説明

高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法

【課題】微粉状鉄含有原料と、微粉状炭材と、水硬性バインダーとに水分を添加して混合、造粒することにより高炉用非焼成含炭塊成鉱を製造する方法において、水硬性バインダーの添加量を低減するための非焼成含炭塊成鉱製造方法を提供すること。
【解決手段】微粉状鉄含有原料と、微粉状炭材と、水硬性バインダーとに水分を添加して混合、造粒することにより、高炉用非焼成含炭塊成鉱を製造する方法であって、前記水硬性バインダーに平均粒径が0.15μm以下のシリカを加え、予め予備混合した後に、微粉状鉄含有原料と微粉状炭材を加え、水分を添加して混合、造粒することを特徴とする高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製鉄所の各種集塵装置等から回収される多種の含鉄、含炭ダストを配合し、セメント系の水硬性バインダーを使用して混錬、成型して非焼成のペレットやブリケットを製造して高炉原料として使用されている。
これらの含炭塊成鉱は、製鉄ダスト等を造粒機に造粒する際に、ダストの粒度分布を適正範囲に調整し、石灰石、セメントなどのバインダーと5〜15%の水分を添加し、造粒し、塊成鉱を製造した後、養生し硬化させることにより製造することが知られている。
【0003】
現在の製鉄プロセスにおける高炉用鉄原料は、約2〜3mmの平均粒度の粉状鉄鉱石を主要な鉄含有原料として用い、石灰石、硅石などの副原料、粉コークス、無煙炭などの炭材を配合し、さらに水分を添加し、混合造粒して疑似粒子とした後、焼結機で原料中の炭材を熱源として加熱、焼結鉱して得られる焼結鉱が主流を占めている。
【0004】
この方法における焼結原料の造粒物は、主として粒径が約1mm以上の粗粒子を核として、この周囲に粒径が約0.5〜1.0mm未満の微粉粒子が付着した疑似粒子となる。この疑似粒子は、焼結機内の焼結原料の通気性を維持し、焼結反応を良好に進行させるために、焼結原料の装入時や焼結されるまでの間に崩壊しないだけの冷間強度が要求される。
【0005】
通常、焼結原料を疑似粒子に造粒するためには、ドラムミキサーを用いて、焼結原料の混合とともに造粒を行うことが多い。
【0006】
一方、製鉄プロセスにおいて多量に発生する焼結ダスト、高炉ダストなどを集塵機などで回収した含鉄ダストやスラッジ、スケールなどの微粉ダストの他に、ペレットフィードなどの微粉状原料も製鉄原料として用いられる。
【0007】
しかし、これらの微粉原料は、粒径0.25mm以下の微粉粒子が全体の80%以上を占めるため、これらを焼結原料として用いる場合は、微粉粒子による原料充填層の通気性悪化、生産性低下などの問題が生じやすい。
【0008】
このような微粉状原料を主要な鉄含有原料として焼結する場合には、あらかじめ混合機を用いて、鉄含有原料と副原料に水分を添加し混合した後、ドラムミキサーに比べて造粒強度が高いディスクペレタイザーなどの造粒機を用いて、粒径0.25mm以下の微粉粒子を主体とする球状ペレットを製造した後、燃焼ガスなどを熱源とする外部加熱型焼結機を用いて焼結を行う。
【0009】
また、微粉状原料は、造粒してペレット等にした後、養生(石灰石などの水和反応や炭酸塩化処理)により造粒物の強度を高めた後、焼結せずに、そのまま高炉用鉄原料として使用する非焼成型の塊成鉱も古くから知られている。
【0010】
非焼成型塊成鉱の製造方法としては、高炉2次灰、転炉ダスト、焼結ダスト、スラリーなどの製鉄所で発生する製鉄ダストをペレットに造粒する際に、ダストの粒度分布を適正範囲に調整し、生石灰、セメントなどの結合材(バインダー)と5〜15%の水分を添加し、ディスクペレタイザーにより造粒しペレットを製造した後、ヤード堆積等により数日間養生(CaO系バインダーの水和反応、炭酸塩化反応の促進)して硬化させるコールドボンドペレットの製造方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0011】
また、近年、高炉操業における還元材比の低減を目的とし、上記非焼成塊成鉱プロセスを利用して、炭素含有量の高い非焼成塊成鉱を製造する方法も提案されている(例えば、特許文献2〜6)。
【0012】
