説明

2つのパイロクロア相と酸化物とを有するセラミック粉末、セラミック層及び層組織

【課題】良好な断熱特性と基材への良好な結合とを有し、従って層組織全体の長い寿命を有するセラミック粉末、セラミック層及び層組織を提供する。
【解決手段】x≒2、y≒2、z≒7の第1パイロクロア相Axyzとx'≒2、y'≒2、z'≒7の第2パイロクロア相A'x'B'y'z'との混合物と、二次酸化物、特にB又はB'の酸化物を特に0.1重量%〜10重量%の割合で含有して成り、焼結助剤として0.05重量%の酸化ケイ素、0.1重量%の酸化カルシウム、0.1重量%の酸化マグネシウム、0.1重量%の酸化鉄、0.1重量%の酸化アルミニウム及び0.08重量%の酸化チタンを有していてもよいセラミック粉末、特に2つのパイロクロア相と少なくとも1つの二次酸化物とからなり、焼結助剤を有していてもよいセラミック粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック粉末、このセラミック粉末から製造されたセラミック層及びこのセラミック層を有する層組織に関する。
【背景技術】
【0002】
このような層組織は、ニッケル基又はコバルト基の金属合金を含有してなる基材を有する。このような製品は、なかんずく、ガスタービンの部材として、特にガスタービン翼又は遮熱体として利用される。これらの部材は侵食性燃焼ガスの高温ガス流に曝されており、それゆえに大きな熱負荷に耐えることができなければならない。更に、これらの部材は耐酸化性及び耐食性であることが必要である。更に、なかんずく、可動部材、例えばガスタービン翼は、しかし静的部材も、機械的特性を満たさねばならない。高温ガスに曝され得る部材が使用されているガスタービンの出力と効率は、動作温度の上昇に伴って増大する。
それゆえに、被覆系の改良によってガスタービンの一層高い性能を達成することが再三再四試みられてきた。高い効率と高い出力とを達成するために、特に高温に曝されるガスタービン部材は、セラミック材料で被覆される。この材料は、高温ガス流と金属基材との間で断熱層として働く。金属基体が被覆によって侵食性高温ガス流から保護される。最近の部材は、大抵の場合、複数の被覆を有し、被覆はそれぞれ特殊な役目を果たす。こうして多層組織が設けられている。
【0003】
特許文献1は、パイロクロアを断熱層として使用することを開示している。しかし、或る材料を断熱層として利用するには良好な断熱特性だけでなく、基材への良好な結合も不可欠である。
【0004】
特許文献2は、酸化ガドリニウムと酸化ジルコニウムとから成る断熱層組織を開示しているが、この断熱層組織はパイロクロア構造を意図してはいない。
【特許文献1】欧州特許第0944746号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0992603号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、良好な断熱特性と基材への良好な結合とを有し、従って組織全体として長い寿命を有するセラミック粉末、セラミック層及び層組織を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、x≒2、y≒2、z≒7の第1パイロクロア相Axyzとx'≒2、y'≒2、z'≒7の第2パイロクロア相A'x'B'y'z'との混合物と、二次酸化物、特にB又はB'の酸化物を特に0.1重量%〜10重量%の割合で含有して成り、焼結助剤として0.05重量%の酸化ケイ素、0.1重量%の酸化カルシウム、0.1重量%の酸化マグネシウム、0.1重量%の酸化鉄、0.1重量%の酸化アルミニウム及び0.08重量%の酸化チタンを有していてもよいセラミック粉末、特に2つのパイロクロア相と少なくとも1つの二次酸化物とからなり、焼結助剤を有していてもよいセラミック粉末(請求項1)、本発明のセラミック粉末から製造されたセラミック層(請求項29)及びこのセラミック層を有する層組織(請求項31)によって解決される。
【0007】
