説明

1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸の新規の多形相

本発明は、1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸(化合物I)の新規の結晶形態(形態A)、この結晶形態を含む医薬組成物、これを形成するためのプロセス、および医学的処置におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸(以下、化合物Iと称する)の新規の多形相、この多形相を含む医薬組成物、これを形成するためのプロセス、および医学的処置におけるその使用に関する。
【0002】
発明の背景
好都合に製造し、製剤化し、患者に投与することができる薬剤の形態を特定することが重要である。
【0003】
さらに、経口薬剤組成物の製造において、薬剤が、患者に投与された後に信頼性および再現性のある血漿濃度を提供する形態であることが重要である。
【0004】
原薬の化学安定性、固体状態安定性および「有効期間」もまた、特に重要な因子である。原薬およびこれを含有する組成物は、理想的には、活性成分の物理化学的特徴(例えば、その化学組成、密度、吸湿性、溶解度および溶解速度)の大幅な変化を示すことなく、適切な期間にわたって有効に保存可能であるべきである。
【0005】
また、可能な限り化学的に純粋である形態の薬剤を提供できることも重要である。
【0006】
これに関して、非晶質の薬剤材料が、いくつかの問題を提起する場合があることが知られている。例えば、このような材料は、取扱いおよび製剤化が一般に困難であり、信頼性のない溶解度を付与し、しばしば不安定で化学的に純粋でないことが見出されている。
【0007】
したがって、当業者は、薬剤を安定な結晶形態で容易に得ることができると、上記の問題の多くを解決し得ることを認識するであろう。したがって、商業的に実現可能な、薬学的に許容される薬剤組成物の製造において、可能な限り、薬剤を実質的に結晶性かつ安定な形態で提供することが重要である。しかし、この目的は、常に達成可能ではないことに注意されたい。実際には、分子構造のみに基づいて、それ自体または塩の形態のいずれかの化合物の結晶化挙動がどのようになるかを予測することは一般に不可能である。これは、経験的にのみ決定することができる。
【0008】
全内容が参照により本明細書に組み込まれるWO2004/103306号には、EDG受容体を阻害することができる一連の化合物が開示されている。WO2004/103306号には、該文献で開示されている化合物が、リンパ球によって媒介される多数の医学的状態、例えば、移植片拒絶、自己免疫状態および癌などの治療での使用に潜在的に有用な作用物質であることが教示されている。可能性のある状態の全リストは、WO2004/103306号の13頁9行〜14頁3行までに列挙されている。WO2004/103306号に開示されている1つの特定の化合物は、1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸(化合物I)であり、その構造を以下に示す。
【0009】
【化1】

しかし、化合物Iのいずれの結晶形態もWO2004/103306号において開示されていない。
【0010】
発明の開示
本発明者らは、化合物Iの遊離塩基の結晶形態であって、これを医薬品開発のための潜在的候補とする有利な薬学的特性(例えば、溶解度および溶解速度)を保有する形態、形態Aを見出した。
【0011】
したがって、本発明の第1態様によると、化合物Iの結晶形態Aが提供される。
【0012】
化合物Iの結晶形態Aは、図1に実質的に示すようなX線粉末回折パターンをもたらすことを特徴とする。
【0013】
化合物Iの結晶形態Aについて最も顕著なX線粉末回折ピークを表1に示す:
【0014】
【表1】

【0015】
本発明によると、2θ=18.2°または20.9°付近に少なくとも1個の特定のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、化合物Iの結晶形態Aが提供される。
【0016】
本発明によると、2θ=18.2°および20.9°付近に特定のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、化合物Iの結晶形態Aが提供される。
【0017】
本発明によると、2θ=7.7°、14.3°、18.2°、20.9°、または24.5°付近に少なくとも1個の特定のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、化合物Iの結晶形態Aが提供される。
【0018】
本発明によると、2θ=7.7°、14.3°、18.2°、20.9°、および24.5°付近に特定のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、化合物Iの結晶形態Aが提供される。
【0019】
本発明によると、上記の表1に列挙した値付近に特定のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、化合物Iの結晶形態Aが提供される。
【0020】
本発明によると、図1に示したX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有する、化合物Iの結晶形態Aが提供される。
【0021】
測定条件(例えば、用いる装置、サンプル調製物または機械)に応じて1個または複数の測定誤差を有しするX線粉末回折パターンが得られ得ることが、当技術分野において知られている。特に、X線粉末回折パターンにおける強度は、測定条件およびサンプル調製物に応じて変動し得ることが一般的に知られている。例えば、X線粉末回折の技術分野の当業者は、ピークの相対強度が、例えば、30μmを超えるサイズの粒体および非ユニタリーアスペクト比によって影響される可能性があり、これがサンプルの分析に影響する場合があることを理解しているだろう。また、当業者は、反射の位置が、回折計および回折計のゼロ較正においてサンプルが設置される正確な高さによって影響される可能性があることも理解しているであろう。サンプルの表面平坦性もまた、小さな影響を与える場合がある。したがって、当業者は、本明細書に提示されている回折パターンデータが、絶対的であると解釈されるべきではないことを認識するであろう(さらなる情報については、Jenkins、R & Snyder、R.L.「Introduction to X−Ray Powder Diffractometry」、John Wiley & Sons、1996を参照されたい)。したがって、本明細書において定義されている化合物Iの結晶形態Aが、本発明の範囲内に含まれる、添付の図面に示されるX線粉末回折パターンと同一のX線粉末回折パターンをもたらす結晶、および図1に示されるX線粉末回折パターンと実質的に同じであるX線粉末回折パターンをもたらす任意の結晶に限定されないことが理解されよう。X線粉末回折の技術分野の当業者は、X線粉末回折パターンの実質的同一性を判断することができる。
【0022】
化合物Iの結晶形態AのX線粉末回折ピークを定義している上記の段落では、ピークの正確な位置(すなわち、列挙された2θ角度値)が絶対的な値であると見なされるべきではないことを示唆するために、表現「2θ=・・・付近に」において用語「付近に」が用いられている。また、化合物Iの結晶形態Aが、図1に示されるX線粉末回折パターンと「実質的に」同じであるX線粉末回折パターンをもたらすことも上記の段落において記述されている。本明細書の文脈における用語「実質的に」の使用は、X線粉末回折パターンの2θ角度値が、これらの測定によって起こり得る特有の実験変動の結果として僅かに変動する場合があることを示唆することも意図していることが認識されよう。したがって、図1に示されるピークトレースを、絶対的であると見なすことはできない。
【0023】
一般的に、X線粉末回折図形における回折角度の測定誤差は、おおよそ、2θ=0.2°以下であり、この程度の測定誤差は、本明細書に記載されているX線粉末回折パターンデータを考えるときに考慮に入れられるべきである。したがって、例えば、結晶形態が、2θ=15.2°付近に少なくとも1個の特定のピークを含むX線粉末回折パターンを有すると記述されている場合には、これは、結果として、2θ=15.2°±0.2°であると解釈することができる。
【0024】
好適には、化合物Iの遊離塩基の結晶形態Aは、実質的に結晶性である。「実質的に結晶性」によって、本発明者らは、X線粉末回折データによって決定される結晶化度の程度が、好都合には約20%超、より好都合には60%超、なおより好都合には約80%超、好ましくは約90%超であることを意味している。
