説明

高濃度でミダゾラムを含む製薬組成物

本発明は、ミダゾラムの投与に関する。特に本発明は、鼻腔内投与のための新規なミダゾラム組成物を提供する。これらの組成物は、少なくとも35mg/mlの高濃度でミダゾラムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミダゾラムのようなベンゾジアゼピン類の投与に関する。特に本発明は、高濃度での鼻腔内投与のための改良されたミダゾラム組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
ミダゾラムは、鎮静、不安緩解、催眠、記憶喪失、抗凝固、及び筋弛緩の薬理特性を有する強力なベンゾジアゼピン誘導体である。この分子の塩基性のため、水中に可溶性である塩(例えば塩酸塩、マレイン酸塩、および乳酸塩)を調製することが可能である。これらの塩から、ミダゾラムの静脈内及び筋肉内の注射のための、3.5のpHを有する安定な水溶液を調製可能である(非特許文献32、非特許文献7、非特許文献27)。注射による投与に引き続きミダゾラムは、肝臓酵素による迅速な代謝不活性化のため、迅速な作用の開始と、短い作用時間によって特徴づけされる。ミダゾラムは、古典的なベンゾジアセピンであるジアゼパムの約2倍強力である(非特許文献28)。
【0003】
一般的に薬剤投与については、経口経路が最も普及した経路であろう。しかしながら、経口的に送達されたミダゾラムは、初回通過除去により過度に分解され、腸の薬剤流出トランスポーターのための基質であることも見出されているため、経口投与の態様はミダゾラムについては適切ではない(非特許文献1、非特許文献5、非特許文献36)。それ故ミダゾラムの経口吸収は比較的低くて変化しやすく、子供においてわずか15から27%(非特許文献26)及び健常な成人において31から72%(非特許文献1、非特許文献9)の範囲の絶対的な生体利用可能性のみを有する。
【0004】
ミダゾラムの経口投与に関する他の欠点は、遅延した作用の開始と、観察される低いピーク血漿濃度である。これらの欠点は、ミダゾラムが直腸投与された際にも観察される(非特許文献30、非特許文献20、非特許文献21)。
【0005】
ミダゾラムの治療作用の迅速な開始は、静脈内及び筋肉内注射によって達成できる(非特許文献33、非特許文献3、非特許文献37)。しかしながら、この投与態様は、それを魅力的でないものとする数多くの明らかな欠点を有する。例えば注射は苦痛を伴い、患者、特に幼少の子供たちにはあまり許容されない。
【0006】
上述のものに照らし、ミダゾラムの鼻腔内送達は、非常に魅力的な代替的投与態様である。
【0007】
鼻腔内薬剤投与は苦痛がなく、迅速な薬剤吸収を生じ、肝臓の初回通過除去を避ける。更なる利点は投与の容易性であり、より良好な患者のコンプライアンスを導く。鼻腔の粘膜は、数多くの微細柔毛を有する多列円柱上皮によって被覆された高度に血管化した組織から構成される。それは、舌下の領域、胃腸管の各種の領域、及び頬の粘膜を含む他の粘膜表面よりずっと高い透過性を有する。更に、鼻腔のミダゾラム投与は、静脈内注射の後に観察されるものと非常に似た薬物力学的プロフィールと薬物動態学的プロフィールを生じる(非特許文献38、非特許文献2、非特許文献3)。
【0008】
子供及び成人の両者の患者における鼻腔内で投与されたミダゾラムの有益な効果を示す数多くの研究が報告されている。この態様で投与された場合、ミダゾラムは迅速な作用の開始(約10分)を有し、比較的短い作用時間(30から60分)を有するようである。
【0009】
0.2mg/kgでの鼻腔内ミダゾラムは、各種の診断方法及びマイナーな手術方法を受けている子供たちに鎮静効果及び抗不安効果を示しており、子供たちは全員呼吸困難、徐脈、または他の副作用の臨床上の兆候を有していない(非特許文献39、非特許文献10、非特許文献6)。匹敵する臨床上の結果は、0.3と0.4mg/kgの投与量での鼻腔内ミダゾラムについても印刷されている(非特許文献35、非特許文献21、非特許文献14)。0.2mg/kgのより低い投与量と比較した0.3mg/kgのミダゾラム投与量については、更なる利益は見出されていない(非特許文献39、非特許文献6)。
【0010】
鼻腔内ミダゾラム(0.2mg/kg)はまた急性の発作を抑制し、癲癇症の子供においてEEGバックグランドを改善する(非特許文献25、非特許文献15、非特許文献16)。非特許文献25に述べられている通り、「EEG技師はベンゾジアゼピンの鼻腔内投与を歓迎した。医療関係者が薬剤の満足な静脈内通過を達成するために待つ時間はもはや存在しなくなった。それらは、バタフライ針またはカニューレを配置し、子供たちを泣き喚かせ、非常に休みなくさせ、リードを引き抜くといった困難性が存在する。」更に非特許文献15は、鼻腔内のミダゾラムは、医療センターにおいてのみだけでなく、適切な指示の下で、家庭で発熱性の発作を有する子供の両親によっても提供できると結論付けている。
【0011】
