説明

(メタ)アクリル酸生成物流からのプロピオン酸の選択的減少のための改良された方法

【課題】本発明の目的は、酸化条件下で、AA流からのPA減少において使用するための改良された触媒を提供することである。結果として、予想外に、AA流からPA減少における殆どの選択的触媒が、プロパン酸化からAA及びPAを製造するために使用される混合金属酸化物(MMO)と同じであることが見出された。従って、本発明の目的は、高純度AAモノマーを製造する際に使用するためのPA減少触媒を提供することである。
【解決手段】本発明は、アクリル酸(以下、「AA」)流からの、プロピオン酸(以下、「PA」)不純物の選択的減少のための改良方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸(以下、「AA」と記す)流からの、プロピオン酸(以下、「PA」と記す)不純物の選択的減少のための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和カルボン酸の一例である(メタ)アクリル酸(AA)は、広範囲の種々の用途において使用されている。典型的な最終使用用途には、アクリル系プラスチックシート、成形樹脂、ポリ塩化ビニル変性剤、加工助剤、アクリル系ラッカー、床磨き剤、シーラント、自動変速機用油、クランクケース油変性剤、自動車用塗料、イオン交換樹脂、セメント変性剤、水処理ポリマー、電子接着剤(electronic adhesives)、金属塗料及びアクリル繊維が含まれる。
【0003】
アクリル酸モノマー中の不純物であるプロピオン酸(PA)は、アクリル酸製品の製品品質に影響を与え得る望ましくない揮発性有機化合物である。従って、プロピレンの二工程部分酸化を使用する現在の商業的AAプロセスは、典型的な仕様書レベルである1,000ppmよりも低いPA濃度をもたらす。しかしながら、プロパンの部分酸化によって製造されたAAは、重量基準で3,000〜30,000ppmのPAを含有するこtができる。PAのこれらの濃度は、それらをAAから除去することができなかった場合には、重大な製品品質問題を引き起こす。
【0004】
本明細書中に使用されるとき、他の用語、例えば、アクリレートが続く用語「(メタ)」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を指す。例えば、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを指し、用語「(メタ)アクリル系」は、アクリル系又はメタクリル系を指し、用語「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を指す。
【0005】
AAからのPAの精製は、AA製造での、技術的難題及び潜在的経済的負担の両方を示す。AAとPAとは、それらの殆ど同一の沸点のために、一般的な蒸留によって分離することができない。更に、一般的な溶媒、例えば、酢酸イソプロピル、トルエン又はジフェニルエーテルを使用するAAからのPAの抽出も、それらの溶解度における類似性のために成功しない。
【0006】
現在、AAからPAを有効に分離するために利用されている唯一の商業的な技術は、米国特許第5504247号明細書に記載されているような溶融結晶化(melt crystallization)である。しかしながら、この技術は、PA含有量を1000ppmよりも低い仕様にまで下げるために、より高い初期設備投資を必要とする。更に、溶融物結晶化装置の運転は、多量のエネルギーを消費する。プロパン酸化は、この分野における急速な触媒開発のために、AAへの経済的に魅力のある経路になるので、PA除去のための低コストで有効な技術が必要とされている。
【0007】
AA流からPAを選択的に除去するためのポストステージ(post stage)反応器を含む種々の方法が開示されている。都合の悪いことに、AAは、PAの除去と共に実質的に酸化される。例えば、特開2000−053611号公報には、最大8.6%までのAA収率低下を伴う、MoFeCoOを含有する触媒上で、337ppmから115ppmにPAを低下させる方法が記載されている。