例えば、含酸化鉄原料とカーボン系炭材を配合しバインダーを加えて混練、成型、養生してなるカーボン内装非焼成塊成鉱において、鉄鉱石類の酸化鉄を還元し金属鉄とするために必要な理論炭素量の80〜120%のカーボンを含有し、かつ、常温での圧潰強度7850kN/m2(80kg/cm2)以上となるようにバインダーを選択して混合、成型、養生してなることを特徴とする高炉用のカーボン内装非焼成塊成鉱およびその製造方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0013】
この方法によれば、一般に還元ガスの温度とガス組成(ηCO=CO2/(CO+CO2))との関係から、酸化鉄の還元反応の進行が制約される高炉シャフト部の熱保存帯と還元反応平衡帯においても、900℃〜1100℃の温度領域で、非焼成塊成鉱中の酸化鉄は、内装するカーボンにより還元反応を起こす結果、還元率が向上するため、高炉操業時の還元材比の低減効果が期待できる。
【0014】
しかしながら、この方法では、非焼成塊成鉱に内装するC含有量は、酸化鉱を還元し金属鉄とするために必要な理論炭素量(以下、C当量ということもある)で120%以下(全カーボン含有量(T.C)は約15質量%以下に相当する)に制限され、これ以上C含有量を増加すると、非焼成塊成鉱の冷間圧潰強度および熱間強度が損なわれるという問題があった。
【0015】
さらに、この方法では、炭材を内装した非焼成塊成鉱の冷間圧潰強度を維持するために、生石灰に代えて、早強ポルトランドセメントなどのセメント系のバインダーを使用するため、バインダーの添加量を増加させると吸熱反応であるセメントの脱水反応により高炉内のシャフト部での昇温速度が低下するだけでなく、低温での還元停滞域(低温熱保存帯)を発生させ、高炉用鉄原料として装入する焼結鉱の高炉内の還元粉化を助長させてしまう点が問題であった。
【0016】
また、炭材と酸化鉄を主体とする鉄鉱石からなる炭材内装ペレットであって、炭材の軟化溶融時の最高流動度と鉄鉱石の10μm以下の酸化鉄粒子の割合との関係を規定した還元性と還元後の強度に優れた炭材内装ペレットが提案されている(例えば、特許文献3、)。
【0017】
この方法によれば、ペレット中の炭材が260〜550℃の温度域で軟化溶融、固化することを利用し、酸化鉄粒子間の空隙に溶融した炭材を侵入、固化させ、炭材と酸化鉄の接触面積を大きくし、熱伝導性を改善して還元効率を高めるとともに、酸化鉄粒子同士の結合を強めることにより、還元後の強度(熱間強度)も向上させることができる。
【0018】
しかし、この方法により、炭材内装ペレットの被還元性と還元後の強度(熱間強度)を向上させるためには、最高流動度の高い石炭類を炭材として利用しなければならないため、省エネルギー、省資源を前提とした高炉操業時の還元材比の低減という目的の点から好ましい方法とは言い難い。
【0019】
また、粉鉱石と、揮発分が16%以上、ギーセラー流動度が20DDPM以上の粘結炭(炭材)を混合し、260〜550℃の温度域で成形圧20〜150MPaで熱間成形した後、成形温度範囲で5分間以上の脱ガス処理を行うことを特徴とする見掛け密度が2.3g/cm以上である還元鉄用塊成化物も提案されている(例えば、特許文献4)。
【0020】
この方法によれば、炭材が軟化溶融、固化する260〜550℃の温度域で熱間成形して、酸化鉄粒子どうしを炭材で強固に連結し、見掛け密度が2.3g/cm以上の塊成化物とした後、脱ガス処理により炭材からの揮発分を抜くことにより、塊成化物の強度を高め、還元中の塊成化物の膨れによる割れを防止するものである。
【0021】
しかし、この方法は、熱間ブリケット成型や、脱ガス処理を必要とするため、製造時のエネルギー消費が高く、製造コストが高くなる点で経済的に不利な方法であり、また、造粒法に比べて塊成物の密度が高くなるため、塊成物中の炭材のガス化や酸化鉄の還元反応で発生するCO、CO2ガスによる爆裂(バーステイング)が発生しやすい。
【0022】
また、粒径が3〜25mmの炭材を核とし、核を内包する外周層を粒径が1mm以下の鉄原料と炭材との混合物とし、核としての炭材の体積分率が塊成鉱全体の0.2〜30vol%で、外周層中の炭材の含有率が5〜25wt%であり、塊成鉱全体の全カーボン含有量が25〜35質量%と高い、2重構造の炭材内装塊成物が提案されている(例えば、特許文献5)。
【0023】
この技術によれば、外周層中に含有する粒径が1mm以下の炭材により酸化鉄を還元し、外周層が融液化した場合に、核としての炭材を浸炭源として機能させることにより、高炉内での被還元性を改善する他、浸炭作用による溶銑の滴下挙動を改善し、高炉操業時の燃料比低減と融着帯部の通気抵抗を低減することができる。
