説明

2チャネル追尾装置、および追尾方法

【課題】衛星位置検出の精度の低下を防止する、2チャネル追尾装置および追尾方法を提供する。
【解決手段】追尾装置1は追尾信号から和信号と差信号を生成し、和信号を信号発振器14が生成する変調信号で抑圧搬送波振幅変調を行い、変調和信号と差信号を合成する。和信号と合成信号を増幅し、中間周波数に変換し、伝送する。AGC回路20は和信号を増幅し、AGC回路21は和信号の利得との差分が所定の範囲内になるよう合成信号を増幅する。検波器24と検波器23は、和信号と90°移相した和信号でそれぞれ合成信号を位相検波し、追尾誤差信号の同位相成分と直交位相成分を検出する。同期検波器26と同期検波器25は、同位相成分と直交位相成分を変調信号で同期検波し、伝送された変調信号の同位相成分と直交位相成分を検出し、伝送中の位相変動αと振幅変動Aを算出する。αとAに基づき追尾誤差信号の直流成分を補正し、アンテナ駆動部などに送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2チャネル追尾装置、および追尾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星を捕捉および追尾するためには、受信アンテナを衛星方向に向けておく必要がある。衛星追尾装置の追尾処理において、追尾装置の設置場所の緯度と衛星との位置関係によっては受信アンテナの動作範囲が大きくなってしまう。例えば、受信アンテナの回動による信号ケーブルのねじれなどにより、追尾装置内で用いられる高周波化した中間周波数が影響を受ける。そして、アンテナ制御のための追尾誤差信号に、伝送中に発生した位相変動および振幅変動が含まれてしまう。また、伝送チャネルが複数ある場合には、各伝送チャネルで位相変動および振幅変動が発生し、チャネル間で位相変動および振幅変動の差が発生する。そのため、衛星位置検出の精度が低下してしまう。
【0003】
位相変動および振幅変動は、上述したケーブルのねじれによる変動以外に、例えば、衛星から受信した追尾信号の経時による変動、温度および湿度による変動がある。伝送中に発生した位相変動および振幅変動により衛星位置検出の精度が低下することを防ぐためには、アンテナ制御のための追尾誤差信号に含まれる、位相変動および振幅変動を除去する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−38112号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】荒木一則、西本博信、石戸喜夫、尾形良征、岡野弘志、藤原知博、「地球観測衛星(ランドサット4号)UQPSK波用受信装置概要」、昭和58年度電子通信学会総合全国大会 2105、P.8−85
【非特許文献2】山崎孝、川瀬誠一、平野ゆりか、杉山隆一、村瀬文義、藤原知博、「地球観測プラットフォーム技術衛星(ADEOS)用受信設備」、三菱電機技報・Vol.70・No.4・1996、P.99(441)〜107(449)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される追尾装置では、伝送チャネルを1チャネルにして、チャネル間の位相変動および振幅変動の差の発生を防止している。
【0007】
非特許文献1に開示される受信装置では、受信信号の復調後にAGC回路において誤差信号の検出感度の補正を行っているが、位相変動は検出していない。非特許文献2に開示される受信設備では、受信信号の代わりに試験用信号を試験用端子から入力することにより位相変動および振幅変動を検出することができるが、検出する際には衛星からの受信を停止しなければならない。
【0008】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、衛星位置検出の精度の低下を防止する、2チャネル追尾装置および追尾方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る2チャネル追尾装置は、アンテナと、追尾信号分離部と、和信号分離部と、変調部と、合成部と、伝送部と、利得調整部と、検波部と、変動検出部とを備える。アンテナは、衛星を含む追尾目標から追尾信号を受信し、追尾信号分離部は、受信した追尾信号から和信号および差信号を生成する。和信号分離部は、和信号を分離し、変調部は、和信号分離部で分離された和信号および/または差信号を所定の変調信号を用いて、所定の変調方式で変調を行う。