【特許文献1】米国特許第5504247号明細書
【特許文献2】特開2000−053611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、酸化条件下で、AA流からのPA減少において使用するための改良された触媒を提供することである。結果として、予想外に、AA流からPA減少における殆どの選択的触媒が、プロパン酸化からAA及びPAを製造するために使用される混合金属酸化物(MMO)と同じであることが見出された。従って、本発明の目的は、高純度AAモノマーを製造する際に使用するためのPA減少触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アクリル酸流からのプロピオン酸の選択的除去方法であって、プロピオン酸減少混合金属酸化物触媒の存在下でアクリル酸流を反応させることを含み、前記混合金属酸化物触媒が、下記実験式を含む混合金属酸化物を含む方法を提供する:
AaMbNcXdZeOf
(式中、Aは、Mo及びWからなる群から選択された少なくとも1種の元素であり、Mは、V及びCeからなる群から選択された少なくとも1種の元素であり、Nは、Te、Sb及びSeからなる群から選択された少なくとも1種の元素であり、Xは、Nb、Ta、Ti、Al、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pt、Sb、Bi、B、In、As、Ge、Sn、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Hf、Pb、P、Pm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素であり、Zは、Zn、Ga、Ir、Sm、Pd、Au、Ag、Cu、Sc、Y、Pr、Nd及びTbからなる群から選択された少なくとも1種の元素であり、及びOは、酸化物形態の酸素であり、並びにba=1であるとき、b=0.01〜1.0、c=0.01〜1.0、d=0.01〜1.0、e=0〜0.1であり、fは、他の元素の酸化状態に依存する。)。
【0010】
好ましくは、本発明の混合金属酸化物は、式MoTeNb及びWTeNb(式中、a、m、n、x及びoは、前記定義された通りである)を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のAAは、当業者により周知の如何なる従来技術によっても製造することができる。更に、如何なる従来の原材料供給物も、AA生成物流が、幾らかの量のPA不純物を含有する限り、AAを製造するために使用することができる。特に、AA生成物流は、1000、500又は100ppmよりも多いPA不純物を含有する。本発明においてAAを製造するために使用することができる原材料の例には、これらに限定されないが、官能化された及び多官能化された炭化水素、例えば、アルデヒド、アルコール、ジオールなど、プロパン以外の低級アルカン及びアルケン、例えば、プロピレン、バイオマス並びに他の非石油系原料の炭化水素が含まれる。特に、このAA生成物流は、プロパン又はプロピレン酸化プロセスの生成物流であってよい。このAA生成物流は、一段階又は多段階酸化プロセスの生成物流であってよい。
【0012】
混合金属酸化物触媒は、形成されたAAと反応して、PAを選択的に減少する。PA減少混合金属酸化物触媒は、プロパン酸化触媒と一緒に同じプロパン酸化反応器内に、又は別個のPA減少仕上げ反応器内に入れることができる。この仕上げ工程は、仕上げ工程の前の酸生成物の分離を伴って又はこの分離無しに実施することができる。例えば、プロパンが、AAを製造するための酸化反応における主原材料である場合に、プロパン酸化反応器から出る流れを、酸生成物の分離無しに、別個のPA減少反応器に直接供給することができる。
【0013】
PA減少混合金属酸化物触媒とAAとの反応は、325℃よりも低い温度で、0.1〜6秒の滞留時間で運転する。あるいは、運転又は反応温度は300℃又は275℃よりも低く、および滞留時間は0.1〜3秒である。
【0014】