胃腸の内視鏡検査を受けている成人患者では、ミダゾラムの鼻腔内投与(0.1mg/kg)は、鎮静の誘導のために使用されており、鼻腔内経路は、静脈内注射よりも少ない副作用を生ずることが示されている(非特許文献37)。鼻腔内ミダゾラムはまた、重度の癲癇を有する青年及び成人患者において発作の短期的な管理においても有効である(非特許文献31)。この臨床試験では、使用されたミダゾラムの投与量は、50kg未満の体重の患者において5mg、50kg以上の体重の患者において10mgであった。発作の疾患を有する成人患者においてミダゾラム(0.25mg/kg)の鎮静効果(非特許文献4)と、成人の癲癇女性において鼻腔ミダゾラム(4mgの投与量)の発作終結活性(非特許文献11)が、ケースレポートにおいて示されている。
【0012】
上記議論された研究が、鼻腔内に投与されたミダゾラムの効力を示している一方で、上述の全ての臨床試験において、5mg/mlの濃度でミダゾラムを含む市販の注射溶液(Dormicum(登録商標), Hoffmann-La Roche, Switzerland)が使用されていたことに注意すべきである。この濃度のミダゾラムを有するよう液の使用は、鼻腔内に適用される非常に大量の液体を必要とし、それは子供における1mlから成人における4-5mlの範囲に達する。
【0013】
そのような大量の液体が鼻腔内に投与された場合、大部分の容量は実際に鼻から垂れ、及び嚥下され、最善では投与量の一部は鼻腔内よりもむしろ口内に投与されることを生ずる。この経口ミダゾラム吸収は、非特許文献3に明白に示されている。上述の通り、経口的に投与されたミダゾラムは、鼻腔内で投与されたミダゾラムと比較して有意に減少した治療効果しか有さないであろう。
【0014】
そのような大量の溶液の鼻腔内投与はまた、落涙、ヒリヒリ感、鼻と喉の刺激、及び一般的な不快感を含む、患者によって経験される数多くの不快な副作用をしばしば説明する(非特許文献18、非特許文献3、非特許文献14)。更に治療の失敗は、生理学的ではない大量のミダゾラム溶液を送達する不十分な方法により生じうる(非特許文献31)。
【0015】
更なる問題は、明らかに組成物とミダゾラムの高い割合の欠損であり、それは吸収されるミダゾラムの矛盾した予測不能な量を導く。
【0016】
それ故、鼻腔内ミダゾラム投与のための市販のミダゾラム注射溶液の使用は、大量の適用が必要であるため患者に非効率で不快であることは明らかである。これはミダゾラムの鼻腔内生体利用性の減少と有効ではない血漿ピーク濃度を導き、かくして不十分な治療効果しか導かないであろう。
【0017】
効率的で快適な鼻腔内薬剤送達のためには、約200μlの容量(各鼻孔に100μl)は、通常患者に投与される最大量である。これは、ミダゾラム注射溶液と比較して、微表に増大したミダゾラム濃度を有する鼻腔内製剤の利用可能性について過度の必要性が存在することを意味する。
【0018】
患者に鼻孔内で送達される液体の全容量を減少することを求めたいくつかの鼻腔内ミダゾラム製剤が開発されている。これらの製剤は、以下の表1に詳細に記載されている。
【0019】
【表1】

【0020】
非特許文献19で使用されたミダゾラム製剤は、塩酸ミダゾラム(11.1mg/ml)と増粘剤として1.5%メトセルを含む酸性溶液である。それは市販のミダゾラム注射溶液を凍結乾燥することによって調製される。所望の製品を水中に溶解し、適当な容量の7.5%メトセル水溶液と混合する。
【0021】
前記製剤を、ヒト被験者ではなくイヌの鼻腔内ミダゾラム吸収について試験している。しかしながら、200μlのこの製剤の全容量の鼻腔内投与は、この製剤中のミダゾラム濃度がかなり低いため、ヒトにおける治療上有効なミダゾラム血漿濃度を達成しないであろう。
【0022】
非特許文献17によって使用される鼻腔内製剤は、pH4.3の酸性溶液中に安定化剤として14%スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンナトリウム塩(SBEβCD;Captisol(登録商標))と、塩酸ミダゾラム(17mg/ml)を含む。0.1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の存在は、更なる可溶化効果を有する。この製剤は更に、0.02%塩化ベンザルコニウムと0.1%EDTAを防腐剤として含む。
【0023】
健康なボランティアへのこのミダゾラム製剤の急性の鼻腔内投与(各鼻孔に100-160μl)は、鼻腔粘膜の穏やかから中程度の一時的な刺激と関連する(非特許文献8)。
【0024】
この製剤と関連する更なる利点は、0.02%塩化ベンザルコニウム/0.1%EDTAの防腐剤混合物は、in vitroでの繊毛の動きを阻害し、静繊毛性と分類される(非特許文献23)。さらに、ミダゾラムを可溶化するために使用される高濃度(14%)のCaptisol(登録商標)の使用は、強力な静繊毛効果を導くであろう。
【0025】
