説明

2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンD3

本発明は、式Iの化合物を提供し、式中、XおよびXは独立してHまたはヒドロキシ保護基から選択される。当該化合物は薬学的組成物の調製に使用され得、また様々な生物学的状態の治療に有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年11月30日に出願された米国仮出願第61/264,990号の優先権を主張し、その開示全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本技術は、ビタミンD化合物、および、より具体的には2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDおよびその誘導体、ならびに本化合物を含有する薬学的製剤に関する。本技術はまた、様々な疾患の治療における2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDの使用、および様々な疾患の治療に使用するための医用薬剤の調製に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
天然のホルモン、1α,25−ジヒドロキシビタミンD(1α,25−ジヒドロキシコレカルシフェロールおよびカルシトリオールとも称する)およびそのエルゴステロール系の類似体、すなわち1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、動物およびヒトにおいてカルシウム恒常性に関して高い効力をもつレギュレーターであることが知られており、それらの細胞分化活性もまた、実証されている(Ostrem et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 2610 (1987)(非特許文献1))。これらの代謝産物の多くの化学構造類似体が調製および試験されてきたが、その例として1α−ヒドロキシビタミンD、1α−ヒドロキシビタミンD、様々な側鎖同族化(homologated)ビタミン類、およびフッ素化類似体が挙げられる。これらの化合物の一部は、細胞分化活性およびカルシウム調節活性において、興味深い分離を示す。この活性の差異は、腎性骨ジストロフィー、ビタミンD−抵抗性くる病、骨粗しょう症、乾癬、およびある種の悪性腫瘍などの様々な疾患の治療に有用であり得る。1α,25−ジヒドロキシビタミンDの化学構造、およびこの化合物での炭素原子を示すために使用される番号付けシステムを以下に示す。

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ostrem et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 2610 (1987)
【発明の概要】
【0005】
概要
本技術は、2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDおよび関連する化合物、2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDを含む薬学的製剤、本化合物を使用して様々な病状を治療する方法、ならびに様々な病状を治療するための医用薬剤の調製における本化合物の使用を提供する。
【0006】
したがって1つの態様では、本技術は、以下に示す式I:

で表される化合物を提供し、式中XおよびXは同一または異なってもよく、独立してHまたはヒドロキシ保護基から選択される。いくつかの実施形態では、XおよびXが共にシリル基などのヒドロキシ保護基である。当該実施形態では、XおよびXは共にt−ブチルジメチルシリル基である。他の実施形態では、前記化合物が以下に示す式IA:

で表される2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDであるように、XおよびXは共にHである。
【0007】
当該実施形態では、式IAの化合物は式IBの化合物であり、以下に示す化学構造:

で表される。
【0008】
本技術の化合物は、ビタミンD受容体との強い結合性、強力な細胞分化活性、さらには低い〜非常に低いカルシウム血症活性を含む、高度に有利な生物活性パターンを示す。したがって本化合物は、ある生物学的状態を患う対象の治療方法において、および当該生物学的状態を治療する医用薬剤の調製方法において使用され得る。本方法は、本技術の有効量の化合物を対象に投与することを含む。生物学的状態は乾癬;白血病;大腸癌;乳癌;前立腺癌;多発性硬化症;狼瘡;糖尿病;宿主対移植片反応;臓器移植拒否反応;関節リウマチ、ぜんそく、もしくは炎症性腸疾患から選択される炎症性疾患;しわ、十分な皮膚のハリ不足、十分な皮膚水分の不足、もしくは不十分な皮脂分泌から選択される皮膚状態;腎性骨ジストロフィー;または骨粗しょう症から選択される。
【0009】
本技術の化合物は、有効量で上記疾患および障害を治療するための、また場合により薬学的に許容可能な担体を含む組成物で存在してもよい。いくつかの実施形態では、化合物の含有量は、組成物1グラム当たり約0.01μg〜約1mg、好ましくは組成物1グラム当たり約0.1μg〜約500μgであり、また約0.01μg/日〜約1mg/日、好ましくは約0.1μg/日〜約500μg/日の用量で、局所、経皮、経口、または非経口投与されてもよい。
【0010】
本技術のさらなる特徴と有効性は、以下の詳細な説明と図面から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1から図5は、天然ホルモン1α,25−ジヒドロキシビタミンD(図では「1,25(OH)」と称す)と比較した様々な2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンD(図では「26N」と称す)の生物活性を例示する。
【0012】
【図1】26Nおよび天然ホルモン1,25(OH)間の、核ホルモン受容体との拮抗的結合性のグラフを示す。26Nは核ビタミンD受容体に、1,25(OH)と同じ親和性で結合する。
【図2】26Nと1,25(OH)の濃度の関数としてHL−60細胞分化パーセントを比較したグラフである。26Nは、HL−60細胞の単球への分化を引き起こすことに関して、1,25(OH)と同じ効力をもつ。
【図3】26Nと1,25(OH)のインビボ転写活性を比較したグラフである。26Nは、24−ヒドロキシラーゼ遺伝子の転写を増加させることに関して、1,25(OH)の約1対数分、効力が弱い。
【図4】図4Aおよび4Bは、ラットにおいて、26Nと1,25(OH)の骨カルシウム動員活性を比較した棒グラフである。26Nは、骨カルシウムの貯蔵を放出することに関して、1,25(OH)の効力のおよそ30分の1である。
【図5】図5Aおよび5Bは、26Nと1,25(OH)の腸カルシウム輸送活性を比較した棒グラフである。26Nは、ラット消化管での活性なカルシウム輸送を促進することに関して、1,25(OH)の効力の少なくとも10分の1である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDを合成し、試験し、そして本明細書に記載の様々な生物学的状態を治療するのに有効であることを見いだした。化学構造的に、本化合物は以下に示す式IA:

