説明

2−置換−4−置換−1,3−オキサチオラン類のキラル分割法

本発明は、2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン及びその誘導体をキラル分割する新規な方法に関する。本発明はまた、新規な2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン誘導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I):
【化1】

の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン類及びそれらの誘導体をキラル分割する新規な方法に関する。
【0002】
本発明はまた、新規な2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン誘導体に関する。
【背景技術】
【0003】
2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン類として知られている化合物群、特に、ピリミジンヌクレオシドの類似体の誘導体は、強力な抗ウイルス活性を有することが見出されている。特に、これらの化合物は、当技術分野で既知の化合物より細胞毒性副作用が少なく、T-リンパ球におけるHIV-1複製の強力な阻害薬として長期にわたって作用することが見出されている(例えば、Belleauら、(1993) Bioorg. Med. Chem. Lett. 3巻、No.8、1723〜1728を参照されたい)。これらの化合物はまた、3TC耐性HIV株に対して活性であることが見出されている(例えば、Taylorら、(2000) Antiviral Chem. Chemother. 11巻、No.4、291〜301;及びStoddartら、(2000) Antimicrob. Agenst Chemother. 44巻、No.3、783〜786を参照されたい)。これらの化合物はまた、B型肝炎ウイルス感染症の予防及び治療で有用である。これらの化合物は、国際公開第92/08717号、国際公開第95/29176号、国際公開第02/102796号及び国際公開第2006/096954号に開示されている方法に従って作製してもよい。
【0004】
2-置換-4-置換-1,3-オキサチオランファミリーの化合物は、2個のキラル中心を含む。2個のキラル中心を含む化合物は、4種の立体異性体の混合物として存在することができ、ここで、2個のキラル中心における配置は、(R,R)または(R,S)または(S,R)または(S,S)である。(R,R)及び(S,S)の形態は、これらは互いの鏡像を重ね合わせることが出来ないので、cisエナンチオマーとして知られており、(R,S)及び(S,R)の形態は、同じ理由でtransエナンチオマーとして知られている。ヒトの治療用の使用では、通常、この化合物を立体異性体のただ1つの形態(キラル的に純粋な形態としても知られている)に単離することが典型的には必要とされる。単一立体異性体の合成は、エナンチオマーとして純粋な形態または適した中間体の単一キラル中心を有する出発材料から達成することができる。
【0005】
例えば、cis-2-ヒドロキシメチル-4-(シトシン-1'-イル)-1,3-オキサチオランは、Mansourら、「Anti-Human Immunodeficiency Virus and Anti-Hepatitis-B Virus Activities and Toxicities of the Enantiomers of 2'-Deoxy-3'-oxa-4'-thiacytidine and Their 5-Floro Analogues in vitro」、J. Med. Chem.、(1995)、38巻、No.1、1〜4によって記載された方法、ならびに米国特許第6,228,860号、Nucleosides and Nucleotides、(1995)14(3〜5)627〜735及びCaputoら、Eur. j. Org. Chem.(1999) 6巻、1455〜1458に開示されている方法で製造してもよい。
【0006】
しかし、合成方法は、必ず立体特異的に新規なキラル中心を形成するものではなく、エナンチオマー過剰率(ee)として知られている比を示す:
【0007】
【数1】

【0008】
化合物が単一形態として所望のものであるとき、例えば、(R,R)及び(S,S)cisエナンチオマーの2種のみが存在する場合、単一形態は、(R,R)または(S,S)の形態のいずれかであり、2種のcisエナンチオマーの混合物のキラルHPLCによる分割によって得てもよい。この技術の概説は、J. Jacques、A. Collet & S. H. Wilen(John Wiley & Sons、1981)による「Enantiomers, Racemates and Resolutions」に見出せる。
【0009】
あるいは、化合物または任意の好都合な中間体を、シチジンデアミナーゼなどの適当な酵素で酵素媒介エナンチオ選択的異化作用または適当な誘導体の選択的酵素分解によって分割してもよい(例えば、Storerら、「The resolution and Absolute Stereochemistry of the Enantiomers of cis 1[2(Hydroxomethyl)-1,3-Oxathiolan-5-Yl)Cytosine(BCH-189):Equipotent Anti-HIV Agents」、Nucleosides & Nucleotides、(1993)12(2)、225〜236を参照されたい)。
【0010】
化合物のラセミ混合物と光学活性な分割性酸または分割性塩基との反応もまた、化合物のエナンチオマー分割に使用することができる。例えば、国際公開第2006/096954号には、光学活性なcis1,3-オキサチオランを調製する方法が開示されている。この方法は、(a)2種のジアステレオマーの塩を生成するために、cis配置の1,3-オキサチオラン化合物とキラル酸とを反応させる工程と、(b)2種のジアステレオマーの塩の1つを回収する工程と、(c)キラル酸を除去するために脱塩する工程とを含む。好ましいキラル酸には、(+)-L-酒石酸、(1R)-(-)-10-カンファースルホン酸、(-)-2,3-ジベンゾイル酒石酸または(-)-L-リンゴ酸が含まれる。この方法には、2種のジアステレオマーの塩を生成するために、キラル酸と共にアキラル酸の添加も開示されている。しかし、国際公開第2006/096954号の方法の欠点は、塩形成段階である。この段階は、キラル酸試薬及び場合によりアキラル酸も必要とする。塩形成段階は、所望の光学活性なcis生成物を得るために、脱塩段階の導入をさらに必要とする。
【0011】
国際公開第2006/096954号の方法で要求される、キラル酸などの追加の試薬の使用、及び工程における脱塩段階などの余分な段階は、所望の生成物の生産コストを増大させ、生産時間を増大させるので商業的環境において望ましくない。さらに、工程の各追加の段階により、工程の各段階で起こる損失による最終製品の非効率的な回収率に関する可能性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第92/08717号
【特許文献2】国際公開第95/29176号
【特許文献3】国際公開第02/102796号
【特許文献4】国際公開第2006/096954号
【特許文献5】米国特許第6,228,860号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Belleauら、(1993) Bioorg. Med. Chem. Lett. 3巻、No.8、1723〜1728
【非特許文献2】Taylorら、(2000) Antiviral Chem. Chemother. 11巻、No.4、291〜301
【非特許文献3】Stoddartら、(2000) Antimicrob. Agenst Chemother. 44巻、No.3、783〜786
【非特許文献4】Mansourら、「Anti-Human Immunodeficiency Virus and Anti-Hepatitis-B Virus Activities and Toxicities of the Enantiomers of 2'-Deoxy-3'-oxa-4'-thiacytidine and Their 5-Floro Analogues in vitro」、J. Med. Chem.、(1995)、38巻、No.1、1〜4
【非特許文献5】Nucleosides and Nucleotides、(1995)14(3〜5)627〜735
【非特許文献6】Caputoら、Eur. j. Org. Chem.(1999) 6巻、1455〜1458
【非特許文献7】J. Jacques、A. Collet & S. H. Wilen(John Wiley & Sons、1981)による「Enantiomers, Racemates and Resolutions」
【非特許文献8】Storerら、「The resolution and Absolute Stereochemistry of the Enantiomers of cis 1[2(Hydroxomethyl)-1,3-Oxathiolan-5-Yl)Cytosine(BCH-189):Equipotent Anti-HIV Agents」、Nucleosides & Nucleotides、(1993)12(2)、225〜236
【非特許文献9】Greene, T. W.及びWuts, P. G. M「Protective groups in organic synthesis」(第3版)1999 John Wiley & Sons Inc.
【非特許文献10】Lorenz, H.ら、Journal of the University of Chemical Technology and Metallurgy(2007)42(1):5〜16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、一般式(II)または(III)の光学活性化合物を、基R2、R3、及びR4の適切な選択によって、選択的再結晶化で得ることができることを見出した。本発明者らはまた、最適な再結晶化溶媒の選択は、基R2、R3、及びR4に基づいて選択されることも見出した。本発明は、以前の方法で必要とされた塩化及び脱塩段階を回避し、光学活性なcis 1,3-オキサチオランを生成するためのより単純な、より効率的な方法を提供する。特に好ましい態様では、本発明は、再結晶化によって、transジアステレオマーなどの望ましくないジアステレオマーを分離し、cis異性体の光学純度を高める方法を提供する。本発明は、新規な2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン誘導体も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様によれば、本発明は、一般式(II)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン
【0016】
【化2】

【0017】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
を形成する工程と、
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と
を含む方法を提供する。
【0018】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0019】
第2の態様によれば、本発明は、一般式(II)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(IV)の塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させる工程と、
【0020】
【化3】

【0021】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3であり;
ここで、一般式(V)の1,3-オキサチオランは、少なくとも60%eeの(R)-エナンチオマーである]
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と
を含む方法を提供する。
【0022】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0023】
第3の態様によれば、本発明は、一般式(VI)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン
【0024】
【化4】

【0025】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
を形成する工程と、
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と、
(c)一般式(VI)の化合物
【0026】
【化5】

【0027】
を生成するために一般式(II)の化合物を脱保護する工程と
を含む方法を提供する。
【0028】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0029】
第4の態様によれば、本発明は、一般式(VI)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(IV)の塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させる工程と、
【0030】
【化6】

【0031】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)O-C1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3であり、
ここで、一般式(V)の1,3-オキサチオランは、少なくとも60%eeの(R)-エナンチオマーである]、
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と、
(c)一般式(VI)の化合物
【0032】
【化7】

