説明

高電圧カソード組成物

高電圧で優れた安定性を有する、リチウムイオン電気化学セルのためのカソード組成物が提供される。これらの材料は、外側表面を有する複数個の粒子と、粒子の外側表面の少なくとも一部と接触するリチウム電極材料とを含む。粒子は、マンガン、ニッケル、及びコバルトを含む、リチウム金属酸化物を含み、リチウム電極材料は、粒子の再充電電圧対Li/Liより低い再充電電圧対Li/Liを有する。また、提供される組成物を作製する方法も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2008年3月24日に出願された、米国仮特許出願第61/038864号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
高電圧で優れた安定性を有することができる、リチウムイオン電気化学セルのためのカソード組成物が提供される。
【背景技術】
【0003】
2次リチウムイオン電池は、典型的には、アノード、電解質、及びリチウム遷移金属酸化物の形態のリチウムを含有するカソードを含む。使用されてきた遷移金属酸化物の例としては、リチウムコバルト二酸化物、リチウムニッケル二酸化物、及びリチウムマンガン二酸化物が挙げられる。
【0004】
特定のカソード組成物を、電解質との反応から保護する試みが行われてきた。例えば、充電中又は過剰放電中のスピネルカソード中のMnの溶解を防止する試み、及びFeSカソードの分解を防止する試みが行われてきた。しかしながら、これらの試みは、一般に、「完全に脱リチオ化可能な」(セルの充電中に、完全に脱リチオ化される)カソード活性材料を必要とする。LiCoO(典型的に、充電された際、半分のリチウムのみが除去されている(例えば、Li0.5CoOに))等の「完全に脱リチオ化不可能な」カソード活性材料とは異なり、これらの材料では、充電の電圧範囲を増大することによって、更なる容量を得ることはできない。したがって、追加容量にアクセスするために、より高い電圧で完全に脱リチオ化可能な材料を安定化する必要はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高容量を有し、複数のプロセス工程を必要とすることなく、簡単かつ費用効果的に製作することができる、高電圧で電気化学的に安定な(例えば、酸化分解及び還元分解に対して安定である)再充電可能なリチウム電池のための完全に脱リチオ化不可能なカソード組成物の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、外側表面を有する複数個の粒子と、粒子の外側表面の少なくとも一部と接触するリチウム電極材料を含む層とを含む、カソード組成物であって、粒子は、マンガン、ニッケル、及びコバルトから選択される、少なくとも1つの金属を含む、リチウム金属酸化物を含み、リチウム電極材料は、粒子の再充電電圧対Li/Li未満の再充電電圧対Li/Liを有する、カソード組成物が提供される。
【0007】
別の態様では、外側表面を有する複数個の粒子を提供する工程と、リチウム電極材料を提供する工程と、リチウム電極材料を粒子上にコーティングして、粒子の外側表面の少なくとも一部と接触するリチウム電極材料を含む層を形成する工程とを含む、カソード組成物を作製する方法であって、粒子は、マンガン、ニッケル、及びコバルトから選択される、少なくとも1つの金属を含む、リチウム金属酸化物を含み、リチウム電極材料は、粒子の再充電電圧対Li/Li未満の再充電電圧対Li/Liを有する、方法が提供される。
【0008】
最後に、更に別の態様では、金属膜の形態の集電器を提供する工程と、外側表面を有する複数個の粒子を集電器上にコーティングする工程と、リチウム電極材料を、リチウム電極材料が粒子の外側表面の少なくとも一部と接触するように、粒子上にコーティングする工程とを含む、カソードを作製する方法であって、粒子は、マンガン、ニッケル、及びコバルトから選択される、少なくとも1つの金属を含む、リチウム金属酸化物を含み、リチウム電極材料は、粒子の再充電電圧対Li/Li未満の再充電電圧対Li/Liを有する、方法が提供される。
【0009】
本明細書で使用する用語を以下に定義する。
【0010】
単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈において明確にそうではないと示されていない限り、複数形の実施形態を包含する。
【0011】
「リチオ化する」及び「リチオ化」は、リチウムを電極材料に加えるためのプロセスを指す。
【0012】
「脱リチオ化する」及び「脱リチオ化」は、リチウムを電極材料から除去するためのプロセスを指す。
【0013】
「充電する」及び「充電」は、電気化学エネルギーを電池に供給するためのプロセスを指す。
【0014】
「放電」及び「放電している」は、例えば、セルを使用して所望の動作を実行するとき、電気化学エネルギーをセルから除去するためのプロセスを指す。
【0015】
「正極」とは、放電プロセス中に電気化学的還元及びリチオ化が生じる電極(しばしば、カソードと呼ばれる)を指す。
【0016】
「負極」は、放電中に電気化学酸化及び脱リチオ化が生じる電極(しばしば、アノードと呼ばれる)を指す。
【0017】
提供されるカソード組成物及び方法は、カソードの表面での電解質の酸化によるものであり得る、サイクル中の大幅な容量損失なく、高い平均電圧(約3.7V対Li/Liを超える)で動作する、電極及びリチウムイオン電気化学セルを生産することができる。大幅な容量損失は、20%程度、又は更には30%程度であってもよい。例えば、提供されるカソード組成物を用いて作製され、リチウムイオン電気化学セルに組み込まれる電極は、約4.6V〜約2.5V対Li/Liの100回の充電/放電サイクルの後に、それらの初期可逆性比容量の少なくとも90%を維持することができる。更に、提供される組成物を用いて作製されるカソードは、組成物及びサイクル条件により、4.6V対Li/Li又はそれ以上で、最大約180mAh/gの高容量を実現することができる。
【0018】
上記の要約は、本発明の全ての実施が開示された各実施形態を記載することを意図しない。以下の図面の簡潔な説明及び「発明を実施するための形態」で、例示の実施形態をより具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】実施形態に関する概略図。
