説明

2−(4−N,N−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸n−ヘキシルエステルの結晶化方法

本発明は、2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)-安息香酸 n-ヘキシルエステルの結晶化方法と、結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)-安息香酸 n-ヘキシルエステルの自由流動性または注入性のある粒子の製造方法と、結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)-安息香酸 n-ヘキシルエステルの自由流動性または注入性のある特定の粒子と、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの結晶化方法と、結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの注入性または流動性のある粒子の製造方法と、結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの注入性または流動性のある特定の粒子と、に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト皮膚への太陽光の作用およびその結果として生じる皮膚反応への太陽光の作用、特にUV-B線およびUV-A線の作用、ならびに皮膚を保護するための選択肢については、その大部分がすでに公知であり、その詳細についてさらに研究が行われている(Chemie in unserer Zeit, 2004年, 第38巻, p. 98-112)。
【0003】
UV-B線(290〜320 nm)は、特に日焼けの発生の原因であるのに対し、UV-A線は、コラーゲン繊維やエラスチン繊維に損傷を与え、その結果としていわゆる早期皮膚老化を引き起こす。さらに、UV-A線は、DNAに損傷を与えうるので、最悪のシナリオでは皮膚癌を引き起こす可能性がある。
【0004】
したがって、当業界では、ヒト皮膚への太陽光線の有害作用を低減するために、いわゆるUV-BフィルターおよびUV-Aフィルターの両方が供給される。
【0005】
欧州特許出願公開第1046391号明細書には、化粧製剤における光安定性UV-Aフィルターとしての、アミノ置換されたヒドロキシベンゾフェノンの使用が記載されている。
【0006】
国際公開第03/097578号パンフレットには、式I
【化1】

で示される2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの製造方法が記載されている。上記の製造方法では、合成において溶液から結晶形態で生成される桃色着色粗生成物を、最初にクロマトグラフィーにより精製し、次に、存在する溶媒を蒸留により除去する。最後に、精製された最終生成物を溶融体としてボトルに入れる。
【0007】
2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルは、UV-Aフィルターとして、Uvinul(登録商標) A Plusという商品名でBASF Aktiengesellschaft社により市販されている。前記生成物を溶融体としてボトルに入れると、室温で約6週間保存した後に最初の結晶成長が起こるので、使用者は、2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの融点を超える温度までその容器全体を加熱して、容器から液状の生成物を取り出せるようにしなければならない。
【0008】
国際公開第2005/025529号パンフレットには、2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシル(Uvinul(登録商標) A Plus)の粉末状製剤が記載されている。ただし、そのUV-Aフィルターは、保護コロイドとしての変性デンプン中に包埋されている。その乾燥粉末は、再度、水中に再分散可能であり、この場合、UV-Aフィルターは、コロイド状分散形態で存在する。保護コロイドは、後続の適用に許容されるものでなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1046391号明細書
【特許文献2】国際公開第03/097578号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/025529号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Chemie in unserer Zeit, 2004年, 第38巻, p. 98-112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの単純かつ費用効果的な結晶化方法、さらには結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの注入性または流動性のある粒子の効率的な製造方法を提供することであった。さらに、本目的は、安全かつ加工装置による取扱いが容易な形態の結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、次のプロセス工程、すなわち、
a)57℃超の温度で2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの透明溶融体を提供するプロセス工程と、
b)57℃未満の温度で2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを晶出させるプロセス工程と、
を含む、2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの結晶化方法であって、