合成部は、変調部で少なくとも一方は変調された、和信号と差信号を合成して合成信号を生成する。伝送部は、和信号分離部で分離された和信号および合成信号を、中間周波数に変換し、それぞれの伝送チャネルを介して伝送する。利得調整部は、伝送された和信号を増幅し、伝送された和信号の利得と伝送された合成信号の利得の差が所定の範囲内になるように、伝送された合成信号を増幅する。検波部は、増幅された合成信号を増幅された和信号で位相検波し、差信号の和信号に対する位相差および振幅比に基づき算出される、アンテナを制御するための追尾誤差信号の、同位相成分を検出し、増幅された合成信号を90°移相した増幅された和信号で位相検波し、追尾誤差信号の直交位相成分を検出する。変動検出部は、追尾誤差信号の同位相成分および追尾誤差信号の直交位相成分をそれぞれ、変調部で用いた変調信号で同期検波して、伝送された変調信号の同位相成分および直交位相成分を検出し、伝送された変調信号の変調信号に対する位相差および振幅比を、伝送中に発生した位相変動および振幅変動として検出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、衛星位置検出の精度の低下を防止する、2チャネル追尾装置および追尾方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る2チャネル追尾装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における周波数特性の例を示す図である。
【図3】実施の形態1における位相振幅変動の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る2チャネル追尾装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る2チャネル追尾装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係る2チャネル追尾装置の構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態5に係る2チャネル追尾装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態6に係る2チャネル追尾装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る2チャネル追尾装置の構成例を示すブロック図である。2チャネル追尾装置1(以下、2チャネル追尾装置1を、単に追尾装置1という)は、アンテナ2、給電部11、方向性結合器12、変調器13、信号発振器14、合成器15、増幅器16、17、周波数変換器18、19、AGC回路20、21、90°移相器22、検波器23、24、同期検波器25、26、変動検出部27、および補正部28を備える。
【0014】
追尾装置1が、衛星を含む追尾目標に対し、アンテナ2が正対するよう制御する原理について説明する。アンテナ2は、追尾目標から追尾信号を受信し、給電部11に送る。給電部11は、追尾信号を和信号と差信号に分離する。図2は、実施の形態1における周波数特性の例を示す図である。和信号および差信号は、いずれも図2(a)で示されるような単一周波数の信号である。アンテナ2が追尾目標に正対しておらず、ずれが生じている場合には、和信号と差信号の信号レベルが異なり、差信号/和信号≒К・λ・eiθで表される。Кはアンテナ2の設計により決定される比例定数である。追尾装置1は、差信号の和信号に対する位相差θをアンテナ駆動軸座標におけるアンテナ2のずれの方向、差信号の和信号に対する振幅比λをアンテナ駆動軸座標におけるアンテナ2のずれの大きさとして示す、追尾誤差信号を生成し、アンテナ駆動部などに送信し、アンテナ2の制御を行う。
【0015】
従来の追尾装置は、必要に応じて、和信号と差信号の増幅や中間周波数への周波数変換を行ってから伝送を行う。そして、伝送された信号に基づき、上述のようにアンテナのずれの方向と大きさを検出し、追尾誤差信号を生成し、アンテナ制御を行う。しかし、追尾誤差信号には、例えばアンテナの回動による信号ケーブルのねじれなどの追尾装置外部の影響により発生した位相変動および振幅変動が含まれている。図3は、実施の形態1における位相振幅変動の例を示す図である。黒丸で示される所定の振幅を持つ位相0°の信号が、伝送中に生じた位相変動および振幅変動により、白丸の位置に移動している。
