説明

2−シアノ−3,3−ジフェニルプロパ−2−エン酸2−エチルヘキシルエステル内包微小カプセルおよびその微小カプセルを含有する化粧料

【課題】 高い紫外線防御効果を有しながら、界面活性剤を使用せずに各種化粧料に容易に配合できる紫外線吸収剤内包微小カプセル、および、その紫外線吸収剤を含有する使用感触に優れた化粧料を提供する。
【解決手段】 オルガノポリシロキサンとシリル化ペプチドとの重合物を壁膜とした微小カプセルに、2−シアノ−3,3−ジフェニルプロパ−2−エン酸2−エチルヘキシルエステルまたは2−シアノ−3,3−ジフェニルプロパ−2−エン酸2−エチルヘキシルエステルとそれ以外の紫外線吸収剤の一種以上の混合液を内包させて紫外線吸収剤として有用な微小カプセルを調製する。また、その微小カプセルを各種化粧料に配合して化粧料を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線吸収剤として2−シアノ−3,3−ジフェニルプロパ−2−エン酸2−エチルヘキシルエステル(別名オクトクリレン、以下オクトクリレンと記す)またはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上との混合液を内包するオルガノポリシロキサンとシリル化ペプチドの重合物を壁膜とした微小カプセル、および、その微小カプセルを含有する化粧料に関する。さらに詳しくは、特定のヒドロキシシランを縮重合したオルガノポリシロキサンとシリル化ペプチドの重合物を壁膜とし、光安定性が優れた紫外線吸収剤内包微小カプセルおよびその微小カプセルを含有する使用感触や保存安定性に優れた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサンは、熱的、機械的に安定である、耐光性を有する、生体不活性であるなどの優れた特性を有することから、広い分野で利用され、かつさらなる応用が期待されている。マイクロカプセルやナノカプセルなどの微小カプセルの分野においても、オルガノポリシロキサンまたはそれに類する材料を壁膜として用い微小カプセルを製造することが試みられている。例えば、本発明者らも、オルガノポリシロキサンとシリル化ペプチドの重合物を壁膜に用い、紫外線吸収剤を内包した微小カプセルを提案している(特許文献1)。
【0003】
化粧品に紫外線防御剤が配合される際には、一般に、UVB吸収剤とUVA吸収剤を併用して配合され、UVB吸収剤としてパラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、UVA吸収剤として4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンの組み合わせがよく使用されている。
【0004】
紫外線による皮膚に対する急性反応は、DNA傷害によるものであり、その原因波長は主としてUVBにあることが明らかになり、光に対してより安定で保存安定性に優れたUVB吸収剤が求められている。UVB吸収剤の中で、オクトクリレンは安定性に優れる紫外線吸収剤であるが、粘度が高くて扱いにくい上に、他の化粧料成分との相溶性が低い、化粧料に配合した場合使用感触が悪くなるなどの問題があった。
【特許文献1】特開平11−221459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、化粧料への配合が容易で、使用感触や保存安定性に優れ、しかも紫外線防御効果が高いオクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上との混合液を内包する微小カプセルおよびその微小カプセルを含有する化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、オルガノポリシロキサンとシリル化ペプチドとの重合物を壁膜とする微小カプセルに、紫外線吸収剤としてオクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上の混合液を内包させるときには、高い紫外線防御効果を有しながら、化粧料に配合しやすく、さらに、その微小カプセルを配合した化粧料は使用感触にも優れていることを見出し、本発明を完成するに到った。
【発明の効果】
【0007】
本発明のオクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上の混合液を内包するオルガノポリシロキサンとシリル化ペプチドとの重合物を壁膜とする微小カプセルは、カプセル化していないオクトクリレンやオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上の混合液に比べて粘度が低く、各種化粧料への配合が容易である。また、オクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上の混合液を内包する微小カプセルを含有する本発明の化粧料は、オクトクリレンをそのまま配合した化粧料に比べ、従来安定に配合することが困難であった処方系で、界面活性剤を使用せずにより安定な処方が可能になり、さらに使用感触が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、オクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上の混合液を内包する微小カプセルとは、オルガノポリシロキサンとシリル化ペプチドとの重合物を壁膜とし、芯物質としてオクトクリレンまたはオクトクリレンとオクトクリレン以外の紫外線吸収剤の一種以上との混合液を内包する微小カプセルであり、この微小カプセルは、前記特許文献1に記載の方法で製造することができる。
【0009】
微小カプセルの壁膜となるオルガノポリシロキサンの原料としては、例えば、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシランなどが挙げられる。また、シリル化ペプチドとしては、例えば、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−トリヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解タンパク、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解タンパクなどが挙げられ、特開平8−59424号公報、特開平8−67608号公報などに記載の方法で製造できる。
【0010】
上記のオルガノポリシロキサンの原料と上記のシリル化ペプチドとを用いて前記の特許文献1の方法で微小カプセルを製造する場合、オクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上との混合液は、カプセル全質量に対して0.01〜99質量%の範囲で内包させることができるが、微小カプセルの調製のしやすさや、調製した微小カプセルの紫外線吸収効果を考慮すると、オクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上との混合液の内包率は微小カプセル全質量の80〜95%が好ましい。すなわち、内包させる紫外線吸収剤の量が少ない場合は微小カプセルの紫外線吸収効果が低くなり、従って化粧品に配合して一定の効果を得るためには、多量に微小カプセルを配合する必要が生じる。また、紫外線吸収剤の内包率を極端に上げると、微小カプセル全量に占める壁膜部分の割合が減少し、微小カプセルの安定性が低下するおそれがある。
【0011】
