説明

17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンを得る方法

本発明による方法は、(a)イソプロパノールへの溶解およびその後の結晶化によって17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン(VA−2914)イソプロパノールヘミソルベートの結晶を形成させ、(b)VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶を分離し、(c)このVA−2914イソプロパノールヘミソルベートをVA−2914に転換することを含んでなる。化合物VA−2914は、治療および避妊に関する婦人科適応症、およびクッシング症候群や緑内障の治療に有用な抗プロゲステロンおよび抗グルココルチコイド作用を有するステロイドである。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンを、そのイソプロパノールヘミソルベートから得る方法に関する。
【0002】
背景技術
式:
【化1】

を有する化合物17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン(以下「VA−2914」という)は、治療および避妊に関する婦人科適応症(子宮線維腫、子宮内膜症)、およびクッシング症候群および緑内障の治療に有用な、抗プロゲステロン作用および抗グルココルチコイド作用を有する既知ステロイドである。上記化合物並びにこれを得る方法は米国特許第4,954,490号明細書に記載されている。
【0003】
VA−2914の他の合成法は、米国特許第5,929,262号明細書に開示されている。この米国特許第5,929,262号明細書の実施例7に記載の方法によって得られる最終生成物は、融点が183℃〜185℃の黄色結晶状の生成物として記載されている。この黄色の存在は、不純物、主としてフェノール化合物の存在を示唆している。
【発明の概要】
【0004】
今般、高純度で得ることができるVA−2914イソプロパノールヘミソルベートが、VA−2914の製造における有用な中間体であることを見出した。上記イソプロパノールヘミソルベートを、エタノール/水またはエチルエーテルのような適当な溶媒から再結晶すると、白色のVA−2914が得られ、これが高純度で得られたことを示唆している。
【0005】
従って、本発明の一つの態様によれば、VA−2914を得る方法であって、VA−2914イソプロパノールヘミソルベートを得て、これをVA−2914に転換することを含んでなる方法が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、上記VA−2914イソプロパノールヘミソルベートであって、その赤外(IR)スペクトル、示差走査熱量測定法(DSC)によるその発熱量、およびそのX線回折図(XRD)によって同定および特性決定されたものが提供される。上記VA−2914イソプロパノールヘミソルベート中のイソプロパノール含量(約5.9%)は、ガスクロマトグラフィーによって決定し、内部標準法によって分析した。
【0007】
本発明の他の態様によれば、VA−2914とイソプロパノールとから上記VA−2914イソプロパノールヘミソルベートを得る方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、VA−2914の取得または粗製VA−2914の精製における、上記VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの使用が提供される。粗製VA−2914化合物は、当技術分野において公知の方法によって得ることができる。しかしながら、特定の実施態様では、粗製VA−2914化合物は、化合物3,3−(1,2−エタンジオキシ)−5α−ヒドロキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−17α−アセトキシ−19−ノルプレグナ−9−エン−20−オン[カルビノールアセテート]から得られ、これは本発明の他の態様となる。
【0009】
図面の簡単な説明
図1は、Perkin Elmer 1600 Fourier Transform IR (FT-IR)分光光度計において臭化カリウムペレットで測定した、VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶形の赤外(IR)吸収スペクトルを示すグラフである。透過率をY軸に示し、波数をX軸上に示す(cm−1)。
【0010】
図2は、示差走査熱量測定法(DSC)による、VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶形の発熱量を示すグラフである。単位時間当たりに吸収または透過したエネルギー(mW)をY軸上に示し、温度(℃)と時間(分)をX軸上に示す。
【0011】
図3は、Debye-Scherrer INEL CPS-120装置において、波長αが1.54060オングストローム(Å)、波長αが1.54439Å、強度比α/αが0.5、電圧40kV、および電流強度が30mAである放射線源を用いて得た、VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶形の粉体X線回折(XRD)スペクトルを示すグラフである。Y軸はパルスを示し、X軸は角度2θを示す。
【0012】
図4は、Perkin Elmer 1600 Fourier Transform IR (FT-IR)分光光度計において臭化カリウムペレットで測定した、エチルエーテルまたはエタノール/水からの再結晶によって得たVA−2914の結晶形[米国特許第5,929,262号明細書]の赤外(IR)吸収スペクトルを示すグラフである。透過率をY軸に示し、波数をX軸上に示す(cm−1)。
