説明

高調波電流補償装置

【課題】交流電源に不平衡が発生した場合でも安定した制御を実現して高調波補償の信頼性の向上を図ることができる高調波電流補償装置を提供すること。
【解決手段】高調波電流補償装置7は、アーム部18と、三相のAF電流を検出するシャント抵抗12a〜12cと、二相の負荷電流を検出する負荷電流検出器15a,15cと、交流電源1の一つの線間電圧を検出する電源電圧検出器14と、二相の負荷電流と線間電圧と三相のAF電流とに基づいて高調波電流を補償制御する補償制御部16とを備え、補償制御部16は、二相の負荷電流に基づいて当該二相のAF電流指令を生成し、二相のAF電流指令と線間電圧と三相のAF電流とに基づき、交流電源1の不平衡状態を検出してその不平衡の度合いを表す量を算出した後、当該不平衡の度合いを表す量と線間電圧とから不平衡状態に応じた三相の電源電圧を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源に流れる電流の高調波成分を抑制する高調波電流補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高調波電流補償装置として、負荷と並列に接続され負荷にて発生する高調波電流を補償するアクティブフィルタが知られている。アクティブフィルタには、系統電源に流れる電流を検出して高調波を補償するもの(例えば、特許文献1参照)、または、負荷側に流れる電流を検出して高調波を補償するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、モータ駆動用インバータにおいて、直流負極端子とインバータを構成するスイッチング素子との間に挿入された抵抗(シャント抵抗)にてモータ電流を検出する3シャント技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3322320号公報
【特許文献2】実開平4−7667号公報
【特許文献3】特開2008−278573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1および2に示す従来技術のように、アクティブフィルタは負荷にて発生する高調波電流を補償するものであるが、そのためには、アクティブフィルタから流れる電流と電源電流または負荷電流を検出する必要がある。
【0006】
ここで電源電流または負荷電流は、アクティブフィルタとは異なる箇所を流れる電流であるため、電流検出には例えばCT(Current Transformer:カレントセンサ)などの電流センサが必要となる。一方、アクティブフィルタから流れる電流(アクティブフィルタ電流)は、自ら制御する電流であるため、特許文献3に示すような3シャント方式を用いて検出することも考えられる。
【0007】
上記特許文献1および2の従来技術の場合、交流電源は平衡三相電源と仮定して、電流センサは、アクティブフィルタ電流の二相の検出用に2つ、電源電流または負荷電流の二相の検出用に2つと、合計4つ用いられており、検出していない他の一相は直接検出した二相の電流から演算で求めている。しかしながら、この場合、交流電源が平衡三相電源と仮定して演算を行っているため、交流電源が不平衡になると、直接検出していない相の電流値とその演算値との間に差異が生じて制御が不安定になるという課題があった。
【0008】
また、アクティブフィルタ電流の検出に特許文献3に開示された3シャント方式を適用した場合でも、シャント抵抗に電流が流れない期間はアクティブフィルタ電流を検出できないため、その期間は2シャント方式として二相の電流を検出し、さらに三相平衡と仮定して残りの一相分は演算から求めることになる。したがって、この場合でも、上記特許文献1および2の場合と同様に、交流電源が不平衡になると、上記と同様の課題が生じていた。
【0009】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、交流電源に不平衡が発生した場合でも安定した制御を実現して高調波補償の信頼性の向上を図ることができる高調波電流補償装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る高調波電流補償装置は、交流電源に接続された負荷と並列に前記交流電源に接続され、前記負荷にて発生する高調波電流を補償する高調波電流補償装置であって、スイッチング素子を直列接続して成るアームを並列に接続して構成されたアーム部と、前記交流電源と前記アーム部の交流端子との間に挿入された交流リアクタと、前記アーム部に流れる補償電流を検出する補償電流検出部と、前記アーム部を含む整流部の両端に接続された平滑コンデンサと、前記負荷に供給される負荷電流を検出する負荷電流検出器と、前記交流電源の線間電圧を検出する電源電圧検出器と、前記負荷電流検出器により検出された前記負荷電流と前記電源電圧検出器により検出された前記線間電圧と前記補償電流検出部により検出された前記補償電流とに基づいて前記スイッチング素子を駆動制御することにより前記高調波電流を補償制御する補償制御部と、を備え、前記補償制御部は、前記負荷電流に基づいて補償電流指令を生成する補償電流指令生成部と、前記補償電流指令と前記線間電圧と前記補償電流とに基づき、前記交流電源の不平衡状態を検出して当該不平衡状態に応じた補償電圧指令を生成する電圧指令生成部と、前記補償電圧指令に基づいて前記スイッチング素子を駆動制御するPWM信号を生成するPWM生成部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、交流電源の不平衡状態を検出して当該不平衡状態に応じた補償電圧指令を生成するようにしたので、不平衡による特定相への電流集中を抑止することができ、安定した制御を実現して高調波補償の信頼性の向上を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1に係る高調波電流補償装置を含む高調波電流補償システムの構成例を示す回路ブロック図である。
