説明

高湿度においてバリヤー性を有する基材

本発明は、85%RHにおける酸素バリヤーの残率が約50%以上である保護化合物と一緒に結晶トリアジンの層を含む基材に関する。保護化合物は、好ましくはアジン−ホルムアルデヒド樹脂またはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を、好ましくはヒドロキシ官能性ポリマーと一緒に含み、硬化される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、高湿度において良好なバリヤー性を有する基材に関する。
【0002】
多くの産業において、バリヤー性、例えば、酸素透過に対するバリヤー性は重要である。例えば、食品および飼料産業において、食品および飼料製品を保存するのに酸素バリヤーは重要である。ディスプレイ産業においても、酸素の影響を受けやすい化合物を保護するために高度な酸素バリヤーが重要である。どちらの用途の場合も、単一の薄層プラスチックのバリヤー性は一般に不十分である。それゆえに、これらを改善するために、いわゆるバリヤー層をそうした基材に施す。多くの場合、基材はフィルムであるが、また瓶のような三次元形状であってもよい。
【0003】
現在は、高湿度において良好なバリヤー性を有する基材は当該技術分野において周知である。アルミナ層を有するプラスチックフィルムが通常用いられる。こうした製品には、再利用が困難であること、包装の内容物が見えないこと、さらに電子レンジにかけることができないという欠点がある。別の方法として、フィルム上にSiOx層またはAlOx層が用いられる。しかし、これらには、施工技術が非常に複雑であるためかなりの投資が必要であるという欠点がある。これらの施工のいずれにおいても、施している間に温度が上昇しうるので、あるいは接着力を向上させるために、ポリプロピレンフィルム基材を特に適合させなければならない。このため受け入れられる基材が限られてくる。さらに、SiOxおよびAlOxのコーティングは非常にもろいため、それらの使用には限界がある。
【0004】
それゆえに、高湿度においてバリヤー性が良好であり、さまざまな基材に施しやすく、再利用しても受け入れ可能であり、しかも機械的性質が向上した、代わりの透明なバリヤー層が必要とされている。
【0005】
この問題は、このほど、保護化合物と一緒に結晶トリアジンの層を含み、85%RHにおける酸素バリヤーの残率が50%以上である基材を提供することにより解決された。
【0006】
好ましい実施態様では、保護化合物は結晶トリアジンと反応できる化合物である。別の好ましい実施態様では、結晶トリアジンと反応できる化合物は、高湿度において好適な性質が実現されるのに十分なほど反応させる。
【0007】
好ましくは、残率は80%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上である。0%RHにおいて測定した、結晶トリアジン層を有しない支持体のOTRから、結晶トリアジン層を有する支持体の0%RHにおけるOTRを差し引いたものを100%と見なす。次いで割合は、85%RHにおけるOTRから0%RHにおけるOTRを引くことにより計算する。測定は23℃で行う。意外にも、40℃で測定した場合、OTR値はかなり低くなる。このことから、バリヤーフィルムは高湿度においても非常に有効であることが明らかである。
【0008】
好ましくは、トリアジン層により、0%RHで測定した場合にトリアジンバリヤー層なしのOTRの約1/3かそれより上回ってOTRが減少する。さらにより好ましくは、結晶トリアジン層により、トリアジン層なしのOTRの約1/5かそれより上回って、さらにより好ましくは約1/8かそれより上回ってOTRが減少する。絶対値は基材の種類および厚さに左右され、広い範囲にわたって異なりうる。
【0009】
結晶トリアジン層(例えば、結晶メラミン層のような)が、プラスチック(ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートなど)の基材の酸素透過性または二酸化炭素透過性を減少させるバリヤー層として記載されている(例えば、米国特許第6632519号明細書、国際公開第2004/101662号パンフレットまたは国際公開第2004/101843号パンフレットを参照)。酸素透過性は確かに低湿度で実質的に減少するが、85%RHで測定した場合には改善されたバリヤー性は消失する。
【0010】
本発明のさらなる目的は、85%RHにおいてバリヤー性が実質的に保持される結晶トリアジン層を提供することである。
【0011】
このほど本発明者らはさらに、硬化アジン−ホルムアルデヒドまたはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂と一緒に結晶トリアジンの層を含む基材を見出した。
【0012】
そのような樹脂の好ましい実施態様について以下に説明する。
【0013】
好ましい実施態様では、結晶トリアジン層を「単一」バリヤー層として使用する。それは、比較的施しやすい、再利用可能な透明バリヤーフィルムが得られるからである。
【0014】
しかし、業界では、さらに改善されたバリヤー性を持たせることがさらに必要とされている。
【0015】
本発明の別の好ましい実施態様では、結晶トリアジン樹脂は、アルミナまたは金属酸化物バリヤー層上のトップコートとして使用するが、それはバリヤー性を改善しかつアルミナまたは金属酸化物層を保護するためである。高湿度におけるバリヤー性を維持するために、結晶トリアジン層上にさらなる保護化合物を施す。
【0016】
バリヤーフィルムは、好ましくは、多数の一連の処理条件を含みうるさまざまなさらなる工程段階に付することができる。例えば、高度なバリヤー性を有する基材は一般に、さらなるプラスチックフィルムに貼り合わせる。貼合せ条件は、例えば、溶剤ラミネーション(solvent lamination)、押出貼合せ、または(水性)分散液ラミネーションを含む。押出貼合せは一般に200〜400℃で行われる。さらに、基材には一般に、例えば、テキスト、絵、または均一な色が印刷される。さらなるフィルムに印刷を行ってもよいが、多くの場合、バリヤー性を有するフィルムに印刷するのが好ましい。なぜならそのフィルムのほうが厚いので、印圧にいっそう十分に耐えることができるからである。ソフトロールおよびハードロール印刷(soft and hard roll printing);溶剤インキ、水性インキ(water ink)、または紫外線硬化性インキの使用など、いくつかの印刷技術がある。露出状態の結晶トリアジン層はいくつものこうした処理条件に耐えることができるが、すべてに耐えられるわけではない。トリアジンの非常に薄い層は水またはアルコールに溶解しうるので、特に水性の接着剤またはインキは好ましくない。さらに、押出貼合せでは(特に温度が高くなると)トリアジンは昇華することがある。ハードロール印刷機(hard−roll printer)による強い機械的衝撃によって、バリヤー性の低下が引き起こされることがある。いくつもの用途において、バリヤーフィルムはそれ自体が(任意選択的に、印刷後に)使用され、互いにシールされるか、あるいは基材にシールされる。
【0017】
本発明のさらなる目的は、非常にさまざまな処理条件に耐えることのできる結晶トリアジン層を提供することである。
【0018】
本発明者らは、このほど硬化樹脂をさらに持つ結晶トリアジン層を有する基材をさらに見出したが、その樹脂は硬化前にはアジン−ホルムアルデヒド樹脂またはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を含んでいるものである。
【0019】
本発明の一実施態様では、硬化樹脂はコーティング、より好ましくは保護コーティングを形成する。
【0020】
本発明の別の実施態様では、硬化樹脂はラミネートにおいて接着剤層として機能する。
【0021】
樹脂はフィルム形成性ポリマーをさらに含むことが好ましい。
【0022】
フィルム形成性ポリマーは、架橋性または実質的に非反応性であってよい。好ましくは、ポリマーは架橋性である。
【0023】
本発明の1つの好ましい実施態様においては、ポリマーは、アジン−ホルムアルデヒド樹脂またはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂と反応できる。
【0024】
本発明の別の好ましい実施態様では、樹脂は、フィルム形成性ポリマーと反応できる、好ましくはアジン樹脂またはフェノール樹脂とも反応できる、さらなる架橋剤を含む。
【0025】
本発明の好ましい実施態様では、バリヤー性を有する基材は密閉可能である。
【0026】
別の好ましい実施態様では、バリヤー性を有する基材は、印刷時にそのバリヤー性を実質的に保持する。例えば、保護化合物と一緒に結晶トリアジンの層を含む基材は、印刷時における酸素バリヤーの残率が70%以上、好ましくは90%以上である。この残率は、高湿度における残率と同じようにして定義される。
【0027】
本発明はさらに、
a)基材を用意するステップと、
b)結晶トリアジン層を施すステップと、
c)樹脂組成物を施すステップと、
d)樹脂組成物を少なくとも部分的に硬化させるステップと
によって結晶トリアジン層および硬化樹脂を有する基材を得る、バリヤー性を有する基材を製造するための方法に関する。
【0028】
好ましい実施態様では、本発明はさらに、
a)第1フィルム基材を用意するステップと、
