鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5及びH5N1を検出するための診断用プライマー及び方法
本発明は、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1のHA及びNA遺伝子の保存領域に対するプライマーを提供し、また、鳥インフルエンザサブタイプH5又はH5N1を検出する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001] 本願は、2004年6月10日に出願された米国仮特許出願第60/578,353号の利益及び優先権を主張するものであり、その内容は、参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【発明の分野】
【0002】
[0002] 本発明は、核酸に基づく検出方法、より詳しくは、鳥インフルエンザウイルスを検出するプライマー及び方法に関する。
【発明の背景】
【0003】
[0003] 3種のインフルエンザウイルス、A型、B型及びC型が知られており、それらはオルトミクソウイルス科と呼ばれる、エンベロープを有するネガティブセンスの一本鎖RNAウイルスのファミリーに属している(Swayne,D.E.及びD.L.Suarez(2000)Rev.Sci.Tech.19、463〜482頁)。ウイルスゲノムは、約12000〜15000ヌクレオチドの長さであり、8つのRNAセグメントを含む(C型では7つ)。
【0004】
[0004] インフルエンザAウイルスは、ヒト、ブタ、ウマ、海洋哺乳類、鳥類等の多数の動物に感染する(Nicholson,K.G.ら(2005)Lancet 362、1733〜1745頁)。その自然宿主は水鳥であり、鳥類種では、ほとんどのインフルエンザウイルス感染は、呼吸器及び腸管に局在化された軽い感染を引き起こす。しかし、このウイルスは、家禽では高病原性作用を有し、突発的に大流行して罹患した家禽集団において高い死亡率を引き起こすことがある。H5N1等の高病原性株は、死亡率が100%に到達することもある系統感染を引き起こす(Zeitlin,G.A.及びM.J.Maslow(2005)Curr.Infect.Dis.Rep.7、193〜199頁)。ヒトでは、インフルエンザウイルスは高伝染性の急性呼吸器疾患を引き起こし、これが、ヒトにおける流行性かつ汎発性の疾患をもたらしている(Cox,N.J.及びK.Subbarao(1999)Lancet 354、1277〜1282頁)。
【0005】
[0005] インフルエンザAウイルスは、ウイルスの付着及び細胞性放出に必要な表面糖タンパク質、すなわち、血球凝集素(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)をコードする2種の遺伝子の抗原性領域における対立遺伝子の差異に基づいて、サブタイプに分類することができる。その他の主要ウイルスタンパク質としては、核タンパク質、ヌクレオカプシド、構造タンパク質、膜タンパク質(M1及びM2)、ポリメラーゼ(PA、PB1及びPB2)及び非構造タンパク質(NS1及びNS2)が挙げられる。
【0006】
[0006] インフルエンザAウイルスでは、現在、HAの15種のサブタイプ(H1〜H15)、及び9種のNA(N1〜N9)抗原性変異体が知られている。サブタイプH5及びH7は、家禽において高病原性感染を引き起こす可能性があり、特定のサブタイプは、種の壁を乗り越えてヒトに感染することが判明している。これまでに、ヒトに蔓延するサブタイプとして知られているものは3種しかない(H1N1、H1N2及びH3N2)。しかし、1997年及び2003年に香港において記録されたように、近年、鳥インフルエンザAの病原性H5N1サブタイプが種の壁を乗り越えて、ヒトに感染することが報告され(Peiris,J.S.M.ら(2004)Lancet 363、617〜619頁、Yuen,K.Y.ら(1998)Lancet 351、467〜471頁)、死に至る患者も現れている。2003年後半から、家禽ではH5N1鳥インフルエンザAが蔓延し、ベトナム、タイ、韓国、ラオス、カンボジア、インドネシア、日本、マレーシア等、いくつかのアジア諸国で深刻な大流行が報告されている(Centers for Disease Control and Prevention(CDC)(2004) Morb.Mortal.Wkly.Rep.53、100〜3頁、Hien T.T.ら(2004)N.Engl.J.Med.350、1179〜1188頁)。それらは、何百万もの家禽の大量処分をもたらし、深刻な経済的な影響を及ぼしている。
【0007】
[0007] ヒトでは、鳥インフルエンザウイルスは、気道、並びに腸管、肝臓、脾臓、腎臓及びその他の臓器の細胞に感染する。鳥インフルエンザ感染の症状としては、発熱、呼吸困難(息切れ及び咳を含む)、リンパ球減少、下痢及び血糖値調節困難が挙げられる。H5サブタイプ、特に、H5N1が高病原性を有し、また、既に実証されているように、種を越えてヒトに感染する能力を有することにより、これらのウイルス株に関連した、重大な経済上及び公衆衛生上の危険(極めて流行性で、汎発性の脅威を含む。)が存在している。
【0008】
[0008] 従って、H5N1鳥インフルエンザAウイルスは、アジアのみならず全世界のヒトの健康にとって潜在的に危険なものである。蔓延の可能性を下げ、流行に発展する危険を低減するためには、封じ込め手順に加えて、早期診断のための高感度な検出アッセイが不可欠である。
【0009】
[0009] 現在、生体サンプル中の、鳥インフルエンザウイルスのH5及びH5N1サブタイプを検出するために利用可能な種々の技術があるが、そのような技術としては、RNAを増幅する核酸配列に基づく増幅(NASBA)法、ウイルス培養、ウイルスRNAゲノムから転写されたDNAを増幅する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法、血球凝集阻害、並びに種々の蛍光及び酵素結合免疫測定法(ELISA)が挙げられる。
【0010】
[0010] 詳しくは、Soらによる国際公開第02/29118号パンフレットに、鳥インフルエンザウイルスのH5サブタイプを検出するためのNASBAアッセイ及びキットが記載されている。Heinらは、種々の蛍光及び酵素結合免疫測定法を用いる抗原試験の使用について記載している(2004,NewEng.J of Med.350(12)、1179〜1188頁)。Lauらは、鳥インフルエンザウイルスのH5又はH7サブタイプを検出するためのNASBA法について記載している(2003,Biochem.Biophys.Res.Comm.313、336〜342頁)。Leeら(2001,J.Virol.Methods 97、13〜32頁)及びPayungpornら(2004,Viral Immunol.17、588〜593)は、鳥インフルエンザウイルスサブタイプを同定及び細分類又は検出するためのRT−PCRアッセイについて記載している。しかし、これらの方法はいずれも、H5若しくはH5N1のいくつかの分離株又は変異体にのみ由来する遺伝情報を用いて、ウイルスの存在を確定するものである。更に、これらのアッセイは特異性及び感度が低いことが報告されている。臨床上は、これらの診断は、低感度であることにより、ヒトにおけるインフルエンザA(H5N1)ウイルスの信頼性のある検出における有用性が制限される可能性がある。従って、迅速な早期の診断に有用な高感度の診断試験が強く求められている。
【発明の概要】
【0011】
[0011] 200種を超えるH5分離株、及び100種を超えるH5N1分離株に由来するHA遺伝子の配列比較に基づいて、また、約70種のH5N1分離株に由来するNA遺伝子の配列比較に基づいて、これらの遺伝子内の保存領域に対する一連のプライマーを開発した。これらのプライマーは、多種多様なH5及びH5N1分離株をスクリーニングするのに有用であり、迅速、特異的かつ高感度な検出方法を可能にする。
【0012】
[0012] すなわち、一態様において、本発明は、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含むプライマーを提供する。別の態様において、本発明は、標的アニーリング配列と非インフルエンザAウイルス配列とを含むプライマーであって、標的アニーリング配列が配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含むプライマーを提供する。
【0013】
[0013] これらのプライマーは、サンプル、例えば、このようなウイルスを保持している疑いのある生物に由来するサンプル中の鳥インフルエンザウイルスH5又はH5N1の存在を検出するのに有用であり、サンプル中のウイルスの存在を検出するための逆転写ポリメラーゼ連鎖反応において使用することができる。
【0014】
[0014] すなわち、更に別の態様において、本発明は、サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、サンプルから得たRNAから逆転写されたDNAを、各々が配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のプライマーを用いて増幅すること、及び増幅産物を検出することを含み、増幅産物の存在がサンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1の存在を示す方法を提供する。
【0015】
[0015] 本明細書に記載の方法を用いて、多種多様なH5及びH5N1インフルエンザAウイルス分離株を検出することができる。単一の反応試験管においてRNAが逆転写され、その産物が増幅される一ステップ法を用いることで、検出時間の短縮が可能になり、サンプル操作が最小化され、サンプルの相互汚染の危険性が低減される。従って、本明細書に記載のプライマーを用いる、本明細書に記載の方法は、H5及びH5N1インフルエンザA感染の早期検出及び/又は診断に有用である。更に、これらの方法を用いてサンプル中のおよそのウイルス量を調べることができ、その適用は臨床及び公衆衛生管理の場で有用である。
【0016】
[0016] 本発明のプライマーは、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1の存在を検出するためのその他の増幅方法、例えば、核酸配列に基づく増幅法において有用である。本発明のプライマーはまた、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1のHA又はNA遺伝子に相当するDNAを配列決定するのにも有用である。
【0017】
[0017] 更に別の態様において、本発明は、サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、サンプルと、支持体上に固定されているプライマーとを、プライマーとサンプルとがハイズリダイズするのに適した条件下で接触させるステップと、プライマーとサンプルとのハイブリダイゼーションを検出するステップと、を含み、プライマーが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む方法を提供する。
【0018】
[0018] 更に別の態様において、本発明は、サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、サンプルと、1種又は複数のプライマーを含む核酸マイクロアレイとを、当該1種又は複数のプライマーとサンプルとがハイブリダイズするのに適した条件下で接触させるステップと、1種又は複数のプライマーとサンプルとのハイブリダイゼーションを検出するステップと、を含み、プライマーの各々が、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む方法を提供する。
【0019】
[0019] 別の態様において、本発明は、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含むプライマーを含む核酸マイクロアレイを提供する。
【0020】
[0020] 更に別の態様において、本発明は、サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出するためのキットであって、本明細書で規定されるプライマーと、使用説明書とを含むキットを提供する。
【0021】
[0021] 本発明の他の態様及び特徴は、本発明の具体的な実施形態に関する以下の説明を添付の図面と共に検討すれば、当業者に明らかとなろう。
【詳細な説明】
【0022】
[0069] インフルエンザAウイルスを始めとするRNAウイルスは、DNA複製と比較した場合のRNA複製の低い忠実性のために、高い突然変異率を有する傾向がある。その結果、インフルエンザウイルスは急速に進化する傾向がある。更に、インフルエンザAウイルスは、ウイルス株間の遺伝子再集合を受ける傾向があり、この機構が種々のHA及びNAサブタイプの発達に寄与してきた。本発明者らは、200種を超えるインフルエンザA H5分離株、及び100種を超えるインフルエンザA H5N1分離株から得た血球凝集素(「HA」)遺伝子の配列を比較した。同様に、本発明者らは、約70種のインフルエンザA H5N1分離株から得たノイラミニダーゼ(「NA」)遺伝子の配列を比較した。驚くべきことに、インフルエンザウイルス内の高い突然変異率にも関わらず、本発明者らは、特定のサブタイプに特有の、高度に保存された配列の短い領域を見出した。それらの領域は、サンプルにおいてそれらのサブタイプの存在を同定又は検出するのに適している。
【0023】
[0070] 比較に用いた配列は、公的に利用可能なデータベースから得、種々の配列比較ソフトウェア(ソフトウェアClustalW等)を用いて比較した。
【0024】
[0071] 本発明者らは、これらの配列比較により、検出アッセイ、例えば、逆転写とそれに続くポリメラーゼ連鎖反応増幅(「RT−PCR」)で用いるための、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1のHA遺伝子又はNA遺伝子の保存領域に対する、配列番号1〜配列番号114に示されるフォワード及びリバースプライマーを開発した。このような多数のウイルス分離株の比較によって、HA又はNA遺伝子の十分に保存された領域に対するプライマー、ひいては突然変異による変化の影響を受ける可能性が低い領域を標的とするプライマーの設計が可能となり、それによって、現在利用可能なプライマーよりも、H5又はH5N1変異体の大きなプールを検出することができるプライマーを提供することが可能となった。
【0025】
[0072] 本明細書において、用語「分離株」とは、特定の遺伝子配列を有する患者等の特定の生体供給源から単離された、特定のウイルス又はウイルス粒子のクローン集団を指す。異なる分離株は、1個又は数個のヌクレオチドのみが異なってもよく、依然として同一のウイルスサブタイプ内にあってもよい。ウイルスサブタイプとは、これらの糖タンパク質の抗原性に従って分類された、HAのサブタイプ又はNAのサブタイプのいずれかを指す。
【0026】
[0073] 本発明者らは、特定の保存領域において、特定の位置の1個又は複数個のヌクレオチドが分離株間で異なることを見出した。そして、それらの領域についてプライマーのファミリーを開発した。ファミリー内の各プライマーは、HA又はNA遺伝子の保存配列に基づいたものであるが、保存配列内の1個又は複数個の特定の塩基が異なっている。
【0027】
[0074] 従って、一態様において、本発明は、配列番号1〜配列番号114のいずれか1種に示される配列を含むプライマーを提供する。
【0028】
[0075] 当業者には理解されることであるが、「プライマー」とは、相補配列を含む第2のDNA又はRNA分子(標的)と塩基対形成することができる、所定の配列の一本鎖DNA又はRNA分子である。得られたハイブリッド分子の安定性は、生じる塩基対形成の長さに応じて異なり、プライマー及び標的分子間の相補性度、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシー度、等のパラメーターの影響を受ける。ハイブリダイゼーションストリンジェンシー度は、温度、塩濃度、及びホルムアミド等の有機分子の濃度といったパラメーターの影響を受け、当業者に公知の方法を用いて決定することができる。プライマーは、核酸ハイブリダイゼーションを含む方法、例えば、核酸配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応による核酸増幅、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析、制限酵素断片長多型(RFLP)分析、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション、電気泳動移動度シフトアッセイ又はゲルシフト法(EMSA)、核酸マイクロアレイ、及び当業者に公知のその他の方法に用いられる。
【0029】
[0076] 用語「RNA」とは、2個以上の共有結合している、天然に存在しているか、修飾されたリボヌクレオチドの配列を指す。RNAは一本鎖であっても、二本鎖であってもよい。用語「DNA」とは、2個以上の共有結合している、天然に存在しているか、修飾されたデオキシリボヌクレオチドの配列を指し、cDNA及び合成(例えば化学合成)DNAを含み、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。「逆転写されたDNA」又は「から逆転写されたDNA」とは、RNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)の作用によりRNA鋳型から生じた相補的DNA又はコピーDNA(cDNA)を意味する。
【0030】
[0077] 鳥インフルエンザウイルスは一本鎖RNAウイルスであり、いくつかの実施形態では、プライマーは、表1に示される、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1のHA遺伝子の保存領域のRNA配列に対応するDNA配列(配列番号1〜配列番号31及び配列番号112)を有する。このようなプライマーは、サブタイプH5又はH5N1のHA遺伝子から逆転写されたDNAを配列決定するか増幅する場合に、フォワードプライマーとして使用することができる。
【0031】
【表1】
【0032】
[0078] いくつかの実施形態では、プライマーは、表2に示される、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5NlのHA遺伝子の保存領域のRNA配列に対応するDNA配列(配列番号32〜71、配列番号113及び配列番号114)を有する。このようなプライマーは、サブタイプH5又はH5N1のHA遺伝子から逆転写された1本鎖DNAを配列決定するか増幅する場合に、リバースプライマーとして使用することができる。
【0033】
【表2−1】
【0034】
【表2−2】
【0035】
[0079] いくつかの実施形態では、プライマーは、配列番号72〜配列番号93に示される、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5NlのNA遺伝子の保存領域のRNA配列に対応するDNA配列を有する(表3参照)。このようなプライマーは、サブタイプH5N1のNA遺伝子から逆転写されたDNAを配列決定するか増幅する場合に、フォワードプライマーとして使用することができる。
【0036】
【表3】
【0037】
[0080] いくつかの実施形態では、プライマーは、配列番号94〜配列番号111に示される、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5NlのNA遺伝子の保存領域のRNA配列に対応するDNA配列を有する(表4参照)。このようなプライマーは、サブタイプH5N1のNA遺伝子から逆転写されたDNAを配列決定するか増幅する場合に、リバースプライマーとして使用することができる。
【0038】
【表4】
【0039】
[0081] 検査したウイルス分離株のHA又はNA遺伝子の保存領域内で、特定の位置のヌクレオチドが異なる場合には、これらの遺伝子の保存領域に基づいてプライマーの「ファミリー」を開発した。この場合、プライマーのファミリー内の1個又は複数の残基がプライマー毎に異なる。例えば、配列番号1〜配列番号6は、このようなファミリーである。
【0040】
[0082] 更に、当業者には理解されることであるが、プライマーは保存配列に基づいたものであるが、変異したプライマーが、元のプライマー配列と同一又は同程度のストリンジェンシーでサンプル中の標的配列と依然としてハイブリダイズするという条件で、保存配列内の1個又は複数の塩基が置換され、挿入され、又は欠失していてもよい。ハイブリダイゼーション条件は、目的の配列に応じて公知の方法により改変してもよい(Tijssen, 1993、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes、第1部、第2章、「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」、Elsevier, New York参照)。一般には、ストリンジェントな条件は、所与のイオン強度及びpHにおいて、所定の配列の熱融点よりも約5℃低いものであるように選択される。
【0041】
[0083] 当業者には理解されることであるが、プライマーの短い配列中に複数の置換変異を有することで、元の変異していないプライマーの相補体とプライマーとのハイブリダイゼーションの強度が低下し、また、プライマー配列内の変異の間隔及び位置も、ハイブリダイゼーションの強度又はストリンジェンシーに影響を及ぼす。更に、当業者には理解されることであるが、短い配列中の1個又は複数個のヌクレオチドの挿入又は欠失によってもまた、元の変異していないプライマーの相補体とプライマーとのハイブリダイゼーションの強度が低下し、また、短い配列中の2以上の位置に1個又は複数個のヌクレオチドの挿入又は欠失を有することで、変異していないプライマーの相補体とプライマーとのハイブリダイゼーションが著しく変化する可能性がある。
【0042】
[0084] 鳥インフルエンザウイルスのHA遺伝子に対する本発明の種々のプライマーのアラインメントを、従来知られているその他のサブタイプ5のHA遺伝子に対するプライマーと共に図1に示す。プライマーTW_H5−155f及びTW_H5−699rは、Leeら(2001、J.Viriol.Methods 97、13〜22頁)で開示されている。プライマーVM_H5/515、VM_H5−1、VM_H5/1220及びVM_H5−2はHeinら(2004、New Eng. J. of Med.350(12)、1179〜1188頁)で開示されている。プライマーHK_配列番号1〜HK_配列番号3、HK_配列番号5〜HK_配列番号7及びHK_配列番号9〜HK配列番号14は、国際公開第02/29118号パンフレットに開示されている。
【0043】
[0085] いくつかの実施形態では、プライマーの検出、又はプライマーから合成されたか伸長されたDNA産物の検出が可能になるように、プライマーを標識で修飾してもよい。例えば、標識としては、蛍光標識、化学発光標識、有色色素標識、放射性標識、放射不透過性標識や、タンパク質(酵素を含む)、ペプチド、又はリガンド(例えば、ビオチン)が挙げられる。
【0044】
[0086] 特定の実施形態では、プライマーは、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種に加えて、更に他の核酸配列を含んでもよい。このような他の配列は、HA又はNA遺伝子の配列によってコードされるものであるか、それらの配列に相補的なものであり、配列番号1〜配列番号114のいずれか1種によって規定される配列のフランキング領域(隣接した非コード領域)となる。但し、本実施形態に係るプライマーは、完全インフルエンザAゲノムではなく、また、プライマーTW_H5−155f、プライマーTW_H5−699r、プライマーVM_H5/515、プライマーVM_H5−1、プライマーVM_H5/1220、プライマーVM_H5−2、又は上述のHK_配列番号1〜HK_配列番号3、HK_配列番号5〜HK_配列番号7及びHK_配列番号9〜HK_配列番号14ではない。
【0045】
[0087] 或いは、更に含まれる他の配列はHA又はNA遺伝子に対するものでなくてもよく、例えば、タンパク質又は酵素(制限酵素等)によって認識される配列、或いは、標識されたプローブ等の検出に用いる核酸配列に相補的な配列が挙げられる。当業者には理解されることであるが、プライマーには、その用途に応じて最適な長さ及び配列があるので、上述のような他の配列の数及び種類は適当に制限される。例えば、PCRプライマーは、それより高い温度では鋳型ともはや特異的に結合しない温度が、ポリメラーゼによる伸長が生じる温度にほぼ等しいような長さ又は配列であってはならない。
【0046】
[0088] 従って、1つの実施形態において、プライマーは本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる。すなわち、プライマーは、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種の5'、3'又はその両側にフランキングする1個又は複数個の他のヌクレオチドを更に含んでもよいが、そのヌクレオチドは、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種と、その相補配列を含む核酸分子とのハイブリダイゼーションに大きな影響を及ぼしてはならない。例えば、大きな配列内に含まれる場合であっても、短いプライマー配列の両側にいくつかのヌクレオチドを加えることによって、短いプライマー配列の、その相補配列とのハイブリダイゼーションストリンジェンシーを、上記ヌクレオチドが存在しない場合と同一又は同程度のストリンジェンシーで短いプライマー配列がハイブリダイズすることができない程度に変更してはならない。すなわち、本明細書に記載の配列に隣接するインフルエンザHA又はNA遺伝子中の領域は分離株間で異なる可能性があるので、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなるプライマーは、広範なH5又はH5N1分離株を検出する感度及び能力に影響を及ぼす程度に多量の、本明細書に記載の保存配列をフランキングするウイルス配列を含んではならない。他の特定の実施形態では、プライマーは、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなるか、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である。
【0047】
[0089] 特定の実施形態では、プライマーは、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む「標的アニーリング配列」と、非インフルエンザウイルスA配列と、を含む。
【0048】
[0090] 標的アニーリング配列は、サンプル中の標的核酸の少なくとも一部とハイブリダイズし、標的核酸はインフルエンザA H5又はH5N1ウイルスサブタイプと相同であるか、相補的であるか、インフルエンザA H5又はH5N1ウイルスサブタイプから転写されるか逆転写されるか、或いはインフルエンザA H5又はH5N1ウイルスサブタイプに由来する。従って、標的アニーリング配列はまた、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種によって規定される配列をフランキングする、HA又はNA遺伝子の配列によってコードされるか、それに相補的なフランキング配列を含んでもよい。或いは、標的アニーリング配列は、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列からなるか、配列番号1〜配列番号114の配列からなる。
【0049】
