高融点材料のアウト−オブ−ポジション摩擦攪拌溶接
【課題】 高融点の平らでない材料の摩擦攪拌溶接を行うためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】 本プロセスは、配管、フランジ、タンク、及びシュラウド等の物体に長さ方向及び横方向で溶接を行うために提供される。積極的又は受動的マンドレルが摩擦攪拌溶接プロセスに対して支持を提供する。
【解決手段】 本プロセスは、配管、フランジ、タンク、及びシュラウド等の物体に長さ方向及び横方向で溶接を行うために提供される。積極的又は受動的マンドレルが摩擦攪拌溶接プロセスに対して支持を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、工具の回転しているピンを加工物に押し付けることによって溶接部を形成するための熱を発生する、摩擦攪拌溶接(FSW)に関する。更に詳細には、本質的には、摩擦攪拌溶接プロセスで使用した場合に、本発明により、現在の摩擦攪拌溶接プロセス及び工具では機能的に溶接できない材料を溶接できるようにする、新たな工具及びこの工具の新たな用途に関する。このような材料には、ステンレス鋼等の鉄合金、鉄を少量しか又は全く含まない高融点の超合金が含まれる。予めやすり掛けを行うことにより、平らな溶接部を形成する。しかしながら、この新たなプロセス及び装置により、ステンレス鋼管、フランジ、タンク、シュラウド等の平らでない表面の摩擦攪拌溶接が可能になる。本発明は、かくして、高融点合金に長さ方向溶接、半径方向溶接、溶接修復、特定の微小構造を得るための摩擦攪拌加工等を行うために摩擦攪拌溶接技術を適用できる。
【背景技術】
【0002】
摩擦溶接は産業で多年に亘って使用されてきた。これは、従来の融接プロセスでの溶融材料の急速凝固と関連した多くの問題点をなくすため、経済的に大きな利益をもたらすソリッドステートプロセスである。
【0003】
摩擦溶接の一例は、二つの配管の端部を、一方の配管をしっかりと保持し、他方の配管をこれに押し付けて回転させながら互いに押し付けるときに行われる。摩擦によって熱が発生したとき、配管の端部が可塑化する。配管の回転を急速に停止することによって二つの配管を互いに融着する。この場合、接合されるべき二つの部品の相対的回転によって摩擦熱が発生するということに着目されたい。
【0004】
本発明は、上文中に説明したオービタル摩擦攪拌溶接プロセスに直接適用できる。高融点材料を摩擦攪拌溶接する上での単なる背景技術を以下に説明する。
オービタル溶接プロセスとは対照的に、図1は、摩擦攪拌突き合わせ溶接に使用される、肩部12及びこの肩部から外方に延びるピン14を持つ全体に円筒形の工具10を含むことを特徴とする工具の斜視図である。十分な熱が発生するまで、ピン14を加工物16に当てて回転し、工具のピンを可塑化した加工物材料に押し付ける。加工物16は、多くの場合、二枚のシート又はプレート状の材料であり、接合線18のところで互いに突き合わせられる。ピン14を接合線18のところで加工物16に押し付ける。ピン14を材料16に当てて回転移動させることによって発生した摩擦熱により、加工物材料を融点に達することなく軟化する。工具10を接合線18に沿って横方向に移動することによって、可塑化した材料がピンの周囲で前縁から後縁まで流れるときに溶接部を形成する。その結果、加工物材料16とほぼ区別が付かない固相結合部20が接合線18のところに形成される。
【0005】
従来技術には、多くの摩擦攪拌溶接の特許がある。これらの特許は、その当時の融接技術を越える利点を持つ溶接部を得るための技術を使用することの利点を教示している。これらの利点には、長い溶接部での変形が小さく、溶接ヒュームがなく、小孔がなく、スプラッターがなく、引張強度に関する優れた機械的特性が含まれる。更にこのプロセスには、消費される工具が使用されず、充填材ワイヤを必要とせず、ガスシールドを必要とせず、溶接領域での酸素の存在等の不完全な溶接に対する許容度等の利点がある。このプロセスは、溶接される材料の元の材料の性質を変化させる大きな熱損傷等をなくす上で特に有用である。
【0006】
しかしながら、産業では、現在は摩擦攪拌溶接では機能的に溶接できない材料を溶接できることが長いこと所望であった。かくして、摩擦攪拌溶接は、アルミニウム、真鍮、及び青銅等の非鉄合金を溶接する上で非常に有利であるが、融点が更に高い材料を機能的に溶接できる工具はなかった。機能的に溶接できる材料は、摩擦攪拌溶接を使用して呼称長さ以上で、工具を破壊せずに溶接できる材料であるということは理解されるべきである。
【0007】
残念なことに、融接は、合金を溶接部のところで変化させ、又は損傷し、これによって、溶接プロセス中に溶接部に欠陥や有害相が形成され、これにより溶接部が損なわれる。幾つかの場合には、元の加工物材料に接合されて合金を形成する非金属強化材料は、溶接部のところで劣化する。その結果、溶接部の特性及び特徴は、元の加工物材料の変化を受けていない領域と異なることとなる。
【0008】
現在まで、従来の摩擦攪拌溶接工具即ちプローブを使用する摩擦攪拌溶接には、大幅に磨耗するという性質があり、そのためMMCs、鉄合金、及び超合金等の材料を機能的に溶接できない。多くの工具は、単に、MMCs、鉄合金、及び超合金で全く役立たない。従来の工具が摩擦攪拌溶接を開始すると、磨耗が非常に大きくなるため、ほんの短い距離の後にプローブが擦れて離れてしまう。例えば、幾つかの合金は、ほんの数インチの距離に亘って溶接した後、プローブをもはや機能しない程磨耗させてしまう。
【0009】
残念なことに、一般的には、単に新たな工具を挿入し、前にプローブが破損した場所で摩擦攪拌溶接プロセスを開始することはできない。溶接部が連続しておらず、中断していない場合には、機械的に弱いため、役に立たない。更に、工具の一部が、代表的には、加工物材料内に残ってしまう。これもまた、機械的弱さの原因となる。
【0010】
従って、摩擦攪拌溶接プロセスで使用するための、従来技術の工具では短い距離の後に破損してしまう材料の長く連続した中断していない溶接(機能的溶接)を可能にする新たな工具を提供するのが従来技術を上回る利点である。更に、従来の摩擦攪拌溶接工具では、これまで溶接が非常に困難であった材料を新たな工具により摩擦攪拌溶接できるのであれば、これもまた、従来技術を上回る利点である。工具についての磨耗特性が改善された、従来の加工物材料で摩擦攪拌溶接を行うことができる工具を提供するのが従来技術を上回る利点である。
【0011】
摩擦攪拌溶接するのが望ましいが、従来技術の工具では機能的に溶接できない第1等級の材料は、金属マトリックス複合材料(MMCs)である。MMCは、金属相及びセラミック相を持つ材料である。セラミック相の例にはシリコンカーバイド及びホウ素カーバイドが含まれる。MMCで一般的に使用される金属はアルミニウムである。
【0012】
MMCsは、所望の剛性及び耐磨耗性を備えているが、耐破靱性が低く、そのため用途が限られている。MMCsの使用の良好な例は、車輛のディスクブレーキのロータでの使用である。この場合、剛性、強度、及び耐磨耗性が従来技術の材料よりも優れており、比較的脆性であるという性質は、全体として、問題とならない。MMCにより、ロータは鋳鉄よりも軽量になり、シリコンカーバイド等のセラミック相により耐磨耗性を向上できる。
【0013】
MMCsのこの他の重要な用途には、駆動シャフト、シリンダのライナ、エンジンの連結ロッド、航空機の着陸装置、航空機のエンジン構成要素、自転車のフレーム、ゴルフクラブ、放射熱シールド構成要素、衛星、及び航空構造が含まれるが、これらに限定されると考えられるべきではない。
【0014】
摩擦攪拌溶接するのが望ましい、産業的用途が遙かに広い第2等級の材料は鉄合金である。鉄合金には、鋼及びステンレス鋼が含まれる。可能な用途は非常に広く、これには、造船産業、航空宇宙産業、鉄道産業、建設産業、及び輸送産業が含まれる。ステンレス鋼の市場だけでも、アルミニウム合金の市場の少なくとも5倍である。鋼及びステンレス鋼は、溶接製品の80%以上を占め、摩擦攪拌溶接が非常に望ましいということが確認されている。
【0015】
最後に、摩擦攪拌溶接が望ましく、産業的用途が広く、融点が鉄合金よりも高く、鉄を少量しか含まないか或いは全く含まない第3等級の材料は超合金である。超合金は、一般的に約537.8℃(約10000F)以上で使用されるニッケル−鉄−ニッケル、及びコバルトを基材とした合金である。超合金で一般的に含まれる追加の元素には、クロム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、チタニウム、ニオブ、タンタル、及びレーニウムが含まれるがこれらに限定されない。
【0016】
チタニウムもまた、摩擦攪拌溶接に望ましい材料であるということに着目されたい。チタニウムは非鉄材料であるが、他の非鉄材料よりも融点が高い。
