説明

(メタ)アクリル酸系共重合体、その製造方法及びその用途

【課題】各種性能に優れた品質の高い(メタ)アクリル酸系共重合体及び生産性に優れた(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位(a)、及び、不飽和単量体由来の構成単位(b)を有する共重合体であって、該共重合体は、重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万であり、構成単位(b)の(モル%)×(Mw)の式により求められる値が、100万以上であり、分子量分布(Mw/Mn)が、25未満である共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸系共重合体、その製造方法及びその用途に関する。より詳しくは、各種用途に好適な基本性能を有する(メタ)アクリル酸系共重合体、その製造方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸系共重合体は、(メタ)アクリル酸系単量体をその他の単量体と共重合させて得られる共重合体であり、種々の工業分野において活用されている有用な工業原料の一つであり、例えば、(メタ)アクリル酸系単量体をアリル系等の単量体と共重合したものが用いられている。
【0003】
従来の(メタ)アクリル酸系共重合体としては、特定のスルホン酸基含有単量体およびカルボン酸基含有単量体を含む単量体成分を共重合して得られる共重合体(塩)を主成分とし、共重合体(塩)の重量平均分子量が2万〜50万であるスケール防止剤(例えば、特許文献1参照。)、(a)スルホン酸基を有する構成単位、(b)カルボン酸基を有する構成単位を含み、重量平均分子量が5万を超え300万以下である水溶性共重合体(塩)(例えば、特許文献2参照。)、スルホン酸基含有単量体およびカルボン酸基含有単量体を含む単量体成分を共重合して得られる共重合体(塩)であって、重量平均分子量が1万〜50万であるスルホン酸基およびカルボン酸基含有水溶性共重合体(塩)(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。しかしながら、(メタ)アクリル酸系共重合体を各種分野において好適に用いられる高品質の(メタ)アクリル酸系共重合体とする工夫の余地があった。
【0004】
従来の(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法としては、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(酸型のHAPS)とアクリル酸(AA)、過酸化水素を加えた水を還流下10時間かけて均等に滴下する製法により、AA/HAPS共重合体(重量平均分子量:Mw=132,000)が得られることが開示されている(参考例1、特許文献1参照)。しかしながら、重合に10時間もかかり、酸型のHAPSを製造するのに手間がかかりコストアップとなることから、生産性の向上の点について、工夫の余地があった。
【0005】
また酸型のHAPSとAA、過酸化水素、水を初期仕込みし、4時間還流下で重合する製法により、AA/HAPS共重合体(重量平均分子量:Mw=98,000)が得られることが開示されている(参考例8、特許文献1参照)。同様に、原料の単量体を初期に一括して仕込む方法が開示されている(例えば、特許文献2、3参照。)。しかしながら、反応性の高いAAと重合開始剤を全量初期仕込みとしていることから、重合反応が急速に進行するため短時間に大量の反応熱が発生する。除熱が追いつかない場合には、突沸により反応容器を破壊するおそれがあることから、突沸を防ぐために高性能な除熱装置が必要となり、コストアップとなる。更に、酸型のHAPSを製造するのに手間がかかりコストアップとなることから、生産性の向上(コストの削減)の点について、工夫の余地があった。
【0006】
また重合体を製造するにあたり、重合中、スプレー噴霧で反応系に液体を添加することにより反応系から熱を除くようにする方法であって、前記重合体が、水溶性重合体であり、前記重合が、攪拌溶液水系重合であって沸点近傍の重合温度で還流状態にして重合させ、前記スプレー噴霧が、前記反応系の液面全体に前記液体として水を噴霧する重合体の製造方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。実施例1には、水、水酸化ナトリウム、無水MAを初期仕込みし、AAを0〜120分、過酸化水素を0〜50分、過硫酸ナトリウムを50〜130分滴下し、水を50〜130分スプレーする製法により、(AA/マレイン酸(MA)共重合体:Mw=9,000)を得たことが開示されている。また、実施例2、3では、AA滴下開始と同時に水をスプレー開始する製法が開示されている。しかしながら、種々の工業分野において好適に用いることができる共重合体を生産性よく得る方法とする工夫の余地があった。
【特許文献1】特開平11−263892号公報(第2、5、6頁)
【特許文献2】特開平2000−7734号公報(第8頁)
【特許文献3】特開平11−263814号公報(第5頁)
【特許文献4】特許3574597号公報(第1−2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、各種性能に優れた品質の高い(メタ)アクリル酸系共重合体及び生産性に優れた(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、(メタ)アクリル酸系共重合体について種々検討したところ、(メタ)アクリル酸系単量体と、特定の単量体に由来する構成単位とを、共重合体の構成単位とすると、重量平均分子量を高くすることができ、分子量分布を狭くすることができ、更に、残存単量体を少なくすることができ、各種性能に優れた共重合体とすることができることを見いだした。また、(メタ)アクリル酸系単量体及び希釈水の添加方法を特定のものとすることにより、反応容器の壁面でアクリル酸等の反応性の高い単量体の一部が単独で重合(ゲル化)することによる壁面への固着を抑制できることも見いだした。更に、開始剤を特定の方法で添加することにより、重合反応性が低い単量体の残存を少なくすることができ、短時間で効率よく生産できることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。更に、種々の工業分野において、例えば、スケール防止剤、洗浄剤添加物等として活用することができることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0009】
