説明

18F標識葉酸

本発明は、フッ素−18が18[F]フルオライドによる直接的な放射標識を介してプテロアート (又は葉酸)又はその誘導体に結合する、18F-葉酸放射性医薬品の新規製造方法、並びにこのような合成方法によって得られた18F葉酸放射性医薬品、及びがん治療及び炎症性疾患および自己免疫疾患の診断及び治療のモニタリングへのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素−18が18[F]フルオライドによる直接的な放射標識を介してプテロアート (又は葉酸)又はその誘導体に結合する、18F標識されたプテロアート又は葉酸放射性医薬品の新規製造方法、並びにこのような合成方法によって得られた18F葉酸放射性医薬品、及びがん治療及び炎症性疾患および自己免疫疾患の治療のモニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
診断剤または治療剤などのエフェクター部分を送達するための細胞特異的ターゲティングは広く研究されている分野であり、非侵襲的診断および/または非侵襲的治療への医学的応用の開発につながっている。特に、γ線または粒子線として電磁放射線を放射する放射性物質を利用する核医学的手順および処置では、特定組織を可視化し、疾患を検討評価しかつ/または治療的処置の効果をモニタリングするべく高いシグナル強度を達成するために、または他の例えば健常組織における放射線傷害のリスクを伴わずに特定患部に十分な線量の電離放射線を送達するべく高い放射線量を達成するために、標的とする細胞または組織におけるこれら放射性物質の選択的局在化が要求される。したがって、細胞特異的構造、特に腫瘍(すなわちがん)または炎症性疾患および自己免疫疾患の場合に存在する構造、例えばそれぞれの生物学的媒体によって特異的にターゲティングされうる受容体、抗原、ハプテンなどを決定し検討評価することは、極めて重要な関心事である。
【0003】
葉酸受容体(FR)はこれらの構造の一つであると同定されている。正常な組織および器官では、FR発現はほんのわずかな器官(例えば腎臓、肺、脈絡叢、および胎盤)に強く制限され、それらの器官では、発現が主に上皮細胞の管腔面で起こるので、循環中の葉酸が供されることはない。FR−アルファは、広範囲にわたるさまざまな特定細胞タイプ、例えば上皮腫瘍(例えば卵巣、子宮頚部、子宮内膜、乳房、結腸直腸、腎臓、肺、鼻咽頭)などで、しばしば過剰発現され、一方、FR−ベータは白血病細胞でしばしば過剰発現される(急性骨髄性白血病(AML)の約70%はFR−ベータ陽性である)。したがって、これらはどちらも、選択的腫瘍ターゲティングのための貴重な腫瘍マーカーとして使用することができる(非特許文献1:ElnakatおよびRatnam, Adv. Drug Deliv. Rev. 2004; 56:1067-84)。また、慢性関節リウマチと診断された患者における活性化滑膜マクロファージが機能的に活性なFR−ベータを持つ(しかし休止滑膜マクロファージは持たない)ことも、最近になって発見されている(非特許文献ン2:Nakashima-Matsushitaら, Arthritis & Rheumatism, 1999, 42(8): 1609-16)。したがって、関節炎関節では活性化マクロファージを葉酸コンジュゲートでターゲティングすることができ、これは、慢性関節リウマチの診断および処置への可能性を切り開く特性である(非特許文献3:Paulosら, Adv. Drug Deliv. Rev. 2004; 56:1205-17)。
【0004】
さまざまな葉酸誘導体及びコンジュゲートが知られており、(前)臨床的に評価されている。特に、葉酸放射性医薬品は核医学の分野でますます重要性を高めており、がん及び炎症及び自己免疫疾患の治療の有効性の改善された診断及び評価、たとえば処置応答の検討評価および/または予測、したがって照射線量測定の改良にきわめて有用である可能性がある。ラジオイメージングに適した典型的可視化技法はPETである。 PET は短い半減期を持つ同位体を使用する。 この同位体はそのキャリヤーに共有結合で連結されるか又はキレート部分を介して連結される。適する同位体は、たとえば11C (約 20 分)、13N (約 10 分)、15O (約 2 分)、及び 18F (約 110 分)を共有結合した核種として含み、そしてキレートシステムによって常に連結される、たとえば 68Ga (約 68分) を含む。
【0005】
明らかに、共有結合で連結された同位体を持つ葉酸放射性医薬品は、大いに興味が持たれるだろう。特に18F標識葉酸放射性医薬品は、上記の考慮事項を全て満たすであろうそのイメージング特性ゆえに、PETイメージングに最も適しているだろう。他の適切な放射性核種(11C、13N、15O)と比較して、18Fは、その半減期が約110分と長く、しかも635keVの低い陽電子エネルギーを持つ陽電子を放出して崩壊し、それが高分解能PETにおける最も鮮明なイメージを可能にするので、極めて有用である。さらにまた、18Fの長い半減期が、より複雑な合成と、放射化学施設を持たないPETセンターへのサテライト供給も可能にする。
【0006】
しかし、葉酸の構造は18Fによる直接的な放射標識には適していない。現在までに、キレートベースの葉酸放射性医薬品がいくつか合成され、葉酸受容体陽性腫瘍をイメージングするための診断剤として、成功裏に評価されている。最も広く研究された誘導体は、111Inおよび99mTcで標識されるか(非特許文献4:Siegelら, J. Nucl. Med. 2003, 44:700;非特許文献5:Muellerら, J. Organomet. Chem. 2004, 689:4712)、又は68Gaで標識された(非特許文献6:Mathiasら, Nucl. Med. Biol. 2003, 30(7):725)。ことは対照的に、文献に報告された18Fにより標識された葉酸誘導体は極めてわずかしかない(非特許文献7:Bettioら, J. Nucl. Med., 2006, 47(7), 1153;特許文献1:国際特許公開第2006/071754号パンフレット)。典型的には、最適な中間体は放射フッ素化して18F-標識中間体を得る。これをついで、葉酸(folic acid)内の官能基、たとえば葉酸のグルタミン酸部分内のカルボン酸基にカップリングさせるために、活性化し、精製する。明らかに、このような多段階放射合成は時間がかかり、実際、典型的に5%未満という低い放射化学収率しか与えず(非特許文献7:Bettioら, J. Nucl. Med., 2006, 47(7), 1153)。
【0007】
したがって、1個以上の上記の議論された欠点を解決する、直接的な放射標識された18F-葉酸又はその誘導体を製造するための有効かつ多目的に使える方法に多大な要求が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際特許公開第2006/071754号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ElnakatおよびRatnam, Adv. Drug Deliv. Rev. 2004; 56:1067-84
【非特許文献2】Nakashima-Matsushitaら, Arthritis & Rheumatism, 1999, 42(8): 1609-16
【非特許文献3】非特許文献3:Paulosら, Adv. Drug Deliv. Rev. 2004; 56:1205-17
【非特許文献4】Siegelら, J. Nucl. Med. 2003, 44:700
【非特許文献5】Muellerら, J. Organomet. Chem. 2004, 689:4712
【非特許文献6】Mathiasら, Nucl. Med. Biol. 2003, 30(7):725
【非特許文献7】Bettioら, J. Nucl. Med., 2006, 47(7), 1153
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願人は、フッ素-18 が18[F]フルオライドによる直接的な放射標識を介して葉酸又はその誘導体に結合する、従来の標識方法の欠点を克服する新規の18F-標識された葉酸放射性医薬品の有効な、そして多目的な合成方法をここに見出した。
【0011】
したがって、本発明の方法は時間節約の、そして便利な直接的 18F-標識方法であり、 この方法において 補綴基(prosthetic groups)は全く必要なく、そして直接的18F-標識に対する部分として活性化された基と結合する唯一のアミドを有する、適する前駆体が容易に使用されうる。
【0012】
更に、 本発明は、困難で、時間のかかることで周知である分離の必要なく、α- 又は γ- 異性体の位置選択的製造及び標識化を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要約
したがって、本発明は、第1の態様において、フッ素−18が18[F]フルオライドによる直接的な放射標識を介してプテロアート (又は葉酸)又はその誘導体に結合する、18F-標識されたプテロアート又は葉酸放射性医薬品の新規製造方法(以下、本発明の方法とも呼ぶ)に関する。
【0014】
ある具体的実施形態において、一般式 I
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、
P はプテロアートであり、そして
S1はスペーサーである。)
で表わされる18F-標識化合物の合成方法において、
(a) 式 II
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、Zは離脱基であり、そして P 及び S1は上記に定義された通りである。)
で表わされる前駆体を供給し、ついで
(b) 上記前駆体に18Fで 直接的な放射標識を行って式 Iで表わされる化合物を得るステップを含む、上記18F-標識化合物の合成方法を提供することにある。
【0019】
更に詳しくは、本発明は、式 III
【0020】
【化3】

