説明

(メタ)アクリル酸エステルおよびその原料化合物

【課題】感度、解像度、ドライエッチング耐性、ラインエッジラフネスに優れるレジスト組成物の樹脂原料を提供する。
【解決手段】β−シアンヒドリン類縁体を原料とした(メタ)アクリル酸エステル及び重合体。


(R1はアルキル基を有していてもよい炭素数4〜16の環式炭化水素基を有する炭素数1〜6のアルキル基を示し、R2は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。あるいは、R1とR2は結合している炭素原子とともにアルキル基を有していてもよい炭素数4〜16の環式炭化水素基を形成する。ここで前記アルキル基、環式炭化水素基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシル基、または、炭素数1〜6のアルコールとエステル化されたカルボキシ基で置換されていてもよい。アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂原料として有用な(メタ)アクリル酸エステル、その原料化合物、組成物、および、その製造方法に関する。また、本発明は、この(メタ)アクリル酸エステルを使用した重合体、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シアノ基を有するメタクリル酸エステルを共重合した樹脂は、レジスト材料として用いた場合に、基板密着性、ドライエッチング耐性に優れることが、特許文献1に開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、レジスト材料として有用な(メタ)アクリル酸エステルの製造方法が開示されており、ケトン化合物をアルキル化し、これを単離することなく(メタ)アクリル酸エステル化する方法が知られている。なお、(メタ)アクリル酸エステル化とは、ある化合物を(メタ)アクリル酸エステルに変換することをいう。
しかしながら、(メタ)アクリロイルオキシ基を置換基に持つ環構造を有し、その(メタ)アクリロイルオキシ基の結合した炭素にシアノ基がメチレン基を介して結合する(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、これまで知られていなかった。
【0004】
また、従来の樹脂を用いたレジスト組成物では十分な感度、解像度、ドライエッチング耐性、ラインエッジラフネスすべてを満足できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−352694号公報
【特許文献2】特開平10−182552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂原料、特に十分な感度および解像度を備えた上に、ドライエッチング耐性に優れ、また、ラインエッジラフネスの点でも優れるレジスト組成物の樹脂原料として有用な(メタ)アクリル酸エステル、その原料化合物、組成物、および、その製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、この(メタ)アクリル酸エステルを使用した重合体、および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の環構造にメチレン鎖を介してシアノ基が結合した構造を含有する新規な(メタ)アクリル酸エステルが、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂原料として有用であることを見出し、本発明に至った。また、このシアノ基含有(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を見出し、本発明に至った。また、特定の化合物の含有量が少ない(メタ)アクリル酸エステルの組成物が、前述の樹脂原料として特に有用であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の第1の要旨は、下記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類緑体である。
【0008】
【化1】

(式(1)中、Xは水素原子、アルカリ金属、またはマグネシウムハライドを表す。Rはアルキル基を有していてもよい炭素数4〜16の環式炭化水素基を有する炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。あるいは、RとRは結合している炭素原子とともにアルキル基を有していてもよい炭素数4〜16の環式炭化水素基を形成する。ここで前記アルキル基、環式炭化水素基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシル基、または、炭素数1〜6のアルコールとエステル化されたカルボキシ基で置換されていてもよい。アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。)
【0009】
本発明の第2の要旨は、R、Rが結合している炭素原子とともにアルキル基を有していてもよい前記β−シアンヒドリン類縁体である。
【0010】
本発明の第3の要旨は、前記式(1)が下記式(1a)〜(1j)のいずれかである前記β−シアンヒドリン類縁体である。
【0011】
【化2】

(式(1a)〜(1i)中、Xは水素原子、アルカリ金属、またはマグネシウムハライドを表す。式(1j)中、X'はアルカリ金属、またはマグネシウムハライドを表す。)
【0012】
本発明の第4の要旨は、下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルである。
【0013】
【化3】

(式(2)中、Rは、水素原子、またはメチル基を表す。R、Rは、式(1)と同義である。)
【0014】
本発明の第5の要旨は、R、Rは結合している炭素原子とともにアルキル基を有していてもよい2つ以上の環式炭化水素を形成する前記(メタ)アクリル酸エステルである。
【0015】
本発明の第6の要旨は、前記式(2)が下記式(2a)〜(2j)のいずれかである前記(メタ)アクリル酸エステルである。
【0016】
【化4】

(式中(2a)〜(2j)中、Rは水素原子、またはメチル基を表す。)
本発明の第7の要旨は、下記式(3)で表される構成単位を含有する重合体である。
【0017】
【化5】

(式(3)中、R、R、Rは、式(2)と同義である。)
【0018】
本発明の第8の要旨は、R、Rが2つ以上の環式炭化水素を形成する前記重合体である。
本発明の第9の要旨は、前記式(3)が下記式(3a)〜(3j)のいずれかである前記重合体である。
【0019】
【化6】

(式(3a)〜(3j)中、Rは水素原子、またはメチル基を表す。)
本発明の第10の要旨は、下記式(4)で表されるカルボニル化合物のカルボニル炭素をシアノメチル化する工程と、シアノメチル化された化合物を(メタ)アクリル酸エステル化する工程とを含む前記(メタ)アクリル酸エステルの製造方法である。
【0020】
【化7】

(式(4)中、R、Rは、式(1)と同義である。)
本発明の第11の要旨は、(メタ)アクリル酸エステル化工程が50℃以下で行われる前記製造方法である。
本発明の第12の要旨はカルボニル化合物が下記式(4a)〜(4j)のいずれかである前記製造方法である。
【0021】
【化8】

本発明の第13の要旨は、前記式(1)、前記式(1−a)〜(1−j)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体のいずれかを(メタ)アクリル酸エステル化する工程を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法である。
本発明の第14の要旨は、下記式(5)で表される化合物の含有量が5質量%以下である、前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む組成物である。
【0022】
【化9】