【図1B】実施形態に関する概略図。
【図1C】実施形態に関する概略図。
【図2A】3つの異なる実施形態に関する断面図。
【図2B】3つの異なる実施形態に関する断面図。
【図2C】3つの異なる実施形態に関する断面図。
【図3A】比較カソード材料の走査型電子マイクロプローブ画像。
【図3B】提供されるカソード材料の一実施形態の走査型電子マイクロプローブ画像。
【図4】比較カソード材料及び実施形態の比放電容量対サイクル数のグラフ。
【図5】比較カソード材料及び別の実施形態の比放電容量対サイクル数のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明では、本明細書の説明の一部を構成し、実例として、いくつかの具体的な実施形態が示される、一連の添付の図面が参照される。本発明の範囲又は趣旨を逸脱せずに、その他の実施形態が考えられ、実施され得ることを理解すべきである。したがって、以下の「発明を実施するための形態」は、限定する意味で理解すべきではない。
【0021】
他に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される形状、量、物理特性を表わす数字は全て、どの場合においても用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。それゆえに、そうではないと示されない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲で示される数値パラメータは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて、目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。端点による数値範囲の使用には、その範囲内の全ての数(例えば1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5が含まれる)並びにその範囲内の任意の範囲が包含される。
【0022】
外側表面を有する複数個の粒子と、粒子の外側表面の少なくとも一部と接触するリチウム電極材料とを含む、カソード組成物であって、粒子は、マンガン、ニッケル、及びコバルトから選択される、少なくとも1つの金属を有する、リチウム金属酸化物を含み、リチウム電極材料は、粒子の再充電電圧対Li/Li未満の再充電電圧対Li/Liを有する、カソード組成物が提供される。機能的に、粒子は、好ましくは、4.2Vを超える電圧等の高電圧で、安定したカソード材料として、より優れて作用するリチウム金属酸化物を含む。リチウム金属酸化物は、従来のリチウムイオン電気化学セルにおけるLiCoOの代わりであってもよく、効率的なリチオ化及び脱リチオ化に望ましい可能性がある、O3層状構造を採用することができる。また、スピネル構造を有する材料が、容量の有意な損失なく、脱リチオ化及びリチオ化できる限りにおいて、スピネル構造も、提供されるカソードの構造の範囲内である。
【0023】
いくつかの実施形態では、提供されるカソード材料は、化学式、Li[LiMnNiCo]O、式中、−0.4<x<0.6、x+a+b+c=1、及びa、b、又はcのうちの少なくとも1つはゼロより大きい、を有することができ、数多くの方法で調製することができ、良好なセル性能を呈することができ、高電圧に充電される際、LiCoOと比較して、高温での電解質との反応性が非常に低いと思われる。好適なリチウム金属酸化物材料は、例えば、米国特許第6,964,828号(Luら)、米国特許公開第2004/0179993号及び同第2006/0159994号(両方ともDahnら)、米国特許第7,211,237号及び米国特許公開第2007/0202407号(両方ともEbermanら)、並びに米国特許公開第2006/0147798号及び米国特許第6,680,145号(両方ともObrovacら)に記載される。いくつかの実施形態では、リチウム金属酸化物は、化学式Li[LiMnNiCo]O、式中、−0.4<x<0.6、a、b、及びcの値のそれぞれは、0.02より大きく、かつ0.96未満、及びx+a+b+c=1、を有することができる。いくつかの実施形態では、リチウム金属酸化物は、式中、a、b、及びcの値が約0.33である、a及びbの値が約0.5であり、かつcの値が約ゼロである、a及びbの値が約0.42であり、かつcの値が約0.16である、並びにaの値が約0.5であり、bの値が約0.3であり、かつcの値が約0.2である、化学式から選択することができる。いくつかの実施形態では、リチウム金属酸化物は、化学式、LiMn1/3Ni1/3Co1/3を有することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、リチウム金属酸化物組成物は、好ましくは、効率的なリチオ化及び脱リチオ化に望ましい可能性がある、O3又はα−NaFeO種類の層状構造を採用することができる。これらの材料は、当該技術分野において周知であり、例えば、米国特許第5,858,324号、同第5,900,385号(両方ともDahnら)、及び同第6,964,828号(Luら)に開示される。いくつかの実施形態では、提供されるカソード組成物は、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、及びコバルト(Co)から選択される遷移金属を含むことができる。Mnの量は、リチウム及び酸素を除外したカソード組成物の総質量を基準として、0超〜約80モルパーセント(モル%)、約20モル%〜約80モル%、又は約30モル%〜約36モル%の範囲であってもよい。Niの量は、リチウム及び酸素を除外したカソード組成物の0超〜約75モル%、約20モル%〜約65モル%、又は約46モル%〜約52モル%の範囲であってもよい。Coの量は、リチウム及び酸素を除外した組成物の0超〜約88モル%、約20モル%〜約88モル%、又は約15モル%〜約21モル%の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、リチウム金属酸化物は、化学式、Li[LiMnNiCo]O、式中、M及びMは、2族及び13族の元素から選択される、異なる金属、式中、a、b、及びcのうちの少なくとも1つは0超であり、式中、y+m+n+p+q+r=1、−0.5≦y≦0.2、0≦m≦0.80、0≦n≦0.75、0≦p≦0.88、0.02≦q+r≦0.30、並びにq及びrのそれぞれは0超である式、を有する組成物を含むことがでる。これらの実施形態の好ましい組成物は、例えば、2008年1月25日に出願された、米国第61/023,447号に開示されるように、アルミニウム、ホウ素、カルシウム、及びマグネシウムから選択される、M及びMを有することができる。これらの実施形態のより好ましい組成物は、本質的にアルミニウム及びマグネシウムからなるM並びにMを有することができる。いくつかの実施形態では、リチウム金属酸化物は、約80モル%のニッケル、約15モル%のコバルト、及び約5モル%のアルミニウムを含むことができる。