[0091] 非インフルエンザAウイルス配列は、インフルエンザAウイルスゲノム配列に由来しないか、対応しないか、相補的でない配列である。上述のように、非インフルエンザAウイルス配列としては、例えば、タンパク質又は酵素(制限酵素等)によって認識される配列、或いは、検出に用いる核酸配列(例えば、標識されたプローブ、又は、当該プライマーを捕獲するのに用いる固定された核酸分子の捕獲配列)に相補的な配列が挙げられる。非インフルエンザAウイルス配列は、標的アニーリング配列の5'又は3'側に位置していても、標的アニーリング配列の両側にフランキングしていてもよい。
【0050】
[0092] プライマー又は本発明のプライマーの長さは、所望の用途又は適用に応じて異なる。例えば、理解されるであろうが、PCRプライマーの長さは通常、約15〜約35塩基の間となる。PCRプライマーの長さは、増幅しようとする配列、及びプライマー/鋳型ハイブリッドの所望の融解温度によって決定される。しかし、サザンハイブリダイゼーション等に適用する場合には、プライマーは、より長いもの、例えば、約15塩基〜約1キロ塩基の長さ又はそれより長いものであってもよい。すなわち、プライマーの長さは、例えば、15塩基〜約1キロ塩基、15〜約500塩基、15〜約300塩基、15〜約150塩基、15〜約100塩基、又は15〜約50塩基である。
【0051】
[0093] 本発明のプライマーは、当技術分野で公知の従来法を用いて調製することができる。例えば、自動核酸シンセサイザーを用いて、標準的なホスホロアミダイト法により、固体支持体上でプライマーを3'から5'方向に合成することができる。このような方法は当業者には公知であろう。
【0052】
[0094] 本明細書において、用語「プライマー」は、鋳型配列と配列特異的にアニーリングさせ、新規鎖合成を開始するために用いられる一本鎖ヌクレオチドを表すために用いられる。但し、当業者には理解されることであるが、本発明のプライマーの使用はそれに制限されない。例えば、本発明のプライマーを、プローブがハイブリダイズする相補配列を検出するためのプローブとして使用してもよい。このような用途に用いる場合、プライマーは通常、検出のために、蛍光標識、化学発光標識、有色色素標識、放射性標識、タンパク質(酵素を含む)、ペプチド、又はリガンド(例えば、ビオチン)で標識される。プライマーは、プローブとして用いる場合には、核酸ハイブリダイゼーション法、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析、制限酵素断片長多型(RFLP)分析、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)、核酸マイクロアレイ、及び当業者に公知のその他の方法において使用することができる。
【0053】
[0095] 本発明のプライマーを用いれば、サンプル、例えば、ウイルスを保持している疑いのある生物に由来する生体サンプル中の鳥インフルエンザサブタイプH5又はH5N1を診断又は検出することができる。
【0054】
[0096] すなわち、本発明は、サンプル中の鳥インフルエンザサブタイプH5を検出する方法であって、サンプルから得たRNAから逆転写されたDNAを、配列番号32〜配列番号55の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマーと、配列番号1〜配列番号18の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のフォワードプライマーと、を用いて増幅すること、及び増幅産物を検出することを含み、産物が、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスH5サブタイプの存在を示す方法を提供する。また、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5N1を検出する方法であって、サンプルから得たRNAから逆転写されたDNAを、配列番号56〜配列番号71、配列番号113及び配列番号114の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマーと、配列番号19〜配列番号31及び配列番号112の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のフォワードプライマーと、を用いて、又は配列番号94〜配列番号111の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマーと、配列番号72〜配列番号93の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のフォワードプライマーと、を用いて増幅すること、及び増幅産物を検出することを含み、産物が、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスH5N1サブタイプの存在を示す方法を提供する。
【0055】
[0097] 用語、増幅産物を「検出する」とは、鋳型、プライマー及び適当なポリメラーゼ酵素を用いた増幅反応から得られた産物の有無を調べること、又は産物の量を定量化することを含むものとする。
【0056】
[0098] 通常、サンプルから得たRNAを逆転写することにより、RNAのHA遺伝子又はNA遺伝子に相補的な一本鎖DNAを得る。逆転写には、RNA鋳型を読み取ることができ、RNA鋳型と結合するプライマーから、DNAヌクレオチドを重合して、RNA鋳型の配列に相補的な相補的DNA鎖を合成することができる逆転写酵素を用いる。逆転写酵素、例えば、T7逆転写酵素は市販されており、当業者には公知である。逆転写反応は通常、逆転写酵素活性を最適化するように設計された反応条件及び温度下で、バッファー中で実施する。市販の逆転写酵素は、適当なバッファー及びDNAヌクレオチドと共に提供されている。
【0057】
[0099] 逆転写反応に用いるプライマーとしては、RNA鋳型に沿ったランダムな部位と結合するランダムヘキサマーの混合物が挙げられる。或いは、逆転写プライマーは、HA遺伝子又はNA遺伝子内の特定の部位で結合するように設計された特異的プライマーであってもよい。従って、表2及び4に示される、配列番号32〜配列番号71、配列番号113及び配列番号114又は配列番号94〜配列番号111のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマーは、逆転写反応においてプライマーとして使用することができる。これと同じ本発明のリバースプライマー又はプライマー類が増幅ステップにおいて使用可能であり、これは、特に、逆転写及び増幅が同一反応で実施される場合に有利である。2種以上の本発明のプライマーを用いる場合には、用いるプライマーの各々は異なる配列を有し、各プライマーの配列は、配列番号32〜配列番号71、配列番号113及び配列番号114又は配列番号94〜配列番号111のいずれか1種を含む。
【0058】
[00100] HA遺伝子又はNA遺伝子の同一の保存領域に基づくが、プライマー配列内の1個又は複数個のヌクレオチドが異なるプライマーのファミリー、例えば、配列番号32〜配列番号43がある場合には、このようなファミリーに由来する1種又は複数のリバースプライマーを使用することができる。これによって鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1の多数のあり得る分離株又は変異体の逆転写、ひいてはその検出が可能となる。本明細書において、「変異体」とは、HA遺伝子配列が別のH5サブタイプのものとは異なっていてもよいH5サブタイプ、又はHA遺伝子配列若しくはNA遺伝子配列が別のH5N1サブタイプのものとは異なっていてもよいH5N1サブタイプを指す。
【0059】
[00101] 逆転写反応の鋳型RNAは、当技術分野で公知のRNA抽出法を用いてサンプルから得ることができる。また、RNA抽出キット、例えば、RNeasy(商標)キット(Qiagen)も市販されており、このようなキットが入手可能なこと及びその用途は、当業者には公知であり、理解されることである。
【0060】
[00102] サンプルは、生体サンプル、例えば、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1を保持している疑いのある個体から採取したサンプルである。サンプルは、感染個体から得たウイルスを含むサンプルであればよく、そのようなサンプルとしては、組織及び体液サンプル、例えば、血液、血清、血漿、末梢血細胞(リンパ球、単核細胞等)、痰、粘膜、尿、糞便、咽頭スワブサンプル、真皮病変スワブサンプル、脳脊髄液、膿、並びに脾臓、腎臓、肝臓等の組織が挙げられる。
【0061】
[00103] 逆転写反応が完了すると、一本鎖DNA分子を増幅反応に使用することができる。用語「増幅する」又は「増幅」とは、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1の存在を示すために検出しようとする核酸分子を大量に複製する反応を指す。適当なポリメラーゼ酵素を用いて、鋳型核酸、場合によってRNA又はDNAのいずれかの新しい鎖を合成してマルチプルコピーを作製する。
【0062】
[00104] 増幅ステップは、逆転写の条件及び試薬が増幅反応と干渉しないならば、逆転写反応と同一の反応で実施することができる。或いは、逆転写産物を、増幅反応における鋳型として用いる前に精製してもよい。
【0063】
[00105] 或いは、二本鎖DNA分子、例えば、逆転写された一本鎖DNA分子に由来する二本鎖DNAを増幅反応の鋳型として使用してもよい。特定のウイルス分離株のDNAクローンが作製されている場合は、DNAクローンを増幅の鋳型として使用することができる。標準的な技術を用いてウイルス分離株から二本鎖DNAクローンを作製する方法は当業者には理解されるものである。サンプルの「RNAから逆転写されたDNA」とは、RNAから逆転写されたDNAに由来するようなDNA全てを含むものとする。
【0064】
[00106] 特定の実施形態では、PCR増幅反応によって増幅を実施する。従って、増幅ステップは、当業者に公知の標準的な方法及び技術によって、DNAポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)を用いて実施することができる。DNA分子の増幅に用いるDNAポリメラーゼは市販されている。増幅反応は、DNAポリメラーゼ酵素の重合活性を最適化するような条件下で、デオキシヌクレオチド、バッファー、関連のフォワード及びリバースプライマー等の必要な試薬を用いて実施する。
【0065】
[00107] PCR増幅反応は、転写されたDNA鎖及び鋳型RNA(存在する場合)を変性し、いずれかの鎖とのプライマーの結合を避けるのに十分な温度に反応物を加熱する変性セグメントを含む。変性セグメントに、プライマーがDNA鎖と結合可能な温度に反応温度を低下させるアニーリングセグメントが続く。最後のセグメントは、DNAポリメラーゼによるプライマーの伸長に最適な温度に反応物を加熱する伸長セグメントである。これら3つのセグメントを複数回繰り返し、これによって、逆転写されたDNAと対を形成するDNAの相補鎖の生成、並びにフォワード及びリバースプライマー又はプライマー類の各々からの伸長による逆転写鎖の生成が可能となる。増幅反応の各連続ラウンドでは、より多くの各DNA鎖が生成され、次いで、それが次のサイクルの鋳型として使用され、その結果、DNA産物が増幅される。増幅ステップの各セグメントにおける好適な温度、及び実施されるべき所望のサイクル数は、当業者ならば容易に決定することができる。
【0066】
[00108] 一実施形態では、増幅反応は、「ホットスタート」を用いて開始することができる。その場合は、逆転写反応から得られた鋳型DNAと、フォワード及びリバースプライマーとを混合し、変性ステップの温度で一定時間の間保持し、プライマーと、逆転写されたDNA鎖との非特異的結合を減少させる。ホットスタートの間、反応に必要な1種の成分(例えば、DNAポリメラーゼ)を反応物から取り除き、次いで、増幅反応の最初のサイクルの直前に反応物に加えればよい。
【0067】
[00109] 必要に応じて、増幅したDNA産物を、増幅サイクルの更なるラウンドの鋳型として用いて、増幅ステップを反復することができる。鋳型は反応混合物から精製してもよく、第2の反応は、増幅されたDNA産物、適当なプライマー、DNAポリメラーゼ、バッファー及びデオキシヌクレオチドを用いて実施することができる。増幅の第2のラウンドは第1の増幅反応と同一又は類似の条件下で実施することができる。また、次いで、以下に示す適当な検出方法を用いて、第2の増幅産物を検出することができる。
【0068】
[00110] 本発明のプライマー又はプライマー類を逆転写反応に用いる場合には、増幅反応に同じリバースプライマー又はプライマー類を、適当なフォワードプライマー又はプライマー類と共に使用することができる。或いは、増幅反応に本発明の異なるリバースプライマー又はプライマー類を使用することもでき、各プライマーは、配列番号32〜71、配列番号113及び配列番号114又は配列番号94〜配列番号111に示される配列のいずれか1種を含む。
【0069】
[00111] 鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1のHA遺伝子の保存領域に対するフォワードプライマーは表1に示し、H5N1サブタイプのNA遺伝子の保存領域に対するフォワードプライマーは表3に示す。当業者には理解されることであるが、個々の増幅反応に用いるフォワード及びリバースプライマーは、サブタイプ及び遺伝子に関して対応している必要がある。従って、配列番号32〜配列番号55及び配列番号113のいずれか1種を含むリバースプライマーを用いる場合には、配列番号1〜配列番号18のいずれか1種を含むフォワードプライマーを使用することができる。同様に、配列番号56〜配列番号71及び配列番号114のいずれか1種を含むリバースプライマーを用いる場合には、配列番号19〜配列番号31及び配列番号112のいずれか1種を含むフォワードプライマーを使用することができ、配列番号94〜配列番号111のいずれか1種を含むリバースプライマーを用いる場合には、配列番号72〜配列番号93のいずれか1種を含むフォワードプライマーを使用することができる。
【0070】
[00112] 当然のことであるが、増幅反応に用いるフォワード又はリバースプライマーの一方のみが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む必要があり、このようなプライマーは、上記配列を含まないリバース又はフォワードプライマーと組み合わせて使用することができる。しかし、HA及びNA遺伝子の配列は、ウイルス分離株間で大きく異なる可能性があるので、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含まないフォワード又はリバースプライマーを使用することは、増幅ステップの感度及び検出範囲に影響を及ぼす可能性がある。
【0071】
[00113] リバースプライマーと同様に、本発明のフォワードプライマーのファミリーが利用可能な場合には、多数のサブタイプH5又はH5N1の分離株又は変異体のいずれかの同定を可能にするために、1種又は複数のそのようなプライマーを使用することができる。例えば、単一の増幅反応に、1種又は複数の、配列番号1〜配列番号6に記載の配列を有するプライマーを使用することができる。
【0072】
[00114] プライマーがプライマーファミリー内に入らない場合であっても、配列番号32〜71、配列番号113及び配列番号114又は配列番号94〜配列番号111を含むプライマーから、1種又は複数のリバースプライマーを選択することができ、配列番号1〜31及び配列番号112又は配列番号72〜配列番号93を含むプライマーから1種又は複数のフォワードプライマーを選択することができる。しかし、これは種々の長さの一連の増幅産物をもたらす。複数のリバース及び/又はフォワードプライマーを注意深く選択すれば、増幅産物は互いに容易に区別することができる。この実施形態では、検出方法の感度が低下する場合があり、これが所与の量の鋳型からの特定の増幅産物の減少をもたらすということに留意しなければならない。逆転写反応におけるように、2種以上の本発明のプライマーを用いる場合には、用いるプライマーの各々は異なる配列を有し、各プライマーの配列は、リバースプライマーについては、配列番号32〜71、配列番号113及び配列番号114又は配列番号94〜配列番号111及び配列番号112のいずれか1種を含み、フォワードプライマーについては、配列番号1〜31又は配列番号72〜配列番号93のいずれか1種を含む。
【0073】
[00115] フォワードプライマーは、用いるリバースプライマーと組み合わせて、検出可能な二本鎖DNA増幅産物が生成されるように選択する。すなわち、増幅反応で生成される場合にどんな検出方法が選択されても検出可能なような十分な大きさの二本鎖DNA分子を増幅するには、フォワードプライマーは、リバースプライマーに対してHA又はNA遺伝子において十分に上流に位置しなくてはならない。検出可能なDNA産物の大きさは、選択される具体的な検出方法によって異なる。例えば、増幅産物を検出するのにアガロースゲル電気泳動を用いる場合には、検出方法としてライトサイクリング(lightcycling)を用いるリアルタイムPCRによる場合よりも最終産物が大きくなくてはならない可能性がある。用いるゲルの濃度に応じて、アガロースゲル電気泳動を用いて25塩基対程度の小さい断片を検出することができる。しかし、ゲルベースの方法を用いると、例えば、150〜500塩基対の間のより大きな断片がより容易に検出されるのに対して、例えば、100塩基対未満のより小さな断片は、リアルタイムPCR法を用いて容易に検出される。
【0074】
[00116] 増幅されたDNA産物は、当技術分野で公知の検出方法を用いて検出することができる。例えば、好適な検出方法としては、それだけには限らないが、増幅されたDNA産物への蛍光、化学発光又は放射性シグナルの組込み、又はポリアクリルアミド若しくはアガロースゲル電気泳動によるもの、又は電子移動部分を含有するプローブと増幅産物とをハイブリダイズさせ、電子検出法によってハイブリダイゼーションを検出することによるものが挙げられる。
【0075】
[00117] 一実施形態では、増幅されたDNA産物をアガロースゲル電気泳動によって検出するが、これは当業者には公知であろう。増幅産物の一部を、色素マーカーを含む適当なゲルローディングバッファーと混合し、ゲルに電気的勾配をかけることによってアガロースゲルに流す。アガロースゲルは、エチジウムブロマイド又はDNAと結合するかDNAにインターカレートする別の適当な色素で染色することができ、例えば、紫外線に曝露することによって検出する。
【0076】
[00118] 検出方法は、増幅反応の後に実施することができる。或いは、増幅反応と同時に検出方法を実施してもよい。一実施形態では、リアルタイムPCRを用いて、例えば、ライトサイクリングによって(例えば、RocheのLightCycler(商標)を用いて)、増幅されたDNA産物を検出する。リアルタイムPCR技術は、当業者には公知であり、2種の、各々特定の蛍光標識で標識され、増幅したDNA産物と結合するプローブの使用を包含する。プローブは、第1のプローブの蛍光標識が第2のプローブの蛍光標識と近接するような方法で各プローブがDNA産物と結合するように設計する。増幅反応は、関連蛍光シグナルが放射、検出されるように設計された装置で実施し、装置が第1のプローブ上の蛍光標識を励起するのに適した波長の光を放射し、次いで、これが第2のプローブ上の蛍光標識を励起するのに適した波長の光を放射する、更なる検出セグメントを含む。次いで、第2のプローブの蛍光標識によって放射され、それまでの発光とは波長が異なる光を装置で検出する。
【0077】
[00119] 或いは、増幅反応に一本鎖鋳型を用いる場合には、二本鎖DNAと結合する蛍光分子を使用することができる。この方法により、増幅反応を通じて増幅されたDNA産物の検出及び既知の標準鋳型と比較してかなり正確な相対定量が可能となる。増幅産物の定量化により、元の生体サンプル中のウイルス量の測定が可能となる。その上、この方法によって、従来のPCR技術を用いる方法よりも少量の増幅産物、及びサイズの小さい増幅産物の検出が可能となる。
【0078】
[00120] ABI Systemsによって設計されたTaqman(商標)法におけるように、5'末端がフルオロフォアで、3'末端が、フルオロフォアと近接している場合にフルオロフォアの発光をクエンチ(消光)するクエンチング分子で標識されている検出プローブを用いて、増幅及び検出を同時に実施することができる。検出プローブは、増幅鋳型のフォワード又はリバース鎖と結合する。5'エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、例えば、Taqポリメラーゼ又はその他(例えば、合成版はRocheから入手可能)を増幅反応に用いる。検出プローブが結合している鋳型鎖が増幅される際に、5'エキソヌクレアーゼにより検出プローブが消化され、クエンチャーの近くからフルオロフォアが取り除かれ、フルオロフォアが発光可能となる。発光は、標準的な機器(例えば、上述のLightCycler(商標))で定量することができる。
【0079】
[00121]或いは、H5N1変異体を検出するために、第1の増幅を、HA遺伝子に対するプライマーを用いて、例えば、配列番号32〜71、配列番号113及び配列番号114のいずれか1種を含むリバースプライマー又はプライマー類と、配列番号1〜配列番号31及び配列番号112のいずれか1種を含むフォワードプライマー又はプライマー類と、を用いて実施してもよく、第2の増幅ステップを、NA遺伝子に対する、配列番号94〜配列番号111のいずれか1種を含むリバースプライマー又はプライマー類と、配列番号72〜配列番号93のいずれか1種を含むフォワードプライマー又はプライマー類と、を用いて実施してもよい。H5N1の存在を検出するために、2種の増幅を、第1の増幅はH5又はH5N1サブタイプのHA遺伝子に対するプライマーを用いて、また、第2の増幅はNA遺伝子に対するプライマーを用いて、同一又は異なる反応で同時に実施することができる。NA遺伝子は発現量が少ないことが知られているので、ウイルス量が少ない場合は検出がより困難と思われる。
【0080】
[00122] 本発明によって提供される多数のプライマーは、サブタイプH5及びH5N1の種々の変異体を検出する可能性を高めるように設計されており、いずれかの特定の変異体を検出する可能性を高めるために、単一のサンプルを、フォワード及びリバースプライマー又はプライマー類の種々の組合せを用いて試験することができる。
【0081】
[00123]上述の実施形態はPCR増幅法との関連で記載したが、本発明の配列を用いて、生体サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出するためのその他の増幅方法に用いるプライマーが設計可能なことは、当業者には理解されることである。例えば、Lauら(Biochem.Bioplzys.Res.Comm.2003 313、336〜342頁)に記載のように、例えば、配列番号1〜配列番号114に記載の配列を用いて、NASBA法による増幅及び検出のためのプライマーを設計することができ、これは当業者に一般に知られている。
【0082】
[00124] 簡単には、NASBA技術では、プライマーを、目的の遺伝子(ここでは、HA又はNA)の一部と結合し、RNAポリメラーゼ(例えば、T7RNAポリメラーゼ)のプロモーターを含むように設計する。ウイルス遺伝子を逆転写し、第2の相補DNA鎖を合成して、無傷のRNAポリメラーゼプロモーターを含む二本鎖DNA分子を生成させる。関連RNAポリメラーゼを用いて、目的の遺伝子の増幅された部分に対応するRNA分子のコピーを作製する。次いで、増幅されたRNAを検出分子(通常、増幅されたRNAの一部に相補的であり、例えば、放射標識、化学発光標識、蛍光標識又は電子化学発光標識で標識されている核酸)と結合させる。次いで、検出分子と結合している増幅されたRNAを、通常、捕獲分子(例えば、検出分子が結合する部分とは異なる増幅されたRNA産物の一部に相補的な、固定された核酸)によって捕獲する。次いで、検出分子が結合している捕獲されたRNA増幅産物を、検出分子上の標識及び捕獲方法に応じて決まる関連の検出方法によって検出する。
【0083】
[00125] 従って、本発明は、生体サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1の存在を検出するためのNASBA法において、配列番号1〜配列番号114のいずれか1種を含むプライマーを使用することを包含する。
【0084】
[00126] 本発明のプライマーはまた、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1のHA又はNA遺伝子に相当するDNA分子、又はHA又はNA遺伝子に相補的な逆転写されたDNA分子を配列決定するのに有用である。鋳型として、HA又はNA遺伝子の一部に対応する核酸分子を用いて配列決定反応を開始するためには、それぞれ、配列番号32〜71、配列番号113及び配列番号114のいずれか1種、又は配列番号94〜配列番号111のいずれか1種を含むリバースプライマーを使用することができる。鋳型として、HA又はNA遺伝子の一部に相補的な核酸分子を用いて配列決定反応を開始するためには、それぞれ、配列番号1〜31及び配列番号112のいずれか1種、又は配列番号72〜配列番号93のいずれか1種を含むフォワードプライマーを使用することができる。配列決定反応は、当技術分野で公知の標準法により実施しても、また、自動配列決定機器を用いて実施してもよい。
【0085】
[00127] 本発明のプライマーはまた、H5又はH5N1インフルエンザウイルス分離株に由来するRNAを検出するためのプローブ又は捕獲分子として有用である。例えば、配列番号1〜配列番号114のいずれか1種を含む1種又は複数のプライマーを固体支持体上に固定し、これを、プライマー配列の一部又は全てに相補的な配列を有する核酸分子を単離するために使用することができる。
【0086】
[00128] すなわち、サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む、1種又は複数の固定されたプライマーをサンプルと接触させることを含む方法が提供される。
【0087】
[00129] プライマーは、核酸を固定するための標準的な方法により固相支持体上に固定することができ、そのような方法としては、化学架橋、光架橋、又は、プライマー上の官能基(プライマーに付加されているか組み込まれている官能基を含む。)(例えば、ビオチン)を介した特異的固定化が挙げられる。
【0088】
[00130] 固相支持体は、検出アッセイに使用可能なものであればいずれの支持体であってもよく、そのような支持体としては、クロマトグラフィービーズ、組織培養プレート若しくはディッシュ、又はスライド等のガラス表面が挙げられる。
【0089】
[00131]接触は、プライマー又はその一部に相補的な配列を含む、サンプル中のいずれかの核酸がハイブリダイズすることができるような、プライマー及びサンプル間のハイブリダイゼーションを可能にする条件下で実施する。当業者ならば、サンプルとハイブリダイズさせようとするプライマー又はプライマー領域の配列に基づいて、好適なハイブリダイゼーション条件を決定することができ、また、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを高めるか低下させるように条件を変化させることができる。例えば、温度、塩又はバッファー濃度、及び界面活性剤濃度を変化させることで、所与の配列とその相補体との間のハイブリダイゼーションの条件のストリンジェンシーを変化させることができる。
【0090】
[00132] このような用途では、プライマー若しくは核酸サンプル又はその双方を、蛍光標識、化学発光標識、有色色素標識、タンパク質、ペプチド、リガンド等の標識で修飾することができる。
【0091】
[00133] 次いで、固定されたプライマーによって捕獲されている、サンプルに由来するいずれかのハイブリダイズされた核酸を検出する。検出方法は、サンプル及び/又は固定されたプライマー上の標識の性質に応じて異なる。更に、核酸分子を検出及び可視化するための標準法を使用することができ、そのような方法としては、クロマトグラフィー法及びゲル電気泳動・染色法が挙げられる。
