説明

1,3−ベンゾチアジノン誘導体およびその用途

【課題】酸化ストレスに起因する疾患などの予防・治療剤として有用である化合物を提供すること。
【解決手段】


〔式中、R1はアルキル、アルケニルもしくはアルキニル等を、R2およびR3は水素原子もしくは置換基を有していてもよい炭化水素基を示、nは0〜2の整数を示す。〕で表される化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬として有用な新規1,3−ベンゾチアジノン誘導体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の呼吸や代謝の副産物として生じる活性酸素種は、DNA、脂質や蛋白質などの生体成分を酸化する作用を有し、細胞や組織に傷害を引起す。そのため通常は、このような酸化ストレスから細胞や組織を守るために、種々の防御系が働いている。しかし、何らかの原因でこの防御系と産生系のバランスが崩れると生体にとって好ましくない状態になる。実際、酸化ストレスが循環器系疾患、骨関節疾患、呼吸器疾患、腸疾患、腎疾患、中枢疾患、ガン、糖尿病など種々の疾患の発症や増悪に関与することが指摘されている(Current Pharmaceutical Design 第10巻、879頁、2004年(非特許文献1);Alimentary Pharmacology and Therapeutics 第20巻、177頁、2004年(非特許文献2);Journal of Investigative Medicine 第49巻、566頁、2001年(非特許文献3))。
【0003】
アンチオキシダント・レスポンス・エレメント(Antioxidant response element:以下「ARE」と呼ぶことがある)は、酸化ストレスに対する多様な防御因子の発現を調節しており、その転写活性化は酸化ストレスに対する最も重要な細胞の防御機構の一つと考えられている(Current Pharmaceutical Design 第10巻、879頁、2004年(非特許文献4))。またリウマチの治療に用いられる金製剤やNSAIDの薬効にはAREで制御される防御因子の発現亢進が重要な役割を果たしている可能性が指摘されている(The Journal of Biological Chemistry 第276巻、34074頁、2001年(非特許文献5);Free Radical Biology and Medicine 第37巻、650頁、2002年(非特許文献6))。これらのことからARE活性化は、酸化ストレスが関与する疾患の抑制につながることが予想されている。実際、この推定に基づいてARE活性化剤を治療薬として開発する動きが進み始めているが、未だ臨床に応用された化合物はない(化学と生物 第43巻、20頁、2005年(非特許文献7))。 一方、WO 03/090782(特許文献1)、WO 04/060881(特許文献2)、WO 06/132438(特許文献3)において、マクロファージ遊走阻止因子(Macrophage migration inhibitory factor:以下「MIF」と呼ぶことがある)に結合する低分子化合物1,3-ベンゾチアジノン誘導体が、ARE制御下にある遺伝子の発現を上昇させること、細胞保護作用を示すことが報告されている。
【特許文献1】WO 03/090782
【特許文献2】WO 04/060881
【特許文献3】WO 06/132438
【非特許文献1】Current Pharmaceutical Design 第10巻、879頁、2004年
【非特許文献2】Alimentary Pharmacology and Therapeutics 第20巻、177頁、2004年
【非特許文献3】Journal of Investigative Medicine 第49巻、566頁、2001年
【非特許文献4】Current Pharmaceutical Design 第10巻、879頁、2004年
【非特許文献5】The Journal of Biological Chemistry 第276巻、34074頁、2001年
【非特許文献6】Free Radical Biology and Medicine 第37巻、650頁、2002年
【非特許文献7】化学と生物 第43巻、20頁、2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬物動態に優れ、副作用の低減された安全なMIF結合剤、ARE活性化剤、細胞保護剤などの医薬の開発が切望されている。
また、近年、新薬の開発において、チトクロームP-450(CYP1A2, CYP2C9, CYP2C19, CYP2D6, CYP2C8, CYP3A4)の代謝酵素の阻害活性が、併用する他の薬剤の代謝に影響を与えることがしばしばあるため、他剤との相互作用のリスクの少ない化合物が望ましいとされている。
たとえば、抗菌薬シプロフロキサンや抗うつ薬フルボキサミンなどの薬物は、CYP1A2を阻害する薬剤であることから、他剤との併用が制限されている。
以上のような状況を鑑み、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」と呼ぶことがある。)が、MIFに結合する能力を有し、優れた細胞保護作用や細胞死抑制作用を有すること、ARE制御下にある遺伝子(例、種々のストレスから細胞を防御する因子の遺伝子等)の発現促進作用、ARE制御下にある遺伝子タンパク質(遺伝子産物)の産生亢進(促進)作用または活性促進作用などを有すること、化合物(I)は、薬物動態(経口吸収性など)に著しく優れ、かつ副作用が顕著に低減されること、化合物(I)は、チトクロームP-450(CYP1A2, CYP2C9, CYP2C19, CYP2D6, CYP2C8, CYP3A4)の各種代謝酵素をほとんど阻害しないことなどを見出し、これらの知見に基づいてさらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)
【化2】