【0033】
を生成するために一般式(II)の化合物を脱保護する工程と
を含む方法を提供する。
【0034】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0035】
第5の態様において、本発明は一般式(VIII)または(IX)の化合物
【0036】
【化8】

【0037】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)O-C1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、それぞれ独立して、Hまたはベンゾイルから選択され、但し、R3がHの場合、R4はHではなく、R4がHの場合、R3はHではなく;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
を提供する。
【0038】
第6の態様において、本発明は、一般式(VIII)または(IX)の化合物から、それぞれ一般式(VI)または(VII)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(VI)または(VII)の化合物を生成するために、それぞれ一般式(VIII)または(IX)の化合物を脱保護する工程
【0039】
【化9】

【0040】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、それぞれ独立して、Hまたはベンゾイルから選択され、但し、R3がHの場合、R4はHではなく、R4がHの場合、R3はHではなく;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
を含む方法を提供する。
【0041】
第7の態様によれば、本発明は、一般式(II)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(X)のシリル化塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させる工程と、
【0042】
【化10】

【0043】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3であり、
R10は、先に定義された通り一般式SiR7R8R9のシリル保護基であり;
ここで、一般式(V)の1,3-オキサチオランは、少なくとも60%eeの(R)-エナンチオマーである]
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と
を含む方法を提供する。
【0044】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0045】
第8の態様によれば、本発明は、一般式(VI)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(X)のシリル化塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させる工程と、
【0046】
【化11】

【0047】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)O-C1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3であり;
R10は、先に定義された通り一般式SiR7R8R9のシリル保護基であり;
ここで、一般式(V)の1,3-オキサチオランは、少なくとも60%eeの(R)-エナンチオマーである]
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と、
(c)一般式(VI)の化合物
【0048】
【化12】

【0049】
を生成するために一般式(II)の化合物を脱保護する工程と
を含む方法を提供する。
【0050】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0051】
第9の態様によれば、本発明は、式(XIII)の化合物
【0052】
【化13】

【0053】
及びそのジアステレオマーを提供する。
【0054】
第10の態様によれば、本発明は、一般式(II)の化合物を一般式(III)の化合物から分離する方法であって、
(a)一般式(II)と(III)の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオランの混合物を提供する工程と、
【0055】
【化14】

【0056】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化によって、一般式(II)の化合物を一般式(III)の化合物から分離する工程と
を含む方法を提供する。
【0057】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
ここに、好ましい実施形態を参照することによって限定することなく、本発明を説明する。
【0059】
本発明は、有利には、一般式IIまたはIIIの光学活性化合物
【0060】
【化15】

【0061】
を選択的再結晶化によって得る方法を提供する。
【0062】
一般式(II)または(III)の化合物は、2種のcis異性体の混合物または4種の立体異性体の混合物(これらは、以下の通りの2種のcis異性体(II)及び(III)ならびに2種のtrans異性体(XI)及び(XII)である)から選択的に再結晶化し得る。
【0063】
【化16】

【0064】
【化17】

【0065】
第1の態様によれば、本発明は、一般式(II)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン
【0066】
【化18】

【0067】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
を形成する工程と、
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と
を含む方法を提供する。
【0068】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0069】
好ましくは、R2はアシル基、さらにより好ましくはベンゾイル基またはアセチル基である。
【0070】
好ましくは、R3及びR4は、それぞれ独立してHまたはベンゾイルから選択され、但し、R3がHの場合、R4はHではなく、R4がHの場合、R3はHではない。
【0071】
好ましくは、R5はHまたはFである。
【0072】
好ましくは、一般式SiR7R8R9のシリル基は、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS/TBS)、トリ-イソ-プロピルシリル(TIPS)、及びトリエチルシリル(TES)からなる群から選択される。
【0073】
第2の態様によれば、本発明は、一般式(II)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(IV)の塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させる工程と、
【0074】
【化19】

【0075】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3であり;
ここで、一般式(V)の1,3-オキサチオランは、少なくとも60%eeの(R)-エナンチオマーである]
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と
を含む方法を提供する。
【0076】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0077】
好ましくは、R2は、アシル基、さらにより好ましくはベンゾイル基またはアセチル基である。
【0078】
好ましくは、R3及びR4は、それぞれ独立して、Hまたはベンゾイルから選択され、但し、R3がHの場合、R4はHではなく、R4がHの場合、R3はHではない。
【0079】
好ましくは、R5はHまたはFである。
【0080】
好ましくは、一般式SiR7R8R9のシリル基は、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS/TBS)、トリ-イソ-プロピルシリル(TIPS)、及びトリエチルシリル(TES)からなる群から選択される。
【0081】
第3の態様によれば、本発明は、一般式(VI)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン
【0082】
【化20】

【0083】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
を形成する工程と、
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と、
(c)一般式(VI)の化合物
【0084】
【化21】

【0085】
を生成するために一般式(II)の化合物を脱保護する工程と
を含む方法を提供する。
【0086】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0087】
好ましくは、R2は、アシル基、さらにより好ましくはベンゾイル基またはアセチル基である。
【0088】
好ましくは、R3及びR4は、それぞれ独立して、Hまたはベンゾイルから選択され、但し、R3がHの場合、R4はHではなく、R4がHの場合、R3はHではない。
【0089】
好ましくは、R5はHまたはFである。
【0090】
好ましくは、一般式SiR7R8R9のシリル基は、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS/TBS)、トリ-イソ-プロピルシリル(TIPS)、及びトリエチルシリル(TES)からなる群から選択される。
【0091】
第4の態様によれば、本発明は、一般式(VI)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(IV)の塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させる工程と、
【0092】
【化22】

【0093】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3であり、
ここで、一般式(V)の1,3-オキサチオランは、少なくとも60%eeの(R)-エナンチオマーである]、
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と、
(c)一般式(VI)の化合物
【0094】
【化23】

【0095】
を生成するために一般式(II)の化合物を脱保護する工程と
を含む方法を提供する。
【0096】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0097】
好ましくは、R2は、アシル基、さらにより好ましくはベンゾイル基またはアセチル基である。
【0098】
好ましくは、R3及びR4は、それぞれ独立して、Hまたはベンゾイルから選択され、但し、R3がHの場合、R4はHではなく、R4がHの場合、R3はHではない。
【0099】
好ましくは、R5はHまたはFである。
【0100】
好ましくは、一般式SiR7R8R9のシリル基は、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS/TBS)、トリ-イソ-プロピルシリル(TIPS)、及びトリエチルシリル(TES)からなる群から選択される。
【0101】
第5の態様において、本発明は、一般式(VIII)または(IX)の化合物
【0102】
【化24】

【0103】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、それぞれ独立して、Hまたはベンゾイルから選択され、但し、R3がHの場合、R4はHではなく、R4がHの場合、R3はHではなく;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
を提供する。
【0104】
好ましくは、R2は、アシル基、より好ましくはベンゾイル基またはアセチル基である。
【0105】
好ましくは、R5はHまたはFである。
【0106】
第6の態様において、本発明は、一般式(VIII)または(IX)の化合物から、それぞれ一般式(VI)または(VII)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(VI)または(VII)の化合物を生成するために、それぞれ一般式(VIII)または(IX)の化合物を脱保護する工程
【0107】
【化25】

【0108】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、それぞれ独立して、Hまたはベンゾイルから選択され、但し、R3がHの場合、R4はHではなく、R4がHの場合、R3はHではなく;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
を含む方法を提供する。
【0109】
好ましくは、R2は、アシル基、より好ましくはベンゾイル基またはアセチル基である。
【0110】
好ましくは、R5はHまたはFである。
【0111】
第7の態様によれば、本発明は、一般式(II)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(X)のシリル化塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させる工程と、
【0112】
【化26】

【0113】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3であり、
R10は、先に定義された通り一般式SiR7R8R9のシリル保護基であり;
ここで、一般式(V)の1,3-オキサチオラン、少なくとも60%eeの(R)-エナンチオマーである]
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と
を含む方法を提供する。
【0114】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0115】
第8の態様によれば、本発明は、一般式(VI)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(X)のシリル化塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させる工程と、
【0116】
【化27】

【0117】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3であり;
R10は、先に定義された通り一般式SiR7R8R9のシリル保護基であり;
ここで、一般式(V)の1,3-オキサチオランは、少なくとも60%eeの(R)-エナンチオマーである]
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と、
(c)一般式(VI)の化合物
【0118】
【化28】

【0119】
を生成するために一般式(II)の化合物を脱保護する工程
を含む方法を提供する。
【0120】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0121】
第9の態様によれば、本発明は、式(XIII)の化合物
【0122】
【化29】

【0123】
及びそのジアステレオマーを提供する。
【0124】
第10の態様によれば、本発明は、一般式(II)の化合物を一般式(III)の化合物から分離する方法であって、
(a)一般式(II)と(III)の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオランの混合物を提供する工程と、
【0125】
【化30】

