説明

17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン多形体及び製剤

17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)の多形体及び医薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(“17-AAG”)多形体、このような新規な多形体を製造するための方法、17-AAGを含有する医薬製剤(特にこのような新規な多形体を含有する製剤)、及びこのような医薬製剤を製造し使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルダナマイシンは、アンサマイシン天然産物ファミリーに属し、その種類は、ベンゼノイド環について互いに二つの位置にかかっているメタマクロラクタム環を特徴とする。ゲルダナマイシンの他に、アンサマイシンとしては、マクベシン、ハービマイシン、TAN-420、レブラスタチン(reblastatin)が挙げられる。
ゲルダナマイシンとその誘導体は、アンサマイシンの中で最も広範囲に研究されている。ゲルダナマイシンは、最初は抗生物質活性をスクリーニングする結果として同定されたが、現在の関心は主に抗癌剤としてのその可能性にある。それは、熱ショックタンパク質-90(“Hsp90”)の阻害剤であり、シグナル変換、細胞周期制御及び転写調節に関与する重要なタンパク質を含む、数多くのタンパク質(“クライアントタンパク質”)の折りたたみと活性化に関与する。ゲルダナマイシンのHsp90への結合は、Hsp90-クライアントタンパク質相互作用を破壊し、クライアントタンパク質が正しく折りたたまれることを妨げるとともにそれらがプロテアソーム仲介破壊を受けやすくする。Hsp90クライアントタンパク質の中に、癌に関係する多くの変異した又は過剰発現したタンパク質: p53、Bcr-Ablキナーゼ、Raf-1キナーゼ、Aktキナーゼ、Npm-Alkキナーゼ、Cdk4、Cdk6、Wee1、HER2/Neu(ErbB2)、及び低酸素症誘導因子-1α(HIF-1α)がある。しかしながら、ゲルダナマイシンの肝毒性と不充分なバイオアべイラビリティが臨床候補として中断に至った。
しかし、ゲルダナマイシンのような生物活性を有するが、より医薬的に許容され得るスペクトルの特性を有するゲルダナマイシン誘導体又は類似体の開発の関心は持続している。ゲルダナマイシンの17位は、メトキシ基が求核基によって容易に置き換えられ、17-置換-17-デメトキシオキシエルダナマイシンに都合のいい合成経路を与えることから、化学的に言えば、ゲルダナマイシン誘導体の合成に魅力的な焦点であった。構造活性相関(SAR)の研究から、化学的且つ立体的に多様な17-置換基が抗腫瘍活性を破壊せずに導入され得ることがわかった。例えば、Sasaki et al., US 4,261,989 (1981) (以後“Sasaki”); Schnur et al., US 5,932,566 (1999); Schnur et al., J. Med. Chem. 1995, 38 (19), 3806-3812; Schnur et al., J. Med. Chem. 1995 38 (19), 3813-3820; Santi et al., US 6,872,715 B2 (2005)を参照; これらの開示内容は本願明細書に含まれるものとする。SARの結論は、Hsp90とゲルダナマイシン誘導体間の複合体のX線結晶共構造によって支持され、17-置換基が結合ポケットから溶媒に突き出ることがわかった(Jez et al., Chemistry & Biology 2003, 10, 361-368)。最も周知の17-置換ゲルダナマイシン誘導体は、17-AAGであり、最初にSasakiにおいて開示され、現在臨床試験を受けている。他の注目すべき誘導体は、17-(2-ジメチルアミノエチル)アミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(“17-DMAG”、Snader et al., 6,890,917 B2 (2005))であり、これも臨床試験中である。
【0003】
【化1】

【0004】
医薬製剤を調製する際に、処方される薬剤の可能な多形体の存在が考慮さればならない。存在する場合には、溶解性、貯蔵安定性、吸湿性、密度、及びバイオアべイラビリティを含む、それらの医薬的に適切な特性が異なってもよい。貯蔵中に一多形体が他の多形体に多少自然発生的に変換することがある。このような変換の結果として、特定の多形体を送達するように設計された製剤は、結局は製剤と適合しない異なる多形を含有することになることがある。吸湿性多形体は、貯蔵中に水を取り込むことができ、計量動作に誤差が入るとともに操作性に影響する。特定の多形体と用いるように設計される調製手順は、異なる多形体と用いるのに適していないことがある。相互転換が生じない場合であっても、一多形体は、他の多形体より配合するのがより容易なものであり、正しい多形体の選択が重要である。従って、多形体選択は、医薬製剤を設計するのに重要な要因である。(本明細書に用いられる用語“多形体”は、ICH(日米EU医薬品寄生調和国際会議)のガイドラインQ6A(2)に指定されるように、アモルファス形及び非溶媒和及び溶媒和結晶形を含む。)
現在、17-AAGが多形体であることは既知である。Sasakiは、最初に、212-214℃で融解する17-AAGの単一形を開示した。Zhang et al., US 2005/0176695 A1 (2005)(以後“Zhang”)及びMansfield et al., US 2006/0067953 A1 (2006)(以後“Mansfield”)は、後に、17-AAGが“高融点”形態(mp 206-212℃)と“低融点”形態(mp 147-153℃)を有することを報告した。高融点形態は、ZhangとMansfieldが17-AAG合成においてまず最初に得られたものであり、融点の近似に基づき、Sasakiが報告した形と同一であると思われる。その後、ZhangとMansfieldが高融点形態から低融点形態をイソプロパノールからの再結晶によって調製することを報告した。Mansfieldには、双方の形態のX線粉末回折(XRPD)と示差走査熱量測定法(DSC)のデータが含まれ、それらによって製造された経口医薬製剤が開示されている。Mansfieldは、更に、低融点形態が実際に二つの多形体の混合物であること、また、それが医薬製剤に用いるのに好ましい形態であることを開示している。
【0005】
アンサマイシン、例えば、ゲルダナマイシンや17-AAGの、特に非経口投与用医薬製剤の調製の問題点は、水溶性が極めて低いことにある。(17-DMAGは、アルキルアミノ基によって、より可溶性である。) 今まで、17-AAG又はゲルダナマイシンを配合するために種々の技術が開示されてきた:
(a) Tabibi et al., US 6,682,758 B1 (2004)には、水混和性有機溶媒、(c)界面活性剤、及び(d)水に配合された17-AAGが開示されている。水混和性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコールであり得る。界面活性剤は、卵リン脂質であり得る。
(b) Ulm et al., US 2006/0014730 A1 (2006)には、中鎖トリグリセライドに基づくアンサマイシン、乳化剤(例えば、ホスファチジルコリン)、及び安定剤(例えば、スクロース)のエマルジョンベースの医薬製剤が開示されている。
(c) Ulm et al., US 2006/0148776 (2006)には、17-AAG、乳化剤、及び媒体と長鎖トリグリセリドを共に含む油を含む医薬組成物が開示されている。
(d) Zhong et al., US 2005/0256097 A1 (2005)には、(i)エタノールである第一成分; (ii)ポリエトキシル化ヒマシ油である第二成分(例えば、CremophorTM); を含み、所望により(iii)プロピレングリコール、PEG 300、PEG 400、グリセロール、及びそれらの組合わせからなる群より選ばれる第三成分を含んでもよい賦形剤中の17-AAGの製剤が開示されている。
(e) Isaacs et al., WO 2006/094029 A2 (2006)には、非プロトン性極性溶媒及び長鎖トリグリセリドの水性混合物を含む賦形剤に溶解した17-AAGを含む医薬製剤が開示されている。
(f) Mansfieldには、アンサマイシン及び一つ以上の医薬的に許容され得る可溶化剤を含むが、可溶化剤がリン脂質である場合には、製剤の少なくとも5% w/wの濃度で存在する経口投与用医薬製剤が開示されている。開示された他の可溶化剤としては、種々の分子量のポリエチレングリコール、エタノール、ラウリル硫酸ナトリウム、トゥイーン80、Solutol(登録商標) HS15、炭酸プロピレン等が挙げられる。分散液及び溶液の実施態様が開示されている。
(g) Desai et al., WO 2006/034147 A2 (2006)には、アンサマイシンのような水難溶性薬剤を配合するための溶媒としてジメチルソルビドの使用が開示されている。
【0006】
