説明

高純度のニオブアルコキシドの製造方法並びにニオブアルコキシド

【課題】ニオブアルコキシド、特にニオブエトキシド、ニオブ n−プロポキシド、異性体のニオブブトキシド及び異性体のニオブペントキシドを、高純度で、淡色形において、産業において容易に実現可能で、費用がかからず、かつ非常に良好な再現性を有する単純な方法によって提供する。
【解決手段】一般式(I)
Nb(OR)5 (I)
[式中、Rは、明細書中に示される意味を有する]で示される高純度で淡色のニオブアルコキシドの製造方法において、一般式(I)の粗製ニオブアルコキシドを、一般式(II)
1OH (II)
[式中、R1は、明細書中の意味を有する]で示される1種以上のアルコール0.01〜5質量%、有利には0.1〜2質量%の添加によって、又は空気もしくは他の酸素を含む気体混合物での処理によって、かつ場合により引き続き蒸留することによって精製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度のニオブアルコキシド、特にニオブエトキシドの新規の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブアルコキシドは、しばしば文献においてニオブアルコラートとも呼称され、それは、相応の金属酸化物層の堆積のために化学蒸着法(CVD)によって用いることができ、従って例えばエレクトロニクス産業において使用が成される極めて堅強な成分の製造のための有用な出発化合物である。係る金属酸化物層は、また、ゾル−ゲル法により加水分解を介して、相応のニオブアルコキシドから製造することもできる。その非常に高い誘電率は、例えばニオブ酸化物層をDRAM(ダイナミックランダムアクセス読み出し/書き込みメモリ)において使用することを可能にする。ランプ産業においても、CVD方法論によって堆積されたニオブ酸化物は、例えば白熱電球の製造のために役割を担う。
【0003】
しかしながら、エレクトロニクス産業に関する問題と、またランプ製造業者にとっての問題は、係る層のための出発材料、すなわちアルコキシド類の純度に対する過度な要求にある。
【0004】
最も一般的に使用される、技術的に単純で、かつ最も経済的に実行可能なニオブアルコキシドの製造は、相応の金属(V)塩化物とアルコールとから開始する。総括的な概要は、D.C.Bradley、R.C.Mehrotra、I.P.Rothwell及びA.Singhによる論文"金属のアルコキソ誘導体とアリールオキソ誘導体(Alkoxo and Aryloxo Derivatives of Metals)"、Academic出版、2001年によって示されている。典型的な手法は、例えばDE10113169号A1に記載されている。
【0005】
他の点での大きな化学的な類似性にもかかわらず、ニオブアルコキシド、特にニオブエトキシド及びより高級なニオブアルコキシドは、実質的に無色の類似のタンタル化合物に対して、淡色形で、すなわち純粋形においては極めて困難にのみ得られるに過ぎない。一般に、蒸留された材料でさえも、黄色(黄橙色)ないし赤褐色に呈色している。例えば、280より高いハーゼン色数が、典型的な市販のニオブエトキシドで測定される。これは、繰り返し蒸留した後でさえもそういった状況である。特に、淡色の又は実質的に無色のニオブエトキシドの確実な再現可能な製造は、今日では、蒸留単独(真空蒸留、沸点153℃/0.1mmHg又は200℃/5.5mmHg)によっては不可能となっている。
【0006】
例えば、D.C.Bradley、B.N.Chakravarti、W.Wardlaw著のJ.Chem.Soc.1956の第2381〜2384頁は、ニオブエトキシド、ニオブ n−プロポキシド及びニオブ n−ブトキシドを、黄色の液体として言及している。そのニオブエトキシドの例を使用すると、繰り返しの蒸留の場合には黄色を排除できないことが明記されている。高純度で、ごく僅かに黄色のニオブエトキシドを得るための過程としては、以下の複雑な方法が記載されている:黄色のニオブエトキシドを、沸騰したイソプロパノール中で転化させて、Nb(OEt)(OiPr)4とNb(OEt)2(OiPr)3との結晶性混合物を得て、それを4回再結晶化させる。次いで、この混合されたエトキシド−イソプロポキシドを、エタノールで4回処理する。前記の複雑な様式で得られたニオブエトキシドの蒸留によってのみ、高純度で、ごく僅かに黄色の生成物が得られるに過ぎない。
【0007】
係る複雑な方法は、高純度で、ほぼ無色のニオブエトキシド又はより高級のニオブアルコキシドの工業的製造には有用ではない。
【特許文献1】DE10113169号A1
