説明

高負荷空調システム

【課題】サーバ機器等の段階的実装又は撤去や、不均一な室内熱負荷分布等に適応し、サーバ室内における空調機の保守又は維持・管理等の作業の頻度を低減し、冷却コイルの凝縮水又は結露水等がサーバ機器等に影響するのを防止する空調システムを提供する。
【解決手段】空調機(10)がコールドアイル(C)の直下において床下チャンバ(9)内に配置される。空調機は、空気冷却用冷却器(12)、空気循環用給気ファン(11)及び冷気送風口(8)を備える。給気ファンは、床吸込口(7)を介してホットアイル(H)の暖気を吸引し、冷却器によって冷却し、冷気を床吹出口から上向きにコールドアイルに送風する空気循環回路を形成する。電子機器(S)と熱交換した暖気がホットアイルに流出する。冷却器は暖気を冷却して電子機器の顕熱を除熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高負荷空調システムに関するものであり、より詳細には、多量の顕熱を発熱する電子機器をホットアイル・コールドアイル方式に配置した室に設けられる高負荷空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数のサーバ機器、ルーター、IT機器、通信機器等の高負荷電子機器を収容するデータセンタ、IT機器管理施設又は携帯電話基地局のサーバ室、電算室又は通信機器室等の建設が近年急増している。この種の施設は、多量の顕熱を発熱する多数の電子機器を室内に収容することから、電子機器の顕熱を除熱するための高負荷空調システムが設けられる。
【0003】
例えば、データセンタ等におけるサーバ機器の高集積化・高密度化が近年殊に進んでおり、サーバ室内において大量の顕熱が発生する結果として、サーバ室の冷却に要する電力消費量が急速に増加する傾向が生じている。サーバ機器の多くは、前面から冷気の吸込みを行い、背面から暖気を排気する構造を有する。このため、このようなサーバ室においては、サーバラック前面の吸気面を対向配置して吸気面間にコールドアイルを形成し、サーバラック背面の排気面を対向配置して排気面間にホットアイルを形成し、これにより、空調システムの熱効率を向上するホットアイル・コールドアイル方式のレイアウトが一般に採用されている。
【0004】
特許第3835615号公報(特許文献1)には、このようなデータセンタ又はサーバルームの空調システムが記載されている。サーバ室を冷却する空調装置は、床下チャンバに冷気を送風し、コールドアイルの通気性床を介してコールドアイルに冷気を供給する。冷気は、コールドアイル内に上向きに吹出し、サーバラックの吸気面(前面)からサーバラック内に給気される。サーバ機器を除熱して昇温した暖気は、サーバラックの排気面からホットアイル又は室内上部空間に排気され、空調装置に還流する。
【0005】
このようなデータセンタ又はサーバルームの空調システムに関し、コールドアイルの頂部に空調機を設置し、コールドアイル頂部から下方に冷気を送風するダウンフロー方式の空調システムが特開2009-133617号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3835615号公報
【特許文献2】特開2009-133617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、単一系統の空調システムによってサーバ室全体を空調する従来の空調システム(特許文献1)は、空調空気をサーバ室全域に循環するように構成されているので、送風負荷が大きく、多大な空気搬送動力を要する。また、この空調システムは、室全体を単位とした構成のものであるので、全サーバ機器を実装した状態を想定して空調システムを設計せざるを得ず、従って、段階的なサーバ機器の実装、交換又は撤去等に相応して空調システムを拡充し又は縮小することは困難である。
【0008】
また、このようにサーバ室全体を空調する空調システムでは、不均一な室内熱負荷分布に適応した空調を行うことができず、このため、熱効率を十分に向上させることができない。
【0009】
他方、コールドアイル頂部に空調機を分散配置した空調システム(特許文献2)によれば、サーバ機器の実装、交換又は撤去等に相応して空調機の増設・撤去等を任意に実施することができ、しかも、熱負荷分布に相応して空調機の配置、制御等を行うことが可能となる。
【0010】