プロセス工程a)から得られる透明溶融体が、プロセス工程b)を行う前に不透明になるまで57℃未満の温度で撹拌される、上記方法により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの起源に起因して、それはまた、出発物質、中間体、副生成物、および/または溶媒のような、合成に由来する少量の不純物を含んでいる可能性がある。
【0014】
プロセス工程a)で提供される溶融体中の2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの含有量は、好ましくは少なくとも90重量%、とくに好ましくは少なくとも95重量%、特定的には少なくとも98重量%である。
【0015】
したがって、好ましいのは、プロセス工程a)の2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの溶融体が、少なくとも98重量%、好ましくは少なくとも98.5重量%、特定的には少なくとも99重量%の純度を有する本発明に係る方法である。
【0016】
2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルは約57℃で融解するので、原則として、固体出発物質を57℃をごくわずかに超える温度に供すれば十分である。通常、透明溶融体は、57〜80℃、好ましくは58〜65℃、特定的には59〜62℃の温度で提供される。
【0017】
2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの結晶化は、冒頭に記載したように、化合物の融点である57℃で自然に開始されることはないので、融点未満、例えば室温では、熱力学的に準安定な溶融体が形成される。
【0018】
本発明に係る方法のプロセス工程b)では、プロセス工程b)の実施前に、プロセス工程a)から得られる透明溶融体を、57℃未満の温度で不透明になるまで撹拌することにより、2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを57℃未満の温度で晶出させる。好ましくは、プロセス工程a)で生成される溶融体を、25〜40℃、とくに好ましくは27〜35℃の温度で不透明になるまで撹拌する。
【0019】
溶融体を57℃未満で撹拌するために、例えば、磁気攪拌子、アンカー攪拌機、プロペラ撹拌機、傾斜ブレード撹拌機、またはディスク撹拌機のような、任意のタイプの撹拌機を使用することが原則として可能である。溶融体の体積に対する撹拌機のサイズは、基本的には決定的なものではない。好ましくは、とくに溶融体をいくつかに分けて異なる結晶化槽に移す場合、撹拌時間の間、撹拌機により全溶融体を均質化させる。
【0020】
撹拌機の速度、すなわち、単位時間あたりの撹拌機の回転数を増大させれば、結晶種の生成に起因して溶融体が不透明になるまでの時間を減少させうることが確認された。本発明に係る方法では、好ましくは、撹拌機を用いて100〜600 rpmの速度で、とくに好ましくは200〜500 rpmの速度で溶融体を撹拌する。
【0021】
本発明に係る方法では、好ましくは撹拌機、特定的には2〜20 cmの直径を有するプロペラ撹拌機を用いて、200〜500 rpm、特定的には300〜400 rpmで溶融体を撹拌する。
【0022】
2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを結晶化させるための本発明に係る方法では、結晶化の結果として固化する溶融体を、一定時間後にはいかなる場合にももはや撹拌することができないので、好ましくは撹拌せずにプロセス工程b)を行う。したがって、不透明になった後、依然として液状の溶融体を所望の成形型に移すことが可能であり、次に、そこで晶出工程を行う。原則として、成形型の形状および構造は重要ではない。しかしながら、好ましくは、固形の晶出したエステルの取り出しが困難にならないような成形型を使用する。円錐状の成形型が有利であることが判明した。成形型の容積は、原則として任意であり、例えば、0.1 ml〜10 Lさもなければ5 L〜100 Lのさまざまな大きさでありうる。成形型から取り出される生成物は、次に、例えばミルのような好適な装置でさらに細粒化可能である。
【0023】
本発明に係る方法では、プロセス工程b)において、依然として液状のエステル溶融体を薄層として、すなわち、長さ-幅の広がりと比較して薄い厚さで、好ましくは0.1〜5 mmの厚さ、特定的には0.2〜2 mmの厚さで塗り広げる成形型として、平面を使用することも可能である。
【0024】
他の選択肢として、いわゆるパステルまたはプリル(半球構造)が形成されるように、依然として液状の溶融体を小さい液滴に分けて、平坦な表面上に配置することも可能である。半球の直径は、好ましくは0.1〜5 mmである。エステルを晶出させた後、固体の層または固体のパステルもしくはプリルを、慣例に従って平面から剥離してボトルに入れる。その際、薄層は、通常、破壊により所望のフレークサイズに細粒化される。フレーク、パステル、およびプリルの製造プロセスは、非連続的(バッチプロセス)または連続的に実施可能であり、連続法では、本発明の目的に合致する成形型として、例えば連続循環スチールベルトを使用することが可能である。
【0025】
本発明はさらに、
a')57℃超の温度で2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの透明溶融体を提供する工程と、
b')プロセス工程a')から得られる溶融体を、57℃未満の温度で不透明になるまで撹拌する工程と、
c')不透明溶融体を成形型に移す工程と、
d')移された2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの溶融体を、成形型内で57℃未満の温度で晶出させる工程と、