【0021】
{式中、
X1 〜 X5が相互に独立して C又は Nであり、
R1、 R2が 相互に独立してH、Hal、-OR’, -NHR’、 C1-C12 アルキル、C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、C2-C12アルケニル、C2-C12 アルキニル、(C1-C12 アルコキシ)カルボニル、又は(C1-C12 アルキルアミノ)カルボニル(式中、R’ はH 又はC1-C6 アルキルである。)であり、
R3、 R4が相互に独立して H、 ホルミル、イミノメチル、ニトロソ、C1-C12 アルキル、C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、又はハロ置換されたC1-C12 アルカノイルであり、
R5が H、 CN、 Hal、 NO2、 C1-C12 アルキル、 C1-C12 アルコキシ、 C1-C12 アルカノイル、C2-C12 アルケニル、 C2-C12 アルキニル、 又は(C1-C12 アルコキシ)カルボニル、 (C1-C12 アルキルアミノ)カルボニルであり、
S1が直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、-CO-NR-、 -NR-CO-O-、-O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、-PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す、
pが 0、 1 又は 2であり、そして
qが 1〜 7の値を有する。}
を有する一般式 Iで表わされる18F-標識化合物の合成方法において、
・ 式 IV
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、Z が 離脱基であり、そして X1〜 X5、 R1 〜 R5、 S1、 p 及びq が上記に定義された通りである。)
で表わされる前駆体を供給し、
・ 上記前駆体に18Fを用いて直接的な放射標識を行うステップを含む、
上記一般式IIIを有する一般式Iの18F-標識化合物の合成方法。
【0024】
好ましい実施態様において、ステップ (b) における18[F]フルオライド は相間移動触媒、たとえばテトラブチルアンモニウムカーボネート又はアミノポリエーテル (たとえば登録商標Kryptofix 2.2.2)と炭酸カリウム又はシュウ酸カリウムとの組み合わせによって活性化される。
【0025】
好ましくは、Z は離脱基、たとえばHal、 NO2、 ジアゾニウム塩、 スルホナートエステルを含み、更にメシラート CH3SO2O-、トシラート CH3C6H4SO2O-、ペンタフルオロベンゾエート、トリフラートCF3SO2O-、ヨードニウム塩 -I+R’’’2、ジアルキル/-アリールシラン-SiOHR’’’2、及びシラノール -SiHR’’’2(式中、R’’’ は 独立して直鎖状又は分枝状C(1-12)アルキル基又は場合により置換された、5−、6−又は10−員環系などを含む炭素環状及びヘテロ環状基である。)を含む。
【0026】
好ましくは、S1は直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、-CO-NR-、 -NR-CO-O-、-O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、-PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す。
【0027】
更に具体的な実施態様において、一般式Iで表わされる、得られた化合物が、式 V
【0028】
【化5】

【0029】
{式中、
X6、 X7が相互に独立して N 又は Oであり、
R6、 R7が相互に独立して H 又は 直鎖状又は分枝状 C1-C12アルキルであり、 このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2又は基-S2-18F によって置換され、 S2が直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、-CO-NR-、 -NR-CO-O-、-O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、-PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表し、
但し、R6及び R7 のうちの少なくとも1種は基 -S2-18Fであり、そして
X1 〜 X5、 R1〜 R5、 p 及び qは請求項7に定義された通りである。}
を有する、合成方法を意図するものである。
【0030】
もう一つの態様において、本発明は、本発明の直接的な放射性フッ素化の新規方法によって得られる、新規の18F-葉酸放射性医薬品 (以下、本発明の化合物とも呼ぶ。)、たとえば 式 I〜Vで表わされる化合物、並びに医薬組成物及びその使用、特にインビトロ又はインビボでのがん治療及び炎症性疾患および自己免疫疾患の治療及びモニタリングでの使用に関する。
【0031】
ある具体的な実施態様において、本発明は、葉酸受容体を発現させる細胞又は細胞集団の画像診断に本発明の化合物を使用することに関する。
【0032】
さらに詳しくは、本発明は葉酸受容体を発現させる細胞又は細胞集団の画像診断法を含み、この方法は、たとえば組織サンプル中で、葉酸受容体を発現させる細胞、たとえば腫瘍細胞のインビトロ検出法を含む。このような方法はインビボで行うこともできる。
【0033】
したがって、更にもう一つの態様において、本発明は画像診断を必要とする対象への便利で効果的な投与のための、及び/又はがん又は炎症及び自動免疫疾患治療のモニタリングのための本発明の化合物の使用に関する。本発明の方法の対象は、好ましくは哺乳類、たとえば動物又はヒト、好ましくはヒトである。
【0034】
本発明のこのような方法は、その他のすでに開発された診断剤及び/又は治療剤を用いる方法及びX線コンピュータ断層撮影 (CT)、磁気共鳴画像診断(MRI)、機能的磁気共鳴画像診断 (fMRI)、単光子放出コンピュータ断層撮影 (SPECT)、光学的画像及び超音波を用いる方法を含む、がん又は炎症及び自己免疫疾患の診断又は治療の任意のその他の組み合わせで行うことができる。
【0035】
本発明のその他の特徴及び利点は、下記の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、第1の態様において、 フッ素-18が18[F]フルオライド (以下、「18F」によっても略称される)によって直接的な放射標識を介してプテロアート(又は葉酸)に結合する、18F-標識されたプテロアート又は葉酸放射性医薬品 (以下、本発明の化合物との呼ぶ)の新規の合成方法に関する。
【0037】
ある具体的な実施態様において、一般式 I
【0038】
【化6】