〔式中、R1は独立してハロゲン原子、ヒドロキシ、ニトロ、ハロゲン化されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、置換基を有していてもよいアルコキシ、アシルまたは置換基を有していてもよいアミノを、R2およびR3は同一でも異なっていてもよく、水素原子もしくは置換基を有していてもよい炭化水素基を示すか、またはR2およびR3は隣接する窒素原子とともに含窒素複素環基を形成してもよく、nは0〜2の整数を示す。〕で表される化合物またはその塩、
(2)R1が、ハロゲン原子である上記(1)記載の化合物、
(3)R2およびR3は同一または異なって水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基である上記(1)または(2)に記載の化合物、
(4)含窒素複素環基が、1−ピロリジニルまたは1−ピペリジニルである上記(1)または(2)に記載の化合物、
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載の化合物またはその塩を含有してなるマクロファージ遊走阻止因子(MIF)結合剤、
(6)上記(1)から(4)のいずれかに記載の化合物またはその塩を含有してなるアンチオキシダント・レスポンス・エレメント(ARE)活性化剤、
(7)上記(1)から(4)のいずれかに記載の化合物またはその塩を含有してなる細胞保護剤、
(8)上記(1)から(4)のいずれかに記載の化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグを含有してなる医薬、
(9)酸化ストレスに起因する疾患の予防・治療剤である上記(8)記載の医薬、
(10)循環器系疾患、骨・関節疾患、感染症疾患、炎症性疾患、腎疾患、中枢疾患、癌または糖尿病の予防・治療剤である上記(8)記載の医薬、
(11)哺乳動物に対して、上記(1)記載の化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグの有効量を投与することを特徴とする循環器系疾患、骨・関節疾患、感染症疾患、炎症性疾患、腎疾患、中枢疾患、癌または糖尿病の予防・治療方法、
(12)循環器系疾患、骨・関節疾患、感染症疾患、炎症性疾患、腎疾患、中枢疾患、癌または糖尿病の予防・治療剤を製造するための、上記(1)記載の化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグの使用である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化合物(I)の好ましい態様は、MIFに結合する能力を有し、薬物動態(経口吸収性)に優れ、優れた細胞保護作用、細胞死抑制作用を有するので、副作用の低減された医薬、細胞保護剤などとして有用である。
さらに、ARE制御下にある遺伝子(例、種々のストレスから細胞を防御する因子の遺伝子等)発現を促進、ARE制御下にある遺伝子タンパク質(遺伝子産物)の産生を亢進または活性を促進するのでARE活性化剤としても有用である。よって、本発明の化合物(I)は、例えば、酸化ストレスに起因する疾患、例えば、循環器系疾患、骨・関節疾患、感染症疾患、炎症性疾患、腎疾患、中枢疾患、癌または糖尿病の予防・治療剤や老化予防剤などの医薬として有用である。
特に、化合物(I)は、チトクロームP-450代謝酵素、特にCYP1A2の阻害活性がほとんどないことから、併用薬剤との相互作用による臨床上の悪影響がないなどの優れた利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施をすることができる。
本発明の一実施形態は、上記式(I)〔R1は独立してハロゲン原子、ヒドロキシ、ニトロ、ハロゲン化されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、置換基を有していてもよいアルコキシ、アシルまたは置換基を有していてもよいアミノを、R2およびR3は同一でも異なっていてもよく、水素原子もしくは置換基を有していてもよい炭化水素基を示すか、またはR2およびR3は隣接する窒素原子とともに含窒素複素環基を形成してもよく、nは0〜2の整数を示す。〕で表される化合物またはその塩である。
【0008】
上記式(I)中、R1は、1,3-ベンゾチアジノン骨格のベンゼン環上の置換基を示し、ハロゲン原子、ヒドロキシ、ニトロ、ハロゲン化されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、置換基を有していてもよいアルコキシ、アシルまたは置換基を有していてもよいアミノを示す。R1は、好ましくはハロゲン原子、ヒドロキシ、ニトロ、ハロゲン化されていてもよいアルキル、置換基を有していてもよいアルコキシ、アシルまたは置換基を有していてもよいアミノである。
1で示される「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
【0009】
1で示される「ハロゲン化されていてもよいアルキル」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)を有していてもよいアルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどのC1-6アルキルなど)などが挙げられる。具体例としては、メチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、エチル、2−ブロモエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、4,4,4−トリフルオロブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、5,5,5−トリフルオロペンチル、ヘキシル、6,6,6−トリフルオロヘキシルなどが挙げられる。
1で示される「ハロゲン化されていてもよいアルケニルもしくはアルキニル」としては、例えば上記「ハロゲン化されていてもよいアルキル」中に、1〜2個の二重結合または三重結合を有するものが挙げられる。
【0010】
1で示される「置換基を有していてもよいアルコキシ」の「アルコキシ」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどのC1-8アルコキシなどが挙げられる。
1で示される「置換基を有していてもよいアルコキシ」の「置換基」としては、後述するR10、R11、R12、R14、R15、R16またはR17で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」として例示した置換基と同様のものが挙げられ、置換可能な位置に1ないし3個有していてよい。
1で示される「アシル」としては、例えば、式: −(C=O)−R10、−(C=O)−OR11、−(C=O)−NR1213、−(C=S)−NHR14、−SO−R15、−SO2−R16 または −SO2−NHR17〔式中、R10、R11、R12、R14およびR17はそれぞれ水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基、R13は水素原子またはC1-6アルキル、R15またはR16は置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を示す〕で表されるアシルなどが挙げられる。
【0011】
前記式中、R10、R11、R12、R14、R15、R16またはR17で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「炭化水素基」としては、例えば、鎖状または環状炭化水素基(例、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキルなど)などが挙げられる。このうち、炭素数1ないし16個の鎖状または環状炭化水素基などが好ましい。
「アルキル」としては、例えばC1-6アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなど)などが好ましい。
「アルケニル」としては、例えばC2-6アルケニル(例、ビニル、アリル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−2−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニルなど)などが好ましい。
「アルキニル」としては、例えば C2-6アルキニル(例、エチニル、プロパルギル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ヘキシニルなど)などが好ましい。
「シクロアルキル」としては、例えばC3-6シクロアルキル(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)などが好ましい。
「アリール」としては、例えばC6-14アリール(例、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、2−アンスリルなど)などが好ましい。
「アラルキル」としては、例えばC7-16アラルキル(例、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチルなど)などが好ましい。
【0012】
10、R11、R12、R14、R15、R16またはR17で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」としては、例えばハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、C1-3アルキレンジオキシ(例、メチレンジオキシ、エチレンジオキシなど)、ニトロ、シアノ、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル、ハロゲン化されていてもよいC2-6アルケニル、カルボキシC2-6アルケニル(例、2−カルボキシエテニル、2−カルボキシ−2−メチルエテニルなど)、ハロゲン化されていてもよいC2-6アルキニル、ハロゲン化されていてもよいC3-6シクロアルキル、C6-14アリール(例、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、2−アンスリルなど)、ハロゲン化されていてもよいC1-8アルコキシ、C1-6アルコキシ−カルボニル−C1-6アルコキシ(例、エトキシカルボニルメチルオキシなど)、ヒドロキシ、C6-14アリールオキシ(例、フェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなど)、C7-16アラルキルオキシ(例、ベンジルオキシ、フェネチルオキシなど)、メルカプト、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルチオ、C6-14アリールチオ(例、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオなど)、C7-16アラルキルチオ(例、ベンジルチオ、フェネチルチオなど)、アミノ、モノ−C1-6アルキルアミノ(例、メチルアミノ、エチルアミノなど)、モノ−C6-14アリールアミノ(例、フェニルアミノ、1−ナフチルアミノ、2−ナフチルアミノなど)、ジ−C1-6アルキルアミノ(例、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノなど)、ジ−C6-14アリールアミノ(例、ジフェニルアミノなど)、ホルミル、カルボキシ、C1-6アルキル−カルボニル(例、アセチル、プロピオニルなど)、C3-6シクロアルキル−カルボニル(例、シクロプロピルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニルなど)、C1-6アルコキシ−カルボニル(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニルなど)、C6-14アリール−カルボニル(例、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイルなど)、C7-16アラルキル−カルボニル(例、フェニルアセチル、3−フェニルプロピオニルなど)、C6-14アリールオキシ−カルボニル(例、フェノキシカルボニルなど)、C7-16アラルキルオキシ−カルボニル(例、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニルなど)、5ないし6員複素環カルボニル(例、ニコチノイル、イソニコチノイル、テノイル、フロイル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、ピペラジン−1−イルカルボニル、ピロリジン−1−イルカルボニルなど)、カルバモイル、モノ−C1-6アルキル−カルバモイル(例、メチルカルバモイル、エチルカルバモイルなど)、ジ−C1-6アルキル−カルバモイル(例、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、エチルメチルカルバモイルなど)、C6-14アリール−カルバモイル(例、フェニルカルバモイル、1−ナフチルカルバモイル、2−ナフチルカルバモイルなど)、5ないし6員複素環カルバモイル(例、2−ピリジルカルバモイル、3−ピリジルカルバモイル、4−ピリジルカルバモイル、2−チエニルカルバモイル、3−チエニルカルバモイルなど)、C1-6アルキルスルホニル(例、メチルスルホニル、エチルスルホニルなど)、C6-14アリールスルホニル(例、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル、2−ナフチルスルホニルなど)、ホルミルアミノ、C1-6アルキル−カルボニルアミノ(例、アセチルアミノなど)、C6-14アリール−カルボニルアミノ(例、ベンゾイルアミノ、ナフトイルアミノなど)、C1-6アルコキシ−カルボニルアミノ(例、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルボニルアミノ、ブトキシカルボニルアミノなど)、C1-6アルキルスルホニルアミノ(例、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノなど)、C6-14アリールスルホニルアミノ(例、フェニルスルホニルアミノ、2−ナフチルスルホニルアミノ、1−ナフチルスルホニルアミノなど)、C1-6アルキル−カルボニルオキシ(例、アセトキシ、プロピオニルオキシなど)、C6-14アリール−カルボニルオキシ(例、ベンゾイルオキシ、ナフチルカルボニルオキシなど)、C1-6アルコキシ−カルボニルオキシ(例、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシなど)、モノ−C1-6アルキル−カルバモイルオキシ(例、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシなど)、ジ−C1-6アルキル−カルバモイルオキシ(例、ジメチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシなど)、C6-14アリール−カルバモイルオキシ(例、フェニルカルバモイルオキシ、ナフチルカルバモイルオキシなど)、ニコチノイルオキシ、置換基を有していてもよい5ないし7員飽和環状アミノ、5ないし10員芳香族複素環基(例、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、8−キノリル、1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル、1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル、2−ベンゾ[b]フラニル、3−ベンゾ[b]フラニルなど)、スルホ、C1-6アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなど)で置換されていてもよい2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イルなどが挙げられる。
【0013】
該「炭化水素基」は、例えば上記置換基を、置換可能な位置に1ないし5個、好ましくは1ないし3個有していてもよく、置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。
前記「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)を有していてもよいアルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどのC1-6アルキルなど)などが挙げられる。具体例としては、メチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、エチル、2−ブロモエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、4,4,4−トリフルオロブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、5,5,5−トリフルオロペンチル、ヘキシル、6,6,6−トリフルオロヘキシルなどが挙げられる。
【0014】
前記「ハロゲン化されていてもよいC2-6アルケニル」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)を有していてもよいC2-6アルケニル(例、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、2−ブテン−1−イル、4−ペンテン−1−イル、5−へキセン−1−イルなど)などが挙げられる。
前記「ハロゲン化されていてもよいC2-6アルキニル」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)を有していてもよいC2-6アルキニル(例、2−ブチン−1−イル、4−ペンチン−1−イル、5−へキシン−1−イルなど)などが挙げられる。
【0015】
前記「ハロゲン化されていてもよいC3-6シクロアルキル」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)を有していてもよいC3-6シクロアルキル(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)などが挙げられる。具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4,4−ジクロロシクロヘキシル、2,2,3,3−テトラフルオロシクロペンチル、4−クロロシクロヘキシルなどが挙げられる。
【0016】
前記「ハロゲン化されていてもよいC1-8アルコキシ」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)を有していてもよいC1-8アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなど)などが挙げられる。具体例としては、例えばメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、4,4,4−トリフルオロブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられる。
前記「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルチオ」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)を有していてもよいC1-6アルキルチオ(例、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオなど)などが挙げられる。具体例としては、メチルチオ、ジフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、4,4,4−トリフルオロブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオなどが挙げられる。
【0017】
前記「置換基を有していてもよい5ないし7員飽和環状アミノ」の「5ないし7員飽和環状アミノ」としては、例えば、1個の窒素原子と炭素原子以外に、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれるヘテロ原子を含んでいてもよい5ないし7員飽和環状アミノが挙げられ、具体例としては、ピロリジン−1−イル、ピペリジノ、ピペラジン−1−イル、モルホリノ、チオモルホリノ、テトラヒドロアゼピン−1−イルなどが挙げられる。
該「置換基を有していてもよい5ないし7員飽和環状アミノ」の「置換基」としては、例えばC1-6アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなど)、C6-14アリール(例、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、2−アンスリルなど)、C1-6アルキル−カルボニル(例、アセチル、プロピオニルなど)、5ないし10員芳香族複素環基(例、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、8−キノリル、1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル、1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル、2−ベンゾ[b]フラニル、3−ベンゾ[b]フラニルなど)、オキソなどが1ないし3個挙げられる。
【0018】
10、R11、R12、R14、R15、R16またはR17で示される「置換基を有していてもよい複素環基」の「複素環基」としては、例えば、炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1または2種、1ないし4個のヘテロ原子を含む5ないし14員(単環、2環または3環式)複素環、好ましくは(i)5ないし14員(好ましくは5ないし10員)芳香族複素環、(ii)5ないし10員非芳香族複素環または(iii)7ないし10員複素架橋環から任意の1個の水素原子を除いてできる1価基などが挙げられる。
上記「5ないし14員(好ましくは5ないし10員)の芳香族複素環」としては、例えば、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[b]フラン、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイソチアゾール、ナフト[2,3−b]チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナジン、チアゾール、イソチアゾール、フェノチアジン、イソオキサゾール、フラザン、フェノキサジンなどの芳香族複素環、またはこれらの環(好ましくは単環)が1ないし複数個(好ましくは1または2個)の芳香環(例、ベンゼン環等)と縮合して形成された環などが挙げられる。
【0019】
上記「5ないし10員非芳香族複素環」としては、例えば、ピロリジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサゾール、オキサジアゾリン、チアジアゾリン、トリアゾリン、チアジアゾール、ジチアゾールなどが挙げられる。
上記「7ないし10員複素架橋環」としては、例えば、キヌクリジン、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどが挙げられる。
該「複素環基」として好ましくは、炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1または2種、好ましくは、1ないし4個のヘテロ原子を含む5ないし14員(好ましくは5ないし10員)の(単環または2環式)複素環基である。具体的には、例えば2−チエニル、3−チエニル、2−フリル、3−フリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、8−キノリル、1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル、ピラジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、3−ピロリル、2−イミダゾリル、3−ピリダジニル、3−イソチアゾリル、3−イソオキサゾリル、1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル、2−ベンゾ[b]フラニル、3−ベンゾ[b]フラニルなどの芳香族複素環基、例えば1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、2−イミダゾリニル、4−イミダゾリニル、2−ピラゾリジニル、3−ピラゾリジニル、4−ピラゾリジニル、ピペリジノ、2−ピペリジル、3−ピペリジル、4−ピペリジル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノなどの非芳香族複素環基などである。
【0020】
このうち、例えば炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし3個のヘテロ原子を含む5ないし6員の複素環基等がさらに好ましい。具体的には、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フリル、3−フリル、ピラジニル、2−ピリミジニル、3−ピロリル、3−ピリダジニル、3−イソチアゾリル、3−イソオキサゾリル、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、2−イミダゾリニル、4−イミダゾリニル、2−ピラゾリジニル、3−ピラゾリジニル、4−ピラゾリジニル、ピペリジノ、2−ピペリジル、3−ピペリジル、4−ピペリジル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノなどが挙げられる。
該「置換基を有していてもよい複素環基」の「置換基」としては、例えば前記R10、R11、R12、R14、R15、R16またはR17で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものなどが挙げられる。
該「複素環基」は、例えば上記置換基を、置換可能な位置に1ないし5個、好ましくは1ないし3個有していてもよく、置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。
【0021】
13で示される「C1-6アルキル」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。
1で示される「置換基を有していてもよいアミノ」の「置換基」としては、前記のR10、R11、R12、R14、R15、R16またはR17で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」などが、1ないし2個挙げられる。
【0022】
式(I)中、R2およびR3は同一でも異なっていてもよく、水素原子もしくは置換基を有していてもよい炭化水素基を示すか、またはR2およびR3は隣接する窒素原子とともに含窒素複素環基を形成してもよい。
該「置換基を有していてもよい炭化水素基」としては、前記のR10、R11、R12、R14、R15、R16またはR17で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
【0023】
前記「含窒素複素環」とは、環の構成に寄与する原子のうち、窒素原子以外に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を含んでいてもよい単環または多環式複素環をいう。「含窒素複素環」には、一部または全部飽和されていてもよい3〜15員含窒素単環または多環式複素環が含まれる。例えば、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、アゼピン、ジアゼピン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、ベンゾイミダゾール、ベンゾアゼピン、ベンゾジアゼピン、ベンゾトリアゾール、カルバゾール、β−カルボリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ペリミジン、ピロリン、イミダゾリン、トリアゾリン、テトラゾリン、ピラゾリン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、ジヒドロピリダジン、テトラヒドロピリダジン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、ジヒドロジアゼピン、テトラヒドロジアゼピン、ジヒドロオキサゾール、ジヒドロイソオキサゾール、ジヒドロチアゾール、ジヒドロイソチアゾール、ジヒドロフラザン、ジヒドロオキサジアゾール、ジヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジアジン、ジヒドロオキサゼピン、テトラヒドロオキサゼピン、ジヒドロオキサジアゼピン、テトラヒドロオキサジアゼピン、ジヒドロチアジアゾール、ジヒドロチアジン、ジヒドロチアジアジン、ジヒドロチアゼピン、ジヒドロチアジアゼピン、テトラヒドロチアジアゼピン、インドリン、イソインドリン、ジヒドロインダゾール、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、ジヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロフタラジン、テトラヒドロフタラジン、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノキサリン、ジヒドロキナゾリン、テトラヒドロキナゾリン、ジヒドロシンノリン、テトラヒドロシンノリン、ジヒドロベンゾオキサジン、ジヒドロベンゾチアジン、ピラジノモルホリン、ジヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイミダゾール、ジヒドロベンゾアゼピン、テトラヒドロベンゾアゼピン、ジヒドロベンゾジアゼピン、テトラヒドロベンゾジアゼピン、ジヒドロベンゾオキサゼピン、テトラヒドロベンゾオキサゼピン、ジヒドロカルバゾール、テトラヒドロカルバゾール、ジヒドロアクリジン、テトラヒドロアクリジン、ヘキサヒドロアゾシン、ヘキサヒドロアゾニン、ヘキサヒドロジアゾシン、ヘキサヒドロジアゾニン、オクタヒドロアゼシン、オクタヒドロジアゼシン、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、イミダゾリジン、トリアゾリジン、テトラゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、パーヒドロピリミジン、パーヒドロピリダジン、パーヒドロアゼピン、パーヒドロジアゼピン、パーヒドロアゾシン、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、テトラヒドロフラザン、テトラヒドロオキサジアゾール(オキサジアゾリジン)、テトラヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジアジン、パーヒドロオキサゼピン、パーヒドロオキサジアゼピン、テトラヒドロチアジアゾール(チアジアゾリジン)、テトラヒドロチアジン、テトラヒドロチアジアジン、テトラヒドロチアゼピン、パーヒドロチアゼピン、パーヒドロチアジアゼピン、モルホリン、チオモルホリン、パーヒドロインダゾール、パーヒドロキノリン、パーヒドロイソキノリン、パーヒドロフタラジン、パーヒドロナフチリジン、パーヒドロキノキサリン、パーヒドロキナゾリン、パーヒドロシンノリン、パーヒドロベンゾオキサゾール、パーヒドロベンゾチアゾール、パーヒドロベンゾイミダゾール、パーヒドロカルバゾール、パーヒドロアクリジン、パーヒドロアゾニン、パーヒドロアゼシン、パーヒドロジアゾシン、パーヒドロジアゾニン、パーヒドロジアゼシン、パーヒドロインドール、パーヒドロイソインドール、パーヒドロ−β−カルボリン、パーヒドロフェナジン、パーヒドロフェノチアジン、パーヒドロフェノキサジン、パーヒドロフェナントリジン、パーヒドロフェナントロリン、パーヒドロペリミジン、アザビシクロ[3.2.2]ノナン、アザビシクロ[3.3.2]デカン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、アザビシクロ[3.3.3]ウンデカン、アザビシクロ[4.3.3]ドデカン、アザビシクロ[4.4.3]トリデカン、アザビシクロ[4.4.4]テトラデカン環等が挙げられる。
【0024】
式(I)中、nは0〜2の整数を示す。
1としては、上記した中でもハロゲン原子または「ハロゲン化されていてもよいアルキル」が好ましく、特にハロゲン原子が好ましい。
1の置換基数を示すnとしては、0または1が好ましい。
2およびR3としては、上記した中でも水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどのC1-6アルキル)が好ましい。
該「置換基を有していてもよいアルキル基」における置換基としては、前記のR10、R11、R12、R14、R15、R16またはR17で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」などが挙げられる。置換基の数は好ましくは1〜3個である。
【0025】
「置換基を有していてもよいアルキル基」における好ましい置換基は、(1)ヒドロキシ、(2)アミノ、(3)モノ−C1-6アルキルアミノ(例、メチルアミノ、エチルアミノなど)、(4)ジ−C1-6アルキルアミノ(例、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノなど)、(5)カルバモイル、(6)モノ−C1-6アルキル−カルバモイル(例、メチルカルバモイル、エチルカルバモイルなど)、(7)ジ−C1-6アルキル−カルバモイル(例、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、エチルメチルカルバモイルなど)、(8)C1-6アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなど)で置換されていてもよい2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イルなどである。
2およびR3としては、特に水素原子またはC1-6アルキル基が好ましい。
【0026】
本発明においてより好ましい化合物は、例えば
・2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチンアミド
・2−[4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピリジン−2−イル]−4H−1,3−ベンゾチアジン−4−オン
・2−(7−クロロ−4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチンアミド
・2−(7−クロロ−4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)−N−プロピルイソニコチンアミド
・2−(7−クロロ−4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)−N−(2−メトキシエチル)イソニコチンアミド
・2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)−N−プロピルイソニコチンアミド
・2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)−N−(2−メトキシエチル)イソニコチンアミド
・N−(2−ヒドロキシエチル)−2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチンアミド
である。
【0027】
化合物(I)およびその中間体の塩としては、例えば金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。これらの塩が医薬用途で用いられる場合は、これらの塩は、好ましくは薬理学的に許容される塩である。金属塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トロメタミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。
【0028】
有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合にはアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩,カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩,マグネシウム塩,バリウム塩など)などの無機塩、アンモニウム塩など、また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸など無機酸との塩、または酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。
【0029】
化合物(I)は水和物および非水和物の何れであってもよい。該水和物としては、例えば、0.5水和物、1水和物、1.5水和物および2水和物などが挙げられる。
化合物(I)が光学活性体の混合物(ラセミ体)として得られる場合には、自体公知の光学分割手段により目的とする(R)体、(S)体に分離することができる。
【0030】
化合物(I)のプロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により化合物(I)に変換する化合物、すなわち酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして化合物(I)に変化する化合物、胃酸等により加水分解などを起こして化合物(I)に変化する化合物をいう。化合物(I)のプロドラッグとしては、化合物(I)のアミノがアシル化、アルキル化、りん酸化された化合物〔例、化合物(I)のアミノがエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、tert−ブチル化された化合物など〕、化合物(I)のヒドロキシがアシル化、アルキル化、りん酸化、ほう酸化された化合物〔例、化合物(I)のヒドロキシがアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物など〕、または、化合物(I)のカルボキシがエステル化、アミド化された化合物〔例、化合物(I)のカルボキシがエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、メチルアミド化された化合物など〕などが挙げられる。これらの化合物は自体公知の方法によって化合物(I)から製造することができる。
また化合物(I)のプロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁から198頁に記載されているような、生理的条件で化合物(I)に変化するものであってもよい。
【0031】
化合物(I)の製造法について以下に述べる。
化合物(I)は、下記の反応式1あるいは反応式2で示される方法またはそれに準じた方法などにより得られる。
以下の反応式1あるいは反応式2中の化合物の有する基の各記号は、前記と同意義を示す。反応式中の化合物は塩を形成している場合も含み、該塩としては、例えば化合物(I)の塩と同様のものなどが挙げられる。
【0032】
反応式1
【化3】