【0092】
[00134] 固定化及び捕獲用途の一例として、当技術分野で公知のように、DNA又はヌクレオチドマイクロアレイへのプライマー又はプライマー類の取り込みがある。
【0093】
[00135] 従って、サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、マイクロアレイの少なくとも1スポットに、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む、1種又は複数のプライマーを含有するマイクロアレイをサンプルと接触させること、及び、サンプルとプライマーとのハイブリダイゼーションを検出することを含む方法も提供される。核酸マイクロアレイ技術は、当技術分野で公知であり、マイクロアレイの製造、及びマイクロアレイ中の1又は複数のスポットにおけるサンプルの捕獲分子とのハイブリダイゼーションの検出が包含される。
【0094】
[00136] 用いるサンプルは、例えば、インフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を含有する疑いのある生体サンプル、又はインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を含有する疑いのある生体サンプルから作製したか増幅した核酸を含んでいる生体サンプルである。核酸は、本明細書に記載のRT−PCR増幅、本明細書に記載のNASBA法、プライマー伸長法等、上述の公知の増幅方法を用いて増幅することができる。サンプルは、公知のハイブリダイゼーション法を用いて、マイクロアレイに取り込まれたプライマー又はプライマー類とハイブリダイズすることができる。
【0095】
[00137] ハイブリダイゼーションを検出するためには、通常、プローブとして機能するプライマーを標識するか、又はサンプルを標識する。例えば、サンプルは、増幅ステップの際に標識を組み込むことによって標識することができる。標識は、放射性標識、化学発光標識、蛍光標識等の検出可能な標識であれば、いずれでもよい。例えば、当技術分野で公知のように、容易に、Cy3又はCy5標識ヌクレオチドを、増幅される核酸分子に組み込んで、標識サンプルを作製することができる。ハイブリダイゼーションは、通常、この方法を用いて、マイクロアレイ中の特定のスポットにおけるシグナル増大によって検出する。
【0096】
[00138] 或いは、マイクロアレイに含まれる本明細書に記載のプライマーを標識してもよい。例えば、US6,811,973(Reichに付与されている。)(これは、参照されることにより本明細書に完全に組み込まれる。)には、マイクロアレイにおいて捕獲分子として用いられる核酸プローブ分子に蛍光マーカーを含め、それによって捕獲核酸分子とその標的核酸分子とのハイブリダイゼーションが、捕獲分子に組み込まれた蛍光標識によって発光される蛍光シグナルのクエンチングをもたらすことが記載されている。従って、ハイブリダイゼーションは、マイクロアレイ中の特定のスポットからのシグナルの低下によって測定される。
【0097】
[00139] 本発明はまた、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む、1種又は複数のプライマーを、マイクロアレイ中の1又は複数のスポットに取り込んでいるマイクロアレイを包含する。マイクロアレイ(例えば、核酸マイクロアレイ)を製造する方法は公知である。例えば、US6,753,144(Hirota)及びUS6,511,849(Wang)(いずれも、参照されることにより本明細書にそのまま組み込まれる。)には、マイクロアレイを作製する方法が記載されている。通常、マイクロアレイは、1種又は複数のプライマーをマイクロアレイ中の所定のアドレス又はスポットに固定することによって固体支持体上に形成する。
【0098】
[00140] 増幅と同様に、プライマーのファミリーの1又は複数のメンバーを単一スポットに含めることができ、これによって、マイクロアレイ中の単一のスポットを用いて、いくつかの異なる変異体又は分離株を検出することが可能となる。
【0099】
[00141]上述の方法は、インフルエンザAウイルスH5又はH5N1分離株を検出するin vitro法に関するものであるが、本明細書に記載のプライマーはまた、インフルエンザAウイルスH5又はH5N1サブタイプ感染を検出又はイメージングするためのin vivo法にも使用することができる。
【0100】
[00142] また、サンプル中のインフルエンザA H5又はH5N1サブタイプを検出するための、上述のプライマーと使用説明書とを含むキット又は市販のパッケージも、本発明に包含される。検出は、本明細書に記載の方法のいずれによるものであってもよい。
【0101】
[00143] 本明細書に記載の全ての文献は、参照されることによりそのまま組み込まれる。
【0102】
[00144] 本発明の種々の実施形態が本明細書に開示されているが、当業者によく知られている一般的な知識に従って、本発明の範囲内で多数の修飾及び改変を行うことができる。そのような改変としては、実質的に同様の方法で同様の結果を達成するために、公知の等価物を本発明のいずれかの態様と置き換えることが挙げられる。本明細書に用いた全ての技術用語及び科学用語は、特に断りのない限り、本発明の技術分野の当業者に一般に理解されているものと同一の意味を有する。
【実施例】
【0103】
[00145] 卵から抽出したRNA、並びに、尿膜腔液、総排泄腔スワブ及び気管スワブ、ホモジナイズした組織、プールした臓器、血液、痰、糞便、尿及び鼻咽頭吸引物を含むヒト臨床サンプルから抽出したRNAを用いて実験を行った。
【0104】
[00146]実施例1:ゲルベースの検出プラットフォームを用いる鳥インフルエンザウイルスH5及びH5N1の検出
【0105】
[00147] 以下は、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出するための一般的なプロトコールである。
【0106】
[00148] 一般的には、TRIzol(商標)又はRNA抽出キット(Qiagen)のいずれかを用いて、製造業者の使用説明書に従ってRNAをサンプルから抽出する。
【0107】
[00149] 第1鎖cDNA合成は、抽出したRNA上で、20μLの反応容量中、関連のリバースプライマー(類)(10μM保存液2μL)を用いて実施する。第1ラウンドPCR反応は、鋳型であるcDNA産物と、関連のフォワード及びリバープライマー(類)(フォワード及びリバース各々の総容量は1.25μL)とを含有するcDNA反応物2.5μLを、25μLの反応容量中で用いて実施する。PCR条件は以下の通りに設定する。94℃で2分間インキュベーション;94℃で10秒、50℃で30秒、72℃で1分間の35サイクル;続いて、72℃で7分間のインキュベーション。第2ラウンドのPCRは、鋳型として第1ラウンドPCRの産物(2.5μL)を用いて実施する。全ての他の条件及び試薬は、第1ラウンドPCRと同様である。
【0108】
[00150] 第2ラウンドPCRの産物を、1.5〜2%アガロースゲルでエチジウムブロマイドを用いて染色することによって分析する。
【0109】
[00151]しかし、1ラウンドのPCRで十分検出可能という知見が、繰り返しの検証を経て確立されている。
【0110】
[00152] タイ由来のH5N1ウイルス分離株(2004)から抽出したRNAを用いて、上述のRT−PCRプロトコールを実施した。以下のHA遺伝子に対する8種のプライマーセットを用いた。(1)gisAFH5N1H1F及びgisAFH5N1H4R、(2)gisAFH5N1H2aF及びgisAFH5N1H4R、(3)gisAFH5N1H1F及びgisAFH5N1H5bR、(4)gisAFH5N1H2aF及びgisAFH5N1H5bR、(5)gisAFH5N1H3F及びgisAFH5N1H8aR、(6)gisAFH5N1H6bF及びgisAFH5N1H8aR、(7)gisAFH5N1H6bF及びgisAFH5N1H10R、(8)gisAFH5N1H7aF及びgisAFH5N1H11cR。予想される断片の大きさはそれぞれ、189bp、148bp、306bp、265bp、574bp、456bp、489bp及び163bpであった。図2に示されるように、増幅産物は、1.5%アガロースゲルに流し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。
【0111】
[00153] このアッセイの感度を調べるために、10倍に段階希釈された鋳型と、プライマーセット3(図3)、5(図4)、6及び8(図5)と、を用いる反応を実施した。結果(図3〜5。レーン1〜7はそれぞれ、50ng、0.5ng、50pg、0.5pg、0.05pg、5fg及び0.5fgの鋳型を用いて実施した反応である。)は、本発明のプライマーを用いるPCR反応は高感度であるが、用いるプライマーに応じて感度が変化することを示している。プライマーセット3及び6はより高感度であり、プライマーセット6からは、5fg程度の低い鋳型濃度でも相当な量の増幅産物が生じた(図5、レーン6参照)。
【0112】
[00154]実施例2:リアルタイムRT−PCR検出プラットフォームを用いる鳥インフルエンザウイルスH5及びH5NIの検出
【0113】
[00155] LightCycler(商標)装置を用いて、以下の反応を実施する。
【0114】
[00156] 反応基本混合物(マスターミックス)は、以下の試薬を順に氷上で混合し、20μLの容量になるように調製した。水(必要に応じて調節される容量)、50mM酢酸マンガン(1.3μL)、0.2〜1μMという最終濃度のフォワードプライマーと、リバースプライマー及び蛍光標識プローブ(2.6μL)と、を含有するプローブNプライマーミックス(ProbeNPrimer mix)、バッファーとヌクレオチドと酵素とを含むLightCycler RNAマスターハイブリダイゼーションプローブ(RNA Master Hyblidization Probe)(7.5μL)。
【0115】
[00157] 反応物を、LightCycler(商標)において用いるのに適したガラスキャピラリーチューブに移す。5μLの抽出したRNA鋳型を各反応物に加え、短時間遠心分離する。RT−PCR反応を、以下のプログラムに従って実施する(表5〜8)。
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
【表7】
【0119】
【表8】
【0120】
[00158]実施例3:種々のプライマーセットを用いるリアルタイムRT−PCRによる鳥インフルエンザウイルスH5Nlの検出
【0121】
[00159] リアルタイムPCR反応は、実施例2に記載の8種のプライマーセットを用いて実施した。反応は、標準プロトコールに従って、SYBRグリーン蛍光検出キットを用いて、また市販の試薬キット(Roche)を用いて実施した。図6は、8種のプライマーセットの各々を用いて実施した反応によって得られた増幅産物を示す。8種のプライマーセットは、1.5%アガロースゲルにおいてエチジウムブロマイドで染色して可視化されている。
【0122】
[00160] プライマーの感度を確認するために、リアルタイムPCRプロトコールに従って増幅曲線を作製し、増幅産物の生成をモニターした。プライマーセット1〜8の各々に関する結果を、それぞれ図7〜14に示す。増幅反応終了時に、増幅産物の融解曲線を求めた。一般に、特異的増幅産物は、非特異的産物よりも高い融解温度を有し、融解曲線プロフィールを用いて反応の特異性を確認することができる。図15〜18に示される融解曲線は、別個の予想される増幅産物を示す。このように、セット1〜8のプライマーは、リアルタイムPCR反応に用いる場合には、より感度が高く、H5N1分離株に特異的である。
【0123】
[00161]実施例4:一ステップRT−PCR反応を用いる、フィールドサンプルからのH5N1インフルエンザウイルスの検出
【0124】
[00162] T7 RiboMax Express in vitro転写系(Promega、USA)によって作製した、in−vitro転写されたRNAを用いるゲルベースのアッセイにおいて、プライマーセット6(実施例1に記載)を用いて、プライマーの性能を評価した。精製した転写されたRNAの濃度は、RiboGreen RNA定量試薬(Invitrogen、USA)を用いて測定し、in vitro転写されたRNAの段階希釈物は2つずつ調製した。
【0125】
[00163] H5N1特異的プライマー(セット6)を含む一ステップ逆転写(RT)−PCRシステム(Qiagen、Germany)を用いて、以下のPCRサイクルに従って、反応混合物25μL中でRNA2μLを用いた。94℃で10秒、続いて、94℃で10秒、50℃で30秒、及び72℃で1分の35サイクル;続いて最後に、72℃で7分間。このPCR産物の大きさは456bpであり、1%アガロースゲルで分離した。PCR産物を直接配列決定して、産物の同一性を確認した。アッセイの感度は1000コピー未満であることがわかり、H5N1 RNAを特異的に検出できた(図19A)。
【0126】
[00164] 二ステップRT−PCR法(Roche、Germany)も上述のように行い、一ステップRT−PCR法と比較した。結果から、両方の系がうまく働いたことが示された(図20A(二ステップ)及び図20B(一ステップ)を比較のこと)。次いで、LightCycler(ライトサイクラー)リアルタイム系(Roche、Germany)を用いてプライマーを試験したところ、同程度の結果が得られ(図20C)、このことは、検出の点で2種のアッセイの感度が同等であることを示す。
【0127】
[00165] 図20Cに関しては、RNA標品の増幅(a〜eで示す。)が示されている。x軸は定量的PCRアッセイのサイクル数を表し、y軸はバックグラウンドレベルを上回る蛍光強度(F2)を表す。鋳型を含まない対照(NTC)が示されている。RNA標品は以下の通りとした。(a)反応当たり1×109コピー、(b)反応当たり1×108コピー、(c)反応当たり1×107コピー、(d)反応当たり1×106コピー及び(e)反応当たり1×105コピー。挿入グラフは、PCR産物の融解曲線分析を示す。RNA標品(a〜e)と鋳型を含まない対照からのシグナルが示されている。x軸は温度(℃)を表し、y軸はバックグラウンドレベルを上回る蛍光強度を表す。
【0128】
[00166] H5N1サブタイプ検出のためのアッセイの特異性を立証するために、本発明者らは、次いで、対照として、インフルエンザAウイルスの異なるサブタイプのいくつかの参照株(H3N8、H5N3、H7N3及びH9N2)と、ニューカッスル病ウイルス(NDV)とを用いて、フィールドサンプルでプライマーを調べた。結果から、検出はH5N1のみに特異的であることが示された(図19B)。サンプルは、製造業者の使用説明書に従って、TRIzol試薬(Invitrogen、USA)とQIAampウイルスRNAミニキット(Qiagen、Germany)とを用いて抽出した。
【0129】
[00167] 図19Aは、RiboGreen RNA定量化試薬によって測定し段階希釈したin vitro転写された一本鎖RNA(レーン2〜8)、及び、感染卵の尿膜腔液から抽出したH5N1 RNAの増幅結果を表す。鋳型を含まない対照(滅菌水)は「NTC」と示されている。ウイルス量は反応当たりのコピー数によって示されている。(レーン2)反応当たり1×109コピー、(レーン3)反応当たり1×108コピー、(レーン4)反応当たり1×107コピー、(レーン5)反応当たり1×106コピー、(レーン6)反応当たり1×105コピー、(レーン7)反応当たり1×104コピー及び(レーン8)反応当たり1×103コピー。H5N1 RNAは、反応当たり約1×106コピーであると推定される
【0130】
[00168] 図19Bは、異なるサブタイプの鳥インフルエンザAウイルスの参照株(レーン12〜15)、及びニューカッスル病ウイルス(NDV、レーン16)を用いた、H5N1鳥インフルエンザウイルスの特異的検出を表す。H5N1、H3N8、H9N2及びNDV分離株は、獣医学研究所、マレーシア(Veterinary Research Institute, Malaysia)によってフィールドサンプルから単離され、H5N3及びH7N5分離株は鳥取大学家畜病理学教室(Department of Veterinary Pathology of Tottori University,Japan)から提供された。非H5N1分離株及び鋳型を含まない対照(水)からの陰性シグナルが示されている。
【0131】
[00169] 2004年から2005年の大流行の際にベトナム及びマレーシアから単離されたニワトリ、アヒル及びタイワンアヒル由来の既知の事例及び疑わしい事例からなる全部で145種のフィールドサンプルを、H5N1 RNAについて試験した(表9)。プールされた臓器組織、尿膜腔液、総排泄腔スワブ及び気管スワブのサンプルから、尿膜腔液、及びプールされた臓器については100%陽性の陽性結果が得られ(表9)、このRT−PCRアッセイの感度が実証された。全ての陽性サンプルについて、確認試験としてウイルス培養単離法を用いた(表9)。ホモジナイズした組織の検出率が40%と最低であったのに対し、総排泄腔スワブ及び気管スワブからは66.7%の陽性H5N1サンプルが検出された。検出におけるこの差異は、種々のサンプルからのウイルスRNA回収における異なる効率によるものであると思われる。H5N1 RNA回収及び検出については、サンプルの中で尿膜腔液画分の効率が最高であった(表9)。
【0132】
【表9】
【0133】
[00170] プライマーの有用性を更に確認する目的で、次いで、ベトナム由来の5種の陽性サンプルを、既存の社内H5プライマーセットと並行して試験したところ、結果から、本明細書に記載のH5N1プライマー(プライマーセット6)は、5種の陽性H5N1サンプルのうち5種を検出したのに対し、その他のプライマーセットは、5種のうち3種を検出したのみであった(図21C)ことが示された。このことは、本明細書に記載のH5N1プライマーはより高感度であり、ウイルス量の少ない弱い陽性サンプルも検出できることを示す。
【0134】
[00171]図21Aは、ニワトリ、アヒル及びタイワンアヒルの尿膜腔液からのH5N1鳥インフルエンザウイルスの検出を示す(レーン1〜11)。図21Bは、ホモジナイズした組織からのH5N1鳥インフルエンザウイルスの検出を示す(レーン1〜4)。3種のサンプルのうち2種しか検出されなかったが(レーン3及び4)、これは非効率的なRNA抽出によるものであろう。H5N1陽性対照が示されている(レーン5)。図21Cは、社内H5プライマーセットと新規H5N1プライマーとの比較を示す。社内H5プライマーセットは、ウイルス培養単離によって確認されている5種の陽性サンプルのうち3種を検出したのに対し(レーン1〜5)、H5N1プライマーセットは5種のサンプル全てを検出した(レーン7〜11)。両プライマーセットに関しては同一バッチの抽出RNAを用いた。
【0135】
[00172]実施例5:リアルタイムPCR及び一ステップRT−PCR反応を用いるH5N1及びH5インフルエンザAウイルスの検出
【0136】
[00173] リアルタイムPCRプロトコール及び一ステップ若しくは二ステップRT−PCRプロトコールの双方を用いて、RT−PCR実験を上述のように実施した。実験にはin vitro転写されたRNAを用いた。
【0137】
[00174] H5N1を検出する実験では、以下のH5N1サブタイプのNA遺伝子に対するプライマーセットを用いた。(9)gisAFH5N1N1aF及びgisAFH5N1N3aR、(10)gisAFH5N1N1aF及びgisAFH5N1N6gR、(11)gisAFH5NlNlaF及びgisAFH5N1N7bR、(12)gisAFH5N1N2aF及びgisAFH5N1N3aR、(13)gisAFH5N1N2aF及びgisAFH5N1N6gR、(14)gisAFH5N1N2aF及びgisAFH5N1N7bR、(15)gisAFH5N1N4aF及びgisAFH5N1N6gR、(16)gisAFH5N1N4aF及びgisAFH5N1N7bR、(17)gisAFH5N1N5gF及びgisAFH5N1N7bR、(18)gisAFH5N1N8bF及びgisAFH5N1N9aR、(19)gisAFH5N1N8bF及びgisAFH5N1N11bR、(20)gisAFH5N1N10aF及びgisAFH5N1N11bR。予測される断片の大きさはそれぞれ、120bp、315bp、452p、111bp、306bp、443bp、217bp、354bp、158bp、119bp、271bp及び172bpであった。増幅産物は1.0%又は1.5%アガロースゲルに流し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。全ての反応について、それぞれ、QS1=1000ng/μL、QS2=100ng/μL、QS3=10ng/μL、QS4=1ng/μL、QS5=0.1ng/μL、QS6=0.001ng/μL、及び、NTC=鋳型を含まない対照。
【0138】
[00175] 図22〜33はそれぞれ、プライマーセット9〜20を用いるリアルタイムPCR実験の結果を示す。図22〜33の各々について、図A(図22A〜33A)は、種々の濃度のin vitro転写されたRNA鋳型の増幅曲線及びRNA標準曲線を示し、図B(図22B〜33B)は融解曲線を示し、図C(図22C〜33C)はPCR産物のアガロースゲル可視化を示す。
【0139】
[00176] 同様のリアルタイムPCR実験を、以下のH5N1サブタイプのHA遺伝子に対するプライマーセットを用いて実施した。(21)gisAFH5N1H9F及びgisAFH5N1H11cR、(22)gisAFH5N1H13F及びgisAFH5N1H16cR、並びにH5サブタイプ(H5N1、H5N2及びH5N3)のHA遺伝子、(23)gisAFH5H1aF及びgisAFH5H2aR。セット21及び22を用いて得られた結果を、それぞれ図34A〜34D及び図35A〜35Dに示し、セット23を用いて得られた結果を図36A〜36Dに示す。図中、a及びbはそれぞれ、H5N2及びH5N3 RNA分離株の結果である。これらの図において、図A(図34A、35A、36A)は種々の濃度の鋳型の増殖曲線を示す。用いた鋳型は、H5N1及びH5サブタイプのin vitro転写されたRNA、並びにH5N2及びH5N3のフィールドサンプルから抽出したRNAであった。図B(図34B、35B、36B)はRNA標準曲線を示し、図C(図34C、35C、36C)は融解曲線を示し、図D(図34D、35D、36D)はPCR産物のアガロースゲル可視化を示す。標準曲線は、in vitro転写されたRNA標品の定量化された量であるQS1〜QS5に基づいて、LightCyclerソフトウェアを用いて作製した。
【0140】
[00177] 次いで、上述のように、選択したH5N1 NAプライマーセット(一ステップ法にはセット10、11、13及び16を、二ステップ法にはセット12及び15を用いる。)を用いて一ステップ又は二ステップRT−PCR反応を実施し(それぞれ図37〜42)、また、H5 HAプライマーセット23を用いて一ステップ又は二ステップRT−PCR反応を実施した(それぞれ、図43A及び43B)。図37〜42、43A及び43Bに示されるように、結果は、エチジウムブロマイドで染色した1.5%アガロースゲルを用いて可視化した。
【0141】
[00178]実施例6:Taqman(商標)プローブ系を用いるリアルタイムPCR法
【0142】
[00179] 基本混合物(マスターミックス)は、氷上で1.5ml反応試験管中に、以下を順に加えることによって調製した。1.3μLの50mM Mn(OAc)2、8μLの1μLプローブ、1μLのFプライマー、1μLのRプライマー及び7.5μLのLightCycler RNA マスターハイブリダイゼーションプローブ。この基本混合物を穏やかに混合し、18μLを予冷したガラスキャピラリーに移した。2μLのRNA鋳型を加え、キャピラリーを700×gで5秒間遠心分離した。このキャピラリーをLightCycler(商標)装置のローターに入れ、表5〜8に示されるプログラムに従って、プログラム7については45サイクルを回した。
【0143】
[00180] Taqman(商標)(Roche)検出系を用いて、リアルタイムPCRを実施した。サブタイプH5のHA遺伝子を検出するために、以下の増幅プライマー対を用いた。(24)gisAFH5H1aF及びgisAFH5HTqR、加えてTaqman(商標)プローブgisAFH5HTMP。H5N1サブタイプのHA遺伝子を検出するために、以下の増幅プライマー対を用いた。(25)gisAFH5N1HTqF1及びgisAFH5N1H11cR、(26)gisAFH5N1H9F及びgisAFH5NlHTqRl。これらはそれぞれ、Taqman(商標)プローブgisAFH5N1HTMP2及びgisAFH5N1HTMP1と共に用いた。Taqman(商標)プローブは、5’末端でリポーターフルオロフォア6−カルボキシフルオレセインアミダイト(6−Fam)を用いて、また、3’末端でクエンチャーテトラメチルローダミン(TAMRA)を用いて標識した。Taqman(商標)プローブの配列は表10に示されている。増幅曲線結果は、H5プライマーセット24については図44に、H5N1プライマーセット25及び26については図45及び46に示す。
【0144】
【表10】
【0145】
[00181]実施例7:プライマーを用いるDNAマイクロアレイ
【0146】
[00182] 本発明の特定のプライマーをDNAマイクロアレイ(Attogenix、Singapore)に用いて、H5及びH5N1分離株由来のRNAを検出した。簡単には、種々のHA及びNAプライマー、具体的にはH5(gisAFH5HlaF及びgisAFH5H2aR)、H5N1(gisAFH5N1H2aF及びgisAFH5N1H4R)、並びにNA H5N1(gisAFH5N1N2aF及びgisAFH5NlN3aR)を固体表面上に固定した(RT−PCRの陽性対照としてGAPDHを用いた)。次いで、マイクロアレイを、サンプルNA若しくはHA転写物RNA又はその双方でプローブし、マイクロアレイの各スポットにおけるプローブのプライマーとの結合を、二本鎖核酸を検出するためのSYBRグリーン蛍光プローブを用いて検出した。結果を表11に示す。これから明らかなように、NA転写物はHA転写物よりも低濃度で検出可能であり、このことは、用いたNAプライマーが、用いた特定のHAプライマーよりも高感度であることを示す。
【0147】
【表11】
【0148】
[00183] 当業者には理解されることであるが、本明細書に記載の典型的実施形態に対しては多数の改変が可能である。本発明は、そのような改変の全てを、請求の範囲によって定義されるその範囲内に包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】HA遺伝子を示し、本発明の典型的なフォワード及びリバースプライマー(「gisAF」で始まる)の位置、並びに当技術分野で公知のプライマー(「TW」、「VM」又は「HK」で始まる)の位置を示す模式図である。
【図2】H5N1分離株のRNAから逆転写された鋳型DNAを増幅するために、本発明の典型的なプライマー(セット1〜8)を用いて、ゲルベースのPCRアプローチによって調製されたPCR増幅産物を示すアガロースゲルの写真である。
【図3】種々の量の鋳型及び図2で用いたプライマーセット3を用いて得た増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図4】種々の量の鋳型及び図2で用いたプライマーセット5を用いて得た増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図5】種々の量の鋳型及び図2で用いたプライマーセット8(上側のバンド)及び6(下側のバンド)を用いて得た増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図6】H5N1分離株のRNAから逆転写された鋳型DNAを増幅するために、本発明の典型的なプライマー(セット1〜8)を用いて、SYBR緑色色素を用いるリアルタイムPCRアプローチによって調製したPCR増幅産物を示すアガロースゲルの写真である。