【0039】
(式中、
P はプテロアートであり、そして
S1はスペーサーである。)
で表わされる18F-標識化合物の合成方法において、
(a) 式 II
【0040】
【化7】

【0041】
(式中、Zは離脱基であり、そして P 及び S1は上記に定義された通りである。)
で表わされる前駆体を供給し、ついで
(b) 上記前駆体に18Fで 直接的な放射標識を行って式 Iで表わされる化合物を得るステップを含む、上記18F-標識化合物の合成方法を提供することである。
【0042】
本明細書で使用する用語「プテロアート」は、共有結合で連結される、以下に定義されるようなS1-基によってパラ位で更に誘導体化される、アミノベンゾイル部分に連結される、縮合されたピリミジンヘテロ環に基づく化合物を含む。本明細書で使用される「縮合されたピリミジンヘテロ環」は、別の 5- 又は 6-員のヘテロ環、たとえばプテリジン又はピロロピリミジン二環と融合したピリミジンを含む。
【0043】
具体的な実施態様において、用語「プテロアート」も本明細書にいう葉酸(folates)を含み、これは葉酸骨格(すなわちプテロイル-グルタミン酸またはN−[4(プテリジン−6−イルメチルアミノ)ベンゾイル]−グルタミン酸)、およびその誘導体に基づく化合物である。これらには、場合により置換された葉酸、フォリン酸、プテロポリグルタミン酸、および葉酸受容体結合性プテリジン類、例えばテトラヒドロプテリン類、ジヒドロ葉酸類、テトラヒドロ葉酸類、ならびにそれらのデアザおよびジデアザ類似体が含まれる。葉酸(folic acid)は本発明の化合物に使用される好ましい基本構造である。用語「デアザ」および「ジデアザ」類似体とは、天然葉酸構造中の1個または2個の窒素原子の代わりに炭素原子を持つ、当技術分野で認識されている類似体を指す。例えばデアザ類似体には、1−デアザ、3−デアザ、5−デアザ、8−デアザ、および10−デアザ類似体が含まれる。ジデアザ類似体には、例えば1,5−ジデアザ、5,10−ジデアザ、8,10−ジデアザ、および5,8−ジデアザ類似体が含まれる。
【0044】
更に詳しくは、本発明は反応式1に示される合成方法に関し、この方法において、離脱基 Z を有する前駆体 IVを18F で直接的に放射標識して、式 IIIを有する一般式Iで表わされる化合物を得る。
【0045】
【化8】

【0046】
本発明者は、一般式 I 又は IVそれぞれのプテロイン酸(又は葉酸)部分が直接的方法で、したがって媒介体 18F-標識剤の合成及び精製することなく、容易にそして十分に、 18F-放射標識されうることを見出した。
【0047】
好ましくは、前駆体 IVの直接的な放射標識は、相間移動触媒、たとえば炭酸テトラブチルアンモニウム類又はアミノポリエーテル類(たとえばKryptofix(登録商標)2.2.2) と炭酸カリウム又はシュウ酸カリウムとの組み合わせによって活性化された18Fを用いて行われる。具体的な実施態様において、 18F をKryptofixを用いて、アセトニトリル、アセトン、1 ,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリジノン (NMP)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド(DMA), N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びヘキサメチルホスホルアミド(HMPA) 及びそれらの混合物から選ばれる極性非プロトン性溶剤中で活性化する。
【0048】
離脱基 Zは従来公知のすべての通常の離脱基であってよく、たとえばHal, NO2, ジアゾニウム塩, スルホナートエステルを含み、更にメシラート CH3SO2O-、トシラート CH3C6H4SO2O-、ペンタフルオロベンゾエート、トリフラートCF3SO2O-、ヨードニウム塩 -I+R’’’2、ジアルキル/-アリールシラン-SiOHR’’’2、及びシラノール -SiHR’’’2(式中、R’’’ は 独立して直鎖状又は分枝状C(1-12)アルキル基又は場合により置換された、5−、6−又は10−員環系などを含む炭素環状及びヘテロ環状基である。)を含む。
【0049】
S1 は、好ましくは直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、-CO-NR-、 -NR-CO-O-、-O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、-PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す。
【0050】
より好ましくは、 S1 は直鎖状又は分枝状C1-C8 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す。
【0051】
上述のように、 S1は具体的にアミノ酸を含み、本明細書で使用されるアミノ酸は、アミノ基(たとえばNH2又は NH3+) とカルボン酸基 (たとえばCOOH 又は COO-)の双方を有する化合物を含む。具体的実施態様において、アミノ酸はα-アミノ酸, β-アミノ酸, D-アミノ酸 又はL-アミノ酸であることができる。アミノ酸 は天然に生じるアミノ酸 (たとえばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、グリシン、 セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、又は ヒスチジンなど)であることができるか、又は それらの誘導体であることができる。誘導体の例は、場合により置換されたアミノ酸を含み、このアミノ酸はたとえばCN、Hal、及び/又は NO2(たとえばフルオログルタミン酸)から選ばれる置換基の1種以上を有する。アミノ酸は、任意の他の非天然に生じるアミノ酸、 たとえばノルロイシン、ノルバリン、L- 又は D-ナフトアラニン、アルニチン、ホモアルギニン及びペプチド技術でよく知られてその他のものも含むことができる(たとえばM. Bodanzsky, "Principles of Peptide 合成," 第1版及び第2改訂版, Springer- Verlag, New York, NY, 1984 及び1993, 及びStewart and Young, "Solid Phase Peptide 合成," 第2版, Pierce Chemical Co., Rockford, IL, 1984参照、上記文献の双方を本願に引用して援用する。)。 アミノ酸及びアミノ酸類似体/誘導体は市場で入手できるか(Sigma Chemical Co.; Advanced Chemtech) 又は 従来知られている方法を用いて合成することができる。もう一つの具体的な実施態様で、アミノ酸はポリアミノ酸の一部であることもでき (ポリペプチドとも呼ばれる)、この際上記に定義された通りの、大多数の同一又は異なるアミノ酸が共有結合、すなわち通常のペプチド又は他の結合を介して結合される。好ましいアミノ酸は、たとえばグルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、 アスパルチン、リジン、アルギニン、システイン及びそれらの誘導体を含み、そして好ましいポリアミノ酸は、それらのそれぞれのホモポリマー (すなわちポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸など)を含む。場合により置換されたアスパラギン酸及びグルタミン酸が最も好ましい。
【0052】
基X1 〜X5、R1 〜 R5、p 及び q は基P の性質をより詳細に限定する。だが、当業者はプテロイン酸及び/又は葉酸(folic acid)骨格内にこれらの基の範囲を知るであろう。
【0053】
したがって、 本明細書で使用されるX1 〜X5は相互に独立して C又は Nである。
【0054】
好ましい実施態様において、R1及びR2 は相互に独立してH、アルキル、-OR’、-NHR’、より好ましくは -OR’、-NHR’である。
【0055】
好ましい実施態様において、R3はH、 C1-C12 アルキル 又はC1-C12 アルカノイルである。
【0056】
もう一つの好ましい実施態様において、R4はH、ニトロソ、C1-C12 アルコキシ又はC1-C12 アルカノイルである。
【0057】
もう一つの好ましい実施態様において、R5 はH、CN, Hal、 NO2、 C1-C12 アルキル、 C1-C12 アルコキシ、 C1-C12 アルカノイル、C2-C12 アルケニル、 C2-C12 アルキニル、(C1-C12 アルコキシ)カルボニル、(C1-C12 アルキルアミノ)カルボニルである。より好ましくは、 R5はH、 C1-C12 アルキル、 C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、 (C1-C12 アルコキシ)カルボニル、 及び(C1-C12 アルキルアミノ)カルボニルである。
【0058】
(H)qは示した環上の (すなわちX3、C6、C7 及び X4上の)すべてのH置換基であると解され、したがって q は1 〜 7の値を有することができる。たとえば q = 7は、完全に飽和された、非置換の5,8-ジデアザ類似体(X3 = X4 = C) 及び q = 1の場合、完全に不飽和の類似体( X3 = X4 = N)を意味する。
【0059】
p はXの性質及び環の芳香族性に依存し、したがって 0、 1 又は 2であることができるとも解される。
【0060】
略号「N」 及び「C」はすべての可能な飽和度を表わし、すなわちN は -NH- 及び-N= リンケージを含み、そして Cは -CH2- 及び -CH= リンケージを含むと更に解される。
【0061】
もう一つの好ましい実施態様において、本発明は反応式1に従う合成方法に関し、その方法において、葉酸(folic acid)又はその誘導体のグルタミン酸(glutamate)部分 を18F で放射標識し、したがって得られ化合物が式 V
【0062】
【化9】

