説明

高速低圧エミッタを使用する二重消火式火災鎮圧システム

【課題】液体消火剤及び気体消火剤を共鳴管よりも効率良く放出するして混合させる。
【解決手段】エミッタは、液体消火剤及び気体消火剤の供給源に連通して気体流を作り、液体を霧化すると共に気体流に混入して得られた液体気体流を火災に放出する。第1及び第2衝撃波面を有する気体流を、エミッタを使用して形成し、液体気体流を形成するために、一方の衝撃波面にて液体を霧化すると共に気体流に混入し、液体気体流を火災に放出する。また、エミッタから放出された液体気体流に、複数の衝撃波ダイアモンド形が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2又はそれ以上の消火剤を連続流で放射する機器を使用する火災鎮圧システムに関し、連続流は、機器から火災に放出される。
【背景技術】
【0002】
火災制御及び鎮圧スプリンクラシステムは、概して、通常保護されるべき領域周辺の天井に据え付けられる複数の個別スプリンクラヘッドを含む。スプリンクラヘッドは、常態では、閉鎖状態に維持されると共に、火災状態が発生した時を判定するために、感熱検知部材を含む。感熱部材の駆動に際して、スプリンクラヘッドは開放され、火災を消火するために、個別のスプリンクラヘッド各々において、圧縮された水が自由に流通させられる。個々のスプリンクラヘッドは、(例えば光又は普通危険状態を)提供するように意図された保護のタイプによって、また保険業者試験所、工場相互調査組合、及び/又は全国火災保護協会等の業界で受入れられている格付け機関によって決定されるような、個々のスプリンクラの格付けによって決定される距離だけ、互いに間隔があけられている。
【0003】
熱駆動及びスプリンクラヘッドによる適切な散水の間の遅延を最小にするために、スプリンクラヘッドを水源と連結する配管は、多くの場合には、常に水が充填されている。これは、湿式システムとして知られており、スプリンクラヘッドの熱駆動に際して、水はスプリンクラヘッドで直ぐに利用可能である。しかしながら、スプリンクラシステムが、倉庫等の熱のない領域に装着されるといった多くの状況がある。これらの状況では、湿式システムが使用されるならば、また特に、水が長期間に亘り、配管システム内を流れていないので、管内の水が凍結する危険がある。これは、スプリンクラヘッドが熱作動させられる一方で、管内に氷塊が存在するならば、スプリンクラシステムの作動に悪影響を与えるだけでなく、このような凍結は、もし大規模であるならば、管の破裂に至り兼ねず、スプリンクラシステムを破壊する。従って、そのような状況下では、非駆動状態の間には、水が全く存在しない配管を有するように、通常慣行されている。これは、乾式防火システムとして知られている。
【0004】
駆動させられた時に、従来のスプリンクラヘッドは、水等の火災鎮圧液体の霧を、火災領域に開放する。水霧は、ある程度は効果的であるが、幾つかの欠点を有する。霧を含む水滴は相対的に大きく、また燃焼領域にある家具又は財物へ、水による破損を生じさせる。水霧はまた、限定的な火災鎮圧モードを呈する。例えば、霧は相対的に大きい滴からなり、小さい全体表面積をもたらすので、効率良く熱を吸収せず、従って、火災の周りにおける周囲空気温度を低下させることにより、火災の広がりを阻止するのに効率良く作動し得ない。大きな滴はまた、放射熱伝達を効果的に阻止せず、それ故、このモードによって、火災が広がるのを許容する。霧は更に、酸素を火災周りの周囲空気から効率良く移さず、また、煙流を抑えると共に、火元を攻撃するために、滴の十分な下方への運動量が、通常は存在しない。
【0005】
これらの欠点を考慮して、共鳴管等の火災鎮圧液体を霧化する機器が、従来のスプリンクラヘッドの置換物として考えられている。共鳴管は、音響エネルギを使用し、音響エネルギは、音響エネルギが存在する共鳴管近くの領域に噴射される液体を霧化するために、気体噴流及び空隙の間の振動圧力波相互作用によって生じさせられる。
【0006】