【図2】図2は、実施の形態1による高調波補償制御を説明するための動作波形図である。
【図3】図3は、補償制御部16の構成の一例を示す制御ブロック図である。
【図4】図4は、シャント抵抗12aによるAF電流の検出条件を説明するための図である。
【図5】図5は、実施の形態1におけるスイッチング素子のオン・オフの動作波形図である。
【図6】図6は、電圧指令生成部23の構成の一例を示す制御ブロック図である。
【図7】図7は、実施の形態1に係る高調波電流補償装置を含む高調波電流補償システムの別の構成例を示す回路ブロック図である。
【図8】図8は、実施の形態2に係る高調波電流補償装置を含む高調波電流補償システムの構成例を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る高調波電流補償装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る高調波電流補償装置を含む高調波電流補償システムの構成の一例を示す回路ブロック図である。図1に示すように、この高調波電流補償システムは、交流電源1、交流電源1に電力線を介して接続され、交流電源1から供給される交流電力を直流電力に変換した後、負荷5に直流電力を供給する電力変換装置6、および電力変換装置6と並列に交流電源1に接続され、電力変換装置6にて発生する高調波電流を補償するアクティブフィルタである高調波電流補償装置7を備えている。なお、以下では、交流電源1が例えば三相の場合の構成例について説明する。
【0015】
電力変換装置6は、交流電源1からの交流電力をダイオードにより整流する整流器2、整流器2の出力側に接続された直流リアクタ3、整流器2の出力電圧を平滑化する平滑コンデンサ4、および平滑コンデンサ4に並列に接続された負荷6を備えて構成される。なお、本実施の形態では、負荷5は電力変換装置6の内部に含まれているとしているが、電力変換装置6全体を負荷とみなすこともできるし、整流器2、直流リアクタ3、および平滑コンデンサ4からなる電力変換部に負荷5が接続されているとみなすこともできる。
【0016】
高調波電流補償装置7は、交流電源1にそれぞれ一端が接続された三相の交流リアクタ8a〜8cと、交流リアクタ8a〜8cの他端に接続されるとともに上側スイッチング素子9a〜9cと下側スイッチング素子10a〜10cとがそれぞれ直列に接続して構成されるアーム部18と、アーム部18に直列に接続されたシャント抵抗12a〜12cと、アーム部18とこのアーム部に直列接続されたシャント抵抗12a〜12cとから成る整流部17の両端(直流端子)に接続されたコンデンサ11(平滑コンデンサ)と、コンデンサ11の両端電圧(直流電圧)を検出する直流電圧検出器13と、交流電源1の例えば一つの線間電圧を検出する電源電圧検出器14と、電力変換装置6に流れる三相の負荷電流のうちの二相の負荷電流を検出する負荷電流検出器15a,15cと、直流電圧検出器13、電源電圧検出器14および負荷電流検出器15a,15cの各検出値とシャント抵抗12a〜12cにて検出されたアクティブフィルタ(AF)電流とに基づいて電力変換装置6の出力する高調波電流を補償制御する補償制御部16と、を備えて構成される。
【0017】
アーム部18は、上側スイッチング素子9a〜9cからなる上アームと、下側スイッチング素子10a〜10cからなる下アームとを備えて構成される。具体的には、アーム部18は、上側スイッチング素子9aと下側スイッチング素子10aとが直列に接続されて成るアームと、上側スイッチング素子9bと下側スイッチング素子10bとが直列に接続されて成るアームと、上側スイッチング素子9cと下側スイッチング素子10cとが直列に接続されて成るアームとが並列に接続されて構成されている。上側スイッチング素子9a〜9cおよび下側スイッチング素子10a〜10cは、それぞれダイオードを逆並列に接続して構成されたスイッチング素子である。また、交流リアクタ8aの上記他端は上側スイッチング素子9aと下側スイッチング素子10aとの間の交流端子に接続され、交流リアクタ8bの上記他端は上側スイッチング素子9bと下側スイッチング素子10bとの間の交流端子に接続され、交流リアクタ8cの上記他端は上側スイッチング素子9cと下側スイッチング素子10cとの間の交流端子に接続されている。
【0018】
下側スイッチング素子10aの一端、具体的には上側スイッチング素子9aが接続されている側とは反対側の一端には、シャント抵抗12aが接続されている。同様に、下側スイッチング素子10bの一端にはシャント抵抗12bが接続され、下側スイッチング素子10cの一端にはシャント抵抗12cが接続されている。シャント抵抗12a〜12cは、アーム部18に流れる三相のAF電流(補償電流)を検出する補償電流検出部として機能する。
【0019】
電源電圧検出器14は、交流電源1の一つの線間電圧を検出することにより交流電源1の一つの相間電圧を検出する。負荷電流検出器15a,15cは、それぞれ例えばCT(Current Transformer:カレントセンサ)からなり、三相のうちの二相の負荷電流を検出する。
【0020】
図2は、本実施の形態による高調波補償制御を説明するための動作波形図である。電力変換装置6には、例えば図2(a)に示すような負荷電流が流れることが一般的に知られている。すなわち、負荷電流には高調波成分が含まれている。そこで、高調波電流補償装置7から図2(b)に示すようなAF電流を流すことにより、負荷電流の高調波成分を相殺し、図2(c)に示すように交流電源1に歪みの無い略正弦波の系統電流が流れるように制御する。
【0021】
