高血圧の遺伝子マーカー
【課題】高血圧の遺伝子マーカーの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、一塩基多型(SNP)を含む遺伝子からなる高血圧の遺伝子マーカーであって、前記遺伝子のSNPは、NCBI SNPデータベースのrs番号6162、7158、28933、710652、755381、887387、929023、967591、1042138、1058793、1801258、1869872、2070759、2071556、2140516、2236620、2236943、2236957、2255390、2270860、2278993、2291075、2293990、2295852、2298881、2301963、2305080、2715709、3736186、3743496、3746539、3747676、3759717、3764352、3766554、3815715、又は、3816772で特定される。
【解決手段】本発明は、一塩基多型(SNP)を含む遺伝子からなる高血圧の遺伝子マーカーであって、前記遺伝子のSNPは、NCBI SNPデータベースのrs番号6162、7158、28933、710652、755381、887387、929023、967591、1042138、1058793、1801258、1869872、2070759、2071556、2140516、2236620、2236943、2236957、2255390、2270860、2278993、2291075、2293990、2295852、2298881、2301963、2305080、2715709、3736186、3743496、3746539、3747676、3759717、3764352、3766554、3815715、又は、3816772で特定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高血圧の遺伝子マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧は、例えば、冠動脈疾患、脳卒中、慢性腎疾患等の主要な危険因子であるため、高血圧の予防は、社会的・公衆衛生的に重要である。高血圧は、多因子疾患であり、その発症には、環境因子と遺伝因子との相互作用が重要な役割を果たすと考えられている。高血圧の環境因子としては、例えば、加齢、肥満、ストレス、塩分過摂取等が挙げられる。一方、高血圧の遺伝因子としては、高血圧感受性遺伝子が知られている。高血圧感受性遺伝子とは、前記遺伝子を保有することで高血圧を発症する危険率が上昇すること、すなわち、高血圧に罹患し易くなることを意味する遺伝因子である。そして、高血圧のような多因子疾患においては、その感受性遺伝子のほとんどは、一塩基多型(SNP)等の多型の対立遺伝子(アレル)であると考えられている(非特許文献1)。
【0003】
これまで、遺伝子多型を含む高血圧感受性遺伝子としては、アンギオテンシノーゲン、α−アデューシン、Gタンパク質β3サブユニット、β2アドレナリン受容体、グリコプロテインIa(GPIa)、ケモカイン受容体2(CCR2)、アポリポプロテインC(ApoC−III)、G−タンパク質β3サブユニット(GPβ3)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インスリン受容体サブストレート1(IRS−1)、グリコプロテインIbα(GPIbα)、C−タイプ・ナトリウム利尿ホルモン(CNP)、ヘム・オキシゲナーゼ1(HMOX−1)、SCNN1A等の各遺伝子が報告されている(特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】特開2004−222503号公報
【特許文献2】特開2004−113094号公報
【特許文献3】特開2004−33051号公報
【特許文献4】特開2004−24125号公報
【非特許文献1】徳永勝士、加藤順三、『遺伝子多型・変異と疾患感受性』、日産婦誌53巻9号、311−314、2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの高血圧感受性遺伝子だけでは、高血圧感受性経路の構成や説明には不十分である。高血圧の病態を明らかにするためには、さらに多くの高血圧感受性遺伝子が明らかにされることが望まれている。そこで、本発明は、SNPを含む遺伝子からなる高血圧の遺伝子マーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の高血圧の遺伝子マーカーは、SNPを含む遺伝子からなる高血圧の遺伝子マーカーであって、前記遺伝子が、CYP17遺伝子、EXOSC3遺伝子、ACCN1遺伝子、KCNMB4遺伝子、KCNIP2遺伝子、ATP2A3遺伝子、RAC2遺伝子、CD3EAP遺伝子、CALCR遺伝子、ATP10D遺伝子、GNA14遺伝子、PTHR1遺伝子、ATP2B1遺伝子、HLA−DMB遺伝子、SLC13A1遺伝子、SLC2A11遺伝子、GNAI2遺伝子、CACNA2D2遺伝子、PRKWNK1遺伝子、SLC22A7遺伝子、KCNN1遺伝子、SLC21A6遺伝子、CACNA1E遺伝子、SLC26A8遺伝子、ERCC1遺伝子、DLGAP2遺伝子、COL4A1遺伝子、GUCA1C遺伝子、ATP10C遺伝子、HCN4遺伝子、PTPRT遺伝子、FGF2遺伝子、CHGA遺伝子、PPP1R1B遺伝子、ADORA1遺伝子、RGS19IP1遺伝子、及び、RGS20遺伝子からなる群から選択される遺伝子であり、前記SNPが、それぞれ、米国バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information;NCBI)SNPデータベースのrs番号rs6162、rs7158、rs28933、rs710652、rs755381、rs887387、rs929023、rs967591、rs1042138、rs1058793、rs1801258、rs1869872、rs2070759、rs2071556、rs2140516、rs2236620、rs2236943、rs2236957、rs2255390、rs2270860、rs2278993、rs2291075、rs2293990、rs2295852、rs2298881、rs2301963、rs2305080、rs2715709、rs3736186、rs3743496、rs3746539、rs3747676、rs3759717、rs3764352、rs3766554、rs3815715、及び、rs3816772で特定されるSNPである。
【発明の効果】
【0006】
本発明者らは、高血圧の新規な感受性遺伝子を探索するべく鋭意研究を重ね、プロモーター領域にあるSNP又はアミノ酸置換を伴うSNPを含む300を超える候補遺伝子について、約750人ずつのケースコントロール研究を行った。その結果、高血圧罹患者(ケース)群と正常血圧対照者(コントロール)群とで比較した場合に、対立遺伝子頻度、優性モデル、劣性モデル、及び、遺伝子型頻度の少なくとも1つにおいて有意差がある38の陽性遺伝子を見出し、本発明に到達した。
【0007】
本発明の高血圧の遺伝子マーカーの遺伝子は、SNPの対立遺伝子(アレル)として高血圧感受性遺伝子を含むので、前記遺伝子マーカーのSNPをタイピングすることで高血圧の罹患し易さを判定することができる。また、本発明の高血圧の遺伝子マーカーを複数組み合せることで、高血圧の罹患し易さの検出力を高めることができる。
【0008】
さらに、本発明の高血圧の遺伝子マーカーの遺伝子は、血圧調節系の構成要因と関連性がある遺伝子であるから、例えば、互いに異なる本発明の高血圧の遺伝子マーカーを機能的に結びつけることが可能であり、これにより、高血圧の遺伝因子間の相互作用が解明でき、高血圧感受性経路を明らかにすることができる。さらにまた、本発明の高血圧の遺伝子マーカーによれば、例えば、前述のようにして明らかになった高血圧感受性経路に基づき高血圧の病態を明らかにすることができ、これにより、高血圧治療薬の開発ターゲットの特定や高血圧のオーダーメード医療が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の高血圧の遺伝子マーカーの使用方法は、被検試料を準備する準備工程と、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPについて高血圧の罹患し易さを設定する設定工程と、前記被検試料について前記遺伝子マーカーのSNPをタイピングをするタイピング工程と、前記設定工程の設定及び前記タイピング工程の結果に基づき高血圧の罹患し易さを判定する判定工程とを含む高血圧の遺伝子マーカーの使用方法である。
【0010】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPのタイピングのためにプローブ及びプライマーの少なくとも一方として使用するポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号1〜37の塩基配列、その部分塩基配列、及びそれらの相補塩基配列からなるポリヌクレオチド、並びに、前記ポリヌクレオチドにおいて前記SNPの部分以外の1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加されたものであって前記ポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチドである。
【0011】
本発明のマイクロアレイは、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPのタイピングに使用するマイクロアレイであって、本発明のポリヌクレオチドのスポットが配置されたマイクロアレイである。
【0012】
本発明のタイピングキットは、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPのタイピングキットであって、本発明のポリヌクレオチド及び本発明のマイクロアレイの少なくとも一方を含むタイピングキットである。
【0013】
本発明の高血圧の遺伝子マーカーについて説明する。
【0014】
本発明において、「高血圧の遺伝子マーカー」とは、高血圧に関する遺伝因子の目印(マーカー)となる遺伝子をいう。前記遺伝子は、SNPを含み、その対立遺伝子として、高血圧感受性遺伝子を含む。
【0015】
本発明において、「高血圧」とは、循環系障害やその他の障害結果を誘発する恐れのあるレベルにまで全身の動脈圧が一過性に又は持続的に高まった状態をいい、その定義は特に限定されないが、例えば、収縮血圧が140mmHg以上、拡張血圧が90mmHg以上の状態をいう。また、本発明において、「高血圧」とは、好ましくは、本態性高血圧である。
【0016】
一塩基多型(SNP)とは、一般的には、遺伝子の塩基配列が一ヶ所だけ異なる状態及びその部位をいう。また、多型とは、一般的には、母集団中1%以上の頻度で存在する2以上の対立遺伝子をいう。本発明において、「SNP」は、好ましくは、公共データベースに登録されたSNPであって、そのリファレンス番号から特定できるSNPである。前記公共データベースとしては、例えば、NCBI(NLM、NIH)のSNPデータベースや、IMS−JST(東京大学、科学技術振興財団)のJSNP(登録商標)データベース等が挙げられる。本発明におけるSNPは、前記公共データベースのリファレンス番号であるrs番号(NCBI SNPデータベース)及びIMS−JST番号(JSNP(登録商標)データベース)により特定できる。
【0017】
本発明において「高血圧感受性遺伝子」とは、前述のとおり、この遺伝子を保有することにより、それ単独で、又は、他の環境因子や遺伝因子との相互作用により、前記保有者の高血圧の易罹患性を高める遺伝子をいう。また、本発明の高血圧の遺伝子マーカーの遺伝子は、SNPの対立遺伝子(アレル)として高血圧感受性遺伝子を含む。
【0018】
本発明者らの鋭意研究により見出された高血圧感受性遺伝子となる遺伝子及びそのSNPを下記表1にまとめて示す。同表において、「遺伝子記号」は、前記高血圧感受性遺伝子の遺伝子記号であり、「RS#」及び「IMS−JST#」は、それぞれ、NCBI SNPデータベース(dbSNP BUILD124)及びJSNP(登録商標)データベース(IMS−JST、2005年9月7日第25回公開)におけるSNPのリファレンス番号であり、「SeqID」とは、配列表の配列番号のことをいう。前記配列表には、前記NCBI SNPデータベースに登録されている前記SNPの多型部位及びその周辺の塩基配列(FASTA形式)を記載する。
【0019】
下記表1には、また、本発明者らが行ったケースコントロール研究の結果の一例を併せて示す。同表において、「遺伝子多型」の欄には、SNPの多型部位の塩基で遺伝子多型を示し、「アレル」の欄には、対立遺伝子(アレル)頻度について高血圧罹患者(ケース)群と正常血圧対照者(コントロール)群とで比較し、2×2分割表で検定したオッズ比及びP値を示す。前記対立遺伝子頻度とは、遺伝子多型頻度をAA、AB、BBとした場合に、Aアレル頻度をAA×2+ABとし、Bアレル頻度をBB×2+ABとして、それぞれ換算したものである。また、同表において、「A優性」及び「A劣性」の欄には、それぞれ、Aアレルの優性モデル(AA対AB+BB)及びAアレルの劣性モデル(AA+AB対BB)についてケース群とコントロール群とで比較し、2×2分割表で検定したオッズ比及びP値を示し、「遺伝子型」の欄には、遺伝子多型頻度(AA、AB、BB)についてケース群とコントロール群とで比較し、2×3分割表で検定したP値を示す。下記表1に示すとおり、同表の高血圧感受性遺伝子は、前記対立遺伝子頻度、優性モデル、劣性モデル、及び、遺伝子型頻度の少なくとも1つにおいて有意(P<0.05)である。