化合物(I)は化合物(II)と化合物(III)とを反応させることにより得られる。
化合物(II)中、Lは水素原子または脱離基を示す。脱離基としては、例えばアルキルなどが挙げられる。
【0033】
本反応は、塩基の存在下に行ってもよい。
化合物(III)の使用量は、化合物(II)1モルに対し、約0.4ないし2モル、好ましくは約0.8ないし1.5モルである。
塩基の使用量は、化合物(II)1モルに対し、約1ないし3.0モル、好ましくは約1ないし2.0モルである。
該「塩基」としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、などの塩基性塩類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基類、ピリジン、ルチジンなどの芳香族アミン類、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリンなどの第3級アミン類、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物類、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジドなどの金属アミド類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム tert-ブトキシドなどの金属アルコキシド類などが挙げられる。
【0034】
本反応は、無溶媒下または反応に不活性な溶媒中で行うのが有利である。該溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、例えば芳香族アミン類、ハロゲン化炭化水素類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、アミド類またはこれら二種以上の混合物等が用いられる。中でも好ましくは、ピリジン、トルエン、メシチレンなどであり、例えば、ピリジン中で反応を行う場合は、必ずしも塩基は必要ではない。
反応温度は、通常約100ないし200℃、好ましくは約120ないし160℃で、反応時間は通常約3時間ないし72時間、好ましくは約8ないし24時間である。
【0035】
化合物 (II)は、市販されている場合には市販品をそのまま用いることもでき、自体公知の方法またはこれらに準じた方法に従って製造することもできる。例えば、化合物(II)に相当するアントラニル酸より、公知の方法(例、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー、第18巻、1380頁、1953年等)に従い、あるいは、化合物(II)に相当するサリチル酸より、公知の方法(例、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー、第31巻、3980頁、1966年等)に従い、目的とする化合物(II)を製造することができる。
化合物 (III)は、自体公知の方法またはこれらに準じた方法に従って製造することができる。例えば、化合物(III)に相当するピリジン誘導体より、公知の方法(例、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー、第48巻、1375頁、1983年;シンセシス、第316巻、316頁、1983年等)に従い、化合物(III)を製造することができる。
【0036】
反応式2
【化4】