反対に、PA減少触媒を、プロパン酸化触媒と一緒に同じ反応器内に入れることもできる。PA減少触媒を、プロパン酸化触媒の下流に入れることが好ましい。また、反応器が、温度制御の異なった帯域を有し、そしてPA減少を、プロパン酸化帯域とは異なった温度で運転できることも好ましい。
【0015】
更に、プロパン酸化反応器からの生成物流中の酸素濃度が非常に低い場合に、PA減少反応器の中に酸素を注入することができる。
【0016】
PA減少反応は、蒸気相以外に液相ですることができる。複数のAA流を、PA減少のために一緒に組み合わせることができる。この組合せは、それが運転者/所有者の設備投資を下げるので有利である。更に、PA減少反応を、公知の分離方法、例えば、蒸留及び溶融結晶化と組み合わせて、AA製品を、所望のグレード仕様にまで更に精製することができる。
【0017】
本発明のPA減少は、任意に、プロピレン生成工程及び下流のAA分離プロセスを含む統合AA製造プロセスの一部として行うことができる。
【0018】
本発明の混合金属酸化物は、当業者に一般的に知られているプロセスによって調製することができる。プロセスの非限定的な一例を、本明細書に開示する。
【0019】
第一工程において、金属化合物(好ましくは、それらの少なくとも1種は、酸素を含有する)と少なくとも1種の溶媒とを、スラリー又は溶液を形成するために適切な量で混合することによって、混合物を形成する。好ましくは、溶液が、触媒調製のこの段階で形成される。一般的に、金属化合物は、前記定義された通りの構成元素、A、M、N、O及びXを含有する。
【0020】
好適な溶媒には、これらに限定されないが、水、メタノール、エタノール、プロパノール及びジオールなどを含む水溶液及びアルコール並びに当該技術分野で公知の他の極性溶媒が含まれる。典型的には、水が好ましい。水は、限定無しに、蒸留水及び脱イオン水をはじめとする、化学合成において使用するために好適な任意の水である。存在する水の体積は、好ましくは、調製工程の間の組成及び/又は相の分離を回避する又は最小にするために十分に長く、構成元素を溶液中に実質的に保持するために十分な体積である。従って、水の体積は、組み合わせる材料の量及び溶解度に従って変化する。しかしながら、前記のように、水の体積は、好ましくは、混合の時点で水溶液が確実に形成されるために十分な体積である。
【0021】
例えば、式MoTeNbの混合金属酸化物を調製するとき、テルル酸の水溶液と、シュウ酸ニオブの水溶液と、パラモリブデン酸アンモニウムの混合物とを、逐次的に、予定した量のメタバナジン酸アンモニウムを含有する水溶液に添加して、それぞれの金属元素の原子比が指定された比率になるようにする。
【0022】
混合物が形成されると、当該技術分野で公知である任意の好適なプロセスによって水を除去して、触媒前駆体を形成する。このようなプロセスには、これらに制限されないが、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、回転蒸発及び空気乾燥が含まれる。真空乾燥は、一般的に、1.3kPa〜66.6kPaの範囲内の圧力で実施される。凍結乾燥は、典型的に、例えば、液体窒素を使用してスラリー又は溶液を凍結すること及び凍結したスラリー又は溶液を真空下で乾燥することを伴う。噴霧乾燥は、一般的に、不活性雰囲気、例えば、窒素又はアルゴン下で、125℃〜200℃の範囲内の入口温度及び75℃〜150℃の範囲内の出口温度で実施される。回転蒸発は、一般的に、25℃〜90℃の浴温度かつ1.3kPa〜101.3kPaの圧力で、好ましくは40℃〜90℃の浴温度かつ1.3kPa〜46.7kPaの圧力で、更に好ましくは40℃〜60℃の浴温度かつ1.3kPa〜5.3kPaの圧力で実施される。空気乾燥は、25℃〜90℃の範囲内の温度で実施される。回転蒸発及び空気乾燥が、典型的に好ましい乾燥プロセスである。
【0023】
得られた時点で、この混合金属酸化物触媒前駆体は焼成される。この焼成は、酸化雰囲気中で実施することができるが、非酸化雰囲気中、例えば、不活性雰囲気中又は真空中で焼成を実施することも可能である。不活性雰囲気は、実質的に不活性である任意の物質、即ち、混合金属酸化物触媒前駆体と反応しないか又は相互作用しない任意の物質であってもよい。好適な例には、これらに限定されないが、窒素、アルゴン、キセノン、ヘリウム又はこれらの混合物が含まれる。不活性雰囲気は、触媒前駆体の表面の上を流れてもよいし流れなくてもよい。不活性雰囲気が触媒の表面の上を流れないとき、これは静的環境と呼ばれる。不活性雰囲気が混合金属酸化物触媒前駆体の表面の上を流れるとき、その流速を広範囲に亘って変えることができ、例えば、1〜500時−1の空間速度(space velocity)で変えることができる。