【0024】
しかし、この粒径および炭材と酸化物の組成が異なる2重構造からなり、全カーボン含有量が25質量%以上と高い塊成物は、冷間の磨耗強度が低くなるという問題がある。また、このような特殊な2重構造を有する塊成鉱を製造するためには、製造工程が複雑となり、強度維持のために多量のバインダーが必要となるなど、製造時の生産性やコストの点から不利な方法であった。
【0025】
以上のように、従来の非焼成含炭ペレットは、高炉用原料として要求される冷間圧潰強度50kg/cm2(4900kN/m2)以上を維持するために、炭素含有量を15質量%(炭素当量で1.2に相当)に制限せざるを得なかったため、上記ペレット中の酸化鉄の直接還元は十分に促進できても、上記ペレット以外の焼結鉱などの主要な高炉用鉄含有原料の還元を十分に促進することはできなかった。
【0026】
また、従来法によりポルトランドセメントなどの水硬性バインダーを多量に添加することで、非焼成含炭ペレットの冷間圧潰強度は、ある程度まで向上できるが、高炉内の還元温度域で、上記バインダーは脱水反応を起こすため、十分な熱間強度を維持することはできなかった。
【0027】
また、全鉄原料の粒度、微粉状炭材の配合割合を調整し、かつ、微粉状炭材のメジアン径を調整することにより、高炉用原料ペレットとして要求される50kg/cm2(4900kN/m2)以上の冷間強度を維持するとともに、高炉操業時の還元材比を大幅に低減できるだけの十分な炭素含有量を有し、還元後の圧潰強度7kg/cm2(690kN/m2)以上を有する、非焼成含炭ペレットの製造方法が提案されている(例えば、特許文献6)
【0028】
この方法によれば、全原料中の粒度を2mm以下とし、全原料中炭素含有割合(T.C)が15〜25質量%となるように微粉状炭材の配合割合を調整し、炭材のメジアン径を100〜150μmとすることにより、冷間圧潰強度、還元後圧潰強度が良好であり、高い還元材比低減効果を有する非焼成含炭塊成鉱を製造することができる。
【0029】
しかし、この方法では水硬性バインダーである早強セメントを10%添加する必要があり、この非焼成含炭塊成鉱を高炉にて使用する量を増加させた場合、高炉に投入されるスラグ量も増加する問題がある。また、早強セメントは400〜500℃で脱水反応(吸熱反応)が進行するため、セメント10%を添加した含炭塊成鉱の過剰使用は高炉内の温度を低下させ、高炉内装入物の昇温遅れ、還元遅れが生じる問題があった。
【0030】
以上のように、従来の非焼成含炭ペレットは、高炉用原料として要求される冷間圧潰強度、還元後強度に加え、高い還元材比低減効果を得るために、水硬性バインダーである早強セメントを少なくとも10%添加する必要があり、限られた使用範囲では高い還元材比低減効果はあるものの、一定量以上を使用した場合、十分な還元材比低減効果を得ることができなかった。
【0031】
したがって、高い還元材比低減効果を有する炭材含有割合にて、高炉用原料として求められる冷間強度、還元後圧潰強度を維持したうえで、水硬性バインダーである早強セメントを低位に抑えた炭材内装非焼成塊成鉱の製造方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開昭53−130202号公報
【特許文献2】特開2003−342646号公報
【特許文献3】特開2000−160219号公報
【特許文献4】特開平11−92833号公報
【特許文献5】特開平8−199249号公報
【特許文献6】特開2008−95177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明は、上記従来技術の現況に鑑み、微粉状鉄含有原料と、微粉状炭材と、水硬性バインダーとに水分を添加して混合、造粒することにより高炉用非焼成含炭塊成鉱を製造する方法において、水硬性バインダーの添加量を低減しても、冷間圧潰強度及び高炉内の還元温度域での熱間圧潰強度を維持することができる非焼成含炭塊成鉱の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明者らは、前記課題を解決するため、水硬性バインダーにあらかじめ微粒のシリカを加えて高炉用非焼成含炭塊成鉱を製造し、塊成鉱の冷間圧潰強度、および還元後の熱間圧潰強度を実験などにより鋭意検討した。