図3は、補償制御部16の構成の一例を示す制御ブロック図である。図3に示すように、補償制御部16は、直流電圧制御部21、AF電流指令生成部22(補償電流指令生成部)、電圧指令生成部23、およびPWM生成部24を備えている。
【0022】
直流電圧制御部21は、電源電圧検出器14にて検出された電源電圧(線間電圧)と直流電圧検出器13にて検出された直流電圧とに基づいてコンデンサ11の両端電圧を制御する電流指令値を生成し、この電流指令値をAF電流指令生成部22に出力する。具体的には、直流電圧制御部21は、電源電圧の振幅に応じて直流電圧を制御するように電流指令値を生成する。例えば直流電圧が低くなると、高調波電流補償装置7から交流電源1へAF電流を流せなくなるので、直流電圧制御部21は、少なくとも高調波補償を行うための必要最小限の直流電圧を確保するように、電源電圧の振幅に応じて直流電圧を制御する。なお、アクティブフィルタの場合、コンデンサ11の出力負荷は設けられていないが、厳密に言えば、補償制御部16を動作させるための制御電源、コンデンサ11の内部抵抗や放電抵抗、および両端電圧検出用抵抗などで、コンデンサ11の電荷が消費される。また、コンデンサ11の両端電圧は、コンデンサ11を充放電することで制御される。そこで、直流電圧制御部21は、コンデンサ11の充電に必要な電流量(充電電流量)を算出し、これを電流指令値としてAF電流指令生成部22に出力することで、電源電圧の振幅に応じて直流電圧を制御し、高調波補償を実現する。
【0023】
AF電流指令生成部22は、直流電圧制御部21の出力する電流指令値と負荷電流検出器15a,15cによる負荷電流の検出値と電源電圧検出器14にて検出された電源電圧(線間電圧)とに基づいて高調波電流補償装置7により補償すべきAF電流値を決めるAF電流指令を生成し、このAF電流指令を電圧指令生成部23に出力する。ここで、電流指令値は、上記のように、コンデンサ11の充電電流量を制御する情報であり、直流電圧の制御に用いられる。また、電源電圧は、交流電源1の位相情報の検出に用いられる。系統電流を略正弦波化するためには、負荷電流から無効電力成分を抽出し、無効電力成分が0となるように制御する必要がある。さらに、電力変換装置6で消費されている電力量に応じた振幅の電流を高調波電流補償装置7で補償しなければ、無効電力成分を0にしたとしても系統電流は正弦波化されない。ここで、消費電力量は有効電力成分から導出することができる。すなわち、高調波電流補償では、有効電力成分および無効電力成分を抽出する必要があるが、有効電力成分および無効電力成分を抽出するためには交流電源1の位相情報が必要である。そこで、AF電流指令生成部22には電源電圧が入力され、AF電流指令生成部22は、この電源電圧から交流電源1の位相情報を検出することができる。
【0024】
電圧指令生成部23は、AF電流指令生成部22にて生成されたAF電流指令とシャント抵抗12a〜12cにて検出された三相のAF電流と電源電圧検出器14にて検出された電源電圧(線間電圧)とに基づいて高調波電流補償装置7で出力する電圧指令(補償電圧指令)を生成し、この電圧指令をPWM生成部24に出力する。
【0025】
PWM生成部24は、電圧指令生成部23にて生成された電圧指令と直流電圧検出器13にて検出された直流電圧とに基づいてゲート駆動信号としてのPWM(パルス幅変調)信号を生成し、このPWM信号をスイッチング素子9a〜9c,10a〜10cへ出力する。これにより、高調波電流補償装置7からは高調波成分を補償するAF電流がアーム部18を介して出力され、電力変換装置6から発生する高調波電流が交流電源1に流出しないよう制御でき、交流電源1からは図2(c)に示すような略正弦波の電流が流れる。
【0026】
なお、図3では、負荷電流を検出する構成としての制御ブロック図を示しているが、特許文献1に示すように系統電流を検出する構成であっても同様である。
【0027】
3シャント方式は、シャント抵抗12a〜12cにそれぞれ電流が流れることでシャント抵抗12a〜12cの両端に電圧が誘起され、この電圧に基づいて電流を検出するものである。しかしながら、図1に示すように高調波電流補償装置7に流れ込むAF電流を検出するシャント抵抗12a〜12cには、瞬時的に電流が流れないことがあるため、電流検出が不可能な期間が存在する。これを、図4を用いて説明する。図4は、シャント抵抗12aによるAF電流の検出条件を説明するための図である。なお、図4では、AF電流の一相のみについて記載しているが、どの相であっても、または三相であっても同様である。
【0028】
例えば図4(a)に示す矢印の向きにAF電流が流れる場合、上側スイッチング素子9aのオン・オフ状態にかかわらず、下側スイッチング素子10aのオン・オフ状態だけで電流の流れる経路が確定する。すなわち、下側スイッチング素子10aがオンの場合、交流リアクタ8a−下側スイッチング素子10a−シャント抵抗12aの経路で電流が流れるため、シャント抵抗12aにてAF電流を検出可能である。また、下側スイッチング素子10aがオフの場合、交流リアクタ8a−上側スイッチング素子9a(逆並列のダイオード)の経路で電流が流れるため、シャント抵抗12aに電流が流れず、この期間では電流検出ができない。なお、図4(a)に示す矢印の向きにAF電流が流れる場合に、コンデンサ11は充電される。
【0029】
AF電流の流れる向きが図4(a)とは逆で図4(b)に示す矢印の場合は、下側スイッチング素子10aのオン・オフ状態にかかわらず、上側スイッチング素子9aのオン・オフ状態だけで電流の流れる経路が確定する。すなわち、上側スイッチング素子9aがオフの場合、シャント抵抗12a−下側スイッチング素子10a(逆並列のダイオード)−交流リアクタ8aの経路で電流が流れるが、上側スイッチング素子9aがオンの場合、上側スイッチング素子9a−交流リアクタ8aの経路で電流が流れる。なお、図4(b)に示す矢印の向きにAF電流が流れる場合に、コンデンサ11は放電される。