【0020】
【表1】
【0021】
次に、本発明の遺伝子マーカーを具体的に説明する。なお、各遺伝子におけるNM番号(NM_○○○○○○)は、各遺伝子のmRNA配列を特定するNCBIのヌクレオチドデータベースのアクセッション番号である。
【0022】
本発明の第1の高血圧の遺伝子マーカーは、G/A多型のSNP(rs6162)を含むCYP17(cytochrome P450, subfamily XVII;シトクロムP450サブファミリー17(steroid 17−alpha−hydroxylase;ステロイド17αヒドロキシラーゼ), adrenal hyperplasia)遺伝子(NM_000102)からなる遺伝子マーカーである。前記CYP17遺伝子G/A多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、及び、遺伝子型において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレル又はGG型を保有している場合には、Aアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0023】
本発明の第2の高血圧の遺伝子マーカーは、T/C多型のSNP(rs7158)を含むEXOSC3(exosome component 3)遺伝子(NM_016042)からなる遺伝子マーカーである。前記EXOSC3遺伝子T/C多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、及び、A劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Cアレル又はCC型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0024】
本発明の第3の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs28933)を含むACCN1(amiloride−sensitive cation channel 1;アミロライド感受性カチオンチャネル1, neuronal (degenerin))遺伝子(NM_183377、NM_001094)からなる遺伝子マーカーである。前記ACCN1遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、A劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレル又はGG型を保有している場合には、Aアレル又はAA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0025】
本発明の第4の高血圧の遺伝子マーカーは、T/G多型のSNP(rs710652)を含むKCNMB4(potassium large conductance calcium−activated channel, subfamily M, beta member 4)遺伝子(NM_014505)からなる遺伝子マーカーである。前記KCNMB4遺伝子T/G多型は、上記表1におけるA劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Gアレル又はGG型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0026】
本発明の第5の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs755381)を含むKCNIP2(Kv channel interacting protein 2)遺伝子(NM_173197、NM_014591、NM_173342、NM_173191、NM_173192、NM_173193、NM_173194、NM_173195)からなる遺伝子マーカーである。前記KCNIP2遺伝子A/G多型は、上記表1におけるA劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、GG型を保有している場合には、Aアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0027】
本発明の第6の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs887387)を含むATP2A3(ATPase, Ca++ transporting, ubiquitous)遺伝子(NM_005173、NM_174953、NM_174954、NM_174955、NM_174957、NM_174958)からなる遺伝子マーカーである。前記ATP2A3遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレル又はGG型を保有している場合には、Aアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0028】
本発明の第7の高血圧の遺伝子マーカーは、C/T多型のSNP(rs929023)を含むRAC2(ras−related C3 botulinum toxin substrate 2 (rho family, small GTP binding protein Rac2))遺伝子(NM_002872)からなる遺伝子マーカーである。前記RAC2遺伝子C/T多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、及び、A優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Cアレル又はCC型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0029】
本発明の第8の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs967591)を含むCD3EAP(Homo sapiens CD3E antigen, epsilon polypeptide associated protein)遺伝子(NM_012099)からなる遺伝子マーカーである。前記CD3EAP遺伝子A/G多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレルを保有している場合には、AA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0030】
本発明の第9の高血圧の遺伝子マーカーは、T/C多型のSNP(rs1042138)を含むCALCR(calcitonin receptor;カルシトニン受容体)遺伝子(NM_001742)からなる遺伝子マーカーである。前記CALCR遺伝子T/C多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、TT型を保有している場合には、Cアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0031】
本発明の第10の高血圧の遺伝子マーカーは、G/A多型のSNP(rs1058793)を含むATP10D(ATPase, Class V, type 10D)遺伝子(NM_020453)からなる遺伝子マーカーである。前記ATP10D遺伝子G/A多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、及び、A優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレルを保有している場合には、Gアレル又はGG型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0032】
本発明の第11の高血圧の遺伝子マーカーは、G/A多型のSNP(rs1801258)を含むGNA14(guanine nucleotide binding protein (G protein), alpha 14)遺伝子(NM_004297)からなる遺伝子マーカーである。前記GNA14遺伝子G/A多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレルを保有している場合には、Aアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0033】
本発明の第12の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs1869872)を含むPTHR1(parathyroid hormone receptor 1;副甲状腺ホルモン受容体1)遺伝子(NM_000316)からなる遺伝子マーカーである。前記PTHR1遺伝子A/G多型は、上記表1におけるA劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレルを保有している場合には、GG型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0034】
本発明の第13の高血圧の遺伝子マーカーは、A/C多型のSNP(rs2070759)を含むATP2B1(ATPase, Ca++ transporting, plasma membrane 1)遺伝子(NM_001682)からなる遺伝子マーカーである。前記ATP2B1遺伝子A/C多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、及び、A劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレルを保有している場合には、Cアレル又はCC型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0035】
本発明の第14の高血圧の遺伝子マーカーは、A/C多型のSNP(rs2071556)を含むHLA−DMB(major histocompatibility complex, class II, DM beta;主要組織適合複合体クラスII、DMβ)遺伝子(NM_002118)からなる遺伝子マーカーである。前記HLA−DMB遺伝子A/C多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Cアレルを保有している場合には、Aアレル又はAA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0036】
本発明の第15の高血圧の遺伝子マーカーは、T/C多型のSNP(rs2140516)を含むSLC13A1(solute carrier family 13 (sodium/sulfate symporters), member 1)遺伝子(NM_022444)からなる遺伝子マーカーである。前記SLC13A1遺伝子T/C多型は、上記表1におけるA劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、CC型を保有している場合には、Tアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0037】
本発明の第16の高血圧の遺伝子マーカーは、T/C多型のSNP(rs2236620)を含むSLC2A11(solute carrier family 2 (facilitated glucose transporter), member 11)遺伝子(NM_030807)からなる遺伝子マーカーである。前記SLC2A11遺伝子T/C多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Cアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0038】
本発明の第17の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs2236943)を含むGNAI2(guanine nucleotide binding protein (G protein), alpha inhibiting activity polypeptide 2;Gタンパク質α阻害活性ポリペプチド2)遺伝子(NM_002070)からなる遺伝子マーカーである。前記GNAI2遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、A劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレル又はAA型を保有している場合には、Gアレル又はGG型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0039】
本発明の第18の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs2236957)を含むCACNA2D2(calcium channel, voltage−dependent, alpha 2/delta subunit 2)遺伝子(NM_006030)からなる遺伝子マーカーである。前記CACNA2D2遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレルを保有している場合には、Aアレル又はAA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0040】