【0013】
図5は、示差走査熱量測定法(DSC)による、エチルエーテルまたはエタノール/水からの再結晶によって得たVA−2914の結晶形[米国特許第5,929,262号明細書]の発熱量を示すグラフである。単位時間当たりに吸収または透過したエネルギー(mW)をY軸上に示し、温度(℃)と時間(分)をX軸上に示す。
【0014】
図6は、Debye-Scherrer INEL CPS-120装置において、波長αが1.54060オングストローム(Å)、波長αが1.54439Å、強度比α/αが0.5、電圧40kV、および電流強度が30mAである放射線源を用いて得た、エチルエーテルまたはエタノール/水からの再結晶によって得たVA−2914の結晶形[米国特許第5,929,262号明細書]の粉体X線回折(XRD)スペクトルを示すグラフである。Y軸はパルスを示し、X軸は角度2θを示す。
【0015】
図7は、(i)エチルエーテルまたはエタノール/水からの再結晶によって得たVA−2914の結晶形[米国特許第5,929,262号明細書]および(ii)VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶形についての、示差走査熱量測定法(DSC)による発熱量を示すグラフである。単位時間当たりに吸収または透過したエネルギー(mW)をY軸上に示し、温度(℃)と時間(分)をX軸上に示す。
【発明の具体的説明】
【0016】
VA−2914の入手
本発明の第一の態様によれば、VA−2914を得る方法であって、高純度のVA−2914の取得における中間体として有用な新規なVA−2914の結晶形、具体的にはそのイソプロパノールヘミソルベートを、確実に再現性のある様式で得ることができる条件下で、VA−2914をイソプロパノールから再結晶することを含んでなる方法が提供される。
【0017】
より具体的には、本発明により提供されるVA−2914を得る方法は、
a)VA−2914をイソプロパノール中で結晶化させることによってVA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶を形成させること、
b)VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶を分離すること、および
c)VA−2914イソプロパノールヘミソルベートをVA−2914に転換すること
を含んでなる。
【0018】
VA−2914化合物は、当技術分野において公知の方法のいずれによっても得ることができる(例えば、米国特許第4,954,490号明細書および米国特許第5,929,262号明細書を参照)。しかしながら、特定の実施態様では、前記VA−2914は、本明細書においてカルビノールアセテートと呼ばれる3,3−(1,2−エタンジオキシ)−5α−ヒドロキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−17α−アセトキシ−19−ノルプレグナ−9−エン−20−オンから、例えば酸加水分解によって、ケトンを脱保護し、該化合物を脱水してVA−2914を得ることを含んでなる方法によって得ることができる。原則として、セタール基を加水分解して、5位にあるヒドロキシル基を除去することができる任意の有機酸または無機酸、例えば、硫酸、トリフルオロ酢酸、硫酸一カリウムなどを用いることができる。
【0019】
VA−2914をイソプロパノール中で結晶化させることによるVA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶の形成は、VA−2914をイソプロパノールに予め溶解させた後、前記VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶を形成させることを含んでなる。VA−2914のイソプロパノールへの溶解は、好ましくは加熱下で行ってその溶解を促進した後、得られる溶液を、所望により攪拌下において、冷却して、VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶を形成させる。特定の実施態様では、VA−2914とイソプロパノールとの混合物を、75℃と溶媒の還流温度との間の温度でVA−2914が完全に溶解するまで加熱し、次いで、VA−2914のイソプロパノール溶液を0℃〜30℃の温度で冷却し、VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶を生成させる。
【0020】
VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶の分離は、任意の通常の方法によって行うことができる。特定の実施態様では、得られた結晶を濾過によって分離する。
【0021】
VA−2914イソプロパノールヘミソルベートのVA−2914への転換は、例えば、適当な溶媒中での再結晶によって行うことができる。特定の実施態様では、VA−2914は、エタノール/水およびエチルエーテルから選択される溶媒中でのイソプロパノールヘミソルベートの再結晶によって得られる。このようにして得たVA−2914は、その赤外(IR)スペクトル、示差走査熱量測定法(DSC)によるその発熱量、およびそのX線回折(XRD)図によって同定され、得られた結果[図4−7参照]は、米国特許第5,929,262号明細書に開示の方法により、エチルエーテルまたはエタノール/水からの再結晶によって得たVA−2914の結晶形の結果に相当する。
【0022】
