説明

1α,25−ジヒドロキシ−19−ノルビタミンD3のデス−C,D類縁体

一般式1の化合物を含む、デス-C,D 2-メチレン-19-ノルビタミンD3類縁体を提供する:式中R1は、炭素数8〜27であり、OY3基を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルキレン基であり;Y1、Y2及びY3は、H又はヒドロキシ保護基から独立して選ばれる。そのような化合物は、医薬組成物の製造に使用されてもよく、様々な生物学的状態の治療に有用である。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、C環及びD環を含まないビタミンD化合物の類縁体、より具体的には1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3のデス(des)-C,D類縁体、さらにより具体的には2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3のデス-C,D類縁体及びそれらの化合物又はそれらの混合物を含む医薬製剤に関する。また、本発明は、その化合物及びそれらの混合物の、様々な疾患の治療用医薬の製造における使用に関する。
【0002】
(発明の背景)
天然のホルモン、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(或いは1α,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール及びカルシトリオールと呼ばれる)及びエルゴステロールシリーズのその類縁体、即ち、1α,25-ジヒドロキシビタミンD2は、動物及びヒトのカルシウムホメオスタシスのかなり強力なレギュレーターとして公知であり、細胞分化におけるそれらの活性は証明されてきた;Ostremら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84、2610 (1987年)。これら代謝物の多くの構造類縁体、例えば1α-ヒドロキシビタミンD3、1α-ヒドロキシビタミンD2、様々な側鎖ホモロゲートビタミン及びフッ化類縁体が、製造及び試験されている。幾つかのこれらの化合物は、細胞分化及びカルシウム調節において、興味深い活性の分離を示している。活性のこの差異は、腎性骨ジストロフィ、ビタミンD-耐性骨軟化症、骨粗鬆症、乾癬及び一定の悪性腫瘍のような様々な疾患の治療に有用な可能性がある。1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の構造及びこの化合物中で炭素原子を示すために使用する付番方式を以下に示す。
【0003】
【化1】

【0004】
他の部類のビタミンD類縁体、即ち、所謂19-ノル-ビタミンD化合物は、一般的なビタミンD系のA環の環外メチレン基(炭素19)の、二つの水素原子による置換により特徴付けられる。そのような19-ノル-類縁体(例えば、1α,25-ジヒドロキシ-19-ノル-ビタミンD3)の生物学的試験により、細胞分化を生じるかなり強力な選択的活性プロフィール、及び非常に低いカルシウム動員(mobilizing)活性が示された。従って、これらの化合物は、悪性腫瘍の治療又は様々な皮膚疾患の治療に関する治療剤として、かなり有用である。そのような19-ノル-ビタミンD類縁体の二つの異なる合成方法が記載されている(Perlmanら、Tetrahedron Lett. 31、1823 (1990年);Perlmanら、Tetrahedron Lett. 32、7663 (1991年)、及びDeLucaら、米国特許第5,086,191号)。
【0005】
1α,25-ジヒドロキシ-19-ノル-ビタミンD3の様々な2-置換類縁体、即ち2位がヒドロキシ基又はアルコキシ基により(DeLucaら、米国特許第5,536,713号)、2-アルキル基(DeLucaら、米国特許第5,945,410号)、及び2-アルキリデン基(DeLucaら、米国特許第5,843,928号)により置換された化合物が合成され、それらは興味深くかつ選択的な活性プロフィールを示す。ビタミンDレセプターの結合部位は、合成ビタミンD類縁体中のC-2において異なる置換に適応できることを、これら全ての研究が示している。
【0006】
米国特許第4,666,634号は、骨粗鬆症の治療用及び抗腫瘍薬剤としての使用のための潜在的な薬剤として、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の2β-ヒドロキシ及びアルコキシ(例えば、ED-71)類縁体を開示している。また、オカノら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 163, 1444(1989年)を参照されたい。1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の(ヒドロキシアルキル、例えばED-120及びフルオロアルキル基での)他の2-置換A-環類縁体が調製され、試験された(ミヤモトら、Chem. Pharm. Bull. 41,1111(1993年);ニシイら、Osteoporosis Int. Suppl. 1, 190 (1993年);Posnerら、J. Org. Chem. 59, 7855(1994年)及びJ. Org. Chem. 60, 4617(1995年)。
【0007】
薬理学的に重要なビタミンD化合物の19-ノル部類を探索するために連続的な努力がなされ、炭素10(C-10)から炭素2(C-2)へのA環の環外メチレン基の転移により特徴付けられるそれらの類縁体、即ち2-メチレン-19-ノル-ビタミンD化合物は、近年合成され試験された(Sicinskiら、J.Med. Chem.、41、4662(1998年);Sicinskiら、Steroids 67、247(2002年);DeLucaら、米国特許第5,843,928号、第5,936,133号及び第6,382,071号)。これらの類縁体で行われる分子メカニズム研究によると、A環コンフォメーションの変化は、シクロヘキサンジオール環の「フラット化(flattening)」を生じることが予期され得ることが示された。これらの化合物の分子メカニズム算出及びNMR研究から、A-環コンフォメーション平衡は、エカトリアル1α-OHを有するコンフォーマーが優先されて約6:4であることが確立された。2-メチレン基の19-ノル-ビタミンD炭素スケルトンへの導入は、その(1α-及び3β-)A環ヒドロキシル基の特性を変化させ;それらは両方ともアリル位にあり、天然のホルモン、1α,25-(OH)2D3において1α-ヒドロキシル基(生物学的活性にとって重要である)と同様である。1α,25-ジヒドロキシ-2-メチレン-19-ノルビタミンD類縁体は、明らかな生物学的有効性により特徴付けられ、それは「非天然」(20S)-配位により化合物中で増強される。
【0008】
薬理学的に重要なビタミンD化合物の19-ノル部類を探索するために連続的な努力がなされ、炭素2(C-2)でのメチレン置換基、炭素1(C-1)でのヒドロキシル基、炭素20(C-20)に結合する短い側鎖の存在により特徴付けられる類縁体が合成及び試験された。1α-ヒドロキシ-2-メチレン-19-ノル-プレグナカルシフェロールは、米国特許第6,566,352号に記載され、1α-ヒドロキシ-2-メチレン-19-ノル-(20S)-ホモプレグナカルシフェロールは米国特許第6,579,861号に、また1α-ヒドロキシ-2-メチレン-19-ノル-ビスホモプレグナカルシフェロールは米国特許第6,627,622号に記載されている。これら三つの全ての化合物は、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3と比較してカルセミック(calcemic)活性はほとんどないが、ビタミンDレセプターへの比較的高い結合活性及び比較的高い細胞分化活性を有する。'352、'861及び'622特許に示すように、それらの生物学的活性により、これらの化合物は、様々な医薬用途のための優れた候補となる。
【0009】
ビタミンDスケルトンの興味深い変更は、そのC環及びD環の除去にある。C、D-構造を欠く第一の化合物(レチフェロール)は、Kutnerらにより10年前に開示された(Kutnerら、Bioorg.Chem.、23、22(1995年)。幾つかの他のデス-C,DビタミンD3誘導体(19-ノル類縁体を含む)は開示されており(Bauerら、米国特許第5,969,190号;Barbierら、米国特許第6,184,422号)、それらの幾つか(Ro 65-2299)には、改良された生物学的活性を示すことが報告されている[Hilpert及びWirz、Tetrahedron、57、681(2001年)]。
【0010】
(発明の概要)
本発明は、C環及びD環を欠く1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3の類縁体、例えば2-メチレン-19-ノルビタミンD3のデス-C,D類縁体である化合物、その化合物を含む医薬製剤、及び様々な疾患状態の治療用医薬の製造におけるそれらの化合物又はそれらの化合物の混合物の使用を提供する。
【0011】
従って、一つの態様において、本発明は、C環及びD環を欠く2-メチレン-19-ノルビタミンD3類縁体を提供する。幾つかの態様において、本発明は、以下に示す構造を有する一般式1の化合物を提供する:
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R1は、炭素数8〜27であり、OY3基を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルキレン基であり;
Y1、Y2及びY3は、H又はヒドロキシ保護基から独立して選ばれる。)
【0014】
ある態様において、本発明は、以下に記載のような一般式1A、一般式1B、一般式1C又はそれらの混合物を有する化合物を提供する:
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、X1、X2、X3及びX4は、H及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びブチル基から独立して選ばれ;
Y1、Y2及びY3は、H又はヒドロキシ保護基から独立して選ばれ;
14位と20位の炭素原子は、一般式1A及び一般式1Bの化合物において、独立して、R又はS配位のいずれかであってもよく;
13位、14位、17位及び20位の炭素原子は、一般式1Cの化合物において、独立して、R又はS配位のいずれかであってもよい。)
【0017】
ある態様において、Y1及びY2は、共にヒドロキシ保護基、例えばシリル基である。あるそのような態様において、Y1及びY2は、共にt-ブチルジメチルシリル基である。ある態様において、Y3は、トリアルキルシリル基、例えばトリメチルシリル基又はトリメチルシリル基である。他の態様において、Y1、Y2及びY3は、化合物が以下に示す一般式1A1、1B1又は1C1を表すように、全てHである。あるそのような態様において、それぞれX1、X2、X3及びX4は、H又はメチル基から独立して選ばれる。
【0018】
【化4】