繊毛の動きは、鼻腔内粘繊毛クリアランスの正常な機能化のための主要な因子であり、それは呼吸管の非常に重要な防御メカニズムであることが既知である(非特許文献22)。それ故、非特許文献17のミダゾラム製剤の鼻腔内投与は、患者の粘繊毛クリアランスを破壊すると予測できる。より重要なことに、この鼻腔内製剤のミダゾラム濃度はあまりに低いため、前記薬剤の十分な治療効力を提供できない。
【0026】
非特許文献12、非特許文献13、及び非特許文献34によって使用された鼻腔内ミダゾラム製剤は、 25%(v/v)プロピレングリコールと水(pH4)の混合物中の塩酸ミダゾラム(30.9mg/ml)からなる。それはまた、防腐剤として1%(v/v)ベンジルアルコールを含む。5mgのミダゾラム塩基の投与量が、90μlの2度のスプレーによって送達され、10mgのミダゾラム塩基の投与量については、90μlの4度のスプレーが必要である(トータル360μlの投与量が与えられる)。
【0027】
5mgまたは10mg(各鼻孔において90-180μl)の投与量を提供する、健康なボランティア及び癲癇患者における鼻腔内ミダゾラム投与のためのこの製剤の使用は、ほとんど全ての患者で鼻腔の刺激、落涙、及び喉の刺激を生じ、並びに苦い味覚を生じる(非特許文献13、非特許文献34)。繊毛組織でのin vitroの実験では、このミダゾラム製剤は、恐らく特に25%プロピレングリコールと1%ベンジルアルコールの存在のため、静繊毛性であることを示している(非特許文献23)。鼻を介した5及び10mgの投与量の投与のために使用される製剤の容量が非常に大きいこと(2度及び4度の鼻腔スプレー)がこれらの実験から明らかであり、これは恐らくこれらの不都合な副作用の多くの原因となる。これらの不都合な効果は、臨床医がこの製剤を使用することを禁じうるであろう。
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
上述の事柄に照らし、鼻腔内に投与される既知の製剤に関する各種の欠点の全てを解消するために、鼻腔内投与のために特に製剤化されたミダゾラム製剤についての必要性が存在していることは明らかである。それ故本発明の一つの目的は、十分な投与量のミダゾラムを、小さな容量で鼻腔内の経路を介して効率的且つ快適に投与することを可能にするのに十分な高濃度のミダゾラムを有する製剤を提供することである。前記製剤は、できるだけ刺激を生ぜず、できるだけ高い生体利用性を有するべきでもある。最後に前記製剤は、既知の鼻腔内製剤と比較して、in vitroの実験で同様なまたは減少した静繊毛効果を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の第一の特徴点によれば、少なくとも35mg/mlの濃度のミダゾラム(ミダゾラムの遊離塩基形態に基づく)と可溶化剤とを含む溶液である製薬組成物が提供される。前記組成物は、ミダゾラムをその遊離塩基の形態または製薬学的に許容可能な塩の形態のいずれかで含んで良い。
【0030】
本発明に係る組成物は好ましくは、鼻腔内投与に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の一つの実施態様では、ミダゾラムの濃度は、少なくとも40mg/ml、または少なくとも50mg/mlである。ミダゾラムの濃度は、100mg/ml未満、、75mg/ml未満、または60mg/ml未満であっても良い。好ましい実施態様では、ミダゾラムの濃度は35-75mg/mlである。
【0032】
本発明の特に好ましい実施態様では、前記組成物は水溶液である。ミダゾラムは水にほんのわずかしか溶解しないことが良く記載されているため、そのような高濃度のミダゾラムを有する溶液が、水を含んで形成されて良いことは驚くべきことである。
【0033】
しかしながら、高濃度のミダゾラムの水溶液を形成することに関する問題点が解消されると、前記溶液は数多くの驚くべき利点を有する。
【0034】
本発明では、水中へのミダゾラムのわずかな可溶性の問題は、可溶化剤の溶液に導入することによって解消される。特に有効な可溶化剤は、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポビドン、及びエタノール、またはそれらの組み合わせを含む。可溶化剤の導入は、ミダゾラム水溶液の形成を可能にするだけでなく、溶液が高濃度のミダゾラムを有することをも可能にする。本発明の組成物への導入のための好ましい可溶化剤は、以下により詳細に議論される。
【0035】
かくして、本発明の高濃度のミダゾラム溶液へ到達するために、顕著な製剤化のハードルを解消しなければならないことは明らかである。特に、高濃度のミダゾラム溶液に水を含ませることに対して偏見が存在していた。
【0036】
従来技術においては、そのような高濃度のミダゾラムを有する鼻腔内ミダゾラム製剤は開示されていない。この理由は、ミダゾラムの制限された可溶性が、約30mg/mlまでの濃度を最大で可能であることを意味すると以前に考慮されていたためである(表1参照)。しかしながら、特に可溶化剤としてプロピレングリコールを単独で使用した場合、またはグリセロール及び任意にポリエチレングリコール、ポビドン、及びエタノールの一つ以上と組み合わせてプロピレングリコールを使用した場合には、これは当てはまらない。4より低いpHを有する製剤の鼻腔内投与は、刺激のため非常に不快であると考慮されていたため、鼻腔内投与のための製剤は、約4以上のpHを有するべきであると、当該技術分野では考慮されていた。これらの偏見は、当業者に大量の鼻腔内投与を導き、上述の問題点を導いている。
