビレットを誘導コイル中に通過させ、ビレットの表面を加熱し、その表面の温度分布を検出することで傷部を判定する、あらゆる自動探傷装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 自動探傷装置
2 被検査体
3 搬送工程
4 加熱工程
4a,4b 貫通コイル
5 探傷工程
6、7 検出装置
8 処理部
9 検出位置マーキング装置
10 デスケール装置
11 マーキング装置
a1,a2,a3 検出位置
b1,b2,b3 表面
c1,c2,c3,d1,d2,d3 画像
イ 位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体を搬送する搬送工程と、
該搬送工程の中途部に設け、前記被検査体を高周波誘導過熱コイル内に通過させて、前記被検査体の表層部に渦電流を流して加熱し、前記表層部に温度変化を与える加熱工程と、
該加熱工程により加熱後の前記表層部を検出装置で探傷するとともに、前記検出装置から取得した画像を画像処理することで前記表層部の傷部の有無を判定する探傷工程と、を備える自動探傷装置において、
前記探傷工程は、前記加熱工程の前側に、前記表層部上のスケールを除去するデスケール装置および前記渦電流を流す前の前記表層部の傷部を探傷する検出装置を、それぞれ前記被検査体の搬送方向順に設置し、
前記被検査体を、前記加熱工程前後の前記両検出装置から得た、前記渦電流を流す前後の前記表層部の画像を解析することにより、前記表層部の探傷を行うことを特徴とする自動探傷装置。
【請求項2】
前記被検査体は、1000度前後の高温体であることを特徴とする、請求項1に記載の自動探傷装置。
【請求項3】
前記高周波誘導過熱コイルは、互いに直交させて設置し、前記高周波誘導過熱コイル内に回転磁界を発生させたことを特徴とする、請求項1に記載の自動探傷装置。
【請求項4】
前記検出装置は、カメラまたはサーモグラフィーとしたことを特徴とする、請求項1に記載の自動探傷装置。
【請求項5】
前記検出装置は、前記デスケール装置と、前記加熱工程前側の前記測定装置との間に設置した位置マーキング装置により前記表層部にマーキングした位置を探傷することを特徴とする、請求項1に記載の自動探傷装置。
【請求項6】
前記搬送工程の終端部には、前記探傷工程で判定した傷部にマーキングを行う高温用のNGマーキング装置を設置したことを特徴とする、請求項1に記載の自動探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−150071(P2012−150071A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10471(P2011−10471)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(390002808)マークテック株式会社 (42)
【Fターム(参考)】