【図7】図6のプライマーセット1を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図8】図6のプライマーセット2を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図9】図6のプライマーセット3を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図10】図6のプライマーセット4を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図11】図6のプライマーセット5を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図12】図6のプライマーセット6を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図13】図6のプライマーセット7を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図14】図6のプライマーセット8を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図15】図6のプライマーセット1及び2を用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図16】図6のプライマーセット3、4及び5を用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図17】図6のプライマーセット5及び6を用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図18】図6のプライマーセット7及び8を用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図19A】in vitro転写された一本鎖RNAを段階希釈したものを用いた一ステップRT−PCRによるH5N1鳥インフルエンザAウイルスの検出を示すアガロースゲルの写真である。
【図19B】一ステップRT−PCRによる、フィールドサンプルからのH5N1鳥インフルエンザAウイルスの特異的検出を示すアガロースゲルの写真である。
【図20A】二ステップRT−PCR反応を用いて得たPCR産物のアガロースゲルの写真である。
【図20B】一ステップRT−PCR反応を用いて得たPCR産物のアガロースゲルの写真である。
【図20C】プライマーセット6を用いたリアルタイムPCRの結果を示す図である。
【図21A】本発明の典型的なプライマーを用いて、尿膜腔液のサンプルにおけるH5N1鳥インフルエンザウイルスを検出した結果を示すアガロースゲルの写真である。
【図21B】本発明の典型的なプライマーを用いて、ホモジナイズした組織のサンプルにおけるH5N1鳥インフルエンザウイルスを検出した結果を示すアガロースゲルの写真である。
【図21C】社内H5プライマーを用いた場合とH5N1プライマーセットを用いた場合の、フィールドサンプルにおけるH5N1鳥インフルエンザウイルスを検出した結果を比較するアガロースゲルの写真である。
【図22A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット9)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図22B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット9)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図22C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット9)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図23A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット10)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図23B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット10)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図23C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット10)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図24A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット11)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図24B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット11)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図24C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット11)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図25A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット12)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図25B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット12)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図25C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット12)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図26A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット13)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図26B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット13)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図26C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット13)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図27A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット14)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図27B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット14)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図27C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット14)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図28A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット15)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図28B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット15)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図28C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット15)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図29A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット16)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図29B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット16)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図29C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット16)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図30A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット17)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図30B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット17)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図30C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット17)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図31A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット18)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図31B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット18)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図31C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット18)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図32A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット19)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図32B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット19)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図32C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット19)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図33A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット20)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図33B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット20)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図33C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット20)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図34A】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット21)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図34B】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット21)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応におけるRNA標準曲線である。
【図34C】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット21)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図34D】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット21)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図35A】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット22)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図35B】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット22)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応におけるRNA標準曲線である。
【図35C】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット22)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図35D】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット22)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図36A】H5インフルエンザA(H5N1(QS1〜QS5)、H5N2(a)及びH5N3(b))のHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット23)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図36B】H5インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット23)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応におけるRNA標準曲線である。
【図36C】H5インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット23)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図36D】H5N1インフルエンザA(H5N1(QS1〜QS5)、H5N2及びH5N3)のHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット23)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図37】種々の量の鋳型及びプライマーセット10を用いて、一ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図38】種々の量の鋳型及びプライマーセット11を用いて、一ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図39】種々の量の鋳型及びプライマーセット13を用いて、一ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図40】種々の量の鋳型及びプライマーセット16を用いて、一ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図41】種々の量の鋳型及びプライマーセット12を用いて、二ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図42】種々の量の鋳型及びプライマーセット15を用いて、二ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図43A】種々の量の鋳型及びプライマーセット23を用いて、一ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図43B】種々の量の鋳型及びプライマーセット23を用いて、二ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図44】Taqman(商標)リアルタイムPCR法及びサブタイプH5のHA遺伝子に対するプライマーセット24を用いて得られた増幅曲線である。
【図45】Taqman(商標)リアルタイムPCR法及びサブタイプH5N1のHA遺伝子に対するプライマーセット25を用いて得られた増幅曲線である。
【図46】Taqman(商標)リアルタイムPCR法及びサブタイプH5N1のHA遺伝子に対するプライマーセット26を用いて得られた増幅曲線である。
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001] 本願は、2004年6月10日に出願された米国仮特許出願第60/578,353号の利益及び優先権を主張するものであり、その内容は、参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【発明の分野】
【0002】
[0002] 本発明は、核酸に基づく検出方法、より詳しくは、鳥インフルエンザウイルスを検出するプライマー及び方法に関する。
【発明の背景】
【0003】
[0003] 3種のインフルエンザウイルス、A型、B型及びC型が知られており、それらはオルトミクソウイルス科と呼ばれる、エンベロープを有するネガティブセンスの一本鎖RNAウイルスのファミリーに属している(Swayne,D.E.及びD.L.Suarez(2000)Rev.Sci.Tech.19、463〜482頁)。ウイルスゲノムは、約12000〜15000ヌクレオチドの長さであり、8つのRNAセグメントを含む(C型では7つ)。
【0004】
[0004] インフルエンザAウイルスは、ヒト、ブタ、ウマ、海洋哺乳類、鳥類等の多数の動物に感染する(Nicholson,K.G.ら(2005)Lancet 362、1733〜1745頁)。その自然宿主は水鳥であり、鳥類種では、ほとんどのインフルエンザウイルス感染は、呼吸器及び腸管に局在化された軽い感染を引き起こす。しかし、このウイルスは、家禽では高病原性作用を有し、突発的に大流行して罹患した家禽集団において高い死亡率を引き起こすことがある。H5N1等の高病原性株は、死亡率が100%に到達することもある系統感染を引き起こす(Zeitlin,G.A.及びM.J.Maslow(2005)Curr.Infect.Dis.Rep.7、193〜199頁)。ヒトでは、インフルエンザウイルスは高伝染性の急性呼吸器疾患を引き起こし、これが、ヒトにおける流行性かつ汎発性の疾患をもたらしている(Cox,N.J.及びK.Subbarao(1999)Lancet 354、1277〜1282頁)。
【0005】
[0005] インフルエンザAウイルスは、ウイルスの付着及び細胞性放出に必要な表面糖タンパク質、すなわち、血球凝集素(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)をコードする2種の遺伝子の抗原性領域における対立遺伝子の差異に基づいて、サブタイプに分類することができる。その他の主要ウイルスタンパク質としては、核タンパク質、ヌクレオカプシド、構造タンパク質、膜タンパク質(M1及びM2)、ポリメラーゼ(PA、PB1及びPB2)及び非構造タンパク質(NS1及びNS2)が挙げられる。
【0006】
[0006] インフルエンザAウイルスでは、現在、HAの15種のサブタイプ(H1〜H15)、及び9種のNA(N1〜N9)抗原性変異体が知られている。サブタイプH5及びH7は、家禽において高病原性感染を引き起こす可能性があり、特定のサブタイプは、種の壁を乗り越えてヒトに感染することが判明している。これまでに、ヒトに蔓延するサブタイプとして知られているものは3種しかない(H1N1、H1N2及びH3N2)。しかし、1997年及び2003年に香港において記録されたように、近年、鳥インフルエンザAの病原性H5N1サブタイプが種の壁を乗り越えて、ヒトに感染することが報告され(Peiris,J.S.M.ら(2004)Lancet 363、617〜619頁、Yuen,K.Y.ら(1998)Lancet 351、467〜471頁)、死に至る患者も現れている。2003年後半から、家禽ではH5N1鳥インフルエンザAが蔓延し、ベトナム、タイ、韓国、ラオス、カンボジア、インドネシア、日本、マレーシア等、いくつかのアジア諸国で深刻な大流行が報告されている(Centers for Disease Control and Prevention(CDC)(2004) Morb.Mortal.Wkly.Rep.53、100〜3頁、Hien T.T.ら(2004)N.Engl.J.Med.350、1179〜1188頁)。それらは、何百万もの家禽の大量処分をもたらし、深刻な経済的な影響を及ぼしている。
【0007】
[0007] ヒトでは、鳥インフルエンザウイルスは、気道、並びに腸管、肝臓、脾臓、腎臓及びその他の臓器の細胞に感染する。鳥インフルエンザ感染の症状としては、発熱、呼吸困難(息切れ及び咳を含む)、リンパ球減少、下痢及び血糖値調節困難が挙げられる。H5サブタイプ、特に、H5N1が高病原性を有し、また、既に実証されているように、種を越えてヒトに感染する能力を有することにより、これらのウイルス株に関連した、重大な経済上及び公衆衛生上の危険(極めて流行性で、汎発性の脅威を含む。)が存在している。
【0008】
[0008] 従って、H5N1鳥インフルエンザAウイルスは、アジアのみならず全世界のヒトの健康にとって潜在的に危険なものである。蔓延の可能性を下げ、流行に発展する危険を低減するためには、封じ込め手順に加えて、早期診断のための高感度な検出アッセイが不可欠である。
【0009】
[0009] 現在、生体サンプル中の、鳥インフルエンザウイルスのH5及びH5N1サブタイプを検出するために利用可能な種々の技術があるが、そのような技術としては、RNAを増幅する核酸配列に基づく増幅(NASBA)法、ウイルス培養、ウイルスRNAゲノムから転写されたDNAを増幅する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法、血球凝集阻害、並びに種々の蛍光及び酵素結合免疫測定法(ELISA)が挙げられる。
【0010】
[0010] 詳しくは、Soらによる国際公開第02/29118号パンフレットに、鳥インフルエンザウイルスのH5サブタイプを検出するためのNASBAアッセイ及びキットが記載されている。Heinらは、種々の蛍光及び酵素結合免疫測定法を用いる抗原試験の使用について記載している(2004,NewEng.J of Med.350(12)、1179〜1188頁)。Lauらは、鳥インフルエンザウイルスのH5又はH7サブタイプを検出するためのNASBA法について記載している(2003,Biochem.Biophys.Res.Comm.313、336〜342頁)。Leeら(2001,J.Virol.Methods 97、13〜32頁)及びPayungpornら(2004,Viral Immunol.17、588〜593)は、鳥インフルエンザウイルスサブタイプを同定及び細分類又は検出するためのRT−PCRアッセイについて記載している。しかし、これらの方法はいずれも、H5若しくはH5N1のいくつかの分離株又は変異体にのみ由来する遺伝情報を用いて、ウイルスの存在を確定するものである。更に、これらのアッセイは特異性及び感度が低いことが報告されている。臨床上は、これらの診断は、低感度であることにより、ヒトにおけるインフルエンザA(H5N1)ウイルスの信頼性のある検出における有用性が制限される可能性がある。従って、迅速な早期の診断に有用な高感度の診断試験が強く求められている。
【発明の概要】
【0011】
[0011] 200種を超えるH5分離株、及び100種を超えるH5N1分離株に由来するHA遺伝子の配列比較に基づいて、また、約70種のH5N1分離株に由来するNA遺伝子の配列比較に基づいて、これらの遺伝子内の保存領域に対する一連のプライマーを開発した。これらのプライマーは、多種多様なH5及びH5N1分離株をスクリーニングするのに有用であり、迅速、特異的かつ高感度な検出方法を可能にする。
【0012】
[0012] すなわち、一態様において、本発明は、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含むプライマーを提供する。別の態様において、本発明は、標的アニーリング配列と非インフルエンザAウイルス配列とを含むプライマーであって、標的アニーリング配列が配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含むプライマーを提供する。
【0013】
[0013] これらのプライマーは、サンプル、例えば、このようなウイルスを保持している疑いのある生物に由来するサンプル中の鳥インフルエンザウイルスH5又はH5N1の存在を検出するのに有用であり、サンプル中のウイルスの存在を検出するための逆転写ポリメラーゼ連鎖反応において使用することができる。
【0014】
[0014] すなわち、更に別の態様において、本発明は、サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、サンプルから得たRNAから逆転写されたDNAを、各々が配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のプライマーを用いて増幅すること、及び増幅産物を検出することを含み、増幅産物の存在がサンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1の存在を示す方法を提供する。
【0015】
[0015] 本明細書に記載の方法を用いて、多種多様なH5及びH5N1インフルエンザAウイルス分離株を検出することができる。単一の反応試験管においてRNAが逆転写され、その産物が増幅される一ステップ法を用いることで、検出時間の短縮が可能になり、サンプル操作が最小化され、サンプルの相互汚染の危険性が低減される。従って、本明細書に記載のプライマーを用いる、本明細書に記載の方法は、H5及びH5N1インフルエンザA感染の早期検出及び/又は診断に有用である。更に、これらの方法を用いてサンプル中のおよそのウイルス量を調べることができ、その適用は臨床及び公衆衛生管理の場で有用である。
【0016】
[0016] 本発明のプライマーは、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1の存在を検出するためのその他の増幅方法、例えば、核酸配列に基づく増幅法において有用である。本発明のプライマーはまた、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1のHA又はNA遺伝子に相当するDNAを配列決定するのにも有用である。
【0017】