本発明の製造方法によると、従来の(メタ)アクリル酸系単量体の製造方法では得ることができなかった、優れた基本性能を有する共重合体を生産性よく製造することができる。すなわち、本発明では、アリル系等の単量体は重合反応性が低いため、高分子量の重合体を得る手法として、アクリル酸等の重合反応性の高い単量体との共重合が行われる。従来の(メタ)アクリル酸系単量体を全量初期仕込みとする方法や、希釈水を添加しない方法では、得られる共重合体の分子量を高分子量とするために単量体濃度を高くすると、高分子量の共重合体の生成に伴い、粘度が上昇する重合反応後半に、反応性の高い(メタ)アクリル酸系単量体が優先的に重合し、反応性の低い単量体が大量に残存するため、得られる共重合体は、残存単量体が多く、分子量分布が大きくなる。また、希釈水の添加開始が早い場合、重合系の粘度が低い上に重合系中の単量体濃度が低下するため高分子量の共重合体が得られない。しかしながら本発明では、高い固形分濃度で重合しても反応性の高い(メタ)アクリル酸系単量体がゲルとして付着することなく、重量平均分子量が高く、分子量分布が狭く、残存単量体が少ない共重合体を生産性よく製造することができる。
【0010】
すなわち下記一般式(1);
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位(a)、及び、下記一般式(2);
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。Rは、−CH−、−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH=CH−又は−CCH=CH−を表す。Yは、−SOM、−CHR−CH、−OH又は−O(AO)を表す。ただし、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、−OH、−SOM、−N(CH−COOM)、−N(CHCHOH)を表す。AOは、1種又は2種以上の炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレンの平均付加モル数であり、1〜300の整数である。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)で表される不飽和単量体由来の構成単位(b)を有する共重合体であって、上記共重合体は、重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万であり、構成単位(b)の(モル%)×(Mw)の式により求められる値が、100万以上であり、分子量分布(Mw/Mn)が、25未満である共重合体である。
以下に本発明を詳述する。
【0015】
本発明は、構成単位(a)及び構成単位(b)を有し、(i)重量平均分子量(Mw)、(ii)構成単位(b)の(モル%)×(Mw)の式により求められる値、(iii)分子量分布(Mw/Mn)が特定の範囲である共重合体(以下、共重合体(1)ともいう。)である。
上記共重合体(1)を構成する構成単位(a)としては、上記一般式(1)においてXが水素原子である(メタ)アクリル酸;Xが金属原子等である(メタ)アクリル酸塩等の1種又は2種以上が好適である。
【0016】
上記構成単位(a)が塩の形態である場合、上記一般式(1)のXとしては、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。上記金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等のアルカリ金属原子;カルシウム原子、マグネシウム原子等のアルカリ土類金属原子等の1種又は2種以上が好適である。上記有機アンモニウム基(有機アミン基)としては、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基が好適である。これらの中でも、ナトリウム塩の形態であることが好ましい。
上記単量体(a)としては、アクリル酸、アクリル酸ナトリウムが好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0017】
上記構成単位(b)は、上記一般式(2)で表される不飽和単量体(以下、単量体(b)ともいう。)に由来する1種又は2種以上のものであり、上記一般式(2)におけるR〜R、Y、M、AO及びnは、上述のものを表す。
上記R、R及びRとしては、R、R、Rの全てが水素原子、R、Rが水素原子でRがメチル基であることが好ましく、R、R、Rの全てが水素原子であることがより好ましい。
上記Rとしては、−CH−O−CH−、−C(CH)=CH−であることが好ましく、−CH−O−CH−であることがより好ましい。
上記R及びRとしては、同一若しくは異なって、−OH、−SOMであることが好ましく、より好ましくは、Rが−OH、Rが−SOMである。Mとしては、ナトリウム原子、カリウム原子が好ましく、ナトリウム原子がより好ましい。
【0018】
上記Yとしては、−SOM、−CHR−CHであることが好ましく、−CHR−CHであることがより好ましい。
上記Mとしては、上述した一般式(1)のXにおいて例示したものと同様のものが好適である。これらの中でも、ナトリウム原子、カリウム原子が好ましく、ナトリウム原子がより好ましい。
上記AOとしては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。より好ましくは、オキシエチレン基である。上記nとしては、3〜100が好ましく、より好ましくは、5〜50である。
上記Rの炭素数1〜30の炭化水素基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基やフェニル基等のアリール基が好適である。好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基であり、より好ましくは、メチル基、フェニル基である。
【0019】