本発明の微小カプセルは、オクトクリレンまたはオクトクリレンとオクトクリレン以外の紫外線吸収剤の一種以上との混合液を内包するが、オクトクリレン以外の紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンなどのUVA吸収剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、パラアミノ安息香酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、サリチル酸オクチル、2,4,6−トリス−(p−アニリノ)−1−(カルボキシ−2’−エチルヘキシル)−1,3,5−トリアジンなどのUVB吸収剤(但し、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルを除く)などが挙げられる。
【0012】
オクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上との混合液をカプセルに内包させる場合、混合液中でのオクトクリレン以外の紫外線吸収剤の量は、オクトクリレンと使用する紫外線吸収剤の相溶性によって異なるため、数値を設定することはできないが、概ね混合液の質量の1%以上であることが好ましい。すなわち、オクトクリレンに混合する紫外線吸収剤の量が上記範囲以下では、混合する紫外線吸収剤の紫外線防御効果を充分に発揮できないおそれがある。
【0013】
本発明のオクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上との混合液を内包する微小カプセルを含有する化粧料は、オクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上の混合液を内包する微小カプセルを必須成分とし、化粧品に許容される各種配合剤や溶剤などを配合して構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で、各種化粧料成分を配合することができる。そのような成分としては、例えば、界面活性剤、油性原料、保湿剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、染料、顔料、香料、酸化防止剤、各種粉末類などが挙げられる。
【0014】
そして、対象となる化粧料としては、皮膚化粧料では、例えば、乳液、ローション、化粧水、皮膚用クリーム、ファンデーション、メイクアップ化粧料などが挙げられ、毛髪化粧料では、例えば、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアスタイリング剤などが挙げられる。
【0015】
本発明の化粧料中でのオクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上との混合液を内包する微小カプセルの含有量としては、微小カプセルにおけるオクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上との混合液の内包率や化粧料の種類によって異なるが、概ね0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましい。すなわち、オクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上との混合液を内包する微小カプセルの化粧料中での含有量が上記範囲以下では、紫外線防御効果を充分に発揮できないおそれがあり、オクトクリレンまたはオクトクリレンと紫外線吸収剤の一種以上との混合液を内包する微小カプセルの化粧料中での含有量が上記範囲以上になると、化粧料の保存安定性が損なわれるおそれがある。
【実施例】
【0016】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例のみにより制約を受けるものではない。また、以下の実施例で用いる%は質量%である。
【0017】
実施例1
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−トリヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン、メチルトリエトキシシランおよびオクチルトリエトキシシランの加水分解物共縮重合体からなるポリシロキサンを壁膜とするオクトクリレンを内包する微小カプセル
1)カプセル壁膜のプレポリマーの調製
上蓋に滴下ロートと還流冷却器を備え、メカニカルスターラを備えた内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水176gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−トリヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン(加水分解セリシンの分子量は数平均分子量で約2000)19.6gおよび18%塩酸8.1gを入れておき、50℃で攪拌しながらメチルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−13)31.7gとオクチルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製A−137)9.8gの混合物を滴下ロートから滴下した。滴下終了後、さらに、50℃で3時間攪拌した後、攪拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液9.8gを滴下し、pHを6.0にした。
【0018】
2)芯物質の添加と乳化
1)で調製した反応液を600rpmで攪拌しながらオクトクリレン(BASF社製ユビナールN539T)400gとテトラエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−04)4.1gの混合物を加え、さらに、600rpmで3時間攪拌し続けた。
【0019】
3)微粒化
2)で調製した反応液をホモミキサーの容器に移して、60℃、6000rpmで90分間ホモミキサーにかけて、微粒化した。
【0020】
4)壁膜のオーバーコート処理
3)で調製した反応液を元の反応容器で50℃、500rpmで撹拌しながらメチルトリクロロシラン(信越シリコーン社製LS−40)1.3gとメチルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−13)6.4gの混合物を加え、さらに、500rpmで1時間撹拌した後、5%水酸化ナトリウム水溶液21.1gを加えて中和した。
【0021】
5)凝集防止と壁膜の硬化処理
4)で調製した反応液を50℃、500rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製LS−260)3.9gを加え、500rpmで1時間撹拌した後、5%水酸化ナトリウム水溶液29.4gを加え中和した。反応液の温度を徐々に上げ、アルコールを含む蒸気を留去し、さらに150rpmで攪拌しながら2時間加熱した。この反応液を室温で150rpmで攪拌しながら冷却し、固型分濃度を62%に調整した、オクトクリレンの内包率が90%の微小カプセルの水分散液を670g得た。
【0022】
実施例2
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−トリヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン、メチルトリエトキシシランおよびオクチルトリエトキシシランの加水分解物共縮重合体からなるポリシロキサンを壁膜とするオクトクリレンと2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルを内包する微小カプセル
1)カプセル壁膜のプレポリマーの調製