様々な試みがなされてきたけれども、MMCs、鉄合金、及び超合金を機能的に溶接できる工具は形成されなかった。これらの試みの幾つかは、実験中、本発明者が非鉄合金を摩擦攪拌溶接できる現存の工具を変更しようと初めて試みたときに明らかになった。読者が本発明を実施できるように工具のこれらの試み及び進化を論じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、配管、フランジ、タンク、及びシュラウド等の平らでない表面として形成された高融点材料を摩擦攪拌溶接するためのシステム及び方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、平らでない表面を長さ方向及び半径方向で溶接を行う場合に、高融点材料を摩擦攪拌溶接するためのシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
好ましい実施例では、本発明は、融点が高い平らでない材料の摩擦攪拌溶接を行うためのシステム及び方法において、配管、フランジ、タンク、及びシュラウド等の物体で長さ方向溶接及び半径方向溶接を行うためのプロセスを提供すること、及び積極的又は受動的マンドレルが摩擦攪拌溶接プロセスに対して支持を提供することである。
【0020】
本発明のこれらの及び他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明を添付図面を参照して読むことにより、当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に添付図面を参照する。これらの図には本発明の様々な実施例に参照番号が付してあり、当業者が本発明を形成し使用できるように本発明を論じる。以下の説明は本発明の原理の単なる例示であって、特許請求の範囲を狭めるものであると考えられるべきではないということは理解されるべきである。
【0022】
アルミニウムの摩擦攪拌溶接は、対費用効果に優れた高品質の接合方法として良好に確立された方法である。アルミニウムFSWの別の展開は、アルミニウム製の配管を特定の用途について接合することであった。これらの方法は、多くの文献に記載されているが、用途が限られているために商業的価値がほとんどなかった。
【0023】
これとは対照的に、鋼管は、遙かに多くの様々な用途で、及び更に重要な目的で広く使用されている。更に、圧力や腐食性流体を取り扱う上で、及び配管の破損により生命を脅かす怪我が起こらないようにするため、溶接品質が重要である。この目的のため、配管の多くの用途では、超音波探傷及びX線探傷を行って溶接部が適正であることを確認する必要がある。鋼管の溶接は、MIG、TIG、レーザー、等の融接によって行われる。
【0024】
鉄及び他の高温合金は、現在、本願がその優先権の基礎としている特許出願に教示されているように、PCBN工具によって摩擦攪拌溶接できる。これらの工具を使用する用途が現在開発されている。しかしながら、以前に行われた開発は、平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うのが困難であるため、平らな即ち平面溶接に集中されてきた。
【0025】
平面摩擦攪拌溶接プロセスをステンレス鋼製の配管、フランジ、タンク、シュラウド、等の平らでない表面の溶接の用途に適用することは、石油化学、輸送、食品、防衛産業等の産業にとって非常に有利である。しかしながらアウト−オブ−ポジションFSWは適用できなかった。これは、摩擦攪拌溶接機技術及び工具技術及び方法が組み合わせられてこなかったためである。オービタル融接及びアルミニウムオービタルFSWは良好に確立された方法であるが、平らでない表面を形成する高融点材料の摩擦攪拌溶接を行うために新たな方法及びシステムが必要とされている。
【0026】
添付図面に示す器具は、長さ方向溶接、半径方向溶接、溶接による修理、特定の微小構造を形成するための摩擦攪拌加工、等に使用できる。この方法は、溶接を行うために配管を予熱する必要並びに溶接後熱処理をなくす。これは、固体状態で適用されるためである。
【0027】
図1で説明を始める。この図は、配管の外径(OD)を溶接するように配置された第1摩擦攪拌溶接スピンドルヘッドを使用する摩擦攪拌溶接システムを示す。図1は、クランプ部材10、及びスピンドルヘッド14によって保持された工具12を示す。向き合ったクランプ部材(図示せず)が第1配管をクランプ部材10とともに所定位置に保持する。第2配管を保持するため、二つの他のクランプ部材(図示せず)がフレーム16の位置18に取り付けられている。工具12をスピンドルヘッド14によって下ろし、第1及び第2の配管の接合部に当て、摩擦攪拌溶接を行う。第1及び第2の配管はクランプ部材によってしっかりと保持され、この際、工具12を配管の周囲に亘って回転させる。クランプ部材は、カラー17と一体の部品であってもよいし別体の部品であってもよいということに着目されたい。
【0028】
図2は、図1のシステムを反対側から見た図である。着目されるべき重要事項は、カラー17に設けられた歯車歯19である。これらの歯車歯19により、クランプ部材を配管に固定した状態でフレーム16を配管周囲で回転させることができる。フレーム16は、スピンドルヘッド14及び工具12を配管間の継ぎ目に沿って位置決めする。
【0029】
図3は、図1のシステムの別の斜視図を提供する。この図は、スピンドルヘッド14の上方から見た図である。
図4は、配管23と26との間の継ぎ目の内側にこの継ぎ目に沿って配置されたアンビルアッセンブリ21の斜視図である。アンビルアッセンブリ21は、配管のOD上の工具12(図1参照)により配管23及び26が潰されることがないように、配管23及び26の内径(ID)に逆方向の力を提供する。アンビルアッセンブリ21は、二つの外ハブ20、22、及び内ホイール24を含む。内ホイール24は、配管23及び26のIDに力を及ぼす。
【0030】
実際には、内ホイール24を配管23及び26のIDに押し付けるため、幾つかのピストン28を作動させるようになっている。内ホイール24は、配管23及び26のOD上で摩擦攪拌溶接プロセスを行うためのアンビルとして機能する。
【0031】
図示の状態では、3つのピストンが作動させてあり、5つの残りのピストン28は作動させてない。内ホイール24の内側に設けられたピストン28が内ホイールを配管23及び26のIDに押し付ける。三つのピストンを使用する。これは、配管23及び26のIDの幾つかの位置の間で力を拡げることができるという利点が得られるためである。力を拡げることにより、配管23及び26が挫屈する危険が減少する。これは、壁厚が比較的薄い配管に対して特に重要である。摩擦攪拌溶接を行うため、工具12は配管23及び26にかなりの圧力を及ぼすということに着目すべきである。
【0032】
3つのピストン28を作動させることによって、ハブ20、22の逆方向の力がこれらの図で力の三角形を形成することがわかる。第1の接触点は、内ホイール24と配管23及び26のIDとの接触点にあり、他の二つの接触点は、二つのハブ20、22とIDとの接触点にある。
【0033】
更に、内ホイール24は、内ホイール24と配管23及び26のIDとの間に配置される別の材料28を含んでもよい。この材料は、重要な利点を提供する。例えば、材料28には、図5に示すようにディンプル30が設けられていてもよい。
【0034】
ディンプル30により、工具12を、内ホイール24と接触することなく、配管23及び26のIDを越えて押すことができる。IDを越えて押すことにより、工具12は摩擦攪拌溶接で形成されるルート欠陥をなくすことができる。
【0035】
本発明の重要な特徴には、配管23及び26のIDと接触した内ホイール24に材料を適用することが含まれる。材料は、配管23及び26の摩擦攪拌溶接中にアンビルアッセンブリのアンビル(内ホイール24)と配管23及び26との間が拡散結合しないようにするため、適用される。
【0036】
図1乃至図4は、摩擦攪拌溶接を配管23及び26のODから行い、プロセス中に及ぼされた力によって配管が潰れないようにするためにアンビルアッセンブリ21がマンドレルとして機能する、本発明の特徴を示す。しかしながら、本発明には、構成要素の位置を逆にしてもよいという特徴がある。換言すると、摩擦攪拌溶接構成要素が配管内に配置された状態で様々な種類のアンビルアッセンブリを使用して圧力を配管23及び26のODに加えてもよい。その結果、摩擦攪拌溶接はIDに行われる。
【0037】
このような形体には多くの利点がある。例えば、配管のODにアクセスできないけれども幾つかの種類のアンビルアッセンブリを適用できる場合がある。例えば、図6に示すようにバンド32がODの周囲に配置された配管23及び26を考えられたい。この図では、摩擦攪拌溶接工具12は、摩擦攪拌溶接アッセンブリ34の部分として示してある。この場合、工具12はアーム36に沿って配置される。このアームは、ローラー40を一端に備えたアーム38を有する。アーム38及びローラー40は、工具12が配管23及び26のIDに押し付けられるときに工具12によって加えられる力とは逆方向の力を提供する。アーム36は、摩擦攪拌溶接アッセンブリ34を配管23と26との間の継ぎ目42に沿って回転する。バンド32は、配管23及び26が損傷しないようにするため、工具12、及びアーム38及びローラー40に逆方向の力を加える。