上記共重合体(1)は、(i)重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万である。Mwが6万未満であると、キレート力が低下する等の結果、例えば、スケール防止剤や洗浄剤添加剤として使用した際に充分な効果が得られないおそれがあり、100万を超えると、分散力が低下する等の結果、例えば、スケール防止剤や洗浄剤添加剤として使用した際に充分な効果が得られないになるおそれがある。Mwとしては、8万〜50万が好ましく、より好ましくは、9〜30万である。
上記Mwの測定条件は、以下のとおりである。
【0020】
重量平均分子量(Mw)の測定方法
(1)GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定に用いたカラムはGF−7M HQ(昭和電工株式会社製)であり、移動相はリン酸水素二ナトリウム12水和物34.5g及びリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(何れも試薬特級、以下測定に用いる試薬は全て特級を使用)に純水を加えて全量を5000gとし、その後0.45ミクロンのメンブランフィルターで濾過した水溶液を用いた。
【0021】
(2)ポンプはL−7110(株式会社日立製作所製)を使用し、移動相の流量を0.5ml/分に設定して、検出器としてはUV(株式会社日立製作所製L−2400)で波長214nmとした。その際、カラム温度は35℃一定とした。
(3)更に検量線としては、ポリアクリル酸ナトリウム標準サンプル(創和科学株式会社製)を用いた。
(4)サンプルを移動相の溶媒で希釈し0.1質量%サンプル溶液を調製した。
(5)解析ソフトには、sic480II(昭和電工株式会社製)を用いた。これらにより共重合体の重量平均分子量を測定した。
【0022】
上記共重合体(1)は、また、(ii)構成単位(b)の(モル%)×(Mw)の式により求められる値が、100万以上である。このような範囲とすることにより、構成単位(b)の割合が高くかつ分子量が高い共重合体とすることができ、例えば、スケール抑制剤として使用する場合、優れた効果を発揮することができる。好ましくは、150万以上であり、より好ましくは、200万以上である。
【0023】
上記共重合体(1)は、(iii)分子量分布(Mw/Mn)が、25未満である。分子量分布を25未満とすることにより、高い品質を有することからスケール防止剤、洗浄剤添加物等の各種用途に用いる場合に優れた基本性能を発揮することができる。好ましくは、24未満であり、より好ましくは、23未満である。
【0024】
上記共重合体(1)は、構成単位(a)と構成単位(b)との割合が、構成単位(a)70〜90モル%、構成単位(b)10〜30モル%であることが好ましい。
このように、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位(a)、及び、上記一般式(2)で表される不飽和単量体由来の構成単位(b)を有する共重合体であって、上記共重合体は、構成単位(a)と構成単位(b)との割合が、構成単位(a)70〜95モル%、構成単位(b)5〜30モル%であり、重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万であり、構成単位(b)の(モル%)×(Mw)の式により求められる値が、100万以上であり、分子量分布(Mw/Mn)が、25未満である共重合体もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
上記割合として好ましくは、構成単位(a)72〜88モル%、構成単位(b)12〜28モル%であり、より好ましくは、構成単位(a)74〜86モル%、構成単位(b)14〜26モル%である。なお、上記割合は、(a)+(b)=100モル%とする場合のものであり、共重合体(1)が構成単位(a)及び構成単位(b)以外の構成単位を含んでいてもよい。
【0025】
上記その他の構成単位を構成する単量体(他の単量体(1))としては、上記単量体(a)及び単量体(b)と共重合可能な単量体であればよく、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン含有α,β−不飽和脂肪族炭化水素;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム、アクリロニトリル等のα,β−不飽和芳香族炭化水素等;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸、これらの塩及びこれらの酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体等の1種又は2種以上が好適である。
上記その他の構成単位の含有割合としては、全構成単位中、0〜20モル%であることが好適である。好ましくは、0〜10モル%であり、より好ましくは、0モル%である。
【0026】
本発明はまた、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位(a)、及び、上記一般式(2)で表される不飽和単量体由来の構成単位(b)を有する共重合体であって、上記共重合体は、重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万であり、構成単位(b)の(モル%)×(Mw)の式により求められる値が、100万以上であり、残存単量体が、固形分100質量%に対し、2質量%未満である共重合体でもある。すなわち、上記共重合体は、構成単位(a)及び構成単位(b)を有し、(i)重量平均分子量(Mw)、(ii)構成単位(b)の(モル%)×(Mw)の式により求められる値、(iv)残存単量体が特定の範囲である共重合体(以下、共重合体(2)ともいう。)でもある。
【0027】
上記共重合体(2)が有する構成単位(a)及び構成単位(b)、(i)重量平均分子量(Mw)及び(ii)構成単位(b)の(モル%)×(Mw)の式により求められる値については、共重合体(1)において上述した範囲であることが好適である。
上記共重合体(2)はまた、(iv)残存単量体が、固形分100質量%に対し、2質量%未満である。残存単量体が2質量%以上であると、例えば、スケール防止剤や洗浄剤添加物等に使用した際に、残存単量体は不純物となることからコストパフォーマンスの低下を招くおそれがあり、更に、場合によっては性能に悪影響を及ぼすおそれがある。好ましくは、1.5質量%未満であり、より好ましくは、1.0質量%未満である。
