説明

(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体およびその製造方法

【課題】(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の取扱い性、輸送性、さらには溶媒への溶解性を改良する。
【解決手段】粒子径が10μm以下の粒子の割合を10質量%未満にする。このような(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体は、入口熱風温度が260〜400℃の噴霧乾燥装置に、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を供給して、該(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を噴霧乾燥することで、好適に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体およびそれらの製造方法に関する。より詳しくは、樹脂改質剤、熱硬化性塗料、接着剤、繊維処理剤、帯電防止剤、およびイオン交換樹脂等種々の工業用原料などに使用される(メタ)アクリル酸エステルを合成するための原料として用いられる(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体およびその製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【背景技術】
【0003】
従来の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の製造方法として、特許文献1および2には、不飽和カルボン酸アルカリ金属塩水溶液を、噴霧乾燥装置を用いたスプレードライヤー法により噴霧乾燥して、不飽和カルボン酸アルカリ金属塩粉体の製造方法が開示されている。また、特許文献3には、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を噴霧乾燥装置により噴霧乾燥する際の入口熱風温度を150〜185℃に調整することにより、嵩比重が大きく、比表面積の小さい(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体が得られること、粒子表面に空隙のない充実球が得られることが記載されている。
【特許文献1】特開昭47−31924号公報
【特許文献2】特開昭49−11820号公報
【特許文献3】特開2004−107301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1および3に記載の方法で製造された(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体は、粒子径が小さいために、静電気による壁への付着、吸湿性の増大による配管の閉塞が起こり易くなる。さらに、粒径が小さくなることによって粉塵が舞い易くなり、エステル化反応や当該粉体を使用する他の反応時など粉体仕込み作業時の取扱いが困難である上に、粉塵爆発の危険性もあるという問題も有していた。
【0005】
また、特許文献3記載の方法で製造された(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体は、比表面積が小さくなることによる溶液への溶解性が悪化するという問題も有していた。
【0006】
特許文献2には、詳細なスプレードライヤー条件と粒子径、比表面積との関係に関しての開示はなく、粒子径や比表面積を制御する手段についても何ら開示されていない。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決するものであり、その目的は(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の取扱い性、輸送性、さらには溶媒への溶解性を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体を製造するに当たり、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を、噴霧乾燥装置により噴霧乾燥する際の入口熱風温度を260〜400℃に調整することにより、得られる(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体が、従来より粒子径が小さい粒子の割合が少なく、さらに溶媒への溶解性が向上することを見出し、この発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は次の1〜7の構成である。
1.粒子径が10μm以下の粒子の割合が10質量%未満である(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体。
2.比表面積が3〜30m2/gであることを特徴とする前記1記載の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体。
3.安息角が30°〜50°であることを特徴とする前記1または2に記載の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体。
4.入口熱風温度が260〜400℃の噴霧乾燥装置に、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を供給して、該(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を噴霧乾燥することを特徴とする(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の製造方法。
5.前記噴霧乾燥装置に供給される前記(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の供給量が、100〜400L/hであることを特徴とする前記4に記載の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の製造方法。
6.前記噴霧乾燥装置に供給される前記(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の供給圧力が、0.1〜2.0Kgf/cm2(9.8〜196kPa)であることを特徴とする前記4または5に記載の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の製造方法。