本発明の第19の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs2255390)を含むPRKWNK1(protein kinase, lysine deficient 1)遺伝子(NM_018979)からなる遺伝子マーカーである。前記PRKWNK1遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレル又はAA型を保有している場合には、Gアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0041】
本発明の第20の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs2270860)を含むSLC22A7(solute carrier family 22 (organic anion transporter), member 7)遺伝子(NM_153320、NM_006672)からなる遺伝子マーカーである。前記SLC22A7遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレルを保有している場合には、Gアレル又はGG型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0042】
本発明の第21の高血圧の遺伝子マーカーは、G/A多型のSNP(rs2278993)を含むKCNN1(potassium intermediate/small conductance calcium−activated channel, subfamily N, member 1)遺伝子(NM_002248)からなる遺伝子マーカーである。前記KCNN1遺伝子G/A多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、及び、A優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレル又はGG型を保有している場合には、Aアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0043】
本発明の第22の高血圧の遺伝子マーカーは、T/C多型のSNP(rs2291075)を含むSLC21A6(solute carrier family 21 (organic anion transporter), member 6)遺伝子(NM_006446)からなる遺伝子マーカーである。前記SLC21A6遺伝子T/C多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、TT型を保有している場合には、Cアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0044】
本発明の第23の高血圧の遺伝子マーカーは、A/T多型のSNP(rs2293990)を含むCACNA1E(calcium channel, voltage−dependent, alpha 1E subunit)遺伝子(NM_000721)からなる遺伝子マーカーである。前記CACNA1E遺伝子A/T多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレルを保有している場合には、Tアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0045】
本発明の第24の高血圧の遺伝子マーカーは、C/T多型のSNP(rs2295852)を含むSLC26A8(solute carrier family 26, member 8)遺伝子(NM_052961、NM_138718)からなる遺伝子マーカーである。前記SLC26A8遺伝子C/T多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Cアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0046】
本発明の第25の高血圧の遺伝子マーカーは、A/C多型のSNP(rs2298881)を含むERCC1(excision repair cross−complementing rodent repair deficiency, complementation group 1 (includes overlapping antisense sequence))遺伝子(NM_001983)からなる遺伝子マーカーである。前記ERCC1遺伝子A/C多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Cアレルを保有している場合には、AA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0047】
本発明の第26の高血圧の遺伝子マーカーは、A/C多型のSNP(rs2301963)を含むDLGAP2(discs, large (Drosophila) homolog−associated protein 2)遺伝子(NM_004745)からなる遺伝子マーカーである。前記DLGAP2遺伝子A/C多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Cアレルを保有している場合には、Aアレル又はAA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0048】
本発明の第27の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs2305080)を含むCOL4A1(collagen, type IV, alpha 1;コラーゲン、タイプ4、α1)遺伝子(NM_001845)からなる遺伝子マーカーである。前記COL4A1遺伝子A/G多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレルを保有している場合には、Aアレル又はAA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0049】
本発明の第28の高血圧の遺伝子マーカーは、C/T多型のSNP(rs2715709)を含むGUCA1C(guanylate cyclase activator 1C;グアニル酸シクラーゼアクチベータ1C)遺伝子(NM_005459)からなる遺伝子マーカーである。前記GUCA1C遺伝子C/T多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、及び、A劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Cアレル又はCC型を保有している場合には、Tアレル又はTT型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0050】
本発明の第29の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs3736186)を含むATP10C(ATPase, Class V, type 10C)遺伝子(NM_024490)からなる遺伝子マーカーである。前記ATP10C遺伝子A/G多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、AA型を保有している場合には、Gアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0051】
本発明の第30の高血圧の遺伝子マーカーは、G/T多型のSNP(rs3743496)を含むHCN4(hyperpolarization activated cyclic nucleotide−gated potassium channel 4)遺伝子(NM_005477)からなる遺伝子マーカーである。前記HCN4遺伝子G/T多型は、上記表1におけるA劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、TT型を保有している場合には、Gアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0052】
本発明の第31の高血圧の遺伝子マーカーは、C/T多型のSNP(rs3746539)を含むPTPRT(protein tyrosine phosphatase, receptor type, T)遺伝子(NM_133170、NM_007050)からなる遺伝子マーカーである。前記PTPRT遺伝子C/T多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Cアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0053】
本発明の第32の高血圧の遺伝子マーカーは、T/C多型のSNP(rs3747676)を含むFGF2(fibroblast growth factor 2 (basic);線維芽細胞成長因子2)遺伝子(NM_198041、NM_007083、NM_002006)からなる遺伝子マーカーである。前記FGF2遺伝子T/C多型は、上記表1におけるA劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、CC型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0054】
本発明の第33の高血圧の遺伝子マーカーは、C/T多型のSNP(rs3759717)を含むCHGA(chromogranin A (parathyroid secretory protein 1);クロモグラニンA、副甲状腺分泌タンパク質1)遺伝子(例えば、NT_026437参照)からなる遺伝子マーカーである。前記CHGA遺伝子C/T多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、CC型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0055】
本発明の第34の高血圧の遺伝子マーカーは、G/A多型のSNP(rs3764352)を含むPPP1R1B(protein phosphatase 1 regulatory subunit 1B)遺伝子(NM_181505、NM_032192)からなる遺伝子マーカーである。前記PPP1R1B遺伝子G/A多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、A劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレル又はAA型を保有している場合には、Gアレル又はGG型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0056】
本発明の第35の高血圧の遺伝子マーカーは、C/T多型のSNP(rs3766554)を含むADORA1(adenosine A1 receptor;アデノシンA1受容体)遺伝子(NM_000674)からなる遺伝子マーカーである。前記ADORA1遺伝子C/T多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Cアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0057】
本発明の第36の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs3815715)を含むRGS19IP1(regulator of G−protein signalling 19 interacting protein 1)遺伝子(NM_005716、NM_202467、NM_202468、NM_202469、NM_202470、NM_202494)からなる遺伝子マーカーである。前記RGS19IP1遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレルを保有している場合には、Gアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0058】
本発明の第37の高血圧の遺伝子マーカーは、C/G多型のSNP(rs3816772)を含むRGS20(regulator of G−protein signalling 20)遺伝子(NM_003702、NM_170587)からなる遺伝子マーカーである。前記RGS20遺伝子C/G多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレルを保有している場合には、CC型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0059】
本発明は、また、第38の高血圧の遺伝子マーカーとして、A/G多型のSNP(rs3767489)を含むRGS2(regulator of G−protein signalling 2, 24kD)遺伝子(例えば、NT_004487参照)からなる遺伝子マーカーを含んでもよい。前記RGS2遺伝子A/G多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、AA型を保有している場合には、Gアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0060】
