説明

2−アミノ−5−シアノ安息香酸誘導体の製造方法

(1)式2の化合物を、(2)少なくとも1つのシアン化アルカリ金属および(3)少なくとも1つの式4
【化1】


[式中、RはNHRまたはORであり、RはCHまたはClであり、RはH、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、RはHまたはC〜Cアルキルであり、XはBr、ClまたはIである]の化合物と接触させることを含む式1の化合物の製造方法を開示する。
また(i)少なくとも1つの式9の化合物と(ii)少なくとも1つの金属還元剤との混合物を、(iii)ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと接触させることを含む式4の化合物の製造方法も開示する。さらに式1の化合物とのニッケル不純物の混合物からニッケル不純物を除去するための方法であって、シアン化物水溶液の存在下で、混合物を酸素と接触させることを含む方法を開示する。加えて式5
【化2】


[式中、R、R、RおよびZは開示中に定義されるとおりである]の化合物を、式1の化合物を使用して製造する方法であって、上記開示された方法によって式1の化合物を製造することを特徴とする方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−置換2−アミノ−5−シアノ安息香酸誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の2−アミノ−5−シアノ安息香酸誘導体の製造、および対応する殺虫性シアノアントラニル酸ジアミドを製造するための中間体としてのそれらの有用性については開示されている(例えば、特許文献1のスキーム9、特許文献2のスキーム9および実施例2、工程A、ならびに特許文献3のスキーム15および実施例6、工程B)。
【0003】
しかしながら、迅速に2−アミノ−5−シアノ安息香酸誘導体を提供するために適切な新規または改良された方法が必要とされ続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】PCT特許公報、国際公開第2004/067528号パンフレット
【特許文献2】PCT特許公報、国際公開第2006/068669号パンフレット
【特許文献3】PCT特許公報、国際公開第2006/062978号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、式1
【化1】

[式中、
はNHRまたはORであり、
はCHまたはClであり、
はH、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、
はHまたはC〜Cアルキルである]の化合物の製造方法であって、
(1)式2
【化2】

[式中、XはBr、ClまたはIである]の化合物を
(2)少なくとも1種の式3
【化3】

[式中、Mはアルカリ金属である]の化合物、
および(3)少なくとも1種の式4
【化4】

の化合物と接触させることを含んでなるが、ただし、XがClである場合、Rはメチルである方法に関する。
【0006】
また本発明は、(i)少なくとも1種の式9
【化5】

の化合物と(ii)少なくとも1種の金属還元剤との混合物を、(iii)ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと接触させることを含んでなる式4の化合物の製造方法も提供する。
【0007】
また本発明は、式1の化合物とのニッケル不純物の混合物からニッケル不純物を除去するための方法であって、シアン化物水溶液の存在下で、混合物を酸素と接触させることを含んでなる方法も提供する。
【0008】
また本発明は、式5
【化6】