で表される。
【0014】
2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDの調製は、適した二環式のWindaus−Grundmann型ケトン(II)をアリルホスフィンオキシドIIIと縮合し、次いで脱保護すること(YおよびY基の除去)により成し遂げられ得る。

【0015】
ホスフィンオキシドIIIでは、YおよびYはシリル保護基などのヒドロキシ−保護基である。t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基は特に有用なヒドロキシ−保護基の一例である。上記過程は、多くのビタミンD化合物の調製に効果的に適用される収束的合成コンセプトの適用を表す(すべてが引用することにより全体が本明細書に完全に明記されるかのようにあらゆる目的で本明細書に組み入れられる、Lythgoe et al., J. Chem. Soc. Perkin Trans. I, 590 (1978); Lythgoe, Chem. Soc. Rev. 9, 449 (1983); Toh et al., J. Org. Chem. 48, 1414 (1983); Baggiolini et al., J. Org. Chem. 51, 3098 (1986); Sardina et al., J. Org. Chem. 51, 1264 (1986); J. Org. Chem. 51, 1269 (1986); DeLuca et al., 米国特許第5,086,191号; DeLuca et al., 米国特許第5,536,713号;および DeLuca et al., 米国特許第5,843,928号を参照のこと)。
【0016】
ホスフィンオキシドIIIは、Sicinski et al., J. Med. Chem., 41, 4662 (1998), DeLuca et al., 米国特許第5,843,928号; Perlman et al., Tetrahedron Lett. 32, 7663 (1991);および DeLuca et al., 米国特許第5,086,191号に記載された手順により調製され得る便利な試薬である。スキーム1は、引用することにより全体が本明細書に完全に明記されるかのように本明細書に組み入れられる米国特許第5,843,928号で概説されたホスフィンオキシドIIIを合成する基本手順を示す。