しかし、このような空調システムでは、空調機の保守又は維持・管理や、増設・撤去等をサーバ室内で行う必要が生じる。しかも、冷却コイルの凝縮水、結露水等がサーバラック頂部において発生する虞があり、また、仮に冷却コイルの破損・損傷等が生じた場合、熱媒体がサーバ室内に漏出することも懸念される。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サーバ機器等の段階的実装又は撤去や、不均一な室内熱負荷分布等に適応するとともに、サーバ室内における空調機の保守又は維持・管理等の作業の頻度を低減し、しかも、冷却コイルの凝縮水又は結露水、或いは、冷却コイルの破損・損傷等がサーバ機器等に影響するのを防止することができる空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、本発明は、多量の顕熱を発熱する電子機器をホットアイル・コールドアイル方式に配置した室に設けられる空調システムにおいて、
コールドアイルの直下において床下チャンバ内に配置された空調機を有し、
該空調機は、空気冷却用冷却器、空気循環用給気ファン及び冷気送風口を備え、
前記冷気送風口は、コールドアイルの床面に配置された床吹出口からなり、又は該床吹出口に接続されており、
前記給気ファンは、ホットアイルの床面に配置された床吸込口を介してホットアイルの暖気を吸引し、前記冷却器によって冷却し、冷気を前記床吹出口から上向きにコールドアイルに送風する空気循環回路を形成し、
前記冷気は、前記電子機器と熱交換し、前記暖気としてホットアイルに流出し、
前記冷却器は、前記暖気を冷却して前記電子機器の顕熱を除熱することを特徴とする空調システムを提供する。
【0013】
本発明の上記構成によれば、コールドアイル、電子機器、ホットアイル及び冷却器から構成される局所的な空気循環回路が形成される。この空気循環回路は、床下チャンバの空調機によって形成されるので、空調機の増設又は撤去により、サーバ機器等の段階的実装又は撤去に相応した複数の空気循環回路を形成することができる。また、空調機の位置及び冷房能力の設定により、熱負荷分布に相応した空気循環回路を形成することができるので、不均一な室内熱負荷分布等に適応することが可能となる。更には、床下チャンバに配置された空調機は、床下チャンバにおいて保守又は維持・管理等の作業を行うことができ、冷却コイルの凝縮水又は結露水や、冷却コイルの破損・損傷等は、室内の電子機器に影響を及ぼさない。
【0014】
好ましくは、上記空調機は、床下チャンバに配置された架台によって支持され、室の床面のレベルに近接し且つ床下チャンバの床面から間隔を隔てて配置される。所望により、上記冷却器は、冷媒自然循環方式の熱媒体回路の気化器又は蒸発器を構成する。
【0015】
所望により、補助空調機がコールドアイルの頂部に配置される。補助空調機は、電子機器と熱交換した暖気を吸引して冷却し、冷却後の空気をコールドアイルに下向きに送風する。好ましくは、補助空調機の空気冷却用冷却器は、冷媒自然循環方式の熱媒体回路の気化器又は蒸発器を構成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の空調システムによれば、サーバ機器等の段階的実装又は撤去や、不均一な室内熱負荷分布等に適応するとともに、サーバ室内における空調機の保守又は維持・管理等の作業の頻度を低減し、しかも、冷却コイルの凝縮水又は結露水、或いは、冷却コイルの破損・損傷等がサーバ機器等に影響するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の好適な実施形態に係る空調システムの構成を示す空調システムフロー図である。
【図2】図2は、図1に示す空調システムを備えたサーバ室の構造を示す縦断面図である。
【図3】図3は、図2のI−I線における断面図である。
【図4】図4は、図2のII−II線における断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態に係る空調システムの構成を示す空調システムフロー図である。
【図6】図6は、図5に示す実施形態の変形例を示す空調システムフロー図である。
【図7】図5及び図6に示す空調システムを備えたサーバ室の構造を示す縦断面図である。
【図8】図7のIII-III線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る空調システムの構成を示す空調システムフロー図である。図1には、空気循環回路を循環する空気流の流れが、矢印によって概念的に示されている。
【0020】
サーバ室1は、床面構成材3及び床版4とから構成される二重床構造の床構造体2と、サーバ室1を他室、屋外空間等から平面的に区画する隔壁5と、サーバ室1を上階から区画する天井構造体6とを有する。天井構造体6は、上階の床構造体、或いは、屋根構造体からなる。床面構成材3の下方には床下チャンバ9が形成される。サーバ室1の天井高Gは3.5〜4.0m、例えば、3.7mに設定される。床版4の上面から床面Fまでの距離Nは、2.0〜2.5m、例えば、2.2mに設定される。