【0025】
調製プロセス
化合物Iの結晶形態Aは、付随の実施例において以下に記載するように調製され得る。
【0026】
本発明のさらなる態様によると、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを調製する方法であって、化合物Iの遊離塩基を不活性ガスと反応させるステップを含む方法が提供される。
【0027】
化合物Iの遊離塩基は、WO2004/103306号の実施例3に記載される手順に従って調製され得る。
【0028】
医薬調製物および医学的用途
本発明によると、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、薬学的に許容される剤形での本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを含む医薬調製物の形態で、経口で、静脈内に、皮下に、頬側に、直腸内に、皮膚に、経鼻的に、気管に、気管支に、他のいずれかの非経口経路によって、または吸入を介して投与され得る。
【0029】
したがって、一般には、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、経口または非経口で(「非経口で」は、本明細書において用いられるとき、静脈内、筋肉内、腹腔内、嚢内、皮下および関節内注射および注入を含めた投与様式を称する)宿主に投与され得る。人間などのより大きな動物の場合には、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体と組み合わされた組成物としての投与の代替として、単独で投与されてもよい。
【0030】
本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、処置される障害および患者、ならびに投与経路に応じて、用量を変動させて投与されてもよい(以下を参照されたい)。
【0031】
本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、好適な医薬製剤に製剤化する前にさらに処理されてもよく、例えば、より小さな粒子に粉砕または破砕されてもよい。
【0032】
本発明のさらなる態様によると、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合された本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを含む医薬組成物が提供される。
【0033】
このような組成物において使用される化合物Iの結晶形態Aの量は、処置される状態および患者によることとなるが、非発明的に決定され得る。
【0034】
非経口注射のための本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される滅菌された水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョン、ならびに使用直前に滅菌注射用溶液または分散液に再構成されるための滅菌粉末を好適には含む。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例として、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの好適な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、ならびに注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。例えば、レシチンなどのコーティング材の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤の使用によって、適当な流動性を維持することができる。
【0035】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有していてもよい。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノールまたはフェノールソルビン酸を包含することによって保証され得る。例えば、糖または塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが望ましい場合もある。注射用薬学的形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を包含することによってもたらされ得る。
【0036】
いくつかの場合において、薬剤の効果を持続させるには、皮下または筋肉内注射の薬剤の吸収を遅くすることが望ましい。このことは、水溶解度が低い結晶性または非晶質材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。薬剤の吸収速度は、その溶解速度にひいては依存し、続いて、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。代替的には、非経口で投与された薬剤形態の遅延吸収は、油性ビヒクルに薬剤を溶解または懸濁させることによって達成される。
【0037】
注射用デポー形態は、薬剤のマイクロカプセルマトリックスを生分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド−ポリグリコリド中に形成することによって好適には作製される。薬剤のポリマーに対する比および使用する特定のポリマーの性質に応じて、薬剤放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例として、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤はまた、薬剤を体内組織と適合可能なリポソームまたはマイクロエマルジョン中に捕捉することによって調製されてもよい。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルタを通した濾過によって、または使用直前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体に溶解もしくは分散され得る滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0038】
経口投与のための固体剤形として、カプセル、錠剤、丸剤、粉末および粒剤が挙げられる。このような剤形において、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、少なくとも1個の不活性な、薬学的に許容される賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウム、ならびに/または1種もしくは複数種の:a)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸;b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア;c)保湿剤、例えば、グリセロール;d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウム;e)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;f)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物;g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール;h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレー;ならびにi)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物と一般的に混合される。カプセル、錠剤および丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤も含み得る。同様のタイプの固体組成物はまた、例えば、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤、および高分子量のポリエチレングリコールなどを用いた軟および硬ゼラチンカプセル中の充填剤として使用されてもよい。
【0039】
