(F)RETアッセイに適したコア/シェル・ナノ粒子
本発明は、(a)第1金属塩又は酸化物でできているコア;及び該コアを囲む(b)発光性であり、非半導体特性を有する第2金属塩又は酸化物でできているシェル;を含む、発光性の無機ナノ粒子に関する。これらの粒子は、それらの高い(F)RET効率を考慮して、(蛍光)共鳴エネルギー転移((F)RET)に基づくバイオアッセイに有利に用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、発光性シェルによって囲まれた、金属塩若しくは酸化物のコアを有する発光性ナノ粒子、特に光ルミネッセンス性(photoluminescent)ナノ粒子、これら粒子の合成、及び(F)RETアッセイ、特にバイオアッセイにおけるそれらの使用に関する。
【0002】
出願の背景
この10年間にわたって、ナノ粒子、即ち、1μm未満のサイズを有する粒子は、それらの独特の性質のために、研究及び産業界において非常に多くの人々の注目を引いている。光電子分野での研究及び開発は、発光ダイオード(LED)、ディスプレイ、ナノメーター・サイズの光電子デバイスにおける又は低閾レーザーの光源としての発光性粒子の可能な用途の点から、発光性粒子に集中している。
【0003】
発光性物質のなかでは、しばしば、半導体物質と非半導体物質との間で区別がされる。
【0004】
ドープされていてもいなくてもよいII〜VI又はIII〜V半導体(しばしば、「量子ドット」と呼ばれる)のような半導体ナノ粒子は、3次元の全てにおける電子と孔の両方の量子閉じ込めを特徴とし、これが物質の有効バンドギャップを拡張させて、結晶サイズを減少させる。その結果、ナノ粒子のサイズが小さくなるにつれて、半導体ナノ粒子の吸光と発光の両方を青色(高エネルギー)方向にシフトさせることができる。
【0005】
水溶性コア/シェル半導体ナノ結晶は、例えば、WO00/17655に記載されている。
【0006】
量子ドットに比較した場合に、ナノ結晶性非半導体ベース発光物質(non-semiconductor-based luminescent materials)、特に、ランタニドでドープした(lanthanide-doped)金属酸化物又は塩の蛍光放射が比較的狭く、ホスト物質とナノ粒子のサイズとにあまり大きな程度に依存しないことが、これらを特に魅力的にしている。発光の色を決定するのは、むしろ、ランタニド金属の種類のみである。同じ出願人に譲渡されたPCT/DE01/03433は、ランタニドでドープしたこの種類のナノ粒子の、一般的に適用可能な合成方法を開示している。これらのナノ粒子は、可視光の波長ともはや相互作用せず、それによって、例えば有機溶媒又は水性溶媒中の透明な分散系を生じるサイズ(30nm未満)で製造することができる。
【0007】
ランタニドでドープした非半導体ベースの発光性ナノ粒子に関する他の刊行物は、例えば、下記の通りである:
K.Riwotzki et al.: Angewandte Chemie,Int.Ed.40,2001,573-576頁、LaPO4:Ce,Tbに関して;
K.Riwotzki, M.Haase, J.Phys.Chem.B;Vol.102,1998,10129-10135頁、YVO4:Eu,YVO4:Sm及びYVO4:Dyに関して;
H.Meyssamy,et al.,Advanced Materials,Vol.11,Issue 10,1999,840-844頁、LaPO4:Eu,
LaPO4:Ce及びLaPO4:Ce,Tbに関して;
K.Riwotzki et al.,J.Phys.Chem.B 2000,Vol.104,2824-2828頁、<<Liquid phase synthesis doped nanoparticles: colloids of luminescent LaPO4:Eu and CePO4:Tb particles with a narrow particle size distribution>>;
M.Haase et al., Journal of Alloys and Compounds,303-304(2000) 191-197,’’Synthesis and properties of colloidal lanthanide-doped nanocrystals’’;
Jan W Stouwdam and Frank C.J.M.van Veggel, Nano Letters, ASAP article,web release May 15,2002,’’Near-infrared emission of redispersible Er3+, Nd3+and Ho3+ deoped LaF3 nanoparticles’’;及び
G.A.Hebbink et al., Advanced Materials 2002,14,No.16,1147-1150頁、’’Lanthanide(III)-doped nanoparticles that emit in the near-infrared’’.
半導体ベースのナノ粒子(「量子ドット」)は、バイオアッセイにおける使用が既に考慮されている。Bawendi et al., Physical Review Letters,76,1996,1517-1520頁は、例えば、特異的に標識した生物学的系におけるFRET効果を報告している。さらに、WO00/29617は、(F)RETアッセイにおけるラベルとしての「量子ドット」によってタンパク質又は核酸を検出することができることを開示している。US6,468,808B1とUS6,326,144B1は、量子ドットの生体分子コンジュゲートと、蛍光分光法におけるそれらの使用も記載している。
【0008】
(F)RET(蛍光共鳴エネルギー転移)及び関連する共鳴エネルギー転移(RET)は、蛍光を発光することができるドナーから近接したアクセプターへの励起エネルギーの転移に基づいている。この手法によって、例えば、生物学的系における適当な蛍光ラベルによって約1〜8nmの範囲内の分子レベルの距離を測定することが可能である。アクセプターに転移されたエネルギーは、放射せずに内部変換(RET)によって軽減することができ、この場合には、ドナー蛍光の中止(クエンチング)のみを生じる。或いは、アクセプターは受容したエネルギーを蛍光(FRET)の形態でも放射する。これらの現象は、充分に理解されており、ドナーとアクセプターとの間の双極子−双極子相互作用の場合には、Foesterの理論(例えば、J.R.Lakowicz, Principles of Fluorescence Spectroscopy, Kluwer Academic Press, New York,1990,368-445頁)によって説明することができる。エネルギー転移は、ドナー蛍光の強度とその寿命を減少させ、同時に、アクセプター蛍光を開始させ、感作し、又は増強する。エネルギー転移の効率は、分子間分離の逆6乗(inverse 6th power)に依存し、R06/(R06+R6)に比例して低下する。R0、いわゆるFoester半径は、エネルギー転移の効率が50%であるような、ドナーとアクセプターとの間の距離を特徴付ける。
【0009】
F(RET)効率は、アクセプター付(QDA)及びアクセプターなし(QD)のドナーのそれぞれの蛍光強度を介して式:1−(QDA/QD)により、又はアクセプター・プローブの存在下(TDA)と不存在下(TD)とのドナーの寿命を比較することによって式:1−(TDA/TD)に基づいて測定することができる。
【0010】
しかし、バイオアッセイにおける「量子ドット」の使用は、種々の欠点を有する。蛍光「量子ドット」の放射波長は粒子のサイズに依存するので、非常に狭いサイズ分布しか用いることができない。このことは、合成及び/又はサイズ選択方法に対する難題を表す。その上、「量子ドット」は、通常、放射なしの電子−孔対再結合によって惹起される、比較的低い量子効率を示す。この欠陥を克服するために、CdS被膜が発光性CdSeコアの光安定性を保護し、強化する、CdSe/CdSのコア/シェル構造が提案されている(X.Peng et al., J.Am.Chem.Soc. 119,1997,7019-7029頁)。
【0011】
典型的には、(F)RETベースのアッセイは、例えばフルオレセイン又はローダミンのような、有機染料分子によって行なわれる。多くの用途のために、これらの有機蛍光染料に関連した一般的な欠点は、入射光線に対するそれらの安定性が不充分であることである。それらの光毒性は、近接した環境において生物学的物質をさらに損傷する可能性がある。他の好ましくない性質は、それらの幅広い放射バンドと、小さいストークス・シフト、即ち、励起と放射最大との差並びに、幾つかの光源及び/又は複雑なフォトシステム(complicated photo systems)の使用をしばしば必要とする比較的狭いスペクトル励起バンドである。
【0012】
したがって、(F)RETアッセイ、とりわけバイオアッセイに特に適し、上記欠点を克服している蛍光無機物質を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0013】
(F)RET効率を高めることが、本発明の他の目的である。高い(F)RET効率は、該方法の感度を高めて、例えば、シグナル/ノイズ比率を改良する。
【0014】
さらに、(F)RETベースアッセイは、このアッセイの総合感度を高めるために、高い量子収量(放出プロトンの、吸収プロトンに対する比率)を有するドナー分子を必要とする。それ故、高い量子収量を有する無機蛍光粒子を提供することが、本発明の他の目的であり、それは、無機蛍光粒子をバイオアッセイにおけるもの以外の用途のためにも特に魅力的にする。
【0015】
本発明の他の目的によると、これらの蛍光物質の製造のための特定の方法が提供される。
【0016】
最後に、無機ナノ粒子状物質に基づくバイオアッセイを提供することが目的である。
【0017】
発明の概要
上記技術的目的は、(a)第1金属塩又は酸化物でできているコアと、該コアを囲む(b)発光性であり非半導体特性を有する第2金属塩又は酸化物でできているシェルとを含む発光性無機ナノ粒子、及び以下に記載するそれらの製造方法によって、解決されている。
【0018】
発明の詳しい説明
1.発光性ナノ粒子
本発明の発光性、特に光ルミネッセンス性粒子は、(a)第1金属塩又は酸化物でできているコアと、該コアを囲む(b)第2金属塩又は酸化物でできている発光性非半導体シェルとを含む。
【0019】
「発光(ルミネセンス:luminescence)」は、特許請求するナノ粒子がエネルギー(例えば、光子(IR、可視、UV)、電子線、X線等の形態の)を吸収して、次に、それをより低いエネルギーの光として放射する該ナノ粒子の性質を特徴付ける。明細書及び特許請求の範囲を通して「発光性(ルミネセンスの:luminescent)」なる用語が、より具体的で、好ましい意味である「光ルミネセンスの(photoluminescent)」をも包含することを、理解すべきである。
【0020】
「光ルミネセンス(photoluminescence)」とは、無機金属塩が特定エネルギーの光子(例えば、UV、可視)を吸収し、ある一定の期間にわたってより低いエネルギーの光(より長い波長、例えば、UV、可視、IR)を放射する該無機金属塩の能力と理解される。発光期間は、10−7又は10−8秒までの励起状態の寿命に対応し得、それは典型的には蛍光と呼ばれるが、さらに長い時間にも対応することができる。ランタニドをドープした塩、例えば硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物に関しては、典型的にミリ秒のオーダー(例えば、1〜20ms)の励起状態の寿命が観察される。
【0021】
本発明によると、シェル物質とコア物質の両方とも半導体特性を示さないことが好ましい。
【0022】
シェルとコアの両方とも、結晶性物質を構成することも好ましい。このことは、X線粉末回折パターンによって確認することができる。
【0023】
特許請求したコア/シェル粒子の形状は、例えば、針状、楕円又は球形であることができ、後者の2つのオプションが好ましい。
【0024】
特許請求したコア/シェル・ナノ粒子は、好ましくは、それらの最長軸に沿って測定した1〜100nm、より好ましくは1〜50nmの平均サイズを有する。最大30nm、最大20nm、最大10nm、例えば2〜8nm又は4〜6nmの平均サイズがさらにいっそう好ましい。各場合に、標準偏差は好ましくは30%未満、特に10%未満である。
【0025】
粒度及び分布は、既に挙げた論文にK.Riwotzki et al.及びM.Haase et al.がさらに述べている手法によって、例えば透過型電子顕微鏡写真(TEM)によって測定することができる。ゲル透過クロマトグラフィー及び超遠心分離も、粒度を測定することができる。
【0026】
シェルの厚さは、好ましくは、少なくとも2つの単層である。シェル厚さの好ましい上限は、コア直径(非球形粒子では、最長軸に沿って測定)2つ分、より好ましくはコア直径1つ分、例えばその2/3である。
【0027】
本発明の第1実施態様によると、コア(a)は、シェルの電子励起後にシェルからエネルギーを受容しない金属塩若しくは酸化物で、特に非発光性金属塩若しくは酸化物でできており、(b)シェルは、発光性の、特にドープされた金属塩若しくは酸化物でできている。
【0028】
本出願を通して「ドーピング」は、広い意味で理解するべきである。用いるドーパントの上限は、発生したルミネセンスが濃度消光現象によって減衰しないほど充分に低くあるべきである。対応するように、この上限は、ドーピング・イオンの種類及び、各コア物質に特異的である、格子中のドーパント金属イオン間の距離のような要因に依存する。好ましくは、ホスト物質は、50モル%まで、好ましくは0.1〜45モル%、例えば0.5〜40モル%又は1〜20モル%の量でドーパントによって置換される。
【0029】
さらに、組み入れるドーパント金属の種類に関する特定の制限は、同ドーパント金属が吸収した光子を発光性放射線に転換することができるかぎり、存在しない。したがって、例えば、Ag、Cu、Co又はMnのような金属(例えば、ホスト金属としての亜鉛と組み合わせて)を用いることができる。しかし、ランタニド金属のルミネセンスはその格子環境から特に独立しているので、ランタニド金属によるドーピングが好ましい。一般に、二価又は三価のドーパント、特にランタニド・ドーパントの使用が好ましい。二価ランタニド(+II酸化状態)は、比較的強い吸収ではあるが、比較的幅広い放射バンドを特徴とする。この理由から、これらはエネルギーを他の発光性金属(例えば、Eu2+〜Mn2+)に転移するセンシタイザー(sensitizer)として適当に用いることができる。比較的シャープなバンドの形状で発光する三価ランタニド(酸化状態+III)の能力は、それらを単独での使用のために特に魅力的なドーパントにしているが、後に説明するように、三価ランタニド・ドーパント系の適当な組み合わせも存在する。
【0030】
シェルのための適当なドーパント物質は、用いるホスト物質に依存して、発光特性を有する、Al、Cr、Tl、Mn、Ag、Cu、As、Nb、Ni、Ti、In、Sb、Ga、Si、Pb、Bi、Zn、Co、特に、Mn、Ag、Cu、Bi、Cr、Sn、Sb及び好ましくはランタニド、特にCe(58)、Pr(59)、Nd(60)、Sm(62)、Eu(63)、Gd(64)、Tb(65)、Dy(66)、Ho(67)、Er(68)、Tm(69)若しくはYb(70)又はこれらの組み合わせを包含する。
【0031】
ランタニド金属のルミネセンスは、その格子環境から特に独立しているので、ランタニド金属によるドーピングが好ましい。
【0032】
実用的な見地(蛍光の種類、強度等)から、Ce、Tb、Eu、Nd、Dy、Th、Sm、Gd、Ho、Er及びYbは、最も興味深い発光特性を示す。
【0033】
Er3+、Nd3+及びHo3+は1300〜1600nmで放射するので、これらは電気通信分野のために特に興味深い。Ceは、例えばNd、Dy又はTbのような、他のドーパント物質と組み合わせて、好ましく用いられる。Ceは、250〜300nmの波長を有するUV光線を強く吸収することが知られているが、ホスト格子(例えば、ホスフェート)に依存して、約330nmにかなり幅広いルミネセンス・バンドを示す。吸収したエネルギーを転移することができる他のドーパントと組み合わせて用いる場合には、非常に効果的な発光系を得ることができる。ドーパント金属の他の魅力的な組み合わせは、YbとErであり、この組み合わせは、Er3+よりも10倍大きい吸収断面積と、980nmにおいてEr3+よりも非常に幅広いピークとを有するYb3+を介して、Er3+が間接的にポンピングされる、Er3+をドープした光増幅器において非常に重要である。Nd3+とGd3+とを組み合わせることもできる。
【0034】
前述したように、これらのランタニド金属組み合わせをシェルのためのドーパントとして用いることのみが可能であるのではない。大きい吸収断面積を有しかつ少量の他の金属(例えば、Tb3+、Er3+、Gd3+)によってその一部を置換されるランタニド金属イオン(例えば、Ce3+、Yb3+、Nd3+)をホスト金属として用いることも、同様に効果的である。この理由から、ランタニド塩(例えば、Ce3+、Yb3+、Nd3+塩)をシェルのホスト物質として用いることもできる。
【0035】
生物学的アッセイに用いるような、水性媒質中での用途のためには、最も好ましいドーパントは、水との相互作用を最小にするために可視領域でのルミネセンスを示すもの(例えば、Tb、Dy、Tm、Sm)であり、さもなければ水は発光を吸収しうる。
【0036】
シェルのためのホスト物質は、具体的に限定される訳ではなく、既知の非発光性金属酸化物又は塩、例えば、硫化物、セレン化物、スルホセレン化物、オキシ硫化物、リン酸塩、ハロリン酸塩(haophosphates)、ヒ酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩、ガリウム酸塩、ケイ酸塩、ゲルマニウム酸塩、酸化物、バナジン酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、アルカリハロゲン化物(alkalihalogenates)、他のハロゲン化物、特にフッ化物、リン化物、又は窒化物から選択されうる。硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物の使用が特に好ましい。
【0037】
これらの塩の金属は、好ましくは、主族1、2、13若しくは14、亜族3、4、5、6、7、又はランタニドに属する。大抵の発光性ドーパントは二価若しくは三価金属イオンであるので、シェルのための対イオンとして、非発光性二価若しくは三価金属原子、例えば、2族の金属(アルカリ土類金属、例えばMg、Ca、Sr若しくはBa)、又は3族(Sc、Y、若しくはLa)の金属、又は13族の金属(例えば、Al、Ga若しくはIn)或いはZnを用いることが好ましい。
【0038】
ホスト金属塩の好ましい実施態様は、下記を含む:
主族2(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(元素58〜71、即ち、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLu)から選択される対応する数の金属(電荷中立性を保証するため)のリン酸塩;
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属の硫酸塩;
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又は13族(Al、Ga、In、Tl)又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属のホウ酸塩;
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属のフッ化物;
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のアルミン酸塩(例えば、Al5O12又はAlO4);
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のガリウム酸塩(例えば、Ga5O12);
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、12族(例えば、Zn、Cd)又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属のケイ酸塩(例えば、SiO3若しくはSiO4);
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のバナジン酸塩(例えば、VO4);
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のタングステン酸塩(例えば、WO4);
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のモリブデン酸塩(例えば、MoO4);
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のタンタル酸塩(例えば、TaO4);或いは
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のヒ酸塩(例えば、AsO4)。
【0039】
特定のドーパントのための適当なホスト物質を選択する場合には、当該技術分野で知られているように、ホストとドーパントの金属が好ましくは同じ原子価及び類似の(許容差、例えば±20%)又は同一のイオン直径を有するべきであることを、さらに考慮すべきである。同時に、ドーパントとホスト金属が、同じ又は類似の格子定数(単数又は複数)(許容差、例えば±20%)を有する同じ又は類似の格子型の結晶を特定のアニオンと共に形成できるならば、このことは、典型的にドーパントとホスト金属の適合性を高める。
【0040】
BaとLaは、二価(+II)ランタニドのイオン直径に非常に類似するイオン直径を示すので、コアのためのホスト物質金属としてのBaとLaによって、しばしば、上記基準が満たされることができる。同じ理由から、La塩とY塩とは、三価(+III)ランタニド・ドーパントのために適したホスト物質である。
【0041】
発光性シェル物質の具体的な例は、例えば、LiI:Eu;NaI:Tl;CsI:Tl;CsI:Na;LiF:Mg;LiF:Mg,Ti;LiF:Mg,Na;KMgF3:Mn;Al2O3:Eu;BaFCl:Eu;BaFCl:Sm;BaFBr:Eu;BaFCl0.5Br0.5:Sm;BaY2F8:A(A=Pr、Tm、Er、Ce);BaSi2O5:Pb;BaMg2Al16O27:Eu;BaMgAl14O23:Eu;BaMgAl10O17:Eu;BaMgAl2O3:Eu;Ba2P2O7:Ti;(Ba,Zn,Mg)3Si2O7:Pb;Ce(Mg,Ba)Al11O19;Ce0.65Tb0.35MgAl11O19:Ce,Tb;MgAl11O19:Ce,Tb;MgF2:Mn;MgS:Eu;MgS:Ce;MgS:Sm;MgS:(Sm,Ce);(Mg,Ca)S:Eu;MgSiO3:Mn;3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn;MgWO4:Sm;MgWO4:Pb;6MgO・As2O5:Mn;(Zn,Mg)F2:Mn;(Zn4Be)SO4:Mn;Zn2SiO4:Mn;Zn2SiO4:Mn,As;Zn3(PO4)2:Mn;CdBO4:Mn;CaF2:Mn;CaF2:Dy;CaS:A(A=ランタニド、Bi);(Ca,Sr)S:Bi;CaWO4:Pb;CaWO4:Sm;CaSO4:A(A=Mn,ランタニド);3Ca3(PO4)2・Ca(F,Cl)2:Sb,Mn;CaSiO3:Mn,Pb;Ca2Al2Si2O7:Ce;(Ca,Mg)SiO3:Ce;(Ca,Mg)SiO3:Ti;2SrO・6(B2O3)・SrF2:Eu;3Sr3(PO4)2・CaCl2:Eu;A3(PO4)2・ACl2:Eu(A=Sr,Ca,Ba);(Sr,Mg)2P2O7:Eu;(Sr,Mg)3(PO4)2:Sn;SrS:Ce;SrS:Sm,Ce;SrS:Sm;SrS:Eu;SrS:Eu,Sm;SrS:Cu,Ag;Sr2P2O7:Sn;Sr2P2O7:Eu;Sr4Al14O25:Eu;SrGa2S4:A(A=ランタニド、Pb);SrGa2S4:Pb;Sr3Gd2Si6O18:Pb,Mn;YF3:Yb,Er;YF3:Ln(Ln=ランタニド);YLiF4:(Ln=ランタニド);Y3Al5O12:Ln(Ln=ランタニド);YAl3(BO4):Nd,Yb;(Y,Ga)BO3:Eu;(Y,Gd)BO3:Eu;Y2Al3Ga2O12:Tb;Y2SiO5:Ln(Ln=ランタニド);Y2O3:Ln(Ln=ランタニド);Y2O2S:Ln(Ln=ランタニド);YVO4:A(A=ランタニド、In);Y(P,V)O4:Eu;YTaO4:Nb;YAlO3:A(A=Pr,Tm,Er,Ce);YOCl:Yb,Er;LnPO4:Ce,Tb(Ln=ランタニド又はランタニドの混合物);LuVO4:Eu;GdVO4:Eu;Gd2O2S:Tb;GdMgB5O10:Ce,Tb;LaOBr:Tb;La2O2S:Tb;LaF3:Nd,Ce;BaYb2F8:Eu;NaYF4:Yb,Er;NaGdF4:Yb,Er;NaLaF4:Yb,Er;LaF3:Yb,Er,Tm;BaYF5:Yb,Er;Ga2O3:Dy;GaN:A(A=Pr,Eu,Er,Tm);Bi4Ge3O12;LiNbO3:Nd,Yb;LiNbO3:Er;LiCaAlF6:Ce;LiSrAlF6:Ce;LiLuF4:A(A=Pr,Tm,Er,Ce);Li2B4O7:Mn,SiOx:Er,Al(0≦x≦2);Y2O3:Ln(Ln=ランタニド、特にEu)、Y2O2S:Eu;Y2SiO5:Eu;SiO2:Dy;SiO2:Al、Y2O3:Tb、CaSiO3:Ln、CaS:Ln、CaO:Lnであり、ここでLn=1、2又は3個のランタニドである。
【0042】
ホスト格子型によって分類した場合に、下記の好ましい実施態様をさらに列挙することができる。
【0043】
1.ハロゲン化物:例えば、XY2(X=Mg,Ca,Sr,Ba;Y=F,Cl,I)、CaF2:Eu(II)、BaF2:Eu;BaMgF4:Eu;LiBaF3:Eu;SrF2:Eu;SrBaF2Eu;CaBr2:Eu−SiO2;CaCI2:Eu;CaCI2:Eu−SiO2;CaCI2:Eu,Mn−SiO2;CaI2:Eu;CaI2Eu,Mn;KMgF3:Eu;SrF2:Eu(II);BaF2:Eu(II),YF3,NaYF4,:MgF2:Mn;MgF2:Ln(Ln=ランタニド)。
【0044】
2.アルカリ土類硫酸塩:例えば、XSO4(X=Mg,Ca,Sr,Ba)、SrSO4:Eu、SrSO4:Eu,Mn、BaSO4:Eu、BaSO4:Eu,Mn、CaSO4、CaSO4:Eu、CaSO4:Eu,Mn、並びにさらにマグネシウムと組み合わせた、混合アルカリ土類硫酸塩、例えば、Ca,MgSO4:Eu,Mn。
【0045】
3.リン酸塩とハロリン酸塩:例えば、CaPO4:Ce,Mn、Ca5(PO4)3Cl:Ce,Mn、Ca5(PO4)3F:Ce,Mn、SrPO4:Ce,Mn、Sr5(PO4)3Cl:Ce,Mn、Sr5(PO4)3F:Ce,Mn、(後者は、さらにEu(II)で共ドープされる(codoped)か又はEu、Mnで共ドープされ)、α−Ca3(PO4)2:Eu;β−Ca3(PO4)2:Eu,Mn;Ca5(PO4)3Cl:Eu、Sr5(PO4)3Cl:Eu、Ba10(PO4)6Cl:Eu、Ba10(PO4)6Cl:Eu,Mn、Ca2Ba3(PO4)3Cl:Eu、Ca5(PO4)3F:Eu2+X3+;Sr5(PO4)3F:Eu2+X3+(X=Nd,Er,Ho,Tb);Ba5(PO4)3Cl:Eu;β−Ca3(PO4)2:Eu;CaB2P2O9:Eu;CaB2P2O9:Eu;Ca2P2O7:Eu;
Ca2P2O7:Eu,Mn;Sr10(PO4)6Cl2:Eu;(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu;LaPO4:Ce;CePO4:LaPO4:Eu、LaPO4:Ce、LaPO4:Ce,Tb、CePO4:Tb。
【0046】
4.ホウ酸塩:例えば、LaBO3;LaBO3:Ce;ScBO3:Ce;YAlBO3:Ce;YBO3:Ce;Ca2B5O9Cl:Eu;xEuO・yNa2O・zB2O3。
【0047】
5.バナジン酸塩:例えば、YVO4、YVO4:Eu、YVO4:Dy、YVO4:Sm、YVO4:Bi、YVO4:Bi,Eu、YVO4:Bi,Dy、YVO4:Bi,Sm、YVO4:Tm、YVO4:Bi,Tm、GdVO4、GdVO4:Eu、GdVO4:Dy、GdVO4:Sm、GdVO4:Bi;GdVO4:Bi,Eu、GdVO4:Bi,Dy、GdVO4:Bi,Sm;YVO4:Eu、YVO4:Sm、YVO4:Dy。
【0048】
6.アルミン酸塩:例えば、MgAl2O4:Eu;CaAl2O4:Eu;SrAl2O4:Eu;BaAl2O4:Eu;LaMgAl11O19:Eu;BaMgAl10O17:Eu;BaMgAl10O17:Eu,Mn;CaAl12O19:Eu;SrAl12O19:Eu;SrMgAl10O17:Eu;Ba(Al2O3)6:Eu;(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu;CaAl2O4:Eu,Nd;SrAl2O4:Eu,Dy;Sr4Al14O25:Eu,Dy。
【0049】
7.ケイ酸塩:例えば、BaSrMgSi2O7:Eu;Ba2MgSiO7:Eu;BaMg2Si2O7:Eu;CaMgSi2O6:Eu;SrBaSiO4:Eu;Sr2Si3O6.SrCl2:Eu;Ba5SiO4Br6:Eu;Ba5SiO4Cl6:Eu;Ca2MgSi2O7:Eu;CaAl2Si2O8:Eu;Ca1.5Sr0.5MgSi2O7:Eu;(Ca,Sr)2MgSi2O7:Eu、Sr2LiSiO4F:Eu。
【0050】
8.タングステン酸塩とモリブデン酸塩:例えば、X3WO6(X=Mg,Ca,Sr,Ba)、X2WO6(X=Li,Na,K,Rb,Cs)、XMoO4(X=Mg,Ca,Sr,Ba)、並びにポリモリブデート又はポリタングステート又は対応するヘテロ−若しくはイソ−ポリ酸の塩。
【0051】
9.ゲルマニウム酸塩:例えば、Zn2GeO4
10.さらに、下記クラス:ALnO2:Yb,Er(A=Li,Na;Ln=Gd,Y,Lu);Ln2O3:Yb,Er(Ln=La,Gd,Y,Lu);LnAO4:Yb,Er(Ln=La,Y;A=P,V,As,Nb);Ca3Al2Ge3O12:Er;Gd2O2S:Yb,Er;La2S:Yb,Er。
【0052】
本発明の第1態様によると、コア物質、即ち、金属塩又は酸化物は、その電子励起状態にある発光性シェルからのエネルギー転移を受容しない。
【0053】
この必要条件は、電子的基底状態と第1電子励起状態との間のエネルギー的距離が、選択した発光性シェルの第1電子励起状態とその基底状態との距離よりも大きい電子状態のみを有するコア金属塩又は酸化物によって常に満たすことができる。これらの状況下で、シェルによって吸収されたエネルギー(例えば、UV、可視、IR)は、コア金属原子又はアニオンに伝達されることはできない。これによって生じる、シェルにおけるエネルギー局在は、表面クエンチング現象を強化し、粒子の総(F)RET効率を高めると考えられる。好ましい1実施態様によると、コアの塩又は酸化物は非発光性であり、したがって、励起シェルからエネルギーが移送されることができる吸収バンド(UV、可視又はIR)を有さない。非発光性物質はしばしば発光性物質よりも安価であるので、このことは経済的にも有利である。
【0054】
コア物質が、ドープされたシェルのホスト物質に一致することが、好ましい。
【0055】
したがって、コアを形成する、適当なアニオンは、上記と同じであり、非限定的に、ホスフェート、ハロホスフェート、アルセネート、スルフェート、ボレート、アルミネート、ガレート、シリケート、ゲルマネート、オキシド、バナデート、ニオベート、タンタレート、タングステート、モリブデート、アルカリハロゲネート、その他のハライド、又はニトリドを包含する。このタイプのナノ粒子金属塩は、PCT/DE01/03433に開示されている。
【0056】
コア金属原子の選択を支配する唯一の基準は、それらが光子照射後のシェルからの発光を受容する能力を有さないことである。この目的のために用いることができる、好ましい金属イオンは、シェルのホスト物質のために上述したものと同じである。これらは、非限定的に、2族金属(アルカリ土類金属、例えば、Mg、Ca、Sr若しくはBa)、3族金属(例えば、Sc、Y若しくはLa)、亜鉛、又は13族金属(例えば、Al、Ga若しくはIn)を包含する。コア物質の表面上で成長するシェル物質の適性を高めるために、コア物質として、ドープされたシェルのホストを構成するものと同じ塩を選択することがさらに好ましいが、絶対的に必要であるという訳ではない。この要件が満たされない場合には、コアのホスト物質とシェル物質とが同じ格子型に属して、非常に類似した(許容差、例えば±20%)又は同一の格子定数を示すことが好ましい。
【0057】
第2実施態様によると、(a)コアは第1金属塩又は酸化物(「ドナー」)を含み、その第1金属又は酸化物は、励起後に励起エネルギーを、(b)第2シェル形成発光性金属塩又は酸化物(「アクセプター」)に転移させることができ、その第2シェル形成性発光金属塩又は酸化物は同エネルギーをルミネセンスとして放射する。
【0058】
適当なドナー−アクセプター金属組み合わせは、例えば、上記ドーパントから、特にランタニドから選択することができ、一般に、ドナー金属の電子基底状態と第1励起状態との間の距離が、アクセプター金属の対応する距離よりも大きいエネルギーを含むことを必要とする。
【0059】
本発明の第2実施態様にコア物質として用いることができる、適当な光子エネルギー吸収体(ドナー)の例は、例えばCe3+、Yb3+、Nd3+又はEu2+のような、比較的高い吸収断面積を有するランタニドイオンである。Ce3+が、シェル物質金属及びアクセプターとしてのTb3+、Dy3+又はNd3+と組み合わせて、例えば、対応する硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物の形態で好ましく用いられる。
【0060】
例えばリン酸塩、硫酸塩又はフッ化物のようなYb3+塩は、コア物質として、好ましくは、それぞれ、シェル物質としての例えば硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物のようなEr3+塩と組み合わされる。このことは、Yb3+を介しての間接的なEr3+ポンピングを可能にする。
【0061】
シェル構成の点では、本発明の第1実施態様に関連して述べたホスト物質の高濃度ドーパント物質として、アクセプター原子を用いることができる。しかし、コアからシェルへのエネルギー転移の効率を高めるために、シェル全体が対応するアクセプター塩、例えば金属の硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物から成ることも可能である。
【0062】
第2実施態様のコア物質は、上述したように、ホスト物質の高濃度ドーパントとしてドナー金属を含むことができる。或いは及び好ましくは、コアは対応するドナー金属塩から成る。
【0063】
コア塩のアニオンは、選択したシェル物質の成長を可能にする適合性アニオンから自由に選択することができる。適当なアニオンの例は、第1実施態様に関して記載されており、スルフェート、ホスフェート又はフッ化物が好ましい。
【0064】
いわゆる第2実施態様のための、1つの特定の好ましい例は、CePO4/TbPO4 コア/シェル粒子である。
【0065】
第2実施態様によると、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩又はゲルマニウム酸塩に対応するアニオンはエネルギーを吸収し、同エネルギーを適当なシェル物質(アクセプター)に転移させることができ、このシェル物質が該エネルギーを発光として放射するので、これらの塩をコア物質(ドナー)として用いることも可能である。これらを、発光性センターとしてそれ自体作用し、したがって発光を強化する、バナジン酸塩としてのBi3+及び/又はEu3+のような、ドーパント金属と組み合わせることもできる。コアは、例えば、3族金属(例えば、Sc、Y若しくはLa)又は13族金属(例えば、Al、Ga若しくはIn)のバナジン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩又はゲルマニウム酸塩を含む又はこれらの塩から成ることができる。これを、ランタニドがエネルギー・アクセプターとして作用するシェル物質としてのランタニド塩、好ましくはリン酸塩、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸又はゲルマニウム酸塩と組み合わせることが好ましい。具体的な例は、LaVO4/EuPO4、LaVO4/NdPO4、YVO4/DyPO4タイプのコア/シェル組み合わせを包含する。
【0066】
II.コア/シェル・ナノ粒子の合成
本発明の上記コア/シェル・ナノ粒子は、少なくとも下記2工程:
1.有機媒質中の第1金属塩又は酸化物のナノ粒子、例えば、金属の硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物ナノ粒子を含む、いわゆる「第1混合物」を調製する工程;
2.前記第1混合物、形成すべきシェルのためのアニオン供給源、特にホスフェート、スルフェート又はフルオリド供給源、及びシェル形成金属イオンと前記金属イオンのための有機錯化剤を含む「第2混合物」を50〜350℃の温度において、前記ナノ粒子コアの周囲にシェルが形成されるまで反応させる工程;
を含む、以下及び特許請求の範囲に述べる方法で合成される。
【0067】
II.1 コア粒子の第1工程段階と合成
コア物質として用意され、いわゆる「第1混合物」中に存在するナノ粒子は、当該技術分野で知られた方法によって合成することができる。
【0068】
一般に、湿式合成方法は粒子サイズにより良好な制御を可能にするので、湿式合成方法が乾式形成方法に比べて好ましい。さらに、湿式合成方法では、形成されたナノ粒子の凝集をより容易に抑制することができる。
【0069】