【非特許文献1】D.C.Bradley、R.C.Mehrotra、I.P.Rothwell及びA.Singhによる論文"金属のアルコキソ誘導体とアリールオキソ誘導体"、Academic出版、2001年
【非特許文献2】D.C.Bradley、B.N.Chakravarti、W.Wardlaw著のJ.Chem.Soc.1956の第2381〜2384頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、ニオブアルコキシド、特にニオブエトキシド、ニオブ n−プロポキシド、異性体のニオブブトキシド及び異性体のニオブペントキシドを、高純度で、淡色形において、産業において容易に実現可能で、費用がかからず、かつ非常に良好な再現性を有する単純な方法によって提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、驚くべきことに本発明による方法によって解決される。
【0010】
本発明は、一般式(I)
Nb(OR)5 (I)
[式中、Rは、同一又は異なる、しかしながら有利には同一の、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C12−アルキル、有利には直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C6−アルキル、より有利にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、2−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、2−メチル−2−ブチル又は3−メチル−2−ブチルである]で示される高純度で淡色のニオブアルコキシドの製造方法において、一般式(I)の粗製ニオブアルコキシドを、一般式(II)
1OH (II)
[式中、R1は、Rとは無関係に、同一又は異なる、しかしながら有利には同一の、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C12−アルキル、有利には直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C6−アルキル、より有利にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、2−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、2−メチル−2−ブチル又は3−メチル−2−ブチルである]で示される1種以上のアルコール0.01〜5質量%、有利には0.1〜2質量%の添加によって、又は空気もしくは他の酸素を含む気体混合物での処理によって、かつ場合により引き続き蒸留することによって精製することを特徴とする方法を提供する。
【0011】
アルコールR1OHが、精製される一般式(I)のニオブアルコキシドと同じアルキル基を有することが好ましいことがあるが、必要的に定められるものではない。特に好ましい実施態様においては、従ってRとR1とは同じ定義を有する。
【0012】
本発明の文脈においては、一般式(I)の粗製ニオブアルコキシドとは、一般式(I)のニオブアルコキシドであって、一般式(I)のそのニオブアルコキシドの合成後に、場合により蒸留後に又は場合により更なる精製を行わずして得られるニオブアルコキシドを意味すると解される。係る合成方法は、当業者に十分によく知られており、かつ文献及び特許文献において幾度も記載されている;例えばD.C.Bradley、R.C.Mehrotra、I.P.Rothwell及びA.Singhによる"金属のアルコキソ誘導体とアリールオキソ誘導体"、Academic出版、2001年を参照のこと。
【0013】
経験的に、呈色性の不純物は、ニオブメトキシドの場合に比較的低い役割を担うことが示されている。それというのも、それは通常、慎重な作業の場合において無色(白色)の結晶の形態で得られるからである。従って、本発明による方法の好ましい実施態様においては、R及びR1は、それぞれ無関係に、同一又は異なる、しかしながら有利には同一の、直鎖状もしくは分枝鎖状のC2〜C5−アルキル基、最も有利にはエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、2−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、2−メチル−2−ブチル又は3−メチル−2−ブチルである。
【0014】
本発明による方法の殊に好ましい一実施態様においては、一般式(I)のニオブアルコキシドは、ニオブエトキシドであり、かつ一般式(II)のアルコールは、エタノールである。
【0015】