17-AAGのような水難溶性薬剤の場合、溶媒ベースの製剤の代替物は、非常に小さい粒子-しばしばナノ粒子と呼ばれる-の薬剤が媒体に分散している製剤である。一般に、Wermuth, ed., The Practice of Medicinal Chemistry, 2nd Ed., pp. 645-646 (Academic Press 2003); Ribnow et al., Nature Reviews Drug Discovery 2004 3, 785-795; Peters et al., J. Antimicrobial. Chemotherapy 2000 45, 77-83; Itoh et al., Chem. Pharm. Bull. 2003 51 (2), 171-174; Burgess et al., AAPS Journal 2004, 6 (3), Article 20; Bosch et al., US 5,510,118 (1996); De Castro, US 5,534,270 (1996); and Bagchi et al., US 5,662,883 (1997)を参照、これらの開示内容は本願明細書に含まれるものとする。
17-AAGに関するものについては、アルブミンベースのナノ微粒子製剤が開示されている: Tao et al., Am. Assoc. Cancer Res., 96th Annual Meeting (Apr. 16-20, 2005), abstract no. 1435。しかしながら、アルブミンは、静脈内製剤に医薬的に望ましくないものである。上述のMansfieldには、17-AAGの分散製剤が開示されている。他の特許明細書には、アンサマイシン(ある場合には、17-AAGを含む)のナノ粒子製剤を製造する概念が一般的に言及されているが、個々の例を示していない: Santi et al., US 6,872,715 B2 (2005); Tian et al., US 6,887,993 B1 (2005); Johnson, Jr., et al., US 2005/0020534 A1 (2005); Johnson, Jr., et al., US 2005/0020556 A1 (2005); Johnson, Jr., et al., US 2005/0020557 A1 (2005); Johnson, Jr., et al., US 2005/0020558 A1 (2005); Johnson, Jr., et al., US 2005/0026893 A1 (2005); Johnson, Jr., et al., US 2005/0054589 A1 (2005); and Johnson, Jr., et al., US 2005/0054625 A1 (2005); これらの開示内容は本願明細書に含まれるものとする。
本発明は、17-AAGの新規な多形体及びそこから製造される医薬製剤、特に、分散液ベースの医薬製剤の調製に優れている特に望ましい多形体を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、懸濁製剤に用いるのに特に適するいくつかを含む17-AAGの新規な多形体を提供する。二つのこのような適切な多形体は、特に精製形態で用いられる場合、多形体Cと多形体Gと呼ばれる。それらの調製と特徴は、以下でより詳細に記載される。
他の実施態様において、(a)精製された多形体C、精製された多形体G、及びそれらの組合わせより選ばれる多形体を含む17-AAG及び(b)少なくとも一つの医薬的に許容され得る賦形剤を含む医薬用懸濁製剤が提供される。
上述の懸濁製剤において、好ましくは
(A) 17-AAGは、17-AAGの粒子径分布が約50nm〜約3.0ミクロンであり、中央粒径(容積分布)が約200〜約400nmである、水性媒体に懸濁される粒子として約2.5〜約75質量パーセントの量で存在し、
(B)少なくとも一つの医薬的に許容され得る賦形剤は、(i)ポリオキシエチレンソルビタンとC12-C20脂肪酸のエステル、エステルと17-AAGとの質量比は約0.20〜約1.0である、(ii)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ブロックコポリマーと17-AAGとの質量比は約0.5〜約1.0である、(iii)ホスファチジルコリン、ホスファチジルコリンと17-AAGとの質量比は約0.04〜約0.1である; 及び(iv)それらの組合わせからなる群より選ばれる界面活性剤を含む。
本発明の他の実施態様において、医薬用懸濁製剤の製造方法であって、
(a)精製された多形体C、精製されたG、及びそれらの組合わせより選ばれる多形体を約2.5〜約10質量パーセントの量で含む17-AAGと
(b) (i)ポリオキシエチレンソルビタンとC12-C20脂肪酸のエステル、エステルと17-AAGとの質量比は約0.20〜約1.0である、
(ii)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ブロックコポリマーと17-AAGとの質量比は約0.5〜約1.0である、
(iii)ホスファチジルコリン、ホスファチジルコリンと17-AAGとの質量比は約0.04〜約0.1である; 及び
(iv)それらの組合わせ
からなる群より選ばれる界面活性剤
の混合物を、17-AAGの粒径が約50nm〜約3.0ミクロンの粒子径分布と約200〜約400nmの中央粒径(容積分布)に減少するまでホモジナイズすることを含む、前記方法が提供される。
【0008】
本発明の他の実施態様において、滅菌医薬製剤を製造するための方法であって、
(a) 17-AAGを含む滅菌組成物を準備する工程;
(b) 17-AAGを含む滅菌組成物と(i)ポリオキシエチレンソルビタンとC12-C20脂肪酸のエステル、(ii)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、(iii)ホスファチジルコリン、及び(iv)それらの組合わせからなる群より選ばれる界面活性剤の滅菌液とを無菌的に合わせて滅菌混合物を形成する工程; 及び
(c)滅菌混合物を、17-AAGの粒径が約50nm〜約3.0ミクロンの粒子径分布と約200〜約400nmの中央粒径(容積分布)に減少するまで無菌的にホモジナイズする工程
を含む、前記方法が提供される。
上記製剤と方法において、17-AAGの量は、製剤の全質量に基づいて、好ましくは約2.5〜20、より好ましくは約2.5〜10、最も好ましくは約4〜約6質量パーセントである。
本発明の他の態様において、17-AAGによる治療を必要としている被検者に17-AAGを投与する方法であって、本発明の医薬製剤をこのような被検者に静脈内に投与することを含む、前記方法が提供される。
本発明の他の実施態様において、精製された17-AAGを調製するための方法であって、(a)還流アセトン中の17-AAGの溶液を調製する工程; (b)溶液を約18〜約30℃の範囲にある温度に冷却する工程; (c)反溶媒を少しずつ添加することによって17-AAGを沈殿させる工程; 及び(d)沈殿した17-AAGを収集する工程を含む、前記方法が提供される。そのように精製された17-AAGは、非-17-AAG不純物がかなりパージされており、多形体C又はGを調製するために使用し得る。
他の実施態様において、17-AAGの精製された多形体Cの製造方法であって、
(a)アセトン中の17-AAGの溶液を環流で準備する工程;
(b)溶液の容量に実質的に等しい水の容量を溶液が環流を保つことを可能にする速度で溶液に添加する工程;
(c)実質的に全てのアセトンが留去されるまでアセトンを留去し、その間に蒸留精製された多形体Cが沈殿する工程; 及び
(d)精製された多形体Cを収集する工程
を含む、前記方法が提供される。
他の実施態様においては、上記の方法によって製造される、17-AAGの精製された多形体Cが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
17-AAG多形体
ゲルダナマイシンは、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス変異種ゲルダナス(Streptomyces hygroscopicus var. geldanus)を培養することによって得られる、周知の天然産物である。17-AAGは、Sasakiに記載されるように、アリルアミンとゲルダナマイシンとの反応によって、半合成的に製造される。ゲルダナマイシンも17-AAGも市販されている。
17-AAGは、多形であり、複数の形で存在し、多くは溶媒和物である。我々は、種々の溶媒と結晶化条件を用いて多くの多形体を生成した。多形体は、手法、例えば、XRPD、DSC、赤外分光法、重量測定蒸気収着(GVS)、1H-NMR、偏光顕微鏡法(PLM)、及び熱重量分析(TGA)によって確認した。我々は、XRPDデータにおける類似点に従って多形体を分類し、まとめの説明を下に示す。溶媒和されている多形体は、“多形体A(DMF溶媒和物)”又は“多形体AのDMF溶媒和物”のようにグループ名と溶媒和物名によって表される。
グループA 多形体AのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル(EtOAc)及びメチルイソブチルケトン(MIBK)溶媒和物は全て、約5.6、7.0、9.2、11.2、16.4、及び17.9度の2θでXRPDピークをもつ(最初の四つは、最低角度のピークである)。DSCは、変化(おそらく脱溶媒和)を示し、開始温度はEtOAc溶媒和物の場合の144℃からDMF溶媒和物の場合の168℃までの範囲にある。加熱の際の可変温度XRPD(VT-XRPD)とDSCは、多形体Aがより安定な多形体Cに変換されることを示す。