[式中、RはCHまたはClであり、
はH、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、
ZはCRまたはNであり、
はCl、Br、CF、OCFHまたはOCHCFであり、
はF、ClまたはBrであり、
はH、FまたはClであり、
はH、F、ClまたはBrである]の化合物の製造方法であって、
式1の化合物を使用する方法も提供する。この方法は、(a)上記開示された方法によって式2、3および4の化合物から式1の化合物を製造すること、または(b)上記開示された方法によって製造された式1の化合物を、前記式1の化合物として使用することを特徴とする。
【0009】
本発明のさらに関連する態様は、上記のとおり式4の化合物を製造し、次いで上記のとおり式2、3および4の化合物から式1の化合物を製造し、次いで場合により、上記のとおり式1の化合物とのニッケル不純物の混合物からニッケル不純物を除去し、次いで式1の化合物を使用して式5の化合物を製造することを含んでなる、式5の化合物の製造方法を含む、上記方法の組み合わせに関連する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなっている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」またはそれらの他のいずれかの変形は、非排他的包含を包括するように意図される。例えば、要素のリストを含んでなる組成物、プロセス、方法、物品または装置はそれらの要素のみに必ずしも限定されるのではなく、明白に記載されていないか、またはかかる組成物、プロセス、方法、物品もしくは装置に固有である他の要素も含んでよい。さらに、それとは反対の記載が明白にされない限り、「あるいは、または、もしくは」は包含的論理和を指し、排他的論理和を指さない。例えば、条件AまたはBは以下のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(または存在する)、Bが偽である(または存在しない)。Aが偽であり(または存在しない)、Bが真である(または存在する)。ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0011】
また本発明の要素または構成成分を先行する不定冠詞「a」および「an」は、要素または構成成分の実例の数(すなわち、発生数)に関して非限定的であるように意図される。したがって、「a」または「an」は、1または少なくとも1を含むように読解されるべきであり、その数が明らかに単数を意味しない限り、要素または構成成分の単数形は複数も含む。
【0012】
本明細書中、比率は、数字1に対する単一の数字として一般に表され、例えば比率2であれば2:1を意味する。
【0013】
第1の化合物対第2の化合物のモル百分率は、第1の化合物のモル数を第2の化合物のモル数によって除算し、この比率に100を乗算することによって算出される。
【0014】
上記文中、「アルキル」という用語には、メチル、エチル、ブチル、n−プロピル、i−プロピルまたは種々のブチル異性体などの直鎖または分枝鎖アルキルが含まれる。
【0015】
本発明の文脈中、「金属還元剤」という用語は、ニッケルより電気陽性であるいかなる元素金属も指し、粉末型である。そのような金属の例としては、限定されないが、亜鉛およびマンガンが挙げられ、それらを含んでなる合金(例えばマンガン−鉄合金)を含む。
【0016】
「シクロプロピルシクロプロピル」という用語は、シクロプロピル部分上でのシクロプロピル置換を意味し、例えば、1,1’−ビシクロプロピル−1−イル、(1,1’)−ビシクロプロピル−2−イルならびに(1R,2S)−1,1’−ビシクロプロピル−2−イルおよび(1R,2R)−1,1’−ビシクロプロピル−2−イルなどの種々の異性体が挙げられる。
【0017】
炭素をベースとする基とは、その基を単結合によって残りの化学構造に連結する炭素原子を含んでなる一価の分子の構成要素を指す。炭素をベースとする基は、飽和、不飽和、および芳香族の基、鎖、環および環系、ならびにヘテロ原子を場合により含み得る。炭素をベースとする基は、大きさについて特に制限を受けないが、本発明の文脈中、1〜16個の炭素原子および0〜3個のヘテロ原子を典型的に含んでなる。注目すべきは、C〜Cアルキル、ハロゲンおよびニトロから選択される1〜3個の置換基によって場合により置換されていてもよいC〜Cアルキル、C〜Cハロアルキルおよびフェニルから選択される炭素をベースとする基である。
【0018】
本開示および請求の範囲中に記述される場合、「カルボン酸」という用語は、少なくとも1個のカルボン酸官能基(すなわち、−C(O)OH)を含んでなる有機化合物を意味する。「カルボン酸」という用語には化合物の炭酸(すなわち、HOC(O)OH)は含まれない。カルボン酸には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クロル酢酸、安息香酸、マレイン酸、およびクエン酸が含まれる。「有効pK」という用語は、カルボン酸官能基のpKを示すか、またはその化合物が1個より多いカルボン酸官能基を有する場合、「有効pK」は最も酸性のカルボン酸官能基のpKを示す。本明細書に記述される場合、反応混合物のような非水系物質または混合物の「有効pH」は、物質または混合物の一定量を約5〜20体積の水と混合し、次いで得られた水性混合物のpHを(例えばpHメータで)測定することによって決定される。本明細書に記述される場合、「実質的に無水の」物質とは、約1質量%以下の水を含有する物質を意味する。化学名「イサト酸無水物」は、現行のケミカルアブストラクト名「2H−3,1−ベンゾキサジン−2,4(1H)−ジオン」に対応するもう1つの名前である。
【0019】
本発明の実施形態としては以下が挙げられる。
【0020】
実施形態A1。試薬(1)(すなわち式2の化合物)を、試薬(2)(すなわち少なくとも1種の式3の化合物)および試薬(3)(すなわち少なくとも1種の式4の化合物)と接触させることを含んでなる発明の概要に記載の式1の化合物の製造方法。
【0021】
実施形態A2。RがNHRである実施形態A1の方法。
【0022】
実施形態A3。RがC〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルである実施形態A1またはA2の方法。
【0023】
実施形態A4。RがC〜Cアルキルまたはシクロプロピルメチルである実施形態A3の方法。
【0024】
実施形態A5。RがCHである実施形態A4の方法。
【0025】
実施形態A6。RがCHである実施形態A1〜A5のいずれか1つの方法。
【0026】
実施形態A7。Mがナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群から選択される実施形態A1〜A6のいずれか1つの方法。
【0027】
実施形態A8。Mがナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される実施形態A7の方法。
【0028】
実施形態A9。Mがカリウムである実施形態A8の方法。
【0029】
実施形態A10。XがBrまたはClである実施形態A1〜A9のいずれか1つの方法。
【0030】
実施形態A11。試薬(3)が、少なくとも約80%のクロロ−1−ナフタレニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルを含有する実施形態A1〜A10のいずれか1つの方法。
【0031】
実施形態A12。試薬(3)が、少なくとも約90%のクロロ−1−ナフタレニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルを含有する実施形態A11の方法。
【0032】
実施形態A13。試薬(2)のモル数(すなわちCNのモル数)対試薬(1)および試薬(3)のモル数の合計の比率が少なくとも約1である実施形態A1〜A12のいずれか1つの方法。
【0033】
実施形態A14。試薬(2)対試薬(1)のモル比が少なくとも約1.07である実施形態A1〜A13のいずれか1つの方法。
【0034】
実施形態A15。試薬(2)対試薬(1)のモル比が少なくとも約1.5である実施形態A14の方法。
【0035】
実施形態A15A。試薬(2)対試薬(1)のモル比が少なくとも約2である実施形態A15の方法。
【0036】
実施形態A16。試薬(2)対試薬(1)のモル比が約6以下である実施形態A1〜A15Aのいずれか1つの方法。
【0037】
実施形態A17。試薬(2)対試薬(1)のモル比が約2.5以下である実施形態A16の方法。
【0038】
実施形態A18。試薬(3)対試薬(1)のモル百分率が少なくとも約1%である実施形態A1〜A17のいずれか1つの方法。
【0039】
実施形態A19。試薬(3)対試薬(1)のモル百分率が少なくとも約5%である実施形態A18の方法。
【0040】
実施形態A20。試薬(3)対試薬(1)のモル百分率が少なくとも約7%である実施形態A19の方法。
【0041】
実施形態A21。試薬(3)対試薬(1)のモル百分率が約15%以下である実施形態A1〜A20のいずれか1つの方法。
【0042】
実施形態A22。試薬(3)対試薬(1)のモル百分率が約12%以下である実施形態A21の方法。
【0043】
実施形態A23。試薬(3)対試薬(1)のモル百分率が約10%以下である実施形態A22の方法。
【0044】
実施形態A24。試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)を適切な有機溶媒の存在下で接触させる実施形態A1〜A23のいずれか1つの方法。
【0045】
実施形態A25。試薬(1)および試薬(2)を適切な有機溶媒と接触させ、混合物を形成し、次いで、この混合物に試薬(3)を添加する実施形態A24の方法。
【0046】
実施形態A26。試薬(1)および試薬(2)を適切な有機溶媒と接触させ、混合物を形成し、次いで、この混合物に、適切な有機溶媒中の試薬(3)のスラリーを添加する実施形態A24の方法。
【0047】
実施形態A27。適切な有機溶媒が、アルコール、アミド、ならびにハロゲン化された、およびハロゲン化されていない脂肪族および芳香族炭化水素からなる群から選択される1種以上の溶媒を含んでなる実施形態A24、A25およびA26のいずれか1つの方法。
【0048】
実施形態A28。適切な有機溶媒がエタノール、N,N’−ジメチルホルムアミド、キシレンおよびトルエンから選択される1種以上の溶媒を含んでなる実施形態A27の方法。
【0049】
実施形態A29。適切な有機溶媒がエタノールを含んでなる実施形態A27またはA28の方法。
【0050】
実施形態A30。適切な有機溶媒が少なくとも約50質量%のエタノールを含んでなる実施形態A29の方法。
【0051】
実施形態A31。適切な有機溶媒が少なくとも約70質量%のエタノールを含んでなる実施形態A30の方法。
【0052】
実施形態A32。適切な有機溶媒が少なくとも約80質量%のエタノールを含んでなる実施形態A31の方法。
【0053】
実施形態A33。適切な有機溶媒の総体積対試薬(1)の質量の比率が少なくとも約6mL/gである実施形態A24〜A32のいずれか1つの方法。
【0054】
実施形態A34。適切な有機溶媒の総体積対試薬(1)の質量の比率が少なくとも約8mL/gである実施形態A33の方法。
【0055】
実施形態A35。適切な有機溶媒の総体積対試薬(1)の質量の比率が約15mL/g以下である実施形態A24〜A34のいずれか1つの方法。
【0056】
実施形態A36。適切な有機溶媒の総体積対試薬(1)の質量の比率が約10mL/g以下である実施形態A35の方法。
【0057】
実施形態A37。約100℃以下の温度で適切な有機溶媒の存在下で試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)を接触させる実施形態A24〜A36のいずれか1つの方法。
【0058】
実施形態A38。約75℃以下の温度で適切な有機溶媒の存在下で試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)を接触させる実施形態A37の方法。
【0059】
実施形態A39。約45℃以下の温度で適切な有機溶媒の存在下で試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)を接触させる実施形態A38の方法。
【0060】
実施形態A40。約10℃より高い温度で適切な有機溶媒の存在下で試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)を接触させる実施形態A24〜A39のいずれか1つの方法。
【0061】
実施形態A41。約25℃より高い温度で適切な有機溶媒の存在下で試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)を接触させる実施形態A40の方法。
【0062】
実施形態A42。約35℃より高い温度で適切な有機溶媒の存在下で試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)を接触させる実施形態A41の方法。
【0063】
実施形態B1。試薬(i)(すなわち少なくとも1種の式9の化合物)と試薬(ii)(すなわち少なくとも1種の金属還元剤)との混合物を、試薬(iii)(すなわちジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル)と接触させることを含んでなる発明の概要に記載の式4の化合物の製造方法。
【0064】
実施形態B2。適切な有機溶媒(iv)の存在下で試薬(i)および試薬(ii)を接触させ、混合物を形成し、次いで、この混合物に試薬(iii)を添加する実施形態B1の方法。
【0065】
実施形態B3。試薬(i)および試薬(ii)を適切な有機溶媒と接触させ、混合物を形成し、次いで、この混合物に、適切な有機溶媒(iv)中の試薬(iii)のスラリーを添加する実施形態B1またはB2の方法。
【0066】
実施形態B3A。適切な有機溶媒(iv)中のスラリーとして試薬(iii)を、試薬(i)、試薬(ii)および適切な有機溶媒(iv)から形成された混合物に添加する実施形態B2の方法。
【0067】
実施形態B4。適切な有機溶媒(v)の存在下でトリフェニルホスフィンおよび塩化ニッケル(II)六水化物を接触させることによって試薬(iii)を製造する実施形態B1〜B3のいずれか1つの方法。
【0068】
実施形態B5。トリフェニルホスフィン対塩化ニッケル(II)六水化物のモル比が少なくとも約2である実施形態B4の方法。
【0069】
実施形態B6。トリフェニルホスフィン対塩化ニッケル(II)六水化物のモル比が少なくとも約2.5である実施形態B5の方法。
【0070】
実施形態B7。トリフェニルホスフィン対塩化ニッケル(II)六水化物のモル比が約4以下である実施形態B1〜B6のいずれか1つの方法。
【0071】
実施形態B8。トリフェニルホスフィン対塩化ニッケル(II)六水化物のモル比が約3以下である実施形態B7の方法。
【0072】
実施形態B9。適切な有機溶媒(v)がエタノールである実施形態B4〜B8のいずれか1つの方法。
【0073】
実施形態B10。試薬(i)が少なくとも約80%の1−クロロナフタレンを含有する実施形態B1〜B9のいずれか1つの方法。
【0074】
実施形態B11。試薬(i)が少なくとも約90%の1−クロロナフタレンを含有する実施形態B10の方法。
【0075】
実施形態B12。試薬(iii)対試薬(i)のモル比が少なくとも約0.3である実施形態B1〜B11のいずれか1つの方法。
【0076】
実施形態B12A。試薬(iii)対試薬(i)のモル比が少なくとも約0.4である実施形態B1の方法。
【0077】
実施形態B13。試薬(iii)対試薬(i)のモル比が少なくとも約0.5である実施形態B12の方法。
【0078】
実施形態B14。試薬(iii)対試薬(i)のモル比が約1以下である実施形態B1〜B13のいずれか1つの方法。
【0079】
実施形態B15。試薬(iii)対試薬(i)のモル比が約0.8以下である実施形態B14の方法。
【0080】
実施形態B16。試薬(ii)が亜鉛を含んでなる実施形態B1〜B15のいずれか1つの方法。
【0081】
実施形態B17。亜鉛対試薬(i)のモル比が少なくとも約1である実施形態B16の方法。
【0082】
実施形態B18。亜鉛対試薬(i)のモル比が少なくとも約1.5である実施形態B17の方法。
【0083】
実施形態B19。亜鉛対試薬(i)のモル比が約5以下である実施形態B16〜B18のいずれか1つの方法。
【0084】
実施形態B20。亜鉛対試薬(i)のモル比が約3以下である実施形態B19の方法。
【0085】
実施形態B21。試薬(i)対試薬(iii)のモル比が少なくとも約1である実施形態B1〜B20のいずれか1つの方法。
【0086】
実施形態B22。試薬(i)対試薬(iii)のモル比が少なくとも約2である実施形態B21の方法。
【0087】
実施形態B23。試薬(i)対試薬(iii)のモル比が約3以下である実施形態B1〜B22のいずれか1つの方法。
【0088】
実施形態B24。試薬(i)対ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルのモル比が約2.5以下である実施形態B23の方法。
【0089】
実施形態C1。式1の化合物とのニッケル不純物の混合物からニッケル不純物を除去するための発明の概要に記載の方法であって、シアン化物水溶液の存在下で、混合物を酸素と接触させることを含んでなる方法。
【0090】
実施形態C2。シアン化物水溶液がシアン化カリウムまたはシアン化ナトリウムを含んでなる実施形態C1の方法。
【0091】
実施形態C3。空気で混合物をスパージングすることによって、または空気に混合物を暴露することによって、ニッケル不純物と式1の化合物との混合物を酸素と接触させる実施形態C1またはC2の方法。
【0092】
実施形態C4。約100℃以下の温度でニッケル不純物と式1の化合物との混合物を酸素およびシアン化物水溶液と接触させる実施形態C1〜C3のいずれか1つの方法。
【0093】
実施形態C5。約70℃以下の温度でニッケル不純物と式1の化合物との混合物を酸素およびシアン化物水溶液と接触させる実施形態C4の方法。
【0094】
実施形態C6。約50℃以下の温度でニッケル不純物と式1の化合物との混合物を酸素およびシアン化物水溶液と接触させる実施形態C5の方法。
【0095】
実施形態C7。約25℃より高い温度でニッケル不純物と式1の化合物との混合物を酸素およびシアン化物水溶液と接触させる実施形態C1〜C6のいずれか1つの方法。
【0096】
実施形態C8。約45℃より高い温度でニッケル不純物と式1の化合物との混合物を酸素およびシアン化物水溶液と接触させる実施形態C7の方法。
【0097】
実施形態D1。式2の化合物から製造された式1の化合物を使用して式5の化合物を製造するための発明の概要に記載の方法。
【0098】
実施形態D2。ZがNである実施形態D1の方法。
【0099】
実施形態D3。ZがCHである実施形態D1の方法。
【0100】
実施形態D4。RがH、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルである実施形態D1〜D3のいずれか1つの方法。
【0101】
実施形態D5。RがC〜Cアルキルまたはシクロプロピルメチルである実施形態D4の方法。
【0102】
実施形態D6。RがCHである実施形態D5の方法。
【0103】
実施形態D7。RがCHである実施形態D1〜D6のいずれか1つの方法。
【0104】
実施形態D8。RがBrである実施形態D1〜D8のいずれか1つの方法。
【0105】
実施形態D9。RがClである実施形態D1〜D8のいずれか1つの方法。
【0106】
実施形態D10。RがHである実施形態D1〜D9のいずれか1つの方法。
【0107】
本発明の実施形態をいずれの様式でも組み合わせることができる。
【0108】
以下のスキーム1〜8において、式1〜式12の化合物中のR、R、R、R、R、R、R、R、M、XおよびZの定義は、他に特記されない限り、上記発明の概要および実施形態の記載中で定義されたとおりである。式1a、1bおよび1cは式1の部分集団である。式2aは式2の部分集団である。
【0109】
スキーム1に示されるように、本発明の方法では、式2の化合物を少なくとも1種の式3のシアン化アルカリ金属および少なくとも1種の式4の化合物と接触させることによって式1の化合物を製造する。
【化7】