【0035】
その結果、平均粒径が0.15μm以下の微粒シリカを水硬性バインダーに混合し、微粉状鉄含有原料と微粉状炭材に加えて造粒することにより、水硬性バインダー量を低減できることが解った。
【0036】
本発明は、この知見に基づき上記課題を解決するためになされたものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
【0037】
(1)微粉状鉄含有原料と、微粉状炭材と、水硬性バインダーとを含む原料に水分を添加して混合、造粒することにより高炉用非焼成含炭塊成鉱を製造する方法であって、前記水硬性バインダーに平均粒径が0.15μm以下のシリカを加え、予め予備混合した後に、微粉状鉄含有原料と微粉状炭材を加え、水分を添加して混合、造粒することを特徴とする高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法。
(2)前記水硬性バインダーが、原料全質量に対して、3質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする前記(1)に記載の高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法。
(3)前記シリカが、水硬性バインダーの全質量に対して、5質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする前記(1)及び(2)のいずれかに記載の高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法。
(4)前記高炉用非焼成含炭塊成鉱が、前記原料の全質量に対し10%以上の前記微粉状炭材を有する非焼成含炭ペレット及び非焼成含炭ブリケットのいずれかであることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、微粉状鉄含有原料と、微粉状炭材と、水硬性バインダーに水分を添加して混合、造粒することにより高炉用非焼成含炭塊成鉱を製造する方法において、水硬性バインダーの添加量を低減しても、冷間圧潰強度及び高炉内での熱間強度を維持することができる非焼成含炭塊成鉱製造方法を提供することができる。
【0039】
本発明により、水硬性バインダーの添加量を低減させても冷間圧潰強度及び高炉内での熱間強度が優れた高炉用非焼成含炭塊成鉱を製造することができるので、水硬性バインダーの減少により、高炉内のシャフト部での温度低下による還元停滞域(低温熱保存帯)を防止し、又、スラグ量を減少させるので、省エネルギー化、低CO化が可能となる。
【0040】
また、本発明に係る微紛シリカを用いることで、従来と同量の水硬性バインダーを使用した場合は、従来よりも高い炭素含有量を有する非焼成含炭塊成鉱を製造することもできる。
【0041】
この場合は、非焼成含炭塊成鉱に含有される安価な炭材(還元剤)の増加により、高炉内の還元効率の上昇により、高炉の還元材比が低減し、省エネルギー化、低COが可能となる。
【0042】
さらに、本発明に係る非焼成含炭塊成鉱は、焼成プロセスにより製造される塊成鉱に比べ、省エネルギー化、低CO化が可能であり、比較的安価で簡易な方法により、製鉄プロセスで発生したダストを、鉄含有原料および炭材としてリサイクル処理できるため、工業的及び社会的な貢献は多大なものである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、微粉状鉄含有原料と、微粉状炭材と、水硬性バインダーとに水分を添加して混合、造粒することにより高炉用非焼成含炭塊成鉱を製造する方法であって、前記水硬性バインダーに平均粒径が0.15μm以下のシリカを加え、予め予備混合した後に、微粉状鉄含有原料と微粉状炭材を加え、水分を添加して混合、造粒することを特徴とする高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法である。
【0044】
本発明に係る高炉用非焼成含炭塊成鉱は、微粉状鉄含有原料と、微粉状炭材と、水硬性バインダーに水分を添加して混合、造粒することにより製造されるものであり、例えば、非焼成含炭ペレット、非焼成含炭ブリケット等がある。
【0045】