【0063】
{式中、
X6、 X7が相互に独立して N 又は Oであり、
R6、 R7が相互に独立して H 又は 直鎖状又は分枝状 C1-C12アルキルであり、 このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2又は基-S2-18F によって置換され、 S2が直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、-CO-NR-、 -NR-CO-O-、-O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、-PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表し、
但し、R6及び R7 のうちの少なくとも1種は基 -S2-18Fであり、そして
X1 〜 X5、R1 〜R5、m、p 及びq、 及びその好ましくは実施態様は上記に定義された通りである。}
を有する。
【0064】
したがって、更に詳しくは、式 Vで表わされる得られた化合物は、式VI 又は VIa
【0065】
【化10】

【0066】
(式中、X1 〜X5、 R1 〜R7、m、 p 及び q、及びその好ましくは実施態様は上記に定義された通りである。)
を有する化合物によって表わされる。
【0067】
したがって、具体的実施態様において、本発明は、反応式1にしたがう一般式VI又はVIa
【0068】
【化11】

【0069】
{式中、
X1 〜 X5が相互に独立して C 又は Nであり、
X6、 X7が 相互に独立して C、O 又は Nであり、
R1、 R2が 相互に独立して H、 Hal、 -OR’、-NHR’、 C1-C12 アルキル、 C1-C12 アルコキシ、 C1-C12 アルカノイル、 C2-C12 アルケニル、 C2-C12 アルキニル、(C1-C12 アルコキシ)カルボニル又は(C1-C12 アルキルアミノ)カルボニルであり、 R’が H 又はC1-C6 アルキルであり、
R3、 R4が相互に独立して H、 ホルミル、イミノメチル、ニトロソ、C1-C12 アルキル、C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、又はハロ置換されたC1-C12 アルカノイルであり、
R5が H、 CN、 Hal、 NO2、 C1-C12 アルキル、 C1-C12 アルコキシ、 C1-C12 アルカノイル、C2-C12 アルケニル、 C2-C12 アルキニル、 又は(C1-C12 アルコキシ)カルボニル、 (C1-C12 アルキルアミノ)カルボニルであり、
R6、 R7が相互に独立して H 又は 直鎖状又は分枝状 C1-C12 アルキルであり、 このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、
S2が直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、-CO-NR-、 -NR-CO-O-、-O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、-PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表し、
Pが 0、 1又は 2であり、そして
Qが 1 〜 7の値を有する。}
で表わされる 18F-標識化合物の合成法において、
(a) 式VII 又は VIIa、
【0070】
【化12】

【0071】
(式中、 Z が 離脱基であり、そして X1〜 X7、R1 〜 R7、 S2、p 及び q が上記に定義された通りである。)
で表わされる 前駆体を供給し、ついで
(b) 上記前駆体に18Fで 直接的な放射標識を行うステップを含む、
上記18F-標識化合物の合成方法を意図するものである。
【0072】
S2 は、好ましくは直鎖状又は分枝状C1-C8 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換されているか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表し、更に好ましくは直鎖状又は分枝状C1-C6 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換されている。
【0073】
本発明の化合物の更に具体的な実施態様は、たとえば化合物(式中、X1〜 X5 が Nであり、R1 がNY1Y2であり、 R2がOであり、R4 がY3であり、 p が0であり、そして q が1である。)を含む。
【0074】
したがって、もう一つの具体的な実施態様において、本発明は、式VIII又は VIIIa
【0075】
【化13】