その他の有利な諸方法は、これらは任意のやり方で有利に組合せることができるが、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明は、長い寿命を得るためには、全組織を全体として考慮せねばならず、個々の層又はいくつかの層を別々に考慮して最適化してはならないという知見に基づいている。
【0009】
本発明に係るセラミック粉末及び層組織は、外側セラミック層を含有して成るが、この外側セラミック層は、特別良好な熱特性(部材の基材に適合した膨張係数、低い熱伝導率)を有し且つ部材の中間層及び基材と極く良好に調和している、2つのパイロクロア相の混合物を含有してなる。
良好に調和している。
セラミック層の特性は、これら2つのパイロクロア相の混合比によって、基材及び中間層に合わすことができる。
【0010】
以下、図面を参考に本発明の実施例がなお詳しく説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
セラミック粉末の組成は、セラミック層13(図1)の組成に基づいても説明される。
【0012】
セラミック粉末は、本発明によれば一般式Axyzの2つのパイロクロア相を有し、式中、x≒2、y≒2、z≒7であり、即ち、僅かな欠陥部又はドーピングが許容されており、O=酸素である。
Aの例は、ガドリニウム(Gd)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、イッテルビウム(Yb)、セリウム(Ce)又はアルミニウム(Al)である。
Bの例は、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、セリウム(Ce)又はスズ(Sn)である。
特にx=2、y=2、z=7である。
つまり、セラミック層は、第1パイロクロアAxyzと第2パイロクロアA'x'B'y'z'を含有して成り、式中、x'、y'=2、z'=7、O=酸素である。特に、x'=2、y'=2、z'=7である。
元素A、B、A'及びB'は、すべて、相互に異なることができる。AとA'とが同じであると、BとB'とは異なっている。BとB'とが同じであると、AとA'とは異なっている。
A=A'及びB=B'の組合せは排除されている。
A=B'且つB=A'、又は、A'=B且つA=B'の組合せは基本的に可能である。
有利には、A及び/又はA'として、ガドリニウム(Gd)が使用される。
Bとして使用されるのは、有利には、ハフニウム酸塩又はジルコン酸塩、つまりハフニウム及び/又はジルコニウム、有利には酸化ガドリニウム(GHO)、有利にはGd2Hf27、及び/又はジルコン酸ガドリニウム(GZO)、有利にはGd2Zr27である。
有利には、セラミック粉末又は外側セラミック層13は、2つのパイロクロア相のみを有する。
有利にはハフニウム酸ガドリニウム、有利にはGd2Hf27、及び、ジルコン酸ガドリニウム、有利にはGd2Zr27が使用される。
【0013】
有利には、2つのパイロクロア相の混晶は存在しない。つまり、例えば、x=2、y+w=2、z=7のGdx(HfyZrw)Ozは存在しない(混晶は、パイロクロア相も含有する;明確に混晶に言わないときには、液晶は存在しない)。
混晶Ax(ByB'w)Oz、A'(B'tq)O、又はA、B、A'若しくはB'(つまり、例えばGd、Hf、Zr)の酸化物の割合は、最大10重量%である。
有利には、粉末内又はセラミック層内の2つのパイロクロア相の割合は、少なくとも90重量%である。
【0014】
同様に、一般式A227を有するパイロクロア粉末は、二次酸化物、特に元素B'の酸化物を含有する(また、A'2B'27は、酸化物としてのBを含有する)。B及び/又はB'の二次酸化物は、有利には純酸化物として粉末内に存在することができ、又は有利には一方のパイロクロア粉末と部分的にのみ混晶相を形成することができる。
【0015】
二次酸化物は、意図的に、粉末に添加され、従って、二次酸化物の測定検出限界よりもかなり上であり、つまり二次酸化物の検出限界の少なくとも2倍の値を有する。
【0016】
有利には、ジルコン酸ガドリニウム粉末は、酸化ハフニウムを、有利には、0.1重量%〜2.5重量%の割合で含有する。
【0017】
