説明

(S)−5−置換−5−ヒドロキシ−3−オキソペンタン酸エステル誘導体の製法

【課題】高い光学純度及び高い単離収率で、工業的に好適な簡便な方法によって、(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体の製造方法の提供。
【解決手段】光学活性なシッフ塩基、例えば、(S)−2−[N−(3,5−ジ−t−ブチルサリチリデン)アミノ]−3−メチル−1−ブタノールとテトライソプロポキシチタンを反応させて得られるチタン錯体、及びアミンの存在下、アルデヒド化合物とジケテンとを有機溶媒中で反応させることを特徴とする、(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体の製法である。アルデヒド化合物がベンズアルデヒドの場合、得られる化合物は、(S)−5−フェニル−5−5ヒドロキシ−3−オキソペンタン酸イソプロピルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体の製法に関する。(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体、特に、(S)-7-[2-シクロプロピル-4-(4-フルオロフェニル)キノリン-3-イル]-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸エステルは、血中コレステロール低下剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)の合成中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、チタン錯体の存在下、アルデヒド化合物とジケテンとを反応させて(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体を製造する方法としては、3-[2-シクロプロピル-4-(4-フルオロフェニル)キノリン-3-イル]-プロプ-2-エン-1-アールとジケテンとを反応させて、光学純度78%ee、単離収率72%で(S)-7-[2-シクロプロピル-4-(4-フルオロフェニル)キノリン-3-イル]-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸エチルを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法で得られる目的物の光学純度及び単離収率は、決して満足するものではなかった。
【特許文献1】特開平8-92217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、簡便な方法によって、高い光学純度及び高い単離収率で、目的とする(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体を得る、工業的に好適な(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体の製法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、一般式(1)
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Rは、炭化水素基、R、R及びRは、水素原子又は炭化水素基を示す。)
で示される光学活性なシッフ塩基と一般式(2)
【0007】
【化2】

【0008】
(式中、Rは、炭化水素基を示す。)
で示されるチタン化合物とを反応させて得られるチタン錯体、及び一般式(3)
【0009】
【化3】

【0010】
(式中、R、R及びRは、炭化水素基を示す。)
で示されるアミンの存在下、式(4)
【0011】
【化4】

【0012】
(式中、Rは、置換基を有していても良い、炭化水素基又は複素環基を示す。)
で示されるアルデヒド化合物とジケテンとを有機溶媒中で反応させることを特徴とする、一般式(5)
【0013】
【化5】