【0028】
上記共重合体(2)においては、共重合体(2)が構成単位(a)と構成単位(b)とからなる場合、単量体(a)と単量体(b)を共重合することによっても得られるが、この場合、単量体(a)と単量体(b)の重合速度の遅い単量体が残存することになる。通常、単量体(a)の方が単量体(b)よりも重合速度が速いことから、単量体(b)が残存する。なお、固形分とは、共重合体(2)を製造した場合に、最終固形物として得られるものであり、共重合体、残存した単量体、その他の成分を含むものである。固形分の測定方法としては、例えば、重合反応が終了した時点での重合溶液の全部又は一部を120℃で2時間乾燥させ、その蒸発残分を測定して、下記式(1)より求めることができる。
固形分(%)=〔乾燥後の蒸発残分(g)/乾燥前の重合溶液の質量(g)〕×100 (式1)
上記重合反応が終了した時点とは、例えば、上述した各成分の滴下終了後であってもよいし、また、より具体的には、上述した各成分の滴下終了後、更に30分間、反応溶液を各成分滴下時の温度に保持(熟成)した後であってもよい。
【0029】
上記共重合体(2)において、構成単位(a)と構成単位(b)との割合としては、共重合体(1)において例示した割合と同様の範囲であることが好ましい。このように、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位(a)、及び、上記一般式(2)で表される不飽和単量体由来の構成単位(b)を有する共重合体であって、上記共重合体は、構成単位(a)と構成単位(b)との割合が、構成単位(a)70〜95モル%、構成単位(b)5〜30モル%であり、重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万であり、構成単位(b)の(モル%)×(Mw)の式により求められる値が、100万以上であり、残存単量体が、固形分100質量%に対し、2質量%未満である共重合体もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0030】
上記共重合体(1)又は(2)は、構成単位(a)及び構成単位(b)を上述した範囲で有するものであれば特に限定されないが、上記一般式(2)のYが、−SOM、又は、−CHR−CHであり、R及びRのいずれか一方が−SOMであることが好ましい。より好ましくは、−CHR−CHであり、R及びRのいずれか一方が−SOMの場合であり、更に好ましくは、−CHR−CHであり、Rが−OHでRが−SOMの場合である。
【0031】
上記共重合体(1)又は(2)において、上記一般式(2)のY及びRの組み合わせとしては、Yが、−CHR−CHであり、Rが−OHでRが−SOMの場合であり、すなわち、Yが、−CH(OH)−CHSOMであり、Rが、−CH−O−CH−であることが好ましい。すなわち、構成単位(b)を構成する不飽和単量体(単量体(b))が、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム(HAPS)であることが好ましい。HAPSを用いることで、共重合体分子中にスルホン酸基と水酸基を同時に導入することができ、例えば、スケール防止剤や洗浄剤添加剤として使用した際に優れた効果を発揮することができるという利点がある。
【0032】
上記共重合体(1)及び(2)としては、上述した要件を満たすものであれば特に限定されず、上記単量体(a)及び単量体(b)の組み合わせとしては、上記例示の単量体(a)及び単量体(b)のなかから適宜選択することができるが、アクリル酸、HAPSの組み合わせ、アクリル酸ナトリウム、HAPSの組み合わせであることが好ましく、アクリル酸、HAPSの組み合わせがより好ましい。すなわち、上記共重合体(1)及び(2)としては、下記式(3);
【0033】
【化3】

【0034】
(式中、m及びnは、構造単位の繰り返し数を表す整数である。)で表される構成単位を有するものであることが好ましい。
上記式(3)で表される構成単位としては、共重合体100質量%に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%以上であることが更に好ましい。
【0035】
本発明は更に、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位、及び、上記(メタ)アクリル酸系単量体よりも単独重合の重合速度が遅い単量体由来の構成単位を有し、重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万である共重合体を製造する方法であって、上記製造方法は、(メタ)アクリル酸系単量体の全使用量のうち50質量%以上を重合溶液に逐次添加し、(メタ)アクリル酸系単量体の全逐次添加時間の45%経過時点以降に希釈水を重合溶液に添加する工程を含む共重合体の製造方法でもある。以降、製造方法(1)ともいう。
【0036】
上記共重合体は、(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位(構成単位(a)とも言う。)と上記(メタ)アクリル酸系単量体よりも単独重合の重合速度が遅い単量体由来の構成単位(以降、構成単位(c)とも言う。)とを有するものであり、構成単位(a)としては、上述の単量体(a)から構成されることが好適である。
上記構成単位(c)としては、構成単位(a)を構成する単量体(a)よりも単独重合の重合速度が遅い単量体(以降、単量体(c)ともいう。)に由来するものであることが好ましい。なお、単量体(c)としては、単量体(a)より単独重合の重合速度が遅い(例えば、ラジカルの安定性や立体障害等により、ラジカル重合反応性が低い)ものが好ましく、単独重合しない単量体も含まれる。
【0037】
上記単量体(c)としては、例えば、上述の単量体(b)、これら以外の他の単量体(他の単量体(2))等の1種又は2種以上が好適である。
上記他の単量体(2)としては、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、これらの塩及びこれらの酸無水物等が好適である。なお、上記単量体(2)が塩の形態である場合、好適な例等については、上述と同様である。
