説明

1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン組成物

本発明は、溶剤の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)組成物に関する。本発明はまた、油を溶解する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤の分野に関する。本発明は、さらに詳しくは1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)を基剤とする組成物に関する。本発明はまた、油を溶解する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶剤の力は、一般にカウリブタノール値によって特徴付けられる。カウリブタノール値は、カウリ樹脂の標準溶液20gをn−ブタノールに加えた場合に定義された濁りの度合いを生じるのに要する溶剤の25℃における容量mlである。この値は、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141bとしても知られている)については57に相当する。
【0003】
この良好な溶解力の他に、HCFC−141bはまた、極めて良好な表面湿潤能を与える低い表面張力(19.3mN/mに相当する)によっても特徴付けられる。HCFC−141bの沸点は32℃に相当することから、これは急速に蒸発することを可能にし、従って溶解した製品の支持体上への被着(deposition)を促進させることを可能にする。最後に、HCFC−141bは、密閉カップ引火点をもたず、従って不燃性溶剤である。
【0004】
従って、HCFC−141bは、多数の有機化合物、特にシリコーン油に対して良好な溶解能を示す性質を有する。
【0005】
しかし、HCFC−141bは、オゾン層に対するこの無視し得ない作用のために(オゾン分解能ODP=0.11)、この全廃を徐々に目ざす重要な規制の下に置かれている。従って、オゾン層に害を及ぼす物質に関する欧州規則(第2037/2000号)は、禁止が2009年から欧州で効力を生じるものである(但し航空学及び航空宇宙の分野を除く。)が、2002年1月1日以降、溶剤用途においてHCFC−141bなどのHCFC類(ハイドロフルオロカーボン類)の使用を禁止している。
【0006】
欧州特許出願公開第974642号明細書は、オゾン層に対する影響がないという理由でHCFC−141bの代替品として1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfcという名前で知られている)と1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−4310meeという名前で知られている)との共沸組成物を提案している。しかし、このような組成物のカウリブタノール値は、HCFC−141bのカウリブタノール値よりもはるかに低い。HFC−365mfcのカウリブタノール値は12であり、HFC−4310meeの9に匹敵する。
【0007】
30重量%から70重量%の1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンと70重量%から30重量%の塩化メチレンとからなる組成物もまた知られている(フランス特許出願公開第2 694 942号明細書)。
【0008】
さらにまた、環境保護の一環として、現在の傾向は蒸発による溶剤の排出を減らす方向にある。従って、多くの「排出」用途、すなわち溶剤が空気中に蒸発する傾向がある用途においては、室温よりも低い温度で効果がある溶剤が探し求められる。
【発明の開示】
【0009】
従って、本発明は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンと、塩化メチレンと、2から4個の炭素原子を含有する少なくとも1種のアルコールとを含有してなる組成物を提供する。
【0010】
エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、第二級ブタノール(sec−ブタノール)又はtert−ブタノールが適切であり得る。イソプロパノール又は第二級ブタノールを使用することが好ましい。
【0011】
本発明の組成物中に存在させるアルコールの全体量は、1重量%から10重量%の間にあることが好ましい。
【0012】
本発明は、特に:
1) 27重量%から69重量%のHFC−365mfcと、69重量%から27重量%の塩化メチレンと、1重量%から10重量%のアルコール、好ましくは1重量%から5重量%のアルコールとを含有する組成物;
2) 47.5重量%から60重量%のHFC−365mfcと、35重量%から47.5重量%の塩化メチレンと、1重量%から5重量%のアルコールとを含有する組成物;
を提供する。
【0013】
本発明の組成物は、種々の成分を一緒に混合することによって調製し得る。本発明の組成物は、2から4個の炭素原子を含有する少なくとも1種のアルコールを、HFC−365mfcと塩化メチレンとの共沸組成物又は実質的共沸組成物に加えることによって都合よく調製される。
【0014】
本発明の組成物は、良好な溶解力及び良好な表面湿潤性を有し、さらにまた不燃性である。
【0015】
本発明の組成物は、産業において種々様々な固体表面(金属部品、ガラス、プラスチック及び複合材料)を洗浄、脱脂及び乾燥するのに使用し得る。本発明の組成物はまた、印刷回路の製造において溶接部の品質を向上させるのに使用された物質の残留物を除去するのにも使用し得る。この除去操作は、当該技術では「脱フラックス」と呼ばれる。
【0016】
本発明の組成物は、医療グレードのシリコーン油を、機器、例えば注射針又はカテーテル針の表面に被着させるのに都合よく使用し得る。また、本発明の組成物は、シリコーン油を台所用品に被着させるのに使用し得る。
【0017】
これらの組成物はまた、シリコーン系グリース又は重合体を被着させるための薬剤としても使用し得るし又はシリコーン油又はグリースで被覆された部品を洗浄するための製剤においても使用し得る。
【0018】
本発明の組成物はまた、プラスチック部品を製造する方法(押出し)において金型用の付着防止剤(これはエアゾールの形態である場合が多い)の配合物に含有されるシリコーン油を溶解するために使用し得る。
【0019】
本発明の組成物はまた、ポリウレタンフォーム発泡剤として、エアゾール噴射剤として、熱交換液として、繊維製品ドライクリーニング剤として又は冷凍・冷却装置洗浄剤としても使用し得る。
【0020】
本発明の主題はまた、油を溶解する方法である。この方法は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンと、塩化メチレンと、2から4個の炭素原子を含有する少なくとも1種のアルコールとを含有してなる組成物を使用することを特徴とする。
【0021】
本発明の方法は、10℃よりも低い温度で行うことが好ましい。また、0から8℃の間の温度も好ましい。3から6℃も間の温度が都合よく選択される。
【0022】
この方法は、シリコーン油を溶解するのに特に適している。
【0023】
前述のポイント1)の組成物は、この方法を実施するのに特に適している。前述のポイント2)の組成物もまた適している。
【0024】
この方法は、特に医療分野において、使用する組成物中にイソプロパノール又はsec−ブタノールが存在する場合には極めて重要である。
【0025】
(実施例)
(実験部)
次の組成物を調製した。
【0026】
組成物A:57重量%のHFC365mfcと43重量%の塩化メチレンとの共沸組成物
組成物B:95重量%の組成物Aと5重量%のsec−ブタノール
組成物C:95重量%の組成物Aと5重量%のイソプロパノール
【実施例1】
【0027】
シリコーン油溶解試験の説明
クロンプトン・コーポレーション社(米国、グリニッチ)製のシリコーン油Crompton L9000−1000を使用する。これは、室温(22℃)で0.97の密度、200℃よりも高い沸点及び132℃の引火点(ペンスキー・マルテンス法、密閉カップで)を有する透明液体ヒドロキシポリジメチルシロキサンである。
【0028】
混合物を室温で、すなわち22℃で調製する。
【0029】
このようにして、試験組成物18mlとシリコーン油1.94gとを50mlフラスコに導入する、すなわち10容量%溶液を調製する。混合物を次いで手で5分間攪拌する。
【0030】
このようにして調製した混合物の一部を、室温(22℃)で24時間放置する。混合物のこの他の部分を低温(6℃)で7日間放置する。
【0031】
種々の温度での保存期間後に、混合物の外観を正確に観察する。混合物が透明で、澄んで、均質な単一層であり及び安定である場合に、室温又は6℃で溶解性があるとみなす。
【0032】
結果
【0033】
【表1】

