説明

高純度2,6−ジメチルナフタレンの製造方法

【課題】ジメチルナフタレン混合物から高純度の2,6−ジメチルナフタレンを工業的に有利に製造する方法を提供する。
【解決手段】(1)ジメチルナフタレン混合物を、触媒の存在下で異性化する異性化工程、(2)溶媒の存在下、異性化反応生成物から結晶化により2,6−ジメチルナフタレンを分離する結晶化工程、(3)結晶化工程の母液を蒸留し、ジメチルナフタレンよりも沸点の高い成分と低い成分を除去して、ジメチルナフタレン留分を得る蒸留工程の3工程からなり、蒸留工程で得たジメチルナフタレン留分を異性化工程に循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジメチルナフタレン類混合物から、2,6-ナフタレンジカルボン酸の原料として有用な2,6-ジメチルナフタレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,6-ナフタレンジカルボン酸は、優れた引っ張り強度と耐熱性を有するポリエチレンナフタレート繊維やフィルム等の製造に用いられる高性能ポリエステルの原料となる。2,6-ジメチルナフタレン(以下、ジメチルナフタレンをDMNと称する)は、この2,6-ナフタレンジカルボン酸の原料となるものであり、高純度のものが要求される。すなわちポリエチレンナフタレート繊維やフィルム等の製造に用いられる高性能ポリエステルの原料としての2,6-ナフタレンジカルボン酸は高純度のものである必要があり、その原料である2,6-DMNも高純度である必要がある。DMNには2個のメチル基が存在するので、その位置により10個の異性体があり、2,6-ナフタレンジカルボン酸の原料としての2,6-DMNは、他の異性体を実質的に含まない高純度のものである必要がある。
【0003】
2,6−DMNの製造法としてタール留分や石油留分から分離する方法、ナフタレンあるいはメチルナフタレンをメチル化後に異性化分離する方法等がある。これらの留分や生成物は、10種の異性体のほとんどを含み、多くの異性体混合物から2,6-DMNを分離する必要がある。一方、特開昭49-134634 号には、オルトキシレンとブタジエンから、o-トリルペンテン-2を高収率で得る方法が示されている。また特開昭50-89353号にはo-トリルペンテン-2を環化して、1,5-ジメチルテトラリンを製造する方法が示され、特開昭48-76852号には1,5-ジメチルテトラリンを脱水素して高収率、高選択率で1,5-DMNを製造する方法が示されている。さらに特開昭50-129534 号には、1,5-DMNを異性化して、主として1,5-、1,6-、2,6-DMNからなる異性体混合物を得る方法が示されている。従ってこれらの方法を組み合わせることにより、オルトキシレンとブタジエンから主として1,5-、1,6-、2,6-DMNからなる異性体混合物を得ることができ、この異性体混合物から2,6−DMNを分離する方法もある。
【0004】
以上のように従来知られている2,6−DMN製造方法では、DMN異性体混合物から2,6−DMNを分離、回収する必要がある。DMNの10異性体の沸点、融点は次の通りであり、各異性体の沸点は非常に近接しており、通常有機化合物の分離精製に用いられている蒸留により2,6-DMNを精製することは極めて困難である。
沸点(℃) 融点(℃)
1,5-DMN 269 82
1.6-DMN 266 -16
2,6-DMN 262 112
1,7-DMN 263 -14
1,8-DMN 270 65
2,7-DMN 262 98
1,3-DMN 265 -4.2
1,4-DMN 265 6
2,3-DMN 269 104
1,2-DMN 271 -3.5
【0005】
この表からも明らかなように、DMN異性体の内では2,6-DMNの融点が最も高い。一方、2,6-DMNは、1,5-DMN、2,7-DMN、2,3-DMNと共晶を形成することが知られている。このため異性体混合物から結晶化により2,6-DMNを結晶として析出させるためには、混合物中の2,6-DMNのこれら異性体に対する量比が共晶組成比よりも大きい必要がある。即ち混合物中の2,6-DMNに対する1,5-DMNのモル比が 1.9以下、2,7-DMNのモル比が 1.4以下、2,3-DMNのモル比が 1.1以下である異性体混合物を冷却した時、2,6-DMNが結晶として最初に析出してくることが知られている。
【0006】