【0126】
[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化によって、一般式(II)の化合物を一般式(III)の化合物から分離する工程と
を含む方法を提供する。
【0127】
特に好ましい実施形態では、R6はフェニルである。
【0128】
定義
「アルキル」という用語は、直鎖もしくは分枝アルキル基を含み、場合によって置換されていてもよいものと当業者には理解される。直鎖もしくは分枝アルキル基の例には、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソ-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、ジもしくはトリアルキル化エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル基が含まれる。
【0129】
「アリール」には、芳香族残基を含む一環、二環もしくは多環式環系が含まれ、例には、フェニル、ビフェニル、及びナフチルが含まれる。アリール基は、場合によって置換されていてもよい。
【0130】
本明細書で使用される場合、「アルキルアリール」という用語は、好ましくは6〜10個の炭素原子を有し、アルキル鎖と共に芳香族残基を含む一環、二環、または多環式(共役及び縮合を含む)任意の炭化水素環系を指す。適したアルキルアリール基には、限定するものではないが、ベンジル(即ち-CH2フェニル)が含まれる。
【0131】
「アシル」とは、カルボキシルC=O部分を含むが、カルボン酸、エステル、またはアミドではない基を意味するものと理解される。アシル基には、限定するものではないが、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。
【0132】
「シリル保護基」は、例えば、Greene, T. W.及びWuts, P. G. M「Protective groups in organic synthesis」(第3版)1999 John Wiley & Sons Inc.に述べられているように、当業者には知られている。
【0133】
2-置換-4-置換-1,3-オキサチオランの一般的合成
2-置換-4-置換-1,3-オキサチオランの合成は、4種の立体異性体の混合物(これらは、表1に示すような比率の、2種のcis異性体及び2種のtrans異性体である)を提供するために、いくつかの方法によって実施してもよい。
【0134】
【表1】

【0135】
本発明によれば、一般式(II)または(III)の化合物は、スキーム1に示すように、一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(IV)の塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させることよって製造される。
【0136】
【化31】

【0137】
一般式(II)または(III)の化合物は、スキーム2に示すように、一般式(X)のシリル化塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させることによって製造してもよく、ここでR10はシリル保護基である。
【0138】
【化32】

【0139】
一般式(V)の1,3-オキサチオランは、少なくとも60%eeの、好ましくは少なくとも70%の、より好ましくは85%eeを超える、さらにより好ましくは95%eeを超える、さらにより好ましくは99%eeを超える(R)-エナンチオマーである。当業者であれば、スキーム1及び2に例示した反応から得られる化合物(II)及び化合物(III)の量は、(R)-エナンチオマー化合物(V)の%eeにより決まることを理解しよう。化合物(V)の(R)-エナンチオマーの%eeが、例えば、95%超の場合、この結果として一般式(II)の(R,R)cis異性体が、形成される主な異性体である。化合物(V)の(R)-エナンチオマーの%eeが低下するとともに、形成される化合物(II)の量が減少して、それに応じて化合物(III)の量が増加する。trans異性体もこの方法で形成される。
【0140】
本発明の実施形態による特に好ましい一般的な反応条件は、ジクロロメタン中で、トリメチルシリルアイオダイド(TMSI)、トリエチルアミン、及び触媒量の塩化銅(II)の存在下、N-ベンゾイルシトシン(2)と2-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン-S-オキシド(1)とのカップリングを含む(スキーム3)。
【0141】
【化33】

【0142】
この反応は、シラ-プメラー転位を受ける(1)の初期活性化を介して進行する。塩化銅(II)は、シリル化ベンゾイルシトシンのβ攻撃を誘導して、カップリング中にcis選択性の増大を引き起こす役割を果たすものと考えられる。しかし、このcis選択性の増大はわずかであり、CuCl2の量は、この反応に有意の影響を及ぼすことなく減少することができる。(1)のシラ-プメラー転位は、-50℃で実施され、塩基とのカップリングが0℃で一晩行われ、その後室温まで温め、クエンチした。
【0143】
クエンチした粗製反応混合物をセライトを通してろ過し、これは後処理工程を複雑にし得る固体形成の問題を軽減した。ろ過された反応混合物を希アンモニア水及び希リン酸で洗浄した。得られた粗製反応混合物をメタノール中で再結晶化することによって精製した。メタノール中での再結晶化は、ほとんど排他的に所望のcis異性体を生じさせた。メタノール中での再結晶化は、光学純度をも高め、エントレインメントの技術を用いることによって光学純度をさらに改良することができる。この発見は、光学的により純粋ではない出発材料で開始する場合特に有用であり、本発明の特に重要な発見である。
【0144】
選択的再結晶化
本発明者らは、一般式(II)または(III)の光学活性化合物の、その混合物からの選択的再結晶化のためには、基R2、R3、及びR4の適切な選択が必要とされることを見出した。再結晶化溶媒の選択も、基R2、R3、及びR4の性質に依存する。
【0145】
スキーム4に示すように、アセチル、イソブチリルカルボニル、ピバリルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、p-トルオイル、及びベンゾイル基で保護されたシトシンをBOMO-スルホキシドとカップリングさせた。
【0146】
【化34】

【0147】
例えば、R2がベンゾイルであり、R5=H、R3=H、及びR4=アセチルである場合、cis異性体(R,R及びS,S)(化合物II及びIII)ならびにtrans異性体(R,S及びS,R)(化合物XI及びXII)の混合物からの再結晶化は、表2に示すように少しも分離をもたらさない。ベンゾイルで保護されたシトシンのカップリングされた生成物は、高いcis選択性で効率的に結晶化することが判明した。
【0148】
【表2】

【0149】
基R2、R3、及びR4の適切な選択によって、すべての4種の立体異性体の混合物からの再結晶化によって、化合物、例えば式(II)の選択的分割が生じる条件を選択することができる。表2に示すように、R2=ベンゾイル及びR3=Hの場合、R4を以下の通り変化させた場合、R4=ベンゾイルは、キラル的に純粋な化合物として再結晶化をもたらし、一方、R4=アセチルまたはピバリルまたはイソブチリルは、所望のキラル的に純粋な化合物を選択的に再結晶化することができないことを見出した。
【0150】
したがって、本発明の第1、第2、第3、第4、第6、第7、第8、及び第10の態様による方法の好ましい実施形態では、一般式IIまたはIIIの化合物のR3またはR4はベンゾイルである。好ましい実施形態では、一般式IIまたはIIIの化合物のR2もベンゾイルである。
【0151】
Cis選択的再結晶化
N-ベンゾイルの経路の最も魅力的な利点の1つは、メタノール中での再結晶化は、ほとんど排他的に所望のcis(R,R)異性体を生じることである。本発明の好ましい実施形態は、0.2当量のCuCl2を用いた場合、5g及び10g規模の反応で、この反応は2.86:1(74%)から2.5:1(71%)の間の選択性を有するcis選択性であったことを示す。14〜15倍容積のメタノール中(粗製物の質量に対して)での再結晶化は、ほとんど排他的にcis異性体を生じさせた。
【0152】
再結晶化溶媒
したがって、最適な再結晶化溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である。C1〜6アルコールは、直鎖もしくは分枝鎖アルコールであってもよい。メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、プロパノール、及びブタノールが好ましく、これらの中でメタノールが特に好ましい。表3及び表4に示すように、MeOHは、特に99%超のeeの化合物(II)を得るのに好ましい。
【0153】
【表3】

【0154】
【表4】

【0155】
混合溶媒系
混合溶媒系中のエントレインメントを用いた再結晶化を検討した。C1〜6アルコールの混合物はまた、MeOHと、EtOH、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールなどの別のC2〜6アルコールとの、MeOH:C2〜6アルコールの様々な比、約2:98〜98:2、約5:95〜95:5、約10:90〜90:10、約20:80〜80:20、または約30:70〜70:30の混合物を含む好ましい再結晶化溶媒である。MeOH:C2〜6アルコールの好ましい比は90:10であり、特に好ましくは、95:5のMeOH:C2〜6アルコールの比である。C1〜6アルコールまたはこれらの混合物は、5%以下の水を含むことが好ましい。
【0156】
すべての再結晶化は、53℃でシード14mg/g粗製物をシード添加し、14倍容積の溶媒と共に1000rpmで撹拌した。出発材料BOMOのR/S比が、80/20(実際のR/S比:82:18)である反応由来の粗製混合物について再結晶化を実施した。この結果を表5に示す。しかし、以下の表10及び表11に示された再結晶化の結果とは対照的に、粗製物のHPLC分析は、およそ86/14の粗製物のR/S比を示した。しかし、R/S比が、特に90:10未満に低下する場合、trans異性体も結晶化する(以下の表9を参照)傾向が存在する。この一連の実験において、trans異性体が、一様に約10〜12%認められた。したがって、実測したRR/SS比は、R,R及びS,S trans異性体の存在に対して補正した。とにかく、光学活性におけるかなりの改良が存在する。表5に示すように、100%メタノールが特に好ましい。メタノールと、例えば、1-プロパノール5%または1-ブタノール5%との混合物も特に好ましい。
【0157】
【表5】

【0158】
光学純度の向上
光学純度の向上は、より高い光学純度を有する再結晶化生成物を得るのに、より低い光学純度を有する出発材料の使用を可能にして、より低い生産コストをもたらす本発明の望ましい利点である。
【0159】
再結晶化工程の反復及びエントレインメント
本発明の好ましい実施形態では、第1、第2、第3、第4、第7、第8、及び第10の態様による選択的再結晶化工程(b)は、少なくとも1回反復される。選択的再結晶化工程の反復は、反復する工程の結果として所望のエナンチオマーの追加量を回収し得るので、所望のエナンチオマーの全体的な収率の増加を助長し得る。しかし、再結晶化工程はまた、第1の選択的再結晶化工程では得られなかった異性体を選択的に再結晶化することを反復し得るものと理解される。したがって、例えば、所望のR,R-エナンチオマーが第1の再結晶化工程で選択的に再結晶化することができ、第2の再結晶化工程でS,S-エナンチオマーが選択的に再結晶化してもよい。
【0160】
特に好ましい実施形態では、第1、第2、第3、第4、第7、第8、及び第10の態様による選択的再結晶化工程(b)は、エントレインメントまたは周期的エントレインメント工程である。本発明者らは、驚くべきことに、好ましい単一エナンチオマーの収率は、エントレインメントによってより増加されることを見出している。実験の節の実施例3で得られた結果によって例示されるように、わずかな量のR,R-エナンチオマーの添加は、R,R-エナンチオマーの再結晶化に有利に働く。したがって、このシード添加またはエントレインメント工程は、所望のエナンチオマーの再結晶化収率を有利に増加させる。実施例3で得られた結果を表6に示す。
【0161】
【表6】