残念ながら、周知の構成及び作動モードの共鳴管は、概して、防火用途において効果的であるために必要な流体流特性を有していない。共鳴管からの流体質量は、不適切になりがちであり、また、霧化工程によって生じさせられる水粒子は、相対的に低速を有する。
その結果、これらの水粒子は、約8インチ(20.3センチメートル)から16インチ(40.7センチメートル)のスプリンクラヘッド内で、大きく減速させられ、また、火災によって生じさせられる燃焼気体の上昇渦を抑えることができない。それ故、水粒子は、効果的な火災鎮圧のために、火元に達し得ない。また、霧化によって生じさせられる水粒子寸法は、周囲温度が55度未満であるならば、鎮火のために酸素含有量を低下させるのに効果的ではない。更に、周知の共鳴管は、高圧で送達される相対的に大きい気体質量を必要とする。これにより、かなりの音響エネルギを生じさせると共に、この音響エネルギが横断するデフレクタ面から隔離する不安定な気体流を生じさせて、不十分な水の霧化に至る。
【0007】
火災を消火するために不活性ガスのみを使用するシステムはまた、ある欠点を被っており、主な欠点としては、火災を消火するために必要な酸素濃度の減少である。例えば、純窒素を使用する気体システムは、火災における酸素含有率が12パーセント又はそれ未満になるまで、火炎を消火しない。この濃度は、周知の安全に呼吸できる限界値である15パーセントよりも著しく小さい。12パーセントの酸素濃度にさらされ、呼吸装置を有さない人間は、酸素の欠乏により意識を失う前に、5分未満を有する。10パーセントの酸素濃度では、暴露限界は約1分である。それ故、このシステムは、火災から逃れ或いは火災を消火しようとする人間に、危険をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液体消火剤及び気体消火剤の両方を放出し得ると共に、周知の共鳴管よりも効率良く作動する霧化エミッタを有する火災鎮圧システムに対する必要性が、明らかに存在する。このようなエミッタは理想的には、液体粒子が火煙流を抑えると共に、火災の鎮圧により効果的であるように、より小さい寸法の分散を有する一方で、放出の際に大きな運動量を維持する十分な量の霧化液体粒子を生じさせるために、より低圧でより少ない量の気体を使用する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、気体消火剤及び液体消火剤を含む火災鎮圧システムに関する。液体消火剤を霧化すると共にこの液体消火剤を気体消火剤に混入させ、且つこの気体及び液体消火剤を火災に放出するために、少なくとも1個のエミッタが使用される。気体導管は、気体消火剤をエミッタに運ぶ。配管網は、液体消火剤をエミッタに運ぶ。気体導管の第1弁は、エミッタへの気体消火剤の圧力及び流速を制御する。配管網の第2弁は、エミッタへの液体消火剤の圧力及び流速を制御する。圧力変換器は、気体導管内の圧力を測定する。火災検知器は、エミッタに近接して位置決めされる。制御システムは、第1及び第2弁、圧力変換器、及び火災検知器と通信する。制御システムは、圧力変換器及び火災検知器から信号を受信すると共に、火災検知器からの火災を指示する信号に呼応して、弁を開放する。制御システムは、エミッタを作動させるために、気体導管内において、気体消火剤の所定圧力を維持するように、第1弁を作動させる。
【0010】
好適には、エミッタは、第1弁の下流で、気体導管と連結される導入口及び排出口を有するノズルを含む。ダクトは、第2弁の下流で、配管網と流体連通するように連結される。ダクトは、排出口に隣接して位置決めされる出口オリフィスを有する。デフレクタ面は、排出口から間隔があけられた状態で、排出口と対向するように位置決めされる。デフレクタ面は、ノズルと実質的に直交するように配向される第1面部と、第1面部に隣接して位置決めされると共に、ノズルと非直交状態に配向される第2面部とを有する。液体消火剤は、オリフィスから放出可能であり、また気体消火剤は、ノズル排出口から放出可能である。液体消火剤は、気体消火剤に混入されると共に、霧化されることにより、デフレクタ面に衝突すると共にそのデフレクタ面から離れて火災へ流れる液体気体流が形成される