【0038】
図6に示すシステムは、配管の溶接に使用できるばかりでなく、亀裂の修復にも使用できる。摩擦攪拌溶接アッセンブリ34を配管の内側に沿って長さ方向に所望の位置に達するまで移動し、摩擦攪拌溶接又は摩擦攪拌修復を行う。このシステムは、配管のODに達するのが困難である場合に特に有利であるが、バンド32を、必要な逆方向の力を締め付けによって提供できる位置に達するまで配管の長さ方向に沿って摺動できる。
【0039】
バンド32は、必要な逆方向の力を加える任意の他の種類のシステムと同様に形成できるということに着目すべきである。例えば、図7は、配管50が、この配管50自体と接触していない大きなリング52によって取り囲まれていることを示す。大きなリング52は、この大きなリング52に沿って移動でき且つ配管50のODに圧力を加えることができる少なくとも二つのアンビル54を有する。圧力は、配管50内に配置された摩擦攪拌溶接アッセンブリ56によって力が加えられるID上の任意の位置と真逆のOD上の所定位置に加えられる。アンビル54の数は、配管50のIDに加えられる全ての力に対抗する力を提供するように増やすことができる。
【0040】
図8は、平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行う場合に引込み式ピンを使用する概念を例示する。この断面図では、工具60は、ボディ即ち肩部62、ピンハウジング64、及び引込み式ピン66を含む。引込み式ピン66は、継ぎ目70に沿って配管68に押し付けられる。アンビル72が配管68に関して引込み式ピン66の反対側に配置される。
【0041】
引込み式ピン66を使用することは、配管等の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行う上で特に有用である。これは、溶接される材料から引込み式ピン66をきれいに除去するランオフタブ又は他の手段が設けられていないためである。
【0042】
図9は、摩擦攪拌溶接が行われるべき配管90等の平らでない表面の内面に支持を提供するための別の手段を示す。詳細には、膨張可能な内嚢82を配管80内に配置する。膨張可能な嚢82と配管80との間には少なくとも一つのコイル状シート材料84が配置してある。膨張可能な嚢82を膨張させて拡張し、圧力をコイル状シート84に加える。コイル状シートは、配管84のIDに押し付けられるまで拡張する。詳細には、摩擦攪拌溶接時に配管84のIDに拡散結合しないようにコイル状シート84の表面にコーティングを施すのが重要である。
【0043】
別の態様では、膨張可能な嚢82に対して追加の保護を提供し、嚢が誤って破れたり溶けたりしないようにするため、一つ以上のコイル状シート84を膨張可能な嚢82の周囲に配置してもよい。
【0044】
図10は、セグメント状マンドレル90を示す。セグメント状マンドレル90は、配管92内に配置される。セグメント状マンドレル90の長さは、必要に応じて変化させることができる。本発明の重要な特徴は、セグメント状マンドレル90が摩擦攪拌溶接又は修復プロセスで配管92のODに加えられる力に対抗するアンビルとして機能するように、セグメント状マンドレル90を拡張するための手段を提供できるということである。
【0045】
セグメント状マンドレル90が配管92のID全体に力を加えるのでないため、セグメント状マンドレル90を必要に応じて移動させなければならない。
図11は、平らでない表面で所望の摩擦攪拌溶接を行うのに使用できる別の種類のアンビルの図である。この場合、消費可能なマンドレル100が配管102の内部に配置される。消費可能なマンドレル100は、ODに摩擦攪拌溶接が行われるときに配管のIDに必要な逆方向の力を提供できる任意の材料でできていてもよい。消費可能なマンドレル100は、摩擦攪拌溶接を行った後に配管102の内部から除去できる高圧塩又は他の溶解性材料でできている。消費可能なマンドレル100は、かくして、配管102から文字通り洗い出される。消費可能なマンドレル100の材料を配管102内に形成でき、又は配管102に単一のユニットとして挿入できる。
【0046】
図12は、ODに摩擦攪拌溶接を行うとき、必要な逆方向の力を配管112のIDに提供するために遊星歯車110のシステムを使用する概念を例示する。遊星歯車110は、これらの遊星歯車を回転させることによって、これらの遊星歯車で外リング114を配管112のIDに押し付けられるまで均等に拡張するための手段を提供することによって使用される。当業者は、遊星歯車で外リング114を拡張するための機械的手段をよく知っている。
【0047】
別の態様では、遊星歯車を使用し、外リング114を不均等に拡張することができる。かくして、外リング114は、配管112のIDの一部だけに押し付けられる。
図13は、摩擦攪拌溶接を平らでない表面に行うことができるように配管のIDに逆方向の力を提供する別の手段として提供される。この図は、配管122のIDに対して操作される楔120を示す。この種のアンビルの利点は、移動が容易であるということである。楔120が動かないようにするため、追加の支持が必要とされる。
【0048】
図14は、摩擦攪拌溶接を平らでない表面に行うことができるように配管のIDに逆方向の力を提供する更に別の手段として提供される。この図では、工具130はボビンを含むように変更してある。この工具130の性質のため、工具は半径方向摩擦攪拌溶接で使用されない。しかしながら、工具130は、工具を加工物から明らかに離した位置で前記端部を摩擦攪拌溶接する上で役立つ。例えば、工具130は、配管134の長さに沿った長さ方向溶接で使用するのに適している。かくして、工具134は、配管134の端部から離される。次いで出口場所を加工し、ギザギザの縁部を除去する。
【0049】
図15は、摩擦攪拌溶接を平らでない表面に行うことができるように配管のIDに逆方向の力を提供する更に別の手段として提供される。ここに示す概念は、プランジャー140を配管142の内側に配置することである。圧縮性材料144をプランジャー140のハンドル146の周囲にリングとして配置する。圧縮性材料144は、金属製又は任意の他の適当な材料であってもよい。幾つかの金属を、これらがマンドレルの圧縮性材料として機能できるのに十分な程度まで弾性変形させることができる。
【0050】
ストップリング148をハンドル146の周囲に配置する。ハンドルは、プランジャー140を圧縮性材料144に抗して後方に引っ張るのに使用される。圧縮性材料144は、ストップリング148に押し付けられる。圧縮性材料は、プランジャー140及びストップリング148に力が加えられるため、拡張する。
【0051】
プランジャー140を圧縮性材料144に抗して後方に引っ張る一つの方法は、ハンドル146のねじ山を備えた部分150を提供することである。ハンドル146を回してプランジャー140を引っ張る。圧縮性材料144のセグメントは、ODに対する摩擦攪拌溶接によって押し付けられる配管のIDの表面積に応じて、必要とされるように挿入したり取り除いたりできるということに着目すべきである。
【0052】
図1乃至図13及び図15は、摩擦攪拌溶接が行われる表面とは反対側の平らでない表面の側部に逆方向の力を提供する様々なシステム及び方法を明瞭に示す。これらのシステムのうちの幾つかは、配管の内部に配置された場合にだけ作動し、その他のシステムは、配管の外側又は他の平らでない表面に使用されるように適用できる。図14は、逆方向の力を必要としないという点で異なる。
【0053】
図16のA及びBは、摩擦攪拌溶接を平らでない表面に行うことができるように配管のIDに逆方向の力を提供する更に別の手段として提供される。図16のAでは、マンドレル162は、明らかに、配管160の厚さが十分に薄く、摩擦攪拌溶接プロセス中に工具166により加えられる圧力によりこれらの配管を挫屈させてしまう場合に配管160、164を支持するアンビルを提供するのに使用される。
【0054】
これとは対照的に、図16のBは、配管164、168の壁厚が、工具166を配管に押し付けるときに摩擦攪拌溶接プロセスを支持するのに十分である場合、マンドレルが必要とされないということを示す。
【0055】
図16のA及びBに示す重ね溶接の重要な特徴を、更に、図16のCに示す。詳細には、第1ピン172及び第2ピン174を持つように工具170が変更してある。第1ピン172は、第2配管176に侵入している。第2ピン174は、二つの配管176、178の材料の混合の大部分を行うため、重要である。第2ピン174は、更に、材料が第2配管176から溶接部内に「持ち上げ(hooking up)」られないようにする。