既知の湿式合成方法、例えば、ゾル−ゲル方法のなかでも、熱水合成、又は結晶成長を制御する錯化剤による有機合成を用いることができる。さらに、J.W.Stouwdam及びF.C.J.M.Van Veggelが既述した論文に述べている合成方法で、具体的にフッ化物を製造することが可能である。したがって、LaF3ナノ粒子と他のフッ化物は、エタノール/水中のジ−n−オクタデシルジチオリン酸アンモニウムとNaFの溶液を加熱することによって製造することができる。その後に、水中の対応金属硝酸塩の溶液を滴加し、続いて、該溶液を75℃で2時間撹拌し、室温に冷却する。しかし、この方法の欠点は、形成された粒子がまだ、比較的幅広い粒度分布を示し、遠心分離によるさらなる精製工程を必要とすることである。
【0070】
ランタニドをドープしたリン酸塩の「熱水合成(hydrothermal synthesis)」は、例えば、H.Meyssamy et al.によってAdvanced Materials(1999),Vol.11,No.10,840頁以下の “Wet-chemical synthesis of doped colloidal nanomaterials:particles and fibres of LaPO4:Eu,LaPO4:Ce and LaPO4:Ce,Tb”に述べられている。
【0071】
硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物ナノ粒子の出発物質として、好ましくは、金属の塩化物、硝酸塩又は酢酸塩が用いられる。反応は、反応中に高圧、好ましくは10〜20bar(1,000kPa〜2,000kPa)の圧力を維持するようにオートクレーブにおいて反応媒質としての水中で行なわれる。
【0072】
熱水合成は、しばしば針状形を有する、比較的大きい粒子を生じる。さらに、比較的幅広い粒度分布が典型的に生成物を特徴付ける。H.Meyssamy et al.による上記方法では、25nm未満の直径を有するナノ粒子の割合は、例えば、約20%のみである。これらは、その後の遠心分離工程によって単離することができる。
【0073】
熱水合成の他の例は、PCT/DE01/03433に見い出すことができる。この文献は、より一般的なレベルで、具体例を用いて、高圧下(オートクレーブ)水中でのナノ粒子状のケイ酸塩、バナジン酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、タンタル酸塩等の合成を開示している。さらに、この文献は、1,6−ヘキサンジオール中のアルミン酸塩又はガリウム酸塩の合成の関連方法(この文献中では、「グリコサーマル(glycothermal)」合成とも呼ばれる)に関している。
【0074】
さらに、金属錯化活性によって結晶成長を制御すると考えられる、ポリオール及びスルホキシドから選択される有機媒質中で、周囲圧力下で、場合よってドープされた硫酸塩を製造することが可能である。この方法は、以下では「ポリオール又はスルホキシド合成」と呼ぶことにする。
【0075】
用いるポリオールは、2個又は3個のヒドロキシ基を有することが好ましく、グリセロール、エチレングリコール又はポリエチレングリコールによって例示されることができ、これにより、好ましくは、低分子量ポリエチレングリコール(4までの好ましいエチレングリコール単位平均数)が用いられる。スルホキシドとしては、ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いることができる。この合成方法は、ドープされたホスト物質としてのアルカリ土類金属硫酸塩、例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムの硫酸塩の製造に好ましく用いられる。
【0076】
好ましい金属原子供給源は、対応する塩化物とそれらの水和物である。硫酸塩のための出発物質としては、好ましくは、アルカリ金属硫酸塩、硫酸アンモニウム又は有機カチオンを有する硫酸塩が用いられる。対応する硫酸水素塩も同様に適している。
【0077】
有機カチオンは、好ましくは4〜30個、特に4〜20個の炭素原子を有する塩基性のN−含有脂肪族、芳香族及び脂肪族/芳香族物質から好ましくは選択される。適当なカチオンは、例えば、
・その4個の置換基が、アルキルであって好ましくは1〜10個(好ましくは1〜5個)の炭素原子を有するもの若しくはベンジルから独立的に選択されることができる第4級アンモニウム若しくはホスホニウム、又は
・例えばヒドラジン、アマンタジン、ピリジン若しくはコリジンのような、プロトン化芳香族塩基を包含する。
【0078】
同様に、硫酸塩ナノ粒子は、例えば、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸テトラメチルアンモニウム、硫酸ビス−テトラブチルアンモニウム、又は硫酸水素トリエチルアンモニウムのような出発物質から製造することができる。他の適当な出発物質は、硫酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アルカリ金属、硫酸アマンタジン、硫酸エチレンジアンモニウム、及び硫酸ヒドラジニウムである。
【0079】
硫酸塩ホスト物質にドーピングするために、対応するドーパントの硝酸塩又はハロゲン化物、特に対応する金属塩化物を用いることができる。
【0080】
硫酸水素塩が出発物質中に含有される場合には、例えばイミダゾールのような有機塩基が、酸スカベンジャーとして反応媒質に好ましくは加えられる。反応は、好ましくは50〜240℃の温度において行なわれ、これによると、グリセロールのためには50〜100℃の低い温度範囲が好ましく、他のポリオール又はスルホキシド溶媒のためには160〜240℃、特に160〜180℃の範囲内の高い温度が最も適している。得られた粒子は0.2〜50nmのオーダーの平均直径を有し、水性媒質中に容易に分散可能である。
【0081】
ゾル−ゲル方法、熱水合成、グリコサーマル合成又はいわゆる「ポリオール又はスルホキシド合成」によって得られるナノ粒子コアは、特に、コア及び本発明の方法(シェル合成)の反応媒質が、それぞれ、極性に関してかなり異なる場合には、特許請求方法の第1工程に用いる有機媒質に分散可能ではないこともある。この理由から、ナノ粒子の分散可能性を高めるために、ナノ粒子に適当な極性有機化合物による後処理を行なうことが必要になる可能性がある。この後処理を、シェル合成に用いるのと同じ有機媒質(錯化剤)又は類似の極性の有機媒質によって行なうことが好ましい。
【0082】
例えば、シェル合成をN−又はP−含有媒質中で行なう予定である場合には、該後処理は、ゾル−ゲル方法、グリコサーマル若しくは熱水合成、又はいわゆる「ポリオール又はスルホキシド合成」によって得られたナノ粒子にN−又はP−含有媒質で後処理を行なうことを適当に含むことができる。
【0083】
この後処理は、該ナノ粒子を対応する有機化合物中で加熱することを含む。これは、ナノ粒子の表面に結合した水又は他の親水性残基を極性有機化合物によって交換するという効果を有する。上記理由から、極性有機化合物は、以下で「有機合成」及び第2工程段階に関連してさらに述べるように、金属イオンのためのN−及びP−含有錯化剤から好ましく選択される。しかし、他の官能基化された極性有機化合物(functionalised polar organic compounds)を用いることもできる。
【0084】
この後処理は、「ポリオール又はスルホキシド合成」で製造した硫酸塩には、その後の製造工程をポリオール及び/又はスルホキシド中で行なう場合には、必要とされない。
【0085】
この明細書の以下において「有機合成」と呼ぶ、さらなる好ましい方法によると、ナノ粒子コアの製造方法は、下記工程:
(a)少なくとも1種類の金属錯化剤と、場合によっては、少なくとも1種類の他の溶媒を含む有機反応媒質中で、反応媒質に溶解性若しくは分散性の金属供給源と、反応媒質に溶解性若しくは分散性のアニオン供給源、特にホスフェート、スルフェート又はフルオリド供給源とを反応させる工程;
(b)これによって形成されたナノ粒子状金属塩(例えば、リン酸塩、硫酸塩又はフッ化物)から反応媒質を場合によって除去する工程;及び
(c)場合によっては、ナノ粒子状塩を回収する工程
を含む。
【0086】
「有機媒質」とは、不可避な痕跡量は別として、水を含有しない有機溶媒と理解される。この有機媒質の沸点は、好ましくは、以下に記載する反応温度よりも高い。これは、例えば、150〜400℃であり、好ましくは180℃を超える、特に210℃を超える(周囲圧力において)。
【0087】
金属供給源の酸化され易さに依存して、この反応を例えば窒素又はアルゴンのような不活性ガス下で行なうことが好ましい。
【0088】
出発物質の純度に関して、少なくとも99.9%の純度を有する金属塩を用いることが望ましい。用いる全ての反応物質及び溶媒は、好ましくは、無水である及び/又は使用前に乾燥させる。しかし、しばしば水和物として用いられる金属塩化物は、好ましくは、長時間の乾燥処置を受けるべきではない。この理由は、これが反応媒質に不溶なオキシ塩化物の形成を促進する可能性があるからである。
【0089】
この反応は、好ましくは、50〜350℃の温度、例えば120〜320℃、特に180〜290℃の温度で行なわれる。適当な温度は、徐々に上昇する温度において反応物質の反応をモニターし、それによって、反応が充分な速度で進行する合成最低温度を測定することによって、当業者が容易に決定することができる。この目的のために、ナノ粒子を例えば、反応時間の増加に伴う粒子成長の研究を可能にする反応媒質のサンプルから、析出させることができる。
【0090】
適当な反応時間を同じ方法で決定することができ、適当な反応時間は10分間から48時間まで、特に30分間から20時間までの範囲である。
【0091】
反応の完了後に、反応混合物を室温に冷却することができる。ナノ粒子が反応中又は冷却後にまだ完全には析出していない場合には、最大収量を得るために、反応媒質にメタノールを加えることが可能であり、又はこの逆も可能である。
【0092】
理論に縛られる訳ではないが、「有機合成」に用いられる金属錯化剤が、形成されるナノ粒子の表面金属原子と配位結合して、それによって、出発物質が反応した後の粒子の成長を停止させると考えられる。この金属錯化剤が粒子表面に結合したままであり、このようにして、Oswald熟成(Oswald repening)のような、粒子間の凝集及び交換プロセスを防止又は軽減すると考えられる。このように、有機合成は、最長軸で測定した平均直径が好ましくは1〜10nm、特に2〜8nm、例えば4〜6nmであり、狭い粒度分布(標準偏差<30%、特に<10%)である、かなり小さい粒子を生じる。金属錯化剤は、金属イオンに配位結合することができる極性基と、少なくとも1つの第2分子部分(低極性、好ましくは疎水性)、例えば、好ましくは4〜20個、特に6〜14個の炭素原子を有する脂肪族、芳香族/脂肪族、又は純粋に芳香族分子部分との存在を特徴とする。
【0093】
金属錯化剤は、好ましくは、ホスホロ有機化合物又一置換若しくは二置換アミンである。
【0094】
後者のなかで、最も好ましい実施態様は、アルキル残基が好ましくは4〜20個、特に6〜14個の炭素原子を有するモノ−又はジアルキルアミン、例えばドデシルアミン又はビス(エチルヘキシル)アミンである。
【0095】
ホスホロ有機化合物に関して、下記物質の少なくとも1つを用いることが好ましい:
(a)ホスフィン酸エステル
【0096】
【化1】
【0097】
(b)ホスホン酸ジエステル
【0098】
【化2】
【0099】
(c)ホスホン酸トリエステル、最も好ましくは、トリアルキルホスフェート、例えばトリブチルホスフェート若しくはトリス(エチルヘキシル)ホスフェート
【0100】
【化3】
【0101】
(d)トリアルキルホスフィン、例えばトリオクチルホスフィン(TOP)
【0102】
【化4】
【0103】
又は
(e)トリアルキルホスフィンオキシド、例えばトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)
【0104】
【化5】
【0105】
(式中、R1、R2及びR3は、4〜20個、より好ましくは4〜14個、特に4〜10個の炭素原子を有する、分枝又は線状脂肪族(好ましくはアルキル)、脂肪族/芳香族又は芳香族残基から独立的に選択される)。芳香族残基はフェニルによって例示され、脂肪族/芳香族残基はトリル、キシリル又はベンジルによって例示されうる。
【0106】
ホスホロ有機化合物(a)〜(c)及び(e)の使用、とりわけ(a)〜(c)の使用が特に好ましい。
【0107】
金属錯化剤は、有機反応媒質中の唯一の溶媒であることができる。金属錯化剤は、それが唯一の溶媒である場合には、金属供給源として用いられる金属原子(単数又は複数)のモル量を基準にして少なくとも10molの量で、好ましく用いられる。好ましい上限は約1000molである。
【0108】
金属錯化剤の選択、特に疎水性分子部分の長さに依存して、多量の使用は、形成されるナノ粒子の完全な析出を妨げる可能性があるので、不利であると考えられる。
【0109】
それ故、「少なくとも1種類の他の溶媒」を付加的に用いることが好ましい。この実施態様では、金属錯化剤(「第1溶媒」)は、1molの金属イオン(金属供給源として用いられる)に基づいて10mol未満、より好ましくは0.9〜6molのモル量で好ましくは用いられる。「他の溶媒(単数又は複数)」の量は、1molの金属イオン(金属供給源として用いられる)に基づいて好ましくは5〜100molである。
【0110】
「他の溶媒(単数又は複数)」は、金属錯化剤と混合可能であるべきであり、合成最低温度を超える沸点、好ましくは150℃を超える、より好ましくは180℃を超える、最も好ましくは210℃を超える沸点を有するべきである。400℃を超える沸点は好ましくない可能性がある。
【0111】
「他の溶媒(単数又は複数)」は、炭化水素に基づく溶媒であるか又は少なくとも1つの極性基を有することができる。金属塩出発物質中に結晶水が存在し、結晶水が、金属に配位結合することができる溶媒によって交換されることになる場合には、後者の使用が好ましい。「他の溶媒(単数又は複数)」は、好ましくは、下記から選択される:
・少なくとも1つのエーテル官能基を有する溶媒;特に、アルキル基あたり5〜10個の炭素原子を有するジアルキルエーテル、例えば、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル若しくはジイソアミルエーテル;トータル12〜18個の炭素原子を有するジアリールエーテル若しくはジアラルキルエーテル、例えば、ジフェニルエーテル若しくはジベンジルエーテル;又はモノ−若しくはポリエチレングリコール(PEG)ジアルキルエーテル(各アルキルが好ましくは1〜4個の炭素原子を有し、PEG単位の平均数は好ましくは10までである)、例えば、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、及び/又はテトラエチレングリコールジメチルエーテル;
・好ましくは、10〜18個の炭素原子、特に12〜16個の炭素原子を有する分枝又は非分枝アルカン、例えばドデカン又はヘキサデカン;及び/又は
・有機高沸点塩基、好ましくはN−含有脂肪族塩基、最も好ましくは、三置換アミン、特に、アルキル基あたり5〜10個の炭素原子を有するトリアルキルアミン化合物、例えばトリオクチルアミン若しくはトリス(2−エチルヘキシル)アミン、又は好ましくは3〜20個の炭素原子を有するN−含有芳香族塩基、例えばイミダゾール。
【0112】
これらの溶媒は、組み合わせて用いることもできる。有機高沸点塩基は、溶媒として役立つのみでなく、酸スカベンジャーとしても機能することができる。例えば、リン酸又はHFのような酸をアニオン供給源として用いる場合には、該塩基を該酸のハロゲン(単数又は複数)原子(単数又は複数)に関してほぼ等モル量(例えば、約0.6〜1.4mol)で用いることが好ましい。
【0113】
「カチオン供給源」は、任意の適当な(充分に反応性の)金属塩から選択することができ、好ましくは、金属塩化物、金属アルコキシド(アルコキシドは好ましくは1〜6個の炭素原子、特に、1〜4個の炭素原子を有する)、金属硝酸塩又は金属酢酸塩である。金属塩化物の使用が特に好ましい。金属塩水和物も用いることができる。しかし、反応前に結晶化水を除去することが好ましい。
【0114】
「アニオン供給源」は、好ましくは、PCT/DE01/03433に開示されている出発物質から選択される。ナノ粒子状硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、フッ化物、硫化物、ヒ酸塩又はケイ酸塩の合成のためには下記化合物が適当である:
a.硫酸、リン酸、ホウ酸又はHF、
b.合成混合物中に溶解性であるか又は少なくとも分散性である、硫化物、ヒ酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩又はフッ化物塩、特に、有機カチオンを有する塩、又はアルカリ金属塩、或いは
c.高温において分解するエステル、例えば、ホウ酸アルキルエステル、硫酸アルキルエステル、ヒ酸アルキルエステル、又はケイ酸アルキルエステル(例えば、テトラエチルオルトシリケート)。
【0115】
オプションbに関して、カチオンは、好ましくは4〜30個、特に4〜20個の炭素原子を有する塩基性N−含有脂肪族、芳香族及び脂肪族/芳香族物質から選択することが好ましい。適当なカチオンは、例えば、上述したような第4級アンモニウム若しくはホスホニウム、又はプロトン化芳香族塩基、例えばピリジン又はコリジンを包含する。リン酸塩ナノ粒子の製造のためには、リン酸二水素テトラブチルアンモニウム、リン酸二水素テトラメチルアンモニウム又はリン酸二水素トリエチルアンモニウムをアニオン供給源として用いることができる。対応して、硫酸塩ナノ粒子は、例えば硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラメチルアンモニウム、硫酸ビス−テトラブチルアンモニウム又は硫酸水素トリエチルアンモニウムのような出発物質から製造することができる。フッ素含有アニオンによるナノ粒子の製造のためには、トリスフッ化水素酸トリエチルアミン、フッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヒドロジェンジフルオリド、フッ化水素酸ドデシルアミン又は低溶解性フッ化水素酸ピリジン、又はフッ化水素酸コリジンを用いることができる。
【0116】
金属イオン(カチオン供給源)が有機媒質中にあまりにも緩慢に溶解する場合には、低級アルコール、好ましくはメタノール中に同金属イオンを溶解してから、金属錯化剤及び反応媒質を加えることが好ましい。次に、メタノールと結晶水を蒸留と乾燥によって除去してから、他の反応物質を加える。
【0117】
特許請求した方法によると、上記合成法の1つによって得られうるナノ粒子は、有機媒質中の分散物として提供される(いわゆる「第1混合物」)。
【0118】
有機媒質は、120℃を超える、特に180℃を超える、しかし400℃未満の沸点を有する1種類以上の極性溶媒に基づくものであることが好ましい。これは、好ましくは、「金属錯化剤」から、特に、前記モノ−若しくはジアルキルアミン(アルキル残基が4〜20個のC原子を有する)、ホスホロ有機化合物、ポリオール及びスルホキシドから選択される。好ましくは、有機媒質は、金属錯化剤と、場合により有機合成に関連して述べた「少なくとも1種類の他の溶媒」を含有する。
【0119】
対応して、特許請求した方法の第1工程における「有機」合成又は「ポリオール若しくはスルホキシド」で製造したナノ粒子を、単離することなく用いることが可能であり、好ましい。
【0120】
有機媒質がナノ粒子コアのための分散媒質として役立つことを注目すべきである。したがって、有機媒質が金属原子に配位結合する能力のために、ナノ粒子がコロイド(非溶解)状態に維持されてからシェルがそれらの上で成長することができる。
【0121】
II.2.第2工程段階
第2工程では、
・上記第1混合物、
・形成されるシェルのためのアニオン供給源、特に、ホスフェート、スルフェート又はフルオリド供給源、及び
・シェル形成性金属イオン(及びそれらの対イオン)と、前記金属イオンのための有機錯
化剤を含む、いわゆる「第2混合物」
を50〜350℃の温度において、前記ナノ粒子の周囲に発光性シェルが形成されるまで、反応させる。
【0122】
一般に、時期尚早な反応を避けるために、アニオン供給源と第1混合物とを別々にしておくことが好ましい。
【0123】
第2工程段階は、下記3実施態様(A)、(B)及び(C)によって行なうことができる:
方法(A)は次の工程:
有機媒質中に金属塩若しくは酸化物ナノ粒子、例えば金属硫酸塩、リン酸塩若しくはフッ化物ナノ粒子を含む第1混合物を調製する工程、
前記第1混合物を50〜350℃の温度に加熱する工程、
この第1混合物に、この温度において、形成されるシェルのためのアニオン供給源と、シェル形成性金属イオン及び前記金属イオンのための有機錯化剤を含む第2混合物とを滴下式にか又は別々に加える工程、及び
得られた混合物をこの温度において、前記ナノ粒子の周囲に発光性シェルが形成されるまで反応させる工程
を含む。
【0124】
例えば、2つの滴下ロートを用いる、アニオン供給源と第2混合物の別々の、しかし同時の添加は、シェルのための活性出発物質の濃度を低下させ、従って、シェルのための出発物質からの独立した粒子成長を減じることによって反応の選択性を高める。
【0125】
方法(B)は、次の工程:
有機媒質中に第1金属塩若しくは酸化物のナノ粒子、例えば金属硫酸塩、リン酸塩若しくはフッ化物ナノ粒子を含む第1混合物を調製する工程、
前記第1混合物にシェル形成アニオン供給源を加える工程、
得られた混合物を50〜350℃の温度に加熱する工程、
これに、シェル形成金属イオンと前記金属イオンのための有機錯化剤とを含む第2混合物を滴加する工程、及び
得られた混合物をこの温度において、前記ナノ粒子の周囲に発光性シェルが形成されるまで、反応させる工程
を含む。
【0126】
方法(A)と(B)は、より均質な粒子を形成する傾向があり、該粒子は、独立的に成長したシェル形成物質の粒子をより小さい割合でさらに含有する。
【0127】
方法(C)は、次の工程:
有機媒質中に第1金属塩若しくは酸化物のナノ粒子、例えば金属硫酸塩、リン酸塩若しくはフッ化物ナノ粒子を含む第1混合物を調製する工程、
前記第1混合物、形成されるシェルのためのアニオン供給源、及びシェル形成金属イオンと前記金属イオンのための有機錯化剤とを含む第2混合物を、好ましくは前記第2混合物に、前記第1混合物と前記アニオン供給源とを加えることによって、一緒にする工程、
及び
得られた混合物を50〜350℃の温度に、前記ナノ粒子の周囲に発光性シェルが形成されるまで、加熱する工程
を含む。
【0128】
意外にも、出発物質を徐々に添加、例えば滴加することが必ずしも必要でないことが、発見された。方法(C)によると、全部の部分を混合することによって、出発物質を一緒にすることができるとはいえ、所望のコア/シェル物質が高度な選択性で形成され、独立した粒子成長は殆どない。したがって、方法(C)は方法(A)及び(B)よりも容易に操作される。
【0129】
特に指定しない場合には、次の好ましい実施態様が3方法(A)、(B)及び(C)の全てに適用される。
【0130】
金属イオン供給源としては、任意の充分に反応性の金属塩、好ましくは、シェル金属イオンの塩化物又はアルコキシドを用いることができる。アルコキシド基は好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。
【0131】
任意の適当なアニオン供給源を、それが第1工程で形成されるコア粒子の周囲にシェルを形成することができる限り、用いることができる。
【0132】
シェルを形成する適当なアニオンは、非限定的に、ホスフェート、ハロホスフェート、アルセネート、スルフェート、ボレート、アルミネート、ガレート、シリケート、ゲルマネート、オキシド、バナデート、ニオベート、タンタレート、タングステート、モリブデート、アルカリハロゲネート、他のハライド、ニトリド、スルフィド、セレニド、スルホセレニド又はオキシスルフィドを包含する。
【0133】
PCT/DE01/03433に記載されているのと類似の又は同一の条件下において有機媒質中で適当に反応するシェル形成アニオンを用いることが、好ましい。例には、シリケート、ボレート、アルセネート、スルフィド、スルフェート、ホスフェート及びフルオリド、特にスルフェート、ホスフェート及びフルオリドが含まれる。この文献は、対応するナノ粒子状物質を形成するために用いることができるアニオン供給源も教示している。
【0134】
適当なシリケート、ボレート、アルセネート、スルフィド、スルフェート、ホスフェート及びフルオリド供給源に関して、特許請求する方法の第1工程に関して上述したアニオン供給源、特に、「ポリオール又はスルホキシド」及び/又は「有機」合成に用いるアニオン供給源も参照される。
【0135】
アニオン供給源は、「ポリオール又はスルホキシド」及び/又は「有機」合成に関して記載した溶媒の少なくとも1つ中の微細な分散物又は溶液として加えることが好ましい。
【0136】
アニオン供給源、特に、ホスフェート、フッ化物又はスルフェート供給源は、加えたシェル形成金属原子の全てと反応するために化学量論的に必要なモル量を基準にして、0.75〜3mol、特に0.75〜2molの量で好ましく用いられる。したがって、二元塩(AB)では、B(アニオン)対A(金属)の比率は、0.75:1から2:1までの範囲である。
【0137】
ホスフェートとフッ化物供給源、例えばリン酸又はHFは、リン酸塩又はフッ化物でできているコア又はコア/シェル粒子の「有機」合成に過剰量で用いることが好ましい。過剰なモル量は、化学量論的に必要なモル量を基準にして、好ましくは少なくとも1.05mol、より好ましくは1.1〜2mol、特に1.2〜1.6molである。
【0138】
同様に、硫酸塩コア又はコア/シェル粒子の「ポリオール又はスルホキシド」合成に、例えば硫酸(水素)第4級アンモニウム塩のようなスルフェート供給源を過剰量で用いることが好ましい。過剰なモル量は、化学量論的に必要なモル量を基準にして、好ましくは少なくとも1.05mol、より好ましくは1.1〜3mol、特に1.2〜2molである。
【0139】
第2混合物中に含有される有機錯化剤は、ナノ粒子の有機合成に関連して上述した有機錯化剤又は「ポリオール若しくはスルホキシド合成」に関して記載した溶媒から選択することもできる。
【0140】
一般に、シェル形成イオンの有効濃度をできるだけ低く維持することが望ましい。本発明によると、これは、この金属錯化剤を用いて、達成される。理論に縛られる訳ではないが、低濃度の反応性(非錯化)金属イオンが、新しい粒子の独立的な成長に関してシェル成長に有利に作用することが考えられる。
【0141】
好ましい実施態様によると、第1混合物に用いられる有機媒質と、第2混合物中に存在する錯化剤は、上記に挙げた、ホスホロ有機化合物、一置換/二置換アミン、ポリオール又はスルホキシドの1つである。有機媒質及び錯化剤と同じ極性有機化合物を用いることが、さらに好ましい。
【0142】
さらに、上記「少なくとも1種類の他の溶媒」を、有機錯化剤に対する同じ比率で用いることが好ましい。このことは、より低い量の金属錯化剤を、あたかもそれが唯一の溶媒を構成するかのごとく、用いることを可能にする。この場合、金属錯化剤とシェル形成金属イオンとのモル比率は、再び、好ましくは0.9:1〜6:1である。
【0143】
シェル物質のためのアニオン供給源が酸水素原子を有する場合には、上記塩基を用いることが好ましい。上記有機高沸点塩基(例えば、トリアルキルアミン)が、例えば、リン酸又はHFのようなアニオン供給源のための酸スカベンジャーとして、上記条件下で好ましく用いられる。この有機高沸点塩基は、典型的に、酸水素原子を有するアニオン供給源を用いる場合に、ケイ酸塩、ホウ酸塩、ヒ酸塩又は硫酸塩の合成に加えることもできる。方法(A)又は(B)によると、塩基は、金属供給源と錯化剤を含む「第2混合物」の成分として好ましく加えられる。
【0144】
金属錯化剤を含めた、溶媒(単数又は複数)の総量は、全ての出発物質を均質に溶解する又は分散させることが一般に好ましいので、当業者が容易に決定することができる。方法(A)と(B)では、アニオン供給源と金属供給源(第2混合物)とを溶解するためにほぼ同量の溶媒を用いることが好ましい。
【0145】
一般的に述べると、該反応は、特に指定しない限り、項目II.1で、「ポリオール又はスルホキシド」又は「有機」合成に関して前述したのと同じ又は類似の条件下で好ましく進行する。このことは、保護性不活性ガスの使用及び反応物質の乾燥にも該当する。
【0146】
残りの出発物質と一緒にするナノ粒子コアの量は、具体的に制限されず、主として、目標のシェル厚さに依存する。
【0147】
本発明の方法によると、反応媒質を50〜350℃、特に120〜320℃の温度に、第1工程段階で製造したナノ粒子コアの周囲に発光性シェルが形成されるまで加熱する。
【0148】
該反応は、フッ化物とリン酸塩に関しては、160〜240℃、特に180〜220℃の温度において、硫酸塩に関しては160〜180℃の温度において好ましく行なわれる。グリセロール中での硫酸塩シェルの形成は、さらにより低い温度(例えば、50〜100℃)をも可能にする。適当な温度は、温度を徐々に高めながらシェル成長をモニターし、それによって、シェルに用いる出発物質からの新しい粒子の発生のような好ましくない副反応なしに反応が充分な速度で進行する合成最低温度を測定することによって、当業者が容易に決定することができる。
【0149】
出発物質を滴加するような方法(AとB)では、添加時間は、好ましくは0.5〜10時間、特に1〜5時間の範囲である。
【0150】
好ましい反応時間は、30分〜48時間、特に1〜20時間、とりわけ1.5〜16時間の範囲である。この場合にも、例えば、反応媒質から採取したサンプルからナノ粒子を析出させ、TEM顕微鏡写真で粒度分布を研究することによって、反応をモニターすることが、適当な反応時間の決定を可能にする。Oswald熟成が観察されるや否や、即ち、より大きい粒子が小さい粒子を犠牲して成長し始めるならば、例えば冷却によって、反応を停止させなければならない。
【0151】
反応の完了後に、反応媒質を室温にまで冷却する。このことが既に、形成されるコア/シェル・ナノ粒子の析出を促進する。析出が不完全である場合には、反応媒質への析出溶媒(precipitating solvents)(例えば、メタノール)の添加又はこの逆の添加が、反応生成物の完全な回収を可能にする。或いは、有機錯化剤を含めた有機溶媒の過剰量を留去すること、又は5000〜10000のオーダーのDalton値に対応する好ましい孔サイズを有する膜に通して限外濾過を行なうことが可能である。これらの値は、多くの場合に約3nmのカットオフに相当し、それは溶媒通過を可能にするのに十分なほど大きく、ナノ粒子の透過及び損失を防止するのに十分なほど小さい。対応する限外濾過セル中の溶媒を交換するには、典型的に2〜5bar(200kPa〜500kPa)の圧力が必要である。
【0152】
さらに、得られたナノ粒子を例えばメタノール、エタノール又はイソプロパノールで洗浄することが好ましい。
【0153】
酸化物からのシェル物質に関しては、例えば、US6,309,701に蛍光性のドープされた金属酸化物の合成が記載されており、それには、少なくとも1種類の希土類金属(Sc、Y、La及び元素58〜71と理解すべきである)、特にEu、Ce、Nd、Sm、Tb、Gd、Ho及び/又はTmでドープされたY2O3、ZrO2、CuO、CuO2、Gd2O3、Pr2O3、La2O3及び混合酸化物のようなホスト金属酸化物が含まれる。
【0154】
以下に及び実施例に記載する方法では、シェル成長が実際に生じたことを確認することができる。
【0155】
1つのオプションは、小サンプルを析出させ、それらの粒度分布を例えばTEM顕微鏡写真で分析することによって、反応を連続的にモニターすることを含む。この方法で抽出されたサンプルは、シェル成長が全反応時間にわたって行なわれたのか、又はより小さい粒子の独立的な形成も観察することができるのかを示すであろう。EDX分析(エネルギー分散性X線分析)はナノ粒子の総合組成を実証することができる。XPS分光法は、XPSを異なる励起エネルギーにおいて行なうならば、粒子の外部から内部への組成分布に関する付加的な情報を与えることができる。さらに、実施例にも示すように、コア/シェル粒子の放射スペクトルは、反応に用いたコア・ナノ粒子からしばしば容易に区別することができる。
【0156】
III.コア/シェル粒子における使用
III.1 バイオアッセイの使用
本発明のコア/シェル粒子は、その発光特性を利用するバイオアッセイに有利に用いることができる。本発明のコア/シェル粒子の特に興味深い用途は、(F)RETベースアッセイ(上述したような「(蛍光)共鳴エネルギー転移」)である。
【0157】
生物学的系では、それ対応して標識した生体分子又は分子グループの空間的近接位を測定するために、(F)RETがしばしば用いられる。この方法は、興味の対象となる、種々の生物学的反応若しくは相互作用、例えばタンパク質−タンパク質相互作用、免疫反応中の抗原−抗体反応、受容体−リガンド相互作用、核酸のハイブリダイズム(hybridism)、又は核酸へのタンパク質の結合に関する証明手段(proof)として役立つことができる。
【0158】
(F)RETが発生したことの測定は、ドナー若しくはアクセプター発光の強度の変化若しくはスペクトル変化を測定することによって、又はドナー発光の減衰時間の変化の測定によって進行する。
【0159】
これらの方法の多くの用途は、文献に述べられており、この点で限定されない本発明にも適用可能であり:免疫蛍光アッセイにおける特定抗原の測定(US3,996,345;US4,160,016;US4,174,384;US4,199,559)、タンパク質表面の特定局部における静電気電位の測定(Yamamoto et al.,J.Mol.Biol.241,1994,714-731頁)又はハイスループットスクリーニング方法(Boisclair et al.,J.of Biomolecular Screening 5,2000,319-328方法)に適用可能である。
【0160】
さらに、(F)RETは、2つの生体分子間又は1つの生体分子の部分内の絶対的距離をそれぞれ測定することもできる。この方法は既に、タンパク質若しくはDNA構造分析(Heyduk et al.,SPIE,Vol.3256,1998,218-222頁)、ポリペプチド内の距離の測定(Lakowicz et al.,Biophys.Chem.36,1990,99-115頁)、タンパク質(K.Cai et al.,J.Biol.Chem.271,1996,27311-27320頁)、ポリヌクレオチド(Hochstrasser et al.,Biophys.Chem.45,1992,133-141頁と、Ozaki et al.,Nucl.Acids Res.20,1992,5205-5214頁)又は他のマクロ分子、膜及び膜タンパク質並びにそれらの構造の分析(S.Wang et al.,Biochemistry 27,1988,2033-2039頁)、検出(US 4,996,143;US 5,532,129;US 5,565,332)及びPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)による増幅核酸の定量(US 5,538,848;US 5,723,591)、例えば、in vitro診断、遺伝子分析、裁判分析(forensic analysis)、食品及び農芸化学試験、又は親子鑑別に適用されて成功している。DNA又はRNAは直接、即ち、追加の分離工程なしに、検出されるか又は定量される。
【0161】
(F)RET系を用いるリアルタイムPCRによる定量核酸測定は、TaqMan(登録商標)アッセイ(Applied Biosystems Division of Perkin-Elmer Corp.,Foster City,USA)として知られた5‘−ヌクレアーゼ・アッセイである(US 5,538,848;US 5,210,015;Holland et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88,1991,7276-7280頁;Lee et al.,Nucleic Acids Res.21,1993,3761-3766頁)。分子ビーコン方法(Tyagi and Kramer,Nature Biotechnology 14,1996,303-306頁; US5,312,728)は、類似の機構に基づくものである。
【0162】
最近、「FRET in biochemistry」に関するレビユーが、S.Brakmann とN.Noebelによって、Nachrichten aus der Chemie,51,March 2003,319-322頁に発表されており、かれらはさらに、本発明のコア/シェル粒子を用いることもできる、FRETベースバイオアッセイの代替手段を述べている。
【0163】
したがって、本発明のコア/シェル粒子は、少なくとも1種類のエネルギー・ドナー(ドナー)で標識される第1分子グループAと、少なくとも1種類のエネルギー・アクセプター(アクセプター)で標識される少なくとも第2分子グループBとを含む(F)RETベースバイオアッセイに用いることができ、このアッセイにおいて、
ドナーは、外部放射線源によってエネルギー的に励起されることができ、ルミネセンスを放射することができる分子又は粒子を含み、
アクセプターは、ドナー・ルミネセンスの部分的又は完全なクエンチング下でドナーからのエネルギー転移によって励起することができる分子又は粒子を含み、そして
ドナー及び/又はアクセプターは、本発明のコア/シェル粒子、好ましくは、本明細書で前述したように50nm以下、特に30nm以下等の、それらの最長軸に沿って測定した平均直径を有するコア/シェル粒子を含む。
【0164】
このアッセイは、2つの方法で行なうことができる。(F)RETベースアッセイは、アクセプターがルミネセンスを放射することもできることを必要とする。RET系は、アクセプターが発光を放射せずに弛緩する場合にも機能する。
【0165】
好ましくは、本発明のコア/シェル粒子はドナーとして用いられる。これらは、エネルギー的励起後に、ストークス若しくは反ストークス・シフトによって電磁線を放射するので、励起源と放射された発光(emitted radiation)を分光法により区別することは容易に可能である。
【0166】