【0016】
位相変動および振幅変動による衛星位置検出の精度の低下を防ぐため、実施の形態1に係る追尾装置1は、追尾誤差信号に含まれる位相変動および振幅変動を検出する。そして、追尾誤差信号から位相変動および振幅変動を除去し、追尾誤差信号をアンテナ駆動部などに送信し、アンテナ制御を行う。追尾装置1の各部について、以下に説明する。
【0017】
図1のアンテナ2は、追尾目標から追尾信号を受信し、受信した追尾信号を給電部11に送る。給電部11は、追尾信号を和信号と差信号に分離し、和信号を方向性結合器12に、差信号を合成器15に送る。方向性結合器12は送られた和信号を、伝送用和信号と合成用和信号に分離し、それぞれ増幅器16と変調器13に送る。変調器13は、送られた合成用和信号を信号発振器14が生成する所定の周波数fcの変調信号を用いて抑圧搬送波振幅変調を行い、変調和信号を合成器15に送る。変調和信号は、図2(b)に示される周波数特性を有する。後述するように、図1の変調器13において重畳された周波数fcの成分に基づき、伝送中に発生する位相変動および振幅変動の検出を行う。
【0018】
合成器15は、変調和信号と差信号を合成し、合成信号を生成する。合成信号は図2(c)に示される周波数特性を有する。搬送波にあたる部分には、差信号の情報が含まれており、両側波帯にあたる部分には、図1の変調器13において重畳された周波数fcの成分が含まれている。
【0019】
増幅器16、17は、伝送用和信号および合成信号をそれぞれ増幅し、周波数変換器18、19に送る。周波数変換器18、19は、伝送用和信号および合成信号を高周波数から中間周波数に変換し、それぞれの伝送チャネル51、52を介して、AGC回路20、21に送る。給電部11、方向性結合器12、変調器13、信号発振器14、合成器15、増幅器16、17、周波数変換器18、19は、アンテナ2の直下に配置される。そして、AGC回路20、21以降の各部は、受信部として、アンテナ2とは物理的に離れて配置される。そのため、主に周波数変換器18、19とAGC回路20、21の間の伝送チャネル51、52において、伝送用和信号および合成信号は、追尾装置1の外部からの影響を受け、位相変動および振幅変動が発生する。
【0020】
AGC回路20は、伝送用和信号を増幅し、増幅和信号を90°移相器22および検波器24に送る。AGC回路20は、伝送用和信号の利得情報をAGC回路21に送る。AGC回路21は、送られた伝送用和信号の利得情報に基づき、伝送用和信号の利得と合成信号の利得の差が所定の範囲内になるよう、伝送された合成信号の増幅を行う。所定の範囲とは、伝送用和信号の利得と合成信号の利得が同一レベルであるとみなすことができる範囲である。増幅和信号および増幅合成信号には、それぞれ伝送中に発生した位相変動および振幅変動が含まれている。伝送用和信号の利得と合成信号の利得が同一レベルとなるよう利得調整がされているので、伝送中に発生した位相変動および振幅変動を検出するために、AGC回路21が出力する増幅合成信号を用いる。AGC回路21は、増幅合成信号を、検波器23、24に送る。
【0021】
90°移相器22は、増幅和信号の位相を90°移相し、移相和信号を検波器23に送る。検波器23は、増幅合成信号を移相和信号で位相検波し、差信号の和信号に対する位相差θをアンテナ駆動軸座標におけるアンテナ2のずれの方向、差信号の和信号に対する振幅比λをアンテナ駆動軸座標におけるアンテナ2のずれの大きさとして示す、追尾誤差信号の直交位相成分ELを検出する。検波器23は、直交位相成分ELを同期検波器25に送り、直交位相成分ELの直流成分DELを補正部28に送る。検波器24は、増幅合成信号を増幅和信号で位相検波し、追尾誤差信号の同位相成分AZを検出する。検波器24は、同位相成分AZを同期検波器26に送り、同位相成分AZの直流成分DAZを補正部28に送る。
【0022】
同期検波器25は、直交位相成分ELを信号発振器14が生成する変調信号で同期検波し、直交位相成分ELから周波数fcの周波数成分を検出する。これは、変調器13で重畳され、伝送された変調信号の直交位相成分であり、伝送中に発生した位相変動および振幅変動が含まれている。同期検波器25は、伝送された変調信号の直交位相成分を変動検出部27に送る。同様に、同期検波器26は、同位相成分AZを信号発振器14が生成する変調信号で同期検波し、伝送された変調信号の同位相成分を変動検出部27に送る。