上記のようなDMN異性体混合物から2,6-DMNを分離する方法として、結晶化による方法、吸着による方法、ある種の有機化合物を用いて2,6-DMNと錯体を形成させ、これを分離した後、該錯体を分解する方法等が提案されている。これら各方法の中では、結晶化による方法が最も簡便であり、工業的分離方法として適している。特にオルトキシレンとブタジエンから、主として1,5−、1,6−、2,6−DMNからなる異性体混合物を製造し、これから分離する場合は、精製原料中の異性体種が少ないことから、結晶化による方法が有効である。ナフタレン類をメチル化後に異性化分離する場合、タール留分、石油留分から分離する場合は、多くの異性体混合物から2,6−DMNを分離する必要があり、この場合は吸着法と結晶化法を組み合わせる方法が用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オルトキシレンとブタジエンから得られる1,5−、1,6−、2,6−を主成分とするDMN異性化混合物を始めとする、各種DMN異性体混合物から2,6−DMNを分離、回収する場合、2,6−DMNの得率を上げるためには異性化が必要である。即ち2,6−DMNを分離した後の母液として得られるDMN異性体混合物を異性化することにより2,6−DMN濃度を上げ、このDMN異性化混合物から2,6−DMNを分離、回収する操作を繰り返すことにより2,6−DMNの得率を上げる方法が有効である。
【0008】
DMNの異性化を行う場合、α−β間の異性化に比べ、β−β間の異性化、環を越える異性化は起こり難いことが知られている。即ち、DMNは異性化に関して以下の四つの属に分けられ、各属内の異性化に比べ、属間の異性化は起こり難い。
2,6-属(1,5-DMN、1,6-DMN、2,6-DMN)
2,7-属(1,8-DMN、1,7-DMN、2,7-DMN)
2,3-属(1,4-DMN、1,3-DMN、2,3-DMN)
1,2-属(1,2-DMN)
【0009】
特公昭57-24331では、特定の異性化触媒を用いた場合に異属への異性化が起こることを利用して、2,6-属以外のDMNをある程度含んだDMNの混合物を原料として異性化し、異性化生成液を結晶化して2,6−DMNを分離後、母液を異性化原料として循環使用する方法が示されている。しかしながら本発明者らが2,6-属以外のDMNをある程度含んだDMNを異性化して得られた異性体混合物を用いて結晶化を行ったところ、高純度の2,6−DMN結晶を得ることができなかった。
【0010】
本発明の目的は、DMN混合物を原料として、これを異性化して得られるDMN異性体混合物から結晶化により2,6-DMNを分離、回収するに際し、原料DMNからの回収率が高く、かつ高純度の2,6−DMNが得られる工業的に有利な2、6−DMNの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、DMN混合物から高純度の2,6-DMNを結晶化により製造する方法について鋭意検討を行った結果、DMN混合物を異性化して得られるDMN異性体混合物の結晶化工程の母液を蒸留し、ジメチルナフタレンよりも沸点の高い成分と低い成分を除去して異性化工程に循環使用することにより、工業的にも容易に高純度の2,6−DMN結晶が得られること、特に結晶化原料中の2,7-DMNや、モノメチルナフタレン(以下、MMNと称す)およびトリメチルナフタレン(以下、TMNと称す)を一定濃度以下とすることにより、98%以上の高純度の2,6-DMNを高い得率で分離、回収することができることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち本発明は、ジメチルナフタレン混合物から2,6−ジメチルナフタレンを製造するに際して、(1)ジメチルナフタレン混合物を、触媒の存在下で異性化する異性化工程、(2)異性化反応生成物から、溶媒の存在下、結晶化により2,6−ジメチルナフタレンを分離する結晶化工程、(3)結晶化工程の母液を蒸留し、ジメチルナフタレンよりも沸点の高い成分と低い成分を除去して、ジメチルナフタレン留分を得る蒸留工程の3工程からなり、蒸留工程で得たジメチルナフタレン留分の一部或いは全部を異性化工程に循環させることを特徴とする高純度2,6−ジメチルナフタレンの製造方法、および1,5−ジメチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタレンおよび2,6−ジメチルナフタレンを主成分とするジメチルナフタレン混合物から結晶化により2,6−ジメチルナフタレンを分離するに際して、結晶化原料中に含まれるジメチルナフタレン類に対する2,7−ジメチルナフタレンの量が10重量%以下であることを特徴とする高純度2,6−ジメチルナフタレンの製造方法である。
【0013】
また本発明者らは、本発明によって得られた2,6-ジメチルナフタレンを液相酸化することにより、高性能2,6-ナフタレンジカルボン酸ないしそのエステルが極めて有利に製造されることを見出した。従って本発明には、上記により得られた2,6-ジメチルナフタレンを液相酸化することを特徴とする2,6-ナフタレンジカルボン酸の製造方法および該2,6-ナフタレンジカルボン酸をエステル化することを特徴とする2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルの製造方法も含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によればDMN混合物から高純度の2,6−DMNを容易に得ることができる。本発明の方法では簡単な構成で、高純度の2,6−DMNが高回収率で工業的に有利に得られる。