本発明のコア/シェル粒子は、それらのルミネセンスがより効果的にクエンチされうるので、上記タイプのバイオアッセイにおいて優れた挙動を示す。理論に縛られることを望む訳ではないが、均質な粒子に比べて高い割合の発光センターが表面に局在する又は表面に近接して局在することが、この観察を説明すると考えられる。クエンチングに対するより高い感受性が、(F)RETベースバイオアッセイにおいて、例えばより高い感度のような、種々の重要な利益をもたらしている。
【0167】
クエンチングに対する高い感受性は、より短いドナーの半減期(半減期)として、減衰曲線(ルミネセンス強度−対−時間)に認めることができる。時間ゲート蛍光分光法(time-gated fluorescence spectroscopy)(TGF方法)では、実施例でさらに詳細に説明するように、アクセプター系への非常に効果的なエネルギー転移のために、ドナー・ルミネセンス(コア/シェル粒子)のほぼ完全な消失が得られる。
【0168】
ドナー及び/又はアクセプターとして、好ましくはドナーのみとして用いられるコア/シェル粒子の好ましい実施態様に関して、本明細書の項目Iが参照される。
【0169】
適当なドナー/アクセプター対を選択する場合に、高い量子収量を有するドナー・プローブを用いることが一般に望ましい。さらに、ドナー・プローブの発光スペクトルは、アクセプター・プローブの吸収スペクトルとかなりオーバーラップしなければならない。さらなる要求、ドナーとアクセプターの遷移双極子配向の適当な配置(ほぼ並行)は、生物学的系において一般に問題ではなく、ドナーとアクセプターの無制限な等方向性運動が可能とする。さらに、既述したように、ドナーとアクセプターが好ましく相互から1±0.5R0(Foerster距離)内にある範囲で、Foerster距離を考慮すべきである。Foerster距離は、エネルギー転移が50%効率である距離である。これは、当該技術分野で知られているように、ドナーとアクセプターのスペクトル特性から算出することができる。
【0170】
本発明のコア/シェル粒子以外の、典型的なドナー及び/又はアクセプター系は、例えばフルオレセイン、テトラメチルローダミン、IAEDANS、EDANS、Dabcyl、BODIPY FL、QSY7及びQSY9のような、有機染料である。約350〜750nm及びそれ以上のスペクトル範囲に適当である、他の商業的に入手可能な発光性有機染料と上記のものは、Alexa Fluor染料(Molecular Probesによって製造)又はCyDyes(Amersham Pharmacia)を包含する。これらの染料のなかで、より高い波長(可視〜近IR)で吸収し、放射する染料は、生物学的系を損傷しないので、特に魅力的である。
【0171】
本発明によると、本発明のコア/シェル粒子を、上記有機蛍光染料から選択した適当なアクセプターと組み合わせて、ドナーとして用いることが好ましい。
【0172】
例えば、Eu3+でドープしたシェルを有する粒子をドナーとして、アクセプターとしてのAlexa Fluor680と組み合わせることができ、又はTb3+含有粒子をDabcyl又はフルオレセインと組み合わせることができる。これらTb含有コア/シェル粒子の例は、例えば、シェルとしてのTb3+又はCe3+,Tb3+をドープした金属塩若しくは酸化物によって囲まれた不活性(非発光性)コアを有するコア/シェル系、並びにテルビウム(Tb3+)塩若しくは酸化物シェルによって囲まれたセリウム(Ce3+)塩若しくは酸化物コアに基づくコア/シェル系である。
【0173】
50nm未満の平均直径を有するコア/シェル粒子は、より大きい粒子よりも、バイオアッセイにおいて好ましくない立体的相互作用又は沈降の可能性が小さいことを示す。さらに、検査すべき生化学的プロセスの結合反応(例えば、免疫反応又はDNAハイブリダイゼーション)の動力学に対する影響が低いことが予想されることになる。
【0174】
(F)RETベース系におけるエネルギー転移を測定するために、2つの異なる分光法、即ち、時間ゲート蛍光分析法(TGF)及び/又は時間分解蛍光分析法(TRF)が典型的に適用される(WO 87/07955; EP 242527; EP 439036; WO 92/01225; US 4,822,733; US 5,279,943; US 5,622,821; US 5,656,433; US 5,998,146; US 6,239,271)。TGF法によると、蛍光ドナーをパルス化光源(例えば、レーザー、フラッシュライト)によって励起させ、その後に、特定の時間帯内の所定遅延後の、光の放射を測定する。比較的短い遅延はまだ、ランタニド・イオンの長く持続するルミネセンスを充分に高い強度で測定することを可能にする。生物学的物質、溶媒の不純物又は周囲の生物学的物質の固有自己蛍光によって惹起される、比較的短く持続するバックグラウンド蛍光(典型的に1マイクロ秒より短い)は、遅延によってほぼ完全に識別される。
【0175】
TGF法とは対照的に、TRF法は一定波長における時間の関数としてルミネセンスを測定する。ドナーは、パルス化光源又は異なる方法で調節される光源によっても励起される。
【0176】
50nm以下の直径を有するコア/シェル粒子はTRF法に適当に用いることができる、この理由は、これより大きい粒子では、粒子体積の大部分がエネルギー転移に関係するほど充分にアクセプターに接近しておらず、そのため作用の強度を低下させるからである。
【0177】
本発明によると、(F)RETパートナーの少なくとも一方、即ち、ドナー又はアクセプターが比較的長いルミネセンス減衰時間を示すが、他方の(F)RETパートナーは、短い減衰時間を特徴とする。
【0178】
好ましくは、1〜50マイクロ秒、より好ましくは100マイクロ秒〜10ミリ秒の範囲のルミネセンス半減期値を有するコア/シェル粒子が、ドナーとして用いられる。
【0179】
これらのドナーを、典型的により短い減衰時間を有する慣用的な有機蛍光染料と一緒にする場合には、ドナーはアクセプターのルミネセンスを感作して、その固有ルミネセンス以上に延長させる。TGF法でのこのような系の測定は、短く持続する固有アクセプター・ルミネセンスを排除して、増感アクセプター・ルミネセンスを高感度で測定することを可能にする。
【0180】
他の適当なアクセプターは、例えば金、銀、白金のような導電性物質、又は例えばIn−Sn酸化物(ITO)のような導電性金属酸化物、又は導電性ポリマーから選択することができる。
【0181】
本発明のコア/シェル粒子を、アッセイが根拠とする生物学的分子(単数又は複数)に結合させるために、次の方法を適用することができる。
【0182】
該結合は、
・表面上の「官能基」の形成を典型的に含む、コア/シェル粒子の化学的修飾(前記官能基は生物学的分子に結合することができる)及び/又は
・該コア/シェル粒子の場合により化学的に修飾された表面へ、共有的若しくは非共有的に結合する、いわゆる「連結分子」との連結
その後に、これによって得られた粒子を生体分子(単数又は複数)と反応させることによって、形成することができる。
【0183】
「連結分子」なる用語は、本発明のコア/シェル粒子と連結することができ、アフィニティ分子に、又は標的分子としてアフィニティ分子の同じ結合部位を競合する分子若しくは分子部分、例えばエピトープに連結することもできる物質を意味する。
【0184】
「標的分子」なる用語は、例えば生物学的サンプルのような物質中のその有無を本発明のコア/シェル粒子の使用によって確かめることができる実体(entity)又は基を意味する。
【0185】
「アフィニティ分子」なる用語は、分析される物質(例えば、生物学的物質)中の標的分子(存在する場合に)に選択的に結合する生体分子を意味する。
【0186】
上記で用いた「官能基」なる用語は、共有結合を形成する反応性化学基に限定される訳ではなく、生体分子(単数又は複数)とのイオン相互作用又は水素結合を生じる化学基をも包含する。さらに、表面に形成された「官能基」と、「官能基」を有する連結分子との厳密な区別は、時には、表面の修飾が、例えばエチレングリコールのような小さい連結分子とナノ粒子表面との反応を必要とするので、不可能であることを注目すべきである。
【0187】
官能基又は、官能基を有する連結分子は、アミノ基、カルボン酸基、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、グアニジノ、ヒドロキシル基、アミン基、ビシナル・ジオール、アルデヒド、α−ハロアセチル基、有機水銀基(mercury organyles)、エステル基、酸ハロゲン化物、酸チオエステル、酸無水物、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホン酸ハロゲン化物、イミドエステル、ジアゾアセテート、ジアゾニウム塩、1,2−ジケトン、ホスホン酸、リン酸エステル、スルホン酸、アゾリド、イミダゾール、インドール、N−マレイミド、α−β−不飽和カルボニル化合物、アリールハロゲン化物、又はこれらの誘導体から選択することができる。
【0188】
より高い分子量を有する、他の連結分子の非限定的例は、核酸分子、ポリマー、コポリマー、重合可能なカップリング剤、シリカ、タンパク質、及びコア/シェル粒子とは逆の極性の表面を有する鎖状分子である。核酸は、それら自身が核酸分子を連結分子に相補的な配列と共に含有するアフィニティ分子への連結を提供することができる。重合可能なカップリング剤の例としては、ジアセチレン、スチレンブタジエン、酢酸ビニル、アクリレート、アクリルアミド、ビニル化合物、スチレン、シリコーンオキシド、酸化ホウ素、酸化リン、ボレート、ピロール、ポリピロール、及びホスフェートを列挙することができる。
【0189】
連結方法を以下にさらに詳細に述べる:
1.コア/シェル・ナノ粒子の表面を、例えば、反応性官能基を有するホスホン酸誘導体の結合によって、化学的に修飾することができる。これらのホスホン酸又はホスホン酸エステル誘導体の1つの例は、イミノ−ビス(メチレンホスホノ)炭酸であり、これは「Mannich-Moedritzer」反応(Moedritzer and Irani, J.Org.Chem.1966,31,1603)によって合成することができる。この結合反応は、本発明の製造方法から直接、又は前処理(例えば、トリメチルシリルブロミドでの)後に得られたコア/シェル粒子を用いて行なうことができる。最初の場合には、ホスホン酸(エステル)誘導体が例えば、該表面にまだ結合している反応媒質の成分を置換することができる。この置換(displacement)は高温で促進することができる。他方では、トリメチルシリルブロミドは、本発明の方法に用いられる、アルキル基を含有するリンに基づく錯化剤を脱アルキルして、これによって、ホスホン酸(エステル)誘導体のための新たな結合部位を作ると考えられる。ホスホン酸(エステル)誘導体、又はこれに結合した連結分子は、上記と同じ官能基を示すことができる。
【0190】
2.コア/シェル・ナノ粒子の表面処理の他の例は、該粒子を例えばエチレングリコールのようなジオール中で加熱することを含む。コア/シェル粒子の合成がジオール中で既に進行している場合には、この処理が不必要になりうることに注目すべきである。これらの状況下で、直接得られた合成生成物は、必要な官能基を示す可能性がある。しかし、この処理は、上記N−又はP−含有錯化剤中で製造されたコア/シェル粒子に適用可能である。このようなコア/シェル粒子がエチレングリコールによる後処理を受ける場合には、表面にまだ結合している反応媒質(例えば、錯化剤)の成分を、ジオールによって置換することができる、及び/又は脱アルキルすることができる。ジオールによる処理は、水溶性粒子を生じる。同様に、上述したような、第2反応性官能基を有する第1級アルコールを該後処理のために用いることができる。粒子表面にまだ結合しているN−含有錯化剤を、上記例から選択される第2官能基を有する第1級アミン誘導体によって置換することも可能である。
【0191】
3.本発明のコア/シェル粒子の表面はシリカでコーティングされてもよい。シリカは、例えばトリエトキシシラン又はクロロシランのような有機リンカーと容易に反応するので、シリカは有機分子の比較的簡単な化学的コンジュゲーション(chemical conjugation)を可能にする。粒子表面をホモポリマー又はコポリマーによってコーティングすることもできる。重合可能なカップリング剤の例は、N−[3−アミノプロピル]−3−メルカプトベンズアミジン、3−(トリメトキシシリル)プロピルヒドラジド、及び3−(トリメトキシシリル)プロピルマレイミドである。重合可能なカップリング剤の他の例は、既に上述した。これらのカップリング剤は、形成するコポリマーの種類に依存して、単独で又は組み合わせて、ナノ粒子コーティングとして用いることができる。
【0192】
4.他の表面修飾方法の1つによると、酸化物遷移金属化合物を含有するコア/シェル粒子を塩素ガス又は有機塩素化剤によって、対応するオキシ塩化物に転化させることができる。これらのオキシ塩化物は、例えば、生体分子中にしばしば見い出されるヒドロキシ又はアミノ基のような、求核試薬と反応することができる。この方法は、例えばリジン側鎖のアミノ基を介して、タンパク質との直接コンジュゲーションを形成することを可能にする。オキシ塩化物による表面修飾後のタンパク質とのコンジュゲーションは、例えばマレイミドプロピオン酸ヒドラジドのような、二官能性リンカー(bi-functional linker)を用いて行なうこともできる。
【0193】
5.非共有連結方法には、コア/シェル粒子表面のものとは反対の極性又は電荷を有する鎖状分子(chain-type molecules)が特に適する。コア/シェル・ナノ粒子に非共有的に連結することができる連結分子の例は、アニオン、カチオン若しくは両性イオン界面活性剤、酸性若しくは塩基性タンパク質、ポリアミン、ポリアミド、ポリスルホン又はポリカルボン酸を包含する。ナノ粒子と、反応性官能基を有する両親媒性試薬との疎水性相互作用は、必要な連結を形成することができる。特に、例えばリン脂質又は誘導体化多糖類のような、相互に架橋することができる両親媒性を有する鎖状分子が有用である。コア/シェル粒子の表面上へのこれらの分子の吸収は、共インキュベーション(coincubation)によって達成することができる。アフィニティ分子とコア/シェル粒子との結合は、非共有自己組織化結合(non-covalent,self-organising bond)に基づくものでもあることができる。これの1つの例は、連結分子としてのビオチンと、アビジン−又はストレプダビジン−結合アフィニティ分子とによる単純な検出プローブを包含する。
【0194】
生物学的分子に対する官能基のカップリング反応のプロトコールは、文献に、例えば”Bioconjugate Techniques”(Greg T.Hermanson, Academic Press 1966)に見い出すことができる。生物学的分子、特にアフィニティ分子は、例えば、酸化、ハロゲン化、アルキル化、アシル化、付加、置換又はアミド化のような、有機化学の標準方法に従って、連結分子に共有的に又は非共有的に結合することができる。共有結合した又は非共有結合した連結分子に生物学的分子を結合させるためのこれらの方法は、コア/シェル・ナノ粒子に連結分子を結合させる前に又はその後に、適用することができる。さらに、対応するように前処理され(例えば、トリメチルシリルブロミドによって)、この前処理のために修飾された表面(例えば、より高い電荷又は極性の表面)を示すコア/シェル粒子にアフィニティ分子を直接結合させることが、インキュベーションによって可能である。ドナー又はアクセプターによって標識された分子グループAとBは、それぞれ同じ分子の一部を表すことができ、例えば、同じアフィニティ分子に結合することができる。これらの分子グループの空間的距離の変化は、例えば分子のコンファメーション変化(confirmation change)によって又は分子の切断によって生じる可能性がある。分子のこのコンファメーション変化又は切断は、アフィニティ分子と標的分子との相互作用の結果であることができる。
【0195】
或いは、分子グループAとBは異なる分子上に局在することができ、前記分子グループAとBは、それぞれ、それらの特有のアフィニティ分子に結合する。分子グループAとBに割り当てられるアフィニティ分子と、接合標的分子との又はお互いとの相互作用によって、空間的距離の変化をもたらすことができる。この相互作用は、例えば、抗原と抗体の免疫反応のようなタンパク質間の相互作用、核酸のハイブリダイズム、又は核酸とタンパク質との相互作用であることができる。
【0196】
バイオアッセイは、例えば、身体サンプル(例えば、塗抹標本、痰、器官穿刺液、バイオプシー、分泌物、液体、胆汁、血液、リンパ液、尿、糞便)中の分析物を検出するための均一イムノアッセイであることができる。均一アッセイは洗浄工程も分離工程も必要としない。
【0197】
本発明のコア/シェル粒子を用いるバイオアッセイは、不均一アッセイであることもできる。
【0198】
アッセイで検出すべき分析物(一般には、標的分子)は、例えば、モノクローナル若しくはポリクローナル抗体、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、核酸、オリゴ糖若しくは多糖類、ハプテン又は低分子量合成若しくは天然抗原であることができる。
【0199】
同様に、アフィニティ分子の非限定的例は、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、又は他の核酸分子、又は例えばPNA若しくはモルホリン(morpholine)のような関連種、並びにオリゴ又は多糖類、ビオチン若しくはジゴキシンのようなハプテン、又は低分子の合成若しくは天然抗原、又はエピトープである。
【0200】
アッセイは、溶液中で並びに、オリゴヌクレオチド若しくはポリヌクレオチド鎖又は抗体若しくは抗原がそれぞれ表面に固定される、固相に基づく若しくはアレイに基づく系に用いることができる。
【0201】
本発明のコア/シェル粒子を用いるアッセイは、種々の方法で利用することができる。
【0202】
1つの適用タイプによると、(F)RETパートナーは同じ分子上に局在する、即ち、(F)RETパートナーの両方が対応する連結分子を介して(部分的に示さず)同じアフィニティ分子と結合する(図6a、6b、7、10及び11)。アフィニティ分子への標的分子の結合はアフィニティ分子のコンファメーション変化を誘発し、それによって、相互に関する標識の空間的位置の変化を生じ、したがって、(F)RETにおける測定可能な差異を生じる。
【0203】
他の用途では、(F)RETパートナーは異なる分子上に局在し、それぞれ、それらの固有のアフィニティ分子に(図8)又は分析物及びアフィニティ分子に(図9)それぞれ結合する。それぞれのアフィニティ分子は、標的分子との反応によって生じる又は消失する、ドナーとアクセプターとの間の相互作用をもたらし、それによってエネルギー転移の変化を誘発するようなやり方で選択することができる。
【0204】
次に、(F)RETベースバイオアッセイにおける本発明によるコア/シェル・ナノ粒子の使用を、図6〜11によってさらに説明する。
【0205】
図6aは、均一なキナーゼ・アッセイにおける同じ分子上に局在する(F)RETパートナーの相互作用を概略的に示す。lad−ナノ粒子1(lad=発光性無機ドープした(luminescent anorganic doped))と発色団2とを、ペプチド配列3によって連結する。該ペプチド配列は、キナーゼ特異的同定配列(kinase-specific identification sequence)4を含有する。ペプチド配列3がこの位置においてキナーゼ5によってリン酸化される場合には、リン酸(phosphate)6の存在がペプチド配列3のコンファメーションを変化させる。したがって、(F)RETパートナー、ナノ粒子1と発色団2の間の相互作用が測定可能になる。
【0206】
図6bは、タンパク質−タンパク質相互作用、例えば、抗原−抗体反応を測定することになる、1つの分子上に局在する(F)RETパートナーによる均一イムノアッセイを概略的に示す。ナノ粒子1と発色団2とをペプチド配列3によって連結する。ペプチド配列はエピトープ14を含有する。特異的にエピトープ14を認識する抗体15がエピトープ14に結合する場合には、ペプチド配列3のコンファメーションは変化する。それによって、(F)RETパートナー、ナノ粒子1と発色団2との間の相互作用は測定可能になる。
【0207】
図6aと6bに記載するように、検出すべき分子はアフィニティ分子に直接結合することができる。しかし、これは、アフィニティ分子への分子の結合を間接的に惹起することもできる。これの1例は、生細胞中のCa2+の濃度の測定である。この目的のために、平滑筋におけるミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)へのカルモジュリンのカルシウム依存性結合を用いる。MLCKのカルモジュリン結合ドメインはアフィニティ分子として作用し、(F)RETパートナーに結合する。Ca2+濃度に依存して、カルモジュリンは結合ドメインに結合して、検出プローブのコンファメーション変化をもたらす。これは、測定可能な(F)RETの変化を惹起する。
【0208】
図7は、身体サンプル中の分析物26の濃度を測定するために用いられる、1つの分子上に局在する(F)RETパートナーによる競合イムノアッセイを概略的に示す。ナノ粒子1と発色団2とは、エピトープ27に結合する連結分子29によって連結される。エピトープ27は、検出すべき分析物26の1つのエピトープに基づいて設計される。アフィニティ分子28は、エピトープ27に特異的に結合する。検出すべき分析物26を含有するサンプル(例えば、身体サンプル)を添加することによって、エピトープ27にまだ結合しているアフィニティ分子28は、このエピトープ27から排除される。これは、アフィニティ分子29のコンホメーション変化を生じ、したがって、(F)RETパートナー、ナノ粒子1と発色団2との間の相互作用の測定可能な変化を生じる。この(F)RET変化は、分析物26の濃度の測定に利用される。
【0209】
図8は、異なる分子上の(F)RETパートナーによる均一飽和イムノアッセイを概略的に示す。ladナノ粒子110のアフィニティ分子と発色団120とは、同じ標的分子130の異なるエピトープをそれぞれ認識することができ、それによって、標的分子130の存在下で測定可能なエネルギー転移を生じる。ドナーとアクセプターとが異なる分子上に局在する均一イムノアッセイの1つの例は、血清中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン:chorinal gonadotropine)の検出である。この場合には、ドナーとアクセプターとが、hCGの異なるエピトープを認識する抗体に結合する。身体サンプル中にhCGが存在する場合には、ドナー及びアクセプター・プローブが分析物に結合する。校正曲線を用いて、身体サンプル中の分析物の濃度を算出するために、測定可能なFRETを用いることができる。
【0210】
図9は、異なる分子上に局在する(F)RETパートナー210と220による均一競合イムノアッセイを概略的に示す。1つ以上の発色団220が、検出すべき分子224に部分的に又は完全に対応する分子222に連結する。ladナノ粒子210は、分子222と検出すべき分子224とに特異的に相互作用するアフィニティ分子212に結合する。アフィニティ分子212と分子222との間に結合が生じ、それによって、(F)RETを可能にする。次に、検出すべき分子224を含有するサンプル(例えば、身体サンプル)をこれに加えるならば、前記サンプル中の検出すべき分子224の濃度に依存して、置換反応(displacement reaction)が生じる。これは測定可能な変化、この場合には(F)RETの減少を生じ、これは、校正曲線を用いて、検出すべき分子の濃度の算出を可能にする。
【0211】
図10は、1つの分子上に局在する(F)RETパートナーによる均一アッセイを概略的に示す。ladナノ粒子310と発色団320とは、アフィニティ分子としてのペプチド330によって連結される。このペプチドは検出すべき酵素340によって切断されることができる。この切断後に、(F)RETはもはや観察されることはできない。
【0212】
図10のアッセイは、サンプル又は細胞中で例えば、HIウイルスに特異的であるプロテアーゼの、特異的酵素活性を測定するために用いることができる。(F)RETパートナーの両方は、このプロテアーゼの短い同定配列(identification sequence)によって連結され、このプロテアーゼの活性によって相互から空間的に分離され、ペプチド切断を生じる。検出すべき酵素活性は、制限エンドヌクレアーゼに由来することもできる。この場合、(F)RETパートナーの両方は核酸によって連結される。
【0213】
図11は、分子ビーコンの方法によるアッセイを概略的に示す。分子ビーコンは、分子間相補的配列によってそれら自身をいわゆるステム−ループ又はヘア−ピン構造に折り畳むことができるDNA分子である。1つのladナノ粒子410は、DNA配列430の1末端に結合する。他の末端は、蛍光消光剤又はクエンチャー(quencher)としての発色団420に結合する。ヘア−ピン構造では、両方の(F)RETパートナー410と420が密接に近接して配置される。そのため、ドナー410の蛍光は完全に消光される。標的分子440は、DNA配列430のループ領域に相補的である配列を示す。標的分子440の結合はエネルギー的にさらに好ましいので、ヘア−ピン・コンファメーションは解消して、発色団420とladナノ粒子410は相互から分離して、(F)RETはもはや蛍光消光を生じないので、測定可能な蛍光が放射される。ハイブリダイズム特性は、分子ビーコン430と標的DNA440との間の単一塩基対ミスマッチングがヘア−ピン構造の開放を生じないようなやり方で、調節することができる。したがって、単一塩基差(例えば、SNPs、単一ヌクレオチド多形現象)さえも検出することが可能である。
【0214】
図11に示されるこの方法は、ブランド保護及び/又は生成物の安全性表示に用いることもできる。両末端に短い相補的構造を示し、その1つの末端は本発明のコア/シェル粒子に連結し、他方の末端は上述したようにアクセプターに連結するDNA(断片)で、製品をマークする場合には、得られた分子ビーコン(ヘア−ピン構造)に(F)RETを観察することができる。このDNA(断片)が相補的構造に接触するや否や、ハイブリダイズムがヘア−ピン構造を解消して、それによって、(F)RETを妨害する。このことは、商業的製品の特定の同定及び保護を可能にする。合成DNA同定に基づくブランド保護は既に、例えばNovember AG,Germanyによって商業化されている。
【0215】
III.2 他の使用
バイオアッセイにおけるそれらの使用とは独立的に、特許請求したコア/シェル粒子は一般に、適当なルミネセンス・アクセプターと組み合わせるならば、生物学的又は他の系におけるナノメーター距離の(F)RETベースの測定を可能にする。このような測定は、例えば、ナノ物質科学における分光的目的について興味を引く。
【0216】
さらに、優れた(光)ルミネセンス特性を要求する、種々の産業的デバイス及び製品のために、特許請求したコア/シェル粒子を用いることができる。
【0217】
この目的のために、これらのコア/シェル粒子は典型的に、流体又は固体媒質中の分散物として製造される。
【0218】
適当な流体媒質は、例えば、有機若しくは水性分散媒質、コーティング組成物、インキ若しくは染料、ポリマー組成物、又はエアロゾルを含む。適当な有機分散媒質は、非限定的に、トルエン、CHCl3又はCH2Cl2を包含する。
【0219】
上述したような、N−又はP−含有媒質/錯化剤による合成は、本発明によるコア/シェル粒子の有機媒質中での容易な分散性を保証する。
【0220】
水性分散物の製造は、合成に用いた有機物質の残渣を、粒子表面に結合する1つの官能基と、任意に水混和性溶媒と組み合わせた必要な水中での相溶性を保証する1つの分子部分とを有する溶媒によって、置き換える後処理を必要としうる。
【0221】
固体分散媒質は、コーティング、インキ若しくは染料、ポリマー組成物、特にポリマーフィルムから選択することができる。
【0222】
それ自体でのナノ粒子、又は典型的に同ナノ粒子を含有する流体若しくは固体媒質は、例えば、発光、印刷、又はアイテム及び物質のマーキングのために用いることができる。
【0223】
このような用途は、例えば、発光ダイオード、ディスプレイ、光電子デバイス、例えば、nmサイズの増幅器及び、ゼロ閾レーザーにおける光源である。これらはまた、印刷デバイスのインキとして用いることもでき、このことは、文献又は紙幣(money bill)の安全性表示において非常に興味深い。
【0224】
IV.実施例
実施例1: TbPO4シェルを有するCePO4ナノ粒子コア
高性能還流冷却管、温度計及び加熱マンテルを備えた100ml丸底フラスコ中で、CeCl3・7H2O 3.72g(10mmol)をメタノール約4ml中に溶解し、続いて、得られた溶液に、トリス−2−エチルヘキシルホスフェート(TEHP)40mlを加える。メタノールと結晶化水を除去するために、丸底フラスコに真空を、最初は室温において(1〜2時間)、次に50℃において(約1.5時間)適用する。
【0225】
第2フラスコにおいて、乾燥オルト−リン酸(20mmol)をテトラエチレングリコールジメチルエーテル5ml中に溶解する。
【0226】
窒素雰囲気下、50℃において、TEHP中のCeCl3溶液に、トリオクチルアミン13.1ml(30.0mmol)と、オルト−リン酸/テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル混合物2.5mlを加える。その後、この混合物を200℃に15時間加熱する。この時間後に、CePO4粒子(平均直径5mm)の透明な分散系(「第1混合物」)が得られる。
【0227】
高性能還流冷却管、温度計及び加熱マンテルを備えた第2の100ml丸底フラスコ中で、TbCl3・6H2O 3.72g(10mmol)をメタノール約4ml中に溶解し、続いて、該溶液に、トリス−2−エチルヘキシルホスフェート(TEHP)40mlを加える。この丸底フラスコに真空を適用した後に、メタノールと結晶化水を最初は室温において(1〜2時間)、次に50℃において(約1.5時間)除去する。窒素雰囲気下、50℃において、該TbCl3溶液に、トリオクチルアミン13.1ml(30.0mmol)と、オルト−リン酸/テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル溶液2.5ml(リン酸10mmol)並びにCePO4分散系14ml(約20〜30℃に冷却)を加え(「第2混合物」)、続いて、200℃に12時間にわたって加熱する。室温に冷却した後に、コア/シェル・ナノ粒子を析出させるために、反応混合物をメタノール中に注入する。析出物を遠心分離して(5500rpmで)、得られた粒子をメタノールによって洗浄して、乾燥させる。
【0228】
図2に示す、これらの粒子の光ルミネセンス・スペクトルは、これらのコア/シェル構造を実証した。
【0229】
これらの粒子が約6nmの平均直径(それらの最長軸に沿って)を有することを、TEM測定がさらに実証した。
【0230】
図1は、均一CePO4粒子の蛍光スペクトル(ライン1)と、TbPO4シェルがCePO4粒子の周囲に成長する、本発明によるコア/シェル粒子の蛍光スペクトル(ライン2とライン3)を示す。ライン2によって示すスペクトルは、0.5時間の反応時間後に撮影したものであるが、ライン3は、完全に発達したTbPO4シェルを有するCePO4コアの蛍光を示す(反応時間18時間)。スペクトルはi−プロパノール中、同じ光学密度(10−3重量%)で記録した(λexc=274nm)。
【0231】
図1から見られるように、均一CePO4粒子は約330nmでの強い蛍光放射を特徴とするが、可視範囲では放射を示さない。この状況は、TbPO4被膜によって劇的に変化する。Ce3+は励起放射線を強く吸収して、吸収したエネルギーをTb3+に転移させ、Tb3+はこれを484nm、545nm、586nm及び617nmに位置する4つの強い特徴的なバンドの形態で放射する。このエネルギー転移はCe放射を最低にし、Tb放射を強く増強する。
【0232】
実施例2: TbPO4シェルを有するLaPO4ナノ粒子コア
高性能還流冷却管、温度計及び加熱マンテルを備えた100ml丸底フラスコ中で、LaCl3・7H2O 3.2g(8.6mmol)をメタノール約10ml中に溶解し、続いて、得られた溶液に、トリス−2−エチルヘキシルホスフェート(TEHP)39mlを加える。メタノールと結晶化水を除去するために、丸底フラスコに真空を、最初は室温において(1〜2時間)、次に50℃において(数時間)適用する。
【0233】
第2フラスコにおいて、乾燥オルト−リン酸(20mmol)をテトラエチレングリコール・ジメチルエーテル5ml中に溶解する。
【0234】
窒素雰囲気下、50℃において、TEHP中のLaCl3溶液に、トリオクチルアミン11.5ml(26.3mmol)と、オルト−リン酸/テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル混合物2.3mlを加える。その後、この混合物を200℃に16時間加熱する。この時間後に、LaPO4粒子の透明な分散系(「第1混合物」)が得られる。
【0235】
高性能還流冷却管、温度計及び加熱マンテルを備えた第2の100ml丸底フラスコ中で、TbCl3・6H2O 2.97g(8mmol)をメタノール約10ml中に溶解し、続いて、該溶液に、トリス−2−エチルヘキシルホスフェート(TEHP)35.2mlを加える。この丸底フラスコに真空を適用した後に、メタノールと結晶化水を最初は室温において(1〜2時間)、次に50℃において(数時間)除去する。窒素雰囲気下、50℃において、該TbCl3溶液に、トリオクチルアミン10.5ml(24mmol)と、オルト−リン酸/テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル溶液2.0ml(リン酸8mmol)並びにLaPO4分散系の総量(約20〜30℃に冷却)を加え(「第2混合物」)、続いて、200℃に16時間にわたって加熱する。室温に冷却した後に、コア/シェル・ナノ粒子を析出させるために、反応混合物をメタノール(300ml)中に注入する。析出物を遠心分離して(5500rpmで)、得られた粒子をメタノールによって2回洗浄して、乾燥させる。
【0236】
参考実施例1: コア/シェル粒子の分析
次の参考実施例は、LaPO4シェルを有するCePO4:Tbナノ粒子コアの化学組成、コア直径及びシェル厚さの測定を説明する。これらの粒子は特許請求の範囲で保護されていないとしても、この分析方法は、本発明に完全に適用可能である。
【0237】
この目的のために、孔のあるカーボンフィルム上に、粒子を載せて、Philipps CM300UT顕微鏡下で研究した。
【0238】
EELS(Electron Energy Loss Spectroscopy)は、カチオンの平均化学組成が、Ce/La=0.34±0.05、Tb/La=0.12±0.03であり、このことはLa/Ce=3.0±0.4及びCe/Tb=2.8±0.8を意味し、後者の値は、用いるモル比率Ce/Tb(3.14/1)にほぼ一致する。
【0239】
HREM(高分解能電子顕微鏡法)によって、得られたコア/シェル粒子の結晶性を実証した。
【0240】
さらに、より小さい粒子をも保護するために、0.48nm/像点の走査速度で、Hellfeld像をややアンダーフォーカスで(with slight underfocus)撮影した。この像の分析は、量の点で主要な粒子クラスが5〜9nmの直径を有することを示した。この粒子の6個にEFTEM(Energy-filtering Transmission Electron Microscopy)、特に、定量分析のために”Landeszentrum fuer Hochleistungsspektroskopie, Institute fuer Anorganische Chemie” Bonn,Germanyによって開発された、いわゆる「スペクトル・イメージ法」を行なった。この目的のために、6結晶性粒子をイメージング・エネルギー・フィルターの後方のCCDカメラに非常に高い倍率で集めた。次に、最小オブジェクティブ・スクリーン(4.6mrad)と最大エントランス・スクリーン(3mm)とを挿入し、エネルギー・フィルターをその分光法モードで用いた。これによって、エントランス・スクリーンを通過する完全な強度がデテクター(detecter)上に1ライン、1ライン(line by line)映される。レンズの色収差のために、この方法は、約±40eVのセクションのみを高い鮮明さ(nm未満)で映すので、これは、832、849、884及び902eVにおけるLaM5.4及びCeM5.4エッジ上に集束した。99Kの選択した一次倍率で、エントランス・スクリーンの直径は常に11.2nmであった。
【0241】
図2は、(D)LaPO4シェルによって囲まれた1つのCePO4:Tbナノ粒子(直径約7nm)のHellfeld像(エントランス・スクリーンによる)、(E)860eVエネルギー損失におけるスペクトル像並びに粒子表面(A,C)と中心(B)を通してのプロフィルを示す。プロフィル(A,B及びC)はLaM5.4及びCeM5.4ピークを示す、これらの相対的強度は、局部組成(local composition)にほぼ相当する。異なるプロフィルは、Ce富化コアと、La富化シェルとの存在するコア/シェル構造を実証する。6個の選択した粒子は平均して直径7.5±1.9を有し、これは、直径4.0±1.1nmを有するCe富化コアと、厚さ1.9±0.7nmを有するLa富化シェルとから成る(この分析では、Tbは測定しなかった)。
【0242】
実施例3: 実施例1のコア/シェル粒子(CePO4/TbPO4)へのフルオレセインの結合
3−1:コア(CePO4)−シェル(TbPO4)ナノ粒子の、イミノ−ビス(メチレンホスホノ)ウンデカン酸と、1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)−ブタンによるアミノ官能化
イミノ−ビス(メチレンホスホノ)ウンデカン酸0.388g(1mmol)を、エチレングリコール1.5ml及び1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)−ブタン0.15g(2.5mmol)と共に、50℃において30分間加熱することによって溶解する。得られた溶液はやや黄色みを帯びている。実施例1で得られたコア(CePO4)−シェル(TbPO4)ナノ粒子25mg(=71.5nmol)を該溶液に加えて、撹拌し、〜120℃に4時間加熱する。この分散系は濁っており、淡黄色である。2x2L 10mM炭酸Naバッファー、pH8.5に対して一晩透析(透析チューブ Spectra/Por,5-6000 MWCO, Spektrum, Netherlands)した後に,粒子が析出する。