【0038】
上記単量体(c)としてより好ましくは、単量体(b)、マレイン酸であり、更に好ましくは、単量体(b)である。上記単量体(c)が単量体(b)である場合の好ましい単量体(b)、単量体(a)と単量体(b)の好ましい組み合わせとしては、上述のとおりである。
【0039】
上記共重合体の構成単位(a)と構成単位(c)との割合としては、構成単位(a)50〜90モル%、構成単位(c)10〜50モル%であることが好ましい。構成単位(c)が10モル%未満になると、共重合体としての優れた特性が発揮されず、また、構成単位(c)が50モル%を超えると重合反応性が悪い単量体の比率が大きすぎて高分子量の共重合体を得ることができない。より好ましくは、構成単位(a)60〜85モル%、構成単位(c)15〜40モル%であり、更に好ましくは、構成単位(a)70〜80モル%、構成単位(c)20〜30モル%である。
上記共重合体において、重量平均分子量(Mw)については、共重合体(1)において上述したとおりである。
【0040】
上記共重合体の製造方法は、(メタ)アクリル酸系単量体の全使用量のうち50質量%以上を重合溶液に逐次添加することが好ましい。50質量%以上を重合溶液に逐次添加することにより、単独重合の重合速度が速い(メタ)アクリル酸系単量体(単量体(a))のみが重合することなく、好適な共重合体を得ることができる。逐次添加する量としては、単量体(a)中、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、全量を逐次添加することが最も好ましい。なお、単量体(a)の全量を逐次添加しない場合、逐次添加しない単量体(a)は、予め反応容器に仕込んでおくことが好ましい。
【0041】
上記単量体(a)の添加方法としては、滴下、スプレー噴霧、重合溶液中に投入口を設けた液中フィード等を好適に用いることができ、中でも、設備の初期投資やメンテナンスの容易さ等の点から、滴下により添加することが好ましい。
上記単量体(a)の添加速度としては、製造設備の規模等によって適宜設定することができ、添加時間中変更してもよく、一定であってもよいが、分子量分布の狭い好適な共重合体を得るためには、添加速度は一定であることが好ましい。
上記単量体(a)の添加時間としては、反応条件により適宜設定することができるが、例えば、単量体(a)の添加を開始する時点を基準として、30〜300分であることが好ましい。より好ましくは、45〜180分であり、更に好ましくは、60〜120分である。
【0042】
上記製造方法は、(メタ)アクリル酸系単量体の全逐次添加時間の45%経過時点以降に希釈水を重合溶液に添加することが好ましい。希釈水をこのように添加することにより、高分子量の共重合体の生成に伴い粘度が上昇する重合反応後半に、重合系の粘度を減少させ、重合溶液の運動が制限されてゲル化物が生成しやすい、重合容器壁面近くの重合系液面の上昇速度をアップさせることができる。このため、重合溶液の攪拌のみでは充分には抑制できないおそれのある製造装置へのゲル化物の付着を効果的に抑制することができる。
【0043】
上記希釈水の添加時間としては、単量体(a)の全逐次添加時間の50%経過時点以降であることがより好ましく、55%経過時点以降であることが更に好ましい。
上記希釈水の添加量としては、重合総仕込み量に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上記希釈水としては、イオン交換水、蒸留水等が好適である。
上記希釈水添加方法としては、上述の単量体(a)の添加方法と同様である。
【0044】
上記製造方法においては、希釈水の添加に加えて、重合溶液を攪拌することが好ましい。重合溶液を攪拌することにより、重合物が反応容器の壁に固着するのを防ぐことができ、製造装置へのゲル化物の付着が抑制される。
上記攪拌装置としては、攪拌翼に代表されるモーター駆動型、シェイカー等に代表される面駆動型、噴射衝突型、超音波分散型、モーションレスミキサー等を利用することができる。中でも設備の初期投資やメンテナンスの容易さ等の点から、攪拌翼を使用することが好ましい。なお、攪拌速度は、装置の規模等によって適宜設定することができる。攪拌は、一時的に、又は、連続的にすることができるが、ゲル化物の付着の抑制、反応の促進の観点から、連続的に反応時間中継続して行うことが好ましい。
【0045】
上述したように、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位(a)、及び、上記(メタ)アクリル酸系単量体よりも単独重合の重合速度が遅い単量体由来の構成単位(c)を有し、構成単位(a)と構成単位(c)との割合が、構成単位(a)50〜90モル%、構成単位(c)10〜50モル%であり、重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万である共重合体を製造する方法であって、上記製造方法は、(メタ)アクリル酸系単量体の全使用量のうち50質量%以上を重合溶液に逐次添加し、(メタ)アクリル酸系単量体の全逐次添加時間の45%経過時点以降に希釈水を重合溶液に添加する工程を含む共重合体の製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0046】
本発明の製造方法は、また、開始剤と希釈水とを重合溶液に添加する工程を含むことが好ましい。上記開始剤は、予め反応容器に仕込んでおいてもよいが、反応過程で重合溶液に逐次添加することが好ましい。逐次添加量としては、使用する開始剤のうち、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、全量を逐次添加することが最も好ましい。上記開始剤の添加方法としては、上述の単量体(a)の添加方法と同様である。
【0047】
上記開始剤の添加速度としては、希釈水添加開始時間の15分前の時点での開始剤の添加速度を基準として、希釈水添加開始時間の15分経過以降における開始剤の添加速度を1.5〜5倍にすることが好適である。このように添加速度を変化させることにより、重合反応性が低い単量体(単量体(c))の残存を少なくすることができる。希釈水添加開始時間の15分経過以降における開始剤の添加速度としては、1.5〜5倍が好ましく、2〜4.5倍がより好ましく、2.5〜4倍が更に好ましい。