【0024】
焼成は、通常、350℃〜850℃、好ましくは400℃〜700℃、更に好ましくは500℃〜640℃の温度で実施される。この焼成は、前記の触媒を形成するのに適した長さの時間で実施される。典型的に、この焼成は、所望の混合金属酸化物触媒を得るために、0.5〜30時間、好ましくは1〜25時間、更に好ましくは1〜15時間実施される。
【0025】
運転の好ましいモードにおいて、混合金属酸化物触媒前駆体は、2段階で焼成される。第一段階において、触媒前駆体は、酸化雰囲気(例えば、空気)中で、200℃〜400℃、好ましくは275℃〜325℃の温度で、15分間〜8時間、好ましくは1〜3時間焼成される。第二段階において、第一段階からの材料は、非酸化環境(例えば、不活性雰囲気)中で、500℃〜750℃、好ましくは550℃〜650℃の温度で、15分間〜8時間、好ましくは1〜3時間焼成される。任意に、還元ガス、例えば、アンモニア又は水素を、第二段階焼成の過程において添加することができる。
【0026】
本発明の一つの実施形態において、第一段階における触媒前駆体を、室温で所望の酸化雰囲気中に置き、次いで、第一段階焼成温度まで上昇させ、そこに所望の第一段階焼成時間の間保持する。次いで、雰囲気を、第二段階焼成のための所望の非酸化雰囲気で入れ替え、温度を所望の第二段階焼成温度まで上昇させ、そこに所望の第二段階焼成時間の間保持する。
【0027】
この焼成の間に、任意の形式の焼成機構(例えば炉)を使用することができるが、指定されたガス環境の流動下で焼成を実施することが好ましい。従って、固体触媒前駆体粒子の床を通過する所望のガス(群)の連続流を有する床内で焼成を実施することが有利である。
【0028】
焼成によって、式A(式中、A、M、N、X、O、a、m、n、x及びoは、前記定義された通りである)を有する触媒が形成される。
【0029】
上記混合金属酸化物触媒のための出発材料は、前記のものに限定されない。例えば、酸化物、硝酸塩、ハロゲン化物又はオキシハロゲン化物、アルコキシド、アセチルアセトナート及び有機金属化合物を含む広範囲の材料を使用することができる。例えば、触媒中のモリブデン源のために、七モリブデン酸アンモニウムを使用することができる。しかしながら、MoO、MoO、MoCl、MoOCl、Mo(OC、モリブデンアセチルアセトナート、リンモリブデン酸及びケイモリブデン酸等の化合物を、七モリブデン酸アンモニウムの代わりに使用することもできる。同様に、触媒中のバナジウム源のために、メタバナジン酸アンモニウムを使用することができる。しかしながら、V、V、VOCl、VCl、VO(OC、バナジウムアセチルアセトナート及びバナジルアセチルアセトナート等の化合物を、メタバナジン酸アンモニウムの代わりに使用することもできる。テルル源には、テルル酸、TeCl、Te(OC、Te(OCH(CH及びTeOが含まれ得る。ニオブ源には、シュウ酸ニオブアンモニウム(ammonium niobium oxalate)、Nb、NbCl、ニオブ酸又はNb(OC及び更に一般的なシュウ酸ニオブが含まれ得る。
【0030】
このようにして得られた混合金属酸化物は、優れた触媒活性を示す。しかしながら、同じ混合金属酸化物を、粉砕によって、改良された触媒性能を有する触媒に転換させることができる。
【0031】
粉砕は、当業者に周知である任意の一般的な手段によっても実施することができる。乾式及び湿式粉砕プロセスを使用することができる。乾式粉砕の場合に、粗い粒子を、高速度ガス流中でお互いと衝突させる、ガス流粉砕機を使用することができる。更に、粉砕は、機械的にのみならず、小規模運転の場合に、乳鉢などを使用することによっても実施することができる。湿式粉砕の場合に、粉砕を、上記の混合金属酸化物に水又は有機溶媒を添加することによって、湿潤状態で実施する。回転シリンダー型媒体ミル又は媒体−撹拌型ミルを使用する一般的なプロセスを使用することができる。回転シリンダー型媒体ミルは、粉砕すべき対象物のための容器が回転する形式の湿式ミルであり、それには、例えば、ボールミル及びロッドミルが含まれる。媒体−撹拌型ミルは、容器内に含まれている粉砕すべき対象物が、撹拌装置によって撹拌される形式の湿式ミルであり、それには、例えば、回転スクリュー型ミル及び回転円盤型ミルが含まれる。