【0023】
変動検出部27は、伝送された変調信号の直交位相成分および同位相成分、および変調信号に基づき、伝送された変調信号の変調信号に対する位相差である位相変動αおよび振幅比である振幅変動Aを算出し、補正部28に送る。
【0024】
補正部28は、位相変動αおよび振幅変動Aに基づき、追尾誤差信号の直交位相成分の直流成分DELおよび追尾誤差信号の同位相成分の直流成分DAZを補正する。補正部28は、例えば、位相変動αおよび振幅変動Aに基づき、アンテナ駆動軸座標において、追尾誤差信号の位相変動および振幅変動を補正するための、以下に示す回転行列を算出して、回転行列に基づき補正を行う。
【数1】

【0025】
補正部28は、補正した、追尾誤差信号の直交位相成分の直流成分DELおよび追尾誤差信号の同位相成分の直流成分DAZを、アンテナ駆動部などに送る。なお補正部28を設けず、追尾誤差信号の直交位相成分の直流成分DELおよび同位相成分の直流成分DAZ、位相変動αおよび振幅変動Aをアンテナ駆動部などに送るよう構成してもよい。これは以下の実施の形態においても同様である。
【0026】
以上説明したとおり、実施の形態1の追尾装置1によれば、アンテナ制御のための追尾誤差信号に含まれる、伝送中に発生した位相変動および振幅変動を検出し、除去することで、衛星位置検出の精度の低下を防止することが可能となる。従来技術に比べてより正確にアンテナ制御を行うことができるため、アンテナ駆動を最小限に抑え、保守作業を軽減することが可能となる。
【0027】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る2チャネル追尾装置の構成例を示すブロック図である。実施の形態2の追尾装置1は、差信号を変調する。また、アンテナ駆動部などに送られる追尾誤差信号は、極座標で表される。実施の形態2では、変調器13は、和信号を方向性結合器12から受け取る代わりに、差信号を給電部11から受け取る。また、変動検出部27を備えず、その代わりに、座標変換部29を備える。実施の形態1と異なる動作をする、実施の形態2の追尾装置1の各部について、説明する。
【0028】
給電部11は、差信号を変調器13に送る。方向性結合器12は、送られた和信号を伝送用和信号と合成用和信号に分離し、それぞれ増幅器16と合成器15に送る。変調器13は、送られた差信号を信号発振器14が生成する所定の周波数fcの変調信号を用いて抑圧搬送波振幅変調を行い、変調差信号を合成器15に送る。変調差信号は、図2(b)に示される周波数特性を有する。
【0029】
合成器15は、和信号と変調差信号を合成し、合成信号を生成する。合成信号は図2(c)に示される周波数特性を有する。搬送波にあたる部分には、和信号の情報が含まれており、両側波帯にあたる部分には、変調器13において重畳された周波数fcの成分が含まれている。検波器23、24の動作は、実施の形態1と同様である。ただし、検波器23、24は、直交位相成分ELの直流成分DELおよび同位相成分AZの直流成分DAZを、座標変換部29に送る。
【0030】
同期検波器25は、直交位相成分ELを信号発振器14が生成する変調信号で同期検波し、伝送された変調信号の直交位相成分を検出する。伝送された変調信号の直交位相成分と変調信号の直交位相成分に基づき、位相変動αを検出し、補正部28に送る。なお、90°移相された移相和信号を用いて位相検波しているので、極座標における補正角として、αを使うことができる。同期検波器26は、同位相成分AZを信号発振器14が生成する変調信号で同期検波し、伝送された変調信号の同位相成分と変調信号の同位相成分に基づき、振幅変動Aを検出し、補正部28に送る。
【0031】
座標変換部29は、追尾誤差信号の直交位相成分の直流成分DELおよび追尾誤差信号の同位相成分の直流成分DAZを、アンテナ駆動軸座標から極座標に変換する。極座標に変換された追尾誤差信号の直流成分は、補正部28に送られる。補正部28は、位相変動α、振幅変動Aに基づき、補正角α、補正振幅比1/Aとして、追尾誤差信号の直流成分を補正する。補正した追尾誤差信号の直流成分を、アンテナ駆動部などに送る。
【0032】
以上説明したとおり、実施の形態2の追尾装置1によれば、差信号を変調し、差信号の変調に用いた変調信号を利用して、アンテナ制御のための追尾誤差信号に含まれる、伝送中に発生した位相変動および振幅変動を検出し、除去することで、衛星位置検出の精度の低下を防止することが可能となる。また極座標においてアンテナ制御が可能となる。