グループB 多形体Bは、約5.9、6.3、7.2、7.5、9.3、9.8、11.6及び、12.5度の2θで最初の八つが最低角度のXRPDピークをもつ。VT-XRPDは、加熱の際の多形体Bが多形体Cに変換されることを示す。
グループC 多形体Cは、溶媒和されていない多形体である。我々によって同定された17-AAG多形体の中で、湿気と熱に最も安定である。約6.4、8.3、9.6、13.3、14.9、15.7、19.1、及び20.8度の2θで特徴的XRPDピークをもつ。多形体CのDSCサーモグラムは、約188〜約205℃の開始温度で吸熱を示し、より低い温度では顕著な熱事象がない。多形体Cは、加熱の際に他のいかなる多形体にも変換しない。
グループD 多形体D(ジクロロメタン溶媒和物)は、約3.9、4.6、5.7、及び7.9度の2θでXRPDピークをもち、最初の三つは最低角度のピークである。加熱の際に、多形体Cに変換する。
【0010】
グループE 多形体Eのアニソール、t-ブチルジメチルエーテル及びジメチルスルホキシド溶媒和物は、約4.2、5.8、7.8、8.8、9.2、13.1、及び13.7度の2θで特徴的XRPDピークをもち、最初の五つは最低角度のピークである。DSCサーモグラムは、それぞれ、約143、147、及び145℃の開始温度で吸熱性の変化を示した。典型的には、この多形体グループは、高沸点溶媒を用いて調製される。融解後、これらの多形体は、約220℃の分解まで融解した状態で存在する。しかしながら、多形体Cへ変換は、40℃、相対湿度(RH)70%で見られる。
グループG 多形体Gグループは、約5.4、6.8、7.7、8.9、9.6、10.7、及び13.6度の2θで特徴的XRPDピークをもち、最初の六つは最低角度のピークである。加熱によって多形体Gが多形体Cに変換する。
これらの多形体の中で、多形体Cが熱と湿気に最も安定である。多くのその他のものは不安定であるか又は熱及び/又は湿気によって多形体Cに変換される。これらの理由によって、多形体Cは、医薬製剤に特に好ましい多形体である。更に、我々は、以下に示されるように、多形体Cが最も安定なナノ微粒子懸濁製剤を製造することを発見した。下記のデータで示されるように、多形体Gも安定なナノ微粒子懸濁製剤を製造するので、好ましい多形体である。
通常は95%を超える純度、好ましくは97%を超える純度(化学的不純物、即ち、17-AAGでない成分を含まない)で精製された多形体C又は精製された多形体Gへの変換に適した高度に純粋な17-AAGは、最初に還流アセトン中の17-AAGの溶液を製造し、溶液をほぼ周囲温度(即ち、約18〜約30℃)に冷却し、反溶媒、例えば、水を約1時間(より短い又はより長い時間、例えば、15分〜24時間も使用し得る)かけて添加することによって17-AAGを沈殿させ、沈殿した17-AAGを収集することによって調製され得る。
精製された17-AAGを調製するための代替的手順において、アセトン中の17-AAGの溶液が調製される。溶液の容量にほぼ等しい水の容量が、約18〜約30℃の温度で添加される。精製された17-AAGは、撹拌しながら、溶液から沈殿し、収集される。撹拌は、約15分〜約24時間維持され得る。
【0011】
精製された多形体Cを製造する(即ち、他の17-AAG多形体を多形体Cに変換する)ための好ましい方法は、
(a)アセトン中の17-AAGの溶液を環流で準備する工程;
(b)溶液の容量に実質的に等しい水の容量を溶液が環流を保つことを可能にする速度で溶液に添加する工程;
(c)ポット温度が95℃に達するか又は超えるまでアセトンを留去し、その間に多形体C結晶が溶液中に形成する工程; 及び
(d)多形体C結晶を精製された多形体Cとして収集する工程
を含む、前記方法が提供される。
17-AAGの還流アセトン溶液は、17-AAGを還流アセトン容量に溶解することによって又は17-AAGをアセトンの容量に室温で溶解して溶液を環流させることによって調製され得る。ほぼ等容量の水を添加した後、大気圧で蒸留することによってアセトンを除去する。ポット温度と蒸気温度が共に水のほぼ沸点(即ち、海抜で行われる操作の場合約100℃)又はそのすぐ下(例えば、約95℃)になるまで蒸留を続け、その時点で実質的に全てのアセトンが除去される。アセトンが蒸留するにつれて、17-AAG相が溶液から懸濁多形体Cとして分離する(沈殿するか又は結晶化する)。懸濁液を周囲温度(室温)に冷却し、ろ過し、1:1のアセトン水で洗浄することによって、多形体C結晶が収集され得る。収集された結晶は、真空中で、例えば、真空オーブン中で40℃において12時間乾燥され得る。
多形体Cを製造するための他の方法は - 生成物の結晶化度が小さいことから望ましいものではないが - 17-AAGを約70〜約100℃の温度で1〜18時間加熱することを含む。
精製された多形体Cの代表的XRPDパターンを図1に示すが、この具体的なパターンは高度に結晶性で純粋な試料である。表Iは、三つの最低2θ角度ピークと多形体Cを確認するのに用いられるいくつかの追加のピークを含む、図1のXRPDからのデータを数値的にまとめるものである。多形体Cは、6.4±0.3、8.3±0.3、9.6±0.3、13.3±0.3、14.9±0.3、15.7±0.3、19.1±0.3、及び20.8±0.3度の2θのXRPDピークによって定義することができ、最初の三つは最低角度のピークであり、残りは次に最も強いピークであり、このようなピークは多形体Cを定義するのに最も適切なものである。21.3±0.3度の2θのピークは、更に診断ピークとして使用し得る。
【0012】

【0013】
図2は、多形体Cの高度に結晶性で純粋な試料の赤外スペクトルである。
精製された多形体Cの代表的なDSC出力を図3aに再現し、約193℃の開始温度で吸熱変化(融点)が示され、より低い温度ではいかなる脱溶媒和変化もなく、溶媒和されていない多形体としての同定と一致している。当業者は、DSC変化が、実験を通して幾分変化し、試料純度や加熱速度のような要因に左右されることを理解する。具体的に説明するために、図3bは、多形体Cの例外的に高度に純粋な試料(非17-AAG物質を含まず17-AAGの他の多形体を含まない双方の観点から)のDSCスキャンを示す図であり、吸熱変化は約205℃の開始温度を有する。従って、多形体Cは、開始温度が約188〜約205℃の範囲にある吸熱変化によるDSCの観点で確認することができ、より低い温度で他のいかなるDSC熱事象(例えば、脱溶媒和)も存在しない。対照的に、Mansfieldには、低溶融形態については156℃と172℃で、また、高溶融形態については204℃でDSC溶融変化が報告され、彼の形態が本発明の多形体と区別できることを意味する。
精製された多形体Gは、いくつかの異なる経路によって調製され得る。一経路において、アセトン中の17-AAGの溶液が撹拌しながら水に注入され、撹拌は、2、3分間続けられる。結晶は、ろ過によって収集され、減圧乾燥される。他の方法では、水が、一定の時間、例えば、50分かけて徐々に添加される。結晶は、同様に収集され、乾燥される。図4は、5.4±0.3、6.8±0.3、7.7±0.3、8.9±0.3、9.6±0.3及び10.7±0.3度の2θの六つの最低角度のピークによって、また、13.6±0.3度の2θのピークによって定義され得る、精製された多形体GのXRPDパターンを示す図である。図5は、精製された多形体Gの赤外スペクトルであり、図6は、精製された多形体GのDSCスキャンであり、開始温度が約196℃の吸熱変化を示しているが、より低い温度でもいくつかの変化がある。
本発明の多形体と従来技術の多形とを比較するために、表IIには、高溶融形態と低溶融形態についてMansfieldが報告したXRPDデータに対して多形体CとGのXRPDデータが並べられ、それぞれの最初の10の有意なピークが挙げられている。表から明らかなように、多形体CとG及びMansfieldの形は、はっきりと異なるXRPDパターンをもち、多形体CとGが新規であることを示している。最初のいくつかの最低角度のピークの差は、特に注目に値し、一般に、当該技術において最も診断的に有効なピークとしてみなされる。
【0014】

【0015】
一般に、多形体C又はGは、17-AAGの他の多形体をそれらに変換する調製手順の結果として又は17-AAGの他の多形体を除去する分離プロセスの結果として精製され得る。更に、このような精製の結果として他の不純物も除去することができた。好ましくは、精製された多形体Cは、他の17-AAG多形体を除いて、支配的な量の多形体Cを含有する。同様に、精製された多形体Gは、好ましくは、17-AAGの他の多形体を除いて、支配的な量の多形体Gを含有する。より好ましくは、精製された多形体C (又は場合によっては多形体G)は、実質的に17-AAGの他の多形体を含まず、他の多形体がXRPDによってほとんど又は全く検出可能でないことを意味する。また好ましくは、精製された多形体C又は多形体Gは、実質的に化学的に純粋であり、それらが5%以下の化学的不純物(17-AAGでない成分)を含有することを意味する。