e')晶出させた2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを成形型から取り出す工程と、場合により、
f')プロセス工程e')から得られる結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを所望の粒子サイズに細粒化させる工程と、
を含む、10 μm〜22 cmの平均粒子直径を有する結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの注入性または流動性のある粒子の製造方法を提供する。
【0026】
本発明に係る方法により、10 μm〜22 cmの平均粒子直径を有する結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの注入性または流動性のある粒子を製造することが可能である。
【0027】
不透明溶融体が移される成形型の選択を介して、またはさらなる細粒化工程を介して、必要に応じて粒子のサイズを調整することが可能である。好ましくは、0.1〜5 mmの平均粒子直径を有する結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの粒子を本発明に係る方法により製造する。
【0028】
すでに記載したように、2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルはまた、その起源に起因して、出発物質、中間体、副生成物、および/または溶媒のような、合成に由来する少量の不純物を含んでいる可能性がある。
【0029】
プロセス工程a')で提供される溶融体中の2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの含有量は、好ましくは少なくとも90重量%、とくに好ましくは少なくとも95重量%、特定的には少なくとも98重量%である。
【0030】
したがって、好ましいのは、プロセス工程a')の2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの溶融体が少なくとも98重量%、好ましくは少なくとも98.5重量%、特定的には少なくとも99重量%の純度を有する本発明に係る方法である。
【0031】
本発明に係る方法のプロセス工程b')では、プロセス工程a')から得られる溶融体を57℃未満の温度で不透明になるまで撹拌する。好ましくは25〜40℃の温度で、とくに好ましくは27〜35℃の温度でプロセス工程b')を行う。
【0032】
プロセス工程b')で使用可能な撹拌機および撹拌条件、さらには好ましい実施形態に関しては、上記の記載を参照されたい。
【0033】
生じる不透明性は、密接した観察により目視認識可能であるか、さもなければ溶融体中に位置する1つ以上の好適な測定セルを利用して確認可能である。また、不透明性の出現は、外部エネルギーの供給がなく、結晶化熱の放出によりわずかな温度上昇が生じる限り、冷却速度の低下によって確認されることが明らかとなった。溶融体がそのような温度状態に達した時、この溶融体は不透明であり、依然として成形型に問題なく移すことが可能であり、かつ次に遅くとも2日後に完全に全体が結晶化することが実験で判明した。
【0034】
プロセス工程c')では、不透明溶融体を成形型に移す。この場合、原則として、成形型の形状および構造は重要でない。しかしながら、好ましくは、固形の晶出したエステルの取り出しが困難にならないような成形型を使用する。円錐状の成形型が有利であることが判明した。成形型の容積は、原則として任意であり、例えば、0.1 ml〜10 Lさもなければ5 L〜100 Lのさまざまな大きさでありうる。上記で記載した平面は、エステルを晶出させた後にエステルを同様に分離して問題なく取り出しうる成形型として、同様に有利である。
【0035】
プロセス工程d')では、成形型に移されるかまたは成形型としての平面上に配置される2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの溶融体を、57℃未満の温度で放置して晶出させる。好ましくは、溶融体を15〜35℃の温度で放置して晶出させる。
【0036】
プロセス工程e')では、晶出させた2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを成形型から取り出し、場合により、結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを所望の粒子サイズに細粒化させる。好ましいのは、プロセス工程e')から得られる固化生成物を、好ましくは0.1〜5 mmの平均粒子サイズに細粒化させる方法である。プロセス工程c')において、本発明の目的に合致する成形型として、平面、例えばスチールベルトを使用した場合、層の形態で生成される生成物は、平面から分離された後、破壊により細粒化可能であり、一方、パステルまたはプリルとして所望のサイズで直接生成される生成物は、通常、平面から分離された後でさらに細粒化されることはない。
【0037】
細粒化工程f')は、種々の手段によりまたは好適な装置を用いて実施可能である。好ましくは、細粒化工程はミルを用いて行われ、ミルの選択は、所望の細粒化度により決定される。
【0038】
本発明はさらに、0.1〜5 mmの平均粒子直径、0.35 g/ml超、好ましくは0.4 g/ml超、特定的には0.5 g/ml超の嵩密度、および少なくとも98重量%、好ましくは少なくとも98.5重量%、特定的には少なくとも99重量%の純度を有する、結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの注入性または流動性のある粒子を提供する。
【0039】