【0017】
化学構造IIのヒドラインダノン(Hydraindanones)は既知の方法のわずかな変更により調製され得、これらの方法は当業者に容易に理解され、本明細書に記載される。ビタミンD類似体のための二環式のケトンを合成するため使用される方法の特定の例が、Mincione et al., Synth. Commun 19, 723, (1989); and Peterson et al., J. Org. Chem. 51, 1948, (1986)に記載される。2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD化合物を合成するための全過程が、引用することにより全体が本明細書に完全に明記されるかのようにあらゆる目的で本明細書に組み入れられる米国特許第5,843,928号に例示および記載される。ヒドリナノンII(hydrinanoneII)の調製の詳細はスキーム2および本明細書の実施例に見られる。
【0018】
本明細書に使用される場合、「ヒドロキシ−保護基」という用語は、ヒドロキシ(−OH)官能基の一時的な保護に通常使用されるあらゆる基、例えばこれに限定されないがアルコキシカルボニル、アシル、アルキルシリルまたはアルキルアリールシリル基(以降、単に「シリル」基と称する)、およびアルコキシアルキル基など、を意味する。「アルキル」という用語は、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状飽和炭化水素基を表し、また環式を含む。アルコキシカルボニル保護基は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、またはアリルオキシカルボニルなどのアルキル−O−CO−基である。「アシル」という用語は、炭素数1〜6のアルカノイル基、その異性体のすべてについて、あるいは炭素数1〜6のカルボキシアルカノイル基、例えばオキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、あるいは芳香族アシル基、例えばベンゾイル、またはハロ、ニトロ、もしくはアルキル置換ベンゾイル基を示す。アルコキシアルキル保護基は、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチル、またはテトラヒドロフラニルおよびテトラヒドロピラニルなどの基である。シリル−保護基は、好ましくはトリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、ジブチルメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニル−t−ブチルシリル、および類似するアルキル化シリル基である。「アリール」という用語は、フェニル−、アルキル−、ニトロ−、またはハロ−置換フェニル基を意味する。ヒドロキシ官能性に関する保護基の広範なリストが、これに明記された手順を用いて付加または除去してもよく、かつ引用することにより全体が本明細書に完全に明記されるかのようにあらゆる目的で本明細書に組み入れられるProtective Groups in Organic Synthesis, Greene, T.W.; Wuts, P. G. M., John Wiley & Sons, New York, NY, (3rd Edition, 1999)に見出され得る。
【0019】
「保護ヒドロキシ」基は、ヒドロキシ官能基、例えば上記定義したシリル、アルコキシアルキル、アシル、またはアルコキシカルボニル基の、一時的または永久的な保護のために通常使用される上記基のいずれかにより誘導または保護されるヒドロキシ基である。
【0020】
上記化合物は、所望の、高度に有利な生物活性パターンを示す。本化合物は、1α,25−ジヒドロキシビタミンDと比較して、ビタミンD受容体と比較的強く結合するがごく低い腸カルシウム輸送活性をもつという特徴を有し、また1α,25−ジヒドロキシビタミンDと比較して、骨からカルシウムを動員する能力が低い。それゆえ本化合物は、1α,25−ジヒドロキシビタミンDが顕著なカルシウム血症活性を示す用量で、たとえあったとしてもほんの少しのカルシウム血症活性を有することを特徴とする。したがって、腎性骨ジストロフィーの二次性副甲状腺機能亢進症を抑制する治療に有効であり得る。
【0021】
本技術の化合物はまた、特に免疫系の平衡失調、例えば多発性硬化症、狼瘡、糖尿病、宿主対移植片反応、および臓器移植拒否反応を含む自己免疫疾患によって特徴付けられる障害の治療および予防に、および、さらには関節リウマチ、ぜんそく、ならびに炎症性腸疾患などの炎症性疾患、例えばセリアック病、潰瘍性大腸炎、およびクローン病の治療に好都合である。座瘡、脱毛症、および高血圧症は、本技術の化合物で治療し得る他の病状である。
【0022】
上記化合物はまた、細胞分化活性が比較的高い特徴を持つ。したがって、本化合物はまた、乾癬治療のための、または特に白血病、大腸癌、乳癌、および前立腺癌に対する抗癌剤としての治療剤を提供する。さらに、その比較的高い細胞分化活性から、本化合物は、しわ、十分な皮膚水分の不足すなわちドライスキン、十分な皮膚のハリ不足すなわち皮膚弛緩、および不十分な皮脂分泌を含む様々な皮膚状態の治療のための治療剤を提供する。本化合物の使用はしたがって、皮膚に保湿をもたらすだけでなく、皮膚のバリア機能もまた改善する。
【0023】
本技術の化合物は、薬学的に許容可能な担体と組み合わせて本技術の化合物を含む薬学的製剤または医用薬剤を調製するために使用されてもよい。当該薬学的製剤および医用薬剤は、本明細書に記載したような様々な生物学的障害を治療するために使用されてもよい。そのような障害を治療する方法は、典型的には生物学的障害を患う対象に有効量の化合物または該化合物を含有する適当量の薬学的製剤もしくは医用薬剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象は哺乳類である。当該実施形態では、哺乳類は、げっ歯類、霊長類、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、クマ、ブタ、ウサギ、またはモルモットから選択される。当該実施形態では、哺乳類はラットまたはマウスである。いくつかの実施形態では、対象は霊長類、例えばいくつかの実施形態ではヒトである。
【0024】
治療を目的として、式I、式IA、および式IBに定義される化合物は、当業者に公知の従来法にしたがって、無害の溶媒中に溶液として、または好適な溶媒もしくは担体中にエマルジョン、懸濁液、もしくは分散液として、または固形担体と共に丸剤、錠剤、もしくはカプセルとして、薬学的用途のために製剤されてもよい。当該あらゆる製剤はまた、安定剤、抗酸化剤、結合剤、着色剤、または乳化剤もしくは味覚修飾剤などの、他の薬学的に許容可能で無毒性の添加剤を含有してもよい。薬学的に許容可能な添加剤および担体は一般に当業者に公知であり、したがって本技術に含まれる。当該添加剤および担体は、例えば引用することにより全体が本明細書に完全に明記されるかのようにあらゆる目的で本明細書に組み入れられる"Remingtons Pharmaceutical Sciences" Mack Pub. Co., New Jersey (1991)に記載される。
【0025】
化合物は、経口、局所、非経口、または経皮的に投与され得る。化合物は、注入によりまたは静脈内注射もしくは好適な滅菌溶液により、または消化管を介して液体もしくは固体投与の形態で、または経皮用途に好適なクリーム、軟膏、パッチ、もしくは同様の媒体の形態で、好都合に投与される。いくつかの実施形態では、化合物0.001μg〜約1mg/日の投与量が、治療目的としては適切である。当該実施形態では、適切で有効な投与量は、化合物0.01μg〜1mg/日であってもよい。当該他の実施形態では、適切で有効な投与量は、化合物0.1μg〜500μg/日であってもよい。当該投与量は、治療すべき疾患または症状の種類、疾患及び症状の重症度、および当業者によってよく理解されるような対象の反応にしたがって調整される。化合物は単独で、または別の活性ビタミンD化合物と共に好適に投与されてもよい。
【0026】
本技術で使用する組成物は、活性成分としての有効量の2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDおよび好適な担体を含む。本技術のいくつかの実施形態による使用のための化合物の有効量は、一般に本明細書に記載のような投与量であり、局所、経皮、経口、経鼻、直腸内、または非経口的に投与されてもよい。
【0027】
式IAおよび式IBの化合物は、前骨髄球の、正常マクロファージへの分化をもたらすのに十分な量で、好都合に投与され得る。上記記載の用量が好適であり、所定の量を、疾患の重症度、および当業者がよく理解するような対象の症状および反応に対応して調整されるべきであることが理解される。
【0028】
化合物は、クリーム、ローション、軟膏、エアロゾル、座薬、局所パッチ、丸剤、カプセル、もしくは錠剤として、または薬学的に無害で許容可能な溶媒もしくはオイル中の、溶液、エマルジョン、分散液、もしくは懸濁液の形態で製剤されてもよく、また当該調製物はさらに安定剤、酸化防止剤、乳化剤、着色剤、結合剤、または味覚修飾剤などの他の薬学的に無害または有益な構成成分を含有してもよい。
【0029】
本技術の製剤は、薬学的に許容可能な担体と共に活性成分を有し、したがって任意で他の治療成分を有する。担体は、製剤の他の成分と適合し、製剤の服用者に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。
【0030】
経口投与に好適な本技術の製剤は、それぞれが所定量の活性成分を含有する、カプセル、小袋、錠剤、またはトローチ剤のような個別単位の形態;粉末もしくは顆粒の形態;水性液体もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液の形態;または水中油エマルジョンもしくは油中水エマルジョンの形態であってよい。
【0031】
直腸内投与用の製剤は、活性成分とココアバターなどの担体を組み入れた座薬の形態、または浣腸の形態であってよい。
【0032】
非経口投与用の製剤は、都合よく、好ましくは服用者の血液と等張である活性成分の滅菌油性調製物または滅菌水性調製物を含む。
【0033】
局所投与に好適な製剤は、塗抹剤、ローション、塗布剤、水中油または油中水エマルジョン例えばクリーム、軟膏、もしくはペースト、などの液体調製物または半液体調製物;または液滴もしくは噴霧用などの溶液もしくは懸濁液を含む。
【0034】
経鼻投与に関しては、スプレー缶、ネブライザー、またはアトマイザーを用いて投薬される、粉末剤、自己噴霧剤、またはスプレー剤の吸入が用いられ得る。製剤は、投薬する場合、10〜100ミクロンの粒径である。
【0035】
製剤は、用量単位形態で存在し得、また薬学分野でよく知られるあらゆる方法により調整され得る。「用量単位」という用語は、患者に、活性成分それ自体、または固体もしくは液体の薬学的希釈剤または担体と活性成分との混合物のいずれかを含む物理的または化学的に好適な単位投与量として投与することができる、一元的、すなわち単一の投与量を意味する。
【0036】
本明細書に引用される全ての参考文献は、引用することにより全体が本明細書に完全に明記されるかのようにあらゆる目的で本明細書に明確に組み入れられる。
【実施例】
【0037】
2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDの合成
式I、式IA、および式IBの化合物を、スキーム1〜3に示す方法を用いて調製した。スキーム2に示すように、化合物1を、Grywacz et al. (Arch. Biochem. Biophys. 460, 274-284, 2007)に記載の、ビタミンDのオゾン分解、その後ホウ化水素による還元により得る。ジアルコール1を、ピリジン中で塩化ベンゾイルおよびDMAPにより処理し、次いでエタノール中でKOHにより処理してベンゾイル化合物2を得た。化合物2を、ジクロロメタンおよびDMSO中のTEA存在下で、三酸化硫黄ピリジン錯体により酸化し、化合物3を得た。化合物3を20位で水酸化テトラブチルアンモニウムにより処理してエピマー化し、次いで水素化ホウ素ナトリウムで還元して化合物4を得た。後者の化合物を、ジクロロメタン中で塩化トシル、TEA、およびDMAPで処理してトシレートに転化し化合物5を得た。1M硫酸で後処理した後、トシレート5をLiCuCl存在下で塩化ブチルマグネシウムと反応させて遊離アルコール7を得た。化合物7を、4−メチルモルホリンオキシドの存在下で、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウムを用いて酸化させて化合物8にした。
【0038】
環−Aホスフィンオキシド化合物9をスキーム1に示すようにおよび前述のように合成した。スキーム3に示すように、上記特許文献に明記されたフェニルリチウムを用いて化合物8をA−環ホスホニウム塩と結合させて化合物10、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)保護ビタミン誘導体を生成した。アセトニトリル(MeCN)中で、およびテトラヒドロフラン(THF)中で、フッ化水素酸(HF)を用いて化合物10から保護基を除去し、所望の生成物、化合物11(式IAの化合物)を得、これを50%酢酸エチルのヘキサンを用いてTLCにより検出した。この生成物を以下に記載のように完全に特性を決定した。