VA−2914イソプロパノールヘミソルベート
本発明の他の態様によれば、新規なVA−2914の結晶形、特に、IR分光光度法、DSCおよびXRDによって同定および特性決定された結晶形であるVA−2914イソプロパノールヘミソルベートが提供される。
【0023】
この新規なVA−2914の結晶形は、ガスクロマトグラフィーによって明らかにされているように、イソプロパノールヘミソルベートであり、そのイソプロパノール含量は約5.9重量%である[実施例5参照]。
【0024】
VA−2914イソプロパノールヘミソルベートは以下の特徴を示す:
図1に示したスペクトルと実質的に同様な、1684、1660、1609、1595、1560、1543、1513、1476、1458、1438、1394、1364、1353、1317、1303、1260、1235、1214、1201、1168、1137、1089、1076、1063、1042、1015、965、949、922、863、830、822、795、771、734、699、668、642、617、608、592、574、537、495および467cm−1に有意なバンドを有する臭化カリウムペレットのIRスペクトルを示し、
DSCによる発熱量記録によって約156℃にピークが示され、これは高温での上記結晶形の吸熱による融解現象と一致し(図2参照)[DSC記録は、Mettler Toledo Star System装置中で、10℃−200℃の温度、加熱速度10℃/分で密閉容器中で行った]、
Debye-Scherrer INEL CPS-120装置において、波長αが1.54060Å、波長αが1.54439Å、波長強度比α/αが0.5、電圧40kV、および電流強度が30mAである放射線源を用いた場合に、図3に示したものと実質的に同様な、8.860、9.085および16.375°の2θに特徴的ピークを有するX線回折(XRD)の回折図(粉体)を示し、さらに具体的には、上記結晶形のXRD分析(粉体)は、表1に挙げられた特性値を示す。
【0025】
【表1】

【0026】
VA−2914イソプロパノールヘミソルベートのIR、DSCおよびXRD分析および特性決定、ならびにそのエチルエーテルまたはエタノール/水中での再結晶によって得たVA−2914化合物[米国特許第5,929,262号明細書]のIR、DSCおよびXRDによる対応する分析値との比較により、上記イソプロパノールヘミソルベートが新規なVA−2914の結晶形であることが示されている。
【0027】
エチルエーテルまたはエタノール/水中での再結晶によって得たVA−2914化合物[米国特許第5,929,262号明細書]は、下記の特徴を示す:
図4に示したスペクトルと実質的に同様な、1684、1661、1611、1595、1560、1542、1517、1499、1458、1438、1390、1364、1350、1304、1253、1236、1202、1167、1147、1077、1064、1023、965、952、921、867、832、809、767、699、668、615、575、540および495cm−1に有意なバンドを有する臭化カリウムペレットのIRスペクトルを示し、
DSCによる発熱量記録によって189℃にピークが示され、これは高温での上記結晶形の吸熱による融解現象と一致し(図5参照)[DSC記録は、Mettler Toledo Star System装置中で、10℃−200℃の温度、加熱速度10℃/分で密閉容器中で行った]、
Debye-Scherrer INEL CPS-120装置において、波長αが1.54060Å、波長αが1.54439Å、波長強度比α/αが0.5、電圧40kV、および電流強度が30mAである放射線源を用いた場合に、図6に示したものと実質的に同様な、9.110および16.965°の2θに特徴的ピークを有するX線回折(XRD)の回折図を示し、さらに具体的には、上記結晶形のXRD分析は、表2に挙げられた特性値を示す。
【0028】
【表2】

【0029】
さらに、DSCによる発熱量記録は、両結晶形[VA−2914イソプロパノールヘミソルベート、およびエチルエーテルまたはエタノール/水中での再結晶によって得たVA−2914(米国特許第5,929,262号明細書)]について同時に行った。得られた結果は図7に示しており、このDSC記録が2個のピーク、すなわち、VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶形の高温での吸熱による融解現象に対応する約156℃のものと、エチルエーテルまたはエタノール/水中での再結晶によって得たVA−2914の結晶形(米国特許第5,929,262号明細書)の高温での吸熱による融解現象に対応する189℃のもの、を示すことを観察することができる。DSC記録は、Mettler Toledo Star System装置中で、10℃−200℃の温度、加熱速度10℃/分で密閉容器中で行った。
【0030】
IR分光光度法は、両結晶形のそれぞれについての極めて明確かつ特徴的なバンドが、他方の結晶形の他のバンドが存在しない波長に存在することにより、両結晶形を区別するための極めて有用な手段であることが明らかになっている。すなわち、例えばエチルエーテルまたはエタノール/水中での再結晶によって得たVA−2914化合物(米国特許第5,929,262号明細書)のIRスペクトル[図4]の809cm−1に存在するバンドは、VA−2914イソプロパノールヘミソルベートのIRスペクトル[図1]には存在しない。
【0031】