酸素を含む気体混合物は、有利には、酸素に並んで、主に不活性成分、例えば希ガス、例えばアルゴン及び/又は窒素を含有する混合物であり、該混合物は、ニオブアルコキシドの加水分解を避けるために乾燥していることが望ましい。特に、乾燥空気又は酸素−アルゴン乾燥気体混合物で処理することが好ましい。
【0016】
本発明の文脈においては、乾燥とは、精製されるニオブアルコキシドにいかなる多大な加水分解も引き起こさない空気又は気体混合物を意味すると解される。乾燥は、有利には、20℃での水蒸気圧0.25kPa未満、特に0.05kPa未満に相当する含水率を意味すると解される。
【0017】
不十分に乾燥した空気又は完全に乾燥していない酸素を含む気体混合物を本発明による方法で使用する場合には、それにもかかわらず所望の精製効果は達成される。同時に、存在する水分は、一般式(I)のニオブアルコキシドを加水分解して、アルコールROHとニオブ酸化物とにする。形成されたアルコールは、存在する酸素に加えて、本発明による方法の所望の精製効果を保証する。しかしながら、形成されるアルコールの量は、非常に不十分にのみ調節及び制御できるに過ぎず、更に形成されたニオブ酸化物が析出するため失われることと、加えて例えば濾過によって複雑な様式でそれを再び除去する必要があるので、前記方法は好ましくない。
【0018】
従って、一般式(II)の粗製ニオブアルコキシドを、乾燥空気又は酸素を含む乾燥混合物で処理することが好ましい。費用の理由から、乾燥空気で処理することが特に好ましい。
【0019】
乾燥空気又は乾燥気体混合物、例えば酸素−保護ガス(アルゴン)混合物は、当業者に公知のように、液体乾燥剤中を通過させるか、有利には固体乾燥剤上に通過させることによって提供される。その乾燥剤の種類は、それらが気体混合物中の酸素含分との反応を避けるために還元作用を有する必要はないことに留意すべきである。非還元性の好適な乾燥剤は、例えば吸湿性の塩、例えばCaCl2、K2CO3、CuSO4、MgClO4、Na2SO4、金属酸化物、例えばBaO、CaO、MgO、酸、例えばH2SO4、酸無水物、例えばP25、モレキュラーシーブ又はシリカゲルである。係る乾燥剤は、当業者に公知であるか、又は容易に選択することができ、例えばRoempps Chemie−Lexikon、第8版の第4370〜4371頁又は"Organikum"、第21版、Wiley−VCH(2001年)の第24頁に記載されている。
【0020】
精製される粗製ニオブアルコキシドを空気又は酸素を含む気体混合物で処理する本発明による方法の変法は、アルコールでの処理よりも、その非常に単純な実施可能性のため好ましいことがある。空気又は酸素を含む気体混合物での処理は、有利には、液体のニオブアルコキシド中に又はその上を通過させることによって、しかしながら有利には液体のニオブアルコキシド中に通過させることによって、あるいは好適な溶剤中に溶かしたニオブアルコキシドの溶液中に通過させることによって実施することができる。空気又は酸素を含む気体混合物を、単に液体のニオブアルコキシド又は溶解されたニオブアルコキシド中に通過させるだけの場合には、それは可能であるが、その不十分な緩慢な混合のためあまり好ましくないので、ニオブアルコキシドの効果的な循環は、例えば撹拌によって保証されるべきである。
【0021】
ニオブアルコキシドに適した溶剤は、例えば脂肪族の、直鎖状の、分枝鎖状のもしくは環状の炭化水素、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン又は芳香族炭化水素、例えばトルエン又はキシレン又は係る溶剤の混合物である。
【0022】
アルコールR1OH、空気又は他の酸素を含む気体混合物を用いた本発明による精製作業は、10℃〜70℃の温度範囲で、有利には20℃〜50℃の温度範囲で、より有利には室温(20〜25℃)で実施することが好ましい。
【0023】
精製のために使用される乾燥空気の所要量は、ニオブアルコキシドの色向上の進行を介して容易に決定することができる。精製される生成物の変色度(ハーゼン色数)に応じて、酸素については、ニオブアルコキシド中を通過させるのに十分な時間は、15分〜2時間の時間であり、しばしば30分〜1時間の時間である。例えば、0.1〜10ml/秒、有利には0.5〜5ml/秒の空気が導通され、それは、90ml〜72lの全量の、有利には900ml〜18lの全量の空気に相当する。これらのデータは、基準として解されるのみであるべきである;前記値は、精製の要求と存在する変色に応じて、より高くも低くもなりうる。
【0024】