【0037】
当業者に共通の意見に反して、4未満のpHを有する製剤の鼻腔内投与は、患者に許容不可能ではない。より重要なことに、より低いpHは、より大量のミダゾラムを溶解し、より高濃度のミダゾラムを有する組成物の調製を可能にし、次いでより少量の製剤の投与をも可能にする。
【0038】
より高濃度のミダゾラムは、数多くの驚くべき利点を有する。第一に、上述の通り、所望の治療効果を達成するために、より少量の溶液が投与できることを意味する。これは、嚥下または鼻から垂れる各種の量の組成物による無駄を減らし、より多量の投与ミダゾラムが正確に吸収され、所望の治療効果を有する。これはまた、鼻腔内組成物の嚥下により遭遇される不快な味と刺激を減少する。それは更に、投与量の一致と予測可能性を増大する。これは次いで、鼻腔内投与に引き続いて達成される血漿濃度が予測可能で制御可能であるため、特定の治療効果を達成できる。以下に議論されるように、各種のミダゾラム血漿濃度は、患者に対して各種の治療効果を生ずる。当該技術分野で開示された鼻腔内投与のためのミダゾラム組成物は、一致したまたは予測可能な血漿濃度を生じることはなく、そのため特定の治療効果を達成するための正確な投与量を可能にしない。
【0039】
高濃度のミダゾラムはまた、既知のミダゾラム組成物を使用しては達成が従来困難または不可能であったいくつかの治療効果を、現在では信頼可能に達成きることを意味する。鼻孔当たり丁度50-100μlの投与が、鼻孔当たりの前記容量の2、4、または10回の投与の代わりに可能であれば、特に患者が神経質である、または泣いている子供である等の場合に、これは明らかに有益であろう。それ故、本発明の一つの実施態様では、前記組成物は約200μlまでの全容量で、治療上有効なミダゾラムの投与量を提供する。好ましくは前記組成物は約100μlまでの容量で、治療上有効なミダゾラムの投与量を提供し、各鼻孔に対してこの投与量を投与することが可能である。
【0040】
より少量の組成物を鼻腔内に投与することに関する別の利点は、それが鼻の内部でより小さい領域の沈着しか生じないことである。鼻の内部でのこの局在化した投与は、いずれの一過的な刺激も局在化し、鼻と喉の内部の小さい領域に制限されることを意味する。再言するとこれは、患者により経験される不快感を減少する。
【0041】
更に、高濃度のミダゾラムはまた、鼻腔上皮を通じた活性剤の拡散を促進することも示されており、それはより低濃度のミダゾラムを有する溶液で観察されるものと比較してより迅速な吸収を生ずる。これは、治療効果の開始が早まることを意味するだけでなく、活性剤が鼻腔上皮と接触している時間を減少することをも意味する。再言すると、ミダゾラム自体が刺激剤であるため、これは患者の不快感を減少するであろう。更に、より少ないミダゾラム製剤が濃度に達し、そのため製剤成分による刺激、及びミダゾラムの苦味の経験の機会がより少なくなるであろう。
【0042】
本発明の一つの実施態様では、前記組成物に含まれるミダゾラムは、塩酸ミダゾラム、マレイン酸ミダゾラム、または乳酸ミダゾラムといったミダゾラムの塩である。好ましくは前記組成物は塩酸ミダゾラムを含む。
【0043】
本発明の好ましい実施態様では、前記可溶化剤はプロピレングリコールを含む。特にミダゾラムが水溶液として製剤化される場合、プロピレングリコールはミダゾラムのための適切な可溶化剤である。プロピレングリコールに加えて、前記可溶化剤は更に、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポビドン、及びエタノールの一つ以上を含んでも良い。
【0044】
本発明の別の実施態様では前記可溶化剤は、水溶液が形成される場合のミダゾラムに対する別の適切な可溶化剤であるグリセロールを含む。
【0045】
グリセロールに加えて前記可溶化剤は更に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポビドン、及びエタノールの一つ以上を含んでも良い。
【0046】
本発明の特に好ましい実施態様では、前記組成物は、90-10%、80-20%、70-30%、60-40%、または40-50%(v/v)の可溶化剤、好ましくはプロピレングリコールを含むミダゾラムの溶液である。前記組成物は好ましくは、10-90%、20-80%、30-70%、40-60%、または50-60%(v/v)の水を含む。更に前記組成物は好ましくは、40-75mg/mlのミダゾラムを含む。40-50%(v/v)のプロピレングリコールと50-60%(v/v)の水とを含む組成物は、特に有利であると考慮される。
【0047】