【0011】
好適には、デフレクタ面は、気体消火剤が、排出口及びデフレクタ面の間に第1衝撃波面を形成すると共に、第2衝撃波面がデフレクタ面に近接して形成されるように位置決めされる。ダクトは、出口オリフィスから放出された液体消火剤が、一方の衝撃波面に近接して、気体消火剤に混入されるように、位置決めされると共に配向される。デフレクタ面はまた、衝撃波ダイアモンド形が液体気体流に生じるように、位置決めされてもよい。
【0012】
本発明はまた、火災鎮圧システムの作動方法を含む。本システムは、圧縮気体消火剤源と流体連通するように連結される導入口と、排出口とを有するノズルを含む。ダクトは、圧縮液体消火剤源と流体連通するように連結される。ダクトは、排出口に隣接して位置決めされる出口オフィリスを有する。デフレクタ面は、排出口と間隔があけられた状態で、排出口と対向するように位置決めされる。本方法は、
(a)液体消火剤を出口オリフィスから放出する工程と、
(b)気体消火剤を排出口から放出する工程と、
(c)排出口及びデフレクタ面の間に、第1衝撃波面を設ける工程と、
(d)デフレクタ面に近接して第2衝撃波面を設ける工程と、
(e)液体気体流を形成するために、液体消火剤を気体消火剤に混入する工程と、
(f)液体気体流をエミッタから発射させる工程とを含む。
【0013】
本方法はまた、液体気体流に、複数の衝撃波ダイアモンド形を設ける工程を含んでもよい。
液体消火剤は、一方の衝撃波面に近接して、気体消火剤に混入されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る二重消火火災鎮圧システムの例証実施形態を示す概略図。
【図1A】本発明に係る二重消火火災鎮圧システムの例証実施形態を示す概略図。
【図2】図1に示される火災鎮圧システムに使用される高速低圧エミッタの縦方向断面図。
【図3】図2に図示されるエミッタの構成部品を示す縦方向断面図。
【図4】図2に図示されるエミッタの構成部品を示す縦方向断面図。
【図5】図2に図示されるエミッタの構成部品を示す縦方向断面図。
【図6】図2に図示されるエミッタの構成部品を示す縦方向断面図。
【図7】作動に際して、図2に示されるエミッタのシュリーレン写真に基づいてエミッタからの流体流を図示する図。
【図8】エミッタの別の実施形態における予想流体流を図示する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係る二重消火火災鎮圧システム11の一例を、概略形態で示す。システム11は、複数の高速低圧エミッタ10を含み、以下に詳細に説明される。エミッタ10は、潜在的火災危険域13に配置され、システムは、1又は複数のこの潜在的火災危険域を含み、各潜在火災危険域は、それ自体のエミッタのバンクを有する。明瞭にするために、1つの潜在火災危険域のみがここに説明されており、当然のことながら、説明は、図示される別の火災危険域にも適用可能である。
【0016】
エミッタ10は、配管網15を介して、圧縮液体消火剤源17に連結される。液体剤の実際例には、(Novec(商標名)1230の商標名で売られている)ヘプタフルオロプロパン、ブロモクロロジフルオロメタン、及びブロモトリフルオロメタン等の合成化合物を含む。水、特に帯電装置の付近で使用する脱イオン水も適している。脱イオン水は、その低導電率に起因して、アークの発生を減少させる。
【0017】
各エミッタのすぐ上流に位置決めされる個々の流量制御機器71を使用して、各エミッタ10への液体流を制御するのが好ましい。好適には、個々の制御機器は、流量カートリッジ及び流量カートリッジ及びエミッタを保護するためにろ過器を含む。流量カートリッジは、既知の圧力範囲に関して、一定の流速を自動的に供給するように作動すると共に、供給源における水圧の変動、並びに長い管距離及びエルボー等の継手の介入に起因する摩擦水頭損失を補償するのに有用である。以下に説明される適切なエミッタの作動は、各エミッタにおいて、流量を制御することにより保証される。供給源17からエミッタ10への液体流を制御するために、液体制御弁19が使用されてもよく、流速の精密な制御は、個々の流量制御機器71によって管理される。