【0110】
スキーム1の方法において、式3の化合物は、アルカリ金属、好ましくはK、Na、CsまたはRb、より好ましくはKまたはNa、最も好ましくはKであるMを含んでなる。式3の化合物によって提供されるシアン化物が最初に式4の化合物、次いで式2の化合物と反応すると思われるため、反応の化学量論は、式2および式4の化合物のモル数の合計に対して、少なくとも1モル等量の式3を必要とする。一般的に、式2の化合物に対する1種または複数種の式3の化合物のモル比(すなわちCNのモル数)は、約1.07〜約6である。より高濃度の式3化合物を使用することも可能であるが、高濃度にすることによって特に有利な点はなく、また濃度が高ければ原料が増加し、処理費の浪費となる。最も高い生成物収率は、通常、式2の化合物に対して、約1.5〜約2の式3のモル比によって達成される。場合によっては、式3化合物対式2の化合物の最適モル比は、粒径次第で異なる(モル比は依然として上記の範囲内にある)。例えば、商業的に入手されたシアン化アルカリ金属は、粒径配布を変えることで不規則に成形された粒子からなり得、したがって最適モル比は、粒径がより小さい材料を使用する代わりに、商業的に入手されたシアン化アルカリ金属を使用する場合、より大きいことがある。使用の前にシアン化アルカリ金属を粉砕するか、または製粉することによって、粒径がより小さい材料を提供することができる。
【0111】
本方法では、1種または複数種の式4の化合物は、式2の化合物から式1の化合物への変換に触媒作用を及ぼす化学種の供給源として作用する。スキーム1の方法において、式4はクロロ−1−ナフタレニルビス−(トリフェニルホスフィン)ニッケル(別名トランスクロロ(1−ナフチル)ビス(トリフェニルホスフィン)−ニッケル)であるか、または式4はクロロナフタレニルビス−(トリフェニルホスフィン)ニッケルの1−および2−異性体の混合物である。異性体の混合物が使用される場合、好ましくは、混合物は、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%のクロロ−1−ナフタレニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルを含有する。式2の化合物に対する1種または複数種の式4の化合物の総モル百分率は、好ましくは約1%〜約15%である。モル百分率が1%を超えると反応はしばしば加速され得、百分率が15%より高いと一般に、さらなる利益はほとんど提供されないが、費用が増加するため、モル百分率は、より好ましくは約7%〜約10%である。式2の化合物に結合したXがBrである場合、約6%〜約7%のモル百分率が最も好ましく、XがClである場合、約9.5%〜約10%のモル百分率が最も好ましい。場合によっては、式4中で結合した配位子に加えて適切な配位子の存在下でスキーム1の方法を実行することは有利となり得る。適切な配位子は、ニッケルに配位結合することができる配位子であり、例えば、置換ホスフィン(例えばトリフェニルホスフィン)またはシクロアルカジエン(例えば1,5−シクロオクタジエン)を含む。しばしば反応速度および収率は、式2の化合物に対して約1〜2モル%のトリフェニルホスフィンまたは約10モル%の1,5−シクロオクタジエンの添加と、反応温度の上昇によって増加する。本方法での適切な配位子の添加は、(式4中で結合した配位子以外の)配位子を存在させずに本方法を実行する場合と比較して、最適反応温度にも影響し得る。例えば、トリフェニルホスフィンを添加しなかった場合の約40〜45℃と比較して、式2の化合物に対して約5〜10モル%のトリフェニルホスフィンを添加した場合、式1の化合物の最も高い収率をもたらす最も好ましい反応速度が、典型的に約45〜75℃の範囲の反応温度で得られる。しかしながら、(式4中で結合した配位子以外の)配位子の有用性は、より大きな量では場合によって減少する。特に、反応速度は典型的に約10モル%を超えるトリフェニルホスフィンの量では、ほとんど改善を示さない。
【0112】
スキーム1の方法は、適切な有機溶媒中で典型的に実行される。本方法のために適切な有機溶媒を形成するために種々の有機溶媒を使用することができる。典型的に、本方法は、式2の化合物が好ましくは完全に、または少なくとも実質的に可溶性であり、そして対照的に、使用される溶媒の体積中で式3および式4の化合物が低い溶解度を有する溶媒を使用して、最も満足に実行される。最適生成物収率を与える溶媒は、式3の化合物が通常の周囲温度(例えば25℃)で約20〜100mmol/Lの範囲の溶解度を有する溶媒である。適切な溶媒の例としては、アルコール、特にメタノールおよびエタノールなどの低級アルカノール、N,N’−ジメチルホルムアミドのようなアミド、ならびにキシレン、トルエンおよびクロロベンゼンなどのハロゲン化および非ハロゲン化芳香族炭化水素、ならびにそれらの混合物が挙げられる。エタノールが主要成分(例えば少なくとも50%、70%または80質量%)である溶媒が優れた結果を提供することが多い。エタノール、あるいはトルエンまたはキシレンとのエタノールの混合物またはそれらの組み合わせは、適切な有機溶媒として特に注目に値する。エタノールとキシレンおよび/またはトルエンとの混合物が使用される場合、エタノールの体積対キシレンおよび/またはトルエンの体積の比率は典型的に約5:1〜約2:1の範囲である。スキーム1の方法で使用される有機溶媒の総体積は、攪拌性(stirrability)を維持しながら高濃度の反応物を提供するために、好ましくは式2の化合物の質量に対して約6mL/g〜約15mL/g、より好ましくは約6mL/g〜約10mL/gである。
【0113】
一連の反応の最初に1回で、一連の反応間に分割して、または1種以上の試薬を添加する過程で断続的になど、反応の経過中に様々な様式および回数で溶媒を添加することができる。例えば1種以上の試薬を適切な有機溶媒中に分散可能であるか、溶解可能であるか、または部分的に溶解可能であり、次いで1種以上の試薬と適切な有機溶媒を含んでなる反応混合物に添加することができる。添加の好ましい様式は、適切な有機溶媒中に分散されたスラリーとして1種または複数種の式4の化合物を、式2の化合物と、1種または複数種の式3の化合物と、適切な有機溶媒とを含んでなる混合物に添加することを含む。溶媒中に溶解した酸素が、特に加熱時、式4の化合物を酸化する原因となり得るため、スキーム1の方法は、好ましくは無酸素溶媒を使用して実行される。無酸素溶媒を入手するために標準技術を使用することができる。例えば、(場合により、ナトリウムおよびベンゾフェノン、炭酸カリウム、硫酸マグネシウムなどの乾燥剤の存在下で)不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)中で溶媒を還流/精製すること、不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン)で溶媒をスパージすること、あるいは(液体窒素を使用して)溶媒を凍結させ、減圧を加え、次いで室温まで溶媒を加温することが挙げられる。加えて、スキーム1の方法を好ましくは無酸素環境で実行する。典型的に、全試薬を添加した後、反応容器中の大気中酸素の存在を減少させることは特に都合がよい。無酸素環境を入手するための標準技術を使用することができ、例えば、真空ポンプを使用して反応容器を真空にし、次いで不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン)によって気圧まで再加圧することが挙げられる。反応容器中に存在する酸素をさらに減少させるために、この方法を2回以上繰り返すことができる。約2〜3kPaの真空印加を使用して3回の真空化/再加圧サイクルを繰り返すことによって、典型的に反応容器から酸素が効果的に除去される。
【0114】
式2の化合物、1種または複数種の式4の化合物、1種または複数種の式3の化合物を組み合わせて、次いで適切な有機溶媒を添加することなど、試薬を様々な順番で組み合わせることができる。しかしながら、式1の化合物を製造するために最も好ましい添加の順番は、式2の化合物および1種または複数種の式3の化合物を適切な有機溶媒と組み合わせて、混合物を形成し、次いで、この混合物に1種または複数種の式4の化合物を添加することを含んでなることが見出された。トリフェニルホスフィンまたは1,5−シクロオクタジエンなどの配位子がスキーム1の方法で使用される場合、順番は典型的に、式2の化合物、1種または複数種の式3の化合物および配位子を適切な有機溶媒と組み合わせて、混合物を形成し、次いで、この混合物に1種または複数種の式4の化合物を添加することを含んでなる。成分が添加される様式は、反応混合物中に存在する成分間の原位置でのモル比(in situ mole ratio)に影響し得、生成物収率および純度に影響を及ぼし得る。したがって、式1の化合物を製造する場合、典型的に、1種または複数種の式4の化合物対他の成分の最適な原位置でのモル比(in situ molar ratio)は、式4の化合物が制御された分割様式で反応容器に添加される場合に達成される。分割添加はいくつかの様式で実行可能であるが、しかし、適切な有機溶媒中に1種または複数種の式4の化合物を分散させ、スラリーを形成し、次いでこのスラリーを反応容器に数部分に分割して添加することを含んでなる方法が好ましい。そのような分割添加のための都合のよい方法は、約0.005対1〜約0.01対1の式4化合物対式3のシアン化アルカリ金属のモル比をもたらす量で、反応溶媒(例えばエタノール)中の1種または複数種の式4化合物のスラリーを約15分かけて添加することを含む。最初の添加の完了から約45分〜2時間後、式4化合物のスラリーの2番目の同等分を同様に添加する。さらに1種または複数種の式4化合物の所望の全量が反応混合物に添加されるまで、同等分のスラリーをその後同様に添加する。添加の様式には関係なく、反応の過程で添加された式4化合物の全量は前記および実施形態中に記載のとおりである。
【0115】
本方法は、約10〜100℃、より典型的に約35〜75℃の温度で典型的に実行される。添加された配位子がない場合、最も高い収率および純度で式1の化合物への迅速な変換をもたらす最も好ましい反応速度は、典型的に約40〜45℃の範囲の反応温度で得られるものである。この温度範囲で成分の反応を達成するために、成分を組み合わせ、続いて約40〜45℃まで加温することができるか、または1種以上の成分を約40〜45℃の温度で反応混合物に添加することができる。例えば、適切な有機溶媒中のスラリーとして式4の化合物を、約40〜45℃の温度に維持された反応混合物に分割して添加することができる。
【0116】
ろ過、抽出、蒸発および結晶化を含む当該分野で既知の標準技術によって、式1の生成物を単離することができる。式1の化合物は典型的に周囲温度で固体であるため、それらは濾過によって最も簡単に単離されることが多く、そして場合により、その後、水および/または有機溶媒(例えばキシレン、トルエン、エタノール)で洗浄する。減圧下で濾液を濃縮し、得られた残渣を有機溶媒(例えばキシレン、トルエン、エタノール)中でスラリー化し、濾過し、場合により水および/または有機溶媒(例えばキシレン、トルエン、エタノール)で洗浄することによって、さらなる生成物を単離することができる。適切な有機溶媒(例えばエタノール、メタノール、アセトニトリル)からの再結晶によって固体生成物をさらに精製することができる。
【0117】
反応条件およびその後の精製手順次第で、ニッケル(0)錯体を含む望ましくないニッケル不純物が最終生成物中に存在し得る。本発明は、式1の化合物とのニッケル不純物の混合物からニッケル不純物を除去する方法を提供する。この方法は、シアン化物水溶液の存在下で、混合物を酸素と接触させ、濾過によって最も簡単に式1の化合物から分離することができる水溶性ニッケル錯体を形成し、次いで収集した固体を水で洗浄することを含んでなる。本方法では、ニッケルと式1の化合物とを含んでなる混合物を、いくつかの様式で酸素と接触させることができるが、ニッケル、式1の化合物およびシアン化物水溶液を含んでなる混合物を空気でスパージングすること、または単に混合物を空気に暴露することが最も都合がよい。シアン化物水溶液を製造するために、シアン化物の供給源として有用な広範囲の試薬を使用することができるが、有効性と経済上の理由で、シアン化物水溶液は、好ましくは水と、KCNおよび/またはNaCNとの混合物である。典型的に、スキーム1の方法で十分過剰量の式3のシアン化アルカリ金属が使用される場合、さらなるシアン化アルカリ金属は必要ではない。例えば、スキーム1の方法で使用される1種または複数種の式3の化合物のモル数が式2および式4の化合物のモルの合計より大きい場合、単に、固体を懸濁するのに十分な量で粗製固体混合物に水を添加し、次いで、撹拌しながら混合物を空気と接触させることによって、粗製反応生成物からニッケル不純物を除去することができる。水性混合物を濾過し、次いで収集した固体を水ですすぐことによってニッケルを含まない生成物を単離することができる。スキーム1の方法で使用される1種または複数種の式3の化合物のモル数が式2および式4の化合物のモルの合計より小さい場合、混合物を空気に暴露しながら、粗製固体混合物にシアン化物水溶液(例えばKCNおよび/またはNaCNの水溶液)を添加し、次いで水性混合物を濾過し、収集した固体を水ですすぎ、ニッケルを含まない生成物を単離することによって、反応生成物からニッケル不純物を除去することができる。本方法のための反応温度は、好ましくは約25〜100℃であり、通常、最良の結果は約45℃で得られる。反応は典型的に約1〜2時間で完了するが、反応混合物への酸化体(すなわち酸素)の移動速度次第でこの時間は変化し得る。混合物の撹拌およびかき混ぜによって、酸素移動を促進することができる。場合によっては、反応混合物の色の変化(例えば、灰色から白色へ)によって反応が完了したことが示される。
【0118】
本方法は、約10〜約24時間で、典型的に高い収率(例えば約80〜85%)で式1の化合物を製造するための効率的な手段を提供する。特に注目すべきは、式1の化合物ならびに出発化合物である式2の化合物がアミノ置換基を含有し、場合によってはアミド置換基を含有して、これらが副反応に関与する可能性があるにもかかわらず、優れた純度で、著しく高収率の式1の化合物を提供するために本方法を使用することができることである。スキーム1の方法は、下記の実施例2〜4に例示される。
【0119】
スキーム2に示すように、式6の化合物のハロゲン化によって式2の化合物を製造することができる。典型的にハロゲン化は、元素ハロゲン(例えば、Cl、Br、I)、塩化スルフリル、N−ハロスクシンイミド(例えばN−クロロスクシンイミド(NC)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−ヨードスクシンイミド(NIS))、または酸化水素とハロゲン化水素とを含んでなる混合物などのハロゲン化試薬などの当該技術で既知の種々のハロゲン化試薬を使用して達成される。これらの方法を記載している先行参照文献としては、PCT特許公報、国際公開第2006/068669号パンフレット(スキーム11および実施例1、工程E)、国際公開第2003/015519号パンフレット(スキーム4および実施例1、工程A)、国際公開第2006/062978号パンフレット(スキーム15;実施例2、工程A;実施例4、工程Bおよび実施例5、工程B)ならびに国際公開第2004/067528号パンフレット(スキーム11および実施例1、工程A)を参照のこと。
【化8】