【0033】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る2チャネル追尾装置の構成例を示すブロック図である。実施の形態3の追尾装置1は、和信号および差信号をそれぞれ異なる周波数の変調信号で変調する。追尾誤差信号は実施の形態1と同様にアンテナ駆動軸座標で表される。実施の形態3では、追尾装置1は、変調器13に加え、変調器30を備える。変調器13、30は、信号発振器14、31が生成する異なる周波数の変調信号を用いて、それぞれ和信号と差信号を変調する。実施の形態1、2と異なる動作をする、実施の形態3の追尾装置1の各部について説明する。
【0034】
給電部11は、差信号を変調器30に送る。方向性結合器12は、送られた和信号を、伝送用和信号と合成用和信号に分離し、それぞれ増幅器16と変調器13に送る。変調器13は、送られた和信号を、信号発振器14が生成する所定の周波数fcの変調信号を用いて、抑圧搬送波振幅変調を行い、変調和信号を合成器15に送る。
【0035】
変調器30は、送られた差信号を信号発振器31が生成する所定の周波数fc’の変調信号を用いて抑圧搬送波振幅変調を行い、変調差信号を合成器15に送る。合成器15は、変調和信号と変調差信号を合成し、合成信号を生成する。
【0036】
同期検波器25、26の動作は実施の形態1と同様である。ただし、同期検波器25、26は、和信号の変調に用いられた信号発振器14が生成する和信号用変調信号で同期検波を行う。変動検出部27は、伝送された和信号用変調信号の直交位相成分および同位相成分、および和信号用変調信号に基づき、伝送された和信号用変調信号の和信号用変調信号に対する位相差である位相変動αおよび振幅比である振幅変動Aを算出し、補正部28に送る。
【0037】
以上説明したとおり、実施の形態3の追尾装置1によれば、和信号および差信号をそれぞれ異なる周波数の変調信号で変調し、和信号の変調に用いた変調信号を利用して、アンテナ制御のための追尾誤差信号に含まれる、伝送中に発生した位相変動および振幅変動を検出し、除去することで、衛星位置検出の精度の低下を防止することが可能となる。
【0038】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4に係る2チャネル追尾装置の構成例を示すブロック図である。実施の形態4の追尾装置1は、和信号および差信号を同じ周波数の変調信号で変調し、変調に用いた周波数と異なる周波数の時分割周波数で和信号と差信号を合成する。追尾誤差信号は実施の形態1と同様にアンテナ駆動軸座標で表される。実施の形態4では、変調器13、30は、信号発振器14が生成する同じ変調信号を用いて、それぞれ和信号と差信号を変調する。合成器15は、信号発振器32が生成する時分割周波数で和信号と差信号を合成する。実施の形態1、2、3と異なる動作をする、実施の形態4の追尾装置1の各部について説明する。
【0039】
給電部11、方向性結合器12、変調器13、30の動作は実施の形態3と同様である。ただし、変調器30は、変調器13と同様に信号発振器14が生成する所定の周波数fcの変調信号を用いる。合成器15は、信号発振器32が生成する、fcと異なる周波数fsの時分割周波数で変調和信号と変調差信号の時分割合成を行い、合成信号を生成する。
【0040】
検波器23、24は、信号発振器32が生成する時分割周波数を用いて、変調和信号と変調差信号を分離する。そして、分離された変調差信号を位相検波する。同期検波器25、26は、実施の形態1と同様に、信号発振器14が生成する変調信号で同期検波を行う。変動検出部27は、実施の形態1と同様に、信号発振器14が生成する変調信号を用いて、位相変動αおよび振幅変動Aを算出する。
【0041】
以上説明したとおり、実施の形態4の追尾装置1によれば、和信号および差信号を同じ周波数の変調信号で変調し、和信号および差信号の変調に用いた変調信号を利用して、アンテナ制御のための追尾誤差信号に含まれる、伝送中に発生した位相変動および振幅変動を検出し、除去することで、衛星位置検出の精度の低下を防止することが可能となる。
【0042】
(実施の形態5)