【0032】
粉砕のための条件は、前記の混合金属酸化物の性質、湿式粉砕の場合に使用する溶媒の粘度、濃度など又は粉砕装置の最適条件に適合するように、適切に設定することができる。しかしながら、粉砕を、粉砕された触媒前駆体の平均粒子サイズが、20μm以下、更に好ましくは5μm以下になるまで実施することが好ましい。前記のように、粉砕によって、混合金属酸化物触媒の触媒活性が改良される。
【0033】
混合金属酸化物触媒の触媒活性は、粉砕された触媒前駆体に溶媒を添加して溶液又はスラリーを形成し、続いて再び乾燥することによって、更に改良することができる。溶液又はスラリーの濃度に関して特別の制限は存在せず、粉砕された触媒前駆体のための出発材料化合物の全量が、10〜60重量%であるように、溶液又はスラリーを調節することが、一般的な実施である。次いで、この溶液又はスラリーを、噴霧乾燥、凍結乾燥、乾固までの蒸発又は真空乾燥のようなプロセス、好ましくは噴霧乾燥によって乾燥する。
【0034】
更に、得られた混合金属酸化物触媒に、これらに限定されないが、Te及びNbをはじめとする種々の元素を含浸させ、その性能を更に改良するために再焼成することができる。
【0035】
粉砕した触媒を、或る種の有機又は無機酸、例えば、メタノール又は水溶液中のシュウ酸と、上昇した温度、例えば、40℃〜100℃で接触させることによっても、触媒活性が改良される。
【0036】
上記のプロセスによって得られた混合金属酸化物触媒は、「そのままで」最終触媒として使用することができ、又はこれを200℃〜700℃の範囲内の温度で、0.1〜10時間の間の時間、熱処理に付してもよい。
【0037】
このようにして得られた混合金属酸化物触媒を、それ自体固体触媒として使用することができるが、適切な担体、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、アルミノケイ酸塩、珪藻土又はジルコニアと一緒に、触媒に形成することができる。更に、反応器の規模又はシステムに依存して、適切な形状及び粒子サイズに成形することができる。
【0038】
その代わりに、現在意図される混合金属酸化物触媒組成物の金属成分を、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア及びチタニア等の材料の上に、一般的な初期湿潤技術によって担持させることができる。一つのプロセスにおいて、金属を含有する溶液を、担体が濡れるように乾燥担体と接触させ、得られる濡れた材料を、例えば、20℃〜200℃の温度で乾燥し、続いて前記のように焼成する。他のプロセスにおいて、金属溶液を担体と、典型的に3:1よりも大きい金属溶液対担体の体積比で接触させ、溶液を撹拌して、金属イオンが担体上でイオン交換されるようにする。次いで、金属含有担体を、前記詳述したように、乾燥し、焼成する。
【0039】
本発明を、下記の実施例及び比較例(これらは、本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない)を参照して、更に詳細に説明する。
【実施例】
【0040】
触媒の調製
式:
Mo0.285Te0.21Nb0.164Pd0.01
(式中、xは、MMO中の他の金属の原子価によって決定される)
によって表される混合酸化物触媒の調製は、下記のようにして行った。
1.前もって計算した量の、Mo、V及びTeの塩を、2リットルの丸底フラスコ内の70℃の200gのDI水中に溶解して、橙色溶液を得た。
2.前もって計算した量の、Nb、Pd及びシュウ酸の塩を、250mLのビーカー内の室温の180gのDI水中に溶解した。
3.濃硝酸を、MoVTe溶液に70℃で撹拌しながら添加した。色が、赤橙色に濃くなった。