【0076】
{式中、
X6、 X7が相互に独立して C、 N 又はOであり、
Y1、 Y2が相互に独立してH、ホルミル、 直鎖状又は分枝状C1-C12アルキルから選ばれ、 このアルキル基は置換されていないか、又は少なくとも1種のCN、 Hal又はNO2によって置換されており、
Y3がH、 ホルミル、ニトロソ、直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルから選ばれ、このアルキル基は置換されていないか、又は少なくとも1種のCN、 Hal又はNO2によって置換されており、
R6、 R7 が相互に独立して H 又は 直鎖状又は分枝状 C1-C12アルキルであり、 このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、
S2が直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、-CO-NR-、 -NR-CO-O-、-O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、 -PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す。}
で表わされる化合物に関する。
【0077】
用語「アルキル」が単独でまたは組み合わされて使用される場合、この用語は、好ましくは、1〜12個の炭素原子を含有する直鎖状または分枝状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどを指す。より好ましいアルキル基は1〜8個、さらに好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する。
【0078】
本明細書で使用する用語「アルケニル」は、単独で、または他の基と組み合わされて、2〜12個の炭素原子を含有する直鎖状または分枝状アルキル基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、t-ブチレン、sec−ブチレン、イソブチレン、アミレン、イソアミレン、ペンチレン、イソペンチレン、ヘキシレンなどを指す。好ましいアルケニル基は2〜6個の炭素原子を含有する。
【0079】
本明細書で使用する用語「アルキニル」は、一つ以上の炭素-炭素三重結合を持つ炭素原子の線状鎖または分枝状鎖を指す。好ましいアルキニル基は、2〜12個、より好ましくは2〜6個の炭素原子を含有する。
【0080】
本明細書で使用する用語「アルコキシ」は、酸素で置換された、上に定義したアルキル、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシなどを指す。
【0081】
本明細書で使用する用語「アルカノイル」は、ホルミルを指すか、または末端がカルボニルで置換された、上に定義したアルキル、例えばアセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイルなどを指す。
【0082】
本明細書で使用する用語「アルキルアミノ」は、窒素で置換された、上に定義したアルキルを指し、モノアルキルアミノ、例えばメチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、tert−ブチルアミノなどと、ジアルキルアミノ、例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルプロピルアミノなどの両方を包含する。
【0083】
本明細書で使用する用語「ハロ」は、任意の第17族元素を指し、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、およびアスタチン(アスタチノ)を包含する。
【0084】
もう一つの態様において、本発明は本発明の方法によって得られた化合物、たとえば式I 〜 VIIIで表わされる化合物に関する。
【0085】
さらにもう一つの態様において、本発明は、画像診断を必要とする対象への便利で効果的な投与のための、本発明の葉酸放射性医薬品の使用を提供する。
【0086】
したがって本発明は、葉酸受容体を発現させる細胞または細胞集団を画像診断するための方法であって、少なくとも一つの本発明の葉酸放射性医薬品を画像診断量で投与するステップ、および前記細胞または細胞集団の診断画像を取得するステップを含む方法を提供する。
【0087】
そのようなイメージングは、インビトロまたはインビボで葉酸受容体を発現させる細胞または細胞集団に対して行うことができる。
【0088】
したがって本発明は、組織試料中の葉酸受容体を発現させる細胞をインビトロ検出するための方法であって、前記組織試料を、少なくとも一つの本発明の葉酸放射性医薬品と、結合を起こさせてそのような結合をPETイメージングによって検出することができるように、有効な量ならびに十分な時間および条件で、接触させることを含む方法を提供する。
【0089】
さらにもう一つの態様において、本発明は、がん治療、及び炎症性疾患および自己免疫疾患の治療の画像診断および/またはモニタリングを必要とする対象への便利で効果的な投与のための、本発明の葉酸放射性医薬品の使用を提供する。
【0090】
もう一つの態様において、本発明は、同時に診断および治療するための方法であって、その必要がある対象に、少なくとも一つの本発明の葉酸放射性医薬品を、診断有効量で、治療活性剤と組み合わせて投与するステップ、および処置の経過を追跡するために前記組織の診断画像を取得するステップを含む方法を提供する。
【0091】
本発明の方法の対象は、好ましくは哺乳動物、例えば動物またはヒト、好ましくはヒトである。
【0092】
投薬量は所望する効果の性質、例えば診断または治療の形態、処置の種類および頻度、診断装置、調製物の適用の形態、ならびに受容者の年齢、体重、栄養および状態、もしあれば同時処置の種類に左右される。
【0093】
しかし、最も好ましい投薬量は、当業者には理解される通り、また当業者であれば甚だしい実験を行わずに決定することができるように、個々の対象に合わせて調整することができる。これには通例、標準用量の調節(例えば患者の体重が軽ければ用量の削減)を伴う。
【0094】
処置は、最適量を下回る少量で開始し、最適な効果が達成されるように、それを増加させることができる。PETスキャナーでのイメージング操作は、放射性トレーサーの投与後、数分以内から2〜4時間後までに行われる。スケジュールは、イメージングターゲット、および放射性トレーサーの動態、ならびに所望する情報に左右される。
【0095】
本発明の葉酸放射性医薬品の好ましい投与経路は、静脈内注射によるものである。
【0096】
注射に適した形態として、本発明の上記葉酸放射性医薬品の滅菌水性溶液または分散系が挙げられる。通例、放射性医薬品は、生理緩衝溶液中に製剤化されるだろう。
【0097】
葉酸放射性医薬品は、例えば限定するわけではないが、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの抗細菌剤または抗真菌剤の添加など、当技術分野で認識されている任意の技法で滅菌することができる。好ましくは、それらを投与前に滅菌濾過することにより、余分な滅菌剤の必要が排除される。
【0098】
注射用溶液剤の場合、好ましい単位投薬量は約0.01mL〜約10mLである。静脈内投与後は、所望であれば、投与された用量のうちの十分な量を選択した標的領域に蓄積させるために、放射標識試薬が対象に投与された後、数分以内から2〜4時間後までに、インビボの器官または腫瘍のイメージングを行うことができる。
【0099】
本発明の葉酸放射性医薬品は、対象から採取した組織生検中の葉酸受容体を発現させる細胞のインビトロ検出にも使用することができる。したがって、さらにもう一つの実施形態において、本発明は、組織試料中の葉酸受容体を発現させる細胞(例えば腫瘍細胞)をインビトロ検出するための方法であって、前記組織試料を、本発明の葉酸放射性医薬品と、結合を起こさせてそのような結合をイメージング技法によって検出することができるように、有効な量ならびに十分な時間および条件で接触させることを含む方法を提供する。
【0100】
試料は、当業者に知られている手法によって、例えば組織生検材料もしくは体液を収集することによって、または気管もしくは肺試料などを吸引することによって収集することができる。
【0101】
試験される組織試料には、例えば腫瘍細胞、上皮細胞、腎臓、胃腸系または肝胆道系など、葉酸受容体を発現させる細胞を含有すると疑われる任意の組織が含まれる。試料は、顕微鏡による検査および観察を容易にするために、例えばミクロトームなどで薄切することができる。試料は、試料組織の組織学的品質を改良するために、本発明の葉酸放射性医薬品の一つとのインキュベーションの前または後に、適当な固定剤で固定することもできる。