a) 1.O、ピリジン、MeOH;2.NaBH(1、75%)
b) 1.BzCl、DMAP、ピリジン;2.KOH、EtOH(2、93%)
c) SO−ピリジン、TEA、CHCl、DMSO(3、83%)
d) 1.n−BuNOH、CHCl;2. NaBH、EtOH、THF(4、80%)
e) TsCl、TEA、DMAP、CHCl(5、91%)
f) n−BuMgCl、LiCuCl、THF−78℃(7、67%)
g) NMO、PrNRuO、4オングストロームのシーブ、CHCl(8、92%)
【0039】
(8S,20S)−デス−A,B−20−(ヒドロキシメチル)プレグナン−8−オール(1)の調製
オゾンをビタミンD(3g、7.6mmol)のメタノール(250mL)およびピリジン(2.44g、2.5mL、31mmol)の溶液に50分間、−78℃で通過させた。次いで反応混合物を酸素を用いて15分間フラッシュして残存オゾンを除去し、溶液をNaBH(0.75g、20mmol)で処理した。20分後、NaBH(0.75g、20mmo1)の第二の部分を添加して、その混合物を室温まで加熱した。次いで、NaBH(0.75g、20mmol)の第三の部分を添加し、反応混合物を18時間撹拌した。反応を水(40mL)で冷却停止し、溶液を減圧下で濃縮した。残渣から酢酸エチルで抽出して、複合有機相を1M塩酸水溶液、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(75:25)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィを行い、ジオール1(1.21g、75%収率)を白色結晶として得た:


【0040】
(8S,20S)−デス−A,B−8−ベンゾイルオキシ−20−(ヒドロキシメチル)プレグナン(2)の調製
塩化ベンゾイル(2.4g、2mL、17mmol)をジオール1(1.2g、5.7mmol)およびDMAP(30mg、0.2mmol)の無水ピリジン溶液(20mL)に0℃で添加した。反応混合物を4℃で24時間撹拌し、塩化メチレン(100mL)で希釈し、5%塩酸水溶液、水、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、乾燥させて(NaSO)、減圧下で濃縮した。残渣(3.39g)をKOH(1g、15.5mmol)の無水エタノール溶液(30mL)で室温にて処理した。反応混合物を3時間撹拌後、氷と5%塩酸水溶液をpH=6になるまで添加した。溶液から酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、複合した有機相を飽和NaHCO水溶液で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(75:25)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィを行い、アルコール2(1.67g、93%収率)を無色油として得た:


【0041】
(8S,20S)−デス−A,B−8−ベンゾイルオキシ−20−ホルミルプレグナン(3)の調製
三酸化硫黄ピリジン錯体(1.94g、12.2mmol)をアルコール2(640mg、2.03mmol)、トリエチルアミン(1.41mL、1.02g、10.1mmol)の無水塩化メチレン(10mL)、および無水DMSO(2mL)の溶液に0℃にて添加した。反応混合物をアルゴン中で0℃、1時間撹拌し、次いで濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈し、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(95:5)によるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィによって精製し、アルデヒド3(529mg、83%収率)を油として得た:


【0042】
(8S,20R)−デス−A,B−8−ベンゾイルオキシ−20−(ヒドロキシメチル)プレグナン(4)の調製
アルデヒド3(364mg、1.12mmol)を塩化メチレン(15mL)中に溶解し、これに40%n−BuNOH水溶液(1.47mL、1.45g、2.24mmol)を添加した。得られた混合物をアルゴン中で室温にて16時間撹拌し、塩化メチレン(20mL)で希釈し、水で洗浄し、乾燥させて(NaSO)、減圧下で濃縮した。残渣でヘキサン/酢酸エチル(95:5)によりシリカゲル上でクロマトグラフィを行い、約1:2の割合のアルデヒド3、およびその20−エピマー混合物(292mg、80%収率)を得た(H NMRによる)。
【0043】
このアルデヒド混合物(292mg、0.9mmol)をTHF(5mL)に溶解し、これにNaBH(64mg、1.7mmol)を添加し、次いでエタノール(5mL)を滴加した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、その後飽和NHCl水溶液で冷却停止した。混合物からエーテル(3×20mL)で抽出し、複合有機相を水で洗浄し、乾燥させて(NaSO)、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(96:4→80:20)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィを行い、所望の、純(20R)−アルコール4(160mg、55%収率)を油として、また約1:3の割合の4とその20−エピマー2(126mg、43%収率)の混合物を得た(H NMRによる):


【0044】
(20R)−デス−A,B−8−ベンゾイルオキシ−20−[(p−トルエンスルホニル)−オキシメチル]プレグナン(5)の調製
撹拌したアルコール4(393mg、1.24mmol)、DMAP(10mg、0.08mmol)、およびEtN(0.7mL、0.51g、5.04mmol)の無水塩化メチレン溶液(10mL)に、塩化p−トルエンスルホニル(320mg、1.68mmol)を0℃にて添加した。反応混合物を室温まで加熱し(4時間)、さらに22時間撹拌を継続した。塩化メチレン(60mL)を添加してその混合物を飽和NaHCO水溶液で洗浄し、乾燥させて(NaSO)、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(95:5)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィを行い、トシレート5(533mg、91%収率)を無色油として得た:


【0045】
(8S,20S)−デス−A,B−20−ペンチル−プレグナン−8−オール(7)の調製
マグネシウム削り屑(625mg、26mmol)、1−クロロ−ブタン(1.5mL、1.3g、14mmol)、およびヨウ素(2結晶)を無水THF(13mL)中で4時間還流した。形成したグリニャール試薬6溶液を−78℃まで冷却し、これをカニューレを通してトシレート5(170mg、0.36mmol)の無水THF溶液(5mL)に−78℃にて滴下した。その後、5mLのLiCuCl溶液[LiCl(乾燥)(116mg、2.73mmol)およびCuCl(乾燥)(184mg、1.36mmol)の無水THF(13mL)中への溶解により調製]をカニューレを通して反応混合物に−78℃にて滴下した。冷却槽から外し、混合物を室温にて20時間撹拌し、次いで氷(約50g)を含む1M HSO溶液(12mL)に注いだ。混合物から塩化メチレン(3×50mL)で抽出し、複合有機層を飽和NHCl水溶液、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(96:4)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィを行い、アルコール7(61mg、67%収率)を無色油として得た:):