【0025】
いくつかの他の実施形態では、リチウム金属酸化物は、例えば、米国特許公開第2006/0068289号に開示される、アルミニウムでドーピングしたリチウム金属酸化物、例えば、米国特許公開第2007/218363号に開示される、リチウム緩衝材料を有するリチウムコバルト酸化物、例えば、米国特許公開第2006/0233696号に開示される、ニッケルベースのリチウム遷移金属酸化物、又は、例えば、米国特許公開第2006/0105239号に開示される、金属組成物の勾配を有するリチウム遷移金属酸化物であってもよい。これらの開示の全ては、Paulsenらのものである。
【0026】
リチウム金属酸化物は、O3(α−NaFeO)結晶構造を有する、単相の形態であってもよく、約50nm以下のグレイン寸法を有する遷移金属グレイン、並びに酸化リチウム、硫化リチウム、ハロゲン化リチウム、及びこれらの組み合わせから選択されるリチウム含有グレインを含む、粒子を含むことができる。混合金属酸化物材料の粒子の平均直径は、約2μm〜約25μmであってもよい。
【0027】
提供されるカソード組成物は、リチウム金属酸化物粒子の外側表面の少なくとも一部と接触するリチウム電極材料を含む。接触とは、リチウム電極材料が、粒子に物理的に触れ、残りの部分が、化学結合によって粒子に接触していてもよいことを意味する。あるいは、リチウム電極材料は、例えば、静電気引力等の粒子との電子的相互作用を有するのに十分に粒子の近くにあってもよい。リチウム電極材料は、粒子が、例えば、電気化学セル内の電解質と相互作用するのを阻止若しくは防止することができる、物理障壁又は電子障壁を形成することができる。リチウム電極材料は、リチウム金属酸化物粒子と接触する、連続する、又は不連続の層を含むことができる。層は、ナノ粒子等の分離性の微粒子を含有することができ、又は層は、比較的滑らかであり、かつ連続若しくは不連続であってもよい。
【0028】
提供されるカソード組成物は、粒子の外側表面の少なくとも一部と接触するリチウム電極材料を含むことができる。リチウム電極材料は、粒子の再充電電圧対Li/Li未満の再充電電圧対Li/Liを有することができる。リチウムイオンセルの正極に関して使用される場合、「再充電電位」とは、正極、リチウム金属負極、及び電解質を含有するセルを構築し、充電/放電サイクルを実施し、1回目の充電サイクル中の、正極が、利用可能な再充電セル容量の少なくとも90%に対応するリチウムレベルまで脱リチオ化された状態になる電位を観測することによって測定される、Li/Liに対するボルトの値を指す。いくつかの正極(例えば、LiFePO)では、このリチウムレベルは、実質的に完全な脱リチオ化に対応することができる。他の正極(例えば、リチウム金属酸化物等の層状リチウム含有構造を有する、いくつかの電極)では、このリチウムレベルは、部分脱リチオ化に対応することができる。例えば、LiCoOは、約4.3Vの再充電電位対Li/Liを有する。リチウム金属酸化物は、約4.2V〜約4.4V対Li/Liの再充電電位を有することができる。リチウム電極材料の層は、粒子の表面上で良好な安定性を有することができ、電解質の酸化反応を抑制することができ、結果として、カソード材料が電極に加工され、リチウムイオン電気化学セルに組み込まれる際、改善されたサイクル性能をもたらす。いくつかの実施形態では、リチウム電極材料は、LiFePO、LiTi12、LiFeS、LiV13、及びこれらの組み合わせから選択される。他の実施形態では、LiFePO、LiTi12、及びこれらの組み合わせが好ましい。いくつかの実施形態では、上記に開示されるもの等のリチウム金属酸化物は、それらが、リチウム電極材料として使用されるリチウム金属酸化物より高い再充電電位対Li/Liを有する、リチウム金属酸化物の粒子上にコーティングされる場合、リチウム電極材料として使用することができる。例えば、LiCoO(約4.3V対Li/Liの再充電電圧を有する)を、LiNi0.5Mn1.5(約4.7V対Li/Liの再充電電位を有する)の粒子のリチウム電極材料として使用することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、提供されるカソード組成物は、カソードに作製され、リチウムイオン電池に組み込まれ、複数の充電/放電電サイクルがサイクルされる際、高比容量(mAh/g)保持率を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、提供されるカソード組成物は、約130mAh/gを超える、約140mAh/gを超える、約150mAh/gを超える、約160mAh/gを超える、約170mAh/gを超える、又は更には約180mAh/gを超える比容量を有することができる。他の実施形態では、提供されるカソード組成物は、電池が、約2.5V〜約4.6V対Li/Liでサイクルされ、温度がほぼ室温(25℃)に維持される際、C/4レートでの50回、75回、90回、100回、又はそれより多くの充電及び放電サイクルの後、高比容量を維持することができる。更に、いくつかの実施形態では、セルは、C/4レートでの約4.6V〜約2.5V対Li/Liの100回の充電/放電サイクルの後、その初期可逆性比容量の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は更には少なくとも95%を維持することができる。いくつかの実施形態では、カソードが、サイクルの最初に可能な限り最大限まで脱リチオ化するようにし、したがって後のサイクルでの不可逆性容量による損失を低減するために、最初の1回又は2回のサイクルの初期サイクルを、C/10又はC/5等のより遅いレートで行うことが好ましい。