7.前記噴霧乾燥装置内で、前記(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を二流体ノズルにより噴霧することを特徴とする前記4〜6のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粒子径が10μm以下の粒子の割合が10質量%未満である(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体が得られる。従来の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体と比較して、粒子径が小さい粒子の割合が少ないため、粉体を取り扱う際に粉体が舞いにくく取扱い性及び輸送性に優れ、溶媒への溶解性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を噴霧乾燥して、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体を製造する。(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩としては、具体的にはアクリル酸ナトリウムまたはメタクリル酸ナトリウムを挙げることができるが、これ以外のアルカリ金属塩(例えば、リチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、フランシウム塩)であってもよい。
【0012】
本発明で噴霧乾燥に使用される(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液は、水を溶媒としてアクリル酸又はメタクリル酸とアルカリ金属水酸化物あるいはアルカリ金属炭酸塩との中和反応を行うことで、調製することができる。
【0013】
(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の濃度は、通常は10〜60質量%である。(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の濃度は、乾燥に必要な熱量が少なくて済むことから20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の濃度は、水溶液の粘度や噴霧時の析出防止の点から、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0014】
(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液のpHは、通常は7〜11の範囲である。(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩と金属水酸化物や金属炭酸塩などの金属化合物の量のバランスの点から、pHは7.5以上が好ましく、8以上がより好ましく、また10.5以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0015】
噴霧乾燥を行う前の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の温度は、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩が析出しない温度で、沸点より低い温度であれば問題ないが、水溶液の粘度や(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩の析出防止の点から、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。また、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩の重合防止の点から80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましい。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液は、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩の重合を防止するために、重合防止剤を含有することが好ましい。使用する重合防止剤としては、(メタ)アクリル酸およびその誘導体に使用されているものが使用可能である。代表例としては、N−オキシラジカル系化合物、フェノール系化合物、キノン系化合物、銅化合物、アミノ化合物、ヒドロキシアミン系化合物などが挙げられる。
【0017】
N−オキシラジカル系化合物の具体例としては、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
フェノール系化合物の具体例としては、パラメトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−N,N−ジメチルアミノ−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4−tert−ブチルカテコール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
キノン系化合物の具体例としては、ベンゾキノン、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノンなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
銅化合物の具体例としては、塩化第一銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
アミノ化合物の具体例としては、フェノチアジン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
ヒドロキシアミン系化合物の具体例としては、ジエチルヒドロキシルアミン、1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
重合防止剤のなかでは、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩の重合を抑制する観点から、パラメトキシフェノール、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、ハイドロキノンが好ましい。
【0024】
本発明では、この(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を噴霧乾燥装置に供給して、噴霧乾燥する。すなわち、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の乾燥装置としては、噴霧乾燥装置を使用する。噴霧乾燥装置としては特に限定されることなく広範囲に使用される。噴霧状の水溶液と熱気流体とが並流接触するもの、向流接触するもの、一旦向流接触したのち並流接触となる形式等いずれの形式でも使用できる。また、水溶液を噴霧状にする形式としては、液体を微細粒子化する際に粒径の調整をしやすい点において二流体ノズル形式が適している。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の貯蔵タンクとしては、蛇管を使用することが好ましい。こうすることで、効率的な温度調整が可能となり、重合や析出防止に大きく寄与する。また、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を噴霧乾燥装置に供給するまでの配管は、水溶液の送液のしやすさや析出による閉塞防止のために、二重管を使用し、外側の管に温水を流して加温することが好ましい。