【0048】
上記希釈水の添加時間としては、単量体(a)を逐次添加する場合は、上述した場合と同様である。単量体(a)を逐次添加しない場合は、単量体(a)と単量体(c)と開始剤とが最初に反応容器に仕込まれた時点を「反応開始時」として、単量体の残存量が低減しなくなる合点を「反応終了時」とすると、「反応開始時」から「反応終了時」までの全反応時間の45%経過時点以降に希釈水を添加することが好ましく、50%経過時点以降であることがより好ましい。
上記希釈水は、上述したものと同様である。
【0049】
上記開始剤としては特に限定されず、例えば、2,2´−アゾビス(2−アミノプロパン)塩酸塩、2,2´−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕等のアゾ化合物;過酸化水素、tert−ブチルヒドロキシパーオキシド等の過酸化物等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、重合率向上、残存単量体量低減の点から、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩を用いることが好ましい。
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、例えば、全単量体成分100質量%に対し、下限が0.001質量%、上限が10質量%とすることが好適である。
【0050】
上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位、及び、上記(メタ)アクリル酸系単量体よりも単独重合の重合速度が遅い単量体由来の構成単位を有し、重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万である共重合体を製造する方法であって、上記製造方法は、開始剤と希釈水とを重合溶液に添加する工程を含み、希釈水添加開始時間の15分前の時点での開始剤の添加速度を基準として、希釈水添加開始時間の15分経過以降における開始剤の添加速度を1.5〜5倍にする共重合体の製造方法もまた、本発明の一つである。以降、製造方法(2)ともいう。
【0051】
上記製造方法(2)においては、(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位(a)と(メタ)アクリル酸系単量体よりも単独重合の重合速度が遅い単量体由来の構成単位(c)との割合としては、製造方法(1)において例示した割合と同様の範囲であることが好ましい。このように、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位(a)、及び、上記(メタ)アクリル酸系単量体よりも単独重合の重合速度が遅い単量体由来の構成単位(c)を有し、構成単位(a)と構成単位(c)との割合が、構成単位(a)50〜90モル%、構成単位(c)10〜50モル%であり、重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万である共重合体を製造する方法であって、上記製造方法は、開始剤と希釈水とを重合溶液に添加する工程を含み、希釈水添加開始時間の15分前の時点での開始剤の添加速度を基準として、希釈水添加開始時間の15分経過以降における開始剤の添加速度を1.5〜5倍にする共重合体の製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0052】
本発明の製造方法(1)、(2)は、それぞれ独立に実施することができるが、両方を実施する形態がより好ましい。両方を実施することにより、単量体(a)を逐次添加し、重合後半より希釈水を加え、開始剤滴下速度を上げることとなるため、短時間で、しかも製造装置へのゲル化物の付着といった問題を起こさずに、分子量分布が比較的狭く、残存単量体の少ない共重合体を得ることができ、スケール抑制剤や洗浄剤添加物等として、優れた基本性能を有する共重合体とすることができる。
【0053】
上記製造方法(1)及び/又は(2)において、重合反応が終了した時点での重合溶液中の固形分濃度が30質量%以上であることが好ましい。固形分、固形分の測定方法、重合反応が終了した時点としては、上述と同様である。固形分濃度は、上述と同様にして求めることができる。
上記固形分濃度が30質量%未満であると、単量体(c)として、重合反応性の低いアリル系等の単量体を用いた場合、得られる共重合体が充分には高分子量化できないおそれがあるが、固形分濃度を30質量%以上とすると、重合反応性の低いアリル系等の単量体に由来する構成単位を有する共重合体を高分子量化することができる。すなわち、重合系中の単位時間当たりの単量体濃度を高くすることでより高分子量の共重合体を製造することが可能である。より好ましくは、34質量%以上であり、更に好ましくは、38質量%以上である。
【0054】
上記製造方法(1)及び(2)においては、重合方法として、例えば、溶液重合やバルク重合、懸濁重合、乳化重合等の通常用いられる方法で行うことができ、特に限定されるものではない。しかし、重合体の種類が水溶性重合体である場合や水系の重合方法に適応させた場合に、本発明の効果が最も顕著であるので、溶液重合であることが好ましい。
共重合反応の際の溶媒としては、特に限定されず、例えば、水や、イソプロピルアルコール等の炭素原子数1〜4の低級アルコールを用いることが好ましく、これらは単独溶媒であっても混合溶媒であってもよい。中でも、脱溶剤工程を省略できる点で、水を溶媒に用いることがより好適である。
【0055】
重合体の製造は、安全性の面と、経済性の観点から、水系溶媒で、高温下、なるべくは沸点近傍で行うことが一般的である。そのため、除熱能力の悪化は、直ちに激しい発泡、すなわち、激しい沸騰状態を招き、攪拌効果が失われて、終には反応液が重合釜からあふれ、重合自体の続行が不可となってしまうと言う問題を引き起こす。近年は、生産効率を高める関係上、原料濃度を高くする傾向にあり、なおさら、激しい発泡、すなわち、激しい沸騰状態を招きやすくなって来た。本発明においては、上述の構成よりなることから、これらの問題を生じることなく、好適に共重合体を製造することができる。
【0056】