【0243】
3−2:アミノ官能化したコア(CePO4)−シェル(TbPO4)ナノ粒子へのフルオレセインの結合
アミノ官能化ナノ粒子(上記)5mg(25nmol)を5000rpmで10分間遠心分離して、ペレットを0.2M炭酸Naバッファー(pH8.5)500μl中に再懸濁させ、10mg/mlの濃度を得る。FITC(フルオレセイン・イソチオシアネート)を、DMFと0.2M炭酸Naバッファー(pH8.5)との1:1溶液中に5mmol/mlの濃度にまで溶解する。17倍過剰量(87μl=429nmol)を粒子に加えて、混合物を室温において4.5時間回転させながらインキュベートした。未結合FITCを、セファデックスG−25M PD10カラム(Amersham Bioscience)と、溶離バッファーとしての10mM炭酸Naバッファー(pH8.5)を用いて分離する。溶出画分3.9mlはフルオレセイン結合ナノ粒子を含有する。
【0244】
比較例1: 均一LaPO4:Ce,Tb粒子へのフルオレセインの結合
CE1−1: LaPO4:Ce,Tbナノ粒子の製造
TEHP(トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート)300mlを乾燥窒素流中で脱ガスした。その後、LaCl3・7H2O 7.43g(20mmol)、CeCl3・7H2O 8.38g(22.5mmol)及びTbCl3・6H2O 2.8g(7.5mmol)をメタノール100ml中に溶解して、TEHPに加える。次に、水とメタノールを真空下、30〜40℃の温度において除去する。次に、トリオクチルアミン66.5mlとTEHP150mlとの混合物中に溶解した乾燥オルトリン酸4.9g(50mmol)の新たに調製した溶液を加える。温度が上昇したときのCe3+の酸化を最小にするために、得られた透明な溶液を直ちに真空下におき、窒素でパージする。その後に、溶液を200℃に加熱する。沸点が175℃にまで低下したならば(約30〜40時間後)、加熱段階を停止する。室温にまで冷却した後に、4倍過剰量のメタノールを加えて、粒子を析出させる。粒子を分離し、メタノールで洗浄して、乾燥させる。
【0245】
CE1−2:ブロモトリメチルシランによる脱アルキル
CE1−1で得られたLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子300mg(約850nmol)を、クロロホルム100ml中のブロモトリメチルシラン2.3gと共に4時間にわたって還流させる。ブロモトリメチルシランの過剰量の大部分と揮発性中間生成物は真空下で除去され、分離される。ナノ粒子含有残渣を、水6mlトアンモニア(25%)100μlとの混合物中で一晩中加水分解する。得られた粒子は乳状懸濁液を形成し、数時間後に一部が析出する。これらを遠心分離によって分離することができる。
【0246】
CE1−3:脱アルキルしたLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子の、イミノ−ビス(メチレンホスホノ)カプロン酸によるアミノ官能化
イミノ−ビス(メチレンホスホノ)カプロン酸0.5g(1.75mmol)を0.894g(4.375mmol)1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)−ブタン(Fluka)と共に、エチレングリコール2ml中に、50℃に30分間加熱することによって溶解する。得られた溶液はやや黄色を帯びている。CE1−2で得られたLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子35mg(=175nmol)を該溶液に加えて、撹拌し、〜120℃に4時間加熱する。この分散系は、室温に冷却した後も、透明であり、褐色を帯びている。10mM炭酸Naバッファー(pH8.5)2x2Lに対して透析した後に、溶液はやや黄色であり、透明である。
【0247】
CE1−4:アミノ官能化LaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子へのフルオレセインの結合
CE1−3のアミノ官能化LaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子の溶液を真空中で〜4.8mg/mlに濃縮する。FITC(フルオレセインイソチオシアネート)をDMFと0.2M炭酸Naバッファー(pH8.5)との1:1溶液中に5mmol/mlの濃度にまで溶解する。17倍過剰量(87μl=429nmol)をナノ粒子5mg(〜1ml=25nmol)に加えて、混合物を室温において4.5時間回転させながらインキュベートした。未結合FITCを、セファデックスG−25M PD10カラム(Amersham Bioscience)と、溶離バッファーとしての10mM炭酸Naバッファー(pH8.5)を用いて分離する。溶出画分3.5mlはフルオレセイン結合ナノ粒子を含有する。
【0248】
実施例4: フルオレセイン結合ナノ粒子によるFRETの測定
実施例3のフルオレセイン結合コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子と、比較例1の均一なLaPO4:Ce,Tb粒子とに、種々の分光分析を行なって、FRET効率を測定した。
【0249】
各1cmの幅と深さを有する光学セルにサンプルの水性分散系を入れて、Jobin Yvonによって製造されたFL3−22分光計によって、測定を行なった。光学密度が0.3を超えないように、濃度を選択した。
【0250】
図3は、280nmにおけるパルス化励起後に、TRF法で測定した2種類の粒子の減衰曲線を示す:
・点線は、実施例1で得た非修飾コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子の542nmにおける減衰曲線(Tb放射)を表す;半減期1.4ms。
【0251】
・太線は、実施例3で得たフルオレセイン結合コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子の542nmにおける減衰曲線を表す;半減期0.02〜0.1ms。
【0252】
・細線は、実施例3で得たフルオレセイン結合コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子の520nmにおける減衰曲線(フルオロセイン放射)を表す;半減期0.02〜0.06ms。
【0253】
図4は、280nmにおけるパルス化励起後に、TRF法で測定した、比較例1のフルオレセイン結合均一LaPO4:Ce,Tb粒子の減衰曲線を示す:
・太線は、542nmにおける減衰曲線(半減期約1.7ms)を表す。
【0254】
・細線は、520nmにおける同じ粒子の減衰曲線(半減期約1.0〜1.5ms)を表す。
【0255】
実施例3のフルオレセイン結合コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子は、比較例1の粒子(約1.7ms)よりも非常に短い蛍光半減期(542nmにおいて0.02〜0.1ms)を示す。このことは、本発明による粒子のコア/シェル構造が、アクセプター分子(フルオレセイン)への非常に効果的なエネルギー転移を可能にし、それによってFRET効率を高めることを実証する。したがって、非修飾コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子の蛍光半減期(約1.4ms)は、実施例3のフルオレセイン結合コア/シェル粒子で観察されたよりも少なくとも14倍大きい。
【0256】
非修飾均一LaPO4:Ce,Tbナノ粒子(フルオレセインに結合せず)の蛍光半減期は約2.4msであり、即ち、比較例1の対応するフルオレセイン結合粒子で観察された半減期(542nmにおいて約1.7ms)よりも約1.5倍大きい。この比率(約1.5/1)を、図3が示す比率(約14/1)と比較するならば、本発明によって得られるFRET効率の改良が明らかになる。
【0257】
図5aは、280nmにおけるパルス化励起後の、最後の励起パルス後40μsの測定遅延後にTGF法で測定した蛍光スペクトルを示す:
・太線は、実施例1で得たような非修飾コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子のスペクトルを表し、
・細線は、実施例3で得たようなフルオレセイン結合コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子のスペクトルを表す。
【0258】
左側の強度スケールは、太線に対応し、右側のスケールは、細線に対応する。修飾コア/シェル粒子(実施例3)の放射スペクトルは、545nmにおける特徴的なTb3+バンドの非常に低い強度(約40%減少)と、フルオレセイン放射に由来する、約520nmの新しい幅広いバンドの出現を特徴とする。したがって、Ce3+(コア)からTb3+(シェル)発光センターへの励起エネルギー(280nm)のエネルギー転移後に、後者はFRETによるフルオレセイン発光を開始する。
【0259】
図5bは、
・比較例1のフルオレセイン結合均一LaPO4:Ce,Tbの、280nmにおけるパルス化励起後の、
最後の励起パルス後40μsの測定遅延後にTGF法で測定した1つの蛍光スペクトルを示す。
【0260】
このスペクトルはまた、フルオレセインに由来する約520nmの比較的幅広い放射バンドを観察することができるので、FRETの発生をも実証する。しかし、545nmにおける特徴的なTb3+バンドによって示されるドナー放射は、図4a(細線)におけるよりもまだ非常に強く、このことは低いFRET効率を実証する。
【0261】
参考実施例2: バイオアッセイ
次の参考実施例は、均一ナノ粒子を生体分子に結合させ、相応して標識した生体分子を生物学的アッセイに用いる具体的な方法を示す。用いるナノ粒子は本発明によるものではないが、これらの参考実施例は、特許請求するコア/シェル粒子に完全に振り替え可能である。これに関連して、均一ナノ粒子に関して以下に示すような表面修飾方法が、特に得られたナノ粒子の表面に通常結合する溶媒の選択に関して、同様な方法で合成したコア/シェル粒子に好ましく適用されることを、当業者は気付くであろう。
【0262】
RE2−1: LaPO4:Ce,Tbナノ粒子のカルボキシ官能化
LaPO4:Ce,Tb粒子は、比較例CE1−1に述べたように製造した。
【0263】
これらのナノ粒子50mg(約140nmol)を、エチレングリコール5ml(約180mmol)及び硫酸5μl(96〜98%)と共に、撹拌しながら及び不活性ガス下で、3時間にわたって210℃に加熱する。或いは、他のジオール、好ましくは、種々の鎖長のポリエチレングリコール、最も好ましくは、HO−(CH2−CH2−O)n−OH(n=2〜9)を用いることが可能である。該粒子は約135℃でポリエチレングリコール中に溶解し始める。処理の完了後に、約1.5mbar(150Pa)に相当する真空が適用され、続いて、該エチレングリコール量の約半分を除去する。これは、透明な残渣を生じる。その後に、この残渣を一晩、水に対して透析させる(透析チューブSpectra/Por,5-6.000 MWCO,Spectrum,the Netherlands)。
【0264】
次に、水20ml中の得られたナノ粒子100mg(約300nmol)の溶液に、硫酸(96〜98%)0.5mlを加える。得られた混合物に1mM KMnO4溶液を、紫色の脱色がもはや観察されなくなるまで、滴加する。その後に、同量の1mM KMnO4溶液を新たに加えて、続いて、一晩撹拌する(>12時間)。過剰な過マンガン酸塩を、新たに調製した1mM亜硫酸ナトリウム溶液の滴加によって還元する。得られた混合物を、0.1M MES,0.5M NaCl、pH6.0に対して一晩透析させる(透析チューブSpectra/Por,5-6.000 MWCO,Spectrum,the Netherlands)。
【0265】
RE2−2: ブロモトリメチルシランによる脱アルキル
比較例CE1−1で調製したLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子300mg(約850nmol)を、比較例CE1−2に記載したと同様な方法で、処理した。
【0266】
RE2−3: 11−ビス(ホスホリルメチル)アミノ−ウンデカン酸及び1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)ブタンとのLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子の結合
11−アミノ−ウンデカン酸201gと、亜リン酸170gと、濃塩酸200mlと、水200mlとの混合物を100℃に加熱し、続いて、ホルマリン(37%)324gを1時間にわたって滴加し、100℃において1時間撹拌することによって、11−ビス(ホスホリルメチル)アミノ−ウンデカン酸を製造する。室温に冷却した後に、析出した生成物を真空補助濾過によって単離し、真空下で乾燥させる。これによって、11−ビス(ホスホリルメチル)アミノ−ウンデカン酸334gが得られる。炭素原子2〜18個を有する対応する酸も、同様に有用である。
【0267】
11−ビス(ホスホリルメチル)アミノ−ウンデカン酸0.5g(1.85mol)を、エチレングリコール2ml中に溶解して、続いて、1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)ブタン0.894g(4.375mmol)を加える。透明な溶液の形成(発熱反応)後に、RE2−2で得られたLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子35mg(100nmol)を50℃において加えて、続いて、125℃に加熱する。約120℃において、該粒子は完全に溶解する。4時間後に、透明な、褐色を帯びた溶液が得られ、この溶液は室温に冷却した後にも透明に留まる。該反応混合物に2x2L 10mM炭酸ナトリウム・バッファー(pH8.5)に対する透析(透析チューブ Spectra/Por,5-6000 MWCO, Spektrum, Netherlands)を行なう。得られた透析物は、析出したナノ粒子を含有する。
【0268】
RE2−4: RE2−3のLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子のビオチン化
RE2−3で得られたナノ粒子混合物6.2ml(=5mg又は〜15nmol)を回転蒸発器によって、減量し、4.8mg/mlにまで濃縮する。なお回転させながら、得られた分散系を、20倍モル過剰量のビオチン−X−NHS(スルホ−ビオチン−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル、Calbiochim,Schwalbach,Germany)と共に4時間にわたってインキュベートし、続いて、PBSバッファー(8mM K2HPO4;150mM NaCl;2mM Na2HPO4;pH7.4)に対して透析する(透析チューブ Spectra/Por,5-6000 MWCO, Spektrum, Netherlands)。得られた透析物は、やや濁っている。
【0269】
RE2−5:RE2−3のLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子へのDNAオリゴヌクレオチドの結合
RE2−3で得られたナノ粒子を、40倍過剰量のスルホ−SIAB(スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、Perbio Science Deutschland GmbH,Bonn,Deutschland)によって活性化し;アミノ官能化ナノ粒子を、Centricon濾過ユニット(50000でのMW排除(NW-exclusion)、Millipore,Eschborn,Germany)を用いて、TSMZバッファー(pH7.3)(0.1M NaCl;0.1M トリエタノールアミン−HCl;0.02M NaOH;0.27mM ZnCl2;0.1%Tween20;1mM MgCl2)中で新たに緩衝化して、約7mg/mlの濃度に調節する。水中の20mMスルホ−SIAB溶液50μlを該粒子分散系に加えて、続いて、25℃において15分間インキュベートする。1Mグリシン12μl(12倍過剰量)を加えて、反応を停止させ、遊離スルホ−SIABをSephadex G25 PD10カラム(Amersham Pharmacia Biotech,Freiburg,Germany)上で分離する。配列5’−CCACGCTTGTGGGTCAACCCCCGTGG−3’と5’−末端におけるチオール修飾と3’−末端におけるdabcyl修飾(4−(4−ジメチルアミノフェニルアゾ)ベンゾイル)を有するDNAオリゴヌクレオチド並びに対照の、該プローブから3’−末端におけるdabcyl分子欠損においてのみ異なるDNAオリゴヌクレオチドは、Interactiva(Ulm,Germany)に注文した。等モル量のDNAオリゴヌクレオチドとSIAB活性化ナノ粒子とを混合し、25℃において3時間にわたって及び4℃において一晩インキュベートした。DNAオリゴヌクレオチドに結合したナノ粒子を、非結合粒子及び遊離DNAオリゴヌクレオチドから、FPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて分離した。結合した粒子を50mM Tris−HCl(pH7.4);0.1%BSA中で4℃において保存した。標的DNAが存在しない限り、得られた分子はヘア−ピン構造に折り曲げられるので、分子の両末端は相互に密接に接近して、FRETが発生することができる。これらの状況下で、ナノ粒子蛍光はdabcylによって消光される。
【0270】
RE2−6: RE2−3のLaPO4:Ce,Tbナノ粒子への抗−β−hCGモノクローナル抗体の結合
最初に、RE2−3で得られたナノ粒子を30倍モル過剰量の2−イミノチオラン(2−IT,Traut’s reagent, Perbio Science Deutschland GmbH,Bonn)で活性化する;これらの粒子の2ml(〜25nmol,4mg/ml)を、TSEバッファー(pH8.5)(0.04M NaCl;0.05Mトリエタノールアミン−HCl;0.04M NaOH;0.5mM EDTA;0.1%Tween20;pH8.5)中に移した。この目的のために、これらを3000gにおいて15分間3回遠心分離し、上澄み液をデカントして、各残留残渣をTSEバッファー700μl(pH8.5)中に入れた。これらの粒子を10mM2−IT 75μl(TSEバッファーpH8.5中)と共に、25℃において1時間にわたってインキュベートし、続いて、1Mグリシン9μl(12倍過剰量)によって反応を停止させる。2−IT過剰量を分離するために、得られた混合物を3000gにおいて15分間にわたって3回遠心分離し、その後、上澄み液をデカントして、析出物をTSEバッファー(pH7.3)1ml(0.01M NaCl;0.1Mトリエタノールアミン−HCl;0.02M NaOH;1mM EDTA;0.1%Tween20;pH7.3)中に2回再懸濁させ、3回目の遠心分離後に、TSEバッファー(pH7.3)250μl中に再懸濁させる。同時に、β−hCG(クローンF199C1,Perkin-Elmer Life Sciences-Wallac Oy, Finnland)に特異的である、等モル量のモノクローナルマウス抗体を40倍過剰量のSMCC(N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミド−メチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、Perbio Science Deutschland GmbH,Bonn)によって活性化し;抗β−hCG抗体750μl(=25nmol、5mg/mlの濃度において)を、Centricon濾過ユニット(50000でのMW排除、Millipore,Eschborn,Germany)を用いて、TSMZバッファー(pH7.3)(0.1M NaCl;0.1M トリエタノールアミン−HCl;0.02M NaOH;0.27mM ZnCl2;0.1%Tween20;1mM MgCl2)中で再緩衝化して、7mg/mlの濃度に調節する。DMF(=1mmol)中の20mM SMCC溶液50μlをこの抗体溶液に加えて、続いて、25℃において30分間にわたってインキュベートする。1Mグリシン12μl(12倍過剰量)を加えて、反応を停止させ、遊離SMCCをSephadex G25 PD10既製カラム(Amersham Pharmacia Biotech,Freiburg,Germany)上で分離する。最後に、等モル量の2−IT活性化ナノ粒子分散系と、SMCC活性化抗体溶液とを混合し、25℃において3時間、次に4℃において一晩インキュベートする。抗体結合ナノ粒子を、非結合粒子及び遊離抗体から、Superdex200(Amersham Pharmacia Biotech,Freiburg,Germany)上でのゲル透過クロマトグラフィーによって精製する、0.1M MES、0.5M NaCl、pH6.0を緩衝化溶離剤(buffering eluent)として用いる。結合ナノ粒子の保持時間は約2時間である。
【0271】
RE2−7: hIL−2とのLaPO4:Eu3+ナノ粒子の結合
LaPO4:Eu3+ナノ粒子を、文献(J.Phys.Chem.B2000,104,2824-2828)に記載されている硝酸塩の代わりにLaCl3・7H2O1.76gを用いたことのみを違えて、この文献に記載されている通りに、TEHP中に製造した。これらのナノ粒子300mg(〜1μmol)を、クロロモホルム125ml中のブロモトリメチルシラン2.23g(15mmol)と共に4時間にわたって還流下で加熱した。ブロモトリメチルシラン過剰量及び形成された中間生成物の大部分を蒸留除去した後に、残渣をややアンモニア性条件下で加水分解する。このために、残渣を、アンモニア(25%)100μlを加えた水6mlで処理して、一晩撹拌する。得られた粒子は、乳状分散系を形成して、数時間後には一部が析出する。これらのブロモトリメチルシラン処理ナノ粒子5mg(=25mmol,106μl)を、2:1のモル比率での、10mM炭酸ナトリウムバッファー(pH8.5)中の組み換えヒトIL−2タンパク質(R&D Systems,Mineapolis,MN,USA)と共に、37℃において1時間にわたって振とうしながらインキュベートした。その後に、得られた混合物を3000gにおいて10分間にわたって6回遠心分離し、各回に続いて、10mM炭酸ナトリウムバッファー(pH8.5)1ml中に再懸濁することによって、過剰なタンパク質を分離する。LaPO4:Eu3+/IL−2コンジュゲートを4℃において貯蔵する。
【0272】
RE2−8: ドナーとしてのRE2−6の抗体結合ナノ粒子とアクセプターとしての蛍光結合抗体とによるβ−hCGを検出するための均一エネルギー転移アッセイ
フルオレセインへの抗−β−hCG抗体の結合
Molecular Probesが製造したFluororeporter(登録商標)FITCタンパク質標識キットを用いて、製造者の使用説明書にしたがって、抗−β−hCG抗体(M15294,Perkin-Elmer Life Science,Wallac Oy Finnland)へフルオレセインを結合させた。抗体0.5mgをCentricon濾過ユニット(50000でMW排除)を用いて、0.2M炭酸水素塩バッファー(pH9.0)中に再緩衝化した。この抗体溶液を次に、25倍過剰量の5mMフルオレセインイソチオシアネート(FITC)溶液(同量のDMFと0.2M炭酸水素塩バッファー(pH9.0)との混合物中に溶解したもの)と共にインキュベートし、室温において3時間インキュベートする。過剰なFITCを既製のSephadex G25 PD10カラム(Amersham Pharmacia Biotech,Freiburg,Germany)上で分離し、抗体濃度と、フルオレセイン/抗体の比率を分光法によって測定する。4℃で貯蔵するコンジュゲートに、0.01%アジ化ナトリウムと0.1%BSAとを加える。
【0273】
アッセイの実施
血清中の遊離β−hCGを測定するための商業的に入手可能なキット(A007-101,Perkin-Elmer Life Sciences,Wallac,Oy,Finnland)からのβ−hCG標準50μlを、トリスHClバッファー(pH7.4)200μl中の、RE2−6で得られたナノ粒子抗体コンジュゲート100nmolとフルオレセイン結合抗−β−hCG抗体100nmolと共に、UV透過性96−穴マイクロタイター・プレート(UVStar,Greiner)において25℃で60分間にわたってインキュベートした。2種類の抗−β−hCG抗体は、β−hCGサブユニットの異なるエピトープに対して向けられる。その後、サンプルを蛍光分光計(Jobin Yvon,Fluorolog 3によって製造)で次の条件:280nmの波長におけるパルス化励起、放射:542nm、スリット幅:5nm、総合時間:0.1msにおいて測定した。個々のβ−hCG濃度に関して得られた結果を校正曲線に加える。この校正曲線に基づいて濃度を決定することによって、身体サンプルのβ−hCG含量を血清サンプル中で同様に測定することができる。
【0274】
RE2−9: RE2−7のhIL−2−結合ナノ粒子(LaPO4:Eu3+)と、Alexa Fluor680結合抗−hIL−2Rα鎖抗体による、hIL−2を測定するための均一競合エネルギー転移アッセイ
Alexa Fluor680とのモノクローナル抗−hIL−2Rα鎖抗体の結合
ヒト・インターロイキン−2受容体のα−鎖(hIL−2α−鎖)(ATCC,Rockville,USA)を特異的に認識するモノクローナル抗体7G7B6 1mgを、PBSに対して透析して、2mg/mlの濃度に調節して、Alexa Fluor680タンパク質標識キット(Molecular Probes Europe BV,the Netherlands)を用いて、製造者の使用説明書にしたがって、標識した。反応緩衝剤として、0.1M炭酸水素ナトリウムバッファー(pH8.3)を用いて、インキュベーションを室温において1時間にわたって行なった。結合した抗体をキットに含まれるカラム上で、溶離剤バッファーとして0.2mMアジ化Naを含むPBSバッファーを用いて精製する。結合抗体のタンパク質濃度を決定するために、1cm光学セルにおいて、280nm及び679nmにおける吸収(A)を測定し、次に、該タンパク質濃度は下記式:
【0275】
【数1】
【0276】
によって算出される、式中、203000cm−1M−1はIgGのモル減衰係数を表し、0.05は280nmにおける染料の吸収に関する修正率を表す。結合抗体の濃度は1.27であり、PBS、0.2mMアジ化Naによって1mg/ml(〜6.5μM)に調節される。結合抗体は4℃で貯蔵される。標識効率は次のように算出される。
【0277】
【数2】
【0278】
式中、184000cm−1M−1は、679nmにおけるAlexa Fluor680染料のモル減衰係数を表す。抗体/染料コンジュゲートの比率は3.2である。
【0279】
アッセイの実施:
種々の成分の必要な希釈は、50mM TSAバッファー(50mM Tris−HCl pH7.75;0.9%NaCl;0.05%NaN3)で達成される。UV透過性マイクロタイター・プレート(UVStar,Greiner)の40穴を、非特異的結合を飽和させるために、最初にBSA溶液(0.5%)と共に室温において1時間にわたってインキュベートし、その後に、実施例RE2−7のLaPO4:Eu3+/IL−2コンジュゲート、Alexa Fluor 680標識抗−hIL−2α鎖抗体及び組み換えhIL−2sRαタンパク質(ヒトIL−2溶解性受容体α、R&D Systems, Mineapolis,MN,USA)の混合物を、それぞれ、40nMの最終濃度で加える。これらの穴の20は、非標識hIL−2タンパク質を種々の濃度で加え、残りの20穴は、このアッセイに関連のないタンパク質を加える。0〜950nMの濃度シリーズを試験するために、各濃度を50nMずつ上昇させる。反応の最終量は、各場合に、200μlである。インキュベーションは、シェーカー上、暗所で、室温において、45分間にわたって行なう。Wallac 1420 VictorTM Multilabel Counter(Perkin-Elmer Life Sciences, Wallac Oy, Finnland)によって下記条件下:励起:340nm、発光:665nm、遅延時間:50μs、時間帯(time window):200μs及びサイクル時間:1000μsにおいて、シグナルを読み取る。各値は2回測定し、無関係のタンパク質によって得られた非特異的結合の結果に基づいて補正する。線図において測定値をタンパク質濃度に対してプロットして、校正曲線を得て、これを用いて、ヒトインターロイキン−2の濃度を算出することができる。このことは、ヒト身体サンプルに対しても同様な方法で可能である。
【0280】
RE2−10: RE2−5のDNAオリゴヌクレオチド結合LaPO4:Ce,Tbナノ粒子による分子内エネルギー転移による細菌DNAの定量PCR測定
定量DNA測定のためのプライマー及びプローブは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のRNAポリメラーゼ遺伝子のために特異的に選択され、Interactiva(Ulm,Germany)によって製造されている。プライマーは下記配列を有した:前進5’−GGCCGGTGGTCGCCGCG−3’後進5’−ACGTGACAGACCGCCGGGC−3’。
【0281】
細菌DNAの定量測定に関するアッセイ
50μlのPCR反応のために、プローブとしてのRE2−5のナノ粒子(dabcyl−オリゴヌクレオチド結合)50nM、両方のプライマー、2 U Amplitaq Gold DNA Polymerase(Perkin-Elmer)の各々500nM、250μM dATP、250μM dCTP、250μM dGTP、500μM dUTP、4mM MgCl2、50mM KCl及び10mM Tris−HCl、pH8.0を混合した。ゲノム結核菌(M.tuberculosis)DNAをDNA鋳型として同じプライマーによって増幅し、Invitrogen Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen BV/NOVEX)を用いて、プラスミドにクローン化する。基準曲線を得るために、DNAプラスミド1pg〜100ngの5種類の異なる濃度を、DNA鋳型なしの反応と同様に用いる。各濃度に関して30回反応を用意したので、第15回サイクル後に開始すると、各付加的サイクル後にサンプルを取り出して、同サンプルを分光法によって測定することができる。反応量は50μlであり、増幅は、thermocycler(PCR-Systems 2400, Perkin-Elmer)によって下記条件下:95℃において10分間;95℃において30s、56℃において45s及び72℃において30sの15〜45サイクルにおいて行なう。サンプルは、蛍光分光計(Jobin Yvonによって製造、Fluorolog 3)において下記条件下:280nmの波長においてパルス化励起、放射:542nm、スライド幅:4nm、遅延時間:50μs、繰り返し率 約25Hzにおいて測定した。同じ方法で、テルビウム輝線の半減期を測定することが可能である。このために、下記条件を用いた:励起:280nm、放射:542nm、スリット幅:5nm、総合時間:0.1ms。プローブと標的DNAのハイブリダイズム中に、結合ナノ粒子とdabcylとの間に分子内FRETは生じない。それ故、標的DNAの濃度が上昇すると、ナノ粒子のTb蛍光は、鋳型なしの対照サンプルに関して上昇する。同様に、ナノ粒子蛍光の寿命の半減期は、鋳型DNAなしの対照サンプルに比べて延長する。両パラメーターのこれらの違いをサイクル数に対してプロットして、各DNA鋳型濃度に対する校正曲線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0282】
【図1】図1は、均一CePO4コア粒子と、本発明によるCePO4/TbPO4のコア/シェル粒子の蛍光スペクトルを示す。
【図2】図2は、1つのCePO4:Tb/LaPO4のコア/シェル粒子のエネルギー濾過透過電子顕微鏡検査によって得られた種々の像を示す。
【図3】図3は、修飾され、フルオレセインに化学的に結合した、本発明によるCePO4/TbPO4のコア/シェル粒子の2つの蛍光減衰曲線をそれぞれ示す。基準として、フルオレセインに結合していないCePO4/TbPO4・コア/シェル粒子の蛍光減衰曲線も示す。
【図4】フルオレセイン結合均一LaPO4:Ce,Tb粒子(比較例1)の蛍光減衰曲線を示す。
【図5a】図5aは、修飾もされず、フルオレセインにも結合していない、本発明によるCePO4/TbPO4・コア/シェル粒子の、時間ゲート(TGF)法で測定した、2つの蛍光スペクトルをそれぞれ示す。
【図5b】図5bは、それぞれ、時間ゲート法で測定した均一LaPO4:Ce,Tbナノ粒子(比較例1)の520nmと542nmにおける、1つの蛍光スペクトルを示す。
【図6a】1つの分子に結合した(F)RETパートナーによる均一キナーゼ・アッセイ。
【図6b】1つの分子に結合した(F)RETパートナーによる均一イムノアッセイ。
【図7】1つの分子(エピトープ)に結合した(F)RETパートナーによる競合イムノアッセイを示す。
【図8】別々の分子に結合した(F)RETパートナーによる均一な飽和イムノアッセイ。
【図9】別々の分子に結合した(F)RETパートナーによる均一な競合イムノアッセイ。
【図10】1つの分子に結合した(F)RETパートナーによる均一なアッセイ。
【図11】分子ビーコンの方法に従うアッセイ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、発光性シェルによって囲まれた、金属塩若しくは酸化物のコアを有する発光性ナノ粒子、特に光ルミネッセンス性(photoluminescent)ナノ粒子、これら粒子の合成、及び(F)RETアッセイ、特にバイオアッセイにおけるそれらの使用に関する。
【0002】
出願の背景
この10年間にわたって、ナノ粒子、即ち、1μm未満のサイズを有する粒子は、それらの独特の性質のために、研究及び産業界において非常に多くの人々の注目を引いている。光電子分野での研究及び開発は、発光ダイオード(LED)、ディスプレイ、ナノメーター・サイズの光電子デバイスにおける又は低閾レーザーの光源としての発光性粒子の可能な用途の点から、発光性粒子に集中している。
【0003】
発光性物質のなかでは、しばしば、半導体物質と非半導体物質との間で区別がされる。
【0004】
ドープされていてもいなくてもよいII〜VI又はIII〜V半導体(しばしば、「量子ドット」と呼ばれる)のような半導体ナノ粒子は、3次元の全てにおける電子と孔の両方の量子閉じ込めを特徴とし、これが物質の有効バンドギャップを拡張させて、結晶サイズを減少させる。その結果、ナノ粒子のサイズが小さくなるにつれて、半導体ナノ粒子の吸光と発光の両方を青色(高エネルギー)方向にシフトさせることができる。
【0005】
水溶性コア/シェル半導体ナノ結晶は、例えば、WO00/17655に記載されている。
【0006】
量子ドットに比較した場合に、ナノ結晶性非半導体ベース発光物質(non-semiconductor-based luminescent materials)、特に、ランタニドでドープした(lanthanide-doped)金属酸化物又は塩の蛍光放射が比較的狭く、ホスト物質とナノ粒子のサイズとにあまり大きな程度に依存しないことが、これらを特に魅力的にしている。発光の色を決定するのは、むしろ、ランタニド金属の種類のみである。同じ出願人に譲渡されたPCT/DE01/03433は、ランタニドでドープしたこの種類のナノ粒子の、一般的に適用可能な合成方法を開示している。これらのナノ粒子は、可視光の波長ともはや相互作用せず、それによって、例えば有機溶媒又は水性溶媒中の透明な分散系を生じるサイズ(30nm未満)で製造することができる。
【0007】
ランタニドでドープした非半導体ベースの発光性ナノ粒子に関する他の刊行物は、例えば、下記の通りである:
K.Riwotzki et al.: Angewandte Chemie,Int.Ed.40,2001,573-576頁、LaPO4:Ce,Tbに関して;
K.Riwotzki, M.Haase, J.Phys.Chem.B;Vol.102,1998,10129-10135頁、YVO4:Eu,YVO4:Sm及びYVO4:Dyに関して;
H.Meyssamy,et al.,Advanced Materials,Vol.11,Issue 10,1999,840-844頁、LaPO4:Eu,
LaPO4:Ce及びLaPO4:Ce,Tbに関して;
K.Riwotzki et al.,J.Phys.Chem.B 2000,Vol.104,2824-2828頁、<<Liquid phase synthesis doped nanoparticles: colloids of luminescent LaPO4:Eu and CePO4:Tb particles with a narrow particle size distribution>>;
M.Haase et al., Journal of Alloys and Compounds,303-304(2000) 191-197,’’Synthesis and properties of colloidal lanthanide-doped nanocrystals’’;
Jan W Stouwdam and Frank C.J.M.van Veggel, Nano Letters, ASAP article,web release May 15,2002,’’Near-infrared emission of redispersible Er3+, Nd3+and Ho3+ deoped LaF3 nanoparticles’’;及び
G.A.Hebbink et al., Advanced Materials 2002,14,No.16,1147-1150頁、’’Lanthanide(III)-doped nanoparticles that emit in the near-infrared’’.