図7は、本発明の実施の形態5に係る2チャネル追尾装置の構成例を示すブロック図である。実施の形態5の追尾装置1は、実施の形態1の追尾装置1が、補正部28の代わりに、給電部11で分離された和信号と差信号が合成器15で合成されるまでの任意の位置で和信号および差信号を補正する補償部を備えるものである。実施の形態1と異なる動作をする、実施の形態5の追尾装置1の各部について、説明する。
【0043】
給電部11は、和信号および差信号をRF補償部33に送る。RF補償部33は、変動検出部27から送られた位相変動αおよび振幅変動Aに基づき、和信号および差信号を補正する。補正された和信号および差信号は、それぞれ方向性結合器12および合成器15に送られる。
【0044】
なお、RF補償部33は、給電部11で分離された和信号と差信号が合成器15で合成されるまでの任意の位置に設けることができる。
【0045】
以上説明したとおり、実施の形態5の追尾装置1によれば、アンテナ制御のための追尾誤差信号に含まれる、伝送中に発生した位相変動および振幅変動を検出し、補償部にて和信号および差信号を補正し、位相変動および振幅変動を除去することで、衛星位置検出の精度の低下を防止することが可能となる。
【0046】
(実施の形態6)
図8は、本発明の実施の形態6に係る2チャネル追尾装置の構成例を示すブロック図である。実施の形態6の追尾装置1は、実施の形態1の追尾装置1が、補正部28の代わりに、方向性結合器12からAGC回路20までの間と合成器15からAGC回路21までの間の任意の位置で、それぞれ伝送用和信号と合成信号を補正する補償部を備えるものである。実施の形態1と異なる動作をする、実施の形態6の追尾装置1の各部について、説明する。
【0047】
増幅器16、17は、それぞれ増幅した伝送用和信号および増幅した合成信号をIF補償部34に送る。IF補償部34は、変動検出部26から送られた、位相変動αおよび振幅変動Aに基づき、増幅された伝送用和信号および増幅された合成信号を補正する。補正された伝送用和信号および合成信号は、それぞれ周波数変換器18、19に送られる。
【0048】
なお、IF補償部34は、方向性結合器12からAGC回路20までの間および合成器15からAGC回路21までの間の任意の位置に設けることができる。
【0049】
以上説明したとおり、実施の形態6の追尾装置1によれば、アンテナ制御のための追尾誤差信号に含まれる、伝送中に発生した位相変動および振幅変動を検出し、補償部にて和信号および合成信号を補正し、位相変動および振幅変動を除去することで、衛星位置検出の精度の低下を防止することが可能となる。
【0050】
本発明の実施の形態は上述の実施の形態に限られず、上述の実施の形態のうち複数の形態を任意に組み合わせたもので構成してもよい。
【0051】
変調方式は、抑圧搬送波振幅変調に限らず、他の振幅変調を用いて変調を行ってもよい。また、2相PSK変調などの変調方式を用いて変調を行ってもよい。2相PSK変調により変調する場合には、変調器13、30は、信号発振器14、31が生成するクロック信号を用いて2相PSK変調を行う。そして、検波器23、24において、変調に用いたクロック信号で同期検波を行う。そして、同期検波により検出された信号を位相検波する。なお、実施の形態3のように、和信号と差信号を異なる変調信号で変調する場合には、それぞれの変調に用いた信号で同期検波を行う。
【0052】
合成方法については、変調器13、30で用いた信号発振器14、31が生成する変調信号と異なる所定の周波数に同期したPN(Pseudorandom Noise:疑似雑音)符号を用いて、合成するよう構成してもよい。PN符号を用いて合成する場合には、例えば、和信号に+1を割り当て、差信号に−1を割り当てて、合成する。検波器23、24は、合成に用いた所定の周波数を用いて合成信号を、少なくとも一方は変調された和信号と差信号に分離する。そして、分離された差信号を位相検波する。PN符号で合成することにより、伝送中のノイズの影響を受けにくくすることが可能となる。
【0053】
追尾信号が、右旋偏波または左旋偏波に含まれる場合には、追尾装置1は、右旋偏波および左旋偏波に対応する給電部11以降の各部をそれぞれ備えるよう構成してもよい。アンテナ2は、右旋偏波または左旋偏波に含まれる追尾信号を受信し、対応する給電部11に追尾信号を送る。
【0054】
また追尾装置1は、校正用試験信号を発生する校正信号発信部を備え、給電装置11は、アンテナ2で受信した追尾信号または校正用試験信号から、和信号および差信号を生成するよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 2チャネル追尾装置
