説明

2スプールガスタービンエンジンにおける電力を生成するための装置

【課題】多スプールタービンエンジンの種々の回転スプールにわたって必要に応じて、この動力が分割されることができるように、動力をタップオフすること。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つの第1の回転スプール(69)、たとえば、低圧スプールと、第2の回転スプール(24)、たとえば高圧スプールと、を備え、電気機械(10)を駆動する多スプールガスタービンエンジンにおいて電力を生成するための装置に関する。装置は、電気機械(10)が第1のロータ(13)および第2のロータ(14)を有するツインロータ型からなり、第1のロータ(13)は、第1の回転スプール(69)に機械的に接続され、第2のロータは、第2の回転スプール(24)に機械的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空学において用いられる多スプールガスタービンエンジンの分野に関する。本発明は、補助電気機械がエンジンのシャフトによって駆動される方法を目的とする。
【0002】
航空機の推進のために用いられるタービンエンジンにおいて、生成される動力の一部は、エンジン自体および航空機の両方に対して補助的なサービスを提供する補助装置を駆動するためにタップオフされる。このような装置としては、潤滑システムおよび燃料システム、油圧システムおよび電動システムのための電源が挙げられる。
【0003】
多スプールガスタービンエンジンは、少なくとも2つの回転スプールを備え、大部分は2つまたは3つのスプールを有するが、より多数のスプールが排除されているわけではない。スプールは、軸を中心として回転する一体の組立体からなり、1つの部分は圧縮機を形成し、1つの部分はタービンを形成し、タービンは圧縮機を駆動する。さらに詳細に言えば、多スプールエンジンはまた、マルチフローエンジン、一般にデュアルフローまたはバイパスエンジンであってもよく、燃焼室を含み、高温の一次フローが中を通過する中心コアを迂回する低温の二次フローまたはバイパスフローを生成するファンを備える。エンジンはまた、プロペラを駆動するターボプロップ型からなってもよい。
【0004】
一般に、補助装置を駆動するために必要な機械的動力のすべては、インレットギアボックスを表すIGBとして知られるギアボックスを介して、高圧HPスプールからタップオフされ、次に、それらを支持するボックスを形成し、補助ギアボックスを表すAGBとして知られるギアセットと噛合するエンジン駆動シャフトに対して半径方向に配置されるシャフトによって、ファンケーシング上に位置決めされる装置に伝達される。
【背景技術】
【0005】
現在の傾向は、付属品への電力の供給を増大させることである。増大した機械的動力を提供し、同時に、その飛行エンベローブ全体にわたって、ターボ機械を作動し続けることは、別の解決策を求めることを伴う。1つの解決策は、すべての回転スプールにわたって、すなわち2スプールエンジンのHPスプールおよびLPスプールにわたって動力のタッピングを分割することである。
【0006】
さらに、ガスタービンエンジンは従来、空気タービンを用いてHPロータに回転をつけることによって始動されていたのに対して、要望は、この空気タービンが電動モータに取って代わることである。実際には、要望は、発電機を電気モータとして可逆に用いることによって、発電機の動力要件における増大を十分に活用することである。この解決策は、据え付けられた電気機械の動力が、エンジンの回転スプールを回すのに十分であるという事実によって可能となる。
【0007】
さらに詳細に言えば、要望は、電力を生成するために、動力のタッピングをHPスプールおよびLPスプールにわたった分割を可能にする手段を作製することである。次に、複数の電動装置が用いられる。1つの装置は、HPスプールによって駆動され、別の装置は、LPスプールによって駆動される。しかし、この技術は、それらの出力が結合されることができるように、電気信号の処理を伴う。装置は、エンジンの軸上に位置してもよく、あるいはリレーギアボックスに位置してもよい。このような解決策は、多少重く、確実に嵩張るという欠点を有する。
【0008】
出願人の会社が仏国特許出願第2863312号で出願したような1つの解決策は、AGBの領域で、差動歯車によって駆動する1つまたは複数の電気機械をエンジンの外側にあるケーシングに組み込み、2つのスプール、一方にあるHPスプールと他方にあるLPスプールとの間で動力のタッピングを分割するようにすることを示唆している。このような解決策は、始動時に電気機械のうちの1つがロータを駆動することを可能にするわけではないことを留意されたい。
【特許文献1】仏国特許出願公開第2863312号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、多スプールタービンエンジンの種々の回転スプールにわたって必要に応じて、この動力が分割されることができるように、動力をタップオフすることである。