両結晶形[VA−2914イソプロパノールヘミソルベート、およびエチルエーテルまたはエタノール/水中での再結晶によって得たVA−2914(米国特許第5,929,262号明細書)]のXRD(粉体)特性はかなり異なっており、2種類の異なる結晶形の存在を示している。知られているように、X線分析は、それぞれの結晶形が異なる特徴的回折を有し、従って、それぞれの形態を明確に同定することができることから、2種類の結晶形を区別するための最善の手段である。上記結晶形についてのXRDの単純な比較では、結晶形の一方の回折であって、他方の結晶形の回折がない部分に当たる回折があることを示している[図3および図6、ならびに表1および表2参照]。
【0032】
上記のデータにより、本発明によって提供されるVA−2914イソプロパノールヘミソルベートは、米国特許第5,929,262号明細書に記載の方法により、エチルエーテルまたはエタノール/水混合物中での再結晶によって得られるVA−2914の結晶形とは異なる新規な結晶形であることが確認される。
【0033】
VA−2914イソプロパノールヘミソルベートは、VA−2914をイソプロパノールに、加熱下にて、例えば、75℃と溶媒の還流温度との間の温度で溶解させ、得られる溶液を0℃〜30℃の温度まで冷却させることを含んでなる方法によって得ることができる。このVA−2914の結晶形は、高純度のVA−2914の取得または粗製VA−2914の精製における中間体として用いることができる。
【0034】
カルビノールアセテート
式:
【化2】

を有する、本明細書においてカルビノールアセテートと呼ばれる化合物、3,3−(1,2−エタンジオキシ)−5α−ヒドロキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−17α−アセトキシ−19−ノルプレグナ−9−エン−20−オンは、VA−2914の合成に有用な新規化合物であり、本発明の他の態様となる。
【0035】
カルビノールアセテートは、下記の反応スキームに示されるような方法によって得ることができる。
【0036】
【化3】

【0037】
簡単に説明すれば、カルビノールアセテートの入手は、第一段階では、17α−アセトキシ−3,3−(1,2−エタンジオキシ)−19−ノルプレグナ−5,(10),9(11)−ジエン−20−オンにある二重結合5(10)を、塩基と溶媒の存在下においてこの化合物をハロゲン化ケトンと過酸化物との反応によって形成した付加生成物と反応させることによって、エポキシド化することを含んでなる。上記のハロゲン化ケトンは、ハロゲン化アセトン、例えば、ヘキサフルオロアセトンまたはヘキサクロロアセトンとすることができる。任意の適当な過酸化物、例えば、過酸化水素、アルカリ金属過酸化物、ペルオキシ酸などを、この反応で用いることができる。このエポキシド化反応は、塩基、好ましくは、例えば、リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩または重炭酸塩のような無機塩基と、有機溶媒、好ましくはハロゲン化溶媒の存在下にて行われる。特定の実施態様では、ハロゲン化ケトンはヘキサフルオロアセトンであり、過酸化物は過酸化水素であり、塩基は二塩基性リン酸ナトリウムであり、溶媒はジクロロメタンである。
【0038】
次に、得られたエポキシドを、第二段階において、Cu(I)塩の存在下にて4−N,N−ジメチルアミノフェニルマグネシウムブロミドのようなグリニャール試薬と反応させて、カルビノールアセテートを得る。
【実施例】
【0039】
下記の実施例により本発明を説明するが、これら実施例は、本発明を制限するものと考えてはならない。
【0040】
実施例1:粗製17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン[VA−2914]の入手
精製した3,3−(1,2−エタンジオキシ)−5α−ヒドロキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−17α−アセトキシ−19−ノルプレグナ−9−エン−20−オン[カルビノールアセテート]38.5gを、窒素雰囲気下、20℃〜22℃の温度でフラスコに入れ、脱イオン水385mlとHKSO17.91gを加えた。得られた懸濁液を、完全に溶解するまで約4時間攪拌した。反応の終了は、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって決定した。
【0041】
次いで、中性Al3.85gを加え、30分間攪拌し、懸濁液を濾過して、不溶性粒状物を脱イオン水38.5mlで洗浄した。酢酸エチル325mlを濾液に加え、pHを7%(w/v)重炭酸ナトリウム溶液で7.0〜7.2の間の一定値に調整した。相を15分間デカントし、最終生成物が存在しないことをTLCによって確かめた後、相を分離して、水相を廃棄した。
【0042】
得られた有機相に脱イオン水192.5mlを加え、これを10分間攪拌した後、相を15分間デカントした。水相に最終生成物が存在しないことをTLCによって確かめた後、相を分離して、水相を廃棄した。
【0043】
得られた有機相を、残渣が得られるまで真空濃縮し、粗製17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン[VA−2914]を得た。
【0044】
実施例2:17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン イソプロパノールヘミソルベートの入手
実施例1で得られた粗製17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオンに、イソプロパノール38.5mlを加え、残渣になるまで真空濃縮する工程を2回行った。得られた固形生成物にイソプロパノール77mlを加え、溶解するまで加熱した。次いで、これを0℃〜5℃の温度まで冷却し、この温度に1時間保持した。得られた懸濁液を濾過し、濾過ケーキを冷イソプロパノールで洗浄した。得られた収率は96モル%(5.5%イソプロパノール含量)であった。