4.Nb溶液を、MoVTe溶液に添加して、橙色のゲルを得た。
5.水を除去して、固体を作った。
6.この固体を、真空オーブン内で一晩室温で乾燥した。
7.橙色固体をフラスコから取り出して、混合金属酸化物前駆体を得た。
8.この混合金属酸化物前駆体を、管型炉内で、下記のようにして焼成した。
空気中で10℃/分で275℃まで加熱し、この温度で30分間保持し、アルゴン雰囲気に切り替え、2℃/分で615℃まで加熱し、120分間浸した。
9.焼成した固体材料を破壊し、10メッシュの篩に通して篩い分けした。
10.これらの粒子を、最初に、水中で室温で5時間撹拌し、次いで乾燥した。工程10は、触媒性能を犠牲にすることなく、続く含浸工程11と組み合わせて実施することができる。
11.次いで、水処理した触媒に、テルル酸及びシュウ酸アンモニウムニオブを含有する水溶液を含浸させた。水を除去した。
12.乾燥した材料を焼成して、テルル酸及びシュウ酸アンモニウムニオブを、対応する酸化物に転化させた。この焼成は、最初に空気中で300℃で3時間、次いでアルゴン中で500℃で2時間実施した。
13.再焼成した材料を、冷凍機/ミルで粉砕した。
14.粉砕した材料を、水中のシュウ酸で100℃で30分間〜5時間抽出した。固体材料を濾過によって回収し、真空オーブン内で一晩乾燥した。
15.この材料をプレスし、反応器評価のために14〜20メッシュ顆粒に篩い分けした。
【0041】
比較触媒1:リン酸鉄(FePO)の調製
リン酸鉄触媒は、幾つかの酸化的脱水素反応、例えば、イソ酪酸の酸化的脱水素によるメタクリル酸の生成(Applied Catalysis A:General,109,135−146,1994)及び乳酸からのピルビン酸の生成(Applied Catalysis A:General,234,235−243,2002)に対し、独特の選択率を示す。リン酸鉄は、下記に示すように、文献記載の手順(Applied Catalysis A:General,234,235−243,2002)に従って調製した。
1.Fe(OH)ゲル調製:14重量%のNHOH溶液(約90g)を、48.8gのFe(NO3.9O及び2000ccのHOを含有する溶液に、攪拌下で室温で滴下により添加した。
2.水をデカンテーションによって除去し、次いで、16.6gの85%HPOを沈殿に添加した。
3.HPO/Fe(OH)混合物をフラスコに移し、3〜5時間沸騰させて、僅かに褐色を帯びた白色沈殿を得た。
4.この沈殿を濾過し、水で洗浄して、過剰のHPOを除去した。
5.フィルターケークを、オーブン内で120℃で一晩乾燥した。
6.乾燥したケークを、粉砕し、ペレットにプレスした。
7.ペレットを、流れる空気中で、400℃で8時間、2℃/分の昇温速度で焼成し、次いでペレットを14〜20メッシュに破砕した。
【0042】
比較触媒2:CsMo121.545.8の調製
触媒CsMo121.545.8を、触媒CsMo121.545.8が、メタクリル酸へのイソ酪酸の酸化的脱水素において良好な選択率を示した米国特許第4370490号明細書に従って調製した。下記のものは、触媒調製の詳細な手順である。
1.溶液「A」:2.88gの85%HPO+25mLのHOを調製した。
2.溶液「B」:26.8gの28%NHOH+48.3mLのHO+26.5gの(NHMo24・4HOを調製した。
3.溶液「A」を溶液「B」に攪拌下で添加して、混合物「AB」 を生じさせた。
4.溶液「C」:4.85gのCsNO+50mLのHOを調製した。
5.混合物「AB」 を、溶液「C」 に攪拌下で添加して、新しい混合物「ABC」を生じさせた。
6.溶液「D」:2.2gのNHVO+35mLのHO中の10%モノエタノールアミンを調製した。
7.溶液「D」を混合物「ABC」に添加した。新しい混合物を、「ABCD」 と呼んだ。
8.10.21gの珪藻土及びデグッサ・ケミカルス社(DeGussa Chemicals)から得られた2.05gのAerosil(登録商標)200を、触媒担体として混合物「ABCD」 に添加した。
9.担持された触媒「ABCD/SiO」 を、ホットプレート上、攪拌下で1時間、50℃で乾燥し、次いで、真空下で回転蒸発を使用して乾燥した。