【0019】
ある態様において、一般式1A、1B及び1Cの化合物は、以下に示す一般式1A2、1B2又は1C2で表される:
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、X1、X2、X3及びX4は、H又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基から独立して選ばれ;
Y1、Y2及びY3は、H又はヒドロキシ保護基から独立して選ばれ;
14位の炭素原子は、一般式1A2及び一般式1B2の化合物において、R又はS配位のいずれかであってもよく;
13位、14位及び17位の炭素原子は、一般式1C2の化合物において、独立して、R又はS配位のいずれかであってもよい。)
【0022】
ある態様において、Y1、Y2及びY3のいずれかは、Hである。ある態様において、X1、X2、X3及びX4は、H又はメチル基から独立して選ばれる。
【0023】
ある態様において、本発明は、以下に示す一般式1C3で表される一般式1Cの化合物を提供する:
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、Y1、Y2及びY3は、H又はヒドロキシ-保護基から独立して選ばれる)。あるそのような態様において、Y1、Y2及びY3は、全てのヒドロキシ保護基、例えばシリル基である。あるそのような態様において、Y1及びY2は、t-ブチルジメチルシリル基であり、Y3は、トリアルキルシリル基、例えばトリエチルシリル基である。他の態様において、Y1、Y2及びY3は、化合物が以下に示す一般式1C4で表される化合物であるように、全てHである。
【0026】
【化7】

【0027】
ある態様において、いずれかの態様の化合物は、精製された形態で存在してもよい。他の態様において、組成物中の化合物は混合物として存在していてもよい。ある態様において、混合物は本発明の第一の化合物及び本発明の第二の化合物を含み、第一の化合物と第二の化合物の比は、50:50〜99.9:0.1である。あるそのような態様において、第一の化合物と第二の化合物の比は、70:30〜99.9:0.1、80:20〜99.9:0.1、90:10〜99.9:0.1又は95:5〜99.9:0.1である。
【0028】
前記化合物は、試験され、腸管カルシウム輸送活性、骨からカルシウムの動員活性、及びビタミンDレセプターへの結合活性に関して、望ましくかつかなり好都合な生物学的活性パターンを示すことが見い出された。従って、その化合物は、癌、皮膚状態及び自己免疫疾患の治療への使用が見い出されてもよい。従って、ある態様において、本発明の一つ以上の化合物を含むこれらの化合物又は医薬製剤は、癌、自己免疫疾患、皮膚状態及び二次性副甲状腺機能亢進症のような疾患又は症候の治療への治療剤として使用されてもよい。ある態様において、治療は経皮、経口又は非経口で行われてもよい。
【0029】
本発明の化合物は、免疫系の不均衡により特徴付けられる人の疾患、例えば自己免疫疾患、例えば多発性硬化症、真性糖尿病、移植片対宿主反応(host versus graft reaction)及び移植片の拒絶の治療及び予防;さらに、炎症性疾患、例えば慢性関節リウマチ及び喘息、及び骨折治療の改善及び骨移植の改善に特に適していてもよい。ざ瘡、脱毛症、皮膚状態、例えば乾燥性皮膚(皮膚水分の欠如)、過度な皮膚弛緩(不十分な皮膚堅さ)、不十分な皮脂分泌及び皺及び高血圧は、本発明の化合物で治療してもよい他の状態である。
【0030】
本明細書に記載の化合物は、試験され、また細胞分化活性を緩和することが見い出された。従って、これらの化合物は、また、乾癬の治療のための治療剤及び/又は、具体的には白血病、大腸癌、乳癌及び前立腺癌に対する抗癌剤として使用されてもよい。ある態様において、本発明の化合物及び組成物は、乾癬;白血病;大腸癌;乳癌;前立腺癌;多発性硬化症;狼瘡;真性糖尿病;移植片対宿主反応;臓器移植拒絶;慢性関節リウマチ、喘息、湿疹、又は炎症性腸疾患から選ばれる炎症性疾患;皺、適正な皮膚硬さの欠如、適正な皮膚水分の欠如又は不十分な皮脂分泌から選ばれる皮膚状態;又は二次性副甲状腺機能亢進症から選ばれる生物学的状態を治療するために使用される。
【0031】
本発明の方法のある態様において、化合物又は医薬組成物は、経口的、直腸的、非経口的、経皮的又は局所的に投与される。他の態様において、化合物又は医薬製剤は、インヘラー又はネブライザーを使用して達成されてもよいエアロゾルにおいて投与される。
【0032】
本発明の化合物は、本発明の化合物又は化合物の混合物を、医薬的に許容され得るキャリヤーとのコンビネーションにおいて含む医薬製剤又は医薬を製造するために使用してもよい。そのような医薬製剤及び医薬を使用して、様々な生物学的疾患、例えば本明細書に記載のものを治療してもよい。そのような疾患の治療方法は、一般的に、有効量の化合物、化合物を含む適正な量の医薬製剤又は医薬を、生物学的症候を患う患者に投与することを含む。本明細書に記載する場合の「被験者」は、動物への化合物の投与において、本発明の化合物の有益な作用を経験できるいずれかの動物をいう。ある態様において、被験者は哺乳類である。そのようなある態様において、哺乳類は、げっ歯類、霊長類、ウシ亜科、ウマ科、イヌ科、ネコ科、クマ科、ブタ、ウサギ又はモルモットから選ばれる。あるそのような態様において、哺乳類は、ラット又はマウスである。ある態様において、被験者は霊長類、例えば、ある態様においてはヒトである。ある態様において、化合物を使用して、グリコール化合物、例えばプロピレングリコールを含んでいてもよいエアロゾルを製造する。
【0033】
前記疾患及び症候を治療するために、化合物は、組成物中約0.01μg/gm〜約1mg/gm、好ましくは組成物中約0.1μg/gm〜約500μg/gmの量において存在してもよく、また、局所的、経皮的、経口的、直腸内又は非経口的に、約0.01μg/日〜約1mg/日、好ましくは約0.1μg/日〜約500μg/日で投与されてもよい。
【0034】
本発明のさらなる目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになると考えられる。
【0035】
(発明の詳細な説明)
一般的に、本発明は、C環及びD環を欠く1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3類縁体の化合物(デス-C,D化合物)、例えば2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3のデス-C,D類縁体、その化合物を含む医薬製剤、及び様々な疾患状態の治療用医薬の製造におけるこれら化合物又はそれらの混合物の使用を提供する。
【0036】
一つの態様において、本発明は、C環及びD環を欠く2-メチレン-19-ノルビタミンD3類縁体(デス-C,D-2-メチレン-19-ノルビタミンD3類縁体)、例えばデス-C,D-2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3類縁体を提供する。2-メチレン-19-ノルビタミンD3類縁体は、ビタミンDレセプターのアゴニストであり、2-メチレン-19-ノルビタミンD3 A環を少なくとも含む化合物を意味する。ある態様において、本発明は以下に示す構造を有する一般式1の化合物を提供する:
【0037】
【化8】

【0038】
(式中、R1は、炭素数8〜27でありOY3を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルキレン基であり;
Y1、Y2及びY3は、H又はヒドロキシ保護基から独立して選ばれる)。
【0039】
一般式1の化合物のある態様において、R1は、炭素数8〜20であり、OY3基を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルキレン基である。あるそのような態様において、アルキル基又はアルキレン基の炭素数は8〜11、8〜12又は8〜15である。
【0040】
ある態様において、本発明は以下に示すような一般式1A、一般式1B、一般式1Cで表される化合物又はそれらの混合物を提供する:
【0041】
【化9】