好適には、経口製剤は、溶解助剤を含有する。溶解助剤は、薬学的に許容される限り、その種類については限定されない。例として、非イオン性表面活性剤、例えば、スクロース脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、トリオレイン酸ソルビタン)、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、メトキシポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、およびアルキルアミンオキシド;胆汁酸およびその塩(例えば、ケノデオキシコール酸、コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸およびその塩、ならびにそのグリシンまたはタウリン抱合体);イオン性表面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、エーテルリン酸塩、塩基性アミノ酸の脂肪酸塩;トリエタノールアミン石鹸、およびアルキル第4級アンモニウム塩;ならびに両性表面活性剤、例えば、ベタインおよびアミノカルボン酸塩が挙げられる。
【0040】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、および粒剤の固体剤形は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶コーティングおよび医薬製剤化分野において周知の他のコーティングによって調製されてもよい。これらは、乳白剤を場合により含有していてもよく、また、有効成分(複数可)のみを、または選択的に、腸管のある特定の部分において、および/もしくは遅延様式で放出するような組成を有していてもよい。包埋組成物の例として、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0041】
本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aはまた、適切な場合、上記の賦形剤のうちの1種または複数を含む、マイクロカプセル化形態であってもよい。
【0042】
本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、微細に分割された形態であってもよく、例えば、微粉化されていてもよい。
【0043】
経口投与のための液体剤形として、薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。液体剤形は、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aに加えて、当技術分野において一般に用いられている不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含有していてもよい。また、経口組成物は、不活性希釈剤の他に、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤および芳香剤を含んでいてもよい。懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、ならびにこれらの混合物を含有していてもよい。
【0044】
直腸または膣内投与のための組成物は、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aと、室温では固体であるが体温では液体であるため直腸または膣腔で溶融して活性化合物を放出する好適な非刺激性賦形剤または担体、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは座剤ワックスとを混合させることによって調製することができる、好ましくは座剤である。
【0045】
本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aはまた、リポソームの形態でも投与され得る。当技術分野において知られているように、リポソームは、リン脂質または他の脂質物質に一般に由来する。リポソームは、水性媒体中に分散されている単層または多層水和液体結晶によって形成される。リポソームを形成することが可能な無毒性の生理的に許容される代謝可能な脂質を用いることができる。リポソーム形態の本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、防腐剤、賦形剤などを含有し得る。好ましい脂質は、天然および合成の、リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成するための方法は、当該分野で公知であり、例えば、Prescott、Ed.、Methods in Cell Biology、第XIV巻、Academic Press、New York、N.Y.(1976)、33頁以下を参照されたい。
【0046】
有利には、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、経口で活性であってもよく、迅速に活性が発現し、低毒性である。
【0047】
本発明の医薬組成物中の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aの実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、および投与様式に関して所望の治療反応を達成するのに効果的である活性薬剤量を得るように、変動し得る。選択された投与量レベルは、化合物の活性、投与経路、処置される状態の重症度、および処置される患者の過去の病歴に応じることとなる。しかし、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりも低いレベルで化合物の投薬を開始すること、および所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、当業者の範囲内である。
【0048】
WO2004/103306号には、実施例3(29頁1〜15行)において本発明の化合物Iが開示されており、これは、8頁19行〜11頁28行に好ましい化合物のリストの1つとしても言及されている。さらに、WO2004/103306号にはまた、本明細書に開示の化合物が、EDG受容体の有効な阻害剤であること、したがって、EDG受容体活性の変更が疾患の病状または兆候の一因となるリンパ球相互作用に関連する疾患を処置するのに有用な作用物質であることも教示されている。
【0049】
したがって、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、そのため、リンパ球相互作用によって媒介される疾患または障害、例えば、移植の際の、例えば、細胞、組織または器官の同種もしくは異種移植片または遅延移植片機能の急性または慢性拒絶、移植片対宿主疾患;自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ、全身性エリトマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型またはII型糖尿病およびこれらに関連する障害、血管炎、悪性貧血、シェーグレン症候群、ブドウ膜炎、乾癬、グレーブス眼病、円形脱毛症など;アレルギー性疾患、例えば、アレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎/結膜炎、アレルギー性接触皮膚炎;場合により異常反応の根拠になる炎症性疾患、例えば、炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎、内因性喘息、炎症性肺傷害、炎症性肝臓傷害、炎症性糸球体傷害、アテローム性動脈硬化症、変形性関節炎、刺激性接触皮膚炎およびさらなる湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、免疫介在性障害の皮膚症状、炎症性眼疾患、角結膜炎、炎症性筋疾患;心筋炎または肝炎;虚血/再潅流傷害、例えば、心筋梗塞、脳卒中、腸管虚血、腎不全または出血ショック、外傷性ショック;T細胞リンパ腫またはT細胞白血病;感染性疾患、例えば、毒素ショック(例えば、超抗原誘導による)、敗血性ショック、成人呼吸脅迫症候群またはウイルス感染、例えば、AIDS、ウイルス性肝炎、慢性細菌感染;筋疾患、例えば、多発性筋炎;あるいは老年性認知症などの治療において有用である。細胞、組織または実質臓器移植の例として、例えば、膵島、幹細胞、骨髄、角膜組織、神経組織、心臓、肺、心臓−肺の複合、腎臓、肝臓、腸、膵臓、気管または食道が挙げられる。上記の用途に関して、必要とされる投与量は、投与様式、処置される特定の状態、および所望の効果に応じて当然ながら変動することとなる。
【0050】
さらに、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、癌の化学療法において、特に、乳癌などの固体腫瘍の癌の化学療法に、または抗血管新生剤として潜在的に有用である。