【0056】
本発明の別の特徴は、詳細には、二つの平らでない物体の接合に関する。図17の二つの配管180、182を考える。摩擦攪拌溶接を行うためにこれらの配管180、182整合するのは困難である。更に、摩擦攪拌溶接の開始後にこれらの配管180、182を整合状態に保持することは困難である。
【0057】
この困難を解決するため、本発明の別の特徴は、接合される物体を整合する材料を導入することである。この考えの例示として、配管180、182を使用し、リング184をこれらの配管180、182の端部間に配置した状態で示す。リングは、配管180、182の端部が嵌着する溝186を含む。リング184は、明らかに、配管180、182のODの上側及びIDの内側に材料を有する。
【0058】
この形状は、有用な機能を果たすことができる。例えば、多くの溶接仕様には、溶接工具は配管のIDの内側を貫通してはならないと書かれている。しかしながら、摩擦攪拌溶接では、貫通がなされないとルート欠陥が生じ易い。しかし、図17のリング184を使用することによって、摩擦攪拌溶接工具は、実際上IDを貫通せずにルート欠陥をなくすことができる。
【0059】
リング184の別の有用な機能は、配管180、182と同じ材料を溶接部に導入できること、又は新たな材料を溶接部に導入できることである。新たな材料は、リング184で使用された材料に応じて溶接部自体の特徴を変化させる、例えば硬化又は軟化するのに使用できる。リングの材料は、溶接部内に消費される。
【0060】
必ずしも完全なリングを使用しなくてもよいということにも着目されるべきである。例えば、リングはセグメントやロール状の材料に代えてもよい。
図18は、図17に示す配管180、182及びリング184の斜視図である。
【0061】
図19は、リング184の一部の断面斜視図である。
図17、図18、及び図19に示すリング184は、配管180、182のOD及びIDの上下に材料のリングを提供する。しかしながら、用途に応じてこの他の形状のリングを使用してもよい。例えば、図20は、内押縁を持つが配管のODの上方に突出する押縁を備えていないリング200を示す。図21は、丁度逆を示す。リング202はODの上方の押縁を含むが、IDの下に突出した押縁を備えていない。図22は、押縁を備えていないリング204を示す。このリング204は配管の整合を補助しないが、同じ又は新たな材料を配管間の溶接部に導入するのに役立つ。
【0062】
本発明の他の特徴に言及する。本発明は、高融点材料の平らでない表面の摩擦攪拌溶接を行うためのシステムを示す。本発明は、摩擦攪拌溶接によって加えられる圧力に対して逆方向の力を提供するための積極的アンビル及び受動的アンビルの両方を提供する。マンドレルは、配管のOD及びIDの両方に示してあり、拡散結合が起こらないようにコーティングが施されているのがよい。
【0063】
本発明とアルミニウム用摩擦攪拌溶接システムとの間の重要な相違は、PCBN工具、積極的工具冷却、工具温度制御、負荷制御、及び支持スピンドル、及び負荷及び動力学を取り扱わなければならないフレームが必要とされるということである。
【0064】
本発明の別の特徴は、摩擦攪拌溶接工具の回転方向が、結果的に得られる溶接部の品質に影響を及ぼすことがあるということを発見したことである。このことは、摩擦攪拌溶接を加工物の両側に行う場合に特にいえる。これは、加工物での材料の流れが、結果的に得られる溶接部の性質に直接影響を及ぼすためである。これは、流れが材料を溶接部の内外に移動するためである。従って、本発明の別の特徴は、溶接部の所望の特徴に応じて摩擦攪拌溶接工具を時計廻り方向又は反時計廻り方向に回転させることである。
【0065】
上述の構成は、本発明の原理の適用の単なる例示であるということは理解されるべきである。当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、多くの変形及び変更を思いつくであろう。特許請求の範囲は、このような変形及び変更を含もうとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1摩擦攪拌溶接スピンドルヘッドが、配管の外径(OD)を溶接するように配置された、本発明の第1実施例の斜視図である。
【図2】図1の別の斜視図である。
【図3】図1の別の斜視図である。
【図4】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うため、高融点配管のODに押し付けられた工具に対して逆方向の力を提供するために配管内に配置された積極的マンドレルの斜視図である。
【図5】アンビルでディンプルを使用することを示す、断面図である。
【図6】摩擦攪拌溶接アッセンブリが配管のIDに対して作用するように配置されており且つマンドレルがOD上に配置された変形例の断面図である。
【図7】積極的マンドレルが平らでない表面のOD上に配置された変形例の断面図である。
【図8】引込み式のピンを使用して平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うための工具の変形例の部分断面図である。
【図9】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルの斜視図である。
【図10】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルの斜視図である。
【図11】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルの斜視図である。
【図12】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルの断面図である。
【図13】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルの断面図である。
【図14】平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うのにマンドレルを必要としない変形例の断面図である。
【図15】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルの断面図である。
【図16−A】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルを使用する重ね溶接の断面図である。
【図16−B】マンドレルの使用を必要としない重ね溶接の断面図である。
【図16−C】摩擦攪拌溶接工具を使用して重ね溶接を行うように変更した工具の拡大断面図である。
【図17】平らでない表面の摩擦攪拌溶接用のリングの断面図である。
【図18】図17のリング及び配管の斜視図である。
【図19】図17及び図18のリングの拡大斜視図である。
【図20】リングの変形例の断面斜視図である。
【図21】リングの変形例の断面斜視図である。
【図22】リングの変形例の断面斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
10 クランプ部材
12 工具
14 スピンドルヘッド
16 フレーム
17 カラー
18 位置
19 歯車歯
23、26 配管
21 アンビルアッセンブリ
20、22 外ハブ
24 内ホイール
28 ピストン
30 ディンプル
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、工具の回転しているピンを加工物に押し付けることによって溶接部を形成するための熱を発生する、摩擦攪拌溶接(FSW)に関する。更に詳細には、本質的には、摩擦攪拌溶接プロセスで使用した場合に、本発明により、現在の摩擦攪拌溶接プロセス及び工具では機能的に溶接できない材料を溶接できるようにする、新たな工具及びこの工具の新たな用途に関する。このような材料には、ステンレス鋼等の鉄合金、鉄を少量しか又は全く含まない高融点の超合金が含まれる。予めやすり掛けを行うことにより、平らな溶接部を形成する。しかしながら、この新たなプロセス及び装置により、ステンレス鋼管、フランジ、タンク、シュラウド等の平らでない表面の摩擦攪拌溶接が可能になる。本発明は、かくして、高融点合金に長さ方向溶接、半径方向溶接、溶接修復、特定の微小構造を得るための摩擦攪拌加工等を行うために摩擦攪拌溶接技術を適用できる。
【背景技術】
【0002】
摩擦溶接は産業で多年に亘って使用されてきた。これは、従来の融接プロセスでの溶融材料の急速凝固と関連した多くの問題点をなくすため、経済的に大きな利益をもたらすソリッドステートプロセスである。
【0003】