10.乾燥した「ABCD/SiO」を、ボックス炉内で110℃で7時間、次いで300℃で3時間焼成した。昇温速度は5℃/分であった。
11.工程「10」 からの焼成した硬い塊を、試験のために14〜20メッシュに篩い分けした。
【0043】
最終触媒は、式「CsMo121.545.8/SiO」 を有した。
【0044】
比較触媒3:Mo121.2Cu1.2Sb0.5の調製
触媒組成物3についての式は、Mo121.2Cu1.2Sb0.5であり、アクロレインをAAに転化するプロセスで使用される材料である。この触媒を、米国特許第5,959,143号明細書に記載されている手順に従って調製した。最終触媒を、試験の前に14〜20メッシュに破砕した。
1.溶液「E」を調製した。下記の化学品(a〜e)を、下記の順序で、1000ccの回転蒸発フラスコに添加した。
a)300mLの約85℃に加熱したH
b)7.67gのメタタングステン酸アンモニウム
c)9.11gのNHVO
d)55gのヘプタモリブデン酸アンモニウム
e)1.89gのSb
2.溶液「F」:48mLのHO+7.78gのCuSO・5HOを調製した。
3.溶液「F」 を、溶液「E」 に、10〜15分間かけて滴下により添加して、スラリーを形成した。
4.このスラリー混合物を、回転蒸発フラスコ内で真空下で50℃で乾燥し、次いで一晩真空乾燥した。
5.この乾燥した混合物を、120℃で16時間更に乾燥し、390℃で5時間焼成した。昇温速度は1°/分であった。
【0045】
実施例1
本発明の触媒及び比較触媒組成物のそれぞれを、最初に、PA酸化からAAを形成できるか否かを見るために、PAの酸化的脱水素反応において評価した。試験条件は下記の通りであった。4モル%のPA、3モル%のO、33モル%のHO、残りはNであった。全反応剤ガス混合物流量は、80cc/分であった。触媒量は約5g(14〜20メッシュ)であった。1回通過管型反応器に、触媒床の両端で、ノートン・ケミカルス社(Norton Chemicals)から商業的に入手可能なデンストーン(denstone)を充填した。反応器温度は200〜400℃であった。生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。表中に記載した転化率は、一般的に下記のようにして計算した。
PA転化率(%)=100×[(供給物中のPAのモル数−生成物中のPAのモル数)/供給物中のPAのモル数]
AA選択率(%)=100×[生成物中のAAのモル数/(供給物中のPAのモル数−生成物中のPAのモル数)]
AA収率(%)=100×(生成物中のAAのモル数/供給物中のPAのモル数)
【0046】
これらの結果を表1に記載する。
【0047】
【表1】

【0048】
全ての上記試験した触媒は、PA酸化の間にAAへの幾つかの選択率を示した。表1から、Mo0.285Te0.21Nb0.164Pd0.01触媒が、試験した他の触媒と同等のPA転化率において、12〜23%の最高AA選択率を与えたことがわかる。これらの結果は、明らかに、AAへのPA転化について試験した触媒の他の種類の範囲に比して、本発明の触媒の独特の性能を示している。
【0049】
実施例2
次に、それぞれの触媒を、約4000ppmのPA濃度を有する混合AA及びPA供給物を使用して評価した。これらの試験結果を表2に報告する。表中の軸値(axis values)は、下記のようにして計算した。
AA損失(%)=100×[1−(反応器から出るAAのモル数/反応器の中に供給されるAAのモル数)]
AA中のPAレベル(ppm)=1,000,000×(反応器から出るPAのモル数/反応器から出るAAのモル数)
【0050】
【表2】

【0051】