(式(5)中、R、Rは、式(1)と同義である。)
本発明の第15の要旨は、式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルが、式(2a)〜(2j)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記組成物である。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂原料、特に十分な感度および解像度を備えた上に、ドライエッチング耐性に優れ、また、ラインエッジラフネスの点でも優れるレジスト組成物の樹脂原料として有用な(メタ)アクリル酸エステル、その原料化合物、組成物、および、その製造方法を提供することができる。また、本発明は、この(メタ)アクリル酸エステルを使用した重合体、および、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1で得た前記式(M−2)で表されるメタクリル酸エステルのH−NMR分析の測定結果を示す図である。
【図2】実施例1で得た前記式(M−2)で表されるメタクリル酸エステルの13C−NMR分析の測定結果を示す図である。
【図3】実施例1で得た前記式(M−2)で表されるメタクリル酸エステルの質量分析の測定結果を示す図である。
【図4】実施例2で得た前記式(M−3)で表されるメタクリル酸エステルのH−NMR分析の測定結果を示す図である。
【図5】実施例2で得た前記式(M−3)で表されるメタクリル酸エステルの13C−NMR分析の測定結果を示す図である。
【図6】実施例2で得た前記式(M−3)で表されるメタクリル酸エステルの質量分析の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.本発明の(メタ)アクリル酸エステル
本発明の(メタ)アクリル酸エステルは、前記式(2)で表される。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸およびアクリル酸の総称を表す。
また、本発明の(メタ)アクリル酸エステルは、2つ以上の位置異性体、光学異性体を有する場合があるが、いずれかの異性体単独であってもよく、2つ以上の異性体の混合物であってもよい。
【0026】
本発明において、環式炭化水素基とは、橋かけ環式炭化水素基を含む。
また、本発明の(メタ)アクリル酸エステルは、3級エステル構造を有する。3級エステル構造は、酸性条件において保護基が脱離する反応を起こす。そのため、光酸発生剤を併用した化学増幅型レジストにおいては、3級エステル構造は酸脱離性基として利用することができる。中性およびアルカリ性条件においては、このような脱離反応は起こらず、側鎖の環式炭化水素構造による立体障害のため、加水分解が抑制され、安定して保存することができる。
【0027】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルは、これに由来する構成単位を含む重合体をレジスト組成物に用いた場合の感度、解像度、ドライエッチング耐性、ラインエッジラフネスの点から、Rは炭素数4〜16の環式炭化水素基を有する炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す、あるいは、RとRは結合している炭素原子とともにアルキル基を有していてもよい炭素数4〜16の環式炭化水素基を形成する。ここで前記アルキル基、環式炭化水素基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシル基、または、炭素数1〜6のアルコールとエステル化されたカルボキシ基で置換されていてもよい。アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0028】
中でも、安定性、耐熱性、光学特性、低吸水性に優れる点で、RとRは、それぞれの結合している炭素原子とともにアルキル基を有していてもよいシクロヘキサン環、ショウノウ環、アダマンタン環、ノルボルナン環、ピナン環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環、テトラシクロドデカン環、トリシクロデカン環、デカヒドロナフタレン環等の環式炭化水素を形成していることが好ましい。RとRは結合している炭素原子とともに2つ以上の環式炭化水素基を形成することが、ドライエッチング耐性が高くなるため好ましい。前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては前記式(2a)〜(2j)が挙げられる。
【0029】
中でも、他の単量体との共重合性に優れ、耐熱性、安定性に特に優れる点から、RとRとが、それぞれの結合している炭素原子とともにショウノウ環、アダマンタン環、シクロヘキサン環を形成していること、すなわち、前記式(2a)、前記式(2b)および前記式(2j)で表される(メタ)アクリル酸エステルが、特に好ましい。
また、本発明の(メタ)アクリル酸エステルは、2つ以上の位置異性体、光学異性体を有する場合があるが、いずれかの異性体単独であってもよく、2つ以上の異性体の混合物であってもよい。
【0030】
2.本発明のβ−シアンヒドリン類縁体および(メタ)アクリル酸エステルの製造方法
前記式(1)で表される本発明のβ−シアンヒドリン類縁体は、前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルの原料となるために、Rは炭素数4〜16の環式炭化水素基を有する炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。あるいは、RとRは結合している炭素原子とともにアルキル基を有していてもよい炭素数4〜16の環式炭化水素基を形成する。ここで前記アルキル基、環式炭化水素基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシル基、または、炭素数1〜6のアルコールとエステル化されたカルボキシ基で置換されていてもよい。アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0031】
中でも、他の単量体との共重合性に優れる(メタ)アクリル酸エステルの原料となる点から、RとRとが、それぞれが結合している炭素原子とともに炭素数4〜16の環式炭化水素を形成することが好ましい。この例として、シクロヘキサン環、ショウノウ環、アダマンタン環、ノルボルナン環、ピナン環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環、テトラシクロドデカン環、トリシクロデカン環、デカヒドロナフタレン環を挙げられる。また、耐熱性、安定性に優れる(メタ)アクリル酸エステルの原料となる点から、RとRとが、それぞれが結合している炭素原子とともに2つ以上の環式炭化水素を形成することが好ましい。式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体の具体例としては、式(1a)〜(1j)が挙げられる。式(1)、式(1a)〜(1j)中のXは、シアノメチル化に用いる塩基のカウンターカチオンに由来し、安定性の面から水素原子が好ましく、反応性が高い面から、リチウム、ナトリウム、カリウム、臭化マグネシウムが好ましく、リチウムがより好ましい。
【0032】
また、式(1)、式(1a)〜(1j)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体としては、他の単量体との共重合性に優れ、耐熱性、安定性に特に優れる(メタ)アクリル酸エステルの原料となる点から、RとRとが、それぞれが結合している炭素原子とともにショウノウ環、アダマンタン環を形成していること、すなわち、前記式(1a)および前記式(1b)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体が、特に好ましい。
【0033】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルは、前記式(4)のカルボニル化合物を、シアノメチル化する工程と、シアノメチル化された化合物を(メタ)アクリル酸エステル化する工程とを含む製造方法によって製造される。
【0034】
前記式(4)で表されるカルボニル化合物の好ましい例としては、前記式(4a)〜(4j)が挙げられる。
