説明

高級パラフィン系潤滑基油用錆止め剤

溶解度改良剤、リン酸アミンの混合物、及びアルケニルコハク酸化合物を含む、TORT B錆試験に合格する錆止め剤。錆止め剤及び潤滑基油を含む完成潤滑剤。高級パラフィン系基油、及び50℃未満のアニリン点を有する溶解度改良剤を含む、TORT B錆試験に合格する、40℃で約90から1700cStの間の動粘度を有する完成潤滑剤。フィッシャー・トロプシュワックス、オリゴマー化オレフィン、又はこれらの混合物、及び溶解度改良剤を含む、TORT B錆試験に合格する完成潤滑剤。a)リン酸アミンの混合物、b)アルケニルコハク酸化合物、及びc)高級パラフィン系潤滑基油を一緒にブレンドするステップを含む、潤滑剤を作製するための方法。10℃より低いアニリン点を有する溶解度改良剤を配合することによって、潤滑油の錆止めを改良する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された錆止め剤と、これを含む完成潤滑剤とを対象とする。改良された錆止め剤は、高級パラフィン系潤滑基油とブレンドされた場合、ASTM D 665−02によって測定されるように人工海水中で錆を防ぐ。
【背景技術】
【0002】
高級パラフィン系潤滑基油を含む完成油において効果的な錆止めを行うことは、非常に難しい。高級パラフィン系潤滑基油には、ASTM D 3238により65%超のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループII基油、ASTM D 3238により65%超のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループIII基油、APIグループIV基油、ポリ内部オレフィン、水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス、及びフィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィンが含まれる。他の者は、完成油中の高級パラフィン系基油の量を減少させるために、種々の添加剤の相乗混合物と基油ブレンドとを使用することによって、この問題に取り組んできた。しかし現行の手法は、ASTM D 665−02による、人工海水を使用する4時間TORT B錆試験において、一貫した合格を依然としてもたらしていない。この問題は、ISO 100グレード以上のより高い粘度の油で、特により深刻である。
【0003】
他の者は、錆止めが良好な潤滑剤組成物を作製してきたが、これら初期の組成物はいずれも、本発明の好ましい実施形態におけるものとは異なる錆止め配合物を有しており、且つ/又は異なる基油を使用して作製された。例えば米国特許第4,655,946号は、本発明に開示されるものとは異なる特定の添加剤混合物を含む、好ましくは合成エステル基油を含む、海水腐食に耐性のあるタービンエンジン油について開示している。米国特許第4,701,273号は、抗酸化剤、リン酸アミン、及び好ましいベンゾトリアゾール誘導体を含む、金属不活性化が良好な潤滑剤組成物について記述している。
【0004】
優れた耐荷重潤滑剤を作製するためにリン酸アミンと組み合わせた、複合リン及び硫黄添加剤について記述しているいくつかの特許がある。これらの特許には、米国特許第5,801,130号、米国特許第5,789,358号、米国特許第5,750,478号、米国特許第5,679,627号、米国特許第5,587,355号、米国特許第5,585,029号、及び米国特許第5,582,760号が含まれる。これらの特許は、海水中で効果的な錆止めを行う高級パラフィン系基油で作製された潤滑油について、教示していない。
【0005】
米国特許第6,180,575号は、ポリα−オレフィンや水素化異性化ワックス(石油又はフィッシャー・トロプシュ)などの高品質の基油、及び二次基油、好ましくは長鎖アルキル化芳香族をベースにした、防錆特性を有する潤滑油について教示している。添加剤の相乗的組合せは、本発明の場合とは異なるものが使用される。本発明とは異なって、添加剤混合物は、リン酸アミンの混合物を含まない。米国特許第6,180,575号の潤滑油は、本発明の好ましい実施形態で必要とされるよりもさらに高いレベルで溶解度改良剤を含有する。
【0006】
米国特許第5,104,558号は、40℃で5〜50cStの範囲の動粘度を有する基油として、鉱油及び合成油の少なくとも1種を含む、鋼板の表面処理に使用される防錆油組成物について教示している。米国特許第5,104,558号で有用な合成油は、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル、ポリオールエステル、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、リン酸トリクレシル、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテル、直鎖パラフィン、及びイソパラフィンからなる群から選択される。この初期の特許は、組成物に有用な合成油としてアルキルナフタレン及びポリオールエステルを含んでいたが、錆止めを改良する溶解度改良剤として重要である可能性がある、合成油の選択又は理解はなされなかった。アルキルナフタレン及びポリオールエステルは、本発明の溶解度改良剤ではない、高アニリン点を有するその他の合成油に分類された。米国特許第5,104,558号も、本発明の場合とは異なる錆止め添加剤を使用した。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、100℃未満のアニリン点を有する溶解度改良剤と、リン酸アミンの混合物と、酸ハーフエステル、無水物、酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されたアルケニルコハク酸化合物とを含み、完成潤滑剤中で25重量パーセント未満の量で使用したときに4時間TORT B錆試験で合格をもたらす錆止め剤を提供する。
【0008】
本発明は、錆止め剤、及び潤滑基油を約60から約98.5重量パーセントの間の量で含む、完成潤滑剤も提供する。錆止め剤は、a)約0.10から約20重量%の間の量の溶解度改良剤、b)約0.001から約2重量%の間の量のリン酸アミンの混合物、及びc)約0.0005から約1.0重量%の間の量の、酸ハーフエステル、無水物、酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されたアルケニルコハク酸化合物を含む。