【実施例2】
【0034】
燃焼性試験の説明
組成物の燃焼性を評価するために、本発明者らはこの引火点を標準法ASTM D3828、すなわちセタフラッシュ密閉カップ法に従って測定した。引火点は、液体がこの表面で点火源の作用下に空気中で可燃性であるが、活性化エネルギーを取り除いた場合には火炎を持続することがない混合物を形成するのに十分な量で蒸気を放出する最低温度である。
【0035】
組成物のそれぞれについて、測定は5回繰り返した。
【0036】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンと、塩化メチレンと、2から4個の炭素原子を含有する少なくとも1種のアルコールとを含有してなる組成物。
【請求項2】
アルコールの全体量が1重量%から10重量%の間、好ましくは1重量%から5重量%の間にあることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
27重量%から69重量%のHFC−365mfcと、69重量%から27重量%の塩化メチレンと、1重量%から10重量%のアルコール、好ましくは1重量%から5重量%のアルコールとを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
47.5重量%から60重量%のHFC−365mfcと、35重量%から47.5重量%の塩化メチレンと、1重量%から5重量%のアルコールとを含有することを特徴とする、請求項1から3に記載の組成物。
【請求項5】
アルコールがイソプロパノール及びsec−ブタノールから選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物を使用することを特徴とする、油を溶解する方法。
【請求項7】
10℃よりも低い温度、好ましくは0から8℃の間の温度で行うことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
温度が3から6℃であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ポリウレタンフォーム発泡剤として、エアゾール噴射剤として、熱交換液として、繊維製品ドライクリーニング剤として又は冷凍・冷却装置洗浄剤としての、請求項1から5の一項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2008−508386(P2008−508386A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523106(P2007−523106)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001828
【国際公開番号】WO2006/024729
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】