【0026】
本発明では、噴霧乾燥装置の入口熱風温度を260〜400℃に調整する。こうすることで、粒子径が小さい粒子の割合が少ない(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体が得られる。得られる(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の比表面積が大きくなることから、入口熱風温度は、270℃以上が好ましく、280℃以上がより好ましい。また、入口熱風温度は、重合防止の点から、350℃以下が好ましく、320℃で以下がより好ましい。
【0027】
噴霧乾燥装置の入口熱風量は使用する噴霧乾燥装置、熱交換機の大きさによって異なるが、直径3mの噴霧乾燥装置であれば、30〜70m3/分が好ましい。熱気流体としては通常空気が使用されるが、窒素のような不活性気体を使用しても良い。噴霧乾燥装置の入口の熱風は熱交換機を通した熱風でも良いし、直火で熱した熱風でも良い。
【0028】
噴霧乾燥装置の出口温度は、入口熱風温度および熱風量、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の処理量などにより左右されるが、製品を十分に乾燥可能な温度を適宜選択することができる。出口温度は、通常80℃以上であれば問題ないが、得られる(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の水分含有量を減らすためには、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。また、出口温度は、重合防止の点から、150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。なお、ここで云う出口温度とは、粉体捕集部から排出される熱風の温度のことである。
【0029】
噴霧乾燥装置へ供給される(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の供給量は、通常100〜400L/hである。生産性の点から、150L/h以上が好ましく、200L/h以上がより好ましい。また、アクリル酸アルカリ金属塩粉体の水分含有量低減の点から、300L/h以下が好ましく、280L/h以下がより好ましい。
【0030】
噴霧乾燥装置へ供給される(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の供給圧力は、通常0.1〜2.0Kgf/cm2(9.8〜196kPa)である。生産性の点から、0.2Kgf/cm2(19.6kPa)以上が好ましく、0.3Kgf/cm2(29.4kPa)以上がより好ましい。また、アクリル酸アルカリ金属塩粉体の粒子径が大きくなることから、1.5Kgf/cm2(147kPa)以下が好ましく、1.0Kgf/cm2(98kPa)以下がより好ましい。
【0031】
本発明において使用する噴霧乾燥装置の二流体ノズルの熱風ガス量は、装置の規模と目的の水分含有量により適宜選択できるが、一般には10〜200m3/minである。アクリル酸アルカリ金属塩粉体の粒子径が大きくなることから、好ましくは100m3/min以下であり、より好ましくは80m3/min以下である。また、得られる粉体の水分含有量の点から、好ましくは20m3/min以上であり、30m3/min以上がより好ましい。
【0032】
噴霧乾燥装置で使用するディスクの直径は、40〜150mmが好ましいが、取扱い易さの点から50〜120mmがより好ましい。
【0033】
得られる(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の水分量は、後に使用する反応へ影響を与えない量である0.2質量%以下が好ましい。より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、特に好ましくは0.03質量%以下である。
【0034】
得られる(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の粒子径は、通常1〜250μmの範囲に分布しているが、噴霧乾燥装置のノズル周りから噴出する風量を変更することにより粉体の粒度分布を変えることができる。
【0035】
以上のような本発明の方法により、粒子径が10μm以下の割合が10質量%未満である(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体を得ることができる。粒子径が10μm以下の割合は、8質量%未満が好ましく、5質量%未満がより好ましい。粒子径が10μm以下の割合は少ないほど本発明の効果が大きくなる傾向にあるが、制御が容易でなく、無理に実現しようとすると高コストになるので、例えば0.1質量%以上でもよい。
【0036】
(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体は、取扱い易さの点から、粒子径が30μm以下の割合が10質量%未満であることが好ましい。粒子径が30μm以下の割合は、8質量%未満がより好ましく、5質量%未満が特に好ましい。粒子径が30μm以下の割合は少ないほど本発明の効果が大きくなる傾向にあるが、制御が容易でなく、無理に実現しようとすると高コストになるので、例えば0.1質量%以上でもよい。また、粒子径が74μm以下の粒子の割合は60質量%未満が好ましく、58質量%未満がより好ましく、56質量%未満が特に好ましい。また、粒子径が74μm以下の割合は少なくても構わないが、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。
【0037】
また、本発明の方法では高温の熱風で乾燥させるため、粉体の形状は通常空隙および突起を有するものになる。また、比表面積が3〜30m2/gの(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体を得ることができる。比表面積は、溶媒への溶解性の点から5m2/g以上が好ましく、7m2/g以上がより好ましい。また、流動性の点から、20m2/g以下が好ましく、15m2/g以下がより好ましい。
【0038】
さらに、本発明の方法により、安息角が30°〜50°である(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体を得ることができる。粉体仕込み時の取扱い性の良さの点から、32°以上が好ましく、35°がより好ましい。また、流動性の点から、48°以下が好ましく、45°以下がより好ましい。
【0039】
本発明の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体のように、粒子径が小さい粒子の割合が少なくすることによって、粉体の取扱い性が向上する。さらに、比表面積が大きいことにも起因して、エステル化時の溶剤への易溶解性を有することができる。また、本発明の範囲の安息角を有することにより、適度な流動性を有し、さらに取り扱いやすさに優れる。
【0040】
本発明に於ける粉体の物性に関する測定方法は以下の通りである。後述の実施例、比較例も同様にして測定した。
