説明

1流路型油圧シリンダの駆動回路及びそれを用いた拡大ヘッド

【課題】 外部から圧力油を供給する1流路の油圧管路を備える油圧シリンダにおいて、あたかも2流路の如く圧力油を供給して確実な伸縮駆動を行わせる油圧シリンダの駆動回路を提供する。
【解決手段】 油圧シリンダにより駆動される作業機器において、
外部から圧力油を供給すべく1流路の油圧管路を上記油圧シリンダがわへ延長し、延長端から、流路切換弁を介して、上記油圧シリンダのロッド側スペースと、ピストン側スペースとにそれぞれ接続された管路を分岐し、
上記1流路に外部から供給される圧力油の圧力変化により、上記流路切換弁を切換えて、圧力油を上記油圧シリンダのロッド側スペース及びピストン側スペースの一方へ選択的に供給可能とした、
1流路型油圧シリンダの駆動回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、土木建設機械、工作機械、その他各種産業機械における作業機器を駆動する油圧シリンダの駆動回路、及びそれを用いた拡大ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば拡大ヘッドにおける拡大翼の拡開をはじめ、各種土木建設機械における各種作業機器の駆動手段として油圧シリンダを使用し、該油圧シリンダに外部の油圧源から圧力油を供給−戻りの2流路の油圧管路を通じて供給、排出して油圧シリンダを伸縮駆動させる駆動回路が広く使用されている。
【0003】
しかし、上記の油圧2流路型の駆動回路は、配管に費用がかかるばかりでなく、トラブルの発生が多くなり、特にアースオーガ下端に接続された拡大ヘッドの場合は、アースオーガの接続部分の構造が複雑となり、アースオーガ継ぎ足し時の接続、分離作業に手間のかかる欠点が大きかった。
【0004】
そこで、油圧シリンダに圧力油を供給するのみの1流路の油圧管路を配管し、油圧シリンダの戻りの駆動は土圧等の他の外力を利用して行うものが提案された。
【0005】
しかし、後者の提案による1流路型駆動回路では、配管構造が1流路の簡単なものとなる利点が得られるが、油圧シリンダの戻り駆動に確実さが欠ける難点が残されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願第1発明は、各種作業機器を駆動する油圧シリンダに対し、外部から圧力油を供給する1流路の油圧管路を備える簡単な構造を保持しつつ、油圧シリンダに対し、あたかも2流路の如く圧力油を供給して伸縮駆動させる構造簡単な油圧シリンダの駆動回路を提供することを課題とする。
【0007】
本願第2発明は、掘削作業ロッドに装備された油圧シリンダ駆動式拡大ヘッドにおいて、1流路の油圧管路から供給される圧力油をもって、あたかも2流路の如く油圧シリンダに圧力油を供給して駆動する拡大ヘッドを提供することを課題とする。
【0008】
本願第3発明は、上記第2発明の拡大ヘッドにおいて、油圧シリンダの戻りの圧力油を地中に排出せずに、再使用を可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題解決の手段として、本願第1発明は、
油圧シリンダにより駆動される作業機器において、
外部から圧力油を供給すべく1流路の油圧管路を上記油圧シリンダがわへ延長し、延長端から、流路切換弁を介して、上記油圧シリンダのロッド側スペースと、ピストン側スペースとにそれぞれ接続された管路を分岐し、
上記1流路に外部から供給される圧力油の圧力変化により、上記流路切換弁を切換えて、圧力油を上記油圧シリンダのロッド側スペース及びピストン側スペースの一方へ選択的に供給可能とした、
1流路型油圧シリンダの駆動回路を提案する。
【0010】
本願第2発明は、
ヘッドロッドの外側部に拡大翼を拡縮揺動自在に支持すると共に、ヘッドロッド内に油圧シリンダを内装し、該油圧シリンダの伸縮駆動にて上記拡大翼を拡縮させる拡大ヘッドにおいて、
外部から圧力油を供給すべく1流路の油圧管路を上記油圧シリンダがわへ延長し、延長端から、流路切換弁を介して、上記油圧シリンダのロッド側スペースと、ピストン側スペースとにそれぞれ接続された管路を分岐し、
上記1流路に外部から供給される圧力油の圧力変化により、上記流路切換弁を切換えて、圧力油を上記油圧シリンダのロッド側スペース及びピストン側スペースの一方へ選択的に供給可能とした、
1流路型油圧シリンダの駆動式拡大ヘッドを提案し、
【0011】
本願第3発明は、
上記油圧シリンダの一方のスペースへの圧力油供給時に、他方のスペースから出る戻り油を排出管路を通じて受け入れる開閉プラグつき戻り油貯留室をさらに設けた、