【0120】
式2(式中、XはBrであり、RはNHRである)の化合物を製造するためのもう1つの方法では、PCT出願PCT/US07/25800号パンフレットに記載され、参照例1の手順で例示されるとおり、臭素を含有する気体による処理による式6の化合物の臭素化が含まれる。
【0121】
スキーム3で例示されるように、カルボン酸の存在下で式7のイサト酸無水物を式8のアルキルアミンと接触させることによって式2(式中、RはNHRである)の化合物を製造することもできる。
【化9】

【0122】
式8の化合物のようなアミンは塩基であるため、カルボン酸がない場合、式7および式8の化合物の混合物は塩基性となる(例えば、有効pH7超)。カルボン酸は緩衝剤として働き、反応混合物の有効pHを低下させる。唯一の必要条件は、酸性を付与する少なくとも1つのカルボン酸基であるため、多種多様のカルボン酸が本方法で有用である。他の官能基が存在してもよく、カルボン酸分子上に2個以上のカルボン酸基が存在してもよい。典型的に本方法ではカルボン酸の有効pKは約2〜約5の範囲である。カルボン酸としては、例えば、ギ酸、プロピオン酸、クロル酢酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、酒石酸、およびクエン酸が挙げられる。費用的理由から、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、および安息香酸のような安価なカルボン酸が好ましい。無水物の形態(「氷酢酸」として知られる)で低価格で市販品として入手可能である酢酸が特に好ましい。
【0123】
カルボン酸と式8の塩基性アミンとを組み合わせることによって、カルボン酸のアミン塩が形成する。このアミン塩は、式7のイサト酸無水物化合物の添加の前に予め形成可能であるが、式7の化合物とカルボン酸との混合物中に式8のアミンを計り入れることによって、その場でこのアミン塩を発生させることもできる。いずれの添加の様式であっても、反応間の混合物の有効pHを約3〜約7に維持することが一般に最良である。
【0124】
混合物の有効pHは、式8のアミンと組み合わせられたカルボン酸の緩衝効果から得られるものであるため、カルボン酸対式8のアミンのモル比を調節することによって、カルボン酸の有効pKによって有効pHを調節することができる。典型的に、式8のアミン対カルボン酸のモル量は約0.6〜約3の範囲であり、より典型的には約0.8〜約3の範囲である。特に組み合わせの様式が、式7のイサト酸無水物化合物とカルボン酸との混合物中への式8のアミンの計り入れを伴う場合、式8のアミン対カルボン酸のモル比は、好ましくは約0.95〜約3である。組み合わせの様式が式7の化合物の添加の前のアミン塩の形成を伴う場合、式8のアミン対カルボン酸のモル比は、好ましくは約0.8〜約1.05である。ほぼ等モル比(例えば、約0.95〜約1.05)の式8のアミン対カルボン酸が使用される限り、形成したアミン塩は、典型的に、式7の化合物に対して約1.1〜約5モル当量の比率で使用される。どのように成分が混合されるかにかかわらず、最適な転化を得るためには、式8のアミン対式7のイサト酸無水物化合物のモル比は、効率や経済的理由から約1.1〜約1.5が好ましいが、少なくとも1.0であるべきである。式8のアミン対式7の化合物のモル量は、特にほぼ等モル比(例えば、約0.95〜約1.05)のアミン対酸が使用される場合、実質的に1.5より大きくてもよい。
【0125】
反応媒体が実質的に無水である場合、最も高い生産収率および純度が達成される。したがって、反応媒体は典型的に、式7および式8の実質的に無水の化合物とカルボン酸とから形成される。好ましくは、反応媒体および形性物質は、約5質量%以下、より好ましくは約1質量%以下、最も好ましくは約0.1質量%以下の水を含有する。カルボン酸が酢酸である場合、氷酢酸の形態が好ましい。
【0126】
スキーム3の反応は典型的に液相で行われる。多くの場合、式2、式7および式8の化合物とカルボン酸以外の溶媒を用いずに反応を行うことができる。しかしながら、好ましい手順では、反応物を懸濁し、少なくとも部分的に溶解することができる溶媒の使用を伴う。好ましい溶媒は、反応成分と非反応性であり、誘電率が約5以上であって、アルキルニトリル、エステル、エーテルまたはケトンのような溶媒である。好ましくは、溶媒は、実質的に無水の反応媒体の達成を容易にするために、実質的に無水であるべきである。溶媒対式7の化合物の質量比は、効率や経済的理由から、典型的に約1〜約20、好ましくは約5である。
【0127】
スキーム3の反応の副産物として二酸化炭素が形成する。形成した二酸化炭素の大部分は反応媒体から気体として放出する。式8のアミンを含有する反応媒体中への式7の化合物の添加、または式7の化合物を含有する反応媒体中への式8のアミンの添加は、好ましくは、二酸化炭素の放出の制御を促進するような速度および温度で実行される。反応媒体の温度は典型的に約5℃〜75℃であり、より典型的には約35℃〜55℃である。
【0128】
pH調整、抽出、蒸発、結晶化およびクロマトグラフィーを含む当該分野で既知の標準技術によって、式2の生成物を単離することができる。例えば、式8の出発化合物に対して約3〜15質量部の水で反応媒体を希釈することができ、酸性または塩基性不純物の除去を最適化するために酸または塩基によって場合によりpHを調整することができ、水相を場合により分離することができ、そして減圧下での蒸留または蒸発によって有機溶媒の大部分を除去することができる。式2の化合物は典型的に周囲温度で結晶固体であるため、一般的にそれらをろ過、場合により続いて水で洗浄し、その後乾燥させることによって最も容易に単離される。Xが塩素である参照例2によってスキーム3の方法は例示される。
【0129】
スキーム4に示すように、トルエンまたはテトラヒドロフランなどの適切な溶媒中で、ホスゲン、あるいはトリホスゲンまたはクロロ炭酸アルキル(例えば、クロロ炭酸メチル)などのホスゲン同等物によるアントラニル酸の処理を含む環化反応を経て、式2a(RがORであり、RがHである)のアントラニル酸から式7のイサト酸無水物を製造することができる。この方法については、スキーム4に関連性のある特定の実施例を含むPCT特許公報、国際公開第2006/068669号パンフレットに記載されている。またCoppola,Synthesis 1980,(7),505−536およびFabisら,Tetrahedron 1998,54(36),10789−10800を参照のこと。
【化10】