ここで、前記のカルボニル化合物は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数2〜6のアシル基または炭素数1〜6のアルコールとエステル化されたカルボキシ基を有していてもよい。
【0035】
特に、前記式(1a)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体は、前記式(4a)で表されるカンファーを原料とすればよく、前記式(1b)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体は、前記式(4b)で表される2−アダマンタノンを原料とすればよい。
【0036】
前記式(4)のカルボニル化合物をシアノメチル化する反応条件は、特に限定されないが、一般に塩基性条件下でアセトニトリルを付加させることで行われる。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの金属水酸化物、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシドなどの金属アルコキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウムなどの金属水素化物、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミド、シアノメチルマグネシウムブロミドなどのグリニャール試薬などが挙げられ、取り扱いが容易であることから、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムエトキシド、水素化ナトリウムが好ましく、反応収率が良好であることから、n−ブチルリチウムが好ましい。
【0037】
シアノメチル化で使用する塩基の量としては、反応収率が高い点から、原料のカルボニル化合物に対して、0.1当量以上が好ましく、0.5当量以上がより好ましく、1当量以上がさらに好ましい。副反応抑制の観点から、10当量以下が好ましく、5当量以下が好ましく、2当量以下がさらに好ましい。
【0038】
シアノメチル化で使用する反応溶媒としては、特に限定されないが、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。また、これらの溶媒は、常法によりあらかじめ脱水しておくと高い反応収率が得られるため好ましい。また、反応剤のアセトニトリルを溶媒として用いることもできる。原料のカンファー、および2−アダマンタノン等の溶解性が高い点から、テトラヒドロフランが好ましく、取り扱いが容易であることから、反応剤のアセトニトリルを溶媒に用いることが好ましい。
【0039】
反応剤のアセトニトリルは、市販品を用いることができる。アセトニトリルの使用量は、特に限定されないが、反応収率が高い点から原料カルボニル化合物に対して、1当量以上が好ましく、1.1当量以上がより好ましく、1.2当量以上がさらに好ましい。
【0040】
反応温度は、特に限定されないが、用いる塩基によって適宜決めることが出来る。すなわち、n−ブチルリチウムなどの強い塩基を用いる場合には、副反応抑制の観点から0℃以下が好ましく、−30℃以下がより好ましい。また、反応速度が速くなる点で、−120℃以上が好ましく、−90℃以上がより好ましい。また、水酸化カリウムなどの比較的弱い塩基を用いる場合には、反応速度が速くなる点で、−40℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましい。また、副反応抑制の観点からは、40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。また、必要に応じて、反応温度を反応中に変化させてもよい。
【0041】
反応時間は、特に限定されないが、副反応抑制の点から、アセトニトリルを塩基性条件下にて、反応させた後に、原料のカルボニル化合物を添加することが好ましい。アセトニトリルを塩基性条件で反応させる時間は、反応収率が高くなる点から15分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。カルボニル化合物は、粉体のまま添加することもできるが、反応収率および取り扱いの容易さから、カルボニル化合物を溶媒に溶解し、滴下することが好ましい。カルボニル化合物を添加した後の反応時間は、反応収率の点から30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。
【0042】
また、反応系内は、窒素やアルゴンなどの不活性ガスで置換しておくと、副反応が抑制されるため、好ましい。
また、得られた前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体は、抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、再結晶など常法によって精製してもよいし、精製せずにそのまま(メタ)アクリル酸エステル化に供してもよい。前記式(1)においてXが水素原子であるβ−シアノヒドリンを単離精製する方法として、例えば、反応液に水あるいは酸およびアルカリの水溶液を加えることで反応を停止させ、有機溶剤で抽出した後、減圧蒸留、カラムクロマトグラフィー等の方法で精製することが挙げられる。前記式(1)においてXがアルカリ金属やマグネシウムハライドの状態で単離することは通常行われないが、反応液をろ過した後、ろ別した固体をヘキサン等の溶媒で洗浄することで単離することもできる。単離した前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体は、例えば赤外線吸収スペクトルの測定により同定することができる。前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体は、2000〜2500cm−1および3000〜3200cm−1に特徴的な吸収を示す。
【0043】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルは、前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体を(メタ)アクリル酸エステル化して得られる。このとき用いられる反応には、前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体と、
(イ)(メタ)アクリル酸メチルを始めとする低級(メタ)アクリル酸エステルと反応させるエステル交換反応、
(ロ)(メタ)アクリル酸ハライド、無水(メタ)アクリル酸と反応させるエステル化反応、
(ハ)(メタ)アクリル酸と反応させる縮合反応、
などがある。また、前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体を酢酸エステル、ギ酸エステルなど他のカルボン酸のエステルへと変換した後、(メタ)アクリル酸エステルとエステル交換反応を行い、本発明の(メタ)アクリル酸エステルとすることもできる。
【0044】
本発明の前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体を、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸ブロミドなどの(メタ)アクリル酸ハライド、および無水(メタ)アクリル酸などの酸無水物と反応させる際には、通常、塩基触媒が使用される。塩基触媒は生成する酸を中和するものであれば特に限定されないが、例えばトリエチルアミン、ピリジン、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。このときの反応温度は通常−80〜100℃である。
【0045】
本発明の前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体を、(メタ)アクリル酸と反応させる際には通常、縮合剤が使用される。縮合剤は一般的な脱水縮合剤であれば特に限定されないが、例えば、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、プロパンホスホン酸無水物等が挙げられ、この際には4−ジメチルアミノピリジンやトリエチルアミン等のアミン系塩基を併用してもよい。なお、このときの反応温度は通常−30〜100℃である。
【0046】
