説明

高温蒸気弁および高温蒸気弁を備えた蒸気タービンプラント

【課題】弁ケーシングの弁棒貫通部に設けた弁棒、ブッシュ間の摺動部分を適正に冷却して、摺動部に酸化スケールが付着堆積することを防止し、弁棒、ブッシュ間の摺動隙間が長期間適正に保つことのできる高温蒸気弁を提供する。
【解決手段】主蒸気入口3、主蒸気出口4および内部に弁室5を有する弁ケーシング2、弁室5に配置された弁座6、弁座6に対向して設けられた弁体7、弁ケーシング2を摺動自在に貫通して弁体7を駆動する弁棒10を備えた高温蒸気弁において、弁ケーシング2の弁棒貫通部13を囲むように冷却蒸気孔20を設け、この冷却蒸気孔20に冷却蒸気導入孔19を通して外部から冷却蒸気を導入し、冷却蒸気通路20を通った冷却蒸気を冷却蒸気排出孔21から弁室5内の弁棒10に向けて排出するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温蒸気タービンシステムに適用される高温蒸気弁に係り、特に弁構成要素を冷却する冷却構造を採用した高温蒸気弁および高温蒸気弁を備えた蒸気タービンプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、事業用火力発電プラントにおいては、環境問題の観点から蒸気タービンの一層の効率化が要求されており、そのため蒸気温度は益々高温化される傾向にある。現在、広く採用されている蒸気条件は、169Kg/cm2×566℃或いは246Kg/cm2×566℃であり、現在最も高い蒸気条件は、610℃である。これらの蒸気条件が採用されている理由にとして、蒸気タービンの蒸気流量を制御するために設けられている蒸気弁の各部材の構成に使用される材料のコスト的制約が大きな要因となっている。
【0003】
周知のように、蒸気弁は弁ケーシング内で弁座に対向配置した弁体を弁棒によって外部から駆動するように構成されており、この弁棒は弁ケーシングの弁棒貫通部でブッシュを介して摺動自在に支持されており、ブッシュと弁棒との間には、摺動を許容するための若干の空隙を設けている。蒸気温度が610℃という現在最も高い蒸気条件を採用しているユニットでは、蒸気弁の各部材を構成する材料として、弁ケーシングに12Cr鋼などの耐熱合金鋼、ブッシュに窒化鋼、弁棒に12Cr鋼をそれぞれ採用している。
【0004】
ところで、昨今の趨勢は省エネルギーを指向し、蒸気温度をより高温化する傾向にある。このため、現在最も高い蒸気温度である610℃を超えて、650℃やさらには700℃以上の蒸気温度の採用が検討されている。蒸気温度の高温化は蒸気タービンシステムの熱効率向上のために歓迎されることではあるが、蒸気弁の構成材料にとっては非常に厳しいものであり、高い蒸気温度のもとでは、弁棒がクリープ変形するとか、弁棒とブッシュとの間の摺動部に酸化スケールが付着堆積して円滑な摺動を阻害し、さらには弁棒とブッシュとの摺動部を固着させる恐れがある。
【0005】
このため、従来の高温蒸気弁においては、弁棒内部に孔を加工し、この孔に冷却蒸気を流して弁棒を冷却する発明(例えば、特許文献1)とか、弁ケーシングの弁蓋を上蓋と内蓋とに分離して上蓋と内蓋との間に冷却蒸気を流してケーシングのフランジを冷却すると共に、弁棒とブッシュとの摺動部に耐酸化性層を設けて酸化スケールが付着堆積することを防止した発明(例えば、特許文献2、3)、更に円板状弁体の回動によって流路の開度を加減するバタフライ弁において、弁棒の一端が貫通する弁軸筒(グランドパッキンや弾性緩衝材等からなる軸封部を収容する筒状部を指す)の外周に空間部を介して筒状のジャケットを追設し、環状に形成された空間部に外部から冷却媒体を供給するようにした発明(例えば、特許文献4)が公開されている。