【0021】
サーバ室1の床面Fには、多数の空冷式サーバラックSが整列配置される。各サーバラックS内には、複数のサーバ機器等(図示せず)が実装される。各サーバラックSは、操作面を構成する筐体前面Saから冷気を取り込み、筐体背面Sbからサーバ室1の室内に熱排気するためのファン(図示せず)を有する。サーバラックSは、この種のサーバ室において一般に採用されるホットアイル・コールドアイル方式に配置されている。ホットアイル・コールドアイル方式のレイアウトにおいては、給気を要する筐体前面Sa同士が対向配置され、筐体前面Saの間にコールドアイルCが形成されるとともに、熱排気を行う筐体背面Sb同士が対向配置され、筐体背面Sbの間にホットアイルHが形成される。コールドアイルCを室内上部空間から遮蔽する遮蔽板Bが、隣り合うサーバラックSの上部を架橋するように配置される。遮蔽板BはコールドアイルCを室内上部空間から確実に区画し、コールドアイルC内の冷気が室内上部空間に流出するのを阻止する。また、図4に示す如く、コールドアイルCの両端部も又、遮蔽体Eによってサーバ室1の室内空間から遮蔽することが望ましい。好ましくは、遮蔽体Eは、引き戸又は開き戸等の扉Dと、扉Dの周囲を囲む枠又は盲パネルPとから構成される。遮蔽板B及び遮蔽体Eは、コールドアイルCを明確に区画し、コールドアイルC内の空間に供給された冷気は、実質的に全量が確実且つ効率的にサーバラックS内のサーバ機器に給気される。なお、遮蔽体Eは、スクリーン、シート等の可撓膜材によって形成しても良い。
【0022】
図1に示すように、多数の床吸込口7及び床吹出口8が床面Fに配置される。床吸込口7及び床吹出口8は、例えば、床面の一部を構成する歩行可能な金属製グレーチング等の有孔部材又は通気性部材からなり、床吸込口7及び床吹出口8の開口率は、60〜80%の範囲、例えば、約70%に設定される。
【0023】
ヒートポンプ式空調機10が床下チャンバ9に配置される。空調機10は、床面構成材3又はその支持部材から懸吊される。床吹出口8は空調機10の冷気送風口を構成する。
【0024】
調整外気を床下チャンバ9に送風する空冷ヒートポンプ式の外調機30が、床下チャンバ9内に配設される。外調機30は外気導入ダクト31に接続され、外気導入ダクト31は、外気OAを取り込むための外気取入口32に接続される。外調機30は、送風機33及び冷却コイル34を備える。冷却コイル34は、熱媒体循環配管35、36を介して屋外機37に接続される。冷却コイル34は、冷媒が循環する直膨式コイルからなり、屋外機37は凝縮器及び送風機を有する。
【0025】
外調機30は、外気取入口32及び外気導入ダクト31を介して取り込んだ外気OAを冷却コイル34によって調温・調湿し、送風機33の送風圧力下に調整外気を床下チャンバ9に送風する。所望により、冷却コイル34を冷却・加熱コイルとして使用し、或いは、再熱コイル等を外調機30内に組込んでも良い。
【0026】
サーバ室1に供給された外気と実質的に同量の室内空気が排気系40によってサーバ室1から系外に排気される。排気系40は、サーバ室1の上部に配置された排気口41と、排気口41に接続された排気ダクト42及び排気ファン43とを有する。
【0027】
各コールドアイルの直下に配置された空調機10は、給気ファン11及び冷却コイル12を備える。冷却コイル12は、熱媒体循環配管13、14を介して屋外機15に接続される。各冷却コイル12は、冷媒を循環する直膨式コイルからなり、各屋外機15は凝縮器及び送風機を有する。
【0028】
空調機10は、給気ファン11の吸引圧力下に、冷却コイル12を介して床下チャンバ9の空気を取込み、冷却コイル12によって冷却する。例えば、空調機10の吸込み空気温度は29℃に設定され、空調機10の吹出し空気温度は16℃に設定される。冷却コイル12によって調温した冷気は、給気ファン11の吐出圧力下に床吹出口8から上向きに吹き出す。
【0029】
床吹出口8は各コールドアイルCの床部分に配置されており、空調機10の冷気を各コールドアイルCに上向きに送風する。コールドアイルC内に送風された冷気は、各サーバラックSは内蔵ファン(図示せず)によって筐体内に吸引され、筐体内のサーバ機器等を除熱する。サーバ機器等との熱交換によって昇温した空気は、暖気として筐体背面からホットアイルHに流出する。
【0030】