一実施態様において、精製された多形体Cは、17-AAGを含む組成物であり、組成物が6.4±0.3、8.3±0.3、及び9.6±0.3度の2θに三つの最低角度のピークをもち、更に13.3±0.3、14.9±0.3、15.7±0.3、19.1±0.3、及び20.8の±0.3度の2θにピークをもつXRPDパターンによって確認される。
他の実施態様において、精製された多形体Cは、17-AAGを含む組成物であり、ここで、17-AAGは、6.4±0.3、8.3±0.3、及び9.6±0.3度の2θに三つの最低角度のピークをもち、更に13.3±0.3、14.9±0.3、15.7±0.3、19.1±0.3、及び20.8の±0.3度の2θにピークをもつXRPDパターンによって確認される、主に多形体Cの形で組成物において存在する。
一実施態様において、精製された多形体Gは、17-AAGを含む組成物であり、組成物が、5.4±0.3、6.8±0.3、7.7±0.3、8.9±0.3、9.6±0.3、及び10.7±0.3度の2θに六つの最低角度ピークをもち、更に13.6±0.3度の2θにピークをもつXRPDパターンによって確認される。
他の実施態様において、精製された多形体Gは、17-AAGを含む組成物であり、ここで、17-AAGは、5.4±0.3、6.8±0.3、7.7±0.3、8.9±0.3、9.6±0.3、及び10.7±0.3度の2θに六つの最低角度ピークをもち、更に13.6±0.3度の2θにピークをもつXRPDパターンによって確認される、主に多形体Cの形で組成物において存在する。
【0016】
製剤
一般に、我々は、精製された多形体C又はGを使う成功したナノ微粒子製剤を調製する能力が最初の粒径に依存しない - 即ち、17-AAGの粒径を微粉化又はホモジナイゼーションの前に他の同様のプロセスによって予め小さくする必要がないことを見出した。17-AAG粒子は、単にホモジナイゼーション流路の最も狭い点を通過するように、典型的には約500μm未満の程度に充分に小さくなければならない。
本発明のナノ微粒子製剤は、17-AAG粒子径分布が約50nm〜約3.0ミクロン、好ましくは約50nm〜約2.0ミクロン、より好ましくは約50nm〜約1.2ミクロンである。中央粒径(容積分布)は、約200〜約400nm、好ましくは約250〜約350nmである。粒子径分布は、適切な粒径分析器、例えば、Nanotrac 250 (Microtrac, Inc.、モンゴメリビル、ペンシルベニア州、米国)又はZetasizer Nano (Malvern Instruments Ltd.、ウースターシャー、英国)で測定することができる。
界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタンとC12-C20脂肪酸のエステルである場合、後者は、飽和又は不飽和であり得る。適切な脂肪酸の例としては、ラウリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、及びステアリン酸が挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタンは、単独で又は多数であることができる又は、C12-C20脂肪酸でエステル化され得る。ポリオキシエチレンソルビタンとC12-C20脂肪酸との適切なエステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80又はTWEEN(登録商標)80); ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート又はTWEEN(登録商標)20); ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(ポリエチレングリコールソルビタンモノパルミテート又はTWEEN(登録商標)40); ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(ポリエチレングリコールソルビタンモノステアレート又はTWEEN(登録商標)60); ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート(ポリエチレングリコールトリオレエート又はTWEEN(登録商標) 85); 及びポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(ポリエチレングリコールソルビタントリステアレート又はTWEEN(登録商標)65)が挙げられ; 最初の二つが好ましく、最初の一つが特に好ましい。エステルと17-AAGとの質量比は、好ましくは約0.20〜約1.0、より好ましくは約0.20〜約0.35である。
【0017】
界面活性剤がポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーである場合、市販の変形例は、Pluronic(登録商標) F-68である。コポリマーと17-AAGとの質量比は、好ましくは約0.5〜約1.0である。
界面活性剤がホスファチジルコリン(レシチンとしても知られる)である場合、ダイズ又は卵のような原料に由来することができ、前者が好ましい。ホスファチジルコリンと17-AAGとの質量比は、好ましくは約0.04〜約0.1、より好ましくは約0.04〜約0.06である。使用し得る個々のホスファチジルコリンは、Phospholipon(登録商標)90Gであり、これはダイズ由来のホスファチジルコリンである。
二つ以上の異なる界面活性剤の組合わせ、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンとC12-C20脂肪酸の二つの異なるエステル又は一つのこのようなエステルとポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーが使用し得る。界面活性剤の好ましい組合わせは、(A)ポリオキシエチレンソルビタンとC12-C20脂肪酸又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーと(B)ホスファチジルコリンである。
好ましくは、ホモジナイズする工程は、必要とされる複数のパスを用いて、例えば、混合物を69〜3103bar(1,000〜45,000psi)の圧力、好ましくは約1241〜約1586bar(約18,000〜約23,000psi)の圧力で小オリフィス(例えば、直径が50〜125、好ましくは80〜100ミクロン)を進めることによる、高剪断条件下で高圧ホモジナイゼーションによって行われる。マイクロ流動化装置、ミル等を含む、様々な装置も使用し得る。
所望により、本発明の製剤は、更に、炭水化物、例えば、モノサッカリド及び/又はジサッカリド又はそれらの組合わせを含んでもよい。用いられる場合、最終製剤は、好ましくは約5質量%〜約15質量%の全炭水化物を含有する。具体的な説明として、最終製剤は、10質量%スクロース又は4質量%のマンニトールと1質量%のスクロースの組合わせ(5質量%の全炭水化物含量に対して)を含有することができる。炭水化物は、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、デキストロース、及びそれらの組合わせからなる群より選ばれることができ、スクロースが好ましい。
本発明の製剤は、凍結乾燥(フリーズドライ)することができ、後の再構成のために凍結乾燥物として保存される。このような場合、炭水化物の使用が好ましく、抗凍結剤及び/又は凍結乾燥保護剤として役に立つ。医薬製剤の凍結乾燥に関する例示的な開示としては、Konan et al., Int. J. Pharm. 2002 233 (1-2), 293-52; Quintanar-Guerreo et al., J. Microencapsulation 1998 15 (1), 107-119; Johnson et al., J. Pharmaceutical Sci. 2002, 91 (4), 914-922; Tang et al., Pharmaceutical Res. 2004, 21 (4), 191-200が挙げられ; これらの開示内容は本願明細書に含まれるものとする。
【0018】
凍結乾燥に代わるものとして、本発明の製剤は、凍結保存され、その後、解凍され、再構成され、投与前に希釈され得る。このような場合において、抗凍結剤としてスクロースのような炭水化物の使用が好ましい。
最終のナノ微粒子製剤が無菌であることを必要とする場合、製剤自体を加熱滅菌(オートクレーブ)することは、その手順が粒子径分布の変化を引き起こすことから、実際的でないことがわかった。17-AAG粒子のサイズのために、製剤をろ過滅菌することも実行可能でなかった。我々は、17-AAG(例えば、水中の17-AAGの懸濁液をオートクレーブにかけることによって又は無菌結晶化によって)とその他の成分(例えば、ポリソルベート80、ホスファチジルコリン、炭水化物等)を当該技術において確立された技術、例えば、滅菌ろ過又はオートクレーブを用いて個々に又は組合わせて別個に滅菌し、その後、製剤成分を無菌的に合わせ、処理工程を行うことによって、この問題を解決した。
我々は、実際に投与されるよりより濃縮され、貯蔵と輸送の間に取り扱われる材料の容積を減少させる、初期濃度で製剤を調製することがより都合のよいことがわかった。その後、製剤は、投与直前に - 例えば、約10×〜20×だけ適切な賦形剤、例えば、注射用蒸留水(WFI)又は水(D5W)中5%デキストロースに - 希釈され、典型的には希釈の12〜24時間以内に投与される。しかしなから、所望される場合、製剤は、最終投与濃度で直接調製され得る。