2 アンテナ
11 給電部
12 方向性結合器
13、30 変調器
14、31、32 信号発振器
15 合成器
16、17 増幅器
18、19 周波数変換器
20、21 AGC回路
22 90°移相器
23、24 検波器
25、26 同期検波器
27 変動検出部
28 補正部
29 座標変換部
33 RF補償部
34 IF補償部
51、52 伝送チャネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星を含む追尾目標から追尾信号を受信する、アンテナと、
前記追尾信号から和信号および差信号を生成する、追尾信号分離部と、
前記和信号を分離する、和信号分離部と、
前記和信号分離部で分離された前記和信号および/または前記差信号を所定の変調信号を用いて、所定の変調方式で変調を行う、変調部と、
前記変調部で少なくとも一方は変調された、前記和信号と前記差信号を合成して合成信号を生成する、合成部と、
前記和信号分離部で分離された前記和信号および前記合成信号を、中間周波数に変換し、それぞれの伝送チャネルを介して伝送する、伝送部と、
伝送された前記和信号を増幅し、伝送された前記和信号の利得と伝送された前記合成信号の利得の差が所定の範囲内になるように、伝送された前記合成信号を増幅する、利得調整部と、
増幅された前記合成信号を増幅された前記和信号で位相検波し、前記差信号の前記和信号に対する位相差および振幅比に基づき算出される、前記アンテナを制御するための追尾誤差信号の、同位相成分を検出し、増幅された前記合成信号を90°移相した増幅された前記和信号で位相検波し、前記追尾誤差信号の直交位相成分を検出する、検波部と、
前記追尾誤差信号の同位相成分および前記追尾誤差信号の直交位相成分をそれぞれ、前記変調部で用いた前記変調信号で同期検波して、伝送された前記変調信号の同位相成分および直交位相成分を検出し、前記伝送された変調信号の前記変調信号に対する位相差および振幅比を、伝送中に発生した位相変動および振幅変動として検出する、変動検出部と、
を備える2チャネル追尾装置。
【請求項2】
前記変調部は、前記和信号分離部で分離された前記和信号を変調し、
前記合成部は、前記変調部で変調された前記和信号と前記差信号を合成して前記合成信号を生成し、
前記変動検出部は、前記変調部で前記和信号の変調に用いた前記変調信号で同期検波を行う、請求項1に記載の2チャネル追尾装置。
【請求項3】
前記変調部は、前記差信号を変調し、
前記合成部は、前記和信号分離部で分離された前記和信号と、前記変調部で変調された前記差信号を合成して前記合成信号を生成し、
前記変動検出部は、前記変調部で前記差信号の変調に用いた前記変調信号で同期検波を行う、請求項1に記載の2チャネル追尾装置。
【請求項4】
前記変調部は、前記和信号分離部で分離された前記和信号と前記差信号をそれぞれ異なる変調信号を用いて変調し、
前記合成部は、前記変調部で変調された前記和信号と前記変調部で変調された前記差信号を合成して前記合成信号を生成し、
前記変動検出部は、前記変調部で前記和信号の変調に用いた前記変調信号で同期検波を行う、請求項1に記載の2チャネル追尾装置。
【請求項5】
前記変調部は、前記和信号分離部で分離された前記和信号と前記差信号をそれぞれ同じ変調信号を用いて変調し、
前記合成部は、前記変調部で用いた前記変調信号と異なる周波数の所定の時分割周波数を用いて、前記変調部で変調された前記和信号と前記変調部で変調された前記差信号を時分割合成して前記合成信号を生成し、
前記検波部は、前記合成部で用いた前記時分割周波数を用いて、前記変調部で変調された前記和信号と前記変調部で変調された前記差信号に分離し、分離された前記変調部で変調された前記差信号を位相検波し、
前記変動検出部は、前記変調部で前記和信号と前記差信号の変調に用いた前記変調信号で同期検波を行う、請求項1に記載の2チャネル追尾装置。
【請求項6】
前記合成部は、前記変調部で用いた前記変調信号と異なる所定の周波数に同期したPN符号を用いて、前記変調部で少なくとも一方は変調された、前記和信号と前記差信号を合成して前記合成信号を生成し、
前記検波部は、前記合成部で用いた前記所定の周波数を用いて前記合成信号を、前記変調部で少なくとも一方は変調された、前記和信号と前記差信号に分離し、分離された前記差信号を位相検波する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の2チャネル追尾装置。