b)任意選択的にアルミナまたは金属酸化物の層を設けるステップと、
c)結晶トリアジン層を施すステップと、
d)樹脂組成物を施すステップと、
e)樹脂組成物を少なくとも部分的に硬化させるステップと
を含み、さらにステップdまたはeの後にさらなるフィルムを施すか、あるいはステップ(d)として樹脂組成物を有するフィルムを施して、少なくとも結晶トリアジン層および硬化樹脂を有するラミネートを得る、バリヤー性を有するラミネートを製造するための方法に関する。
【0029】
本発明はさらにまた、結晶トリアジンバリヤー層を保護するためのアジン−ホルムアルデヒド樹脂またはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂の使用に関する。
【0030】
別の実施態様では、本発明は、気体バリヤー性の改善されたプラスチックの容器、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)の、例えば瓶または樽のような容器に関する。本発明はさらにまた、そのような容器を製造するための方法および装置に関する。
【0031】
PET、PPまたはPE瓶のような処理されていないプラスチック容器は、適度な気体バリヤー性、例えば酸素または二酸化炭素バリヤー性を有する。しかし、瓶の内容物が気体透過の影響を非常に受けやすい場合(例えば、果汁またはビールのように酸素の影響を受けやすいなど)、そのバリヤー性は不十分である。同様に、炭酸入りの清涼飲料やビールでは、二酸化炭素ガスに対してバリヤー性の良好なタイプの瓶が必要とされる。現在は、瓶のようなプラスチック容器が使用されているが、一般に内容物の貯蔵安定性は(非常に)不十分である。
【0032】
酸素バリヤー性(oxygen barrier properties)のような気体バリヤーを改善するためのいくつかの方法が提案されてきた。しかし、先行技術で提案されている解決策における欠点のない、酸素透過性の改善されたプラスチック容器が必要とされている。
【0033】
本発明者らは、そのような欠点のない気体バリヤー性を改善する方法を見出した。本発明者らは、再利用が可能であり、透明であり、しかも低温殺菌処理で使用できる、気体バリヤー性の良好なプラスチック容器を得る方法を見出した。
【0034】
本発明によれば、プラスチック容器は、結晶トリアジン層とそのトリアジン層を保護するさらなる熱硬化性コーティングを含む。
【0035】
アジン樹脂は当該技術分野において知られている。アジンの例として、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン(benzguanamine)およびグリコウリル(glycouril)があり、これらは、任意選択的に部分アルキル化されてよい。フェノールはよく知られており、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂はフェノール、アルキルフェノール、ビスフェノール、塩素化フェノールなどを用いて製造できる。
【0036】
本発明の一実施態様では、アジン樹脂を用いるのが好ましい。それは、こうした樹脂は一般に無色透明であり、コーティングによって色がつかないためである。好ましいアジンは、メラミン、尿素およびそれらの混合物である。本発明の好ましい実施態様では、アジン樹脂は、ヘキサメチロールメラミン、またはそれから得られるヘキサメチルメチロールメラミンのようなアルキル化誘導体を含む。
【0037】
アジン樹脂またはフェノール樹脂は、ホルムアルデヒドをアジンまたはフェノールを反応させることによって作られる。一般に、反応は水中で、さらに詳細には水/ホルムアルデヒド混合物中で行われる。水は結晶トリアジンのコーティングに用いるのに好ましい溶剤ではないので、実質的にすべての水を除去し、100%固体として樹脂を使用するか、あるいは水の代わりに別の溶剤を用いるのが好ましい。特に、アルコキシル化されたアジン樹脂またはフェノール樹脂を用いるのが好ましい。こうした樹脂では、メチロール基の一部または全部がアルコール(一般には、第一アルコール)でエーテル化される。本発明の一実施態様では、メチロール基は単に部分的にエーテル化されるだけである。それは、そのような樹脂がより反応性でありうるためであり、そのことは熱に弱い基材上で低温硬化を行うのに特に有利である。
【0038】
好ましい実施態様では、アジン−またはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂は実質的に100%固体であるか、または非水溶剤に溶かされる。
【0039】
別の好ましい実施態様では、アジン−またはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、アルキルアルコール化合物によって部分エステル化される。好ましくは、アルキルアルコール化合物は1〜24個の炭素原子、好ましくは1〜12個、もっとも好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。アルキルアルコール化合物の例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、シクロヘキサノール、ドデカノールなどがあるが、これらに限定されない。
【0040】
樹脂組成物中の溶剤として、普通の溶剤を使用できる。溶剤中の水の量は少ないのが好ましい。好ましくは、溶剤中の水の量は約4重量%以下、好ましくは約1重量%以下である。さらに、アルコール化合物の量も少なくするのが好ましい。
【0041】
好ましくは、アルコール化合物の量は、約20重量%以下、好ましくは約10重量%以下である。一般にいくらかのアルコール化合物が、アルキル化ホルムアルデヒド樹脂の溶剤として、かつ/または触媒などの溶剤として存在することになる。好ましくは、溶剤は炭化水素系溶剤を含む。好適な炭化水素系溶剤として、キシレン、エチルベンゼン、ナフサ留分、トルエン、n−ヘキサン、オクタンなどがある。他の適切な溶剤として、エステル(酢酸エチル、メトキシプロピルアセテート、ブタンジカルボン酸のジエチルエステルのようなもの)、ケトン(エチルメチルケトン、アセトンのようなもの)などがある。しかし、エステルおよびケトンは、トリアジン層に悪影響を及ぼすことがあるので、それほど好ましくないであろう。エステルおよびケトンは、好ましくは溶剤の約20%以下、より好ましくは溶剤の約10重量%以下だけ存在する。
【0042】
好ましくは溶剤を使用しないか、あるいは溶剤を使用する場合でも、好ましくは、芳香族溶剤または脂肪族溶剤のような炭化水素系溶剤を、約50重量%以上、好ましくは約70%以上、もっとも好ましくは約85%以上使用する。
【0043】
アジン樹脂またはフェノール樹脂(好ましくはエーテル化されたアジン−ホルムアルデヒド樹脂またはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂)はそれ自体を、好ましくは触媒と一緒に使用できる。この場合、樹脂組成物の約90重量%以上はアジン樹脂またはフェノール樹脂である。
【0044】
本発明の好ましい実施態様では、さらなるポリマーをアジン樹脂またはフェノール樹脂と一緒に使用する。このポリマーは、架橋性樹脂、または非架橋性ポリマーであってよい。
【0045】
好ましい実施態様では、アジン樹脂またはフェノール樹脂の量は、樹脂組成物の約3重量%以上(有機固形分)、好ましくは約5重量%以上、より好ましくは約8重量%以上、さらにより好ましくは約15重量%以上である。別のポリマーが存在する場合、それは好ましくは、約10重量%以上、好ましくは約30重量%以上、さらにより好ましくは約50重量%以上だけ存在する。
【0046】
本発明の一実施態様では、さらなるポリマーは、ポリエステル、ポリエーテル、アクリルポリマー、ポリカーボネート、ポリ炭化水素(polyhydrocarbon)あるいはこれらの混合物および/またはコポリマーである。そのようなポリマーの好適な例として、アルキドおよび変性アルキド樹脂;(変性アルキドはアクリル化またはエポキシ化(epoxydized)アルキド樹脂である)、飽和ポリエステル;アクリル変性ポリエステル;アクリル樹脂、ポリエーテル(ポリエチレンオキシド;ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、ポリ(メチル)テトラヒドロフラン、エチレンオキシド−ブチレンオキシドコポリマー、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーのようなもの);ポリカーボネート;PC−PPOコポリマー;TMP−トリ/ヘキサ−カプロラクトン(TMP−tri/hexa−caprolacton);アルコキシル化ペンタエリトリトール、エトキシル化BPA、アクリルアミド樹脂;OH官能性アクリル樹脂;エポキシエステル;エポキシ官能性フェノール樹脂またはポリエステル−フェノール樹脂;ヒドロキシル化ポリブチレン、ヒドロキシル化C9樹脂、ヒドロキシル化C5樹脂、および無水マレイン酸グラフト化炭化水素樹脂があるが、これらに限定されない。さらに、セルロースオリゴマーのような天然物質に基づいたポリマーを使用できる。
【0047】
好ましくは、さらなるポリマーの数平均分子量は、約50000以下、好ましくは約20000以下であり、かつ約500以上、好ましくは約1000以上である。
【0048】