【0010】
本発明の別の目的は、同一の手段がタービンエンジンの始動中に、回転スプールの少なくとも1つを駆動するために用いられることを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、少なくとも1つの第1の回転スプール、たとえば、低圧スプールと、第2の回転スプール、たとえば高圧スプールと、を備え、電気機械を駆動し、電気機械は第1のロータおよび第2のロータを有するツインロータ型からなり、第1のロータは、第1の回転スプールに機械的に接続され、第2のロータは、第2の回転スプールに機械的に接続される多スプールガスタービンエンジンにおいて電力を生成するための装置を作製する。
【0012】
本発明による解決策は、機械的動力のタッピングが、タービンエンジンの質量に影響を及ぼし得るクラッチまたはギアボックスシステムの手段に頼る必要がなく、2つの回転スプールの間で分割されることを可能にするという利点を有する。
【0013】
さらに、タービンエンジンの操作性は、動力がタップオフされるような分割が、2つの回転スプールの間で不変であるという事実によって確保される。この分割は、適切な減速比によって制御される。
【0014】
2スプールエンジンの場合には、任意の他のスプールに関して優先してLPスプールからのタッピング動力が、タービンエンジンの特定の燃料消費における削減を可能にすることが実証されている。
【0015】
したがって、別の特徴によれば、ロータのうちの少なくとも1つが、それが接続されるか、またはその回転スプールの少なくとも1つを駆動するようにモータとして動作される回転スプールによって駆動される場合には、電気機械は、可逆であり、発電機として動作することができる。
【0016】
一実施形態によれば、ロータは、減速ギアボックスによって回転スプールにそれぞれ機械的に接続される。別の実施形態によれば、ロータは、エンジン上に直接的に取り付けられる。
【0017】
電気機械の第1のロータとタービンエンジンの第1の回転スプールとの間の機械伝動装置は、ブレーキ、たとえば、それを介して上記の第1の回転スプールが静止した状態に維持されることができるようなノンリターンラチェットホイールを含んでもよい。好都合なことに、ブレーキは、エンジンが停止している場合には、第1の回転スプールを不動にするために用いられることができる。たとえば、プロペラを備えたターボプロップエンジンの場合には、エンジンが動いていない場合にはプロペラが風車状態にならないようにするために、プロペラが接続されるLPスプールは、回転防止にする必要がある。本発明に記載されたブレーキは、この追加機能を実行することができる。
【0018】
しかし、大型エンジンの場合のように、HPスプールの慣性運動とLPスプールの慣性運動との間の比が、きわめて大きい場合には、このようなブレーキは、必要とされない。
【0019】
好都合なことに、電気機械の第1のロータは、電気機械の第2のロータと同心であり、第2のロータの内部にある。好みとしては、第1のロータは、永久磁石ロータである。これは次に、静止部品と回転部品との間の接触量を低減する。
【0020】
本発明はまた、少なくとも1つのそのような補助電気機械を備える2スプールガスタービンエンジンに関する。好みとしては、ガスタービンエンジンは、2スプール型からなり、第1のスプールは低圧スプールであり、第2のスプールは高圧スプールである。
【0021】
回転スプールは、場合によっては反転する。
【0022】
この構成は、電力によって補助電気機械に動力を供給し、同時に、始動段階中に限り、第2の回転スプールを駆動するようにブレーキをかけ続けることにあるガスタービンエンジン始動方法を適用することを可能にする。
【0023】
動作のこの方法を用いて、全体的な伝動システム(AGB、頭文字TGBによって知られている伝達ギアボックス、ラジアルシャフトおよびIGB)および空気タービンを不要にし、機械的伝動構成部材の使用を限定することを可能にする。この段階で達成される質量の節約は、新たな構造の組み込みのためのオプションを提供する。
【0024】
本発明は、添付図面を参照して以下にさらに詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
第一に、ターボジェットエンジン1として配置されるターボモータを概略的に示す図1を参照する。ターボジェットエンジン1は、第1のシャフト3によってHPタービンロータ4に接続されるHP圧縮機ロータ2を備える高圧HPスプール24を備えた2スプールエンジンである。燃焼室5は、2つのHPロータの間に形成される。低圧スプール69は、HP圧縮機の上流に位置決めされるファン7および第1の圧縮段階7’を有するLP圧縮機組立体6を備える。LP圧縮機組立体は、HPタービンロータ4の下流に位置決めされるLPタービンロータ9に、第1のシャフトと同心であるシャフト8によって接続される。ファンは、2つの同心のフロー、すなわち、大気中に放出される前に種々のLPモジュールおよびHPモジュールを通過する一次フローと、燃焼室を迂回し、大気中に放出される低温の二次フローまたはバイパスフローと、に分割される空気フローを供給する。現在の市販のエンジンにおいて、バイパス比、すなわち一次フローと二次フローとの間の比は高く、少なくとも4であり、将来さらに高くなる可能性が高い。ファンを駆動する代わりに、エンジンは、ターボプロップとして動作し、1つまたは複数のプロペラを駆動してもよい。