本発明の前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体を、(メタ)アクリル酸エステルとエステル交換する際には通常のエステル交換触媒が使用される。触媒は一般的なエステル交換反応用触媒であれば特に限定されないが、例えば、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラメトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン類、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどのジアルキル錫オキシド類などが挙げられる。なお、このときの反応温度は通常−30〜100℃である。
【0047】
また、(メタ)アクリル酸エステル化反応を行う際には、重合が起こる場合があるため、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤としては、重合を抑制するものであれば特に限定されないが、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、フェノチアジン、ブチルヒドロキシトルエンなどが挙げられる。また、空気あるいは酸素を吹き込みながら反応を行うことも重合抑制に有効である。
【0048】
また、得られた(メタ)アクリル酸エステルは、抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、再結晶など常法によって精製することが望ましい。
【0049】
3.本発明の重合体および製造方法
本発明の重合体は、前記式(3)で表される構成単位を含有する。
中でも、耐熱性、安定性に優れる点から、RとRとが、それぞれが結合している炭素原子とともに炭素数4〜16の環式炭化水素基を形成することが好ましい。また、本発明の重合体は、レジストとして使用した際にドライエッチング耐性に優れる点から、前記環式炭化水素は、ショウノウ環、アダマンタン環、ノルボルナン環、ピナン環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環、テトラシクロドデカン環、トリシクロデカン環、デカヒドロナフタレン環であることが好ましい。中でも、特に耐熱性、安定性に優れ、また、重合体をレジストとして使用した際は、ドライエッチング耐性に特に優れる点から、RとRとが、それぞれが結合している炭素原子とともにショウノウ環、アダマンタン環を形成すること、すなわち、前記式(3a)および前記式(3b)で表される重合体が、特に好ましい。
【0050】
また、本発明の重合体は、3級エステル構造を有する。3級エステル構造は、酸性条件において保護基が脱離する反応を起こす。この反応を利用して、光酸発生剤を併用した化学増幅型レジストにおいて、酸脱離性基として利用することができる。中性およびアルカリ性条件においては、このような脱離反応は起こらず、保護基の脂環式炭化水素構造による立体障害のため、加水分解が抑制され、安定して保存することができる。
【0051】
また、本発明の重合体は、3級エステルの4級炭素原子に、メチレン鎖を介した位置にシアノ基を有する。このような位置にシアノ基を有すると、シアノ基の高い電子求引性により、メチレン鎖上の水素原子の酸性度が高くなり、酸性条件において、このようなシアノ基を有しない3級エステルより脱離反応が起こりやすくなる。したがって、化学増幅型レジストとして用いた場合、より感度が高くなり、好適に用いることができる。また、シアノ基に起因する、耐熱性、光学特性、密着性などの諸性質も、成型材料、光学材料、レジストなどに用いた場合に好適である。
【0052】
本発明の重合体は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。また、本発明の重合体を、他の重合体と混合したブレンドポリマーとして用いてもよい。
【0053】
本発明の重合体を、共重合体として用いる場合には、本発明の(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合すればよい。他の単量体としては、目的に応じて任意の単量体が使用でき、共重合比も、目的に応じて適宜決めればよい。本発明の(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸i−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸i−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシ−n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸1−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸メチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸エチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−プロピル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸i−プロピル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−ブチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸i−ブチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸t−ブチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸メトキシメチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸エトキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−プロポキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸i−プロポキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−ブトキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸i−ブトキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸t−ブトキシエチル等の直鎖または分岐構造を持つ(メタ)アクリル酸エステル;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン、p−t−ブトキシカルボニルヒドロキシスチレン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシスチレン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシスチレン、p−t−ペルフルオロブチルスチレン、p−(2−ヒドロキシ−i−プロピル)スチレン等の芳香族アルケニル化合物;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびカルボン酸無水物;
エチレン、プロピレン、ノルボルネン、テトラフルオロエチレン、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、塩化ビニル、エチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0054】
また、本発明の重合体をレジスト材料として用いる場合には、本発明の(メタ)アクリル酸エステルと、下記式(16−1)〜(16−82)で表される(メタ)アクリル酸エステルとを共重合することが、感度、解像度、ドライエッチング耐性などレジスト性能が優れる点から好ましい。中でも、解像度に優れる点では、下記式(16−1)、(16−2)、(16−4)、(16−16)で表される単量体が好ましく、ドライエッチング耐性に優れる点では、下記式(16−22)、(16−28)、(16−32)、(16−36)、(16−40)、(16−47)、(16−48)、で表される単量体が好ましく、レジストパターン形状安定性に優れる点では、下記式(16−19)、(16−56)で表される単量体が好ましく、感度に優れる点では下記式(16−57)、(15−58)、(16−65)、(16−66)、(16−77)、(16−80)で表される単量体が好ましい。
【0055】
【化10】