【0041】
(嵩比重)
嵩比重測定用100ml円筒金属容器に粉体を静かに流し込み、円筒容器に山盛りにする。次に一辺が直線のヘラで山の部分を削り取った後、重量を測定し、1ml当たりの重量を算出する。当該粉体の異なる部分より採取した10個サンプルにつき、上記測定を行いその平均値を求めた。測定は25℃、湿度60%にて行った。
【0042】
(粒子径分布)
JIS K0069「化学製品の篩い分け試験法」の乾式篩い分け試験法に準じて行った。測定は25℃、湿度60%にて行った。
【0043】
(比表面積)
自動比表面積計(島津製作所製)にて測定した。前処理;150℃×1時間、吸着ガス;窒素、で行った。
【0044】
(安息角)
安息角測定用円盤上に粉体を静かに流し落とし、円盤上に山盛りにする。円盤上に生じた山の裾の角度を測定する。当該粉体の異なる3箇所につき、上記測定を行い、その平均値を求めた。測定は25℃、湿度60%にて行った
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
<実施例1>
内容積6m3の攪拌機及びジャケット付き反応釜に、ジャケットに冷却水を流しながら、50質量%水酸化ナトリウム水溶液750kgを仕込み、純水410kgを仕込み水酸化ナトリウム水溶液を希釈した。次に、攪拌しながら、メトキシフェノールが70ppmを含有したメタクリル酸を6時間かけて680kg滴下することで、温度が40℃、pHが8.7〜9.5の48質量%メタクリル酸ナトリウム水溶液1880kgが得られた。
【0047】
この水溶液を使用して噴霧乾燥実験を行った。具体的には、噴霧乾燥装置(大川原化工機(株)製;型式ONB−20(商品名))の塔頂部より、上記48質量%メタクリル酸ナトリウム水溶液を二流体ノズルにより連続的に噴霧した。なお、使用したディスクは直径70.3mmであり、原料(メタクリル酸ナトリウム水溶液)供給量240L/h、供給圧力0.8Kgf/cm2(78.5kPa)、入口熱風温度295℃、出口温度123℃の条件で7時間連続噴霧乾燥した。その結果、嵩比重が0.277g/ml、水分量が0.03質量%、安息角が41°、比表面積が11.5m3/g、粒子径が10μm以下の粒子の割合が0.7質量%、粒子径が30μm以下の粒子の割合が3.0質量%、粒子径が74μm以下の粒子の割合が55質量%、のメタクリル酸ナトリウム粉体が887kg得られた。
【0048】
<実施例2>
実施例1に使用した水溶液を用い、実施例1と同一の装置で噴霧乾燥実験を行った。なお、使用したディスクは直径70.3mmであり、原料供給量250L/h、原料供給圧力0.7Kgf/cm2(68.6kPa)、入口熱風温度300℃、出口温度123℃の条件で7時間連続噴霧乾燥した。その結果、嵩比重が0.2654g/ml、水分量が0.04質量%、安息角が43°、比表面積が10.9m3/g、粒子径が10μm以下の粒子の割合が0.8質量%、粒子径が30μm以下の粒子の割合が1.0質量%、粒子径が74μm以下の粒子の割合が52質量%、のメタクリル酸ナトリウム粉体が875kg得られた。
【0049】
<比較例1>
実施例1に使用した水溶液を用い、実施例1と同一の装置で噴霧乾燥実験を行った。なお、使用したディスクは直径70.3mmであり、原料供給量80L/h、原料供給圧力2.5Kgf/cm2(245.2kPa)、入口熱風温度190℃、出口温度123℃の条件で7時間連続噴霧乾燥した。その結果、嵩比重が0.224g/ml、水分量が0.01質量%、安息角が54°、比表面積が5.2m3/g、粒子径が10μm以下の粒子の割合が13質量%、粒子径が30μm以下の粒子の割合が29質量%、粒子径が74μm以下の粒子の割合が94質量%、のメタクリル酸ナトリウム粉体が834kg得られた。
【0050】
<比較例2>
実施例1に使用した水溶液を用い、実施例1と同一の装置で噴霧乾燥実験を行った。なお、使用したディスクは直径70.3mmであり、原料供給量100L/h、原料供給圧力2.5Kgf/cm2(245.2kPa)入口熱風温度200℃、出口温度123℃の条件で7時間連続噴霧乾燥した。その結果、嵩比重が0.216g/ml、水分量が0.01質量%、安息角が55°、比表面積が5.4m3/g、粒子径が10μm以下の粒子の割合が15質量%、粒子径が30μm以下の粒子の割合が26質量%、粒子径が74μm以下の粒子の割合が92質量%、のメタクリル酸ナトリウム粉体が852kg得られた。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が10μm以下の粒子の割合が10質量%未満である(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体。
【請求項2】
比表面積が3〜30m2/gであることを特徴とする請求項1記載の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体。
【請求項3】
安息角が30°〜50°であることを特徴とする請求項1または2に記載の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体。
【請求項4】
入口熱風温度が260〜400℃の噴霧乾燥装置に、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を供給して、該(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を噴霧乾燥することを特徴とする(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の製造方法。
【請求項5】
前記噴霧乾燥装置に供給される前記(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の供給量が、100〜400L/hであることを特徴とする請求項4に記載の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の製造方法。
【請求項6】
前記噴霧乾燥装置に供給される前記(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液の供給圧力が、0.1〜2.0Kgf/cm2(9.8〜196kPa)であることを特徴とする請求項4または5に記載の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の製造方法。
【請求項7】
前記噴霧乾燥装置内で、前記(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩水溶液を二流体ノズルにより噴霧することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩粉体の製造方法。

【公開番号】特開2008−230998(P2008−230998A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70800(P2007−70800)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】