また得られた2,6−DMNを液相酸化することにより、高性能ポリエステルの原料などに有用な2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルや高純度2,6−ナフタレンジカルボン酸が極めて有利に製造される。従って、本発明の工業的意義は非常に大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の2,6-DMN製造法は、異性化工程、結晶化工程および蒸留工程の3工程からなり、それらの関係を第1図に示す。異性化工程では原料のDMN混合物を触媒の存在下で異性化する。異性化反応生成物は結晶化工程に送られ、高純度の2,6-DMNの結晶を分離回収する。2,6-DMNの結晶を分離した後の母液は蒸留工程へ送られ、DMNよりも沸点の高い成分(高沸)と低い成分(低沸)を除去してDMN留分が異性化工程に循環される。
【0016】
本発明において原料に使用されるDMN混合物としては、特にオルトキシレンとブタジエンを原料として合成された1,5-DMNを主成分とするDMN混合物が好適に用いられる。この際に異性化工程に導入されるDMN混合物は、1,5-DMNを主成分とするDMN混合物と、該DMN混合物の異性化生成物から結晶化により2,6−DMNを分離した後の母液を蒸留して得られるDMN留分が混合するので、1,5−DMN、1,6−DMNおよび2,6−DMNを主成分とするジメチルナフタレン混合物となる。本発明方法では、異性化反応の成績がプロセス全体に多大な影響を及ぼす。即ち2、6−DMNへの異性化率が大きいほど、結晶化工程での1パス回収率が向上し、DMN循環量が減るため、経済的に有利である。また不均化、異属異性体への異性化が併発すると結晶純度を低下させることとなり、これら副反応は極力抑制する必要がある。特に2,7-DMNの生成が生成すると、蒸留による除去が困難なため、循環すれば蓄積されることとなり、結晶純度が悪化するばかりでなく、DMN留分の一部を抜き出すことが必要となり、2,6−DMNの得率を低下させることとなる。
【0017】
本発明に使用される異性化触媒としては、酸性を呈するものであればいかなるものでもよく、例えば固体酸や、鉱酸、フッ化水素等が用いられる。固体酸としては、例えばシリカアルミナ、アルミナ、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、モルデナイト、β−ゼオライト等があげられるが、ゼオライトが好ましい。このゼオライトはカチオンの一部または全部が水素あるいは金属で置換されたものが好適であり、2,6−DMNへの異性化率を高く、かつ不均化や異属異性体への異性化を抑制するためには、水素置換型のモルデナイト、特にシリカ/アルミナ比が 100以上の実質的に水素型からなるモルデナイトが好適である。このゼオライト触媒は、粉末でも使用可能であるが反応形式によっては、成型したものが用いられる。成型する場合の成型助剤としては、アルミナ、シリカ、粘土、酸性白土等が一般的に使われるが、アルミナあるいはシリカが好ましい。
【0018】
異性化反応を実施するに際しての反応形式は、特に制限は無く、回分式、流通式いずれの方法でも採用できるが、工業的には流通式が好ましい。流通式においては、固定床、流動床、移動床等のいずれの反応方式を用いてもよいが、一般的には固定床流通式が選ばれる。また反応は液相でも気相でも良く、その際の圧力にも特に制限はない。
【0019】
異性化原料とするDMNはそのまま用いても、また溶媒やガスにより希釈して用いてもよい。溶媒等の希釈剤を使用するか否かは、結晶化工程、蒸留工程を含めた全体の経済性を勘案して決められる。希釈剤となる溶媒には、脂肪族飽和炭化水素、脂環式飽和炭化水素、芳香族炭化水素等、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が用いられる。また希釈剤としてガスを用いる場合には、異性化反応に不活性なもの、例えば窒素、二酸化炭素、水素、アルゴン等が用いられる。結晶化工程で用いられる溶媒と同種の溶媒を用いて異性化反応を行うこともできる。
【0020】
異性化反応温度は触媒種や反応方式による異なるが、通常 100〜500 ℃、好ましくは 150〜300 ℃である。重量基準の空間速度(WHSV)は 0.1〜10hr-1、好ましくは 0.2〜5 hr-1である。反応温度が高すぎたり、WHSVが低すぎる場合には異属への異性化や不均化等の副反応が起き易く、反応温度が低過ぎる場合には2,6-DMNへの異性化率が小さくなる。
【0021】
本発明において異性化工程後、結晶化により2,6-DMNの結晶を分離、回収する。通常、異性化工程と結晶化工程の間には分離操作を必要としないが、異性化工程で溶媒を使用する場合、溶媒の種類によっては、溶媒の分離操作が必要になる場合もある。結晶化の方法は特に限定されるものではなく、冷却、あるいは溶媒留出等により結晶化させる。結晶化方式は連続式でも回分式でも良い。無溶媒条件下でDMNを異性化して得られる異性化反応生成物をそのまま結晶化させた場合は、得られる結晶の濾過性が悪く、洗浄しても結晶純度が向上しにくい。これに対し本発明の方法により溶媒共存下で結晶化を行うと結晶の性状が改善され、濾過性の良好な結晶となる。