【特許文献1】実開昭57−145879号公報
【特許文献2】実開昭61−14276号公報
【特許文献3】特開平8−93407号公報
【特許文献4】特開2004−19784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明では、弁棒のみの冷却はできるが、弁棒、ブッシュ間の摺動部の冷却までは考慮されておらず、従って、摺動部に酸化スケールの付着堆積を防止する対策としては十分ではない。また、特許文献2、3に記載の発明では、弁ケーシングのフランジ部と弁蓋とを締付けるボルトの冷却はできるが、特許文献1同様、弁棒、ブッシュ間の摺動部の冷却はできない。この結果、特許文献2、3に記載の発明では、より高温化された蒸気に対しては、耐酸化性層を設けても、酸化スケールの付着堆積を防止することはできない。
【0007】
さらに、特許文献4に記載の発明では、弁棒を回動自在に支持する軸受部材よりもむしろ軸封部を冷却する構造になっているため、弁内部から弁棒を通して軸受部材、すなわち弁棒摺動部へ熱が伝わってしまい、当該弁棒摺動部を十分に冷却することができない。したがって、特許文献4に記載の発明も弁棒の回動を支持する弁棒摺動部に酸化スケールの付着堆積を防止する対策としては十分ではない。
このように、上記特許文献1〜4に記載の技術では、弁棒摺動部に酸化スケールが付着堆積するために、弁棒摺動部の摩耗量が大きくなり、ブッシュ、弁棒間の摺動隙間が長期間適正に保たれないため取替えを余儀なくされる。
【0008】
そこで本発明は、上記従来技術の欠点に鑑みてなされたもので、弁ケーシングの弁棒貫通部に設けた弁棒、ブッシュ間の摺動部分を適正に冷却して、摺動部に酸化スケールが付着堆積することを防止し、弁棒、ブッシュ間の摺動隙間が長期間適正に保つことのできる高温蒸気弁および高温蒸気弁を備えた蒸気タービンプラントを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る高温蒸気弁の発明は、主蒸気入口、主蒸気出口および内部に弁室を有する弁ケーシング、前記弁室に配置された弁座、この弁座に対向して設けられた弁体、前記弁ケーシングを摺動自在に貫通して前記弁体を駆動する弁棒を備えた高温蒸気弁において、前記弁ケーシングの弁棒貫通部を囲むように冷却蒸気通路を設け、この冷却蒸気通路に外部から冷却蒸気を導入し、当該冷却蒸気通路を通った冷却蒸気を弁室内の弁棒に向けて排出するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蒸気温度が610℃以上の高温蒸気弁においてブッシュ及び弁棒の耐摩耗性が増加すると共に、かじりや固着が生じにくく、両部品の耐用年数が長くなる。
従って、製品の信頼性向上に寄与することになると共に補修費或いは取替え費を軽減することにも繋がるなどの顕著な効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
(実施例1)
図1は本発明を複合型再熱高温蒸気弁に適用した場合の実施例の断面図である。
図1において、まず、複合型再熱高温蒸気弁の基本的な構成から説明する。1は複合型再熱蒸気弁全体を示す符号である。2は弁ケーシングであり、図示左側部に主蒸気入口部3、反対側である図示右側部下部に主蒸気出口部4をそれぞれ設け、そして、これら主蒸気入口部3および主蒸気出口部4間に形成された弁室5内に弁座6を配置し、この弁座6に対して図示上部および下部からそれぞれ昇降するように駆動される第1弁体7および第2弁体8を接離自在に配置している。なお、9は流入した主蒸気中のごみを除去する円筒型のストレーナである。
【0012】