[0017] 更に別の態様において、本発明は、サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、サンプルと、支持体上に固定されているプライマーとを、プライマーとサンプルとがハイズリダイズするのに適した条件下で接触させるステップと、プライマーとサンプルとのハイブリダイゼーションを検出するステップと、を含み、プライマーが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む方法を提供する。
【0018】
[0018] 更に別の態様において、本発明は、サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、サンプルと、1種又は複数のプライマーを含む核酸マイクロアレイとを、当該1種又は複数のプライマーとサンプルとがハイブリダイズするのに適した条件下で接触させるステップと、1種又は複数のプライマーとサンプルとのハイブリダイゼーションを検出するステップと、を含み、プライマーの各々が、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む方法を提供する。
【0019】
[0019] 別の態様において、本発明は、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含むプライマーを含む核酸マイクロアレイを提供する。
【0020】
[0020] 更に別の態様において、本発明は、サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出するためのキットであって、本明細書で規定されるプライマーと、使用説明書とを含むキットを提供する。
【0021】
[0021] 本発明の他の態様及び特徴は、本発明の具体的な実施形態に関する以下の説明を添付の図面と共に検討すれば、当業者に明らかとなろう。
【詳細な説明】
【0022】
[0069] インフルエンザAウイルスを始めとするRNAウイルスは、DNA複製と比較した場合のRNA複製の低い忠実性のために、高い突然変異率を有する傾向がある。その結果、インフルエンザウイルスは急速に進化する傾向がある。更に、インフルエンザAウイルスは、ウイルス株間の遺伝子再集合を受ける傾向があり、この機構が種々のHA及びNAサブタイプの発達に寄与してきた。本発明者らは、200種を超えるインフルエンザA H5分離株、及び100種を超えるインフルエンザA H5N1分離株から得た血球凝集素(「HA」)遺伝子の配列を比較した。同様に、本発明者らは、約70種のインフルエンザA H5N1分離株から得たノイラミニダーゼ(「NA」)遺伝子の配列を比較した。驚くべきことに、インフルエンザウイルス内の高い突然変異率にも関わらず、本発明者らは、特定のサブタイプに特有の、高度に保存された配列の短い領域を見出した。それらの領域は、サンプルにおいてそれらのサブタイプの存在を同定又は検出するのに適している。
【0023】
[0070] 比較に用いた配列は、公的に利用可能なデータベースから得、種々の配列比較ソフトウェア(ソフトウェアClustalW等)を用いて比較した。
【0024】
[0071] 本発明者らは、これらの配列比較により、検出アッセイ、例えば、逆転写とそれに続くポリメラーゼ連鎖反応増幅(「RT−PCR」)で用いるための、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1のHA遺伝子又はNA遺伝子の保存領域に対する、配列番号1〜配列番号114に示されるフォワード及びリバースプライマーを開発した。このような多数のウイルス分離株の比較によって、HA又はNA遺伝子の十分に保存された領域に対するプライマー、ひいては突然変異による変化の影響を受ける可能性が低い領域を標的とするプライマーの設計が可能となり、それによって、現在利用可能なプライマーよりも、H5又はH5N1変異体の大きなプールを検出することができるプライマーを提供することが可能となった。
【0025】
[0072] 本明細書において、用語「分離株」とは、特定の遺伝子配列を有する患者等の特定の生体供給源から単離された、特定のウイルス又はウイルス粒子のクローン集団を指す。異なる分離株は、1個又は数個のヌクレオチドのみが異なってもよく、依然として同一のウイルスサブタイプ内にあってもよい。ウイルスサブタイプとは、これらの糖タンパク質の抗原性に従って分類された、HAのサブタイプ又はNAのサブタイプのいずれかを指す。
【0026】
[0073] 本発明者らは、特定の保存領域において、特定の位置の1個又は複数個のヌクレオチドが分離株間で異なることを見出した。そして、それらの領域についてプライマーのファミリーを開発した。ファミリー内の各プライマーは、HA又はNA遺伝子の保存配列に基づいたものであるが、保存配列内の1個又は複数個の特定の塩基が異なっている。
【0027】
[0074] 従って、一態様において、本発明は、配列番号1〜配列番号114のいずれか1種に示される配列を含むプライマーを提供する。
【0028】
[0075] 当業者には理解されることであるが、「プライマー」とは、相補配列を含む第2のDNA又はRNA分子(標的)と塩基対形成することができる、所定の配列の一本鎖DNA又はRNA分子である。得られたハイブリッド分子の安定性は、生じる塩基対形成の長さに応じて異なり、プライマー及び標的分子間の相補性度、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシー度、等のパラメーターの影響を受ける。ハイブリダイゼーションストリンジェンシー度は、温度、塩濃度、及びホルムアミド等の有機分子の濃度といったパラメーターの影響を受け、当業者に公知の方法を用いて決定することができる。プライマーは、核酸ハイブリダイゼーションを含む方法、例えば、核酸配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応による核酸増幅、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析、制限酵素断片長多型(RFLP)分析、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション、電気泳動移動度シフトアッセイ又はゲルシフト法(EMSA)、核酸マイクロアレイ、及び当業者に公知のその他の方法に用いられる。
【0029】
[0076] 用語「RNA」とは、2個以上の共有結合している、天然に存在しているか、修飾されたリボヌクレオチドの配列を指す。RNAは一本鎖であっても、二本鎖であってもよい。用語「DNA」とは、2個以上の共有結合している、天然に存在しているか、修飾されたデオキシリボヌクレオチドの配列を指し、cDNA及び合成(例えば化学合成)DNAを含み、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。「逆転写されたDNA」又は「から逆転写されたDNA」とは、RNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)の作用によりRNA鋳型から生じた相補的DNA又はコピーDNA(cDNA)を意味する。
【0030】
[0077] 鳥インフルエンザウイルスは一本鎖RNAウイルスであり、いくつかの実施形態では、プライマーは、表1に示される、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1のHA遺伝子の保存領域のRNA配列に対応するDNA配列(配列番号1〜配列番号31及び配列番号112)を有する。このようなプライマーは、サブタイプH5又はH5N1のHA遺伝子から逆転写されたDNAを配列決定するか増幅する場合に、フォワードプライマーとして使用することができる。
【0031】
【表1】
【0032】
[0078] いくつかの実施形態では、プライマーは、表2に示される、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5NlのHA遺伝子の保存領域のRNA配列に対応するDNA配列(配列番号32〜71、配列番号113及び配列番号114)を有する。このようなプライマーは、サブタイプH5又はH5N1のHA遺伝子から逆転写された1本鎖DNAを配列決定するか増幅する場合に、リバースプライマーとして使用することができる。
【0033】
【表2−1】
【0034】
【表2−2】
【0035】
[0079] いくつかの実施形態では、プライマーは、配列番号72〜配列番号93に示される、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5NlのNA遺伝子の保存領域のRNA配列に対応するDNA配列を有する(表3参照)。このようなプライマーは、サブタイプH5N1のNA遺伝子から逆転写されたDNAを配列決定するか増幅する場合に、フォワードプライマーとして使用することができる。
【0036】
【表3】
【0037】
[0080] いくつかの実施形態では、プライマーは、配列番号94〜配列番号111に示される、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5NlのNA遺伝子の保存領域のRNA配列に対応するDNA配列を有する(表4参照)。このようなプライマーは、サブタイプH5N1のNA遺伝子から逆転写されたDNAを配列決定するか増幅する場合に、リバースプライマーとして使用することができる。
【0038】
【表4】
【0039】
[0081] 検査したウイルス分離株のHA又はNA遺伝子の保存領域内で、特定の位置のヌクレオチドが異なる場合には、これらの遺伝子の保存領域に基づいてプライマーの「ファミリー」を開発した。この場合、プライマーのファミリー内の1個又は複数の残基がプライマー毎に異なる。例えば、配列番号1〜配列番号6は、このようなファミリーである。
【0040】
[0082] 更に、当業者には理解されることであるが、プライマーは保存配列に基づいたものであるが、変異したプライマーが、元のプライマー配列と同一又は同程度のストリンジェンシーでサンプル中の標的配列と依然としてハイブリダイズするという条件で、保存配列内の1個又は複数の塩基が置換され、挿入され、又は欠失していてもよい。ハイブリダイゼーション条件は、目的の配列に応じて公知の方法により改変してもよい(Tijssen, 1993、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes、第1部、第2章、「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」、Elsevier, New York参照)。一般には、ストリンジェントな条件は、所与のイオン強度及びpHにおいて、所定の配列の熱融点よりも約5℃低いものであるように選択される。
【0041】
[0083] 当業者には理解されることであるが、プライマーの短い配列中に複数の置換変異を有することで、元の変異していないプライマーの相補体とプライマーとのハイブリダイゼーションの強度が低下し、また、プライマー配列内の変異の間隔及び位置も、ハイブリダイゼーションの強度又はストリンジェンシーに影響を及ぼす。更に、当業者には理解されることであるが、短い配列中の1個又は複数個のヌクレオチドの挿入又は欠失によってもまた、元の変異していないプライマーの相補体とプライマーとのハイブリダイゼーションの強度が低下し、また、短い配列中の2以上の位置に1個又は複数個のヌクレオチドの挿入又は欠失を有することで、変異していないプライマーの相補体とプライマーとのハイブリダイゼーションが著しく変化する可能性がある。
【0042】
[0084] 鳥インフルエンザウイルスのHA遺伝子に対する本発明の種々のプライマーのアラインメントを、従来知られているその他のサブタイプ5のHA遺伝子に対するプライマーと共に図1に示す。プライマーTW_H5−155f及びTW_H5−699rは、Leeら(2001、J.Viriol.Methods 97、13〜22頁)で開示されている。プライマーVM_H5/515、VM_H5−1、VM_H5/1220及びVM_H5−2はHeinら(2004、New Eng. J. of Med.350(12)、1179〜1188頁)で開示されている。プライマーHK_配列番号1〜HK_配列番号3、HK_配列番号5〜HK_配列番号7及びHK_配列番号9〜HK配列番号14は、国際公開第02/29118号パンフレットに開示されている。
【0043】
[0085] いくつかの実施形態では、プライマーの検出、又はプライマーから合成されたか伸長されたDNA産物の検出が可能になるように、プライマーを標識で修飾してもよい。例えば、標識としては、蛍光標識、化学発光標識、有色色素標識、放射性標識、放射不透過性標識や、タンパク質(酵素を含む)、ペプチド、又はリガンド(例えば、ビオチン)が挙げられる。
【0044】
[0086] 特定の実施形態では、プライマーは、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種に加えて、更に他の核酸配列を含んでもよい。このような他の配列は、HA又はNA遺伝子の配列によってコードされるものであるか、それらの配列に相補的なものであり、配列番号1〜配列番号114のいずれか1種によって規定される配列のフランキング領域(隣接した非コード領域)となる。但し、本実施形態に係るプライマーは、完全インフルエンザAゲノムではなく、また、プライマーTW_H5−155f、プライマーTW_H5−699r、プライマーVM_H5/515、プライマーVM_H5−1、プライマーVM_H5/1220、プライマーVM_H5−2、又は上述のHK_配列番号1〜HK_配列番号3、HK_配列番号5〜HK_配列番号7及びHK_配列番号9〜HK_配列番号14ではない。
【0045】
[0087] 或いは、更に含まれる他の配列はHA又はNA遺伝子に対するものでなくてもよく、例えば、タンパク質又は酵素(制限酵素等)によって認識される配列、或いは、標識されたプローブ等の検出に用いる核酸配列に相補的な配列が挙げられる。当業者には理解されることであるが、プライマーには、その用途に応じて最適な長さ及び配列があるので、上述のような他の配列の数及び種類は適当に制限される。例えば、PCRプライマーは、それより高い温度では鋳型ともはや特異的に結合しない温度が、ポリメラーゼによる伸長が生じる温度にほぼ等しいような長さ又は配列であってはならない。
【0046】
[0088] 従って、1つの実施形態において、プライマーは本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる。すなわち、プライマーは、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種の5'、3'又はその両側にフランキングする1個又は複数個の他のヌクレオチドを更に含んでもよいが、そのヌクレオチドは、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種と、その相補配列を含む核酸分子とのハイブリダイゼーションに大きな影響を及ぼしてはならない。例えば、大きな配列内に含まれる場合であっても、短いプライマー配列の両側にいくつかのヌクレオチドを加えることによって、短いプライマー配列の、その相補配列とのハイブリダイゼーションストリンジェンシーを、上記ヌクレオチドが存在しない場合と同一又は同程度のストリンジェンシーで短いプライマー配列がハイブリダイズすることができない程度に変更してはならない。すなわち、本明細書に記載の配列に隣接するインフルエンザHA又はNA遺伝子中の領域は分離株間で異なる可能性があるので、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなるプライマーは、広範なH5又はH5N1分離株を検出する感度及び能力に影響を及ぼす程度に多量の、本明細書に記載の保存配列をフランキングするウイルス配列を含んではならない。他の特定の実施形態では、プライマーは、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなるか、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である。
【0047】
[0089] 特定の実施形態では、プライマーは、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む「標的アニーリング配列」と、非インフルエンザウイルスA配列と、を含む。
【0048】
[0090] 標的アニーリング配列は、サンプル中の標的核酸の少なくとも一部とハイブリダイズし、標的核酸はインフルエンザA H5又はH5N1ウイルスサブタイプと相同であるか、相補的であるか、インフルエンザA H5又はH5N1ウイルスサブタイプから転写されるか逆転写されるか、或いはインフルエンザA H5又はH5N1ウイルスサブタイプに由来する。従って、標的アニーリング配列はまた、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種によって規定される配列をフランキングする、HA又はNA遺伝子の配列によってコードされるか、それに相補的なフランキング配列を含んでもよい。或いは、標的アニーリング配列は、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列からなるか、配列番号1〜配列番号114の配列からなる。
【0049】
[0091] 非インフルエンザAウイルス配列は、インフルエンザAウイルスゲノム配列に由来しないか、対応しないか、相補的でない配列である。上述のように、非インフルエンザAウイルス配列としては、例えば、タンパク質又は酵素(制限酵素等)によって認識される配列、或いは、検出に用いる核酸配列(例えば、標識されたプローブ、又は、当該プライマーを捕獲するのに用いる固定された核酸分子の捕獲配列)に相補的な配列が挙げられる。非インフルエンザAウイルス配列は、標的アニーリング配列の5'又は3'側に位置していても、標的アニーリング配列の両側にフランキングしていてもよい。
【0050】
[0092] プライマー又は本発明のプライマーの長さは、所望の用途又は適用に応じて異なる。例えば、理解されるであろうが、PCRプライマーの長さは通常、約15〜約35塩基の間となる。PCRプライマーの長さは、増幅しようとする配列、及びプライマー/鋳型ハイブリッドの所望の融解温度によって決定される。しかし、サザンハイブリダイゼーション等に適用する場合には、プライマーは、より長いもの、例えば、約15塩基〜約1キロ塩基の長さ又はそれより長いものであってもよい。すなわち、プライマーの長さは、例えば、15塩基〜約1キロ塩基、15〜約500塩基、15〜約300塩基、15〜約150塩基、15〜約100塩基、又は15〜約50塩基である。
【0051】
[0093] 本発明のプライマーは、当技術分野で公知の従来法を用いて調製することができる。例えば、自動核酸シンセサイザーを用いて、標準的なホスホロアミダイト法により、固体支持体上でプライマーを3'から5'方向に合成することができる。このような方法は当業者には公知であろう。
【0052】
[0094] 本明細書において、用語「プライマー」は、鋳型配列と配列特異的にアニーリングさせ、新規鎖合成を開始するために用いられる一本鎖ヌクレオチドを表すために用いられる。但し、当業者には理解されることであるが、本発明のプライマーの使用はそれに制限されない。例えば、本発明のプライマーを、プローブがハイブリダイズする相補配列を検出するためのプローブとして使用してもよい。このような用途に用いる場合、プライマーは通常、検出のために、蛍光標識、化学発光標識、有色色素標識、放射性標識、タンパク質(酵素を含む)、ペプチド、又はリガンド(例えば、ビオチン)で標識される。プライマーは、プローブとして用いる場合には、核酸ハイブリダイゼーション法、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析、制限酵素断片長多型(RFLP)分析、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)、核酸マイクロアレイ、及び当業者に公知のその他の方法において使用することができる。
【0053】
[0095] 本発明のプライマーを用いれば、サンプル、例えば、ウイルスを保持している疑いのある生物に由来する生体サンプル中の鳥インフルエンザサブタイプH5又はH5N1を診断又は検出することができる。
【0054】
[0096] すなわち、本発明は、サンプル中の鳥インフルエンザサブタイプH5を検出する方法であって、サンプルから得たRNAから逆転写されたDNAを、配列番号32〜配列番号55の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマーと、配列番号1〜配列番号18の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のフォワードプライマーと、を用いて増幅すること、及び増幅産物を検出することを含み、産物が、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスH5サブタイプの存在を示す方法を提供する。また、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5N1を検出する方法であって、サンプルから得たRNAから逆転写されたDNAを、配列番号56〜配列番号71、配列番号113及び配列番号114の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマーと、配列番号19〜配列番号31及び配列番号112の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のフォワードプライマーと、を用いて、又は配列番号94〜配列番号111の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマーと、配列番号72〜配列番号93の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のフォワードプライマーと、を用いて増幅すること、及び増幅産物を検出することを含み、産物が、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスH5N1サブタイプの存在を示す方法を提供する。
【0055】
[0097] 用語、増幅産物を「検出する」とは、鋳型、プライマー及び適当なポリメラーゼ酵素を用いた増幅反応から得られた産物の有無を調べること、又は産物の量を定量化することを含むものとする。
【0056】
[0098] 通常、サンプルから得たRNAを逆転写することにより、RNAのHA遺伝子又はNA遺伝子に相補的な一本鎖DNAを得る。逆転写には、RNA鋳型を読み取ることができ、RNA鋳型と結合するプライマーから、DNAヌクレオチドを重合して、RNA鋳型の配列に相補的な相補的DNA鎖を合成することができる逆転写酵素を用いる。逆転写酵素、例えば、T7逆転写酵素は市販されており、当業者には公知である。逆転写反応は通常、逆転写酵素活性を最適化するように設計された反応条件及び温度下で、バッファー中で実施する。市販の逆転写酵素は、適当なバッファー及びDNAヌクレオチドと共に提供されている。
【0057】
[0099] 逆転写反応に用いるプライマーとしては、RNA鋳型に沿ったランダムな部位と結合するランダムヘキサマーの混合物が挙げられる。或いは、逆転写プライマーは、HA遺伝子又はNA遺伝子内の特定の部位で結合するように設計された特異的プライマーであってもよい。従って、表2及び4に示される、配列番号32〜配列番号71、配列番号113及び配列番号114又は配列番号94〜配列番号111のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマーは、逆転写反応においてプライマーとして使用することができる。これと同じ本発明のリバースプライマー又はプライマー類が増幅ステップにおいて使用可能であり、これは、特に、逆転写及び増幅が同一反応で実施される場合に有利である。2種以上の本発明のプライマーを用いる場合には、用いるプライマーの各々は異なる配列を有し、各プライマーの配列は、配列番号32〜配列番号71、配列番号113及び配列番号114又は配列番号94〜配列番号111のいずれか1種を含む。
【0058】
[00100] HA遺伝子又はNA遺伝子の同一の保存領域に基づくが、プライマー配列内の1個又は複数個のヌクレオチドが異なるプライマーのファミリー、例えば、配列番号32〜配列番号43がある場合には、このようなファミリーに由来する1種又は複数のリバースプライマーを使用することができる。これによって鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1の多数のあり得る分離株又は変異体の逆転写、ひいてはその検出が可能となる。本明細書において、「変異体」とは、HA遺伝子配列が別のH5サブタイプのものとは異なっていてもよいH5サブタイプ、又はHA遺伝子配列若しくはNA遺伝子配列が別のH5N1サブタイプのものとは異なっていてもよいH5N1サブタイプを指す。
【0059】
[00101] 逆転写反応の鋳型RNAは、当技術分野で公知のRNA抽出法を用いてサンプルから得ることができる。また、RNA抽出キット、例えば、RNeasy(商標)キット(Qiagen)も市販されており、このようなキットが入手可能なこと及びその用途は、当業者には公知であり、理解されることである。
【0060】
[00102] サンプルは、生体サンプル、例えば、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1を保持している疑いのある個体から採取したサンプルである。サンプルは、感染個体から得たウイルスを含むサンプルであればよく、そのようなサンプルとしては、組織及び体液サンプル、例えば、血液、血清、血漿、末梢血細胞(リンパ球、単核細胞等)、痰、粘膜、尿、糞便、咽頭スワブサンプル、真皮病変スワブサンプル、脳脊髄液、膿、並びに脾臓、腎臓、肝臓等の組織が挙げられる。
【0061】
[00103] 逆転写反応が完了すると、一本鎖DNA分子を増幅反応に使用することができる。用語「増幅する」又は「増幅」とは、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1の存在を示すために検出しようとする核酸分子を大量に複製する反応を指す。適当なポリメラーゼ酵素を用いて、鋳型核酸、場合によってRNA又はDNAのいずれかの新しい鎖を合成してマルチプルコピーを作製する。
【0062】
[00104] 増幅ステップは、逆転写の条件及び試薬が増幅反応と干渉しないならば、逆転写反応と同一の反応で実施することができる。或いは、逆転写産物を、増幅反応における鋳型として用いる前に精製してもよい。
【0063】
[00105] 或いは、二本鎖DNA分子、例えば、逆転写された一本鎖DNA分子に由来する二本鎖DNAを増幅反応の鋳型として使用してもよい。特定のウイルス分離株のDNAクローンが作製されている場合は、DNAクローンを増幅の鋳型として使用することができる。標準的な技術を用いてウイルス分離株から二本鎖DNAクローンを作製する方法は当業者には理解されるものである。サンプルの「RNAから逆転写されたDNA」とは、RNAから逆転写されたDNAに由来するようなDNA全てを含むものとする。
【0064】
[00106] 特定の実施形態では、PCR増幅反応によって増幅を実施する。従って、増幅ステップは、当業者に公知の標準的な方法及び技術によって、DNAポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)を用いて実施することができる。DNA分子の増幅に用いるDNAポリメラーゼは市販されている。増幅反応は、DNAポリメラーゼ酵素の重合活性を最適化するような条件下で、デオキシヌクレオチド、バッファー、関連のフォワード及びリバースプライマー等の必要な試薬を用いて実施する。
【0065】