添加された酸素を有する混合物中で使用できる保護ガス、例えばアルゴン中の酸素含有率は、空気の酸素含有率によって導かれる。即使用可能な混合物は、その際、例えば2〜35体積%、有利には5〜25体積%の酸素を含有する。相応して適した酸素含有率は、空気の添加によって得ることもでき、そうして存在する保護ガスは、アルゴン/窒素混合物であるか、又はアルゴン−空気混合物が、精製のために使用される。
【0025】
アルコールR1OH、空気又は他の酸素を含む気体混合物を用いる本発明による方法における精製作業に引き続き、場合により減圧下で蒸留を行ってよい。減圧下でのニオブアルコキシドの蒸留のパフォーマンスは、当業者に知られている;D.C.Bradley、B.N.Chakravarti、W.Wardlaw著のJ.Chem.Soc.1956の第2381〜2384頁も参照のこと。
【0026】
本発明の文脈において、C2〜C5−アルキルは、例えばエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピルである;本発明の文脈において、C1〜C6−アルキルは、更に、例えばメチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル又は1−メチル−2−エチルプロピルである;本発明の文脈において、C1〜C12−アルキルは、更に、例えばn−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル及びn−ドデシルである。
【0027】
前処理と技術的背景にかかわらず、又は一般にニオブアルコキシドの製造方法にもかかわらず、本発明によるニオブアルコキシドの精製方法は、良好な成果を達成できる。
【0028】
しかしながら、特に低いハロゲン、有利には低い塩化物の一般式(I)の粗製ニオブアルコキシドを本発明による精製方法で使用することが好ましいことがある。係る低いハロゲン化物、有利には低い塩化物の粗製ニオブアルコキシドを製造するのに適した方法は、例えばドイツ国特許出願DE102005052444.3号に記載されているが、当該出願は、本願の優先日時点では公開されていなかった。
【0029】
この方法は、特に、一般式(I)のニオブアルコキシドの精製方法において、
・ 100ppmより多い、幾らかの場合には200ppmより多いハロゲン含有率、特にCl含有率を有し、不純物として少なくとも0.05質量%の、有利には0.1〜10.0質量%の単核もしくは多核のハロゲン含有の金属アルコキシドを含有する粗製ニオブアルコキシドを、
・ 該粗製アルコキシドの全量に対して30質量%以下の、有利には4〜12質量%のアルコールR2OH[式中、R2は、R及びR1とは無関係に、R及びR1について前記した定義の1つを有する]と混合し、そして
・ 引き続き又は同時に(例えばアルコールR2OH中での事前の溶解後に)、単核もしくは多核のハロゲン含有の金属アルコキシドの量に対して過剰な、有利には粗製アルコキシドの全量に対して0.1〜5.0質量%のアンモニアを計量供給する精製方法である。
【0030】
係る精製工程、特にハロゲン化物、有利には塩化物の不純物を排除するための精製工程は、有利には、本発明による方法の上流に連結されていてよい。より好ましくは、これによって100質量ppm未満のCl含有率を有する、本発明による方法で使用するための粗製ニオブアルコキシドが得られる。
【0031】
本発明による方法の好ましい実施態様においては、精製のために使用される粗製ニオブアルコキシドは、100質量ppm未満のCl含有率(塩化物として測定される)を有するものである。該塩化物含有率は、例えばDIN38405D−1により電量分析的に測定することができる。比色法、例えばチオシアン酸水銀(II)と反応させて、引き続き放出されるチオシアン酸イオンと鉄(III)イオンとを反応させて、赤色のチオシアン酸鉄(III)とする比色法も、方向付けには適している。ハロゲン化物を含有する、特に塩化物を含有するニオブアルコキシドを精製するための本発明の文脈においては、ハロゲン化物含有率、有利には塩化物含有率を低減させるための工程と、引き続きアルコールR1OH又は空気もしくは酸素を含む気体混合物で処理することを組み合わせることが殊に好ましい。
【0032】
本発明による方法によって精製されたニオブアルコキシドは、事実上無色であるか、又は肉眼で見て僅かに淡黄色を有するに過ぎない。この色は、ハーゼン色数の測定によって決定することができる。本発明による方法によって、150未満、より有利には120未満、最も有利には60未満のハーゼン色数を有するニオブアルコキシドが得られる。ハーゼン色数(Pt−Co色数)は、DIN EN ISO6271−1+2に従って測定される。
【0033】
本発明は、更に、本発明による方法によって得ることができる高純度のニオブアルコキシドを提供する。