【0056】
【化11】

【0057】
【化12】

【0058】
【化13】

【0059】
【化14】

また、以上に例示された単量体は、必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
本発明の重合体をレジスト組成物として用いる場合、重合体中の本発明の(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の比率は、レジストパターン形状が良好であることから、2〜50モル%が好ましく、5〜30モル%がより好ましい。中でも、感度、解像度、ドライエッチング耐性、ラインエッジラフネス、密着といった性能に優れる点から本発明の(メタ)アクリル酸エステルと、前記式(16−1)〜(16−18)、(16−57)、(16−58)、(16−65)、(16−66)、(16−77)、(16−80)で表される単量体からなる群から選ばれる少なくとも一種の単量体と、前記式(16−23)〜(16−56)、(16−59)〜(16−63)で表される単量体からなる群から選ばれる少なくとも一種の単量体とを共重合することが好ましい。中でも、本発明の(メタ)アクリル酸エステルを5〜30モル%、前記式(16−1)〜(16−18)、(16−57)、(16−58)、(16−65)、(16−66)、(16−77)、(16−80)で表される単量体からなる群から選ばれる少なくとも一種の単量体を30〜70モル%、前記式(16−23)〜(16−56)、(16−59)〜(16−63)で表される単量体からなる群から選ばれる少なくとも一種の単量体を30〜65モル%の割合で共重合した3〜4元系共重合体が特に好ましい。
【0061】
また、本発明の重合体において、各構成単位は任意のシーケンスを取り得る。したがって、本発明の重合体は、共重合体の場合、ランダム共重合体であっても、交互共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
また、本発明の重合体の質量平均分子量は特に限定されないが、1,000以上であることが好ましく、また、1,000,000以下であることが好ましい。本発明の重合体をレジスト材料として用いる場合には、重合体の質量平均分子量は、ドライエッチング耐性およびレジスト形状の点から、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることが特に好ましい。また、本発明のレジスト用重合体の質量平均分子量は、レジスト溶液に対する溶解性および解像度の点から、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、20,000以下であることが特に好ましい。
【0062】
また、本発明の重合体は、本発明の(メタ)アクリル酸エステルを重合することによって製造できる。重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合が挙げられる。また、分子量、分子量分布や立体規則性を制御する必要がある場合には、リビング重合に代表される、精密重合と呼ばれる重合方法を用いてもよい。
【0063】
一般に、重合体を得るための製造プロセスとしては、塊状重合プロセス、懸濁重合プロセス、乳化重合プロセス、気相重合プロセス、溶液重合プロセス等が存在する。これらの製造プロセスは、目的とする重合体の性質に応じて適宜決めればよい。例として、レジスト用共重合体を製造する場合を挙げると、光線透過率を低下させないために、重合反応終了後に残存する単量体を除去する必要があることと、共重合体の分子量を比較的低くする必要があること等から、前記プロセスの中でも、多くの場合、溶液重合プロセスが採用されている。さらに、溶液重合プロセスの中でも、製造バッチの違いによる平均分子量や分子量分布等の振れが小さく、再現性のある共重合体が簡便に得られることから、あらかじめ単量体、重合開始剤を有機溶剤に溶解させた単量体溶液を一定温度に保持した有機溶剤中に滴下する、いわゆる滴下重合法が、好適に用いられる。
【0064】
また、本発明の重合体は、通常、重合開始剤の存在下で、本発明の(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー組成物を重合して得られる。このような重合開始剤を使用する重合では、まず重合開始剤のラジカル体が反応溶液中に生じ、このラジカル体を起点として単量体の連鎖重合が進行する。
【0065】
本発明の重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。このような重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物;2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0066】
本発明の重合体を製造する際には、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤を使用することにより、低分子量の重合体を製造する場合に重合開始剤の使用量を少なくすることができ、また、得られる重合体の分子量分布を小さくすることができる。
【0067】
好適な連鎖移動剤としては、例えば、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メルカプトエタノール等が挙げられる。
【0068】
重合開始剤の使用量は特に限定されないが、通常、使用する単量体全量に対して1〜20モル%が好ましい。また、連鎖移動剤の使用量は特に限定されないが、通常、使用する単量体全量に対して1〜20モル%が好ましい。
重合温度は特に限定されないが、通常、50℃以上であることが好ましく、150℃以下であることが好ましい。
【0069】
滴下重合法において用いられる有機溶剤としては、用いる単量体、重合開始剤および得られる重合体、連鎖移動剤を併用する場合はその連鎖移動剤のいずれをも溶解できる溶剤が好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、1,4−ジオキサン、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン(以下「THF」とも言う。)、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMEA」とも言う。)、乳酸エチル等が挙げられる。
【0070】
溶液重合等の方法によって製造された重合体溶液は、必要に応じて、1,4−ジオキサン、アセトン、THF、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン、PGMEA、乳酸エチル等の良溶媒で適当な溶液粘度に希釈した後、メタノール、水等の多量の貧溶媒中に滴下して重合体を析出させることで精製してもよい。この工程は一般に再沈殿と呼ばれ、重合溶液中に残存する未反応の単量体や重合開始剤等を取り除くために非常に有効である。その析出物を濾別し、十分に乾燥して本発明の重合体を得る。また、濾別した後、乾燥せずに湿粉のまま使用することもできる。
【0071】
4.本発明の組成物および製造方法
本発明の組成物は、前記式(5)で表される化合物の含有量が5%以下であることを特徴とする、前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む組成物である。
前記式(5)で表される化合物は重合性を有する。そのため、前記式(5)で表される化合物の含有量が多い場合には、前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルの純度を下げるばかりでなく、重合体中に前記式(5)に由来する構成単位が導入され、重合体の耐熱性、安定性、光透過性等の性質、さらに、重合体を用いたレジスト組成物の感度、解像度、エッチング耐性、ラインエッジラフネス等の性質を損なうおそれがあり、好ましくない。従って、前記式(5)で表される(メタ)アクリル酸エステルを重合する際には、前記式(5)で表される化合物の含有量を十分下げる必要がある。前記式(5)で表される化合物の含有量は、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることがさらに好ましい。
【0072】
一方、前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルを合成する際に、前記式(5)で表される化合物の生成を完全に抑制することは困難である。この前記式(5)で表される化合物を0.01モル%以下にしようとすると、前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルの収率を低下させてしまうため好ましくない。そのため前記式(5)で表される化合物の含有量は好ましくは0.01モル%以上であり、より好ましくは0.1モル%以上である。
【0073】
本発明の前記式(5)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む組成物は、前記式(4)で表される化合物を、シアノメチル化することによって、前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体へと変換し、得られた式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体を(メタ)アクリル酸エステル化することによって製造される。
【0074】
前記式(5)で表される化合物は、一段階目のシアノメチル化、二段階目の(メタ)アクリル酸エステル化、いずれの反応においてもしばしば副生成物として生成する。この前記式(5)で表される化合物は、前述の通り重合体の性質を損なう場合があるため、除去する必要がある。前記式(5)で表される化合物を除去するために、前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む組成物を、蒸留などによって精製してもよい。しかし、蒸留操作では、前記式(5)で表される化合物と前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルの沸点の差が十分でないため分離が不十分であったり、前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルの収量を損なったりすることがある。そのため反応時において前記式(5)で表される化合物の生成を可能な限り抑制することが望ましい。
【0075】
前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体の(メタ)アクリル酸エステル化は、前記式(5)で表される化合物の生成を抑制するために、50℃以下で反応させることが好ましく、30℃以下がより好ましい。また、前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体中に、前記式(5)で表される化合物が含まれていると、(メタ)アクリル酸エステル化後もそのまま残存してしまうため、前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体中の前記式(5)で表される化合物の含有量を、5%以下に低減させておくことが好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0076】
前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体に含まれる前記式(5)で表される化合物は、蒸留などによって精製してもよい。しかし、蒸留操作では前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体と前記式(5)で表される化合物の沸点の差が十分でないため、分離が不十分であったり、前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体の収量を損なったりすることがある。そのため、反応時において前記式(5)で表される化合物の生成を可能な限り抑制することが望ましい。
【0077】
前記式(4)で表される化合物のシアノメチル化は、前記式(5)で表される化合物の生成を抑制するために、0℃以下で反応させることが好ましく、−40℃以下がより好ましい。また、前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む組成物を製造する際に、前記式(12)で表される化合物を、低温で、強い塩基を用いてシアノメチル化することで、前記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体へと変換し、これを単離することなく、(メタ)アクリル酸エステル化することが、前記式(5)で表される化合物の生成をより有効に抑制でき、工程が簡略化され、高い収率が達成できるため、さらに好ましい。
【0078】
【化15】