【0026】
電気機械は従来、誘導ロータと、アーマチュアを形成するステータと、から構成される。ロータは、複数対の極、たとえば、2対の極、3対の極、4対の極を備え、アーマチュアを形成するステータは、巻線を備える。本発明によれば、第2のロータを形成する回転ステータを備えた電気機械の当該用途に用いられ、電気機械のロータのそれぞれは、多スプールターボモータの回転スプールに機械的に接続される。
【0027】
図2は、2ロータ型の電気機械を概略的に示す。機械10は、軸受12によってガスタービンエンジンの固定部品11に取り付けられる。これらの軸受は、同一の軸XXを中心として回転する2つの同心ロータ13および14を支持する。これらは、可動部品と静止部品との間の回転電気接続を可能な限り回避するために、好ましくは永久磁石型からなる第1の誘導ロータ13である。ロータは、図示されていない軸受によって支持され、三相モータの場合には、ここではその外面にブラシU1、U2、U3用のスリップリングを有するように設けられた巻線状の第2のロータ14内部に位置決めされる。第1のロータ13は好ましくは、低圧LP回転スプール69に機械的に接続される。その部品用の第2のロータは、高圧HP回転スプールに機械的に接続される。2つ以上の回転スプールを有するガスタービンエンジンにおいて、ロータのうちの1つのロータは、中間圧力レベルでスプールに機械的に接続されてもよいことを留意すべきである。
【0028】
これらの背景を考慮すると、機械が、エンジンの回転スプールに対して配置される方式は、さまざまであり得る。
【0029】
一実施形態によれば、電気機械は、ガスタービンエンジンの軸に沿ってまたはガスタービンエンジンの軸近傍に位置決めされる。好都合なことに、第1のロータ13が次に、LPスプール69に接続され、第2のロータ14は、HPスプール24に接続される。電気機械10に関して適切な速度で駆動可能にするために、その2つのロータは、適切な減速ギアボックスによって2つの回転スプールに接続される。図3は、この構成の動作図を示している。電気機械10は、ロータ13および14の2つのシャフトを有するように示されている。これらの2つのシャフト13および14は、それぞれのHP減速ギアボックス21およびLP減速ギアボックス22によって、それぞれHPスプール24のシャフト31およびLPスプール69のシャフト32に接続される。この実施例において、ガスタービンエンジンの2つのスプールは、適切な減速ギアボックスを用いて反転する。この解決策はまた、たとえば、回転スプールが適切な減速ギアボックスと同時回転している場合にも適している。適合される減速ギアボックスは、一方では、操作性状態を満たす方式で動力のタッピングを分割し、他方では、電気機械が以下のタイプの速度を有することを確保する役目を果たしている。
Ω=rLPΩLP+HPΩHP
【0030】
電気機械は、回転スプールがターボモータ始動時に駆動されることができるという利点を有する。
【0031】
この目的のために、特に大型サイズでないエンジンの場合において、駆動力が2つの回転スプールの間で適切に分割されることができるように、ブレーキ40が設けられる。このブレーキは、LPスプールを不動にするような方式で配置される。実際には、低圧スプールが、たとえば、10倍程度の慣性を有する高圧スプールに比べれば、大きな慣性を有する大型エンジンの場合には、ブレーキの使用は、HPスプールがLPスプールの前に開始されることから、ブレーキの使用を回避することができることを留意すべきである。より小型サイズのエンジンにおいて、慣性の差はまた、より小さく、ブレーキはそのときに有用である。
【0032】
図4は、本発明が始動モードにおいて作動するように設計される方式を示す。電力は、電気モータとして動作させるように構成される機械10に供給される。ブレーキ40は、LP回転スプール69を不動にするように適用される。この場合において、HP回転スプール24に接続されるロータ14は、回転され、ターボモータ1のLPスプール24を駆動する。このように、電気機械によって作り出された動力のすべては、HPスプール24によって吸収される。
【0033】
HPスプール24が、決定された速度に達した場合には、LPスプール69におけるブレーキ40が解除される。機械10に供給される電力は次に、2つの回転スプールの間に分割され、LPスプールが今度は駆動される。点火の熱動力を利用する状態が達成されると、点火が行われる。
【0034】
ターボモータの回転が自己維持されている場合には、電気機械10への電力の供給は中断される。ロータは、機械的に駆動され、機械10は、発電機として作用する。