化合物(I)は、上記反応式2に示されるルートによっても合成できる。
化合物(V)は化合物(II)と化合物(IV)とを反応させることにより得られる。
化合物(II)中、Lは水素原子または脱離基を示す。脱離基としては、例えばアルキルなどが挙げられる。
化合物(IV)中、Rは水素原子または保護基を示す。保護基としては、例えばそれぞれ置換基を有していてもよいC1-6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、2−トリメチルなど)、フェニル、トリチルもしくはシリルなどが用いられる。これらの置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、けい素(例えば、2−(トリメチルシリル)エチル)、ホルミル、C1-6アルキル−カルボニル(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチルカルボニルなど)、ニトロ、C1-6アルキル(例えば、メチル、エチル、tert-ブチルなど)、C6-10アリール(例えば、フェニル、ナフチルなど)などが用いられ、置換基の数は1ないし3個である。
【0037】
本反応は、塩基の存在下に行ってもよい。
化合物(IV)の使用量は、化合物(II)1モルに対し、約0.4ないし2モル、好ましくは約0.8ないし1.5モルである。
塩基の使用量は、化合物(II)1モルに対し、約1ないし3.0モル、好ましくは約1ないし2.0モルである。
該「塩基」としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、などの塩基性塩類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基類、ピリジン、ルチジンなどの芳香族アミン類、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリンなどの第3級アミン類、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物類、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジドなどの金属アミド類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム tert-ブトキシドなどの金属アルコキシド類などが挙げられる。
【0038】
本反応は、無溶媒下または反応に不活性な溶媒中で行うのが有利である。該溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、例えば芳香族アミン類、ハロゲン化炭化水素類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、アミド類またはこれら二種以上の混合物等が用いられる。中でも好ましくは、ピリジン、トルエン、メシチレンなどであり、例えば、ピリジン中で反応を行う場合は、必ずしも塩基は必要ではない。
反応温度は、通常約100ないし200℃、好ましくは約120ないし160℃で、反応時間は通常約3時間ないし72時間、好ましくは約8ないし24時間である。
【0039】
化合物 (II)は、市販されている場合には市販品をそのまま用いることもでき、自体公知の方法またはこれらに準じた方法に従って製造することもできる。例えば、化合物(II)に相当するアントラニル酸より、公知の方法(例、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー、第18巻、1380頁、1953年等)に従い、あるいは、化合物(II)に相当するサリチル酸より、公知の方法(例、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー、第31巻、3980頁、1966年等)に従い、目的とする化合物(II)を製造することができる。
化合物 (IV)は、自体公知の方法またはこれらに準じた方法に従って製造することができる。例えば、化合物(IV)に相当するピリジン誘導体より、公知の方法(例、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー、第48巻、1375頁、1983年;シンセシス、第316巻、316頁、1983年等)に従い、化合物(IV)を製造することができる。
化合物(VI)は化合物(V)のR部位を脱保護するか、あるいは、COOR
部位を加水分解することにより製造することができる。
【0040】
保護基の除去方法としては、自体公知またはそれに準じる方法が用いられ、例えば酸、塩基、紫外光、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、N−メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド、酢酸パラジウムなどで処理する方法または還元反応が用いられる。
【0041】
加水分解の方法としては、自体公知またはそれに準じる方法が用いられ、例えば酸、塩基、酵素などで処理する方法が挙げられる。
化合物(I)は化合物(VI)とアミン類とのアミド化反応により合成することができる。
本反応は、化合物(VI)が有するカルボキシル基の反応性をそのまま利用するか、又は当該カルボキシル基を反応性誘導基に変換し、その反応性を利用して実施することができる。
【0042】
「カルボキシル基の反応性誘導基」としては、例えば、酸塩化物、酸臭化物、酸無水物、カルボニルイミダゾール等が挙げられる。カルボキシル基の反応性誘導基の反応性を利用した反応は、ジオキサン、N,N − ジメチルホルムアミド等の溶媒中、塩基(例えば、水素化ナトリウム等のアルカリ金属水素化物;水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基)の存在下又は非存在下で実施することができる。この際の反応温度は通常−20〜150℃、好ましくは0〜60℃であり、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間である。また、アミンの添加量は、化合物(VI)に対して通常0.5〜3モル当量、好ましくは1〜2モル当量である。
【0043】
カルボキシル基の反応性をそのまま利用した反応は、塩化メチレン、クロロホルム、ジオキサン、N,N − ジメチルホルムアミド等の溶媒中、縮合剤の存在下、塩基の存在下又は非存在下、添加剤の存在下又は非存在下で実施することができる。縮合剤としては、例えば、N,N − ジメチルイミゾリニウムクロライド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−[3-(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、シアノリン酸ジエチル、ジフェニルリン酸アジド、カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基等が挙げられる。添加剤としては、例えば、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシスクシンイミド、3,4-ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン等が挙げられる。この際の反応温度は通常−20〜100℃ 、好ましくは0〜50℃であり、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間である。また、アミンの添加量は、化合物(VI)に対して通常0.5〜3モル当量、好ましくは1〜2モル当量である。
【0044】
前記反応において、原料化合物が置換基としてアミノ、カルボキシ、ヒドロキシを有する場合、これらの基にペプチド化学などで一般的に用いられるような保護基が導入されたものであってもよく、反応後に必要に応じて保護基を除去することにより目的化合物を得ることができる。
アミノの保護基としては、例えばホルミルまたはそれぞれ置換基を有していてもよいC1-6アルキル−カルボニル(例えば、アセチル、プロピオニルなど)、
フェニルカルボニル、C1-6アルコキシ−カルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、フェニルオキシカルボニル、C7-10アラルキルオキシ−カルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニルなど)、トリチルもしくはフタロイルなどが用いられる。これらの置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、C1-6アルキル−カルボニル(例えば、アセチル、プロピオニル、バレリルなど)、ニトロなどが用いられ、置換基の数は1ないし3個である。
【0045】
カルボキシの保護基としては、例えばそれぞれ置換基を有していてもよいC1-6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、2−トリメチルなど)、フェニル、トリチルもしくはシリルなどが用いられる。これらの置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、けい素(例えば、2−(トリメチルシリル)エチル)、ホルミル、C1-6アルキル−カルボニル(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチルカルボニルなど)、ニトロ、C1-6アルキル(例えば、メチル、エチル、tert-ブチルなど)、C6-10アリール(例えば、フェニル、ナフチルなど)などが用いられ、置換基の数は1ないし3個である。
ヒドロキシの保護基としては、例えばそれぞれ置換基を有していてもよいC1-6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチルなど)、フェニル、C7-11アラルキル(例えば、ベンジルなど)、ホルミル、C1-6アルキル−カルボニル(例えば、アセチル、プロピオニルなど)、フェニルオキシカルボニル、C7-11アラルキルオキシ−カルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニルなど)、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニルまたはシリルなどが用いられる。これらの置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、C1-6アルキル(例えば、メチル、エチル、tert-ブチルなど)、C7-11アラルキル(例えば、ベンジルなど)、C6-10アリール(例えば、フェニル、ナフチルなど)、ニトロなどが用いられ、置換基の数は1ないし4個である。
【0046】
また、保護基の除去方法としては、自体公知またはそれに準じる方法が用いられ、例えば酸、塩基、紫外光、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、N−メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド、酢酸パラジウムなどで処理する方法または還元反応が用いられる。
いずれの場合にも、さらに所望により、公知の脱保護反応、アシル化反応、アルキル化反応、水素添加反応、酸化反応、還元反応、炭素鎖延長反応、置換基交換反応を各々、単独あるいはその二つ以上を組み合わせて行うことにより化合物(I)を合成することができる。これらの反応は、例えば、新実験化学講座14、15巻、1977年(丸善出版)などに記載の方法が採用される。
【0047】
前記「芳香族アミン類」としては、例えば、ピリジン、ルチジン、キノリン等が挙げられる。
前記「ハロゲン化炭化水素類」としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等が挙げられる。
前記「脂肪族炭化水素類」としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
前記「芳香族炭化水素類」としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等が挙げられる。
前記「エーテル類」としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等が挙げられる。
前記「アミド類」としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等が挙げられる。
上記反応により、目的物が遊離の状態で得られる場合には、常法に従って塩に変換してもよく、また塩として得られる場合には、常法に従って遊離体または他の塩に変換することもできる。かくして得られる化合物(I)は、公知の手段、例えば転溶、濃縮、溶媒抽出、分溜、結晶化、再結晶、クロマトグラフィーなどにより反応溶液から単離、精製することができる。
【0048】
化合物(I)が、コンフィギュレーショナル アイソマー(配置異性体)、ジアステレオマー、コンフォーマーなどとして存在する場合には、所望により、前記の分離、精製手段によりそれぞれを単離することができる。また、化合物(I)がラセミ体である場合には、通常の光学分割手段によりS体およびR体に分離することができる。
化合物(I)に立体異性体が存在する場合には、この異性体が単独の場合およびそれらの混合物の場合も本発明に含まれる。
本発明の化合物(I)は、MIFに結合する能力を有するので、MIF結合剤として各種診断薬や試薬として有用なだけでなく、動物とりわけ哺乳動物(例、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス等)に対して優れた細胞保護作用や細胞死抑制作用を有する。例えば、酸化ストレスによる細胞死、血清除去による細胞死、増殖因子の欠乏による細胞死、HMG−CoA還元酵素阻害薬による細胞死、抗癌剤による細胞死、NOによる細胞死、アミロイドβタンパク質による細胞死などを抑制する。
【0049】
MIFに結合する能力を有する本発明の化合物(I)は、ARE制御下にある遺伝子(例、種々のストレスから細胞を防御する因子の遺伝子等)発現促進作用、ARE制御下にある遺伝子タンパク質(遺伝子産物)の産生亢進(促進)作用または活性促進作用などを有するのでARE活性化剤としても有用である。
ARE制御下にある遺伝子としては、ヘムオキシゲナーゼ−1(Heme oxygenase-1)、Liver glutathione S-transferase Ya subunit、Liver glutathione S-transferase Yc subunit、Glutathione S-transferase Yb subunit、Glutathione S-transferase Yc1 subunit、Gamma-glutamylcysteine synthetase、NAD(P)H:quinone reductase、UDP-glucuronosyltransferase, exon 1、Bilirubin-specific UDP-glucuronosyltransferase、NAD(P)H-menadione oxidoreductaseなどが挙げられる。
【0050】
このようにMIFに結合する能力を有する本発明の化合物(I)は、ストレスから細胞を防御する因子を増加させることによって様々な原因による細胞死を強力に抑制し、細胞を保護することができる。
本発明の化合物(I)は、チトクロームP-450代謝酵素、特にCYP1A2の阻害活性がほとんどないことから、CYP1A2の代謝を受ける併用薬剤との相互作用による臨床上の悪影響がない。
また、本発明の化合物(I)は、その主骨格:
【化5】