(式(12)中、Xは水素原子、またはアルカリ金属、マグネシウムハライドを表す。
、Rは、式(1)と同義である。)
【0079】
この際、用いられる溶媒は前記式(5)で表される化合物の生成を抑制できるため、THFが好ましく、式(1)中のXは、ナトリウム、リチウム、臭化マグネシウムが好ましく、リチウムが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル化剤としては、(メタ)アクリル酸ハライド、または無水(メタ)アクリル酸であることが、高い反応速度が得られ、また、前記式(5)で表される化合物の生成を抑制できるため、特に好ましい。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例、比較例において、(メタ)アクリル酸エステル、重合体の物性測定およびレジストの評価は以下の方法で行った。
【0081】
1H、13C−NMRの測定>
日本電子(株)製、GSX−400型FT−NMR(商品名)を用いて、約5質量%のレジスト用重合体試料の重水素化クロロホルム、重水素化アセトンあるいは重水素化ジメチルスルホキシドの溶液を直径5mmφの試験管に入れ、測定温度40℃、観測周波数400MHz、シングルパルスモードにて、1H−NMRの場合は16回、13C−NMRの場合は64回の積算で行った。
<質量分析>
J&W Scientific製キャピラリーカラム:DB−5(長さ30m、内径0.32mm)を装着したヒューレット・パッカード製、5890シリーズIIガスクロマトグラフを用いて質量分析を行った。カラム温度は、初期値50℃で5min保持した後、10℃/minで250℃まで昇温、その後250℃で5分保持した。電子衝撃法にてイオン化したイオンを四重極マスフィルターを用いて質量分析を行った。
【0082】
<ガスクロマトグラフィー>
J&W Scientific製キャピラリーカラム:DB−5(長さ30m、内径0.32mm)を装着したヒューレット・パッカード製、5890シリーズIIガスクロマトグラフを用いて分析を行った。カラム温度は、初期値50℃で5min保持した後、10℃/minで250℃まで昇温、その後250℃で5分保持した。検出にはFID検出器を用いた。
<レジスト用重合体の重量平均分子量>
約20mgの重合体を5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブランフィルターで濾過して試料溶液を調製し、この試料溶液を東ソー製ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。この測定は、分離カラムは昭和電工社製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列にしたものを用い、溶剤はTHF、流量1.0mL/min、検出器は示差屈折計、測定温度40℃、注入量0.1mLで、標準ポリマーとしてポリスチレンを使用して測定した。
【0083】
<レジスト用重合体の平均共重合組成比(モル%)>
1H−NMRの測定により求めた。この測定は、日本電子(株)製、GSX−400型FT−NMR(商品名)を用いて、約5質量%のレジスト用重合体試料の重水素化クロロホルム、重水素化アセトンあるいは重水素化ジメチルスルホキシドの溶液を直径5mmφの試験管に入れ、測定温度40℃、観測周波数400MHz、シングルパルスモードにて、64回の積算で行った。
<レジスト組成物の調製>
製造したレジスト用重合体100部と、光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフレート2部と、溶剤であるPGMEA700部とを混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブランフィルターで濾過し、レジスト組成物溶液を調製した。
【0084】
<レジストパターンの形成>
調製したレジスト組成物溶液をシリコンウエハー上にスピンコートし、ホットプレートを用いて120℃、60秒間プリベークを行い、膜厚0.4μmのレジスト膜を形成した。次いで、ArFエキシマレーザー露光機(波長:193nm)を使用して露光した後、ホットプレートを用いて120℃、60秒間露光後ベークを行った。次いで、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて室温で現像し、純水で洗浄し、乾燥してレジストパターンを形成した。
<感度>
ライン・アンド・スペース(L/S=1/1)を1/1の線幅に形成する露光量(mJ/cm2)を感度として測定した。
<解像度>
前記露光量で露光したときに解像されるレジストパターン最小寸法(μm)を解像度とした。
【0085】
<ラインエッジラフネス>
マスクにおける0.20μmのレジストパターンを再現する最小露光量により得られた0.20μmのレジストパターンの長手方向の側端5μmの範囲について、日本電子製、JSM−6340F型電界放射形走査型電子顕微鏡(商品名)により、パターン側端があるべき基準線からの距離を50ポイント測定し、標準偏差を求めて3σを算出した。この値が小さいほど良好な性能であることを示す。

<実施例1>前記式(2a)で表されるメタクリル酸エステル(以下、CM−2という)の合成
【0086】
【化16】

アルゴン雰囲気下、300mlのフラスコにTHFを32.0ml仕込み、系の温度を−75℃にして市販のn−ブチルリチウムのヘキサン溶液を32.0ml加えた。滴下中に温度が−65℃を超えないように滴下速度を調節した。ここに、アセトニトリル2.05gを反応液温度が−65℃を超えないようにゆっくり滴下した後、−70℃で1時間攪拌した。これに、カンファー7.6gをTHF50mlに溶解した溶液を、反応液温度が−65℃を超えないようにゆっくり滴下した後、0℃で2時間攪拌した。この反応液を−40℃に冷却し、メタクリロイルクロリド5.2gを反応液温度が−35℃を超えないようにゆっくり滴下した後、−40℃で2時間攪拌後、室温にて一晩放置した。この反応液を200mlの氷水中にゆっくり滴下し、ジエチルエーテル200mlで3回抽出した。
この抽出液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製したところ、5.9gのCM−2を得た。

<実施例2>前記式(2b)で表されるメタクリル酸エステル(以下、CM−3という)の合成
【0087】
【化17】

アルゴン雰囲気下、300mlのフラスコにTHFを32.0ml仕込み、系の温度を−75℃にして市販のn−ブチルリチウムのヘキサン溶液を32.0ml加えた。滴下中に温度が−65℃を超えないように滴下速度を調節した。ここに、アセトニトリル2.05gを反応液温度が−65℃を超えないようにゆっくり滴下した後、−70℃で1時間攪拌した。これに、2−アダマンタノン7.5gをTHF50mlに溶解した溶液を、反応液温度が−65℃を超えないようにゆっくり滴下した後、0℃で2時間攪拌した。以下の操作は実施例1と同様にして、6.5gのCM−3を得た。

<実施例3>下記式(3a)で表される重合体の合成
【0088】
【化18】

CM−2を2.0g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと言う。)0.2gをTHF8.0gに溶解し、窒素雰囲気下、攪拌しながら70℃で6時間加熱した。この溶液を1Lのメタノール中に滴下し、無色の沈殿を得た。これをろ過し、得られた粉末を、50℃の減圧乾燥機で24時間乾燥した。1.65gの前記式(3a)で表される重合体を得た。

<実施例4>式(3b)で表される重合体の合成
【0089】
【化19】

CM−3を2.0g、AIBN0.2gをTHF8.0gに溶解し、窒素雰囲気下、攪拌しながら70℃で6時間加熱した。この溶液を1Lのメタノール中に滴下し、無色の沈殿を得た。これをろ過し、得られた粉末を、50℃の減圧乾燥機で24時間乾燥した。1.72gの前記式(3b)で表される重合体を得た。

<実施例5>式(2j)で表されるメタクリル酸エステル(以下、CM−1という)と式(22)で表される化合物を含む組成物の製造
【0090】
【化20】

アルゴン雰囲気下、300mlのフラスコにTHFを32.0ml仕込み、系の温度を−75℃にして市販のn−ブチルリチウムのヘキサン溶液を32.0ml加えた。滴下中に温度が−65℃を超えないように滴下速度を調節した。ここに、アセトニトリル2.05gを反応液温度が−65℃を超えないようにゆっくり滴下した後、−70℃で1時間攪拌した。これに、シクロヘキサノン4.9gをTHF50mlに溶解した溶液を、反応液温度が−65℃を超えないようにゆっくり滴下した後、0℃で2時間攪拌した。この反応液を−40℃に冷却し、メタクリロイルクロリド5.2gを反応液温度が−35℃を超えないようにゆっくり滴下した後、−40℃で2時間攪拌後、室温にて一晩放置した。この反応液を200mlの氷水中にゆっくり滴下し、ジエチルエーテル200mlで3回抽出した。この抽出液を濃縮し、減圧蒸留にて精製したところ、CM−1を含む組成物5.2g得た。
この組成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、組成は、98.5モル%のCM−1、0.8モル%の下記式(22)で表される化合物、
【0091】
【化21】