【0102】
本発明の葉酸放射性医薬品が細胞上の葉酸受容体に結合するのに十分な時間および条件には、標準的な組織培養条件が含まれる。すなわち、試料をインビトロで培養し、生理的媒質中で本発明の複合体または組成物の一つと共にインキュベートすることができる。そのような条件は当業者にはよく知られている。あるいは、試料を固定した後、等張緩衝液または生理的緩衝液中で本発明の葉酸放射性医薬品と共にインキュベートすることもできる。
【0103】
どの応用でも、本発明の化合物を使用する場か、またはその近くで、本発明の化合物を製造することが便利である。
【0104】
ここに開示し、特許請求する化合物および/または方法は全て、本開示を考慮すれば甚だしい実験を行わずに、製造および実行することができる。本発明の範囲から逸脱することなく本発明に変形を加えうることは、当業者には明白だろう。本明細書に記載する実施例は、例示を意図するものであって網羅的ではないので、決して、例示される実施例を本発明の限定であるとみなしてはならない。
【0105】
実施例
材料と方法
赤外スペクトルは、Jasco FT/IR−6200 ATR−IRで記録した。核磁気共鳴スペクトルは、対応する溶媒シグナルを内部標準として、Bruker 400MHzまたは500MHz分光計で記録した。化学シフトはテトラメチルシラン(0.00ppm)を基準として百万分率(ppm)で報告する。結合定数の値はヘルツ(Hz)で記載し、実験項ではH−NMRスペクトルの説明に以下の略号を使用する。一重線(s)、二重線(d)、三重線(t)、多重線(m)、二重線の二重線(dd)。複雑な多重線の化学シフトはその出現範囲として記載する。低分解能質量分析(LR−MS)はMicromass Quattro micro(商標)API LC−ESIで記録した。
【0106】
水感受性反応は火炎乾燥したガラス器具中、アルゴン下で行った。反応は薄層クロマトグラフィー(TLC、EM Science 0.25mm厚、プリコートシリカゲル60F−254ガラス支持プレート上で実行)またはHPLCでモニターした。HPLCは、L−7400波長可変吸収検出器を装備したMerck−Hitachi L−7000システムで行った。分析用HPLCは、XBridge(登録商標)カラム(C18、5μm、4.6×150mm、Waters)で、以下の溶媒系を使って行った(1mL/分):0.1%TFA水溶液(溶媒A)、アセトニトリル(溶媒B)、1mL/分;0−1分、95%A;1−15分、95→5%A;15−20分、5%A;20→22分、5→95%A;22→25分、95%A。セミ分取用HPLCはXBridge(登録商標)セミプレップカラム(C18、5μm、10×150mm、Waters)、3mL/分、均一濃度のNHHCO(10mM、88%)/CHCN(12%)で行った。化学薬品は全て、別段の明示がない限り、供給されたものをそのまま使用した。
【0107】
例 1: γ-2-フルオロエチル-葉酸の合成
(a) γ--グル(フルオロエチル)メチルエステルの合成
火炎乾燥したフラスコに、BOC-Glu-OMe (556mg, 2.13mmol)、乾燥DMF (10ml) 及び Et3N (0.9ml, 1.9 e.q.)を添加した。反応混合物を0 ℃に冷却し、HBTU (808mg, 1 e.q.)を添加し、反応混合物を10分間攪拌した。乾燥 DMF (10ml)及び Et3N (0.9ml, 1.9 e.q.)中に2-フルオロエチルアイン(212ml, 1 e.q.) を有する溶液を、反応混合物に0 ℃で滴加した。 反応を2時間攪拌し、r.t. に加温させ、ついで一晩攪拌した。水(10ml)を反応混合物に添加し、EtOAcで抽出した。一緒にされた有機層をブラインで洗浄し、 MgSO4で乾燥させ、減圧で濃縮して、淡い黄色油状物を得た。 1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6) [ppm]: 7.78 (bs, NH); 6.60 (bs, NH); 4.77 (bs, OH); 4.62 (t, CH); 3.47 (m, CH3); 3.37 (t, CH2); 3.11 (t, CH2); 2.89 (t, CH2); 2.73 (t, CH2); 1.39 (s, CH3)。
【0108】
(b) γ-2-フルオロエチル-葉酸の合成
- γ-グル(フルオロエチル)メチルエステル(450mg, 1.48mmol)を、TLC/HPLCによって監視しながら完全なBOC 脱保護が生じるまで、過剰なTFA/CH2Cl2(1:1)に溶解させた。過剰のTFA/CH2Cl2 を減圧下に除去し、グル(ヒドロキシエチル)メチルエステルのTFA塩を淡い黄色油状物として得た。これを、欧州特許公開第07 105 987 A号明細書 及び欧州特許公開第 07 105 984 A号明細書に概説された処理にしたがって、N2-N,N-ジメチルアミノメチレン-10-ホルミル-プロテイン酸 とのカップリング反応にそのまま使用した。
【0109】
例 2: γ-(2-(p-トルエンスルホニル)エチル)葉酸アミドの合成
(a) BOC-グル(ヒドロキシエチル)メチルエステルの合成
火炎乾燥したフラスコに、BOC-Glu-OMe (556mg, 2.13mmol), 乾燥 DMF (10ml) 及び Et3N (0.9ml, 1.9 e.q.)を添加した。反応混合物を0 ℃に冷却し、HBTU (808mg, 1 e.q.) を添加し、ついで反応混合物を10分間攪拌した。乾燥DMF (10ml)及び Et3N (0.9ml, 1.9 e.q.)中にアミノアルコール (0.13ml, 1 e.q.)を有する溶液を反応混合物に 0℃で滴加した。反応を2時間攪拌し、r.t. に加温させ、ついで一晩攪拌した。水(10ml)を反応混合物に添加し、EtOAcで抽出した。一緒にされた有機層をブラインで洗浄し、 MgSO4で乾燥させ、減圧で濃縮して、淡い黄色油状物を得た。1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6) [ppm]: 9.40 (bs, NH); 7.72 (bs, NH); 4.52 (t, CH); 3.54 (m, CH3); 3.44 (t, CH2); 3.14 (t, CH2); 2.56 (t, CH2); 2.20 (t, CH2); 1.24 (s, CH3)。
【0110】
(b) γ-(2-(p-トルエンスルホニル)エチル)葉酸アミドの合成
BOC-グル(ヒドロキシエチル)メチルエステル(450mg, 1.48mmol) 、TLC/HPLCによって監視しながら完全なBOC 脱保護が生じるまで、過剰なTFA/CH2Cl2(1:1)に溶解させた。過剰のTFA/CH2Cl2 を減圧下に除去し、グル(ヒドロキシエチル)メチルエステルのTFA塩を淡い黄色油状物として得た。これを、欧州特許公開第07 105 987 A号明細書 及び欧州特許公開第 07 105 984 A号明細書に概説された処理にしたがって、N2-N,N-ジメチルアミノメチレン-10-ホルミル-プロテイン酸 とのカップリング反応にそのまま使用した。γ-(2-ヒドロキシエチル)葉酸アミド (26 μmol)をジクロロメタン(10 ml)に溶解させ、0℃に冷却させた。 Et3N (10 μL、 1.5 eq.) 及び TsCl (7 mg, 1.4 eq.) を添加し、 反応混合物を 2時間0℃で攪拌した。ついで混合物を室温に加温させ、一晩攪拌する。
【0111】
反応混合物を水 (15 ml)に注ぎ、層を分離した。水性相をジクロロメタンで抽出し、一緒にされた有機相を MgSO4を介して乾燥させた。溶剤を減圧下に除去した。生成物をシリカゲル、及びペンタン及び酢酸エチルの溶離系を用いるカラムクロマトグラフィー によって精製し、黄色油状物を得た。
【0112】
ついで、この化合物は、文献記載の処理 (Coenen, H.H. PET Chemistry - The Driving Force in Molecular Imaging, Schubiger, P.A.; Lehmann, L.; Friebe, M., Eds.; Springer: Berlin, 2007, pp. 15-50)にしたがって、直接脂肪族求核18F-標識に対する前駆体として供給される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式 I
【化1】