このように、本発明の高血圧の遺伝子マーカーによれば、被検者について前記遺伝子マーカーのSNPをタイピングすることにより、被検者のSNPが高血圧に罹患し易いものであるかどうかについての判定をすることができる。したがって、本発明は、その他の態様において、高血圧の遺伝子マーカーの使用方法であって、被検試料を準備する準備工程と、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPについて、それぞれ、高血圧の罹患し易さを設定する設定工程と、前記被検試料について前記遺伝子マーカーのSNPをタイピングするタイピング工程と、前記設定工程の設定及び前記タイピング工程の結果に基づき高血圧の罹患し易さを判定する判定工程とを含む高血圧の遺伝子マーカーの使用方法である。
【0061】
まず、前記準備工程において、被検試料を準備する。前記被検試料は、被検者の核酸若しくはゲノムDNAを含むもの又は核酸若しくはゲノムDNAであって、例えば、血液や体液等の生体試料や、そこから調製された核酸やゲノムDNAが挙げられる。生体試料の採取方法、採取部位等は、特に制限されず、また、核酸やゲノムDNAの調製方法も従来公知の方法を適用でき、特に制限されない。
【0062】
次に、前記設定工程において、高血圧の罹患し易さを設定する。前記設定は、例えば、上記表1のオッズ比を参照して行うことができるが、前記設定方法はこれに限定されず、例えば、本発明の高血圧の遺伝子マーカーについてメタアナリシスを行って得られるオッズ比や、本発明の高血圧の遺伝子マーカーについてコホート研究を行って得られる相対危険度(リスク比)、その他の従来公知の統計手法を用いて統計学的に処理した値を使用することができる。あらかじめ設定されたオッズ比等を使用する場合には、前記設定工程は、省略してもよい。
【0063】
そして、前記タイピング工程において、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPをタイピングする。本発明において、「遺伝子マーカーのSNPのタイピング」とは、前記遺伝子マーカーの遺伝子に含まれるSNPをタイピングすることをいい、本発明において、「SNPのタイピング」とは、ゲノム上の位置が明らかとなっている前記SNPの多型部位がどの塩基であるかを同定することであって、例えば、AとGとから構成されるSNPを対立遺伝子で見た場合、その被検試料の被検者の遺伝子型が、AA、AG、GGのいずれであるかを同定することをいう。SNPのタイピング方法は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができ、例えば、Invader(商標、Third Wave Technologies社)法、TaqMan(商標、Applied Biosystems社)法、MALDI−TOF質量分析法、マイクロアレイ法、シークエンス法等が挙げられる。本発明の高血圧の遺伝子マーカーについては、既にSNPの多型部位及びその周辺の配列が決定されているから、当業者であれば、例えば、データベースの配列や配列表の配列番号1〜38の配列等に基づき、適宜、SNPのタイピングを行うことができる。
【0064】
最後に、前記判定工程において、前記設定工程の設定及び前記タイピング工程の結果に基づき高血圧の罹患し易さを判定する。これにより、例えば、高血圧の発症リスクを診断したり、生活習慣を改善することによる高血圧の予防ができる。また、高血圧の罹患し易さを、高血圧治療薬の感受性の違いと考えることができるから、例えば、本発明の高血圧の遺伝子マーカーの遺伝子多型に応じた高血圧の治療薬の開発・製造や、投薬方法が可能となる。したがって、本発明は、その他の態様として、本発明の高血圧の遺伝子マーカーを利用した高血圧の発症リスク診断方法、高血圧の予防方法、高血圧治療薬の感受性判定方法、高血圧治療薬の投与方法及び高血圧の治療方法、並びに、これらの方法における本発明の高血圧の遺伝子マーカーの使用を含む。
【0065】
本発明の高血圧の遺伝子マーカーは、単独での使用のほか、2以上の組み合せとして使用し、累積的又は相乗的に検出力を高めて高血圧の罹患し易さを判定してもよい。本発明の高血圧の遺伝子マーカーの遺伝子は、前述のとおり、主要な血圧調節系の構成要因と推定されるから、機能的に結びつけて使用することができる。あるいは、高血圧感受性経路を解明し、その感受性経路に応じて組み合せを決定することもできる。また、本発明の遺伝子マーカー同士の相互作用は、例えば、ノンパラメトリック法による非線形の交互作用を検出するMDR(Multifactor Dimentionality Reduction)等の統計手法を利用して検出することができる。その一例を以下に説明する。例えば、前記GNAI2遺伝子A/G多型(rs2236943)と前記RGS2遺伝子A/G多型(rs3767489)との組み合せは、前記表1の研究結果に基づきMDRで検討すると、training accuracy 0.5200, CV consisitency 10/10 (sign test p=0.022)であり、permutation testによるこの組み合せの有意差は、p=0.0080となった。また、前記MDRの結果に基づく前記多型の組み合せと高血圧とは、カイ二乗=11.02、p=0.012の有意な関係が認められ、MDRにより定義されたHigh risk多型のLow risk多型に対するオッズ比は、1.15(95%CI(1.049−1.265)、p=0.0031)であった。このように、本発明は、その他の態様として、本発明の高血圧の遺伝子マーカーを2以上組み合せて使用する方法を含む。
【0066】
次に、本発明のポリヌクレオチドについて説明する。本発明のポリヌクレオチドは、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPのタイピングのためにプローブ及びプライマーの少なくとも一方として使用するポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号1〜38、好ましくは、1〜37の塩基配列、その部分塩基配列、及びそれらの相補塩基配列からなるポリヌクレオチド、並びに、前記ポリヌクレオチドにおいて前記SNPの部分以外の1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加されたものであって前記ポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチドである。本発明のポリヌクレオチドは、本発明の高血圧の遺伝子マーカーを、例えば、前述したInvader(商標、Third Wave Technologies社)法、TaqMan(商標、Applied Biosystems社)法、マイクロアレイ法、シークエンス法等によりタイピングする場合のプローブやプライマーとして使用するものであり、その塩基配列は、当業者であれば、適宜、容易に設定できる。本発明のポリヌクレオチドの長さとしては、特に制限されず、例えば、10mer〜500mer、好ましくは15mer〜250mer、より好ましくは20mer〜100merであって、その配列の設定には、配列表の配列のほか、前記NM番号等のデータベースアクセッション番号で特定される本発明の高血圧の遺伝子マーカーの各遺伝子の配列も利用できる。また、本発明のポリヌクレオチドは、必要に応じて、SNPの多型部位を含むのであっても、SNPの多型部位を含まずその周辺配列からなるものであってもよい。
【0067】
本発明において、「ポリヌクレオチド」とは、特に限定されず、DNA、RNA、又は、従来公知のこれらの誘導体や類縁体等をいい、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。本発明のポリヌクレオチドにおいて、欠失、置換若しくは付加が可能な塩基数としては、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個であって、好ましくは、1〜5個、より好ましくは、1又は2個である。前記ストリンジェントな条件は、例えば、5×SSC+0.3%SDS中で熱変性した後、65℃で4〜16時間のハイブリダイゼーションし、常温の2×SSC+0.1%SDS、及び、2×SSCでそれぞれ5分間洗浄し、0.05×SSCでリンスすること等が挙げられる。本発明のポリヌクレオチドの製造方法としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により化学合成により製造してもよく、酵素的にインビボ又はインビトロで製造してもよい。また、本発明のポリヌクレオチドは、必要に応じ、例えば、蛍光物質及びクエンチャーが結合されていてもよい。
【0068】
本発明は、その他の態様として、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPのタイピングに使用するマイクロアレイであって、本発明のポリヌクレオチドのスポットが配置されたマイクロアレイである。前記マイクロアレイの製造方法は、特に制限されず、例えば、基板表面で直接プローブのポリヌクレオチドを合成する方法(オンチップ法)や、予め調製した本発明のプローブを基板表面に固定する方法等の従来公知の方法が挙げられる。前記オンチップ法としては、光照射で選択的に除去される保護基の使用と、半導体製造に利用されるフォトリソグラフィー技術及び固相合成技術とを組合せて、微小なマトリックスの所定の領域で選択的合成を行う方法が挙げられる。また、前記予め調製したプローブを用いる方法としては、プローブ溶解液をインクジェット法により基材に微小滴下して、化学的又は物理的に固定する方法が挙げられる。前記基材としては、特に制限されず、例えば、ガラス、金属、プラスチック等が挙げられる。
【0069】
本発明のポリヌクレオチドや本発明のマイクロアレイは、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPのタイピングキットに使用できる。本発明のタイピングキットは、前記本発明のポリヌクレオチド及び/又は本発明のマイクロアレイのほか、SNPのタイピング方法に応じて、適宜、試薬等を含むことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上、説明したとおり、本発明の高血圧の遺伝子マーカーは、SNPを含む遺伝子であって、その対立遺伝子として高血圧感受性遺伝子を含む遺伝子をマーカーとしているから、例えば、高血圧の予防・診断・治療の分野、オーダーメード医療の分野、高血圧治療薬の開発製造の分野で有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高血圧の遺伝子マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧は、例えば、冠動脈疾患、脳卒中、慢性腎疾患等の主要な危険因子であるため、高血圧の予防は、社会的・公衆衛生的に重要である。高血圧は、多因子疾患であり、その発症には、環境因子と遺伝因子との相互作用が重要な役割を果たすと考えられている。高血圧の環境因子としては、例えば、加齢、肥満、ストレス、塩分過摂取等が挙げられる。一方、高血圧の遺伝因子としては、高血圧感受性遺伝子が知られている。高血圧感受性遺伝子とは、前記遺伝子を保有することで高血圧を発症する危険率が上昇すること、すなわち、高血圧に罹患し易くなることを意味する遺伝因子である。そして、高血圧のような多因子疾患においては、その感受性遺伝子のほとんどは、一塩基多型(SNP)等の多型の対立遺伝子(アレル)であると考えられている(非特許文献1)。
【0003】
これまで、遺伝子多型を含む高血圧感受性遺伝子としては、アンギオテンシノーゲン、α−アデューシン、Gタンパク質β3サブユニット、β2アドレナリン受容体、グリコプロテインIa(GPIa)、ケモカイン受容体2(CCR2)、アポリポプロテインC(ApoC−III)、G−タンパク質β3サブユニット(GPβ3)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インスリン受容体サブストレート1(IRS−1)、グリコプロテインIbα(GPIbα)、C−タイプ・ナトリウム利尿ホルモン(CNP)、ヘム・オキシゲナーゼ1(HMOX−1)、SCNN1A等の各遺伝子が報告されている(特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】特開2004−222503号公報
【特許文献2】特開2004−113094号公報
【特許文献3】特開2004−33051号公報
【特許文献4】特開2004−24125号公報