および0.7モル%のシクロヘキサノンであった。

<実施例6>CM−1と式(22)で表される化合物を含む組成物の製造
500mlのフラスコにアセトニトリルを150ml仕込み、ここに、水酸化カリウムを42g加え、40℃で1時間攪拌した。ここに、シクロヘキサノン49gをアセトニトリル150mlに溶解した溶液を、反応液温度を40℃に保ったまま滴下した後、2時間攪拌した。この反応液を室温に冷却し、500mlの氷水中にゆっくり滴下し、ジエチルエーテル300mlで3回抽出した。この抽出液を濃縮し、減圧蒸留にて精製したところ、下記式(1k)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体を含む組成物27.4g得た。
【0092】
【化22】

この組成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、組成は、85.6モル%の前記式(1k)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体、11.4モル%の前記式(22)で表される化合物、および3.0モル%のシクロヘキサノンであった。
この組成物10gを、トルエン150mlに溶解し、トリエチルアミン14.5g加えた後、0℃に冷却した。この反応液にメタクリロイルクロリド15.0gを滴下した後、室温で2時間反応させた。この反応液を100mlの氷水中に滴下し、100mlの酢酸エチルで3回抽出した。得られた酢酸エチル溶液を濃縮し、減圧蒸留で精製したところ、M−3を含む組成物が7.6g得られた。この組成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、組成は、76.4モル%のCM−1、22.0モル%の前記式(22)で表される化合物、および1.6モル%のシクロヘキサノンであった。

<実施例7>共重合体A−1の合成
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA178.4部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。52.2部のCM−2、93.7部の前記式(16−1)でRがメチル基である2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン(以下、MAdMAという。)、
【0093】
【化23】

68.1部の前記式(16−24)でRがメチル基であるα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(以下、GBLMAという。)、
【0094】
【化24】

PGMEA321.0部およびAIBN16.4部を混合した単量体溶液を、滴下装置を用い、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。次いで、得られた反応溶液を約30倍量のメタノール中に攪拌しながら滴下し、無色の析出物の沈殿(共重合体A−1)を得た。沈殿物に残存する単量体を取り除くために、得られた沈殿を濾別し、重合に使用した単量体に対して約30倍量のメタノール中で沈殿を洗浄した。そして、この沈殿を濾別し、減圧下50℃で約40時間乾燥した。
得られた共重合体A−1の各物性を測定した結果を表1に示す。

<実施例8>共重合体A−2の合成
52.2部のCM−2が下記式(26)で表される化合物を7.6%含有するものを用いた以外は実施例7と同様にして共重合体A−2を得た。H−NMRから求めた共重合体A−2中の式(26)の化合物の含量は1.5質量%(1モル%)であった。
【0095】
【化25】

得られた共重合体A−2の各物性を測定した結果を表1に示す。

<実施例9>共重合体A−3の合成
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA178.1部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。51.9部のCM−3、MAdMA93.7部、GBLMA68.1部、PGMEA320.5部およびAIBN16.4部を混合した単量体溶液を、滴下装置を用い、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。その後の操作は実施例7と同様にして共重合体A−3を得た。
得られた共重合体A−3の各物性を測定した結果を表1に示す。

<実施例10>共重合体A−4の合成
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA169.4部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。実施例5と同様にして得られたCM−1を含む組成物41.5部、MAdMA93.7部、GBLMA68.1部、PGMEA304.9部およびAIBN16.4部を混合した単量体溶液を、滴下装置を用い、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。その後の操作は実施例7と同様にして共重合体A−4を得た。 得られた共重合体A−4の各物性を測定した結果を表1に示す。

<実施例11>共重合体A−5の合成
実施例5と同様にして得られたCM−1の代わりに実施例6と同様にして得られたCM−1を用いた以外は実施例10と同様にして共重合体A−5を得た。H−NMRから求めた共重合体A−5中の式(22)の化合物の含量は4.4質量%(3モル%)であった。
得られた共重合体A−5の各物性を測定した結果を表1に示す。

<実施例12>共重合体A−6の合成
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA190.6部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。130.6部のCM−2、98.1部の前記式(16−57)でRがメチル基であるメタクリル酸エステル(以下、EchMAという)、
【0096】
【化26】

PGMEA343.1部、およびAIBN16.4部を混合した単量体溶液を、滴下装置を用い、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。その後の操作は実施例7と同様にして共重合体A−6を得た。
得られた共重合体A−6の各物性を測定した結果を表1に示す。

<実施例13>共重合体A−7の合成
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下でPGMEA189.1部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。51.9
部のCM−3、36.5部の前記式(16−58)でRがメチル基であるメタクリル酸エステル(以下、MchMAという)、
【0097】
【化27】

下記式で表されるメタクリル酸エステル(以下、OTDMAという)94.5部、
【0098】
【化28】

前記式(16−22)でRがメチル基であるメタクリル酸エステル(以下、AdMAとい
う)44.1部、
【0099】
【化29】

PGMEA340.3部、およびAIBN16.4部を混合した単量体溶液を、滴下装置を用い、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。その後の操作は実施例7と同様にして共重合体A−7を得た。
得られた共重合体A−7の各物性を測定した結果を表1に示す。

<実施例14>共重合体A−8の合成
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA200.1部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。実施例5で得られたCM−1を含む組成物41.5部、前記式(16−16)でRがメチル基であるメタクリル酸エステル(以下、EDMAという)109.8部、
【0100】
【化30】

下記式で表されるメタクリル酸エステル(以下、NLMAという)88.9部、
【0101】
【化31】

PGMEA360.2部、およびAIBN16.4部を混合した単量体溶液を、滴下装置を用い、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。その後の操作は実施例7と同様にして共重合体A−8を得た。
得られた共重合体A−8の各物性を測定した結果を表1に示す。

<実施例15>共重合体A−9の合成
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA165.7部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。52.2部のM−1、68.1部のGBLMA、78.5部のEchMA、PGMEA298.2部、およびAIBN16.4部を混合した単量体溶液を、滴下装置を用い、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。その後の操作は実施例7と同様にして共重合体A−9を得た。
得られた共重合体A−9の各物性を測定した結果を表1に示す。