同様に有利には、別のパイロクロア粉末、有利にはハフニウム酸ガドリニウムが、ジルコニウムの二次酸化物を含有する。酸化ジルコニウムは、有利には純酸化物として存在することができ、又は有利には部分的にのみ混晶としても存在することができる。酸化ジルコニウムは、有利には0.1重量%〜7重量%の割合を有する。
【0018】
両方のパイロクロア相は、なお他の任意成分として0.05重量%以下の酸化ケイ素、0.1重量%以下の酸化カルシウム、0.1重量%以下の酸化マグネシウム、0.1重量%以下の酸化鉄、0.1重量%以下の酸化アルミニウム及び0.08重量%以下の酸化チタンを有していてもよく、これらの成分は焼結助剤として、一層密な層の形成を促進する。
【0019】
ハフニウム酸ガドリニウムは、粉末として、43重量%〜50重量%、有利には44.7重量%〜47.7重量%の酸化ガドリニウム、残部は酸化ハフニウムを含有して成り、任意に二次酸化物、有利には酸化ジルコニウム(7重量%以下)、を含有してもよく、また、任意に焼結助剤を含有してもよい。
ジルコン酸ガドリニウムは、粉末として、56重量%〜63重量%、有利には58重量%〜61重量%の酸化ガドリニウム、残部は酸化ジルコニウムを含有して成り、任意に二次酸化物、有利には酸化ハフニウム(2重量%以下)、を含有してもよく、また、任意に焼結助剤を含有してもよい。
この粉末混合において、Gd、Zr及びHfのそれぞれの酸化物の割合は、パイロクロア相内に存在するHfとZrとの比に応じている。
【0020】
図1は、本発明に係る層組織1を示す。
層組織1は、金属基材4を含有して成る。金属基材4は、特に高温用部材の場合、ニッケル基又はコバルト基の超合金(図2)からなる。
有利には、MCrAlX型、特にNiCoCrAlX型の金属結合層7が、有利には、直接基材4上に存在し、この結合層は、有利には11〜13重量%のコバルト、20〜22重量%のクロム、10.5〜11.5重量%のアルミニウム、0.3〜0.5重量%のイットリウム、1.5〜2.5重量%のレニウム、及び残部ニッケルを含有してなるか、又は、有利には、24〜26重量%のコバルト、16〜18重量%のクロム、9.5〜11重量%のアルミニウム、0.3〜0.5重量%のイットリウム、1〜1.8重量%のレニウム、及び残部ニッケルを含有してなるかのいずれかである。
有利には、保護層7はこれら両合金の一方から成る。
【0021】
この金属結合層7上に、他のセラミック層を被着するよりも前に既に酸化アルミニウム層が生成しているか、又は動作中にそのような酸化アルミニウム層(TGO)が生成する。
【0022】
金属結合層7上に、又は(図示しない)酸化アルミニウム層上に、有利には内側セラミック層10、有利には完全に又は部分的に安定化された酸化ジルコニウム層が存在する。
有利にはイットリウム安定化酸化ジルコニウム(YSZ)が、有利には6重量%〜8重量%のイットリウムを有するものが使用される。
同様に、酸化ジルコニウムを安定させるために酸化カルシウム、酸化セリウム又は酸化ハフニウムを使用することができる。
酸化ジルコニウムは有利にはプラズマ溶射層として被着され、有利には柱状構造として電子ビーム蒸着(EBPVD)によって被着することもできる。
【0023】
酸化ジルコニウム層10上、金属結合層7上、又は基材4上に次に外側セラミック層13が被着されている。
層13は、有利には最外層となる。
【0024】
それゆえに、外側セラミック層13は例えば以下の如くに製造される:2つのパイロクロア相、例えばジルコン酸ガドリニウムから成る粉末及びハフニウム酸ガドリニウムから成る粉末が或る混合比で互いに混合され、プラズマ溶射設備のノズルに供給される。別の被覆法、例えばジルコン酸ガドリニウムとハフニウム酸ガドリニウムとから成る2つの鋳塊が使用されるPVD法、が同様に考えられる。
【0025】
層組織1は、有利には基材4、結合層7(MCrAlX)、場合によってはTGO、単層(例えばGZO及び/又はGHO)又は2層の外側断熱層13(YSZ、及び、GZO又はGHO)から成る。
単数又は複数の二次酸化物は、層13内に分布し、特に均一に分布している。
【0026】
ジルコン酸ガドリニウムとハフニウム酸ガドリニウムとの任意の混合比を使用することができる。有利には、より大きな割合のジルコン酸ガドリニウムが使用される。同様に有利には、10:90、20:80、30:70又は40:60の、ハフニウム酸ガドリニウム対ジルコン酸ガドリニウム混合比が使用される。更に、ハフニウム酸ガドリニウム対ジルコン酸ガドリニウムの混合比は50:50、60:40、70:30、80:20又は90:10を使用するのが有利である。