摩擦溶接の一例は、二つの配管の端部を、一方の配管をしっかりと保持し、他方の配管をこれに押し付けて回転させながら互いに押し付けるときに行われる。摩擦によって熱が発生したとき、配管の端部が可塑化する。配管の回転を急速に停止することによって二つの配管を互いに融着する。この場合、接合されるべき二つの部品の相対的回転によって摩擦熱が発生するということに着目されたい。
【0004】
本発明は、上文中に説明したオービタル摩擦攪拌溶接プロセスに直接適用できる。高融点材料を摩擦攪拌溶接する上での単なる背景技術を以下に説明する。
オービタル溶接プロセスとは対照的に、図1は、摩擦攪拌突き合わせ溶接に使用される、肩部12及びこの肩部から外方に延びるピン14を持つ全体に円筒形の工具10を含むことを特徴とする工具の斜視図である。十分な熱が発生するまで、ピン14を加工物16に当てて回転し、工具のピンを可塑化した加工物材料に押し付ける。加工物16は、多くの場合、二枚のシート又はプレート状の材料であり、接合線18のところで互いに突き合わせられる。ピン14を接合線18のところで加工物16に押し付ける。ピン14を材料16に当てて回転移動させることによって発生した摩擦熱により、加工物材料を融点に達することなく軟化する。工具10を接合線18に沿って横方向に移動することによって、可塑化した材料がピンの周囲で前縁から後縁まで流れるときに溶接部を形成する。その結果、加工物材料16とほぼ区別が付かない固相結合部20が接合線18のところに形成される。
【0005】
従来技術には、多くの摩擦攪拌溶接の特許がある。これらの特許は、その当時の融接技術を越える利点を持つ溶接部を得るための技術を使用することの利点を教示している。これらの利点には、長い溶接部での変形が小さく、溶接ヒュームがなく、小孔がなく、スプラッターがなく、引張強度に関する優れた機械的特性が含まれる。更にこのプロセスには、消費される工具が使用されず、充填材ワイヤを必要とせず、ガスシールドを必要とせず、溶接領域での酸素の存在等の不完全な溶接に対する許容度等の利点がある。このプロセスは、溶接される材料の元の材料の性質を変化させる大きな熱損傷等をなくす上で特に有用である。
【0006】
しかしながら、産業では、現在は摩擦攪拌溶接では機能的に溶接できない材料を溶接できることが長いこと所望であった。かくして、摩擦攪拌溶接は、アルミニウム、真鍮、及び青銅等の非鉄合金を溶接する上で非常に有利であるが、融点が更に高い材料を機能的に溶接できる工具はなかった。機能的に溶接できる材料は、摩擦攪拌溶接を使用して呼称長さ以上で、工具を破壊せずに溶接できる材料であるということは理解されるべきである。
【0007】
残念なことに、融接は、合金を溶接部のところで変化させ、又は損傷し、これによって、溶接プロセス中に溶接部に欠陥や有害相が形成され、これにより溶接部が損なわれる。幾つかの場合には、元の加工物材料に接合されて合金を形成する非金属強化材料は、溶接部のところで劣化する。その結果、溶接部の特性及び特徴は、元の加工物材料の変化を受けていない領域と異なることとなる。
【0008】
現在まで、従来の摩擦攪拌溶接工具即ちプローブを使用する摩擦攪拌溶接には、大幅に磨耗するという性質があり、そのためMMCs、鉄合金、及び超合金等の材料を機能的に溶接できない。多くの工具は、単に、MMCs、鉄合金、及び超合金で全く役立たない。従来の工具が摩擦攪拌溶接を開始すると、磨耗が非常に大きくなるため、ほんの短い距離の後にプローブが擦れて離れてしまう。例えば、幾つかの合金は、ほんの数インチの距離に亘って溶接した後、プローブをもはや機能しない程磨耗させてしまう。
【0009】
残念なことに、一般的には、単に新たな工具を挿入し、前にプローブが破損した場所で摩擦攪拌溶接プロセスを開始することはできない。溶接部が連続しておらず、中断していない場合には、機械的に弱いため、役に立たない。更に、工具の一部が、代表的には、加工物材料内に残ってしまう。これもまた、機械的弱さの原因となる。
【0010】
従って、摩擦攪拌溶接プロセスで使用するための、従来技術の工具では短い距離の後に破損してしまう材料の長く連続した中断していない溶接(機能的溶接)を可能にする新たな工具を提供するのが従来技術を上回る利点である。更に、従来の摩擦攪拌溶接工具では、これまで溶接が非常に困難であった材料を新たな工具により摩擦攪拌溶接できるのであれば、これもまた、従来技術を上回る利点である。工具についての磨耗特性が改善された、従来の加工物材料で摩擦攪拌溶接を行うことができる工具を提供するのが従来技術を上回る利点である。
【0011】
摩擦攪拌溶接するのが望ましいが、従来技術の工具では機能的に溶接できない第1等級の材料は、金属マトリックス複合材料(MMCs)である。MMCは、金属相及びセラミック相を持つ材料である。セラミック相の例にはシリコンカーバイド及びホウ素カーバイドが含まれる。MMCで一般的に使用される金属はアルミニウムである。
【0012】
MMCsは、所望の剛性及び耐磨耗性を備えているが、耐破靱性が低く、そのため用途が限られている。MMCsの使用の良好な例は、車輛のディスクブレーキのロータでの使用である。この場合、剛性、強度、及び耐磨耗性が従来技術の材料よりも優れており、比較的脆性であるという性質は、全体として、問題とならない。MMCにより、ロータは鋳鉄よりも軽量になり、シリコンカーバイド等のセラミック相により耐磨耗性を向上できる。
【0013】
MMCsのこの他の重要な用途には、駆動シャフト、シリンダのライナ、エンジンの連結ロッド、航空機の着陸装置、航空機のエンジン構成要素、自転車のフレーム、ゴルフクラブ、放射熱シールド構成要素、衛星、及び航空構造が含まれるが、これらに限定されると考えられるべきではない。
【0014】
摩擦攪拌溶接するのが望ましい、産業的用途が遙かに広い第2等級の材料は鉄合金である。鉄合金には、鋼及びステンレス鋼が含まれる。可能な用途は非常に広く、これには、造船産業、航空宇宙産業、鉄道産業、建設産業、及び輸送産業が含まれる。ステンレス鋼の市場だけでも、アルミニウム合金の市場の少なくとも5倍である。鋼及びステンレス鋼は、溶接製品の80%以上を占め、摩擦攪拌溶接が非常に望ましいということが確認されている。
【0015】
最後に、摩擦攪拌溶接が望ましく、産業的用途が広く、融点が鉄合金よりも高く、鉄を少量しか含まないか或いは全く含まない第3等級の材料は超合金である。超合金は、一般的に約537.8℃(約10000F)以上で使用されるニッケル−鉄−ニッケル、及びコバルトを基材とした合金である。超合金で一般的に含まれる追加の元素には、クロム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、チタニウム、ニオブ、タンタル、及びレーニウムが含まれるがこれらに限定されない。
【0016】
チタニウムもまた、摩擦攪拌溶接に望ましい材料であるということに着目されたい。チタニウムは非鉄材料であるが、他の非鉄材料よりも融点が高い。
様々な試みがなされてきたけれども、MMCs、鉄合金、及び超合金を機能的に溶接できる工具は形成されなかった。これらの試みの幾つかは、実験中、本発明者が非鉄合金を摩擦攪拌溶接できる現存の工具を変更しようと初めて試みたときに明らかになった。読者が本発明を実施できるように工具のこれらの試み及び進化を論じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、配管、フランジ、タンク、及びシュラウド等の平らでない表面として形成された高融点材料を摩擦攪拌溶接するためのシステム及び方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、平らでない表面を長さ方向及び半径方向で溶接を行う場合に、高融点材料を摩擦攪拌溶接するためのシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
好ましい実施例では、本発明は、融点が高い平らでない材料の摩擦攪拌溶接を行うためのシステム及び方法において、配管、フランジ、タンク、及びシュラウド等の物体で長さ方向溶接及び半径方向溶接を行うためのプロセスを提供すること、及び積極的又は受動的マンドレルが摩擦攪拌溶接プロセスに対して支持を提供することである。
【0020】
本発明のこれらの及び他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明を添付図面を参照して読むことにより、当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に添付図面を参照する。これらの図には本発明の様々な実施例に参照番号が付してあり、当業者が本発明を形成し使用できるように本発明を論じる。以下の説明は本発明の原理の単なる例示であって、特許請求の範囲を狭めるものであると考えられるべきではないということは理解されるべきである。
【0022】
アルミニウムの摩擦攪拌溶接は、対費用効果に優れた高品質の接合方法として良好に確立された方法である。アルミニウムFSWの別の展開は、アルミニウム製の配管を特定の用途について接合することであった。これらの方法は、多くの文献に記載されているが、用途が限られているために商業的価値がほとんどなかった。