【0042】
(式中、X1、X2、X3及びX4は、H及び炭素数1〜4の直鎖及び分岐鎖のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びブチル基から独立して選ばれ;
Y1、Y2及びY3は、H又はヒドロキシ保護基から独立して選ばれ;
14位及び20位の炭素原子は、一般式1A及び一般式1Bの化合物において、独立して、R又はS配位のいずれかであってもよく;
13位、14位及び17位及び20位の炭素原子は、一般式1Cの化合物において、独立して、R又はS配位のいずれかであってもよい。)
【0043】
本明細書に使用する場合、「直鎖及び分岐鎖のアルキル基」は、炭素原子及び水素原子を含む基であって、単に、炭素-炭素単結合及び炭素-水素単結合を含むものをいう。従って、炭素数1〜4の「直鎖及び分岐鎖アルキル基」としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基及びブチル基のようなアルキル基が挙げられる。
【0044】
本明細書に使用する場合、用語「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ(-OH)官能基の一時的保護に一般的に使用されるいずれかの基、例えば、以下のものに限定されないが、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルシリル基又はアルキルアリールシリル基(以下、単に「シリル」基と呼ぶ)、及びアルコキシアルキル基を表す。アルコキシカルボニル保護基は、アルキル-O-CO-基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基又はアリルオキシカルボニル基である。用語「アシル」は、全ての異性型において、炭素数1〜6のアルカノイル基、又は炭素数1〜6のカルボキシアルカノイル基、例えば、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基又は芳香族アシル基、例えばベンゾイル基、又はハロ基、ニトロ基又はアルキル置換ベンゾイル基を表す。アルコキシアルキル保護基は、基、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基又はテトラヒドロフラニル基及びテトラヒドロピラニル基である。好ましいシリル保護基は、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ジブチルメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、ジフェニル-t-ブチルシリル基及び同様のアルキル化シリル基である。用語「アリール」は、具体的には、フェニル-、アルキル-、ニトロ-又はハロ-置換フェニル基である。ヒドロキシ官能性に関する保護基の広範囲リストは、Protective Groups in Organic Synthesis、Greene, T.W.;Wuts, P. G. M.、John Wiley & Sons、ニューヨーク、NY、(第3版、1999年)に見い出されてもよく、そこに記載の前駆体を使用して添加又は除去可能であり、それは本明細書に十分に示されているものとして、全体的に及び全ての目的に関して本明細書に参考文献として含まれるものとする。
【0045】
「保護ヒドロキシ」基は、ヒドロキシ官能基の一時的又は持続的な保護用に一般的に使用される前記基により誘導体化又は保護されるヒドロキシ基、例えば、前記のようなシリル基、アルコキシアルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基である。
【0046】
一般式1A、1B及び1Cのデス-C,D-19-ノル-ビタミンD化合物の製造は、二つの一般的な方法のいずれかを使用して達成可能である。第一の方法において、アルデヒド(IIa又はIIb)のアリルホスフィンオキシド(III)とのビッティッヒ-ホーナーカップリングが使用される。他の方法において、ジュリア(Julia)オレフィン化が行われ、それは、アルデヒドIIa又はIIbから容易に製造される不飽和スルホン(IVa又はIVb)のシクロヘキサノン誘導体Vとのカップリングを含む。化合物IIA、IIB、III、IVa、IVb及びVを以下に示した。その可変部分は一般式1A、1B及び1Cの化合物に関して前記と同様の意味を有し、波線は、シス及びトランス異性体の両方が一般式IIA及びIVAにおいて表されていることを示す:
【0047】
【化10】

【0048】
前記構造において、Arは、芳香族基、例えば、フェニル基、置換フェニル基、2-フェニルテトラゾリル基、2-ベンゾチアゾリル基、及びジュリアオレフィン化プロセスに適した他の芳香族基を表す。縮合反応に感受性であるか又は干渉するかも知れないAr中の官能性は避けられるべきであることは、当業者により認識されていると考えられる。ホスフィンオキシドIII及びシクロヘキサノンVにおいて、Y1及びY2は、好ましくは、ヒドロキシ保護基、例えばシリル保護基である。t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基は、特に有用なヒドロキシ保護基の例である。前記の一般的な方法は、ビタミンD化合物の製造に有効に適用された(例えば、Kittakaら、Synlett、8、1175(2003年)及びJ.Org.Chem.、68、7407(2003年))収束性の合成コンセプトの応用を表している。
【0049】
ホスフィンオキシドIII及びシクロヘキサノンVは、好都合な試薬であり、それらは、デス-C,D類縁体を含む多くの19-ノルビタミンD化合物を製造するために使用可能である。これらの化合物は、Sicinskiら、J. Med. Chem.、41、4662頁(1998年)、DeLucaら、米国特許第5,843,928号;Perlmanら、Tetrahedron Lett. 32、7663(1991年);及びDeLucaら、米国特許第5,086,191号に記載される方法により製造されてもよい。スキーム1は、米国特許第5,843,928号(本明細書に十分に示されているように参考文献として全体的に含まれるものとする)に概説されているようにホスフィンオキシドIII(スキーム1、化合物Hを参照されたい)及びシクロヘキサノンV(スキーム1、化合物Dを参照されたい)の一般的な合成方法を示している。スキーム1に示す方法の変更は、当業者に自明なように、多くのビタミンD類縁体を製造するために行われてもよい。例えば、広範囲のホスホニウム化合物は、ケトンBからアルケンCに変換するために使用されるMePh3P+Br-の代わりに使用されてもよい。そのような化合物の例としては、EtPh3P+Br-、PrPh3P+Br-、及びトリフェニルホスフィンとアルキルハロゲン化物、アルケニルハロゲン化物、保護ヒドロキシアルキルハロゲン化物及び保護ヒドロキシアルケニルハロゲン化物との反応により一般的に製造される化合物が挙げられる。この方法を使用して製造されるアルケンは、その後、スキーム1中のホスフィンオキシドHを製造するために使用されるものと同様の方法において、ホスフィンオキシドの製造中に保持されてもよい。或いは、スキーム1の化合物Cと同様のアルケンを(Ph3P)3RhCl及びH2で還元し、他のビタミンD類縁体を提供してもよい。米国特許第5,945,410号及びSicinski, R. R.ら、J. Med. Chem.、41、4662〜4674頁(1998年)を参照されたく、それらは共に、全体的に及び全ての目的に関して参考文献として本明細書に含まれるものとする。従って、スキーム1に示すホスフィンオキシドの形成方法を使用して、本発明の化合物の他に、多様なビタミンD類縁体を製造してもよい。
【0050】
一般式1A、1B及び1Cの化合物及び特に2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-デス-C,D-19-ノルビタミンD3の製造の詳細な説明のために、スキーム1、2及び3の他に以下の記載を参考にすべきである。
【0051】
【化11】