【0027】
有利には、内側層10の層厚は、内側セラミック層(10)及び外側セラミック層(13)の合計層厚Dの10%〜50%である(図1)。
有利には、内側層10の層厚は、合計層厚Dの10%〜40%又は10%〜30%である。
同様に、内側層10の層厚が、合計層厚Dの10%〜20%であると有利である。
同様に、内側層10の層厚が、合計層厚Dの20%〜50%又は20%〜40%であると有利である。
合計層厚Dに占める内側層10の割合が20%〜30%であると、同様に有利な結果が達成される。
有利には、内側層10の層厚は、合計層厚Dの30%〜50%である。
同様に、内側層10の層厚が合計層厚Dの30%〜40%であると有利である。
同様に、内側層10の層厚が合計層厚Dの40%〜50%であると有利である。
【0028】
有利には、内側セラミック層10は、厚さが100μm〜200μm、特に150μm±10%である。
有利には、内側層10及び外側層13の合計層厚は300μm、又は有利には450μmである。有利には、最大合計層厚は800μm、又は有利には600μmである。
【0029】
層組織が高温で短時間利用される場合、外側層13は内側層10よりも薄く形成することができ、つまり、外側層13の層厚は、内側層10及び外側層13の合計層厚の10%〜40%である。
【0030】
有利には、Gd2Hf27とGd2Zr27との混合物が使用され、有利にはこれらが互いに等量混合され、又は勾配を有する。つまり、例えば外側で高温ガス側で一層高い割合のGd2Zr27が存在している。
【0031】
図3は、例示的にガスタービン100を縦部分断面図で示す。
ガスタービン100は、その内部に、回転軸線線102の回りに回転可能に支承され、軸101を有する、タービンロータとも呼ばれる、ロータ103を有している。
このロータ103に沿って順に、吸込み室104、圧縮機105、同軸的に配置された複数のバーナ107を有するトーラス状の燃焼室、特に環状燃焼室110、タービン108及び排気室109が続いている。
環状燃焼室110は例えば環状の高温ガス通路111に連通している。そこでは、例えば、直列接続された4つのタービン段112がタービン108を形成している。
各タービン段112は例えば2つの翼列(翼輪)で形成されている。作動媒体113の流れ方向に見て、高温ガス通路111内において、各静翼列115に、動翼120から成る翼列125が続いている。
【0032】
静翼130は、ステータ143の内部車室138に固定され、一方、翼列125の動翼120は、例えばタービン円板133によって、ロータ103に取り付けられている。ロータ103に発電機や作業機械(図示せず)が連結されている。
【0033】
ガスタービン100の運転中、空気135が、圧縮機105によって吸込み室104を通して吸い込まれ、圧縮される。圧縮機105のタービン側末端に供給された圧縮空気は、バーナ107に導かれ、そこで燃料と混合される。その混合気は燃焼室110で燃焼されて作動媒体113を発生する。作動媒体113は、そこから高温ガス通路111に沿って、静翼130及び動翼120を通流する。作動媒体113は、動翼120で膨張して運動量を伝達し、これにより、動翼120がロータ103及びこのロータ103に連結された作業機械を駆動する。
【0034】
ガスタービン100の運転中、高温の作動媒体113に曝される部品は熱的負荷を受ける。環状燃焼室110に内張りされた熱シールド要素のほかに、作動媒体113の流れ方向に見て最初のタービン段112における静翼130及び動翼120が最大の熱的負荷を受ける。
そこでの温度に耐えるために、それらの部品は冷却剤によって冷却されてもよい。
部品の基材は、同様に方向性組織からなるものであっても、即ち、単結晶(SX組織)であっても又は縦方向結晶粒組織(DS組織)だけからなるものであってもよい。