【0030】
要するに、下側のスイッチング素子10aに直列にシャント抵抗12aが接続される構成において、AF電流の流れる向きが図4(a)の矢印方向の場合の下側スイッチング素子10aがオンする期間と、AF電流の流れる向きが図4(b)の矢印方向の場合の上側スイッチング素子9aがオフする期間にシャント抵抗12aに電流が流れ、電流検出が可能となる。
【0031】
図5は、本実施の形態におけるスイッチング素子のオン・オフの動作波形図である。詳細には、図5(a)は、PWM生成部24内で生成されるキャリア周波数の変調用三角波(キャリア)の波形を示す図、図5(b)は、上側スイッチング素子9aの動作信号の波形を示す図、図5(c)は、下側スイッチング素子10aの動作信号の波形を示す図、図5(d)は、上側スイッチング素子9bの動作信号の波形を示す図、図5(e)は、下側スイッチング素子10bの動作信号の波形を示す図、図5(f)は、上側スイッチング素子9cの動作信号の波形を示す図、図5(g)は、下側スイッチング素子10cの動作信号の波形を示す図、図5(h)は、シャント抵抗12a〜12cによる電流検出のサンプリングタイミングを矢印で示した図である。
【0032】
図5(h)に示すサンプリングタイミングでは、必ず上側スイッチング素子9a〜9cはオフしており、下側スイッチング素子10a〜10cはオンしているので、AF電流の流れる向きにかかわらず、シャント抵抗12a〜12cには電流が流れることとなる。したがって、図5(h)のサンプリングタイミング、一般的には三角波の谷部への割り込み(谷割り込み)のタイミングにてシャント抵抗12a〜12cの両端電圧をサンプリングすることで、AF電流の流れる向きによらずに電流検出を実現できる。
【0033】
アクティブフィルタは、電流制御器となるので一般的にキャリアは13kHz以上が望ましく、また、制御する電流が複雑な形状となるため、高速な制御が要求される。3シャント方式はキャリアと同期して一定の間隔で電流のサンプリングができるため、アクティブフィルタに好適であり、電流のサンプリングタイミングを下側のスイッチング素子10a〜10cのオンタイミングで且つ上側のスイッチング素子9a〜9cのオフタイミングに同期させ、隣接するサンプリング間で電流制御処理を行うことにより、3シャント方式でもアクティブフィルタで高調波電流の補償が実現できる。
【0034】
次に、アクティブフィルタに3シャント方式を適用する効果について、モータ駆動用インバータには無い効果について述べる。モータを駆動するインバータは、モータの相間に大幅なバラツキが無く、破損していない正常品であれば、平衡状態であると定義できる。また、モータが平衡状態である場合にインバータが不平衡状態になる条件は、インバータ自ら不平衡出力を行う場合にのみ限られる。したがって、モータ駆動用インバータは常に平衡状態であるといえる。
【0035】
一方、アクティブフィルタの場合、交流電源1は必ず平衡状態であるとはいえない。これは、交流電源1に接続される機器が、一般に単相や三相の機種と混載されているからである。単相機器に三相交流から電力を供給する場合、三相のうちの二相間から電力を供給することになる。通常、すべての相のインピーダンスは同じであるから、電力供給がされている相のみにインピーダンスによる電圧降下が発生し、電力供給されていない相との間に電圧差が生じ、電源不平衡状態が生み出される。
【0036】
このように、アクティブフィルタでは、自らの出力が平衡であっても、交流電源1が不平衡になることがある。そのため、交流電源1が不平衡であるにもかかわらず、交流電源1が平衡であるとの仮定のもとに高調波電流の補償制御を行うと、特定の相にのみ電流が集中し、交流電源1に接続される機器の破損や設備トラブルの原因となり得る。
【0037】
そこで、以下説明するように、本実施の形態では、アクティブフィルタに3シャント方式を適用して三相すべての電流を検出することで交流電源1の不平衡状態を検出し、不平衡による特定相への電流集中を抑止することで、アクティブフィルタの信頼性向上とアクティブフィルタの設置される電源設備環境へのトラブルの防止を図る。
【0038】
アクティブフィルタでは、一般的に、検出器のコスト低減のため、交流電源1が平衡状態であると仮定し、相数より少ない検出器により電圧・電流を検出する。例えば電源電圧検出器14は線間電圧を1つのみを検出し、電圧指令生成部23では平衡状態を仮定して3相分の相電圧を生成した後、電流補償制御を行うのが一般的である。
【0039】
また、AF電流指令生成部22は、負荷電流検出器15a,15cの出力である二相分のみの負荷電流に基づいてAF電流指令を生成する。ここで、交流電源1が不平衡状態であっても、キルヒホッフの法則より三相の電流の和は0となる。よって、2相分の電流を検出していれば不平衡状態であっても残りの1相分の電流はキルヒホッフの法則を用いて検出できる。シャント抵抗12a〜12cによるAF電流の検出についても同様であり、シャント抵抗12a〜12cのうち、2つだけあれば電流検出自体に問題は生じない。これはインバータでも同様であり、従来のアクティブフィルタのようにAF電流を2相分のみの電流検出器で検出していても三相のAF電流を検出できることを意味する。
【0040】
ここで、従来のアクティブフィルタの課題は、線間電圧から相電圧を得る際に、電源電圧検出器14にて線間電圧の全てを検出せずに、1つの線間電圧のみを検出し、その位相とその振幅から三相全ての相電圧を、交流電源1の平衡状態を仮定して算出する点にある。
【0041】