上蓋に滴下ロートと還流冷却器を備え、メカニカルスターラを備えた内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水180gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−トリヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン(加水分解セリシンの分子量は数平均分子量で約2000)20gおよび18%塩酸8.2gを入れておき、50℃で攪拌しながらメチルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−13)32.4gとオクチルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製A−137)10.1gの混合物を滴下ロートから滴下した。滴下終了後、さらに、50℃で3時間攪拌した後、攪拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液10.2gを滴下し、pHを6.0にした。
【0023】
2)芯物質の添加と乳化
1)で調製した反応液を600rpmで攪拌しながらオクトクリレン(BASF社製ユビナールN539T)245.2gと2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシル(BASF社製ユビナールA Plus)163.4gとテトラエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−04)4.1gの混合物を加え、さらに、600rpmで3時間攪拌し続けた。
【0024】
3)微粒化
2)で調製した反応液をホモミキサーの容器に移して、60℃、6000rpmで90分間ホモミキサーにかけて、微粒化した。
【0025】
4)壁膜のオーバーコート処理
3)で調製した反応液を元の反応容器で50℃、500rpmで撹拌しながらメチルトリクロロシラン(信越シリコーン社製LS−40)1.4gとメチルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−13)6.5gの混合物を加え、さらに、500rpmで1時間撹拌した後、5%水酸化ナトリウム水溶液22.4gを加えて中和した。
【0026】
5)凝集防止と壁膜の硬化処理
4)で調製した反応液を50℃、500rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製LS−260)4.0gを加え、500rpmで1時間撹拌した後、5%水酸化ナトリウム水溶液28.2gを加えて中和した。反応液の温度を徐々に上げ、アルコールを含む蒸気を留去し、さらに150rpmで攪拌しながら2時間加熱した。この反応液を室温で150rpmで攪拌しながら冷却し、固型分濃度を62%に調整した、オクトクリレンと2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルの混合液の内包率が90%の微小カプセルの水分散液を705g得た。
【0027】
実施例3
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−トリヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン、メチルトリエトキシシランおよびオクチルトリエトキシシランの加水分解物共縮重合体からなるポリシロキサンを壁膜とするオクトクリレンと4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンを内包する微小カプセル
1)カプセル壁膜のプレポリマーの調製
上蓋に滴下ロートと還流冷却器を備え、メカニカルスターラを備えた内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水180gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−トリヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン(加水分解セリシンの分子量は数平均分子量で約2000)20gおよび18%塩酸8.2gを入れておき、50℃で攪拌しながらメチルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−13)32.4gとオクチルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製A−137)10.1gの混合物を滴下ロートから滴下した。滴下終了後、さらに、50℃で3時間攪拌した後、攪拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液10.1gを滴下し、pHを6.0にした。
【0028】
2)芯物質の添加と乳化
1)で調製した反応液を600rpmで攪拌しながらオクトクリレン(BASF社製ユビナールN539T)326.9gと4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(Roche社製パルソール1789)81.7gとテトラエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−04)4.1gの混合物を加え、さらに、600rpmで3時間攪拌し続けた。
【0029】
3)微粒化
2)で調製した反応液をホモミキサーの容器に移して、60℃、6000rpmで90分間ホモミキサーにかけて、微粒化した。
【0030】
4)壁膜のオーバーコート処理
3)で調製した反応液を元の反応容器で50℃、500rpmで撹拌しながらメチルトリクロロシラン(信越シリコーン社製LS−40)1.4gとメチルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−13)6.5gの混合物を加え、さらに、500rpmで1時間撹拌した後、5%水酸化ナトリウム水溶液22.1gを加えて中和した。
【0031】
5)凝集防止と壁膜の硬化処理
4)で調製した反応液を50℃、500rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製LS−260)4.0gを加え、500rpmで1時間撹拌した後、5%水酸化ナトリウム水溶液28.9gを加えて中和した。反応液の温度を徐々に上げ、アルコールを含む蒸気を留去し、さらに150rpmで攪拌しながら2時間加熱した。この反応液を室温で150rpmで攪拌しながら冷却し、固型分濃度を62%に調整した、オクトクリレンと4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンの混合液の内包率が90%の微小カプセルの水分散液を686g得た。
【0032】
実施例4および比較例1
表1に示す組成の2種類の化粧水を調製し、使用感触と保存安定性を評価した。実施例4では実施例1で製造したオクトクリレン内包微小カプセルを用い、比較例1ではオクトクリレン内包微小カプセルに代えてオクトクリレンを用いているが、配合量は、実施例4に配合した紫外線吸収剤と同量になる量である。なお、表中の配合量は質量%であり、配合成分が溶液または分散液の場合は括弧内に有効成分濃度を示すが、配合濃度に関しては、以下の表4および表7も同様である。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例4および比較例1の使用感触の評価は、10人のパネラーに、実施例4および比較例1の化粧水を手に取り、顔面に塗布させ、べたつき、しっとり感、のび、なめらかさなどの使用感触を、実施例4と比較例1のどちらが好ましいかを比較評価させることによって行った。その結果を表2に、実施例4が好ましいと答えた人数、比較例1が好ましいと答えた人数、どちらとも言えないと答えた人数で示す。
【0035】
【表2】