本発明の一つの実施態様では、前記組成物は、プロピレングリコールとグリセロールの組み合わせを含む。グリセロールは甘い味を有し、優れた可溶化剤として作用するのに加えて、ミダゾラムの味をマスクするためにも機能し、溶液のいくらかは患者の喉の背部へいくはずである。
【0048】
プロピレングリコールとグリセロールは更に利点を有する。プロピレングリコール(>15%v/v)及び/またはグリセロール(>20%v/v)を含む可溶化剤を含む組成物は、これらの濃度のグリセロールとプロピレングリコールは抗微生物性防腐剤として作用することが文献から既知であるため、防腐剤を含む必要がない(Handbook of Pharmaceutical Excipients, Third Edition, The Pharmaceutical Press, London 2000)。
【0049】
プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、及びポビドンはまた、繊毛の動きに対する強力な反作用を有さないため、鼻腔溶液での使用のための魅力的な可溶化剤である。以前に印刷された方法(非特許文献23)に従ったin vitroでの実験では、ロックリンガー溶液に溶解した4種の異なる可溶化剤(25%プロピレングリコール、15%グリセロール、25%ポリエチレングリコール400、及び5%ポビドン)の、チキン胚気管内組織から採取された繊毛組織の繊毛運動頻度(CBF)に対する効果が測定された。4種全ての化合物が、15分後にCBFの減少を示した。しかしながらロックリンガー溶液ですすいだ後、CBFに対する効果は20分以内で完全に回復したようであった。
【0050】
本発明の組成物で使用される可溶化剤は、in vivoで投与された際にできるだけ少ない刺激を引き起こすべきであり、好ましくは全く刺激を有さない。一過的で穏やかな刺激が患者により寛容である一方で、これは不必要な不快感を避けるために最小限に維持されるべきである。
【0051】
本発明で使用され上述された好ましい可溶化剤は、鼻腔内の投与の際に不必要な刺激を生じないであろう。
【0052】
本発明の組成物を使用して達成される嚥下した組成物の量の減少にもかかわらず、非常に少量のミダゾラムのみが喉に到達することが言うまでもなく可能であるが、それは苦味を導き得る。それ故本発明の別の実施態様では、ミダゾラムの苦味をマスクするために、一つ以上の甘味剤が組成物に含まれる。この実施態様によれば、前記製剤は、少なくとも35mg/mlの濃度のミダゾラム、可溶化剤、及び甘味剤を含んで良い。
【0053】
本発明の組成物に導入するための適切な甘味剤は、サッカリン及びサッカリンアルカリ塩(約0.1-5%w/vの量で含まれて良い)、アスパルテーム(約0.1-5%w/vの量で含まれて良い)、アセスルファームK、及びシクラメートを含む。
【0054】
本発明の組成物に含まれて良い更なる添加成分は、香料剤、防腐剤、緩衝剤、安定化剤、及びpH調節剤を含み、それらは医薬文献から既知である(Martindale 33rd edition, The Pharmaceutical Press, London 2002)。好ましい実施態様では、前記組成物はいずれの緩衝剤も含まない。
【0055】
適切な香料剤は、バニラ(バニリン)、ミント、ラズベリー、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、カラメル、チェリーのフレーバー、及びこれらの組み合わせを含む。
【0056】
適切な安定化剤は、ベータ-シクロデキストリン(約1%の量で含まれて良い)、及びベータ-シクロデキストリンの誘導体(約1-4%の量で含まれて良い)のようなシクロデキストリンを含む。
【0057】
別の実施態様では、本発明に係る組成物は、いずれの防腐剤及び/または安定化剤も含まない。別の実施態様では、前記組成物はベンジルアルコールを含まない。
【0058】
本発明の更なる実施態様では、前記組成物は更に増粘剤を含む。増粘剤は製薬文献から当業者には周知であり、セルロース誘導体のような薬剤を含むであろう。溶液の粘度を増大することは、ミダゾラムの送達を促進しうる。セルロース誘導体のような増粘剤は、溶液の安定性を増大するために機能しても良い。
【0059】
本発明に係る組成物を使用するミダゾラムの増大した吸収は、本発明の組成物がいずれの吸収促進剤をも含まなくて良いことを意味する。
【0060】
前記組成物のpHは、好ましくは2.5から7の範囲である。一つの実施態様では、前記組成物のpHは4未満であり、好ましくは2.5より大きい。より好ましくは、前記組成物のpHは3から4の間である。特に好ましくは、前記pHは約3である。鼻腔投与のための組成物がそのような低いpH値を有するについては一般的な偏見が存在するにもかかわらず、この範囲のpHを有する組成物に関する負の効果または不利な点は存在しないことが見出された。実際ミダゾラムはより低いpHでより安定であり、高濃度のミダゾラムを有する溶液を製剤化することを容易にする。
【0061】
製薬学的に許容可能な酸が、pHを調節するために前記溶液に添加されても良い。