好ましくは、さらなるポリマーは反応性基を有し、架橋網目(cross−linked network)を形成することができる。本発明の一実施態様では、さらなるポリマーはアジン樹脂またはフェノール樹脂と反応する。好ましくは、さらなるポリマーは反応性ヒドロキシル基を有する。好ましくは、ヒドロキシル価は約3以上、好ましくは約20以上である。一般に、OH価は約200以下、好ましくは約150以下になる。一般に、酸価は約50以下、好ましくは約10以下になる。
【0049】
非架橋性樹脂の好適な例は、例えば、アクリル樹脂、メチルセルロース、炭化水素樹脂(粘着付与剤)などである。
【0050】
添加剤として、樹脂組成物は、安定剤、流動剤(flow−agents)、湿潤剤、遮蔽剤(shielding agents)、着色剤、粘着防止剤、接着増強剤、帯電防止剤、防汚剤(フッ化材料、ケイ素液(silicon fluids)、アクリルポリマーのようなもの)、フィルムを密閉可能にする粘着剤などを含んでよい。これらの添加剤は一般に、樹脂組成物の約0.1重量%以上、多くの場合、約1重量%以上を構成することになる。一般に、その量は約20重量%以下、好ましくは約10重量%以下になる。
【0051】
樹脂組成物は、充填剤、あるいは固体添加剤(ナノ粒子、粘土、ケイ素、静電気防止剤、炭素、堅くするためのAlOxなどのようなもの)をさらに含んでよい。固体添加剤は、樹脂、溶剤などに関する計算に含めないが、それはそれらの粒子が一般に非反応性だからである。固体添加剤の量は、約5重量%以上、好ましくは約10重量%以上であってよく、樹脂の量に対して200重量%以下にもすることができ、好ましくは約100重量%以下にすることができる。
【0052】
樹脂組成物は、硬化速度を上げるため、かつ/または硬化温度を下げるために、好ましくは触媒を含む。
【0053】
一実施態様では、樹脂組成物は、120℃で10分以内にアジン樹脂またはフェノール樹脂を好適に硬化させるのに十分な触媒を含む。好ましくは、硬化は120℃において約5分以下で十分である。この実施態様は、例えばPET支持体を使用する場合に適している。
【0054】
別の実施態様では、樹脂組成物は、70℃において20分以内、好ましくは10分以内、より好ましくは5分以内に好適に硬化させるのに十分な触媒を含む。この実施態様は、例えばPP支持体を使用する場合に適している。
【0055】
本発明の別の実施態様では、樹脂組成物は二重硬化(dual cure)化合物を含む。例えば、樹脂は、樹脂がエチレン性不飽和構成成分を含んでいる場合には紫外線で硬化させ、さらに熱により、アジンホルムアルデヒド樹脂またはフェノールホルムアルデヒド樹脂を硬化させてよい。あるいはまた、ヒドロキシル官能基の一部をイソシアネートと架橋させ、別の部分を熱で架橋させて、アジンホルムアルデヒド樹脂またはフェノールホルムアルデヒド樹脂を硬化させてよい。あるいはまた、化合物の一部を酸/エポキシ反応またはアミン/エポキシ反応によって硬化させ、残りの部分を熱で硬化させて、アジンホルムアルデヒド樹脂またはフェノールホルムアルデヒド樹脂を硬化させてよい。二重硬化メカニズムは、樹脂組成物を第2フィルムの接着剤として使用する場合に特に有利でありうる。
【0056】
一般に、23℃における樹脂組成物の粘度は約0.1Pa.s以上、好ましくは約1Pa.s以上になる。一般に粘度は、粘度計で測定した場合に約50Pa.s以下、好ましくは約10Pa.s以下になる。
【0057】
樹脂組成物は、グラビアコーターまたは他の知られている手段で施すことができる。好ましくは、樹脂組成物は、約100nm以上、好ましくは約1μm以上の厚さに施す。一般に、厚さは約100μm以下、好ましくは約10μm以下になる。好適な厚さは、例えば、1.5、2、3または4μmでありうる。
【0058】
硬化は、樹脂組成物を有する基材をオーブンで加熱するか、または赤外線照射によって行うことができる。
【0059】
本発明の一実施態様では、保護コーティングは20〜60℃において支持体上で後硬化されるが、これはメチロール−エーテル化反応がこうした温度で進行してさらに硬化が行われるからである。
【0060】
本発明のさらなる実施態様では、ラミネートは、プラスチックフィルム上の結晶トリアジン層を含み、それは硬化樹脂組成物によって保護され、かつ保護層とさらなるプラスチックフィルムとの間に接着剤層を有する。
【0061】
さらなる実施態様では、ラミネートは、結晶トリアジン層を保護する硬化樹脂上に模様または図柄を含む。
【0062】
さらなる実施態様では、フィルムは保護された結晶トリアジン層上に直接押し出され、それに印刷してよい。
【0063】
さらなる実施態様では、本発明は、PET基材、結晶トリアジン層(反応性化合物、ポリオレフィン層、紙または厚紙層で保護されているもの)およびさらなるポリオレフィン層を含む包装に関する。
【0064】
さらなる実施態様では、本発明は、PP、PETおよびポリアミドから独立的に選択されるプラスチック層、結晶トリアジン層ならびに保護化合物を含む、加熱処理可能な(retortable)ラミネートであるラミネートに関する。ラミネートは、加熱処理条件(retorting conditions)に耐えるのに適した接着剤をさらに含むことになる。接着剤は保護化合物を含むことができるか、あるいはラミネートが保護コーティングおよび加熱処理可能な接着剤を含むことができる。
【0065】
蒸着ステップにおいて基材上に形成される結晶トリアジン層の厚さは、意図する目的によって異なり、したがって幅広い範囲にわたってさまざまであってよい。好ましくは、層の厚さは、約100μm以下、より好ましくは約10μm以下、さらにより好ましくは約1μm以下であるが、それはそのように厚さが薄いと、透明性が向上するからである。厚さは、費用の理由から、例えば約500nm以下にすることができる。最小の厚さは、好ましくは約2nm以上、より好ましくは約10nm以上、さらにより好ましくは約100nm以上である。これはそのような厚さにより保護性が向上するからである。例えば、厚さは約200または300nm以上にすることができる。
【0066】
本発明による結晶トリアジン層は、原則として、任意のトリアジン化合物、例えばメラミン、メラム(melam)、メレム(melem)、またはメロン(melon)あるいはそれらの混合物を含んでよい。好ましくは、トリアジン化合物はメラミンである。別の好ましい実施態様では、結晶トリアジンはメラミンとメラムとの混合物であるが、それは混合物により水に対する抵抗性がさらに向上するからである。そのような混合物は、10〜40重量%のメラム、および90〜60重量%のメラミンを含むことができる。
【0067】
好ましくは、結晶トリアジン層を有する基材は、結晶トリアジン層の側において、接着剤およびプラスチックフィルムと貼り合わせられている場合、引張試験装置を用いて30mm/分および90度で測定した場合に、約2.5N/インチ以上、より好ましくは約3N/インチ以上、さらにより好ましくは約3.5N/インチ以上の貼合せ強度(lamination strength)を示すことができる。一般には貼合せ強度の上限は重要ではないが、一般に、これは約20N/インチ以下になる。試験を行うための結晶トリアジンを有する基材の貼合せは、好ましくは適切なウレタン接着剤で行い、10μmの薄さのポリエチレンフィルムと貼り合わせる。その後、2つのフィルムの貼合せ強度を測定でき、破損モードを観察できる。適切な接着剤は、破損モードが接着層に観察されないような接着強度を有する接着剤である。接着力(adhesion)が非常に強くてプラスチックフィルムが破損することがある。その場合、フィルムを破損させるのに必要な力の値を、接着力の値と見なすことができる。
【0068】
基材は、支持体の役目を果たす材料を含み、これは一般にフィルムまたはウェブの形態のプラスチックまたは紙になる。
【0069】
柔軟な包装材料は一般に、フィルムまたはシートのような材料(本明細書ではフィルムと呼ぶ)をベースにしている。
【0070】
本発明による保護トリアジン層を有する基材、特に基材としてフィルムを有するものは、それ自体を使用してよいが、プラスチック、紙、厚紙、などに貼り付けることもできる。
【0071】
本発明の一実施態様では、保護トリアジン層を有する基材は、食品および飲料製品の包装の一部である。好適な食品および飲料製品としては、コーヒー豆または挽かれたコーヒー豆、ビール、果汁、トマト・ケチャップ、ミルク、チーズ、加工調理済み食品などがあるが、これらに限定されない。包装は、電気部品、パーソナルケア製品および医薬品などの他の製品にも使用できる。
【0072】
本発明の別の実施態様では、保護トリアジン層を有する基材(任意選択的に、ラミネートのもの)は、ディスプレイまたは他のエレクトロニクス製品に使用される。ディスプレイは、柔軟なものであるか、または堅いものでありうる。柔軟なエレクトロニクス製品の一例はフレキシブルディスプレイである。例えば、堅いディスプレイ(ガラスシート上のディスプレイ)では、保護トリアジン層を有する基材は酸素攻撃からOLEDを保護するのに使用できる。
【0073】