【0051】
さらに、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、種々の末梢性ニューロパシー、特に急性または慢性脱髄性ニューロパシーの治療において有用であり得る。したがって、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、ギランバレー症候群(GBS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー(CIDP)、伝導ブロックを伴う多巣性運動ニューロパシー(MMN)、およびパラプロテイン血症性脱髄性末梢性ニューロパシー(PDN)のうちの1種または複数の治療において有用であり得る。特に、ニューロパシーは、CIPDである。化合物の有効性は、患者間で変動し得る。
【0052】
本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、多発性硬化症、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、感染性疾患(例えば、ウイルス感染)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー(CIPD)および多発性筋炎を処置するのに潜在的に有用である。
【0053】
化合物の治療用途として、対象が罹患する危険性がある末梢性ニューロパシーの重症度を予防、制御または低減するための予防的用途、および既存の疾患の重症度を制御または低減するための処置を挙げることができる。本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、症状の発現の前に投与されても、症状の発現の後に投与されてもよい。結晶形態Aは、末梢性ニューロパシーに罹患する危険性がある対象に投与され得る。
【0054】
したがって、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aが用いられ得る処置によって、末梢性ニューロパシーを有する、有する疑いのある、または有する危険性がある患者の医学的状態および/または快適性を改善、維持またはその悪化を遅延させることができる。
【0055】
用語「治療」として、末梢性ニューロパシーの1種もしくは複数の症状を緩和するための処置、またはこのような疾患の進行を遅延させるための処置が挙げられ;また、このような疾患を治癒するための、対象を機能的状態に置くためのおよび/もしくは対象を機能的状態で維持するための、または再発までの時間を長くするための処置も挙げられる。
【0056】
必要とされる投与量は、投与様式、処置される特定の状態、および所望の効果に応じて当然ながら変動することとなる。一般に、満足のいく結果は、単回または複数回用量で投与することができる、患者の体重1kgあたり、1日あたり約0.01〜500mgの間の1日投与量で、全身的に得られることが示唆されている。投与量レベルは、1日あたり約0.1〜約250mg/kg;例えば、1日あたり約0.5〜約100mg/kgであってよい。好適な投与量レベルは、1日あたり約0.01〜250mg/kg、1日あたり約0.05〜100mg/kg、または1日あたり約0.1〜50mg/kgであってよい。この範囲内では、投与量は、1日あたり0.05〜0.5、0.5〜5または5〜50mg/kgであってよい。経口投与のために、組成物を、1.0〜1000mgの有効成分、特に1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0または1000.0mgの有効成分を含有する錠剤の形態で提供してもよい。化合物を1日あたり1〜4回、好ましくは1日あたり1回または2回のレジメンで投与してもよい。投与量レジメンは、最適な治療反応を提供するように調整され得る。
【0057】
上記に従って、本発明は以下をさらに提供する:
【0058】
1.01 例えば、先に示したような、リンパ球によって媒介される障害または疾患を、そのような処置を必要とする対象において予防または処置するための方法であって、有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを前記対象に投与することを含む方法;
【0059】
1.02 器官もしくは組織移植片拒絶、移植片対宿主疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患もしくは状態、または筋疾患を、処置を必要とする対象において予防または処置するための方法であって、有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを前記対象に投与することを含む方法;
【0060】
1.03 例えば、先に示したような、急性もしくは慢性移植片拒絶またはT細胞媒介炎症性もしくは自己免疫疾患を、処置を必要とする対象において予防または処置するための方法であって、有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを前記対象に投与することを含む方法;
【0061】
1.04 無秩序な血管新生、例えば、スフィンゴシン−1−リン酸(SIP)媒介血管新生を、必要とする対象において阻害または制御するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0062】
1.05 新血管新生プロセスによって媒介される、または無秩序な血管新生と関連する疾患を、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0063】
1.06 癌を、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0064】
1.07 末梢性ニューロパシーを、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0065】
1.08 ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー(CIPD)、伝導ブロックを伴う多巣性運動ニューロパシー、およびパラプロテイン血症性脱髄性末梢性ニューロパシーから選択される末梢性ニューロパシーを、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0066】
1.09 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー(CIPD)を、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0067】
1.10 多発性硬化症を、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0068】
1.11 ブドウ膜炎を、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0069】
1.12 炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎を、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0070】
1.13 炎症性腸疾患を、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0071】
1.14 クローン病を、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0072】
1.15 潰瘍性大腸炎を、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0073】
1.16 感染性疾患(例えば、ウイルス感染)を、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0074】
1.17 ウイルス感染を、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0075】
1.18 多発性筋炎を、必要とする対象において予防または処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを上記対象に投与することを含む方法;
【0076】
2.医薬としての使用のための、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態A
【0077】