非焼成含炭ペレットとしては、例えば、ディスクペレタイザーにより球状に成型するものがあり、非焼成含炭ブリケットとしては、くぼみの型を備えた相対する一対の成型ロールで成型する左右対称のピロー型ブリケットやアーモンド型ブリケットがあるがこれらに限定されるものではない。
【0046】
成型直後の生の非焼成含炭塊成鉱は、その後の高炉までの輸送及び高炉装入時の粉化に耐えるための一定の強度が必要である。そのため、成型後の生の高炉用非焼成含炭塊成鉱は、セメント等の無機バインダーと水との水硬反応を進めるために養生する。養生後の冷間圧潰強度としては、非焼成含炭ペレット(直径約10〜15mm)では、5000kN/m2以上が好ましく、非焼成含炭ブリケット(約20〜25cc)では、1000N/サンプル以上が好ましい。
【0047】
圧潰強度の測定は、JIS M8718「鉄鉱石ペレット圧潰強度試験方法」に準じて、試料1個に対して、規定の加圧速度で圧縮荷重をかけることにより、破壊した時の荷重値を測定する。
【0048】
非焼成含炭塊成鉱は、高炉内では、高炉シャフト部の熱保存帯と還元反応平衡帯におけるガス条件と温度条件下で反応を受け劣化するが、順調な高炉操業のためには、一定の熱間圧潰強度の維持が必要である。反応後の熱間圧潰強度としては、非焼成含炭ペレット(直径約10〜15mm)では、700kN/m2以上が好ましく、非焼成含炭ブリケット(約20〜25cc)では、100N/サンプル以上が好ましい。
【0049】
非焼成含炭塊成鉱の熱間圧潰強度の測定は、JIS M8713「被還元性試験方法」に準じた条件での還元処理を行ったあと、室温まで冷却した試料に対して、JIS M8718「鉄鉱石ペレット圧潰強度試験方法」に準じて圧壊強度を測定する。
【0050】
前記微粉状鉄含有原料としては、粉鉄鉱石、ダストやスラッジなどの鉄酸化物を含む鉄系原料の粉体がある。
【0051】
前記微粉状炭材としては、粉コークス、粉石炭及びコークスダスト並びに粉コークスを含有する高炉一次灰などの粉状の固形炭材などがある。
微粉状炭材は、原料全質量に対し、10%以上が好ましく、これにより含炭塊成鉱内の酸化鉄を還元するに十分な量の炭素分を供給できる。さらに、15%以上がより好ましく、18%以上が特に好ましい。10%を超える炭素分は、高炉内で含炭塊成鉱の近傍に存在する焼結鉱の還元をも促進する効果を発現するためである。
【0052】
従来から、ペレット中の酸化鉄を還元するのに必要な理論上の炭素量に対する炭素含有量の比を「炭素等量」と定義し、炭素による酸化鉄の還元度の目安としている。従来は、高炉用原料として要求されるペレットの冷間圧潰強度である5000kN/m2以上を維持するためには、炭素含有量を15質量%(炭素当量で1.2に相当)以下に制限せざるを得なかった(特許文献2)。しかし、本発明では、微粉状鉄含有原料に15%以上の微粉状炭材を添加することができる。
【0053】
前記炭素含有量15質量%以上は、炭素等量1.2以上に相当し、高炉で使用する際に、非焼成含炭ペレットの場合のペレット中の酸化鉄を還元し、さらに余剰な炭素のガス化により、高炉内にて、非焼成ペレット以外の鉄原料(例えば焼結鉱)の還元を促進し、省エネルギー化、低CO化が期待できる。
【0054】
水硬性バインダーとは、原料中に含有する水分や添加水分との水和反応により硬化することにより造粒物の冷間圧潰強度を高める機能を有するバインダーを意味する。微粉状鉄含有原料に微粉状炭材量を増加していくと、酸化鉄の還元は促進されるが、冷間圧潰強度の確保が難しくなる。そこで、微粉状鉄含有原料と微粉状炭材に、前記水硬性バインダーを添加し、水分を加えて混合、造粒することにより、高炉用非焼成含炭塊成鉱の冷間圧潰強度を確保する。
【0055】
前記水硬性バインダーとしては、高炉水砕スラグを主成分とする微粉末とアルカリ刺激剤からなる時効性バインダーや、ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント等があるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