トリアジン層のバリヤー性および/または接着力は、下塗層のコロナ処理またはプラズマ処理で最初に基材を処理した場合に、向上しうる。下塗り剤として、各種の化合物を使用できる。例として、紫外線硬化性モノマー(アクリレートおよびエポキシ化合物など)および各種の熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、イソシアネートまたはポリエステル系接着剤など)がある。下塗り剤の塗布は、(真空チャンバー内において)最初に下塗り剤を塗布し(例えば、蒸発、霧状化またはCVDを行い)その後でトリアジン化合物を付着させることによりインライン式で行うか、あるいはオフライン式で、すなわち真空チャンバーの外で下塗り剤を塗布することにより行うことができる。別個の種類の下塗り剤および接着剤を用いて、インライン方式およびオフライン方式を組み合わせることも可能である。より高度なバリヤー性を実現するために、この工程を何度も繰り返して、ベースの基材(例えばPET)、下塗り剤、トリアジン層、下塗り剤、トリアジン層、下塗り剤などから構成される複合構造体を作ることができる。
【0074】
基材フィルムは均質材料から構成されていてよいか、あるいはそれ自体が不均質材料または複合材料であってよい。基材フィルムはさまざまな層を含んでよい。好ましくは、フィルムは高分子材料を含む。高分子化合物の例には、熱可塑性化合物および熱硬化性化合物がある。好適な熱可塑性化合物の例として、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエステルおよびポリアミドがある。好適なそのようなポリマーの例として、HDまたはLDポリエチレン(PE)、LLDポリエチレン、エチレンプロピレンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレンテレフタレート(PET)がある。これらの熱可塑性化合物は、フィルムの形態で、それ自体が使用されるかまたは延伸されて使用されることが多い。そのような延伸は二軸延伸であってよく、例えば二軸延伸されたポリプロピレンフィルム(BOPP)、二軸延伸されたポリエチレンテレフタレート(BOPET)および二軸延伸されたポリアミドフィルム(BOPA)などである。フィルムは紙の層を含んでもよい。
【0075】
保護結晶トリアジン層を有する基材は、例えば、フレキソ印刷、グラビア印刷または凸版印刷など、当該技術分野において知られている方法で印刷できる。好適なインキ、例えば、溶剤系インキ、水性インキまたは紫外線硬化性インキなどを使用できる。印刷はラミネート上に行うこともできる。
【0076】
結晶メラミン層を有する基材をさらに処理してラミネートにすることができる。さらなるラミネーションステップは、接着剤とフィルムを施すことによって行うことができるか、あるいは直接押出貼合せで行うことができる。接着剤として、溶剤系または水性の接着剤または無溶剤系を使用できる。本発明の好ましい実施態様では、接着剤および保護コーティングは同じ材料である。接着剤の例として、アクリレート、エポキシ化合物、イソシアネート、ポリエステル、およびメラミンホルムアルデヒド樹脂をベースにした各種の紫外線硬化性または熱硬化性樹脂がある。
【0077】
本発明の別の実施態様では、直接押出貼合せは比較的低温で保護結晶トリアジン層に対して行われる。低温の場合、エネルギーが節約され、バリヤー特性が向上する。一般には、押出貼合せは、他の系の接着力を向上させるために約400℃で行って押出しフィルムを酸化させる。それほどの高温は不要と思われるので、押出貼合せは、好ましくは約300℃以下の温度、さらにいっそう好ましくは約250℃以下、もっとも好ましくは約200℃以下で行う。
【0078】
本発明による結晶トリアジンおよび保護化合物を有する基材は、有利なバリヤー性を有し(例えば、低い酸素透過速度(OTR)および低い水蒸気透過速度(WVTR))、耐摩耗性が十分である。
【0079】
本発明の別の好ましい実施態様では、ラミネートはレトルト包装(retortable packaging)に使用される。この包装は、その最終的な内容物と一緒に、滅菌条件(例えば、蒸気雰囲気中において120℃より少し高めにして30分間から、最高で、例えば130℃において3時間まで)にさらす。そのようなラミネートでは、(例えばPEはそうした温度に耐えられないため)特殊なプラスチックフィルムおよび特殊な接着剤が必要である。
【0080】
OTRは一般に、20〜30℃(例えば23℃)および0%から85%RHの間の雰囲気で測定する。好ましい値は一般に基材によって異なる。基材が二軸延伸されたポリプロピレン(BOPP)である場合、OTRは一般に約400cc/m・24h・MPa以下、好ましくは約300cc/m・24h・MPa以下、さらにより好ましくは約200cc/m・24h・MPa以下になる。一般に、BOPPの場合、OTRは約20cc/m・24h・MPa以上になり、例えば約50cc/m・24h・MPa以上でありうる。OTRは、好適な装置で(例えば、Modern Control Co.製のOXTRAN 2/20などで)測定できる。基材がPETフィルムである場合、OTRは一般に約50cc/m・24h・MPa以下、好ましくは約30cc/m・24h・MPa以下、さらにより好ましくは約10cc/m・24h・MPa以下になる。一般に、PETである場合、OTRは約0.3cc/m・24h・MPa以上になり、例えば約0.5または1cc/m・24h・MPa以上でありうる。
【0081】
透湿性(WVTR)は、25〜40℃および50から90%RHの間の雰囲気において、Modern Control Co.製のPERMATRAN 3/31で測定できる。好ましい値は基材によって異なることになる。例えばBOPPの場合、WVTRは一般に約3g/m・24h以下、好ましくは約2g/m・24h以下、より好ましくは約1g/m・24h以下である。一般に、透湿性は、約0.1g/m・24h以上、例えば約0.2g/m・24h以上になる。例えばPETの場合、WVTRは一般に約8g/m・24h以下、好ましくは約7g/m・24h以下、より好ましくは約4g/m・24h以下である。一般に、透湿性は約0.5g/m・24h以上になり、例えば約2g/m・24h以上になる。
【0082】
好ましくは、ラミネートは、前の2つの段落で示された値に適合するOTRおよびWVTR(他の基材についても)を有する。
【0083】
保護結晶トリアジン層を有する基材(任意選択的に、例えば印刷および貼合せでさらに処理したもの)は、あらゆる種類の包装材(例えば、紙、シートおよびフィルム)として、またはそうした包装材に施すことができる。包装材は、例えば酸素からその内容物を非常に申し分なく保護し、このような仕方で、例えば食品またはパーソナルケア製品の保存寿命を延ばすか、または酸素攻撃から電子部品を保護する。
【0084】
一実施態様では、ラミネートは、基材であるPETまたはBOPPフィルム、バリヤー層である結晶トリアジン層、さらに保護コーティングを含む。ラミネートは、保護結晶トリアジン層上に模様または図柄を、また任意選択的に接着剤とその上にさらなるフィルム(好ましくはPEフィルムなどのポリオレフィンフィルムであってよい)をさらに含んでいる。別の好ましい実施態様では、ポリオレフィンフィルムは、保護トリアジン層上の直接印刷の代わりに裏面印刷を有する。
【0085】
本発明の別の実施態様では、基材は、熱可塑性ポリマーで作られたプラスチック容器である。好適な熱可塑性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリオレフィンおよびポリ塩化ビニルがある。
【0086】
プラスチック容器は、瓶、樽、小たる、バッグインボックスおよび液体を保持できる他の形態であってよい。内容物の一部は、オリーブ、チーズ、タマネギ、ピクルス、香辛料および柑橘類または他の果物のような、固体であってよい。本発明の好ましい実施態様では、容器は瓶である。本発明の別の実施態様では、容器は樽である。
【0087】
本発明の一実施態様では、ポリマーは熱可塑性ポリエステルおよび任意選択的に他のポリマーを含み、ポリエステルは熱可塑性材料の少なくとも80重量%だけ存在する。ポリエステルは好ましくは少なくとも80%のポリエチレンテレフタレートを含み、PETとブレンドしてよい他のポリマーはポリエチレンナフタレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレートなどである。好ましくは、PET容器は約90%以上のPETからなる。PET容器は、単一層の瓶または多層の容器であってよい。好ましくは、再利用PETが外層であり、再生されたものではないPETが内層である多層が使用される。
【0088】
本発明の別の実施態様では、容器は、ポリエステルであるポリ乳酸などの天然材料に基づくポリマーから作られる。
【0089】
PET瓶は、例えば、予備成形物の射出成形を行い、その後で予備成形物を吹込成形して実際の瓶形状にすることによって作製できる。
【0090】
ポリオレフィンの容器として、好ましくはポリエチレンまたはポリプロピレンの瓶、樽および他の形態がある。そうした容器は一般にブロー成形によって作られる。
【0091】
本発明の別の実施態様では、瓶はポリプロピレンから作られる。PPは比較的安価であるが、瓶に非常に適した材料となるような機械的性質を有する。さらに、PPは、事実上PET瓶と同じほど透明な瓶に加工することができる。
【0092】
本発明のさらに別の実施態様では、容器はポリエチレンから作られる。PEはPPよりもさらにもっと安価であり、これも、瓶のような容器に非常に有用な材料となるような非常に優れた機械的性質を有する。一実施態様では、HDPEの本来備わっているバリヤー性がLDPEのものより優れているので、HDPEを使用するのが好ましい。
【0093】