負荷電流自体は二相分であっても不平衡状態で正しく検出されるので、AF電流指令生成部22は、不平衡状態での負荷電流の検出値に基づいて不平衡状態での正しいAF電流指令を生成できる。しかしながら、電圧指令生成部23は、不平衡状態での正しいAF電流指令と不平衡状態での正しいAF電流とに基づいて電圧指令を生成する際に、平衡状態を仮定して線間電圧から導出した相電圧値に基づいて電圧指令を生成することになるので、不平衡状態が考慮されていない不適切な電圧指令を生成してしまう。
【0042】
すなわち、電源電圧の相電圧情報に加えてさらに不平衡であることを考慮して電圧指令を生成しなければ、PWM生成部24でのPWM指令が不適なものとなり、前述の特定相にのみ電流集中が発生する不具合が生じる。
【0043】
交流電源1の相電圧全てを検出するためには、電源電圧検出器14の個数を三つに増加させ、不平衡状態でも適切な相電圧を検出することで対策できるが、電源電圧検出器14は検出する電圧が電源電圧となるため、コンデンサ11のN側を共通電位としている補償制御部16に対し、アナログ電圧を絶縁する必要があり、非常に高価となる。
【0044】
そこで、以下説明するように、本実施の形態では、補償制御部16と共通電位で検出可能な3シャント方式を用いることで、AF電流から不平衡状態を検出し、不平衡によるアクティブフィルタの不具合を抑止する制御を行うとともに、コストの低減も可能である。
【0045】
図6は、電圧指令生成部23の構成の一例を示す制御ブロック図である。図6に示すように、電圧指令生成部23は、電流制御器31、電流制御器32、相電圧生成部33、電流制御器34、不平衡検出部35、反転加算器80、減算器81〜83、および反転加算器84を備えている。
【0046】
電圧指令生成部23には、AF電流指令生成部22から例えばU相AF電流指令およびW相AF電流指令が入力される。また、電圧指令生成部23には、シャント抵抗12a〜12cにより検出されたU相AF電流、V相AF電流およびW相AF電流も入力される。さらにまた、電圧指令生成部23には、電源電圧検出部14から例えばUV線間電圧が入力される。そして、U相AF電流指令およびU相AF電流は電流制御器31に入力され、W相AF電流指令およびW相AF電流は電流制御器32に入力される。また、UV線間電圧は相電圧生成部33に入力される。また、V相AF電流は、電流制御器34に入力される。
【0047】
電流制御器31は、U相AF電流がU相AF電流指令に一致するよう制御する制御電圧の出力(制御出力)を行う。減算器81は、相電圧生成部33の出力するU相電圧から電流制御器31の制御出力を差し引いたものを、U相AF電圧指令(U相の補償電圧指令)として出力する。ここで、電流制御器31と減算器81によりU相電圧指令演算部70(第1の電圧指令演算部)が構成される。
【0048】
電流制御器32は、W相AF電流がW相AF電流指令に一致するよう制御する制御電圧の出力(制御出力)を行う。減算器82は、相電圧生成部33の出力するW相電圧から電流制御器32の制御出力を差し引いたものを、W相AF電圧指令(W相の補償電圧指令)として出力する。ここで、電流制御器32と減算器82によりW相電圧指令演算部71(第2の電圧指令演算部)が構成される。なお、U相AF電圧指令およびW相AF電圧指令は、図3のPWM生成部24へ出力される。
【0049】
反転加算器80は、U相AF電流指令とW相AF電流指令を反転加算したものを、電流制御器34に出力する。電流制御器34は、V相のAF電流が反転加算器80の出力(V相AF電流指令)と一致するよう制御する制御電圧の出力(制御出力)を行う。減算器83は、相電圧生成部33の出力するV相電圧から電流制御器34の制御出力を差し引いたもの(V相AF電圧指令という)を不平衡検出部35に出力する。ここで、反転加算器80と電流制御器34と減算器83によりV相電圧指令演算部72(第3の電圧指令演算部)が構成される。
【0050】
相電圧生成部33は、電源電圧検出器14にて検出されたUV相間の線間電圧(UV線間電圧)を入力として、その位相情報と振幅情報を用いてU相電圧、V相電圧、W相電圧の相電圧を生成する。ここで、上述のとおり、交流電源1が平衡状態であれば問題ないが、不平衡状態の場合、相電圧生成部33から出力される各相の相電圧が実際の電圧と異なる値となる。
【0051】
電流制御器31および32は、それぞれAF電流がAF電流指令と一致するよう制御出力を行うので、不平衡状態であってもAF電流指令に一致したAF電流が流れるように制御出力を生成する。換言すれば、電流制御器31および32は、不平衡状態であれば不平衡状態に応じた制御出力を生成する。また、電流制御器34は、反転加算器80から得たV相AF電流指令とV相AF電流とが一致するよう制御する制御出力を行うことで、不平衡状態に応じた制御出力を生成する。
【0052】
一方、U相AF電圧指令およびW相AF電圧指令は、平衡状態と仮定して相電圧生成部33から出力されたU相電圧およびW相電圧からそれぞれ不平衡状態に応じて生成された電流制御器31および32の制御出力を減じて算出される。この算出されたU相AF電圧指令およびW相AF電圧指令は、実際に高調波電流補償装置7から出力されている実電圧と一致しない。これは不平衡状態でもAF電流指令とAF電流が一致するよう電流制御器31および32が動作するためである。
【0053】
このとき、PWM生成部24では、U相AF電圧指令とW相AF電圧指令とからPWM信号を生成することになるため、信号生成に必要なV相AF電圧指令はU相AF電圧指令とW相AF電圧指令とから平衡状態を仮定して演算される。しかしながら、このV相AF電圧指令の値は、前述のとおり実際に出力されている実電圧とは異なり、さらには平衡状態を仮定したしわ寄せが全て包含された値となる。逆に、電流制御器34はV相AF電流とV相AF電流指令とが一致するように動作するので、電流制御器34の演算結果に基づいて生成されるV相AF電圧指令と、U相AF電圧指令およびW相AF電圧指令から算出されるV相AF電圧指令との差異から、不平衡の度合い、すなわち平衡状態からの逸脱の程度を定量的に評価することができる。以下では、この不平衡の度合いを表す量を平衡状態からの誤差を表すとみなして「誤差量」と呼ぶ。したがって、この誤差量は、電流制御器34の演算結果に基づいて生成されるV相AF電圧指令と、U相AF電圧指令およびW相AF電圧指令から算出されるV相AF電圧指令との差分として定義することができる。