【0018】
エミッタはまた、気体導管網23を介して、圧縮気体消火剤源21と流体連通している。候補となる気体消火剤には、Inergen(商標名)(窒素52パーセント、アルゴン40パーセント、二酸化炭素8パーセント)及びArgonite(商標名)(アルゴン50パーセントと窒素50パーセント)等の大気気体混合物、並びにフルオロフォーム、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン等の合成化合物を含む。気体消火剤は、図1に図示されるように、高圧シリンダ25に保持されてもよい。シリンダ25は、2500psig(17MPaG)まで圧縮されてよい。大容量の気体を必要とする大型システムでは、略30,000ガロン(136キロリットル)の容量を有する1又は複数の低圧タンク(約350psig(2.4MPaG))が使用されてよい。或いは、大容量高圧タンク(例えば、2600psig(18MPaG)の圧力で30立方フィート(0.9立方メートル))が、使用されてもよい。図1Aに示される別の実際的な実施形態において、気体消火剤は、全ての火災危険域13の全てのエミッタ10に共通する単一のタンク73に貯蔵されてもよい。
【0019】
シリンダ(又はタンク73)の弁27は好適には、開放状態において、高圧マニホルド29と連通した状態に保たれる。マニホルドから気体導管23への気体の流速及び圧力は、高圧気体制御弁31によって制御される。導管23の高圧制御弁31の下流における圧力は、圧力変換器33によって測定される。各火災危険域13におけるエミッタ10への気体流は更に、圧力変換器の下流にある低圧弁35によって制御される。
【0020】
各火災危険域13は、1又は複数の火災検知器37によって監視される。これらの検知器は、炎、熱、温度上昇速度の感知、煙の検知、又はこれらの組み合わせ等、様々な周知の火災検知モードのいずれかで作動する。
【0021】
それ故、システム構成部品は、制御システム39によって調整及び制御され、制御システム39は、例えば、制御パネル表示器(図示なし)、常駐ソフトウェア、及びプログラムできる論理制御回路43を有するマイクロプロセッサ41を含む。制御システムは、以下のように、情報を受け取ると共に制御指令を出すために、システム構成部品と通信する。
【0022】
各シリンダ弁27は、マイクロプロセッサ41と通信する監視ループ45によって、その状態(開放又は閉鎖)が監視され、マイクロプロセッサ41は、シリンダ弁の状態を視覚的に指示する。液体制御弁19もまた、通信ライン47を介して、マイクロプロセッサ41と通信しており、マイクロプロセッサ41は、制御システムによって、弁19が監視及び(開放又は閉鎖)制御されるのを可能にする。同様に、気体制御弁35は、通信ライン49を介して、制御システムと通信しており、また火災検知器37も、通信ライン51を介して、制御システムと通信する。圧力変換器35は、その信号を、通信ライン53を通じて、プログラムできる論理制御回路43へ供給する。プログラムできる論理制御回路はまた、通信ライン55を通じて、高圧気体弁31と通信すると共に、通信ライン57を
通じて、マイクロプロセッサ41と通信する。
【0023】
作動に際して、火災検知器37は、火災現象を感知すると共に、信号を、通信ライン51を通じてマイクロプロセッサ41に供給する。マイクロプロセッサは、論理制御回路43を駆動する。注目すべきであるが、制御回路43は、別個の制御回路又は高圧制御弁31の一体部分であってよい。論理制御回路43は、気体導管23内圧力を指示する信号を、通信ライン53を通じて、圧力変換器33から受信する。論理制御回路43は、高圧気体弁31を開放する一方、マイクロプロセッサ41は、気体制御弁31及び液体制御弁19を、夫々の通信ライン49及び47を使用して開放する。それ故、タンク25からの気体消火剤及び供給源17からの液体消火剤は、気体導管23及び液体配管網15夫々を介して、流れるように許容される。