部品に対する材料、特にタービン翼120、130及び燃焼室110の部品に使用する材料としては、例えば、鉄基、ニッケル基又はコバルト基の超合金が利用される。かかる超合金は、例えば欧州特許出願公告第1204776号明細書、欧州特許第1306454号明細書、欧州特許出願公開第1319729号明細書、国際公開第99/67435号パンフレット又は国際公開第00/44949号パンフレットで公知である。
【0035】
静翼130は、タービン108の内部車室138の側における翼脚(図示せず)と、翼脚と反対側に位置する静翼先端を有している。その静翼先端は、ロータ103に対向し、ステータ143の取付けリング140に固定されている。
【0036】
図4は、縦軸線121に沿って延びた流体機械の動翼120又は静翼130を斜視図で示す。
【0037】
流体機械は、電気を生成するための発電所の若しくは飛行機のガスタービン、蒸気タービン又は圧縮機とすることができる。
【0038】
翼120、130は長手軸線121に沿って順に、取付け部400と、それに隣接する翼台座403と、翼形部(羽根部)406とを有している。翼130は、静翼130としてその翼先端415に、もう1つの翼台座(図示せず)を有していてもよい。
【0039】
取付け部400に、動翼120、130を軸又はタービン円板(図示せず)に取り付けるために用いられる翼脚183が形成されている。この翼脚183は、例えばハンマ頭部形に形成される。クリスマスツリー状又はダブテール状の翼脚として形成することもできる。
翼120、130は、翼形部406を通流する媒体に対して入口縁(前縁)409と出口縁(後縁)412を有する。
【0040】
通常の翼120、130の場合、翼120、130の全部位400、403、406に、例えば中実の金属材料、特に超合金が利用されている。
かかる超合金は、例えば欧州特許出願公告第1204776号明細書、欧州特許第1306454号明細書、欧州特許出願公開第1319729号明細書、国際公開第99/67435号パンフレット又は国際公開第00/44949号パンフレットにより公知である。
この場合、翼120、130は、鋳造法によって作ることができるが、又は方向性凝固によって、又は鍛造法によって、又は切削加工によって、又はこれらの組合せによっても作ることができる。
【0041】
運転中に大きな機械的、熱的及び/又は化学的負荷を受ける機械の部品として、単結晶組織の部材が採用される。
かかる単結晶部材の製造は、例えば融解物からの方向性凝固によって行われる。それは、液状金属合金が凝固されて、単結晶構造を形成する、即ち、単結晶工作物を形成する、つまり方向性を持って凝固される鋳造法である。そのデンドライト(樹枝状)結晶は、熱流束に沿って方向づけられ、柱状結晶粒構造(柱状構造、即ち、部材の全長に亘って延び、ここでは一般的な用語に従って、方向性凝固と称される。)を形成するか、又は単結晶組織を形成する、即ち、部材全体が単結晶から成っている。これらの方法において、球状(多角結晶)凝固への移行は避けねばならない。何故ならば、無指向性成長によって必然的に、一方向凝固部品又は単結晶部品の有利な特性を無に帰する横方向粒界及び縦方向粒界が、形成されるからである。
従って、一般に一方向凝固構造というとき、それは、粒界が存在しないか、たかだか小角粒界しか存在しない単結晶と、縦方向に延びる粒界が存在するが横方向に延びる粒界が存在しない柱状結晶粒構造とを、意味する。後者の結晶構造の場合、一方向凝固組織(directionally solidified structures)とも呼ばれる。
このような方法は、米国特許第6024792号明細書及び欧州特許出願公開第0892090号明細書により公知である。
【0042】
同様に、翼120、130は、本発明に係る層組織1を代表することができ、又は腐食又は酸化に備えた他の被覆を有することができる(例えば、MCrAlX;ここで、Mは鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素、Xは活性元素であり、イットリウム(Y)及び/又はケイ素及び/又は少なくとも1つの希土類元素、或いはハフニウム(Hf)である。)。このような合金は欧州特許第0486489号明細書、欧州特許第0786017号明細書、欧州特許第0412397号明細書又は欧州特許出願公開第1306454号明細書により公知である。