の特定位置に−CONR2R3(各記号は前記と同意義を示す)で表される基を導入しているので薬物動態(経口吸収性など)に著しく優れており、かつ、発癌性や肝肥大などのリスクが懸念されるPPARα活性化作用などもない。さらに、本化合物はin vitro光毒性試験においても陰性であり、投与患者における光過敏症発症リスクの低減が期待できる。
【0051】
したがって、本発明の化合物(I)は、毒性が低いため安全な医薬品として使用することができ、酸化ストレスに起因する疾患、例えば、後述の循環器系疾患、骨・関節疾患、感染症疾患、炎症性疾患、腎疾患、中枢疾患、癌または糖尿病の予防・治療剤や老化予防剤などとして有用である。
循環器系疾患としては、例えば心筋症(例、拡張型心筋症、肥大型閉塞性心筋症、肥大型非閉塞性心筋症、特発性心筋症、収縮性心筋症、糖尿病性心筋症など)、心不全(例、慢性心不全、慢性うっ血性心不全、急性心不全、心代償不全、左心不全、右心不全、うっ血性心不全、急性うっ血性心不全、代謝性心不全心、拡張型心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全、難治性心不全、筋梗塞予後不全など)、狭心症、心筋梗塞、動脈硬化症(動脈瘤、冠動脈硬化症、脳動脈硬化症、末梢動脈硬化症など)、虚血後再灌流障害などが挙げられる。
骨・関節疾患としては、例えば、慢性関節リウマチ、変形性関節症、変形性膝関節炎などが挙げられる。
【0052】
感染症疾患としては、例えば、サイトメガルウイルス、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス等のウイルス感染症、リケッチア感染症、細菌感染症などが挙げられる。
炎症性疾患としては、例えば、網膜症、腎症、神経障害、大血管障害等の糖尿病性合併症;リウマチ様脊髄炎、骨膜炎等の関節炎;手術・外傷後の炎症;腫脹の緩解;咽頭炎;膀胱炎;肺炎;アトピー性皮膚炎;クローン病、潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患;髄膜炎;炎症性眼疾患;ウイルス性肝炎;アルコール性肝炎;非アルコール性脂肪性肝炎;肺炎、珪肺、肺サルコイドーシス、肺結核等の炎症性肺疾患などが挙げられる。
腎疾患としては、例えば、虚血性急性腎不全、溶血性尿毒症症候群、急性尿細管壊死、水腎症、腎炎、糸球体腎炎、糸球体硬化症、腎不全、血栓性微小血管症、移植拒絶腎、透析の合併症、放射線照射による腎症を含む臓器障害などが挙げられる。
【0053】
中枢疾患としては、例えば、神経変性疾患(例、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ポリグルタミン病、筋萎縮性側索硬化症、エイズ脳症など)、中枢神経障害(脳出血および脳梗塞等の障害およびその後遺症・合併症、頭部外傷、脊椎損傷、脳浮腫、知覚機能障害、知覚機能異常、自律神経機能障害、自律神経機能異常、多発性硬化症など)、痴呆症、記憶障害、意識障害、健忘症、不安症状、緊張症状、不快精神状態、緑内障、末梢神経障害などが挙げられる。
癌としては、例えば、大腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆道癌、脾臓癌、腎癌、膀胱癌、子宮癌、精巣癌、甲状腺癌、膵臓癌、脳腫瘍、血液腫瘍などが挙げられる。
糖尿病としては、例えば、1型糖尿病、2型糖尿病、あるいは合併症(糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症など)などが挙げられる。
【0054】
化合物(I)を上記の予防および(または)治療剤として使用する場合、自体公知の方法に従い、経口投与または非経口投与のいずれも可能であり、薬学的に許容される担体と混合し、通常、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、口腔内崩壊フィルムなど固形製剤として経口投与されるか、静脈内、皮下、筋肉内などに注射剤、坐薬または舌下錠などとして非経口投与される。また、舌下錠、マイクロカプセル等の徐放製剤として、舌下、皮下および筋肉内などに投与してもよい。
化合物(I)の投与量は、投与対象、投与ルート、症状によっても異なり、特に限定されないが、例えば炎症性腸疾患の治療の目的で成人患者に経口投与する場合、通常1回量として、約0.1ないし50mg/kg、好ましくは0.1ないし10mg/kg、さらに好ましくは、0.1ないし1.0mg/kg程度であり、これらの服用量を症状に応じて1日約1ないし3回程度投与するのが望ましい。
化合物(I)の本発明の医薬中の含有量は、医薬組成物全体の約0.01ないし100重量%である。
【0055】
上記薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などとして配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
上記賦形剤の好適な例としては、例えば乳糖、白糖、D-マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。上記滑沢剤の好適な例としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどが挙げられる。上記結合剤の好適な例としては、例えば結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。上記崩壊剤の好適な例としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウムなどが挙げられる。上記溶剤の好適な例としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油などが挙げられる。上記溶解補助剤の好適な例としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。上記懸濁化剤の好適な例としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリンなどの界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性高分子などが挙げられる。上記等張化剤の好適な例としては、例えば塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトールなどが挙げられる。上記緩衝剤の好適な例としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などが挙げられる。無痛化剤の好適な例としては、例えばベンジルアルコールなどが挙げられる。上記防腐剤の好適な例としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。上記抗酸化剤の好適な例としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸などが挙げられる。
【0056】
化合物(I)に、懸濁化剤、溶解補助剤、安定化剤、等脹化剤、保存剤などを添加し、自体公知の方法により静脈、皮下、筋肉内注射剤とすることができる。その際必要により自体公知の方法により凍結乾燥物とすることも可能である。本発明化合物を例えばヒトに投与する場合は、それ自体あるいは適宜の薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤と混合し、医薬組成物として経口的または非経口的に安全に投与することができる。
上記医薬組成物としては、経口剤(例、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、口腔内崩壊フィルム)、注射剤、点滴剤、外用剤(例、経鼻投与製剤、経皮製剤など)、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤)などが挙げられる。
これらの製剤は、製剤工程において通常一般に用いられる自体公知の方法により製造することができる。
【0057】
化合物(I)は分散剤(例、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国)、HCO60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)、保存剤(例、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコールなど)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖など)などと共に水性注射剤に、あるいはオリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油などの植物油、プロピレングリコールなどに溶解、懸濁あるいは乳化して油性注射剤に成形し、注射剤とすることができる。
【0058】
経口投与製剤とするには、自体公知の方法に従い、化合物(I)を、例えば賦形剤(例、乳糖、白糖、デンプンなど)、崩壊剤(例、デンプン、炭酸カルシウムなど)、結合剤(例、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなど)または滑沢剤(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール 6000など)などを添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより経口投与製剤とすることができる。そのコーティング剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン 80、プルロニック F68、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、オイドラギット(ローム社製、ドイツ,メタアクリル酸・アクリル酸共重合)および色素(例、ベンガラ、二酸化チタン等)などが用いられる。腸溶性製剤とする場合、腸溶相と薬剤含有相との間に両相の分離を目的として、自体公知の方法により中間相を設けることもできる。
【0059】
外用剤とするには、自体公知の方法に従い、化合物(I)またはその塩を固状、半固状または液状の外用投与剤とすることができる。例えば、上記固状のものとしては、化合物(I)またはその塩をそのまま、あるいは賦形剤(例、グリコール、マンニトール、デンプン、微結晶セルロースなど)、増粘剤(例、天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体など)などを添加、混合して粉状の組成物とする。上記液状のものとしては、注射剤の場合とほとんど同様で、油性あるいは水性懸濁剤とする。半固状の場合は、水性または油性のゲル剤、あるいは軟膏状のものがよい。また、これらはいずれも、pH調節剤(例、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウムなど)、防腐剤(例、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウムなど)などを加えてもよい。
【0060】
例えば坐剤とするには、自体公知の方法に従い、化合物(I)を油性または水性の固状、半固状あるいは液状の坐剤とすることができる。上記組成物に用いる油性基剤としては、例えば高級脂肪酸のグリセリド〔例、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社製,ドイツ)など〕、中級脂肪酸〔例、ミグリオール類(ダイナマイトノーベル社製,ドイツ)など〕、あるいは植物油(例、ゴマ油、大豆油、綿実油など)などが挙げられる。また、水性基剤としては、例えばポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、水性ゲル基剤としては、例えば天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体などが挙げられる。
【0061】
化合物(I)と併用して投与することが可能な薬物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、各薬物は、経口的に又は非経口的に(例えば、経鼻剤、注射剤、坐剤等として)投与してもよく、また、各薬物を一つの製剤に配合してもよいが、各薬物を薬理学的に許容されうる担体、賦形剤、結合剤、希釈剤などと混合して製剤化し、別々にあるいは同時に投与してもよい。薬物を別々に製剤化した場合、別々に製剤化したものを使用時に希釈剤などを用いて混合して投与することもできるが、別々に製剤化した個々の製剤を、同時に、あるいは時間差をおいて別々に、同一対象に投与してもよい。
【0062】
化合物(I)との併用により、相乗効果が得られる薬物の例としては、例えば、強心薬(例、ジゴキシン等の強心配糖体、ドパミン、ドブタミンなどのβ作動薬、アムリノン、ミルリノンなどのホスホジエステラー ゼ阻害薬);抗不整脈(例、ジソピラミド、リドカイン、プロカインアミドなどのクラスI抗不整脈薬、アミオダロン、ソタロールなどのクラスIII抗不整脈薬、プロプラノロールなどのβブロッカー);血管拡張薬(例、カプトプリル、エナラプリルなどのアンジオテンシン変換酵素阻害薬、ニトロプルシド、ニ硝酸イソソルビドなどの亜硝酸薬、ベラパミル、ジルチアゼム、ニカルジピン、ニフェジピンなどのカルシウム受容体拮抗薬、ロサルタン、カンデサルタンなどのアンジオテンシンII受容体拮抗薬;利尿薬(例、フロセミド、ブメタニドなどのループ利尿薬、クロロチアジド、ベンドロフルアジドなどのサイアザイド利尿薬、アミロライド、スピロノラクトンなどのカリウム保持性利尿薬)などが挙げられる。
【0063】
また、化合物(I)と、HMG−CoA還元酵素阻害薬(例、シンバスタチン(Simvastatin)、アトロバスタチン(Atorvastatin)など)、フィブラート系高脂血症薬(例、ゲムフィブロジル(Gemfibrozil)など)、抗がん剤(例、イホスファミド(Ifosfamide)、UFT、アドリアマイシン(Adriamycin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、ペプロマイシン(Peplomycin)、シスプラチン(Cisplatin)、シクロフォスファミド(Cyclophosphamide)、5−FU、メトレキセート(Methotrexate)、マイトマイシンC(Mitomycin C)、マイトキサントロン(Mitoxantrone)など)などと併用して用いると、HMG−CoA還元酵素阻害薬、フィブラート系高脂血症薬、抗がん剤などの、正常細胞に障害を及ぼす副作用が軽減される。
さらに、炎症性腸疾患治療薬として頻繁に処方される薬剤、例えばサイクロスポリン(Ciclosporin), タクロリムス(Tacrolimus)、アザチオプリン(Azathiopurine)、5-ASA製剤(Sulfasalazine, Mesalazine, Olsalazine, Asacol, Pentasa)、抗TNFα抗体薬 (Infliximab, Adalimumab)、メトトレキセート(Methotrexate)、ステロイド剤 (Predonisone, Budesonideなど)、メルカプトプリン(Mercaptpurine)などと併用することにより相乗効果が期待できる。
【0064】
実施例
以下に参考例および実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
以下の参考例、実施例中の「室温」は通常約10℃ないし約35℃を示すが、特に厳密に限定されるものではない。液体の混合比は体積比を示す。「%」は特記しない限り重量パーセントを示す。但し、収率はmol/mol%を示す。1H−NMRスペクトルは内部標準としてテトラメチルシランを用い、Varian Gemini−200(200MHz)、Mercury−300(300MHz)型スペクトルメーターで測定した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーはMERCK社製シリカゲル60(0.063−0.200mm)を用いて実施した。
その他の本文中で用いられている略号は下記の意味を表す。
s:シングレット(singlet)、d:ダブレット(doublet)、t:トリプレット(triplet)、q:カルテット(quartet)、dd:ダブルダブレット(doubledoublet)、dt:ダブルトリプレット(doubletriplet)、m:マルチプレット(multiplet)、br:ブロード(broad)、J:カップリング定数(coupling constant)、Hz:ヘルツ(Hertz)。
THF:テトラヒドロフラン
CDCl3:重クロロホルム
DMSO-d6:ジメチルスルホキシド-d6
WSC:塩酸1-エチル-3-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
HOBt:1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール
【0065】
参考例1
イソニコチン酸2−(トリメチルシリル)エチル
【化6】