【0162】
再結晶化の間の光学純度の向上を調べるために、出発材料2-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン-S-オキシド(BOMO)(R-BOMO(11)及びS-BOMO(18))試料をキラルHPLCによって分析した。
【0163】
【化35】

【0164】
表7から分かるように、供給されたBOMOは多様な純度であった。
【0165】
【表7】

【0166】
試料は他の不純物を同様に含むことが多く、これが、R/S比がHPLC分析と比較して異なる理由であることに留意されたい。
【0167】
2回の再結晶化を介した光学純度の向上
非常に純粋な生成物を得るために2回の再結晶化を実施した結果を表8に示す。これらの再結晶化は、エントレインメントを用いないで実施した。興味深いことには、純粋な生成物の溶解度は、粗生成物に比較してメタノール中でより低いように見える。これは、存在する不純物がこの生成物を可溶化するのを助けるからであり得る。例えば、この粗生成物は還流メタノール(10〜15倍)中で容易に再結晶化させることができる。しかし純粋な生成物では、本発明者らは、25倍容積の還流メタノール中でさえ生成物を溶解することは容易ではないが分かり、通常、本発明者らは40倍容積の還流メタノールを使用した(以下の実施例では、本発明者らは30倍容積を使用した)が、依然として高い回収率であった。
【0168】
実験に「純粋な」R BOMO(R/S比98.3/1.7)を使用した。15倍容積のメタノール中の第1の再結晶化は、99.13/0.87のRR/SS比を有する生成物を得た。第2の再結晶化(30倍容積のメタノール中)は、95%の回収率でRR/SS比を99.6/0.4まで増加した。第2の再結晶化からの回収率が高いので、第2の再結晶化はまた、第1の再結晶化から残った多少のtrans異性体がたとえ存在しても魅力的であり得る。
【0169】
【表8】

【0170】
したがって、最終カップリングされた生成物のRR/SS比を本発明の再結晶化法を用いて向上させる能力の点からみて、カップリング反応に使用される出発材料BOMOはより低い純度(即ち、R:S比)であってもよい。
【0171】
エントレインメントを介した光学純度の向上
エナンチオマーのラセミ混合物は、結晶化工程の間に分割することができる。エナンチオマーの混合物は、ラセミ化合物の形成によって、または凝集体の形成によって結晶化することができる。ラセミ化合物では、結晶は、格子中の両方のエナンチオマーの等量の規則的配列である。しかし凝集体では、一方のエナンチオマーの分子は、同じエナンチオマーに優先的に引き寄せられ、それによって、一方のまたは他のエナンチオマーに属する結晶の物理的な混合物として結晶化する。対象とする物質が凝集体として結晶化する場合は、エントレインメント(本質的には、対象とするエナンチオマーの結晶化のためのシードとして純粋な結晶を用いることによる)として知られている方法を使用して、所望のエナンチオマーを優先的に結晶化させて、光学純度を高めることができる。
【0172】
エントレインメントは、多くの変数によって影響を受け得る。
シード添加を実施する温度:温度が低すぎる場合、自然の結晶化が開始し得る。温度が高すぎる場合、添加したシード結晶の一部が溶解することになる;
使用するシード結晶の量;
シードの純度及び粒径;
結晶化の間の撹拌速度;
撹拌時間;
溶媒、メタノールの容積;
粗製物の品質も影響を与え得る。例えば、本発明者らは、純粋な生成物は不純物の存在下よりメタノール中の溶解性がより低いことを見出した。
【0173】
出発材料BOMOがR/S混合物の場合の再結晶化の間の光学純度の向上
R/S BOMO混合物(R/S 100:0〜50:50の様々な比)をH2O2/HOAcで対応するS-オキシドに酸化し、次いで、得られたS-オキシドを結晶化することなく、ベンゾイルシトシンとカップリングさせた。S-オキシドそれ自体が凝集体の形成を介して結晶化することが可能である場合は、この不均一系混合物から取り出される部分は、所望のものと異なる光学的バイアスを生じ得るものと仮定した。この反応を通常の方法で後処理し、粗製物をエントレインメントを用いて及び用いないで再結晶化させた。
【0174】
先ず、この粗製材料からすべての溶媒を除去した。次いで、これをすべての物質が溶解するまで14倍容積のメタノール中で還流した。次に、これを温度を監視しながら、撹拌して冷却させておいた。およそ55℃の温度で、撹拌された混合物に純粋な「R,R」異性体によるシードを添加し、室温に至るようにさせ、一晩撹拌した。次いで、結晶化した混合物をろ過し、メタノールで洗浄し、キラルHPLCで分析した。対照として、同じ試料をすべてが溶解するまでメタノール中で還流し、次いで、少しも撹拌またはシード添加をせずに冷却させておいた。
【0175】
要約すると、以下の表9の結果は、たとえエントレインメントを用いなくても、結晶化の間にかなり光学純度が向上することを示す。出発材料BOMOの80/20のR/S比であっても、RR/SS比は、エントレインメントを用いなくても95/5まで増加している。しかし、エントレインメントによりその向上はさらに高くなる。90/10ほどの低い出発材料BOMOのR/S比は、99%を超える最終純度を示し、一方、80/20のR/S比は、98%を超える純度を示した。この情報は、出発材料BOMOは、高い生成物純度を得るのに、必ずしも極めて純粋である必要ではないことを示す。しかし、出発材料の光学純度が低下するにつれて、cis-trans分離の品質も低下することに留意することも興味深い。概して、90/10未満のR/S比では、trans異性体の微量の存在が分かるはずである(表9、記載事項4及び5参照)。しかし、第2の再結晶化は、先に論じた通りこのtrans異性体を除去するものである。
【0176】
【表9】

【0177】
「S」BOMO反応物の再結晶化の間の光学純度の向上
真の凝集体では、エントレインメントにより誘導された光学純度の向上は、いずれのエナンチオマーでも起こるはずである。これを試験するために、Sに富んだBOMO(R/S比12/88)から誘導されるスルホキシドによる類似の反応を実施した。S-BOMOスルホキシドとベンゾイルシトシンとのカップリングから誘導される粗製反応混合物を、エントレインメントを用いて及び用いないで再結晶化させた。実際、表10に示されたエントレインメントを用いた結果は、R/S比が90/10である類似の実験と同様であった。
【0178】
【表10】

【0179】
エントレインメントに影響を及ぼす変数の試験
時間
概して、時間の光学純度への影響が認められる。一晩静置させることが最適で好都合であることが分かった。1.5時間または3時間の間隔では結晶化は完全ではなく、したがって概して一晩静置させた(表12及び表13)。1日を超える保持では、純度は改良されたが、大幅には改良しなかった。
【0180】
表11は、粗製物(開始時のR/S比:97/3)を14倍容積のメタノールで再結晶化させた試験の結果を示す。
【0181】
【表11】

【0182】
撹拌及びシード添加
変数、シード添加及び撹拌の影響を試験するために、以下の実験を実施した。反応をR/S 80:20のBOMOの混合物(実際のR/S比:82:18)を用いて実施したが、これらの実験では、粗製物それ自体を別々にHPLCで分析した。
【0183】
これらの実験では、先ず、粗製材料からすべての溶媒を除去した。次いで、これをすべての物質が溶解するまで、14倍容積のメタノール中で還流した。次に、これを撹拌を用いて(規定された速度で)または用いないで冷却させておきながら温度を監視した。55℃の温度で、撹拌された混合物に純粋な「R,R」cis異性体によるシードを添加するか、またはシードを添加せずに、温度を室温に至るようにさせつつ一晩撹拌した。次いで、結晶化した混合物をろ過し、メタノールで洗浄し、HPLCで分析した。この結果を表12に示す。これらの結果は、撹拌は無撹拌より常に優れていることを示す。撹拌はシードを発生させ、それを全体にわたって分散させることができ、シードを添加しない撹拌は、シードを添加したが撹拌を実施しない再結晶化より高い光学純度の生成物をもたらす可能性がある。結晶化は1日で本質的に完了するが、純度は、時間と共にわずかに改良する(表11)。
【0184】
【表12】

【0185】
温度
表13に得られた結果は、55℃を超える(ぐらい)の温度で、シードが部分的におそらく溶解することを示す。したがって、55℃未満の温度がより優れている。これにひきかえ、より低温では、競合する自然のシード添加(特に高速度のシード添加で)が存在する。これはまた、エントレインメントの有効性を低下し得る。
【0186】
【表13】