【0130】
本発明のもう1つの態様において、スキーム5に示すように、少なくとも1種の式9の化合物、少なくとも1種の金属還元剤およびジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(式10)を接触させることを含んでなる方法によって式4の化合物を製造する。
【化11】

【0131】
スキーム5の方法において、式9は、1−クロロナフタレンまたは1−クロロ−および2−クロロナフタレンの混合物であり得る。1種または複数種の式9の化合物は、商業供給源から最も都合よく入手される。様々な商業的供給元から1−クロロナフタレンは提供されるが、1−クロロ−および2−クロロナフタレンの異性体混合物としてのみ入手可能であることが多い。例えば、Fisher Scientific(Pittsburgh,Pennsylvania)およびAldrich Chemical(Milwaukee,WI)から、1−および2−異性体の90:10混合物としてテクニカルグレードの1−クロロナフタレンが供給される。当業者は、1−クロロ−および2−クロロナフタレンの混合物を分離して、1−クロロ異性体を単離することができることを認識する。しかしながら、スキーム5の方法では、商業供給源から入手された1−クロロナフタレンを、異性体を分離せずに使用することが最も都合がよい。1−クロロ−および2−クロロナフタレンの混合物を使用する場合、好ましくは、混合物には、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の1−クロロナフタレンが含まれる。単一の異性体(すなわち、1−クロロナフタレン)が使用されるか、または異性体の混合物が使用されるかに関係なく、式10の化合物に対する式9の全モル比は、典型的に約1〜約3、好ましくは約2〜約2.5、最も好ましくは約2〜約2.1である。
【0132】
ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(式10)は商業的に入手可能であり、また塩化ニッケル(II)六水化物およびトリフェニルホスフィンなどの商業的に入手可能な出発物質からも製造可能である。例えば、Brandsmaら,Synthetic Communications 1990,20(20),3153−3156を参照のこと。ジクロロビス−(トリフェニルホスフィン)ニッケル(式10)が商業供給源から入手されるか、合成されるかどうかに関係なく、本方法で使用されるそのモル比は式9に対して典型的に約0.3〜約1、好ましくは約0.4〜約0.5である。
【0133】
本方法の金属還元剤は、例えば、亜鉛またはマンガン、好ましくは亜鉛である。金属還元剤として元素亜鉛が使用される場合、1種または複数種の式9の化合物に対して約1〜約5のモル比が最も好ましく、約1〜約2のモル比がより好ましい。
【0134】
スキーム5の方法は、典型的に適切な有機溶媒中で実行される。適切な有機溶媒としては、金属還元剤に対して不活性である様々な極性有機溶媒が挙げられる。本方法の文脈中での極性有機溶剤という用語は、水中で非常に溶解性であるか混合可能な有機溶媒を意味する。極性有機溶媒としては、アルコール、特にメタノールおよびエタノールなどの低級アルカノール、テトラヒドロフランおよびp−ジオキサンなどのエーテル、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド、ならびにアセトニトリルなどのニトリルが挙げられる。溶媒として特に注目に値するのはエタノールであり、式4化合物の高い収率を提供する。式4の化合物が反応溶媒中に存在する雰囲気酸素と反応し得るため、典型的に無酸素溶媒を使用する。無酸素溶媒を入手するための技術は、スキーム1の方法に関してすでに検討されたものを含む。
【0135】
式4の化合物を製造するため、添加の好ましい順番は、少なくとも1種の金属還元剤と、少なくとも1種の式9の化合物と、適切な有機溶媒との混合物に、式10の化合物を添加することを含んでなる。さらに、適切な有機溶媒中の式10の化合物のスラリーを、少なくとも1種の金属還元剤と、少なくとも1種の式9の化合物と、適切な有機溶媒との混合物に添加することは、添加の様式として好ましい。上記添加のいずれの様式に関しても、反応混合物への式10の化合物の添加によって発熱性反応が引き起こるため、添加の速度は、好ましくは、反応混合物の温度が約25〜80℃、より好ましくは約50〜70℃に維持されるような速度である。式10の化合物の添加の速度次第で、反応混合物は固体によって非常に濃厚になり得るが、反応温度が上記のように維持される添加速度によってこの問題は軽減され、生成物収率および純度を最大にする攪拌可能な混合物(すなわち、従来の手段で攪拌可能)を提供する。反応時間は温度次第で異なるが、典型的に、反応混合物の温度が約50〜80℃である場合、反応は1時間で完了する。
【0136】
スキーム5の反応で、得られる生成物は、式9の出発物質次第で、クロロ−1−ナフタレニルビス−(トリフェニルホスフィン)ニッケルまたはクロロナフタレニルビス−(トリフェニルホスフィン)ニッケルの1−および2−異性体の混合物である。異性体の組成に関係なく、式4生成物は、濾過、抽出、蒸発および結晶化を含む当該技術で既知の標準技術によって単離可能である。例えば、式4の化合物は周囲温度で結晶質であるため、反応混合物を冷却した後、生成物を濾過によって収集することができる。場合により、収集した固体生成物を、水、希釈酸性水溶液および有機溶媒で洗浄し、乾燥させることができる。
【0137】
本方法は、約1〜約2時間で、典型的に高い収率(例えば約90〜95%)で式4の化合物を製造するための効率的な手段を提供する。本方法の顕著な特徴は、これらの化合物の製造に関する以前から既知の方法より良好な反応発熱性の制御を提供するための試薬の添加の順番を使用することができることである。さらに、式10の化合物の好ましい添加の順番によって反応温度の都合のよい制御が可能であり、そして従来の手段で容易に撹拌される反応混合物を提供する。これらの特徴のため、本方法は特に大規模な商業用製造に適切である。スキーム5の方法を下記の実施例1に例示する。
【0138】
本発明のもう1つの態様において、スキーム1の方法によって製造された式1の化合物は、式5の化合物を製造するための中間体として有用である。式5の化合物は、例えば、PCT特許公報、国際公開第2003/015518号パンフレットおよび国際公開第2006/055922号パンフレットに記載されるように、殺虫剤として有用である。
【化12】

[式中、RはCHまたはClであり、
はH、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、
ZはCRまたはNであり、
はCl、Br、CF、OCFHまたはOCHCFであり、
はF、ClまたはBrであり、
はH、FまたはClであり、
はH、F、ClまたはBrである]
【0139】
式1の化合物から式5の化合物を製造するために、様々な経路が可能である。スキーム6に概説するように、そのような方法の1つでは、式1a(RがORであり、RがHである式1)の化合物と式11のピラゾール−5−カルボン酸とを結合させ、式12のシアノベンゾキサジノンを得ることを含む。シアノベンゾキサジノンと式8のアミンとの後続反応によって、式5の化合物が得られる。最初の工程の条件には、トリエチルアミンまたはピリジンなどの第三級アミンの存在下での式11のピラゾールへの塩化メタンスルホニルの連続添加、それに続く式1aの化合物の添加、そして第三級アミンと塩化メタンスルホニルの2回目の添加が含まれる。そのままで、またはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、またはクロロホルムを含む様々な適切な溶媒中で、室温から溶媒の還流温度までの範囲の最適な温度で反応を実行することができる。第2の工程、すなわち、ベンゾキサジノンとアミンとを反応させてアントラニルアミドを生成する工程については化学文献に詳しく記載されている。ベンゾキサジノンの化学的性質についての概要に関しては、Jakobsenら,Biorganic and Medicinal Chemistry 2000,8,2095−2103およびその引用文献を参照のこと。また、G.M.Coppola,J.Heterocyclic Chemistry 1999,36,563−588も参照のこと。さらに、スキーム6に示される一般法を教示し、スキーム6に関連する実験例を含むPCT特許公報、国際公開第2004/067528号パンフレットも参照のこと。
【0140】
【化13】