【0052】
実施例
様々な19-ノルビタミンD類縁体の合成及び特性は、多くの米国特許、例えば米国特許第5,843,928号、米国特許第6,627,622号、米国特許6,579,861号、米国特許第5,086,191号、米国特許第5,585,369号及び米国特許第6,537,981号に記載されている。前記の各文献は、本明細書に十分に記載されているものとして、全体的にかつ全ての目的に関して、本明細書に参考文献として含まれるものとする。
【0053】
融点(訂正されていないもの)をトーマス-フーバーキャピラリー融点装置を使用して測定した。紫外(UV)吸収スペクトルを、Perkin-Elmer Lamba 3B UV-VISスペクトロフォトメーターでエタノール中で記録した。1H核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、CDCl3中、Bruker Instruments DMX-400及びDMX-500 Avanceコンソールスペクトロメーターを使用して、400及び500MHzで記録した。13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、CDCl3中、Bruker InstrumentsDMX-500 Avanceコンソールスペクトロメーターで、125MHzで記録した。化学シフト(δ)を内部Me4Si(δ0.00)からダウンフィールドで記録した。電子衝撃(EI)質量スペクトルを、Micromass Auto Spec(ベバリー、マサチューセッツ)計器で得た。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を、モデル6000A溶媒運搬システム、モデルU6Kユニバーサルインジェクター、及びモデル486チューナブル光吸収検出器を備えたWaters Associates液体クロマトグラフで行った。THFは、アルゴン下、ベンゾフェノンケチルナトリウムからの使用前に新たに蒸留した。
スキーム1、2及び3は、以下の詳細な合成方法を概説している。
【0054】
2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-デス-C,D-19-ノルビタミンD3類縁体19の製造
A. エステル1の3-ヒドロキシ基の保護(スキーム2)
(2R)-3-ベンジルオキシメトキシ-2-メチル-プロピオン酸メチルエステル(2)
無水CH2CH2(30mL)中にR-(-)-メチル-3-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネート1(4mL、4.26g、0.036モル)を含む溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(11.8mL、8.75g、0.06モル)を室温で加えた。その混合物を-78℃に冷却し、ベンジルクロロメチルエーテル(5.6mL、6.29g、0.04モル)をカニューレを介して滴下して加えた。冷却浴を除去し、反応混合物を室温で16時間攪拌した。テトラブチルアンモニウムヨウ化物(50mg)及びベンジルクロロメチルエーテル(2mL、3.15g、0.02モル)を、その後反応混合物に加えた。その混合物を室温で3時間攪拌し、水に注ぎ、塩化メチレンで抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を溶出液としてのヘキサン/EtOAc(9:1)を使用してシリカゲル上でクロマトグラフ化し、生成物2(8.29g、97%)を無色油状物として得た。
【0055】
2:[α]24D-3°(c 0.17, CHCl3);1H NMR(500MHz, CDCl3)δ1.19(3H, d, J=7.1Hz, CH-CH3)、2.77(1H, m, CH-CH3)、3.64(1H, dd, J=9.4, 5.4Hz, CH2-CHの一つ)、3.70(3H, s, CH3O)、3.78(1H, dd, J=9.4, 7.8Hz, CH2-CHの一つ)、4.57(2H, s, OCH2O)、4.74(2H, s, CH2Ph)、7.29(1H, m, Ar-Hpara)、7.35(4H, m, Ar-Hortho,meta);13C NMR(125MHz)δ13.91(CH3)、39.99(CH-CH3)、51.70(CH3O)、69.22及び69.60(CH2CH及びCH2-Ph)、94.50(OCH2O)、127.63、127.84及び128.33(Arortho,meta,para)、137.61(Aripso);MS(EI)m/z(相対強度)no M+、207(M+-OCH3, 2)、131(34)、120(64)、91(100);HRMS(ESI) C13H18O4Na(M++Na)に関して計算した正確な質量261.1103、測定値261.1110。
【0056】
B. エステル2の還元
(2R)-3-ベンジルオキシメトキシ-2-メチル-プロパン-1-オール(3)
無水THF(4mL)中にエステル2(0.5g、2.1mmol)を含む溶液を、無水THF(10mL)中にリチウムアルミニウムヒドリド(0.16g、4.2mmol)を含む懸濁液に0℃で滴下して加えた。冷却浴を除去し、反応物を室温で一晩攪拌し、冷水でクエンチし、EtOAcで抽出した。溶媒を真空下で除去し、粗油を、溶出液としてヘキサン/EtOAc(8:2)を使用したシリカゲルクロマトグラフィにより精製し、油状ジオール3(0.29g、66%)を得た。
【0057】
3:[α]24D-3°(c 0.17, CHCl3););1H NMR(500MHz, CDCl3)δ0.92(3H, d, J=7.1 Hz, CH-CH3)、2.02(1H, m, CH-CH3)、2.39(1H, s, OH)、3.54(1H, dd, J=9.4, 7.6Hz CH2-CHの一つ)、3.60(d, J=9.4 Hz, CH2OH)、3.65(1H, dd, J=9.4, 4.8Hz, CH2-CHの一つ)、4.6(2H, s, OCH2O)、4.75(2H, s, CH2Ph)、7.30(1H, m, Ar-Hパラ)、7.35(4H, d, J=4.3 Hz, Ar-Hオルト,メタ); 13C NMR(125MHz) δ13.61(CH3)、35.62(CH-CH3)、67.19(CH2OH)、69.58(CH2CH)、72.38(CH2-Ph)、94.79(OCH2O)、127.82、127.90及び128.49(Arオルト,メタ,パラ)、137.58(Aripso);MS (EI) m/z(相対強度)no M+、180(8)、120(100)、108(95)、89(72);HRMS(ESI) C12H18O3Na(M++Na)に関して計算した正確な質量233.1154、測定値233.1158。
【0058】
C. ヒドロキシ化合物3のトシル化
(R)-トルエン-4-スルホン酸 3-ベンジルオキシメトキシ-2-メチル-プロピルエステル(4)
無水CH2Cl2(60mL)中にジオール3(29.2mmol、6.13g)、DMAP(0.82mmol、100mg)及びトリエチルアミン(116.7mmol、16.2mL、11.8g)を含む混合物に、塩化トシル(37.9mmol、7.23g)を0℃で加えた。反応混合物を室温に温め、一晩攪拌し続けた。その後、その混合物をCH2Cl2(100mL)で希釈し、その後NaHCO3の飽和水溶液で洗い、Na2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。ヘキサン/EtOAc(7:3)を溶出液として使用して、残渣をシリカゲル上でクロマトグラフ化し、油状トシレート4(10.2g、97%)を得た。
【0059】
4:[α]24D-5°(c 0.15, CHCl3); 1H NMR(500Hz, CDCl3)δ0.94(3H, d, J=7.1Hz, CH-CH3)、2.09(1H, m, CH-CH3)、2.42(3H, s, CH3Ph)、3.42(1H, dd, J=9.4, 6.6Hz, CH2-CHの一つ)、3.47(1H, dd, J=9.4, 5.1Hz, CH2-CHの一つ)、3.97(1H, dd, J=9.4, 5.8Hz, CH2-OTsの一つ)、4.03(1H, dd, J=9.4, 5.8Hz, CH2-OTsの一つ)、4.51(2H, s, OCH2O)、4.65(2H, s, CH2Ph)、7.30(7H, br m, Ar-H)、7.78(2H, d, J=8.2Hz, トシル由来のAr-Hオルト);13C NMR(125MHz)δ13.58(CH3)、21.60 (Ph-CH3)、33.45(CH-CH3)、68.61(CH2CH)、69.27(CH2OTs)、71.96(CH2-Ph)、94.56(OCH2O)、127.68、127.82、128.36、129.75、132.6、137.58及び144.66(Ar); MS (EI)m/z(相対強度) no M+、257(M+-OCH2Ph, 65)、245(55)、227(81)、86(100);HRMS(ESI)C19H24O5SNaに関して計算した正確な質量(M++Na)387.1242、測定値387.1252。
【0060】
D. トシレート4のグリニャール試薬との反応
(S)-1-ベンジルオキシメトキシ-2,6-ジメチル-ヘプト-5-エン(5)
4-クロロ-2-メチル-2-ブタン(15.5mL、14.4g、137.5mmol)を、無水THF(465mL)中の攪拌マグネシウムターニング(6.75g、225mmol)に、アルゴン下、0℃で滴下して加えた。攪拌を0℃で1時間続けた。冷却浴を除去し、混合物を室温でさらに1.5時間攪拌した。その後、混合物を-78℃に冷却し、形成したグリニャール試薬をカニューレを介して、無水THF(70mL)中のトシレート4(10g、27.5mmol)の溶液に加えた。Li2CuCl4(160mL)[LiCl(1.36g、32.1mmol)及びCuCl2(2.17g、16.1mmol)から予め製造したもの]を、その後反応混合物に加えた。冷却浴を除去し、その反応物を室温で17時間攪拌した。その混合物をCH2Cl2で抽出し、有機層をNH4Cl及びNaHCO3で洗い、Na2SO4で乾燥し、蒸発させた。ヘキサン/EtOAc(7:3)を溶出液として使用して残渣をシリカゲル上でクロマトグラフ化し、油状生成物5を得た(5.65g、78%)。
【0061】