【非特許文献1】徳永勝士、加藤順三、『遺伝子多型・変異と疾患感受性』、日産婦誌53巻9号、311−314、2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの高血圧感受性遺伝子だけでは、高血圧感受性経路の構成や説明には不十分である。高血圧の病態を明らかにするためには、さらに多くの高血圧感受性遺伝子が明らかにされることが望まれている。そこで、本発明は、SNPを含む遺伝子からなる高血圧の遺伝子マーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の高血圧の遺伝子マーカーは、SNPを含む遺伝子からなる高血圧の遺伝子マーカーであって、前記遺伝子が、CYP17遺伝子、EXOSC3遺伝子、ACCN1遺伝子、KCNMB4遺伝子、KCNIP2遺伝子、ATP2A3遺伝子、RAC2遺伝子、CD3EAP遺伝子、CALCR遺伝子、ATP10D遺伝子、GNA14遺伝子、PTHR1遺伝子、ATP2B1遺伝子、HLA−DMB遺伝子、SLC13A1遺伝子、SLC2A11遺伝子、GNAI2遺伝子、CACNA2D2遺伝子、PRKWNK1遺伝子、SLC22A7遺伝子、KCNN1遺伝子、SLC21A6遺伝子、CACNA1E遺伝子、SLC26A8遺伝子、ERCC1遺伝子、DLGAP2遺伝子、COL4A1遺伝子、GUCA1C遺伝子、ATP10C遺伝子、HCN4遺伝子、PTPRT遺伝子、FGF2遺伝子、CHGA遺伝子、PPP1R1B遺伝子、ADORA1遺伝子、RGS19IP1遺伝子、及び、RGS20遺伝子からなる群から選択される遺伝子であり、前記SNPが、それぞれ、米国バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information;NCBI)SNPデータベースのrs番号rs6162、rs7158、rs28933、rs710652、rs755381、rs887387、rs929023、rs967591、rs1042138、rs1058793、rs1801258、rs1869872、rs2070759、rs2071556、rs2140516、rs2236620、rs2236943、rs2236957、rs2255390、rs2270860、rs2278993、rs2291075、rs2293990、rs2295852、rs2298881、rs2301963、rs2305080、rs2715709、rs3736186、rs3743496、rs3746539、rs3747676、rs3759717、rs3764352、rs3766554、rs3815715、及び、rs3816772で特定されるSNPである。
【発明の効果】
【0006】
本発明者らは、高血圧の新規な感受性遺伝子を探索するべく鋭意研究を重ね、プロモーター領域にあるSNP又はアミノ酸置換を伴うSNPを含む300を超える候補遺伝子について、約750人ずつのケースコントロール研究を行った。その結果、高血圧罹患者(ケース)群と正常血圧対照者(コントロール)群とで比較した場合に、対立遺伝子頻度、優性モデル、劣性モデル、及び、遺伝子型頻度の少なくとも1つにおいて有意差がある38の陽性遺伝子を見出し、本発明に到達した。
【0007】
本発明の高血圧の遺伝子マーカーの遺伝子は、SNPの対立遺伝子(アレル)として高血圧感受性遺伝子を含むので、前記遺伝子マーカーのSNPをタイピングすることで高血圧の罹患し易さを判定することができる。また、本発明の高血圧の遺伝子マーカーを複数組み合せることで、高血圧の罹患し易さの検出力を高めることができる。
【0008】
さらに、本発明の高血圧の遺伝子マーカーの遺伝子は、血圧調節系の構成要因と関連性がある遺伝子であるから、例えば、互いに異なる本発明の高血圧の遺伝子マーカーを機能的に結びつけることが可能であり、これにより、高血圧の遺伝因子間の相互作用が解明でき、高血圧感受性経路を明らかにすることができる。さらにまた、本発明の高血圧の遺伝子マーカーによれば、例えば、前述のようにして明らかになった高血圧感受性経路に基づき高血圧の病態を明らかにすることができ、これにより、高血圧治療薬の開発ターゲットの特定や高血圧のオーダーメード医療が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の高血圧の遺伝子マーカーの使用方法は、被検試料を準備する準備工程と、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPについて高血圧の罹患し易さを設定する設定工程と、前記被検試料について前記遺伝子マーカーのSNPをタイピングをするタイピング工程と、前記設定工程の設定及び前記タイピング工程の結果に基づき高血圧の罹患し易さを判定する判定工程とを含む高血圧の遺伝子マーカーの使用方法である。
【0010】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPのタイピングのためにプローブ及びプライマーの少なくとも一方として使用するポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号1〜37の塩基配列、その部分塩基配列、及びそれらの相補塩基配列からなるポリヌクレオチド、並びに、前記ポリヌクレオチドにおいて前記SNPの部分以外の1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加されたものであって前記ポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチドである。
【0011】
本発明のマイクロアレイは、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPのタイピングに使用するマイクロアレイであって、本発明のポリヌクレオチドのスポットが配置されたマイクロアレイである。
【0012】
本発明のタイピングキットは、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPのタイピングキットであって、本発明のポリヌクレオチド及び本発明のマイクロアレイの少なくとも一方を含むタイピングキットである。
【0013】
本発明の高血圧の遺伝子マーカーについて説明する。
【0014】
本発明において、「高血圧の遺伝子マーカー」とは、高血圧に関する遺伝因子の目印(マーカー)となる遺伝子をいう。前記遺伝子は、SNPを含み、その対立遺伝子として、高血圧感受性遺伝子を含む。
【0015】
本発明において、「高血圧」とは、循環系障害やその他の障害結果を誘発する恐れのあるレベルにまで全身の動脈圧が一過性に又は持続的に高まった状態をいい、その定義は特に限定されないが、例えば、収縮血圧が140mmHg以上、拡張血圧が90mmHg以上の状態をいう。また、本発明において、「高血圧」とは、好ましくは、本態性高血圧である。
【0016】
一塩基多型(SNP)とは、一般的には、遺伝子の塩基配列が一ヶ所だけ異なる状態及びその部位をいう。また、多型とは、一般的には、母集団中1%以上の頻度で存在する2以上の対立遺伝子をいう。本発明において、「SNP」は、好ましくは、公共データベースに登録されたSNPであって、そのリファレンス番号から特定できるSNPである。前記公共データベースとしては、例えば、NCBI(NLM、NIH)のSNPデータベースや、IMS−JST(東京大学、科学技術振興財団)のJSNP(登録商標)データベース等が挙げられる。本発明におけるSNPは、前記公共データベースのリファレンス番号であるrs番号(NCBI SNPデータベース)及びIMS−JST番号(JSNP(登録商標)データベース)により特定できる。
【0017】
本発明において「高血圧感受性遺伝子」とは、前述のとおり、この遺伝子を保有することにより、それ単独で、又は、他の環境因子や遺伝因子との相互作用により、前記保有者の高血圧の易罹患性を高める遺伝子をいう。また、本発明の高血圧の遺伝子マーカーの遺伝子は、SNPの対立遺伝子(アレル)として高血圧感受性遺伝子を含む。
【0018】
本発明者らの鋭意研究により見出された高血圧感受性遺伝子となる遺伝子及びそのSNPを下記表1にまとめて示す。同表において、「遺伝子記号」は、前記高血圧感受性遺伝子の遺伝子記号であり、「RS#」及び「IMS−JST#」は、それぞれ、NCBI SNPデータベース(dbSNP BUILD124)及びJSNP(登録商標)データベース(IMS−JST、2005年9月7日第25回公開)におけるSNPのリファレンス番号であり、「SeqID」とは、配列表の配列番号のことをいう。前記配列表には、前記NCBI SNPデータベースに登録されている前記SNPの多型部位及びその周辺の塩基配列(FASTA形式)を記載する。
【0019】
下記表1には、また、本発明者らが行ったケースコントロール研究の結果の一例を併せて示す。同表において、「遺伝子多型」の欄には、SNPの多型部位の塩基で遺伝子多型を示し、「アレル」の欄には、対立遺伝子(アレル)頻度について高血圧罹患者(ケース)群と正常血圧対照者(コントロール)群とで比較し、2×2分割表で検定したオッズ比及びP値を示す。前記対立遺伝子頻度とは、遺伝子多型頻度をAA、AB、BBとした場合に、Aアレル頻度をAA×2+ABとし、Bアレル頻度をBB×2+ABとして、それぞれ換算したものである。また、同表において、「A優性」及び「A劣性」の欄には、それぞれ、Aアレルの優性モデル(AA対AB+BB)及びAアレルの劣性モデル(AA+AB対BB)についてケース群とコントロール群とで比較し、2×2分割表で検定したオッズ比及びP値を示し、「遺伝子型」の欄には、遺伝子多型頻度(AA、AB、BB)についてケース群とコントロール群とで比較し、2×3分割表で検定したP値を示す。下記表1に示すとおり、同表の高血圧感受性遺伝子は、前記対立遺伝子頻度、優性モデル、劣性モデル、及び、遺伝子型頻度の少なくとも1つにおいて有意(P<0.05)である。
【0020】
【表1】
【0021】
次に、本発明の遺伝子マーカーを具体的に説明する。なお、各遺伝子におけるNM番号(NM_○○○○○○)は、各遺伝子のmRNA配列を特定するNCBIのヌクレオチドデータベースのアクセッション番号である。
【0022】
本発明の第1の高血圧の遺伝子マーカーは、G/A多型のSNP(rs6162)を含むCYP17(cytochrome P450, subfamily XVII;シトクロムP450サブファミリー17(steroid 17−alpha−hydroxylase;ステロイド17αヒドロキシラーゼ), adrenal hyperplasia)遺伝子(NM_000102)からなる遺伝子マーカーである。前記CYP17遺伝子G/A多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、及び、遺伝子型において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレル又はGG型を保有している場合には、Aアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0023】
本発明の第2の高血圧の遺伝子マーカーは、T/C多型のSNP(rs7158)を含むEXOSC3(exosome component 3)遺伝子(NM_016042)からなる遺伝子マーカーである。前記EXOSC3遺伝子T/C多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、及び、A劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Cアレル又はCC型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0024】
本発明の第3の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs28933)を含むACCN1(amiloride−sensitive cation channel 1;アミロライド感受性カチオンチャネル1, neuronal (degenerin))遺伝子(NM_183377、NM_001094)からなる遺伝子マーカーである。前記ACCN1遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、A劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレル又はGG型を保有している場合には、Aアレル又はAA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0025】
本発明の第4の高血圧の遺伝子マーカーは、T/G多型のSNP(rs710652)を含むKCNMB4(potassium large conductance calcium−activated channel, subfamily M, beta member 4)遺伝子(NM_014505)からなる遺伝子マーカーである。前記KCNMB4遺伝子T/G多型は、上記表1におけるA劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Gアレル又はGG型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0026】
本発明の第5の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs755381)を含むKCNIP2(Kv channel interacting protein 2)遺伝子(NM_173197、NM_014591、NM_173342、NM_173191、NM_173192、NM_173193、NM_173194、NM_173195)からなる遺伝子マーカーである。前記KCNIP2遺伝子A/G多型は、上記表1におけるA劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、GG型を保有している場合には、Aアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0027】
本発明の第6の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs887387)を含むATP2A3(ATPase, Ca++ transporting, ubiquitous)遺伝子(NM_005173、NM_174953、NM_174954、NM_174955、NM_174957、NM_174958)からなる遺伝子マーカーである。前記ATP2A3遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレル又はGG型を保有している場合には、Aアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0028】