【0034】
本発明による方法によって製造される係る高純度のニオブアルコキシドは、例えば化学蒸着法(CVD)による相応の金属酸化物層の堆積のために極めて適しており、従って例えばエレクトロニクス産業において使用が成される極めて堅強な成分の製造のための有用な出発化合物である。
【0035】
以下の実施例は、本発明を例示として説明するために役立つものであって、制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0036】
ハーゼン色数(Pt−Co色数)は、常にDIN EN ISO6271−1+2に従って測定された。
【0037】
実施例1:低いCl含有率を有するニオブエトキシドの、エタノールの添加による本発明による精製
a)低いCl含有率を有するニオブエトキシドの製造
810g(3モル)の塩化ニオブを、600mlの無水ヘプタン中に懸濁した。2時間以内で、そこに11kgの無水(abs.)エタノールを配量し、その経過において内部温度を、水/氷で冷却しつつ40℃未満に保った。該混合物を、25℃で1時間撹拌した。
【0038】
引き続き、321g(19.5モル)のアンモニアを、最大35℃(水/氷で冷却)で3時間以内で導入した。その後に、該混合物から塩化アンモニウムを濾過し、そしてエタノールを20ミリバールで留去し、そして最後に1ミリバール未満の高真空下で留去した。
【0039】
得られた粗製エトキシドに70gの無水エタノールを添加し、引き続き33.8g(1.99モル)のアンモニアを、23℃で1時間以内で導入した。23℃で更に2時間にわたり撹拌した後に、800mlのヘキサンを添加し、その混合物を濾過し、そして濾別された塩化アンモニウムをヘキサンで洗浄した。合したヘキサン溶液を、減圧下で蒸留した。ヘキサンを留去した後に得られたニオブエトキシドは、約35ppmのClを含有していた。
【0040】
b)エタノールの添加による精製
実施例1a)からの約35ppmのCl含有率を有する黄橙色(ハーゼン色数>280)の未蒸留の粗製ニオブエトキシド500gを、50gの無水エタノールと混合して、撹拌しつつ2時間にわたり50℃に加熱した。引き続き、該混合物を150℃/0.5ミリバールで蒸留した。その蒸留物は、帯黄色を呈し、ハーゼン色数100を有していた;図1は、このニオブエトキシド試料の吸収の波長依存性を示している。
【0041】
実施例2:ニオブエトキシドの、空気での処理による本発明による精製
1.7kgの粗製ニオブエトキシドを、155℃/0.6ミリバールで蒸留して、黄橙色の蒸留物(ハーゼン色数>280)を得た。塩化カルシウム上で乾燥された空気を、その蒸留物中に23℃で1時間にわたり通過させた。その後に、その生成物は黄色を呈し、そしてハーゼン色数145を有していた。
【0042】
実施例3:低いCl含有率を有するニオブエトキシドの、空気での処理による本発明による精製
実施例1a)と同様に製造された粗製ニオブエトキシドを、150℃/0.5ミリバールで蒸留した。20ppmのCl含有率を有する黄橙色のニオブエトキシド蒸留物を、実施例2と同様に、CaCl2上で乾燥された空気によって23℃で1時間にわたり処理した。その色が、淡黄色に変化した。
【0043】
実施例4:低いCl含有率を有するニオブエトキシドの、空気での処理による本発明による精製
a)低いCl含有率を有するニオブエトキシドの製造
上記1a)に従って製造された粗製ニオブエトキシド11.557kgを、1156gのエタノール及び57.8gのNH3で処理して、上記1a)と同様にCl値を低下させた。引き続き、得られた粗製ニオブエトキシドは、35ppmのCl含有率を有していた。該生成物を、3回に分けて150℃/0.5ミリバールで蒸留した。
【0044】
b)空気での処理による精製
CaCl2上で乾燥された空気を、上記4a)からの3つの異なる蒸留物、それぞれの場合に2kg中に、約50ml/分の速度で、それぞれの場合に1/2時間にわたって通過させた。3つのニオブエトキシド部のハーゼン色数を引き続き測定した結果、25、30及び50の値が得られた。その波長依存性を、図2に示す。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、実施例1で得られるニオブエトキシド試料の吸収の波長依存性を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例4で得られるニオブエトキシド試料の吸収の波長依存性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
Nb(OR)5 (I)