【0030】
別の態様では、外側表面を有する複数個の粒子を提供する工程と、リチウム電極材料を提供する工程と、リチウム電極材料を粒子上にコーティングして、粒子の外側表面の少なくとも一部と接触するリチウム電極材料を含む層を形成する工程とを含む、カソード組成物を作製する方法であって、粒子は、マンガン、ニッケル、及びコバルトから選択される、少なくとも1つの金属を含む、リチウム金属酸化物を含み、リチウム電極材料は、粒子の再充電電圧対Li/Li未満の再充電電圧対Li/Liを有する、方法が提供される。リチウム電極材料を粒子上にコーティングするために使用することができる方法としては、ミリング、分散液コーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、蒸気コーティング、及び様々な真空コーティング技術が挙げられる。この方法の一実施形態は、図1A〜図1Cに図式的に図示される。リチウム電極材料の小さな微粒子101(好ましくはナノ粒子)(図1A)は、リチウム金属酸化物の複数個の粒子102(図1B)と混合され、混合物を形成する。次いで、混合物は、遊星マイクロミル(planetary micromill)等のミル内に定置され、ミリングされる。ミリングは、図1Cに示されるように、ナノ粒子101に、リチウム金属酸化物粒子102上に層を形成させることができる。合成物粒子103は、提供されるカソード組成物を作製するために使用することができる。このプロセスに使用することができる他のミルとしては、例えば、様々な種類のボールミルが挙げられる。このミリングプロセスは、リチウム金属酸化物粒子の平均直径が、リチウム電極材料の微粒子の平均直径より大いに大きい場合に、特に有用であり得る。〜より大いに大きいとは、リチウム金属酸化物粒子の平均直径が、リチウム電極材料の平均直径の少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、又は更には少なくとも1000倍であることを意味する。この方法は、本明細書において「ミリングによるコーティングプロセス」と称され、これは、結果として、図1Cに示されるような、リチウム電極材料の層を有する、複数個のリチウム金属酸化物粒子をもたらす。いくつかの実施形態では、リチウム電極材料は、LiFePOを含む、ナノ粒子を含む。これらの実施形態では、ミリングは、好ましくは、乾式ミリング技術、つまり、ミリング中に液体が実質的に存在しないものを使用することによって実施することができる。液体が実質的に存在しないとは、粒子をスラリーに懸濁する、又は分散液を形成するのに十分な液体が存在しないことを意味する。
【0031】
別の実施形態では、リチウム電極材料を提供する工程と、材料を液体中に分散する工程と、リチウム金属酸化物を含む複数個の粒子を添加して、分散液を形成する工程と、液体を除去するために、分散液を加熱する工程とを含む、カソード組成物を作製する方法であって、リチウム電極材料は、粒子の再充電電圧対Li/Li未満の再充電電圧対Li/Liを有し、混合金属酸化物は、マンガン、ニッケル、及びコバルトを含む、方法が提供される。本明細書において「ゾル−ゲルコーティングプロセス」と称される、この方法は、Qiong−yu Laiらによる文献、Materials Chemistry and Physics,94(2005)382〜387に記載される。この方法は、例えば、LiTi12の層をその上に有する、リチウムコバルト酸化物粒子を作製するのに、非常に有用であり得る。この方法を使用して、キレート剤としてクエン酸を使用し、試薬として炭酸リチウム及びチタン酸テトラブチルを使用して、LiTi12のゾル−ゲル合成を実施することができる。試薬及びキレート剤を添加した後、リチウム金属酸化物粒子を添加し、ホットプレート(例えば、50℃の)上で数時間絶え間なく撹拌してもよい。このプロセス中、ゾルゲルを形成することができ、次いで、アルコール溶媒が蒸発するため、リチウム金属酸化物粒子上に層として堆積させることができる。
【0032】
提供されるカソード組成物からカソードを作製するために、水又はN−メチルピロリジノン(NMP)等の好適なコーティング溶媒に、結合剤、導電性希釈剤、充填剤、接着促進剤、カルボキシメチルセルロース等のコーティングの粘度を変えるための増粘剤、及び当業者に既知の他の添加剤等の任意の選択される添加剤を混合して、コーティング分散液又はコーティング混合物を形成することができる。コーティング分散液又はコーティング混合物を十分に混合し、次いでナイフコーティング、切欠き棒コーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、電気スプレーコーティング、又はグラビアコーティング等の任意の適切なコーティング技術によって、箔集電器に適用することができる。提供されるカソード組成物から作製されるカソードは、結合剤を含むことができる。代表的なポリマー結合剤としては、エチレン、プロピレン、又はブチレンモノマーから調製したもの等のポリオレフィン、フッ化ビニリデンモノマーから調製したもの等のフッ素化ポリオレフィン、ヘキサフルオロプロピレンモノマーから調製したもの等の全フッ素化(perfluorinated)ポリオレフィン、全フッ素化ポリ(アルキルビニルエーテル)、全フッ素化ポリ(アルコキシビニルエーテル)、芳香族、脂肪族若しくは脂環式ポリイミド又はこれらの組み合わせが挙げられる。ポリマー結合剤の具体例としては、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、及びプロピレンのポリマー又はコポリマー、並びにフッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマーが挙げられる。本開示のカソード組成物に使用することができる他の結合剤としては、例えば、共願の米国特許出願公開第2008/0187838 A1号(Leら)に開示される、リチウム金属酸化物カソードとともに、増加した容量保持率及びサイクル寿命を有することが示された、リチウムポリアクリレートが挙げられる。リチウムポリアクリレートは、水酸化リチウムによって中和したポリ(アクリル酸)から生成することができる。米国特許出願公開第2008/0187838 A1号(Leら)は、ポリ(アクリル酸)が、任意のアクリル酸若しくはメタクリル酸のポリマー又はコポリマー、あるいはそれらの誘導体を含み、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%のコポリマーが、アクリル酸又はメタクリル酸を使用して作製されることを開示する。これらのコポリマーを形成するために使用することができる有用なモノマーとしては、例えば、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を有する、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル(分枝状又は非分枝状)、アクリロニトリル、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、ヒドロキシルアルキルアクリレート等が挙げられる。