【0062】
遊離ミダゾラム塩基は、オクタノールとリン酸緩衝液(pH7.5)の間の約475の分配係数を有しむしろ親油性である。それ故、中性pHでのミダゾラム塩基の水溶解性は非常に低く、適切なミダゾラム製剤を調製することはできず、この目的のためミダゾラム塩(例えば塩酸塩)が使用されねばならない。薬剤のイオン化は、水溶解性を増大するであろう。酸性溶液では、ミダゾラム、並びに他の1,4-ベンゾジアゼピンは、アルデヒドまたはケトン及び第一級アミンの形成を通じて、可逆的でpH依存的な開環を受けることが既知である(非特許文献7、非特許文献24、非特許文献17)。3.3から3.5のpHを有する市販のミダゾラムの静脈内溶液(5mg/ml)では、前記薬剤は80-85%の閉環形態と15-20%の開環形態からなる(非特許文献7)。この溶液では、pHが7.4に増大すると環が完全に閉じるため、開環形態はミダゾラムのプロドラッグとして考慮される。
【0063】
ミダゾラムの鼻腔内投与は、迅速なミダゾラム吸収によって特徴づけされ、5-15分で最大の血漿濃度に到達する。前記薬剤はその後、子供及び健常な成人において1から2.4時間の範囲の半減期で血液循環から除去され、それはミダゾラムの静脈内注射後のものと実質的に異ならない(非特許文献29、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献17、非特許文献13、非特許文献34)。
【0064】
子供、健康なボランティア、及び成人手術患者における鼻腔内ミダゾラム送達のための利用可能なミダゾラム注射溶液を使用することは、それぞれ50%、55%、及び83%の平均絶対生体利用性を有することが報告されている(非特許文献29、非特許文献3、非特許文献2)。
【0065】
本発明に係る組成物の例は、以下に示される。
【実施例】
【0066】
実施例1
35-75mg/mlのミダゾラム(遊離塩基)に相当する塩酸ミダゾラム
適量(ミダゾラムを可溶化するのに十分な量)のプロピレングリコール

【0067】
任意に、一つ以上の以下の付加的成分を加えても良い:
ポリエチレングリコール、グリセロール、ポビドン、エタノール、甘味料、香料物質、防腐剤、pH調節剤、及び安定化剤。
【0068】
前記組成物は好ましくは、鼻腔内投与のための50-100μlの容量を有する、子供と成人のための鼻腔スプレーまたは鼻腔小滴若しくは鼻腔液として製剤化される。
【0069】
前記組成物は、2.8から7の間、好ましくは3から4の間のpHを有する。
【0070】
実施例2
35-75mg/mlのミダゾラムに相当する塩酸ミダゾラム
プロピレングリコール5-50%(v/v)
グリセロール5-50%(v/v)
ポリエチレングリコール5-50%(v/v)
ポビドン1-20%(v/v)

【0071】
前記組成物は50-100μlの子供と成人のための容量を有する鼻腔スプレーまたは鼻腔小滴若しくは鼻腔液として製剤化される。
【0072】
前記溶液のpHは、2.5から7の間、好ましくは3から4の間であるべきである。
【0073】
実施例3
35、40、45、または50mg/mlのミダゾラムに相当する塩酸ミダゾラム
プロピレングリコール15-30%(v/v)
グリセロール15-30%(v/v)
サッカリンナトリウム10-50mg/ml

【0074】
鼻腔内投与のための容量は50-100μlである。
【0075】
前記溶液のpHは、2.5から7の間、好ましくは3から4の間であるべきである。
【0076】
実施例4
35、40、45、または50mg/mlのミダゾラムに相当する塩酸ミダゾラム
プロピレングリコール20-50%(v/v)
ポビドン1-10%(w/v)

【0077】
鼻腔内投与のための容量は50-100μlである。
【0078】
前記溶液のpHは、2.5から7の間、好ましくは3から4の間であるべきである。
【0079】
実施例5
50g/mlのミダゾラムに相当する塩酸ミダゾラム
プロピレングリコール45%(v/v)
水55%(v/v)
この溶液のpHを3に調節する。
【0080】
被験者に0.2mg/体重のkgの投与量を与える、本発明に係る鼻腔内ミダゾラム溶液は、薬剤投与の興味深い新規な経路である。
【0081】
本発明の第二の特徴点によれば、第一の特徴点に係る組成物は、以下の状況で使用されて良い:
1)診断術及び手術を受けた子供用の鎮静剤及び抗不安剤として;
2)胃腸内視鏡及び他の診断術を受けた成人用の鎮静剤及び抗不安剤として;
3)医療センター及び過程での子供の急性癲癇性発作及び発熱性発作の処理として;
4)医療センター及び過程での重度の癲癇を有する成人における発作の治療のための短期的な管理として。
【0082】
鼻腔内ミダゾラムを使用する意識的な鎮静は、子供及び成人同様に一般的な麻酔の危険と不便性を避ける特に魅力的な術前処置である。更に、癲癇患者におけるミダゾラムの使用は、多くの臨床試験で各種記載されている。
【0083】