半導体ベースのナノ粒子(「量子ドット」)は、バイオアッセイにおける使用が既に考慮されている。Bawendi et al., Physical Review Letters,76,1996,1517-1520頁は、例えば、特異的に標識した生物学的系におけるFRET効果を報告している。さらに、WO00/29617は、(F)RETアッセイにおけるラベルとしての「量子ドット」によってタンパク質又は核酸を検出することができることを開示している。US6,468,808B1とUS6,326,144B1は、量子ドットの生体分子コンジュゲートと、蛍光分光法におけるそれらの使用も記載している。
【0008】
(F)RET(蛍光共鳴エネルギー転移)及び関連する共鳴エネルギー転移(RET)は、蛍光を発光することができるドナーから近接したアクセプターへの励起エネルギーの転移に基づいている。この手法によって、例えば、生物学的系における適当な蛍光ラベルによって約1〜8nmの範囲内の分子レベルの距離を測定することが可能である。アクセプターに転移されたエネルギーは、放射せずに内部変換(RET)によって軽減することができ、この場合には、ドナー蛍光の中止(クエンチング)のみを生じる。或いは、アクセプターは受容したエネルギーを蛍光(FRET)の形態でも放射する。これらの現象は、充分に理解されており、ドナーとアクセプターとの間の双極子−双極子相互作用の場合には、Foesterの理論(例えば、J.R.Lakowicz, Principles of Fluorescence Spectroscopy, Kluwer Academic Press, New York,1990,368-445頁)によって説明することができる。エネルギー転移は、ドナー蛍光の強度とその寿命を減少させ、同時に、アクセプター蛍光を開始させ、感作し、又は増強する。エネルギー転移の効率は、分子間分離の逆6乗(inverse 6th power)に依存し、R06/(R06+R6)に比例して低下する。R0、いわゆるFoester半径は、エネルギー転移の効率が50%であるような、ドナーとアクセプターとの間の距離を特徴付ける。
【0009】
F(RET)効率は、アクセプター付(QDA)及びアクセプターなし(QD)のドナーのそれぞれの蛍光強度を介して式:1−(QDA/QD)により、又はアクセプター・プローブの存在下(TDA)と不存在下(TD)とのドナーの寿命を比較することによって式:1−(TDA/TD)に基づいて測定することができる。
【0010】
しかし、バイオアッセイにおける「量子ドット」の使用は、種々の欠点を有する。蛍光「量子ドット」の放射波長は粒子のサイズに依存するので、非常に狭いサイズ分布しか用いることができない。このことは、合成及び/又はサイズ選択方法に対する難題を表す。その上、「量子ドット」は、通常、放射なしの電子−孔対再結合によって惹起される、比較的低い量子効率を示す。この欠陥を克服するために、CdS被膜が発光性CdSeコアの光安定性を保護し、強化する、CdSe/CdSのコア/シェル構造が提案されている(X.Peng et al., J.Am.Chem.Soc. 119,1997,7019-7029頁)。
【0011】
典型的には、(F)RETベースのアッセイは、例えばフルオレセイン又はローダミンのような、有機染料分子によって行なわれる。多くの用途のために、これらの有機蛍光染料に関連した一般的な欠点は、入射光線に対するそれらの安定性が不充分であることである。それらの光毒性は、近接した環境において生物学的物質をさらに損傷する可能性がある。他の好ましくない性質は、それらの幅広い放射バンドと、小さいストークス・シフト、即ち、励起と放射最大との差並びに、幾つかの光源及び/又は複雑なフォトシステム(complicated photo systems)の使用をしばしば必要とする比較的狭いスペクトル励起バンドである。
【0012】
したがって、(F)RETアッセイ、とりわけバイオアッセイに特に適し、上記欠点を克服している蛍光無機物質を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0013】
(F)RET効率を高めることが、本発明の他の目的である。高い(F)RET効率は、該方法の感度を高めて、例えば、シグナル/ノイズ比率を改良する。
【0014】
さらに、(F)RETベースアッセイは、このアッセイの総合感度を高めるために、高い量子収量(放出プロトンの、吸収プロトンに対する比率)を有するドナー分子を必要とする。それ故、高い量子収量を有する無機蛍光粒子を提供することが、本発明の他の目的であり、それは、無機蛍光粒子をバイオアッセイにおけるもの以外の用途のためにも特に魅力的にする。
【0015】
本発明の他の目的によると、これらの蛍光物質の製造のための特定の方法が提供される。
【0016】
最後に、無機ナノ粒子状物質に基づくバイオアッセイを提供することが目的である。
【0017】
発明の概要
上記技術的目的は、(a)第1金属塩又は酸化物でできているコアと、該コアを囲む(b)発光性であり非半導体特性を有する第2金属塩又は酸化物でできているシェルとを含む発光性無機ナノ粒子、及び以下に記載するそれらの製造方法によって、解決されている。
【0018】
発明の詳しい説明
1.発光性ナノ粒子
本発明の発光性、特に光ルミネッセンス性粒子は、(a)第1金属塩又は酸化物でできているコアと、該コアを囲む(b)第2金属塩又は酸化物でできている発光性非半導体シェルとを含む。
【0019】
「発光(ルミネセンス:luminescence)」は、特許請求するナノ粒子がエネルギー(例えば、光子(IR、可視、UV)、電子線、X線等の形態の)を吸収して、次に、それをより低いエネルギーの光として放射する該ナノ粒子の性質を特徴付ける。明細書及び特許請求の範囲を通して「発光性(ルミネセンスの:luminescent)」なる用語が、より具体的で、好ましい意味である「光ルミネセンスの(photoluminescent)」をも包含することを、理解すべきである。
【0020】
「光ルミネセンス(photoluminescence)」とは、無機金属塩が特定エネルギーの光子(例えば、UV、可視)を吸収し、ある一定の期間にわたってより低いエネルギーの光(より長い波長、例えば、UV、可視、IR)を放射する該無機金属塩の能力と理解される。発光期間は、10−7又は10−8秒までの励起状態の寿命に対応し得、それは典型的には蛍光と呼ばれるが、さらに長い時間にも対応することができる。ランタニドをドープした塩、例えば硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物に関しては、典型的にミリ秒のオーダー(例えば、1〜20ms)の励起状態の寿命が観察される。
【0021】
本発明によると、シェル物質とコア物質の両方とも半導体特性を示さないことが好ましい。
【0022】
シェルとコアの両方とも、結晶性物質を構成することも好ましい。このことは、X線粉末回折パターンによって確認することができる。
【0023】
特許請求したコア/シェル粒子の形状は、例えば、針状、楕円又は球形であることができ、後者の2つのオプションが好ましい。
【0024】
特許請求したコア/シェル・ナノ粒子は、好ましくは、それらの最長軸に沿って測定した1〜100nm、より好ましくは1〜50nmの平均サイズを有する。最大30nm、最大20nm、最大10nm、例えば2〜8nm又は4〜6nmの平均サイズがさらにいっそう好ましい。各場合に、標準偏差は好ましくは30%未満、特に10%未満である。
【0025】
粒度及び分布は、既に挙げた論文にK.Riwotzki et al.及びM.Haase et al.がさらに述べている手法によって、例えば透過型電子顕微鏡写真(TEM)によって測定することができる。ゲル透過クロマトグラフィー及び超遠心分離も、粒度を測定することができる。
【0026】
シェルの厚さは、好ましくは、少なくとも2つの単層である。シェル厚さの好ましい上限は、コア直径(非球形粒子では、最長軸に沿って測定)2つ分、より好ましくはコア直径1つ分、例えばその2/3である。
【0027】
本発明の第1実施態様によると、コア(a)は、シェルの電子励起後にシェルからエネルギーを受容しない金属塩若しくは酸化物で、特に非発光性金属塩若しくは酸化物でできており、(b)シェルは、発光性の、特にドープされた金属塩若しくは酸化物でできている。
【0028】
本出願を通して「ドーピング」は、広い意味で理解するべきである。用いるドーパントの上限は、発生したルミネセンスが濃度消光現象によって減衰しないほど充分に低くあるべきである。対応するように、この上限は、ドーピング・イオンの種類及び、各コア物質に特異的である、格子中のドーパント金属イオン間の距離のような要因に依存する。好ましくは、ホスト物質は、50モル%まで、好ましくは0.1〜45モル%、例えば0.5〜40モル%又は1〜20モル%の量でドーパントによって置換される。
【0029】
さらに、組み入れるドーパント金属の種類に関する特定の制限は、同ドーパント金属が吸収した光子を発光性放射線に転換することができるかぎり、存在しない。したがって、例えば、Ag、Cu、Co又はMnのような金属(例えば、ホスト金属としての亜鉛と組み合わせて)を用いることができる。しかし、ランタニド金属のルミネセンスはその格子環境から特に独立しているので、ランタニド金属によるドーピングが好ましい。一般に、二価又は三価のドーパント、特にランタニド・ドーパントの使用が好ましい。二価ランタニド(+II酸化状態)は、比較的強い吸収ではあるが、比較的幅広い放射バンドを特徴とする。この理由から、これらはエネルギーを他の発光性金属(例えば、Eu2+〜Mn2+)に転移するセンシタイザー(sensitizer)として適当に用いることができる。比較的シャープなバンドの形状で発光する三価ランタニド(酸化状態+III)の能力は、それらを単独での使用のために特に魅力的なドーパントにしているが、後に説明するように、三価ランタニド・ドーパント系の適当な組み合わせも存在する。
【0030】
シェルのための適当なドーパント物質は、用いるホスト物質に依存して、発光特性を有する、Al、Cr、Tl、Mn、Ag、Cu、As、Nb、Ni、Ti、In、Sb、Ga、Si、Pb、Bi、Zn、Co、特に、Mn、Ag、Cu、Bi、Cr、Sn、Sb及び好ましくはランタニド、特にCe(58)、Pr(59)、Nd(60)、Sm(62)、Eu(63)、Gd(64)、Tb(65)、Dy(66)、Ho(67)、Er(68)、Tm(69)若しくはYb(70)又はこれらの組み合わせを包含する。
【0031】
ランタニド金属のルミネセンスは、その格子環境から特に独立しているので、ランタニド金属によるドーピングが好ましい。
【0032】
実用的な見地(蛍光の種類、強度等)から、Ce、Tb、Eu、Nd、Dy、Th、Sm、Gd、Ho、Er及びYbは、最も興味深い発光特性を示す。
【0033】
Er3+、Nd3+及びHo3+は1300〜1600nmで放射するので、これらは電気通信分野のために特に興味深い。Ceは、例えばNd、Dy又はTbのような、他のドーパント物質と組み合わせて、好ましく用いられる。Ceは、250〜300nmの波長を有するUV光線を強く吸収することが知られているが、ホスト格子(例えば、ホスフェート)に依存して、約330nmにかなり幅広いルミネセンス・バンドを示す。吸収したエネルギーを転移することができる他のドーパントと組み合わせて用いる場合には、非常に効果的な発光系を得ることができる。ドーパント金属の他の魅力的な組み合わせは、YbとErであり、この組み合わせは、Er3+よりも10倍大きい吸収断面積と、980nmにおいてEr3+よりも非常に幅広いピークとを有するYb3+を介して、Er3+が間接的にポンピングされる、Er3+をドープした光増幅器において非常に重要である。Nd3+とGd3+とを組み合わせることもできる。
【0034】
前述したように、これらのランタニド金属組み合わせをシェルのためのドーパントとして用いることのみが可能であるのではない。大きい吸収断面積を有しかつ少量の他の金属(例えば、Tb3+、Er3+、Gd3+)によってその一部を置換されるランタニド金属イオン(例えば、Ce3+、Yb3+、Nd3+)をホスト金属として用いることも、同様に効果的である。この理由から、ランタニド塩(例えば、Ce3+、Yb3+、Nd3+塩)をシェルのホスト物質として用いることもできる。
【0035】
生物学的アッセイに用いるような、水性媒質中での用途のためには、最も好ましいドーパントは、水との相互作用を最小にするために可視領域でのルミネセンスを示すもの(例えば、Tb、Dy、Tm、Sm)であり、さもなければ水は発光を吸収しうる。
【0036】
シェルのためのホスト物質は、具体的に限定される訳ではなく、既知の非発光性金属酸化物又は塩、例えば、硫化物、セレン化物、スルホセレン化物、オキシ硫化物、リン酸塩、ハロリン酸塩(haophosphates)、ヒ酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩、ガリウム酸塩、ケイ酸塩、ゲルマニウム酸塩、酸化物、バナジン酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、アルカリハロゲン化物(alkalihalogenates)、他のハロゲン化物、特にフッ化物、リン化物、又は窒化物から選択されうる。硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物の使用が特に好ましい。
【0037】
これらの塩の金属は、好ましくは、主族1、2、13若しくは14、亜族3、4、5、6、7、又はランタニドに属する。大抵の発光性ドーパントは二価若しくは三価金属イオンであるので、シェルのための対イオンとして、非発光性二価若しくは三価金属原子、例えば、2族の金属(アルカリ土類金属、例えばMg、Ca、Sr若しくはBa)、又は3族(Sc、Y、若しくはLa)の金属、又は13族の金属(例えば、Al、Ga若しくはIn)或いはZnを用いることが好ましい。
【0038】
ホスト金属塩の好ましい実施態様は、下記を含む:
主族2(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(元素58〜71、即ち、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLu)から選択される対応する数の金属(電荷中立性を保証するため)のリン酸塩;
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属の硫酸塩;
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又は13族(Al、Ga、In、Tl)又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属のホウ酸塩;
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属のフッ化物;
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のアルミン酸塩(例えば、Al5O12又はAlO4);
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のガリウム酸塩(例えば、Ga5O12);
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、12族(例えば、Zn、Cd)又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属のケイ酸塩(例えば、SiO3若しくはSiO4);
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のバナジン酸塩(例えば、VO4);
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のタングステン酸塩(例えば、WO4);
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のモリブデン酸塩(例えば、MoO4);
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のタンタル酸塩(例えば、TaO4);或いは
2族(例えば、Mg、Ca、Sr、Baから)、3族(例えば、Sc、Y、La)、又はランタニド(上記の通り)から選択される対応する数の金属原子のヒ酸塩(例えば、AsO4)。
【0039】
特定のドーパントのための適当なホスト物質を選択する場合には、当該技術分野で知られているように、ホストとドーパントの金属が好ましくは同じ原子価及び類似の(許容差、例えば±20%)又は同一のイオン直径を有するべきであることを、さらに考慮すべきである。同時に、ドーパントとホスト金属が、同じ又は類似の格子定数(単数又は複数)(許容差、例えば±20%)を有する同じ又は類似の格子型の結晶を特定のアニオンと共に形成できるならば、このことは、典型的にドーパントとホスト金属の適合性を高める。
【0040】
BaとLaは、二価(+II)ランタニドのイオン直径に非常に類似するイオン直径を示すので、コアのためのホスト物質金属としてのBaとLaによって、しばしば、上記基準が満たされることができる。同じ理由から、La塩とY塩とは、三価(+III)ランタニド・ドーパントのために適したホスト物質である。
【0041】
発光性シェル物質の具体的な例は、例えば、LiI:Eu;NaI:Tl;CsI:Tl;CsI:Na;LiF:Mg;LiF:Mg,Ti;LiF:Mg,Na;KMgF3:Mn;Al2O3:Eu;BaFCl:Eu;BaFCl:Sm;BaFBr:Eu;BaFCl0.5Br0.5:Sm;BaY2F8:A(A=Pr、Tm、Er、Ce);BaSi2O5:Pb;BaMg2Al16O27:Eu;BaMgAl14O23:Eu;BaMgAl10O17:Eu;BaMgAl2O3:Eu;Ba2P2O7:Ti;(Ba,Zn,Mg)3Si2O7:Pb;Ce(Mg,Ba)Al11O19;Ce0.65Tb0.35MgAl11O19:Ce,Tb;MgAl11O19:Ce,Tb;MgF2:Mn;MgS:Eu;MgS:Ce;MgS:Sm;MgS:(Sm,Ce);(Mg,Ca)S:Eu;MgSiO3:Mn;3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn;MgWO4:Sm;MgWO4:Pb;6MgO・As2O5:Mn;(Zn,Mg)F2:Mn;(Zn4Be)SO4:Mn;Zn2SiO4:Mn;Zn2SiO4:Mn,As;Zn3(PO4)2:Mn;CdBO4:Mn;CaF2:Mn;CaF2:Dy;CaS:A(A=ランタニド、Bi);(Ca,Sr)S:Bi;CaWO4:Pb;CaWO4:Sm;CaSO4:A(A=Mn,ランタニド);3Ca3(PO4)2・Ca(F,Cl)2:Sb,Mn;CaSiO3:Mn,Pb;Ca2Al2Si2O7:Ce;(Ca,Mg)SiO3:Ce;(Ca,Mg)SiO3:Ti;2SrO・6(B2O3)・SrF2:Eu;3Sr3(PO4)2・CaCl2:Eu;A3(PO4)2・ACl2:Eu(A=Sr,Ca,Ba);(Sr,Mg)2P2O7:Eu;(Sr,Mg)3(PO4)2:Sn;SrS:Ce;SrS:Sm,Ce;SrS:Sm;SrS:Eu;SrS:Eu,Sm;SrS:Cu,Ag;Sr2P2O7:Sn;Sr2P2O7:Eu;Sr4Al14O25:Eu;SrGa2S4:A(A=ランタニド、Pb);SrGa2S4:Pb;Sr3Gd2Si6O18:Pb,Mn;YF3:Yb,Er;YF3:Ln(Ln=ランタニド);YLiF4:(Ln=ランタニド);Y3Al5O12:Ln(Ln=ランタニド);YAl3(BO4):Nd,Yb;(Y,Ga)BO3:Eu;(Y,Gd)BO3:Eu;Y2Al3Ga2O12:Tb;Y2SiO5:Ln(Ln=ランタニド);Y2O3:Ln(Ln=ランタニド);Y2O2S:Ln(Ln=ランタニド);YVO4:A(A=ランタニド、In);Y(P,V)O4:Eu;YTaO4:Nb;YAlO3:A(A=Pr,Tm,Er,Ce);YOCl:Yb,Er;LnPO4:Ce,Tb(Ln=ランタニド又はランタニドの混合物);LuVO4:Eu;GdVO4:Eu;Gd2O2S:Tb;GdMgB5O10:Ce,Tb;LaOBr:Tb;La2O2S:Tb;LaF3:Nd,Ce;BaYb2F8:Eu;NaYF4:Yb,Er;NaGdF4:Yb,Er;NaLaF4:Yb,Er;LaF3:Yb,Er,Tm;BaYF5:Yb,Er;Ga2O3:Dy;GaN:A(A=Pr,Eu,Er,Tm);Bi4Ge3O12;LiNbO3:Nd,Yb;LiNbO3:Er;LiCaAlF6:Ce;LiSrAlF6:Ce;LiLuF4:A(A=Pr,Tm,Er,Ce);Li2B4O7:Mn,SiOx:Er,Al(0≦x≦2);Y2O3:Ln(Ln=ランタニド、特にEu)、Y2O2S:Eu;Y2SiO5:Eu;SiO2:Dy;SiO2:Al、Y2O3:Tb、CaSiO3:Ln、CaS:Ln、CaO:Lnであり、ここでLn=1、2又は3個のランタニドである。
【0042】
ホスト格子型によって分類した場合に、下記の好ましい実施態様をさらに列挙することができる。
【0043】
1.ハロゲン化物:例えば、XY2(X=Mg,Ca,Sr,Ba;Y=F,Cl,I)、CaF2:Eu(II)、BaF2:Eu;BaMgF4:Eu;LiBaF3:Eu;SrF2:Eu;SrBaF2Eu;CaBr2:Eu−SiO2;CaCI2:Eu;CaCI2:Eu−SiO2;CaCI2:Eu,Mn−SiO2;CaI2:Eu;CaI2Eu,Mn;KMgF3:Eu;SrF2:Eu(II);BaF2:Eu(II),YF3,NaYF4,:MgF2:Mn;MgF2:Ln(Ln=ランタニド)。
【0044】
2.アルカリ土類硫酸塩:例えば、XSO4(X=Mg,Ca,Sr,Ba)、SrSO4:Eu、SrSO4:Eu,Mn、BaSO4:Eu、BaSO4:Eu,Mn、CaSO4、CaSO4:Eu、CaSO4:Eu,Mn、並びにさらにマグネシウムと組み合わせた、混合アルカリ土類硫酸塩、例えば、Ca,MgSO4:Eu,Mn。
【0045】
3.リン酸塩とハロリン酸塩:例えば、CaPO4:Ce,Mn、Ca5(PO4)3Cl:Ce,Mn、Ca5(PO4)3F:Ce,Mn、SrPO4:Ce,Mn、Sr5(PO4)3Cl:Ce,Mn、Sr5(PO4)3F:Ce,Mn、(後者は、さらにEu(II)で共ドープされる(codoped)か又はEu、Mnで共ドープされ)、α−Ca3(PO4)2:Eu;β−Ca3(PO4)2:Eu,Mn;Ca5(PO4)3Cl:Eu、Sr5(PO4)3Cl:Eu、Ba10(PO4)6Cl:Eu、Ba10(PO4)6Cl:Eu,Mn、Ca2Ba3(PO4)3Cl:Eu、Ca5(PO4)3F:Eu2+X3+;Sr5(PO4)3F:Eu2+X3+(X=Nd,Er,Ho,Tb);Ba5(PO4)3Cl:Eu;β−Ca3(PO4)2:Eu;CaB2P2O9:Eu;CaB2P2O9:Eu;Ca2P2O7:Eu;
Ca2P2O7:Eu,Mn;Sr10(PO4)6Cl2:Eu;(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu;LaPO4:Ce;CePO4:LaPO4:Eu、LaPO4:Ce、LaPO4:Ce,Tb、CePO4:Tb。
【0046】
4.ホウ酸塩:例えば、LaBO3;LaBO3:Ce;ScBO3:Ce;YAlBO3:Ce;YBO3:Ce;Ca2B5O9Cl:Eu;xEuO・yNa2O・zB2O3。
【0047】
5.バナジン酸塩:例えば、YVO4、YVO4:Eu、YVO4:Dy、YVO4:Sm、YVO4:Bi、YVO4:Bi,Eu、YVO4:Bi,Dy、YVO4:Bi,Sm、YVO4:Tm、YVO4:Bi,Tm、GdVO4、GdVO4:Eu、GdVO4:Dy、GdVO4:Sm、GdVO4:Bi;GdVO4:Bi,Eu、GdVO4:Bi,Dy、GdVO4:Bi,Sm;YVO4:Eu、YVO4:Sm、YVO4:Dy。
【0048】
6.アルミン酸塩:例えば、MgAl2O4:Eu;CaAl2O4:Eu;SrAl2O4:Eu;BaAl2O4:Eu;LaMgAl11O19:Eu;BaMgAl10O17:Eu;BaMgAl10O17:Eu,Mn;CaAl12O19:Eu;SrAl12O19:Eu;SrMgAl10O17:Eu;Ba(Al2O3)6:Eu;(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu;CaAl2O4:Eu,Nd;SrAl2O4:Eu,Dy;Sr4Al14O25:Eu,Dy。
【0049】
7.ケイ酸塩:例えば、BaSrMgSi2O7:Eu;Ba2MgSiO7:Eu;BaMg2Si2O7:Eu;CaMgSi2O6:Eu;SrBaSiO4:Eu;Sr2Si3O6.SrCl2:Eu;Ba5SiO4Br6:Eu;Ba5SiO4Cl6:Eu;Ca2MgSi2O7:Eu;CaAl2Si2O8:Eu;Ca1.5Sr0.5MgSi2O7:Eu;(Ca,Sr)2MgSi2O7:Eu、Sr2LiSiO4F:Eu。
【0050】
8.タングステン酸塩とモリブデン酸塩:例えば、X3WO6(X=Mg,Ca,Sr,Ba)、X2WO6(X=Li,Na,K,Rb,Cs)、XMoO4(X=Mg,Ca,Sr,Ba)、並びにポリモリブデート又はポリタングステート又は対応するヘテロ−若しくはイソ−ポリ酸の塩。
【0051】
9.ゲルマニウム酸塩:例えば、Zn2GeO4
10.さらに、下記クラス:ALnO2:Yb,Er(A=Li,Na;Ln=Gd,Y,Lu);Ln2O3:Yb,Er(Ln=La,Gd,Y,Lu);LnAO4:Yb,Er(Ln=La,Y;A=P,V,As,Nb);Ca3Al2Ge3O12:Er;Gd2O2S:Yb,Er;La2S:Yb,Er。
【0052】
本発明の第1態様によると、コア物質、即ち、金属塩又は酸化物は、その電子励起状態にある発光性シェルからのエネルギー転移を受容しない。
【0053】
この必要条件は、電子的基底状態と第1電子励起状態との間のエネルギー的距離が、選択した発光性シェルの第1電子励起状態とその基底状態との距離よりも大きい電子状態のみを有するコア金属塩又は酸化物によって常に満たすことができる。これらの状況下で、シェルによって吸収されたエネルギー(例えば、UV、可視、IR)は、コア金属原子又はアニオンに伝達されることはできない。これによって生じる、シェルにおけるエネルギー局在は、表面クエンチング現象を強化し、粒子の総(F)RET効率を高めると考えられる。好ましい1実施態様によると、コアの塩又は酸化物は非発光性であり、したがって、励起シェルからエネルギーが移送されることができる吸収バンド(UV、可視又はIR)を有さない。非発光性物質はしばしば発光性物質よりも安価であるので、このことは経済的にも有利である。
【0054】
コア物質が、ドープされたシェルのホスト物質に一致することが、好ましい。
【0055】
したがって、コアを形成する、適当なアニオンは、上記と同じであり、非限定的に、ホスフェート、ハロホスフェート、アルセネート、スルフェート、ボレート、アルミネート、ガレート、シリケート、ゲルマネート、オキシド、バナデート、ニオベート、タンタレート、タングステート、モリブデート、アルカリハロゲネート、その他のハライド、又はニトリドを包含する。このタイプのナノ粒子金属塩は、PCT/DE01/03433に開示されている。
【0056】
コア金属原子の選択を支配する唯一の基準は、それらが光子照射後のシェルからの発光を受容する能力を有さないことである。この目的のために用いることができる、好ましい金属イオンは、シェルのホスト物質のために上述したものと同じである。これらは、非限定的に、2族金属(アルカリ土類金属、例えば、Mg、Ca、Sr若しくはBa)、3族金属(例えば、Sc、Y若しくはLa)、亜鉛、又は13族金属(例えば、Al、Ga若しくはIn)を包含する。コア物質の表面上で成長するシェル物質の適性を高めるために、コア物質として、ドープされたシェルのホストを構成するものと同じ塩を選択することがさらに好ましいが、絶対的に必要であるという訳ではない。この要件が満たされない場合には、コアのホスト物質とシェル物質とが同じ格子型に属して、非常に類似した(許容差、例えば±20%)又は同一の格子定数を示すことが好ましい。
【0057】
第2実施態様によると、(a)コアは第1金属塩又は酸化物(「ドナー」)を含み、その第1金属又は酸化物は、励起後に励起エネルギーを、(b)第2シェル形成発光性金属塩又は酸化物(「アクセプター」)に転移させることができ、その第2シェル形成性発光金属塩又は酸化物は同エネルギーをルミネセンスとして放射する。
【0058】
適当なドナー−アクセプター金属組み合わせは、例えば、上記ドーパントから、特にランタニドから選択することができ、一般に、ドナー金属の電子基底状態と第1励起状態との間の距離が、アクセプター金属の対応する距離よりも大きいエネルギーを含むことを必要とする。
【0059】
本発明の第2実施態様にコア物質として用いることができる、適当な光子エネルギー吸収体(ドナー)の例は、例えばCe3+、Yb3+、Nd3+又はEu2+のような、比較的高い吸収断面積を有するランタニドイオンである。Ce3+が、シェル物質金属及びアクセプターとしてのTb3+、Dy3+又はNd3+と組み合わせて、例えば、対応する硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物の形態で好ましく用いられる。
【0060】
例えばリン酸塩、硫酸塩又はフッ化物のようなYb3+塩は、コア物質として、好ましくは、それぞれ、シェル物質としての例えば硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物のようなEr3+塩と組み合わされる。このことは、Yb3+を介しての間接的なEr3+ポンピングを可能にする。
【0061】
シェル構成の点では、本発明の第1実施態様に関連して述べたホスト物質の高濃度ドーパント物質として、アクセプター原子を用いることができる。しかし、コアからシェルへのエネルギー転移の効率を高めるために、シェル全体が対応するアクセプター塩、例えば金属の硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物から成ることも可能である。
【0062】
第2実施態様のコア物質は、上述したように、ホスト物質の高濃度ドーパントとしてドナー金属を含むことができる。或いは及び好ましくは、コアは対応するドナー金属塩から成る。
【0063】
コア塩のアニオンは、選択したシェル物質の成長を可能にする適合性アニオンから自由に選択することができる。適当なアニオンの例は、第1実施態様に関して記載されており、スルフェート、ホスフェート又はフッ化物が好ましい。
【0064】
いわゆる第2実施態様のための、1つの特定の好ましい例は、CePO4/TbPO4 コア/シェル粒子である。
【0065】
第2実施態様によると、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩又はゲルマニウム酸塩に対応するアニオンはエネルギーを吸収し、同エネルギーを適当なシェル物質(アクセプター)に転移させることができ、このシェル物質が該エネルギーを発光として放射するので、これらの塩をコア物質(ドナー)として用いることも可能である。これらを、発光性センターとしてそれ自体作用し、したがって発光を強化する、バナジン酸塩としてのBi3+及び/又はEu3+のような、ドーパント金属と組み合わせることもできる。コアは、例えば、3族金属(例えば、Sc、Y若しくはLa)又は13族金属(例えば、Al、Ga若しくはIn)のバナジン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩又はゲルマニウム酸塩を含む又はこれらの塩から成ることができる。これを、ランタニドがエネルギー・アクセプターとして作用するシェル物質としてのランタニド塩、好ましくはリン酸塩、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸又はゲルマニウム酸塩と組み合わせることが好ましい。具体的な例は、LaVO4/EuPO4、LaVO4/NdPO4、YVO4/DyPO4タイプのコア/シェル組み合わせを包含する。
【0066】
II.コア/シェル・ナノ粒子の合成
本発明の上記コア/シェル・ナノ粒子は、少なくとも下記2工程:
1.有機媒質中の第1金属塩又は酸化物のナノ粒子、例えば、金属の硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物ナノ粒子を含む、いわゆる「第1混合物」を調製する工程;
2.前記第1混合物、形成すべきシェルのためのアニオン供給源、特にホスフェート、スルフェート又はフルオリド供給源、及びシェル形成金属イオンと前記金属イオンのための有機錯化剤を含む「第2混合物」を50〜350℃の温度において、前記ナノ粒子コアの周囲にシェルが形成されるまで反応させる工程;
を含む、以下及び特許請求の範囲に述べる方法で合成される。
【0067】
II.1 コア粒子の第1工程段階と合成
コア物質として用意され、いわゆる「第1混合物」中に存在するナノ粒子は、当該技術分野で知られた方法によって合成することができる。
【0068】
一般に、湿式合成方法は粒子サイズにより良好な制御を可能にするので、湿式合成方法が乾式形成方法に比べて好ましい。さらに、湿式合成方法では、形成されたナノ粒子の凝集をより容易に抑制することができる。
【0069】
既知の湿式合成方法、例えば、ゾル−ゲル方法のなかでも、熱水合成、又は結晶成長を制御する錯化剤による有機合成を用いることができる。さらに、J.W.Stouwdam及びF.C.J.M.Van Veggelが既述した論文に述べている合成方法で、具体的にフッ化物を製造することが可能である。したがって、LaF3ナノ粒子と他のフッ化物は、エタノール/水中のジ−n−オクタデシルジチオリン酸アンモニウムとNaFの溶液を加熱することによって製造することができる。その後に、水中の対応金属硝酸塩の溶液を滴加し、続いて、該溶液を75℃で2時間撹拌し、室温に冷却する。しかし、この方法の欠点は、形成された粒子がまだ、比較的幅広い粒度分布を示し、遠心分離によるさらなる精製工程を必要とすることである。
【0070】
ランタニドをドープしたリン酸塩の「熱水合成(hydrothermal synthesis)」は、例えば、H.Meyssamy et al.によってAdvanced Materials(1999),Vol.11,No.10,840頁以下の “Wet-chemical synthesis of doped colloidal nanomaterials:particles and fibres of LaPO4:Eu,LaPO4:Ce and LaPO4:Ce,Tb”に述べられている。
【0071】
硫酸塩、リン酸塩又はフッ化物ナノ粒子の出発物質として、好ましくは、金属の塩化物、硝酸塩又は酢酸塩が用いられる。反応は、反応中に高圧、好ましくは10〜20bar(1,000kPa〜2,000kPa)の圧力を維持するようにオートクレーブにおいて反応媒質としての水中で行なわれる。
【0072】
熱水合成は、しばしば針状形を有する、比較的大きい粒子を生じる。さらに、比較的幅広い粒度分布が典型的に生成物を特徴付ける。H.Meyssamy et al.による上記方法では、25nm未満の直径を有するナノ粒子の割合は、例えば、約20%のみである。これらは、その後の遠心分離工程によって単離することができる。
【0073】
熱水合成の他の例は、PCT/DE01/03433に見い出すことができる。この文献は、より一般的なレベルで、具体例を用いて、高圧下(オートクレーブ)水中でのナノ粒子状のケイ酸塩、バナジン酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、タンタル酸塩等の合成を開示している。さらに、この文献は、1,6−ヘキサンジオール中のアルミン酸塩又はガリウム酸塩の合成の関連方法(この文献中では、「グリコサーマル(glycothermal)」合成とも呼ばれる)に関している。
【0074】
さらに、金属錯化活性によって結晶成長を制御すると考えられる、ポリオール及びスルホキシドから選択される有機媒質中で、周囲圧力下で、場合よってドープされた硫酸塩を製造することが可能である。この方法は、以下では「ポリオール又はスルホキシド合成」と呼ぶことにする。
【0075】
用いるポリオールは、2個又は3個のヒドロキシ基を有することが好ましく、グリセロール、エチレングリコール又はポリエチレングリコールによって例示されることができ、これにより、好ましくは、低分子量ポリエチレングリコール(4までの好ましいエチレングリコール単位平均数)が用いられる。スルホキシドとしては、ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いることができる。この合成方法は、ドープされたホスト物質としてのアルカリ土類金属硫酸塩、例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムの硫酸塩の製造に好ましく用いられる。
【0076】
好ましい金属原子供給源は、対応する塩化物とそれらの水和物である。硫酸塩のための出発物質としては、好ましくは、アルカリ金属硫酸塩、硫酸アンモニウム又は有機カチオンを有する硫酸塩が用いられる。対応する硫酸水素塩も同様に適している。
【0077】
有機カチオンは、好ましくは4〜30個、特に4〜20個の炭素原子を有する塩基性のN−含有脂肪族、芳香族及び脂肪族/芳香族物質から好ましくは選択される。適当なカチオンは、例えば、
・その4個の置換基が、アルキルであって好ましくは1〜10個(好ましくは1〜5個)の炭素原子を有するもの若しくはベンジルから独立的に選択されることができる第4級アンモニウム若しくはホスホニウム、又は
・例えばヒドラジン、アマンタジン、ピリジン若しくはコリジンのような、プロトン化芳香族塩基を包含する。
【0078】
同様に、硫酸塩ナノ粒子は、例えば、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸テトラメチルアンモニウム、硫酸ビス−テトラブチルアンモニウム、又は硫酸水素トリエチルアンモニウムのような出発物質から製造することができる。他の適当な出発物質は、硫酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アルカリ金属、硫酸アマンタジン、硫酸エチレンジアンモニウム、及び硫酸ヒドラジニウムである。
【0079】
硫酸塩ホスト物質にドーピングするために、対応するドーパントの硝酸塩又はハロゲン化物、特に対応する金属塩化物を用いることができる。
【0080】
硫酸水素塩が出発物質中に含有される場合には、例えばイミダゾールのような有機塩基が、酸スカベンジャーとして反応媒質に好ましくは加えられる。反応は、好ましくは50〜240℃の温度において行なわれ、これによると、グリセロールのためには50〜100℃の低い温度範囲が好ましく、他のポリオール又はスルホキシド溶媒のためには160〜240℃、特に160〜180℃の範囲内の高い温度が最も適している。得られた粒子は0.2〜50nmのオーダーの平均直径を有し、水性媒質中に容易に分散可能である。
【0081】