前記第1弁体7は断面がほぼH状で外周面が円筒状に形成されており、その中心部の図示上面に弁棒10の一端を取付け、かつ外周面でガイド部11の内周面に摺動可能に案内されるように構成されている。前記ガイド部11は前記弁ケーシング2の弁蓋12の内面すなわち弁室5側にブッシュ14と同心状に固定されている。弁棒10の中間部は前記弁ケーシング2の弁蓋12の中心部に形成した弁棒貫通部13に嵌合して設けたブッシュ14によって摺動自在に支持され、他端部は弁蓋12の上部に設置された第1アクチュエータ15に連結されている。この第1アクチュエータ15が外部からの指令により第1弁棒10を介して第1弁体7を昇降させることにより、主蒸気の流量を制御する。
【0013】
ところで、前記弁蓋12にはブッシュ14および第1弁棒10の摺動部の隙間から漏れ出る蒸気を外部に抜くための蒸気抜き孔16を放射方向に適宜個数(図では1個を示す)設けると共に、ブッシュ14と弁棒10とを冷却するための冷却蒸気通路17を設けている。この冷却蒸気通路17は、ブッシュ14を囲むように円環状に設けられた冷却蒸気マニフォールド18と、この冷却蒸気マニフォールド18に冷却蒸気を供給する冷却蒸気導入孔19と、冷却蒸気マニフォールド18から分岐してブッシュ14の軸心方向に設けられた複数個の冷却蒸気孔20と、この冷却蒸気孔20を弁室5に連通させる冷却蒸気排出孔21とから構成されている。
【0014】
一方、第2弁体8は、その中心部の図示下面を第2弁棒22の一端に固定されている。第2弁棒22の中間部は弁ケーシング2の下部開口部から立上がるようにして設けた筒状ガイド部23の中心部に形成した弁棒貫通部24に嵌合して設けたブッシュ25によって摺動自在に支持され、他端部は弁ケーシング1の下部に設置された第2アクチュエータ26に連結されている。
【0015】
ところで、前記ガイド部23にはブッシュ25および第2弁棒22の摺動部の隙間から漏れ出る蒸気を外部に抜くための蒸気抜き孔27を放射方向に適宜個数(図では1個を示している)設けると共に、ブッシュ25と弁棒22とを冷却するための冷却蒸気通路28を設けている。この冷却蒸気通路28は、ブッシュ25を囲むように円環状に設けられた冷却蒸気マニフォールド29と、この冷却蒸気マニフォールド29に冷却蒸気を供給する冷却蒸気導入孔30と、冷却蒸気マニフォールド29からブッシュ25の軸心方向に設けられた複数個の冷却蒸気孔31と、この冷却蒸気孔31を通って熱交換を終えた蒸気を弁室5に連通させる冷却蒸気排出孔32とから構成されている。
第2アクチュエータ26は外部からの指令により第2弁棒22を介して、第2弁体8を昇降させ、蒸気の遮断、流出を制御する。
【0016】
以上のように構成された複合型再熱蒸気弁において、弁の全閉時には、第1弁体7と第2弁体8の先端面が弁座6に当接し、弁ケーシング2の主蒸気入口3から弁ケーシング2内部の弁室5に入る610℃以上の主蒸気の流れは、第1弁体7、第2弁体8と弁座6との当接部分で遮断され、主蒸気出口4を通して流れない。
【0017】
この状態において、第2弁体8を第2弁棒22によって上方向へ動かすことにより止弁機能が開状態となる。さらに、第1弁体7を第1弁棒10によって上方向へ動かすことにより調節弁機能が開状態となり主蒸気は第1弁体7、第2弁体8と弁座6との間に形成された隙間を通って主蒸気出口4から排出される。
【0018】
一方、弁ケーシング1の上部において、610℃未満の冷却蒸気は弁ケーシング2の弁蓋12に設けた冷却蒸気導入孔19から円環状の冷却蒸気マニフォールド18に供給される。この冷却蒸気は、冷却蒸気マニフォールド18からブッシュ14を取り囲むように円周方向に複数個配置された冷却蒸気孔20に分流することにより、弁蓋12を介してブッシュ14および弁棒10を円周方向にほぼ均一に冷却する。そして、弁蓋12との熱交換を終えた冷却蒸気はその後冷却蒸気排出孔21を経て弁室5内部の弁棒10に向けて排出される。この排出される冷却蒸気によって弁棒10が直接冷却される。この冷却蒸気はその後主蒸気入口3から入ってきた主蒸気と混合し、弁体、弁座間の隙間を通り、最終的に主蒸気出口4から排出される。
