説明

黄土を含んだ複合固体表面成形品

本発明に係る人造大理石用組成物は、(a)アクリル樹脂約100質量部;(b
)約1〜50μm粒子サイズを有する黄土粉末約1〜30質量部;(c)無機充填物約100〜200質量部;(d)架橋剤約0.1〜10質量部;及び(e)重合開始剤約0.1〜10質量部からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄土を含んだ複合固体表面成形品の組成物に関する。さらに詳しくは、アクリル系樹脂に特定の大きさの黄土を特定の含量で添加することにより独特な質感を有する複合固体表面成形品用の自然親和的な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人造大理石は、建築用材料として広く用いられてきた。前記人造大理石は、ベースレジン(Base resin)に応じて大きくアクリル系と不飽和ポリエステル系との2種類に分けられる。最近、アクリル系人造大理石は、不飽和ポリエステル系人造大理石に比べて樹脂自体の優れている外観、高級な質感、および優れた耐候性などの長所により様々な用途に使われている
例えば、台所用シンクの上板、洗面台、化粧台の上板、浴槽、各種のカウンターの上板、壁材、各種のインテリア造形物などの素材として使用されている。
【0003】
しかしながら、通常の人造大理石は、天然大理石に近い質感を表すことに重点を置いただけで、自然親和的な機能とはかかわりなかった。
一般的に、黄土は強い解毒及び抗菌作用を持っていて、食品、化粧品、衣類などに多様に適用されており、最近黄土の添加された製品の選好度が段々増加している。
【0004】
また、黄土は温度及び湿度の調節機能を有しているので、絶縁材として作用することができ、韓国では伝統的に黄土を建築材として用いて、夏には涼しく、冬には暖かく暮らしてきた。
【0005】
したがって、黄土を適用した人造大理石は、建物の内壁材や各種のインテリア造形物などの素材に特に好適である。しかしながら、黄土成分と人造大理石マトリックスとの相溶性、工程安定性などのため、良好な機械的物性と上品な黄土特有の質感との両方を備えた材料または成形品はいまだ開発されていない。
【0006】
韓国特許第272421号公報には、黄土と不飽和ポリエステルとの混合物からなる層の上に、ゼオライトと不飽和ポリエステルとの混合物からなる層を積層硬化して人造大理石を製造した方法について開示されている。しかしながら、前記方法は高すぎる黄土の含量により、工程安定性が低下し、製品の強度に問題があった。
【0007】
従って、本発明者らは、アクリル系人造物用組成物に特定の大きさの黄土を特定の含量で添加することにより、優れた機械的物性および黄土特有の独特な質感を有する、自然親和的な複合固体表面成形品を開発するに至った。
【特許文献1】韓国特許第272421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、黄土特有の独特な質感を有する複合固体表面成形品用組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、自然親和的な複合固体表面成形品用組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の更に他の目的は、機械的物性に優れた複合固体表面成形品用組成物を提供することにある。
本発明のその他の目的および利点は、以下の開示およびクレームにより明らかになるであろう。以下に本発明を詳細に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る複合固体表面成形品は、(a)アクリル樹脂約100質量部;(b)約1ないし50μmの粒子サイズを有する黄土粉末約1ないし30質量部;(c)無機充填物約100ないし200質量部;(d)架橋剤約0.1ないし10質量部;及び(e)重合開始剤約0.1ないし10質量部からなる。本発明の具体例では、前記複合固体表面成形品はマーブルチップ約0.1ないし150質量部を含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の複合固体表面成形品は、(a)アクリル樹脂約100質量部;(b)約1ないし50μmの粒子サイズを有する黄土粉末約1ないし30質量部;(c)無機充填物約100ないし200質量部;(d)架橋剤約0.1ないし10質量部;及び(e)重合開始剤約0.1ないし10質量部からなる。
【0012】
(a)アクリル樹脂
本発明に用いられるアクリル樹脂は、アクリル系単量体とこれらの重合物であるポリアクリレートとの混合物からなる樹脂シロップである。
【0013】
前記アクリル系単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルへキシルメタクリレートなどのようなメタクリル酸エステルが含まれる。
【0014】
本発明の一具体例では、全体アクリル樹脂シロップを基準にして、アクリル系単量体の含量が65質量%以上であり、ポリアクリレートの含量が35質量%以下である。
(b)黄土粉末
本発明の具体例では、前記黄土粉末は、約1ないし50μmの平均粒子サイズを有する。より高い機械的物性を考慮して、前記黄土粉末は約5〜40μmの粒子サイズを有することがより好ましい。
【0015】
もし、黄土粉末の粒子サイズが1μm未満であれば、工程の制御が難しくなり、50μmを超える場合は、複合固体表面成形品の機械的物性が低下する。
本発明では、黄土粉末を適用することにより、黄土特有の独特な質感を有すると共に自然親和的な複合固体表面成形品を製造することができる。
【0016】
本発明において、黄土粉末の好ましい含量は、アクリル樹脂100質量部に対して約1ないし30質量部であり、より好ましくは約5〜25質量部である。
黄土粉末が30質量部を超えれば、複合固体表面成形品の機械的物性が低下するという問題点が生じ、1質量部未満の場合は、独特な黄土のパターンを得ることができない。
【0017】
(c)無機充填物
前記無機充填物としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、水酸化マグネシウムのように該当分野において通常使われる無機粉末のいずれも使用可能である。好ましくは、本発明の無機充填物は、約1ないし100μmの粒子サイズを有する。
【0018】
前記無機粉末のうち、特に水酸化アルミニウムは透明かつ美麗な大理石状の外観を有する人造大理石を製造することができるという点で、最も好ましい。
本発明の無機充填物の含量は、アクリル樹脂100質量部を基準にして、約100〜2
00質量部、さらに好ましくは約120〜160質量部である。
【0019】
(d)架橋剤
本発明の架橋剤としては、多官能性の(メタ)アクリレートを用いることができ、具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパントリ(
メタ)アクリレート、及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0020】
前記架橋剤の含量は、アクリル樹脂100質量部を基準にして約0.1〜10質量部だあり、好ましくは約0.3〜10質量部である。
(e)重合開始剤
本発明に係る重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシドなどの過酸化物あるいはアゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物が用いられる。
【0021】
前記重合開始剤の含量は、アクリル樹脂100質量部を基準にして約0.1〜10質量部が好ましい。
(f)マーブルチップ
本発明の具体例では、多様な色を有する通常の人造マーブルチップを選択的に添加することができる。前記マーブルチップは、通常、約0.1mmないし約5mmの粒子サイズを有する。前記マーブルチップは、通常の方法によって製造される。例えば、アクリル樹脂100質量部、無機充填物約120〜200質量部、架橋剤約0.1〜10質量部、及び開始剤約0.1〜10質量部を混合し、前記混合物を硬化した後、これを破砕することにより製造される。
【0022】
本発明の他の具体例では、約0.1mmないし1.0mmの大きさのマーブルチップが用いられる。
前記マーブルチップの添加量は、アクリル樹脂100質量部を基準にして約0ないし200質量部、好ましくは約0.1質量部ないし150質量部であり、さらに好ましくは約0.1ないし70質量部であり、多様なパターンが具現可能である。
【0023】
本発明の人造大理石は、通常の方法によって製造することができる。例えば、前記の各構成成分を混合して人造大理石スラリを製造した後、成形セルに注入した上で、硬化させて人造大理石の製品が得られる。
【0024】
本発明は下記の実施例によって更に容易に理解することができ、下記の実施例は本発明の例示のためのものであり、添付された特許請求の範囲に記載された本発明の範囲をいかなる意味においても制限するものではない。以下の実施例において、すべての部およびパーセントは、特に断わりのない限り、質量基準である。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
30%のポリメチルメタクリレートと70%のメチルメタクリレートとの混合物からなるメチルメタクリレート樹脂シロップ100質量部、30μmの平均粒子サイズを有する黄土粉末20質量部、0.1〜5mmの粒子サイズのマーブルチップと水酸化アルミニウムとの混合物155質量部、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート2質量部、及びラウロイルパーオキシド2質量部を混合して、ミキサーで攪拌し、人造大理石スラリを製造して、300mm×600mm×15mmのガラス成形セルに注入した後、45°Cの熱風オーブンに入れ、段階的にオーブンの温度を100°Cに上げて硬化させた。硬化が完了された後、常温まで冷却して平板状の人造大理石板を得た。製造された人造大理石板は、黄土特有の優雅な質感を表現していた。最終製品の写真を図1に示した。
【0026】
(実施例2)
10μmの平均粒子サイズを有する黄土粉末を10質量部用いた以外は、前記実施例1と同様に行われた。
【0027】
(比較例1)
黄土粉末を50質量部用いた以外は、前記実施例1と同様に行われた。
(比較例2)
80μmの平均粒子サイズを有する黄土粉末を用いた以外は、前記実施例2と同様に行われた。
【0028】
前記製造された製品に対してASTM790に準じて屈曲強度を、ASTM256に準じてIZOD衝撃強度をそれぞれ測定し、測定結果は表1に表した。
【0029】
【表1】