【0187】
さらに別の好ましい実施形態において、第1、第2、第3、第4、第7、第8、及び第10の態様による工程(a)で生成されたまたは形成された一般式(II)または一般式(III)の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオランは、凝集体の形態である。これらの化合物の凝集体を形成する能力は、ラセミ体の5%〜10%のみが凝集体を形成する群に属する(Lorenz, H.ら、Journal of the University of Chemical Technology and Metallurgy(2007)42(1):5〜16)ことを考慮する場合、驚くべきものである。
【0188】
好ましくは、本発明の第1、第2、第3、第4、第6、第7、第8、及び第10の態様による方法の任意の1つによって得られた所望のエナンチオマーは、望ましくない異性体の検出可能量を全く含まない。
【0189】
脱保護
ベンゾイルシトシンがBOMOにカップリングされたとき、合成の最終工程は、脱ベンゾイル化生成物、例えば、スキーム5に示す化合物(17)
【0190】
【化36】

【0191】
を得るためのベンゾイル保護基の除去である。
【0192】
適した脱保護方法には、接触的NaOMe/MeOH、メタノール性アンモニア、及びメタノール中のアンモニア水が含まれる。
【0193】
初めに、ナトリウムメトキシド媒介加水分解が検討された。この方法は定量的に脱保護するが、塩を非クロマトグラフィー的に除去するために水性の後処理が必要である。したがって、化合物(17)などの最終生成物は多少の水溶解度を有し得るので、この後処理は収率を低下させる。メタノール性アンモニア法も検討された。メタノール性アンモニアはこの場合もやはり、一晩撹拌した後分子を純粋に脱保護し、溶媒の除去後、アセトン中でスラリー化するとより多くの親油性副生成物が除去されて、非常に純粋な生成物を得た。この反応は、出発材料がRRであろうとSSであろうと同様に成功した(表14、実験2、3、4)。あるいは、メタノール中のアンモニア水も使用し得ることが分かった。この方法を用いる脱保護はより遅いが純粋であり、しかし、これは水の除去を必要とし、したがってより大きな規模ではメタノール性アンモニアより不便である。
【0194】
【表14】

【0195】
化合物
本発明の第5の態様の好ましい実施形態では、新規な2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン誘導体を提供する。一般式VIII及びIXの化合物。
【0196】
【化37】

【0197】
[式中、R2、R3、R4、及びR5は、先に定義された通りであり、
【0198】
【化38A】

【化38B】

【化38C】

【化38D】

【化38E】

【化38F】

【化38G】

【化38H】

【0199】
からなる化合物の群から好ましくは選択される]
【0200】
特に好ましいものは、一般式VIII及びIXの化合物のN-ベンゾイル誘導体であり、さらにより好ましいものは、式
【0201】
【化39】

【0202】
のN-ベンゾイル誘導体である。
【0203】
(実施例)
ここに、本発明の好ましい実施形態を以下の実施例を参照することによって、限定することなしに説明する。
【0204】
実験
全般
すべての反応を、オーブンで乾燥したガラス製品を用いて窒素雰囲気下で実施した。2-R及びS-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオランは、Avexaによって供給された。N-ベンゾイルシトシンは、Shanghai PI Chemicalsから購入した。TMSIは、社内で合成し、合成後蒸留した。トリエチルアミンは、KOHで蒸留した。溶媒は、蒸留せずに使用した。反応のための低温は、Thermo-Neslabクライオスタットを用いることによって維持した。NMRスペクトルは、400MHzで動作するVarian High Field NMR spectrometerにより操作した。薄層クロマトグラフフィーは、Machery-Nagelシリカゲルプレコートプラスチックプレート(0.22mm)で実施した。HPLC分析は、Chiralpak AD、25cm×0.46cm(内径)カラムを備え、254nmで検出する、Waters 510 HPLCシステムで実施した。溶媒系は、2mL/分の流量で均一濃度で流れるアセトニトリル中の20%MeOHであった。
【0205】
いくつかの略語:Eq(当量)、wrt(に対して)
【0206】
(実施例1)
2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン-S-オキシドの合成
【0207】
【化40】

【0208】
空気/水凝縮器付きの500mL丸底フラスコ中の2-R-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン(118g、0.526mol)と氷酢酸(47g、0.790mol)の40℃で撹拌した混合物に、過酸化水素(水中35%)(65mL、0.736mol)を4部分でおよそ10分間隔で添加した。初期の添加は非常に発熱性である。これをこの温度で1時間及び室温で1時間撹拌した。次いで、混合物を1Lビーカーに移し、ジクロロメタン(500mL)で希釈した。撹拌しながら、水(500mL)中10%亜硫酸ナトリウム溶液を少しずつ添加した(最初は激しい反応)。有機層を分離し、次にこれを、バブリングがなくなるまで飽和炭酸ナトリウム水溶液(500mL)と共に撹拌した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた濁った無色溶液をセライトを通してろ過して、透明な溶液を得た。これを蒸発させて、無色粘性油として生成物を得て、これは白色固体に固体化した。この物質をさらに精製せずに合成の次の工程に使用した。この物質は、比2.4:1(NMRによる)のE/Zジアステレオマーの混合物である。収量:114g(90%)
1H-NMR(CDCl3, 400MHz): δ= 8.05(d)、7.9(d)、7.5(m)、7.4(m)、4.6-4.8(m)、4.4(m)、4.1(m)、3.2(m)、3.1(m)、2.7(m) ppm。(NMRスペクトルはE及びZジアステレオマーが存在するため、複雑である。)
【0209】
(実施例2)
2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン-S-オキシドの再結晶化
2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン-S-オキシドのE:Z混合物9.6gを、還流メタノール(12mL)中に溶解し、徐々に室温に至るようにし、一晩静置させた。得られた無色針状結晶をろ過し、氷冷メタノール(2mL)で洗浄し、乾燥させた。収量:3.0g
1H-NMR(CDCl3, 400MHz): δ= 7.9(d, 2H)、7.6(m, 1H)、7.4(m, 2H)、4.6-4.8(m, 3H)、4.4(m, 1H)、3.15(m, 1H)、2.7(m, 1H) ppm。
【0210】
(実施例3)
2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの合成
(a)2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン-S-オキシドとN-ベンゾイルシトシンとのカップリング
【0211】
【化41】

【0212】
【表15】

【0213】
2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン-S-オキシド(15.0g、0.063mol)(出発材料2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオランの光学純度R/S:98.3/1.7)を、窒素下の500mL三口フラスコ中でジクロロメタン(250mL)中に溶解し、これをクライオスタットを用いて-50℃まで冷却した。これにトリエチルアミン(9.6mL、0.069mol、1.1当量)を添加した。続いて、これにヨードトリメチルシラン(18.7mL、0.131mol、2.1当量)を滴下漏斗を介して、内部温度を-40℃未満に留めるような速度で滴下により添加した。得られた淡黄色の溶液を-50℃の温度を維持しながら30分間撹拌した。次に、反応混合物に、再度、トリエチルアミン(8.7mL、0.062mol、1.0当量)を添加し、続いてヨードトリメチルシラン(8.9mL、0.062mol、及び1.0当量)の滴下よる添加を繰り返した。次に、オーブンで乾燥した無水塩化銅(II)(0.84g、0.0062mol)を添加し、5分後N-ベンゾイルシトシン(13.4g、0.062mo1)を添加した。得られた混合物を0℃まで加温させておき、この温度で一晩撹拌した。一晩撹拌した後、反応を室温まで加温させておき、室温で90分間撹拌した。反応混合物を、水(100mL)を添加してクエンチした。これを5分間撹拌し、セライトプラグを通してろ過した。このプラグを追加のジクロロメタン(3×75mL)で洗浄し、合わせたろ液を分離漏斗に注いだ。有機層を分離し、5%アンモニア水(2×100mL)、2%リン酸(2×100mL)及び再び5%アンモニア(100mL)で逐次洗浄した。合わせた水層をジクロロメタン(100mL)で再抽出した。次いで、合わせた有機層を1Mチオ硫酸ナトリウム(100mL)で洗浄した。得られた淡黄色の溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、蒸発させて、淡黄色/茶色の粘性油24.3g(回収率89%)を得た。この粗製混合物は、純度75%(NMR)の、cis/trans異性体比2.45:1(NMR)を有するcis及びtransを合わせたカップリング生成物で構成されていた。
【0214】
(b)純粋な2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランを得るための粗製2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R及びS)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの再結晶化
エントレインメントを用いた再結晶化
100mL丸底フラスコ中の粗製(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R,S)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン(10.3g)に、14.0倍(容積)のメタノール(144.2mL)を添加し、この混合物を透明な溶液が認められるまで還流した。次いで、これを撹拌しながら冷却させておき、同時に温度計で温度を監視した。温度が53℃に達したとき、この溶液に純粋な2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン144mgを激しく撹拌しながらシード添加した。シード添加に続いて、急速に結晶化している混合物を一晩激しく撹拌した。次いで、得られた結晶化した生成物をろ過し、続いてメタノール(50mL)で洗浄した。すべての母液及びそれに続く洗液が通過した後、得られた結晶化した白色生成物をメタノール(2×100mL)で緩徐に再洗浄し、真空下で乾燥さた。得られた白色結晶固体をNMRで分析したところ、これは>99%のcis異性体であることを示した。単離収量、4.4g(粗製物に対する再結晶化に関する収率44%)。光学純度:RR/SS:99.3/0.7。
【0215】
エントレインメントを用いない再結晶化
100mL丸底フラスコ中の粗製(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R,S)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン(8.0g)に、およそ14.0倍(容積)のメタノール(112mL)を添加し、この混合物を透明な溶液が認められるまで還流した。次いで、これを撹拌をせずに一晩冷却させておいた。次いで得られた結晶化した生成物をろ過し、続いてメタノール(50mL)で洗浄した。すべての母液及びそれに続く洗液が通過した後、得られた結晶化した白色生成物をメタノール(2×100mL)で緩徐に再洗浄し、真空下で乾燥させた。得られた白色結晶固体をNMRで分析したところ、これは>99%のcis異性体であることを示した。単離収量、3.36g(粗製物に対する再結晶化に関する収率42%)。光学純度:RR/SS:98.1/1.9。
【0216】
カップリング前駆体2-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン-S-オキシド(2)を合成するのに使用した、供給源2-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン(BOMO)がエナンチオマー的に純粋ではない場合の、エントレインメントを用いた及び用いない再結晶化に関する比較データ
【0217】
以下の表に提供した比較データは、エントレインメントが、RRエナンチオマーのより高い収率をもたらすことを示す。
【0218】
【表16】