【0019】
同様に、弁ケーシング2の下部においても、冷却蒸気は弁ケーシング2の下部および円筒状ガイド部23に亘って設けた冷却蒸気導入孔30から円環状の冷却蒸気マニフォールド29に供給される。この冷却蒸気は、冷却蒸気マニフォールド29からブッシュ25を取り囲むように円周方向に複数個配置された冷却蒸気孔31に分流することにより、ガイド部23を介してブッシュ25および弁棒22を円周方向にほぼ均一に冷却する。
そして、ガイド部23との熱交換を終えた冷却蒸気はその後冷却蒸気排出孔32を経て弁室5内部の弁棒22に向けて排出される。この排出される冷却蒸気によって弁棒22が直接冷却される。この冷却蒸気はその後弁体8、弁座6間の隙間を通ってきた主蒸気と混合し、最終的には主蒸気出口4から排出される。
【0020】
このように、冷却蒸気は主蒸気と混合して複合型再熱高温蒸気弁1から排出されて、図示しない蒸気タービンに導入されるが、冷却蒸気の蒸気量は主蒸気の蒸気量に比べて僅かなので、蒸気タービンに導入される蒸気に影響を及ぼすことはない。
【0021】
以上述べたように、本実施例によれば、弁ケーシング2の弁蓋12およびガイド部23に設けられた冷却蒸気導入孔19および30、冷却蒸気マニフォールド18および29、冷却蒸気孔20および31に610℃未満の温度の冷却蒸気を流すように構成したことにより、効果的に弁棒貫通部を適正な温度まで冷却することができる。さらに、冷却蒸気排出孔21および32を経てそれぞれ弁室5内部に排出される冷却蒸気によって弁室5内の弁棒10および22を直接冷却するので、摺動部に至る熱量を低減できる。
この結果、ブッシュ14、弁棒10間の摺動部、ブッシュ25、弁棒22間の摺動部を610℃未満の温度に保持することできるので、摺動部に酸化スケールの付着堆積を防止することができ、弁棒10、ブッシュ14、ブッシュ25、弁棒22の摺動部に窒化処理材等の従来使用していた材料を用いても長期間の使用が可能となる。
【0022】
(実施例2)
本発明の実施例2について図2、図4、図5に基づいて説明する。本実施例も実施例1同様、複合型再熱高温蒸気弁に適用したものであり、図1と対応する部分には同一符号を付けて説明を適宜省略する。
【0023】
図2において、本実施例2の主な特徴点は、弁棒10、22の外周部に臨む蒸気抜き孔16および27の開口部を挟むようにして、その両側にピストンリング33、34を配置し、さらに、ブッシュ14、25を円周方向に複数個に分割したことを特徴とするものであり、その他の構成は前述した図1と同様なので説明を省略する。
【0024】
本実施例2の場合、ブッシュ14は弁蓋12を貫通せずに弁内部から弁蓋12の厚さ方向のほぼ中間部まで埋め込むようにし、ピストンリング33よりも外側に位置する弁棒10と弁蓋12の貫通穴との隙間は、図1の実施例1の場合よりも若干大きく設定している。そして、蒸気抜き孔16の弁棒10外周部を臨む開口部を挟むように、弁蓋12に一対の円環状の溝をそれぞれ設け、これらの溝にピストンリング33を収め、ピストンリング33に弁棒10を嵌めることによって弁棒10と弁蓋12の貫通穴との隙間から蒸気が逃げないようにしている。なお、ピストンリング33は図4に示す様に両端部に向きの異なる段部を有する1本の平角棒材を円環状に曲げて成形したもので、その両端部の段部を重ね合わせ、この重ね合わせ部331の横に隙間332を設けることにより、バネ効果を備えるようにしている。