上述の容器は液体を保持するものである。本発明の一実施態様では、容器は(任意選択的に、一部分が)強化部材中に保持される。好適な強化部材としては、厚紙または木材の箱あるいは付加的な底部があるが、これらに限定されない。
【0094】
バリヤー性を有する容器は、そのような包装を使用できる食料や飲料、パーソナルケア、医薬および他の用途に使用できる。内容物は一般に、ビール、ジュース、油または軟膏のような流動性のものであろう。しかし、医薬品のような固体の内容物でも酸素遮断が必要とされることがある。
【0095】
容器には、0.2リットル(L)以上など、0.05以上の有用な内容物を入れることができる。サイズの好適な例として、0.05L、0.1L、0.2L、0.25L、0.33L、0.5L、1パイント、1L、1.5L、2L、2.5L、3L、1ガロン、5L、10Lなどがある。もっと大きな量も好適であることがあり、上限は重要ではない。好ましくはフードサービス用および工業的用途の樽、小たるまたはバッグインボックスで、50L〜100L、最大で2000、5000、10,000または50,000リットルまでのサイズの、ビール、ワインまたは流動食成分に関して使用するのに適したものを想像できるだろう。
【0096】
本発明の好ましい実施態様では、容器は、容量が0.2〜0.5Lの間、例えば0.2、0.25、0.33、0.5Lまたは1パイントなどの瓶である。この容量は、ビール、清涼飲料、果汁、ワインなどの1回分に特に有用である。例えば、0.05L、0.1L以上のサイズの瓶は、パーソナルケア用途(例えばクリーム、化粧水など)に、少量提供されるチャップなどのような食品に、医薬用途に、カプセル、糖衣丸、丸剤などを入れる小さな瓶に好適であろう。
【0097】
別の好ましい実施態様では、容器は、容量が0.5から3Lの間、例えば0.75、1、1.5、2、2.5または3Lなどである瓶である。この容量は、数回分のビール、果汁、清涼飲料、ワインなどに特に有用である。
【0098】
別の好ましい実施態様では、容器は、容量が3〜10L(例えば、3、5、または10Lなど)、1、2または3ガロンなどの比較的小さい樽、小たるまたはバッグインボックスである。この容量は、数回分のビール、ワイン、果汁または炭酸ミネラルウォーター(carbonized mineral water)に特に有用である。
【0099】
結晶トリアジン層は一般に蒸着によって付着させる。メラミンは、昇華温度が大気圧で約350℃であり、これは真空中では約200〜250℃に下げることができる。トリアジン粉末はオーブンで該当する温度まで加熱して、トリアジンの昇華を引き起こすことができる。基材は、トリアジンが基材の表面に付着する(凝縮する)ような温度である。トリアジンは小さな結晶子(つまり、粒)として凝縮する。
【0100】
結晶トリアジン層は、プラスチック容器の内側、または外側、あるいはその両方に存在してよい。
【0101】
トリアジン層は、好ましくは、容器の製造後に容器の表面に直接施し、それによってプラスチック上の第1層が構成される。
【0102】
本発明の一実施態様では、プラスチック表面と結晶トリアジンとの間の接着力を向上させるために、プラスチックはプラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射または電子ビームで処理する。好ましくは、プラズマ処理を施す。
【0103】
本発明の一実施態様では、最初に金属酸化物の層、続いてトリアジンの層、その後に保護層を付着させるのが有効でありうる。
【0104】
本発明の別の実施態様では、最初に結晶トリアジン層、その後にさらなるバリヤーまたは保護層を付着させるのが好ましい。バリヤー性および/または保護性を有する好適なさらなる層として、金属酸化物層(アルミナ酸化物または酸化ケイ素など)、金属層(アルミナまたは銀など)および有機層があるが、これらに限定されない。
【0105】
トリアジン層は、コーティングされていない瓶と比較して、酸素拡散が約6倍以上、好ましくは約10倍以上少なくなるような量だけ施すのが好ましい。
【0106】
有利な点として、結晶トリアジン層のバリヤー性は、瓶を約20〜30分間にわたって約60℃に加熱することによって引き起こされる熱ストレスおよび/または機械的ストレスに影響されない。
【0107】
結晶メラミンはさらに、食品と接触する材料として許可されており、かつメラミンの薄い層(<1000nm)は完全に透明であるという有利な点を有する。
【0108】
さらに、結晶トリアジン層により紫外線からの保護が与えられる。瓶が無色透明のような透明であり、さらに内容物が紫外線に敏感である用途において、このことは特に有利である。したがって、本発明の一実施態様では、結晶トリアジン層はビールの透明プラスチック瓶に使用される。
【0109】
結晶トリアジン層としてメラミンを選択する場合、短波長の紫外線は実質的に遮断される。平均すると、約100nmの薄いコーティングにより、320から360nmの間の波長の約30%の低減が実現される。紫外線は透過すると評価される。PETフィルムは320nm以上の波長で90%の透過性を示した。メラミンでコーティングされたフィルムは、結晶メラミン層が約100nmの場合、約320nmでの50%から380nmでの70%までの透過性の傾きがあることを示した。
【0110】
本発明の一実施態様では、容器は、コーティングされていない容器と比べて、平均して380から320nmの間の波長の光の約30%以上が遮断され、好ましくは平均して約40%以上が遮断され、もっとも好ましくは平均して約50%以上が遮断されるような紫外線遮断性を実現するような、十分なメラミンでコーティングする。
【0111】
さらに、結晶トリアジン層は、例えば、PET以外のフィルムが2つのPET層の間にある多層系の場合にそうでありうるように、プラスチック容器の機械的一体性を劣化させるということはない。
【0112】
本発明の好ましい実施態様では、瓶の外側コーティングは機能特性を有するコーティングである。好適な機能特性として、紫外線バリヤー性、プラスチックとは異なる水との接触角およびプラスチックよりも硬度が大きいことがあるが、これらに限定されない。
【0113】
本発明の一実施態様では、コーティングは、結晶トリアジン層の遮断特性と相まって、内容物が浴びる380から310nmの間の平均紫外線はコーティングされていない瓶と比べて約50%以下であるという、紫外線遮断特性を有する。好ましくは、紫外線遮断性は、内容物が浴びる平均紫外線が約30%以下、もっとも好ましくは約10%以下であるようなものである。トリアジンバリヤー層はある特定の紫外線遮断特性をすでに示すので、さらなるコーティングの紫外線遮断性の要求条件は、メラミンバリアコーティングのない容器の場合よりも厳しくないであろう。好適な紫外線遮断性は、紫外線吸収剤をさらなるコーティングに加えることによって達成できる。
【0114】
別の実施態様では、さらなるコーティングは、瓶をよりきれいに保ち、生物付着を防止するような、耐付着性(anti−fouling properties)を有する。そのような耐付着性は、ポリエチレングリコールオリゴマー、メタクリル酸ヒドロキシエチル系ポリマー、ポリビニルピロリドンポリマーなどをベースにしたコーティングなど、親水性のコーティングを用いて実現できる。そのようなコーティングの水との静的接触角は、約30°以下であることが好ましい。
【0115】
接触角および滑落角(roll−off angle)は、室温(〜21℃)においてDataphysics OCA 30測定器で脱イオン水を用いて測定することができる。接触角および滑落角は、それぞれの試料表面において3つの異なる箇所での測定値を平均して求める。プローブ液体(probe liquid)が滴に加わり、また滴から退く間に、それぞれ動的前進角(dynamic advancing angle)および動的後退角(dynamic receding angle)を記録できる。
【0116】
本発明の別の実施態様では、外側コーティングは、ガラス物品に似たような性質を示す。例えば、より疎水性(但し、上述の耐付着性コーティングよりも疎水性は小さい)であるコーティングを有することが好ましい。好ましくは、この疎水性は、ガラス瓶と似て、冷たい瓶が温かい湿潤環境で水滴を形成するようなものである。この実施態様では、コーティングの水との静的接触角は、好ましくは約30°以上、約90°以下である。より好ましくは、コーティングは、約40°以上の静的接触角を示す。そのような接触角は、例えば部分的にエチレングリコールまたはヒドロキシ側鎖を有するポリエステルまたはポリプロピレングリコールを含む、疎水性コーティングを用いて実現できる。
【0117】
さらに別の実施態様では、強い疎水性のコーティングは、有利でありうる。PPの静的接触角は約100である。PTFEを用いて、例えば約112などもっと大きな角度に、あるいは一部のフッ素化化合物、シリコーンオリゴマーなどを用いてさらに大きくするのが有利でありうる。
【0118】
別の好ましい実施態様では、コーティングは水バリヤー性を有しており、水との直接接触から結晶トリアジン層を保護する。
【0119】
さらなるコーティングは、吹き付け、浸漬被覆、噴霧などによって施し、その後で加熱、冷却、照射または別の方法で乾燥または硬化させることができる。本明細書で以下に示すコーティングの説明は、容器のコーティングに特に適しているが、その教示はフィルムの保護コーティングにも役立つ。
【0120】