【0219】
2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの分析データ
1H-NMR(CDCl3): δ8.9(br s, 1H)、8.25(d, 1H)、8.0(d, 2H)、7.8(d, 2H)、7.6(m, 2H)、7.45(m, 4H) 7.3(分解不十分なd, 1H)、6.6(d, 1H) 5.5(t, 1H)、4.8(m, 2H)、4.5(d, 1H)、4.05(dd, 1H)
HPLC分析:カラム:Chiralpak AD 0.46×25cm;溶媒系:アセトニトリル/メタノール80:20;流量:2mL/分;波長:254nm;R,R異性体に対する保持時間:11.23分。
【0220】
(実施例4)
2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの合成
(a)2-(R,S)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオランとN-ベンゾイルシトシンとのカップリング
【0221】
【化42】

【0222】
【表17】

【0223】
手順
500mL三口フラスコ中で、2-(R,S)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン(2)(12.0g、0.050mol)をジクロロメタンに溶解し、これを-50℃まで冷却した。これにトリエチルアミン(15.3mL、0.110mol)を添加し、続いてヨードトリメチルシラン(21.4mL、0.150mol)を滴下漏斗を介して、内部温度が-30℃から-50℃の間であるような速度で滴下で添加した。得られた淡黄色の溶液を、-40℃から-50℃の間の温度を維持しながら45分間撹拌した。次に、反応混合物に塩化銅(II)(1.3g、0.010mol)を添加し、さらに5分後、N-ベンゾイルシトシン(1)(10.1g、0.047mo1)を添加した。得られた混合物を-50℃で15分間撹拌し、次いで1時間にわたり0℃まで加温させておいた。反応混合物をこの温度で一晩撹拌した。一晩撹拌後、反応を室温で1時間撹拌し、氷中で再び冷却し、水(100mL)続いて5%アンモニア(100mL)を添加してクエンチした。これを5分間撹拌し、ジクロロメタン(50mL)で希釈し、セライトプラグを通してろ過した。プラグを追加のジクロロメタン(2×50mL)で洗浄し、合わせたろ液を分離漏斗中に注いだ。有機層を分離し、2%リン酸(2×60mL)及び再び2.5%アンモニア(2×100mL)で洗浄した。合わせた水層をジクロロメタン(100mL)で再抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、蒸発させて、淡黄色/茶色の粘性油17.8g(回収率86%)を得た。この粗製混合物は、純度62%(NMR)の、cis/trans異性体比2.86:1(NMR)を有するcis(3)及びtrans(4)を合わせたカップリング生成物で構成されていた。
【0224】
(b)純粋な2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランを得るための、粗製2-(R,S)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R,S)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの再結晶化
【0225】
【化43】

【0226】
500mL丸底フラスコ中の粗製(R,S)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R,S)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン(17.8g)に、14.5倍(容積の)メタノール(258mL)を添加し、この混合物を透明な溶液が認められるまで還流した。次いで、これを室温まで徐々に冷却させておき、一晩静置させた。得られた結晶化した生成物をろ過し、続いてメタノール(2×100mL)で洗浄し、真空下で乾燥させた。得られたわずかに着色した羽毛状結晶固体は、NMRで分析したところ、これは>99%のcis異性体(3)であることを示した。単離収量、7.2g(cis異性体に対する収率35%)
1H-NMR(CDCl3): δ8.5(br s, 1H)、8.25(d, 1H)、8.0(d, 211)、7.8(d, 2H)、7.6(m, 2H)、7.45(m, 4H) 7.3(分解不十分なd, 1H)、6.6(d, 1H) 5.5(t, 1H)、4.8(m, 2H)、4.5(d, 1H)、4.05(dd, 1H)
HPLC分析:カラム:Chiralpak AD、25cm×0.46cm(内径);溶媒:アセトニトリル中の20% MeOH;流量:1ml/分;波長:254nm;エナンチオマー純度:>100:1
【0227】
(実施例5)
2-(S)-ベンゾイルオキシメチル-4-(S)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの合成
(a)2-(S)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン-S-オキシドとN-ベンゾイルシトシンとのカップリング
【0228】
【化44】

【0229】
窒素下の100mL三口フラスコ中で、2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン-S-オキシド(2.0g、0.0083mol)(出発材料2-(S)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオランの光学純度R/S:12.1/87.9)をジクロロメタン(40mL)中に溶解し、これをクライオスタットを用いて-50℃まで冷却した。これにトリエチルアミン(1.27mL、0.009mol、及び1.1当量)を添加した。続いてこれに滴下漏斗を介してヨードトリメチルシラン(2.5mL、0.017mol、2.1当量)を、内部温度が-40℃未満に留まるような速度で滴下で添加した。得られた淡黄色の溶液を、-50℃の温度を維持しながら30分間撹拌した。次に、反応混合物に、トリエチルアミン(1.15mL、0.0083mol、1.0当量)を再び添加し、続いてヨードトリメチルシラン(1.2mL、0.0083mol、及び1.0当量)の滴下による添加を繰り返した。次に、オーブンで乾燥した無水塩化銅(II)(0.11g、0.0008mol)を添加し、5分後、N-ベンゾイルシトシン(1.79g、0.0083mo1)を添加した。得られた混合物を0℃まで加温させておき、この温度で一晩撹拌した。一晩撹拌後、この反応を室温まで加温させておき、室温で90分間撹拌した。次に、水(25mL)を添加して反応混合物をクエンチした。これを5分間撹拌し、セライトプラグを通してろ過した。プラグを追加のジクロロメタン(3×25mL)で洗浄し、合わせたろ液を分離漏斗中に注いだ。有機層を分離し、5%アンモニア水(2×25mL)、2%リン酸(2×25mL)及び再び5%アンモニア(25mL)で逐次洗浄した。合わせた水層をジクロロメタン(25mL)で再抽出した。次いで、合わせた有機層を1Mチオ硫酸ナトリウム(250mL)で洗浄した。得られた淡黄色の溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、蒸発させて、淡黄色/茶色の粘性油2.4g(回収率71%)を得た。この粗製混合物は、純度69%(NMR)の、cis/trans異性体比2.4:1(NMR)を有するcis及びtransを合わせたカップリング生成物で構成されていた。
【0230】
(b)純粋な2-(S)-ベンゾイルオキシメチル-4-(S)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランを得るための、粗製2-(S)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R及びS)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの再結晶化
エントレインメントを用いた再結晶化
100mL丸底フラスコ中で、粗製(S)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R,S)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン(2.4g)に、およそ14.0倍(容積)のメタノール(34mL)を添加し、この混合物を透明な溶液が認められるまで還流した。次いで、これを撹拌しながら冷却させておき、同時に温度計で温度を監視した。温度が53℃に達したとき、この溶液にあらかじめ再結晶化させた2-(S)-ベンゾイルオキシメチル-4-(S)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン34mgを激しく撹拌しながらシード添加した。シード添加に続いて、急速に結晶化している混合物を一晩激しく撹拌した。次いで、得られた結晶化した生成物をろ過し、続いてメタノール(10mL)で洗浄した。すべての母液及びそれに続く洗液が通過した後、得られた結晶化した白色生成物をメタノール(2×10mL)で緩徐に再洗浄し、真空下で乾燥させた。得られた白色結晶固体は、NMRで分析したところ>99%のcis異性体であった。単離収量、0.96g(粗製物に対する再結晶化に関する収率40%)。光学純度:RR/SS:1.5/98。
【0231】
エントレインメントを用いない再結晶化
250mL丸底フラスコ中で、粗製(S)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R,S)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン(13.95g)に、およそ14.0倍(容積)のメタノール(194.6mL)を添加し、この混合物を透明な溶液が認められるまで還流した。次いで、これを撹拌せずに一晩冷却させておいた。次いで、得られた結晶化した生成物をろ過し、続いてメタノール(50mL)で洗浄した。すべての母液及びそれに続く洗液が通過した後、得られた結晶化した白色生成物をメタノール(50mL)で緩徐に再洗浄し、真空下で乾燥させた。得られた白色結晶固体は、NMRで分析したところ>99%のcis異性体であることを示した。単離収量、4.8g(粗製物に対する再結晶化に関する収率34%)。光学純度:RR/SS:2.2/97.8。
【0232】
(実施例6)
エントレインメントに影響を与える変数
実験を粗製2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランで実施した。
【0233】
時間の影響
各試料は、BOMOに関する開始時の比が97(R)/3(S)である反応に由来した(これらの試料に対しては、粗製物のR/S比は実施していない)。粗製物を14倍容積のメタノール中で還流しながら溶解することによって再結晶化させた。エントレインメントについては、粗製物1g当たりシード(純粋なR,R)14mgを使用した。シード添加は、55℃から56℃の間の温度で実施した。規定した時間後、結晶をろ過し、メタノールで洗浄し、乾燥させ、HPLCで分析した。結果を以下の表に示す。
【0234】
【表18】