[00107] PCR増幅反応は、転写されたDNA鎖及び鋳型RNA(存在する場合)を変性し、いずれかの鎖とのプライマーの結合を避けるのに十分な温度に反応物を加熱する変性セグメントを含む。変性セグメントに、プライマーがDNA鎖と結合可能な温度に反応温度を低下させるアニーリングセグメントが続く。最後のセグメントは、DNAポリメラーゼによるプライマーの伸長に最適な温度に反応物を加熱する伸長セグメントである。これら3つのセグメントを複数回繰り返し、これによって、逆転写されたDNAと対を形成するDNAの相補鎖の生成、並びにフォワード及びリバースプライマー又はプライマー類の各々からの伸長による逆転写鎖の生成が可能となる。増幅反応の各連続ラウンドでは、より多くの各DNA鎖が生成され、次いで、それが次のサイクルの鋳型として使用され、その結果、DNA産物が増幅される。増幅ステップの各セグメントにおける好適な温度、及び実施されるべき所望のサイクル数は、当業者ならば容易に決定することができる。
【0066】
[00108] 一実施形態では、増幅反応は、「ホットスタート」を用いて開始することができる。その場合は、逆転写反応から得られた鋳型DNAと、フォワード及びリバースプライマーとを混合し、変性ステップの温度で一定時間の間保持し、プライマーと、逆転写されたDNA鎖との非特異的結合を減少させる。ホットスタートの間、反応に必要な1種の成分(例えば、DNAポリメラーゼ)を反応物から取り除き、次いで、増幅反応の最初のサイクルの直前に反応物に加えればよい。
【0067】
[00109] 必要に応じて、増幅したDNA産物を、増幅サイクルの更なるラウンドの鋳型として用いて、増幅ステップを反復することができる。鋳型は反応混合物から精製してもよく、第2の反応は、増幅されたDNA産物、適当なプライマー、DNAポリメラーゼ、バッファー及びデオキシヌクレオチドを用いて実施することができる。増幅の第2のラウンドは第1の増幅反応と同一又は類似の条件下で実施することができる。また、次いで、以下に示す適当な検出方法を用いて、第2の増幅産物を検出することができる。
【0068】
[00110] 本発明のプライマー又はプライマー類を逆転写反応に用いる場合には、増幅反応に同じリバースプライマー又はプライマー類を、適当なフォワードプライマー又はプライマー類と共に使用することができる。或いは、増幅反応に本発明の異なるリバースプライマー又はプライマー類を使用することもでき、各プライマーは、配列番号32〜71、配列番号113及び配列番号114又は配列番号94〜配列番号111に示される配列のいずれか1種を含む。
【0069】
[00111] 鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1のHA遺伝子の保存領域に対するフォワードプライマーは表1に示し、H5N1サブタイプのNA遺伝子の保存領域に対するフォワードプライマーは表3に示す。当業者には理解されることであるが、個々の増幅反応に用いるフォワード及びリバースプライマーは、サブタイプ及び遺伝子に関して対応している必要がある。従って、配列番号32〜配列番号55及び配列番号113のいずれか1種を含むリバースプライマーを用いる場合には、配列番号1〜配列番号18のいずれか1種を含むフォワードプライマーを使用することができる。同様に、配列番号56〜配列番号71及び配列番号114のいずれか1種を含むリバースプライマーを用いる場合には、配列番号19〜配列番号31及び配列番号112のいずれか1種を含むフォワードプライマーを使用することができ、配列番号94〜配列番号111のいずれか1種を含むリバースプライマーを用いる場合には、配列番号72〜配列番号93のいずれか1種を含むフォワードプライマーを使用することができる。
【0070】
[00112] 当然のことであるが、増幅反応に用いるフォワード又はリバースプライマーの一方のみが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む必要があり、このようなプライマーは、上記配列を含まないリバース又はフォワードプライマーと組み合わせて使用することができる。しかし、HA及びNA遺伝子の配列は、ウイルス分離株間で大きく異なる可能性があるので、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含まないフォワード又はリバースプライマーを使用することは、増幅ステップの感度及び検出範囲に影響を及ぼす可能性がある。
【0071】
[00113] リバースプライマーと同様に、本発明のフォワードプライマーのファミリーが利用可能な場合には、多数のサブタイプH5又はH5N1の分離株又は変異体のいずれかの同定を可能にするために、1種又は複数のそのようなプライマーを使用することができる。例えば、単一の増幅反応に、1種又は複数の、配列番号1〜配列番号6に記載の配列を有するプライマーを使用することができる。
【0072】
[00114] プライマーがプライマーファミリー内に入らない場合であっても、配列番号32〜71、配列番号113及び配列番号114又は配列番号94〜配列番号111を含むプライマーから、1種又は複数のリバースプライマーを選択することができ、配列番号1〜31及び配列番号112又は配列番号72〜配列番号93を含むプライマーから1種又は複数のフォワードプライマーを選択することができる。しかし、これは種々の長さの一連の増幅産物をもたらす。複数のリバース及び/又はフォワードプライマーを注意深く選択すれば、増幅産物は互いに容易に区別することができる。この実施形態では、検出方法の感度が低下する場合があり、これが所与の量の鋳型からの特定の増幅産物の減少をもたらすということに留意しなければならない。逆転写反応におけるように、2種以上の本発明のプライマーを用いる場合には、用いるプライマーの各々は異なる配列を有し、各プライマーの配列は、リバースプライマーについては、配列番号32〜71、配列番号113及び配列番号114又は配列番号94〜配列番号111及び配列番号112のいずれか1種を含み、フォワードプライマーについては、配列番号1〜31又は配列番号72〜配列番号93のいずれか1種を含む。
【0073】
[00115] フォワードプライマーは、用いるリバースプライマーと組み合わせて、検出可能な二本鎖DNA増幅産物が生成されるように選択する。すなわち、増幅反応で生成される場合にどんな検出方法が選択されても検出可能なような十分な大きさの二本鎖DNA分子を増幅するには、フォワードプライマーは、リバースプライマーに対してHA又はNA遺伝子において十分に上流に位置しなくてはならない。検出可能なDNA産物の大きさは、選択される具体的な検出方法によって異なる。例えば、増幅産物を検出するのにアガロースゲル電気泳動を用いる場合には、検出方法としてライトサイクリング(lightcycling)を用いるリアルタイムPCRによる場合よりも最終産物が大きくなくてはならない可能性がある。用いるゲルの濃度に応じて、アガロースゲル電気泳動を用いて25塩基対程度の小さい断片を検出することができる。しかし、ゲルベースの方法を用いると、例えば、150〜500塩基対の間のより大きな断片がより容易に検出されるのに対して、例えば、100塩基対未満のより小さな断片は、リアルタイムPCR法を用いて容易に検出される。
【0074】
[00116] 増幅されたDNA産物は、当技術分野で公知の検出方法を用いて検出することができる。例えば、好適な検出方法としては、それだけには限らないが、増幅されたDNA産物への蛍光、化学発光又は放射性シグナルの組込み、又はポリアクリルアミド若しくはアガロースゲル電気泳動によるもの、又は電子移動部分を含有するプローブと増幅産物とをハイブリダイズさせ、電子検出法によってハイブリダイゼーションを検出することによるものが挙げられる。
【0075】
[00117] 一実施形態では、増幅されたDNA産物をアガロースゲル電気泳動によって検出するが、これは当業者には公知であろう。増幅産物の一部を、色素マーカーを含む適当なゲルローディングバッファーと混合し、ゲルに電気的勾配をかけることによってアガロースゲルに流す。アガロースゲルは、エチジウムブロマイド又はDNAと結合するかDNAにインターカレートする別の適当な色素で染色することができ、例えば、紫外線に曝露することによって検出する。
【0076】
[00118] 検出方法は、増幅反応の後に実施することができる。或いは、増幅反応と同時に検出方法を実施してもよい。一実施形態では、リアルタイムPCRを用いて、例えば、ライトサイクリングによって(例えば、RocheのLightCycler(商標)を用いて)、増幅されたDNA産物を検出する。リアルタイムPCR技術は、当業者には公知であり、2種の、各々特定の蛍光標識で標識され、増幅したDNA産物と結合するプローブの使用を包含する。プローブは、第1のプローブの蛍光標識が第2のプローブの蛍光標識と近接するような方法で各プローブがDNA産物と結合するように設計する。増幅反応は、関連蛍光シグナルが放射、検出されるように設計された装置で実施し、装置が第1のプローブ上の蛍光標識を励起するのに適した波長の光を放射し、次いで、これが第2のプローブ上の蛍光標識を励起するのに適した波長の光を放射する、更なる検出セグメントを含む。次いで、第2のプローブの蛍光標識によって放射され、それまでの発光とは波長が異なる光を装置で検出する。
【0077】
[00119] 或いは、増幅反応に一本鎖鋳型を用いる場合には、二本鎖DNAと結合する蛍光分子を使用することができる。この方法により、増幅反応を通じて増幅されたDNA産物の検出及び既知の標準鋳型と比較してかなり正確な相対定量が可能となる。増幅産物の定量化により、元の生体サンプル中のウイルス量の測定が可能となる。その上、この方法によって、従来のPCR技術を用いる方法よりも少量の増幅産物、及びサイズの小さい増幅産物の検出が可能となる。
【0078】
[00120] ABI Systemsによって設計されたTaqman(商標)法におけるように、5'末端がフルオロフォアで、3'末端が、フルオロフォアと近接している場合にフルオロフォアの発光をクエンチ(消光)するクエンチング分子で標識されている検出プローブを用いて、増幅及び検出を同時に実施することができる。検出プローブは、増幅鋳型のフォワード又はリバース鎖と結合する。5'エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、例えば、Taqポリメラーゼ又はその他(例えば、合成版はRocheから入手可能)を増幅反応に用いる。検出プローブが結合している鋳型鎖が増幅される際に、5'エキソヌクレアーゼにより検出プローブが消化され、クエンチャーの近くからフルオロフォアが取り除かれ、フルオロフォアが発光可能となる。発光は、標準的な機器(例えば、上述のLightCycler(商標))で定量することができる。
【0079】
[00121]或いは、H5N1変異体を検出するために、第1の増幅を、HA遺伝子に対するプライマーを用いて、例えば、配列番号32〜71、配列番号113及び配列番号114のいずれか1種を含むリバースプライマー又はプライマー類と、配列番号1〜配列番号31及び配列番号112のいずれか1種を含むフォワードプライマー又はプライマー類と、を用いて実施してもよく、第2の増幅ステップを、NA遺伝子に対する、配列番号94〜配列番号111のいずれか1種を含むリバースプライマー又はプライマー類と、配列番号72〜配列番号93のいずれか1種を含むフォワードプライマー又はプライマー類と、を用いて実施してもよい。H5N1の存在を検出するために、2種の増幅を、第1の増幅はH5又はH5N1サブタイプのHA遺伝子に対するプライマーを用いて、また、第2の増幅はNA遺伝子に対するプライマーを用いて、同一又は異なる反応で同時に実施することができる。NA遺伝子は発現量が少ないことが知られているので、ウイルス量が少ない場合は検出がより困難と思われる。
【0080】
[00122] 本発明によって提供される多数のプライマーは、サブタイプH5及びH5N1の種々の変異体を検出する可能性を高めるように設計されており、いずれかの特定の変異体を検出する可能性を高めるために、単一のサンプルを、フォワード及びリバースプライマー又はプライマー類の種々の組合せを用いて試験することができる。
【0081】
[00123]上述の実施形態はPCR増幅法との関連で記載したが、本発明の配列を用いて、生体サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出するためのその他の増幅方法に用いるプライマーが設計可能なことは、当業者には理解されることである。例えば、Lauら(Biochem.Bioplzys.Res.Comm.2003 313、336〜342頁)に記載のように、例えば、配列番号1〜配列番号114に記載の配列を用いて、NASBA法による増幅及び検出のためのプライマーを設計することができ、これは当業者に一般に知られている。
【0082】
[00124] 簡単には、NASBA技術では、プライマーを、目的の遺伝子(ここでは、HA又はNA)の一部と結合し、RNAポリメラーゼ(例えば、T7RNAポリメラーゼ)のプロモーターを含むように設計する。ウイルス遺伝子を逆転写し、第2の相補DNA鎖を合成して、無傷のRNAポリメラーゼプロモーターを含む二本鎖DNA分子を生成させる。関連RNAポリメラーゼを用いて、目的の遺伝子の増幅された部分に対応するRNA分子のコピーを作製する。次いで、増幅されたRNAを検出分子(通常、増幅されたRNAの一部に相補的であり、例えば、放射標識、化学発光標識、蛍光標識又は電子化学発光標識で標識されている核酸)と結合させる。次いで、検出分子と結合している増幅されたRNAを、通常、捕獲分子(例えば、検出分子が結合する部分とは異なる増幅されたRNA産物の一部に相補的な、固定された核酸)によって捕獲する。次いで、検出分子が結合している捕獲されたRNA増幅産物を、検出分子上の標識及び捕獲方法に応じて決まる関連の検出方法によって検出する。
【0083】
[00125] 従って、本発明は、生体サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1の存在を検出するためのNASBA法において、配列番号1〜配列番号114のいずれか1種を含むプライマーを使用することを包含する。
【0084】
[00126] 本発明のプライマーはまた、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1のHA又はNA遺伝子に相当するDNA分子、又はHA又はNA遺伝子に相補的な逆転写されたDNA分子を配列決定するのに有用である。鋳型として、HA又はNA遺伝子の一部に対応する核酸分子を用いて配列決定反応を開始するためには、それぞれ、配列番号32〜71、配列番号113及び配列番号114のいずれか1種、又は配列番号94〜配列番号111のいずれか1種を含むリバースプライマーを使用することができる。鋳型として、HA又はNA遺伝子の一部に相補的な核酸分子を用いて配列決定反応を開始するためには、それぞれ、配列番号1〜31及び配列番号112のいずれか1種、又は配列番号72〜配列番号93のいずれか1種を含むフォワードプライマーを使用することができる。配列決定反応は、当技術分野で公知の標準法により実施しても、また、自動配列決定機器を用いて実施してもよい。
【0085】
[00127] 本発明のプライマーはまた、H5又はH5N1インフルエンザウイルス分離株に由来するRNAを検出するためのプローブ又は捕獲分子として有用である。例えば、配列番号1〜配列番号114のいずれか1種を含む1種又は複数のプライマーを固体支持体上に固定し、これを、プライマー配列の一部又は全てに相補的な配列を有する核酸分子を単離するために使用することができる。
【0086】
[00128] すなわち、サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む、1種又は複数の固定されたプライマーをサンプルと接触させることを含む方法が提供される。
【0087】
[00129] プライマーは、核酸を固定するための標準的な方法により固相支持体上に固定することができ、そのような方法としては、化学架橋、光架橋、又は、プライマー上の官能基(プライマーに付加されているか組み込まれている官能基を含む。)(例えば、ビオチン)を介した特異的固定化が挙げられる。
【0088】
[00130] 固相支持体は、検出アッセイに使用可能なものであればいずれの支持体であってもよく、そのような支持体としては、クロマトグラフィービーズ、組織培養プレート若しくはディッシュ、又はスライド等のガラス表面が挙げられる。
【0089】
[00131]接触は、プライマー又はその一部に相補的な配列を含む、サンプル中のいずれかの核酸がハイブリダイズすることができるような、プライマー及びサンプル間のハイブリダイゼーションを可能にする条件下で実施する。当業者ならば、サンプルとハイブリダイズさせようとするプライマー又はプライマー領域の配列に基づいて、好適なハイブリダイゼーション条件を決定することができ、また、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを高めるか低下させるように条件を変化させることができる。例えば、温度、塩又はバッファー濃度、及び界面活性剤濃度を変化させることで、所与の配列とその相補体との間のハイブリダイゼーションの条件のストリンジェンシーを変化させることができる。
【0090】
[00132] このような用途では、プライマー若しくは核酸サンプル又はその双方を、蛍光標識、化学発光標識、有色色素標識、タンパク質、ペプチド、リガンド等の標識で修飾することができる。
【0091】
[00133] 次いで、固定されたプライマーによって捕獲されている、サンプルに由来するいずれかのハイブリダイズされた核酸を検出する。検出方法は、サンプル及び/又は固定されたプライマー上の標識の性質に応じて異なる。更に、核酸分子を検出及び可視化するための標準法を使用することができ、そのような方法としては、クロマトグラフィー法及びゲル電気泳動・染色法が挙げられる。
【0092】
[00134] 固定化及び捕獲用途の一例として、当技術分野で公知のように、DNA又はヌクレオチドマイクロアレイへのプライマー又はプライマー類の取り込みがある。
【0093】
[00135] 従って、サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、マイクロアレイの少なくとも1スポットに、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む、1種又は複数のプライマーを含有するマイクロアレイをサンプルと接触させること、及び、サンプルとプライマーとのハイブリダイゼーションを検出することを含む方法も提供される。核酸マイクロアレイ技術は、当技術分野で公知であり、マイクロアレイの製造、及びマイクロアレイ中の1又は複数のスポットにおけるサンプルの捕獲分子とのハイブリダイゼーションの検出が包含される。
【0094】
[00136] 用いるサンプルは、例えば、インフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を含有する疑いのある生体サンプル、又はインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を含有する疑いのある生体サンプルから作製したか増幅した核酸を含んでいる生体サンプルである。核酸は、本明細書に記載のRT−PCR増幅、本明細書に記載のNASBA法、プライマー伸長法等、上述の公知の増幅方法を用いて増幅することができる。サンプルは、公知のハイブリダイゼーション法を用いて、マイクロアレイに取り込まれたプライマー又はプライマー類とハイブリダイズすることができる。
【0095】
[00137] ハイブリダイゼーションを検出するためには、通常、プローブとして機能するプライマーを標識するか、又はサンプルを標識する。例えば、サンプルは、増幅ステップの際に標識を組み込むことによって標識することができる。標識は、放射性標識、化学発光標識、蛍光標識等の検出可能な標識であれば、いずれでもよい。例えば、当技術分野で公知のように、容易に、Cy3又はCy5標識ヌクレオチドを、増幅される核酸分子に組み込んで、標識サンプルを作製することができる。ハイブリダイゼーションは、通常、この方法を用いて、マイクロアレイ中の特定のスポットにおけるシグナル増大によって検出する。
【0096】
[00138] 或いは、マイクロアレイに含まれる本明細書に記載のプライマーを標識してもよい。例えば、US6,811,973(Reichに付与されている。)(これは、参照されることにより本明細書に完全に組み込まれる。)には、マイクロアレイにおいて捕獲分子として用いられる核酸プローブ分子に蛍光マーカーを含め、それによって捕獲核酸分子とその標的核酸分子とのハイブリダイゼーションが、捕獲分子に組み込まれた蛍光標識によって発光される蛍光シグナルのクエンチングをもたらすことが記載されている。従って、ハイブリダイゼーションは、マイクロアレイ中の特定のスポットからのシグナルの低下によって測定される。
【0097】
[00139] 本発明はまた、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む、1種又は複数のプライマーを、マイクロアレイ中の1又は複数のスポットに取り込んでいるマイクロアレイを包含する。マイクロアレイ(例えば、核酸マイクロアレイ)を製造する方法は公知である。例えば、US6,753,144(Hirota)及びUS6,511,849(Wang)(いずれも、参照されることにより本明細書にそのまま組み込まれる。)には、マイクロアレイを作製する方法が記載されている。通常、マイクロアレイは、1種又は複数のプライマーをマイクロアレイ中の所定のアドレス又はスポットに固定することによって固体支持体上に形成する。
【0098】
[00140] 増幅と同様に、プライマーのファミリーの1又は複数のメンバーを単一スポットに含めることができ、これによって、マイクロアレイ中の単一のスポットを用いて、いくつかの異なる変異体又は分離株を検出することが可能となる。
【0099】
[00141]上述の方法は、インフルエンザAウイルスH5又はH5N1分離株を検出するin vitro法に関するものであるが、本明細書に記載のプライマーはまた、インフルエンザAウイルスH5又はH5N1サブタイプ感染を検出又はイメージングするためのin vivo法にも使用することができる。
【0100】
[00142] また、サンプル中のインフルエンザA H5又はH5N1サブタイプを検出するための、上述のプライマーと使用説明書とを含むキット又は市販のパッケージも、本発明に包含される。検出は、本明細書に記載の方法のいずれによるものであってもよい。
【0101】
[00143] 本明細書に記載の全ての文献は、参照されることによりそのまま組み込まれる。
【0102】
[00144] 本発明の種々の実施形態が本明細書に開示されているが、当業者によく知られている一般的な知識に従って、本発明の範囲内で多数の修飾及び改変を行うことができる。そのような改変としては、実質的に同様の方法で同様の結果を達成するために、公知の等価物を本発明のいずれかの態様と置き換えることが挙げられる。本明細書に用いた全ての技術用語及び科学用語は、特に断りのない限り、本発明の技術分野の当業者に一般に理解されているものと同一の意味を有する。
【実施例】
【0103】
[00145] 卵から抽出したRNA、並びに、尿膜腔液、総排泄腔スワブ及び気管スワブ、ホモジナイズした組織、プールした臓器、血液、痰、糞便、尿及び鼻咽頭吸引物を含むヒト臨床サンプルから抽出したRNAを用いて実験を行った。
【0104】
[00146]実施例1:ゲルベースの検出プラットフォームを用いる鳥インフルエンザウイルスH5及びH5N1の検出
【0105】
[00147] 以下は、鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出するための一般的なプロトコールである。
【0106】
[00148] 一般的には、TRIzol(商標)又はRNA抽出キット(Qiagen)のいずれかを用いて、製造業者の使用説明書に従ってRNAをサンプルから抽出する。
【0107】
[00149] 第1鎖cDNA合成は、抽出したRNA上で、20μLの反応容量中、関連のリバースプライマー(類)(10μM保存液2μL)を用いて実施する。第1ラウンドPCR反応は、鋳型であるcDNA産物と、関連のフォワード及びリバープライマー(類)(フォワード及びリバース各々の総容量は1.25μL)とを含有するcDNA反応物2.5μLを、25μLの反応容量中で用いて実施する。PCR条件は以下の通りに設定する。94℃で2分間インキュベーション;94℃で10秒、50℃で30秒、72℃で1分間の35サイクル;続いて、72℃で7分間のインキュベーション。第2ラウンドのPCRは、鋳型として第1ラウンドPCRの産物(2.5μL)を用いて実施する。全ての他の条件及び試薬は、第1ラウンドPCRと同様である。
【0108】
[00150] 第2ラウンドPCRの産物を、1.5〜2%アガロースゲルでエチジウムブロマイドを用いて染色することによって分析する。
【0109】
[00151]しかし、1ラウンドのPCRで十分検出可能という知見が、繰り返しの検証を経て確立されている。
【0110】
[00152] タイ由来のH5N1ウイルス分離株(2004)から抽出したRNAを用いて、上述のRT−PCRプロトコールを実施した。以下のHA遺伝子に対する8種のプライマーセットを用いた。(1)gisAFH5N1H1F及びgisAFH5N1H4R、(2)gisAFH5N1H2aF及びgisAFH5N1H4R、(3)gisAFH5N1H1F及びgisAFH5N1H5bR、(4)gisAFH5N1H2aF及びgisAFH5N1H5bR、(5)gisAFH5N1H3F及びgisAFH5N1H8aR、(6)gisAFH5N1H6bF及びgisAFH5N1H8aR、(7)gisAFH5N1H6bF及びgisAFH5N1H10R、(8)gisAFH5N1H7aF及びgisAFH5N1H11cR。予想される断片の大きさはそれぞれ、189bp、148bp、306bp、265bp、574bp、456bp、489bp及び163bpであった。図2に示されるように、増幅産物は、1.5%アガロースゲルに流し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。
【0111】
[00153] このアッセイの感度を調べるために、10倍に段階希釈された鋳型と、プライマーセット3(図3)、5(図4)、6及び8(図5)と、を用いる反応を実施した。結果(図3〜5。レーン1〜7はそれぞれ、50ng、0.5ng、50pg、0.5pg、0.05pg、5fg及び0.5fgの鋳型を用いて実施した反応である。)は、本発明のプライマーを用いるPCR反応は高感度であるが、用いるプライマーに応じて感度が変化することを示している。プライマーセット3及び6はより高感度であり、プライマーセット6からは、5fg程度の低い鋳型濃度でも相当な量の増幅産物が生じた(図5、レーン6参照)。
【0112】
[00154]実施例2:リアルタイムRT−PCR検出プラットフォームを用いる鳥インフルエンザウイルスH5及びH5NIの検出
【0113】
[00155] LightCycler(商標)装置を用いて、以下の反応を実施する。
【0114】
[00156] 反応基本混合物(マスターミックス)は、以下の試薬を順に氷上で混合し、20μLの容量になるように調製した。水(必要に応じて調節される容量)、50mM酢酸マンガン(1.3μL)、0.2〜1μMという最終濃度のフォワードプライマーと、リバースプライマー及び蛍光標識プローブ(2.6μL)と、を含有するプローブNプライマーミックス(ProbeNPrimer mix)、バッファーとヌクレオチドと酵素とを含むLightCycler RNAマスターハイブリダイゼーションプローブ(RNA Master Hyblidization Probe)(7.5μL)。
【0115】
[00157] 反応物を、LightCycler(商標)において用いるのに適したガラスキャピラリーチューブに移す。5μLの抽出したRNA鋳型を各反応物に加え、短時間遠心分離する。RT−PCR反応を、以下のプログラムに従って実施する(表5〜8)。
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
【表7】
【0119】
【表8】
【0120】
[00158]実施例3:種々のプライマーセットを用いるリアルタイムRT−PCRによる鳥インフルエンザウイルスH5Nlの検出
【0121】