【0023】
これとは対照的に、鋼管は、遙かに多くの様々な用途で、及び更に重要な目的で広く使用されている。更に、圧力や腐食性流体を取り扱う上で、及び配管の破損により生命を脅かす怪我が起こらないようにするため、溶接品質が重要である。この目的のため、配管の多くの用途では、超音波探傷及びX線探傷を行って溶接部が適正であることを確認する必要がある。鋼管の溶接は、MIG、TIG、レーザー、等の融接によって行われる。
【0024】
鉄及び他の高温合金は、現在、本願がその優先権の基礎としている特許出願に教示されているように、PCBN工具によって摩擦攪拌溶接できる。これらの工具を使用する用途が現在開発されている。しかしながら、以前に行われた開発は、平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うのが困難であるため、平らな即ち平面溶接に集中されてきた。
【0025】
平面摩擦攪拌溶接プロセスをステンレス鋼製の配管、フランジ、タンク、シュラウド、等の平らでない表面の溶接の用途に適用することは、石油化学、輸送、食品、防衛産業等の産業にとって非常に有利である。しかしながらアウト−オブ−ポジションFSWは適用できなかった。これは、摩擦攪拌溶接機技術及び工具技術及び方法が組み合わせられてこなかったためである。オービタル融接及びアルミニウムオービタルFSWは良好に確立された方法であるが、平らでない表面を形成する高融点材料の摩擦攪拌溶接を行うために新たな方法及びシステムが必要とされている。
【0026】
添付図面に示す器具は、長さ方向溶接、半径方向溶接、溶接による修理、特定の微小構造を形成するための摩擦攪拌加工、等に使用できる。この方法は、溶接を行うために配管を予熱する必要並びに溶接後熱処理をなくす。これは、固体状態で適用されるためである。
【0027】
図1で説明を始める。この図は、配管の外径(OD)を溶接するように配置された第1摩擦攪拌溶接スピンドルヘッドを使用する摩擦攪拌溶接システムを示す。図1は、クランプ部材10、及びスピンドルヘッド14によって保持された工具12を示す。向き合ったクランプ部材(図示せず)が第1配管をクランプ部材10とともに所定位置に保持する。第2配管を保持するため、二つの他のクランプ部材(図示せず)がフレーム16の位置18に取り付けられている。工具12をスピンドルヘッド14によって下ろし、第1及び第2の配管の接合部に当て、摩擦攪拌溶接を行う。第1及び第2の配管はクランプ部材によってしっかりと保持され、この際、工具12を配管の周囲に亘って回転させる。クランプ部材は、カラー17と一体の部品であってもよいし別体の部品であってもよいということに着目されたい。
【0028】
図2は、図1のシステムを反対側から見た図である。着目されるべき重要事項は、カラー17に設けられた歯車歯19である。これらの歯車歯19により、クランプ部材を配管に固定した状態でフレーム16を配管周囲で回転させることができる。フレーム16は、スピンドルヘッド14及び工具12を配管間の継ぎ目に沿って位置決めする。
【0029】
図3は、図1のシステムの別の斜視図を提供する。この図は、スピンドルヘッド14の上方から見た図である。
図4は、配管23と26との間の継ぎ目の内側にこの継ぎ目に沿って配置されたアンビルアッセンブリ21の斜視図である。アンビルアッセンブリ21は、配管のOD上の工具12(図1参照)により配管23及び26が潰されることがないように、配管23及び26の内径(ID)に逆方向の力を提供する。アンビルアッセンブリ21は、二つの外ハブ20、22、及び内ホイール24を含む。内ホイール24は、配管23及び26のIDに力を及ぼす。
【0030】
実際には、内ホイール24を配管23及び26のIDに押し付けるため、幾つかのピストン28を作動させるようになっている。内ホイール24は、配管23及び26のOD上で摩擦攪拌溶接プロセスを行うためのアンビルとして機能する。
【0031】
図示の状態では、3つのピストンが作動させてあり、5つの残りのピストン28は作動させてない。内ホイール24の内側に設けられたピストン28が内ホイールを配管23及び26のIDに押し付ける。三つのピストンを使用する。これは、配管23及び26のIDの幾つかの位置の間で力を拡げることができるという利点が得られるためである。力を拡げることにより、配管23及び26が挫屈する危険が減少する。これは、壁厚が比較的薄い配管に対して特に重要である。摩擦攪拌溶接を行うため、工具12は配管23及び26にかなりの圧力を及ぼすということに着目すべきである。
【0032】
3つのピストン28を作動させることによって、ハブ20、22の逆方向の力がこれらの図で力の三角形を形成することがわかる。第1の接触点は、内ホイール24と配管23及び26のIDとの接触点にあり、他の二つの接触点は、二つのハブ20、22とIDとの接触点にある。
【0033】
更に、内ホイール24は、内ホイール24と配管23及び26のIDとの間に配置される別の材料28を含んでもよい。この材料は、重要な利点を提供する。例えば、材料28には、図5に示すようにディンプル30が設けられていてもよい。
【0034】
ディンプル30により、工具12を、内ホイール24と接触することなく、配管23及び26のIDを越えて押すことができる。IDを越えて押すことにより、工具12は摩擦攪拌溶接で形成されるルート欠陥をなくすことができる。
【0035】
本発明の重要な特徴には、配管23及び26のIDと接触した内ホイール24に材料を適用することが含まれる。材料は、配管23及び26の摩擦攪拌溶接中にアンビルアッセンブリのアンビル(内ホイール24)と配管23及び26との間が拡散結合しないようにするため、適用される。
【0036】
図1乃至図4は、摩擦攪拌溶接を配管23及び26のODから行い、プロセス中に及ぼされた力によって配管が潰れないようにするためにアンビルアッセンブリ21がマンドレルとして機能する、本発明の特徴を示す。しかしながら、本発明には、構成要素の位置を逆にしてもよいという特徴がある。換言すると、摩擦攪拌溶接構成要素が配管内に配置された状態で様々な種類のアンビルアッセンブリを使用して圧力を配管23及び26のODに加えてもよい。その結果、摩擦攪拌溶接はIDに行われる。
【0037】
このような形体には多くの利点がある。例えば、配管のODにアクセスできないけれども幾つかの種類のアンビルアッセンブリを適用できる場合がある。例えば、図6に示すようにバンド32がODの周囲に配置された配管23及び26を考えられたい。この図では、摩擦攪拌溶接工具12は、摩擦攪拌溶接アッセンブリ34の部分として示してある。この場合、工具12はアーム36に沿って配置される。このアームは、ローラー40を一端に備えたアーム38を有する。アーム38及びローラー40は、工具12が配管23及び26のIDに押し付けられるときに工具12によって加えられる力とは逆方向の力を提供する。アーム36は、摩擦攪拌溶接アッセンブリ34を配管23と26との間の継ぎ目42に沿って回転する。バンド32は、配管23及び26が損傷しないようにするため、工具12、及びアーム38及びローラー40に逆方向の力を加える。
【0038】
図6に示すシステムは、配管の溶接に使用できるばかりでなく、亀裂の修復にも使用できる。摩擦攪拌溶接アッセンブリ34を配管の内側に沿って長さ方向に所望の位置に達するまで移動し、摩擦攪拌溶接又は摩擦攪拌修復を行う。このシステムは、配管のODに達するのが困難である場合に特に有利であるが、バンド32を、必要な逆方向の力を締め付けによって提供できる位置に達するまで配管の長さ方向に沿って摺動できる。
【0039】
バンド32は、必要な逆方向の力を加える任意の他の種類のシステムと同様に形成できるということに着目すべきである。例えば、図7は、配管50が、この配管50自体と接触していない大きなリング52によって取り囲まれていることを示す。大きなリング52は、この大きなリング52に沿って移動でき且つ配管50のODに圧力を加えることができる少なくとも二つのアンビル54を有する。圧力は、配管50内に配置された摩擦攪拌溶接アッセンブリ56によって力が加えられるID上の任意の位置と真逆のOD上の所定位置に加えられる。アンビル54の数は、配管50のIDに加えられる全ての力に対抗する力を提供するように増やすことができる。
【0040】
図8は、平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行う場合に引込み式ピンを使用する概念を例示する。この断面図では、工具60は、ボディ即ち肩部62、ピンハウジング64、及び引込み式ピン66を含む。引込み式ピン66は、継ぎ目70に沿って配管68に押し付けられる。アンビル72が配管68に関して引込み式ピン66の反対側に配置される。
【0041】