2.1 上記項1.01〜1.18に定義されている方法のいずれかにおける医薬としての使用のための、または上記に言及されている医学的状態のいずれか1つの処置のための、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態A;
【0078】
3.例えば、上記項1.01〜1.18に定義されている方法のいずれかにおける使用のための、または上記に言及されている医学的状態のいずれか1つの処置のための医薬組成物であって、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを、薬学的に許容される希釈剤またはそのための担体と併せて含む、医薬組成物。
【0079】
4.上記項1.01〜1.18に定義されている方法のいずれかにおける使用のための、または上記に言及されている医学的状態のいずれか1つの処置のための医薬組成物の調製における使用のための本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態A。
【0080】
本発明はまた、上記に言及されている医学的状態のいずれか1つの処置または上記項1.01〜1.18に定義されている方法における使用のための薬剤の製造における、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aの使用にも関する。
【0081】
併用療法
本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、唯一の有効成分として、または例えばアジュバントとして一緒に、他の薬剤、例えば、免疫抑制剤もしくは免疫調整剤または他の抗炎症剤などに、同種または異種移植片急性または慢性拒絶または炎症性または自己免疫障害の処置または予防において;あるいは癌の処置のための化学療法剤、例えば、悪性細胞抗増殖剤などとして投与され得る。例えば、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aは、カルシニューリン阻害剤、例えば、シクロスポリンAまたはFK506;mTOR阻害剤、例えば、ラパマイシン、40−0−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578またはAP23573;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えば、ABT−281、ASM981など;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン;メトトレキセート;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリンまたはその免疫抑制同族体、類似体もしくは誘導体;免疫抑制モノクローナル抗体、例えば、白血球受容体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40.CD45、CD58、CD80、CD86またはこれらのリガンドに対するモノクローナル抗体;他の免疫調節化合物、例えば、CTLA4またはその変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部分、例えば、非CTLA4タンパク質配列に結合したCTLA4またはその変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部分を有する組み換え結合分子、例えば、CTLA4Ig(例えば、ATCC5 68629と呼ばれている)またはその変異体、例えば、LEA29Y;接着分子阻害剤、例えば、LFA−Iアンタゴニスト、ICAM−1または−3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニストまたはVLA−4アンタゴニスト;あるいは化学療法剤と併用されてもよい。
【0082】
用語「化学療法剤」によって任意の化学療法剤が意味され、限定されないが
i.アロマターゼ阻害剤、
ii.抗エストロゲン、抗アンドロゲン(特に、前立腺癌の場合)またはゴナドレリンアゴニスト、
iii.トポイソメラーゼI阻害剤またはトポイソメラーゼII阻害剤、
iv.微小管活性剤、アルキル化剤、抗新生物性代謝拮抗剤または白金化合物(platin compound)、
v.タンパク質もしくは脂質キナーゼ活性またはタンパク質もしくは脂質ホスファターゼ活性を標的とする/減少させる化合物、さらなる抗血管新生化合物、あるいは細胞分化プロセスを誘発する化合物、
vi.ブラジキニンI受容体またはアンジオテンシンIIアンタゴニスト、
vii.シクロオキシゲナーゼ阻害剤、ビスホスホネート、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヘパラナーゼ阻害剤(ヘパラン硫酸分解を予防する)、例えば、PI−88、生物学的応答修飾物質、好ましくはリンホカインもしくはインターフェロン、例えば、インターフェロンγ、ユビキチン化阻害剤、または抗アポトーシス経路を遮断する阻害剤、
viii.Ras発癌性アイソフォーム、例えば、H−Ras、K−RasもしくはN−Rasの阻害剤、またはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、L−744,832もしくはDK8G557、
ix.テロメラーゼ阻害剤、例えば、テロメスタチン、
x.プロテアーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、メチオニンアミノペプチダーゼ阻害剤、例えば、ベンガミドもしくはその誘導体、またはプロテアソーム阻害剤(proteosome inhibitor)、例えば、PS−341、および/あるいは
xi.mTOR阻害剤
が挙げられる。
【0083】
用語「アロマターゼ阻害剤」は、本明細書において用いられるとき、エストロゲンの産生、すなわち、アンドロステンジオンおよびテストステロン基質のそれぞれエストロンおよびエストラジオールへの変換を阻害する化合物に関する。該用語は、限定されないが、ステロイド、とりわけ、アタメスタン、エキセメスタンおよびフォルメスタン(fonnestane)、ならびに、特に、非ステロイド、とりわけ、アミノグルテチミド、ログレチミド、ピリドグルテチミド、トリロスタン、テストラクトン、ケトコナゾール、ボロゾール、ファドロゾール、アナストロゾールおよびレトロゾールを含む。アロマターゼ阻害剤である化学療法剤を含む本発明の組合せは、ホルモン受容体陽性腫瘍、例えば、乳房腫瘍の処置に特に有用である。
【0084】
用語「抗エストロゲン」は、本明細書において用いられるとき、エストロゲン受容体レベルでエストロゲンの効果に拮抗する化合物に関する。該用語は、限定されないが、タモキシフェン、フルベストラント、ラロキシフェンおよびラロキシフェン塩酸塩を含む。抗エストロゲンである化学療法剤を含む本発明の組合せは、エストロゲン受容体陽性腫瘍、例えば、乳房腫瘍の処置に特に有用である。
【0085】
用語「抗アンドロゲン」は、本明細書において用いられるとき、雄性ホルモンの生物学的効果を阻害することができる任意の物質に関し、限定されないが、ビカルタミドを含む。
【0086】
用語「ゴナドレリンアゴニスト」は、本明細書において用いられるとき、限定されないが、アバレリックス、ゴセレリンおよび酢酸ゴセレリンを含む。
【0087】
用語「トポイソメラーゼI阻害剤」は、本明細書において用いられるとき、限定されないが、トポテカン、イリノテカン、9−ニトロカンプトテシンおよび高分子カンプトテシン抱合体PNU−166148(W099/17804号中の化合物A1)を含む。
【0088】
用語「トポイソメラーゼII阻害剤」は、本明細書において用いられるとき、限定されないが、アントラサイクリン、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびネモルビシン、ならびにアントラキノンであるミトキサントロンおよびロソキサントロン、さらにはポドフィロトキシンであるエトポシドおよびテニポシドを含む。
【0089】
用語「微小管活性剤」は、微小管安定化剤および微小管不安定化剤に関し、限定されないが、タキサン、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル、ビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン、とりわけ、硫酸ビンブラスチン、ビンクリスチン、とりわけ、硫酸ビンクリスチン、およびビノレルビン、ディスコデルモライド(discodennolides)およびエポチロンならびにその誘導体、例えば、エポチロンBまたはその誘導体を含む。
【0090】