ゾル−ゲル方法、熱水合成、グリコサーマル合成又はいわゆる「ポリオール又はスルホキシド合成」によって得られるナノ粒子コアは、特に、コア及び本発明の方法(シェル合成)の反応媒質が、それぞれ、極性に関してかなり異なる場合には、特許請求方法の第1工程に用いる有機媒質に分散可能ではないこともある。この理由から、ナノ粒子の分散可能性を高めるために、ナノ粒子に適当な極性有機化合物による後処理を行なうことが必要になる可能性がある。この後処理を、シェル合成に用いるのと同じ有機媒質(錯化剤)又は類似の極性の有機媒質によって行なうことが好ましい。
【0082】
例えば、シェル合成をN−又はP−含有媒質中で行なう予定である場合には、該後処理は、ゾル−ゲル方法、グリコサーマル若しくは熱水合成、又はいわゆる「ポリオール又はスルホキシド合成」によって得られたナノ粒子にN−又はP−含有媒質で後処理を行なうことを適当に含むことができる。
【0083】
この後処理は、該ナノ粒子を対応する有機化合物中で加熱することを含む。これは、ナノ粒子の表面に結合した水又は他の親水性残基を極性有機化合物によって交換するという効果を有する。上記理由から、極性有機化合物は、以下で「有機合成」及び第2工程段階に関連してさらに述べるように、金属イオンのためのN−及びP−含有錯化剤から好ましく選択される。しかし、他の官能基化された極性有機化合物(functionalised polar organic compounds)を用いることもできる。
【0084】
この後処理は、「ポリオール又はスルホキシド合成」で製造した硫酸塩には、その後の製造工程をポリオール及び/又はスルホキシド中で行なう場合には、必要とされない。
【0085】
この明細書の以下において「有機合成」と呼ぶ、さらなる好ましい方法によると、ナノ粒子コアの製造方法は、下記工程:
(a)少なくとも1種類の金属錯化剤と、場合によっては、少なくとも1種類の他の溶媒を含む有機反応媒質中で、反応媒質に溶解性若しくは分散性の金属供給源と、反応媒質に溶解性若しくは分散性のアニオン供給源、特にホスフェート、スルフェート又はフルオリド供給源とを反応させる工程;
(b)これによって形成されたナノ粒子状金属塩(例えば、リン酸塩、硫酸塩又はフッ化物)から反応媒質を場合によって除去する工程;及び
(c)場合によっては、ナノ粒子状塩を回収する工程
を含む。
【0086】
「有機媒質」とは、不可避な痕跡量は別として、水を含有しない有機溶媒と理解される。この有機媒質の沸点は、好ましくは、以下に記載する反応温度よりも高い。これは、例えば、150〜400℃であり、好ましくは180℃を超える、特に210℃を超える(周囲圧力において)。
【0087】
金属供給源の酸化され易さに依存して、この反応を例えば窒素又はアルゴンのような不活性ガス下で行なうことが好ましい。
【0088】
出発物質の純度に関して、少なくとも99.9%の純度を有する金属塩を用いることが望ましい。用いる全ての反応物質及び溶媒は、好ましくは、無水である及び/又は使用前に乾燥させる。しかし、しばしば水和物として用いられる金属塩化物は、好ましくは、長時間の乾燥処置を受けるべきではない。この理由は、これが反応媒質に不溶なオキシ塩化物の形成を促進する可能性があるからである。
【0089】
この反応は、好ましくは、50〜350℃の温度、例えば120〜320℃、特に180〜290℃の温度で行なわれる。適当な温度は、徐々に上昇する温度において反応物質の反応をモニターし、それによって、反応が充分な速度で進行する合成最低温度を測定することによって、当業者が容易に決定することができる。この目的のために、ナノ粒子を例えば、反応時間の増加に伴う粒子成長の研究を可能にする反応媒質のサンプルから、析出させることができる。
【0090】
適当な反応時間を同じ方法で決定することができ、適当な反応時間は10分間から48時間まで、特に30分間から20時間までの範囲である。
【0091】
反応の完了後に、反応混合物を室温に冷却することができる。ナノ粒子が反応中又は冷却後にまだ完全には析出していない場合には、最大収量を得るために、反応媒質にメタノールを加えることが可能であり、又はこの逆も可能である。
【0092】
理論に縛られる訳ではないが、「有機合成」に用いられる金属錯化剤が、形成されるナノ粒子の表面金属原子と配位結合して、それによって、出発物質が反応した後の粒子の成長を停止させると考えられる。この金属錯化剤が粒子表面に結合したままであり、このようにして、Oswald熟成(Oswald repening)のような、粒子間の凝集及び交換プロセスを防止又は軽減すると考えられる。このように、有機合成は、最長軸で測定した平均直径が好ましくは1〜10nm、特に2〜8nm、例えば4〜6nmであり、狭い粒度分布(標準偏差<30%、特に<10%)である、かなり小さい粒子を生じる。金属錯化剤は、金属イオンに配位結合することができる極性基と、少なくとも1つの第2分子部分(低極性、好ましくは疎水性)、例えば、好ましくは4〜20個、特に6〜14個の炭素原子を有する脂肪族、芳香族/脂肪族、又は純粋に芳香族分子部分との存在を特徴とする。
【0093】
金属錯化剤は、好ましくは、ホスホロ有機化合物又一置換若しくは二置換アミンである。
【0094】
後者のなかで、最も好ましい実施態様は、アルキル残基が好ましくは4〜20個、特に6〜14個の炭素原子を有するモノ−又はジアルキルアミン、例えばドデシルアミン又はビス(エチルヘキシル)アミンである。
【0095】
ホスホロ有機化合物に関して、下記物質の少なくとも1つを用いることが好ましい:
(a)ホスフィン酸エステル
【0096】
【化1】
【0097】
(b)ホスホン酸ジエステル
【0098】
【化2】
【0099】
(c)ホスホン酸トリエステル、最も好ましくは、トリアルキルホスフェート、例えばトリブチルホスフェート若しくはトリス(エチルヘキシル)ホスフェート
【0100】
【化3】
【0101】
(d)トリアルキルホスフィン、例えばトリオクチルホスフィン(TOP)
【0102】
【化4】
【0103】
又は
(e)トリアルキルホスフィンオキシド、例えばトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)
【0104】
【化5】
【0105】
(式中、R1、R2及びR3は、4〜20個、より好ましくは4〜14個、特に4〜10個の炭素原子を有する、分枝又は線状脂肪族(好ましくはアルキル)、脂肪族/芳香族又は芳香族残基から独立的に選択される)。芳香族残基はフェニルによって例示され、脂肪族/芳香族残基はトリル、キシリル又はベンジルによって例示されうる。
【0106】
ホスホロ有機化合物(a)〜(c)及び(e)の使用、とりわけ(a)〜(c)の使用が特に好ましい。
【0107】
金属錯化剤は、有機反応媒質中の唯一の溶媒であることができる。金属錯化剤は、それが唯一の溶媒である場合には、金属供給源として用いられる金属原子(単数又は複数)のモル量を基準にして少なくとも10molの量で、好ましく用いられる。好ましい上限は約1000molである。
【0108】
金属錯化剤の選択、特に疎水性分子部分の長さに依存して、多量の使用は、形成されるナノ粒子の完全な析出を妨げる可能性があるので、不利であると考えられる。
【0109】
それ故、「少なくとも1種類の他の溶媒」を付加的に用いることが好ましい。この実施態様では、金属錯化剤(「第1溶媒」)は、1molの金属イオン(金属供給源として用いられる)に基づいて10mol未満、より好ましくは0.9〜6molのモル量で好ましくは用いられる。「他の溶媒(単数又は複数)」の量は、1molの金属イオン(金属供給源として用いられる)に基づいて好ましくは5〜100molである。
【0110】
「他の溶媒(単数又は複数)」は、金属錯化剤と混合可能であるべきであり、合成最低温度を超える沸点、好ましくは150℃を超える、より好ましくは180℃を超える、最も好ましくは210℃を超える沸点を有するべきである。400℃を超える沸点は好ましくない可能性がある。
【0111】
「他の溶媒(単数又は複数)」は、炭化水素に基づく溶媒であるか又は少なくとも1つの極性基を有することができる。金属塩出発物質中に結晶水が存在し、結晶水が、金属に配位結合することができる溶媒によって交換されることになる場合には、後者の使用が好ましい。「他の溶媒(単数又は複数)」は、好ましくは、下記から選択される:
・少なくとも1つのエーテル官能基を有する溶媒;特に、アルキル基あたり5〜10個の炭素原子を有するジアルキルエーテル、例えば、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル若しくはジイソアミルエーテル;トータル12〜18個の炭素原子を有するジアリールエーテル若しくはジアラルキルエーテル、例えば、ジフェニルエーテル若しくはジベンジルエーテル;又はモノ−若しくはポリエチレングリコール(PEG)ジアルキルエーテル(各アルキルが好ましくは1〜4個の炭素原子を有し、PEG単位の平均数は好ましくは10までである)、例えば、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、及び/又はテトラエチレングリコールジメチルエーテル;
・好ましくは、10〜18個の炭素原子、特に12〜16個の炭素原子を有する分枝又は非分枝アルカン、例えばドデカン又はヘキサデカン;及び/又は
・有機高沸点塩基、好ましくはN−含有脂肪族塩基、最も好ましくは、三置換アミン、特に、アルキル基あたり5〜10個の炭素原子を有するトリアルキルアミン化合物、例えばトリオクチルアミン若しくはトリス(2−エチルヘキシル)アミン、又は好ましくは3〜20個の炭素原子を有するN−含有芳香族塩基、例えばイミダゾール。
【0112】
これらの溶媒は、組み合わせて用いることもできる。有機高沸点塩基は、溶媒として役立つのみでなく、酸スカベンジャーとしても機能することができる。例えば、リン酸又はHFのような酸をアニオン供給源として用いる場合には、該塩基を該酸のハロゲン(単数又は複数)原子(単数又は複数)に関してほぼ等モル量(例えば、約0.6〜1.4mol)で用いることが好ましい。
【0113】
「カチオン供給源」は、任意の適当な(充分に反応性の)金属塩から選択することができ、好ましくは、金属塩化物、金属アルコキシド(アルコキシドは好ましくは1〜6個の炭素原子、特に、1〜4個の炭素原子を有する)、金属硝酸塩又は金属酢酸塩である。金属塩化物の使用が特に好ましい。金属塩水和物も用いることができる。しかし、反応前に結晶化水を除去することが好ましい。
【0114】
「アニオン供給源」は、好ましくは、PCT/DE01/03433に開示されている出発物質から選択される。ナノ粒子状硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、フッ化物、硫化物、ヒ酸塩又はケイ酸塩の合成のためには下記化合物が適当である:
a.硫酸、リン酸、ホウ酸又はHF、
b.合成混合物中に溶解性であるか又は少なくとも分散性である、硫化物、ヒ酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩又はフッ化物塩、特に、有機カチオンを有する塩、又はアルカリ金属塩、或いは
c.高温において分解するエステル、例えば、ホウ酸アルキルエステル、硫酸アルキルエステル、ヒ酸アルキルエステル、又はケイ酸アルキルエステル(例えば、テトラエチルオルトシリケート)。
【0115】
オプションbに関して、カチオンは、好ましくは4〜30個、特に4〜20個の炭素原子を有する塩基性N−含有脂肪族、芳香族及び脂肪族/芳香族物質から選択することが好ましい。適当なカチオンは、例えば、上述したような第4級アンモニウム若しくはホスホニウム、又はプロトン化芳香族塩基、例えばピリジン又はコリジンを包含する。リン酸塩ナノ粒子の製造のためには、リン酸二水素テトラブチルアンモニウム、リン酸二水素テトラメチルアンモニウム又はリン酸二水素トリエチルアンモニウムをアニオン供給源として用いることができる。対応して、硫酸塩ナノ粒子は、例えば硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラメチルアンモニウム、硫酸ビス−テトラブチルアンモニウム又は硫酸水素トリエチルアンモニウムのような出発物質から製造することができる。フッ素含有アニオンによるナノ粒子の製造のためには、トリスフッ化水素酸トリエチルアミン、フッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヒドロジェンジフルオリド、フッ化水素酸ドデシルアミン又は低溶解性フッ化水素酸ピリジン、又はフッ化水素酸コリジンを用いることができる。
【0116】
金属イオン(カチオン供給源)が有機媒質中にあまりにも緩慢に溶解する場合には、低級アルコール、好ましくはメタノール中に同金属イオンを溶解してから、金属錯化剤及び反応媒質を加えることが好ましい。次に、メタノールと結晶水を蒸留と乾燥によって除去してから、他の反応物質を加える。
【0117】
特許請求した方法によると、上記合成法の1つによって得られうるナノ粒子は、有機媒質中の分散物として提供される(いわゆる「第1混合物」)。
【0118】
有機媒質は、120℃を超える、特に180℃を超える、しかし400℃未満の沸点を有する1種類以上の極性溶媒に基づくものであることが好ましい。これは、好ましくは、「金属錯化剤」から、特に、前記モノ−若しくはジアルキルアミン(アルキル残基が4〜20個のC原子を有する)、ホスホロ有機化合物、ポリオール及びスルホキシドから選択される。好ましくは、有機媒質は、金属錯化剤と、場合により有機合成に関連して述べた「少なくとも1種類の他の溶媒」を含有する。
【0119】
対応して、特許請求した方法の第1工程における「有機」合成又は「ポリオール若しくはスルホキシド」で製造したナノ粒子を、単離することなく用いることが可能であり、好ましい。
【0120】
有機媒質がナノ粒子コアのための分散媒質として役立つことを注目すべきである。したがって、有機媒質が金属原子に配位結合する能力のために、ナノ粒子がコロイド(非溶解)状態に維持されてからシェルがそれらの上で成長することができる。
【0121】
II.2.第2工程段階
第2工程では、
・上記第1混合物、
・形成されるシェルのためのアニオン供給源、特に、ホスフェート、スルフェート又はフルオリド供給源、及び
・シェル形成性金属イオン(及びそれらの対イオン)と、前記金属イオンのための有機錯
化剤を含む、いわゆる「第2混合物」
を50〜350℃の温度において、前記ナノ粒子の周囲に発光性シェルが形成されるまで、反応させる。
【0122】
一般に、時期尚早な反応を避けるために、アニオン供給源と第1混合物とを別々にしておくことが好ましい。
【0123】
第2工程段階は、下記3実施態様(A)、(B)及び(C)によって行なうことができる:
方法(A)は次の工程:
有機媒質中に金属塩若しくは酸化物ナノ粒子、例えば金属硫酸塩、リン酸塩若しくはフッ化物ナノ粒子を含む第1混合物を調製する工程、
前記第1混合物を50〜350℃の温度に加熱する工程、
この第1混合物に、この温度において、形成されるシェルのためのアニオン供給源と、シェル形成性金属イオン及び前記金属イオンのための有機錯化剤を含む第2混合物とを滴下式にか又は別々に加える工程、及び
得られた混合物をこの温度において、前記ナノ粒子の周囲に発光性シェルが形成されるまで反応させる工程
を含む。
【0124】
例えば、2つの滴下ロートを用いる、アニオン供給源と第2混合物の別々の、しかし同時の添加は、シェルのための活性出発物質の濃度を低下させ、従って、シェルのための出発物質からの独立した粒子成長を減じることによって反応の選択性を高める。
【0125】
方法(B)は、次の工程:
有機媒質中に第1金属塩若しくは酸化物のナノ粒子、例えば金属硫酸塩、リン酸塩若しくはフッ化物ナノ粒子を含む第1混合物を調製する工程、
前記第1混合物にシェル形成アニオン供給源を加える工程、
得られた混合物を50〜350℃の温度に加熱する工程、
これに、シェル形成金属イオンと前記金属イオンのための有機錯化剤とを含む第2混合物を滴加する工程、及び
得られた混合物をこの温度において、前記ナノ粒子の周囲に発光性シェルが形成されるまで、反応させる工程
を含む。
【0126】
方法(A)と(B)は、より均質な粒子を形成する傾向があり、該粒子は、独立的に成長したシェル形成物質の粒子をより小さい割合でさらに含有する。
【0127】
方法(C)は、次の工程:
有機媒質中に第1金属塩若しくは酸化物のナノ粒子、例えば金属硫酸塩、リン酸塩若しくはフッ化物ナノ粒子を含む第1混合物を調製する工程、
前記第1混合物、形成されるシェルのためのアニオン供給源、及びシェル形成金属イオンと前記金属イオンのための有機錯化剤とを含む第2混合物を、好ましくは前記第2混合物に、前記第1混合物と前記アニオン供給源とを加えることによって、一緒にする工程、
及び
得られた混合物を50〜350℃の温度に、前記ナノ粒子の周囲に発光性シェルが形成されるまで、加熱する工程
を含む。
【0128】
意外にも、出発物質を徐々に添加、例えば滴加することが必ずしも必要でないことが、発見された。方法(C)によると、全部の部分を混合することによって、出発物質を一緒にすることができるとはいえ、所望のコア/シェル物質が高度な選択性で形成され、独立した粒子成長は殆どない。したがって、方法(C)は方法(A)及び(B)よりも容易に操作される。
【0129】
特に指定しない場合には、次の好ましい実施態様が3方法(A)、(B)及び(C)の全てに適用される。
【0130】
金属イオン供給源としては、任意の充分に反応性の金属塩、好ましくは、シェル金属イオンの塩化物又はアルコキシドを用いることができる。アルコキシド基は好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。
【0131】
任意の適当なアニオン供給源を、それが第1工程で形成されるコア粒子の周囲にシェルを形成することができる限り、用いることができる。
【0132】
シェルを形成する適当なアニオンは、非限定的に、ホスフェート、ハロホスフェート、アルセネート、スルフェート、ボレート、アルミネート、ガレート、シリケート、ゲルマネート、オキシド、バナデート、ニオベート、タンタレート、タングステート、モリブデート、アルカリハロゲネート、他のハライド、ニトリド、スルフィド、セレニド、スルホセレニド又はオキシスルフィドを包含する。
【0133】
PCT/DE01/03433に記載されているのと類似の又は同一の条件下において有機媒質中で適当に反応するシェル形成アニオンを用いることが、好ましい。例には、シリケート、ボレート、アルセネート、スルフィド、スルフェート、ホスフェート及びフルオリド、特にスルフェート、ホスフェート及びフルオリドが含まれる。この文献は、対応するナノ粒子状物質を形成するために用いることができるアニオン供給源も教示している。
【0134】
適当なシリケート、ボレート、アルセネート、スルフィド、スルフェート、ホスフェート及びフルオリド供給源に関して、特許請求する方法の第1工程に関して上述したアニオン供給源、特に、「ポリオール又はスルホキシド」及び/又は「有機」合成に用いるアニオン供給源も参照される。
【0135】
アニオン供給源は、「ポリオール又はスルホキシド」及び/又は「有機」合成に関して記載した溶媒の少なくとも1つ中の微細な分散物又は溶液として加えることが好ましい。
【0136】
アニオン供給源、特に、ホスフェート、フッ化物又はスルフェート供給源は、加えたシェル形成金属原子の全てと反応するために化学量論的に必要なモル量を基準にして、0.75〜3mol、特に0.75〜2molの量で好ましく用いられる。したがって、二元塩(AB)では、B(アニオン)対A(金属)の比率は、0.75:1から2:1までの範囲である。
【0137】
ホスフェートとフッ化物供給源、例えばリン酸又はHFは、リン酸塩又はフッ化物でできているコア又はコア/シェル粒子の「有機」合成に過剰量で用いることが好ましい。過剰なモル量は、化学量論的に必要なモル量を基準にして、好ましくは少なくとも1.05mol、より好ましくは1.1〜2mol、特に1.2〜1.6molである。
【0138】
同様に、硫酸塩コア又はコア/シェル粒子の「ポリオール又はスルホキシド」合成に、例えば硫酸(水素)第4級アンモニウム塩のようなスルフェート供給源を過剰量で用いることが好ましい。過剰なモル量は、化学量論的に必要なモル量を基準にして、好ましくは少なくとも1.05mol、より好ましくは1.1〜3mol、特に1.2〜2molである。
【0139】
第2混合物中に含有される有機錯化剤は、ナノ粒子の有機合成に関連して上述した有機錯化剤又は「ポリオール若しくはスルホキシド合成」に関して記載した溶媒から選択することもできる。
【0140】
一般に、シェル形成イオンの有効濃度をできるだけ低く維持することが望ましい。本発明によると、これは、この金属錯化剤を用いて、達成される。理論に縛られる訳ではないが、低濃度の反応性(非錯化)金属イオンが、新しい粒子の独立的な成長に関してシェル成長に有利に作用することが考えられる。
【0141】
好ましい実施態様によると、第1混合物に用いられる有機媒質と、第2混合物中に存在する錯化剤は、上記に挙げた、ホスホロ有機化合物、一置換/二置換アミン、ポリオール又はスルホキシドの1つである。有機媒質及び錯化剤と同じ極性有機化合物を用いることが、さらに好ましい。
【0142】
さらに、上記「少なくとも1種類の他の溶媒」を、有機錯化剤に対する同じ比率で用いることが好ましい。このことは、より低い量の金属錯化剤を、あたかもそれが唯一の溶媒を構成するかのごとく、用いることを可能にする。この場合、金属錯化剤とシェル形成金属イオンとのモル比率は、再び、好ましくは0.9:1〜6:1である。
【0143】
シェル物質のためのアニオン供給源が酸水素原子を有する場合には、上記塩基を用いることが好ましい。上記有機高沸点塩基(例えば、トリアルキルアミン)が、例えば、リン酸又はHFのようなアニオン供給源のための酸スカベンジャーとして、上記条件下で好ましく用いられる。この有機高沸点塩基は、典型的に、酸水素原子を有するアニオン供給源を用いる場合に、ケイ酸塩、ホウ酸塩、ヒ酸塩又は硫酸塩の合成に加えることもできる。方法(A)又は(B)によると、塩基は、金属供給源と錯化剤を含む「第2混合物」の成分として好ましく加えられる。
【0144】
金属錯化剤を含めた、溶媒(単数又は複数)の総量は、全ての出発物質を均質に溶解する又は分散させることが一般に好ましいので、当業者が容易に決定することができる。方法(A)と(B)では、アニオン供給源と金属供給源(第2混合物)とを溶解するためにほぼ同量の溶媒を用いることが好ましい。
【0145】
一般的に述べると、該反応は、特に指定しない限り、項目II.1で、「ポリオール又はスルホキシド」又は「有機」合成に関して前述したのと同じ又は類似の条件下で好ましく進行する。このことは、保護性不活性ガスの使用及び反応物質の乾燥にも該当する。
【0146】
残りの出発物質と一緒にするナノ粒子コアの量は、具体的に制限されず、主として、目標のシェル厚さに依存する。
【0147】
本発明の方法によると、反応媒質を50〜350℃、特に120〜320℃の温度に、第1工程段階で製造したナノ粒子コアの周囲に発光性シェルが形成されるまで加熱する。
【0148】
該反応は、フッ化物とリン酸塩に関しては、160〜240℃、特に180〜220℃の温度において、硫酸塩に関しては160〜180℃の温度において好ましく行なわれる。グリセロール中での硫酸塩シェルの形成は、さらにより低い温度(例えば、50〜100℃)をも可能にする。適当な温度は、温度を徐々に高めながらシェル成長をモニターし、それによって、シェルに用いる出発物質からの新しい粒子の発生のような好ましくない副反応なしに反応が充分な速度で進行する合成最低温度を測定することによって、当業者が容易に決定することができる。
【0149】
出発物質を滴加するような方法(AとB)では、添加時間は、好ましくは0.5〜10時間、特に1〜5時間の範囲である。
【0150】
好ましい反応時間は、30分〜48時間、特に1〜20時間、とりわけ1.5〜16時間の範囲である。この場合にも、例えば、反応媒質から採取したサンプルからナノ粒子を析出させ、TEM顕微鏡写真で粒度分布を研究することによって、反応をモニターすることが、適当な反応時間の決定を可能にする。Oswald熟成が観察されるや否や、即ち、より大きい粒子が小さい粒子を犠牲して成長し始めるならば、例えば冷却によって、反応を停止させなければならない。
【0151】
反応の完了後に、反応媒質を室温にまで冷却する。このことが既に、形成されるコア/シェル・ナノ粒子の析出を促進する。析出が不完全である場合には、反応媒質への析出溶媒(precipitating solvents)(例えば、メタノール)の添加又はこの逆の添加が、反応生成物の完全な回収を可能にする。或いは、有機錯化剤を含めた有機溶媒の過剰量を留去すること、又は5000〜10000のオーダーのDalton値に対応する好ましい孔サイズを有する膜に通して限外濾過を行なうことが可能である。これらの値は、多くの場合に約3nmのカットオフに相当し、それは溶媒通過を可能にするのに十分なほど大きく、ナノ粒子の透過及び損失を防止するのに十分なほど小さい。対応する限外濾過セル中の溶媒を交換するには、典型的に2〜5bar(200kPa〜500kPa)の圧力が必要である。
【0152】
さらに、得られたナノ粒子を例えばメタノール、エタノール又はイソプロパノールで洗浄することが好ましい。
【0153】
酸化物からのシェル物質に関しては、例えば、US6,309,701に蛍光性のドープされた金属酸化物の合成が記載されており、それには、少なくとも1種類の希土類金属(Sc、Y、La及び元素58〜71と理解すべきである)、特にEu、Ce、Nd、Sm、Tb、Gd、Ho及び/又はTmでドープされたY2O3、ZrO2、CuO、CuO2、Gd2O3、Pr2O3、La2O3及び混合酸化物のようなホスト金属酸化物が含まれる。
【0154】
以下に及び実施例に記載する方法では、シェル成長が実際に生じたことを確認することができる。
【0155】
1つのオプションは、小サンプルを析出させ、それらの粒度分布を例えばTEM顕微鏡写真で分析することによって、反応を連続的にモニターすることを含む。この方法で抽出されたサンプルは、シェル成長が全反応時間にわたって行なわれたのか、又はより小さい粒子の独立的な形成も観察することができるのかを示すであろう。EDX分析(エネルギー分散性X線分析)はナノ粒子の総合組成を実証することができる。XPS分光法は、XPSを異なる励起エネルギーにおいて行なうならば、粒子の外部から内部への組成分布に関する付加的な情報を与えることができる。さらに、実施例にも示すように、コア/シェル粒子の放射スペクトルは、反応に用いたコア・ナノ粒子からしばしば容易に区別することができる。
【0156】
III.コア/シェル粒子における使用
III.1 バイオアッセイの使用
本発明のコア/シェル粒子は、その発光特性を利用するバイオアッセイに有利に用いることができる。本発明のコア/シェル粒子の特に興味深い用途は、(F)RETベースアッセイ(上述したような「(蛍光)共鳴エネルギー転移」)である。
【0157】
生物学的系では、それ対応して標識した生体分子又は分子グループの空間的近接位を測定するために、(F)RETがしばしば用いられる。この方法は、興味の対象となる、種々の生物学的反応若しくは相互作用、例えばタンパク質−タンパク質相互作用、免疫反応中の抗原−抗体反応、受容体−リガンド相互作用、核酸のハイブリダイズム(hybridism)、又は核酸へのタンパク質の結合に関する証明手段(proof)として役立つことができる。
【0158】
(F)RETが発生したことの測定は、ドナー若しくはアクセプター発光の強度の変化若しくはスペクトル変化を測定することによって、又はドナー発光の減衰時間の変化の測定によって進行する。
【0159】
これらの方法の多くの用途は、文献に述べられており、この点で限定されない本発明にも適用可能であり:免疫蛍光アッセイにおける特定抗原の測定(US3,996,345;US4,160,016;US4,174,384;US4,199,559)、タンパク質表面の特定局部における静電気電位の測定(Yamamoto et al.,J.Mol.Biol.241,1994,714-731頁)又はハイスループットスクリーニング方法(Boisclair et al.,J.of Biomolecular Screening 5,2000,319-328方法)に適用可能である。
【0160】
さらに、(F)RETは、2つの生体分子間又は1つの生体分子の部分内の絶対的距離をそれぞれ測定することもできる。この方法は既に、タンパク質若しくはDNA構造分析(Heyduk et al.,SPIE,Vol.3256,1998,218-222頁)、ポリペプチド内の距離の測定(Lakowicz et al.,Biophys.Chem.36,1990,99-115頁)、タンパク質(K.Cai et al.,J.Biol.Chem.271,1996,27311-27320頁)、ポリヌクレオチド(Hochstrasser et al.,Biophys.Chem.45,1992,133-141頁と、Ozaki et al.,Nucl.Acids Res.20,1992,5205-5214頁)又は他のマクロ分子、膜及び膜タンパク質並びにそれらの構造の分析(S.Wang et al.,Biochemistry 27,1988,2033-2039頁)、検出(US 4,996,143;US 5,532,129;US 5,565,332)及びPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)による増幅核酸の定量(US 5,538,848;US 5,723,591)、例えば、in vitro診断、遺伝子分析、裁判分析(forensic analysis)、食品及び農芸化学試験、又は親子鑑別に適用されて成功している。DNA又はRNAは直接、即ち、追加の分離工程なしに、検出されるか又は定量される。
【0161】
(F)RET系を用いるリアルタイムPCRによる定量核酸測定は、TaqMan(登録商標)アッセイ(Applied Biosystems Division of Perkin-Elmer Corp.,Foster City,USA)として知られた5‘−ヌクレアーゼ・アッセイである(US 5,538,848;US 5,210,015;Holland et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88,1991,7276-7280頁;Lee et al.,Nucleic Acids Res.21,1993,3761-3766頁)。分子ビーコン方法(Tyagi and Kramer,Nature Biotechnology 14,1996,303-306頁; US5,312,728)は、類似の機構に基づくものである。
【0162】
最近、「FRET in biochemistry」に関するレビユーが、S.Brakmann とN.Noebelによって、Nachrichten aus der Chemie,51,March 2003,319-322頁に発表されており、かれらはさらに、本発明のコア/シェル粒子を用いることもできる、FRETベースバイオアッセイの代替手段を述べている。
【0163】
したがって、本発明のコア/シェル粒子は、少なくとも1種類のエネルギー・ドナー(ドナー)で標識される第1分子グループAと、少なくとも1種類のエネルギー・アクセプター(アクセプター)で標識される少なくとも第2分子グループBとを含む(F)RETベースバイオアッセイに用いることができ、このアッセイにおいて、
ドナーは、外部放射線源によってエネルギー的に励起されることができ、ルミネセンスを放射することができる分子又は粒子を含み、
アクセプターは、ドナー・ルミネセンスの部分的又は完全なクエンチング下でドナーからのエネルギー転移によって励起することができる分子又は粒子を含み、そして
ドナー及び/又はアクセプターは、本発明のコア/シェル粒子、好ましくは、本明細書で前述したように50nm以下、特に30nm以下等の、それらの最長軸に沿って測定した平均直径を有するコア/シェル粒子を含む。
【0164】
このアッセイは、2つの方法で行なうことができる。(F)RETベースアッセイは、アクセプターがルミネセンスを放射することもできることを必要とする。RET系は、アクセプターが発光を放射せずに弛緩する場合にも機能する。
【0165】
好ましくは、本発明のコア/シェル粒子はドナーとして用いられる。これらは、エネルギー的励起後に、ストークス若しくは反ストークス・シフトによって電磁線を放射するので、励起源と放射された発光(emitted radiation)を分光法により区別することは容易に可能である。
【0166】
本発明のコア/シェル粒子は、それらのルミネセンスがより効果的にクエンチされうるので、上記タイプのバイオアッセイにおいて優れた挙動を示す。理論に縛られることを望む訳ではないが、均質な粒子に比べて高い割合の発光センターが表面に局在する又は表面に近接して局在することが、この観察を説明すると考えられる。クエンチングに対するより高い感受性が、(F)RETベースバイオアッセイにおいて、例えばより高い感度のような、種々の重要な利益をもたらしている。
【0167】
クエンチングに対する高い感受性は、より短いドナーの半減期(半減期)として、減衰曲線(ルミネセンス強度−対−時間)に認めることができる。時間ゲート蛍光分光法(time-gated fluorescence spectroscopy)(TGF方法)では、実施例でさらに詳細に説明するように、アクセプター系への非常に効果的なエネルギー転移のために、ドナー・ルミネセンス(コア/シェル粒子)のほぼ完全な消失が得られる。
【0168】
ドナー及び/又はアクセプターとして、好ましくはドナーのみとして用いられるコア/シェル粒子の好ましい実施態様に関して、本明細書の項目Iが参照される。
【0169】
適当なドナー/アクセプター対を選択する場合に、高い量子収量を有するドナー・プローブを用いることが一般に望ましい。さらに、ドナー・プローブの発光スペクトルは、アクセプター・プローブの吸収スペクトルとかなりオーバーラップしなければならない。さらなる要求、ドナーとアクセプターの遷移双極子配向の適当な配置(ほぼ並行)は、生物学的系において一般に問題ではなく、ドナーとアクセプターの無制限な等方向性運動が可能とする。さらに、既述したように、ドナーとアクセプターが好ましく相互から1±0.5R0(Foerster距離)内にある範囲で、Foerster距離を考慮すべきである。Foerster距離は、エネルギー転移が50%効率である距離である。これは、当該技術分野で知られているように、ドナーとアクセプターのスペクトル特性から算出することができる。
【0170】
本発明のコア/シェル粒子以外の、典型的なドナー及び/又はアクセプター系は、例えばフルオレセイン、テトラメチルローダミン、IAEDANS、EDANS、Dabcyl、BODIPY FL、QSY7及びQSY9のような、有機染料である。約350〜750nm及びそれ以上のスペクトル範囲に適当である、他の商業的に入手可能な発光性有機染料と上記のものは、Alexa Fluor染料(Molecular Probesによって製造)又はCyDyes(Amersham Pharmacia)を包含する。これらの染料のなかで、より高い波長(可視〜近IR)で吸収し、放射する染料は、生物学的系を損傷しないので、特に魅力的である。
【0171】
本発明によると、本発明のコア/シェル粒子を、上記有機蛍光染料から選択した適当なアクセプターと組み合わせて、ドナーとして用いることが好ましい。
【0172】
例えば、Eu3+でドープしたシェルを有する粒子をドナーとして、アクセプターとしてのAlexa Fluor680と組み合わせることができ、又はTb3+含有粒子をDabcyl又はフルオレセインと組み合わせることができる。これらTb含有コア/シェル粒子の例は、例えば、シェルとしてのTb3+又はCe3+,Tb3+をドープした金属塩若しくは酸化物によって囲まれた不活性(非発光性)コアを有するコア/シェル系、並びにテルビウム(Tb3+)塩若しくは酸化物シェルによって囲まれたセリウム(Ce3+)塩若しくは酸化物コアに基づくコア/シェル系である。
【0173】
50nm未満の平均直径を有するコア/シェル粒子は、より大きい粒子よりも、バイオアッセイにおいて好ましくない立体的相互作用又は沈降の可能性が小さいことを示す。さらに、検査すべき生化学的プロセスの結合反応(例えば、免疫反応又はDNAハイブリダイゼーション)の動力学に対する影響が低いことが予想されることになる。
【0174】
(F)RETベース系におけるエネルギー転移を測定するために、2つの異なる分光法、即ち、時間ゲート蛍光分析法(TGF)及び/又は時間分解蛍光分析法(TRF)が典型的に適用される(WO 87/07955; EP 242527; EP 439036; WO 92/01225; US 4,822,733; US 5,279,943; US 5,622,821; US 5,656,433; US 5,998,146; US 6,239,271)。TGF法によると、蛍光ドナーをパルス化光源(例えば、レーザー、フラッシュライト)によって励起させ、その後に、特定の時間帯内の所定遅延後の、光の放射を測定する。比較的短い遅延はまだ、ランタニド・イオンの長く持続するルミネセンスを充分に高い強度で測定することを可能にする。生物学的物質、溶媒の不純物又は周囲の生物学的物質の固有自己蛍光によって惹起される、比較的短く持続するバックグラウンド蛍光(典型的に1マイクロ秒より短い)は、遅延によってほぼ完全に識別される。
【0175】
TGF法とは対照的に、TRF法は一定波長における時間の関数としてルミネセンスを測定する。ドナーは、パルス化光源又は異なる方法で調節される光源によっても励起される。
【0176】
50nm以下の直径を有するコア/シェル粒子はTRF法に適当に用いることができる、この理由は、これより大きい粒子では、粒子体積の大部分がエネルギー転移に関係するほど充分にアクセプターに接近しておらず、そのため作用の強度を低下させるからである。
【0177】
本発明によると、(F)RETパートナーの少なくとも一方、即ち、ドナー又はアクセプターが比較的長いルミネセンス減衰時間を示すが、他方の(F)RETパートナーは、短い減衰時間を特徴とする。
【0178】
好ましくは、1〜50マイクロ秒、より好ましくは100マイクロ秒〜10ミリ秒の範囲のルミネセンス半減期値を有するコア/シェル粒子が、ドナーとして用いられる。
【0179】
これらのドナーを、典型的により短い減衰時間を有する慣用的な有機蛍光染料と一緒にする場合には、ドナーはアクセプターのルミネセンスを感作して、その固有ルミネセンス以上に延長させる。TGF法でのこのような系の測定は、短く持続する固有アクセプター・ルミネセンスを排除して、増感アクセプター・ルミネセンスを高感度で測定することを可能にする。
【0180】
他の適当なアクセプターは、例えば金、銀、白金のような導電性物質、又は例えばIn−Sn酸化物(ITO)のような導電性金属酸化物、又は導電性ポリマーから選択することができる。
【0181】
本発明のコア/シェル粒子を、アッセイが根拠とする生物学的分子(単数又は複数)に結合させるために、次の方法を適用することができる。
【0182】
該結合は、
・表面上の「官能基」の形成を典型的に含む、コア/シェル粒子の化学的修飾(前記官能基は生物学的分子に結合することができる)及び/又は
・該コア/シェル粒子の場合により化学的に修飾された表面へ、共有的若しくは非共有的に結合する、いわゆる「連結分子」との連結