前記水硬性バインダーの量は、原料全質量に対して、3質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。3質量%未満では、バインダーとしての作用・効果が発揮できず、前記養生後の圧潰強度が期待できない。また、10質量%を超えると、冷間にはさらなる向上効果が認めれるもの、熱間強度の改善は小さくなる。また、水硬性バインダーの10%添加により、冷間、熱間強度共に所定の強度(冷間5000kN/m2、熱間700kN/m2)に到達しており、それ以上添加することは、工業的なコストの増大、および高炉へのスラグ、結晶水の装入量を増加させることからも好ましくない。また、過剰な水硬性バインダーの導入は高炉内のシャフト部での温度低下による還元停滞域(低温熱保存帯)を引き起こし、又、高炉のスラグ量が増加し、必要エネルギーの増加、発生CO量の増加となる面からも好ましくない。
【0057】
水硬性バインダーに添加する微粒シリカとしては、フェロシリコン又はメタルシリコン製造時に電気炉から発生する燃焼灰である高純度な非晶質シリカ微粉末(シリカフューム)を使用することができる。また、硅石を微粉砕したものでもよく、これらに限定するものではない。
【0058】
本発明において、微粒シリカの粒度は、平均粒径が0.15μm以下が必要であり、0.10μm以下が、より好ましい。フェロシリコン又はメタルシリコン製造時に電気炉から発生する燃焼灰である高純度な非晶質シリカ微粉末(シリカフューム)は、前記の平均粒径を満たす。ここで、微粒シリカの平均粒径は、質量基準のメジアン径であり、原料粒子の累積質量分布における累積値(質量%)が50%に相当する原料の粒子径として定義される。
【0059】
前記微粒シリカの量は、水硬性バインダーの量に対して、5質量%以上、20質量%以下であることが好ましいとした。5質量%未満では、シリカとしての添加効果が明確でないためである。また、その使用量の上限についてはCaO:SiOのモル比で1:1程度までの添加効果が期待できるが、製造コストの面から20質量%とした。
【0060】
水硬性バインダーと微粒シリカは予め混合し、その後、微粉状鉄含有原料と、微粉状炭材と、水硬性バインダーに水分とともに添加して混合、造粒する。
造粒設備は、特に限定する必要はなく、原料の混錬、加水、造粒、製品篩の機能を有するものであればよく、混錬機、造粒機などは、特に限定されるものではない。
【0061】
水硬性バインダーと微粒シリカを予め混合する設備は、特に限定する必要はなく、原料を所定割合で混合するための切り出し、秤量、排出するための機能を有するものであればよく、混合機、秤量機などは、特に限定されるものではない。
【0062】
還元前の冷間における非焼成含炭ペレットの原料粒子構造は、酸化鉄粒子と炭材粒子の間隙にバインダーが充填され、強固に結合された構造を有するため、圧壊強度を維持することができる。
【0063】
しかし、従来から知られるように、非焼成含炭ペレット内の炭素含有割合が過度に高くなる場合や、全原料の粒度が過度に大きくなる場合に、冷間圧潰強度が低下する。
【0064】
所定範囲で炭素含有割合を増加することや、全原料の粒度の増大に応じてバインダーの添加量を増加することにより、非焼成含炭ペレットの冷間強度は向上する。しかし、高炉内の高温領域では、炭素とバインダーはガス化し、空隙が形成され、熱間強度の低下の原因となるため、炭素およびバインダーの含有割合の過度の増加は好ましくない。
これに対して、0.15μm以下の微粒シリカを水硬性バインダーに予め添加しておくと、水硬性バインダーのポゾラン反応を促進する作用により、硬化強度が向上する。その粒度が0.15μmを超えると、この促進効果が充分に得られなくなる。この効果は、水硬性バインダーと微粒シリカが近接している必要があり、これを達成するために両者を事前に混合しておく必要がある。
【0065】
また、水硬性バインダー単独では高炉内の400〜500℃にて吸熱反応を伴って脱水反応が進行するため、バインダーの過度な添加は高炉内の低温化を招き、還元停滞域(低温熱保存帯)を引き起こし、効率が低下する。また、その分解によって強度を失い、金属鉄生成に伴う強度発現が起こる直前の温度である900℃付近で、最も高度が低下する。
この時、微粒シリカを添加しておけば、この900℃付近の温度での強度低下を抑制できる。その理由は定かではないが、水硬性バインダーと微粒シリカが反応してスラグ様の物質を生成し、これが強度発現に寄与しているのではないかと推察される。
【実施例】
【0066】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これに限られるものではない。
【0067】
実験に用いた主原料を表1に示す。主原料は、焼結ダスト及び微粉状鉄鉱石を酸化鉄原料とし、高炉一次灰及びコークスダストを炭材原料とした。