【0045】
得られたVA−2914イソプロパノールヘミソルベートは、本明細書中において説明したように、IR分光光度法、DSCおよびXRDによって特性決定したところ、本明細書中に示され、かつ図1〜3に示されている特徴を有することが明らかとなった。
【0046】
実施例3:17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン イソプロパノールヘミソルベートのVA−2914への転換
VA−2914イソプロパノールヘミソルベート10gを、エタノール/HO(80:20)混合物100mlに攪拌下にて懸濁した。懸濁液を溶解するまで加熱し、生成物が一旦溶解したところで、上記溶液を15〜20℃で冷却した。得られた結晶を濾別し、生成物を真空オーブンで恒量に達するまで乾燥させた。7.5gの所望の結晶形のVA−2914が得られ、これをIR分光光度法、DSCおよびXRDによって特性決定したところ、エチルエーテルまたはエタノール/水中での再結晶によって得られ、かつ図4〜6に示されているVA−2914化合物(米国特許第5,929,262号明細書)の特徴を示した。
【0047】
実施例4:3,3−(1,2−エタンジオキシ)−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−17α−アセトキシ−19−ノルプレグナ−9−エン−20−オン[カルビノールアセテート]の入手
工程1:17α−アセトキシ−3,3−(1,2−エタンジオキシ)−5,10α−エポキシ−19−ノルプレグナ−9(11)−エン−20−オンの合成
14.82gの17α−アセトキシ−3,3−(1,2−エタンジオキシ)−19−ノルプレグナ−5(10),9(11)−ジエン−20−オン(37ミリモル)をClCH220mlに溶解し、得られた溶液を0℃で冷却した。NaHPO3.15g(22.24ミリモル)、ヘキサフルオロアセトン3.1ml(22.24ミリモル)、および5.3mlの50%H(91.9ミリモル)を加えた。混合物を室温で加熱し、一晩攪拌した。反応物をNaHCOの飽和溶液で加水分解し、これをClCHで3回抽出した。プールした有機相をNaSOで脱水し、溶媒が完全に除去されるまで真空濃縮した。黄色固形物が、定量的収率で得られた。得られた粗製固形物は9(10)αおよびβエポキシ異性体の4:1混合物であった。得られた粗生成物を、精製せずに下記の段階で用いた。
【0048】
工程2:3,3−(1,2−エタンジオキシ)−5α−ヒドロキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−17α−アセトキシ−19−ノルプレグナ−9−エン−20−オンの合成
前工程からの残渣を、窒素雰囲気下にて乾燥THF150mlに溶解し、ClCu4.2gを加えた。この懸濁液を0℃で冷却し、4−N,N−ジメチルアミノフェニルマグネシウムブロミドを新たに調製したTHFに溶解した溶液92.5ミリモルを加えた。10分後、混合物をNHClの飽和溶液200mlで加水分解し、混合物を室温で5分間攪拌し、相をデカントした。得られた有機相を、総ての溶媒が除去されるまで真空濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製し、標題化合物12.5g(63.0%)を得た。
【0049】
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.0(dd,2,ArH),6.62(dd,2,ArH),4.41(s,1,−OH,C),4.28(d,1,CH,C11),3.9(m,4,セタール(CH,C),2.85(s,6,−N(CH),2.12(s,3,CH,C20),2.07(s,3,アセテートCH,C17),0.25(s,3,CH,C18)。
【0050】
実施例5:17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン イソプロパノールヘミソルベート中のイソプロパノール含量の測定
17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン(VA−2914)イソプロパノールヘミソルベート中のイソプロパノール含量の測定は、5%フェニルメチルシリコーンカラム(30m)中で窒素をキャリヤーガスとして用いるガスクロマトグラフィーによって行った。
【0051】
イソプロパノールの検出は水素炎イオン化によって行い、65℃の恒温オーブン温度を用いた。検出温度は300℃とし、インジェクション温度は250℃とした。
【0052】
分析は、内部標準法によって行った。この目的のため、ジメチルホルムアミド(DMF)1mlあたりジオキサン50mgの濃度の溶液[内部標準溶液]を用意した。イソプロパノール50mg/DMF1mlの溶液を、「標準調製物」として調製した。次に、上記溶液(「内部標準溶液」および「標準調製物」)の1mlを採取し、それぞれDMFで10mlの容積に希釈した。
【0053】
この試験を行うため、VA−2914イソプロパノールヘミソルベート1gを秤量し、「内部標準溶液」1mlを加え、これをDMFで10mlの容積に希釈した(「試験調製物」)。
【0054】
「試験調製物」と「標準調製物」をガスクロマトグラフィー装置に注入し、VA−2914イソプロパノールヘミソルベート中のイソプロパノール含量を内部標準法によって算出した。イソプロパノール含量は5.9%であり、これはVA−2914イソプロパノールヘミソルベートの理論量に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9(10)−ジエン−3,20−ジオン[VA−2914]を得る方法であって、