用語「アルキル化剤」は、本明細書において用いられるとき、限定されないが、ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファランまたはニトロソウレア(BCNUまたはGliadeI(商標))を含む。
【0091】
用語「抗新生物性代謝拮抗剤」は、限定されないが、5−フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、シタラビン、フルダラビン、チオグアニン、メトトレキセートおよびエダトレキセートを含む。
【0092】
用語「プラチン化合物」は、本明細書において用いられるとき、限定されないが、カルボプラチン、シスプラチンおよびオキサリプラチンを含む。
【0093】
用語「タンパク質もしくは脂質キナーゼ活性を標的とする/減少させる化合物、またはさらなる抗血管新生化合物」は、本明細書において用いられるとき、限定されないが、タンパク質チロシンキナーゼおよび/もしくはセリンおよび/もしくはトレオニンキナーゼ阻害剤または脂質キナーゼ阻害剤、例えば、受容体チロシンキナーゼの上皮成長因子ファミリー(ホモまたはヘテロ二量体としてのEGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4)、受容体チロシンキナーゼの血管内皮成長因子ファミリー(VEGFR)、血小板由来成長因子−受容体(PDGFR)、線維芽細胞成長因子−受容体(FGFR)、インスリン様成長因子受容体1(IGF−IR)、Trk受容体チロシンキナーゼファミリー、Axl受容体チロシンキナーゼファミリー、Ret受容体チロシンキナーゼ、Kit/SCFR受容体チロシンキナーゼ、c−Ablファミリーのメンバーおよびその遺伝子融合生成物(例えば、BCR−Abl)、タンパク質キナーゼC(PKC)およびセリン/トレオニンキナーゼのRafファミリーのメンバー、MEK、SRC、JAK、FAK、PDKもしくはPI(3)キナーゼファミリーまたはPI(3)−キナーゼ関連キナーゼファミリーのメンバー、ならびに/またはサイクリン依存性キナーゼファミリー(CDK)および例えば、タンパク質もしくは脂質キナーゼ阻害に関連しない、活性に関して別のメカニズムを有する抗血管新生化合物のメンバーの活性を標的とする、減少させる、または阻害する化合物を含む。
【0094】
VEGFRの活性を標的とする、減少させる、または阻害する化合物は、特に、VEGF受容体チロシンキナーゼを阻害する、VEGF受容体を阻害する、またはVEGFに結合する化合物、タンパク質または抗体であり、特に、WO98/35958号に総称的かつ具体的に開示されているこのような化合物、タンパク質またはモノクローナル抗体、例えば、WO00127820号での、1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンまたはその薬学的に許容される塩、例えば、コハク酸塩、例えば、WO00/09495号、WO00/159509号、WO98/11223号、WO00/27819号およびEP0769947号におけるN−アリール(チオ)アントラニル酸アミド誘導体、例えば、2−[(4−ピリジル)メチル]アミノ−N−[3−メトキシ−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたは2−[(1−オキシド−4−ピリジル)メチル]アミノ−N−[3−トリフルオロメチルフェニル]ベンズアミド、あるいは、M.Prewettらによって、Cancer Research 59(1999)5209〜5218頁において、F.Yuanらによって、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第93巻、14765〜14770頁(1996年12月)において、Z.Zhuらによって、Cancer Res.58、1998、3209〜3214頁において、およびJ.Mordentiらによって、Toxicologic Pathology、第27巻、no.1、14〜21頁(1999年)において記載されているもの;WO00/37502号およびWO94/10202号において記載されているもの;M.S.O’Reillyらによって、Cell 79、1994年、315〜328頁に記載されているAngiostatin(商標);M.S.O’Reillyらによって、Cell 88、1997年、277〜285頁に記載されているEndostatin(商標);アントラニル酸アミド;ZD4190;ZD6474;SU5416;SU6668;または抗VEGF抗体もしくは抗VEGF受容体抗体、例えば、RhuMabである。
【0095】
抗体は、所望の生物学的活性を示す限り、無傷モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2種の無傷抗体から形成される多特異的抗体、および抗体フラグメントを意味している。
【0096】
上皮成長因子受容体ファミリーの活性を標的とする、減少させる、または阻害する化合物は、特に、EGF受容体チロシンキナーゼファミリーのメンバー、例えば、EGF受容体、ErbB2、ErbB3およびErbB4を阻害する、またはEGFもしくはEGF関連リガンドに結合する、あるいはErbBおよびVEGF受容体キナーゼへの二重阻害効果を有する化合物、タンパク質または抗体であり、特に、WO97/02266号に総称的かつ具体的に開示されているこれらの化合物、タンパク質またはモノクローナル抗体、例えば、例39の化合物、あるいは、EP0564409号、WO99/03854号、EP0520722号、EP0566226号、EP0787722号、EP0837063号、米国特許第5,747,498号、WO98/10767号、WO97/30034号、WO97/49688号、WO97/38983号および、とりわけWO96/30347号(例えば、CP358774として公知の化合物)、WO96/33980号(例えば、化合物ZD1839)およびWO95103283号(例えば、化合物ZM105180)またはPCT/EP02/08780号に記載されているもの;例えば、トラスツズマブ(Herpetin(登録商標))、セツキシマブ、イレッサ、OSI−774、CI−1033、EKB−569、GW−2016、E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3またはE7.6.3である。
【0097】
PDGFRの活性を標的とする、減少させる、または阻害する化合物は、特に、PDGF受容体を阻害する化合物、例えば、N−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、例えば、イマチニブである。
【0098】
c−AbIファミリーのメンバーおよびその遺伝子融合生成物の活性を標的とする、減少させる、または阻害する化合物は、例えば、N−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、例えば、イマチニブ;PD180970;AG957;またはNSC680410である。
【0099】
タンパク質キナーゼC、Raf、MEK、SRC、JAK、FAKおよびPDKファミリーのメンバー、またはPI(3)キナーゼもしくはPI(3)キナーゼ関連ファミリーのメンバー、ならびに/またはサイクリン依存性キナーゼファミリー(CDK)のメンバーの活性を標的とする、減少させる、または阻害する化合物は、特に、EP0296110号に開示されているスタウロスポリン誘導体、例えば、ミドスタウリンであり;さらなる化合物の例として、例えば、UCN−Ol、サフィンゴール、BAY43−9006、ブリオスタチン1、ペリホシン;イルモフォシン;RO318220およびRO320432;GO6976;Isis3521;またはLY333531/LY379196が挙げられる。
【0100】
さらなる抗血管新生化合物は、例えば、サリドマイド(THALOMID)およびTNP−470である。
【0101】
タンパク質または脂質ホスファターゼの活性を標的とする、減少させる、または阻害する化合物は、ホスファターゼ1、ホスファターゼ2A、PTENまたはCDC25の阻害剤、例えば、オカダ酸またはその誘導体である。
【0102】
細胞分化プロセスを誘発する化合物は、例えば、レチノイン酸、α−、γ−もしくはδ−トコフェロールまたはα−、γ−もしくはδ−トコトリエノールである。
【0103】
シクロオキシゲナーゼ阻害剤という用語は、本明細書において用いられるとき、限定されないが、例えば、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、エトリコキシブ、バルデコキシブまたは5−アルキル−2−アリールアミノフェニル酢酸、例えば、5−メチル−2−(2’−クロロ−6’−フルオロアニリノ)フェニル酢酸を含む。
【0104】