エミッタ10の適当な作動に好適な液体消火剤圧力は、以下に説明されるように、約1psig(7KPaG)及び約50psig(350KPaG)の間である。流量カートリッジ又は他のこのような流量制御機器71は、必要とされる液体流速を維持する。論理制御回路43は、エミッタ10を以下に説明されるパラメータ内で作動させるべく、気体消火剤の正しい圧力(約29psia(200KPaA)及び約60psia(410KPaA)の間)及び流速を維持するために、弁31を作動させる。1/2インチ(1.3センチメートル)のエミッタの試験によれば、25psi(170KPa)の圧力及び150scfm(4.28立方メートル/分)の流速で供給される窒素が効果的である。
【0024】
エミッタ10によって放出される二重の消火剤は、15パーセント以上の酸素濃度が存在する火災を消火するために、合わせて作用する。これは、窒素を使用すると共に、火災が消火される前に、12パーセント又はそれ以下の酸素濃度の低下を必要とする様々な気体のみのシステムよりも著しく良い。15パーセントの酸素濃度が周知の安全レベルであると共に、呼吸可能な大気を供給するので、可能であれば、少なくとも15パーセントの酸素濃度を維持すると有利である。作動に際して、気体消火剤は、火炎気流の温度を、火の臨界断熱温度にまで低下させる。(これは、火が自己消火する温度である。)火炎気流温度を低下させるのに加えて、気体の成分は、酸素濃度をも低下させるように作用する。液体消火剤は、火から熱を吸収することにより、鎮火させるために、ヒートシンクとして作用する。
【0025】
火災が消火されたことが感知された時に、マイクロプロセッサ41は気体弁及び液体弁35及び19を閉鎖し、且つ論理制御回路43は、高圧制御弁31を閉鎖する。制御システム39は、全ての火災危険域13を継続的に監視し、また別の火災時或いは当初の火災の再点火時には、上述された連続が繰り返される。
【0026】
図2は、本発明に係る高速低圧エミッタ10の縦方向断面図を示す。エミッタ10は、導入口14及び排出口16を有する先細ノズル12を含む。排出口16は、多くの用途において、直径が約1/8インチ(0.3センチメートル)から約1インチ(2.5センチメートル)の間の範囲に亘ってよい。導入口14は、圧縮気体消火剤供給源、例えばシリンダ25(図1も参照)と流体連通しており、圧縮気体消火剤供給源は、気体消火剤を所定の圧力及び流速でノズルへ供給する。ノズル12は湾曲先細内面20を有すると有利であるが、直線テーパ面等の他の形状も利用できる。
【0027】
デフレクタ面22は、ノズル12と間隔があけられた状態で位置決めされ、間隙24がデフレクタ面及びノズル出口の間に設けられる。間隙は、寸法が約1/10インチ(0.3センチメートル)から約3/4インチ(3.4センチメートル)の間の範囲に亘ってよい。デフレクタ面22は、1又は複数の支持脚26によって、ノズルから間隔があけられた状態で保持される。
【0028】
好適には、デフレクタ面22は、ノズル排出口16と略整列させられた平坦面部28と、平坦部と隣接すると共に平坦部を包囲する傾斜面部30とを含む。平坦部28は、ノズル12からの気体流と略直交すると共に、排出口16の直径と略等しい最小直径を有する。傾斜部30は、平坦部から後退角32で配向される。後退角は、約15度から約45度の間の範囲に亘ってよく、また間隙24の寸法と合わせて、エミッタからの流れの分散パターンを決定する。
【0029】
デフレクタ面22は、図3に示されるような湾曲上縁34及び図4に示されるような湾曲縁36等、他の形状を有してもよい。図5及び図6に示されるように、デフレクタ面22は、平坦部40及び後退角傾斜部42(図5)又は湾曲部44(図6)によって包囲される閉鎖端共鳴管38を含んでもよい。共鳴空隙の直径及び深さは、排出口16の直径と略等しくてよい。
【0030】