[00159] リアルタイムPCR反応は、実施例2に記載の8種のプライマーセットを用いて実施した。反応は、標準プロトコールに従って、SYBRグリーン蛍光検出キットを用いて、また市販の試薬キット(Roche)を用いて実施した。図6は、8種のプライマーセットの各々を用いて実施した反応によって得られた増幅産物を示す。8種のプライマーセットは、1.5%アガロースゲルにおいてエチジウムブロマイドで染色して可視化されている。
【0122】
[00160] プライマーの感度を確認するために、リアルタイムPCRプロトコールに従って増幅曲線を作製し、増幅産物の生成をモニターした。プライマーセット1〜8の各々に関する結果を、それぞれ図7〜14に示す。増幅反応終了時に、増幅産物の融解曲線を求めた。一般に、特異的増幅産物は、非特異的産物よりも高い融解温度を有し、融解曲線プロフィールを用いて反応の特異性を確認することができる。図15〜18に示される融解曲線は、別個の予想される増幅産物を示す。このように、セット1〜8のプライマーは、リアルタイムPCR反応に用いる場合には、より感度が高く、H5N1分離株に特異的である。
【0123】
[00161]実施例4:一ステップRT−PCR反応を用いる、フィールドサンプルからのH5N1インフルエンザウイルスの検出
【0124】
[00162] T7 RiboMax Express in vitro転写系(Promega、USA)によって作製した、in−vitro転写されたRNAを用いるゲルベースのアッセイにおいて、プライマーセット6(実施例1に記載)を用いて、プライマーの性能を評価した。精製した転写されたRNAの濃度は、RiboGreen RNA定量試薬(Invitrogen、USA)を用いて測定し、in vitro転写されたRNAの段階希釈物は2つずつ調製した。
【0125】
[00163] H5N1特異的プライマー(セット6)を含む一ステップ逆転写(RT)−PCRシステム(Qiagen、Germany)を用いて、以下のPCRサイクルに従って、反応混合物25μL中でRNA2μLを用いた。94℃で10秒、続いて、94℃で10秒、50℃で30秒、及び72℃で1分の35サイクル;続いて最後に、72℃で7分間。このPCR産物の大きさは456bpであり、1%アガロースゲルで分離した。PCR産物を直接配列決定して、産物の同一性を確認した。アッセイの感度は1000コピー未満であることがわかり、H5N1 RNAを特異的に検出できた(図19A)。
【0126】
[00164] 二ステップRT−PCR法(Roche、Germany)も上述のように行い、一ステップRT−PCR法と比較した。結果から、両方の系がうまく働いたことが示された(図20A(二ステップ)及び図20B(一ステップ)を比較のこと)。次いで、LightCycler(ライトサイクラー)リアルタイム系(Roche、Germany)を用いてプライマーを試験したところ、同程度の結果が得られ(図20C)、このことは、検出の点で2種のアッセイの感度が同等であることを示す。
【0127】
[00165] 図20Cに関しては、RNA標品の増幅(a〜eで示す。)が示されている。x軸は定量的PCRアッセイのサイクル数を表し、y軸はバックグラウンドレベルを上回る蛍光強度(F2)を表す。鋳型を含まない対照(NTC)が示されている。RNA標品は以下の通りとした。(a)反応当たり1×109コピー、(b)反応当たり1×108コピー、(c)反応当たり1×107コピー、(d)反応当たり1×106コピー及び(e)反応当たり1×105コピー。挿入グラフは、PCR産物の融解曲線分析を示す。RNA標品(a〜e)と鋳型を含まない対照からのシグナルが示されている。x軸は温度(℃)を表し、y軸はバックグラウンドレベルを上回る蛍光強度を表す。
【0128】
[00166] H5N1サブタイプ検出のためのアッセイの特異性を立証するために、本発明者らは、次いで、対照として、インフルエンザAウイルスの異なるサブタイプのいくつかの参照株(H3N8、H5N3、H7N3及びH9N2)と、ニューカッスル病ウイルス(NDV)とを用いて、フィールドサンプルでプライマーを調べた。結果から、検出はH5N1のみに特異的であることが示された(図19B)。サンプルは、製造業者の使用説明書に従って、TRIzol試薬(Invitrogen、USA)とQIAampウイルスRNAミニキット(Qiagen、Germany)とを用いて抽出した。
【0129】
[00167] 図19Aは、RiboGreen RNA定量化試薬によって測定し段階希釈したin vitro転写された一本鎖RNA(レーン2〜8)、及び、感染卵の尿膜腔液から抽出したH5N1 RNAの増幅結果を表す。鋳型を含まない対照(滅菌水)は「NTC」と示されている。ウイルス量は反応当たりのコピー数によって示されている。(レーン2)反応当たり1×109コピー、(レーン3)反応当たり1×108コピー、(レーン4)反応当たり1×107コピー、(レーン5)反応当たり1×106コピー、(レーン6)反応当たり1×105コピー、(レーン7)反応当たり1×104コピー及び(レーン8)反応当たり1×103コピー。H5N1 RNAは、反応当たり約1×106コピーであると推定される
【0130】
[00168] 図19Bは、異なるサブタイプの鳥インフルエンザAウイルスの参照株(レーン12〜15)、及びニューカッスル病ウイルス(NDV、レーン16)を用いた、H5N1鳥インフルエンザウイルスの特異的検出を表す。H5N1、H3N8、H9N2及びNDV分離株は、獣医学研究所、マレーシア(Veterinary Research Institute, Malaysia)によってフィールドサンプルから単離され、H5N3及びH7N5分離株は鳥取大学家畜病理学教室(Department of Veterinary Pathology of Tottori University,Japan)から提供された。非H5N1分離株及び鋳型を含まない対照(水)からの陰性シグナルが示されている。
【0131】
[00169] 2004年から2005年の大流行の際にベトナム及びマレーシアから単離されたニワトリ、アヒル及びタイワンアヒル由来の既知の事例及び疑わしい事例からなる全部で145種のフィールドサンプルを、H5N1 RNAについて試験した(表9)。プールされた臓器組織、尿膜腔液、総排泄腔スワブ及び気管スワブのサンプルから、尿膜腔液、及びプールされた臓器については100%陽性の陽性結果が得られ(表9)、このRT−PCRアッセイの感度が実証された。全ての陽性サンプルについて、確認試験としてウイルス培養単離法を用いた(表9)。ホモジナイズした組織の検出率が40%と最低であったのに対し、総排泄腔スワブ及び気管スワブからは66.7%の陽性H5N1サンプルが検出された。検出におけるこの差異は、種々のサンプルからのウイルスRNA回収における異なる効率によるものであると思われる。H5N1 RNA回収及び検出については、サンプルの中で尿膜腔液画分の効率が最高であった(表9)。
【0132】
【表9】
【0133】
[00170] プライマーの有用性を更に確認する目的で、次いで、ベトナム由来の5種の陽性サンプルを、既存の社内H5プライマーセットと並行して試験したところ、結果から、本明細書に記載のH5N1プライマー(プライマーセット6)は、5種の陽性H5N1サンプルのうち5種を検出したのに対し、その他のプライマーセットは、5種のうち3種を検出したのみであった(図21C)ことが示された。このことは、本明細書に記載のH5N1プライマーはより高感度であり、ウイルス量の少ない弱い陽性サンプルも検出できることを示す。
【0134】
[00171]図21Aは、ニワトリ、アヒル及びタイワンアヒルの尿膜腔液からのH5N1鳥インフルエンザウイルスの検出を示す(レーン1〜11)。図21Bは、ホモジナイズした組織からのH5N1鳥インフルエンザウイルスの検出を示す(レーン1〜4)。3種のサンプルのうち2種しか検出されなかったが(レーン3及び4)、これは非効率的なRNA抽出によるものであろう。H5N1陽性対照が示されている(レーン5)。図21Cは、社内H5プライマーセットと新規H5N1プライマーとの比較を示す。社内H5プライマーセットは、ウイルス培養単離によって確認されている5種の陽性サンプルのうち3種を検出したのに対し(レーン1〜5)、H5N1プライマーセットは5種のサンプル全てを検出した(レーン7〜11)。両プライマーセットに関しては同一バッチの抽出RNAを用いた。
【0135】
[00172]実施例5:リアルタイムPCR及び一ステップRT−PCR反応を用いるH5N1及びH5インフルエンザAウイルスの検出
【0136】
[00173] リアルタイムPCRプロトコール及び一ステップ若しくは二ステップRT−PCRプロトコールの双方を用いて、RT−PCR実験を上述のように実施した。実験にはin vitro転写されたRNAを用いた。
【0137】
[00174] H5N1を検出する実験では、以下のH5N1サブタイプのNA遺伝子に対するプライマーセットを用いた。(9)gisAFH5N1N1aF及びgisAFH5N1N3aR、(10)gisAFH5N1N1aF及びgisAFH5N1N6gR、(11)gisAFH5NlNlaF及びgisAFH5N1N7bR、(12)gisAFH5N1N2aF及びgisAFH5N1N3aR、(13)gisAFH5N1N2aF及びgisAFH5N1N6gR、(14)gisAFH5N1N2aF及びgisAFH5N1N7bR、(15)gisAFH5N1N4aF及びgisAFH5N1N6gR、(16)gisAFH5N1N4aF及びgisAFH5N1N7bR、(17)gisAFH5N1N5gF及びgisAFH5N1N7bR、(18)gisAFH5N1N8bF及びgisAFH5N1N9aR、(19)gisAFH5N1N8bF及びgisAFH5N1N11bR、(20)gisAFH5N1N10aF及びgisAFH5N1N11bR。予測される断片の大きさはそれぞれ、120bp、315bp、452p、111bp、306bp、443bp、217bp、354bp、158bp、119bp、271bp及び172bpであった。増幅産物は1.0%又は1.5%アガロースゲルに流し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。全ての反応について、それぞれ、QS1=1000ng/μL、QS2=100ng/μL、QS3=10ng/μL、QS4=1ng/μL、QS5=0.1ng/μL、QS6=0.001ng/μL、及び、NTC=鋳型を含まない対照。
【0138】
[00175] 図22〜33はそれぞれ、プライマーセット9〜20を用いるリアルタイムPCR実験の結果を示す。図22〜33の各々について、図A(図22A〜33A)は、種々の濃度のin vitro転写されたRNA鋳型の増幅曲線及びRNA標準曲線を示し、図B(図22B〜33B)は融解曲線を示し、図C(図22C〜33C)はPCR産物のアガロースゲル可視化を示す。
【0139】
[00176] 同様のリアルタイムPCR実験を、以下のH5N1サブタイプのHA遺伝子に対するプライマーセットを用いて実施した。(21)gisAFH5N1H9F及びgisAFH5N1H11cR、(22)gisAFH5N1H13F及びgisAFH5N1H16cR、並びにH5サブタイプ(H5N1、H5N2及びH5N3)のHA遺伝子、(23)gisAFH5H1aF及びgisAFH5H2aR。セット21及び22を用いて得られた結果を、それぞれ図34A〜34D及び図35A〜35Dに示し、セット23を用いて得られた結果を図36A〜36Dに示す。図中、a及びbはそれぞれ、H5N2及びH5N3 RNA分離株の結果である。これらの図において、図A(図34A、35A、36A)は種々の濃度の鋳型の増殖曲線を示す。用いた鋳型は、H5N1及びH5サブタイプのin vitro転写されたRNA、並びにH5N2及びH5N3のフィールドサンプルから抽出したRNAであった。図B(図34B、35B、36B)はRNA標準曲線を示し、図C(図34C、35C、36C)は融解曲線を示し、図D(図34D、35D、36D)はPCR産物のアガロースゲル可視化を示す。標準曲線は、in vitro転写されたRNA標品の定量化された量であるQS1〜QS5に基づいて、LightCyclerソフトウェアを用いて作製した。
【0140】
[00177] 次いで、上述のように、選択したH5N1 NAプライマーセット(一ステップ法にはセット10、11、13及び16を、二ステップ法にはセット12及び15を用いる。)を用いて一ステップ又は二ステップRT−PCR反応を実施し(それぞれ図37〜42)、また、H5 HAプライマーセット23を用いて一ステップ又は二ステップRT−PCR反応を実施した(それぞれ、図43A及び43B)。図37〜42、43A及び43Bに示されるように、結果は、エチジウムブロマイドで染色した1.5%アガロースゲルを用いて可視化した。
【0141】
[00178]実施例6:Taqman(商標)プローブ系を用いるリアルタイムPCR法
【0142】
[00179] 基本混合物(マスターミックス)は、氷上で1.5ml反応試験管中に、以下を順に加えることによって調製した。1.3μLの50mM Mn(OAc)2、8μLの1μLプローブ、1μLのFプライマー、1μLのRプライマー及び7.5μLのLightCycler RNA マスターハイブリダイゼーションプローブ。この基本混合物を穏やかに混合し、18μLを予冷したガラスキャピラリーに移した。2μLのRNA鋳型を加え、キャピラリーを700×gで5秒間遠心分離した。このキャピラリーをLightCycler(商標)装置のローターに入れ、表5〜8に示されるプログラムに従って、プログラム7については45サイクルを回した。
【0143】
[00180] Taqman(商標)(Roche)検出系を用いて、リアルタイムPCRを実施した。サブタイプH5のHA遺伝子を検出するために、以下の増幅プライマー対を用いた。(24)gisAFH5H1aF及びgisAFH5HTqR、加えてTaqman(商標)プローブgisAFH5HTMP。H5N1サブタイプのHA遺伝子を検出するために、以下の増幅プライマー対を用いた。(25)gisAFH5N1HTqF1及びgisAFH5N1H11cR、(26)gisAFH5N1H9F及びgisAFH5NlHTqRl。これらはそれぞれ、Taqman(商標)プローブgisAFH5N1HTMP2及びgisAFH5N1HTMP1と共に用いた。Taqman(商標)プローブは、5’末端でリポーターフルオロフォア6−カルボキシフルオレセインアミダイト(6−Fam)を用いて、また、3’末端でクエンチャーテトラメチルローダミン(TAMRA)を用いて標識した。Taqman(商標)プローブの配列は表10に示されている。増幅曲線結果は、H5プライマーセット24については図44に、H5N1プライマーセット25及び26については図45及び46に示す。
【0144】
【表10】
【0145】
[00181]実施例7:プライマーを用いるDNAマイクロアレイ
【0146】
[00182] 本発明の特定のプライマーをDNAマイクロアレイ(Attogenix、Singapore)に用いて、H5及びH5N1分離株由来のRNAを検出した。簡単には、種々のHA及びNAプライマー、具体的にはH5(gisAFH5HlaF及びgisAFH5H2aR)、H5N1(gisAFH5N1H2aF及びgisAFH5N1H4R)、並びにNA H5N1(gisAFH5N1N2aF及びgisAFH5NlN3aR)を固体表面上に固定した(RT−PCRの陽性対照としてGAPDHを用いた)。次いで、マイクロアレイを、サンプルNA若しくはHA転写物RNA又はその双方でプローブし、マイクロアレイの各スポットにおけるプローブのプライマーとの結合を、二本鎖核酸を検出するためのSYBRグリーン蛍光プローブを用いて検出した。結果を表11に示す。これから明らかなように、NA転写物はHA転写物よりも低濃度で検出可能であり、このことは、用いたNAプライマーが、用いた特定のHAプライマーよりも高感度であることを示す。
【0147】
【表11】
【0148】
[00183] 当業者には理解されることであるが、本明細書に記載の典型的実施形態に対しては多数の改変が可能である。本発明は、そのような改変の全てを、請求の範囲によって定義されるその範囲内に包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】HA遺伝子を示し、本発明の典型的なフォワード及びリバースプライマー(「gisAF」で始まる)の位置、並びに当技術分野で公知のプライマー(「TW」、「VM」又は「HK」で始まる)の位置を示す模式図である。
【図2】H5N1分離株のRNAから逆転写された鋳型DNAを増幅するために、本発明の典型的なプライマー(セット1〜8)を用いて、ゲルベースのPCRアプローチによって調製されたPCR増幅産物を示すアガロースゲルの写真である。
【図3】種々の量の鋳型及び図2で用いたプライマーセット3を用いて得た増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図4】種々の量の鋳型及び図2で用いたプライマーセット5を用いて得た増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図5】種々の量の鋳型及び図2で用いたプライマーセット8(上側のバンド)及び6(下側のバンド)を用いて得た増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図6】H5N1分離株のRNAから逆転写された鋳型DNAを増幅するために、本発明の典型的なプライマー(セット1〜8)を用いて、SYBR緑色色素を用いるリアルタイムPCRアプローチによって調製したPCR増幅産物を示すアガロースゲルの写真である。
【図7】図6のプライマーセット1を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図8】図6のプライマーセット2を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図9】図6のプライマーセット3を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図10】図6のプライマーセット4を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図11】図6のプライマーセット5を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図12】図6のプライマーセット6を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図13】図6のプライマーセット7を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図14】図6のプライマーセット8を用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図15】図6のプライマーセット1及び2を用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図16】図6のプライマーセット3、4及び5を用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図17】図6のプライマーセット5及び6を用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図18】図6のプライマーセット7及び8を用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図19A】in vitro転写された一本鎖RNAを段階希釈したものを用いた一ステップRT−PCRによるH5N1鳥インフルエンザAウイルスの検出を示すアガロースゲルの写真である。
【図19B】一ステップRT−PCRによる、フィールドサンプルからのH5N1鳥インフルエンザAウイルスの特異的検出を示すアガロースゲルの写真である。
【図20A】二ステップRT−PCR反応を用いて得たPCR産物のアガロースゲルの写真である。
【図20B】一ステップRT−PCR反応を用いて得たPCR産物のアガロースゲルの写真である。
【図20C】プライマーセット6を用いたリアルタイムPCRの結果を示す図である。
【図21A】本発明の典型的なプライマーを用いて、尿膜腔液のサンプルにおけるH5N1鳥インフルエンザウイルスを検出した結果を示すアガロースゲルの写真である。
【図21B】本発明の典型的なプライマーを用いて、ホモジナイズした組織のサンプルにおけるH5N1鳥インフルエンザウイルスを検出した結果を示すアガロースゲルの写真である。
【図21C】社内H5プライマーを用いた場合とH5N1プライマーセットを用いた場合の、フィールドサンプルにおけるH5N1鳥インフルエンザウイルスを検出した結果を比較するアガロースゲルの写真である。
【図22A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット9)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図22B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット9)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図22C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット9)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図23A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット10)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図23B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット10)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図23C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット10)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図24A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット11)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図24B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット11)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図24C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット11)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図25A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット12)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図25B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット12)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図25C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット12)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図26A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット13)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図26B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット13)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図26C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット13)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図27A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット14)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図27B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット14)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図27C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット14)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図28A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット15)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図28B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット15)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図28C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット15)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図29A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット16)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図29B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット16)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図29C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット16)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図30A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット17)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図30B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット17)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図30C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット17)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図31A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット18)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図31B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット18)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図31C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット18)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図32A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット19)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図32B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット19)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図32C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット19)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図33A】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット20)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図33B】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット20)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図33C】H5N1インフルエンザAのNA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット20)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図34A】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット21)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図34B】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット21)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応におけるRNA標準曲線である。