用語「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」は、本明細書において用いられるとき、限定されないが、MS−275、SAHA、ピロキサミド、FR−901228またはバルプロ酸を含む。
【0105】
用語「ビスホスホネート」は、本明細書において用いられるとき、限定されないが、エトリドン酸、クロドロン酸、チルドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸およびゾレドロン酸を含む。
【0106】
用語「マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤」は、本明細書において用いられるとき、限定されないが、コラーゲンペプチド模倣性および非ペプチド模倣性阻害剤(non−petidomimetic inhibitors)、テトラサイクリン誘導体、例えば、ヒドロキサメートペプチド模倣性阻害剤であるバチマスタット、およびその経口生体利用可能なアナログであるマリマスタット、プリノマスタット、BMS−279251、BAY12−9566、TAA211またはAAJ996を含む。
【0107】
用語「mTOR阻害剤」は、本明細書において用いられるとき、限定されないが、ラパマイシン(シロリムス)またはその誘導体、例えば、32−デオキソラパマイシン、16−ペンタ−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−40−0−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、より好ましくは、40−0−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンを含む。ラパマイシン誘導体のさらなる例として、例えば、米国特許第5,362,718号に開示されているような、CCI779もしくは40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]−ラパマイシンまたはその薬学的に許容される塩、例えば、WO99/15530号に開示されているような、ABT578または40−(テトラゾリル)−ラパマイシン、特に、40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン、あるいは例えば、WO98/02441号およびWOO/14387号に開示されているようなラパログ、例えば、AP23573が挙げられる。
【0108】
化合物Iの結晶形態Aが、他の免疫抑制的、免疫調節的、抗炎症的または化学療法的治療と併せて投与される場合、同時投与された免疫抑制性、免疫調節性、抗炎症性、または化学療法的化合物の投与量は、使用した共薬剤の種類、例えば、これがステロイドまたはカルシニューリン阻害剤であるか否か、使用した特定の薬剤、処置される状態などに応じて当然ながら変動することとなる。
【0109】
末梢性ニューロパシーの処置のために、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aを、末梢性ニューロパシー、例えば、脱髄性末梢性ニューロパシーを処置するのに有用なさらなる治療剤と一緒に投与してもよい。例として、第2の治療剤は、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、シクロスポリンG、FK−506、ABT−281、ASM981、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプレン、メトトレキセート、レフルノミド、ミゾリビン、ミコフェノール酸モフェチル、または15−デオキシスペルグアリン)、ステロイド(例えば、プレドニゾンまたはヒドロコルチゾン)、免疫グロブリン、または1型インターフェロンであってもよい。本明細書で定義した化合物Iの塩および第2の作用物質は、同時に投与されても連続して投与されてもよい。
【0110】
上記に従って、本発明は、なおさらなる態様を提供する:
【0111】
5.治療的に有効な無毒性量の本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aおよび少なくとも第2の原薬、例えば、先に示したような、免疫抑制性、免疫調節性、抗炎症性または化学療法的薬剤などの同時投与、例えば同時または逐次的投与を含む、先に定義した方法。
【0112】
6.薬学的組合せ、例えば、a)本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aである第1の作用物質、およびb)少なくとも1個の共同作用物質、例えば、先に開示したような、免疫抑制性、免疫調節性、抗炎症性または化学療法的薬剤などを含むキット。
【0113】
キットは、投与のための指示書を含み得る。
【0114】
用語「同時投与」または「組合せ投与」などは、本明細書において利用されるとき、1人の患者への選択された治療剤の投与を包含することを意味し、該治療剤が必ずしも同一の投与経路によってまたは同時に投与されない処置レジメンを含むことが意図される。
【0115】
用語「薬学的組合せ」は、本明細書において用いられるとき、複数の有効成分の混合または組合せから得られる生成物を意味し、有効成分の固定された組合せおよび固定されていない組合せの両方を含む。用語「固定された組合せ」は、有効成分、例えば、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aおよび共同作用物質が、両方とも、単一体または投薬の形態で患者に同時に投与されることを意味する。用語「固定されていない組合せ」は、有効成分、例えば、本明細書に定義されている化合物Iの結晶形態Aおよび共同作用物質が、両方とも、別個の存在として、または同時に、共にもしくは逐次的のいずれかで、特定の時間制限をすることなく投与されることを意味し、このような投与は、治療有効レベルの2種の化合物を患者の体内に提供する。このような投与はまた、カクテル療法、例えば、3種以上の有効成分の投与にも適用される。
【0116】
実施例部分
これに決して限定されないが、同封の図面を参照して以下の実施例によって本発明を説明する。
【実施例1】
【0117】
1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸(化合物I)の遊離塩基の結晶形態Aの調製
方法
10gの1−4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンズアルデヒド(benzyldehyde)、4.7gの3−アゼチジンカルボン酸およびメタノール(300mL)を混合する。得られた混合物を30分間で45℃まで加熱し、室温で2時間撹拌する。次いで、反応混合物を20〜25℃に冷却し、次いで、NaBHCN(0.73g)のMeOH溶液(30mL)を20分間にわたって添加する。得られた混合物を室温で1時間撹拌する。濃縮後、残渣をEtOAc(200mL)に溶解させ、最小量のHO(20mL)で洗浄する。有機層を水(2×10mL)で洗浄し、濃縮させて、AcOHを可能な限り除去する。残渣を、初めにEtOAc、次いでMeOHで溶出するカラムクロマトグラフィ(長さ5cm、直径3cmの最小のシリカゲルを用いた)で精製して、粘稠な油状物として1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸を得る。残渣を約30mLの体積になるまでトルエンと共沸させ、次いで、ヘプタン(60mL)を添加する。生成物は、純粋な1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸を種結晶として用いた後で結晶化した。懸濁液を20〜25℃で24時間撹拌し、濾過する。フィルタケーキをトルエン/ヘプタン(1:3、10mL)およびヘプタン(20mL)で洗浄し、65℃で16時間乾燥する。生成物は、110℃の融点を有した。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.67 (s, 1 H), 7.60 (m, 2 H), 7.55 (m, 2H), 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 1 H), 5.23 (s, 2 H), 4.32 (bs, 2 H), 4.08 (bs, 4 H), 3.38 (m, 1 H), 2.93 (m, 1 H), 2.78 (q, J = 7.6 Hz, 2 H), 2.26 (s, 3 H), 1.83 (m, 5 H), 1.47 (m, 5 H), 1.24 (t, J = 8.4 Hz, 3 H).