本発明の第7の高血圧の遺伝子マーカーは、C/T多型のSNP(rs929023)を含むRAC2(ras−related C3 botulinum toxin substrate 2 (rho family, small GTP binding protein Rac2))遺伝子(NM_002872)からなる遺伝子マーカーである。前記RAC2遺伝子C/T多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、及び、A優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Cアレル又はCC型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0029】
本発明の第8の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs967591)を含むCD3EAP(Homo sapiens CD3E antigen, epsilon polypeptide associated protein)遺伝子(NM_012099)からなる遺伝子マーカーである。前記CD3EAP遺伝子A/G多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレルを保有している場合には、AA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0030】
本発明の第9の高血圧の遺伝子マーカーは、T/C多型のSNP(rs1042138)を含むCALCR(calcitonin receptor;カルシトニン受容体)遺伝子(NM_001742)からなる遺伝子マーカーである。前記CALCR遺伝子T/C多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、TT型を保有している場合には、Cアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0031】
本発明の第10の高血圧の遺伝子マーカーは、G/A多型のSNP(rs1058793)を含むATP10D(ATPase, Class V, type 10D)遺伝子(NM_020453)からなる遺伝子マーカーである。前記ATP10D遺伝子G/A多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、及び、A優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレルを保有している場合には、Gアレル又はGG型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0032】
本発明の第11の高血圧の遺伝子マーカーは、G/A多型のSNP(rs1801258)を含むGNA14(guanine nucleotide binding protein (G protein), alpha 14)遺伝子(NM_004297)からなる遺伝子マーカーである。前記GNA14遺伝子G/A多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレルを保有している場合には、Aアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0033】
本発明の第12の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs1869872)を含むPTHR1(parathyroid hormone receptor 1;副甲状腺ホルモン受容体1)遺伝子(NM_000316)からなる遺伝子マーカーである。前記PTHR1遺伝子A/G多型は、上記表1におけるA劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレルを保有している場合には、GG型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0034】
本発明の第13の高血圧の遺伝子マーカーは、A/C多型のSNP(rs2070759)を含むATP2B1(ATPase, Ca++ transporting, plasma membrane 1)遺伝子(NM_001682)からなる遺伝子マーカーである。前記ATP2B1遺伝子A/C多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、及び、A劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレルを保有している場合には、Cアレル又はCC型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0035】
本発明の第14の高血圧の遺伝子マーカーは、A/C多型のSNP(rs2071556)を含むHLA−DMB(major histocompatibility complex, class II, DM beta;主要組織適合複合体クラスII、DMβ)遺伝子(NM_002118)からなる遺伝子マーカーである。前記HLA−DMB遺伝子A/C多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Cアレルを保有している場合には、Aアレル又はAA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0036】
本発明の第15の高血圧の遺伝子マーカーは、T/C多型のSNP(rs2140516)を含むSLC13A1(solute carrier family 13 (sodium/sulfate symporters), member 1)遺伝子(NM_022444)からなる遺伝子マーカーである。前記SLC13A1遺伝子T/C多型は、上記表1におけるA劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、CC型を保有している場合には、Tアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0037】
本発明の第16の高血圧の遺伝子マーカーは、T/C多型のSNP(rs2236620)を含むSLC2A11(solute carrier family 2 (facilitated glucose transporter), member 11)遺伝子(NM_030807)からなる遺伝子マーカーである。前記SLC2A11遺伝子T/C多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Cアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0038】
本発明の第17の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs2236943)を含むGNAI2(guanine nucleotide binding protein (G protein), alpha inhibiting activity polypeptide 2;Gタンパク質α阻害活性ポリペプチド2)遺伝子(NM_002070)からなる遺伝子マーカーである。前記GNAI2遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、A劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレル又はAA型を保有している場合には、Gアレル又はGG型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0039】
本発明の第18の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs2236957)を含むCACNA2D2(calcium channel, voltage−dependent, alpha 2/delta subunit 2)遺伝子(NM_006030)からなる遺伝子マーカーである。前記CACNA2D2遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレルを保有している場合には、Aアレル又はAA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0040】
本発明の第19の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs2255390)を含むPRKWNK1(protein kinase, lysine deficient 1)遺伝子(NM_018979)からなる遺伝子マーカーである。前記PRKWNK1遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレル又はAA型を保有している場合には、Gアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0041】
本発明の第20の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs2270860)を含むSLC22A7(solute carrier family 22 (organic anion transporter), member 7)遺伝子(NM_153320、NM_006672)からなる遺伝子マーカーである。前記SLC22A7遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレルを保有している場合には、Gアレル又はGG型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0042】
本発明の第21の高血圧の遺伝子マーカーは、G/A多型のSNP(rs2278993)を含むKCNN1(potassium intermediate/small conductance calcium−activated channel, subfamily N, member 1)遺伝子(NM_002248)からなる遺伝子マーカーである。前記KCNN1遺伝子G/A多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、及び、A優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレル又はGG型を保有している場合には、Aアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0043】
本発明の第22の高血圧の遺伝子マーカーは、T/C多型のSNP(rs2291075)を含むSLC21A6(solute carrier family 21 (organic anion transporter), member 6)遺伝子(NM_006446)からなる遺伝子マーカーである。前記SLC21A6遺伝子T/C多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、TT型を保有している場合には、Cアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0044】
本発明の第23の高血圧の遺伝子マーカーは、A/T多型のSNP(rs2293990)を含むCACNA1E(calcium channel, voltage−dependent, alpha 1E subunit)遺伝子(NM_000721)からなる遺伝子マーカーである。前記CACNA1E遺伝子A/T多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレルを保有している場合には、Tアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0045】
本発明の第24の高血圧の遺伝子マーカーは、C/T多型のSNP(rs2295852)を含むSLC26A8(solute carrier family 26, member 8)遺伝子(NM_052961、NM_138718)からなる遺伝子マーカーである。前記SLC26A8遺伝子C/T多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Cアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0046】
本発明の第25の高血圧の遺伝子マーカーは、A/C多型のSNP(rs2298881)を含むERCC1(excision repair cross−complementing rodent repair deficiency, complementation group 1 (includes overlapping antisense sequence))遺伝子(NM_001983)からなる遺伝子マーカーである。前記ERCC1遺伝子A/C多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Cアレルを保有している場合には、AA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0047】
本発明の第26の高血圧の遺伝子マーカーは、A/C多型のSNP(rs2301963)を含むDLGAP2(discs, large (Drosophila) homolog−associated protein 2)遺伝子(NM_004745)からなる遺伝子マーカーである。前記DLGAP2遺伝子A/C多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Cアレルを保有している場合には、Aアレル又はAA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0048】