【0141】
もう1つの式5の化合物の製造方法をスキーム7に示す。この方法では、本明細書に参照として全体的に組み込まれるPCT特許公報、国際公開第2006/062978号パンフレットに教示された一般法に従って、式1b(RがNHRである式1)の化合物、式11のピラゾールおよび塩化スルホニルを組み合わせることによって式5の化合物を製造する。
【化14】

【0142】
国際公開第2006/062978号パンフレットに記載されるように、この形質転換には様々な反応条件が可能である。典型的に、溶媒および塩基の存在下、式1bの化合物と式11の化合物との混合物に塩化スルホニルを添加する。塩化スルホニルは一般的に、式RS(O)Clで表され、式中、Rは炭素をベースとする基である。典型的に本方法では、Rは、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、またはハロゲン、C〜Cアルキルおよびニトロからなる群から独立して選択される1〜3個の置換基によって場合により置換されていてもよいフェニルである。市販品として入手可能な塩化スルホニルとしては、塩化メタンスルホニル(RがCHである)、塩化プロパンスルホニル(Rが(CHCHである)、塩化ベンゼンスルホニル(Rがフェニルである)、そして塩化p−トルエンスルホニル(Rが4−メチルフェニルである)が挙げられる。費用がより低いこと、添加の容易さ、および/または廃物の少なさという理由から、注目すべきは塩化メタンスルホニルである。完全な転化を得るためには、式11の化合物1モルあたり、少なくとも1モル当量の塩化スルホニルが化学量論的に必要とされる。典型的に、塩化スルホニル対式11の化合物のモル比は約2.5以下、より典型的に約1.4以下である。
【0143】
式1bおよび式11の出発化合物と塩化スルホニルがそれぞれ少なくとも部分的に溶解性である組み合わせられた液相中で、それぞれが互いに接触した時に式5の化合物が形成する。式1bおよび式11の出発化合物は典型的に通常の周囲温度で固体であるため、これらの出発化合物の溶解性が高い溶媒を使用することによって、本方法は最も満足に実行される。したがって、典型的に本方法は溶媒を含んでなる液相中で実行される。式11のカルボン酸の溶解性が非常に低い場合、塩基の添加によって形成したその塩が溶媒中でより高い溶解性を有することもある。本方法に適切な溶媒としては、アセトニトリルおよびプロピオニトリルなどのニトリル、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)およびメチルブチルケトンなどのケトン、ジクロロメタンおよびトリクロロメタンなどのハロアルカン、エチルエーテル、メチル第三級ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)およびp−ジオキサンなどのエーテル、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素、トリアルキルアミン、ジアルキルアニリンおよび場合により置換されていてもよいピリジンなどの第三級アミン、ならびに上記の混合物が挙げられる。注目すべき溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、アセトン、MEK、ジクロロメタン、メチル第三級ブチルエーテル、THF、p−ジオキサン、トルエンおよびクロロベンゼンが挙げられる。優れた収率および/または純度で生成物が得られることが多いため、特に注目すべき溶媒はアセトニトリルである。
【0144】
本方法の反応では副産物として塩化水素が生じ、これは式1b、式5および式11の化合物の塩基中心と結合するため、少なくとも1種の添加された塩基が存在する条件で、この方法は最も満足に実行される。塩基は、カルボン酸と塩化スルホニル化合物およびアントラニルアミドとの構成的な相互作用も促進し得る。添加された塩基と式11のカルボン酸との反応によって塩が生じ、この塩は反応媒体中でカルボン酸よりも高い溶解性を有する。塩基は同時に添加されても、交互に添加されても、または塩化スルホニルの添加後に添加されてもよいが、塩基は典型的に塩化スルホニルの添加前に添加される。第三級アミンなどのいくつかの溶媒も塩基として作用し、これらが溶媒として使用される場合、塩基として非常に化学量論的過剰である。塩基が溶媒として使用されない場合、塩基対塩化スルホニルの公称モル比は典型的に約2〜約2.2であり、好ましくは約2.1〜約2.2である。好ましい塩基は、置換ピリジンを含む第三級アミンである。より好ましい塩基としては、2−ピコリン、3−ピコリン、2,6−ルチジンおよびピリジンが挙げられる。式11のカルボン酸との塩がアセトニトリルなどの溶媒中で非常に溶解性であることが多いため、特に注目すべき塩基は3−ピコリンである。
【0145】
結晶化、濾過および抽出を含む当業者に既知の方法によって、式5の化合物を反応混合物から単離することができる。PCT特許公報、国際公開第2006/062978号パンフレットには、スキーム7の方法に関連する具体例が開示されている。またスキーム7の方法を下記の実施例5に例示する。
【0146】
ハロゲン化試薬による処理によって、5−オキソ−3−ピラゾリジンカルボキシレートから3−ハロ−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−カルボキシレートを得ることによって、Rがハロゲン(例えばClまたはBr)である式11のピラゾール−5−カルボン酸を製造されることができる。3−ハロ−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−カルボキシレートは、その後、酸化剤によって処理して式11の酸のエステルを提供することができる。次いでこのエステルを、対応する酸へと転化することができる。使用可能なハロゲン化剤としては、例えば、オキシハロゲン化リン、トリハロゲン化リン、ペンタハロゲン化リン、塩化チオニル、ジハロトリアルキルホスホラン、ジハロジフェニルホスホラン、塩化オキサリルおよびホスゲンが挙げられる。使用可能な酸化剤としては、例えば、過酸化水素、有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、モノ過硫酸カリウム(例えば、Oxone(登録商標))または過マンガン酸カリウムが挙げられる。ハロゲン化および酸化の方法、ならびに出発化合物の5−オキソ−3−ピラゾリジンカルボキシレートの製造手順の記載に関しては、PCT特許公報、国際公開第2003/016283号パンフレット、国際公開第2004/087689号パンフレットおよび国際公開第2004/011453号パンフレットを参照のこと。エステルをカルボン酸へと転化するために、化学文献に報告された様々な有用な方法を使用することができ、無水条件での求核性開裂、または酸もしくは塩基のいずれかの使用を含む加水分解が挙げられる(方法の概要に関しては、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2nd ed.,John Wiley & Sons,Inc.,New York,1991,第224〜269頁を参照のこと)。相当するエステルから式11のカルボン酸を製造するためには、塩基触媒作用による加水分解法が好ましい。適切な塩基としては、アルカリ金属水酸化物(リチウム、ナトリウム、またはカリウム金属を含む)の水酸化物が挙げられる。例えば、エステルを水とメタノールなどのアルコールとの混合物中に溶解することができる。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムによる処理の時、エステルはケン化して、カルボン酸のナトリウム塩またはカリウム塩が得られる。塩化水素酸または硫酸などの強酸による酸性化によってカルボン酸が得られる。PCT特許公報、国際公開第2003/016283号パンフレットには、塩基触媒作用による加水分解法を説明するエステルから酸への転化のための関連する実験例が記載されている。
【0147】
あるいは、酸触媒作用による脱水反応を経由して、4,5−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−1H−ピラゾール−5−カルボキシレートから式11のピラゾール−5−カルボン酸を製造することができる。この脱水反応によってエステルが得られ、次いで、このエステルを式11の酸へと転化することができる。典型的な反応条件としては、0〜100℃の温度で酢酸などの有機溶媒中、酸、例えば硫酸による4,5−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−1H−ピラゾール−5−カルボキシレートの処理が含まれる。この方法については、PCT公報、国際公開第2003/016282号パンフレットに記載されている。上記方法を使用して、エステルから酸への転化を実施することができる。また、国際公開第2003/016282号パンフレットには、エステルから酸への転化に関する関連実験例も記載されている。
【0148】
以下のスキーム8に示すように、式1c(RがOR4であり、R4がHまたはC1〜C4アルキルである式1)の対応する酸またはエステルから式1bのアントラニル酸アミドを製造することもできる。カルボン酸からアミドを形成するためには、カップリング剤(例えば、四塩化ケイ素、あるいはしばしば1−ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在下で、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)の添加が典型的に必要である。アントラニル酸からアントラニル酸アミドの製造については、M.J.Kornet,Journal of Heterocyclic Chemistry 1992,29(1),103〜5;PCT特許公報、国際公開第2001/66519−A2;T.Asanoら,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2004,14(9),2299〜2302;H.L.Birchら,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2005,15(23),5335〜5339;およびD.Kimら,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2005,15(8),2129〜2134に開示されている。同様に、T.アサノらも、N−保護アニリン中間体をとおして、または4H−3,1−ベンゾキサジン−2,4(1H)−ジオン(イサト酸無水物)中間体を通して、アントラニル酸からアントラニル酸アミドの製造について報告する。エステルからアミドの形成はしばしば、エチレングリコールなどの極性溶媒中で適切なアミンとともにエステルを加熱することを伴う。アントラニル酸エステルからアントラニル酸アミドへの転化のための有用な手順については、PCT特許公報、国際公開第2006/062978号パンフレットに記載されている。また、E.B.Skiboら,Journal Medicinal Chemistry 2002,45(25),5543〜5555には、シアン化ナトリウム触媒を使用して、相当するアントラニル酸エステルからのアントラニル酸アミド製造が開示されている。
【0149】
【化15】