【0046】
(20S)−デス−A,B−20−ペンチル−プレグナン−8−オン(8)の調製
4オングストロームのモレキュラーシーブ(150mg)を4−メチルモルホリンオキシド(20mg、0.2mmol)のジクロロメタン溶液(0.7mL)に添加した。混合物を室温にて15分間撹拌し、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(3mg、9μmol)を添加し、次いで、アルコール7(21mg、83μmol)のジクロロメタン溶液(400+400μL)を添加した。得られた懸濁液を室温にて1時間撹拌した。反応混合物をWaters製Sep−Pakシリカカートリッジ(2g)にて濾過し、さらにジクロロメタンで洗浄した、溶媒を除去後、ケトン8(19mg、92%収率)を無色油として得た:


【0047】
(20S)−2−メチレン−19,26−ジノル−1α−ヒドロキシビタミンD (11)の調製
−20℃で、ホスフィンオキシド9(73mg、125μmol)の無水THF(500μL)溶液に、アルゴン中、PhLi(ジ−n−ブチルエテル中1.6M,100μL,160μmol)を撹拌しながらゆっくり添加した。溶液が深いオレンジ色に変化した。30分後、混合物を−78℃まで冷却し、これに前冷却した(−78℃)ケトン8(18mg、72μmol)の無水THF溶液(200+100μL)をゆっくり添加した。混合物をアルゴン下で−78℃で4時間および0℃で18時間撹拌した。酢酸エチルを添加して、有機相をブラインで洗浄し、乾燥させて(NaSO)、蒸発させた。残渣をヘキサンに溶解し、Waters製Sep−Pakシリカカートリッジ(2g)に塗布した。カートリッジをヘキサンおよびヘキサン/酢酸エチル(99.5:0.5)で洗浄し、19−ノルビタミン誘導体10(31.6mg、71%収率)を得た。その後Sep−Pakを酢酸エチルで洗浄し、ジフェニルホスフィンオキシド9(33mg)を回収した。


【0048】
保護ビタミン10(31.5mg、51mmol)をTHF(2mL)およびアセトニトリル(2mL)に溶解した。48%HF水溶液のアセトニトリル溶液(割合1:9、2mL)を0℃にて添加後、得られた混合物を室温にて6時間撹拌した。飽和NaHCO水溶液を添加後、反応混合物から酢酸エチルで抽出した。複合した有機相をブラインで洗浄し、乾燥させて(NaSO)、減圧下で濃縮した。残渣を2mLのヘキサン/酢酸エチル(95:5)で希釈し、Waters製のSep−Pakシリカカートリッジ(2g)に塗布した。ヘキサン/酢酸エチル(9:1)による溶出、その後の酢酸エチルによる溶出で、粗生成物11(17mg)を得た。ビタミン11をさらに、順相HPLC[9.4×250mmZorbax Silカラム、5mL/分、ヘキサン/2−プロパノール(9:1)溶媒系、R=6.13分間]、その後の逆相HPLC[9.4×250mm Zorbax Eclipse XDB−C18カラム、3mL/分、メタノール/水(95:5)溶媒系、R=14.69分]により精製し、無色油(14.2mg、72%収率)を得た:



【0049】
生物活性
ビタミンD受容体結合性
試験材料
タンパク質源
完全長の組換えラット受容体を大腸菌(E.coli)BL21(DE3) Codon Plus RIL細胞にて発現させ、2つの異なるカラムクロマトグラフィシステムを用いて均一になるまで精製した。第一のシステムは、このタンパク質のC末端ヒスチジンタグを利用するニッケルアフィニティレジンであった。このレジンから溶出されたタンパク質をさらにイオン交換クロマトグラフィ(S−Sepharose Fast Flow)を用いて精製した。精製タンパク質のアリコートを、液体窒素で急速冷凍し、使用するまで−80℃で保管した。結合アッセイでの使用のために、タンパク質を、0.1%Chaps洗浄剤を含有するTEDK50(50mMトリス、1.5mM EDTA、pH7.4、5mM DTT、150mM KCl)にて希釈した。添加した放射標識リガンドの20%未満が受容体と結合するように、受容体タンパク質−リガンド濃度を最適化した。
【0050】
研究用薬物
非標識リガンドをエタノール中に溶解し、その濃度をUV分光光度法(1,25(OH):モル吸光係数=18,200およびλmax=265nm;類似体:モル吸光係数=42,000およびλmax=252nm)を用いて測定した。放射標識リガンド(H−1,25(OH)、約159Ci/mmole)をエタノール中に添加して最終濃度1nMにした。
【0051】
アッセイ条件
放射標識および非標識リガンドを100mclの希釈タンパク質に≦10%の最終エタノール濃度で添加して混合し、氷上で一晩インキュベートして、結合平衡に達した。翌日、100mclのヒドロキシルアパタイトスラリー(50%)を各チューブに添加して10分間隔で30分間混合した。ヒドロキシルアパタイトを遠心分離により回収し、次いで、トリス−EDTA緩衝液(50mMトリス、1.5mM EDTA、pH7.4)含有0.5%TitronX−100で3回洗浄した。最終洗浄後、ペレットを4mlのBiosafeIIシンチレーションカクテルを含むシンチレーションバイアルに移し、混合し、シンチレーションカウンタに入れた。総結合性を、放射標識リガンドのみを含むチューブから測定した。
【0052】
HL−60分化
試験材料
研究用薬物
研究用薬物をエタノール中に溶解し、UV分光光度法を用いてその濃度を測定した。薬物濃度の範囲を、細胞培養物に存在するエタノールの最終濃度(≦0.2%)を変えることなく試験し得るように、連続希釈物を調製した。
【0053】
細胞
ヒト前骨髄球性白血病(HL60)細胞を、10%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地中で増殖させた。細胞を、5%COの存在下で、37℃でインキュベートした。
【0054】
アッセイ条件
HL60細胞を、1.2×10細胞/mlで塗抹した。塗抹後18時間で、増殖中の細胞を薬物で処理した。4日後、細胞を採取し、ニトロブルーテトラゾリウム還元アッセイを実施した(Collins et al., 1979; J. Exp. Med. 149:969-974)。分化細胞の割合は、計200細胞を計数して細胞内の黒青色のホルマザン沈着物を含む細胞の数を記録することにより決定した。単球細胞への分化の検証を、食作用活性を測定することにより決定した(データは示さず)。
【0055】
インビトロ転写アッセイ
転写活性は、ルシフェラーゼ受容体遺伝子(Arbour et al., 1998)の上流に24−ヒドロキシラーゼ(24OHアーゼ)遺伝子プロモーターを安定的にトランスフェクトしたROS17/2.8(骨)細胞で測定した。細胞にある範囲の投与量を供給した。投与の16時間後、細胞を採取し、ルシフェラーゼ活性をルミノメーターを用いて測定した。RLU=相対ルシフェラーゼ単位。
【0056】
腸カルシウム輸送および骨カルシウム動員
離乳雄Sprague−Dawleyラットを、Diet11(0.47%Ca)餌+AEK油で1週間、その後Diet11(0.02%Ca)+AEK油で3週間飼育した。次いで、ラットを0.47%Ca含有餌での1週間、その後0.02%Ca含有餌での2週間の飼育に切り替えた。0.02%カルシウム含有餌での最後の1週間中に投与を開始した。4回連続の腹腔内投与をおよそ24時間おきに行った。最後の投与後24時間で、切断した首から血液を回収し、骨カルシウム動員の1つの指標として血清カルシウム濃度を測定した。腸の初めの10cmもまた、反転腸嚢法を用いた腸カルシウム輸送分析のために回収した。
【0057】
生物学的アッセイ結果
2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDの生物活性を上記方法を用いてアッセイを行った。アッセイ結果を図1〜5に示す。図1に示すように、2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDは、組換えビタミンD受容体との結合性において、1,25−(OH)とほぼ同等の効果である。また2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDは、培養物中のHL−60細胞の分化を、1,25−(OH)と同じ効力で誘導する(図2)。しかしながら、骨細胞で24−OHアーゼ遺伝子発現を刺激する効力は、1,25−(OH)Dの約10分の1である(図3)。図4A、4B、5A、および5Bに示すように、2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDのカルシウム血症活性もまた、極めて低い。
【0058】
骨カルシウム動員活性のインビボ予備試験により、2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDは本質的に260pmol投与量ではカルシウム血症活性を示さないことが実証された(図4A)。さらにインビボ試験により、2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDは、7020pmolの投与量で示すように、骨カルシウム動員が1,25−(OH)のほぼ30分の1の活性であること(図4B)、および,腸カルシウム輸送を生じる活性は1,25−(OH)より著しく少ないこと(図5Aおよび5B)が実証された。
【0059】
2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDの測定された低カルシウム血症活性は、2−メチレン−19−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDにより生成されるカルシウム血症活性を考慮しても、予期せぬことである。表1は、引用することにより全体が本明細書に完全に明記されるかのように本明細書に組み入れられるGrzywacz et al., Arch. of Biochem. Biophys., 460, 274 (2007)により報告された2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンD(「26N」と称する)のカルシウム血症活性と、2−メチレン−19−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンD(「26Me」と称する)のカルシウム血症活性を列挙している。比較目的で、ビヒクル単独で見られる対応する活性を減じた後、最終的な骨カルシウム動員活性および腸カルシウム輸送活性を提示する。
【0060】
【表1】