イソニコチン酸(3.52g,28.6mmol)と2−(トリメチルシリル)エタノール(4.1mL,28.6mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(40mL)懸濁液に、WSC(5.76g,30.1mmol)とHOBt(4.59g,30.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で14時間撹拌した後、水および8N水酸化ナトリウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出した。抽出液は炭酸水素ナトリウム水溶液、水、続いて飽和食塩水で洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)後、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して、油状物の表題化合物を得た(収量3.99g、収率62%)。
1H−NMR(CDCl3)δ:0.09(9H,s),1.12−1.18(2H,m),4.43−4.49(2H,m),7.84(2H,dd,J=4.5,1.8Hz),8.78(2H,dd,J=4.5,1.8Hz).
【0066】
参考例2
イソニコチン酸2−(トリメチルシリル)エチル N−オキシド
【化7】

イソニコチン酸2−(トリメチルシリル)エチル(3.93g,17.6mmol)の酢酸エチル(40mL)溶液にm−クロロ過安息香酸(4.35g,17.7mmol)を0℃で加え、混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液と8N水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液は炭酸水素ナトリウム水溶液、水、続いて飽和食塩水で洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)後、減圧下に濃縮した。残留物を酢酸エチル−ヘキサンから再結晶して融点93−94℃の表題化合物を得た(収量2.74g、収率65%)。
1H−NMR(CDCl3)δ:0.09(9H,s),1.09−1.17(2H,m),4.39−4.48(2H,m),7.85(2H,dd,J=5.0,2.2Hz),8.22(2H,dd,J=5.0,2.2Hz).
【0067】
参考例3
2−シアノイソニコチン酸2−(トリメチルシリル)エチル
【化8】

イソニコチン酸2−(トリメチルシリル)エチル N−オキシド(2.71g,11.3mmol)のアセトニトリル(25mL)溶液にトリメチシリルシアニド(3.05mL,22.9mmol)とN,N−ジメチルカルバモイルクロリド(2.1mL,22.8mmol)を0℃で加え、反応混合物を室温で18時間、60℃で4時間撹拌した。冷却後、混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液は炭酸水素ナトリウム水溶液、水、続いて飽和食塩水で洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)後、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=8:1)で精製して、油状物の表題化合物を得た(収量2.88g、収率定量的)。
1H−NMR(CDCl3)δ:0.10(9H,s),1.14−1.19(2H,m),4.46−4.51(2H,m),8.05(1H,dd,J=5.1,1.5Hz),8.22(1H,d,J=1.5Hz),8.87(1H,dd,J=5.1,1.5Hz).
【0068】
参考例4
2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸2−(トリメチルシリル)エチル
【化9】

チオサリチル酸メチル(2.35mL,17.1mmol)、2−シアノイソニコチン酸2−(トリメチルシリル)エチル(2.83g,11.4mmol)、トリエチルアミン(2.35mL,16.9mmol)及びトルエン(30mL)の混合物を18時間加熱還流した。冷却後、混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液は炭酸水素ナトリウム水溶液、水、続いて飽和食塩水で洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)後、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製して、酢酸エチル−ヘキサンから再結晶して融点155−156℃の表題化合物を得た(収量2.52g、収率57%)。
1H−NMR(CDCl3)δ:0.11(9H,s),1.17−1.26(2H,m),4.46−4.52(2H,m),7.60−7.73(3H,m),8.10(1H,dd,J=5.1,1.5Hz),8.55−8.58(1H,m),8.87(1H,dd,J=5.1,0.6Hz),9.03(1H,dd,J=1.5,0.6Hz).
元素分析値 C19H20N2O3SSiとして
理論値 C:59.35,H:5.24,N:7.29
実測値 C:59.43,H:5.24,N:7.37
【0069】
参考例5
2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸
【化10】