再び図2を参照すると、環状室46がノズル12を包囲する。室46は、圧縮液体源、例えば図1の液体消火剤を室へ所定の圧力及び流速で供給する液体消火剤源17と流体連通する。複数のダクト50が、室46から延出する。各ダクトは、ノズル排出口16に隣接して位置決めされる出口オフィリス52を有する。出口オリフィスは、約1/32インチ(0.8ミリメートル)から約1/8インチ(3ミリメートル)の直径を有する。ノズル排出口16及び出口オリフィス52の間の好適な距離は、ノズル排出口の縁から出口オリフィスの最も近い縁まで半径線に沿って測定されると、約1/64インチ(0.4ミリメートル)から約1/8インチ(3ミリメートル)の間の範囲に亘る。液体消火剤は、圧縮供給源17から室46へ、またダクト50を通り流れ、各オリフィス52から出て、そこで、以下に詳細に説明されるように、ノズル12を通り流れ且つノズル排出口16から出る圧縮気体供給源からの気体消火剤流によって霧化される。
【0031】
エミッタ10は、火災鎮圧システムで使用するように構成される時には、ノズル導入口14において、約29psia(200KPaA)から約60psia(410KPaA)の間の好適な気体圧力で、また室46内において、約1psig(7KPaG)から約50psig(350KPaG)の間の好適な液体消火剤圧力で作動するように構成される。
【0032】
エミッタ10の作動は、作動するエミッタのシュリーレン写真分析に基づく図面である図7を参照して、説明される。
気体消火剤85は、約マッハ1でノズル排出口16を出ると共に、デフレクタ面22に衝突する。同時に、液体消火剤87は、出口オリフィス52から放出される。
【0033】
気体消火剤85及びデフレクタ面22の間の相互作用は、ノズル排出口16及びデフレクタ面22の間に、第1衝撃波面54を確立する。衝撃波面は、超音速から亜音速への流速移行域である。オリフィス52を出た液体消火剤87は、エミッタのこの作動モードにおいて、第1衝撃波面54の領域に入らない。
【0034】
第2衝撃波面56は、平面部28及び傾斜面部30の間の境界において、デフレクタ面に近接して生じる。オリフィス52から放出された液体消火剤87は、第2衝撃面56に近接して、気体消火剤85に混入されて、液体気体流60を形成する。混入方法の一つでは、気体噴流及び周囲の間の差圧を利用する。衝撃波ダイアモンド形58が、傾斜部30に沿った領域に生じ、衝撃波ダイアモンド形は、液体気体流60内に制限されており、エミッタから外方且つ下方に突出する。衝撃波ダイアモンド形もまた、超音速及び亜音速の間の移行域であると共に、ノズルを出た時に、過剰膨張させられた気体流の結果である。過剰膨張させられた流れは、流れ領域を描き、外圧(即ち、この場合には雰囲気圧)は、ノズルにおける気体出口圧力よりも高い。これにより、自由噴流境界89から反射する斜
め衝撃波が生じ、液体気体流60及び雰囲気の間の境界を定める。斜め衝撃波は、衝撃波ダイアモンド形を形成するために、互いに向けて反射させられる。
【0035】
大きな剪断力が、液体気体流60に作られ、理想的には、デフレクタ面から隔離しないが、隔離が60で示されるように生じるならば、エミッタは未だ効果的である。第2衝撃波面56に近接して混入される液体消火剤は、霧化の主要な機能であるこれらの剪断力を受ける。液体消火剤はまた、衝撃波ダイアモンド形58にも当り、これは、霧化の二次的な発生源である。
【0036】
それ故、エミッタ10は、直径20マイクロメートル未満の液体粒子62を生じさせる複数の霧化機構と合わせて作動し、粒子の大部分は、10マイクロメートル未満の寸法をとる。より小さい滴は、空気中に浮遊する。この特性により、これらの滴は、より大きな火災鎮圧効果のために、火元に近接して維持される。更に、粒子は、大きな下方への運動量を維持し、液体気体流60が、火災に起因する燃焼気体の上昇渦を抑えることが可能になる。測定によれば、約7,000フィート(2000メートル)/分の速度を有する液体気体流では、エミッタから18インチ(46センチメートル)であり、1,700フィート(520メートル)/分では、エミッタから8フィート(3メートル)である。エミッタからの流れは、エミッタが作動させられる部屋の床に衝突することが観察されている。デフレクタ面22の傾斜部30の後退角32は、液体気体流60の狭角64に対する著しい制御をもたらす。約120度の狭角が成し遂げられる。流れの発散パターンに対する付加的な制御は、ノズル排出口16及びデフレクタ面の間の間隙24を調整することにより成し遂げられる。