【0061】
化学構造的に、2−メチレン−19−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDと2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDとは、前者が26−メチル基を有する点で異なる。この小さな化学構造の違いにもかかわらず、2つの化合物はカルシウム血症活性に関する極めて異なる生物学的性質を示す。表1に示すように、2−メチレン−19,26−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDは、260pmol投与量での骨カルシウム動員または腸カルシウム輸送のいずれに関しても、本質的にカルシウム血症活性を示さない。7020pmol投与量でさえ、26Nは骨カルシウム動員活性をほとんど示さない。それに対して、2−メチレン−19−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDは、同じ260pmol投与量で骨カルシウム動員と腸カルシウム輸送の両方に著しい活性を示し2340pmol投与量では、26Nの7020pmolより高い投与量での骨カルシウム血症活性の、約10倍を示す。
【0062】
2−メチレン−19−ノル−(20S)−1α−ヒドロキシビタミンDにより示された生物学的性質は、本化合物が、血清カルシウムの上昇が望ましくない疾患の治療に極めて有効であることを例示する。したがって本化合物は、慢性腎不全を患う患者の二次性副甲状腺機能亢進症の治療への実用性が見いだされるに違いない。なぜなら、慢性腎不全を患う患者では、心臓、大動脈、および他の重要な臓器へのカルシウム沈着を恐れて、平均以上の血清カルシウムの上昇が望ましくない一方で、本化合物は副甲状腺増殖およびプレプロ副甲状腺遺伝子の転写を抑制するからである。同様に本化合物は、乳癌、結腸直腸癌、および前立腺癌などの悪性腫瘍の治療、または多発性硬化症、狼瘡、関節リウマチ、1型糖尿病、および炎症性腸疾患などの自己免疫疾患の治療に有効であり得る。また本化合物は、移植拒絶反応の予防に有効であり得る。
【0063】
本技術は本明細書に例示のために明記された実施形態に限定されないが、下記の特許請求の範囲内となるように、その当該形態の全てを包含することが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:

で表される化合物であって、式中、XおよびXが、独立してHおよびヒドロキシ保護基から選択される、化合物。
【請求項2】
およびXが共にヒドロキシ保護基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
およびXが共にt−ブチルジメチルシリル基である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
およびXが共にHであり、かつ前記化合物が式IA:

で表される、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
およびXが共にHであり、前記化合物が式IB:

で表される、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の化合物の有効量および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項7】
前記有効量が前記組成物1グラム当たり約0.01μg〜約1mgの化合物を含む、請求項6記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記有効量が前記組成物1グラム当たり約0.1μg〜約500μgの化合物を含む、請求項6記載の薬学的組成物。
【請求項9】
ある生物学的状態を患う対象を治療する方法であって、
前記方法が、請求項4または請求項5の化合物の有効量を該対象に投与する工程を含み、
前記生物学的状態が、乾癬;白血病;大腸癌;乳癌;前立腺癌;多発性硬化症;狼瘡;糖尿病;宿主対移植片反応;臓器移植拒否反応;関節リウマチ、ぜんそく、もしくは炎症性腸疾患から選択される炎症性疾患;しわ、十分な皮膚のハリ不足、十分な皮膚水分の不足、もしくは不十分な皮脂分泌から選択される皮膚状態;腎性骨ジストロフィー;または骨粗しょう症から選択される、方法。
【請求項10】
前記生物学的状態が乾癬である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的状態が、白血病、大腸癌、乳癌、または前立腺癌から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的状態が多発性硬化症、狼瘡、糖尿病、宿主対移植片反応、または臓器移植拒否反応から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記生物学的状態が関節リウマチ、ぜんそく、または、セリアック病、潰瘍性大腸炎、およびクローン病より選択される炎症性腸疾患から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的状態がしわ、十分な皮膚のハリ不足、十分な皮膚水分の不足、または不十分な皮脂分泌から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が対象に経口投与される、請求項9記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が対象に非経口投与される、請求項9記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が対象に経皮的に投与される、請求項9記載の方法。
【請求項18】
前記化合物が対象に局所的に投与される、請求項9記載の方法。
【請求項19】
前記化合物が約0.01μg/日〜約1mg/日の用量で投与される、請求項9記載の方法。
【請求項20】
乾癬;白血病;大腸癌;乳癌;前立腺癌;多発性硬化症;狼瘡;糖尿病;宿主対移植片反応;臓器移植拒否反応;関節リウマチ、ぜんそく、もしくは炎症性腸疾患から選択される炎症性疾患;しわ、十分な皮膚のハリ不足、十分な皮膚水分の不足、もしくは不十分な皮脂分泌から選択される皮膚状態;腎性骨ジストロフィー;または骨粗しょう症を治療するための、請求項4または請求項5記載の化合物。
【請求項21】
乾癬;白血病;大腸癌;乳癌;前立腺癌;多発性硬化症;狼瘡;糖尿病;宿主対移植片反応;臓器移植拒否反応;関節リウマチ、ぜんそく、または炎症性腸疾患から選択される炎症性疾患;しわ、十分な皮膚のハリ不足、十分な皮膚水分の不足、もしくは不十分な皮脂分泌から選択される皮膚状態;腎性骨ジストロフィー;または骨粗しょう症を治療する医用薬剤を調製するための、請求項4または請求項5記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−512259(P2013−512259A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541222(P2012−541222)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/058208
【国際公開番号】WO2011/066506
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(505098661)ウイスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション (11)
【Fターム(参考)】