【0009】
本発明は、65重量パーセント超のAPIグループIII基油、APIグループIV基油、ポリ内部オレフィン基油、又はこれらの混合物;及び約0.10重量%から約5重量%の間の50℃未満のアニリン点を有する溶解度改良剤を含む、4時間TORT B錆試験に合格する、40℃で約90から1700cStの間の動粘度を有する完成潤滑剤も提供する。
【0010】
本発明は、主要量の水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス、フィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィン、又はこれらの混合物;及び約0.10から約5重量%の間の10℃未満のアニリン点を有する溶解度改良剤を含み、4時間TORT B錆試験に合格する、完成潤滑剤も提供する。
【0011】
本発明は、a)潤滑剤の全重量に対して約0.001から約2重量%のリン酸アミンの混合物;b)潤滑剤の全重量に対して約0.001から約0.5重量%の、酸ハーフエステル、無水物、酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されたアルケニルコハク酸化合物;c)潤滑剤の全重量に対して約0.10から約20重量%の溶解度改良剤;及びd)混合物の全重量に対して約60から約98.5重量%の、ASTM D 3238により65%超のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループII基油、ASTM D 3238により65%超のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループIII基油、APIグループIV基油、ポリ内部オレフィン基油、水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス、フィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィン基油、及びこれらの混合物からなる群から選択された潤滑基油を、一緒にブレンドするステップを含む、潤滑剤を作製するための方法であって、この潤滑剤が4時間TORT B錆試験に合格するものである方法を提供する。
【0012】
本発明は、潤滑油の全重量に対して約0.10重量%から約10重量%の間の、10℃未満のアニリン点を有する溶解度改良剤を、潤滑油に組み入れるステップを含み、この組み入れるステップによって、潤滑油を4時間TORT B錆試験に合格させることが可能になる、潤滑油の錆止めを改良する方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
錆止め剤は、完成潤滑剤の適用例において、錆を防止するために潤滑基油と混合される添加剤である。商用としての錆止め剤の例は、金属スルホン酸塩、アルキルアミン、リン酸アルキルアミン、アルケニルコハク酸、脂肪酸、及び酸リン酸エステルである。錆止め剤は、時々、1種又は複数の活性成分を含む。錆止め剤が必要とされる適用分野の例には、内燃機関、タービン、電気及び機械式回転機械、油圧機器、ギア、及び圧縮機が含まれる。錆止め剤は、表面被膜を形成するために又は酸を中和するために、鋼の表面と相互に作用することによって作用する。本発明の錆止め剤は、全組成物の25重量パーセント未満の量で、好ましくは10重量パーセント未満の量で使用する場合、完成潤滑剤に効果的である。好ましい実施形態では、1重量パーセント未満の量で、潤滑油に効果的な錆止めをもたらす。
【0014】
潤滑油の錆止めは、ASTM D 665−02を使用して決定される。参照によりその開示が本明細書に組み込まれるASTM D 665−02は、水と油が混合されるようになる場合に、油が鉄部分の発錆の防止を助けることができるか否かを決定するための試験を対象とする。この試験では、60℃の温度で、試験油の300mlの混合物を、蒸留又は合成海水30mlと共に撹拌し、円筒形の鋼試験片を、4時間にわたって完全に内部に浸漬させた状態とするが、これよりも長い又は短い時間を利用してもよい。TORT Aは、蒸留水を使用するASTM D 665−02錆試験を指す。TORT Bは、合成海水を使用するASTM D 665−02錆試験を指す。TORT A及びTORT B錆試験の結果は、「合格」又は「不合格」と報告される。
【0015】
一般に、高級パラフィン系潤滑基油、特に高い動粘度の基油で作製された完成潤滑剤は、合成海水を使用した4時間TORT B錆試験に一貫して合格することができる完成潤滑剤に、配合することは非常に困難である。本発明の錆止め剤は、初めて、高級パラフィン系潤滑基油と共に使用した場合、さらに高い動粘度の潤滑基油と共に使用した場合にも、合成海水を使用した4時間TORT B錆試験に一貫した合格をもたらす。
【0016】
高級パラフィン系潤滑基油には、APIグループII、APIグループIII、APIグループIV、ポリ内部オレフィン、水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス、及びフィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィンが含まれる。APIグループII及びAPIグループIIIであるこれらの高級パラフィン系潤滑基油では、本発明の開示の文脈において、「高級パラフィン系」はASTM D 3238による65重量%超から100重量%の間のパラフィン鎖炭素のレベルによって定義される。
【0017】
この開示の文脈において、配合物中の「過半量」の成分は、50重量パーセントよりも多い。
【0018】
溶解度改良剤:
本発明で有用な溶解度改良剤は、潤滑基油と適合するアニリン点を有する液体である。溶解度改良剤は、潤滑基油範囲内の動粘度(100℃で2.0〜75cSt)を有することが好ましい。これらのアニリン点は、100℃未満であり、好ましくは50℃未満であり、より好ましくは20℃未満である。アニリン点は、分子量又は粘度とともにともに上昇する傾向があり、またナフテン系及び芳香族系の含量が上昇すると共に低下する傾向がある。適切な溶解度改良剤の例は、ある特定の従来の鉱油、及びアルキル化芳香族や有機エステル、アルキル化シクロペンタジエン、アルキル化シクロペンテンなどの合成潤滑剤である。天然に生ずるエステル及び合成有機エステルを、溶解度改良剤として使用してもよい。