【0235】
撹拌及びシード添加の効果
各試料は、BOMOに関する開始時の比が82(R)/18(S)である反応に由来した。粗製物を14倍容積のメタノール中で還流しながら溶解することによって再結晶化させた。次に、これを撹拌しながら(規定の速度で)または撹拌せずに冷却させておき、同時に温度を監視した。55℃の温度で、撹拌した混合物に純粋な「R,R」異性体によるシードを添加しまたはシードを添加せずに、温度を室温に至るようにさせておきながら一晩撹拌した。次いで、結晶化した混合物をろ過し、メタノールで洗浄し、HPLCで分析した。結果を以下の表に示す。
【0236】
【表19】

【0237】
温度の効果
各試料は、BOMOに対する開始時の比が82(R)/18(S)である反応に由来した。粗製物を14倍容積のメタノール中で還流しながら溶解することによって再結晶化させた。次に、これを撹拌しながら(1000rpmで)または撹拌せずに冷却させておき、同時に温度を監視した。55℃の規定した温度で、撹拌した混合物に純粋な「R,R」異性体によりシードを添加し、温度が室温に至るようにさせながら一晩撹拌した。次いで、結晶化した混合物をろ過し、メタノールで洗浄し、HPLCで分析した。結果を以下の表に示す。
【0238】
【表20】

【0239】
(実施例7)
混合溶媒系中での再結晶化
すべての再結晶化は、53℃でシード14mg/g粗製物をシード添加し、14倍容積の溶媒と共に1000rpmで撹拌した。再結晶化を出発材料BOMOのR/S比が82:18である反応由来の粗製混合物について実施した。粗製物のHPLC分析は、およそ86/14の粗製物R/S比を示した。先に論じた通り、R/S比が特に90:10未満に低下する場合、trans異性体も結晶化する傾向がある(表11)。即ち、この一連の実験において、本発明者らは、一様に約10〜12%のtrans異性体を認めた。したがって、実測したRR/SS比を、R,R及びS,S trans異性体の存在に対して補正した。結果を以下の表に示す。
【0240】
【表21】

【0241】
(実施例8)
2-(R)-ヒドロキシメチル-4-(R)-(シトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの合成
【0242】
【化45】

【0243】
2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン(15g、0.028mol)をメタノール性アンモニア(およそ2M)溶液(250mL)中に溶解した。最初のスラリーを一晩撹拌した。一晩撹拌後、得られた透明な溶液をセライトを通してろ過し、蒸発させて乾燥し、アセトン(100mL)中でスラリー化した。これはオフホワイトの粉状を生じ、これをろ過し、アセトン(2×25mL)で洗浄し、乾燥して、生成物6.5g(94%)を得た。
1H-NMR(DMSO): δ7.8(d, 1H)、7.0-7.2(広幅なd, 2H)、6.3(d, 1H)、5.7(d, 1H)、5.3(t, 1H)(OHピーク - 必ずしも分解されていない)、5.1(t, 1H)、4.4(d, 1H)、3.9(m, 1H)、3.7(m, 2H)、OHピークは分解されていない
【0244】
(実施例9)
2-(R)-ヒドロキシメチル-4-(R)-(シトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの合成
【0245】
【化46】

【0246】
【表22】

【0247】
手順
2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン(3.3g、0.007mol)をジクロロメタン(8mL)とメタノール(10mL)との混合物中に加熱しながら溶解した。これにメタノール(2mL)中のナトリウムメトキシド(0.043g、0.0008mol)を添加し、混合物を一晩撹拌した。一晩撹拌後、混合物を蒸発させ、酢酸エチル中の20〜50%メタノールのグラジエントを用いて溶離して、シリカゲルカラム(4×18cm)でクロマトグラフィーにかけた。適当な分画の組合せ及び蒸発で、生成物(5)1.5g(収率88%)をオフホワイトの粉末として得た。
1H-NMR(DMSO): δ7.8(d, 1H)、7.0-7.2(広幅なd, 2H)、6.3(d, 1H)、5.7(d, 1H)、5.1(t, 1H)、4.4(d, 1H)、3.9(m, 1H)、3.7(m, 2H)、OHピークは分解されていない
【0248】
(実施例10)
2-(S)-ヒドロキシメチル-4-(S)-(シトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの合成
【0249】
【化47】

【0250】
2-(S)-ベンゾイルオキシメチル-4-(S)-(N-ベンゾイルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン(1.0g、0.0022mol)をメタノール性アンモニア(およそ2M)溶液(20mL)中に溶解した。最初のスラリーを一晩撹拌した。一晩撹拌後、得られた透明な溶液を蒸発させて乾燥し、アセトン(20mL)中でスラリー化した。これによりオフホワイトの粉末状固体が生じ、これをろ過し、アセトン(2×10mL)で洗浄し、乾燥させて、生成物を得た。0.47g(88%)。
1H-NMR(DMSO): δ7.8(d, 1H)、7.0-7.2(広幅なd, 2H)、6.3(d, 1H)、5.7(d, 1H)、5.3(t, 1H)(OHピーク - 必ずしも分解されていない)、5.1(t, 1H)、4.4(d, 1H)、3.9(m, 1H)、3.7(m, 2H)、OHピークは分解されていない
【0251】
(実施例11)
2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R)-(N-アセチルシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの合成
2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオランとN-アセチルシトシンとのカップリング
【0252】
【化48】

【0253】
窒素下の500mL三口フラスコ中で、2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオラン(5.0g、0.021mol)をジクロロメタン(100mL)中に溶解し、これにトリエチルアミン(6.08mL、0.044mol)を添加した。次に、この溶液を-50℃まで冷却し、ヨードトリメチルシラン(9.22mL、0.065mol)を滴下漏斗を介して、内部温度が-40℃を超えて上昇しない速度で滴下により添加した。得られた淡黄色の溶液を-50℃の温度を維持しながら1時間撹拌した。次に、反応混合物に、塩化銅(II)(0.28g、0.021mol)、続いてN-アセチルシトシン(5.0g、0.021mol)を添加した。得られた混合物を-50℃で15分間撹拌し、0℃まで加温させておき、この温度で一晩撹拌した。一晩撹拌後、反応を室温で1時間撹拌し、水(50mL)、続いて直ちに5%アンモニア(100mL)を添加してクエンチした。これを10分間よく撹拌し、セライトプラグ(8×3cm)を通してろ過した。フラスコ及びプラグを追加のジクロロメタン(100mL、2×50mL)で洗浄した。合わせた透明なろ液を分離漏斗中に注ぎ、有機層を分離した。次いで、有機層を2%リン酸(100mL)で洗浄した。合わせた水層をジクロロメタン(100mL)で再抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、蒸発させて、淡黄色/淡茶色の粘性油6.8g(回収率92%)を得た。
【0254】
粗製物のNMR分析は、以下のデータを示した:反応度(カップリングされた生成物全体のNMR推定純度):73%;C/T比:2.37:1;オレフィン副生成物の量(カップリングされた生成物全体に対して):8%。
【0255】
(実施例12)
2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R)-(N-ベンゾイル-5-フルオロシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの合成
(a)2-(R,S)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオランとN-ベンゾイル-5-フルオロシトシンとのカップリング
【0256】
【化49】

【0257】
【表23】

【0258】
手順
500mL三口フラスコ中で、2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオランと2-(S)-ベンゾイルオキシメチル-1,3-オキサチオランとの混合物(9.6g、0.040mol)をジクロロメタン中に溶解し、これを-50℃まで冷却した。これにトリエチルアミン(12.2mL、0.088mol)を添加し、続いて滴下漏斗を介してヨードトリメチルシラン(17.7mL、0.124mol)を、内部温度が-35℃から-50℃の間であるような速度で滴下で添加した。得られた淡黄色の溶液を、温度を-40℃から-50℃の間に維持しながら60分間撹拌した。次に、反応混合物に、塩化銅(II)(1.3g、0.010mol)を添加し、さらに5分後N-ベンゾイル-5-フルオロシトシン(9.3g、0.040mol)を添加した。得られた混合物を-50℃で15分間撹拌し、次いで1時間にわたり、0℃まで加温させておいた。反応混合物をこの温度で一晩撹拌した。一晩撹拌後、反応を室温で1時間撹拌し、氷中で再び冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム(75mL)を添加してクエンチした。これを5分間撹拌し、ジクロロメタン(50mL)で希釈し、セライトプラグを通してろ過した。プラグを追加のジクロロメタン(2×50mL)で洗浄し、合わせたろ液を分離漏斗中に注いだ。有機層を分離し、5%アンモニア(100mL)、2%リン酸(2×60mL)、及び再び5%アンモニア(100mL)で洗浄した。合わせた水層をジクロロメタン(100mL)で再抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、蒸発させて、淡黄色/茶色の粘性油14.6g(回収率80%)を得た。この粗製混合物は、純度55%(NMR)の、cis/trans異性体比2.65:1(NMR)を有する、cis(R,R及びS,S)及びtrans(S,R及びR,S)を合わせたカップリング生成物で構成されていた。
【0259】
(b)純粋な2-(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R)-(N-ベンゾイル-5-フルオロシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランを得るための粗製物2-(R,S)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R,S)-(N-ベンゾイル-5-フルオロシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオランの再結晶化
【0260】
【化50】