密度は有利には理論密度の95%である。酸化アルミニウム保護層(TGO=熱成長酸化物層)がMCrAlX層上に(中間層として又は最外層として)形成される。
【0043】
MCrAlX上に本発明に係る層組織1の断熱層13を更に設けておく。
この断熱層13がMCrAlX層全体を覆う。好適な被覆法、例えば電子ビーム蒸着(EB‐PVD)、によって、断熱層内に柱状粒子が生成される。
別の被覆法、例えば大気プラズマ溶射(APS)、LPPS、VPS又はCVDが考えられてもよい。断熱層は耐熱衝撃性を改善するために多孔質、マイクロクラック又はマクロクラックを有する粒子を有することができる。つまり、断熱層は有利にはMCrAlX層よりも多孔質である。
【0044】
翼120、130は中空又は中実に形成される。翼120、130が冷却されねばならないとき、これは中空に形成され、場合によって膜冷却用孔418(破線で図示)を有する。
【0045】
図5はガスタービン100の燃焼室110を示す。燃焼室110は、例えば、いわゆる環状燃焼室として設計され、そこでは、回転軸線102を中心として円周方向に配置された、火炎156を発生する複数のバーナ107が、共通燃焼室空間154に開口している。そのために、燃焼室110は、全体として、回転軸線102の周りに配置された環状構造物として設計されている。
【0046】
比較的高い効率を達成するために、燃焼室110は、作動媒体Mの比較的高温、約1,000℃〜1,600℃の温度用に設計されている。材料にとって不都合なこれらの動作パラメータのもとでも比較的長い動作時間を可能とするために、燃焼室壁153には、その作動媒体Mに面する側に熱シールド要素155で形成された内張り(ライニング)が設けられている。
【0047】
それに加えて、燃焼室110の内部の高い温度のゆえに、遮熱要素155用又はその保持要素用に冷却システムを設けておくことができる。その場合、遮熱要素155は、例えば中空であり、場合によっては、燃焼室空間154に開口する冷却孔(図示せず)を有していてもよい。
【0048】
合金製の各遮熱要素155は作動媒体側に特別耐熱性の保護層(MCrAlX層及び/又はセラミック被覆)を装備しており、つまり本発明に係る層組織1を実現し、又は耐熱材料(中実セラミック煉瓦)から作製されている。
これらの保護層はタービン翼と類似させることができる、つまり、例えばMCrAlXを意味する:Mは鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素、Xは活性元素であり、イットリウム(Y)及び/又はケイ素及び/又は少なくとも1つの希土類元素、或いはハフニウム(Hf)である。このような合金は欧州特許第0486489号明細書、欧州特許第0786017号明細書、欧州特許第0412397号明細書又は欧州特許出願公開第1306454号明細書により公知である。
【0049】
MCrAlX上に、本発明に係るセラミック断熱層13を更に設けておくことができる。
好適な被覆法、例えば電子ビーム蒸着(EB‐PVD)、によって断熱層内に柱状粒子が生成される。
別の被覆法、例えば大気プラズマ溶射(APS)、LPPS、VPS又はCVDが考えられてもよい。断熱層は、耐熱衝撃性を改善するために多孔質、マイクロクラック又はマクロクラックを有する粒子を有することができる。
【0050】
再処理(磨き直し)とは、場合によっては、タービン翼120、130、遮熱要素155から、それらの利用後に、保護層を(例えばサンドブラストによって)取り除かねばならないことを意味する。その後、腐食層及び/又は酸化層ないし腐食生成物及び/又は酸化生成物の除去が行われる。場合によっては、タービン翼120、130又は遮熱要素155の亀裂も、また、修理される。その後、タービン翼120、130、遮熱要素155の再被覆が行なわれ、タービン翼120、130又は遮熱要素155の再利用が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る層組織を示す。
【図2】超合金の一覧表である。
【図3】ガスタービンを示す。
【図4】タービン翼を斜視図で示す。
【図5】燃焼室を斜視図で示す。
【符号の説明】
【0052】