【0019】
アニリン点は、試験方法ASTM D 611−01aによって決定されるように、等体積のアニリンが、指定された量の石油生成物中に溶解する最低温度であり、したがって、炭化水素の溶媒力の経験的尺度である。一般に、炭化水素のアニリン点が低くなるほど、炭化水素の溶解力は高くなる。パラフィン系炭化水素は、芳香族炭化水素よりも高いアニリン点を有する。異なるタイプの潤滑基油に関するいくつかの典型的なアニリン点は:ポリα−オレフィン(APIグループIV−>115℃、APIグループIII−>115℃、APIグループII−>102℃、APIグループI−80から125℃である。
【0020】
本発明の錆止め剤中の溶解度改良剤の量は、錆止め剤の効力が改良されるように選択する。一般に、溶解度改良剤の量は、潤滑剤を作製するために潤滑基油にブレンドした場合、全混合物の50重量%未満である。好ましくは、溶解度改良剤の量は、全混合物の約0.10から約20重量%の間であり、より好ましくは約0.10から約15重量%の間である。一実施形態では、溶解度改良剤が10℃未満のアニリン点を有する場合、この溶解度改良剤をさらに少ない量で使用してもよく;潤滑基油と混合した場合、好ましくは全混合物の約0.10から約10重量%の間であり、又は好ましくは約0.10から約5重量%の間の量であり、又は場合によっては約0.10から2重量%の間の量である。
【0021】
合成潤滑剤溶解度改良剤:
本発明の錆止め剤に有用な合成潤滑剤溶解度改良剤の例は、アルキル化芳香族、有機エステル、アルキル化シクロペンタジエン、及びアルキル化シクロペンテンである。アルキル化芳香族は、ルイス又はブレンステッド酸触媒の存在下、ハロアルカン、アルコール、又はオレフィンによる芳香族のアルキル化から生成された合成潤滑剤である。アルキル化芳香族潤滑剤の概要は、本明細書に組み込まれているSynthetic Lubricants and High−Performance Functional Fluids、Ronald L.Shubkin編、1993、第125〜144頁に示されている。アルキル化芳香族の有用な例は、アルキル化ナフタレン及びアルキル化ベンゼンである。本発明の錆止め剤で有効な、アルキル化ナフタレンの非限定的な例は、Mobil MCP−968、ExxonMobil Synesstic(商標)5、ExxonMobil Synesstic(商標)12、及びこれらの混合物である。Synesstic(商標)は、ExxonMobil Corporationの商標である。
【0022】
動物又は植物供給源からの有機エステルは、4000年にわたって潤滑剤として使用されてきた。エステルの極性によって、優れた溶解度改良剤になる。天然の有機エステルは、マッコウクジラ油やラード油などの動物脂肪中に、又は菜種油やヒマシ油などの植物油中に見出される。有機エステルは、有機酸とアルコールとを反応させることによって合成される。アニリン点及び有機エステルのその他の性質は、酸及びアルコールとして何を選択するかに影響される。本発明で有用な有機エステルは、アニリン点が100℃未満、好ましくは50℃未満、より好ましくは20℃未満の溶解度改良剤である。有機エステルの概要は、本明細書に組み込まれているSynthetic Lubricants and High−Performance Functional Fluids、Ronald L.Shubkin編、1993、第41〜65頁に示されている。合成有機エステルのタイプには、モノエステル、ジエステル、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、ダイマー酸エステル、ポリオール、及びポリオレイン酸エステルが含まれる。モノエステルの特定の例は、ペラルゴン酸2−エチル、ペラルゴン酸イソデシル、及びペラルゴン酸イソトリデシルである。モノエステルは、一価アルコールと一塩基脂肪酸との反応によって作製され、単一のエステル結合及び直鎖状又は分枝状アルキル基を有する分子を生成する。これらの生成物は、一般に、粘度が非常に低く(通常は100℃で2cStより下)、極めて低い流動点及び高いVIを示す。ジエステルは、一価アルコールと二塩基酸との反応によって作製され、直鎖状、分枝状、又は芳香族であり且つ2個のエステル基を有する分子を生成する。より一般的なジエステルのタイプは、アジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、セバシン酸エステル、ドデカンジオン酸エステル、フタル酸エステル、及びダイマー酸エステルである。「ポリオールエステル」という用語は、「ネオペンチル」構造を有する、一塩基脂肪酸と多価アルコールとの反応によって作製されたネオペンチルポリオールエステルの略称である。ジエステルと同様に、多くの異なる酸及びアルコールが、ポリオールエステルの製造に利用可能であり、実際に、複数のエステル結合に起因してさらに数多くの変更が可能である。ジエステルとは異なって、ポリオールエステルは、酸の代わりにアルコールにちなんで命名され、酸はしばしば、その炭素鎖長によって表される。例えば、nC8及びnC10脂肪酸の混合物とトリメチロールプロパンとの反応によって作製されたポリオールエステルは、「TMP」エステルと呼ばれ、TMP C8C10と表される。TMPトリ脂肪酸エステルは、本発明の好ましい溶解度改良剤である。下記の表は、ポリオールエステルを合成するのに使用される最も一般的な材料を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
アルキル化シクロペンタジエン又はアルキル化シクロペンテンは、本発明の錆止め剤に使用される良好な溶解度改良剤を作製する、低アニリン点を有する合成基油である。このタイプの基油の例は、その全体が本明細書に組み込まれる本米国特許第5,012,023号、第5,012,022号、第4,929,782号、第4,849,566号、及び第4,721,823号に記載されている。
【0025】
リン酸アミンの混合物:
本発明の錆止め剤は、リン酸アミンの混合物を含む。混合物は、複数のリン酸アルキル又はアリールアミンを含有する。リン酸アミンの混合物は、金属表面に、好ましくは鋼表面に、被膜又は錯体を形成することが可能である。リン酸アミンの混合物は、錆止め剤のその他の成分と混合したときに錆止めに寄与するような量で、錆止め剤中に存在する。好ましくは、リン酸アミンの混合物の量は、完成潤滑剤を作製するために錆止め剤を潤滑基油と混合した場合、全混合物の約0.001重量%から約2重量%の間である。リン酸アミンの好ましい混合物は、一及び二酸リン酸塩の混合物である。リン酸アミンの混合物は、食品級であることが好ましい。本発明の錆止め剤に効果的な、リン酸アミンの混合物の非限定的な例は、NA−LUBE(登録商標)AW 6010、NA−LUBE(登録商標)AW 6110、Vanlube(登録商標)672、Vanlube(登録商標)692、Vanlube(登録商標)719、Vanlube(登録商標)9123、Ciba(登録商標)IRGALUBE(登録商標)349、Additin(登録商標)RC 3880、及びこれらの混合物である。Ciba(登録商標)IRGALUBE(登録商標)349は、米国特許出願US20040241309に詳述されている。NA−LUBE(登録商標)は、King Industries Specialty Chemicalsの登録商標である。Vanlube(登録商標)は、R.T.Vanderbilt Company,Inc.の登録商標である。Ciba(登録商標)及びIRGALUBE(登録商標)は、Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.の登録商標である。Additin(登録商標)は、RheinChemie Rheinau GmbHの登録商標である。
【0026】
アルケニルコハク酸化合物:
本発明の錆止め剤は、酸ハーフエステル、無水物、酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された、アルケニルコハク酸化合物を含む。本発明で有用なルケニルコハク酸化合物は、保護化学被膜が形成されるように金属表面と相互に作用させることによって機能する、腐食防止剤である。
【0027】
コハク酸[110−15−6](ブタン二酸;1,2−エタンジカルボン酸;アンバー酸)、Cは、そのままの形で又はそのエステルの形で頻繁に天然に生ずる。無水コハク酸[108−30−5](3,4−ジヒドロ−2,5−フランジオン;無水ブタン二酸;テトラヒドロ−2,5−ジオキソフラン;2,5−ジケトテトラヒドロフラン;酸化スクシニル)、Cは、コハク酸の脱水によって最初に得られた。コハク酸及びその無水物は、2個のカルボン酸官能基及び2個のメチレン基の反応性によって特徴付けられる。アルケニルコハク酸ハーフエステル、アルケニルコハク酸無水物、及びアルケニルコハク酸は、コハク酸又は無水コハク酸から得られる。アルケニル誘導体のいくつかの調製に関する例が、EP765374B1に記載されている。その全体を本明細書に組み込む。有用なポリアルケニルコハク酸無水物分子の一例は、ポリイソブチレン基が900〜1500の分子量を有する、ポリイソブチレンコハク酸無水物(PIBSA)である。
【0028】
好ましいアルケニルコハク酸化合物は、フェノール抗酸化剤及び/又は金属不活性化剤と組み合わせて働く酸ハーフエステルである。このタイプの好ましいアルケニルコハク酸ハーフエステルの、1つの非限定的な例は、Ciba(登録商標)IRGACOR(登録商標)L−12である。Ciba(登録商標)IRGACOR(登録商標)L−12は、40℃で動粘度が約1500cStの、澄んだ粘性の黄色から褐色の液体である。
【0029】
アルケニルコハク酸ハーフエステル、アルケニルコハク酸無水物、アルケニルコハク酸、又はこれらの混合物の量は、錆止め剤のその他の成分と混合したときに、改良された錆止めをもたらすように選択される。アルケニルコハク酸ハーフエステル、無水コハク酸、アルケニルコハク酸、又はこれらの混合物の量は、潤滑基油とブレンドした場合、全混合物の約0.0005重量%から約1.0重量%の間であることが好ましい(より好ましくは、約0.001重量%から約0.5重量%の間)。アルケニルコハク酸ハーフエステル、アルケニルコハク酸無水物、アルケニルコハク酸、又はこれらの混合物中の好ましいアルケニル基は、3から100個の間の炭素、より好ましくは5から25個の間の炭素原子を有する。
【0030】
潤滑基油に関する仕様は、API交換指針(API公報1509)で定義される。
【表2】

【0031】
ポリ内部オレフィン(PIO)は、ポリα−オレフィンに類似した性質を有する、新しい種類の合成潤滑基油である。PIOは、PAOよりも高い分子量のオレフィンを有する異なる供給原料から作製される。PIOは、内部C15及びC16オレフィンを使用し、その一方でPAOは、典型的にはC10α−オレフィンを使用する。
【0032】
完成潤滑剤は、一般に、潤滑基油及び少なくとも1種の添加剤を含む。完成潤滑剤は、自動車やディーゼルエンジン、ガスエンジン、車軸、変速機、広く様々な工業用途などの装置に使用される、潤滑剤である。完成潤滑剤は、関係する管理組織によって定義されるように、その意図される用途の仕様を満たさなければならない。頻繁に直面する仕様の1つは、ASTM D 665−02によるTORT A及び/又はTORT B錆試験に合格するという結果が必要であることである。TORT B錆試験は、完成潤滑剤の錆止めに関してより過酷な試験である。
【0033】
本発明の完成潤滑剤は、本発明の錆止め剤の他に、1種又は複数の潤滑添加剤を含有してもよい。完成潤滑剤組成物とさらにブレンドしてもよい添加剤には、完成潤滑剤の、ある性質の改良を目的とするものが含まれる。典型的な添加剤には、例えば、増粘剤、VI向上剤、抗酸化剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、洗浄剤、分散剤、極圧(EP)剤、流動点抑制剤、シール膨潤剤、乳化破壊剤、耐摩耗剤、潤滑剤、及び消泡剤などが含まれる。典型的には、完成潤滑剤中の添加剤(錆止め剤を含む)の総量は、約1から約30重量パーセントの範囲内に含まれることになる。完成潤滑剤を配合する際の添加剤の使用は、文献に十分に文書化されており、十分に当業者の範囲内にある。したがって、追加の説明は、本発明の開示では必要ではない。
【0034】
本発明の錆止め剤は、広く様々な完成工業用潤滑剤に特に有用であり、例えば圧縮機オイル、軸受けオイル、抄紙機オイル、タービンオイル、油圧オイル、循環オイル、又はギアオイルに有用である。いくつかの工業用潤滑剤は、より高い動粘度を有し、錆止めのために厳しい仕様(又は高く求められている錆止め)も有する。