一実施態様では、コーティングは、少なくとも1種のアクリレート官能性化合物を有する放射線硬化性コーティングである。好適な放射線硬化性コーティングは軟質または硬質であってよく、また多層であってよい。好適なコーティングの例は、
(a)少なくとも1個の放射線硬化性基を有するオリゴマーと、
(b)少なくとも1個の放射線硬化性基を有する反応性希釈剤と、
(c)任意選択的に、1種または複数種の光開始剤と
を含む、コーティングである。
【0121】
オリゴマーは、例えばポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィンまたはポリカーボネートであってよい主鎖オリゴマーを含む、ウレタンアクリレートオリゴマーであってよい。ポリエーテルまたはポリエステル型の主鎖が好ましい。オリゴマーは、アクリレート化されたアクリルオリゴマー、ポリエステルまたはポリエーテルであってよい。ウレタン系オリゴマーでは、一般により強靭なコーティングが得られる。
【0122】
一般に、オリゴマーの理論的な平均分子量は約500以上になる。一般に、オリゴマーによりコーティングの柔軟性がもたらされる。
【0123】
以下に硬化性組成物のいくつかの例を示す。この教示は別々に、また組み合わせて用いることができることは、当業者に理解されるであろう。
【0124】
反応性希釈剤は一官能性または多官能性であってよく、希釈剤の分子量は約500以下になる。
【0125】
放射線硬化性の軟質コーティング組成物は一般に、
(a)20〜98重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の、分子量が約1000以上の少なくとも1種のオリゴマーと、
(b)0〜80重量%、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜60重量%、もっとも好ましくは15〜60重量%の、1種または複数種の反応性希釈剤と、
(c)0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%、もっとも好ましくは2〜8重量%の、ラジカル重合反応開始用の1種または複数種の光開始剤と、
(d)0〜5重量%の添加剤と
を含むことができる。
【0126】
好ましくは、オリゴマー(a)は、(メタ)アクリレート基、ウレタン基および主鎖を含む、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。(メタ)アクリレートは、アクリレートならびにメタクリレート官能基を含む。主鎖は、ポリイソシアネートおよびヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと反応させたポリオールから得られる。しかし、ウレタンを含まないエチレン性不飽和オリゴマーを使用してもよい。
【0127】
液体硬化性樹脂組成物の粘度は、好ましくは0.1〜100Pa・s/25℃、より好ましくは0.2〜50Pa・s/25℃、さらにより好ましくは0.45〜40Pa・s/25℃、特に好ましくは1.0〜15Pa・s/25℃である。
【0128】
好ましくは、放射線または熱によって液体硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化生成物の23℃でのヤング率は、好ましくは、2次コーティング、リボンマトリックス材(ribbon matrix materials)、結束材(bundling materials)およびインキコーティング(ink coatings)では、1〜250kg/mm、より好ましくは10〜200kg/mm、特に好ましくは20〜150kg/mmである。光ファイバー用のリボンマトリックス材または結束マトリックス材として組成物を用いる場合、硬化後の組成物のヤング率は通常、約10〜200kg/mm、好ましくは約20〜150kg/mmである。
【0129】
これらの材料の伸び率および引張り強さも、特定用途の設計基準に応じて最適化することができる。瓶の保護コーティングとして用いるために配合された放射線硬化性組成物から形成される硬化コーティングの場合、破断点伸びは典型的には6%〜100%の間であり、好ましくは10%より大きく、より好ましい約15%より大きい。
【0130】
保護コーティングの引張り強さは、好ましくは10から100MPaの間、より好ましくは20から60MPaの間、特に好ましくは25から50MPaの間である。
【0131】
ガラス転移温度(T)(動的機械分析(DMA)で求めるピークのタンデルタとして測定)は、用途の詳細に応じて最適化できる。ガラス転移温度は、保護コーティングとして用いるよう意図した組成物の場合、10℃〜150℃以上、より好ましくは30℃より上であってよい。保護コーティングは、好ましくはTが少なくとも約40℃、特に好ましくは少なくとも約60℃である。
【0132】
本発明の別の実施態様では、保護コーティングはヒドロキシル官能性または酸官能性ポリエステルである。コーティングは官能性ポリエステルを含む。ポリエステルコーティングが低温殺菌に耐え、非常に優れた機械的性質を有するのは利点である。さらに、そのようなコーティングは、(FDA第175300項または通達90/128/EECおよび修正条項に従った)食品用途に承認され、かつ/またはコーティング組成物と基材上のコーティングの良好な接着力に関してよいと認められうる。
【0133】
コーティング組成物に適したポリエステルは、当業者に既知のいくつかのポリエステル製造法によって作ることができる。ポリエステルの製造法は、例えば、ブロックら著「ヨーロッパ・コーティング・ハンドブック」、2000年、ビチェンツ出版社、第53−58頁(Brocket.al.‘European Coatings Handbook’,2000,Vincentz Verlag,pg 53−58)に記載されている。例えば、ポリエステルは、多官能性アルコールおよび多官能性酸および/または多官能性酸無水物の間のエステル化反応によって製造できる。ポリエステルを製造するのに用いるモノマーの種類は、所望の用途に応じて当業者が選択できる。
【0134】
本発明の一実施態様では、コーティング組成物に適したポリエステルは、好ましくは(使用する酸および酸無水物のモノマーの全重量に対して)少なくとも80重量%の芳香族酸および/または芳香族酸無水物をベースにする。本発明の好ましい実施態様によれば、90重量%を超える芳香族酸および/または芳香族酸無水物を使用し、好ましくは95重量%を超える、より好ましくは97から100重量%の間、さらにより好ましくは99から100重量%の間、もっとも好ましくは100重量%の芳香族酸および/または芳香族酸無水物を使用する。
【0135】
本発明のコーティング組成物に適したポリエステルは、架橋剤または架橋剤の混合物で硬化させなければならない。架橋剤または架橋剤の混合物は、所望の用途に応じて選択してよい。当業者は、所望の用途に最も適した架橋剤(1種または複数種の混合物)を容易に決定できる。
【0136】
コーティング組成物は、好ましくは少なくとも1種のフェノール系架橋剤を含む。好適なフェノール系架橋剤は、例えば、硬化性無可塑エポキシ化フェノール樹脂、n−ブチル化フェノール樹脂、非エーテル化エポキシ化フェノール樹脂である。
【0137】
別の架橋剤または他の架橋剤の混合物を、任意選択的にフェノール系架橋剤またはフェノール系架橋剤の混合物と組み合わせてコーティング組成物に加えてよい。好ましくは他の架橋剤は、少なくとも1種のカルボキシ無水物架橋剤を含む。
【0138】
本発明の好ましい実施態様では、硬化は、約100℃以下の温度、好ましくは約80℃以下の温度、もっとも好ましくは約60℃以下で行われる。本発明の好ましい実施態様では、放射線感受性開始剤(radiation sensitive initiator)を用いて硬化を開始する。酸または塩基官能性の光開始剤が知られており、そのような目的に適している。
【0139】
本発明の好ましい実施態様では、紫外線遮断添加剤、(光)開始添加剤、および/または他の添加剤の少なくとも1種が、食物への拡散を制限する高分子構造の一部であり、これによってコーティング自体と食物との接触が可能となるであろう。
【0140】
本発明の一実施態様では、コーティングされたPPまたはPE容器が、(コーティングされていない)PET製の同等の単一層容器よりも優れたバリヤー性を有するように、PPまたはPE容器はトリアジンとバリヤー性を向上させる少なくとも1つのさらなる層とでコーティングされる。
【0141】
本発明によるコーティングされた容器は、有利なバリヤー性(例えば、低い酸素透過速度(OTR)および低い二酸化炭素透過速度)を有し、十分な耐摩耗性がある。したがって、本発明のコーティングされた瓶は印刷に適するように作ることができる。
【0142】
OTRは一般に、23℃および0%または70%RHの雰囲気で測定される。OTRは、好適な装置で(例えば、Modern Control Co.製のOXTRAN 2/22などで)測定できる。基材が瓶のような三次元形状である場合、OTRは一般に無次元の改善係数(improvement factor)であるバリヤー改善係数(Barrier Improvement Factor)(BIF)として報告される。瓶のようなプラスチック容器をその開口部と一緒にガス注入口に接着し、そのプラスチック瓶を覆うようにガラスの瓶または容器を置いて、瓶の外側に密閉された空洞を作る。この空洞にはガスの注入口と出口がある。この場合は、瓶の内側は水素/窒素ガスで満たし、外側は純粋な酸素(99.99995%)で満たした。測定は約7日間実施した。本発明による瓶で達成されるバリヤー改善係数は、好ましくは約6以上、より好ましくはBIFは約10以上、もっとも好ましくは約13以上である。