【0033】
また、提供されるカソード組成物の実施形態は、粉末化されたカソード組成物から集電器への電子移動を促進することができる、導電性希釈剤も含むことができる。導電性希釈剤としては、炭素(例えば、負極用のカーボンブラック、並びに正極用のカーボンブラック及び片状黒鉛等)、金属、金属窒化物、金属炭化物、金属ケイ化物、及び金属ホウ化物が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な導電性炭素希釈剤としては、SUPER P及びSUPER Sカーボンブラック(共にMMM Carbon,Belgium製)等のカーボンブラック、SHAWANIGAN BLACK(Chevron Chemical Co.,Houston,TX)、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、グラファイト、炭素繊維及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
いくつかの実施形態では、カソード組成物は、カソード組成物及び/又は導電性希釈剤の結合剤との接着を促進する、接着促進剤を含むことができる。接着促進剤と結合剤との組み合わせにより、繰り返されるリチオ化/脱リチオ化のサイクル中に、粉末化された材料中で生じることがある体積変化に、カソード組成物がより適応するのを助けることができる。結合剤は、接着促進剤の添加を必要としないように、金属及び合金に十分に良好な接着性をもたらすことができる。使用される場合、接着促進剤は、米国第60/911,877号(Pham)に開示されるもの等、リチウムポリスルホネートフルオロポリマー結合剤の一部として(例えば、追加官能基の形態で)作製されてもよく、粉末材料上にコーティングされてもよく、導電性希釈剤に添加されてもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。有用な接着促進剤の例としては、特許第7,341,804号(Christensen)に記載される、シラン、チタン酸塩、及びホスホン酸塩が挙げられる。
【0035】
更に別の実施形態では、金属膜の形態の集電器を提供する工程と、外側表面を有する複数個の粒子を集電器上にコーティングする工程と、リチウム電極材料を、リチウム電極材料が粒子の外側表面の少なくとも一部と接触するように、粒子上にコーティングする工程とを含む、カソードを作製する方法であって、粒子は、マンガン、ニッケル、及びコバルトから選択される、少なくとも1つの金属を含む、リチウム金属酸化物を含み、リチウム電極材料は、粒子の再充電電圧対Li/Li未満の再充電電圧対Li/Liを有する、方法が開示される。この方法に関する実施形態は、図2A〜図2Bに図示される。図2Aに図示される実施形態では、集電器201は、その上にコーティングされた、複数個の粒子203の層を有する。リチウム電極材料ナノ粒子を含む、薄い連続する層205が、層201の上にコーティングされている。図2Bに図示される実施形態は、この実施形態のリチウム電極材料207が、粒子上に材料の「島」の不連続の層を形成するように堆積されることを除き、図2Aに図示されるものと類似する。図2Cは、リチウム電極材料209の薄い連続する層が、集電器201上に堆積された複数個の粒子203上にコーティングされる、更に別の実施形態を図示する。コーティングは、蒸気若しくはスパッタコーティング、又は液体中の分散液のコーティングを、例えば、コーティングを加熱することによって、液体を乾燥させ、分散液を凝集することによるものであってもよい。集電器は、典型的に、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、又はニッケル箔等の導電性金属の薄箔であってもよい。スラリーを集電器箔上にコーティングし、次いで空気中で乾燥させ、これに続き、通常は、加熱したオーブン内で典型的には約80℃〜約300℃で約1時間乾燥させて、溶媒を全て除去することができる。
【0036】
提供されるカソード組成物から作製されるカソードは、2つ以上の電気化学セルからリチウムイオン電気化学セル又は電池を形成するために、アノード及び電解質と組み合わせることができる。好適なアノードの例は、リチウムを含む組成物、炭素質材料、ケイ素合金組成物、及びリチウム合金組成物から作製することができる。代表的な炭素質材料としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)(E−One Moli/Energy Canada Ltd.Vancouver,BC)から入手可能)等の合成グラファイト、SLP30(TimCal Ltd.,Bodio Switzerland)から入手可能)、天然グラファイト及び硬質炭素を挙げることができる。また、有用なアノード材料は、合金粉末又は薄膜を含むことができる。そのような合金は、ケイ素、スズ、アルミニウム、ガリウム、インジウム、鉛、ビスマス、及び亜鉛等の電気化学的に活性の成分を含んでもよく、また、遷移金属ケイ化物及び遷移金属アルミナイド等の電気化学的に不活性の成分も含んでもよい。有用な合金アノード組成物は、Sn−Co−C合金、Si60Al14FeTiSnMm10及びSi70Fe10Ti1010(式中、Mmはミッシュメタル(希土類元素の合金)である)等のスズ又はケイ素の合金を含むことができる。アノードを作製するために使用される金属合金組成物は、ナノ結晶又は非晶質ミクロ構造を有することができる。そのような合金は、例えば、スパッタリング、ボールミリング、超急冷(rapid quenching)、又は他の手段により、作製することができる。また、有用なアノード材料としては、LiTi12、WO、SiO、酸化スズ等の金属酸化物、又はTiS及びMoS等の金属亜硫酸塩も挙げられる。他の有用なアノード材料としては、米国特許出願第2005/0208378号(Mizutaniら)に開示されるもの等のスズ系非晶質アノード材料が挙げられる。