その後に、これによって得られた粒子を生体分子(単数又は複数)と反応させることによって、形成することができる。
【0183】
「連結分子」なる用語は、本発明のコア/シェル粒子と連結することができ、アフィニティ分子に、又は標的分子としてアフィニティ分子の同じ結合部位を競合する分子若しくは分子部分、例えばエピトープに連結することもできる物質を意味する。
【0184】
「標的分子」なる用語は、例えば生物学的サンプルのような物質中のその有無を本発明のコア/シェル粒子の使用によって確かめることができる実体(entity)又は基を意味する。
【0185】
「アフィニティ分子」なる用語は、分析される物質(例えば、生物学的物質)中の標的分子(存在する場合に)に選択的に結合する生体分子を意味する。
【0186】
上記で用いた「官能基」なる用語は、共有結合を形成する反応性化学基に限定される訳ではなく、生体分子(単数又は複数)とのイオン相互作用又は水素結合を生じる化学基をも包含する。さらに、表面に形成された「官能基」と、「官能基」を有する連結分子との厳密な区別は、時には、表面の修飾が、例えばエチレングリコールのような小さい連結分子とナノ粒子表面との反応を必要とするので、不可能であることを注目すべきである。
【0187】
官能基又は、官能基を有する連結分子は、アミノ基、カルボン酸基、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、グアニジノ、ヒドロキシル基、アミン基、ビシナル・ジオール、アルデヒド、α−ハロアセチル基、有機水銀基(mercury organyles)、エステル基、酸ハロゲン化物、酸チオエステル、酸無水物、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホン酸ハロゲン化物、イミドエステル、ジアゾアセテート、ジアゾニウム塩、1,2−ジケトン、ホスホン酸、リン酸エステル、スルホン酸、アゾリド、イミダゾール、インドール、N−マレイミド、α−β−不飽和カルボニル化合物、アリールハロゲン化物、又はこれらの誘導体から選択することができる。
【0188】
より高い分子量を有する、他の連結分子の非限定的例は、核酸分子、ポリマー、コポリマー、重合可能なカップリング剤、シリカ、タンパク質、及びコア/シェル粒子とは逆の極性の表面を有する鎖状分子である。核酸は、それら自身が核酸分子を連結分子に相補的な配列と共に含有するアフィニティ分子への連結を提供することができる。重合可能なカップリング剤の例としては、ジアセチレン、スチレンブタジエン、酢酸ビニル、アクリレート、アクリルアミド、ビニル化合物、スチレン、シリコーンオキシド、酸化ホウ素、酸化リン、ボレート、ピロール、ポリピロール、及びホスフェートを列挙することができる。
【0189】
連結方法を以下にさらに詳細に述べる:
1.コア/シェル・ナノ粒子の表面を、例えば、反応性官能基を有するホスホン酸誘導体の結合によって、化学的に修飾することができる。これらのホスホン酸又はホスホン酸エステル誘導体の1つの例は、イミノ−ビス(メチレンホスホノ)炭酸であり、これは「Mannich-Moedritzer」反応(Moedritzer and Irani, J.Org.Chem.1966,31,1603)によって合成することができる。この結合反応は、本発明の製造方法から直接、又は前処理(例えば、トリメチルシリルブロミドでの)後に得られたコア/シェル粒子を用いて行なうことができる。最初の場合には、ホスホン酸(エステル)誘導体が例えば、該表面にまだ結合している反応媒質の成分を置換することができる。この置換(displacement)は高温で促進することができる。他方では、トリメチルシリルブロミドは、本発明の方法に用いられる、アルキル基を含有するリンに基づく錯化剤を脱アルキルして、これによって、ホスホン酸(エステル)誘導体のための新たな結合部位を作ると考えられる。ホスホン酸(エステル)誘導体、又はこれに結合した連結分子は、上記と同じ官能基を示すことができる。
【0190】
2.コア/シェル・ナノ粒子の表面処理の他の例は、該粒子を例えばエチレングリコールのようなジオール中で加熱することを含む。コア/シェル粒子の合成がジオール中で既に進行している場合には、この処理が不必要になりうることに注目すべきである。これらの状況下で、直接得られた合成生成物は、必要な官能基を示す可能性がある。しかし、この処理は、上記N−又はP−含有錯化剤中で製造されたコア/シェル粒子に適用可能である。このようなコア/シェル粒子がエチレングリコールによる後処理を受ける場合には、表面にまだ結合している反応媒質(例えば、錯化剤)の成分を、ジオールによって置換することができる、及び/又は脱アルキルすることができる。ジオールによる処理は、水溶性粒子を生じる。同様に、上述したような、第2反応性官能基を有する第1級アルコールを該後処理のために用いることができる。粒子表面にまだ結合しているN−含有錯化剤を、上記例から選択される第2官能基を有する第1級アミン誘導体によって置換することも可能である。
【0191】
3.本発明のコア/シェル粒子の表面はシリカでコーティングされてもよい。シリカは、例えばトリエトキシシラン又はクロロシランのような有機リンカーと容易に反応するので、シリカは有機分子の比較的簡単な化学的コンジュゲーション(chemical conjugation)を可能にする。粒子表面をホモポリマー又はコポリマーによってコーティングすることもできる。重合可能なカップリング剤の例は、N−[3−アミノプロピル]−3−メルカプトベンズアミジン、3−(トリメトキシシリル)プロピルヒドラジド、及び3−(トリメトキシシリル)プロピルマレイミドである。重合可能なカップリング剤の他の例は、既に上述した。これらのカップリング剤は、形成するコポリマーの種類に依存して、単独で又は組み合わせて、ナノ粒子コーティングとして用いることができる。
【0192】
4.他の表面修飾方法の1つによると、酸化物遷移金属化合物を含有するコア/シェル粒子を塩素ガス又は有機塩素化剤によって、対応するオキシ塩化物に転化させることができる。これらのオキシ塩化物は、例えば、生体分子中にしばしば見い出されるヒドロキシ又はアミノ基のような、求核試薬と反応することができる。この方法は、例えばリジン側鎖のアミノ基を介して、タンパク質との直接コンジュゲーションを形成することを可能にする。オキシ塩化物による表面修飾後のタンパク質とのコンジュゲーションは、例えばマレイミドプロピオン酸ヒドラジドのような、二官能性リンカー(bi-functional linker)を用いて行なうこともできる。
【0193】
5.非共有連結方法には、コア/シェル粒子表面のものとは反対の極性又は電荷を有する鎖状分子(chain-type molecules)が特に適する。コア/シェル・ナノ粒子に非共有的に連結することができる連結分子の例は、アニオン、カチオン若しくは両性イオン界面活性剤、酸性若しくは塩基性タンパク質、ポリアミン、ポリアミド、ポリスルホン又はポリカルボン酸を包含する。ナノ粒子と、反応性官能基を有する両親媒性試薬との疎水性相互作用は、必要な連結を形成することができる。特に、例えばリン脂質又は誘導体化多糖類のような、相互に架橋することができる両親媒性を有する鎖状分子が有用である。コア/シェル粒子の表面上へのこれらの分子の吸収は、共インキュベーション(coincubation)によって達成することができる。アフィニティ分子とコア/シェル粒子との結合は、非共有自己組織化結合(non-covalent,self-organising bond)に基づくものでもあることができる。これの1つの例は、連結分子としてのビオチンと、アビジン−又はストレプダビジン−結合アフィニティ分子とによる単純な検出プローブを包含する。
【0194】
生物学的分子に対する官能基のカップリング反応のプロトコールは、文献に、例えば”Bioconjugate Techniques”(Greg T.Hermanson, Academic Press 1966)に見い出すことができる。生物学的分子、特にアフィニティ分子は、例えば、酸化、ハロゲン化、アルキル化、アシル化、付加、置換又はアミド化のような、有機化学の標準方法に従って、連結分子に共有的に又は非共有的に結合することができる。共有結合した又は非共有結合した連結分子に生物学的分子を結合させるためのこれらの方法は、コア/シェル・ナノ粒子に連結分子を結合させる前に又はその後に、適用することができる。さらに、対応するように前処理され(例えば、トリメチルシリルブロミドによって)、この前処理のために修飾された表面(例えば、より高い電荷又は極性の表面)を示すコア/シェル粒子にアフィニティ分子を直接結合させることが、インキュベーションによって可能である。ドナー又はアクセプターによって標識された分子グループAとBは、それぞれ同じ分子の一部を表すことができ、例えば、同じアフィニティ分子に結合することができる。これらの分子グループの空間的距離の変化は、例えば分子のコンファメーション変化(confirmation change)によって又は分子の切断によって生じる可能性がある。分子のこのコンファメーション変化又は切断は、アフィニティ分子と標的分子との相互作用の結果であることができる。
【0195】
或いは、分子グループAとBは異なる分子上に局在することができ、前記分子グループAとBは、それぞれ、それらの特有のアフィニティ分子に結合する。分子グループAとBに割り当てられるアフィニティ分子と、接合標的分子との又はお互いとの相互作用によって、空間的距離の変化をもたらすことができる。この相互作用は、例えば、抗原と抗体の免疫反応のようなタンパク質間の相互作用、核酸のハイブリダイズム、又は核酸とタンパク質との相互作用であることができる。
【0196】
バイオアッセイは、例えば、身体サンプル(例えば、塗抹標本、痰、器官穿刺液、バイオプシー、分泌物、液体、胆汁、血液、リンパ液、尿、糞便)中の分析物を検出するための均一イムノアッセイであることができる。均一アッセイは洗浄工程も分離工程も必要としない。
【0197】
本発明のコア/シェル粒子を用いるバイオアッセイは、不均一アッセイであることもできる。
【0198】
アッセイで検出すべき分析物(一般には、標的分子)は、例えば、モノクローナル若しくはポリクローナル抗体、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、核酸、オリゴ糖若しくは多糖類、ハプテン又は低分子量合成若しくは天然抗原であることができる。
【0199】
同様に、アフィニティ分子の非限定的例は、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、又は他の核酸分子、又は例えばPNA若しくはモルホリン(morpholine)のような関連種、並びにオリゴ又は多糖類、ビオチン若しくはジゴキシンのようなハプテン、又は低分子の合成若しくは天然抗原、又はエピトープである。
【0200】
アッセイは、溶液中で並びに、オリゴヌクレオチド若しくはポリヌクレオチド鎖又は抗体若しくは抗原がそれぞれ表面に固定される、固相に基づく若しくはアレイに基づく系に用いることができる。
【0201】
本発明のコア/シェル粒子を用いるアッセイは、種々の方法で利用することができる。
【0202】
1つの適用タイプによると、(F)RETパートナーは同じ分子上に局在する、即ち、(F)RETパートナーの両方が対応する連結分子を介して(部分的に示さず)同じアフィニティ分子と結合する(図6a、6b、7、10及び11)。アフィニティ分子への標的分子の結合はアフィニティ分子のコンファメーション変化を誘発し、それによって、相互に関する標識の空間的位置の変化を生じ、したがって、(F)RETにおける測定可能な差異を生じる。
【0203】
他の用途では、(F)RETパートナーは異なる分子上に局在し、それぞれ、それらの固有のアフィニティ分子に(図8)又は分析物及びアフィニティ分子に(図9)それぞれ結合する。それぞれのアフィニティ分子は、標的分子との反応によって生じる又は消失する、ドナーとアクセプターとの間の相互作用をもたらし、それによってエネルギー転移の変化を誘発するようなやり方で選択することができる。
【0204】
次に、(F)RETベースバイオアッセイにおける本発明によるコア/シェル・ナノ粒子の使用を、図6〜11によってさらに説明する。
【0205】
図6aは、均一なキナーゼ・アッセイにおける同じ分子上に局在する(F)RETパートナーの相互作用を概略的に示す。lad−ナノ粒子1(lad=発光性無機ドープした(luminescent anorganic doped))と発色団2とを、ペプチド配列3によって連結する。該ペプチド配列は、キナーゼ特異的同定配列(kinase-specific identification sequence)4を含有する。ペプチド配列3がこの位置においてキナーゼ5によってリン酸化される場合には、リン酸(phosphate)6の存在がペプチド配列3のコンファメーションを変化させる。したがって、(F)RETパートナー、ナノ粒子1と発色団2の間の相互作用が測定可能になる。
【0206】
図6bは、タンパク質−タンパク質相互作用、例えば、抗原−抗体反応を測定することになる、1つの分子上に局在する(F)RETパートナーによる均一イムノアッセイを概略的に示す。ナノ粒子1と発色団2とをペプチド配列3によって連結する。ペプチド配列はエピトープ14を含有する。特異的にエピトープ14を認識する抗体15がエピトープ14に結合する場合には、ペプチド配列3のコンファメーションは変化する。それによって、(F)RETパートナー、ナノ粒子1と発色団2との間の相互作用は測定可能になる。
【0207】
図6aと6bに記載するように、検出すべき分子はアフィニティ分子に直接結合することができる。しかし、これは、アフィニティ分子への分子の結合を間接的に惹起することもできる。これの1例は、生細胞中のCa2+の濃度の測定である。この目的のために、平滑筋におけるミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)へのカルモジュリンのカルシウム依存性結合を用いる。MLCKのカルモジュリン結合ドメインはアフィニティ分子として作用し、(F)RETパートナーに結合する。Ca2+濃度に依存して、カルモジュリンは結合ドメインに結合して、検出プローブのコンファメーション変化をもたらす。これは、測定可能な(F)RETの変化を惹起する。
【0208】
図7は、身体サンプル中の分析物26の濃度を測定するために用いられる、1つの分子上に局在する(F)RETパートナーによる競合イムノアッセイを概略的に示す。ナノ粒子1と発色団2とは、エピトープ27に結合する連結分子29によって連結される。エピトープ27は、検出すべき分析物26の1つのエピトープに基づいて設計される。アフィニティ分子28は、エピトープ27に特異的に結合する。検出すべき分析物26を含有するサンプル(例えば、身体サンプル)を添加することによって、エピトープ27にまだ結合しているアフィニティ分子28は、このエピトープ27から排除される。これは、アフィニティ分子29のコンホメーション変化を生じ、したがって、(F)RETパートナー、ナノ粒子1と発色団2との間の相互作用の測定可能な変化を生じる。この(F)RET変化は、分析物26の濃度の測定に利用される。
【0209】
図8は、異なる分子上の(F)RETパートナーによる均一飽和イムノアッセイを概略的に示す。ladナノ粒子110のアフィニティ分子と発色団120とは、同じ標的分子130の異なるエピトープをそれぞれ認識することができ、それによって、標的分子130の存在下で測定可能なエネルギー転移を生じる。ドナーとアクセプターとが異なる分子上に局在する均一イムノアッセイの1つの例は、血清中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン:chorinal gonadotropine)の検出である。この場合には、ドナーとアクセプターとが、hCGの異なるエピトープを認識する抗体に結合する。身体サンプル中にhCGが存在する場合には、ドナー及びアクセプター・プローブが分析物に結合する。校正曲線を用いて、身体サンプル中の分析物の濃度を算出するために、測定可能なFRETを用いることができる。
【0210】
図9は、異なる分子上に局在する(F)RETパートナー210と220による均一競合イムノアッセイを概略的に示す。1つ以上の発色団220が、検出すべき分子224に部分的に又は完全に対応する分子222に連結する。ladナノ粒子210は、分子222と検出すべき分子224とに特異的に相互作用するアフィニティ分子212に結合する。アフィニティ分子212と分子222との間に結合が生じ、それによって、(F)RETを可能にする。次に、検出すべき分子224を含有するサンプル(例えば、身体サンプル)をこれに加えるならば、前記サンプル中の検出すべき分子224の濃度に依存して、置換反応(displacement reaction)が生じる。これは測定可能な変化、この場合には(F)RETの減少を生じ、これは、校正曲線を用いて、検出すべき分子の濃度の算出を可能にする。
【0211】
図10は、1つの分子上に局在する(F)RETパートナーによる均一アッセイを概略的に示す。ladナノ粒子310と発色団320とは、アフィニティ分子としてのペプチド330によって連結される。このペプチドは検出すべき酵素340によって切断されることができる。この切断後に、(F)RETはもはや観察されることはできない。
【0212】
図10のアッセイは、サンプル又は細胞中で例えば、HIウイルスに特異的であるプロテアーゼの、特異的酵素活性を測定するために用いることができる。(F)RETパートナーの両方は、このプロテアーゼの短い同定配列(identification sequence)によって連結され、このプロテアーゼの活性によって相互から空間的に分離され、ペプチド切断を生じる。検出すべき酵素活性は、制限エンドヌクレアーゼに由来することもできる。この場合、(F)RETパートナーの両方は核酸によって連結される。
【0213】
図11は、分子ビーコンの方法によるアッセイを概略的に示す。分子ビーコンは、分子間相補的配列によってそれら自身をいわゆるステム−ループ又はヘア−ピン構造に折り畳むことができるDNA分子である。1つのladナノ粒子410は、DNA配列430の1末端に結合する。他の末端は、蛍光消光剤又はクエンチャー(quencher)としての発色団420に結合する。ヘア−ピン構造では、両方の(F)RETパートナー410と420が密接に近接して配置される。そのため、ドナー410の蛍光は完全に消光される。標的分子440は、DNA配列430のループ領域に相補的である配列を示す。標的分子440の結合はエネルギー的にさらに好ましいので、ヘア−ピン・コンファメーションは解消して、発色団420とladナノ粒子410は相互から分離して、(F)RETはもはや蛍光消光を生じないので、測定可能な蛍光が放射される。ハイブリダイズム特性は、分子ビーコン430と標的DNA440との間の単一塩基対ミスマッチングがヘア−ピン構造の開放を生じないようなやり方で、調節することができる。したがって、単一塩基差(例えば、SNPs、単一ヌクレオチド多形現象)さえも検出することが可能である。
【0214】
図11に示されるこの方法は、ブランド保護及び/又は生成物の安全性表示に用いることもできる。両末端に短い相補的構造を示し、その1つの末端は本発明のコア/シェル粒子に連結し、他方の末端は上述したようにアクセプターに連結するDNA(断片)で、製品をマークする場合には、得られた分子ビーコン(ヘア−ピン構造)に(F)RETを観察することができる。このDNA(断片)が相補的構造に接触するや否や、ハイブリダイズムがヘア−ピン構造を解消して、それによって、(F)RETを妨害する。このことは、商業的製品の特定の同定及び保護を可能にする。合成DNA同定に基づくブランド保護は既に、例えばNovember AG,Germanyによって商業化されている。
【0215】
III.2 他の使用
バイオアッセイにおけるそれらの使用とは独立的に、特許請求したコア/シェル粒子は一般に、適当なルミネセンス・アクセプターと組み合わせるならば、生物学的又は他の系におけるナノメーター距離の(F)RETベースの測定を可能にする。このような測定は、例えば、ナノ物質科学における分光的目的について興味を引く。
【0216】
さらに、優れた(光)ルミネセンス特性を要求する、種々の産業的デバイス及び製品のために、特許請求したコア/シェル粒子を用いることができる。
【0217】
この目的のために、これらのコア/シェル粒子は典型的に、流体又は固体媒質中の分散物として製造される。
【0218】
適当な流体媒質は、例えば、有機若しくは水性分散媒質、コーティング組成物、インキ若しくは染料、ポリマー組成物、又はエアロゾルを含む。適当な有機分散媒質は、非限定的に、トルエン、CHCl3又はCH2Cl2を包含する。
【0219】
上述したような、N−又はP−含有媒質/錯化剤による合成は、本発明によるコア/シェル粒子の有機媒質中での容易な分散性を保証する。
【0220】
水性分散物の製造は、合成に用いた有機物質の残渣を、粒子表面に結合する1つの官能基と、任意に水混和性溶媒と組み合わせた必要な水中での相溶性を保証する1つの分子部分とを有する溶媒によって、置き換える後処理を必要としうる。
【0221】
固体分散媒質は、コーティング、インキ若しくは染料、ポリマー組成物、特にポリマーフィルムから選択することができる。
【0222】
それ自体でのナノ粒子、又は典型的に同ナノ粒子を含有する流体若しくは固体媒質は、例えば、発光、印刷、又はアイテム及び物質のマーキングのために用いることができる。
【0223】
このような用途は、例えば、発光ダイオード、ディスプレイ、光電子デバイス、例えば、nmサイズの増幅器及び、ゼロ閾レーザーにおける光源である。これらはまた、印刷デバイスのインキとして用いることもでき、このことは、文献又は紙幣(money bill)の安全性表示において非常に興味深い。
【0224】
IV.実施例
実施例1: TbPO4シェルを有するCePO4ナノ粒子コア
高性能還流冷却管、温度計及び加熱マンテルを備えた100ml丸底フラスコ中で、CeCl3・7H2O 3.72g(10mmol)をメタノール約4ml中に溶解し、続いて、得られた溶液に、トリス−2−エチルヘキシルホスフェート(TEHP)40mlを加える。メタノールと結晶化水を除去するために、丸底フラスコに真空を、最初は室温において(1〜2時間)、次に50℃において(約1.5時間)適用する。
【0225】
第2フラスコにおいて、乾燥オルト−リン酸(20mmol)をテトラエチレングリコールジメチルエーテル5ml中に溶解する。
【0226】
窒素雰囲気下、50℃において、TEHP中のCeCl3溶液に、トリオクチルアミン13.1ml(30.0mmol)と、オルト−リン酸/テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル混合物2.5mlを加える。その後、この混合物を200℃に15時間加熱する。この時間後に、CePO4粒子(平均直径5mm)の透明な分散系(「第1混合物」)が得られる。
【0227】
高性能還流冷却管、温度計及び加熱マンテルを備えた第2の100ml丸底フラスコ中で、TbCl3・6H2O 3.72g(10mmol)をメタノール約4ml中に溶解し、続いて、該溶液に、トリス−2−エチルヘキシルホスフェート(TEHP)40mlを加える。この丸底フラスコに真空を適用した後に、メタノールと結晶化水を最初は室温において(1〜2時間)、次に50℃において(約1.5時間)除去する。窒素雰囲気下、50℃において、該TbCl3溶液に、トリオクチルアミン13.1ml(30.0mmol)と、オルト−リン酸/テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル溶液2.5ml(リン酸10mmol)並びにCePO4分散系14ml(約20〜30℃に冷却)を加え(「第2混合物」)、続いて、200℃に12時間にわたって加熱する。室温に冷却した後に、コア/シェル・ナノ粒子を析出させるために、反応混合物をメタノール中に注入する。析出物を遠心分離して(5500rpmで)、得られた粒子をメタノールによって洗浄して、乾燥させる。
【0228】
図2に示す、これらの粒子の光ルミネセンス・スペクトルは、これらのコア/シェル構造を実証した。
【0229】
これらの粒子が約6nmの平均直径(それらの最長軸に沿って)を有することを、TEM測定がさらに実証した。
【0230】
図1は、均一CePO4粒子の蛍光スペクトル(ライン1)と、TbPO4シェルがCePO4粒子の周囲に成長する、本発明によるコア/シェル粒子の蛍光スペクトル(ライン2とライン3)を示す。ライン2によって示すスペクトルは、0.5時間の反応時間後に撮影したものであるが、ライン3は、完全に発達したTbPO4シェルを有するCePO4コアの蛍光を示す(反応時間18時間)。スペクトルはi−プロパノール中、同じ光学密度(10−3重量%)で記録した(λexc=274nm)。
【0231】
図1から見られるように、均一CePO4粒子は約330nmでの強い蛍光放射を特徴とするが、可視範囲では放射を示さない。この状況は、TbPO4被膜によって劇的に変化する。Ce3+は励起放射線を強く吸収して、吸収したエネルギーをTb3+に転移させ、Tb3+はこれを484nm、545nm、586nm及び617nmに位置する4つの強い特徴的なバンドの形態で放射する。このエネルギー転移はCe放射を最低にし、Tb放射を強く増強する。
【0232】
実施例2: TbPO4シェルを有するLaPO4ナノ粒子コア
高性能還流冷却管、温度計及び加熱マンテルを備えた100ml丸底フラスコ中で、LaCl3・7H2O 3.2g(8.6mmol)をメタノール約10ml中に溶解し、続いて、得られた溶液に、トリス−2−エチルヘキシルホスフェート(TEHP)39mlを加える。メタノールと結晶化水を除去するために、丸底フラスコに真空を、最初は室温において(1〜2時間)、次に50℃において(数時間)適用する。
【0233】
第2フラスコにおいて、乾燥オルト−リン酸(20mmol)をテトラエチレングリコール・ジメチルエーテル5ml中に溶解する。
【0234】
窒素雰囲気下、50℃において、TEHP中のLaCl3溶液に、トリオクチルアミン11.5ml(26.3mmol)と、オルト−リン酸/テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル混合物2.3mlを加える。その後、この混合物を200℃に16時間加熱する。この時間後に、LaPO4粒子の透明な分散系(「第1混合物」)が得られる。
【0235】
高性能還流冷却管、温度計及び加熱マンテルを備えた第2の100ml丸底フラスコ中で、TbCl3・6H2O 2.97g(8mmol)をメタノール約10ml中に溶解し、続いて、該溶液に、トリス−2−エチルヘキシルホスフェート(TEHP)35.2mlを加える。この丸底フラスコに真空を適用した後に、メタノールと結晶化水を最初は室温において(1〜2時間)、次に50℃において(数時間)除去する。窒素雰囲気下、50℃において、該TbCl3溶液に、トリオクチルアミン10.5ml(24mmol)と、オルト−リン酸/テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル溶液2.0ml(リン酸8mmol)並びにLaPO4分散系の総量(約20〜30℃に冷却)を加え(「第2混合物」)、続いて、200℃に16時間にわたって加熱する。室温に冷却した後に、コア/シェル・ナノ粒子を析出させるために、反応混合物をメタノール(300ml)中に注入する。析出物を遠心分離して(5500rpmで)、得られた粒子をメタノールによって2回洗浄して、乾燥させる。
【0236】
参考実施例1: コア/シェル粒子の分析
次の参考実施例は、LaPO4シェルを有するCePO4:Tbナノ粒子コアの化学組成、コア直径及びシェル厚さの測定を説明する。これらの粒子は特許請求の範囲で保護されていないとしても、この分析方法は、本発明に完全に適用可能である。
【0237】
この目的のために、孔のあるカーボンフィルム上に、粒子を載せて、Philipps CM300UT顕微鏡下で研究した。
【0238】
EELS(Electron Energy Loss Spectroscopy)は、カチオンの平均化学組成が、Ce/La=0.34±0.05、Tb/La=0.12±0.03であり、このことはLa/Ce=3.0±0.4及びCe/Tb=2.8±0.8を意味し、後者の値は、用いるモル比率Ce/Tb(3.14/1)にほぼ一致する。
【0239】
HREM(高分解能電子顕微鏡法)によって、得られたコア/シェル粒子の結晶性を実証した。
【0240】
さらに、より小さい粒子をも保護するために、0.48nm/像点の走査速度で、Hellfeld像をややアンダーフォーカスで(with slight underfocus)撮影した。この像の分析は、量の点で主要な粒子クラスが5〜9nmの直径を有することを示した。この粒子の6個にEFTEM(Energy-filtering Transmission Electron Microscopy)、特に、定量分析のために”Landeszentrum fuer Hochleistungsspektroskopie, Institute fuer Anorganische Chemie” Bonn,Germanyによって開発された、いわゆる「スペクトル・イメージ法」を行なった。この目的のために、6結晶性粒子をイメージング・エネルギー・フィルターの後方のCCDカメラに非常に高い倍率で集めた。次に、最小オブジェクティブ・スクリーン(4.6mrad)と最大エントランス・スクリーン(3mm)とを挿入し、エネルギー・フィルターをその分光法モードで用いた。これによって、エントランス・スクリーンを通過する完全な強度がデテクター(detecter)上に1ライン、1ライン(line by line)映される。レンズの色収差のために、この方法は、約±40eVのセクションのみを高い鮮明さ(nm未満)で映すので、これは、832、849、884及び902eVにおけるLaM5.4及びCeM5.4エッジ上に集束した。99Kの選択した一次倍率で、エントランス・スクリーンの直径は常に11.2nmであった。
【0241】
図2は、(D)LaPO4シェルによって囲まれた1つのCePO4:Tbナノ粒子(直径約7nm)のHellfeld像(エントランス・スクリーンによる)、(E)860eVエネルギー損失におけるスペクトル像並びに粒子表面(A,C)と中心(B)を通してのプロフィルを示す。プロフィル(A,B及びC)はLaM5.4及びCeM5.4ピークを示す、これらの相対的強度は、局部組成(local composition)にほぼ相当する。異なるプロフィルは、Ce富化コアと、La富化シェルとの存在するコア/シェル構造を実証する。6個の選択した粒子は平均して直径7.5±1.9を有し、これは、直径4.0±1.1nmを有するCe富化コアと、厚さ1.9±0.7nmを有するLa富化シェルとから成る(この分析では、Tbは測定しなかった)。
【0242】
実施例3: 実施例1のコア/シェル粒子(CePO4/TbPO4)へのフルオレセインの結合
3−1:コア(CePO4)−シェル(TbPO4)ナノ粒子の、イミノ−ビス(メチレンホスホノ)ウンデカン酸と、1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)−ブタンによるアミノ官能化
イミノ−ビス(メチレンホスホノ)ウンデカン酸0.388g(1mmol)を、エチレングリコール1.5ml及び1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)−ブタン0.15g(2.5mmol)と共に、50℃において30分間加熱することによって溶解する。得られた溶液はやや黄色みを帯びている。実施例1で得られたコア(CePO4)−シェル(TbPO4)ナノ粒子25mg(=71.5nmol)を該溶液に加えて、撹拌し、〜120℃に4時間加熱する。この分散系は濁っており、淡黄色である。2x2L 10mM炭酸Naバッファー、pH8.5に対して一晩透析(透析チューブ Spectra/Por,5-6000 MWCO, Spektrum, Netherlands)した後に,粒子が析出する。
【0243】
3−2:アミノ官能化したコア(CePO4)−シェル(TbPO4)ナノ粒子へのフルオレセインの結合
アミノ官能化ナノ粒子(上記)5mg(25nmol)を5000rpmで10分間遠心分離して、ペレットを0.2M炭酸Naバッファー(pH8.5)500μl中に再懸濁させ、10mg/mlの濃度を得る。FITC(フルオレセイン・イソチオシアネート)を、DMFと0.2M炭酸Naバッファー(pH8.5)との1:1溶液中に5mmol/mlの濃度にまで溶解する。17倍過剰量(87μl=429nmol)を粒子に加えて、混合物を室温において4.5時間回転させながらインキュベートした。未結合FITCを、セファデックスG−25M PD10カラム(Amersham Bioscience)と、溶離バッファーとしての10mM炭酸Naバッファー(pH8.5)を用いて分離する。溶出画分3.9mlはフルオレセイン結合ナノ粒子を含有する。
【0244】
比較例1: 均一LaPO4:Ce,Tb粒子へのフルオレセインの結合
CE1−1: LaPO4:Ce,Tbナノ粒子の製造
TEHP(トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート)300mlを乾燥窒素流中で脱ガスした。その後、LaCl3・7H2O 7.43g(20mmol)、CeCl3・7H2O 8.38g(22.5mmol)及びTbCl3・6H2O 2.8g(7.5mmol)をメタノール100ml中に溶解して、TEHPに加える。次に、水とメタノールを真空下、30〜40℃の温度において除去する。次に、トリオクチルアミン66.5mlとTEHP150mlとの混合物中に溶解した乾燥オルトリン酸4.9g(50mmol)の新たに調製した溶液を加える。温度が上昇したときのCe3+の酸化を最小にするために、得られた透明な溶液を直ちに真空下におき、窒素でパージする。その後に、溶液を200℃に加熱する。沸点が175℃にまで低下したならば(約30〜40時間後)、加熱段階を停止する。室温にまで冷却した後に、4倍過剰量のメタノールを加えて、粒子を析出させる。粒子を分離し、メタノールで洗浄して、乾燥させる。
【0245】
CE1−2:ブロモトリメチルシランによる脱アルキル
CE1−1で得られたLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子300mg(約850nmol)を、クロロホルム100ml中のブロモトリメチルシラン2.3gと共に4時間にわたって還流させる。ブロモトリメチルシランの過剰量の大部分と揮発性中間生成物は真空下で除去され、分離される。ナノ粒子含有残渣を、水6mlトアンモニア(25%)100μlとの混合物中で一晩中加水分解する。得られた粒子は乳状懸濁液を形成し、数時間後に一部が析出する。これらを遠心分離によって分離することができる。
【0246】
CE1−3:脱アルキルしたLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子の、イミノ−ビス(メチレンホスホノ)カプロン酸によるアミノ官能化
イミノ−ビス(メチレンホスホノ)カプロン酸0.5g(1.75mmol)を0.894g(4.375mmol)1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)−ブタン(Fluka)と共に、エチレングリコール2ml中に、50℃に30分間加熱することによって溶解する。得られた溶液はやや黄色を帯びている。CE1−2で得られたLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子35mg(=175nmol)を該溶液に加えて、撹拌し、〜120℃に4時間加熱する。この分散系は、室温に冷却した後も、透明であり、褐色を帯びている。10mM炭酸Naバッファー(pH8.5)2x2Lに対して透析した後に、溶液はやや黄色であり、透明である。
【0247】
CE1−4:アミノ官能化LaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子へのフルオレセインの結合
CE1−3のアミノ官能化LaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子の溶液を真空中で〜4.8mg/mlに濃縮する。FITC(フルオレセインイソチオシアネート)をDMFと0.2M炭酸Naバッファー(pH8.5)との1:1溶液中に5mmol/mlの濃度にまで溶解する。17倍過剰量(87μl=429nmol)をナノ粒子5mg(〜1ml=25nmol)に加えて、混合物を室温において4.5時間回転させながらインキュベートした。未結合FITCを、セファデックスG−25M PD10カラム(Amersham Bioscience)と、溶離バッファーとしての10mM炭酸Naバッファー(pH8.5)を用いて分離する。溶出画分3.5mlはフルオレセイン結合ナノ粒子を含有する。
【0248】
実施例4: フルオレセイン結合ナノ粒子によるFRETの測定
実施例3のフルオレセイン結合コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子と、比較例1の均一なLaPO4:Ce,Tb粒子とに、種々の分光分析を行なって、FRET効率を測定した。
【0249】
各1cmの幅と深さを有する光学セルにサンプルの水性分散系を入れて、Jobin Yvonによって製造されたFL3−22分光計によって、測定を行なった。光学密度が0.3を超えないように、濃度を選択した。
【0250】
図3は、280nmにおけるパルス化励起後に、TRF法で測定した2種類の粒子の減衰曲線を示す:
・点線は、実施例1で得た非修飾コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子の542nmにおける減衰曲線(Tb放射)を表す;半減期1.4ms。
【0251】
・太線は、実施例3で得たフルオレセイン結合コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子の542nmにおける減衰曲線を表す;半減期0.02〜0.1ms。
【0252】
・細線は、実施例3で得たフルオレセイン結合コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子の520nmにおける減衰曲線(フルオロセイン放射)を表す;半減期0.02〜0.06ms。
【0253】
図4は、280nmにおけるパルス化励起後に、TRF法で測定した、比較例1のフルオレセイン結合均一LaPO4:Ce,Tb粒子の減衰曲線を示す:
・太線は、542nmにおける減衰曲線(半減期約1.7ms)を表す。
【0254】
・細線は、520nmにおける同じ粒子の減衰曲線(半減期約1.0〜1.5ms)を表す。
【0255】
実施例3のフルオレセイン結合コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子は、比較例1の粒子(約1.7ms)よりも非常に短い蛍光半減期(542nmにおいて0.02〜0.1ms)を示す。このことは、本発明による粒子のコア/シェル構造が、アクセプター分子(フルオレセイン)への非常に効果的なエネルギー転移を可能にし、それによってFRET効率を高めることを実証する。したがって、非修飾コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子の蛍光半減期(約1.4ms)は、実施例3のフルオレセイン結合コア/シェル粒子で観察されたよりも少なくとも14倍大きい。