【0030】
前記表1に示すように、黄土を極めて多く含んだ比較例1は、屈曲強度及び衝撃強度が低下したことを確認することができた。また、黄土粉末サイズが50μmを超えた比較例2の場合も屈曲強度及び衝撃強度が低下したことが示された。
【0031】
本発明の単なる変形ないし変更は、この分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができ、このような変形や変更は、全て本発明の領域に含まれると認めるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、実施例1によって製造された黄土を含んだ複合固体表面成形品の表面パターンを示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アクリル樹脂約100質量部;
(b)約1〜50μmの粒子サイズを有する黄土粉末約1〜30質量部;
(c)無機充填物約100〜200質量部;
(d)架橋剤約0.1〜10質量部;及び
(e)重合開始剤約0.1〜10質量部;
からなることを特徴とする人造大理石用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、さらに、(f)マーブルチップ約0.1〜150質量部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の人造大理石用組成物。
【請求項3】
前記アクリル樹脂(a)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、及び2−エチルヘキシルメタクリレートからなる群より選択されるアクリル系単量体と、これらの重合物であるポリアクリレートとの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の人造大理石用組成物。
【請求項4】
前記無機充填物(c)は、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の人造大理石用組成物。
【請求項5】
前記架橋剤(d)は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の人造大理石用組成物。
【請求項6】
前記マーブルチップ(f)は、アクリル樹脂100質量部、無機充填物約100〜200質量部、架橋剤約0.1〜10質量部、及び開始剤約0.1〜10質量部を混合し、この混合物を硬化させて、これを0.1〜5mmの大きさに破砕して製造されることを特徴とする、請求項2に記載の人造大理石用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物を硬化することにより製造された複合固体表面成形品。

【図1】
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【公表番号】特表2008−523202(P2008−523202A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545386(P2007−545386)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/KR2005/004213
【国際公開番号】WO2006/062373
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】