【0037】
好適なアノードを作製するために使用することができる例示的なケイ素合金としては、約65〜約85モル%のSi、約5〜約12モル%のFe、約5〜約12モル%のTi、及び約5〜約12モル%のCを含む、組成物が挙げられる。有用なケイ素合金の更なる例としては、米国特許公開第2006/0046144 A1号(Obrovacら)に記載されるもの等のケイ素、銅、及び銀又は銀合金を含む組成物、米国特許公開第2005/0031957号(Christensenら)に記載されるもの等の多相ケイ素含有電極、スズ、インジウム、及びランタニドを含むケイ素合金、米国特許公開第2007/0020521号、同第2007/0020522号、及び同第2007/0020528号(全てObrovacら)に記載されるもの等のアクチニド元素又はイットリウム、米国特許公開第2007/0128517号(Christensenら)に記載されるもの等の高ケイ素含有量を有する非晶質合金、並びに米国特許出願公開第2007/269718 A1号(Krauseら)及びPCT国際公開第WO 2007/044315号(Krauseら)に記載されるもの等の負極に使用される他の粉末材料が挙げられる。また、アノードは、米国特許第6,203,944号及び同第6,436,578号(共にTurnerら)、並びに米国特許第6,255,017号(Turner)に記載される種類のもの等のリチウム合金組成物から作製することができる。
【0038】
提供される電気化学セルは、電解質を含有することができる。代表的な電解質は、固体、液体、ゲル、又はこれらの組み合わせの形態であってもよい。代表的な固体電解質としては、ポリエチレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素含有コポリマー、ポリアクリロニトリル、これらの組み合わせ、及び当業者によく知られる他の固体媒体等の高分子媒体を挙げることができる。液体電解質の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−メチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート、g−ブチロラクトン、メチルジフルオロアセテート、エチルジフルオロアセテート、ジメトキシエタン、ジグリム(ビス(2−メトキシエチル)エーテル)、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、これらの組み合わせ、及び当業者によく知られる他の媒体が挙げられる。電解質は、リチウム電解質塩により供給されてもよい。代表的なリチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラト)ボレート、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiAsF、LiC(CFSO、及びこれらの組み合わせが挙げられる。代表的な電解質ゲルとしては、米国特許第6,387,570号(Nakamuraら)及び同第6,780,544号(Noh)に記載されるものが挙げられる。電荷保持媒体の可溶化力は、好適な共溶媒を添加することによって改善することができる。任意の好適な共溶媒を使用することができる。代表的な共溶媒としては、選択した電解質を含有するリチウムイオンセルに適合する芳香族物質が挙げられる。代表的な共溶媒としては、トルエン、スルホラン、ジメトキシエタン、これらの組み合わせ、及び当業者によく知られる他の共溶媒が挙げられる。電解質は、当業者に周知の他の添加剤を含むことができる。例えば、電解質は、米国特許第5,709,968号(Shimizu)、同第5,763,119号(Adachi)、同第5,536,599号(Alamgirら)、同第5,858,573号(Abrahamら)、同第5,882,812号(Viscoら)、同第6,004,698号(Richardsonら)、同第6,045,952号(Kerrら)、及び同第6,387,571号(Lainら)、並びに米国特許出願公開第2005/0221168号、同第2005/0221196号、同第2006/0263696号、及び同第2006/0263697号(全てDahnら)に記載されるもの等のレドックスケミカルシャトル(redox chemical shuttle)を含有することができる。高電圧カソード材料に有用であり得、例えば、2009年2月5日に出願された、米国第12/366,002号に開示される、レドックスケミカルシャトルは、特に好ましい。
【0039】
いくつかの実施形態では、提供されるカソード組成物を含むリチウムイオン電気化学セルは、上記のような正極及び負極をそれぞれ少なくとも1種取り、電解質中に定置することにより、作製することができる。典型的には、CELGARD 2400微多孔性材料(Celgard LLC,Charlotte,NCから入手可能)等の微多孔性セパレータを使用して、負極が正極に直接接触するのを防ぐことができる。これは、例えば、当該技術分野において周知の2325コイン型セル等のコイン型セルにおいて、特に重要であり得る。
【0040】
開示される電気化学セルは、ポータブルコンピュータ、タブレット型表示器、携帯情報端末、携帯電話、電動式装置(例えば、個人用又は家庭用電化製品及び自動車)、機器、照明装置(例えば、懐中電灯)、及び加熱装置を含む、様々な装置で使用することができる。本発明の1つ以上の電気化学電池を組み合わせて、電池パックを提供することができる。提供されるリチウムイオンセル及び電池パックの構築並びに使用に関する更なる詳細は、当業者によく知られている。
【0041】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0042】
電気化学電池の作製
電気化学的試験のための薄膜カソード電極