本発明の第27の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs2305080)を含むCOL4A1(collagen, type IV, alpha 1;コラーゲン、タイプ4、α1)遺伝子(NM_001845)からなる遺伝子マーカーである。前記COL4A1遺伝子A/G多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレルを保有している場合には、Aアレル又はAA型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0049】
本発明の第28の高血圧の遺伝子マーカーは、C/T多型のSNP(rs2715709)を含むGUCA1C(guanylate cyclase activator 1C;グアニル酸シクラーゼアクチベータ1C)遺伝子(NM_005459)からなる遺伝子マーカーである。前記GUCA1C遺伝子C/T多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、及び、A劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Cアレル又はCC型を保有している場合には、Tアレル又はTT型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0050】
本発明の第29の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs3736186)を含むATP10C(ATPase, Class V, type 10C)遺伝子(NM_024490)からなる遺伝子マーカーである。前記ATP10C遺伝子A/G多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、AA型を保有している場合には、Gアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0051】
本発明の第30の高血圧の遺伝子マーカーは、G/T多型のSNP(rs3743496)を含むHCN4(hyperpolarization activated cyclic nucleotide−gated potassium channel 4)遺伝子(NM_005477)からなる遺伝子マーカーである。前記HCN4遺伝子G/T多型は、上記表1におけるA劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、TT型を保有している場合には、Gアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0052】
本発明の第31の高血圧の遺伝子マーカーは、C/T多型のSNP(rs3746539)を含むPTPRT(protein tyrosine phosphatase, receptor type, T)遺伝子(NM_133170、NM_007050)からなる遺伝子マーカーである。前記PTPRT遺伝子C/T多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Cアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0053】
本発明の第32の高血圧の遺伝子マーカーは、T/C多型のSNP(rs3747676)を含むFGF2(fibroblast growth factor 2 (basic);線維芽細胞成長因子2)遺伝子(NM_198041、NM_007083、NM_002006)からなる遺伝子マーカーである。前記FGF2遺伝子T/C多型は、上記表1におけるA劣性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、CC型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0054】
本発明の第33の高血圧の遺伝子マーカーは、C/T多型のSNP(rs3759717)を含むCHGA(chromogranin A (parathyroid secretory protein 1);クロモグラニンA、副甲状腺分泌タンパク質1)遺伝子(例えば、NT_026437参照)からなる遺伝子マーカーである。前記CHGA遺伝子C/T多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、CC型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0055】
本発明の第34の高血圧の遺伝子マーカーは、G/A多型のSNP(rs3764352)を含むPPP1R1B(protein phosphatase 1 regulatory subunit 1B)遺伝子(NM_181505、NM_032192)からなる遺伝子マーカーである。前記PPP1R1B遺伝子G/A多型は、上記表1における対立遺伝子頻度、A優性モデル、A劣性モデル、及び、遺伝子型頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレル又はAA型を保有している場合には、Gアレル又はGG型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0056】
本発明の第35の高血圧の遺伝子マーカーは、C/T多型のSNP(rs3766554)を含むADORA1(adenosine A1 receptor;アデノシンA1受容体)遺伝子(NM_000674)からなる遺伝子マーカーである。前記ADORA1遺伝子C/T多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Tアレルを保有している場合には、Cアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0057】
本発明の第36の高血圧の遺伝子マーカーは、A/G多型のSNP(rs3815715)を含むRGS19IP1(regulator of G−protein signalling 19 interacting protein 1)遺伝子(NM_005716、NM_202467、NM_202468、NM_202469、NM_202470、NM_202494)からなる遺伝子マーカーである。前記RGS19IP1遺伝子A/G多型は、上記表1における対立遺伝子頻度において有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Aアレルを保有している場合には、Gアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0058】
本発明の第37の高血圧の遺伝子マーカーは、C/G多型のSNP(rs3816772)を含むRGS20(regulator of G−protein signalling 20)遺伝子(NM_003702、NM_170587)からなる遺伝子マーカーである。前記RGS20遺伝子C/G多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1未満であるから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、Gアレルを保有している場合には、CC型保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0059】
本発明は、また、第38の高血圧の遺伝子マーカーとして、A/G多型のSNP(rs3767489)を含むRGS2(regulator of G−protein signalling 2, 24kD)遺伝子(例えば、NT_004487参照)からなる遺伝子マーカーを含んでもよい。前記RGS2遺伝子A/G多型は、上記表1におけるA優性モデルにおいて有意であり、オッズ比が1を超えているから、例えば、前記遺伝子マーカーのSNPのタイピングの結果、AA型を保有している場合には、Gアレル保有者よりも高血圧に罹患し易いと判定できる。
【0060】
このように、本発明の高血圧の遺伝子マーカーによれば、被検者について前記遺伝子マーカーのSNPをタイピングすることにより、被検者のSNPが高血圧に罹患し易いものであるかどうかについての判定をすることができる。したがって、本発明は、その他の態様において、高血圧の遺伝子マーカーの使用方法であって、被検試料を準備する準備工程と、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPについて、それぞれ、高血圧の罹患し易さを設定する設定工程と、前記被検試料について前記遺伝子マーカーのSNPをタイピングするタイピング工程と、前記設定工程の設定及び前記タイピング工程の結果に基づき高血圧の罹患し易さを判定する判定工程とを含む高血圧の遺伝子マーカーの使用方法である。
【0061】
まず、前記準備工程において、被検試料を準備する。前記被検試料は、被検者の核酸若しくはゲノムDNAを含むもの又は核酸若しくはゲノムDNAであって、例えば、血液や体液等の生体試料や、そこから調製された核酸やゲノムDNAが挙げられる。生体試料の採取方法、採取部位等は、特に制限されず、また、核酸やゲノムDNAの調製方法も従来公知の方法を適用でき、特に制限されない。
【0062】
次に、前記設定工程において、高血圧の罹患し易さを設定する。前記設定は、例えば、上記表1のオッズ比を参照して行うことができるが、前記設定方法はこれに限定されず、例えば、本発明の高血圧の遺伝子マーカーについてメタアナリシスを行って得られるオッズ比や、本発明の高血圧の遺伝子マーカーについてコホート研究を行って得られる相対危険度(リスク比)、その他の従来公知の統計手法を用いて統計学的に処理した値を使用することができる。あらかじめ設定されたオッズ比等を使用する場合には、前記設定工程は、省略してもよい。
【0063】
そして、前記タイピング工程において、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPをタイピングする。本発明において、「遺伝子マーカーのSNPのタイピング」とは、前記遺伝子マーカーの遺伝子に含まれるSNPをタイピングすることをいい、本発明において、「SNPのタイピング」とは、ゲノム上の位置が明らかとなっている前記SNPの多型部位がどの塩基であるかを同定することであって、例えば、AとGとから構成されるSNPを対立遺伝子で見た場合、その被検試料の被検者の遺伝子型が、AA、AG、GGのいずれであるかを同定することをいう。SNPのタイピング方法は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができ、例えば、Invader(商標、Third Wave Technologies社)法、TaqMan(商標、Applied Biosystems社)法、MALDI−TOF質量分析法、マイクロアレイ法、シークエンス法等が挙げられる。本発明の高血圧の遺伝子マーカーについては、既にSNPの多型部位及びその周辺の配列が決定されているから、当業者であれば、例えば、データベースの配列や配列表の配列番号1〜38の配列等に基づき、適宜、SNPのタイピングを行うことができる。
【0064】
最後に、前記判定工程において、前記設定工程の設定及び前記タイピング工程の結果に基づき高血圧の罹患し易さを判定する。これにより、例えば、高血圧の発症リスクを診断したり、生活習慣を改善することによる高血圧の予防ができる。また、高血圧の罹患し易さを、高血圧治療薬の感受性の違いと考えることができるから、例えば、本発明の高血圧の遺伝子マーカーの遺伝子多型に応じた高血圧の治療薬の開発・製造や、投薬方法が可能となる。したがって、本発明は、その他の態様として、本発明の高血圧の遺伝子マーカーを利用した高血圧の発症リスク診断方法、高血圧の予防方法、高血圧治療薬の感受性判定方法、高血圧治療薬の投与方法及び高血圧の治療方法、並びに、これらの方法における本発明の高血圧の遺伝子マーカーの使用を含む。
【0065】
本発明の高血圧の遺伝子マーカーは、単独での使用のほか、2以上の組み合せとして使用し、累積的又は相乗的に検出力を高めて高血圧の罹患し易さを判定してもよい。本発明の高血圧の遺伝子マーカーの遺伝子は、前述のとおり、主要な血圧調節系の構成要因と推定されるから、機能的に結びつけて使用することができる。あるいは、高血圧感受性経路を解明し、その感受性経路に応じて組み合せを決定することもできる。また、本発明の遺伝子マーカー同士の相互作用は、例えば、ノンパラメトリック法による非線形の交互作用を検出するMDR(Multifactor Dimentionality Reduction)等の統計手法を利用して検出することができる。その一例を以下に説明する。例えば、前記GNAI2遺伝子A/G多型(rs2236943)と前記RGS2遺伝子A/G多型(rs3767489)との組み合せは、前記表1の研究結果に基づきMDRで検討すると、training accuracy 0.5200, CV consisitency 10/10 (sign test p=0.022)であり、permutation testによるこの組み合せの有意差は、p=0.0080となった。また、前記MDRの結果に基づく前記多型の組み合せと高血圧とは、カイ二乗=11.02、p=0.012の有意な関係が認められ、MDRにより定義されたHigh risk多型のLow risk多型に対するオッズ比は、1.15(95%CI(1.049−1.265)、p=0.0031)であった。このように、本発明は、その他の態様として、本発明の高血圧の遺伝子マーカーを2以上組み合せて使用する方法を含む。