【請求項7】
前記変調部は、前記変調方式として、抑圧搬送波振幅変調を用いる、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の2チャネル追尾装置。
【請求項8】
前記変調部は、前記変調方式として、2相PSK変調を用い、前記変調信号としてクロック信号を用い、
前記検波部は、増幅された前記合成信号または分離された前記差信号を前記変調部で用いた前記クロック信号で同期検波し、同期検波された前記合成信号または前記差信号を位相検波する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の2チャネル追尾装置。
【請求項9】
右旋偏波および左旋偏波に対応する、前記追尾信号分離部、前記和信号分離部、前記変調部、前記合成部、前記伝送部、前記利得調整部、前記検波部、および前記変動検出部をそれぞれ備え
前記アンテナは、右旋偏波または左旋偏波に含まれる前記追尾信号を受信し、右旋偏波および左旋偏波に対応する前記追尾信号分離部に前記追尾信号を送る、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の2チャネル追尾装置。
【請求項10】
前記変動検出部で検出した前記位相変動および前記振幅変動に基づき前記追尾誤差信号を補正する位相振幅補正部をさらに備える、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の2チャネル追尾装置。
【請求項11】
前記追尾信号分離部と前記利得調整部の間の任意の位置で、前記変動検出部で検出した前記位相変動および前記振幅変動に基づき前記和信号および、前記差信号または前記合成信号を補正する、補償部をさらに備える、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の2チャネル追尾装置。
【請求項12】
校正用試験信号を発信する、校正信号発信部をさらに備え、
前記追尾信号分離部は、前記追尾信号または前記校正用試験信号から前記和信号および前記差信号を生成する、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の2チャネル追尾装置。
【請求項13】
2チャネル追尾装置が行う追尾方法であって、
衛星を含む追尾目標から追尾信号を受信する、受信ステップと、
前記追尾信号から和信号および差信号を生成する、追尾信号分離ステップと、
前記和信号を分離する、和信号分離ステップと、
前記和信号分離ステップで分離された前記和信号および/または前記差信号を所定の変調信号を用いて、所定の変調方式で変調を行う、変調ステップと、
前記変調ステップで少なくとも一方は変調された、前記和信号と前記差信号を合成して合成信号を生成する、合成ステップと、
前記和信号分離ステップで分離された前記和信号および前記合成信号を、中間周波数に変換し、それぞれの伝送チャネルを介して伝送する、伝送ステップと、
伝送された前記和信号を増幅し、伝送された前記和信号の利得と伝送された前記合成信号の利得の差が所定の範囲内になるように、伝送された前記合成信号を増幅する、利得調整ステップと、
増幅された前記合成信号を増幅された前記和信号で位相検波し、前記差信号の前記和信号に対する位相差および振幅比に基づき算出される、アンテナを制御するための追尾誤差信号の、同位相成分を検出し、増幅された前記合成信号を90°移相した増幅された前記和信号で位相検波し、前記追尾誤差信号の直交位相成分を検出する、検波ステップと、
前記追尾誤差信号の同位相成分および前記追尾誤差信号の直交位相成分をそれぞれ、前記変調ステップで用いた前記変調信号で同期検波して、伝送された前記変調信号の同位相成分および直交位相成分を検出し、前記伝送された変調信号の前記変調信号に対する位相差および振幅比を、伝送中に発生した位相変動および振幅変動として検出する、変動検出ステップと、
を備える追尾方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−29430(P2013−29430A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165861(P2011−165861)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】