電極は、以下のように調製された。約10gのPVDFを90gのNMP溶液に溶解することによって、N−メチルピロリジノン溶液中にポリビニリデンジフルオライド(PVDF、Aldrich Chemical Co.)が10%のものが調製された。7.33gのSuper−P炭素(MMM Carbon,Belgium)、NMP溶液中に73.33gの10重量パーセント(重量%)のPVDF、及び200gのNMPが、ガラス瓶内で混合された。混合した溶液は、NMP中に、PVDF及びSuper−P炭素のそれぞれを、約2.6重量%含有していた。5.25gの溶液は、Mazerustar混合器(Kurabo Industries Ltd.,Japan)を使用して、3分間、2.5gのカソード材料と混合され、均一なスラリーを形成した。次いで、スラリーは、0.25mm(0.010インチ)のノッチバー散布器を使用して、ガラスプレート上の薄いアルミホイル上に散布された。次いで、コーティングされた電極を、80℃のオーブン内で約30分間乾燥させた。次いで、電極を120℃の真空オーブン内に1時間入れて、NMP及び湿気を蒸発させた。乾燥電極は、約90重量%のカソード材料、並びに5重量%のそれぞれPVDF及びSuper Pを含有していた。活性カソード材料の質量負荷は、約8mg/cmであった。
【0043】
セル構築
コイン型セルは、乾燥室で、結果として生じるカソード電極及びLi金属アノードを用いて、2325寸法(23mmの直径及び2.5mmの厚さ)のコイン型セルハードウェアに製作された。セパレータは、LiPF(Stella Chemifa Corporation,Japan)が、エチレンカーボネート(EC)(Aldrich Chemical Co.)及びジエチルカーボネート(DEC)(Aldrich Chemical Co.)の体積比が1:2の混合物中に溶解された、1Mの溶液で湿らせた、CELGARD 2400微多孔性ポリプロピレン膜であった。
【0044】
コーティングプロセス
ミリングによるコーティングプロセス
材料Aを、材料Aより大いに小さい平均粒子寸法を有する材料Bでコーティングする、ミリングコーティングプロセスが、以下に記載される。11.0μmの平均粒子寸法を有する、5.00gのBC−618カソード材料(LiMn1/3Ni1/3Co1/3、3M,St.Paul,MNから入手可能)は、遊星マイクロミル(Fritsch)を使用して、1.5μmの平均寸法を有する、0.30gのナノ寸法のLiFePO(Phostech Lithium Inc.,Canada)と共に混合された。ミリングは、1時間実施された。
【0045】
ゾル−ゲルによるコーティングプロセス
ゾル−ゲルプロセスは、Qiong−yu Laiらによる文献、Materials Chemistry and Physics,94(2005)382−387に記載された。3.71gのチタン酸テトラブチル(TiO(C)及び0.348gのLiCOが、アルコール溶液中に共に溶解された。キレート剤として、1.285gのクエン酸が、混合物溶液に添加された。20.00gのBC−618カソード材料は、溶液と混合され、混合物は、約50℃のホットプレートの上で、約5時間絶え間なく撹拌された。撹拌プロセス中、ゲルが形成され、アルコールは、ゆっくりと蒸発した。カソード材料の表面上に、有機ポリマーが堆積された。結果として生じる乾燥カソード混合物は、穏やかに粉砕され、次いで、850℃で12時間焼結され、LiTi12を生成した。
【0046】
実施例1−ミリングプロセスを使用して、約5重量%のナノ寸法のLiFePOでコーティングされた、LiMn1/3Ni1/3Co1/3
ナノ寸法のLiFePOは、上述のミリングプロセスを使用して、約6重量%の負荷で、LiMn1/3Ni1/3Co1/3カソード粒子の表面上にコーティングされた。
【0047】
実施例2−ゾル−ゲルプロセスを使用して、5重量%のLiTi12でコーティングされた、LiMn1/3Ni1/3Co1/3
LiTi12は上述のゾル−ゲルプロセスを使用して、LiMn1/3Ni1/3Co1/3カソード材料の表面上にコーティングされた。
【0048】
結果
図3A及び図3Bは、コーティングされていないBC−618カソード材料、ミリングプロセスを使用してナノ寸法のLiFePOでコーティングされたBC−618カソード材料のSEM画像である。BC−618カソード材料は、約11.0μmの平均粒子寸法を有する。コーティングプロセスの前、LiMn1/3Ni1/3Co1/3は、図3Aに示されるように、滑らかな表面を有する。ミリングプロセスの後、LiMn1/3Ni1/3Co1/3の表面は、図3Bに示される、ナノ寸法のLiFePO粒子によって被覆される。
【0049】
図4は、参照Liアノードを有する、2325コイン型セルにおける、コーティングされていないLiMn1/3Ni1/3Co1/3対ナノ寸法のLiFePO(実施例1)でコーティングされたLiMn1/3Ni1/3Co1/3のサイクル性能を比較する、グラフである。コイン型セルは、最初の2回のサイクルを、C/10の低速で、2.5V〜4.6Vでサイクルされた。後のサイクルで、レートは、C/4に増加された。コーティングされていないLiMn1/3Ni1/3Co1/3は、100回のサイクルの後、LiFePO4でコーティングされた材料の約86%の優れた容量保持率と比較して、約60%の乏しい容量保持率を有した。理論に束縛されるものではないが、データは、LiMn1/3Ni1/3Co1/3の表面上のLiFePOコーティングが、延長サイクル中にカソード放電容量を維持するために、高電圧での、充電されたカソード材料と電解質との間の表面反応性を大幅に低減したことを示唆する。
【0050】
図5は、参照Liアノードを有する、2325コイン型セル(実施例2)における、コーティングされていないLiMn1/3Ni1/3Co1/3対LiTi12でコーティングされたLiMn1/3Ni1/3Co1/3のサイクル性能を比較する、グラフである。図2と同様に、コーティングされたLiMn1/3Ni1/3Co1/3は、100回のサイクルの後、4.6Vのカットオフ電圧で、最大89%の高容量保持率を示す。理論に束縛されるものではないが、実施例1及び2のデータは、カソード材料を、LiFePO又はLiTi12等の安定したLiイオン材料でコーティングすることによって、高電圧(4.6V等)でのカソード材料のサイクル性能を向上することができることを示唆する。