【0014】
(式中、R及びRは、前記と同義である。)
で示される(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体の製法によって解決される。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、簡便な方法によって、高い光学純度及び高い単離収率で、目的とする(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体を得る、工業的に好適な(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体の製法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の反応で使用する光学活性なシッフ塩基は、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、Rは、炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜10のアルキル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。);シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数7〜12のアラルキル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。);フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。)が挙げられる。
【0017】
又、R、R及びRは、水素原子又は炭化水素基であり、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜10のアルキル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。);シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数7〜12のアラルキル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。);フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。)が挙げられる。
【0018】
なお、前記R、R、R及びRの最も好ましい態様としては、Rがイソプロピル基、Rが水素原子、R及びRがt-ブチル基である。
【0019】
前記光学活性なシッフ塩基の使用量は、チタン化合物1molに対して、好ましくは0.2〜2mol、更に好ましくは0.5〜1.5molである。
【0020】
本発明の反応で使用するチタン化合物は、前記の一般式(2)で示される。その一般式(2)において、Rは、炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜10のアルキル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。);シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数7〜12のアラルキル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。);フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。)が挙げられるが、好ましくはイソプロピル基である。
【0021】
前記チタン化合物の使用量は、アルデヒド化合物1molに対して、好ましくは0.1〜5mol、更に好ましくは0.2〜3molである。
【0022】
本発明の反応において使用するチタン錯体は、J.Org.Chem.,58,1515(1993)に記載の方法に準じて合成することが出来、例えば、前記の光学活性なシッフ塩基とチタン化合物を有機溶媒中で反応させることによって得ることが出来る。なお、生成したチタン錯体は、単離することなく反応に使用することが可能である。
【0023】
本発明の反応で使用するアミンは、前記の一般式(3)で示される。その一般式(3)において、R、R及びRは、炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜10のアルキル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。);シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数7〜12のアラルキル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。);フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。)が挙げられるが、好ましい態様としては、(1)R、R及びRが全てエチル基、(2)R及びRがイソプロピル基、Rがエチル基である。なお、該R、R及びRが同時にシクロアルキル基、ベンジル基、アリール基であることはない。
【0024】
前記アミンの使用量は、アルデヒド化合物1molに対して、好ましくは0.01〜3mol、更に好ましくは0.02〜2molである。
【0025】
本発明の反応において使用する有機溶媒は、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル等のカルボン酸エステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン等の尿素類が挙げられるが、好ましくはエーテル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、更に好ましくはエーテル類、芳香族炭化水素類、特に好ましくは芳香族炭化水素類が使用される。なお、これらの有機溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0026】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性によって適宜調節するが、アルデヒド化合物1gに対して、好ましくは1〜50g、更に好ましくは3〜20gである。
【0027】
本発明の反応において使用するアルデヒド化合物は、前記の一般式(5)で示される。その一般式(5)において、Rは、置換基を有していても良い、炭化水素基又は複素環基である。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。);シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。);フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基(なお、これらの基は、各種異性体を含む。)が挙げられる。又、複素環基としては、例えば、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、ピリミジル基、ピペリジル基、モルホリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基等が挙げられる。
【0028】
前記の炭化水素基又は複素環基は、置換基を有していても良い。その置換基としては、炭素原子を介して出来る置換基、酸素原子を介して出来る置換基、窒素原子を介して出来る置換基、硫黄原子を介して出来る置換基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0029】
前記炭素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基等のアルケニル基;キノリル基、ピリジル基、ピロリジル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基等の複素環基;フェニル基、トリル基、フルオロフェニル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、ピバロイル基、シクロヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、トルオイル基等のアシル基(アセタール化されていても良い);カルボキシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;シアノ基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0030】