【0036】
表2に示したように、パネラー全員が、オクトクリレンを内包する微小カプセルを含有する実施例4の化粧水は、オクトクリレンをそのまま含有させた比較例1の化粧水より好ましいと答えていた。
【0037】
実施例4および比較例1の化粧水の保存安定性の評価は、それぞれの化粧水をガラス容器に入れて密封し、50℃の恒温槽に1ヶ月保存し、相分離などが生じているかを目視によって下記の評価基準で判断することによって行った。その結果を表3に示す。
安定性の評価基準
分離などは全く認められない:◎
ほとんど分離は認められない:○
やや分離が認められる :△
分離が認められる :×
【0038】
【表3】

【0039】
表3に示す結果から、オクトクリレンを微小カプセルに内包させることによって、界面活性剤を配合しない化粧水の処方系に、オクトクリレンを安定に配合できることが明らかにされていた。
【0040】
実施例5および比較例2
表4に示す組成の2種の乳液を調製し、使用感触と保存安定性を評価した。実施例5では実施例2のオクトクリレンと2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルを内包した微小カプセルを用い、比較例2では、オクトクリレンと2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルを内包した微小カプセルに代えてオクトクリレンと2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルをそのまま用いているが、配合量は実施例5に配合した紫外線吸収剤と同量になる量である。また、比較例2では、オクトクリレンと2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルを配合するために、乳化剤として界面活性剤のポリオキシエチレン(10)オレイン酸エステルとモノステアリン酸グリセリンを含有させている。
【0041】
【表4】