【0022】
結晶化の際に共存させる溶媒としては、例えば脂肪族飽和炭化水素、脂環式飽和炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類等があるが、脂肪族飽和炭化水素または脂環式飽和炭化水素が好適に用いられる。用いられる脂肪族飽和炭化水素および脂環式飽和炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等がある。これらの溶媒を用いることにより、得られる結晶の濾過性が改善され、効率よく高純度の結晶が得られる。なお異性化工程で使用した溶媒を、そのまま結晶化工程の溶媒として使用することもできる。
【0023】
結晶分離後の母液は、蒸留工程でDMNよりも沸点の高い成分と低い成分を除去し、DMN留分のみを異性化工程に循環させる。前述の如くDMNには10個の異性体があり、各々沸点が異なるが、これらのDMN異性体中の最も高い沸点のものよりも高沸点の成分(高沸)と、最も低い沸点のものよりも低沸点の成分(低沸)を分離除去し、得られたDMN留分の一部あるいは全部を異性化工程へ循環使用する。なお結晶分離後の母液に結晶化の際の溶媒も含まれるので、この溶媒は、通常、低沸に含まれることになり、更に蒸留分離して循環使用される。
【0024】
以上のプロセスにおいて高純度の2,6−DMNを得るために、結晶化工程の原料は、ジメチルナフタレン類に対する2,7-DMNの濃度を10重量%以下、特に2,7-DMNの濃度を5重量%以下、MMNの濃度が3重量%以下およびTMNの濃度を10重量%以下とすることが好ましい。このため異性化工程へ新たに供給されるDMN中のMMN、TMN量と、異性化工程においてMMN、TMNが副生する場合の副生成量を勘案して、異性化工程へ循環されるDMN留分中のMMN、TMNの量を制御する必要がある。異性化工程へ新たに供給されるDMN中に2、7−DMN等の異属の異性体が含まれる場合、また異性化工程において2,7-DMN等の異属の異性体が生成する場合には、これらの異属の異性体の蒸留による分離が困難であるので、結晶化原料中の2,7-DMN濃度を制御するために、蒸留工程の前あるいは後、好ましくは蒸留の際に、高沸点成分、低沸点成分と同時にDMNの一部を抜き出すことが必要となる。
【0025】
結晶化原料中の2,7-DMN濃度を制御するために抜き出すDMNの量は、新たに供給されるDMN中の異属異性体の量、異性化工程での異属の異性体の生成量や、結晶化工程で得られる結晶の純度および循環するDMN量等のプロセス全体の経済性を勘案して決められる。また2,7-DMNは、結晶中に微量同伴される性質があるため、新たに供給されるDMN中の異属異性体の量、異性化反応での生成量が一定量以下であれば、結晶中に微量同伴される2,7−DMNをそのまま系外へ除去することにより系内での蓄積を防ぐこともできる。
【0026】
オルトキシレンとブタジエンを原料として合成された1,5-DMNを主成分とするDMN混合物は前述の2,6−属に属し、これを異性化することにより主として1,5−、1,6−、2,6−DMNからなる異性化反応生成物を与える。この異性化反応生成物から2,6-DMNを結晶化分離した後の母液中には、主として1,5−DMN、1,6−DMNが含まれ、異性化原料として循環使用することができる。しかしながら異性化反応の際には、不均化によるMMN、TMNの生成、属外の異性化による2,7-属異性体の生成等の副反応が起き易い。MMNやTMNは蒸留により除去可能であるが、属外の異性体は蒸留による除去が困難であり、2,6−DMNを結晶化させた後の母液を異性化工程へ循環すれば系内に蓄積されることとなる。
【0027】
DMN異性体混合物から2,6−DMNを結晶化により分離するに際しては、2,6−DMNと2,7−DMN、1,5−DMN、2,3−DMNが共晶を形成することが良く知られている。2,6−DMNとこれら3異性体との2者共晶組成は以下の通りである。
2,6−DMN/2,7−DMN=1.42,6−DMN/1,5−DMN=1.92,6−DMN/2,3−DMN=1.1従って共晶の原理の上では、上記組成比を上回る2,6−DMNを含むDMN異性化反応生成物を冷却すると2,6−DMNが結晶として析出してくる。この時、その他の成分は母液として結晶に付着しており、これは溶媒、例えばノルマルヘプタンによりリンスすることにより除去することができる筈である。
【0028】
しかしながら、本発明者らがDMN異性化反応生成物から結晶化により2,6−DMNを分離回収する方法につき検討を行った結果、2,7−DMN、2−MMN、TMNの一部異性体は他の不純物とは異なった挙動を示した。本発明者らが、晶析原料中の不純物の濃度と、得られる結晶中に残存する不純物の濃度の関係について詳細に検討したところ、晶析原料中に2,7-DMN、MMNあるいはTMNがある程度以上に存在している場合には、共晶理論で考えられる以上の2,7-DMN、MMN、TMNが結晶中に残存し、高純度の結晶を得ることが困難である現象が見られた。
【0029】