表2中に示されるように、AA対PAの非常に高い相対濃度(AA/PA≒250)のために、AAは、PAの酸化と共に不可避的に消費された。しかしながら、消費されたAAの量は、PAが減少したとき、異なった触媒に関して変化した。混合金属酸化物触媒(Mo0.285Te0.21Nb0.164Pd0.01)は、明らかに最も選択的な触媒であった。本発明の触媒は、本発明の触媒において示されるように、PAレベルが約1000ppmにまで減少したとき、僅か約6%のAA消費を示したが、他の触媒組成物は、同じレベルにまで低下したPA濃度を得るために、少なくとも4倍以上のAA消費を示した。特に、PAを除去するために使用された最も有効な触媒が、実際に、プロパン酸化反応において最初にPAを生成するために使用した正確に同じ触媒であったことは、予想外であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸流からのプロピオン酸の選択的除去方法であって、プロピオン酸減少混合金属酸化物触媒の存在下でアクリル酸流を反応させることを含み、前記混合金属酸化物触媒が、実験式:
AaMbNcXdZeOf
(式中、Aは、Mo及びWからなる群から選択された少なくとも1種の元素であり、Mは、V及びCeからなる群から選択された少なくとも1種の元素であり、Nは、Te、Sb及びSeからなる群から選択された少なくとも1種の元素であり、Xは、Nb、Ta、Ti、Al、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pt、Sb、Bi、B、In、As、Ge、Sn、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Hf、Pb、P、Pm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素であり、Zは、Zn、Ga、Ir、Sm、Pd、Au、Ag、Cu、Sc、Y、Pr、Nd及びTbからなる群から選択された少なくとも1種の元素であり、及びOは、酸化物形態の酸素であり、a=1であるとき、b=0.01〜1.0、c=0.01〜1.0、d=0.01〜1.0、e=0〜0.1であり、fは、他の元素の酸化状態に依存性である)
を含む混合金属酸化物を含む方法。
【請求項2】
前記触媒が、Mo、V、Te、Nb及びO又はこれらの組合せからなる群から選択された、少なくとも1種の金属酸化物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が、W、V、Te、Nb及びO又はこれらの組合せからなる群から選択された、少なくとも1種の金属酸化物である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記アクリル酸流が、不純物として100ppmよりも多いプロピオン酸を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記アクリル酸流が、プロパン又はプロピレン酸化プロセスの生成物流である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記アクリル酸流が、一段階又は多段階酸化プロセスの生成物流である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記プロピオン酸減少混合金属酸化物触媒が、アクリル酸流を製造するために使用される反応器と同じ反応器内に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記プロピオン酸減少混合金属酸化物触媒が、アクリル酸流を製造するために使用される反応器とは別個の反応器内に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記プロピオン酸減少工程が、統合アクリル酸製造プロセスの一部であり、前記統合アクリル酸製造プロセスが、プロピレン生成工程及び下流のアクリル酸分離プロセスを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記プロピオン酸減少工程が、蒸留又は溶融結晶化と組み合わせられている、請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2009−78262(P2009−78262A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−195963(P2008−195963)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】