上記共重合反応において、共重合の際の反応温度としては特に限定はされないが、例えば、50〜150℃とすることが好適である。50℃未満であると、共重合反応性が充分とはならず、未反応の単量体を充分に低減することができないおそれがあり、150℃を超えると、副反応を充分に抑制することができず、反応制御を簡便にすることができないおそれがある。より好ましくは、70〜120℃であり、最も好ましくは、80〜110℃である。なお、上記共重合反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、大気下で行ってもよい。また、重合溶液のpHとしては、特に限定されないが、例えば、pH5未満の条件で行うことが好適である。pH5未満とすることで、単量体(a)の重合反応性が向上し、より高分子量の共重合体が得られやすくなる。pH4.5未満であることがより好ましい。
【0057】
本発明の製造方法における好ましい実施形態としては、(1)必要に応じて水等の重合溶媒や構成単位(c)を構成する単独重合速度の遅い単量体(単量体(c))を初期仕込みとして、反応容器に仕込む工程、(2)(メタ)アクリル酸系単量体(単量体(a))、開始剤、及び、必要に応じて上記単量体(c)を逐次添加する工程、(3)希釈水を添加する工程、(4)開始剤の添加速度を上昇する工程、の順に操作を行う実施形態が挙げられる。
上記(2)工程における単量体(a)等の添加速度、上記(3)の工程における水の添加速度、添加開始時点、上記(4)の工程における開始剤の添加速度の上昇時点としては、上述したものが好適である。
【0058】
本発明はまた、上記共重合体を含んでなるスケール防止剤又は洗浄剤添加物でもある。このような共重合体としては、上述の共重合体(1)及び(2)の少なくとも一つを含むものであればよく、また、含有量としては、用途に応じて適宜設定することができる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体及びその製造方法は、上述の構成よりなり、スケール防止剤、洗浄剤添加物等として活用することができる有用な工業原料の一つである(メタ)アクリル酸系共重合体及び生産性に優れた(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0061】
実施例1
還流冷却器、攪拌機を備えた容量25LのSUS製反応容器に、40質量%3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下、40%HAPSと略す)6024gを装入し、攪拌下で沸点還流状態まで昇温した。次いで攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと略す)5670gと40%HAPS:6024g、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと略す)2128g(単量体成分中の単量体1モルに対して3.8gに相当)を滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜90分の間、40%HAPSを0分〜60分の間、それぞれ一定速度で滴下した。開始剤である15%NaPSは、添加速度9.7g/分で滴下し、開始55分で添加速度を3倍の29.1g/分に変更し、0分〜110分の間滴下した。次いで、脱イオン水(希釈水)4940gを50分〜90分の間、一定速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、沸点還流状態に保った。なお、80%AAの滴下時間に対して56%経過時点から水の滴下を開始したことになる。
【0062】
上記15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記反応液を沸点還流状態に保持(熟成)し、重合を完結させた。重合反応が終了した時点(80%AAの添加を開始してから140分)で、反応容器にゲルの付着はなく、また、重合溶液中の固形分濃度は、40質量%であった。残存単量体(残存HAPS)は、固形分100質量%に対し、0.9質量%であった。得られた共重合体(共重合体(A))の重量平均分子量は95000であり、分子量分布は21.9であった。
【0063】
比較例1
還流冷却器、攪拌機を備えた容量25LのSUS製反応容器に、酸型の40質量%3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下、酸型40%HAPSと略す)8372g、80%AA:4662g、開始剤である35質量%過酸化水素(以下、35%HPと略す)980g、イオン交換水:10360gを装入し、攪拌下で沸点還流状態まで昇温した。次いで4時間沸点還流状態で重合させた。
4時間後、反応容器にゲルの付着が見られ、また、重合溶液中の固形分濃度は、30質量%であった。残存単量体(残存HAPS)は、固形分100質量%に対し、15質量%であった。得られた共重合体(共重合体(B))の重量平均分子量は、102000であり、分子量分布は、35.1であった。
【0064】
比較例2
水の滴下を行わない他は、実施例1と同様に行った。80%AAの滴下を開始してから70分後の反応容器には、ゲルの付着が見られ、また、重合溶液中の固形分濃度は、50質量%であった。残存単量体(残存HAPS)は、固形分100質量%に対し、2.4質量%であった。得られた共重合体(共重合体(C))の重量平均分子量は、128000であり、分子量分布は、30.6であった。
【0065】
(スケール抑制能)
下記方法により、実施例1及び比較例1、2で得られた共重合体(A)〜(C)のスケール抑制能を評価した。
〔スケール抑制能試験〕
250mlの内容積のポリプロピレン製容器にシリカ濃度=210mg/L(SiO換算、メタケイ酸ナトリウム・9水和物で調整)、マグネシウム濃度=200mg/L(CaCO換算、硫酸マグネシウム・7水和物で調整)、Mアルカリ度=500mg/L(CaCO換算、炭酸水素ナトリウムで調整)の試験水と、添加濃度を固形分換算で100mg/Lとなるように共重合体とを入れ、pH8.5、全量が200mlになるように調製した。この溶液を、密閉可能な120mlの内容積のポリプロピレン製容器中に空気が混入しないように仕込んで密閉し、60℃で40時間静置した。その後、0.1μmメンブランフィルターを用いてろ過し、プラズマ発光分光分析装置(ICP)(セイコー電子工業株式会社製SPS4000)を使用して、ろ液のSi濃度を定量し、SiO濃度に換算して、下記式によりスケール抑制率(%)を算出した。