1 層組織
4 基材
7 結合層
10 内側セラミック層
13 外側セラミック層
D 合計層厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
x≒2、y≒2、z≒7の第1パイロクロア相Axyzとx'≒2、y'≒2、z'≒7の第2パイロクロア相A'x'B'y'z'との混合物と、二次酸化物、特にB又はB'の酸化物を特に0.1重量%〜10重量%の割合で含有して成り、焼結助剤として0.05重量%の酸化ケイ素、0.1重量%の酸化カルシウム、0.1重量%の酸化マグネシウム、0.1重量%の酸化鉄、0.1重量%の酸化アルミニウム及び0.08重量%の酸化チタンを有していてもよいセラミック粉末、特に2つのパイロクロア相と少なくとも1つの二次酸化物とからなり、焼結助剤を有していてもよいセラミック粉末。
【請求項2】
Aがガドリニウム(Gd)である請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項3】
ガドリニウム(Gd)が第1及び第2パイロクロア相用に使用される(A=Gd、A'=Gdである)請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項4】
第1パイロクロア相がハフニウム酸塩である(B=Hfである)請求項1、2又は3記載のセラミック粉末。
【請求項5】
第2パイロクロア相がジルコン酸塩である(B'=Zrである)請求項1、2、3又は4記載のセラミック粉末。
【請求項6】
第1パイロクロア相がハフニウム酸ガドリニウム、特にGd2Hf27である請求項1又は5記載のセラミック粉末。
【請求項7】
第2パイロクロア相がジルコン酸ガドリニウム、特にGd2Zr27である請求項1、4又は6記載のセラミック粉末。
【請求項8】
B又はB'のいずれかの二次酸化物が設けられている請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のセラミック粉末。
【請求項9】
B及びB'の二次酸化物が存在する請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のセラミック粉末。
【請求項10】
2つのパイロクロア相と2つの二次酸化物とから成り、焼結助剤を有していてもよい請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項11】
0.1重量%〜2.5重量%の二次酸化物、特に1.25重量%の二次酸化物が存在する請求項1、4、5、8、9又は10記載のセラミック粉末。
【請求項12】
酸化ハフニウムを含有する請求項1、5、7又は11記載のセラミック粉末。
【請求項13】
0.1重量%〜7重量%の二次酸化物、特に3重量%の二次酸化物が存在する請求項1、4、5、8、9又は10記載のセラミック粉末。
【請求項14】
二次酸化物として酸化ジルコニウムを含有する請求項1、4、6又は13記載のセラミック粉末。
【請求項15】
B及びB'の二次酸化物のみが存在する請求項1、4、5、6、7及び10〜14のいずれか1つに記載のセラミック粉末。
【請求項16】
B及びB'の二次酸化物が両パイロクロア相の一方と混晶を形成しない請求項1及び8〜15のいずれか1つに記載のセラミック粉末。
【請求項17】
B及びB'の二次酸化物が混晶としてのみ存在する請求項1及び8〜15のいずれか1つに記載のセラミック粉末。
【請求項18】
B及びB'の二次酸化物が酸化物として及び混晶として設けられている請求項8〜15のいずれか1つに記載のセラミック粉末。
【請求項19】
2つのパイロクロア相のみが存在する請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項20】
セラミック粉末が最大10重量%、特に最大7重量%の混晶を含有する請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項21】
第1及び第2パイロクロア相が混晶を形成しない請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項22】