製剤は、適切な方法によって、例えば、非経口的に(特に静脈内に)被検者に投与され得る。或は、経口投与も企図される。患者において過敏性反応を潜在的に引き起こす賦形剤の使用を伴わないことから(例えば、Cremophor(登録商標))、より安全な製品である。すぐに注入できる希釈された製剤のオスモル濃度(約260ミリモル/kg)は、生理的条件と似ている。製剤がより高濃度の17-AAGを含有することから、より小さい容積がより短い投与時間を伴って投与される。
【0019】
工業上の利用性
17-AAGは、種々の増殖性疾患、例えば、頭部、頚部、鼻腔、副鼻腔、鼻咽頭、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、唾液腺、パラガングリオーマの腫瘍を含む頭頚部の癌; 肝臓と胆道系の癌、特に肝細胞癌; 腸癌、特に結腸直腸癌; 卵巣癌を治療する; 小細胞及び非小細胞肺癌; 乳癌肉腫、例えば、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、胎児性横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、神経線維肉腫、骨肉腫、滑膜肉腫、脂肪肉腫、及び胞状軟部肉腫; 中枢神経系の新生物、特に脳癌; リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫、リンパプラスマサイトイド(lymphoplasmacytoid)リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B細胞系大細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、及びT細胞形成手術の大細胞リンパ腫を含むがこれらに限定されない過剰増殖性疾患を治療するために使用し得る。より具体的には、17-AAGによる治療に目標とされ得る癌としては、乳癌、多発性骨髄腫、メラノーマ、結腸癌、肺癌(特に非小細胞肺癌(NSCLC))、前立腺癌、甲状腺癌、卵巣癌、リンパ腫、膵臓癌、及び白血病(特に、慢性骨髄性白血病(CML)及び慢性リンパ球性白血病又は(CLL))が挙げられる。
細胞の過剰増殖を特徴とする非癌疾患もまた、本発明に従って投与される17-AAGによって治療され得る。このような疾患の具体例としては: 萎縮性胃炎、炎症性溶血性貧血、移植片拒絶、炎症性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、小児脂肪便症、脱髄性神経障害、皮膚筋炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)、多発性硬化症、心筋炎、筋炎、鼻ポリープ、慢性副鼻腔炎、尋常性天疱瘡、原発性腎炎、乾癬、外科的癒着、狭窄又は再狭窄、強膜炎、強皮症、湿疹(アトピー性皮膚炎、刺激性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎を含む)、歯周病(即ち、歯周炎)、多発性嚢胞腎、及びI型糖尿病が挙げられるがこれらに限定されない。他の例としては、脈管炎(例えば、巨細胞性動脈炎、側頭動脈炎、高安の動脈炎)、結節性多発動脈炎、アレルギー性血管炎及び肉芽腫症(チャーグ・シュトラウス疾患)、多発性血管炎重複症候群、過敏性血管炎(ヘーノホ・シェーンライン紫斑病)、血清病、薬剤誘発性脈管炎、感染性脈管炎、新生物性脈管炎、結合組織障害を伴う脈管炎、補体系の先天性欠損を伴う脈管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、川崎病、中枢神経系の脈管炎、バージャー病及び全身性硬化症); 胃腸管病(例えば、膵臓炎、クローン病、潰瘍性結腸炎、潰瘍性直腸炎、原発性硬化性胆管炎、特発性を含むあらゆる原因の良性狭窄(例えば、胆管、食道、十二指腸、小腸又は結腸の狭窄); 呼吸器疾患(例えば、喘息、過敏性肺炎、石綿沈着症、珪肺症及び他の型の塵肺症、慢性気管支炎及び慢性閉塞性気道疾患); 鼻涙管病(例えば、特発性を含む全ての原因の狭窄); 及び耳管疾患(例えば、特発性を含む全ての原因の狭窄)が挙げられる。
【0020】
17-AAGは、他の活性医薬成分(API)、例えば、他の抗癌剤又は細胞毒性剤と組合わせて投与することができ、アルキル化剤、血管形成阻害剤、代謝拮抗物質、DNA切断剤、DNA架橋剤、DNA挿入剤、DNAマイナーグルーブ結合剤、エンジイン、熱ショックタンパク質90阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、微小管安定剤、ヌクレオシド(プリン又はピリミジン)類似体、核外輸送核外移行阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼ(I又はII)阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。個々の抗癌剤又は細胞毒性剤としては、β-ラパコン、アンサマイトシンP3、アウリスタチン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カリスタチンA、カンプトテシン、カペシタビン、CC-1065、シスプラチン、クリプトフィシン、ダウノルビシン、ジソラゾール(disorazole)、ドセタキセル、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、ダイネマイシンA、エポチロン、エトポシド、フロクスウリジン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオルウラシル、ゲフィチニブ、ゲルダナマイシン、17-DMAG、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イマチニブ、インターフェロン、インターロイキン、イリノテカン、メイタンシン、メトトレキセート、マイトマイシンC、オキサリプラチン、パクリタキセル、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、チオテパ、トポテカン、トリコスタチンA、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビンデシンが挙げられる。ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、ドセタキセル、サリドマイド(Thalomid(登録商標))、レナリドマイド(Revlimid(登録商標))、及びHerceptin(登録商標)との組合わせが好ましい。
治療単位が17-AAGと他のAPIを含む併用治療を必要とする場合、このような他のAPIは、それ自体の製剤で、個別に投与され得るか又は、適している場合には、本発明の製剤に添加される追加の成分として投与され得る。
本発明の医薬用溶液製剤を用いて、17-AAGは、投与回数によっては、約4mg/m2〜約4000mg/m2の範囲にある用量で投与され得る。17-AAGに好ましい用法・用量は、週一回約450mg/m2である(Banerji et al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 22, 199 (2003, abstract 797))。或は、週一回約308mg/m2の用量が投与され得る。Goetz et al., Eur. J. Cancer 38 (Supp. 7), S54-S55 (2002)を参照。他の用法・用量は、週二回であり、用量は220mg/m2〜340mg/m2 (好ましくは220mg/m2か又は340mg/m2)の範囲にある。他の薬剤、例えば、ドセタキセルとの併用治療に使用し得る用法・用量は、三週間毎に二つの薬剤を投与することであり、17-AAGの用量はそれぞれの投与で650mg/m2までである。
本発明の製剤は、追加の賦形剤を含有することができる。適切な賦形剤としては、担体、界面活性剤、濃厚化剤又は乳化剤、固体結合剤、分散助剤又は懸濁助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング、抗凍結剤、凍結乾燥保護剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、防腐剤、等張剤、及びそれらの組合わせが挙げられる。適切な賦形剤の選択と使用は、Gennaro, ed., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 2003)に教示され、その開示内容は本願明細書に含まれるものとする。
被検者は、典型的にはヒトであるが、本発明の方法は動物のために実施することができ、対象(ネコ、ウシ、イヌ、ウマ等を含む)の具体的な哺乳動物の単位用量が適切に調整される。
本発明の実施は、具体的な説明によって示されるが限定されない、以下の実施例によって更によく理解され得る。
【実施例】
【0021】
実施例1 - 精製された17-AAGの調製