ホットアイルHに流出した暖気は、給気ファン11の吸引圧力下に床吸込口7を流通して床下チャンバ9内に流下し、給気ファン11に吸引され、前述の如く、冷却コイル12によって冷却され、床吹出口8からコールドアイルCに供給される。
【0031】
従って、本実施形態の空調システムは、各コールドアイルCの直下において床下チャンバに配設された空調機10を有し、空調機10の冷気送風口は、サーバ室1の床面に床吹出口8として配置され、空調機10の給気ファン11は、ホットアイルH、床吸込口7、床下チャンバ9、冷却コイル12、床吹出口8及びコールドアイルCからなる空気循環回路を形成し、空調機10の冷却コイル12は、空気循環回路を循環する空気を冷却し、サーバラックS内のサーバ機器等の発熱を除熱する。
【0032】
このような空調システムによれば、サーバラックSの直近に局所的な空気循環回路を形成し、サーバ機器等の発熱を効率的に除去し得るので、システム全体の熱効率を向上することができる。
【0033】
また、上記空調システムは、空調機10をコールドアイル単位に分散配置した構成を有するので、サーバラックSの段階的設置又は撤去に相応して空調機10を床下チャンバ9内に段階的に設置し又は撤去することができる。即ち、上記空調システムによれば、サーバラックSの実装に相応した局所的な冷気循環が可能となるので、サーバ室1全域に冷気循環を要する従来の空調システムと比べ、送風動力削減、熱効率向上、制御性向上等の点で極めて有利である。
【0034】
更には、床下チャンバ9は、操作員、作業員等が移動可能且つ作業可能な高さ(距離N)を有するので、空調機10の増設、撤去、交換、維持管理等を比較的容易に行うことができ、しかも、熱媒体循環配管13、14は床下チャンバ9内に配管されるので、凝縮水又は結露水の発生、熱媒体の漏出等が発生したとしても、サーバ室1内のサーバ機器等は実質的な影響を受けない。従って、上記空調システムは、空調機10の維持・管理及び増設・撤去・交換や、サーバ機器の運転保守の点においても有利である。
【0035】
図5は、本発明の他の実施形態に係る空調システムの構成を示す空調システムフロー図である。図5には、空気循環回路を循環する空気流の流れが、矢印によって概念的に示されている。なお、図5において、図1に示す各構成要素と実質的に同じ構成要素については、同一の参照符号が付されている。
【0036】
本実施形態の空調システムにおいては、空調機10及び外調機30の冷却コイル12、34は、冷水循環方式の熱交換器からなり、冷水給送管17及び冷水還流管18が冷却コイル12、34に接続される。冷水給送管17及び冷水還流管18は、チラー等の冷熱源(図示せず)に接続される。冷却コイル12、34は、冷水給送管17及び冷水還流管18を含む冷水循環回路を循環する冷水によって空気又は外気を冷却する。冷却コイル12、34、冷水給送管17及び冷水還流管18は、床下チャンバ9内に配管されるので、凝縮水又は結露水や、管路又は熱交換器の漏水等が発生したとしても、サーバ室1内のサーバ機器等は実質的な影響を受けない。
【0037】
本実施形態においては、補助的な空調機50がコールドアイルCの頂部に配置される。空調機50は、コールドアイルC内の温度分布に不均衡又は温度ムラ等が生じた場合等に補助的又は過渡的に運転され、或いは、コールドアイルC内の気流分布を補正する補助的な冷気流をコールドアイルC内に生じさせるように定常的に運転される。
【0038】
空調機50は、コールドアイルCの頂部に配置された筐体内に給気ファン51及び冷却コイル52を内蔵した構成を有する。空調機50の筐体は、サーバラックSのフレーム(図示せず)によって支持され、或いは、独立した架台(図示せず)によって支持される。空調機50の筐体下面には、コールドアイルCに面する水平な吹出口60が配設される。冷却コイル52は、熱媒体循環配管53、54を介して冷水循環タンク56内の熱交換器55に接続される。冷水循環タンク56には、冷水給送管17及び冷水還流管18の分岐管が接続され、冷水循環回路の冷水が冷水循環タンク56内を循環する。冷却コイル52、熱媒体循環配管53、54、熱交換器55及び冷水循環タンク56は、冷媒自然循環システム(VCS(本出願人の登録商標))を構成し、熱交換器55において凝縮した冷媒は、熱媒体循環配管53内を重力下に流下して冷却コイル52に供給され、冷却コイル52において気化した冷媒は、熱媒体循環配管54内を上昇し、熱交換器55に還流する。このような冷媒自然循環システム(VCS)については、例えば、特開平11−230577号公報等に詳細に記載されているので、更なる詳細な説明は、省略する。
【0039】