【0143】
二酸化炭素浸透性は類似の方法で測定できる。大ざっぱに言って、二酸化炭素透過性は酸素透過性の4分の1である。それゆえに、大まかに言って、酸素透過性の絶対値を用い、それを4で割ることができる。
【0144】
メラミンのようなトリアジンの蒸着は、例えば、連続フィルムに関する米国特許第6632519号明細書に記載されている。
【0145】
本発明はまた、容器を結晶トリアジン層でコーティングする装置であって、容器が真空チャンバー中に閉じ込められて保持され、そのチャンバーは1ミリバール以下に減圧することができ、かつトリアジンを蒸発させるのに適したるつぼをさらに含む、容器をコーティングする装置に関する。
【0146】
この場合は、容器は好ましくはセミバッチ方法で処理される。
【0147】
本発明の方法によれば、1つまたは複数の容器をチャンバーに入れ、そのチャンバーを閉じ、1ミリバール以下の真空にし、その後、1つまたは複数のコーティングを付着させ、コーティングの少なくとも1つは結晶トリアジン層である。コーティング層の好適な例は、例えば、最初にメラミンコーティング、その後にCVDによる酸化ケイ素コーティングまたはパリレンコーティングを含む。好ましくは、コーティング材料の注入口は、こうしたコーティングを施さない間、閉じることができる。
【0148】
瓶の内側をコーティングしなければならない場合、それは瓶の開口部を介して行うことができる。樽の場合、バルブまたは栓を製作する前に、樽の内側をコーティングしておくのが好ましい。
【0149】
それゆえに、本発明の装置は、コーティングされる容器の開口部に近づけることのできるパイプをさらに含む。
【0150】
瓶の外側をコーティングする場合、本発明による装置は、好ましくは、付着させる物質を加熱するための2つ以上のるつぼを含む。
【0151】
結晶トリアジン層を有するフィルムおよびそのような層を製造するための方法は、国際公開第2004/101662号パンフレットに記載されている。国際公開第2004/101662号パンフレットには、蒸着ステップにおいてトリアジン化合物(好ましくはメラミン)を減圧下で基材に付着させ、基材の温度が、蒸発させるトリアジンの温度より低くなっている方法が記載されている。国際公開第2004/101662号パンフレットは、蒸着ステップの前またはそのステップの間に、基材の表面に反応性基を作るために、基材をプラズマ、コロナ、紫外線照射、電子ビーム、または反応ガス(水など)で処理し、それによって基材への層の接着力を向上させることができることを示唆している。
【0152】
好ましくは、基材は約50℃以下の温度に維持する。トリアジンを単一バリヤー層として用いる場合、トリアジンは(Alまたは金属酸化物のように)非常な高温に加熱されないので、この目的はかなり容易に達成される。
【0153】
蒸着自体は当業者に知られている方法である。周知のように、蒸着ステップは多くの場合、減圧下で、つまり大気圧より低い圧力で実施される。本発明による方法では、圧力は好ましくは約1000Pa未満、好ましくは約100Pa未満、さらにより好ましくは約1Pa未満、より好ましくは約1×10−2Pa未満である。さらに低い圧力を使用してもよいが、高度な真空を必要としないのが本発明の利点である。これには、油ポンプで十分な真空を達成できること、また拡散ポンプを使用する必要がないという利点がある。
【0154】
金属層も金属酸化物層もない結晶トリアジン層には、比較的低温度で施工を行えるというさらなる利点がある。トリアジンは300〜400℃で蒸発するが、金属または金属酸化物では1000℃を超える温度が使用される。これには、ポリエチレンのような感温基材を使用でき、ポリプロピレンのような基材に特別の添加剤は不要であるという利点がある。
【0155】
蒸着ステップの間、基材の温度は好ましくは約−20℃以上、もっとも好ましくは約−15℃以上である。基材の温度は一般に約+125℃以下、好ましくは約+100℃以下、さらにより好ましくは約+80℃以下、もっとも好ましくは約30℃以下になる。基材の温度は、本明細書では蒸着が行われていない基材部分の温度と定義する。例えば、温度制御されたコーティングドラム(coating drum)上を誘導されるフィルム上に蒸着ステップが行われる場合、基材の温度は、コーティングドラムでの制御温度であり、したがってコーティングドラムと直接接触しているフィルムの表面部分の温度である。そのような場合、付着化合物となる部分は125℃よりかなり高い温度になることが多いことを考慮すると、一般に、周知のとおり、付着が行われる面の基材の温度は付着が行われない面の温度より高くなるであろう。
【0156】
ある明確な温度を基材が確実に有するようにする方法それ自体は周知である。明確な温度を基材が確実に有するようにするそのような1つの周知の方法は、層が蒸着されない少なくとも1つの部分、平面または面が基材にある場合に適用でき、前記部分、平面または面を、冷却表面または加熱表面と接触させてその温度を所望のレベルにし、そのレベルに維持することができる。一例として、基材がフィルムであり、フィルムの一方の面に層が付着する半連続または連続工程として蒸着ステップが実施される場合、前記フィルムは、フィルムの他方の面(層が付着することのない面)が、蒸着ステップの前および/または蒸着ステップの間および/または蒸着ステップの後に、温度制御ロール(コーティングドラムとしても知られている)と接触するような仕方で、温度制御ロール上を誘導できることが知られている。
【0157】
メラミン蒸気と基材との間の温度差の効果の1つとして、核生成点(nucleation points)の数と相まって、結晶メラミン層の粒径に影響を与えることができるという点がある。粒径は、圧力によっても変えることができ、圧力が低いほど、粒径またはメラミンの流れ(すなわち、蒸発したメラミンの量)が小さくなり、メラミンが多くなるほど、粒は小さくなる。さらに、基材への連続(ロールツーロール(role−to−role))付着であるか、または静的付着(static deposition)であるかや、蒸発器の設計も、粒径に影響を与えうる。本発明の好ましい実施態様では、付着工程は、結晶メラミン層の粒径が比較的大きくなるように実施する。そのようにすると、特に湿潤状態でのバリヤー特性が向上するからである。好ましくは、粒径は約200nm以上、より好ましくは約300nm以上である。例えば、粒は平均直径が約400nm以上である。一般に、粒は約1000nm以下、好ましくは約700nm以下になるが、これは速く処理を行うことができるからである。
【0158】
本発明を以下の非限定例によってさらに説明する。
【0159】
[実施例I〜Vおよび比較実験A〜C]
表1に示す構成成分を混合して、以下のコーティング組成物を作った(量は重量部である)。
【0160】
【表1】

【0161】
ボックスコーター(box coater)(約510−5ミリバールの圧力で250℃まで加熱した)内でメラミンを蒸着させることにより、23μmの厚さのPETフィルム(Melinex S)を結晶メラミンの連続層でコーティングした。その後、コーティングはロール塗布によって施した。コーティングの厚さは約4μmであった。結果を表2に要約する。
【0162】
【表2】

【0163】
テープ試験は、55mmの網目線を付け、スコッチテープでいずれかの正方形が剥がれるかどうかを調べることによって行った。良好とは、剥がれがなかったことを意味する。
【0164】
OTRは、Modern Control Co.製のOXTRAN 2/20を用い、その操作説明書に従って測定した。示されている値は、(一般に)48時間後の定常状態での値である。測定は23℃で行った。OTRはcc/m/24hで表わしてある。
【0165】
露出状態のPETフィルムの酸素透過性は約65であり(実験A)、そのOTRは、メラミン樹脂を含むコーティングによる影響がない(実験B)ことを実験は示している。結晶メラミン層を施すと、OTRは実質的に(14倍より大きく)確かに向上するが(実験C)、高湿度では、良好なバリヤー性が失われる。実施例から明らかなように、保護化合物を有する結晶メラミン層は、85%RHにおいてさえ良好な酸素バリヤーに適しており、このためこのバリヤーフィルムは透明包装に適したものとなる。
【0166】
実施例IおよびIVのフィルムは、40℃および85%RHでも測定した。測定したOTR値は、実施例Iでは2.0cc/m/24hであり、実施例IVでは1.1cc/m/24hであった。それで、バリヤー性を有するフィルムは高い温度でさえOTR値が低い。
【0167】
[実施例VI〜XIIおよび比較実験D]
真空チャンバー、開口部を有するオーブン、または小さなパイプ(直径2cm、高さ2cm)を含む実験装置において、瓶の内側にコーティングを行った。開口部またはパイプはバルブを有しており、オーブンの温度が(表に示されているように)約290〜310℃の時にそのバルブを開けて、かなりの連続したメラミンの流れが基材へ向かうようにした。表にさらに示されているように、パイプの長さが約10cmとなるようにパイプを延ばすことができ、また実質的に瓶の内側に入れることができた。
【0168】