【0035】
一実施形態において、初めて本発明は、65重量パーセント超(又は90重量パーセント超)のAPIグループIII、APIグループIV、ポリ内部オレフィン基油、又はこれらの混合物;及び50℃未満のアニリン点を有する約0.10重量%から約5重量%の間の溶解度改良剤を含む、40℃で約90cSt(ISO 100)からそれ以上の間の動粘度を有する、4時間TORT B錆試験に合格した完成潤滑剤を提供する。増粘剤の添加により、本発明の完成潤滑剤は、40℃でISO 4600程度に高い動粘度を有してもよい。好ましくは、完成潤滑剤は、40℃で約90cSt(ISO 100)から1700cSt(ISO 1500以上)の間の動粘度を有することになる。より好ましくは、本発明のこの実施形態の完成潤滑剤は、40℃で約198cSt(ISO 220)から1700cStの間、さらにより好ましくは約414cSt(ISO 460)から1700cStの間の動粘度を有する。一般に、完成潤滑剤の動粘度が高くなるほど、効果的な錆止めを得ることがより難しくなり、したがって本発明は、特に価値あるものになる。本発明のこの実施形態の、望ましい完成潤滑剤は、圧縮機オイルや軸受けオイル、抄紙機オイル、タービンオイル、油圧オイル、循環オイル、ギアオイルなどの、工業用油でよい。好ましい実施形態は、1平方センチメートル当たり0.10ミリグラム以下の、ASTM D 2619−95による銅重量変化の絶対値、及び1.0以下の、ASTM D 1500−98によるASTM色を有することになる。
【0036】
別の実施形態において、初めて本発明は、主要量の水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス、フィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィン、又はこれらの混合物;及び10℃未満のアニリン点を有する約0.10から約5重量%の間の溶解度改良剤を含む、4時間TORT B錆試験に合格した完成潤滑剤を提供する。この実施形態の完成潤滑剤は、40℃で約13.5cSt(ISO 15)から約1700cSt(ISO 1500以上)までの、どこかの範囲内の動粘度でよい。この実施形態の完成潤滑剤は、工業用油、例えば圧縮機オイル、軸受けオイル、抄紙機オイル、タービンオイル、油圧オイル、循環オイル、又はギアオイルでよい。好ましくは、主要量の水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックスを含む本発明のこの実施形態の完成潤滑剤は、24時間TORT B錆試験にも合格することになる。驚くべきことに、この実施形態の1つの好ましい完成潤滑剤は、MIL−PRF−17331Jの要件を満たす油である。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、完成潤滑剤は、非常に薄い色を有し、好ましくは、1.0以下のASTM D 1500−02によるASTM色である。ASTM色は、製品の使用者によって色が容易に観察されるので、潤滑基油及び完成潤滑剤の重要な品質特性である。これはASTM D 1500−02によって測定される。顧客はしばしば、薄い色を製品品質と結び付け、より薄く着色された製品を好む傾向を示す。本発明の好ましい完成潤滑剤は、銅腐食にも耐える。ASTM D 2619−95(2002)に従って試験をした場合、この完成潤滑剤は、1平方センチメートル当たり0.10ミリグラム以下、好ましくは1平方センチメートル当たり0.05ミリグラム以下の銅重量変化の絶対値を有する。
【0038】
MIL−PRF−17331Jの要件を満たす油は、主要量の高級パラフィン系潤滑基油を使用して次に首尾良くブレンドしてもよい、本発明の完成潤滑剤の例である。MIL−PRF−17331Jの要件を満たす油は、米国海軍内で最も広く使用された潤滑剤であり(1隻当たり約12000ガロン)、最高の処分体積を有する。船舶用ギアタービンセットの循環系油として主に使用される、タービン油である。MIL−PRF−17331Jの要件は、流体が24時間TORT B錆試験及び水洗錆試験に合格しなければならない仕様を含む。MIL−PRF−17331は、循環油に関する仕様である。好ましい実施形態では、本発明の完成油は、この仕様を満たすことができる。
【0039】
水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス:水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックスは、イソ−パラフィン系及び任意選択でシクロ−パラフィン系の性質の飽和成分を含む、高粘度指数、低流動点、優れた酸化安定性、及び低揮発性を有する潤滑基油である。フィッシャー・トロプシュワックスの水素化異性化は、文献に十分に報告されている。水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックスを調製するための方法の例は、その全体が本明細書に組み込まれている、米国特許出願第10/897,501号、及び第10/980,572号;米国特許公開第20050133409号;米国特許第5,362,378号;第5,565,086号;第5,246,566号;第5,135,638号;第5,282,958号、及び第6,337,010号;並びにEP 710710、EP 321302、及びEP 321304に記載されている。ホワイト油の性質を満たす、好ましい水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックスは、米国特許出願第10/897,501号に記載されている。
【0040】
フィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィン:フィッシャー・トロプシュ生成物から生成されたオレフィンは、広範な粘度、高VI、及び優れた低温特性を有する基油を生成するために、オリゴマー化されてもよい。フィッシャー・トロプシュ合成をどのように実施するかに応じて、フィッシャー・トロプシュ縮合物は、様々な量のオレフィンを含有することになる。さらに、ほとんどのフィッシャー・トロプシュ縮合物は、脱水によって容易にオレフィンに変換することができる、いくらかのアルコールを含有することになる。縮合物は、水素化分解によって又はより好ましくは熱分解によって、分解操作を通して濃度が高められたオレフィンであってもよい。オリゴマー化中、より軽いオレフィンはより重い分子に変換されるだけではなく、オリゴマーの炭素主鎖が分子付加点で分枝状態も示すことになる。分子への枝分れの導入により、生成物の流動点が低下する。