本発明はまた、化粧用および皮膚科用製剤中のUVフィルターとしてもしくはフリーラジカル捕捉剤としての、または製品保護としての、0.1〜5 mmの平均粒子直径、0.35 g/ml超、好ましくは0.4 g/ml超、特定的には0.5 g/ml超の嵩密度、および少なくとも98重量%、好ましくは少なくとも98.5重量%、特定的には少なくとも99重量%の純度を有する、上記の結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの注入性または流動性のある粒子の使用に関する。
【0040】
本発明に係る方法の利点は、高純度エステルの準安定溶融体から出発して、再現性がありかつ時間が節約されるように結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを製造しうるという事実に基づく。本発明に係る結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの注入性または流動性のある粒子は、化粧製剤中に問題なく組み込みうる粉塵が飛散しない形態のエステルを提供する。
【実施例】
【0041】
以下の実施例により本発明を説明するが、これらに限定されるものではない。
【0042】
使用した2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの融点を、Ph.Eur.(欧州薬局方5.0)に準拠して測定した。57℃の値を融点として決定した。
【0043】
比較対照結晶化実験
[実施例1-比較例]
物質の結晶化を達成するために、99%超の純度を有する5 kgの溶融された2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを室温で冷却させて放置した。10日後に最初の結晶が観察された。2ヶ月後にエステルの全量が結晶化した。
【0044】
[実施例2-比較例]
約40℃で、100 gの微結晶の2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシル(<100μm)を、5 kgの溶融された2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルに添加した。次に、溶融体を放置して室温まで冷却させた。10日後に最初の結晶が観察された。2ヶ月後にエステルの全量が結晶化した。
【0045】
[実施例3-比較例]
物質の結晶化を達成するために、5 kgの溶融された2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを5℃に冷却させてこの温度で放置した。10日後に最初の結晶が観察された。5℃で2ヶ月後にエステルの全量が結晶化した。
【0046】
[実施例4-比較例]
約40℃で、100 gの微結晶の2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシル(<100μm)を、5 kgの溶融された2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルに添加した。次に、溶融体を放置して室温に冷却させた。10日後に最初の結晶が観察された。2ヶ月後にエステルの全量が結晶化した。
【0047】
[実施例5(本発明に係る)]
5 kgの溶融された2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを5 Lアルミニウム製容器に移した。磁気攪拌棒(40 mm)を用いて、溶融体を室温に冷却しながら80 rpmで4時間攪拌した。4時間後に最初の結晶が観察された。14日以内に完全な結晶化が起こった。
【0048】
[実施例6(本発明に係る)]
5 kgの溶融された2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを5 Lアルミニウム製容器に移した。250 rpmの撹拌速度で電気モーターにより駆動されるPTFEプロペラ撹拌機(直径60 mm)を用いて、室温で溶融体を撹拌した。溶融体を11時間撹拌した後、溶融体の粘度は、撹拌を継続できないほど大きく増大した。5時間攪拌した後に最初の結晶が出現し、24時間以内に完全な結晶化が起こった。
【0049】
[実施例7(本発明に係る)]
800 gの溶融された2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを1 Lガラス製ジャケット付き反応器(HWS)に移した。溶融体の温度は60℃であった。350 rpmの攪拌速度でPTFEブレード攪拌機(直径75 mm)を用いて、溶融体を6時間撹拌した。4時間後に最初の結晶が観測され、この時点での溶融体の温度は約33℃であった。溶融体のこの温度をしばらくの間一定に保持した。6時間後に非常に不透明な溶融体が観察され、その温度は33℃であった。この不透明な粘性溶融体を、反応器からアルミニウム製結晶化容器に移した。24時間以内に完全な結晶化が起こった。
【0050】
[実施例8(本発明に係る)]
800 gの溶融された2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを1 Lガラス製ジャケット付き反応器(HWS)に移し、250 rpmの攪拌速度でPTFEブレード攪拌機(直径75 mm)を用いて、溶融体を撹拌した。2時間後、溶融体は28℃の温度を有しており、これを一定に保持した。12時間攪拌した後、溶融体の曇り点に達した。24時間以内にエステルの完全な結晶化が起こった。
【0051】
[実施例9(本発明に係る)]
1000 gの溶融された2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを、60℃の熱溶融体として1 Lガラス製ジャケット付き反応器(HWS)に移した。溶融体を撹拌せずに2時間かけて32℃の温度に冷却した。次に、溶融体を撹拌せずに18時間貯蔵し、サーモスタットで35℃に温度制御した。サーモスタットによる温度制御のスイッチを切り、350 rpmの撹拌速度でPTFEプロペラ撹拌機(直径60 mm)を用いて、溶融体を30分間撹拌した。10分間攪拌した後、溶融体の温度は33℃であった。30分間攪拌した後、溶融体の温度は33.5℃であった。溶融体は不透明になり、最初の結晶が出現した。次に、溶融体をアルミニウム製成形型に移した。4時間以内にエステルの完全な結晶化が起こった。