引込み式ピン66を使用することは、配管等の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行う上で特に有用である。これは、溶接される材料から引込み式ピン66をきれいに除去するランオフタブ又は他の手段が設けられていないためである。
【0042】
図9は、摩擦攪拌溶接が行われるべき配管90等の平らでない表面の内面に支持を提供するための別の手段を示す。詳細には、膨張可能な内嚢82を配管80内に配置する。膨張可能な嚢82と配管80との間には少なくとも一つのコイル状シート材料84が配置してある。膨張可能な嚢82を膨張させて拡張し、圧力をコイル状シート84に加える。コイル状シートは、配管84のIDに押し付けられるまで拡張する。詳細には、摩擦攪拌溶接時に配管84のIDに拡散結合しないようにコイル状シート84の表面にコーティングを施すのが重要である。
【0043】
別の態様では、膨張可能な嚢82に対して追加の保護を提供し、嚢が誤って破れたり溶けたりしないようにするため、一つ以上のコイル状シート84を膨張可能な嚢82の周囲に配置してもよい。
【0044】
図10は、セグメント状マンドレル90を示す。セグメント状マンドレル90は、配管92内に配置される。セグメント状マンドレル90の長さは、必要に応じて変化させることができる。本発明の重要な特徴は、セグメント状マンドレル90が摩擦攪拌溶接又は修復プロセスで配管92のODに加えられる力に対抗するアンビルとして機能するように、セグメント状マンドレル90を拡張するための手段を提供できるということである。
【0045】
セグメント状マンドレル90が配管92のID全体に力を加えるのでないため、セグメント状マンドレル90を必要に応じて移動させなければならない。
図11は、平らでない表面で所望の摩擦攪拌溶接を行うのに使用できる別の種類のアンビルの図である。この場合、消費可能なマンドレル100が配管102の内部に配置される。消費可能なマンドレル100は、ODに摩擦攪拌溶接が行われるときに配管のIDに必要な逆方向の力を提供できる任意の材料でできていてもよい。消費可能なマンドレル100は、摩擦攪拌溶接を行った後に配管102の内部から除去できる高圧塩又は他の溶解性材料でできている。消費可能なマンドレル100は、かくして、配管102から文字通り洗い出される。消費可能なマンドレル100の材料を配管102内に形成でき、又は配管102に単一のユニットとして挿入できる。
【0046】
図12は、ODに摩擦攪拌溶接を行うとき、必要な逆方向の力を配管112のIDに提供するために遊星歯車110のシステムを使用する概念を例示する。遊星歯車110は、これらの遊星歯車を回転させることによって、これらの遊星歯車で外リング114を配管112のIDに押し付けられるまで均等に拡張するための手段を提供することによって使用される。当業者は、遊星歯車で外リング114を拡張するための機械的手段をよく知っている。
【0047】
別の態様では、遊星歯車を使用し、外リング114を不均等に拡張することができる。かくして、外リング114は、配管112のIDの一部だけに押し付けられる。
図13は、摩擦攪拌溶接を平らでない表面に行うことができるように配管のIDに逆方向の力を提供する別の手段として提供される。この図は、配管122のIDに対して操作される楔120を示す。この種のアンビルの利点は、移動が容易であるということである。楔120が動かないようにするため、追加の支持が必要とされる。
【0048】
図14は、摩擦攪拌溶接を平らでない表面に行うことができるように配管のIDに逆方向の力を提供する更に別の手段として提供される。この図では、工具130はボビンを含むように変更してある。この工具130の性質のため、工具は半径方向摩擦攪拌溶接で使用されない。しかしながら、工具130は、工具を加工物から明らかに離した位置で前記端部を摩擦攪拌溶接する上で役立つ。例えば、工具130は、配管134の長さに沿った長さ方向溶接で使用するのに適している。かくして、工具134は、配管134の端部から離される。次いで出口場所を加工し、ギザギザの縁部を除去する。
【0049】
図15は、摩擦攪拌溶接を平らでない表面に行うことができるように配管のIDに逆方向の力を提供する更に別の手段として提供される。ここに示す概念は、プランジャー140を配管142の内側に配置することである。圧縮性材料144をプランジャー140のハンドル146の周囲にリングとして配置する。圧縮性材料144は、金属製又は任意の他の適当な材料であってもよい。幾つかの金属を、これらがマンドレルの圧縮性材料として機能できるのに十分な程度まで弾性変形させることができる。
【0050】
ストップリング148をハンドル146の周囲に配置する。ハンドルは、プランジャー140を圧縮性材料144に抗して後方に引っ張るのに使用される。圧縮性材料144は、ストップリング148に押し付けられる。圧縮性材料は、プランジャー140及びストップリング148に力が加えられるため、拡張する。
【0051】
プランジャー140を圧縮性材料144に抗して後方に引っ張る一つの方法は、ハンドル146のねじ山を備えた部分150を提供することである。ハンドル146を回してプランジャー140を引っ張る。圧縮性材料144のセグメントは、ODに対する摩擦攪拌溶接によって押し付けられる配管のIDの表面積に応じて、必要とされるように挿入したり取り除いたりできるということに着目すべきである。
【0052】
図1乃至図13及び図15は、摩擦攪拌溶接が行われる表面とは反対側の平らでない表面の側部に逆方向の力を提供する様々なシステム及び方法を明瞭に示す。これらのシステムのうちの幾つかは、配管の内部に配置された場合にだけ作動し、その他のシステムは、配管の外側又は他の平らでない表面に使用されるように適用できる。図14は、逆方向の力を必要としないという点で異なる。
【0053】
図16のA及びBは、摩擦攪拌溶接を平らでない表面に行うことができるように配管のIDに逆方向の力を提供する更に別の手段として提供される。図16のAでは、マンドレル162は、明らかに、配管160の厚さが十分に薄く、摩擦攪拌溶接プロセス中に工具166により加えられる圧力によりこれらの配管を挫屈させてしまう場合に配管160、164を支持するアンビルを提供するのに使用される。
【0054】
これとは対照的に、図16のBは、配管164、168の壁厚が、工具166を配管に押し付けるときに摩擦攪拌溶接プロセスを支持するのに十分である場合、マンドレルが必要とされないということを示す。
【0055】
図16のA及びBに示す重ね溶接の重要な特徴を、更に、図16のCに示す。詳細には、第1ピン172及び第2ピン174を持つように工具170が変更してある。第1ピン172は、第2配管176に侵入している。第2ピン174は、二つの配管176、178の材料の混合の大部分を行うため、重要である。第2ピン174は、更に、材料が第2配管176から溶接部内に「持ち上げ(hooking up)」られないようにする。
【0056】
本発明の別の特徴は、詳細には、二つの平らでない物体の接合に関する。図17の二つの配管180、182を考える。摩擦攪拌溶接を行うためにこれらの配管180、182整合するのは困難である。更に、摩擦攪拌溶接の開始後にこれらの配管180、182を整合状態に保持することは困難である。
【0057】
この困難を解決するため、本発明の別の特徴は、接合される物体を整合する材料を導入することである。この考えの例示として、配管180、182を使用し、リング184をこれらの配管180、182の端部間に配置した状態で示す。リングは、配管180、182の端部が嵌着する溝186を含む。リング184は、明らかに、配管180、182のODの上側及びIDの内側に材料を有する。
【0058】
この形状は、有用な機能を果たすことができる。例えば、多くの溶接仕様には、溶接工具は配管のIDの内側を貫通してはならないと書かれている。しかしながら、摩擦攪拌溶接では、貫通がなされないとルート欠陥が生じ易い。しかし、図17のリング184を使用することによって、摩擦攪拌溶接工具は、実際上IDを貫通せずにルート欠陥をなくすことができる。
【0059】
リング184の別の有用な機能は、配管180、182と同じ材料を溶接部に導入できること、又は新たな材料を溶接部に導入できることである。新たな材料は、リング184で使用された材料に応じて溶接部自体の特徴を変化させる、例えば硬化又は軟化するのに使用できる。リングの材料は、溶接部内に消費される。
【0060】
必ずしも完全なリングを使用しなくてもよいということにも着目されるべきである。例えば、リングはセグメントやロール状の材料に代えてもよい。
図18は、図17に示す配管180、182及びリング184の斜視図である。
【0061】
図19は、リング184の一部の断面斜視図である。