1流路型油圧シリンダ駆動式拡大ヘッドを提案する。
【発明の効果】
【0012】
本願第1発明の1流路型油圧シリンダの駆動回路によれば、外部から圧力油を供給する1流路の油圧管路を備えることにより、簡単な構造を維持することができ、しかも外部から供給する圧力油の圧力変化により、圧力油を油圧シリンダのロッド側スペースとピストン側スペースのいずれか一方へ選択的に供給して、あたかも2流路型のように油圧シリンダを確実に伸縮駆動させ、作業機器を確実に作動させることができるのである。
【0013】
本願第2発明の1流路型油圧シリンダ駆動式拡大ヘッドによれば、外部から圧力油を供給する1流路の油圧管路を備えることにより、簡単な構造を維持することができ、しかも外部から供給する圧力油をその圧力変化により油圧シリンダのロッド側スペースとピストン側スペースの一方へ選択的に供給することにより、あたかも2流路型のように油圧シリンダを確実に伸縮駆動させ、拡大翼を確実に拡縮できるのである。
【0014】
本願第3発明の1流路型油圧シリンダ駆動式拡大ヘッドによれば、上記第2発明の効果に加え、油圧シリンダからの戻りの圧力油を地中に排出することなく、貯留室に貯油することができ、それにより地中の造成物に障害を与えるようなことはなく、しかも貴重な作動油を清浄なまま貯留室から取り出して再使用に向けることができるようになり、経済的に極めて有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(イ)本発明による1流路型油圧シリンダ駆動式拡大ヘッドの縦断正面図である。 (ロ)拡大翼拡開状態の同上一部の正面図である。
【図2】(イ)圧力油を油圧シリンダのロッド側スペースに供給した状態の油圧シリンダの駆動回路図である。 (ロ)流路切換弁を切換えた状態の同上駆動回路図である。 (ハ)圧力油を油圧シリンダのピストン側スペースに供給した状態の同上駆動回路図である。
【実施例】
【0016】
以下、本願発明の1流路型油圧シリンダ駆動式拡大ヘッドの例について説明する。図1の拡大ヘッド(1)において、そのヘッドロッドは、中空円筒状の主ロッド(2)の上端部に、同じく中空円筒状の副ロッド(3)をオス、メス継手により同一軸心線上に接続してあり、その主ロッド(2)下端部外側の直径方向相対する位置に形成されたブラケット(4)、(4)に、2本の拡大翼(5)、(5)の各基端部を軸(6)、(6)によりヘッドロッド縦断平面上で羽はばき状に揺動できるようにそれぞれ軸支してある。
【0017】
上記拡大翼(5)、(5)を駆動すべき油圧シリンダのチューブ(7)は、上記主ロッド(2)の下部中空内に固定されており、このチューブ(7)の上端板に上端を固定された中空ロッド(8)を、上記チューブ(7)下端板ついで主ロッド(2)を貫通して下方へ突出し、突出下端に、二重らせん羽根からなる掘削ヘッド(9)のボス(10)を固定支持させ、この中空ロッド(8)に摺動自在に被嵌されたピストン(11)を上記チューブ(7)内に摺動自在に嵌合すると共に、ピストンロッド(12)を上記中空ロッド(8)に摺動自在に被嵌して主ロッド(2)から下方へ突出させ、突出部分に固定されたブラケット(13)、(13)にリンク(14)、(14)の一端を回転自在に連結すると共に、リンク(14)、(14)の他端を上記拡大翼(5)、(5)の中間部に回転自在に連結してある。
【0018】
それにより上記ピストン(11)を昇降駆動すれば、拡大翼(5)、(5)が図1(イ)の閉縮位置と、同図(ロ)の拡開位置とに拡縮揺動する。
【0019】
上記油圧シリンダがわへ、外部の油圧源から油圧ポンプにより圧力油を供給する1流路の油圧管路(15)が上記副ロッド(3)内まで延長され、その延長端に、該油圧管路(15)を経て供給される圧力油の圧力変化により切換作動する流路切換弁(16)、上記油圧シリンダチューブ(7)のロッド側スペース及びピストン側スペースの一方へ選択的に圧力油を供給する切換管路(17)、(18)、油圧シリンダチューブ(7)の他方のスペースからの戻り油を貯留室(20)へ案内する戻り油案内管路(19)等を含む油圧シリンダの駆動回路(P)をロッド(2)、(3)内に内装してある。
【0020】
上記戻り油貯留室(20)は、図1(イ)に示すように副ロッド(3)内に設けられ、その下端部に油を取り出すための開閉プラグ(21)を設けてある。
【0021】