<実施例16>共重合体A−10の合成
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA221.1部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。52.2部のCM−2、下記式で表されるメタクリル酸エステル(以下、DOLAMAという)134.6部、
【0102】
【化32】

PGMEA398.1部、およびAIBN16.4部を混合した単量体溶液を、滴下装置を用い、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。その後の操作は実施例7と同様にして共重合体A−10を得た。
得られた共重合体A−10の各物性を測定した結果を表1に示す。

<実施例17>式(35)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体の合成
【0103】
【化33】

アルゴン雰囲気下、300mlのフラスコにTHFを32.0ml仕込み、系の温度を−75℃にして市販のn−ブチルリチウムのヘキサン溶液を32.0ml加えた。滴下中に温度が−65℃を超えないように滴下速度を調節した。ここに、アセトニトリル2.05gを反応液温度が−65℃を超えないようにゆっくり滴下した後、−70℃で1時間攪拌した。これに、シクロヘキサノン4.9gをTHF50mlに溶解した溶液を、反応液温度が−65℃を超えないようにゆっくり滴下した後、0℃で2時間攪拌した。この反応液をろ過し、ろ別した固体を0℃に冷却したヘキサンで洗浄した後、乾燥したところ、白色の固体が3.2g得られた。この固体の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、2250cm−1および、3200cm−1に吸収が見られ、式(35)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体であることが確認された。

<実施例18>共重合体A−11の合成
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA202.0部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。51.9部のCM−2、下記式で表されるメタクリル酸エステル(以下、MPNMAという)122.4部、
【0104】
【化34】

PGMEA363.6部、およびAIBN16.4部を混合した単量体溶液を、滴下装置を用い、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。その後の操作は実施例7と同様にして共重合体A−11を得た。
得られた共重合体A−11の各物性を測定した結果を表1に示す。

<比較例1>共重合体B−1の合成
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA174.1部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。下記式(34)で表されるメタクリル酸エステル(以下、M−1という)47.1部、
【0105】
【化35】

MAdMA93.7部、GBLMA68.1部、PGMEA313.3部およびAIBN16.4部を混合した単量体溶液を、滴下装置を用い、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。その後の操作は実施例7と同様にして共重合体B−1を得た。
得られた共重合体B−1の各物性を測定した結果を表1に示す。
【0106】
【表1】

本発明によれば、新規な(メタ)アクリル酸エステルおよびその重合体を得ることができる(実施例1〜18)。
本発明の重合体を用いたレジスト組成物(実施例7〜18)は、十分な感度および解像度を備えた上に、ドライエッチング耐性に優れていた。また、ラインエッジラフネスの点でも優れていた。一方、比較例1の重合体を用いたレジスト組成物は、解像度、エッチング速度、ラインエッジラフネスの点において劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の重合体は、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂として有用である。特に、本発明の重合体を、DUVエキシマレーザーリソグラフィーあるいは電子線リソグラフィー等においてレジスト樹脂として用いた場合に、高感度、高解像度であり、ドライエッチング耐性、ラインエッジラフネスに優れているため、高精度の微細なレジストパターンを安定して形成することができる。そのため、本発明の重合体を用いたレジスト組成物は、DUVエキシマレーザーリソグラフィーあるいは電子線リソグラフィー、特にArFエキシマレーザー(波長:193nm)を使用するリソグラフィーに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるβ−シアンヒドリン類縁体。
【化1】

(式(1)中、Xは水素原子、アルカリ金属、またはマグネシウムハライドを表す。Rはアルキル基を有していてもよい炭素数4〜16の環式炭化水素基を有する炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。あるいは、RとRは結合している炭素原子とともにアルキル基を有していてもよい炭素数4〜16の環式炭化水素基を形成する。ここで前記アルキル基、環式炭化水素基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシル基、または、炭素数1〜6のアルコールとエステル化されたカルボキシ基で置換されていてもよい。アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。)
【請求項2】
、Rが結合している炭素原子とともにアルキル基を有していてもよい2つ以上の環式炭化水素を形成する請求項1記載のβ−シアンヒドリン類縁体。
【請求項3】
前記式(1)が下記式(1a)〜(1j)のいずれかである請求項1記載のβ−シアンヒドリン類縁体。
【化2】

(Xは水素原子、アルカリ金属、またはマグネシウムハライドを表す。X'はアルカリ金属、またはマグネシウムハライドを表す。)
【請求項4】
下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル。
【化3】

(式(2)中、Rは、水素原子、またはメチル基を表わす。R、Rは、式(1)と同義である。)
【請求項5】
、Rが結合している炭素原子とともにアルキル基を有していもよい2つ以上の環式炭化水素を形成する請求項4記載の(メタ)アクリル酸エステル。
【請求項6】
前記式(2)が下記式(2a)〜(2j)のいずれかである請求項4記載の(メタ)アクリル酸エステル。
【化4】

(式中(2a)〜(2j)中、Rは水素原子、またはメチル基を表す。)
【請求項7】
下記式(3)で表される構成単位を含有する重合体。
【化5】

(式(3)中、R、R、Rは、式(2)と同義である。)
【請求項8】
、Rが2つ以上の環式炭化水素を形成する請求項7記載の重合体。
【請求項9】
前記式(3)が下記式(3a)〜(3j)のいずれかである請求項7記載の重合体。
【化6】

(式(3a)〜(3j)中、Rは水素原子、またはメチル基を表す。)
【請求項10】
下記式(4)で表されるカルボニル化合物のカルボニル炭素をシアノメチル化する工程と、シアノメチル化された化合物を(メタ)アクリル酸エステル化する工程とを含む請求項4〜6のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【化7】

(式(4)中、R、Rは、式(1)と同義である。)
【請求項11】
(メタ)アクリル酸エステル化工程が50℃以下で行われる請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
カルボニル化合物が下記式(4a)〜(4j)のいずれかである請求項10または11に記載の製造方法。
【化8】

【請求項13】
請求項1〜3のいずれかに記載のβ−シアンヒドリン類縁体を(メタ)アクリル酸エステル化する工程を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項14】
下記式(5)で表される化合物の含有量が5質量%以下である、前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む組成物。
【化9】

(式(5)中、R、Rは、式(1)と同義である。)
【請求項15】
式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルが、式(2a)〜(2j)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−137163(P2011−137163A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23175(P2011−23175)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2004−314525(P2004−314525)の分割
【原出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】