血漿濃度と薬物動態学的応答の間の良好な相関は、腹腔手術を受けた患者が静脈内ミダゾラム点滴を受けた臨床試験で、ミダゾラムについて確立されている(非特許文献27)。この結果は以下のように要約される:(1)75ng/mlから150〜200ng/mlの範囲までのミダゾラム血漿濃度は、十分な沈静及び部分的な麻酔を誘導することができる;(2)150〜200ng/mlの血漿濃度で、睡眠患者を覚醒可能である;及び(3)250〜300ng/mlのミダゾラム血漿濃度は、手術の間の満足な催眠効果を達成するために必要である。多くの文献から、意識的な沈静の誘導のためのミダゾラムの血漿濃度の閾値は、40〜50ng/mlのオーダーであることが明らかである(非特許文献1、非特許文献5、非特許文献27)。
【0084】
0.2から0.25mg/体重のkgの投与量でのミダゾラムの鼻腔内送達は、子供及び成人で100から185ng/mlの範囲の平均ピーク血漿濃度に到達することができる(非特許文献26、非特許文献20、非特許文献3)。これらの臨床試験では、ミダゾラムの治療上有効な血漿濃度は、鼻腔内投与後3分程度で迅速に顕在化し、約1時間持続する。ミダゾラムの血漿濃度と臨床効果の間の関係は、市販のミダゾラム注射溶液を使用する鼻腔内送達試験から由来し、より濃縮した溶液中のミダゾラムの鼻腔内投与についても有効である。例えば、非特許文献34は、非特許文献12及び非特許文献13のミダゾラム製剤を使用して、5及び10mg/患者(それぞれ約0.06及び0.12mg/kgに等しい)の投与量で癲癇患者に鼻腔内でミダゾラムを投与した。73及び140ng/mlの最大血漿濃度に5から10分で達し、両者の鼻腔ミダゾラム投与量について、患者における鎮静効果が投与後45から60分間持続する。
【0085】
血漿ミダゾラム濃度とその臨床効果の間の明白な関係は、常に十分に確立されているわけではない。非特許文献8は、非特許文献17のミダゾラム製剤を使用して、ミダゾラムの鼻腔送達(0.06mg/kg;各鼻孔に100-160μl)の後に、健康なボランティアで薬物力学的研究/薬物動態学的研究を実施した。10-15分間42ng/mlの低い平均ピーク血清濃度が観察され、それは沈静の誘導のために報告された閾値濃度の範囲内である。ボランティアにおけるある沈静活性は、投与後1時間示される。上述の通り、非特許文献17で使用されたミダゾラム濃度は、最適な臨床効果を達成するほどは高くない。
【0086】
上述のミダゾラムの血漿濃度は、本発明の組成物の鼻腔内投与によって達成され、ミダゾラムの投与量は、所望の治療効果を生ずる血漿濃度を提供するように選択される。好ましくは所望のミダゾラムの血漿濃度は、前記組成物の鼻腔内投与の3から15分以内で達成される。
【0087】
本発明の組成物は好ましくは、例えばポンプスプレー装置によってスプレー送達用に製剤化される。すでに市販されている適切な装置は、マルチ投与量バイアル、及び二投与量または単位投与量装置を含む。好ましい装置は、単位投与量装置及び二投与量装置である。鼻腔液または鼻腔小滴として鼻腔内ミダゾラム製剤の少量を送達するために、例えばブローフィルシール法によって製造され、市販の目の小滴から既知である廃棄可能なプラスチック単位投与量容器を使用することが可能である。
【0088】
本発明の組成物は、タンポン、スポンジ、直腸または口内粘膜カプセル(即ち頬または舌下の粘膜吸収のような口内吸収のためのカプセル)、粘膜パッチ、チューインガム、キャンディー、または例えば製薬文献から当業者に既知の経粘膜薬剤送達に適したいずれか他の形態または装置を使用して、舌下、頬、直腸、またはいずれか他の経粘膜投与のための液体、半液体、または半固体製剤で投与することもできる。
【0089】
本発明の第三の特徴点によれば、本発明の第一の特徴点に係る組成物のスプレー送達または液体または鼻腔小滴としての送達のための装置が提供される。前記装置は好ましくは、前記組成物の一つ以上の投与量を保持する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも35mg/mlの濃度のミダゾラムと可溶化剤とを含む溶液である製薬組成物。
【請求項2】
ミダゾラムの濃度が少なくとも40mg/mlである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ミダゾラムの濃度が少なくとも50mg/mlである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ミダゾラムの濃度が35-75mg/mlである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ミダゾラムが製薬学的に許容可能なその塩の形態で使用される請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