a)VA−2914をイソプロパノール中で結晶化させることによってVA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶を形成させること、
b)VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶を分離すること、および
c)VA−2914イソプロパノールヘミソルベートをVA−2914に転換すること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶の形成が、加熱下でVA−2914をイソプロパノールに溶解させた後、得られた溶液を、所望により攪拌下において、冷却することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
VA−2914とイソプロパノールとの混合物を75℃と溶媒還流温度との間の温度でVA−2914が完全に溶解するまで加熱した後、得られたVA−2914のイソプロパノール溶液を0℃〜30℃の温度で冷却する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
VA−2914イソプロパノールヘミソルベートの結晶が濾過によって分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
VA−2914イソプロパノールヘミソルベートのVA−2914への転換が溶媒中での再結晶によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
VA−2914イソプロパノールヘミソルベートのVA−2914への転換が、エタノール/水およびエチルエーテルから選択される溶媒中での再結晶によって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記VA−2914化合物が、化合物3,3−(1,2−エタンジオキシ)−5α−ヒドロキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−17α−アセトキシ−19−ノルプレグナ−9−エン−20−オン[カルビノールアセテート]の酸加水分解によって得られるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン(VA−2914)を精製する方法であって、粗製VA−2914をイソプロパノール中で再結晶し、VA−2914イソプロパノールヘミソルベートを形成させることを含んでなる、方法。
【請求項9】
図1に示したスペクトルと実質的に同様な、1684、1660、1609、1595、1560、1543、1513、1476、1458、1438、1394、1364、1353、1317、1303、1260、1235、1214、1201、1168、1137、1089、1076、1063、1042、1015、965、949、922、863、830、822、795、771、734、699、668、642、617、608、592、574、537、495および467cm−1に有意なバンドを有する臭化カリウムペレットのIRスペクトルを示し、
示差走査熱量測定法(DSC)による発熱量が、約156℃にピークを示し、
図3に示したものと実質的に同様な、8.860、9.085および16.375°の2θに特徴的ピークを有するX線回折図(粉体)を示す
ことを特徴とする、17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン(VA−2914)イソプロパノールヘミソルベート。
【請求項10】
請求項9に記載の17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン(VA−2914)イソプロパノールヘミソルベートを得る方法であって、VA−2914をイソプロパノール中に加熱下にて溶解させ、得られた溶液を0℃〜30℃の温度に冷却することを含んでなる、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の17α−アセトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン(VA−2914)イソプロパノールヘミソルベートの、VA−2914の取得または粗製VA−2914の精製における中間体としての使用。
【請求項12】
下記の式:
【化1】

を有する、化合物3,3−(1,2−エタンジオキシ)−5α−ヒドロキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノ−フェニル)−17α−アセトキシ−19−ノルプレグナ−9−エン−20−オン[カルビノールアセテート]。

【公表番号】特表2006−515869(P2006−515869A)
【公表日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500145(P2006−500145)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/ES2004/000026
【国際公開番号】WO2004/065405
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505278089)クリスタル、ファーマ、ソシエダッド、アノニマ (2)
【氏名又は名称原語表記】CRYSTAL PHARMA, S.A.
【Fターム(参考)】