5:[α]24D+2°(c0.24, CHCl3);1H NMR(400Hz, CDCl3)、δ0.94(3H, d, J=6.6Hz, CH-CH3)、1.18及び1.46(1H及び1H、各m)、1.60及び1.68[3H及び3H、各s、=C(CH3)2]、1.87(1H, m, CH-CH3)、2.05(2H, m, =CCH2)、3.37(1H, dd, J=9.4, 6.8Hz, CH2-CHの一つ)、3.44(1H, dd, J=9.4, 5.8Hz, CH2-CHの一つ)、4.60(2H, s, OCH2O)、4.76(2H, s, CH2Ph)、5.10(1H, br t, J〜7 Hz, CH=C)、7.30(1H, m, Ar-Hパラ)、7.34(4H, m, Ar-Hオルト,メタ);13C NMR(125MHz) δ16.96 (CH-CH3)、17.53(CH3C=の一つ)、25.60(CH3C=の一つ)、32.92(CH-CH3)、33.57(CH2CH2CH)、69.27(CH2-Ph)、73.37(CH2CH)、94.64(OCH2O)、124.49(C-CH3)、127.52、127.77、128.28、(Arオルト,メタ,パラ)、137.95[=C(CH3)2]; MS(EI) m/z (相対強度) 262(M+, 22)、232.2 (65)、154.1(100); HRMS (ESI)C17H26O2Na(M++Na)に関して計算した正確な質量285.1830、計算値285.1837。
【0062】
E. オレフィン5のエポキシ化
(2S)-1-ベンジルオキシメトキシ-2,6-ジメチル-5,6-エポキシ-ヘプタン(6)
オレフィン5(3.2g、12.2mmol)を無水CH2Cl2(60mL)に溶解し、NaHCO3(1.6g、18.4mmol)を加えた。その後、3-クロロペルオキシ安息香酸(60%、12.8g、36.6mmol)を、攪拌しながら室温で加えた。攪拌を24時間続け、混合物をエーテルで希釈し、水及び2M NaOHと振盪した。有機層を水及び飽和NH4Clで洗い、Na2SO4で乾燥し、蒸発させた。ヘキサン/EtOAc(9:1)を溶出液として使用して残渣をシリカゲル上でクロマトグラフ化し、油状生成物6を得た(2.5g、74%)。
【0063】
6:[α]24D-1.7°(c 0.88, CHCl3);1H NMR(500Hz, CDCl3) δ0.96(3H, d, J=6.7Hz, CH-CH3)、1.25(1H, m)、1.27及び1.31[3H及び3H、各s、C(CH3)2]、1.5-1.7(3H, br m)、1.79(1H, m, CH-CH3)、2.73(1H, m, CH2CHO)、3.45(2H, br m, CH2-CH)、4.60(2H, s, OCH2O)、4.76(2H, s, CH2Ph)、7.29(1H, m, Ar-Hパラ)、7.34(4H, d, J=4.3Hz, Ar-Hオルト,メタ)。
【0064】
F. エポキシド6の還元
(S)-7-ベンジルオキシメトキシ-2,6-ジメチル-ヘプタン-2-オール(7)
0℃で無水エーテル(75mL)中にエポキシド6(2.5g、9mmol)を含む溶液に、リチウムアルミニウムヒドリド(1.7g、67.5mmol)を加えた。冷却浴を除去し、反応物を室温で一晩攪拌した。反応物をその後、冷水及び水性NH4Clでクエンチし、CH2Cl2で抽出した。溶媒を減圧下で除去し、ヘキサン/EtOAc(9:1)を溶出液として使用してシリカゲル上で粗油をクロマトグラフ化し、油状アルコール7を得た(2g、80%)。
【0065】
7:[α]24D-4°(c 0.19, CHCl3);1H NMR(200Hz, CDCl3) δ0.94(3H, d, J=6.5Hz, CH-CH3)、1.20[6H, s, (CH3)2COH]、1.75(1H, m, CH-CH3)、3.38(1H, dd, J=10.8, 6.6Hz, CH2-CHの一つ)、3.46(1H, dd, J=10.8, 6.0Hz, CH2-CHの一つ)、4.60(2H, s, OCH2O)、4.76(2H, s, CH2Ph)、約7.3(5H, m, Ar-H);HRMS(ESI) C17H28O3Na(M+ + Na)に関して計算した正確な質量303.1936、測定値303.1947。
【0066】
G. BOM保護基の除去
2,6-ジメチル-ヘプタン-1,6-ジオール(8)
酢酸エチル(20mL)中にアルコール7(1.8g、0.01モル)を含む溶液に、Pd/C(10%、100mg)を、室温で加えた。反応混合物を5日間攪拌し、Pd/C(150mg)を1日当り3回加えた。その後、反応物をろ過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。溶出液としてヘキサン/EtOAc(1:1)を使用してシリカゲル上で粗油をクロマトグラフ化し、油状ジオール8を得た(0.95g、92%)。
【0067】
8:[α]24D+11°(c 1.28, CHCl3);1H NMR(200Hz, CDCl3) δ0.93(3H, d, J=6.6Hz, CH-CH3)、1.20[6H, s, (CH3)2COH]、1.65(1H, m, CH-CH3)、3.45(2H, br m, CH2-CH);13C NMR(50MHz) δ16.63(CH-CH3)、21.64(CH2-CH2-CH2)、29.19[C(CH3)]、29.29[C(CH3)]、33.62(CH-CH2-CH2)、35.68(CH-CH3)、44.03(CH2COH)、68.19(CH2OH)、71.16[C(CH3)2];MS(ES) 183(M++Na);HRMS(ESI) C9H20O2Na(M++Na)に関して計算した正確な質量183.1361、測定値183.1351。
【0068】
H. ジオール8の酸化
(S)-6-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-ヘプタナール(9)
ピリジウムジクロメート(1.5g、3.75mmol)を、CH2Cl2(5mL)中にジオール8(110mg、0.69mmol)及びピリジウムp-トルエンスルホネート(33mg、0.11mmol)を含む攪拌溶液に加えた。得られたサスペンジョンを4時間室温で、アルゴン下で攪拌した。その後、反応物をセライトを通してろ過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。溶出液としてヘキサン/EtOAc(9:1)を使用して、残渣をシリカゲル上でクロマトグラフ化し、油状アルデヒド9(65mg、60%)を得た。
【0069】
9:[α]24D-10.5°(c 1.1, CHCl3);1H NMR(400Hz, CDCl3) δ1.06(3H, d, J=7.0Hz, CH-CH3)、1.21[6H, s, (CH3)2COH]、2.37(1H, m, CH-CH3)、9.62(1 H, d, J=1.9Hz, CHO);13C NMR(25MHz) δ13.33(CH-CH3)、21.70(CH2-CH2-CH2)、29.21[C(CH3)2]、30.89(CH-CH2)、43.70(CH2COH)、46.30(CHCH3)、71.16[C(CH3)2]、205.25(CHO)。
【0070】
I. ヒドロキシアルデヒド9のシリル化
(2)-2,6-ジメチル-6-トリエチルシラニルオキシ-ヘプタナール(10)
【0071】
無水CH2Cl2(3.7mL)中にアルデヒド9(93.4mg、0.6mmol)及び2,6-ルチジン(170μL、1.5mmol)を含む溶液に、Et3SiOTf(161μL、0.72mmol)を、0℃、アルゴン下で滴下して加えた。その溶液を10℃で3時間、その後室温で30分間攪拌した。その混合物を冷水でクエンチし、CH2Cl2で抽出した。溶媒を減圧下で除去し、溶出液としてヘキサン/EtOAc(99.7:0.3)を使用して、シリカSep-Pakカートリッジ上で残渣をクロマトグラフ化し、油状アルデヒド10(130mg、81%)を得た。
【0072】
10:[α]24D+4.2°(c 1.75, CHCl3); 1H NMR(500Hz, CDCl3) δ0.56(6H, q, J=7.8Hz, 3×SiCH2)、0.94(9H, t, J=7.8Hz, 3×SiCH2CH3)、1.10(3H, d, J=6.8Hz, CH-CH3)、1.19[6H, s, (CH3)2CO]、2.37(1H,d sext, J=1.9, 6.8Hz, CH-CHO)、9.62(1H, d, J=1.95 Hz, CHO)。
【0073】
J. アルデヒド10のヴィティヒ反応
(Z)-(S)-1-(t-ブチル-ジメチル-シラニルオキシ)-5,9-ジメチル-9-トリエチルシラニルオキシ-デセ(dec)-3-エン(12)
無水THF(12mL)中にホスホニウムブロミド11(275mg,0.54mmol)を含む溶液に、n-BuLi(シクロヘキサン中2M、270μL、0.54mmol)を-20℃で滴下して加えた。-20℃での攪拌の15分後、反応物を-50℃に冷却し、形成したヴィティヒ試薬のオレンジ色溶液の2/3を、無水THF(2mL)中にアルデヒド10(50mg、0.18mmol)を含む攪拌溶液にカニューレを通して加えた。-50℃での攪拌の1時間後、鹹水及び1M HClを加え、混合物をEtOAcで抽出した。有機層を水で洗い、蒸発させた。ヘキサン/EtOAc(98.5:1.5)で溶出したシリカSep-Pakカートリッジ上で残渣をクロマトグラフ化し、油状化合物12を得た(59.3mg、75%)。
【0074】
12:[α]24D-5.5°(c 0.48, CHCl3); 1H NMR(500Hz, CDCl3) δ0.058(6H, s, 2×CH3Si)、0.55(6H, q, J=7.8Hz, 3×SiCH2)、0.89[9H, s, (CH3)3C]、0.93(3H, d, J=6.8Hz, CH3CH)、0.94(9H, t, J=7.8Hz, 3×SiCH2CH3)、2.27(2H, m, CH2CH=)、2.42(1H, m, CH-CH3)、3.59(2H, m, OCH2)、5.20(dd, J=10.8, 9.7 Hz, =CH-CHCH3)、5.29(1H, dt, J=10.8, 7.4Hz, CH2CH=CH);13C NMR(125MHz) δ-5.28 [SiCH3]、6.75(SiCH2)、7.10(CH3CH2Si)、18.37 [SiC(CH3)3]、21.29 [SiC(CH3)3]、22.32 (CH2-CH2-CH2)、25.95 (CH-CH3)、29.80及び29.89 [C(CH3)2]、31.41 (CH2CH=)、31.90 (CH-CH3)、38.06 (CH-CH2-CH2)、45.20 (CH2CO)、63.23(CH2O)、73.23 [C(CH3)2]、123.82 (CH2-CH=)、138.34 (=CHCH); MS (ES) 451 (M++Na); HRMS(ES) C24H52O2Si2Na (M++Na)に関して計算した正確な質量451.3404、測定値451.3414。