【0035】
図示されていない別の形態によれば、電気機械は、ファンケーシングの上に位置決めされる。補助機械の支持および駆動のための従来の解決策の場合と同様に、AGB上に取り付けられる。機械的動力は、エンジンの中間ケーシングのアームに位置決めされる2つのラジアルシャフトによって伝達される。これらの2つのラジアルシャフトは、回転スプールのそれぞれに1つずつ機械的に接続される。
【0036】
図示されていない別の形態によれば、電気機械は、エンジンの主軸、たとえば、LP圧縮機とHP圧縮機との間の中間ケーシングに位置決めされる。ロータは、上記のHP部品およびLP部品が同時回転している場合には、エンジンのHP部品およびLP部品によって直接的に駆動され、上記のHP部品およびLP部品が反転している場合には、回転の方向を逆転するシステムによって駆動される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】軸断面における2スプールターボジェットエンジンを概略的に示す。
【図2】ツインロータタイプの電気機械を概略的に示す。
【図3】機械の例示の配置を示す。
【図4】ステータとしてどのように作動するかを示す。
【符号の説明】
【0038】
1 ターボジェットエンジン
2 HP圧縮機ロータ
3、8、31、32 シャフト
4 HPタービンロータ
5 燃焼室
6 LP圧縮機組立体
7 ファン
7’ 圧縮段階
9 LPタービンロータ
10 電気機械
11 固定部品
12 軸受
13、14 同心ロータ
21 HP減速ギアボックス
22 LP減速ギアボックス
24 HP回転スプール
40 ブレーキ
69 低圧LP回転スプール
XX 軸
U1、U2、U3 ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の回転スプール、たとえば、低圧スプールと、第2の回転スプール、たとえば高圧スプールと、を備え、電気機械を駆動し、電気機械は第1のロータおよび第2のロータを有するツインロータ型からなり、第1のロータは、第1の回転スプールに機械的に接続され、第2のロータは、第2の回転スプールに機械的に接続され、ロータのうちの少なくとも1つが、それが接続されるか、またはその回転スプールの少なくとも1つを駆動するようにモータとして動作される回転スプールによって駆動される場合には、電気機械は、可逆であり、発電機として動作することができる多スプールガスタービンエンジンにおいて電力を生成するための装置。
【請求項2】
ロータが、減速ギアボックスによって回転スプールに機械的に接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ロータが、直接ドライブによって回転スプールに機械的に接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第1のロータと第1の回転スプールとの間の機械的伝動装置が、第1の回転スプールが静止した状態で維持されることができるブレーキを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
第1のロータが、第2のロータと同心であり、第2のロータの内部にある、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
ブレーキが、ラチェットホイールからなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
第1のロータが、永久磁石ロータである、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの補助電気機械を備える、2スプールガスタービンエンジン。
【請求項9】
2スプール型からなり、低圧スプールである第1のスプールおよび高圧スプールである第2のスプールからなる、請求項8に記載のガスタービンエンジン。
【請求項10】
回転スプールが、反転している、請求項7または8に記載のガスタービンエンジン。
【請求項11】
請求項7、8または9のいずれか一項に記載のガスタービンエンジンを始動する方法であって、回転スプールのうちの1つを駆動するために、電力を機械に供給することにあるガスタービンエンジンを始動する方法。
【請求項12】
請求項7、8または9のいずれか一項に記載のガスタービンエンジンを始動し、請求項4に記載のブレーキを組み込む方法であって、電力を機械に供給し、ブレーキが解除される決定された回転速度に到達するまで、第2の回転スプールのみを駆動させる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−274943(P2008−274943A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−113499(P2008−113499)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】