【0256】
非修飾均一LaPO4:Ce,Tbナノ粒子(フルオレセインに結合せず)の蛍光半減期は約2.4msであり、即ち、比較例1の対応するフルオレセイン結合粒子で観察された半減期(542nmにおいて約1.7ms)よりも約1.5倍大きい。この比率(約1.5/1)を、図3が示す比率(約14/1)と比較するならば、本発明によって得られるFRET効率の改良が明らかになる。
【0257】
図5aは、280nmにおけるパルス化励起後の、最後の励起パルス後40μsの測定遅延後にTGF法で測定した蛍光スペクトルを示す:
・太線は、実施例1で得たような非修飾コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子のスペクトルを表し、
・細線は、実施例3で得たようなフルオレセイン結合コア(CePO4)−シェル(TbPO4)粒子のスペクトルを表す。
【0258】
左側の強度スケールは、太線に対応し、右側のスケールは、細線に対応する。修飾コア/シェル粒子(実施例3)の放射スペクトルは、545nmにおける特徴的なTb3+バンドの非常に低い強度(約40%減少)と、フルオレセイン放射に由来する、約520nmの新しい幅広いバンドの出現を特徴とする。したがって、Ce3+(コア)からTb3+(シェル)発光センターへの励起エネルギー(280nm)のエネルギー転移後に、後者はFRETによるフルオレセイン発光を開始する。
【0259】
図5bは、
・比較例1のフルオレセイン結合均一LaPO4:Ce,Tbの、280nmにおけるパルス化励起後の、
最後の励起パルス後40μsの測定遅延後にTGF法で測定した1つの蛍光スペクトルを示す。
【0260】
このスペクトルはまた、フルオレセインに由来する約520nmの比較的幅広い放射バンドを観察することができるので、FRETの発生をも実証する。しかし、545nmにおける特徴的なTb3+バンドによって示されるドナー放射は、図4a(細線)におけるよりもまだ非常に強く、このことは低いFRET効率を実証する。
【0261】
参考実施例2: バイオアッセイ
次の参考実施例は、均一ナノ粒子を生体分子に結合させ、相応して標識した生体分子を生物学的アッセイに用いる具体的な方法を示す。用いるナノ粒子は本発明によるものではないが、これらの参考実施例は、特許請求するコア/シェル粒子に完全に振り替え可能である。これに関連して、均一ナノ粒子に関して以下に示すような表面修飾方法が、特に得られたナノ粒子の表面に通常結合する溶媒の選択に関して、同様な方法で合成したコア/シェル粒子に好ましく適用されることを、当業者は気付くであろう。
【0262】
RE2−1: LaPO4:Ce,Tbナノ粒子のカルボキシ官能化
LaPO4:Ce,Tb粒子は、比較例CE1−1に述べたように製造した。
【0263】
これらのナノ粒子50mg(約140nmol)を、エチレングリコール5ml(約180mmol)及び硫酸5μl(96〜98%)と共に、撹拌しながら及び不活性ガス下で、3時間にわたって210℃に加熱する。或いは、他のジオール、好ましくは、種々の鎖長のポリエチレングリコール、最も好ましくは、HO−(CH2−CH2−O)n−OH(n=2〜9)を用いることが可能である。該粒子は約135℃でポリエチレングリコール中に溶解し始める。処理の完了後に、約1.5mbar(150Pa)に相当する真空が適用され、続いて、該エチレングリコール量の約半分を除去する。これは、透明な残渣を生じる。その後に、この残渣を一晩、水に対して透析させる(透析チューブSpectra/Por,5-6.000 MWCO,Spectrum,the Netherlands)。
【0264】
次に、水20ml中の得られたナノ粒子100mg(約300nmol)の溶液に、硫酸(96〜98%)0.5mlを加える。得られた混合物に1mM KMnO4溶液を、紫色の脱色がもはや観察されなくなるまで、滴加する。その後に、同量の1mM KMnO4溶液を新たに加えて、続いて、一晩撹拌する(>12時間)。過剰な過マンガン酸塩を、新たに調製した1mM亜硫酸ナトリウム溶液の滴加によって還元する。得られた混合物を、0.1M MES,0.5M NaCl、pH6.0に対して一晩透析させる(透析チューブSpectra/Por,5-6.000 MWCO,Spectrum,the Netherlands)。
【0265】
RE2−2: ブロモトリメチルシランによる脱アルキル
比較例CE1−1で調製したLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子300mg(約850nmol)を、比較例CE1−2に記載したと同様な方法で、処理した。
【0266】
RE2−3: 11−ビス(ホスホリルメチル)アミノ−ウンデカン酸及び1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)ブタンとのLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子の結合
11−アミノ−ウンデカン酸201gと、亜リン酸170gと、濃塩酸200mlと、水200mlとの混合物を100℃に加熱し、続いて、ホルマリン(37%)324gを1時間にわたって滴加し、100℃において1時間撹拌することによって、11−ビス(ホスホリルメチル)アミノ−ウンデカン酸を製造する。室温に冷却した後に、析出した生成物を真空補助濾過によって単離し、真空下で乾燥させる。これによって、11−ビス(ホスホリルメチル)アミノ−ウンデカン酸334gが得られる。炭素原子2〜18個を有する対応する酸も、同様に有用である。
【0267】
11−ビス(ホスホリルメチル)アミノ−ウンデカン酸0.5g(1.85mol)を、エチレングリコール2ml中に溶解して、続いて、1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)ブタン0.894g(4.375mmol)を加える。透明な溶液の形成(発熱反応)後に、RE2−2で得られたLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子35mg(100nmol)を50℃において加えて、続いて、125℃に加熱する。約120℃において、該粒子は完全に溶解する。4時間後に、透明な、褐色を帯びた溶液が得られ、この溶液は室温に冷却した後にも透明に留まる。該反応混合物に2x2L 10mM炭酸ナトリウム・バッファー(pH8.5)に対する透析(透析チューブ Spectra/Por,5-6000 MWCO, Spektrum, Netherlands)を行なう。得られた透析物は、析出したナノ粒子を含有する。
【0268】
RE2−4: RE2−3のLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子のビオチン化
RE2−3で得られたナノ粒子混合物6.2ml(=5mg又は〜15nmol)を回転蒸発器によって、減量し、4.8mg/mlにまで濃縮する。なお回転させながら、得られた分散系を、20倍モル過剰量のビオチン−X−NHS(スルホ−ビオチン−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル、Calbiochim,Schwalbach,Germany)と共に4時間にわたってインキュベートし、続いて、PBSバッファー(8mM K2HPO4;150mM NaCl;2mM Na2HPO4;pH7.4)に対して透析する(透析チューブ Spectra/Por,5-6000 MWCO, Spektrum, Netherlands)。得られた透析物は、やや濁っている。
【0269】
RE2−5:RE2−3のLaPO4:Ce,Tb−ナノ粒子へのDNAオリゴヌクレオチドの結合
RE2−3で得られたナノ粒子を、40倍過剰量のスルホ−SIAB(スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、Perbio Science Deutschland GmbH,Bonn,Deutschland)によって活性化し;アミノ官能化ナノ粒子を、Centricon濾過ユニット(50000でのMW排除(NW-exclusion)、Millipore,Eschborn,Germany)を用いて、TSMZバッファー(pH7.3)(0.1M NaCl;0.1M トリエタノールアミン−HCl;0.02M NaOH;0.27mM ZnCl2;0.1%Tween20;1mM MgCl2)中で新たに緩衝化して、約7mg/mlの濃度に調節する。水中の20mMスルホ−SIAB溶液50μlを該粒子分散系に加えて、続いて、25℃において15分間インキュベートする。1Mグリシン12μl(12倍過剰量)を加えて、反応を停止させ、遊離スルホ−SIABをSephadex G25 PD10カラム(Amersham Pharmacia Biotech,Freiburg,Germany)上で分離する。配列5’−CCACGCTTGTGGGTCAACCCCCGTGG−3’と5’−末端におけるチオール修飾と3’−末端におけるdabcyl修飾(4−(4−ジメチルアミノフェニルアゾ)ベンゾイル)を有するDNAオリゴヌクレオチド並びに対照の、該プローブから3’−末端におけるdabcyl分子欠損においてのみ異なるDNAオリゴヌクレオチドは、Interactiva(Ulm,Germany)に注文した。等モル量のDNAオリゴヌクレオチドとSIAB活性化ナノ粒子とを混合し、25℃において3時間にわたって及び4℃において一晩インキュベートした。DNAオリゴヌクレオチドに結合したナノ粒子を、非結合粒子及び遊離DNAオリゴヌクレオチドから、FPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて分離した。結合した粒子を50mM Tris−HCl(pH7.4);0.1%BSA中で4℃において保存した。標的DNAが存在しない限り、得られた分子はヘア−ピン構造に折り曲げられるので、分子の両末端は相互に密接に接近して、FRETが発生することができる。これらの状況下で、ナノ粒子蛍光はdabcylによって消光される。
【0270】
RE2−6: RE2−3のLaPO4:Ce,Tbナノ粒子への抗−β−hCGモノクローナル抗体の結合
最初に、RE2−3で得られたナノ粒子を30倍モル過剰量の2−イミノチオラン(2−IT,Traut’s reagent, Perbio Science Deutschland GmbH,Bonn)で活性化する;これらの粒子の2ml(〜25nmol,4mg/ml)を、TSEバッファー(pH8.5)(0.04M NaCl;0.05Mトリエタノールアミン−HCl;0.04M NaOH;0.5mM EDTA;0.1%Tween20;pH8.5)中に移した。この目的のために、これらを3000gにおいて15分間3回遠心分離し、上澄み液をデカントして、各残留残渣をTSEバッファー700μl(pH8.5)中に入れた。これらの粒子を10mM2−IT 75μl(TSEバッファーpH8.5中)と共に、25℃において1時間にわたってインキュベートし、続いて、1Mグリシン9μl(12倍過剰量)によって反応を停止させる。2−IT過剰量を分離するために、得られた混合物を3000gにおいて15分間にわたって3回遠心分離し、その後、上澄み液をデカントして、析出物をTSEバッファー(pH7.3)1ml(0.01M NaCl;0.1Mトリエタノールアミン−HCl;0.02M NaOH;1mM EDTA;0.1%Tween20;pH7.3)中に2回再懸濁させ、3回目の遠心分離後に、TSEバッファー(pH7.3)250μl中に再懸濁させる。同時に、β−hCG(クローンF199C1,Perkin-Elmer Life Sciences-Wallac Oy, Finnland)に特異的である、等モル量のモノクローナルマウス抗体を40倍過剰量のSMCC(N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミド−メチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、Perbio Science Deutschland GmbH,Bonn)によって活性化し;抗β−hCG抗体750μl(=25nmol、5mg/mlの濃度において)を、Centricon濾過ユニット(50000でのMW排除、Millipore,Eschborn,Germany)を用いて、TSMZバッファー(pH7.3)(0.1M NaCl;0.1M トリエタノールアミン−HCl;0.02M NaOH;0.27mM ZnCl2;0.1%Tween20;1mM MgCl2)中で再緩衝化して、7mg/mlの濃度に調節する。DMF(=1mmol)中の20mM SMCC溶液50μlをこの抗体溶液に加えて、続いて、25℃において30分間にわたってインキュベートする。1Mグリシン12μl(12倍過剰量)を加えて、反応を停止させ、遊離SMCCをSephadex G25 PD10既製カラム(Amersham Pharmacia Biotech,Freiburg,Germany)上で分離する。最後に、等モル量の2−IT活性化ナノ粒子分散系と、SMCC活性化抗体溶液とを混合し、25℃において3時間、次に4℃において一晩インキュベートする。抗体結合ナノ粒子を、非結合粒子及び遊離抗体から、Superdex200(Amersham Pharmacia Biotech,Freiburg,Germany)上でのゲル透過クロマトグラフィーによって精製する、0.1M MES、0.5M NaCl、pH6.0を緩衝化溶離剤(buffering eluent)として用いる。結合ナノ粒子の保持時間は約2時間である。
【0271】
RE2−7: hIL−2とのLaPO4:Eu3+ナノ粒子の結合
LaPO4:Eu3+ナノ粒子を、文献(J.Phys.Chem.B2000,104,2824-2828)に記載されている硝酸塩の代わりにLaCl3・7H2O1.76gを用いたことのみを違えて、この文献に記載されている通りに、TEHP中に製造した。これらのナノ粒子300mg(〜1μmol)を、クロロモホルム125ml中のブロモトリメチルシラン2.23g(15mmol)と共に4時間にわたって還流下で加熱した。ブロモトリメチルシラン過剰量及び形成された中間生成物の大部分を蒸留除去した後に、残渣をややアンモニア性条件下で加水分解する。このために、残渣を、アンモニア(25%)100μlを加えた水6mlで処理して、一晩撹拌する。得られた粒子は、乳状分散系を形成して、数時間後には一部が析出する。これらのブロモトリメチルシラン処理ナノ粒子5mg(=25mmol,106μl)を、2:1のモル比率での、10mM炭酸ナトリウムバッファー(pH8.5)中の組み換えヒトIL−2タンパク質(R&D Systems,Mineapolis,MN,USA)と共に、37℃において1時間にわたって振とうしながらインキュベートした。その後に、得られた混合物を3000gにおいて10分間にわたって6回遠心分離し、各回に続いて、10mM炭酸ナトリウムバッファー(pH8.5)1ml中に再懸濁することによって、過剰なタンパク質を分離する。LaPO4:Eu3+/IL−2コンジュゲートを4℃において貯蔵する。
【0272】
RE2−8: ドナーとしてのRE2−6の抗体結合ナノ粒子とアクセプターとしての蛍光結合抗体とによるβ−hCGを検出するための均一エネルギー転移アッセイ
フルオレセインへの抗−β−hCG抗体の結合
Molecular Probesが製造したFluororeporter(登録商標)FITCタンパク質標識キットを用いて、製造者の使用説明書にしたがって、抗−β−hCG抗体(M15294,Perkin-Elmer Life Science,Wallac Oy Finnland)へフルオレセインを結合させた。抗体0.5mgをCentricon濾過ユニット(50000でMW排除)を用いて、0.2M炭酸水素塩バッファー(pH9.0)中に再緩衝化した。この抗体溶液を次に、25倍過剰量の5mMフルオレセインイソチオシアネート(FITC)溶液(同量のDMFと0.2M炭酸水素塩バッファー(pH9.0)との混合物中に溶解したもの)と共にインキュベートし、室温において3時間インキュベートする。過剰なFITCを既製のSephadex G25 PD10カラム(Amersham Pharmacia Biotech,Freiburg,Germany)上で分離し、抗体濃度と、フルオレセイン/抗体の比率を分光法によって測定する。4℃で貯蔵するコンジュゲートに、0.01%アジ化ナトリウムと0.1%BSAとを加える。
【0273】
アッセイの実施
血清中の遊離β−hCGを測定するための商業的に入手可能なキット(A007-101,Perkin-Elmer Life Sciences,Wallac,Oy,Finnland)からのβ−hCG標準50μlを、トリスHClバッファー(pH7.4)200μl中の、RE2−6で得られたナノ粒子抗体コンジュゲート100nmolとフルオレセイン結合抗−β−hCG抗体100nmolと共に、UV透過性96−穴マイクロタイター・プレート(UVStar,Greiner)において25℃で60分間にわたってインキュベートした。2種類の抗−β−hCG抗体は、β−hCGサブユニットの異なるエピトープに対して向けられる。その後、サンプルを蛍光分光計(Jobin Yvon,Fluorolog 3によって製造)で次の条件:280nmの波長におけるパルス化励起、放射:542nm、スリット幅:5nm、総合時間:0.1msにおいて測定した。個々のβ−hCG濃度に関して得られた結果を校正曲線に加える。この校正曲線に基づいて濃度を決定することによって、身体サンプルのβ−hCG含量を血清サンプル中で同様に測定することができる。
【0274】
RE2−9: RE2−7のhIL−2−結合ナノ粒子(LaPO4:Eu3+)と、Alexa Fluor680結合抗−hIL−2Rα鎖抗体による、hIL−2を測定するための均一競合エネルギー転移アッセイ
Alexa Fluor680とのモノクローナル抗−hIL−2Rα鎖抗体の結合
ヒト・インターロイキン−2受容体のα−鎖(hIL−2α−鎖)(ATCC,Rockville,USA)を特異的に認識するモノクローナル抗体7G7B6 1mgを、PBSに対して透析して、2mg/mlの濃度に調節して、Alexa Fluor680タンパク質標識キット(Molecular Probes Europe BV,the Netherlands)を用いて、製造者の使用説明書にしたがって、標識した。反応緩衝剤として、0.1M炭酸水素ナトリウムバッファー(pH8.3)を用いて、インキュベーションを室温において1時間にわたって行なった。結合した抗体をキットに含まれるカラム上で、溶離剤バッファーとして0.2mMアジ化Naを含むPBSバッファーを用いて精製する。結合抗体のタンパク質濃度を決定するために、1cm光学セルにおいて、280nm及び679nmにおける吸収(A)を測定し、次に、該タンパク質濃度は下記式:
【0275】
【数1】
【0276】
によって算出される、式中、203000cm−1M−1はIgGのモル減衰係数を表し、0.05は280nmにおける染料の吸収に関する修正率を表す。結合抗体の濃度は1.27であり、PBS、0.2mMアジ化Naによって1mg/ml(〜6.5μM)に調節される。結合抗体は4℃で貯蔵される。標識効率は次のように算出される。
【0277】
【数2】
【0278】
式中、184000cm−1M−1は、679nmにおけるAlexa Fluor680染料のモル減衰係数を表す。抗体/染料コンジュゲートの比率は3.2である。
【0279】
アッセイの実施:
種々の成分の必要な希釈は、50mM TSAバッファー(50mM Tris−HCl pH7.75;0.9%NaCl;0.05%NaN3)で達成される。UV透過性マイクロタイター・プレート(UVStar,Greiner)の40穴を、非特異的結合を飽和させるために、最初にBSA溶液(0.5%)と共に室温において1時間にわたってインキュベートし、その後に、実施例RE2−7のLaPO4:Eu3+/IL−2コンジュゲート、Alexa Fluor 680標識抗−hIL−2α鎖抗体及び組み換えhIL−2sRαタンパク質(ヒトIL−2溶解性受容体α、R&D Systems, Mineapolis,MN,USA)の混合物を、それぞれ、40nMの最終濃度で加える。これらの穴の20は、非標識hIL−2タンパク質を種々の濃度で加え、残りの20穴は、このアッセイに関連のないタンパク質を加える。0〜950nMの濃度シリーズを試験するために、各濃度を50nMずつ上昇させる。反応の最終量は、各場合に、200μlである。インキュベーションは、シェーカー上、暗所で、室温において、45分間にわたって行なう。Wallac 1420 VictorTM Multilabel Counter(Perkin-Elmer Life Sciences, Wallac Oy, Finnland)によって下記条件下:励起:340nm、発光:665nm、遅延時間:50μs、時間帯(time window):200μs及びサイクル時間:1000μsにおいて、シグナルを読み取る。各値は2回測定し、無関係のタンパク質によって得られた非特異的結合の結果に基づいて補正する。線図において測定値をタンパク質濃度に対してプロットして、校正曲線を得て、これを用いて、ヒトインターロイキン−2の濃度を算出することができる。このことは、ヒト身体サンプルに対しても同様な方法で可能である。
【0280】
RE2−10: RE2−5のDNAオリゴヌクレオチド結合LaPO4:Ce,Tbナノ粒子による分子内エネルギー転移による細菌DNAの定量PCR測定
定量DNA測定のためのプライマー及びプローブは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のRNAポリメラーゼ遺伝子のために特異的に選択され、Interactiva(Ulm,Germany)によって製造されている。プライマーは下記配列を有した:前進5’−GGCCGGTGGTCGCCGCG−3’後進5’−ACGTGACAGACCGCCGGGC−3’。
【0281】
細菌DNAの定量測定に関するアッセイ
50μlのPCR反応のために、プローブとしてのRE2−5のナノ粒子(dabcyl−オリゴヌクレオチド結合)50nM、両方のプライマー、2 U Amplitaq Gold DNA Polymerase(Perkin-Elmer)の各々500nM、250μM dATP、250μM dCTP、250μM dGTP、500μM dUTP、4mM MgCl2、50mM KCl及び10mM Tris−HCl、pH8.0を混合した。ゲノム結核菌(M.tuberculosis)DNAをDNA鋳型として同じプライマーによって増幅し、Invitrogen Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen BV/NOVEX)を用いて、プラスミドにクローン化する。基準曲線を得るために、DNAプラスミド1pg〜100ngの5種類の異なる濃度を、DNA鋳型なしの反応と同様に用いる。各濃度に関して30回反応を用意したので、第15回サイクル後に開始すると、各付加的サイクル後にサンプルを取り出して、同サンプルを分光法によって測定することができる。反応量は50μlであり、増幅は、thermocycler(PCR-Systems 2400, Perkin-Elmer)によって下記条件下:95℃において10分間;95℃において30s、56℃において45s及び72℃において30sの15〜45サイクルにおいて行なう。サンプルは、蛍光分光計(Jobin Yvonによって製造、Fluorolog 3)において下記条件下:280nmの波長においてパルス化励起、放射:542nm、スライド幅:4nm、遅延時間:50μs、繰り返し率 約25Hzにおいて測定した。同じ方法で、テルビウム輝線の半減期を測定することが可能である。このために、下記条件を用いた:励起:280nm、放射:542nm、スリット幅:5nm、総合時間:0.1ms。プローブと標的DNAのハイブリダイズム中に、結合ナノ粒子とdabcylとの間に分子内FRETは生じない。それ故、標的DNAの濃度が上昇すると、ナノ粒子のTb蛍光は、鋳型なしの対照サンプルに関して上昇する。同様に、ナノ粒子蛍光の寿命の半減期は、鋳型DNAなしの対照サンプルに比べて延長する。両パラメーターのこれらの違いをサイクル数に対してプロットして、各DNA鋳型濃度に対する校正曲線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0282】
【図1】図1は、均一CePO4コア粒子と、本発明によるCePO4/TbPO4のコア/シェル粒子の蛍光スペクトルを示す。
【図2】図2は、1つのCePO4:Tb/LaPO4のコア/シェル粒子のエネルギー濾過透過電子顕微鏡検査によって得られた種々の像を示す。
【図3】図3は、修飾され、フルオレセインに化学的に結合した、本発明によるCePO4/TbPO4のコア/シェル粒子の2つの蛍光減衰曲線をそれぞれ示す。基準として、フルオレセインに結合していないCePO4/TbPO4・コア/シェル粒子の蛍光減衰曲線も示す。
【図4】フルオレセイン結合均一LaPO4:Ce,Tb粒子(比較例1)の蛍光減衰曲線を示す。
【図5a】図5aは、修飾もされず、フルオレセインにも結合していない、本発明によるCePO4/TbPO4・コア/シェル粒子の、時間ゲート(TGF)法で測定した、2つの蛍光スペクトルをそれぞれ示す。
【図5b】図5bは、それぞれ、時間ゲート法で測定した均一LaPO4:Ce,Tbナノ粒子(比較例1)の520nmと542nmにおける、1つの蛍光スペクトルを示す。
【図6a】1つの分子に結合した(F)RETパートナーによる均一キナーゼ・アッセイ。
【図6b】1つの分子に結合した(F)RETパートナーによる均一イムノアッセイ。
【図7】1つの分子(エピトープ)に結合した(F)RETパートナーによる競合イムノアッセイを示す。
【図8】別々の分子に結合した(F)RETパートナーによる均一な飽和イムノアッセイ。
【図9】別々の分子に結合した(F)RETパートナーによる均一な競合イムノアッセイ。
【図10】1つの分子に結合した(F)RETパートナーによる均一なアッセイ。
【図11】分子ビーコンの方法に従うアッセイ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1金属塩又は酸化物でできているコア;及び該コアを囲む(b)発光性であり、非半導体特性を有する第2金属塩又は酸化物でできているシェル;を含む、発光性の無機ナノ粒子。
【請求項2】
コアとシェルとの塩が同じアニオンを含み、前記アニオンが好ましくはホスフェート、スルフェート又はフルオリドから選択される、請求項1記載の発光性ナノ粒子。
【請求項3】
最長軸に基づく30nm未満の平均直径を有する、請求項1又は2に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項4】
シェルの平均厚さが、コアの平均直径を超えない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項5】
(a)コアが非発光性であり、(b)シェルが、好ましくは、ランタニドCe(58)、Pr(59)、Nd(60)、Sm(62)、Eu(63)、Gd(64)、Tb(65)、Dy(66)、Ho(67)、Er(68)、Tm(69)若しくはYb(70)、又はこれらの組み合わせから、或いはCrとMnから選択されるドーピング発光性金属原子を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項6】
シェルが該金属を主要金属成分として、特に唯一の金属成分として含む、請求項5記載の発光性ナノ粒子。
【請求項7】
シェルが、該金属を非発光性のホスト物質のドーパントとして含む、請求項5記載の発光性ナノ粒子。
【請求項8】
コアがLaPO4から成り、シェルがTbPO4から成る、請求項6記載の発光性ナノ粒子。
【請求項9】
(a)コアが第1金属塩又は酸化物を含み、該第1金属塩又は酸化物が励起後に励起エネルギーを(b)第2発光性金属塩又は酸化物であって同エネルギーをルミネセンスとして放射するものに転移させることができる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項10】
コア金属とシェル金属とが、Ce(58)、Pr(59)、Nd(60)、Sm(62)、Eu(63)、Gd(64)、Tb(65)、Dy(66)、Ho(67)、Er(68)、Tm(69)又はYb(70)から選択される、請求項9記載の発光性ナノ粒子。
【請求項11】
コア金属がCeから選択され、シェル金属がNd、Dy及びTbから選択される、請求項9又は10に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項12】
コア金属がYbであり、シェル金属がErである、請求項9又は10に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項13】
コア及び/又はシェルが、該金属を主要金属成分として、特に唯一の金属成分として含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項14】
コア及び/又はシェルが、該金属をホスト物質のドーパントとして含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項15】
コアがLaPO4:Ce又はLaPO4から成り、シェルがTbPO4から成る、請求項9〜12のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法であって、有機媒質中の第1金属塩又は酸化物のナノ粒子を含む第1混合物を調製する工程、前記第1混合物と、形成されるシェルのためのアニオン供給源と、シェル形成金属イオン及び前記金属イオンのための有機錯化剤を含む第2混合物とを、50〜350℃の温度において、第1金属塩又は酸化物の前記ナノ粒子コアの周囲にシェルが形成されるまで反応させる工程を含む方法。
【請求項17】
第1混合物中に存在する有機媒質と、第2混合物中に存在する有機錯化剤とが同一のものである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
有機媒質と錯化剤とが、モノアルキル若しくはジアルキルアミン(アルキル残基はC原子4〜20個を有する)、ホスホロ有機化合物、ポリオール又はスルホキシドから選択される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記有機媒質中でナノ粒子コアを合成した後にこれらのコアを予め単離することなく反応させる工程を含む、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
アニオン供給源、特にホスフェート、スルフェート又はフルオリド供給源を、利用可能なシェル形成金属原子との反応のための化学量論的必要量を基準にして過剰なモル量で用いる、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のナノ粒子を含有する、流体又は固体の媒質。
【請求項22】
有機若しくは無機分散系媒質、コーティング組成物、インキ若しくは染料、ポリマー組成物又はエアロゾルから選択される、請求項21記載の流体媒質。
【請求項23】
コーティング、インキ若しくは染料、ポリマー組成物、特にポリマー・フィルムから選択される、請求項21記載の固体媒質。
【請求項24】
(F)RETベースのバイオアッセイにおける、請求項1〜15のいずれか1項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項25】
核酸検出のための(F)RETベースのバイオアッセイにおける、請求項24記載のナノ粒子の使用。
【請求項26】
発光、アイテム及び材料の印刷又は標識のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のナノ粒子又は請求項21〜23のいずれか1項に記載の媒質の使用。
【請求項1】
(a)第1金属塩又は酸化物でできているコア;及び該コアを囲む(b)発光性であり、非半導体特性を有する第2金属塩又は酸化物でできているシェル;を含む、発光性の無機ナノ粒子。
【請求項2】
コアとシェルとの塩が同じアニオンを含み、前記アニオンが好ましくはホスフェート、スルフェート又はフルオリドから選択される、請求項1記載の発光性ナノ粒子。
【請求項3】
最長軸に基づく30nm未満の平均直径を有する、請求項1又は2に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項4】
シェルの平均厚さが、コアの平均直径を超えない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項5】
(a)コアが非発光性であり、(b)シェルが、好ましくは、ランタニドCe(58)、Pr(59)、Nd(60)、Sm(62)、Eu(63)、Gd(64)、Tb(65)、Dy(66)、Ho(67)、Er(68)、Tm(69)若しくはYb(70)、又はこれらの組み合わせから、或いはCrとMnから選択されるドーピング発光性金属原子を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項6】
シェルが該金属を主要金属成分として、特に唯一の金属成分として含む、請求項5記載の発光性ナノ粒子。
【請求項7】
シェルが、該金属を非発光性のホスト物質のドーパントとして含む、請求項5記載の発光性ナノ粒子。
【請求項8】
コアがLaPO4から成り、シェルがTbPO4から成る、請求項6記載の発光性ナノ粒子。
【請求項9】
(a)コアが第1金属塩又は酸化物を含み、該第1金属塩又は酸化物が励起後に励起エネルギーを(b)第2発光性金属塩又は酸化物であって同エネルギーをルミネセンスとして放射するものに転移させることができる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項10】
コア金属とシェル金属とが、Ce(58)、Pr(59)、Nd(60)、Sm(62)、Eu(63)、Gd(64)、Tb(65)、Dy(66)、Ho(67)、Er(68)、Tm(69)又はYb(70)から選択される、請求項9記載の発光性ナノ粒子。
【請求項11】
コア金属がCeから選択され、シェル金属がNd、Dy及びTbから選択される、請求項9又は10に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項12】
コア金属がYbであり、シェル金属がErである、請求項9又は10に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項13】
コア及び/又はシェルが、該金属を主要金属成分として、特に唯一の金属成分として含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項14】
コア及び/又はシェルが、該金属をホスト物質のドーパントとして含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項15】
コアがLaPO4:Ce又はLaPO4から成り、シェルがTbPO4から成る、請求項9〜12のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法であって、有機媒質中の第1金属塩又は酸化物のナノ粒子を含む第1混合物を調製する工程、前記第1混合物と、形成されるシェルのためのアニオン供給源と、シェル形成金属イオン及び前記金属イオンのための有機錯化剤を含む第2混合物とを、50〜350℃の温度において、第1金属塩又は酸化物の前記ナノ粒子コアの周囲にシェルが形成されるまで反応させる工程を含む方法。
【請求項17】
第1混合物中に存在する有機媒質と、第2混合物中に存在する有機錯化剤とが同一のものである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
有機媒質と錯化剤とが、モノアルキル若しくはジアルキルアミン(アルキル残基はC原子4〜20個を有する)、ホスホロ有機化合物、ポリオール又はスルホキシドから選択される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記有機媒質中でナノ粒子コアを合成した後にこれらのコアを予め単離することなく反応させる工程を含む、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
アニオン供給源、特にホスフェート、スルフェート又はフルオリド供給源を、利用可能なシェル形成金属原子との反応のための化学量論的必要量を基準にして過剰なモル量で用いる、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のナノ粒子を含有する、流体又は固体の媒質。
【請求項22】
有機若しくは無機分散系媒質、コーティング組成物、インキ若しくは染料、ポリマー組成物又はエアロゾルから選択される、請求項21記載の流体媒質。
【請求項23】
コーティング、インキ若しくは染料、ポリマー組成物、特にポリマー・フィルムから選択される、請求項21記載の固体媒質。
【請求項24】
(F)RETベースのバイオアッセイにおける、請求項1〜15のいずれか1項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項25】
核酸検出のための(F)RETベースのバイオアッセイにおける、請求項24記載のナノ粒子の使用。
【請求項26】
発光、アイテム及び材料の印刷又は標識のための請求項1〜15のいずれか1項に記載のナノ粒子又は請求項21〜23のいずれか1項に記載の媒質の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−523754(P2007−523754A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505331(P2006−505331)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004574
【国際公開番号】WO2004/096944
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(505072627)バイエル・テクノロジー・サービシーズ・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004574
【国際公開番号】WO2004/096944
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(505072627)バイエル・テクノロジー・サービシーズ・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
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