【0066】
次に、本発明のポリヌクレオチドについて説明する。本発明のポリヌクレオチドは、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPのタイピングのためにプローブ及びプライマーの少なくとも一方として使用するポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号1〜38、好ましくは、1〜37の塩基配列、その部分塩基配列、及びそれらの相補塩基配列からなるポリヌクレオチド、並びに、前記ポリヌクレオチドにおいて前記SNPの部分以外の1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加されたものであって前記ポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチドである。本発明のポリヌクレオチドは、本発明の高血圧の遺伝子マーカーを、例えば、前述したInvader(商標、Third Wave Technologies社)法、TaqMan(商標、Applied Biosystems社)法、マイクロアレイ法、シークエンス法等によりタイピングする場合のプローブやプライマーとして使用するものであり、その塩基配列は、当業者であれば、適宜、容易に設定できる。本発明のポリヌクレオチドの長さとしては、特に制限されず、例えば、10mer〜500mer、好ましくは15mer〜250mer、より好ましくは20mer〜100merであって、その配列の設定には、配列表の配列のほか、前記NM番号等のデータベースアクセッション番号で特定される本発明の高血圧の遺伝子マーカーの各遺伝子の配列も利用できる。また、本発明のポリヌクレオチドは、必要に応じて、SNPの多型部位を含むのであっても、SNPの多型部位を含まずその周辺配列からなるものであってもよい。
【0067】
本発明において、「ポリヌクレオチド」とは、特に限定されず、DNA、RNA、又は、従来公知のこれらの誘導体や類縁体等をいい、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。本発明のポリヌクレオチドにおいて、欠失、置換若しくは付加が可能な塩基数としては、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個であって、好ましくは、1〜5個、より好ましくは、1又は2個である。前記ストリンジェントな条件は、例えば、5×SSC+0.3%SDS中で熱変性した後、65℃で4〜16時間のハイブリダイゼーションし、常温の2×SSC+0.1%SDS、及び、2×SSCでそれぞれ5分間洗浄し、0.05×SSCでリンスすること等が挙げられる。本発明のポリヌクレオチドの製造方法としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により化学合成により製造してもよく、酵素的にインビボ又はインビトロで製造してもよい。また、本発明のポリヌクレオチドは、必要に応じ、例えば、蛍光物質及びクエンチャーが結合されていてもよい。
【0068】
本発明は、その他の態様として、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPのタイピングに使用するマイクロアレイであって、本発明のポリヌクレオチドのスポットが配置されたマイクロアレイである。前記マイクロアレイの製造方法は、特に制限されず、例えば、基板表面で直接プローブのポリヌクレオチドを合成する方法(オンチップ法)や、予め調製した本発明のプローブを基板表面に固定する方法等の従来公知の方法が挙げられる。前記オンチップ法としては、光照射で選択的に除去される保護基の使用と、半導体製造に利用されるフォトリソグラフィー技術及び固相合成技術とを組合せて、微小なマトリックスの所定の領域で選択的合成を行う方法が挙げられる。また、前記予め調製したプローブを用いる方法としては、プローブ溶解液をインクジェット法により基材に微小滴下して、化学的又は物理的に固定する方法が挙げられる。前記基材としては、特に制限されず、例えば、ガラス、金属、プラスチック等が挙げられる。
【0069】
本発明のポリヌクレオチドや本発明のマイクロアレイは、本発明の高血圧の遺伝子マーカーのSNPのタイピングキットに使用できる。本発明のタイピングキットは、前記本発明のポリヌクレオチド及び/又は本発明のマイクロアレイのほか、SNPのタイピング方法に応じて、適宜、試薬等を含むことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上、説明したとおり、本発明の高血圧の遺伝子マーカーは、SNPを含む遺伝子であって、その対立遺伝子として高血圧感受性遺伝子を含む遺伝子をマーカーとしているから、例えば、高血圧の予防・診断・治療の分野、オーダーメード医療の分野、高血圧治療薬の開発製造の分野で有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一塩基多型(SNP)を含む遺伝子からなる高血圧の遺伝子マーカーであって、
前記遺伝子が、CYP17遺伝子、EXOSC3遺伝子、ACCN1遺伝子、KCNMB4遺伝子、KCNIP2遺伝子、ATP2A3遺伝子、RAC2遺伝子、CD3EAP遺伝子、CALCR遺伝子、ATP10D遺伝子、GNA14遺伝子、PTHR1遺伝子、ATP2B1遺伝子、HLA−DMB遺伝子、SLC13A1遺伝子、SLC2A11遺伝子、GNAI2遺伝子、CACNA2D2遺伝子、PRKWNK1遺伝子、SLC22A7遺伝子、KCNN1遺伝子、SLC21A6遺伝子、CACNA1E遺伝子、SLC26A8遺伝子、ERCC1遺伝子、DLGAP2遺伝子、COL4A1遺伝子、GUCA1C遺伝子、ATP10C遺伝子、HCN4遺伝子、PTPRT遺伝子、FGF2遺伝子、CHGA遺伝子、PPP1R1B遺伝子、ADORA1遺伝子、RGS19IP1遺伝子、及び、RGS20遺伝子からなる群から選択される遺伝子であり、
前記SNPが、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)SNPデータベースのrs番号rs6162、rs7158、rs28933、rs710652、rs755381、rs887387、rs929023、rs967591、rs1042138、rs1058793、rs1801258、rs1869872、rs2070759、rs2071556、rs2140516、rs2236620、rs2236943、rs2236957、rs2255390、rs2270860、rs2278993、rs2291075、rs2293990、rs2295852、rs2298881、rs2301963、rs2305080、rs2715709、rs3736186、rs3743496、rs3746539、rs3747676、rs3759717、rs3764352、rs3766554、rs3815715、及び、rs3816772で、それぞれ、特定されるSNPである高血圧の遺伝子マーカー。
【請求項2】
高血圧の遺伝子マーカーの使用方法であって、被検試料を準備する準備工程と、請求項1記載の高血圧の遺伝子マーカーのSNPについて高血圧の罹患し易さを設定する設定工程と、前記被検試料について前記遺伝子マーカーのSNPをタイピングするタイピング工程と、前記設定工程の設定及び前記タイピング工程の結果に基づき高血圧の罹患し易さを判定する判定工程とを含む高血圧の遺伝子マーカーの使用方法。
【請求項3】
SNPのタイピングのためにプローブ及びプライマーの少なくとも一方として使用するポリヌクレオチドであって、前記SNPが、請求項1記載の高血圧の遺伝子マーカーのSNPであり、前記ポリヌクレオチドが、配列表の配列番号1〜37の塩基配列、その部分配列、及びそれらの相補配列からなるポリヌクレオチド、並びに、前記ポリヌクレオチドにおいて、前記SNPの部分以外の1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加されたものであって前記ポリヌクレオチドと相補的な配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチド。
【請求項4】
SNPのタイピングに使用するマイクロアレイであって、前記SNPが、請求項1記載の高血圧の遺伝子マーカーのSNPであり、請求項3記載のポリヌクレオチドのスポットが配置されたマイクロアレイ。
【請求項5】
SNPのタイピングキットであって、前記SNPが、請求項1記載の高血圧の遺伝子マーカーのSNPであり、請求項3記載のポリヌクレオチド及び請求項4記載のマイクロアレイの少なくとも一方を含むタイピングキット。
【請求項1】
一塩基多型(SNP)を含む遺伝子からなる高血圧の遺伝子マーカーであって、
前記遺伝子が、CYP17遺伝子、EXOSC3遺伝子、ACCN1遺伝子、KCNMB4遺伝子、KCNIP2遺伝子、ATP2A3遺伝子、RAC2遺伝子、CD3EAP遺伝子、CALCR遺伝子、ATP10D遺伝子、GNA14遺伝子、PTHR1遺伝子、ATP2B1遺伝子、HLA−DMB遺伝子、SLC13A1遺伝子、SLC2A11遺伝子、GNAI2遺伝子、CACNA2D2遺伝子、PRKWNK1遺伝子、SLC22A7遺伝子、KCNN1遺伝子、SLC21A6遺伝子、CACNA1E遺伝子、SLC26A8遺伝子、ERCC1遺伝子、DLGAP2遺伝子、COL4A1遺伝子、GUCA1C遺伝子、ATP10C遺伝子、HCN4遺伝子、PTPRT遺伝子、FGF2遺伝子、CHGA遺伝子、PPP1R1B遺伝子、ADORA1遺伝子、RGS19IP1遺伝子、及び、RGS20遺伝子からなる群から選択される遺伝子であり、
前記SNPが、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)SNPデータベースのrs番号rs6162、rs7158、rs28933、rs710652、rs755381、rs887387、rs929023、rs967591、rs1042138、rs1058793、rs1801258、rs1869872、rs2070759、rs2071556、rs2140516、rs2236620、rs2236943、rs2236957、rs2255390、rs2270860、rs2278993、rs2291075、rs2293990、rs2295852、rs2298881、rs2301963、rs2305080、rs2715709、rs3736186、rs3743496、rs3746539、rs3747676、rs3759717、rs3764352、rs3766554、rs3815715、及び、rs3816772で、それぞれ、特定されるSNPである高血圧の遺伝子マーカー。
【請求項2】
高血圧の遺伝子マーカーの使用方法であって、被検試料を準備する準備工程と、請求項1記載の高血圧の遺伝子マーカーのSNPについて高血圧の罹患し易さを設定する設定工程と、前記被検試料について前記遺伝子マーカーのSNPをタイピングするタイピング工程と、前記設定工程の設定及び前記タイピング工程の結果に基づき高血圧の罹患し易さを判定する判定工程とを含む高血圧の遺伝子マーカーの使用方法。
【請求項3】
SNPのタイピングのためにプローブ及びプライマーの少なくとも一方として使用するポリヌクレオチドであって、前記SNPが、請求項1記載の高血圧の遺伝子マーカーのSNPであり、前記ポリヌクレオチドが、配列表の配列番号1〜37の塩基配列、その部分配列、及びそれらの相補配列からなるポリヌクレオチド、並びに、前記ポリヌクレオチドにおいて、前記SNPの部分以外の1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加されたものであって前記ポリヌクレオチドと相補的な配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチド。
【請求項4】
SNPのタイピングに使用するマイクロアレイであって、前記SNPが、請求項1記載の高血圧の遺伝子マーカーのSNPであり、請求項3記載のポリヌクレオチドのスポットが配置されたマイクロアレイ。
【請求項5】
SNPのタイピングキットであって、前記SNPが、請求項1記載の高血圧の遺伝子マーカーのSNPであり、請求項3記載のポリヌクレオチド及び請求項4記載のマイクロアレイの少なくとも一方を含むタイピングキット。
【公開番号】特開2007−143504(P2007−143504A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344267(P2005−344267)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(504177284)国立大学法人滋賀医科大学 (41)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(505155528)公立大学法人横浜市立大学 (101)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(504177284)国立大学法人滋賀医科大学 (41)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(505155528)公立大学法人横浜市立大学 (101)
【Fターム(参考)】
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