2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸2−(トリメチルシリル)エチル(2.51g,6.53mmol)とトリフルオロ酢酸(25mL)の混合物を0℃で30分間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した。残留物を熱エタノールで洗浄することにより融点354−355℃の表題化合物を得た(収量1.03g、収率55%)。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:7.70−7.75(1H,m),7.80−7.86(1H,m),7.91(1H,d,J=7.8Hz),8.11−8.13(1H,m),8.34−8.36(1H,m),8.68(1H,s),8.97(1H,d,J=5.1Hz).
元素分析値 C14H8N2O3Sとして
理論値 C:59.15,H:2.84,N:9.85
実測値 C:58.77,H:2.81,N:9.92
【0070】
実施例1
2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチンアミド
【化11】

2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸(201mg,0.71mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)懸濁液にWSC(148mg,0.77mmol)とHOBtアンモニア錯体(121mg,0.80mmol)を加え、混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物に水を加え、得られた結晶をろ過した。この結晶をエタノールから再結晶することにより融点328−329℃の表題化合物を得た(収量60.9mg、収率30%)。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:7.72−7.77(1H,m),7.82−7.95(3H,m),8.11(1H,dd,J=4.8,1.5Hz),8.36−8.38(1H,m),8.56(1H,brs),8.72−8.73(1H,m),8.94(1H,d,J=4.8Hz).
元素分析値 C14H9N3O2Sとして
理論値 C:59.35,H:3.20,N:14.83
実測値 C:59.15,H:3.14,N:14.75
【0071】
実施例2
2−[4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピリジン−2−イル]−4H−1,3−ベンゾチアジン−4−オン
【化12】

2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸(209mg,0.74mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)懸濁液にピロリジン(0.065mL,0.78mmol)、WSC(154mg0.80mmol)およびHOBt(125mg,0.82mmol)を加え、混合物を室温で3時間撹拌した。混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え酢酸エチルとテトラヒドロフランの混合溶媒で抽出した。抽出液は炭酸水素ナトリウム水溶液、水、続いて飽和食塩水で洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)後、減圧下に濃縮した。残留物をエタノールから再結晶して融点179−180℃の表題化合物を得た(収量134mg、収率54%)。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.92−2.03(4H,m),3.44(2H,t,J=6.6Hz),3.67(2H,t,J−6.6Hz),7.61−7.73(4H,m),8.54−8.57(1H,m),8.60−8.61(1H,m),8.81(1H,dd,J=4.8,0.9Hz).
元素分析値 C18H15N3O2Sとして
理論値 C:64.08,H:4.48,N:12.45
実測値 C:63.71,H:4.43,N:12.30
【0072】
参考例6
イソニコチン酸tert−ブチル
【化13】

t−ブチルアルコール(19.4g,262mmol)のTHF溶液(100mL)にn-ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液,19.4g,237mmol)を0℃で加え、反応混合物を0℃で5分間撹拌した後、イソニコチン酸メチル(25.0g,182mmol)のTHF溶液(30mL)を加えた。反応混合物を0℃で2時間撹拌した後、水を加えて酢酸エチルで抽出した。抽出液は飽和食塩水で洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウム)後、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して、油状物の表題化合物を得た(収量31.3g、収率96%)。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.61(9H,s),7.79(2H,dd,J=4.5,1.5Hz),8.75(2H,dd,J=4.5,1.5Hz).
【0073】
参考例7
イソニコチン酸tert−ブチル N−オキシド
【化14】

イソニコチン酸tert−ブチル(31.3g,175mmol)の酢酸エチル(200mL)溶液にm−クロロ過安息香酸(46.4g,175mmol)を0℃で加え、混合物を室温で4時間撹拌した後、減圧下に濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトン:酢酸エチル=3:1)で精製して、結晶の表題化合物を得た(収量29.1g、収率85%)。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.60(9H,s),7.82−7.84(2H,m),8.20−8.23(2H,m).
【0074】
参考例8
2−シアノイソニコチン酸tert−ブチル
【化15】

イソニコチン酸tert−ブチル N−オキシド(29.1g,149mmol)のアセトニトリル(200mL)溶液にトリメチシリルシアニド(29.6g,299mmol)とN,N−ジメチルカルバモイルクロリド(30.5g,284mmol)を室温で加え、反応混合物を80℃で2時間撹拌した後、混合物を減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製して、油状物の表題化合物を得た(収量28.8g、収率95%)。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.62(9H,s),8.01(1H,dq,J=4.8,0.6Hz),8.16−8.17(1H,m),8.84(1H,dd,J=0.6Hz).
【0075】
参考例9
2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸tert−ブチル
【化16】

チオサリチル酸メチル(8.24g,49.0mmol)、2−シアノイソニコチン酸tert−ブチル(5.0g,24.5mmol)、トリエチルアミン(7.40g,73.5mmol)及びトルエン(100mL)の混合物を20時間加熱還流した後、溶媒量を1/5〜1/10までに減圧下で濃縮した。析出した結晶をろ取して融点333℃の表題化合物を得た(収量4.76g、収率57%)。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.64(9H,s),7.62−7.74(3H,m),8.07(1H,dd,J=5.1,1.8Hz),8.56−8.59(1H,m),8.86(1H,dd,J=5.1,0.9Hz),8.93(1H,dd,J=1.2,0.9Hz).
元素分析値 C18H16N2O3Sとして
理論値 C:63.51,H:4.74,N:8.23
実測値 C:63.70,H:4.74,N:8.16
【0076】
参考例10
2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸
【化17】

2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸tert−ブチル(6.70g,19.7mmol)とトリフルオロ酢酸(40mL)の混合物を0℃で2時間撹拌した後、反応混合物を減圧濃縮した。残渣をイソプロピルエーテルで結晶化させた後、結晶をろ取した。この結晶をエタノールから再結晶することにより結晶として表題化合物を得た(収量4.9g、収率88%)。
【0077】
参考例11
2−(7−クロロ−4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸tert−ブチル
【化18】

4−クロロチオサリチル酸メチル(9.92g,49.0mmol)、2−シアノイソニコチン酸tert−ブチル(5.0g,24.5mmol)、トリエチルアミン(7.40g,73.5mmol)及びトルエン(100mL)の混合物を20時間加熱還流した後、溶媒量を1/5〜1/10までに減圧下で濃縮した。析出した結晶をろ取して融点331−332℃の表題化合物を得た(収量4.26g、収率46%)。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.64(9H,s),7.59−7.62(2H、m),8.08(1H,dd,J=5.1Hz,1.5Hz),8.49(1H,dd,J=8.4Hz,0.6Hz),8.86(1H,dd,J=5.1Hz,0.9Hz),8.91(1H,dd,J=1.5,0.9Hz).
元素分析値 C18H15N2O3SClとして
理論値 C:57.68,H:4.03,N:7.47
実測値 C:58.05,H:4.37,N:7.49
【0078】
参考例12
2−(7−クロロ−4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸
【化19】

2−(7−クロロ−4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸tert−ブチル(5.10g,13.6mmol)とトリフルオロ酢酸(50mL)の混合物を0℃で2時間撹拌した後、反応混合物を減圧濃縮した。残渣をイソプロピルエーテルで結晶化させた後、結晶をろ取した。この結晶をエタノールから再結晶することにより融点331−332℃の表題化合物を得た(収量3.5g、収率81%)。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:7.76−7.80(1H,m),8.15−8.20(2H,m),8.33−8.35(1H,m),8.68(1H,d,J=0.6Hz),9.00(1H,d,J=1.8Hz).
元素分析値 C14H7N2O3SClとして
理論値 C:52.76,H:2.21,N:8.79
実測値 C:52.85,H:2.33,N:8.81
【0079】
実施例3
2−(7−クロロ−4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチンアミド
【化20】

2−(7−クロロ−4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸(0.64g,2.0mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(100mL)懸濁液にWSC(0.41g.2.1mmol)とHOBtアンモニア錯体(0.32g,2.1mmol)を加え、混合物を室温で15時間撹拌した。反応混合物に水を加え、得られた結晶をろ過した。この結晶をエタノールから再結晶することにより融点312℃の表題化合物を得た(収量0.58g、収率91%)。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:7.77−7.81(1H,m),7.93(1H、s),8.13−8.14(1H,m),8.20−8.21(1H,m),8.35(1H,dd,J=5.7Hz,1.2Hz),8.59(1H,s),8.73(1H,s),8.96−8.97(1H,m).
元素分析値 C14H8N3O2SClとして
理論値 C:52.92,H:2.54,N:13.22
実測値 C:52.91,H:2.68,N:13.19
【0080】
実施例4
2−(7−クロロ−4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)−N−プロピルイソニコチンアミド
【化21】

2−(7−クロロ−4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸(0.64g,2.0mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(100mL)懸濁液にn−プロピルアミン(0.16g,2.6mmol)、WSC(0.46g.2.4mmol)とHOBt(0.37g,2.4mmol)を加え、混合物を室温で15時間撹拌した。反応混合物に水を加え、得られた結晶をろ過した。この結晶をエタノールから再結晶することにより融点233℃の表題化合物を得た(収量0.60g、収率83%)。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:1.02(3H,t,J=7.2),1.65−1.75(2H,m),3.45−3.52(2H,m),6.55(1H,brs),7.60−7.64(2H,m),8.13(1H,dd,J=4.8Hz,1.2Hz),8.50(1H,d,J=8.7Hz),8.65−8.66(1H,m),8.88(1H,d,J=4.8Hz).
元素分析値 C17H14N3O2SClとして
理論値 C:56.74,H:3.92,N:11.68
実測値 C:56.69,H:4.00,N:11.66
【0081】
実施例5
2−(7−クロロ−4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)−N−(2−メトキシエチル)イソニコチンアミド
【化22】