第1パイロクロア相と第2パイロクロア相との混合比が30:70〜20:80である請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項23】
第1パイロクロア相と第2パイロクロア相との混合比が50:50〜40:60である請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項24】
第1パイロクロア相と第2パイロクロア相との混合比が70:30〜60:40である請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項25】
第1パイロクロア相と第2パイロクロア相との混合比が90:10〜80:20である請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項26】
2つのパイロクロア相と、B又はB'の二次酸化物の2つ以下と、酸化ケイ素及び/又は酸化カルシウム及び/又は酸化マグネシウムと、酸化鉄及び/又は酸化アルミニウム及び/又は酸化チタンとから成る請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項27】
2つのパイロクロア相が、セラミック粉末の少なくとも90重量%、特に少なくとも94重量%を占める請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項28】
x=2、y=2、z=7である請求項1記載のセラミック粉末。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか1つ又は複数に記載のセラミック粉末から製造されたセラミック層(13)。
【請求項30】
請求項1〜28のいずれか1つ又は複数に記載のセラミック粉末からのみ製造されたセラミック層(13)。
【請求項31】
請求項29又は30記載のセラミック層(13)を有する層組織。
【請求項32】
セラミック層(13)の下に内側セラミック層(10)、特に安定化酸化ジルコニウム層、特に6重量%〜8重量%のイットリウム安定化酸化ジルコニウム層が存在する請求項31記載の層組織。
【請求項33】
内側層(10)が、内側セラミック層(10)及び外側セラミック層(13)の合計層厚(D)の10%〜50%、特に合計層厚(D)の10%〜40%の層厚を有する請求項32記載の層組織。
【請求項34】
内側層(10)及び外側層(13)の層厚が、全体で、少なくとも300μm、特に300μmである請求項32又は33記載の層組織。
【請求項35】
内側層(10)及び外側層(13)の層厚が、全体で、少なくとも450μm、特に450μmである請求項32又は33記載の層組織。
【請求項36】
内側層(10)が合計層厚(D)の60%〜90%の層厚を有する請求項32記載の層組織。
【請求項37】
セラミック層(13)が最外層となる請求項31、32、33、34、35又は36記載の層組織。
【請求項38】
層組織(1)が、基材(4)上に且つセラミック層(10、13)の下に、特にNiCoCrAlX合金から成る金属結合層(7)を含有してなる請求項31又は32記載の層組織。
【請求項39】
金属結合層(7)が、重量%で、11%〜13%のコバルト、20%〜22%のクロム、10.5%〜11.5%のアルミニウム、0.3%〜0.5%のイットリウム、1.5%〜2.5%のレニウム、及び残部ニッケルの組成を有して成り、特にそれらから成る請求項38記載の層組織。
【請求項40】
金属結合層(7)が、重量%で、24%〜26%のコバルト、16%〜18%のクロム、9.5%〜11%のアルミニウム、0.3%〜0.5%のイットリウム、1%〜1.8%のレニウム、及び残部ニッケルの組成を有して成り、特にそれらから成る請求項38記載の層組織。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−241609(P2010−241609A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120459(P2008−120459)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】