本実施形態に係る空調システムによれば、空調機50の冷気によってコールドアイルC内の気流分布及び温度分布を最適化し、或いは、サーバ機器の熱負荷の変化に相応して空調システム全体の冷房能力を調整し又は増大することができる。また、本実施形態においては、空調機10の熱源として冷水を使用しているので、熱源の共用又は集中管理によって、サーバ室1を含む建築物全体の熱効率を向上させることができる。更に、本実施形態の空調機50は、冷媒自然循環方式の冷媒循環回路を用いた構成のものであるので、漏水等のリスクをなくし又は低減することができる。
【0040】
図6は、図5に示す実施形態の変形例を示す空調システムフロー図である。
【0041】
図5に示す実施形態は、冷媒自然循環システム(VCS)を空調機50のみに適用した構成のものであるが、本実施形態(図6)の空調システムは、冷媒自然循環システム(VCS)を空調機10、50及び外調機30に適用した構成を有する。
【0042】
空調機10、50及び外調機30の冷却コイル12、34、52は、熱媒体循環配管53、54、57、58を介して冷水循環タンク56内の熱交換器55、59に接続される。冷水循環タンク56には、冷水給送管17及び冷水還流管18が接続され、冷水循環回路の冷水が冷水循環タンク56内を循環する。冷却コイル12、34、52、熱媒体循環配管53、54、57、58、熱交換器55、59及び冷水循環タンク56は、冷媒自然循環システム(VCS)を構成し、熱交換器55、59において凝縮した冷媒は、熱媒体循環配管53、57内を重力下に流下して冷却コイル12、34、52に供給され、冷却コイル12、34、52において気化した冷媒は、熱媒体循環配管54、58内を上昇し、熱交換器55、59に還流する。このような構成によれば、冷媒循環のための動力を大幅に削減することができる。
【実施例】
【0043】
図2は、図1に示す空調システムを備えたサーバ室1の構造を示す縦断面図であり、図3及び図4は、図2のI−I線及びII−II線における断面図である。なお、図2〜図4には、空気循環回路を循環する空気流の流れが、矢印によって概念的に示されている。また、図2〜図4の各図において、図1に示す各構成要素と実質的に同じ構成要素については、同一の参照符号が付されている。
【0044】
サーバ室1の床構造体2は、鋼構造トラスからなるトラス梁20の上弦材21によって床面構成材3を支持し、トラス梁20の下弦材22によってコンクリート構造の床版4を支持する構造を有する。トラス梁20を相互連結する小梁23には、空調機10の支持架台25を床下チャンバ9内に懸吊するための横架材24が懸架される。架台25の支柱26は横架材24から垂下し、架台25の支持ステージ27が、支柱26の下端部に水平に固定され、床版4の上面から間隔を隔てて配置される。
【0045】
空調機10は、防振装置等を介して支持ステージ27上に支持される。冷却コイル12は、コールドアイルCの両側に配置されたサーバラックSと対応するように対をなして空調機10の筐体内に配置される。空調機10の給気ファン11は、左右の冷却コイル12を介して床下チャンバ9の空気を吸引する。なお、冷却コイル12は、図1に示すように熱媒体循環配管13、14を介して屋外機15に接続される。
【0046】
前述の如く、ホットアイルHから床吸込口7を介して床下チャンバ9に至る暖気の流れ(二重線の矢印で示す)と、冷却コイル12から床吹出口8を介してコールドアイルCに至る冷気の流れ(実線矢印で示す)と、サーバラックS内の気流(破線で示す)とから構成される空気循環回路が、給気ファン11の送風圧力下に形成される。冷却コイル12は、空気循環回路を循環する空気を冷却し、サーバラックS内のサーバ機器等の発熱を除熱する。
【0047】
図7及び図8は、図5及び図6に示す空調システムを備えたサーバ室1の構造を示す断面図である。
【0048】
空調機50は、コールドアイルC内の温度分布や、気流分布等を改善するのに適した位置のみに配置され、間隔を隔てた空調機50の間には、遮蔽板Bが配置される。その他の構成は、前述の実施例(図2〜図4)と実質的に同じであるので、更なる説明は、省略する。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において種々の変更又は変形が可能であり、かかる変更又は変形例も又、本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【0050】
例えば、上記実施形態及び実施例においては、空冷ヒートポンプ式空調機又は冷水循環式空調機をコールドアイル直下の空調機として使用しているが、床下チャンバに冷却水循環系配管を配管し、水冷式ヒートポンプ式空調機を床下チャンバ内に配設しても良い。
【0051】