【0150】
スキーム6およびスキーム7の方法は、式1の化合物から式5のカルボキサミドへの転化のための数多くの方法のうちのたった2つの実例である。カルボン酸とアミンからカルボキサミドを製造するための多種多様な一般法が当該分野で既知である。一般的概要としては、M.North,Contemporary Org.Synth.1995,2,269〜287を参照のこと。PCT特許公報、国際公開第2003/15518号パンフレットに一般に開示されるように、特定の方法には、典型的にジクロロメタンまたはN,N−ジメチルホルムアミドなどの不活性溶媒中、1,1’−カルボニルジイミダゾール、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸塩化物またはベンゾトリアゾル−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートなどの脱水カップリング剤、またはポリマー−結合ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのポリマー結合類似体試薬の存在下で式1bの化合物を式11の化合物と接触させることが含まれる。また、触媒量のN,N−ジメチルホルムアミドの存在下で式11化合物を塩化チオニルまたは塩化オキサリルと接触させること、次いで、典型的にテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチルエーテルまたはジクロロメタンなどの不活性溶媒中、アミン塩基(例えば、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンおよびポリマー支持類似体)または水酸化物もしくは炭酸塩(例えば、NaOH、KOH、NaCO、KCO)などの酸捕捉剤の存在下で、誘導された塩化アシルと式1bの化合物とを接触させることによる式11の化合物の塩化アシル誘導体の製造方法も国際公開第2003/15518号パンフレットに開示されている。結晶化、ろ過および抽出を含む当業者に既知の方法によって、反応混合物から式5の生成物化合物を単離することができる。
【0151】
さらに詳述しなくても、当業者は、上記を使用して、本発明をその完全な範囲まで利用することができると思われる。したがって、以下の実施例は単なる説明として解釈されるべきであり、その開示をいずれかの様式に制限するものではない。以下の実施例の工程は、全体的な合成転換における各工程の手順を例示するものであり、他の実施例または工程に手順が記載されている特定の準備工程によって必ずしも各工程の出発物質が製造される必要はない。以下の実施例において、「無酸素」という用語は、溶媒と関連して使用される場合、適度の真空を加えながら還流下で溶媒を加熱し、次いで溶媒を含有するフラスコに窒素を用いて圧力を加えることを含む技術によって、使用前に雰囲気酸素が除去された溶媒を指す。実施例1〜4において、全試薬を添加した後、真空ポンプを使用して反応容器から酸素を除去し、次いで窒素ガスを使用して容器を気圧まで再加圧した。典型的に、真空を加えながら、真空化/再加圧サイクルを3回繰り返した。H NMRスペクトルはテトラメチルシランから低磁場へppmで報告され、sは一重項を意味し、dは二重項を意味し、mは多重項を意味し、そしてbr sは広幅一重項を意味する。
【実施例】
【0152】
参照例1
2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミド(式2の化合物)の製造
メカニカルスターラー、熱電対、凝縮器およびTeflon(登録商標)フルオロポリマー管(内径0.16cm×外径0.32cmまたは内径1/16インチ×外径1/8インチ)(管の端部が反応混合物の表面下に浸るように配置される)を備えた1000mLフラスコに、酢酸(226mL)を充填した。水(85g)中の水酸化ナトリウム(50%、25g)水溶液を15分かけて添加し、次いで2−アミノ−N,3−ジメチルベンズアミド(50g、0.305mol)(製造方法については、PCT公報、国際公開第2006/062978号パンフレットを参照のこと)を添加し、混合物を55℃で加熱した。1つの口に浸漬管が取り付けられた200mL2つ口フラスコに液体臭素(50.1g)を充填し、そして他の口を1000mLフラスコのTeflon(登録商標)管に接続させた。次いで、1時間につき約0.012m(0.4立方フィート)の速度で、液体臭素の表面下で浸漬管を通して窒素を2.5時間流した。その間、臭素蒸気は200mL2つ口フラスコから流れた窒素気体に同伴し、Teflon(登録商標)管を通って反応混合物に入った。次いで、臭素蒸気の添加の間とその後30分間は反応温度を約55℃に保持し、次いで45℃まで冷却し、一晩攪拌した。水(88mL)中水酸化ナトリウム水溶液(50%、52g)を0.8mL/分の速度で反応混合物に添加した。水酸化ナトリウム溶液の総体積の約10%が添加されたら、添加を停止し、反応混合物を45℃で1時間攪拌した。1時間後、0.8mL/分の速度で残りの水酸化ナトリウム溶液を添加した。添加の完了後、反応混合物を45℃で30分間攪拌し、次いで10℃まで冷却し、1時間攪拌した。混合物をろ過し、回収した固体をメタノール(130mL)および水(260mL)で洗浄し、次いで45℃の真空オーブン中で一定質量となるまで乾燥させ、133〜135℃で融解する固体として表題の化合物を得た(67g、HPLCによる純度99.4面積%、収率89.7%)。
H NMR(DMSO−d)δ8.30(m,1H)、7.49(d,1H)、7.22(d,1H)、6.35(br s,2H)、2.70(d,3H)、2.06(s,3H)。
【0153】
参照例2
2−アミノ−5−クロロ−N,3−ジメチルベンズアミド(式2の化合物)の製造
温度計および窒素バブラーを備えた300mLフラスコに、酢酸エチル(100mL)および酢酸(12.6g、0.21mol)を充填した。35℃未満の温度を維持するように冷却された液体混合物の表面下で無水メチルアミン(6.3g、0.20mol)を添加し、次いで反応混合物を35〜40℃に維持しながら、6−クロロ−8−メチル−2H−3,1−ベンゾオキサジン−2,4(1H)−ジオン(21g、0.10mol)(製造方法についてはスキーム4を参照のこと)を分割して添加した。6−クロロ−8−メチル−2H−3,1−ベンゾオキサジン−2,4(1H)−ジオンの添加完了後、温度を40〜45℃に維持し、そして反応の経過をHPLC分析によって監視した。反応混合物の分析によって、0.5%以下の6−クロロ−8−メチル−2H−3,1−ベンゾオキサジン−2,4(1H)−ジオンが残る(約20分)ことが示された場合、水(50mL)を反応混合物に添加した。蒸留ヘッドを取り付け、適度な真空を加え、そして約46〜60℃の内部温度および約30〜50kPaの圧力で酢酸エチルを蒸留した。蒸留によって除去された酢酸エチルを置換するために、反応器の最初の液体体積を維持するように水を添加した。著しい量の水が蒸留し始めた時、水性スラリーを10℃まで冷却した。固体を濾過によって収集し、60℃および13.3kPaで乾燥し、白色結晶固体として表題の化合物を得た(19g、収率約95%、HPLC分析のピーク面積による純度は98%より高い)。
【0154】
実施例1
クロロ−1−ナフタレニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルおよびクロロ−2−ナフタレニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(式4の化合物)の混合物の製造
70℃の無酸素エタノール(136mL)中の亜鉛(325メッシュ、12g、0.185mol)の撹拌混合物に、1−クロロナフタレン(Fisher Scientific、1−および2−異性体の約90:10混合物、30g、0.185mol)を添加した。無酸素エタノール(136mL)中のジクロロビス−(トリフェニルホスフィン)ニッケル(60g、0.091mol)のスラリーを、65℃に維持された反応混合物に30分かけて添加した。添加の完了後、撹拌された反応混合物を65℃に1時間維持した。反応混合物を20℃に冷却し、混合物の温度が20〜30℃に維持されるような速度で塩酸(30%、72mL)を滴下した。添加の完了後、反応混合物を25℃で1時間撹拌し、その後、水素の発生は終了した。反応混合物を濾過し、そして収集した固体を、エタノール(180mL)、塩酸(1N、2×180mL)、エタノール(2×180mL)およびヘキサン(180mL)で連続して洗浄した。固体を真空オーブン中50℃で一晩乾燥させると、147℃で明白な分解を伴って溶解する暗黄色固体(62.1g、収率90.8%)として表題の化合物の混合物を得た。
IR(nujol):1481、1434、1306、1243、1186、1095、1027、999cm−1
【0155】
実施例2
2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(式1の化合物)の製造
2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミド(参照例1の方法によって製造した)(20.0g、0.082mol)、シアン化カリウム(10.4g、0.159mol)および無酸素エタノール(60mL)の撹拌混合物を45℃まで加熱した。この反応混合物に、無酸素エタノール(60mL)中のクロロナフタレニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(すなわち実施例1の生成物、1−および2−異性体の混合物)(4.01g、5.36mmol)のスラリーを4回に分割して添加した。各添加は約18分で完了し、そして最初の添加の後、その後の添加を前回の添加が完了した約50分、75分および105分後に開始した。撹拌を容易にするために、2回目の添加後、無酸素エタノール(15mL)を反応混合物に添加した。4回目の添加が完了した後、反応混合物を45℃で5.7時間撹拌し、次いで、さらに無酸素エタノール(10mL)中のクロロナフタレニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0.5g、0.67mmol)を10分かけて添加した。45℃で一晩撹拌した後、トルエン(100mL)を添加し、そして溶媒を減圧下で蒸発させた。さらにトルエン(150mL)を添加し、そして溶媒を減圧下で再び蒸発させた。得られた固体をトルエン(120mL)中でスラリー化し、濾過し、そしてトルエン(100mL)および水(2×70mL)で洗浄した。固体を50℃の真空オーブン中で一晩乾燥させ、白色固体として表題の化合物を得た(12.68g、収率81.8%)。生成物の一部をアセトニトリルから再結晶し、204.0〜204.5℃で融解する分析試料を得た。
H NMR(DMSO−d)δ8.44(s,1H)、7.81(s,1H)、7.43(s,1H)、7.17(s,2H)、2.73(d,3H)、2.09(s,3H)。
【0156】
実施例3
2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドの第2の製造
2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミド(参照例1の方法によって製造した)(20.0g、0.082mol)、シアン化カリウム(10.4g、0.159mol)、トリフェニルホスフィン(0.28g、1.07mmol)および無酸素エタノール(60mL)の撹拌混合物を45℃で加熱した。この反応混合物に、無酸素エタノール(60mL)中のクロロナフタレニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(すなわち実施例1の生成物、1−および2−異性体の混合物)(4.0g、5.35mmol)のスラリーを4回に分割して添加した。各添加は約15分で完了した。最初の添加の後、その後の添加を前回の添加が完了した約75分後に開始した。撹拌を容易にするために、3回目の添加前に無酸素エタノール(15mL)を反応混合物に添加した。4回目の添加が完了した後、反応混合物を45℃で1.25時間撹拌し、次いで、さらに無酸素エタノール(10mL)中のクロロナフタレニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0.5g、0.67mmol)を10分かけて添加した。45℃でさらに1.5時間撹拌した後、反応混合物のガスクロマトグラフィー分析によって、2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミドの約96%の変換が示され、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチル−ベンズアミドが主生成物であった。45℃で一晩撹拌した後、キシレン(50mL)を添加し、混合物を75℃で加熱した。1時間後、混合物を25℃まで冷却し、濾過した(湿潤ケーキを形成した)。濾液を減圧下で蒸発させ、そして残渣をキシレン(40mL)中でスラリー化し、次いで、以前に得られた湿潤ケーキを通して濾過した。湿潤ケーキをキシレン(2×30mL)ですすぎ、次いで水(120ml)中に懸濁し、そして空気に暴露しながら45℃で1時間加熱した。25℃まで冷却した後、混合物を濾過し、そして固体を水(2×30mL)で洗浄し、次いで50℃の真空オーブン中で一晩乾燥させ、白色固体として表題の化合物を得た(13.7g、収率88%)。
H NMRスペクトルは、実施例2の生成物に関して報告されたものと同様であった。
【0157】
実施例4
2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドの第3の製造
2−アミノ−5−クロロ−N,3−ジメチルベンズアミド(参照例2の方法によって製造した)(32.6g、0.164mol)、シアン化カリウム(使用前に粉砕した、16g、0.246mol)、トリフェニルホスフィン(0.56g、2.13mmol)、無酸素エタノール(100mL)およびキシレン(40mL)の撹拌混合物を45℃で加熱した。この反応混合物に、無酸素エタノール(100mL)中のクロロナフタレニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(すなわち実施例1の生成物、1−および2−異性体の混合物)(12g、16mmol)のスラリーを6回に分割して添加した。各添加は約15分で完了した。最初の添加が完了した約45分後、2回目の添加を開始し、そしてその後の全ての添加を前回の添加が完了した約105分後に添加した。反応混合物を45℃で一晩撹拌した後、ガスクロマトグラフィー分析によって、2−アミノ−5−クロロ−N,3−ジメチルベンズアミドの約95.3%の変換が示され、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズ−アミドが主生成物であった。無酸素エタノール(40mL)を反応混合物に添加し、そして混合物を75℃で加熱した。1時間後、混合物を25℃まで冷却し、濾過し、湿潤ケーキを形成した。これをキシレン(30mL)で洗浄した。濾液を減圧下で蒸発させ、そして、50℃まで加熱したキシレン(30mL)を残渣に添加した。25℃まで冷却した後、以前に得られた湿潤ケーキを通して混合物を濾過し、これをキシレン(2×40mL)ですすいだ。湿潤ケーキを水(240mL)中に懸濁し、そして懸濁液を空気に暴露しながら45℃で1時間加熱した。25℃まで冷却した後、混合物を濾過し、そして固体を50℃の真空オーブン中で一晩乾燥させ、白色固体として表題の化合物を得た(25.6g、収率82.5%、HPLC分析による純度は95%より高い)。
H NMRスペクトルは、実施例2の生成物に関して報告されたものと同様であった。
【0158】
実施例5
3−ブロモ−1−(3−クロロ−2−ピリジニル)−N−[4−シアノ−2−メチル−6−[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(式5の化合物)の製造
アセトニトリル(16mL)中、3−ブロモ−1−(3−クロロ−2−ピリジニル)−1H−ピラゾール−5−カルボン酸(製造方法については、PCT特許公報、国際公開第2003/015519号パンフレットを参照のこと)(純度99.0%、3.03g、0.01mol)および2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(実施例2の方法によって製造した)(1.99g、0.01mol)の混合物に3−ピコリン(2.92mL、0.03mol)を添加した。この反応混合物に、20〜25℃で塩化メタンスルホニル(1.08mL、0.014mol)を滴化した。3時間撹拌後、20〜25℃の温度を維持しながら、水(7.5mL)を反応混合物に滴下した。15分後に濃塩酸(0.5mL)を添加し、そして反応混合物を20〜25℃で1時間撹拌した。混合物を濾過し、収集した固体をアセトニトリル−水(体積で87:13の混合物、2×2mL)で、次いで水(2×2mL)で洗浄し、次いで窒素下で乾燥させ、206〜208℃で融解するオフホワイト色固体として表題の化合物を得た(4.80g、96.6%の水のないアッセイに基づく修正収率92.6%)。
H NMR(DMSO−d)δ10.52(br s,1H)8.50(dd,1H)、8.36(m,1H)、8.17(dd,1H)、7.88(d,1H)、7.76(d,1H)、7.62(m,1H)、7.41(s,1H)、2.66(d,3H)、2.21(s,3H)。
【0159】
表1に、本発明の方法に従って式1の化合物を製造するための特定の変換を示す。表1および以下の表中、tは第三級を意味し、sは第二級を意味し、nはノルマルを意味し、iはイソを意味し、cはシクロを意味し、Meはメチルを意味し、Etはエチルを意味し、Prはプロピルを意味し、そしてBuはブチルを意味する。基の連結についても同様に省略し、例えば、「c−PrCH」はシクロプロピルメチルを意味する。
【0160】
【表1】