【0054】
そこで、図6に示すように、反転加算部84は、U相AF電圧指令とW相AF電圧指令を反転加算したものを不平衡検出部35に出力する。そして、不平衡検出部35は、反転加算部84の出力と減算部83の出力の差分を算出し、この差分を誤差量として相電圧生成部33に出力する。相電圧生成部33は、UV線間電圧に基づき、さらに、この誤差量が0となるようにU相またはW相の相電圧振幅を可変することで、不平衡状態に応じた各相の相電圧を出力することができる。
【0055】
不平衡検出部35では、誤差量が例えば予め設定した所定範囲から外れたことを判定することで不平衡状態を検出することができる。また、例えば何らかの近似式により不平衡の度合いを表す値を予め与えられるようにしておき、誤差量をこの近似式と比較することで不平衡状態を検出してもよい。さらにまた、例えば不平衡の度合いを表す値をテーブル化することも可能であり、誤差量をこのテーブルと比較することで不平衡状態を検出してもよい。いずれの方法を用いて不平衡状態を検出したとしても、本実施の形態の効果を損ねることはない。
【0056】
以上のように、本実施の形態によれば、U相AF電流およびW相AF電流に加えてV相AF電流を検出し、PWM生成部24への出力には必要のないV相AF電圧指令を生成可能な電流制御器34を設け、この電流制御器34の演算結果に基づいて生成されるV相AF電圧指令と、U相AF電圧指令およびW相AF電圧指令の反転加算とを比較することにより、不平衡による誤差量が抽出でき、交流電源1の不平衡状態を検出することができる。さらには、不平衡検出部35より不平衡状態に応じた出力を相電圧生成部33へフィードバックすることによって、不平衡状態に応じた三相の電源電圧を生成してU相AF電圧指令およびW相AF電圧指令を生成することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、3シャント方式により三相のAF電流を検出する構成について説明したが、シャント抵抗12a〜12cを用いる代わりに例えばCTを用いて三相のAF電流を検出しても同様の効果を得ることは言うまでもない。例えば、図7は、本実施の形態に係る高調波電流補償装置を含む高調波電流補償システムの別の構成例を示す回路ブロック図であり、三相のAF電流をCTにより検出する構成を示す図である。すなわち、図7では、三相の交流リアクタ8a〜8cを流れるAF電流をそれぞれ検出するCT90a〜90cが設けられている。なお、図7のその他の構成は図1と同様であるので同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。また、補償制御部16による高調波補償制御処理も図1の場合と同様である。また、CT検出方式よりもシャント検出方式の方が安価であることは言うまでも無いが、大電力の場合、抵抗での損失が大きくなり抵抗の発熱からシャント抵抗によるAF電流の検出が困難になる場合も想定されるが、アクティブフィルタの場合、高調波電流のみの補償であることから、たとえ負荷5が大電力であってもシャント抵抗12a〜12cを使用することができ、さらに、AF電流のサンプリング時間をキャリア同期、かつ等間隔で実施することにより、一般にアーム部18と直列接続することによる検出不能期間が存在する場合であっても、三相のAF電流を検出することができ、よって高調波電流補償効果を劣化させることもなく、かつ安価に実現ですることができる。
【0058】
また、アクティブフィルタは負荷5に流れる電流の高調波電流を補償するため、不平衡状態で負荷5の電流バランスが崩れると、電流が多く流れる相に多くの補償電流を流し、電流が少ない相には補償量を少なくする特性を有するため、特定相への電流集中を拡大するよう動作するが、本実施の形態の高調波電流補償装置7は、PWM出力とは関係ない電流制御器34を有することで不平衡状態を検出することができるので、電流集中拡大を抑止し、電流集中による素子の破損や電源設備への悪影響を抑制することができる。よって、本実施の形態によれば、安定した制御を実現して高調波補償の信頼性の向上を図ることができる。なお、本実施の形態は、交流電源1が三相以上の多相電源の場合でも同様に構成することができる。この場合、アーム、シャント抵抗等は相数に応じて設ける。また、検出される負荷電流は例えば相数よりも一相少ない数の相分とし、検出する電源電圧は例えば一つの相間電圧とすることができる。そして、電圧指令生成部23では、負荷電流と同相のAF電圧指令については電流制御器31,32と同様の電流制御器を(n−1)個設けることで生成をし(ここで、nは3以上の相数を表す。)、負荷電流が検出されていない一相については電流制御器34と同様の電流制御器を設けて処理を行い、図6で説明した処理を相数nの場合に一般化して不平衡検出部35にて不平衡状態を検出し、相電圧生成部33の出力である各相の電源電圧に不平衡状態に応じた補正を施すことができる。
【0059】
また、上側スイッチング素子9a〜9cおよび下側スイッチング素子10a〜10cは、例えばGaN(窒化ガリウム)、SiC(シリコンカーバイド)またはダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ半導体を用いて形成することができる。ワイドバンドギャップ半導体を用いることで耐電圧性が高く、許容電流密度も高くなるため、スイッチング素子群の小型化が可能であり、これらの素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化が可能となる。また、ワイドバンドギャップ半導体は、耐熱性も高いため、ヒートシンクの放熱フィンの小型化も可能になる。