【0037】
エミッタの作動中には、火災の間に部屋の天井に集まる煙層は、ノズルを出ると共に流れ60に混入される気体消火剤85の流れに吸込まれることが更に観察されている。これにより、以下に説明されるように、複数のエミッタ消火特性モードが加わる。
【0038】
エミッタは、以下に説明されるように、液体消火剤の極度に小さい粒子寸法への霧化に起因して、温度低下を生じさせる。これは、熱を吸収すると共に、燃焼の広がりの鎮静化を助ける。気体消火剤流に混入される液体消火剤流は、部屋の酸素を、燃焼を援助し得ない気体に置き換える。更に、流れに混入された煙層の形態をなす酸素除去気体はまた、火災の酸素欠乏に貢献する。しかしながら、エミッタが配置される部屋の酸素レベルは、約15パーセント未満まで低下しないことが観察されている。液体消火剤粒子及び混入された煙は、火からの放射熱伝達を遮断する霧を生じさせて、ひいては、この熱伝達モードにより、燃焼の広がりを鎮静させる。エミッタによって生じさせられる混合及び乱流はまた、火の周りの領域における温度低下を助ける。
【0039】
エミッタは、大きな音響エネルギを生じさせない点において、共鳴管と異なる。噴射騒音(物体を越えて移動する空気によって生じさせられる音)は、エミッタからの唯一の音響出力である。エミッタの噴射騒音は、約6キロヘルツ(周知のタイプの共鳴管の作動周波数の半分)よりも高い周波数成分を有さず、また、霧化に大きく役立たない。
【0040】
更に、エミッタからの流れは、共鳴管からの流れと異なり、安定的であると共に、デフレクタ面から離れず(或いは60aで示されるように、遅れて離れるように経験する)、共鳴管からの流れは、不安定であると共にデフレクタ面から離れ、それ故、不十分な霧化、或いは霧化の損失にさえも至る。
【0041】
別のエミッタの実施形態101が、図8に示される。エミッタ101は、ノズル12に向けて角度をなして配向されるダクト50を有する。ダクトは、第1衝撃波面54に近接して、液体を気体に混入させるために、液体消火剤87を気体消火剤85へ向けるように
、角度をなして配向される。この配置は、エミッタ11から発射される液体気体流60の形成において、更に別の霧化領域を付加する。
【0042】
本発明に係るエミッタ及び二重消火剤を使用する火災鎮圧システムは、火災の広がりを制御するのに優れて適している一方で、水を使用する周知のシステムよりも少ない気体及び液体を使用する複数の消火モードを達成する。本発明に係るシステムは、通風火災状況において、特に効果的且つ効率的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体消火剤を霧化すると共に気体消火剤に混入し、且つ該気体及び液体消火剤を火に放出する少なくとも1個のエミッタを備える火災鎮火システムであって、
前記エミッタは、
前記気体消火剤の供給源に連通し、気体消火剤を導入する導入口及び気体消火剤を排出するように直径が設定された排出口を有するノズルと、
前記液体消火剤の供給源に連通し、且つ前記ノズルの排出口の縁から径方向外方において同排出口に隣接し、ノズルの排出口から気体消火剤が排出されるのと同時に液体消火剤を排出するオリフィスを備えたダクトと、
前記ノズルの排出口から排出される気体消火剤の流れる方向に対して直交するように配向され、且つ排出口と等しい直径を有する平面部と、同平面部を包囲するように平面部に隣接し、平面部に対して後退する角度をなすように配向される傾斜面部とからなり、前記ノズルの排出口から離間して、同排出口に対向配置されるディフレクター面とを有し、
前記気体消火剤はノズルの排出口から超音速にて放出されて平面部に衝突し速度が亜音速になり、これにより気体消火剤は排出口と平面部との間に第1の衝撃波面を、ついでディフレルター面に沿って第2の衝撃波面を発生させ、オリフィスから排出された液体消火剤は第2の衝撃波面近傍において気体消火剤と混合されて液体気体流となり火に放出されることを特徴とする火炎鎮火システム。