【0075】
K. ジエーテル12におけるシリル保護基の加水分解(スキーム3)
(3Z)-(5S)-5,9-ジメチル-デセ-3-エン-1,9-ジオール(13)
無水CH2Cl2(10mL)中に化合物12(201mg、0.4mmol)を含む攪拌溶液に、フッ化水素酸(48%、6mL)を加えた。室温での攪拌の40分後、水を加え、有機層を分離し、水及びNaHCO3で洗い、MgSO4で乾燥し、蒸発させた。溶出液としてヘキサン/EtOAc(6:4)を使用してシリカSep-Pakカートリッジ上で残渣をクロマトグラフ化し、油状ジオール13を得た(76.4mg、92%)。
【0076】
13:1H NMR(500Hz, CDCl3) δ0.95(3H, d, J=6.7Hz, CH3CH)、1.19及び1.20[3H及び3H、各s、C(CH3)2]、2.33(2H, m, CH2CH=)、2.48(1H, br m, CH-CH3)、3.64(2H, t, J=6.4 Hz, CH2OH)、5.31(2H, m, CH=CH);13C NMR(50MHz) δ21.63(CH-CH3)、22.26(CH2-CH2-CH2)、29.25及び29.60[C(CH3)3]、31.27(CH2CH=)、31.87(CH-CH3)、37.96(CH-CH2-CH2)、44.00(CH2CO)、62.55(CH2OH)、71.29[C(CH3)2]、124.09(CH2-CH=)、139.70(=CHCH)。
【0077】
L. 不飽和ジオール13の水素化
(5R)-5,9-ジメチル-デカン-1,9-ジオール(14)
酢酸エチル(10mL)中にジオール13(55mg、0.27mmol)を含む溶液に、Pd/C(10%、50mg)を加えた。反応混合物を水素の連続ストリーム下、室温で18時間攪拌した。その混合物をその後ろ過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗油状生成物を、ヘキサン/EtOAc(8:2)で溶出したシリカSep-Pakカートリッジ上でクロマトグラフ化し、油状ジオール14を得た(55mg、45%)。
【0078】
14:[α]24D-5.9°(c 0.27, CHCl3)、1H NMR(200Hz, CDCl3) δ0.87(3H, d, J=6.4Hz, CH-CH3)、1.21[6H, s, C(CH3)2]、1.56(1H, br m, CH-CH3)、3.64(2H, t, J=6.4Hz, CH2OH);13C NMR(50MHz) δ19.61(CH-H3)、21.75(CH2)、23.22(CH2)、29.24及び29.29[C(CH3)3]、32.75(CH-CH3)、33.10(CH2)、36.76(CH2)、37.48(CH2)、44.22(CH2CO)、63.07(CH2OH)、71.11[C(CH3)2]; MS(ES)225 (M++Na); HRMS(ES) C12H24O2Na(M++Na)に関して計算した正確な質量225.1831、測定値225.1823
【0079】
M. ジオール14の酸化
9-ヒドロキシ-5,9-ジメチル-デカナール(15)
無水CH2Cl2(3.5mL)中にジオール14(25mg、0.12mmol)を含む攪拌溶液に、Dess-Martin試薬(73mg、0.15mmol)を室温で加えた。その反応物を室温で1.5時間攪拌した。その後、チオ硫酸ナトリウム(6mL)及び飽和NaHCO3(6mL)を含む水溶液を加えた。反応物をCH2Cl2で抽出し、溶媒を減圧下で除去し、溶出液としてヘキサン/EtOAc(7:3)を使用してシリカSep-Pak上で粗油を精製し、油状アルデヒド15を得た(16.5mg、67%)。
【0080】
15:1H NMR(200Hz, CDCl3) δ0.88 (3H, d, J=6.4Hz, CH-CH3)、1.21[6H, s, C(CH3)2]、2.41(2H, dt, J=1.7, 7.3Hz, CH2CHO)、9.77(1H, t, J=1.7Hz, CHO)。
【0081】
N. ヒドロキシアルデヒド15のシリル化
5,9-ジメチル-9-トリエチルシラニルオキシ-デカナール(16)
無水CH2Cl2(1.1mL)中にアルデヒド15(16.5mg、82.5μmol)及び2,6-ルチジン(24μL、206μmol)を含む溶液に、Et3SiOTf(42μL、165μmol)を-78℃で滴下して加えた。その混合物を-78℃で2時間、-50℃でさらに1時間攪拌した。水及びCH2Cl2を加え、有機層を水で洗い、MgSO4で乾燥し、蒸発させた。溶出液としてヘキサン/EtOAc(99.7:0.3)を使用してシリカSep-Pakカートリッジ上で残渣をクロマトグラフ化し、油状アルデヒド16(22mg、85%)を得た。ヘキサン/EtOAc(98:2)溶媒系のHPLC(10mm×25cm Zorbax-Silカラム、4mL/分)を使用して分析サンプルを得た。分析的に純粋なアルデヒド16をRV=33mLで回収した。
【0082】
16:1H NMR(500Hz, CDCl3) δ0.55(6H, q, J=7.9Hz, 3×SiCH2CH3)、0.88(3H, d, J=6.4Hz, CH-CH3)、0.94(9H, t, J=7.9Hz, 3×SiCH2CH3)、1.19[6H, s, C(CH3)2]、2.41(2H, m, CH2CHO)、9.77(1H, t, J=1.8Hz, CHO)。
【0083】
O. アルデヒド16のヴィティヒ-ホーナー反応
(1R,3R,7'R)-1,3-ビス-(tert-ブチル-ジメチル-シラノキシ)-5-(7',11'-ジメチル-11'-トリエチルシラニルオキシ-ドデセ-2'-エニリデン)-2-メチレン-シクロヘキサン(18)
【0084】
-78℃で無水THF(0.6mL)中にホスフィンオキシド17(45.7mg、78.5μmol)を含む溶液に、n-BuLi(51μL、81.8μmol)を、アルゴン下、攪拌しながらゆっくりと加えた。その溶液は添加により不解オレンジ色に変わった。攪拌を-78℃で20分間続け、その後、無水THF(100μL)中にアルデヒド16(22mg、70μmol)を含む予冷した溶液をゆっくりと加えた。その混合物を-78℃で3時間、6℃で16時間攪拌した。EtOAc、飽和NaHCO3及び鹹水をその後、反応容器に加えた。有機層を水で洗い、乾燥し、減圧下で蒸発させた。残渣をヘキサンに溶解し、溶出液としてヘキサン/EtOAc(99.8:0.2)を使用して、シリカSep-Pakカートリッジに施し、粗保護ビタミン18を得た。その後、ヘキサン/EtOAc(99.9:0.1)溶媒系を使用して、HPLC(10mm×25cm Zorbax-Silカラム、4mL/分)により精製した。分析的に純粋なビタミンD化合物18(21.2mg、45%)をRV=18mLで回収した。
【0085】
18:UV(ヘキサン) λmax235.0(ε15 900)、242.0(ε24 800)、250.0(ε22 600)nm; 1H NMR(500Hz, CDCl3) δ0.04、0.05、0.07及び0.08(各3H、各s、4×SiCH3)、0.57(6H, q, J=7.9 Hz, 3×SiCH2CH3)、0.86(3H, d, J=7.4Hz, CH-CH3)、0.87及び0.90[9H及び9H、各s、2×(CH3)3CSi]、0.95(9H, t, J=7.9Hz, 3×SiCH2CH3)、1.19[6H, s, C(CH3)2]、2.07(2H, m, 4'-H2)、2.15(1H, dd, J=12.5, 8.1Hz)、2.35-2.5(3H, br m)、4.43(2H, m, 1-及び3-H)、4.94及び4.95(1H及び1H、各s、C=CH2); 5.63(1H, dt, J=15.0, 6.9Hz, 3'-H)、5.90(1H, d, J=10.9Hz, 1'-H)、6.24(1H, dd, J=15.0, 10.9Hz, 2'-H); MS(EI) m/z(相対強度)678 (M+, 10), 649(M+ -Et, 5)、621(M+ -tBu, 12)、546(12)、73(100);HRMS(ESI) C39H78O3Si3に関して計算した正確な質量678.5259、測定値678.5272。
【0086】
P. 18の保護基の除去
(1R,3R,7'R)-5-(11-ヒドロキシ-7,11-ジメチル-ドデセ(dodec)-2-エニリデン)-2-メチレン-シクロヘキサン-1,3-ジオール(19)
無水THF(3mL)中に18(21.2mg、31.2μmol)を含む攪拌溶液に、テトラブチルアンモニウムフルオライド(THF中1M、370μL、0.37mmol)を加えた。得られた混合物を18時間室温で攪拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣をヘキサン/EtOAc(9:1)に溶解し、シリカSep-Pakに施した。ヘキサン/EtOAc(1:1)での溶出により粗生成物19を得た。ヘキサン/2-プロパノール(8:2)溶媒系を使用して、HPLC(10mm×25cm Zorbax-Silカラム、4mL/分)によりそのビタミンをさらに精製した。分析的に純粋なビタミンD化合物19(6.9mg、66%)を、RV=21mLで回収した。
【0087】
19:UV(ヘキサン)λmax234.0(ε27 800)、241.0(ε30 200)、248.5(sh, ε19 900)nm; 1H NMR(400Hz, CDCl3)δ0.86(3H, d, J=6.5Hz, CH-CH3)、1.21[6H, s, C(CH3)2]、2.08(2H, q, J=6.9Hz, 4'-H2)、2.26(1H, dd, J=13.1, 7.1Hz)、2.39(1H, dd, J=13.4, 7.2Hz)、2.56(1H, dd, J=13.5, 4.2Hz)、2.70(1H, dd, J=13.3, 4.3Hz)、4.48(2H, m, 1-及び3-H)、5.10(2H, s, C=CH2);5.70(1H, dt, J=15.0, 6.9Hz, 3'-H)、6.03(1H, d, J=10.8Hz, 1'-H)、6.29(1H, dd, J=15.0, 10.8Hz, 2'-H); MS(EI)m/z(相対強度) no M+、318(M+-H2O, 19)、300(8)、285(4)、59(100); HRMS(ESI)C21H34O2(M+-H2O)に関して計算した正確な質量318.2559、測定値318.2570。
【0088】
【化12】