(式中、
P はプテロアートであり、そして
S1 はスペーサーである。)
で表わされる18F-標識化合物の合成方法において、
(a) 式 II
【化2】

(式中、Zは離脱基であり、そして P 及び S1は上記に定義された通りである。)
で表わされる前駆体を供給し、ついで
(b) 上記前駆体に18Fで 直接的な放射標識を行って式 Iで表わされる化合物を得るステップを含む、上記18F-標識化合物の合成方法。
【請求項2】
が直鎖状もしくは分枝状C−C12アルキル(これは置換されていないか、または少なくとも一つの−CN、−Hal、もしくは−NOで置換される)であり、非隣接CH基の一つ以上は、独立して、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR’−、−N=、−NR’−CO−、−CO−NR’−、−NR’−CO−O−、−O−CO−NR’−、−NR’−CO−NR’−、−CH=CH−、−C≡C−、−S−、−SOR’−、−PR’−または0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)の18Fを、例えば炭酸テトラブチルアンモニウムや、炭酸カリウムまたはシュウ酸カリウムと組み合わされたアミノポリエーテル類(例えばKryptofix(登録商標) 2.2.2)などといった相間移動触媒によって活性化する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
Z がHal, NO2, ジアゾニウム塩, スルホナートエステルから選ばれ、これはメシラート、 トシラート、 ペンタフルオロベンゾエート、 トリフラート、 ヨードニウム塩、 ジアルキル/-アリールシラン 及びシラノールを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
一般式 Iで表わされる得られる化合物が、式III
【化3】

{式中、
X1 〜 X5は相互に独立して C 又は Nであり、
R1、 R2は相互に独立して H、Hal、-OR’、 -NHR’、 C1-C12 アルキル、C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、C2-C12アルケニル、C2-C12 アルキニル、(C1-C12 アルコキシ)カルボニル、又は(C1-C12 アルキルアミノ)カルボニル(式中、R’ はH 又はC1-C6 アルキルである。)であり、
R3、 R4は相互に独立して H、ホルミル、イミノメチル、ニトロソ、C1-C12 アルキル、C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、ハロ置換されたC1-C12 アルカノイルであり、
R5はH、 CN、 Hal、 NO2、C1-C12 アルキル、 C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、 C2-C12 アルケニル、C2-C12 アルキニル、 (C1-C12 アルコキシ)カルボニル、(C1-C12 アルキルアミノ)カルボニルであり、
S1 は直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、 -CO-NR-、 -NR-CO-O-、-O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、-PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す、
p は 0、 1 又は 2であり、そして
q は 1〜 7の値を有する。}
を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
一般式III
【化4】

{式中、
X1 〜 X5が相互に独立して C又は Nであり、
R1、 R2が 相互に独立してH、Hal、-OR’、-NHR’、 C1-C12 アルキル、C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、C2-C12アルケニル、C2-C12 アルキニル、(C1-C12 アルコキシ)カルボニル、又は(C1-C12 アルキルアミノ)カルボニル(式中、R’ はH 又はC1-C6 アルキルである。)であり、
R3、 R4が相互に独立して H、 ホルミル、イミノメチル、ニトロソ、C1-C12 アルキル、C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、又はハロ置換されたC1-C12 アルカノイルであり、
R5が H、 CN、 Hal、 NO2、 C1-C12 アルキル、 C1-C12 アルコキシ、 C1-C12 アルカノイル、C2-C12 アルケニル、 C2-C12 アルキニル、 又は(C1-C12 アルコキシ)カルボニル、 (C1-C12 アルキルアミノ)カルボニルであり、
S1が直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、-CO-NR-、 -NR-CO-O-、-O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、-PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す、
p が 0、 1 又は 2であり、そして
q が 1〜 7の値を有する。}
で表わされる18F-標識化合物の合成方法において、
・ 式 IV
【化5】

(式中、Z が 離脱基であり、そして X1〜 X5、 R1 〜 R5、 S1、 p 及びq が上記に定義された通りである。)
で表わされる前駆体を供給し、
・ 上記前駆体に18Fを用いて直接的な放射標識を行うステップを含む、上記18F-標識化合物の合成方法。
【請求項7】
S1 が直鎖状又は分枝状C1-C8 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す、請求項7記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)の18Fを、例えば炭酸テトラブチルアンモニウムや、炭酸カリウムまたはシュウ酸カリウムと組み合わされたアミノポリエーテル類(例えばKryptofix(登録商標) 2.2.2)などといった相間移動触媒によって活性化する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
Z がHal、 NO2、 ジアゾニウム塩、 スルホナートエステルから選ばれ、これはメシラート、 トシラート、 ペンタフルオロベンゾエート、 トリフラート、 ヨードニウム塩、 ジアルキル/-アリールシラン 及びシラノールを含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
得られた化合物が、式 V
【化6】

{式中、
X6、 X7が相互に独立して N 又は Oであり、
R6、 R7が相互に独立して H 又は 直鎖状又は分枝状 C1-C12アルキルであり、 このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2又は基-S2-18F によって置換され、 S2が直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、-CO-NR-、 -NR-CO-O-、-O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、-PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表し、
但し、R6及び R7 のうちの少なくとも1種は基 -S2-18Fであり、そして
X1 〜 X5、 R1〜 R5、 p 及び qは請求項7に定義された通りである。}
を有する、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
S2が直鎖状又は分枝状C1-C8 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換されているか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す、請求項10記載の方法。
【請求項12】
得られた化合物が、式VI 又は VIa
【化7】