【実施例2】
【0118】
1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸(化合物I)の遊離塩基の結晶形態Aの溶解度および溶解速度
実施例1に記載のように調製した化合物Iの遊離塩基の結晶形態Aの溶解度および溶解速度を種々の溶媒中で試験した。
溶解度測定のために、過剰量の、化合物Iの遊離塩基の形態Aを試験溶媒に添加し、25℃±0.5℃で8日間、さらに37±0.5℃で4日間平衡に保った。スラリーを濾過し、濾液を、HPLC溶解度決定のために保存した。
溶解速度測定を0.5cmのVankelパンチおよびダイアセンブリにおいて、2000ポンドのペレット圧力にて実施した。溶解を、光ファイバ溶解システム(C technologies Inc.)およびCary UV/VIS分光光度計を用いて、200rpmの撹拌速度で測定した。溶液媒体を37±0.5℃で保持し、濃度測定を260nmで行った。
結果を以下の表2〜4に示す。
【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
表2〜4から、化合物Iの遊離塩基の結晶形態Aが、良好な溶解度および比較的速い溶解を示すことが明らかになる。
【0123】
一般的手順
X線粉末回折
標準的方法、例えば、Giacovazzo、C.ら(1995)、Fundamentals of Crystallography、Oxford University Press;Jenkins、R.およびSnyder、R.L.(1996)、Introduction to X−ray Powder Diffractometry、John Wiley & Sons、New York;Bunn、C.W.(1948)、Chemical Crystallography、Clarendon Press、London;またはKlug、H.P.& Alexander、L.E.(1974)、X−ray Diffraction Procedures、John Wiley and Sons、New Yorkに記載されている方法に従って調製したサンプルについて、X線粉末回折分析(XRPD)を実施した。X線分析を、Bruker D8 Advance Powder X−ray Diffactometerを用いて実施した。サンプルを粉末として分析し、試料ホルダに粉末として設置した。
【0124】
XRPD回折角度(2θ)は、±0.2°(2θ)の範囲で変動し得る。
【0125】
以下の実施例のいくつかにおいて、同じ結晶を異なるプロセスで調製する。このような場合には、各プロセスが「本質的に」同じXRPD回折パターンを有する同じ結晶形態を生成したため、同じ代表的な特徴的データを参照する。換言すると、該当するパターン(実験誤差を考慮に入れる)から、同様の結晶形態が調製されたことが明らかであった。
【0126】
出発物質の調製
本明細書において別途記載しない限り、化合物Iの遊離形態をWO2004/103306号の実施例3に記載されているように調製することができる。
【0127】
図面の概要
本明細書に記載した通り得られた結晶をXRPDによって分析した。結果を上記の表にし、図1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】化合物Iの遊離塩基の結晶形態AのXRPD回折図形を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸の結晶形態A。
【請求項2】
2θ=18.2°または20.9°付近に少なくとも1個の特定のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸の結晶形態A。
【請求項3】
2θ=18.2°および20.9°付近に特定のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項1または2に記載の1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸の結晶形態A。
【請求項4】
2θ=7.7°、14.3°、18.2°、20.9°、および24.5°付近に特定のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、前記請求項のいずれか一項に記載の1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸の結晶形態A。
【請求項5】
図1に示したX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有する、前記請求項のいずれか一項に記載の1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸の結晶形態A。
【請求項6】
薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合された、請求項1〜5のいずれか一項に記載の1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸の結晶形態Aを含む医薬組成物。
【請求項7】
医薬としての使用のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸の結晶形態A。
【請求項8】
リンパ球によって媒介される障害または疾患を、そのような処置を必要とする対象において予防または処置する方法であって、有効量の請求項1〜5のいずれか一項に記載の1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸の結晶形態Aを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項9】
器官または組織移植片拒絶、移植片対宿主疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患または状態、筋疾患を、そのような処置を必要とする対象において予防または処置する方法であって、有効量の請求項1〜5のいずれか一項に記載の1−(4−{1−[(E)−4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ]−エチル}−2−エチル−ベンジル)−アゼチジン−3−カルボン酸の結晶形態Aを前記対象に投与することを含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−512884(P2012−512884A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542412(P2011−542412)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/068346
【国際公開番号】WO2010/071794
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】