このプロセスは、ほぼ周囲温度でアセトン-水から緩慢な結晶化を用いて極性不純物を除去することによって高度に純粋な17-AAGを製造する。粗17-AAG(21g)を含有するフラスコを、還流するために準備した。フラスコにアセトン(20mL/グラム固形分)を添加した。スラリーを還流し、その温度で5分間保持した。混合物を、1時間かけて25℃に冷却した。水(アセトン容量に等しい容量で)を、1時間かけて添加した。20分後、スラリーをろ過した。フィルタケークを、1:1のアセトン:水(40mL)で洗浄した。湿ったケーク(28g)を、ろ過し、その後の処理のために保存した。そのように製造された17-AAGは、99.7%のクロマトグラフィ純度を有し、多形体Bであった。
【0022】
実施例2 - 精製された多形体Cの調製
この手順は、高結晶化度を有する、主に多形体Cを含む17-AAGを製造する。高純度の17-AAG(例えば、前実施例に従って調製された)が用いられる場合、得られた多形体Cは、高度に純粋で高度に結晶性である。
アセトン(100mL)中の17-AAG(1g、実施例1に従って精製した)の溶液を還流した。水(100mL)を、還流でポットを保つような速度か又はそれに近い速度で添加した。ポット温度が100℃に達するまでアセトンを留去した。追加の留出物(20mL、大部分は水)を収集した。ポット内容物を冷却し、ワットマン#52ろ紙を取り付けたブフナー漏斗を用いたろ過によって固形分を集め、1:1のアセトン:水(20mL)で洗浄した。結晶を、>20℃で>2時間減圧乾燥し、試料を採取し、85℃で約12時間減圧乾燥し、多形体Cを得た。
【0023】
実施例3 - 精製された多形体Gの調製
アセトン(750mL)中の17-AAG(10.0g)の溶液を、室温で撹拌しながら水(1.05L)に注入した。溶液を、更に70分間撹拌した。多形体G結晶を、ろ過によって収集し、45℃で18時間乾燥した。
代替的手順において、17-AAG(1.0g)をアセトン(117mL)に溶解し、室温で撹拌した。水(117mL)を、15mL/分の速度で添加した。混合物を更に50分間撹拌し、多形体G結晶をろ過によって収集し、70℃で44時間乾燥した。
【0024】
実施例4 - 17-AAG多形体の分析と確認
17-AAG多形体の純度を、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)で測定し、以下のパラメータを有した: Zorbax C8カラム(4.6×50mm、3.5ミクロン)、UV(237nm)検出器、1.25mL/分の流量、5μLの注射サイズ、溶媒Aとしてアセトニトリル、溶媒Bとして10mM酢酸アンモニウム(pH 5.8)、45:55(v:v)の溶媒A:溶媒Bの移動相による均一溶離、15分の実行時間。
XRPDパターンを、Pharmorphix社(ケンブリッジ、英国)から入手した。純粋な17-AAG多形体Cとケイ素粉末(Aldrich、60メッシュ、Cat. No. 267414-5G)と混合した17-AAG多形体CのXRPDパターンをSiemens D5000回折計による同一条件で得た: CuK放射線(40kV、40mA)、θ-θゴニオメータ、自動発散受光スリット、グラファイト二次モノクロメータ及びシンチレーションカウンタ。データを、0.02o 2θのステップ幅と1秒のステップ時間を用いた連続走査方式で2θの2o〜42oの角度範囲で集めた。試料を、周囲条件下で処理し、粉砕せずに受け取られる粉末を用いて平皿試験片として調製した。約25-50mgの試料を、研磨したゼロバックグラウンド( 510 )のシリコンウエハ(The Gem Dugout、1652プリンストンドライブ、ペンシルベニアステートカレッジ、ペンシルベニア16803、米国)に切断した直径12mm、深さ0.5mmの空洞に穏やかに装填した。全ての試験片を、共に静止して処理し、分析の間、それ自体の平面で回転させた。
XRPDデータは、Kα2成分がEVA評価プログラム(Brucker Diffrac)を用いて除去された後、Cu Kα1(λ= 1.5406オングストローム)を用いて報告される。第二回折パターンは、2θ= 28.44oの111シリコン反射を内部的に示したものである。このことから回折計のゼロポイント誤差が、+0.04oであることが求められた。例示的データは、図1と図4及び本明細書に前述した表Iと表IIに示されている。当業者は、パラメータ、例えば、試料純度や標品によっては、測定された2θ角度の一部の散乱が±0.3度程度で予想することができることを理解する。
赤外スペクトルを、ATR付属品を取り付けたPerkin-Elmer Model 1600によって得た。例示的赤外スペクトルは、本明細書に前述した図2と図5に示されている。
DSCデータを、TA機器Q100又はQ1000機により集めた。エネルギーと温度調整基準は、インジウムとした。試料を、窒素パージ下で20〜250℃で、10℃/分の速度で加熱した。全ての試料を、密封されないアルミニウム製鍋においてスキャンした。例示的スキャンは、本明細書に前述した図3と図6に示されている。
【0025】
実施例5 - ポリソルベート80との製剤
17-AAG(精製された多形体C、1.25g)結晶を、WFI(13g)及びWFI中のポリソルベート80の溶液(3.75gの10質量%WFI溶液)と混合した。この混合液を、7gのWFIを含有するマイクロフルイディクスモデル110Sのマイクロフルイダイザーのリザーバに装填し、氷水浴に浸漬した冷却コイルを備えたG10Z相互作用チャンバを配置し、1586bar(23kpsi)で13分間(640ストローク)再循環方式で処理し、圧縮空気を7bar(100psi)の圧力で供給した。この手順から、約1.5質量%ポリソルベート80を有する水性媒体において約50mg/mL(より正確には52.6mg/mL)の17-AAG濃度を有する製剤を得、17-AAG粒子径分布(容積分布)が1ミクロン未満で中央粒径が300nm(容積分布)であった。
粒子径分布は、Nanotract250粒径分析器における動的光散乱によって求めた(Microtrac Inc.、モンゴメリービル、ペンシルバニア)。水の特性(屈折率: 1.333、20℃における粘度: 0.797cP、30℃における粘度: 1.002cP)を有する流体において透明性を“吸収する”“不規則な”形の粒子のPSD(容積分布)を測定するためにNanotrac250の設定が構成された。バックグラウンド信号は、注射用5%デキストロース(D5W)を用いて測定した。その後、ナノ粒子製剤をD5Wに10〜20倍を希釈し、よく混合した。希釈された試料のPSDを、5回繰り返しの5分分析の平均として測定し、粒径の関数としてヒストグラム形式で報告した。PSDは粒径の範囲と回数を反映するが、PSDの他の特性を定量化に用いた。D50は、全粒子容積の50%を超える粒径に対応する容積パーセンタイルである(即ち、中央粒径)。D90は、全粒子容積の90%を超える粒径に対応する容積パーセンタイルであり、分散液における最大粒子の基準である。動的光散乱技術で測定した粒子径分布を、当該技術において確立された技術によって得られたSEM画像で補充した。SEM画像によって求めた粒径は、光散乱によって求めたものと大体一致した。図7は、我々の製剤の一つにおける17-AAGナノ粒子の代表的SEM画像である。
以下の関係を用いて、約150パスに対応するように処理時間を選択した:
【0026】
【数1】

【0027】
ここで、t = 前処理時間、
Vbatch = 配合バッチの容積
r = 速度(ピストンストローク/時間)
Vstroke = ピストンストローク移動の容積
一般に、パス数は約50〜200パス、好ましくは約100〜約150パスである。より大きいパス数は、有害でないが、処理時間を不必要に延長する。
或は、処理時間は、中間時点で粒子径分布を評価するとともに所望の粒子径分布が達成されるまで処理することによって求めることができる。
【0028】
実施例6 - ポリソルベート80とホスファチジルコリンとの製剤
17-AAG(精製された多形体C、1.25g)をWFI(13.62g)とWFI中のポリソルベート80溶液の溶液(2.5gの10質量%WFI溶液)及びダイズホスファチジルコリン水性懸濁液(0.63gの10質量%WFI懸濁液)と混合した。この混合液を、7gのWFIを含有するマイクロフルイディクスモデル110Sのマイクロフルイダイザーのリザーバに装填し、上記実施例に記載されるように配置し、同一条件下で処理した。この手順から、約1.0質量%ポリソルベート80及び0.25 質量%ダイズホスファチジルコリンを有する水性媒体において約50mg/mLの17-AAG濃度を有する製剤を得、17-AAG粒子径分布が1ミクロン未満で中央粒径が300nm(容積分布)であった。
【0029】
実施例7 - ポリソルベート80、ホスファチジルコリン及びスクロースとの製剤
17-AAG(精製された多形体C、1.25g)をWFI(3.62g)とポリソルベート80溶液(5gの10質量%WFI溶液)、ダイズホスファチジルコリン水性懸濁液(0.63gの10質量%WFI懸濁液)、及びスクロース溶液(10gの25質量%WFI溶液)と混合した。この混合液を、7gのWFIを含有するマイクロフルイディクスモデル110Sのマイクロフルイダイザーのリザーバに装填し、上記実施例に記載されるように配置し、同一条件下で処理した。この手順から、約1.0質量%ポリソルベート80、0.25質量%ダイズホスファチジルコリン、及び10質量%スクロースを有する水性媒体において約50mg/mLの17-AAG濃度を有する製剤を得、17-AAG粒子径分布が1ミクロン未満で中央粒径が300nm容積分布であった。