{式中、
X1 〜 X5が相互に独立して C 又は Nであり、
X6、 X7が 相互に独立して C、O 又は Nであり、
R1、 R2が 相互に独立して H、 Hal、 -OR’、-NHR’、 C1-C12 アルキル、 C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、 C2-C12 アルケニル、C2-C12 アルキニル、 (C1-C12 アルコキシ)カルボニル、又は(C1-C12 アルキルアミノ)カルボニルであり、 R’が H 又はC1-C6 アルキルであり、
R3、 R4が相互に独立して H、 ホルミル、イミノメチル、ニトロソ、C1-C12 アルキル、C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、又はハロ置換されたC1-C12 アルカノイルであり、
R5が H、 CN、 Hal、 NO2、 C1-C12 アルキル、 C1-C12 アルコキシ、 C1-C12 アルカノイル、C2-C12 アルケニル、 C2-C12 アルキニル又は(C1-C12 アルコキシ)カルボニル、 (C1-C12 アルキルアミノ)カルボニルであり、
R6、 R7が相互に独立して H 又は 直鎖状又は分枝状 C1-C12 アルキルであり、 このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、
S2が直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、-CO-NR-、 -NR-CO-O-、-O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、-PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表し、
Pが 0、 1又は 2であり、そして
Qが 1 〜 7の値を有する。}
を有する、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
一般式 VI 又は VIa
【化8】

{式中、
X1 〜 X5が相互に独立して C 又は Nであり、
X6、 X7が 相互に独立して C、O 又は Nであり、
R1、 R2が 相互に独立して H、 Hal、 -OR’、-NHR’、 C1-C12 アルキル、 C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、 C2-C12 アルケニル、C2-C12 アルキニル、 (C1-C12 アルコキシ)カルボニル又は(C1-C12 アルキルアミノ)カルボニルであり、 R’が H 又はC1-C6 アルキルであり、
R3、 R4が相互に独立して H、 ホルミル、イミノメチル、ニトロソ、C1-C12 アルキル、C1-C12 アルコキシ、C1-C12 アルカノイル、又はハロ置換されたC1-C12 アルカノイルであり、
R5が H、 CN、 Hal、 NO2、 C1-C12 アルキル、 C1-C12 アルコキシ、 C1-C12 アルカノイル、C2-C12 アルケニル、 C2-C12 アルキニル、 又は(C1-C12 アルコキシ)カルボニル、 (C1-C12 アルキルアミノ)カルボニルであり、
R6、 R7が相互に独立して H 又は 直鎖状又は分枝状 C1-C12 アルキルであり、 このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、
S2が直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、-CO-NR-、 -NR-CO-O-、-O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、-PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表し、
Pが 0、 1又は 2であり、そして
Qが 1 〜 7の値を有する。}
で表わされる 18F-標識化合物の合成法において、
(a) 式VII 又は VIIa、
【化9】

(式中、 Z が 離脱基であり、そして X1 〜 X7、R1 〜 R7、 S2、p 及び q が上記に定義された通りである。)
で表わされる 前駆体を供給し、ついで
(b) 上記前駆体に18Fで 直接的な放射標識を行うステップを含む、
請求項1記載の、上記18F-標識化合物の合成方法。
【請求項14】
S2が直鎖状又は分枝状C1-C8 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換されているか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
得られた化合物が式VIII 又は VIIIa
【化10】

{式中、
X6、 X7が相互に独立して C、 N 又はOであり、
Y1、 Y2が相互に独立してH、ホルミル、 直鎖状又は分枝状C1-C12アルキルから選ばれ、 このアルキル基は置換されていないか、又は少なくとも1種のCN、 Hal又はNO2によって置換されており、
Y3がH、 ホルミル、ニトロソ、直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルから選ばれ、このアルキル基は置換されていないか、又は少なくとも1種のCN、 Hal又はNO2によって置換されており、
R6、 R7 が相互に独立して H 又は 直鎖状又は分枝状 C1-C12アルキルであり、 このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、
S2が直鎖状又は分枝状C1-C12 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換され、そして1つ以上の非隣接の CH2 基は 独立して-O-、 -CO-、-CO-O-、 -O-CO-、 -NR-、 -N=、 -NR-CO-、-CO-NR-、 -NR-CO-O-、 -O-CO-NR-、 -NR-CO-NR-、-CH=CH-、 -C≡C-、 -S-、 -SO3R’-、-PR’-によって置き換えられていてよいか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す。}
を有する、請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
S2が直鎖状又は分枝状C1-C8 アルキルであり、このアルキルは置換されていないか、又は少なくとも1種の CN、Hal又はNO2によって置換されているか、又は0、1又は2個のヘテロ原子を有する5員もしくは6員芳香環(これは置換されていないか、またはCN、Hal、NO、COR’もしくはCOOR’で置換される)で置き換えられてもよく、R’はHもしくはC−Cアルキル、またはその組合せを表す、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1つに記載の方法によって得られた式Iで表わされる化合物。
【請求項18】
式 IIIで表わされる化合物を有する、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
ただし S118Fによってパラ置換されたベンジルを表わさない、請求項16又は17記載の化合物。
【請求項20】
インビトロ又はインビボで葉酸受容体を発現させる細胞又は細胞集団の画像診断のための、請求項17―19のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項21】
画像診断を必要とする対象への便利で効果的な投与のための、請求項17−19のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項22】
葉酸受容体を発現させる細胞又は細胞集団の画像診断法であって、請求項17−19のいずれか1つに記載の、少なくとも1種の化合物を画像診断量で投与するステップ、及び前記細胞又は細胞集団の診断画像を取得するステップを含む、上記画像診断法。
【請求項23】
画像診断をインビトロ又はインビボで葉酸受容体を発現させる細胞又は細胞集団に対して行う、請求項22記載の方法。
【請求項24】
組織試料中の葉酸受容体を発現させる細胞をインビトロ検出するための方法であって、前記組織試料を、請求項17−19のいずれか1つに記載の化合物と、結合を起こさせてそのような結合をPETイメージングによって検出することができるように、有効な量ならびに十分な時間および条件で、接触させることを含む、上記方法。
【請求項25】
対象を画像診断またはモニタリングする方法であって、(i)少なくとも一つの請求項17〜19に記載の化合物を画像診断量で投与するステップ、および(ii)前記少なくとも一つの化合物からのシグナルを検出することにより、PETを使って画像診断を行うステップを含む方法。
【請求項26】
対象におけるがん、炎症性疾患および自己免疫疾患の治療をモニタリングする方法であって、(i)その必要がある対象に少なくとも一つの請求項17〜19に記載の化合物を画像診断量で治療活性剤と組み合わせて投与するステップ、および(ii)がん、炎症性疾患および自己免疫疾患の治療の経過を追跡するために前記少なくとも一つの化合物からのシグナルを検出することによりPETを使って画像診断を行うステップを含む方法。
【請求項27】
がん、炎症性疾患および自己免疫疾患の他の任意の診断方法または治療方法と組み合わせて使用される、請求項25または26の方法。

【公表番号】特表2010−523624(P2010−523624A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502517(P2010−502517)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054404
【国際公開番号】WO2008/125613
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(592010450)メルック・エプロバ・アクチエンゲゼルシヤフト (10)
【Fターム(参考)】