【0041】
オレフィンのオリゴマー化については、文献に十分に報告されており、いくつかの商業的プロセスが利用可能である。例えば、米国特許第4,417,088号;第4,434,308号;第4,827,064号;第4,827,073号;第4,990,709号;第6,398,946号、第6,518,473号、及び第6,605,206号を参照されたい。様々なタイプの反応器構成を用いることができ、固定化触媒床又はイオン液体媒体反応器が使用される。
【0042】
別の実施形態では、本発明は、潤滑油の錆止めを改良する新規な方法を提供する。4時間TORT B錆試験に合格しない潤滑油は、この4時間TORT B錆試験に一貫して合格するように、この方法によって改良することができる。この方法は、潤滑油の全重量に対して約0.10重量%から約10重量%の間の、アニリン点が10℃未満、好ましくは5℃未満である溶解度改良剤を、潤滑基油に配合するステップを含む。本発明者らは、溶解度改良剤が、例えば1種又は複数のフェノール系抗酸化剤を含んでもよいことを発見した。この方法は、主要量の高級パラフィン系基油を有する潤滑油で使用した場合、特に有用である。先に開示したように、高級パラフィン系基油の例は、ASTM D 3238により65%超のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループII基油、ASTM D 3238により65%超のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループIII基油、ポリ内部オレフィン基油、APIグループIV基油、及びこれらの混合物である。この方法によって利益を得ることができる、高級パラフィン系基油のその他の例は、水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス基油、フィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィン基油、又はこれらの混合物である。好ましい実施形態では、本発明の方法により、潤滑油が24時間TORT B錆試験にさらに合格することが可能になる。
【実施例】
【0043】
実施例1、実施例2、及び比較例3:
ISO 460級の完成潤滑剤の、3つの異なるブレンド(実施例1、2、及び比較例3)を調製した。これら3つのブレンドの全ては、錆止め剤以外の同一の添加剤パッケージ;及び同じ潤滑基油を含有していた。潤滑基油は、30.4重量%のChevron UCBO 7、及び69.6重量%のMobil SHF 1003の混合物であった。Chevron UCBO 7は、ASTM D 3238により約86%のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループIII基油である。Mobil SHF 1003は、APIグループIV基油(PAO)である。錆止め剤を含まない添加剤パッケージは、処理率1.35重量%で潤滑基油に添加した。添加剤パッケージ(錆止め剤を含まない)中の添加剤は、抗酸化剤、EP剤、流動点抑制剤、及び消泡剤であった。
【0044】
錆止め剤は、3つのブレンドのそれぞれにおいて、わずかに異なっていた。完成油ブレンド中の錆止め剤の各成分の重量パーセントは、下記の通りであった。
【0045】
【表3】

【0046】
実施例1及び2は、本発明の完成潤滑剤の例であり、どちらも本発明の錆止め剤を含む。実施例1は、Mobil MCP−968、アルキル化ナフタレンを、溶解度改良剤として有する。実施例2は、Emery(登録商標)2925を溶解度改良剤として有する。Emery(登録商標)2925は、TMPトリ脂肪酸エステルであり、ポリオールエステルの形態である。Emery(登録商標)は、Cognis Corporationの登録商標である。
【0047】
比較例3は、本発明の完成潤滑剤の例ではなく、本発明の錆止め剤も含有しない。比較例3は、Ciba(登録商標)IRGALUBE(登録商標)349、Ciba(登録商標)IRGACOR(登録商標)L−12、及びCitgo Bright Stock 150で作製された錆止め剤を有する。Citgo Bright Stock 150は、APIグループI基油である。これは、必要とされるアニリン点100℃よりもはるかに高い、127℃のアニリン点を有するので、本発明の溶解度改良剤の例ではない。
【0048】
実施例1、実施例2、及び比較例3で使用された3種の異なる溶解度改良剤の性質を、表IIに示す。
【0049】
【表4】

【0050】
ISO 460級の完成潤滑剤の、3つの異なるブレンドを、ASTM D 665−02による4時間及び24時間TORT B錆試験で、2回試験した。これらの分析結果を、下記の表、表IIIに示す。
【0051】
【表5】

【0052】
実施例1及び2の結果は、4時間TORT B錆試験において、本発明の錆止め剤が錆を完全に予防する効力を示す。比較例3は、2回の4時間TORT B錆試験で、矛盾した結果を示した。24時間TORT B錆試験は、溶解度改良剤としてEmery(登録商標)2925を含む錆止め剤が、Mobil MCP−968を含む錆止め剤よりも良好な錆止めを行うことを実証した。Emery(登録商標)2925は、試験をした2種の溶解度改良剤のうち最も低いアニリン点を有し、この溶解度改良剤を含む錆止め剤及び完成潤滑剤に使用される溶解度改良剤のアニリン点が低いほど、錆止めがより良好に行われることが実証された。
【0053】
実施例1、実施例2、及び比較例3の3つの同一のブレンドを作製し、その動粘度、色、及び加水分解安定性について試験をした。これらの分析結果を、下記の表IVに示す。
【0054】
【表6】

【0055】
本発明の錆止め剤を含む完成潤滑剤も、良好な加水分解安定性、非常に薄い色、及び低い銅腐食性も有していた。比較例3は、それほど好ましくない、より濃い色を有していた。
【0056】
実施例4:
2つの異なる溶解度改良剤、及び2つの溶解度改良剤の50/50のブレンドの性質を、下記の表IIIに示す。これらの溶解度改良剤は共に、液体フェノール系抗酸化剤として市販されている。
【0057】
【表7】

【0058】
個々の液体フェノール系抗酸化剤及びブレンドのアニリン点は、極めて低く、本発明における溶解度改良剤として非常に効力があることを示していた。
【0059】
表IIIに示される液体フェノール系抗酸化剤の50/50混合物を、MIL−PRF−17331Jの要件を満たす完成潤滑剤にブレンドした。配合されたMIL−PRF−17331J流体の組成を、表IVに示す。
【0060】
【表8】

【0061】
ブレンド後、少量の消泡剤を、以下に示す量で添加した。
【0062】
【表9】

【0063】
ブレンドに使用される2種の基油は、中程度の粘度から高い粘度のAPIグループII基油であった。ブレンドに使用される2種の基油の性質を、表Vに示す。
【0064】
【表10】

【0065】
MIL−PRF−17331Jの要件を満たす油のブレンドを、ASTM D 665−02による4時間及び24時間TORT B錆試験で、2回試験した。これらの分析結果を、下記の表、すなわち表VIに示す。
【0066】
【表11】

【0067】
これらの結果は、MIL−PRF−17331Jの要件を満たす油を、本発明の錆止め剤と首尾良くブレンドすることができることを示す。本発明の錆止め剤の利益が無い、高度に精製されたグループII基油を使用した、この完成潤滑剤の先のブレンドの全ては、MIL−PRF−17331Jの苛酷TORT B錆試験に一貫して合格しなかった。使用された溶解度改良剤の量は非常に少なかったが(0.30重量%)、その低アニリン点(<2℃)により、少量でも依然として非常に効果的であったことは、注目に値する。
【0068】
これらの実施例は、本発明の錆止め剤の優れた効力を実証している。錆止め剤は、高級パラフィン系APIグループII、APIグループIII、ポリ内部オレフィン、及びAPIグループIV基油で効果的であり、水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス及びフィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィンから作製された基油に、優れた錆止めももたらすことになる。
【0069】
本出願で引用された刊行物、特許、及び特許出願の全ては、個々の刊行物、特許出願、又は特許のそれぞれの開示の全体が参照により組み込まれるように具体的且つ個々に示されるような場合と同じ程度にまで、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
上記にて開示された本発明の例示的な実施形態の多くの修正例を、当業者なら容易に思い浮かべるであろう。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲に包含される全ての構造及び方法を含むと解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)100℃未満のアニリン点を有する溶解度改良剤と、
b)リン酸アミンの混合物と、
c)酸ハーフエステル、無水物、酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されたアルケニルコハク酸化合物と
を含み、完成潤滑剤の25重量パーセント未満の量で使用したときに4時間TORT B錆試験の合格をもたらす錆止め剤。
【請求項2】
溶解度改良剤が、50℃未満のアニリン点を有する、請求項1に記載の錆止め剤。
【請求項3】
溶解度改良剤が、20℃未満のアニリン点を有する、請求項2に記載の錆止め剤。
【請求項4】
溶解度改良剤が、1種又は複数のフェノール系抗酸化剤である、請求項1に記載の錆止め剤。
【請求項5】
溶解度改良剤が、アルキル化芳香族、有機エステル、アルキル化シクロペンタジエン、アルキル化シクロペンテン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の錆止め剤。
【請求項6】
アルキル化芳香族がアルキル化ナフタレンである、請求項5に記載の錆止め剤。
【請求項7】
有機エステルがポリオールエステルである、請求項5に記載の錆止め剤。
【請求項8】
リン酸アミンの混合物が、極圧、耐摩耗、及び防錆活性を有する、請求項1に記載の錆止め剤。
【請求項9】
リン酸アミンの混合物が、一及び二酸アミンリン酸塩の混合物である、請求項1に記載の錆止め剤。
【請求項10】
アルケニルコハク酸ハーフエステルが、フェノール系抗酸化剤又は金属不活性化剤と組み合わせて作用する腐食防止剤である、請求項1に記載の錆止め剤。
【請求項11】
アルケニル基が、5から25個の間の炭素原子を有する、請求項1に記載の錆止め剤。
【請求項12】
アルケニルコハク酸ハーフエステルが、40℃で1000cStよりも高い動粘度を有する溶液中にある、請求項1に記載の錆止め剤。
【請求項13】
a)i.約0.10から約20重量%の間の量の溶解度改良剤、
ii.約0.001から約2重量%の間の量のリン酸アミンの混合物、及び
iii.約0.0005から約1.0重量%の間の量の、酸ハーフエステル、無水物、酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されたアルケニルコハク酸化合物
を含む錆止め剤と、
b)約60から約98.5重量%の間の量の潤滑基油と
を含む、完成潤滑剤。
【請求項14】
前記潤滑基油の過半量が、APIグループII、APIグループIII、APIグループIV、ポリ内部オレフィン、又はこれらの混合物である、請求項13に記載の完成潤滑剤。
【請求項15】
前記潤滑基油の過半量が、水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス、フィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィン、又はこれらの混合物である、請求項13に記載の完成潤滑剤。
【請求項16】
増粘剤、粘度指数(VI)向上剤、抗酸化剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、洗浄剤、分散剤、極圧(EP)剤、流動点抑制剤、シール膨潤剤、及び消泡剤からなる群から選択された、1種又は複数の追加の潤滑添加剤をさらに含む、請求項13に記載の完成潤滑剤。