[式中、Rは、同一又は異なる、しかしながら有利には同一の、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C12−アルキルである]で示される高純度のニオブアルコキシドの製造方法において、一般式(I)の粗製ニオブアルコキシドを、一般式(II)
1OH (II)
[式中、R1は、Rとは無関係に、同一又は異なる、しかしながら有利には同一の、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C12−アルキル、有利には直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C6−アルキル、より有利にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、2−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、2−メチル−2−ブチル又は3−メチル−2−ブチルである]で示される1種以上のアルコール0.01〜5質量%の添加によって、又は空気もしくは他の酸素を含む気体混合物での処理によって、かつ場合により引き続き蒸留することによって精製することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、Rが、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C6−アルキル、有利にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、2−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、2−メチル−2−ブチル又は3−メチル−2−ブチルであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、Rが、直鎖状もしくは分枝鎖状のC2〜C5−アルキル、有利にはエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、2−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、2−メチル−2−ブチル又は3−メチル−2−ブチルであることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法において、R及びR1が、同じ定義を有することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法において、R及びR1が、それぞれエチルであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法において、粗製ニオブアルコキシドを、乾燥空気又は他の酸素を含む乾燥気体混合物で処理することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法において、粗製ニオブアルコキシドが、100質量ppm未満のCl含有率を有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法において、100ppmより多い、幾らかの場合には200ppmより多いハロゲン含有率、特にCl含有率を有し、不純物として少なくとも0.05質量%の、有利には0.1〜10.0質量%の単核もしくは多核のハロゲン含有の金属アルコキシドを含有する一般式(I)の粗製ニオブアルコキシドを、一般式(II)の1種以上のアルコール0.01〜5質量%の添加の前に又は空気もしくは他の酸素を含む気体混合物での処理の前に、ハロゲンの除去のために
・ 該粗製アルコキシドの全量に対して30質量%以下の、有利には4〜12質量%のアルコールR2OH[式中、R2は、R及びR1とは無関係に、R及びR1について請求項1で示した意味の1つを有する]と混合し、そして
・ 引き続き又は同時に、単核もしくは多核のハロゲン含有の金属アルコキシドの量に対して過剰な、有利には粗製アルコキシドの全量に対して0.1〜5.0質量%のアンモニアを計量供給することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法によって得ることができるニオブアルコキシド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−69154(P2008−69154A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239984(P2007−239984)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】