すなわち本発明者らが検討の結果、結晶化原料として用いたDMN異性化反応生成物中の1,5−DMN、1,6−DMN、1−MMN、TMN中の上記異性体以外の異性体等の成分は、2,6−DMN結晶を析出させた後、結晶をリンスすることにより容易に除去でき、リンス液量を増やすことにより、その濃度は着実に低下するが、2,7−DMN、2−MMN、TMNの一部異性体は、結晶をリンスしてもその濃度はほとんど変化せず、母液中の1成分として結晶に付着しているのではなく、2,6−DMNが結晶として析出する際に不可避的に結晶中に取り込まれることが分かった。
【0030】
2,6−DMNが結晶として析出する際に不可避的に結晶中に含まれてくる2,7−DMN、2−MMN、TMNの一部異性体の量は、結晶化原料中のジメチルナフタレン類に対する各成分の量比によりほぼ決まり、ジメチルナフタレン類100重量部に対し2,7−DMNが10重量部含まれている場合、2,6−DMN結晶に同伴して含まれる2,7−DMNの量は0.7〜1.4%である。またジメチルナフタレン類100重量部に対し2,7−DMNが5重量部含まれている場合、2,6−DMN結晶に同伴して含まれる2,7−DMNの量は0.4〜0.8%であり、ジメチルナフタレン類100重量部に対しMMNが5重量部含まれている場合、2,6−DMN結晶に同伴して含まれる2−MMNの量は0.7〜1.3%、ジメチルナフタレン類100重量部に対しTMNが5重量部含まれている場合、2,6−DMN結晶に同伴して含まれるTMNの一部異性体の量は0.2〜0.6%となる。従って98%以上の高純度の2,6-DMNを得るために、結晶化原料中にMMNやTMNが殆ど含まれない場合(例えばMMNとTMNの合計量が1%以下の場合)には、結晶化原料中に含まれる2,7−DMNを10重量%以下とする必要がある。また結晶化原料中にMMNやTMNが相当量含まれる場合には、2,6−DMN結晶中に残存する2,7-DMN、MMNあるいはTMNの濃度を、各々ほぼ0.5重量%以下に抑えるものとして、結晶化原料中のジメチルナフタレン類に対する2,7-DMN濃度は5重量%以下、MMN濃度は3重量%以下およびTMN濃度は10重量%以下にすることが必要である。
【0031】
すなわち従来の共晶組成比からは、2,6-DMNに対する2,7-DMNのモル比が1.4以下の組成の原料を結晶化させることにより2,6-DMNのみが結晶として析出するとされているが、本発明により結晶中に微量の2,7-DMNが残存しリンスを行っても結晶中の2,7-DMNの量は減少しないことが明らかとなり、結晶化原料中の2,7-DMN濃度を上記の範囲とすることが必要となる。MMNは、メチル基の位置により1−MMN、2−MMNの2種の異性体がある。その内結晶中に残存するのは2−MMNであり、1−MMNは母液中の1成分として結晶に付着しており、リンスにより容易に除去できる。TMNはメチル基の位置により16種の異性体がある。その内どの異性体が結晶中に残存するかは現時点では明確ではない。おそらくはβ位にメチル基を有する異性体の一部と想像される。結晶中に残存するTMNはこれら16異性体の一部であり、その他は1−MMN同様母液中の1成分として結晶に付着しており、リンスにより容易に除去できる。
【0032】
DMNを異性化した際、DMNに含まれるMMN、TMNも同時に異性化され、異性化反応生成物中のMMN、TMNは異性体混合物となっている。異性化反応生成物中のMMNの量は異性化原料中のMMNの量、異性化時に併発する不均化反応の程度により変化する。MMN中の2−MMNの1−MMNに対する量比は、異性化で使用される触媒種、反応条件により変化するが概略1〜3の範囲となる。異性化反応生成物中のTMN異性体の種類、量は異性化原料中の異性体の種類、量により変化し、また、異性化時に併発する不均化反応の程度により変化する。しかし、結晶に残存するTMN異性体と母液中の成分として容易に除去可能な異性体との量比は、異性化で使用される触媒種、反応条件により若干変化するが、MMNの場合同様、一定の範囲に収まると考えられる。
【0033】
2,6−DMNの液相酸化方法としては特に制限はなく、従来公知の様々な方法を用いることができるが、一般的には、酢酸などの溶媒中においてCo−Mn−Br系触媒の存在下、分子状酸素により液相酸化する方法を挙げることができる。具体的には、酢酸または少量の水を含む含水酢酸を溶媒とし、これに触媒としてコバルト化合物、マンガン化合物および臭素化合物を添加し、圧力5〜40kg/cm2 G 、温度180〜250℃程度の条件下、2,6−DMNを酸素含有ガスで酸化することにより、80%以上の高い収率で2,6−ナフタレンジカルボン酸が生成する。この際、触媒のコバルト化合物、マンガン化合物および臭素化合物は2,6−DMN1モルに対し、コバルト原子として0.002〜0.1モル、マンガン原子として0.01〜0.2モルおよび臭素原子として0.01〜0.2モルの割合で用いられる。
【0034】