【請求項17】
圧縮機オイル、軸受けオイル、抄紙機オイル、タービンオイル、油圧オイル、循環オイル、又はギアオイルである、請求項13に記載の完成潤滑剤。
【請求項18】
MIL−PRF−17331J仕様の要件を満たす、請求項13に記載の完成潤滑剤。
【請求項19】
4時間TORT B錆試験に合格する、40℃で約90cStから1700cStの間の動粘度を有する完成潤滑剤であって、
a)65重量パーセント超のAPIグループIII基油、APIグループIV基油、ポリ内部オレフィン基油、又はこれらの混合物と、
b)約0.10重量%から約5重量%の間の、50℃未満のアニリン点を有する溶解度改良剤と
を含む、前記潤滑剤。
【請求項20】
40℃での前記動粘度が、約198から1700cStの間である、請求項19に記載の完成潤滑剤。
【請求項21】
40℃での前記動粘度が、約414から1700cStの間である、請求項19に記載の完成潤滑剤。
【請求項22】
90重量パーセント超のAPIグループIII基油、APIグループIV基油、ポリ内部オレフィン基油、又はこれらの混合物を含む、請求項19に記載の完成潤滑剤。
【請求項23】
圧縮機オイル、軸受けオイル、抄紙機オイル、タービンオイル、油圧オイル、循環オイル、又はギアオイルである、請求項19に記載の完成潤滑剤。
【請求項24】
1平方センチメートル当たり0.10ミリグラムに等しいか、それ未満の、ASTM D 2619−95による銅重量変化の絶対値を有する、請求項19に記載の完成潤滑剤。
【請求項25】
1.0以下の、ASTM D 1500−98によるASTM色を有する、請求項19に記載の完成潤滑剤。
【請求項26】
a)過半量の水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス、フィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィン、又はこれらの混合物、及び
b)約0.10から約5重量%の間の、10℃未満のアニリン点を有する溶解度改良剤
を含み、4時間TORT B錆試験に合格する完成潤滑剤。
【請求項27】
約0.10から約2重量%の間の、10℃未満のアニリン点を有する溶解度改良剤を含む、請求項26に記載の完成潤滑剤。
【請求項28】
圧縮機オイル、軸受けオイル、抄紙機オイル、タービンオイル、油圧オイル、循環オイル、又はギアオイルである、請求項26に記載の完成潤滑剤。
【請求項29】
24時間TORT B錆試験にさらに合格する、請求項26に記載の完成潤滑剤。
【請求項30】
MIL−PRF−17331J仕様の要件を満たす、請求項26に記載の完成潤滑剤。
【請求項31】
潤滑剤を作製するための方法であって、
a)潤滑剤の全重量に対して約0.001から約2重量%のリン酸アミン混合物、
b)潤滑剤の全重量に対して約0.001から約0.5重量%の、酸ハーフエステル、無水物、酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されたアルケニルコハク酸化合物、
c)前記混合物の全重量に対して約0.10から約20重量%の溶解度改良剤、及び
d)前記混合物の全重量に対して約60から約98.5重量%の、ASTM D 3238により65%超のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループII基油、ASTM D 3238により65%超のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループIII基油、APIグループIV基油、ポリ内部オレフィン基油、水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス基油、フィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィン基油、及びこれらの混合物からなる群から選択された潤滑基油
を一緒にブレンドするステップを含み、前記潤滑剤が4時間TORT B錆試験に合格する、前記方法。
【請求項32】
潤滑油の全重量に対して約0.10重量%から約10重量%の間である、10℃未満のアニリン点を有する溶解度改良剤を、潤滑油に配合するステップを含み、前記配合するステップによって、前記潤滑油が4時間TORT B錆試験に合格することが可能になる、潤滑油の錆止めを改良する方法。
【請求項33】
アニリン点が5℃未満である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
溶解度改良剤が、1種又は複数のフェノール系抗酸化剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
潤滑油が、ASTM D 3238により65%超のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループII、ASTM D 3238により65%超のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループIII、ポリ内部オレフィン、APIグループIV、及びこれらの混合物からなる群から選択された過半量の基油を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
潤滑油が、水素化異性化フィッシャー・トロプシュワックス、フィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィン、又はこれらの混合物からなる群から選択された過半量の基油を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記配合するステップにより、潤滑油が24時間TORT B錆試験に合格することがさらに可能になる、請求項32に記載の方法。

【公表番号】特表2009−513781(P2009−513781A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537810(P2008−537810)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/041020
【国際公開番号】WO2007/050451
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】