【請求項2】
前記気体消火剤を前記エミッタに導く気体導管と、
前記液体消火剤を前記エミッタに導く配管網と、
前記気体消火剤の前記エミッタへの圧力及び流速を制御する前記気体導管の第1弁と、
前記液体消火剤の前記エミッタへの圧力及び流速を制御する前記配管網の第2弁と、
前記気体導管内の圧力を測定する圧力変換器と、
前記エミッタに近接して位置決めされる火災検知器と、
前記第1及び第2弁、前記圧力変換器及び前記火災検知器と通信する制御システムとを含み、該制御システムは、前記圧力変換器及び火災検知器から信号を受信すると共に、該火災検知器からの火災を指示する信号に応じて、前記弁を開放し、該制御システムは、前記エミッタを作動するために、前記気体導管内における前記気体消火剤の所定圧力を維持するように、前記第1弁を駆動する
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
圧縮気体消火剤源を含む複数の圧縮気体タンクと、
前記気体タンク及び前記第1弁の上流の前記気体導管の間に流体連通をもたらす高圧マニホルドとを更に含むことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
複数の火災危険域に配置される複数の前記エミッタと、
全ての前記火災危険域の全ての前記エミッタへの圧縮気体消火剤源を含む単一の圧縮気体タンクとを更に含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記エミッタ及び前記第2弁の間の前記配管網に位置決めされる流量制御機器を更に含むことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記流量制御機器は、流量カートリッジを含むことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
複数の火災危険域に配置される複数の前記エミッタと、
前記エミッタの各1個及び前記第2弁の間の前記配管網に位置決めされる複数の流量制御機器とを更に含むことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記流量制御機器は各々、流量カートリッジを含むことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記気体消火剤は、前記気体ダクトにおいて、約29psia(200KPaA)から約60psia(410KPaA)の間の圧力を有することを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記液体消火剤は、前記配管網において、約1psig(7KPaG)から約50psig(350KPaG)の間の圧力を有することを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記デフレクタ面は、衝撃波ダイアモンド形が、前記液体気体流に生じるように位置することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のシステム。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−143318(P2011−143318A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103564(P2011−103564)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【分割の表示】特願2009−535291(P2009−535291)の分割
【原出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(503217015)ヴィクトリック カンパニー (19)
【Fターム(参考)】