前記酸素原子を介して出来る置換基としては、例えば、ヒドロキシル基;メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基、ペンチルオキシル基、ヘキシルオキシル基、ヘプチルオキシル基、ベンジルオキシル基等のアルコキシル基;フェノキシル基、トルイルオキシル基、ナフチルオキシル基等のアリールオキシル基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0031】
前記窒素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基等の第一アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N-メチル-N-メタンスルホニルアミノ基等の第二アミノ基;モルホリノ基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ピラゾリジニル基、ピロリジノ基、インドリル基等の複素環式アミノ基;イミノ基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0032】
前記硫黄原子を介して出来る置換基としては、例えば、メルカプト基;チオメトキシル基、チオエトキシル基、チオプロポキシル基等のチオアルコキシル基;チオフェノキシル基、チオトルイルオキシル基、チオナフチルオキシル基等のチオアリールオキシル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0033】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0034】
本発明の反応において使用するジケテンの量は、アルデヒド化合物1molに対して、好ましくは1〜3mol、更に好ましくは1〜2molである。
【0035】
本発明の反応は、例えば、シッフ塩基とチタン化合物を混合して反応させてチタン錯体を生成させた後、次いで、アミン、アルデヒド化合物、ジケテン及び有機溶媒を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは-150〜50℃、更に好ましくは-100〜30℃、特に好ましくは-80〜20℃であり、反応圧力は特に制限されない。
【0036】
本発明の反応により、最終生成物として(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体が得られるが、これは、例えば、反応終了後、濾過、濃縮、再結晶、晶析、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって単離・精製される。
【実施例】
【0037】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における光学純度(エナンチオマー過剰率(%ee))測定及び参考例の定量分析は、以下の分析条件により高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。
【0038】
高速液体クロマトグラフィーの分析条件;
(光学純度測定)
カラム ;CHIRALPAK AD-H(ダイセル化学工業社製)
4.6mmφ×250mm
カラム温度;30℃
溶出溶媒 ;n-ヘキサン/イソプロピルアルコール/ジエチルアミン(=94.9/5.0 /0.1(容量比))
流速 ;0.5ml/min.
検出波長 ;254nm
【0039】
(定量分析)
カラム ;Inertsil ODS-3V(GL Science社製)
4.6mmφ×250mm
カラム温度;40℃
溶出溶媒 ;アセトニトリル/0.02mol/lクエン酸緩衝液(=2/1(容量比))(pH 3.3)
流速 ;1.0ml/min.
検出波長 ;254nm
【0040】
参考例1((S)-2-[N-(3,5-ジ-t-ブチルサリチリデン)アミノ]-3-メチル-1-ブタノールのトルエン溶液の合成)
攪拌装置、温度計、還流冷却器及びDean-Stark装置を備えた内容積100mlのフラスコに、窒素雰囲気にて、3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシベンズアルデヒド7.37g(31.5mmol)、(S)-2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール3.26g(31.6mmol)及びトルエン40mlを加え、生成する水を除去しながら、還流下(90〜110℃)で1時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、(S)-2-[N-(3,5-ジ-t-ブチルサリチリデン)アミノ]-3-メチル-1-ブタノールのトルエン溶液40ml((S)-2-[N-(3,5-ジ-t-ブチルサリチリデン)アミノ]-3-メチル-1-ブタノール10.0g(31.5mmol)を含有)を得た。
【0041】
実施例1((S)-5-フェニル-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸イソプロピルの合成)
攪拌装置、温度計及び側管付滴下漏斗を備えた内容積200mlのフラスコに、チタンテトライソプロポキシド9.87g(33.0mmol)を加え、次いで、参考例1で合成した(S)-2-[N-(3,5-ジ-t-ブチルサリチリデン)アミノ]-3-メチル-1-ブタノールのトルエン溶液40ml((S)-2-[N-(3,5-ジ-t-ブチルサリチリデン)アミノ]-3-メチル-1-ブタノール10.0g(31.5mmol)を含有)を反応液の温度が30℃を越えないようにゆるやかに滴下し、室温で1時間反応させチタン錯体を合成させた。その後、反応液を-20℃まで冷却し、ベンズアルデヒド3.18g(30.0mmol)をトルエン50mlに溶解したものをゆるやかに加えて30分間攪拌させた。更に、トリエチルアミン0.42ml(3.00mmol)、ジケテン3.28g(39.0mmol)の順で加えて、-20℃で8時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を、5.0質量%シュウ酸水溶液100ml、イソプロピルアルコール50ml及び酢酸エチル50mlの混合液に加え、室温で1時間激しく攪拌した。その後、有機層を取り出し、5.0質量%シュウ酸水溶液50ml、水50ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30mlの順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填剤;ワコーゲルC-200(和光純薬社製)、展開溶媒;トルエン/酢酸エチル=9/1(容量比))により精製したところ、淡黄色油状物として(S)-5-フェニル-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸イソプロピル5.78g(23.5mmol)を得た(光学純度:81.7%ee、単離収率:78.2%)。
【0042】
比較例1((S)-5-フェニル-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸イソプロピルの合成)
実施例1において、トリエチルアミンを加えなかったこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、(S)-5-フェニル-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸イソプロピル5.95g(23.8mmol)が得られた(光学純度:79.2%ee、単離収率:79.3%)。
【0043】
実施例2((S)-7-フェニル-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸イソプロピルの合成)
実施例1において、アルデヒド化合物をシンナムアルデヒド3.69g(30.0mmol)に変えたこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、淡黄色油状物として(S)-7-フェニル-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸イソプロピル6.50g(23.6mmol)が得られた(光学純度:82.8%ee、単離収率:78.5%)。