1.5リットルのストレートPETの真新しい瓶を使用した。
【0169】
それぞれの瓶を別々に真空チャンバーに入れ、約2〜5 10−5ミリバールまで下げて真空にした。
【0170】
メラミンをオーブン中で加熱したが、これは通常、約4〜5分間行った。栓を開けた後、表3に示されている時間だけ瓶にコーティングした。実施例XIおよびXIIでは、2cmずつパイプ全体にわたって瓶を移動させた。
【0171】
瓶の外側での純粋酸素の酸素透過性に関して、コーティングした瓶を試験し、0%相対湿度において160〜190時間、内部の水素/窒素に関して透過性を測定した。結果を表3に要約する。
【0172】
【表3】

【0173】
バリヤー性は、コーティングされた瓶の内側に極薄のガラスコーティングを施すことにより、さらに向上させることができる。
【0174】
メラミン層をコーティングすることによって摩耗からの適度な保護がもたらされる場合、瓶の外側をコーティングすることによって同等の結果を得ることができる。
【0175】
[比較実験E〜F]
結晶メラミンバリヤーフィルムの耐湿性を調べるために、模型実験を実施した。75μmのPETフィルムに100nmの薄い結晶メラミン層をコーティングした。OTRの測定は、乾燥雰囲気(0%相対湿度(RH))および湿潤雰囲気(85%RH)中で行い、どちらも22℃で行った。また、湿潤雰囲気での測定の後、もう一度乾燥雰囲気中で実験をさらに行った。結果を表2に要約する。
【0176】
【表4】

【0177】
これらの実験から明らかなように、無保護のメラミンでは高湿度で酸素バリヤー性が失われる。しかし、乾燥後にはバリヤー性を取り戻し、結晶トリアジン層が損なわれていないことが分かる。
【0178】
[実施例XIII〜XIV]
PETメラミンフィルムにコーティングされていて、一方は、20℃での引張り強さが50MPaでありTgが65℃である、紫外線硬化性HMMM−アクリレート樹脂でコーティングされ、他方は、ビスフェノールA−ジアクリレート樹脂を含む紫外線硬化性メラミン樹脂でコーティングされている。60℃で12時間フィルムを放置することで、後硬化を行う。乾燥状態および湿潤状態で測定したOTRを比較する。3つの状況すべてで、両方の保護系において実質的に同じOTRが測定される。それゆえに、コーティングは、結晶メラミン層のバリヤー性を湿気からから守ることができた。例えば、EVOHバリヤー層は80%RHより上では湿潤の影響を非常に受けやすい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
85%RHにおける酸素バリヤーの残率が約50%以上である保護化合物と一緒に結晶トリアジンの層を含む基材。
【請求項2】
前記トリアジン層により、0%RHで測定した場合にトリアジンバリヤー層なしのOTRの約1/3以上OTRが減少する、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
85%RHにおける前記酸素バリヤーの残率が約80%以上である、請求項1〜2のいずれか一項に記載の基材。
【請求項4】
前記保護化合物が前記結晶トリアジンと反応できる化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基材。
【請求項5】
硬化されたアジン−ホルムアルデヒド樹脂またはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂をさらに有している、結晶トリアジンの層を有する基材。
【請求項6】
結晶トリアジン反応性化合物およびフィルム形成性化合物を含んでいるコーティングをさらに含む、結晶メラミンの連続層を有する基材。
【請求項7】
前記トリアジン反応性化合物がアジン−ホルムアルデヒド樹脂またはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を含む、請求項4または6のいずれか一項に記載の基材。
【請求項8】
前記保護化合物またはトリアジン反応性化合物がメラミン樹脂または尿素樹脂を含む、請求項4〜7のいずれか一項に記載の基材。
【請求項9】
前記結晶トリアジン層が結晶メラミン層である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の基材。
【請求項10】
前記基材がプラスチックフィルムである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基材。
【請求項11】
前記基材がプラスチック材料の容器である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基材。
【請求項12】
前記基材がBOPPまたはPETである、請求項10〜11のいずれか一項に記載の基材。
【請求項13】
前記基材が金属または金属酸化物の層をさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の基材。
【請求項14】
前記基材が密閉可能である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の基材。
【請求項15】
前記基材が印刷時に実質的にそのバリヤー性を保持する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の基材。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の基材およびさらなるプラスチックフィルムを含む、ラミネート。
【請求項17】
前記さらなるプラスチックフィルムがポリオレフィン、ポリエステルまたはポリアミドのフィルムである、請求項16に記載のラミネート。
【請求項18】
a.基材を用意するステップと、
b.結晶トリアジン層を施すステップと、
c.樹脂組成物を施すステップと、
d.前記樹脂組成物を硬化させるステップと
によって結晶トリアジン層および硬化樹脂を有する基材を得る、バリヤー性を有する基材を製造するための方法。
【請求項19】
a.第1フィルム基材を用意するステップと、
b.任意選択的にアルミナまたは金属酸化物の層を設けるステップと、
c.結晶トリアジン層を施すステップと、
d.樹脂組成物を施すステップと、
e.前記樹脂組成物を少なくとも部分的に硬化させるステップと
を含み、さらにステップdまたはeの後にさらなるフィルムを施すか、あるいはステップ(d.として樹脂組成物を有するフィルムを施して、少なくとも結晶トリアジン層および硬化樹脂を有するラミネートを得る、バリヤー性を有するラミネートを製造するための方法。
【請求項20】
食品包装における、請求項1〜17のいずれか一項に記載の基材またはラミネートの使用。
【請求項21】
電気部品における、請求項1〜17のいずれか一項に記載の基材またはラミネートの使用。
【請求項22】
前記電気部品がディスプレイである、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
医薬包装における、請求項1〜17のいずれか一項に記載の基材またはラミネートの使用。
【請求項24】
結晶トリアジンバリヤー層を保護するための、アジン−ホルムアルデヒド樹脂またはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂の使用。
【請求項25】
結晶トリアジンのコーティングと、前記トリアジン層を保護するさらなる熱硬化性コーティングとを含む、プラスチック容器。
【請求項26】
前記トリアジンコーティングが前記容器の内側にある、請求項25に記載のプラスチック容器。
【請求項27】
前記トリアジンコーティングが前記容器の外側にある、請求項25に記載のプラスチック容器。
【請求項28】
前記トリアジンコーティングが前記プラスチック上の第1層を構成する、請求項25〜27のいずれか一項に記載のプラスチック容器。
【請求項29】
前記さらなるコーティングの水との接触角が30°〜90°である、請求項25〜28のいずれか一項に記載のプラスチック容器。
【請求項30】
310から380nmの間の波長において紫外線の平均強度が、コーティングされていない瓶と比較して約50%以下であるような紫外線遮断性を前記複合コーティングが示す、請求項25〜29のいずれか一項に記載のプラスチック容器。
【請求項31】
結晶トリアジン層で容器をコーティングする装置であって、容器が真空チャンバー内に閉じ込められ、そのチャンバーは1ミリバール以下に減圧することができ、かつトリアジンを蒸発させるのに適したるつぼをさらに含む、容器をコーティングする装置。
【請求項32】
1つまたは複数の容器をチャンバー内に入れるステップと、
前記チャンバーを閉じて1ミリバール以下の真空にするステップと、
1つまたは複数のコーティングを付着させるステップであって、前記コーティングの少なくとも1つが結晶トリアジン層であるステップと
を含む方法。

【公表番号】特表2010−515599(P2010−515599A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545138(P2009−545138)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000035
【国際公開番号】WO2008/083934
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】