【0060】
更に、ワイドバンドギャップ半導体は、電力損失が低いため、スイッチング素子やダイオード素子の高効率化が可能であり、延いてはスイッチング周波数の高周波化が可能になる。スイッチング周波数が高周波化すると、シャント抵抗12a〜12cでのサンプリング時間を短縮化することができ、検出電流の高精度が図れる。これにより補償する高調波電流の精度が向上し、高調波電流の抑制率を向上させることができる。
【0061】
更に、ワイドバンドギャップ半導体を用いることで、耐熱性が向上することから、従来の放熱フィンを用いることで、周辺への伝熱量が低減し、シャント抵抗12a〜12cの伝熱による発熱量を抑制でき、抵抗の温度特性による電流検出精度の向上が実現できる。これにより補償する高調波電流の精度が向上し、高調波電流の抑制率を向上させることができる。
【0062】
実施の形態2.
図8は、本実施の形態に係る高調波電流補償装置を含む高調波電流補償システムの構成例を示す回路ブロック図である。図8では、交流電源1に負荷として空気調和機50が接続された例を示している。空気調和機50は、整流器2、直流リアクタ3、平滑化コンデンサ4、インバータ40、圧縮器41、凝縮器42、膨張器43、蒸発器44、ファン45,46、ファンインバータ47,48、および単相整流器49を備えている。なお、図8において、図1と同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0063】
具体的には、実施の形態1で説明した整流器2、整流器2の出力側に接続された直流リアクタ3、整流器2の出力電圧を平滑化する平滑化コンデンサ4が示されており、この平滑化コンデンサ4に並列にインバータ40が接続されている。さらに、インバータ40には圧縮器41が接続され、この圧縮器41はインバータ40にて駆動される電動機を内蔵している。圧縮器41には凝縮器42が接続され、この凝縮器42は圧縮器41にて高温・高圧化された冷媒の熱を取り出す。凝縮器42には膨張器43が接続され、この膨張器43は冷媒の圧力を低下させる。膨張器43には蒸発器44が接続され、この蒸発器44は冷媒の気化熱を利用して周囲から熱を奪う。このような構成により、圧縮器41から蒸発器44へと冷媒が循環することで冷暖房、冷凍などを行う冷凍サイクルが実現される。
【0064】
また、ファン45は凝縮器42の熱交換を促進するものであり、ファン46は蒸発器44の熱交換を促進するものである。ファンインバータ47は、ファン45を動作させるインバータであり、ファンインバータ48はファン46を動作させるファンインバータである。ファンインバータ47,48は、交流電源1に接続された単相整流器49から直流電力が供給される。すなわち、単相整流器49は、交流電源1に接続された三相の電力線の1つの線間に接続されている。なお、高調波電流補償装置7の構成および動作は、実施の形態1で説明した通りであるので省略する。
【0065】
空気調和機50では、圧縮器41はインバータ40を介して交流電源1の三相交流から電力が供給されているが、熱交換を促進させるファン47,48は三相交流のうちの1つの線間から電力が供給されている。よって、空気調和機50は不平衡負荷であり、ファン47,48での消費電力分だけ単相整流器49が接続されている相のみに電流が流れ、交流電源1が不平衡状態になる。
【0066】
本実施の形態の高調波電流補償装置7は、実施の形態1と同様に不平衡状態を検出するべく構成されているので、負荷として空気調和機50が接続される場合、各相に流れる電流のアンバランスが抑制され、電力設備などのトラブルを回避することができる。なお、本実施の形態のその他の効果は、実施の形態1と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、交流から直流を生成する電力変換装置から発生する高調波電流を抑制する高調波電流補償装置として有用である。本発明は、特に、電動機を可変速運転するインバータから発生する高調波を抑制する高調波電流補償装置として有用であり、例えば、空気調和機や冷凍機、ヒートポンプ式給湯機、ショーケースなど圧縮器搭載インバータ製品全般に適用可能であるとともに、エレベータやエスカレータ、工場などのコンベア駆動用インバータ、産業換気扇用インバータなどの産業用インバータ等への適用も可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 交流電源
2 整流器
3 直流リアクタ
4 平滑コンデンサ
5 負荷
6 電力変換装置
7 高調波電流補償装置
8a〜8c 交流リアクタ
9a〜9c 上側スイッチング素子
10a〜10c 下側スイッチング素子
11 コンデンサ
12a〜12c シャント抵抗
13 直流電圧検出器
14 電源電圧検出器
15a,15c 負荷電流検出器
16 補償制御部
17 整流部
18 アーム部
21 直流電圧制御部
22 AF電流指令生成部
23 電圧指令生成部
24 PWM生成部
31,32,34 電流制御器
33 相電圧生成部
35 不平衡検出部
80,84 反転加算部
81〜83 減算部
90a〜90c CT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続された負荷と並列に前記交流電源に接続され、前記負荷にて発生する高調波電流を補償する高調波電流補償装置であって、
スイッチング素子を直列接続して成るアームを並列に接続して構成されたアーム部と、
前記交流電源と前記アーム部の交流端子との間に挿入された交流リアクタと、
前記アーム部に流れる補償電流を検出する補償電流検出部と、