【0025】
一方、ブッシュ25の下端部は図1のようにガイド部23を貫通せずに蒸気抜き孔127の手前までの長さまで埋め込むようにし、ガイド部23を貫通する弁棒22とガイド部23の貫通穴との隙間も図1の場合よりも若干大きく設定している。そして、蒸気抜き孔27の弁棒22外周部を臨む開口部を挟むように、弁ケーシング2に円環状の溝をそれぞれ設け、この溝でピストンリング34を収め、ピストンリング34に弁棒22を嵌めることによって弁棒22とガイド部23の貫通穴との隙間から蒸気が逃げないようにしている。なお、ピストンリング34はピストンリング33と同様に形成されている。
【0026】
本実施例2の複合型再熱高温蒸気弁は、このような構成を採用した結果、ブッシュ14と弁棒10、ブッシュ25と弁棒22の隙間が大きくなり、その分摺動が容易になる。隙間が大きくなると冷却蒸気孔20、31から出た冷却蒸気が蒸気抜き孔16、27の方向へ漏れやすくなるが、ピストンリング33、34によりその流れが阻害されるので漏れを止めることができる。ピストンリング33、34は重ね合わせ部41と隙間42の作用によりバネ効果を有しており、弁棒10、22が熱により膨張、収縮しても弁棒10、22とピストンリング33、34の隙間をほぼ無くすことができるので漏れを止めることができる。
【0027】
また、ブッシュ14、25は図5に示す様に円周方向に分割部141を有しており、ブッシュ14、25が熱変形したり、弁棒10、22との間に温度差ができて隙間が狭くなった場合でもかじりや固着が起こらないように構成されている。
【0028】
それゆえ、本実施例2の複合型再熱高温蒸気弁は長期間の使用が可能な上、高い摺動性と高い漏れ防止機能を発揮し、さらに、冷却による熱変形から生じうるかじりや固着をも防止することができる。
【0029】
(実施例3)
本発明の実施例3について図3、図4、図5を参照して説明する。本実施例は主蒸気止弁に適用した例を示す。
図3において、本実施例3の主蒸気止弁100は弁体が1つなので、弁蓋12には図1のように弁棒貫通部13は設けておらず、弁ケーシング2下部にだけ弁棒貫通部24を設けている。本実施例の弁ケーシング2は図示左側に主蒸気入口3を、また反対側である図示右側下部には主蒸気出口4をそれぞれ設け、そして、これら主蒸気入口部3および主蒸気出口部4間に形成された縦位置の弁室5内に弁座6と、この弁座6に対して図示下部から駆動される弁体8を接離自在に配置している。この弁座6に対して弁体8の移動により主蒸気の遮断及び流出を調節する。
【0030】
そして、本実施例3では、実施例2の場合と同様に弁棒22はその一端が弁体8の下端中央部に連結され、またその他端が円筒状のブッシュ25内部を摺動自在に貫通してアクチュエータ26に連結されている。アクチュエータ26は外部からの指令により弁棒22を介して、弁体8を上下に動かし、主蒸気の遮断及び流出を調節する。
なお、本実施例における弁棒貫通部の冷却構造および弁棒貫通部からの蒸気漏れ防止構造は上述した実施例2の場合とほぼ同じなので説明は省略する。
【0031】
本実施例3の高温主蒸気止弁100においても、長期間の使用が可能な上、高い摺動性と高い漏れ防止機能を発揮し、さらに、冷却による熱変形から生じうるかじりや固着をも防止する。
【0032】
さらに、摺動性を高めるためにブッシュと25、弁棒22間の隙間を従来よりも若干大きくし、そのため生じる冷却蒸気の漏れ増大を防ぐために蒸気抜きの前後に漏れ防止用のピストンリング34を配置することにより、長期間の使用が可能な上、高い摺動性と高い漏れ防止機能を発揮するようにした。さらに、ブッシュ25を縦に分割する構造を取ることにより、冷却による熱変形から生じうるかじりや固着をも防止することができる。