【0051】
本発明の様々な修正及び変更は、本発明の範囲及び原理から逸脱することなく当業者には明白であり、また、本発明は、上記で説明した例示的な実施形態に過度に限定して理解すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード組成物であって、
外側表面を有する複数個の粒子と、
前記粒子の前記外側表面の少なくとも一部と接触するリチウム電極材料を含む層と、を備え、
前記粒子が、マンガン、ニッケル、及びコバルトから選択される、少なくとも1つの金属を含む、リチウム金属酸化物を含み、
前記リチウム電極材料が、前記粒子の再充電電圧対Li/Li未満の再充電電圧対Li/Liを有する、カソード組成物。
【請求項2】
前記リチウム金属酸化物が、O3構造を採用する、請求項1に記載のカソード組成物。
【請求項3】
前記リチウム金属酸化物が、化学式Li[LiMnNiCo]O、式中、−0.4<x<0.6、a、b、及びcのそれぞれが0.02より大きく、かつ0.96未満、並びにx+a+b+c=1、を有する、請求項1に記載のカソード組成物。
【請求項4】
前記リチウム金属酸化物が、化学式、Li[LiMnNiCo]O、式中、a、b、及びcが、a、b、及びcが約0.33、a及びbが約0.5、かつcが約ゼロ、a及びbが約0.42、かつcが約0.16、並びにaが約0.5、bが約0.3、かつcが約0.2である、値から選択される、を有する、請求項3に記載のカソード組成物。
【請求項5】
前記リチウム金属酸化物が、アルミニウム、ホウ素、カルシウム、及びマグネシウムから選択される、1つ以上の金属を更に含む、請求項1に記載のカソード組成物。
【請求項6】
前記1つ以上の金属が、本質的にアルミニウム及びマグネシウムからなる、請求項5に記載のカソード組成物。
【請求項7】
前記粒子が、2つ以上の相を備える、請求項1に記載のカソード組成物。
【請求項8】
前記リチウム電極材料が、ナノ粒子を含む、請求項1に記載のカソード組成物。
【請求項9】
前記リチウム電極材料が、LiFePO、LiTi12、LiFeS、LiV13、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のカソード組成物。
【請求項10】
前記リチウム電極材料が、LiFePO、LiTi12、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項9に記載のカソード組成物。
【請求項11】
前記リチウム電極材料が、連続する層を備える、請求項1に記載のカソード組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のカソード組成物を含む、電極。
【請求項13】
少なくとも1つの、請求項12に記載の電極を備える、電気化学セル。
【請求項14】
前記セルが、C/4レートでの約4.6V〜約2.5ボルト対Li/Liの100回の充電/放電サイクルの後、その初期可逆性比容量の少なくとも90%を維持する、請求項13に記載の電気化学セル。
【請求項15】
少なくとも2つの、請求項13に記載の電気化学セルを備える、電池パック。
【請求項16】
請求項13に記載の電気化学セルを備える、電子装置。
【請求項17】
カソード組成物を作製する方法であって、
外側表面を有する複数個の粒子を提供する工程と、
リチウム電極材料を提供する工程と、
前記リチウム電極材料を前記粒子上にコーティングして、前記粒子の前記外側表面の少なくとも一部と接触するリチウム電極材料を含む層を形成する工程と、を含み、
前記粒子が、マンガン、ニッケル、及びコバルトから選択される、少なくとも1つの金属を含む、リチウム金属酸化物を含み、
前記リチウム電極材料が、前記粒子の再充電電圧対Li/Li未満の再充電電圧対Li/Liを有する、方法。
【請求項18】
コーティングする工程が、前記粒子及び前記リチウム電極材料をミリングする工程を含み、
前記リチウム電極材料が、ナノ粒子を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ミリングする工程が、乾式ミリング工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
コーティングする工程が、
前記リチウム電極材料を液体中に分散する工程と、
リチウム金属酸化物を含む前記複数個の粒子を添加して、分散液を形成する工程と、
前記液体を除去するために、前記分散液を加熱する工程と、を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
カソードを作製する方法であって、
金属膜の形態の集電器を提供する工程と、
外側表面を有する複数個の粒子を前記集電器上にコーティングする工程と、
リチウム電極材料を、前記リチウム電極材料が前記粒子の前記外側表面の少なくとも一部と接触するように、前記粒子上にコーティングする工程と、を含み、
前記粒子が、マンガン、ニッケル、及びコバルトから選択される、少なくとも1つの金属を含む、リチウム金属酸化物を含み、
前記リチウム電極材料が、前記粒子の再充電電圧対Li/Li未満の再充電電圧対Li/Liを有する、方法。
【請求項22】
前記リチウム電極材料が、スプレーコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、蒸気コーティング、及び真空コーティングから選択される方法を使用してコーティングされる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
真空コーティングが、スパッタリング、蒸発コーティング、及びプラズマコーティングを含む、請求項22に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−515824(P2011−515824A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501897(P2011−501897)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/037038
【国際公開番号】WO2009/120515
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】