【0089】
【化13】

【0090】
生物学的活性
ビタミンDレセプター結合
試験材料
プロテイン源
【0091】
完全長の組換えラットレセプターを、E. coli BL21(DE3) Codon Plus RIL細胞に発現させ、二つの異なるカラムクロマトグラフィ系を使用して均一になるように精製した。第一の系は、このタンパクのC-末端ヒスチジンを利用するニッケルアフィニティ樹脂であった。この樹脂から溶出されたタンパクを、さらに、イオン交換クロマトグラフィーを使用して精製した(S-Sepharose Fast Flow))。精製タンパクのアリコートを液体窒素中で素早く凍結させ、使用するまで-80℃で貯蔵した。結合アッセイでの使用のため、そのタンパクをTEDK50(50mM トリス、1.5mM EDTA、pH 7.4、5mM DTT、150mM KCl)に0.1%Chaps 清浄剤で希釈した。添加した放射ラベルリガンドの20%以下がレセプターに結合するように、レセプタータンパク及びリガンドの濃度を最適化した。
【0092】
試験薬
非標識リガンドをエタノールに溶解し、UV分光光度計を使用して濃度を測定した((1,25(OH)2D3:モル吸光度計数=18,200及びλmax=265nm)。放射標識リガンド(3H-1,25(OH)2D3〜159 Ci/mmol)をエタノールに、最終濃度1nMで添加した。
【0093】
分析条件
放射標識及び非標識リガンドを、最終エタノール濃度10%で100mcl希釈タンパクに添加し、混合し、結合平衡に達するまで、氷上で一晩インキュベートした。次の日、100mclヒドロキシルアパタイトスラリー(50%)を各チューブに加え、10分間インターバルで30分間混合した。ヒドロキシルアパタイトを、遠心分離により回収し、その後、0.5%Titron X-100を含むトリス-EDTAバッファー(50mMトリス、1.5mM EDTA、pH 7.4)で三回洗った。最終洗浄後、ペレットを、Biosafe IIシンチレーションカクテル4mLを含むシンチレーションバイアルに移し、混合し、シンチレーションカウンターに置いた。全結合を、放射標識リガンドのみを含むチューブから測定した。
【0094】
HL-60 分化
試験材料
試験薬
試験薬をエタノールに溶解し、UV分光光度計を使用して濃度を測定した。細胞培養物に存在するエタノールの最終濃度(0.2%)を変化させずに薬物濃度範囲を試験できるように、段階希釈を調製した。
【0095】
細胞
ヒト前骨髄球性白血病(HL60)細胞を、10%ウシ胎児血清を含有するRPMI-1640倍地中で成長させた。細胞を5%CO2の存在下、37℃でインキュベートした。
【0096】
分析条件
HL60細胞を、1.2×105細胞/mLでプレーティングした。プレーティングの18時間後、複製の細胞を薬物で処理した。4日後、細胞を収集し、ニトロブルーテトラゾリウムリダクション分析を行った((Collinsら、1979年; J. Exp. Med. 149:969〜974頁)。全200細胞を計数し、細胞内ブラック-ブルーホルマザン堆積物を含む数を記録することにより、分化した細胞の割合を測定した。単球への分化の立証は、食細胞活性を計測することにより行った。
【0097】
インビトロ転写分析
転写活性は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の24-ヒドロキシラーゼ(24Ohase)遺伝子プロモーターアップストリームで安定的に軽質移入されるROS 17/2.8(骨)細胞において測定した(Arbourら、1998)。細胞は、投与範囲を示した。投与16時間後、細胞を収集し、ルシフェラーゼ活性を、照度計を使用して測定した。RLU=相対的ルシフェラーゼ単位。
1,25(OH)2D3と当該化合物のコンビネーションを加えることにより、最終エタノール濃度を同じに維持する同じ穴において、拮抗性を試験した。
【0098】
腸管カルシウム輸送及び骨カルシウム動員
雄性離乳児Sprague-Dawleyラットを、食餌11(Sudaら、J. Nutr.100:1049,1970年)(0.47% Ca)食餌+ビタミンAEKに1週間、その後食餌11(0.02%Ca)+AEKに3週間置いた。その後、ラットを、0.47%Caを含む食餌に1週間、0.02%Caを含む食餌に2週間に置き変えた。0.02%Ca食餌の最終週の間に、用量投与を開始した。4回の連続的なip投与は、約24時間離して行った。最終投与24時間後、血液を切断した(severed)首から採取し、骨カルシウム動員の測定のために血清カルシウム濃度を測定した。腸の第一の10cmを、腸管カルシウム輸送分析のために、反転小腸嚢法を使用して収集した。1,25(OH)2D3と化合物のコンビネーションを同時に動物に与えることにより、拮抗性を試験した。
【0099】
本発明の化合物を調製し、上記方法の使用を検討した。この化合物は、腸管カルシウム輸送活性に対する生物活性のパターン、骨からのカルシウム動員能力、及びビタミンD受容体への結合能力の所望かつ高い有利性を示すことを見出した。この化合物は、更に細胞分化活性を緩和することも見出された。
【0100】
一般式1C4(デス-C,D)の化合物は、図1に示すように、天然ホルモン1,25-(OH)2D3と同程度の強さでビタミンDレセプターに結合していない。デス-C,Dは、HL-60細胞の分化を誘導することにおいて、1,25-(OH)2D3ほどの活性を示さない(図2)。デスC,Dは、転写を生じることにおいて、図3に示すように、この点に関して1,25-(OH)2D3ほどの活性を示さない。最終的に、図4に示すように、デスC,Dは、非常に高い投与量12,480pmol/日でさえも測定可能なカルシウム動員活性を示さなかった。
【0101】
治療目的に関して、本発明の化合物は、当技術分野に公知の従来法により、無害な溶媒中の溶液として、又は好適な溶媒又はキャリヤーにおけるエマルジョン、サスペンジョン又は分散系として、又は固形キャリヤーと共にピル、錠又はカプセルとして、医薬用に製剤化されてもよい。また、そのような製剤は、他の医薬的に許容され得る非毒性の賦形剤、例えば、安定化剤、抗酸化剤、結合剤、着色剤又は乳化剤又は食味改質剤を含んでいてもよい。医薬的に許容され得る賦形剤及びキャリヤーは、一般的に当業者に公知であり、従って本発明に含まれる。そのような賦形剤及びキャリヤーは、例えば、「Remingtons Pharmaceutical Sciences」 Mack Pub. Co.、ニュージャージー(1991)、に記載されており、それは本明細書に十分に記載されているものとして、全体的に全ての目的に関して参考文献として本明細書に含まれるものとする。
【0102】
経口的、局所的、非経口的、直腸的又は経皮的に、本化合物を投与してもよい。注入により、又は静脈内注入又は好適な滅菌溶液により、又は食餌用管(alimentary canal)により液体又は固形投与の形態において、又はクリーム、軟膏、パッチ又は経皮適用に好適な同様の媒体の形態において、化合物を好都合に投与する。ある態様において、化合物の量1日当たり0.001μg〜約1mgが、治療目的に好適である。あるそのような態様において、好適かつ有効な量は、化合物1日当たり0.01μg〜1mgであってもよい。他のそのような態様において、好適かつ有効な量は、化合物1日当たり0.1μg〜500μgであってもよい。そのような量は、治療すべき疾患又は状態のタイプ、疾患又は状態の重症度、及び当技術分野において十分理解されるような被験者の応答により調整されると考えられる。化合物は、単独で、又は他の活性ビタミンD化合物と共に、好適に投与されてもよい。
【0103】
本発明の使用のための組成物は、(一つ又は複数の)活性成分としていずれかの態様の化合物の有効量及び好適なキャリヤーを含む。本発明のある態様における使用のための(一つ又は複数の)化合物の有効量は、本明細書に記載の投与量と同様と一般的に考えられ、それは局所的、経皮的、経口的、経鼻的、直腸又は非経口的に投与されてもよい。
【0104】
前記投与量は好適であり、その量は、疾患の重症度及び当技術分野において十分に理解されるような被験者の状態及び応答により調節されるべきと理解される。前記のように、本発明の化合物は、二つ以上の化合物の混合物として存在していてもよい。ある態様において、混合物は、本発明の第一の化合物及び本発明の第二の化合物を含んでいてもよい。そのようなある態様において、第一の化合物対第二の化合物の比は、50:50〜99.9:0.1である。あるそのような態様において、第一の化合物対第二の化合物の比は、70:30〜99.9:0.1、80:20〜99.9:0.1、90:10〜99.9:0.1、95:5〜99.9:0.1である。
【0105】
(一つ又は複数の)化合物を、クリーム、ローション、軟膏、エアロゾル、坐剤、局所パッチ、丸、カプセル又は錠、又は、医薬的に無害かつ許容され得る溶媒又は油(類)中の溶液、エマルジョン、分散系又はサスペンジョンとしての液体形態として製剤化してもよく、そのような製剤は、さらに、他の医薬的に無害又は有効な成分、例えば安定化剤、抗酸化剤、乳化剤、着色剤、結合剤又は食味改質剤を含んでいてもよい。
本発明の製剤は、活性成分を、医薬的に許容され得るキャリヤー、及び、従って所望により他の治療成分と共に含む。キャリヤーは、製剤の他の成分と適合性でありそれらのレシピエントに有害でないという意味において「許容可能」でなければならない。
【0106】
経口投与に好適な本発明の製剤は、所定量の活性成分を各々含むカプセル、サシェ、錠又はトローチのような別々の単位形態;粉末又は顆粒の形態;溶液又は水性液体又は非水性液体におけるサスペンジョン;又は水中油型エマルジョン又は油中水型エマルジョンの形態であってもよい。
直腸投与用製剤は、活性成分及びキャリヤー、例えばココアバターを含む坐剤の形態又は浣腸の形態であってもよい。
非経口投与に好適な製剤は、レシピエントの血液に好ましく等張性である、活性成分の滅菌油性又は水性製剤を都合よく含む。
【0107】
局所投与に好適な製剤としては、液体又は半液体製剤、例えば、リニメント、ローション、アプリカント(applicants)、水中油型又は油中水型エマルジョン、例えばクリーム、軟膏又はペースト;又は溶液又はサスペンジョン、例えばドロップ;又はスプレーが挙げられる。
経鼻投与に関して、スプレーカン、ネブライザー又はアトマイザーカンで分配される粉末、自己噴霧又はスプレー製剤の吸入が使用される。分配される場合、製剤の粒度は、好ましくは10〜100ミクロンである。
【0108】
製剤は、投与単位形態において都合よく存在してもよく、薬学分野に十分知られているいずれかの方法により製造されてもよい。用語「投与単位」は、単位、即ち、単回投与であって、活性成分それ自体、又は固体又は液体の医薬希釈剤又はキャリヤーとの混合物を含む物理的及び化学的に安定な単位量として被験者に投与され得るものである。
本明細書に記載の全ての参考文献は、本明細書に十分に記載されているものとして、全体的に全ての目的に関して、本明細書に参考文献として含まれるものとする。
本発明は、本明細書に記載の説明のための態様に制限されないが、以下の特許請求の範囲の範囲内に入る全てのそのような形態を包含すると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1−4】一般式1C4(図中、「デス-C,D」と称する)の化合物の様々な生物学的活性を、ネイティブホルモン、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(図中、「1,25(OH)2D3」と称する)と比較して示す。
【図1】全長組換えラットビタミンDレセプターへの[3H]-1,25-(OH)2-D3の結合に競合するデス-C,D及び1,25(OH)2D3の相対活性を比較するグラフである。
【図2】デス-C,Dの濃度と1,25(OH)2D3のものとの関数としてHL-60細胞分化百分率を比較するグラフである。
【図3】デス-C,Dのインビトロ転写活性を1,25(OH)2D3のものとを比較するグラフである。
【図4】デス-C,Dの骨カルシウム動員活性を1,25(OH)2D3のものと比較する棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3の少なくとも一つのデス-C,D類縁体を含む化合物又は組成物。
【請求項2】
2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3の少なくとも一つのデス-C,D類縁体が下式1を有する、請求項1に記載の化合物又は組成物:
【化1】