【0042】
実施例5および比較例2の乳液の使用感触と保存安定性の評価は、実施例4と同様の方法および同様の評価基準で行った。使用感触の評価結果を表5に、保存安定性の評価結果を表6に示す。
【0043】
【表5】

【0044】
表5に示したように、パネラーの大多数が、オクトクリレンと2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルを内包した微小カプセルを含有した実施例5の乳液はオクトクリレンと2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルと界面活性剤を含有した比較例2の乳液よりも好ましいと答えていた。
【0045】
【表6】

【0046】
表6に示した結果から、オクトクリレンと2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルを内包した微小カプセルを含有する実施例5の乳液は、オクトクリレンと2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルをそのまま界面活性剤と共に含有した比較例2の乳液よりも保存安定性が良好であるのが明らかであった。
【0047】
実施例6および比較例3
表7に示す組成の2種類のO/W型ファンデーションを調製し、使用感触と保存安定性を評価した。実施例6では実施例3のオクトクリレンと4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンを内包した微小カプセルを用い、比較例3では、オクトクリレンと4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンを内包した微小カプセルに代えてオクトクリレンと4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンをそのまま用いているが、配合量は実施例5に配合した紫外線吸収剤量と同量である。また、比較例3では、オクトクリレンと4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンを配合するため、乳化剤として界面活性剤のモノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノステアリン酸グリセリンおよびステアリン酸とトリエタノールアミンで生成させた石鹸を含有させている。
【0048】
【表7】

【0049】
実施例6および比較例3のO/W型ファンデーションの使用感触と保存安定性の評価は、実施例4と同様の方法および同様の評価基準で行った。使用感触の評価結果を表8に、保存安定性の評価結果を表9に示す。
【0050】
【表8】

【0051】
表8に示したように、パネラーの大多数が、オクトクリレンと4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンを内包した微小カプセルを含有した実施例6のO/W型ファンデーションは、オクトクリレンと4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンと界面活性剤を含有した比較例3のO/W型ファンデーションよりも好ましいと答えていた。
【0052】
【表9】

【0053】
表9に示した結果から、オクトクリレンと4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンを内包した微小カプセルを含有する実施例6のO/W型ファンデーションは、オクトクリレンと4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンをそのまま界面活性剤と共に含有する比較例3のO/W型ファンデーションよりも保存安定性が良好であるのが明らかであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノポリシロキサンとシリル化ペプチドの重合物を壁膜とし、2−シアノ−3,3−ジフェニルプロパ−2−エン酸2−エチルヘキシルエステルまたは2−シアノ−3,3−ジフェニルプロパ−2−エン酸2−エチルヘキシルエステルと紫外線吸収剤の一種以上との混合液を内包する微小カプセル。
【請求項2】
請求項1記載の微小カプセルを含有する化粧料。


【公開番号】特開2009−62327(P2009−62327A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232187(P2007−232187)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000147213)株式会社成和化成 (45)
【Fターム(参考)】