製薬学的に許容可能なミダゾラムの塩が塩酸ミダゾラム、マレイン酸ミダゾラム、または乳酸ミダゾラムである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記溶液が水溶液である請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記可溶化剤がプロピレングリコールを含む請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記可溶化剤がグリセロール、ポリエチレングリコール、ポビドン、及びエタノールの一つ以上を更に含む請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記可溶化剤がグリセロールを含む請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記可溶化剤がプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポビドン、及びエタノールの一つ以上を更に含む請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
pHが2.5から7の範囲内である請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
pHが4未満である請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
40-50%(v/v)のプロピレングリコールと50-60%(v/v)の水とを含む請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ミダゾラムの濃度が40-75mg/mlである請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
40-75mg/mlの濃度のミダゾラム
40-50%(v/v)のプロピレングリコール、及び
50-60%(v/v)の水
を含み、pHが2.5-4に調節されている請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
40-75mg/mlの濃度のミダゾラム、
40-50%(v/v)のプロピレングリコール、及び
50-60%(v/v)の水、並びに
pHを2.5-4に調節するのに十分な量の任意の製薬学的に許容可能な酸または塩基
からなる請求項14から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
鼻腔内送達用に適応されている請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
スプレーまたは鼻腔液または鼻腔小滴の形態である請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
舌下、頬、直腸用に適応されている、または経粘膜投与のためのいずれかの他の形態である請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
鎮静剤または抗不安剤、胃腸内視鏡及び他の診断方法を受けている患者に対する投与のための医薬、急性癲癇性及び発熱性発作の治療のための医薬、または癲癇に罹患している患者における発作の短期的な管理のための医薬としての使用のための請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
鎮静剤または抗不安剤、胃腸内視鏡及び他の診断方法を受けている患者に対する投与のための医薬、急性癲癇性及び発熱性発作の治療のための医薬、または癲癇に罹患している患者における発作の短期的な管理のための医薬の製造のための請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項23】
前記組成物が鼻腔内で投与される請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記組成物が舌下で、頬内で、直腸内で、または経粘膜投与のいずれかの他の形態で投与される請求項22に記載の使用。
【請求項25】
請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物を含む鼻腔内送達用装置。
【請求項26】
請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物を含む投与量形態。
【請求項27】
タンポン、スポンジ、直腸または口内粘膜カプセル、粘膜パッチ、チューインガム、またはキャンディーである請求項26に記載の投与量形態。

【公表番号】特表2007−534660(P2007−534660A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548318(P2006−548318)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050133
【国際公開番号】WO2005/067893
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(504374573)
【Fターム(参考)】