(式中、R1は、炭素数8〜27であり、OY3基を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルキレン基であり;
Y1、Y2及びY3は、H又はヒドロキシ保護基から独立して選ばれる。)
【請求項3】
2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3の少なくとも一つのデス-C,D類縁体が、下式1A、1B又は1Cを有する請求項1に記載の化合物又は組成物:
【化2】

(式中、X1、X2、X3及びX4は、H又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基から独立して選ばれ;
Y1、Y2及びY3は、H又はヒドロキシ保護基から独立して選ばれ;
14位と20位の炭素原子は、式1A及び式1Bの2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3の少なくとも一つのデス-C,D類縁体において、独立して、R又はS配位のいずれかを有していてもよく;
13位、14位、17位及び20位の炭素原子は、式1Cの2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3の少なくとも一つのデス-C,D類縁体において、独立して、R又はS配位のいずれかであってもよい。)
【請求項4】
Y1、Y2及びY3が全てHであり、2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3の少なくとも一つのデス-C,D類縁体が式1A1、1B1又は1C1を有する、請求項3に記載の化合物又は組成物。
【化3】

【請求項5】
2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3の少なくとも一つのデス-C,D類縁体が式1A2、1B2又は1C2を有する、請求項3に記載の化合物又は組成物。
【化4】

【請求項6】
X1、X2、X3及びX4が、H又はメチル基から独立して選ばれる、請求項3に記載の化合物又は組成物。
【請求項7】
X1、X2、X3及びX4が、全てHである、請求項6に記載の化合物又は組成物。
【請求項8】
2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3の少なくとも一つのデス-C,D類縁体が式1C3を有する、請求項3に記載の化合物又は組成物。
【化5】

【請求項9】
Y1及びY2が、共にヒドロキシ保護基である、請求項2に記載の化合物又は組成物。
【請求項10】
Y1及びY2が、共にt-ブチルジメチルシリル基である、請求項9に記載の化合物又は組成物。
【請求項11】
Y3が、トリアルキルシリル基である、請求項2に記載の化合物又は組成物。
【請求項12】
Y3が、トリエチルシリル基である、請求項11に記載の化合物又は組成物。
【請求項13】
2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3の少なくとも一つのデス-C,D類縁体が下式1C4を有する、請求項3に記載の化合物又は組成物。
【化6】

【請求項14】
請求項1に記載の化合物及び医薬的に許容可能なキャリヤーを含む医薬製剤。
【請求項15】
医薬製剤中の2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3の少なくとも一つのデス-C,D類縁体の量が、医薬製剤のグラム当たり約0.01μg〜約1mgである、請求項14に記載の医薬製剤。
【請求項16】
医薬製剤中の2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19-ノルビタミンD3の少なくとも一つのデス-C,D類縁体の量が、医薬製剤のグラム当たり約0.1μg〜約500μgである、請求項14に記載の医薬製剤。
【請求項17】
有効量の、請求項1に記載の化合物又は組成物又は請求項14に記載の製剤を投与する工程を含む、生物学的疾患を患う被験者の治療方法。
【請求項18】
化合物、組成物又は製剤を、経口的、非経口的、直腸的、経皮的又は局所的に被験者に投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
エアロゾル中の組成物上の化合物を送達することにより、前記化合物、組成物又は製剤を投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
生物学的状態が、乾癬;白血病;大腸癌;乳癌;前立腺癌;多発性硬化症;狼瘡;真性糖尿病;移植片対宿主反応;臓器移植拒絶;慢性関節リウマチ、喘息、湿疹、又は炎症性腸疾患から選ばれる炎症性疾患;皺、適正な皮膚硬さの欠如、適正な皮膚水分の欠如又は不十分な皮脂分泌から選ばれる皮膚状態;又は二次性副甲状腺機能亢進症から選ばれる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
乾癬;白血病;大腸癌;乳癌;前立腺癌;多発性硬化症;狼瘡;真性糖尿病;移植片対宿主反応;臓器移植拒絶;慢性関節リウマチ、喘息、湿疹、又は炎症性腸疾患から選ばれる炎症性疾患;皺、適正な皮膚硬さの欠如、適正な皮膚水分の欠如又は不十分な皮脂分泌から選ばれる皮膚状態;又は二次性副甲状腺機能亢進症の治療用医薬の製造における、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物又は組成物の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−507028(P2009−507028A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529302(P2008−529302)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/034196
【国際公開番号】WO2007/028000
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(500517248)ウイスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション (18)
【Fターム(参考)】