【0161】
【表2】

【0162】
【表3】

【0163】
【表4】

【0164】
表2に、本発明の方法に従って、式2の化合物から式5の化合物を製造するための特定の変換を示す。式1の化合物から式5の化合物への転化は、例えば、スキーム7の方法に従って、アセトニトリルなどの溶媒および3−ピコリンなどの塩基の存在下、塩化メタンスルホニルなどの塩化スルホニルを使用することによって達成することができる。これらの特定の変換に関して、MはKである。
【0165】
【表5】

【0166】
【表6】

【0167】
【表7】

【0168】
【表8】

【0169】
【表9】

【0170】
【表10】

【0171】
【表11】

【0172】
【表12】

【0173】
【表13】

【0174】
【表14】

【0175】
【表15】

【0176】
【表16】

【0177】
【表17】

【0178】
【表18】

【0179】
【表19】

【0180】
【表20】

【0181】
【表21】

【0182】
【表22】

【0183】
【表23】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1
【化1】

[式中、
はNHRまたはORであり、
はCHまたはClであり、
はH、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、
はHまたはC〜Cアルキルである]の化合物の製造方法であって、
(1)式2
【化2】

[式中、XはBr、ClまたはIである]の化合物を
(2)少なくとも1つの式3
【化3】

[式中、Mはアルカリ金属である]の化合物、
および(3)少なくとも1つの式4
【化4】

の化合物と接触させることを含むが、ただし、XがClである場合、Rはメチルである方法。
【請求項2】
がNHRである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がCHであり、RがCHであり、XがBrまたはClである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
がナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの式4の化合物が、少なくとも約80%のクロロ−1−ナフタレニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルを含有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの式4の化合物が、少なくとも約90%のクロロ−1−ナフタレニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルを含有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式2の化合物、1つまたは複数の式3の化合物および1つまたは複数の式4の化合物を適した有機溶媒の存在下で接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
式2の化合物および1つまたは複数の式3の化合物を適した有機溶媒と接触させて混合物を形成し、次いでこの混合物に、適した有機溶媒中の1つまたは複数の式4の化合物のスラリーを添加する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
適した有機溶媒が、エタノール、キシレン、トルエンおよびN,N’−ジメチルホルムアミドから選択される1つまたはそれ以上の溶媒を含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
適した有機溶媒が少なくとも50質量%のエタノールを含有し、Mがカリウムである請求項8に記載の方法。
【請求項11】
(i)少なくとも1つの式9
【化5】

の化合物と(ii)少なくとも1つの金属還元剤との混合物を、(iii)ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと接触させることによる少なくとも1つの式4の化合物を製造することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
式4
【化6】

の化合物の製造方法であって、(i)少なくとも1つの式9
【化7】

の化合物と(ii)少なくとも1つの金属還元剤との混合物を、(iii)ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと接触させることを含む方法。
【請求項13】
少なくとも1つの式9の化合物が、少なくとも約80%の1−クロロナフタレンを含有する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの式9の化合物が、少なくとも約90%の1−クロロナフタレンを含有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1つまたは複数の式9の化合物および少なくとも1つの金属還元剤を適した有機溶媒と接触させて混合物を形成し、次いでこの混合物にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルを添加する請求項12に記載の方法。
【請求項16】
適した有機溶媒中のスラリーとしてジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルを、1つまたは複数の式9の化合物と、少なくとも1つの金属還元剤と、適した有機溶媒とから形成された混合物に添加する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
式1の化合物とのニッケル不純物の混合物からニッケル不純物を除去する方法であって、シアン化物水溶液の存在下で、混合物を酸素と接触させることを含む方法をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
シアン化物水溶液がシアン化ナトリウム、シアン化カリウムまたはそれらの混合物を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
式5
【化8】

[式中、
はCHまたはClであり、
はH、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、
ZはCRまたはNであり、
はCl、Br、CF、OCFHまたはOCHCFであり、
はF、ClまたはBrであり、
はH、FまたはClであり、
はH、F、ClまたはBrである]の化合物を、
式1
【化9】

[式中、
はNHRまたはORであり、
はHまたはC〜Cアルキルである]の化合物を使用して製造する方法であって、請求項1の方法によって上記式1の化合物を製造することを特徴とする方法。
【請求項20】
がCHであり、RがCHであり、RがBrであり、RがClであり、RがHであり、ZがNである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
式5
【化10】

[式中、
はCHまたはClであり、
はH、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり、
ZはCRまたはNであり、
はCl、Br、CF、OCFHまたはOCHCFであり、
はF、ClまたはBrであり、
はH、FまたはClであり、
はH、F、ClまたはBrである]の化合物を、式1
【化11】

[式中、
はNHRまたはORであり、
はHまたはC〜Cアルキルである]の化合物を使用して製造する方法であって、請求項1の方法によって製造した式1の化合物を上記式1の化合物として使用することを特徴とする方法。
【請求項22】
がCHであり、RがCHであり、RがBrであり、RがClであり、RがHであり、ZがNである請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2010−532365(P2010−532365A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515009(P2010−515009)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/067826
【国際公開番号】WO2009/006061
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】