【0261】
500mL丸底フラスコ中の粗製物(R)-ベンゾイルオキシメチル-4-(R,S)-(N-ベンゾイル-5-フルオロシトシン-1-イル)-1,3-オキサチオラン(14.6g)に10倍(容積)のメタノール(146mL)を添加し、この混合物を透明な溶液が認められるまで還流した。これを熱ろ過し、次いで室温まで徐々に冷却させておき、一晩静置させた。得られた結晶化した生成物をろ過し、続いてメタノール(2×100mL)で洗浄し、真空下で乾燥させた。得られたわずかに着色した粉末状結晶固体は、NMRで分析したところ>98%のcis異性体であることを示した。単離収量、3.5g(cis異性体(7)について収率19%)。
1H-NMR(DMSO): δ7.95(m, 3H)、7.75(m, 2H)、7.6(m, 2H)、7.6-7.4(m, 4H)、6.22(dd, 1H)、5.43(t, 1H)、4.7(m, 2H)、4.55(d, 1H)、3.95(dd, 1H)
【0262】
当業者であれば、本明細書に記載の本発明は、具体的に記載されたもの以外に変形及び修正が可能であることを理解しよう。本発明には、その精神及び範囲に含まれるすべてのこのような変形及び修正が含まれるものと理解される。本発明はまた、本明細書中に言及されたまたは示されたすべての工程、特徴、組成物及び化合物を、単独でまたは集合的に、ならびに任意の2つ以上の前記工程または特徴の任意の組合せ及びすべての組合せを含む。
【0263】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「を含む(comprise)」という用語、及び「を含む(comprises)」及び「を含む(comprising)」などの変形は、提示された整数または段階あるいは整数または段階の群の包含を意味するが、任意の他の整数または段階あるいは整数または段階の群の除外は意味しないものと理解される。
【0264】
任意の従来の参考文献(またはそれから誘導される情報)あるいは知られている任意の事柄への本明細書中における参照は、この従来の参考文献(またはそれから誘導される情報)あるいは既知の事柄が、本明細書が関係する試みの分野における共通の一般的知識の一部を構成するという、承認または了解あるいは示唆の任意の形態とは解釈されず、解釈するべきではない。
【0265】
(参考文献)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(II)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン:
【化1】

[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
を形成する工程と、
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、前記溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と
を含む方法。
【請求項2】
一般式(II)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(IV)の塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させる工程と、
【化2】

[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3であり;
ここで、一般式(V)の1,3-オキサチオランは、少なくとも60%eeの(R)-エナンチオマーである]
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、前記溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と
を含む方法。
【請求項3】
一般式(VI)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオラン
【化3】

[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
を形成する工程と、
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、前記溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と、
(c)一般式(VI)の化合物:
【化4】

を生成するために一般式(II)の化合物を脱保護する工程と
を含む方法。
【請求項4】
一般式(VI)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(IV)の塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させる工程と、
【化5】

[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3であり、
ここで、一般式(V)の1,3-オキサチオランは、少なくとも60%eeの(R)-エナンチオマーである]、
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と、
(c)一般式(VI)の化合物:
【化6】

を生成するために一般式(II)の化合物を脱保護する工程と
を含む方法。
【請求項5】
R6がフェニルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
R3及びR4が、それぞれ独立して、Hまたはベンゾイルから選択され、但し、R3がHの場合、R4はHではなく、R4がHの場合、R3はHではない、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
R2がアシル基である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アシル基が、ベンゾイル基またはアセチル基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
R5が、HまたはFである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
一般式SiR7R8R9のシリル基が、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS/TBS)、トリ-イソ-プロピルシリル(TIPS)、及びトリエチルシリル(TES)からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
一般式(VIII)または(IX)の化合物から、それぞれ一般式(VI)または(VII)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(VI)または(VII)の化合物を生成するために、それぞれ一般式(VIII)または(IX)の化合物を脱保護する工程
【化7】

[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、それぞれ独立して、Hまたはベンゾイルから選択され、但し、R3がHの場合、R4はHではなく、R4がHの場合、R3はHではなく;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
を含む方法。
【請求項12】
R2がアシル基である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アシル基が、ベンゾイル基またはアセチル基である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
R5が、HまたはFである、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
一般式(II)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(X)のシリル化塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させる工程と、
【化8】

[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3であり、
R10は、上記定義された通りの一般式SiR7R8R9のシリル保護基であり;
ここで、一般式(V)の1,3-オキサチオランは、少なくとも60%eeの(R)-エナンチオマーである]
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、該溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と
を含む方法。
【請求項16】
一般式(VI)の化合物を製造する方法であって、
(a)一般式(II)または(III)の化合物を生成するために、一般式(X)のシリル化塩基を一般式(V)の1,3-オキサチオランと反応させる工程と、
【化9】

[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリールまたはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3であり;
R10は、上記定義された通りの一般式SiR7R8R9のシリル保護基であり;
ここで、一般式(V)の1,3-オキサチオランは、少なくとも60%eeの(R)-エナンチオマーである]
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、前記溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化の工程と、
(c)一般式(VI)の化合物:
【化10】

を生成するために一般式(II)の化合物を脱保護する工程と
を含む方法。
【請求項17】
一般式(II)の化合物を一般式(III)の化合物から分離する方法であって、
(a)一般式(II)及び(III)の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオランの混合物を提供する工程と、
【化11】

[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立して、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、同じか異なり、それぞれ独立して、HまたはC(O)-R6から選択され;
R6は、C6〜12アリールまたはC1〜6アルキルアリールであり、ここで、C1〜6アルキルアリールは、好ましくはC1〜6アルキルC6〜12アリールであり;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]
(b)一般式(II)の化合物の溶媒(ここで、前記溶媒は、C1〜6アルコールまたはC1〜6アルコールの混合物である)からの選択的再結晶化によって、一般式(II)の化合物を一般式(III)の化合物から分離する工程と
を含む方法。
【請求項18】
R6がフェニルである、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
R3及びR4が、それぞれ独立して、Hまたはベンゾイルから選択され、但し、R3がHの場合、R4はHではなく、R4がHの場合、R3はHではない、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
R2がアシル基である、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記アシル基が、ベンゾイル基またはアセチル基である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
一般式(V)の1,3-オキサチオランが、95%eeを超える、請求項2、4、15、または16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
一般式(V)の1,3-オキサチオランが、99%eeを超える、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
溶媒が、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、プロパノール、及びブタノールからなる群から選択されるC1〜6アルコールである、請求項1から12または15から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
C1〜6アルコールがメタノールである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
溶媒が、MeOHを含むC1〜6アルコールの混合物である、請求項1から10または15から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
C1〜6アルコールの混合物が、MeOH:C2〜6アルコール=90:10の比である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記比が、MeOH:C2〜6アルコール=95:5である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
溶媒が、約5%以下の水を含む、請求項24から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
選択的再結晶化工程(b)が、少なくとも1回反復される、請求項1から10、15から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
選択的再結晶化工程(b)が、エントレインメントまたは周期的エントレインメント工程である、請求項1から10、15から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
エントレインメントまたは周期的エントレインメント工程が、R,R-エナンチオマーによるシード添加を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
シード添加が約55℃以下の温度で実施される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
工程(a)で生成されたまたは形成された一般式(II)または一般式(III)の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオランが、凝集体の形態である、請求項1から10、15から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
生成されたまたは形成された一般式(II)または一般式(III)の2-置換-4-置換-1,3-オキサチオランが、望ましくない異性体の検出可能量を全く含まない、請求項1から10、15から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
一般式(VIII)または(IX)の化合物
【化12】

[式中、
R2は、H、C(O)C1〜6アルキル、C(O)OC1〜6アルキル、C(O)C6〜12アリール、C(O)OC6〜12アリール、C(O)C6〜12アリールアルキル、C(O)OC6〜12アリールアルキル、C(O)C1〜6アルキルアリール、C(O)OC1〜6アルキルアリール、あるいは一般式SiR7R8R9のシリル保護基(式中、R7、R8、及びR9は、それぞれ独立に、C1〜6アルキル、アリール、またはC1〜6アルキルアリールから選択される)であり;
R3及びR4は、それぞれ独立して、Hまたはベンゾイルから選択され、但し、R3がHの場合、R4はHではなく、R4がHの場合、R3はHではなく;
R5は、H、Br、Cl、F、I、またはCF3である]。
【請求項37】
R2がアシル基である、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
前記アシル基が、ベンゾイル基またはアセチル基である、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
R5が、HまたはFである、請求項36から38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項40】
式(XIII):
【化13】

の化合物及びそのジアステレオマー。
【請求項41】
一般式VIIIまたはIXの化合物:
【化14】

[式中、R2、R3、R4、及びR5は、上記定義された通りである]
であって、
【化15A】

【化15B】

【化15C】

【化15D】

【化15E】

【化15F】

【化15G】

【化15H】

からなる化合物の群から選択される化合物。
【請求項42】
一般式(VIII)または(IX)のN-ベンゾイル誘導体である、請求項41に記載の化合物。
【請求項43】
式:
【化16】

の化合物である、請求項42に記載の化合物。

【公表番号】特表2010−540467(P2010−540467A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526111(P2010−526111)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001433
【国際公開番号】WO2009/039582
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(510084633)アヴェクサ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】