【0052】
粉砕実験
[実施例10(本発明に係る)]
メッシュ幅4.0×7.5 mmの篩を備えたアトリションミル(Alexanderwerk(Remscheid)社製の3ブレードローターを備えた食品モードのAlexander粉砕器)を用いて、実施例9から得られた100 gの結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを細粒化した。細粒化された物質の71.2%は、0.5〜5 mmの範囲内の粒子サイズを有していた。100 μm未満の粒子サイズを有する微粉画分は、2.5重量%の含有量であった。この微粉画分は、篩分けにより決定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)57℃超の温度で2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの透明溶融体を提供する工程と、
b)57℃未満の温度で2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを晶出させる工程と、
を含む、2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの結晶化方法であって、
プロセス工程a)から得られる透明溶融体が、プロセス工程b)を行う前に不透明になるまで57℃未満の温度で撹拌される、上記方法。
【請求項2】
プロセス工程a)の2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの溶融体が少なくとも98重量%の純度を有する、請求項1に記載の2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの結晶化方法。
【請求項3】
プロセス工程a)で調製される溶融体が25〜40℃の温度で不透明になるまで撹拌される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
プロセス工程b)が15〜35℃の温度で行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記溶融体が200〜500 rpmで2〜20 cmの直径を有する撹拌機を用いて撹拌される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
a')57℃超の温度で2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの透明溶融体を提供する工程と、
b')プロセス工程a')から得られる溶融体を、57℃未満の温度で不透明になるまで撹拌する工程と、
c')不透明溶融体を成形型に移す工程と、
d')移された2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの溶融体を、成形型内で57℃未満の温度で晶出させる工程と、
e')晶出させた2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを成形型から取り出す工程と、場合により、
f')プロセス工程e')から得られる結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルを所望の粒子サイズに細粒化させる工程と、
を含む、10 μm〜22 cmの平均粒子直径を有する結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの注入性または流動性のある粒子の製造方法。
【請求項7】
プロセス工程a')の2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの溶融体が少なくとも98重量%の純度を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
プロセス工程b')が25〜40℃の温度で行われる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
プロセス工程d')が15〜35℃の温度で行われる、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
0.1〜5 mmの平均粒子直径、0.35g/ml超の嵩密度、および少なくとも98重量%の純度を有する結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの注入性または流動性のある粒子。
【請求項11】
化粧用および皮膚科用製剤中のUVフィルターとしてもしくはフリーラジカル捕捉剤としての、または製品保護としての、請求項10に記載の結晶性2-(4-N,N-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸 n-ヘキシルの注入性または流動性のある粒子の使用。

【公表番号】特表2010−525009(P2010−525009A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504638(P2010−504638)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054645
【国際公開番号】WO2008/135360
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】