滅菌製剤が所望される場合、ポリソルベート80溶液とスクロース溶液をWFIを用いて調製し、別々の溶液として又は合わせた二つの溶液としてフィルタ滅菌した。ホスファチジルコリン懸濁液を調製し、その後、オートクレーブにかけた。17-AAGをWFIの一部と混合し、オートクレーブにかけた。ホスファチジルコリン懸濁液と17-AAGスラリーを別々の混合物としてオートクレーブにかけるか又は単一の混合物として合わせた。滅菌後、17-AAG、ポリソルベート(登録商標)80溶液とスクロース溶液、及びホスファチジルコリン混合液を無菌的に合わせて、所望の最終組成物を得た。マイクロフルイダイザーを滅菌し(例えば、オートクレーブによって)、転移工程と処理工程を無菌的にであるが実施例5に記載されたように行った。
より大きな粒子の一部を除去することが所望される場合、遠心分離は、推奨された技術である。しかしながら、遠心分離は、粒子径分布において対応する移動と17-AAGの40%までの損失を引き起こし得る。ろ過は、分離物 - 大きいがまれな粒子 - を除去するために使用することができ、このようなろ過は17-AAG粒子径分布又は分析にほとんど影響しない。
【0030】
実施例8 - ホモジナイザ処理能力に対する濃度の効果
ホモジナイザの処理時間は、バッチ容積とパス数の関数である。従って、一定のホモジナイゼーション操作について、一定の粒子は、微粒子濃度から独立して同一のパス数を見なければならず、17-AAG出発懸濁液はより濃縮されている以外は、ホモジナイザ処理能力が同一のパス数を用いることにより増大され得る可能性が生じる。
ホモジナイゼーション後希釈までスクロースの添加を延期するとともにポリソルベート80のフィルタ滅菌のための水の量を最小限にすることによって、50mg/mL濃度に必要とされる同様のパス数を用いて許容され得る粒子径分布まで200mg/mLほどの17-AAGを含有する製剤をホモジナイズにすることは実行可能であった。図8は、200mg/mLの17-AAGを含有するバッチのパス数の関数として粒子径分布(D50にもD90にも基づく)を示すグラフである。データは、50パス後、粒子径分布が横ばいになり且つ、200mg/mLの17-AAG濃度を有するバッチを用いることにより、ホモジナイザ処理能力が4倍になり得ることを示している。
従って、以下の代替的手順は、ホモジナイザ処理能力がより高い本発明の製剤を製造するために使用し得る:
(a) 75gの全バッチサイズに対して、200mg/mLの17-AAG(多形体C)、40mg/mLのポリソルベート80、10mg/mLのPhospholipon(登録商標)90G及び残部WFIを含有する、ホモジナイゼーション前バッチを調製する。
(b) 17-AAGとPhospholipon 90Gを、水中で60分間オートクレーブにかけることによって滅菌する。
(c) ポリソルベート80を25%w/w溶液として滅菌された17-AAG混合物にフィルタ滅菌する。
(d) ホモジナイゼーション装置(マイクロフルイディクスMS110)を、60分間オートクレーブにかけることによって滅菌する。
(e) 滅菌された材料を、滅菌されたホモジナイザに添加し、処理する(1379-1586bar(20-23kpsi)圧、115-150パス、相互作用チャンバG10Z、コイルと浴を冷却)。
(f) ホモジナイズされた懸濁液を13%w/w滅菌スクロースに4倍希釈して、50mg/mLの17-AAG、10mg/mLのポリソルベート80、2.5mg/mLのPhospholipon(登録商標)90G及び100mg/mLのスクロース、及び残部WFIを含む最終製品を得る。
【0031】
実施例9 - Pluronic(登録商標)F-68との製剤
5質量% 17-AAGと1.25〜5質量% Pluronic(登録商標)F68を含む以外は実施例5に記載されたように、17-AAGとPluronic(登録商標)F68ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーとのナノ微粒子製剤を調製した。2.5〜5質量% Pluronic(登録商標)F68を含む製剤によって、粒子径分布が1.2ミクロン未満の約50mg/mL 17-AAGを含有する製剤を得た。最大粒子の成長が可能であるにもかかわらず(24時間かけてもD90のばらつきが一致しない)、どちらの製剤も安定な中央粒径を示した。
2.5〜5%の製剤を、8〜9ヶ月間の室温で保存し、分散安定性について再評価した。どちらの製剤も約3分間撹拌することにより再混合した。2.5% Pluronic(登録商標)F-68製剤の沈降物は、完全に再懸濁させることができず、一部の材料がバイアルの底に付着したままであった。5% Pluronic(登録商標)F-68製剤の沈降物は完全に再懸濁したが、一部の集合体が目に見えた。粒径測定から、どちらの製剤も主に全体の粒度分布が同様の100〜1,000nmサイズ範囲にある粒子からなるが、Nanotrac 250装置で測定可能でない大きな凝集体を含有したことを示した。測定されたD50は、2.5% Pluronic(登録商標)F-68と5% Pluronic(登録商標)F-68についてそれぞれ360nmと390nmであった。
【0032】
実施例10 - 他の多形体との製剤
17-AAGの非滅菌製剤を、実施例7の手順を用いて他の多形体と製造し、精製された多形体Cと製造された製剤と比較した。表IIIに示される結果から、17-AAGの他の形が、精製された多形体G (D50がより大きい製剤になるが)を除いて劣った製剤になることがわかる。
【0033】

【0034】
実施例11 - 凍結乾燥
凍結乾燥すべき製剤の調製について、前実施例に記載されたWFIの一部を、炭水化物抗凍結剤溶液の対応量に置き換えた。例えば、WFIの一部をスクロース水溶液に置き換えることができ、更に10質量%スクロースを含有する以外は前実施例のように最終製剤を得た。或は、4質量%マンニトールと1質量%スクロースを更に含有する以外は実施例4及び実施例5に記載された製剤と同一の製剤を、WFIの一部をマンニトール-スクロース溶液の対応量に置き換えることによって調製され得る。
凍結乾燥について、以下の工程順序を使うことができる:
凍結:
(a)製剤を+5℃に冷却し、0.5時間保持する
(b)棚を-5℃に下げ、もう0.5時間保持する
(c)棚を-40℃に約1℃/分で下げ、1.5時間保持する
一次乾燥
(d) 60ミリトール圧に減圧にする
(e)棚を-25℃に1℃/分で上げる
(f) -25℃で15時間保持する
(g)棚を-28℃に下げ、(i)全ての製品の熱電対が-30℃より高い温度で読み取り、その後5時間の遅延に基づいて一次乾燥が終わるまで又は(ii)一次乾燥の終点が差圧法によって示される(Pirani v.示差キャパシタンスマノメータ)までそこで保持する
(h)棚の温度を40℃に0.2℃/分の速度で上げる
(i) 40℃で6時間保持する
【0035】
実施例12 - 貯蔵安定性
本発明のナノ微粒子製剤を、5℃か又は25℃で数ヶ月間を通じて保存して、それらの安定性を評価した。製造で測定されたPSDを貯蔵後のPSDと比較することによって製剤の安定性を評価した。PSDの有意な変化は、どちらの貯蔵条件でも数ヶ月間にわたって認められなかった。更に、化学組成(17-AAG分析と不純物プロファイル)の有意な変化は、いずれの貯蔵条件でも認められなかった。進行中の研究から、少なくとも9ヶ月にわたる物理的化学的安定性が示される。
ナノ粒子製剤の安定性を、臨床使用の条件下でも試験した。この場合、製剤を、D5Wに10倍希釈し、周囲光条件と温度条件下で維持し、72時間にわたって試料を採取した。外観、化学組成、粒子径分布、オスモル濃度、及びpHに関して希釈された製剤に有意な変化が認められなかった。これらの安定性の研究から、希釈された材料が臨床使用の典型的な条件下で完全に安定であったことが示される。
【0036】
実施例13 - 光安定性
本実施例は、Cremophor(登録商標)を用いて製造された製剤(Zhong et al., US 2005/0256097 A1 (2005))と比較して実施例7の17-AAGの分散製剤の光安定性に匹敵する。
各製剤(20mL)を、60ワットの軟質白色光電球を備えた別々のランプ下でバイアルに入れた。バイアルを、ランプから少し離して水平に置き、それぞれにあたる光強度は、目盛り付き露出計で測定されるように1,080の淡いロウソクであった。各製剤を、3日間光にさらした。各製剤のアリコート(1mL)を、分析のために毎日取り出し、17-AAG内容物をHPLCで分析した。表IVは、二製剤の光安定性を比較するものである。
【0037】

【0038】
上記の結果から、本発明の分散製剤が予想外に非常により光安定であり、露光の3日後に本質的に充分な17-AAG力価を保持するが、Cremophor(登録商標)ベースの製剤は、17-AAG力価の約10%を失った。
【0039】
実施例14 - 薬物動態
本実施例は、二製剤、本発明のナノ懸濁製剤(製剤A)とCremophor(登録商標)ベースの製剤(製剤B)の薬物動態パラメータを比較する。製剤Aの組成物は、更にポリソルベート80(1%)、レシチン(0.25%)、及びスクロース(10%)を含有する17-AAG(50mg/mL)水性ナノ懸濁液であった。製剤Bの組成物は、Cremophor(登録商標) EL(20%)中17-AAG、プロピレングリコール(30%)、及びエタノール(50%)であった。各製剤を10×(製剤AをD5Wに; 製剤Bを食塩水に)希釈し、雄ビーグル犬に60分の静脈内注入又は強制経口によってそれぞれの場合に1.0mg/kgの用量で投与した。