【0033】
なお、以上の実施例は複合型再熱蒸気弁、主蒸気止め弁に適用する場合ついて述べたが、本発明は、これに限定されるものではなく、高温蒸気システムに適用される主蒸気制御弁、再熱蒸気止め弁、再熱蒸気制御弁などの蒸気弁にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1を説明するための断面図。
【図2】本発明の実施例2を説明する断面図。
【図3】本発明の実施例3を説明する断面図。
【図4】実施例1、2に採用したピストンリングの斜視図。
【図5】実施例1、2に採用した分割型のブッシュの斜視図。
【符号の説明】
【0035】
2…弁ケーシング、3…主蒸気入口、4…主蒸気出口、5…弁室、6…弁座、7…弁体、8…弁体、9…ストレーナ、10…弁棒、11…ガイド部、12…弁蓋、13…弁棒貫通部、14…ブッシュ、15…アクチュエータ、16…蒸気抜き孔、17…冷却蒸気通路、18…冷却蒸気マニフォールド、19…冷却蒸気導入孔、20…冷却蒸気孔、21…冷却蒸気排出孔、22…弁棒、23…ガイド部、24…弁棒貫通部、25…ブッシュ、26…アクチュエータ、27…蒸気抜き孔、28…冷却蒸気通路、29…冷却蒸気マニフォールド、30…冷却蒸気導入孔、31…冷却蒸気孔、32…冷却蒸気排出孔、33…ピストンリング、34…ピストンリング、331…重ね合わせ部、332…隙間、141…分割部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主蒸気入口、主蒸気出口および内部に弁室を有する弁ケーシング、前記弁室に配置された弁座、この弁座に対向して設けられた弁体、前記弁ケーシングを摺動自在に貫通して前記弁体を駆動する弁棒を備えた高温蒸気弁において、
前記弁ケーシングの弁棒貫通部を囲むように冷却蒸気通路を設け、この冷却蒸気通路に外部から冷却蒸気を導入し、当該冷却蒸気通路を通った冷却蒸気を弁室内の弁棒に向けて排出するように構成したことを特徴とする高温蒸気弁。
【請求項2】
前記弁ケーシングの弁棒貫通部に弁軸の摺動を円滑にするブッシュを嵌めたことを特徴とする請求項1記載の高温蒸気弁。
【請求項3】
前記冷却蒸気通路を、外部から冷却蒸気を導入するための冷却蒸気導入孔、この冷却蒸気導入孔に連通し弁棒貫通部を囲むように形成された冷却蒸気マニフォールド、この冷却蒸気マニフォールドから分岐し弁棒貫通部に平行して形成された冷却蒸気孔およびこの冷却蒸気孔で熱交換を終えた蒸気を弁室内に排出する冷却蒸気排出孔とから構成したことを特徴とする請求項1記載の高温蒸気弁。
【請求項4】
前記弁棒貫通部に蒸気抜き孔を設け、この蒸気抜き孔の弁軸を臨む開口の前後に蒸気漏れ防止用のピストンリングを配置したことを特徴とする請求項1記載の高温蒸気弁。
【請求項5】
前記ブッシュを円周方向に複数個に分割したことを特徴とする請求項2記載の高温蒸気弁。
【請求項6】
主蒸気温度を610℃以上、冷却蒸気温度を610℃未満とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の高温蒸気弁。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の高温蒸気弁を備えた蒸気タービンプラント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−105130(P2006−105130A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236009(P2005−236009)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】