【0066】
スケール抑制率(%)={(X−Y)/(Z−Y)}×100
X:試験後のろ液中のSiO濃度(mg/L)
Y:ポリマー無添加で試験したろ液中のSiO濃度(mg/L)
Z:試験前のSiO濃度(mg/L)
評価結果を下表に示す。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位(a)、及び、下記一般式(2);
【化2】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。Rは、−CH−、−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH=CH−又は−CCH=CH−を表す。Yは、−SOM、−CHR−CH、−OH又は−O(AO)を表す。ただし、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、−OH、−SOM、−N(CH−COOM)、−N(CHCHOH)を表す。AOは、1種又は2種以上の炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレンの平均付加モル数であり、1〜300の整数である。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)で表される不飽和単量体由来の構成単位(b)を有する共重合体であって、
該共重合体は、
重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万であり、
構成単位(b)の(モル%)×(Mw)の式により求められる値が、100万以上であり、
分子量分布(Mw/Mn)が、25未満であることを特徴とする共重合体。
【請求項2】
下記一般式(1);
【化3】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位(a)、及び、下記一般式(2);
【化4】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。Rは、−CH−、−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH=CH−又は−CCH=CH−を表す。Yは、−SOM、−CHR−CH、−OH又は−O(AO)を表す。ただし、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、−OH、−SOM、−N(CH−COOM)、−N(CHCHOH)を表す。AOは、1種又は2種以上の炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレンの平均付加モル数であり、1〜300の整数である。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)で表される不飽和単量体由来の構成単位(b)を有する共重合体であって、
該共重合体は、
重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万であり、
構成単位(b)の(モル%)×(Mw)の式により求められる値が、100万以上であり、
残存単量体が、固形分100質量%に対し、2質量%未満であることを特徴とする共重合体。
【請求項3】
上記一般式(2)のYが、−SOM、又は、−CHR−CHであり、R及びRのいずれか一方が−SOMであることを特徴とする請求項1又は2に記載の共重合体。
【請求項4】
上記一般式(2)のYが、−CH(OH)−CHSOMであり、Rが、−CH−O−CH−であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共重合体。
【請求項5】
下記一般式(1);
【化5】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位、及び、該(メタ)アクリル酸系単量体よりも単独重合の重合速度が遅い単量体由来の構成単位を有し、重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万である共重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、(メタ)アクリル酸系単量体の全使用量のうち50質量%以上を重合溶液に逐次添加し、(メタ)アクリル酸系単量体の全逐次添加時間の45%経過時点以降に希釈水を重合溶液に添加する工程を含むことを特徴とする共重合体の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(1);
【化6】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位、及び、該(メタ)アクリル酸系単量体よりも単独重合の重合速度が遅い単量体由来の構成単位を有し、重量平均分子量(Mw)が、6万〜100万である共重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、開始剤と希釈水とを重合溶液に添加する工程を含み、
希釈水添加開始時間の15分前の時点での開始剤の添加速度を基準として、希釈水添加開始時間の15分経過以降における開始剤の添加速度を1.5〜5倍にすることを特徴とする共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記製造方法は、重合反応が終了した時点での重合溶液中の固形分濃度が30質量%以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の共重合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の共重合体を含んでなることを特徴とするスケール防止剤又は洗浄剤添加物。

【公開番号】特開2007−99839(P2007−99839A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289034(P2005−289034)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】