反応終了液から、公知の手段により2,6−ナフタレンジカルボン酸を取り出す。酸化反応形式としては、回分式、連続式のいずれであっても良い。得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸は更に公知の手段によりエステル化が行われ、高純度の2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルが得られる。本発明の2,6−DMNの製造方法によれば、例えばo−キシレンとブタジエンを原料として得られる1,5−DMNを主成分とするDMN混合物から、高純度2,6−DMNを、効率良く、高い得率で、かつ工業的にも有利に製造することができる。このようにして得られた2,6−DMNを液相酸化することにより、高性能ポリエステルの原料などに有用な2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルや高純度2,6−ナフタレンジカルボン酸が極めて有利に製造される。
【実施例】
【0035】
以下に実施例及び比較例を以て本発明の方法を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の各実施例、比較例における各成分の濃度はガスクロマトグラフィーにより求めた。
【0036】
実施例、比較例及び各表中において用いた略号は次の通りである。
DMN ジメチルナフタレン
MMN モノメチルナフタレン
TMN トリメチルナフタレン
L.E. ジメチルナフタレンよりも低沸点成分(但し、MMNを除く)
H.E. ジメチルナフタレンよりも高沸点成分(但し、TMNを除く)
WHSV 重量基準空間速度 (原料-g /触媒-g・hr)
【0037】
実施例1
オルトキシレンとブタジエンを原料として合成された1,5−DMNを主成分とするDMNをH型モルデナイト(東ソー製)を触媒として用いて異性化して得た異性化生成物200gとノルマルヘプタン100gを、攪拌機付きの400ccガラス容器に採り、攪拌しながら80℃に加熱して溶解後、徐々に20℃まで冷却して結晶を析出させた。次いで内容物をG2ガラスフィルター(標準最大孔径100〜150μm)にて吸引濾過し、得られた結晶を0℃のノルマルヘプタン20gで3回リンスした。結晶化に用いた異性化生成液(原料)、濾過後、リンス後の結晶の組成を表1に示す。リンスを重ねるにつれ不純物中の1,5−DMN、1,6−DMN、L.EおよびH.Eはいずれも着実に除去され、高純度の結晶が
57.4g得られた。
【0038】
【表1】

【0039】
比較例1
実施例1で用いた1,5−DMNを主成分とするDMNに2,7−DMN、MMN、TMNを加えて、実施例1と同様に異性化、結晶化、濾過、リンスを行った。結晶化に用いた異性化生成液(原料)、濾過後、リンス後の結晶の組成を表2に示す。不純物中の1,6-DMN、1,5-DMN 、Other-DMN、L.EおよびH.Eがリンスにより着実に除去されるのに対し、2,7-DMN 、MMN 、TMN はリンスによる除去が困難であることが分かる。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例2
(サイクル1)表3に示す2%の2,7-DMN を含むDMN を原料として異性化を行い、表4に反応生成液(1) として示した異性化反応生成物を得た。異性化反応は、H型モルデナイト(シリカ/アルミナ比=203、東ソー製)をアルミナで成型した触媒(アルミナ含量20重量%)を用いて、反応温度 220℃、WHSV=1.0、常圧液相流通方式により実施した。反応生成液と同重量のノルマルヘプタンを加え、80℃で加熱溶解後、20℃まで冷却して結晶を析出させた。結晶を含むスラリーをG2ガラスフィルターで濾過した後、結晶化に供した反応生成液の1/2重量の20℃に冷却したノルマルヘプタンでリンスして、表3 に結晶 (1) として示した組成の結晶を、回収率64.2%で得た。ここで回収率とは、結晶中の2,6−DMNの結晶化原料中の2,6−DMNに対する割合である。次いで、結晶化後の母液及びリンス液を蒸留して、DMN留分(1)を得た。留分として得たDMNは、母液およびリンス液中のDMNの95%である。DMN留分中の2,7-DMN 濃度は2.94%であった。結晶として取り出したDMNと蒸留時に回収できなかったDMNの和と、DMN留分(1)との量比は31:69であった。
【0042】
(サイクル2)
原料DMNと上記で得たDMN留分(1) を31:69の量比で混合し、サイクル1と同条件で異性化反応を実施し、表3に示す組成の反応生成液(2) を得た。反応生成液(2) を、サイクル1と同条件で結晶化、濾過、リンスし、表3結晶(2) で示される組成の結晶を回収率64.1%で得た。更に結晶化後の母液とリンス液をサイクル1と同様に蒸留処理し、DMN 留分(2) を得た。留分として得たDMNは、母液およびリンス液中のDMNの95%である。DMN留分(2) 中の2,7-DMN濃度は3.18%であった。結晶として取り出したDMNと蒸留時に回収できなかったDMNの和と、DMN留分(2)との量比は31:69であった。
【0043】
(サイクル3)