前記アーム部を含む整流部の両端に接続された平滑コンデンサと、
前記負荷に供給される負荷電流を検出する負荷電流検出器と、
前記交流電源の線間電圧を検出する電源電圧検出器と、
前記負荷電流検出器により検出された前記負荷電流と前記電源電圧検出器により検出された前記線間電圧と前記補償電流検出部により検出された前記補償電流とに基づいて前記スイッチング素子を駆動制御することにより前記高調波電流を補償制御する補償制御部と、
を備え、
前記補償制御部は、
前記負荷電流に基づいて補償電流指令を生成する補償電流指令生成部と、
前記補償電流指令と前記線間電圧と前記補償電流とに基づき、前記交流電源の不平衡状態を検出して当該不平衡状態に応じた補償電圧指令を生成する電圧指令生成部と、
前記補償電圧指令に基づいて前記スイッチング素子を駆動制御するPWM信号を生成するPWM生成部と、
を備える
ことを特徴とする高調波電流補償装置。
【請求項2】
前記補償電流検出部は、全相の前記補償電流を検出し、
前記負荷電流検出器は、相数よりも一相少ない数の相の前記負荷電流を検出することを特徴とする請求項1に記載の高調波電流補償装置。
【請求項3】
前記電源電圧検出器は、一つの前記線間電圧を検出することを特徴とする請求項2に記載の高調波電流補償装置。
【請求項4】
前記電圧指令生成部は、前記不平衡の度合いを表す量と前記線間電圧とに基づいて前記不平衡状態に応じた各相の電源電圧を生成することにより、前記補償電圧指令を生成することを特徴とする請求項2または3に記載の高調波電流補償装置。
【請求項5】
前記交流電源はn(nは3以上の整数)相電源であり、
前記電圧指令生成部は、
前記不平衡状態の度合いを表す量と前記線間電圧とに基づいて第1相〜第n相の電源電圧を生成する相電圧生成部と、
それぞれ第1相〜第(n−1)相の補償電流指令と第1相〜第(n−1)相の補償電流と前記第1相〜第(n−1)相の電源電圧とに基づいて第1相〜第(n−1)相の補償電圧指令を出力する第1〜第(n−1)の電圧指令演算部と、
前記第1相〜第(n−1)相の補償電流指令を反転加算したものと前記第n相の電源電圧とに基づいて第n相の補償電圧指令を出力する第nの電圧指令演算部と、
前記第1相〜第(n−1)相の補償電圧指令を反転加算したものと前記第n相の補償電圧指令の差分に基づいて前記不平衡の度合いを表す量を算出し、当該不平衡の度合いを表す量を前記相電圧生成部に出力する不平衡検出部と、
を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の高調波電流補償装置。
【請求項6】
前記相電圧生成部は、前記不平衡の度合いを表す量がゼロとなるように、その出力である前記第1相〜第(n−1)相の電源電圧を調整することを特徴とする請求項5に記載の高調波電流補償装置。
【請求項7】
前記平滑コンデンサの両端電圧を検出する直流電圧検出器を備え、
前記補償制御部は、前記電源電圧検出器により検出された前記線間電圧と前記直流電圧検出器により検出された前記両端電圧とに基づいて当該両端電圧を制御する電流指令値を生成する直流電圧制御部を備え、
前記補償電流指令生成部は、前記直流電圧制御部により生成された前記電流指令値と前記電源電圧検出器により検出された前記線間電圧と前記負荷電流検出器により検出された前記負荷電流とに基づいて前記補償電流指令を生成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高調波電流補償装置。
【請求項8】
前記補償電流検出部は、前記アーム部に直列に接続された各相のシャント抵抗であり、前記整流部は前記各相のシャント抵抗と前記アームから構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の高調波電流補償装置。
【請求項9】
前記アーム部は、上側のスイッチング素子と下側のスイッチング素子とが直列に接続してなる少なくとも3つのアームから構成され、
前記各上側のスイッチング素子および前記各下側のスイッチング素子は、それぞれダイオードを逆並列に接続して構成されたスイッチング素子であり、
前記各シャント抵抗は、それぞれ前記各下側のスイッチング素子に接続され、
前記電圧指令生成部は、前記各シャント抵抗による前記補償電流の検出のタイミングを前記上側のスイッチング素子がオン状態であり且つ前記下側のスイッチング素子がオフ状態のタイミングに同期させることを特徴とする請求項8に記載の高調波電流補償装置。
【請求項10】
前記補償電流検出部は、前記交流リアクタに流れる前記補償電流を検出する電流センサであり、
前記整流部は前記アーム部から構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の高調波電流補償装置。
【請求項11】
前記スイッチング素子は、ワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の高調波電流補償装置。
【請求項12】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム又はダイヤモンドであることを特徴とする請求項11に記載の高調波電流補償装置。
【請求項13】
前記負荷は空気調和機であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の高調波電流補償装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−143094(P2012−143094A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254(P2011−254)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】