上記駆動回路(P)の詳細を図2に示す。今、便宜上1流路の油圧管路(15)に供給される圧力油に、低圧:aメガパスカル、中圧:bメガパスカル、高圧:cメガパスカルの3種を用意し、それに対応して流路切換弁(16)のスプリングをbメガパスカルに相当する強さ、リリーフ弁(22)のスプリングをcメガパスカルに相当する強さとする。
【0022】
まず、図2(イ)のようにaメガパスカルの圧力油を油圧管路(15)に供給すると、該圧力油は流路切換弁(16)の図示のポート、ついで切換管路(17)を経て油圧シリンダチューブ(7)のロッド側スペースに送られ、それによりピストン(11)を上昇させ、該ピストン(11)の上昇が図1のリンク(14)、(14)を介して拡大翼(5)、(5)を拡開させる。その際、油圧シリンダチューブ(7)のピストン側スペースにある圧力油は、管路(23)、開いたパイロットチェック弁(24)、ついで戻り油案内管路(19)を経て戻り油貯留室(20)に送られ、貯留される。
【0023】
次に、aメガパスカルに代え、bメガパスカルの圧力油を油圧管路(15)に供給する
と、流路切換弁(16)のポートを(ロ)図のポートに切換える。
【0024】
そこで、bメガパスカルに代え、cメガパスカルの圧力油を油圧管路(15)に供給すると、(ハ)図のように該圧力油は流路切換弁(16)の新たなポート、ついで切換管路(18)、リリーフ弁(22)を経て油圧シリンダチューブ(7)のピストン側スペースに送られ、それによりピストン(11)を降下させ、該ピストン(11)の降下が図1のリンク(14)、(14)を介して拡大翼(5)、(5)を閉縮させる。その際油圧シリンダチューブ(7)のロッド側スペースにある圧力油は、管路(25)、開いたパイロットチェック弁(26)ついで戻り油案内管路(19)を経て貯留室(20)に送られ、貯留される。
【0025】
上記拡大ヘッド(1)を掘削スクリューロッドの下端に接続して地盤に掘進し、所定深さにおいて、上記のような油圧操作により拡開した拡大翼(5)、(5)により拡大掘削を行いつつ、セメントミルクを孔内に注入して拡大球根を造成した後、上記のような拡大翼(5)、(5)を閉縮して地上に引き抜いたら、上記貯留室(20)の開閉プラグ(21)を開いて貯留された作動油を取り出し、これを油圧源に戻して再使用する。
【符号の説明】
【0026】
1 拡大ヘッド
2 主ロッド
3 副ロッド
5 拡大翼
7 油圧シリンダチューブ
15 1流路油圧管路
16 流路切換弁
17、18 切換管路
19 戻り油案内管路
20 貯留室
21 開閉プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧シリンダにより駆動される作業機器において、
外部から圧力油を供給すべく1流路の油圧管路を上記油圧シリンダがわへ延長し、延長端から、流路切換弁を介して、上記油圧シリンダのロッド側スペースと、ピストン側スペースとにそれぞれ接続された管路を分岐し、
上記1流路に外部から供給される圧力油の圧力変化により、上記流路切換弁を切換えて、圧力油を上記油圧シリンダのロッド側スペース及びピストン側スペースの一方へ選択的に供給可能とした、
1流路型油圧シリンダの駆動回路。
【請求項2】
ヘッドロッドの外側部に拡大翼を拡縮揺動自在に支持すると共に、ヘッドロッド内に油圧シリンダを内装し、該油圧シリンダの伸縮駆動にて上記拡大翼を拡縮させる拡大ヘッドにおいて、
外部から圧力油を供給すべく1流路の油圧管路を上記油圧シリンダがわへ延長し、延長端から、流路切換弁を介して、上記油圧シリンダのロッド側スペースと、ピストン側スペースとにそれぞれ接続された管路を分岐し、
上記1流路に外部から供給される圧力油の圧力変化により、上記流路切換弁を切換えて、圧力油を上記油圧シリンダのロッド側スペース及びピストン側スペースの一方へ選択的に供給可能とした、
1流路型油圧シリンダの駆動式拡大ヘッド。
【請求項3】
上記油圧シリンダの一方のスペースへの圧力油供給時に、他方のスペースから出る戻り油を排出管路を通じて受け入れる開閉プラグつき戻り油貯留室をさらに設けた、
1流路型油圧シリンダ駆動式拡大ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−58565(P2011−58565A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209037(P2009−209037)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(594014580)大和基工株式会社 (5)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】