原料DMN と上記で得たDMN 留分(2) とを31:69の量比で混合し、サイクル1と同条件で異性化反応を実施し、反応生成液(3) を得た。反応生成液(3) をサイクル1と同条件で結晶化、濾過、リンスし、結晶(3) を回収率64.1%で得た。更に結晶化後の母液とリンス液をサイクル1と同様に蒸留処理し、DMN留分(3) を得た。留分として得たDMNは、母液およびリンス液中のDMNの95%である。DMN留分(2) 中の2,7-DMN濃度は3.42%であった。結晶として取り出したDMNと蒸留時に回収できなかったDMNの和と、DMN留分(3)との量比は31:69であった。
【0044】
(サイクル4〜5)
以下、同様にして、原料DMNに採取したDMN留分を加えて、異性化、結晶化、蒸留を繰り返した。このサイクルの繰り返しにより得られた反応生成液と結晶の組成を表3に示した。異性化反応における2.7-DMNの生成が少ないため、本操作を繰り返し行っても母液への2,7-DMNの蓄積が少なく、高純度の結晶が得られている。
【0045】
【表3】

【0046】
実施例3
(サイクル1)H型モルデナイト(シリカ/アルミナ比=203 、東ソー製)をアルミナで成型した触媒(アルミナ含量20重量%)に替えて、USY 型ゼオライト(シリカ/アルミナ比=6.1 、東ソー製)をアルミナで成型した触媒(アルミナ含量20重量%)を用いた以外は実施例2と同様に異性化を行い表4 に示す反応生成液(1)が得られた。実施例2と同様にして結晶化、濾過、リンスを行い表4に示す組成の結晶(1) を得た。2、6−DMNの回収率は60.4%であった。更に、実施例2と同様に結晶化後の母液及びリンス液を蒸留しDMN留分(1) を得た。留分として得たDMNは、母液およびリンス液中のDMNの95%である。DMN 留分(1) 中の2,7-DMN濃度は4.22%であった。結晶として取り出したDMNと蒸留時に回収できなかったDMNの和と、DMN留分(1)との量比は26:74であった。
【0047】
(サイクル2)
原料DMN と上記で得たDMN 留分(1) とを26:74の量比で混合し、サイクル1と同じ条件で異性化反応を実施し表4 に示す組成の反応生成液(2) を得た。反応生成液(2) を、1 サイクル目と同条件で結晶化、濾過、リンスして、結晶(2) を回収率59.9%で得た。更に結晶化後の母液とリンス液をサイクル1と同様に蒸留してDMN 留分(2)を得た。留分として得たDMNは、母液およびリンス液中のDMNの95%である。結晶として取り出したDMNと蒸留時に回収できなかったDMNの和とDMN留分(2)との量比は26:74であった。
【0048】
(サイクル3)
以下、実施例2と同様にして、原料DMNと採取したDMN留分とを混合して、異性化、結晶化、蒸留を繰り返した。得られた反応生成液(3)、結晶(3)の組成を表4に示した。異性化反応における2.7-DMN の生成が実施例2に比べ多いため、本操作を繰り返すことにより、系内に蓄積する2,7−DMNが多くなり、結晶の純度が低下する傾向があり、また循環するDMN留分も多い。
【0049】
【表4】

【0050】
実施例4
実施例2のサイクル1と同じ原料を用い、実施例2と同条件で異性化反応を実施した。得られた異性化生成液を用いて、溶媒としてノルマルヘプタンのかわりにトルエンを用いた以外は実施例2と同条件で結晶化、濾過、リンスを行った。回収率57.2%で純度98.7%の結晶が得られた。表5に得られた結晶の組成を示す。溶媒としてノルマルヘプタンを用いた場合に比べて、回収率がやや低く、得られた結晶純度もやや低い。
【0051】
比較例2
実施例2のサイクル1と同じ原料を用い、実施例2と同条件で異性化反応を実施した。
得られた異性化反応生成液100gを用いて、溶媒としてノルマルヘプタンを用いなかった以外は実施例2と同条件で結晶化、濾過を行った後、20℃に冷却した200gのノルマルヘプタンでリンスを行い、回収率64.8%で、純度97.6%の結晶が得られた。得られた結晶の組成を表5に示す。析出した結晶の濾過性が悪く、結晶純度も溶媒を用いる場合よりも低かった。
【0052】
【表5】

【0053】
実施例5
オルトキシレンとブタジエンを原料として得た表6に示す組成の1,5−DMNを原料として、実施例2と同様に異性化、結晶化、蒸留を繰り返した。このサイクルの繰り返しに伴う、反応生成液、結晶の組成の変化を表6に示した。原料中の2,7−DMNが少なく、異性化反応における2.7-DMNの生成も少ないため、本操作を繰り返し行っても母液への2,7-DMNの蓄積が少なく、高純度の結晶が得られることが分かる。
【0054】
【表6】

【0055】
参考例