結果を、表V(注入)と表VI(強制経口)に示す。
【0040】

【0041】

【0042】
上記の結果から、どちらの製剤も1時間の静脈内注入によって非常に似た血漿曝露を示すことがわかる。バイオアべイラビリティと血漿曝露のより大きい差は、17-AAGが強制経口によって投与された場合に一目瞭然であった(例えば、バイオアべイラビリティは製剤Aが3.0%で製剤Bが5.9%)。
上記の本発明の詳細な説明は、主に又は独占的に本発明の具体的な部分又は態様に関する経路を含む。これが明瞭さと便宜のためであること、具体的な特徴がそれが開示される単なる経路だけでなく適切であるのがよいこと、また、本明細書における開示内容が異なる経路に見られる情報の適切な組合わせを全て含むことは理解されるべきである。同様に、本明細書における種々の図面及び説明が本発明の個々の実施態様に関するが、個々の特徴が具体的な図面又は実施態様に関連して開示される場合、このような特徴が、他の図面又は実施態様に関連して、他の特徴と組合わせて、又は一般の本発明において、適切な程度まで、使用し得ることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】17-AAGの精製された多形体CのXRPDパターンの図である。
【図2】17-AAGの精製された多形体Cの赤外スペクトルの図である。
【図3a】17-AAGの精製された多形体Cの試料のDSCスキャンの図である。
【図3b】17-AAGの精製された多形体Cの異なる試料のDSCスキャンの図である。
【図4】17-AAGの精製された多形体GのXRPDパターンの図である。
【図5】17-AAGの精製された多形体GのIRスペクトルの図である。
【図6】17-AAGの精製された多形体GのDSCスキャンの図である。
【図7】本発明の製剤における17-AAGナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図8】200mg/gの17-AAGを含有するホモジナイゼーションバッチのパス数の関数としての粒径のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダマイシン(17-AAG)の精製された多形体C。
【請求項2】
17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダマイシン(17-AAG)の精製された多形体G。
【請求項3】
(a)精製された多形体C、精製された多形体G、及びそれらの組合わせより選ばれる多形体を含む17-AAG及び(b)少なくとも一つの医薬的に許容され得る賦形剤を含む医薬用懸濁製剤。
【請求項4】
17-AAGの多形体が精製された多形体Cである、請求項3に記載の医薬用懸濁製剤。
【請求項5】
17-AAGの多形体が精製された多形体Gである、請求項3に記載の医薬用懸濁製剤。
【請求項6】
(A)17-AAGが水性媒体に懸濁した粒子として約2.5〜約75質量パーセントの量で存在し、17-AAGが約50nm〜約3.0ミクロンの粒子径分布と約200〜約400nmの中央粒径(容積分布)を有し、(B)少なくとも一つの医薬的に許容され得る賦形剤が、(i)ポリオキシエチレンソルビタンとC12-C20脂肪酸のエステル、エステルと17-AAGとの質量比は約0.20〜約1.0である、(ii)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ブロックコポリマーと17-AAGとの質量比は約0.5〜約1.0である、(iii)ホスファチジルコリン、ホスファチジルコリンと17-AAGとの質量比は約0.04〜約0.1である; 及び(iv)それらの組合わせからなる群より選ばれる界面活性剤を含む、
請求項4に記載の医薬用懸濁製剤。
【請求項7】
17-AAGの多形体が精製された多形体Cである、請求項6に記載の医薬用懸濁製剤。
【請求項8】
17-AAGの多形体が精製された多形体Gである、請求項6に記載の医薬用懸濁製剤。
【請求項9】
少なくとも一つの医薬的に許容され得る賦形剤が、更に、炭水化物を含む、請求項6に記載の医薬用懸濁製剤。
【請求項10】
炭水化物がスクロースである、請求項7に記載の医薬用懸濁製剤。
【請求項11】
界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンとC12-C20脂肪酸のエステルとホスファチジルコリンの組合わせを含む、請求項5に記載の医薬用懸濁製剤。
【請求項12】
ポリオキシエチレンソルビタンとC12-C20脂肪酸のエステルが、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである、請求項11に記載の医薬用懸濁製剤。
【請求項13】
界面活性剤が、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーとホスファチジルコリンの組合わせを含む、請求項6に記載の医薬用懸濁製剤。
【請求項14】
17-AAGによる治療を必要としている被検者に17-AAGを投与する方法であって、請求項3に記載の医薬用懸濁製剤をこのような被検者に静脈内投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
17-AAGによる治療を必要とする被検者に17-AAGを投与する方法であって、請求項6に記載の医薬用懸濁製剤をこのような被検者に静脈内投与することを含む、前記方法。
【請求項16】
医薬用懸濁製剤の製造方法であって、
(a)精製された多形体C、精製された多形体G、及びそれらの組合わせより選ばれる多形体を約2.5〜約10質量パーセントの量で含む17-AAGと
(b)(i)ポリオキシエチレンソルビタンとC12-C20脂肪酸のエステル、エステルと17-AAGとの質量比は約0.20〜約1.0である、
(ii)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ブロックコポリマーと17-AAGとの質量比は約0.5〜約1.0である、
(iii)ホスファチジルコリン、ホスファチジルコリンと17-AAGとの質量比は約0.04〜約0.1である; 及び
(iv)それらの組合わせ
からなる群より選ばれる界面活性剤
の混合物を、17-AAGの粒径が約50nm〜約3.0ミクロンの粒子径分布と約200〜約400nmの中央粒径(容積分布)に減少するまでホモジナイズすることを含む、前記方法。
【請求項17】
17-AAGの多形体が、精製された多形体Cである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
滅菌医薬製剤の製造方法であって、
(a) 17-AAGを含む滅菌組成物を準備する工程;
(b) 17-AAGを含む滅菌組成物と、(i)ポリオキシエチレンソルビタンとC12-C20脂肪酸のエステル、(ii)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、(iii)ホスファチジルコリン、及び(iv)それらの組合わせからなる群より選ばれる界面活性剤の滅菌溶液とを無菌的に合わせて、滅菌混合物を形成する工程; 及び
(c)滅菌混合物を、17-AAGの粒径が約50nm〜約3.0ミクロンの粒子径分布と約200〜約400nmの中央粒径(容積分布)に減少するまで無菌的にホモジナイズする工程
を含む、前記方法。
【請求項19】
17-AAGが、精製された多形体C又は多形体Gである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
精製された17-AAGの調製方法であって、(a)還流アセトン中の17-AAGの溶液を調製する工程; (b)前記溶液を約18〜約30℃の範囲にある温度に冷却する工程; (c)反溶媒を少しずつ添加することによって17-AAGを沈殿させる工程; 及び(d)沈殿した17-AAGを収集する工程を含む、前記方法。
【請求項21】
17-AAGの精製された多形体Cの製造方法であって、
(a)アセトン中の17-AAGの溶液を還流で準備する工程;
(b)前記溶液に溶液の容量にほぼ等しい水の容量を、溶液が還流を保つことを可能にする速度で添加する工程;
(c)実質的に全てのアセトンが留去されるまでアセトンを留去し、その間に蒸留精製された多形体Cが沈殿する工程; 及び
(d)精製された多形体Cを収集する工程
を含む、前記方法。
【請求項22】
請求項21の方法によって製造された17-AAGの精製された多形体C。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−517386(P2009−517386A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542377(P2008−542377)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/044746
【国際公開番号】WO2007/061878
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(500017830)コーサン バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】