【0044】
比較例2((S)-7-フェニル-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸イソプロピルの合成)
実施例2において、トリエチルアミンを加えなかったこと以外は、実施例2と同様に反応を行った。その結果、(S)-7-フェニル-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸イソプロピル6.29g(22.8mmol)が得られた(光学純度:79.4%ee、単離収率:76.0%)。
【0045】
実施例3((S)-5-(ピリジン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸イソプロピルの合成)
実施例1において、アルデヒド化合物をニコチンアルデヒド3.21g(30.0mmol)に変えたこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、淡黄色油状物として(S)-5-(ピリジン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸イソプロピル5.74g(22.9mmol)が得られた(光学純度:79.4%ee、単離収率:76.2%)。
なお、(S)-5-(ピリジン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸イソプロピルは、以下の物性値で示される新規な化合物である。
【0046】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));1.35(6H,d)、1.92(2H,m)、2.00(1H,s)、2.10(1H,s)、2.40(2H,m)、3.85(1H,m)、4.31(1H,m)、4.50(1H,m)、7.42(1H,t)、7.90(1H,d)、8.55(1H,d)、8.70(1H,s)
CI-MS(m/e);252(MH)、234(M-OH)
【0047】
比較例3((S)-5-(ピリジン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸イソプロピルの合成)
実施例3において、トリエチルアミンを加えなかったこと以外は、実施例3と同様に反応を行った。その結果、(S)-5-(ピリジン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸イソプロピル5.81g(23.1mmol)が得られた(光学純度:76.4%ee、単離収率:77.1%)。
【0048】
実施例4((S)-7-(2-イソプロピル-4-フェニルキノリン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸イソプロピルの合成)
実施例1において、アルデヒド化合物を3-(2-イソプロピル-4-フェニルキノリン-3-イル)-プロプ-2-エン-1-アール9.03g(30.0mmol)に変えたこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、淡黄色油状物として(S)-7-(2-イソプロピル-4-フェニルキノリン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸イソプロピル11.5g(25.9mmol)が得られた(光学純度:85.3%ee、単離収率:86.3%)。
なお、(S)-7-(2-イソプロピル-4-フェニルキノリン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸イソプロピルは、以下の物性値で示される新規な化合物である。
【0049】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));1.29(6H,d)、1.39(6H,d)、1.63(2H,m)、2.00(1H,s)、2.10(1H,s)、2.40(2H,m)、3.12(1H,m)、3.85(1H,m)、3.90(1H,m)、4.31(1H,m)、6.25(1H,d)、6.62(1H,d)、7.22〜7.32(3H,m)、7.39〜7.48(3H,m)、7.60(1H,t)、7.69(1H,d)、8.02(1H,d)
CI-MS(m/e);446(MH)、428(M-OH)
【0050】
比較例4((S)-7-(2-イソプロピル-4-フェニルキノリン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸イソプロピルの合成)
実施例4において、トリエチルアミンを加えなかったこと以外は、実施例4と同様に反応を行った。その結果、(S)-7-(2-イソプロピル-4-フェニルキノリン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸イソプロピル11.8g(26.5mmol)が得られた(光学純度:79.9%ee、単離収率:88.2%)。
【0051】
実施例5((S)-7-(2-イソプロピル-4-フェニルキノリン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸イソプロピルの合成)
実施例4において、トリエチルアミンをジイソプロピルエチルアミン0.52ml(3.00mmol)に変えたこと以外は、実施例4と同様に反応を行った。その結果、淡黄色油状物として(S)-7-(2-イソプロピル-4-フェニルキノリン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸イソプロピル11.7g(26.3mmol)が得られた(光学純度:83.2%ee、単離収率:87.5%)。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明により、簡便な方法によって、高い光学純度及び高い単離収率で、目的とする(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体を得る、工業的に好適な(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体の製法を提供することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、炭化水素基、R、R及びRは、水素原子又は炭化水素基を示す。)
で示される光学活性なシッフ塩基と一般式(2)
【化2】

(式中、Rは、炭化水素基を示す。)
で示されるチタン化合物とを反応させて得られるチタン錯体、及び一般式(3)
【化3】

(式中、R、R及びRは、炭化水素基を示す。)
で示されるアミンの存在下、式(4)
【化4】

(式中、Rは、置換基を有していても良い、炭化水素基又は複素環基を示す。)
で示されるアルデヒド化合物とジケテンとを有機溶媒中で反応させることを特徴とする、一般式(5)
【化5】

(式中、R及びRは、前記と同義である。)
で示される(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体の製法。
【請求項2】
有機溶媒が芳香族炭化水素類である請求項1記載の(S)-5-置換-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸エステル誘導体の製法。
【請求項3】
式(6)
【化6】

で示される(S)-5-(ピリジン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソペンタン酸イソプロピル。
【請求項4】
式(7)
【化7】

で示される(S)-7-(2-イソプロピル-4-フェニルキノリン-3-イル)-5-ヒドロキシ-3-オキソヘプト-6-エン酸イソプロピル。

【公開番号】特開2007−291122(P2007−291122A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156264(P2007−156264)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【分割の表示】特願2002−77882(P2002−77882)の分割
【原出願日】平成14年3月20日(2002.3.20)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】