表7に示す組成の異性化生成液に2,7-DMN を添加し、2,7-DMN が3%、6%、9%、15%、20%含む結晶化原料を調製した。それぞれの結晶化原料100gにノルマルヘプタン100gを加え、攪拌機付きの 400ccのガラス容器に採り、攪拌しながら80℃に加熱して溶解後、徐々に20℃まで冷却して結晶を析出させた。次いで内容物をG2フィルター (標準最大径 100〜150 μm)にて吸引濾過し、得られた結晶を0℃のノルマルヘプタン30g で 3回リンスした。結晶化原料と得られた結晶の組成を表7に示す。結晶化原料中の2,7-DMN の濃度が高い場合には2,7-DMN が残存し、リンスしても高純度の結晶が得られない。また2,7-DMN を3%、6%、10%、16%、20%含む結晶化原料の2,6-DMN の回収率はそれぞれ 64.9%、63.7% 、62.7% 、61.4% 、58.6% であり、結晶化原料中の 2,7-DMN濃度が高くなるにつれて 2,6-DMNの回収率が低下し、結晶化原料中に高濃度の 2,7-DMNが存在した場合には 2,6-DMNの回収率も悪化することとなる。
【0056】
【表7】

【0057】
実施例6
酢酸288.9 gに、水3.2 g、酢酸コバルト(4水塩)0.63g 、酢酸マンガン(4水塩)5.37g、臭化水素(47%水溶液)1.92gを混合し溶解させ触媒液を調合した。次に攪拌機,還流冷却器及び原料送液ポンプを備えた 0.5Lチタン製オートクレーブ (反応器) に、前記の触媒液 120gを仕込んだ。残りの触媒液 180gを、実施例1より得た2,6-ジメチルナフタレン (DMN)30gと混合し原料供給槽に仕込み、加熱してDMNを溶解させ、原料液を調製した。窒素で反応系内の圧力を 18kg/cm2 G に調整し、攪拌しながら温度 200℃に加熱した。温度および圧力が安定した後、原料液及び圧縮空気を反応器に供給して酸化反応を開始した。排ガス中の酸素濃度が2容量%になるように供給空気流量を調節しながら、原料液を1時間かけて連続的に供給した。この時の反応器内の酸素分圧は0.12 kg/cm2 (絶対圧) である。原料液の供給終了後、空気の供給を9分間継続した。反応終了後、オートクレーブを室温まで冷却して反応生成物を取り出し、ガラスフィルターで吸引濾過し結晶を分離後、水を20重量%含む酢酸80gでリンス洗浄した。分離ケーキは重量測定後、乾燥器で乾燥し、粗NDCA結晶 40.65gを得た。乾燥結晶中のNDCA純度は96.5重量%、供給したDMN基準のNDCA収率は94.5モル%であった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による高純度2,6−ジメチルナフタレン製造法の構成を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルナフタレン混合物から2,6−ジメチルナフタレンを製造するに際して、(1)アルミナに対するシリカのモル比が100以上の実質的に水素型からなるモルデナイト触媒、或いはアルミナおよび/またはシリカを成型助剤として該モルデナイトを成型した触媒の存在下で、異性化する異性化工程、(2)溶媒の存在下、異性化反応生成物から結晶化により2,6−ジメチルナフタレンを分離するに際して、結晶化原料中に含まれるジメチルナフタレン類に対する2,7−ジメチルナフタレンの量が10重量%以下である結晶化工程、(3)結晶化工程の母液を蒸留し、ジメチルナフタレンよりも沸点の高い成分と低い成分を除去して、ジメチルナフタレン留分を得る蒸留工程の3工程からなり、蒸留工程で得たジメチルナフタレン留分の一部或いは全部を異性化工程に循環させることを特徴とする高純度2,6−ジメチルナフタレンの製造方法。
【請求項2】
結晶化工程において脂肪族飽和炭化水素および脂環式飽和炭化水素から選ばれた1種以上の溶媒を用いる請求項1に記載の高純度2,6−ジメチルナフタレンの製造方法
【請求項3】
ジメチルナフタレン混合物がオルトキシレンとブタジエンを出発原料としたものである請求項1に記載の高純度2,6−ジメチルナフタレンの製造方法
【請求項4】
結晶化原料中に含まれるジメチルナフタレン類に対する2,7−ジメチルナフタレンの量が5重量%以下、モノメチルナフタレンの量が3重量%以下およびトリメチルナフタレンの量が10重量%以下である請求項1に記載の高純度2,6−ジメチルナフタレンの製造方法
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の製造方法で得られた2,6-ジメチルナフタレンを液相酸化することを特徴とする2,6-ナフタレンジカルボン酸の製造方法
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法で得られた2,6-ナフタレンジカルボン酸をエステル化することを特徴とする2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルの製造方法

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−1717(P2008−1717A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218674(P2007−218674)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【分割の表示】特願平9−36555の分割
【原出願日】平成9年2月20日(1997.2.20)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】