【図34C】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット21)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図34D】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット21)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図35A】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット22)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図35B】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット22)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応におけるRNA標準曲線である。
【図35C】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット22)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図35D】H5N1インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット22)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図36A】H5インフルエンザA(H5N1(QS1〜QS5)、H5N2(a)及びH5N3(b))のHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット23)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の際に得られた増幅曲線である。
【図36B】H5インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット23)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応におけるRNA標準曲線である。
【図36C】H5インフルエンザAのHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット23)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅反応の終了時に得られた融解曲線である。
【図36D】H5N1インフルエンザA(H5N1(QS1〜QS5)、H5N2及びH5N3)のHA遺伝子に対する典型的なプライマー(セット23)及びSYBRグリーンを用いたリアルタイムPCR増幅の増幅産物を示す1.5%アガロースゲルの写真である。
【図37】種々の量の鋳型及びプライマーセット10を用いて、一ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図38】種々の量の鋳型及びプライマーセット11を用いて、一ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図39】種々の量の鋳型及びプライマーセット13を用いて、一ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図40】種々の量の鋳型及びプライマーセット16を用いて、一ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図41】種々の量の鋳型及びプライマーセット12を用いて、二ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図42】種々の量の鋳型及びプライマーセット15を用いて、二ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図43A】種々の量の鋳型及びプライマーセット23を用いて、一ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図43B】種々の量の鋳型及びプライマーセット23を用いて、二ステップRT−PCR法によって得られた増幅産物の相対量を示すアガロースゲルの写真である。
【図44】Taqman(商標)リアルタイムPCR法及びサブタイプH5のHA遺伝子に対するプライマーセット24を用いて得られた増幅曲線である。
【図45】Taqman(商標)リアルタイムPCR法及びサブタイプH5N1のHA遺伝子に対するプライマーセット25を用いて得られた増幅曲線である。
【図46】Taqman(商標)リアルタイムPCR法及びサブタイプH5N1のHA遺伝子に対するプライマーセット26を用いて得られた増幅曲線である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含むプライマー。
【請求項2】
本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる、請求項1に記載のプライマー。
【請求項3】
配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である、請求項1に記載のプライマー。
【請求項4】
標的アニーリング配列と非インフルエンザAウイルス配列とを含むプライマーであって、標的アニーリング配列が、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含むプライマー。
【請求項5】
標的アニーリング配列が、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる、請求項4に記載のプライマー。
【請求項6】
標的アニーリング配列が、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である、請求項4に記載のプライマー。
【請求項7】
標識を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプライマー。
【請求項8】
標識が、蛍光標識、化学発光標識、有色色素標識、放射性標識、放射不透過性標識、タンパク質(酵素を含む)、ペプチド又はリガンドである、請求項7に記載のプライマー。
【請求項9】
サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、
サンプルから得たRNAから逆転写されたDNAを、各々が配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のプライマーを用いて増幅するステップと、
増幅産物を検出するステップと、を含み、
増幅産物の存在が、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1の存在を示す方法。
【請求項10】
各プライマーが、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各プライマーが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である、請求項9に記載のプライマー。
【請求項12】
増幅ステップにおいてプライマーセットを使用し、当該プライマーセットが、
(a)各々が配列番号32〜配列番号55及び配列番号113の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマー、及び、各々が配列番号1〜配列番号18の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のフォワードプライマー、又は、
(b)各々が配列番号56〜配列番号71及び配列番号114の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマー、及び、各々が配列番号19〜配列番号31及び配列番号112の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のフォワードプライマー、又は、
(c)各々が配列番号94〜配列番号111の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマー、及び、各々が配列番号72〜配列番号93の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のフォワードプライマー、を含み、
前記プライマーセットが(a)を含む場合には、増幅産物の存在が、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5の存在を示し、
前記プライマーセットが(b)又は(c)を含む場合には、増幅産物の存在が、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5N1の存在を示す、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
生体サンプルから得たRNAを、各々が配列番号32〜配列番号71、配列番号94〜配列番号111、配列番号113及び配列番号114の配列のいずれかを含む1種又は複数のリバースプライマーを用いて逆転写するステップを更に含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
増幅ステップ及び逆転写ステップを単一の反応混合物中で実施する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1種又は複数のリバースプライマーが各々、配列番号32〜配列番号55及び配列番号113;配列番号56〜配列番号71及び配列番号114;又は配列番号94〜配列番号111の配列を有する、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
1種又は複数のフォワードプライマーが各々、配列番号1〜配列番号18;配列番号19〜配列番号31及び配列番号112;又は配列番号72〜配列番号93の配列を有する、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
増幅ステップにおいてPCR増幅による増幅を行う、請求項9〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
増幅ステップにおいてホットスタートを行う、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
検出ステップにおいてアガロースゲル又はアクリルアミドゲルによる検出を行う、請求項17又は16に記載の方法。
【請求項20】
検出ステップにおいてリアルタイムPCRによる検出を行う、請求項9〜13、15及び16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
リアルタイムPCRによる検出が、5'末端にフルオロフォアを、3'末端にクエンチング分子を有する検出プローブによる検出を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、
サンプルと、支持体上に固定されているプライマーとを、プライマーとサンプルとがハイズリダイズするのに適した条件下で接触させるステップと、
プライマーとサンプルとのハイブリダイゼーションを検出するステップと、を含み、
プライマーが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む方法。
【請求項23】
プライマーが、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
プライマーが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、
サンプルと、1種又は複数のプライマーを含む核酸マイクロアレイとを、当該1種又は複数のプライマーとサンプルとがハイブリダイズするのに適した条件下で接触させるステップと、
1種又は複数のプライマーとサンプルとのハイブリダイゼーションを検出するステップと、を含み、
プライマーの各々が、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む方法。
【請求項26】
1種又は複数のプライマーの各々が、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
1種又は複数のプライマーの各々が、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
プライマーを含む核酸マイクロアレイであって、プライマーが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む核酸マイクロアレイ。
【請求項29】
プライマーが、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる、請求項28に記載の核酸マイクロアレイ。
【請求項30】
プライマーが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である、請求項28に記載の核酸マイクロアレイ。
【請求項31】
サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出するためのキットであって、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプライマーと、使用説明書とを含むキット。
【請求項1】
配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含むプライマー。
【請求項2】
本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる、請求項1に記載のプライマー。
【請求項3】
配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である、請求項1に記載のプライマー。
【請求項4】
標的アニーリング配列と非インフルエンザAウイルス配列とを含むプライマーであって、標的アニーリング配列が、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含むプライマー。
【請求項5】
標的アニーリング配列が、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる、請求項4に記載のプライマー。
【請求項6】
標的アニーリング配列が、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である、請求項4に記載のプライマー。
【請求項7】
標識を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプライマー。
【請求項8】
標識が、蛍光標識、化学発光標識、有色色素標識、放射性標識、放射不透過性標識、タンパク質(酵素を含む)、ペプチド又はリガンドである、請求項7に記載のプライマー。
【請求項9】
サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、
サンプルから得たRNAから逆転写されたDNAを、各々が配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のプライマーを用いて増幅するステップと、
増幅産物を検出するステップと、を含み、
増幅産物の存在が、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5又はH5N1の存在を示す方法。
【請求項10】
各プライマーが、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各プライマーが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である、請求項9に記載のプライマー。
【請求項12】
増幅ステップにおいてプライマーセットを使用し、当該プライマーセットが、
(a)各々が配列番号32〜配列番号55及び配列番号113の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマー、及び、各々が配列番号1〜配列番号18の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のフォワードプライマー、又は、
(b)各々が配列番号56〜配列番号71及び配列番号114の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマー、及び、各々が配列番号19〜配列番号31及び配列番号112の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のフォワードプライマー、又は、
(c)各々が配列番号94〜配列番号111の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のリバースプライマー、及び、各々が配列番号72〜配列番号93の配列のいずれか1種を含む1種又は複数のフォワードプライマー、を含み、
前記プライマーセットが(a)を含む場合には、増幅産物の存在が、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5の存在を示し、
前記プライマーセットが(b)又は(c)を含む場合には、増幅産物の存在が、サンプル中の鳥インフルエンザウイルスサブタイプH5N1の存在を示す、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
生体サンプルから得たRNAを、各々が配列番号32〜配列番号71、配列番号94〜配列番号111、配列番号113及び配列番号114の配列のいずれかを含む1種又は複数のリバースプライマーを用いて逆転写するステップを更に含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
増幅ステップ及び逆転写ステップを単一の反応混合物中で実施する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1種又は複数のリバースプライマーが各々、配列番号32〜配列番号55及び配列番号113;配列番号56〜配列番号71及び配列番号114;又は配列番号94〜配列番号111の配列を有する、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
1種又は複数のフォワードプライマーが各々、配列番号1〜配列番号18;配列番号19〜配列番号31及び配列番号112;又は配列番号72〜配列番号93の配列を有する、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
増幅ステップにおいてPCR増幅による増幅を行う、請求項9〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
増幅ステップにおいてホットスタートを行う、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
検出ステップにおいてアガロースゲル又はアクリルアミドゲルによる検出を行う、請求項17又は16に記載の方法。
【請求項20】
検出ステップにおいてリアルタイムPCRによる検出を行う、請求項9〜13、15及び16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
リアルタイムPCRによる検出が、5'末端にフルオロフォアを、3'末端にクエンチング分子を有する検出プローブによる検出を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、
サンプルと、支持体上に固定されているプライマーとを、プライマーとサンプルとがハイズリダイズするのに適した条件下で接触させるステップと、
プライマーとサンプルとのハイブリダイゼーションを検出するステップと、を含み、
プライマーが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む方法。
【請求項23】
プライマーが、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
プライマーが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出する方法であって、
サンプルと、1種又は複数のプライマーを含む核酸マイクロアレイとを、当該1種又は複数のプライマーとサンプルとがハイブリダイズするのに適した条件下で接触させるステップと、
1種又は複数のプライマーとサンプルとのハイブリダイゼーションを検出するステップと、を含み、
プライマーの各々が、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む方法。
【請求項26】
1種又は複数のプライマーの各々が、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
1種又は複数のプライマーの各々が、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
プライマーを含む核酸マイクロアレイであって、プライマーが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種を含む核酸マイクロアレイ。
【請求項29】
プライマーが、本質的に配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種からなる、請求項28に記載の核酸マイクロアレイ。
【請求項30】
プライマーが、配列番号1〜配列番号114の配列のいずれか1種である、請求項28に記載の核酸マイクロアレイ。
【請求項31】
サンプル中のインフルエンザAウイルスサブタイプH5又はH5N1を検出するためのキットであって、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプライマーと、使用説明書とを含むキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図27A】
【図27B】
【図27C】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図30A】
【図30B】
【図30C】
【図31A】
【図31B】
【図31C】
【図32A】
【図32B】
【図32C】
【図33A】
【図33B】
【図33C】
【図34A】
【図34B】
【図34C】
【図34D】
【図35A】
【図35B】
【図35C】
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【図36A】
【図36B】
【図36C】
【図36D】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43A】
【図43B】
【図44】
【図45】
【図46】
【図2】
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【図4】
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【図9】
【図10】
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【図23A】
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【図27A】
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【図28A】
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【図29A】
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【図31A】
【図31B】
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【図32A】
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【図32C】
【図33A】
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【図34A】
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【図34D】
【図35A】
【図35B】
【図35C】
【図35D】
【図36A】
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【図36C】
【図36D】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43A】
【図43B】
【図44】
【図45】
【図46】
【公表番号】特表2008−502362(P2008−502362A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527149(P2007−527149)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/SG2005/000187
【国際公開番号】WO2005/121367
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/SG2005/000187
【国際公開番号】WO2005/121367
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
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