前記主原料に対して、ポルトランドセメント、および微粒シリカ又は珪石を種々の比率に変化させて配合し、配合原料とした。ここに、ポルトランドセメントは通常市販されているものであり、微粒シリカはシリカヒュームと称されるものでその平均粒度は0.15μmであった。又、珪石は1mm以下に粉砕したものを使用した。前記、主原料を混合機で5分間混合し、その後、予め混合されたポルトランドセメントと微粒シリカ又は珪石の混合品を添加した後、混錬機で加水しながら5分間混錬し、ディスクペレタイザーにより、ペレットを造粒した。この時、造粒水分は8〜11質量%の範囲であった。造粒後の生ペレットは、屋根の掛っている屋外において、14日間山積み養生した。養生後、直径10mm〜15mmを篩分けて成品として回収した。成品ペレットの冷間での圧壊強度および加熱処理後の圧壊強度(熱間)は、それぞれ、段落「0048」および「0050」に記載した方法により、20試料を測定してその平均値を代表値とした。

【0068】
【表1】

【0069】
[実施例1]
実施例1では、シリカ粒度影響、および水硬性バインダーの有効な添加量について検討した。主原料、ポルトランドセメントおよび微細シリカ又は珪石の配合量、及び冷間、熱間圧壊強度の測定結果を表2に示す。
セメントとともに珪石をセメントの10質量%添加した各比較例に対して、セメントとともに微粉シリカをセメントの10質量%使用した各実施例の方が、いずれのセメント添加量においても冷間、熱間ともに圧壊強度が向上した。これは、珪石の粒度が微細になることの効果である。
さらに、比較例2と3、あるいは実施例2と3から、セメントの配合量が10質量%を超えると冷間強度の方の改善が小さくなった。これより、水硬性バインダーの配合上限を10質量%と規定している。

【0070】
【表2】

【0071】
[実施例2]
次に、セメント配合量7%において、適性な微粒シリカ配合量を検討した結果を表3に示す。
製造コスト面から実用的な上限と考えられる、セメント量に対して20%の微細シリカ添加量を超えても、なお、冷間、熱間とも、微細シリカの添加量に比例した改善効果は認められた。
【0072】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、微粉状鉄含有原料と、微粉状炭材と、水硬性バインダーとに水分を添加して混合、造粒することにより高炉用非焼成含炭塊成鉱を製造する方法において、水硬性バインダーの添加量を低減しても、冷間圧潰強度及び高炉内の還元温度域での熱間強度を維持することができる非焼成含炭塊成鉱の製造方法を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉状鉄含有原料と、微粉状炭材と、水硬性バインダーとを含む原料に水分を添加して混合、造粒することにより高炉用非焼成含炭塊成鉱を製造する方法であって、前記水硬性バインダーに平均粒径が0.15μm以下のシリカを加え、予め予備混合した後に、微粉状鉄含有原料と微粉状炭材を加え、水分を添加して混合、造粒することを特徴とする高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法。
【請求項2】
前記水硬性バインダーが、原料全質量に対して、3質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法。
【請求項3】
前記シリカが、水硬性バインダーの全質量に対して、5質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれかに記載の高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法。
【請求項4】
前記高炉用非焼成含炭塊成鉱が、前記原料の全質量に対し10%以上の前記微粉状炭材を有する非焼成含炭ペレット及び非焼成含炭ブリケットのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高炉用非焼成含炭塊成鉱の製造方法。









【公開番号】特開2012−188678(P2012−188678A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50514(P2011−50514)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】