また、筐体頂面にファンを備え、筐体頂面から熱排気する型式のサーバラックを用いたサーバ室に本発明を適用し、例えば、コールドアイル上部の補助的な空調機によって頂面からの熱排気を冷却するようにしても良い。
【0052】
更には、底面から冷気を導入する型式のサーバラックを用いたサーバ室に本発明を適用し、例えば、コールドアイル直下の空調機の冷気をサーバラックの底面に供給するようにしても良い。
【0053】
また、上記実施形態及び実施例においては、コールドアイル直下の空調機を等間隔に配置しているが、空調機を不規則な間隔に配置し、或いは、相互間隔を隔てることなく連接配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、多量の顕熱を発熱する電子機器をホットアイル・コールドアイル方式に配置した室を冷房するための空調システムに適用される。本発明の空調システムは、多数又は大容量のIT機器、電算機、通信機器等を室内に収容したサーバ室、データセンタ、IT機器管理施設、携帯電話基地局等の空調システムとして好適に使用し得る。本発明の空調システムによれば、多量の顕熱を除去すべく多量の冷気循環を要する室又は施設において、サーバ機器等の段階的実装又は撤去や、不均一な室内熱負荷分布等に適応するとともに、室内における空調機の保守又は維持・管理等の作業の頻度を低減することができ、しかも、冷却コイルの凝縮水又は結露水等がサーバ機器等に影響する事態を防止することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 サーバ室
2 床構造体
3 床面構成材
4 床版
7 床吸込口
8 床吹出口
9 床下チャンバ
10 空調機
11 給気ファン
12 冷却コイル
13、14 熱媒体循環配管
15 屋外機
17 冷水給送管
18 冷水還流管
20 トラス梁
25 支持架台
27 支持ステージ
30 外調機
40 排気系
50 空調機
51 給気ファン
52 冷却コイル
53、54、57、58 熱媒体循環配管
55、59 熱交換器
56 冷水循環タンク
60 吹出口
B 遮蔽板
C コールドアイル
E 遮蔽体
H ホットアイル
S 空冷式サーバラック
Sa 筐体前面
Sb 筐体背面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多量の顕熱を発熱する電子機器をホットアイル・コールドアイル方式に配置した室に設けられる空調システムにおいて、
コールドアイルの直下において床下チャンバ内に配置された空調機を有し、
該空調機は、空気冷却用冷却器、空気循環用給気ファン及び冷気送風口を備え、
前記冷気送風口は、コールドアイルの床面に配置された床吹出口からなり、又は該床吹出口に接続されており、
前記給気ファンは、ホットアイルの床面に配置された床吸込口を介してホットアイルの暖気を吸引し、前記冷却器によって冷却し、冷気を前記床吹出口から上向きにコールドアイルに送風する空気循環回路を形成し、
前記冷気は、前記電子機器と熱交換し、前記暖気としてホットアイルに流出し、
前記冷却器は、前記暖気を冷却して前記電子機器の顕熱を除熱することを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記コールドアイルの頂部に配置された補助空調機を更に有し、該補助空調機は、前記電子機器と熱交換した暖気を吸引して冷却し、冷却後の空気をコールドアイルに下向きに送風することを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記補助空調機の空気冷却用冷却器は、冷媒自然循環方式の熱媒体回路の気化器又は蒸発器を構成することを特徴とする請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記空調機の空気冷却用冷却器は、冷媒自然循環方式の熱媒体回路の気化器又は蒸発器を構成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項5】
前記空調機は、前記床下チャンバに配置された架台によって支持され、前記室の床面のレベルに近接し且つ前記床下チャンバの床面から間隔を隔てて配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−2390(P2012−2390A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135617(P2010−135617)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】