2−(7−クロロ−4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸(0.64g,2.0mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(100mL)懸濁液に2−メトキシエチルアミン(0.20g,2.6mmol)、WSC(0.46g.2.4mmol)とHOBt(0.37g,2.4mmol)を加え、混合物を室温で15時間撹拌した。反応混合物に水を加え、得られた結晶をろ過した。この結晶をエタノールから再結晶することにより融点208℃の表題化合物を得た(収量0.58g、収率77%)。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:3.41(3H,s),3.58−3.61(2H,m),3.67−3.74(2H,m),6.82(1H,brs),7.58−7.62(2H,m),8.06−8.09(1H,m),8.46−8.50(1H,m),8.67−8.68(1H,m),8.85−8.87(1H,m).
元素分析値 C17H14N3O3SClとして
理論値 C:54.33,H:3.75,N:11.18
実測値 C:54.38,H:3.80,N:11.16
【0082】
実施例6
2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)−N−プロピルイソニコチンアミド
【化23】

2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸(1.0g,3.5mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(25mL)懸濁液にn−プロピルアミン(0.27g,4.8mmol)、WSC(0.81g.4.2mmol)とHOBt(0.57g,4.2mmol)を加え、混合物を室温で15時間撹拌した。反応混合物に水を加え、得られた結晶をろ過した。この結晶をエタノールから再結晶することにより融点201℃の表題化合物を得た(収量0.75g、収率66%)。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:1.02(3H,t,J=7.2),1.69(2H,q,J=7.2Hz),3.45−3.52(2H,m),6.58(1H,s),7.62−7.74(3H,m),8.10(1H,dd,J=5.1Hz,1.5Hz),8.55−8.58(1H,m),8.66(1H,m),8.86(1H,dd,J=4.8Hz,0.9Hz).
元素分析値 C17H15N3O2Sとして
理論値 C:62.75,H:4.65,N:12.91
実測値 C:62.68,H:4.92,N:12.75
【0083】
実施例7
2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)−N−(2−メトキシエチル)イソニコチンアミド
【化24】

2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸(1.0g,3.5mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(50mL)懸濁液に2−メトキシエチルアミン(0.35g,4.8mmol)、WSC(0.81g.4.2mmol)とHOBt(0.57g,4.2mmol)を加え、混合物を室温で15時間撹拌した。反応混合物に水を加え、得られた結晶をろ過した。この結晶をエタノールから再結晶することにより融点183℃の表題化合物を得た(収量0.74g、収率61%)。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:3.42(3H,s),3.60(2H,t,J=5.1Hz),3.68−3.74(2H,m),6.84(1H,s),7.63−7.76(3H,m),8.09(1H,dd,J=5.1Hz,1.2Hz),8.56−8.60(1H,m),8.71−8.72(1H,m),8.88(1H,dd,J=5.1Hz,0.9Hz).
元素分析値 C17H15N3O3Sとして
理論値 C:59.81,H:4.43,N:12.31
実測値 C:59.42,H:4.47,N:12.01
【0084】
実施例8
N−(2−ヒドロキシエチル)−2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチンアミド
【化25】

2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチン酸(0.57g,2.0mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)懸濁液に2−ヒドロキシエチルアミン(0.16g,2.6mmol)、WSC(0.46g.2.4mmol)とHOBt(0.37g,2.4mmol)を加え、混合物を室温で15時間撹拌した。反応混合物に水を加え、得られた結晶をろ過した。この結晶をエタノールから再結晶することにより融点245℃の表題化合物を得た(収量0.74g、収率61%)。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:3.36−3.41(2H,m),3.53−3.59(2H,m),4.82(1H,t,J=5.7Hz),7.72−7.96(3H,m),8.11(1H,dd,J=5.1Hz,1.8Hz),8.37(1H,dd,J=7.8Hz,1.2Hz),8.73−8.74(1H,m),8.94(1H,dd,J=5.1Hz,0.6Hz),9.10−9.14(1H,m).
元素分析値 C16H13N3O3Sとして
理論値 C:58.70,H:4.00,N:12.84
実測値 C:58.65,H:4.05,N:12.86
【0085】
参考例13
イソニコチンアミド N−オキシド
【化26】

イソニコチンアミド(25.3g,207mmol)の酢酸エチル(750mL)懸濁液にm−クロロ過安息香酸(55.0g,207mmol)を0℃で加え、混合物を室温で72時間撹拌した。結晶をろ取して表題化合物を得た(収量28.6g、収率100%)。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:7.66(1H,brs),7.80−7 .84(2H,m),8.16(1H,brs),8.26−8.31(2H ,m).
【0086】
参考例14
2−シアノイソニコチンアミド
【化27】

イソニコチンアミド N−オキシド(20.0g,145mmol)のアセトニトリル(1000mL)懸濁液にトリメチシリルシアニド(28.7g,290mmol)とN,N−ジメチルカルバモイルクロリド(31.2g,290mmol)を室温で加え、反応混合物を80−100℃で24時間撹拌した後、混合物を室温に戻しながら18時間撹拌した。結晶をろ取して表題化合物を得た(収量15.7g、収率74%)。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:7.96(1H,brs),8.05−8.07(1H,m),8.33−8.34(1H,m),8.37(1H,brs),8.89(1H,dd,J=4.8,0.9Hz).
【0087】
実施例9
2−(4−オキソ−4H−1,3−ベンゾチアジン−2−イル)イソニコチンアミド
【化28】

チオサリチル酸メチル(50.4g,300mmol)、2−シアノイソニコチンアミド(29.4g,240mmol)、トリエチルアミン(60.6g,600mmol)及びメシチレン(1000mL)の混合物を24時間加熱還流した後、結晶を熱時ろ取した。この結晶をDMSO−エタノールから再結晶することにより表題化合物を得た(収量50.5g、収率89%)。
【0088】
CYP1A2阻害試験法
バキュロウイルス感染昆虫細胞由来CYP1A2発現ミクロソーム(BD Bioscience社製、第一化学薬品より購入)を用い、被検化合物の存在または非存在下における7-Ethoxyresorufinから生成するResorufinを測定する。
(1)氷冷下で0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH 7.4)中に精製水、コントロールミクロソーム、昆虫細胞由来CYP1A2発現ミクロソーム、7-Ethoxyresorufin、ジクマロール、被験化合物及びNADPH産生系液を順に加えて混和する。反応液量は200μLとする。
(2)この液を37℃で10分間インキュベーションした後、反応液を氷冷し、等量のメタノールを加えて攪拌した後、15000回転で10分間遠心分離する。
(3)得られた上清100μLに精製水100μLを加えて攪拌し試料液とする。
(4)別に7-Ethoxyresorufinに変えて当該化合物の溶解溶媒を加えて同様に調製し、操作して得られた液を反応の対照液としHPLC分析に用いる。
(5)試料液及び対照液それぞれ100μLをHPLCに注入し、生成したResorufinのピーク面積を測定し、試料液のピーク面積(AT)及び対照液のピーク面積(AS)からCYP1A2阻害率を求める。
阻害率(%)=(1-AT/AS)×100
【0089】
<反応液組成>
50mmol/L Phosphate Buffer(pH 7.4)
CYP1A2(バキュロウイルス感染昆虫細胞由来)20nmol/L、BD Bioscience社製
(上記にコントロールミクロソームを加えて、タンパク終濃度を1.0mg/mLとする。)
ヒトリンパ芽球様細胞由来コントロールミクロソーム:BD Bioscience社製
7-Ethoxyresorufin:4μmol/L
ジクマロール:10μmol/L
NADPH産生系:0.5mmol/L β-NADP+、 5mmol/L Glucose-6-phosphate(G6P)、1.5unit/mL G6P dehydrogenase、5mmol/L MgCl2
【0090】
<CYP1A2阻害HPLC条件>
検出器:UV575mn
カラム:Inertsil ODS(75×4.6mm、3μm;GLサイエンス社製)
カラム温度:40℃
移動相A:0.01mmol/Lリン酸緩衝液(pH 7.0)/アセトニトリル(9:1)
移動相B:0.01mmol/Lリン酸緩衝液(pH 7.0)/アセトニトリル(3:7)
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

〔式中、R1は独立してハロゲン原子、ヒドロキシ、ニトロ、ハロゲン化されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニル、置換基を有していてもよいアルコキシ、アシルまたは置換基を有していてもよいアミノを、R2およびR3は同一でも異なっていてもよく、水素原子もしくは置換基を有していてもよい炭化水素基を示すか、またはR2およびR3は隣接する窒素原子とともに含窒素複素環基を形成してもよく、nは0〜2の整数を示す。〕で表される化合物またはその塩。
【請求項2】
1が、ハロゲン原子である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
2およびR3は同一または異なって水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
含窒素複素環基が、1−ピロリジニルまたは1−ピペリジニルである請求項1記載の化合物。
【請求項5】
請求項1記載の化合物またはその塩を含有してなるマクロファージ遊走阻止因子(Macrophage migration inhibitory factor)結合剤。
【請求項6】
請求項1記載の化合物またはその塩を含有してなるアンチオキシダント・レスポンス・エレメント(Antioxidant response element)活性化剤。
【請求項7】
請求項1記載の化合物またはその塩を含有してなる細胞保護剤。
【請求項8】
請求項1記載の化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグを含有してなる医薬。
【請求項9】
酸化ストレスに起因する疾患の予防・治療剤である請求項8記載の医薬。
【請求項10】
循環器系疾患、骨・関節疾患、感染症疾患、炎症性疾患、腎疾患、中枢疾患、癌または糖尿病の予防・治療剤である請求項8記載の医薬。
【請求項11】
哺乳動物に対して、請求項1記載の化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグの有効量を投与することを特徴とする循環器系疾患、骨・関節疾患、感染症疾患、炎症性疾患、腎疾患、中枢疾患、癌または糖尿病の予防・治療方法。
【請求項12】
循環器系疾患、骨・関節疾患、感染症疾患、炎症性疾患、腎疾患、中枢疾患、癌または糖尿病の予防・治療剤を製造するための、請求項1記載の化合物もしくはその塩またはそのプロドラッグの使用。

【公開番号】特開2008−308434(P2008−308434A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157162(P2007−157162)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】