図17、図18、及び図19に示すリング184は、配管180、182のOD及びIDの上下に材料のリングを提供する。しかしながら、用途に応じてこの他の形状のリングを使用してもよい。例えば、図20は、内押縁を持つが配管のODの上方に突出する押縁を備えていないリング200を示す。図21は、丁度逆を示す。リング202はODの上方の押縁を含むが、IDの下に突出した押縁を備えていない。図22は、押縁を備えていないリング204を示す。このリング204は配管の整合を補助しないが、同じ又は新たな材料を配管間の溶接部に導入するのに役立つ。
【0062】
本発明の他の特徴に言及する。本発明は、高融点材料の平らでない表面の摩擦攪拌溶接を行うためのシステムを示す。本発明は、摩擦攪拌溶接によって加えられる圧力に対して逆方向の力を提供するための積極的アンビル及び受動的アンビルの両方を提供する。マンドレルは、配管のOD及びIDの両方に示してあり、拡散結合が起こらないようにコーティングが施されているのがよい。
【0063】
本発明とアルミニウム用摩擦攪拌溶接システムとの間の重要な相違は、PCBN工具、積極的工具冷却、工具温度制御、負荷制御、及び支持スピンドル、及び負荷及び動力学を取り扱わなければならないフレームが必要とされるということである。
【0064】
本発明の別の特徴は、摩擦攪拌溶接工具の回転方向が、結果的に得られる溶接部の品質に影響を及ぼすことがあるということを発見したことである。このことは、摩擦攪拌溶接を加工物の両側に行う場合に特にいえる。これは、加工物での材料の流れが、結果的に得られる溶接部の性質に直接影響を及ぼすためである。これは、流れが材料を溶接部の内外に移動するためである。従って、本発明の別の特徴は、溶接部の所望の特徴に応じて摩擦攪拌溶接工具を時計廻り方向又は反時計廻り方向に回転させることである。
【0065】
上述の構成は、本発明の原理の適用の単なる例示であるということは理解されるべきである。当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、多くの変形及び変更を思いつくであろう。特許請求の範囲は、このような変形及び変更を含もうとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1摩擦攪拌溶接スピンドルヘッドが、配管の外径(OD)を溶接するように配置された、本発明の第1実施例の斜視図である。
【図2】図1の別の斜視図である。
【図3】図1の別の斜視図である。
【図4】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うため、高融点配管のODに押し付けられた工具に対して逆方向の力を提供するために配管内に配置された積極的マンドレルの斜視図である。
【図5】アンビルでディンプルを使用することを示す、断面図である。
【図6】摩擦攪拌溶接アッセンブリが配管のIDに対して作用するように配置されており且つマンドレルがOD上に配置された変形例の断面図である。
【図7】積極的マンドレルが平らでない表面のOD上に配置された変形例の断面図である。
【図8】引込み式のピンを使用して平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うための工具の変形例の部分断面図である。
【図9】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルの斜視図である。
【図10】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルの斜視図である。
【図11】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルの斜視図である。
【図12】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルの断面図である。
【図13】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルの断面図である。
【図14】平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うのにマンドレルを必要としない変形例の断面図である。
【図15】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルの断面図である。
【図16−A】配管の平らでない表面に摩擦攪拌溶接を行うために高融点配管のODを押圧する工具に対して逆方向の力を提供するため、配管内に配置された変形例のマンドレルを使用する重ね溶接の断面図である。
【図16−B】マンドレルの使用を必要としない重ね溶接の断面図である。
【図16−C】摩擦攪拌溶接工具を使用して重ね溶接を行うように変更した工具の拡大断面図である。
【図17】平らでない表面の摩擦攪拌溶接用のリングの断面図である。
【図18】図17のリング及び配管の斜視図である。
【図19】図17及び図18のリングの拡大斜視図である。
【図20】リングの変形例の断面斜視図である。
【図21】リングの変形例の断面斜視図である。
【図22】リングの変形例の断面斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
10 クランプ部材
12 工具
14 スピンドルヘッド
16 フレーム
17 カラー
18 位置
19 歯車歯
23、26 配管
21 アンビルアッセンブリ
20、22 外ハブ
24 内ホイール
28 ピストン
30 ディンプル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高融点の鉄合金及び非鉄合金、及び超合金の平らでない表面の摩擦攪拌溶接を機能的に行うことができる摩擦攪拌溶接システムにおいて、
少なくとも一部に配置された超研磨材、肩部、及びピンを含み、前記超研磨材は第1状態及び第2状態を有し、配管の平らでない表面の外径(OD)に配置された、摩擦攪拌溶接工具、
前記摩擦攪拌溶接工具を冷却するように配置された冷却システム、及び
前記摩擦攪拌溶接工具によってODに加えられた力に抗するように前記配管の内径(ID)に当てて配置された支持マンドレルを有し、この支持マンドレルは、前記配管との拡散溶接が起こらないようにするコーティングを含む、摩擦攪拌溶接システム。
【請求項1】
高融点の鉄合金及び非鉄合金、及び超合金の平らでない表面の摩擦攪拌溶接を機能的に行うことができる摩擦攪拌溶接システムにおいて、
少なくとも一部に配置された超研磨材、肩部、及びピンを含み、前記超研磨材は第1状態及び第2状態を有し、配管の平らでない表面の外径(OD)に配置された、摩擦攪拌溶接工具、
前記摩擦攪拌溶接工具を冷却するように配置された冷却システム、及び
前記摩擦攪拌溶接工具によってODに加えられた力に抗するように前記配管の内径(ID)に当てて配置された支持マンドレルを有し、この支持マンドレルは、前記配管との拡散溶接が起こらないようにするコーティングを含む、摩擦攪拌溶接システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2006−518671(P2006−518671A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503228(P2006−503228)
【出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/002836
【国際公開番号】WO2004/067218
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(501061825)スミス インターナショナル、インコーポレテッド (1)
【出願人】(505289650)アドバンスト・メタル・プロダクツ・インコーポレーテッド (5)
【出願人】(592087647)ブリガム・ヤング・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHAM YOUNG UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/002836
【国際公開番号】WO2004/067218
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(501061825)スミス インターナショナル、インコーポレテッド (1)
【出願人】(505289650)アドバンスト・メタル・プロダクツ・インコーポレーテッド (5)
【出願人】(592087647)ブリガム・ヤング・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHAM YOUNG UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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