説明

2剤型酸化染毛剤の第1剤の劣化防止剤

【課題】直接染料として2−ニトロパラフェニレンジアミンが配合されている2剤型酸化染毛剤の第1剤において、2−ニトロパラフェニレンジアミンの経時変化を防ぐ、劣化防止剤および劣化防止方法を提供することである。また、劣化防止処理が施された2剤型酸化染毛剤の第1剤を提供する。
【解決手段】化学構造中にβ−ジメチルケトン構造を有する化合物、特にダマスコン類、ダマセノン類等からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物である2−ニトロパラフェニレンジアミンおよびアルカノールアミン類を含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤の劣化防止剤。該劣化防止剤が、0.0001〜3000ppm添加された該2剤型酸化染毛剤の第1剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白髪染め等に用いられている2剤型酸化染毛剤の第1剤の劣化防止剤に関する。詳しくは、主成分の酸化染毛剤とともに直接染料として配合される2−ニトロパラフェニレンジアミンおよびアルカリ剤としてのアルカノールアミン類を含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤の劣化防止剤、当該劣化防止剤が添加された2剤型酸化染毛剤の第1剤、並びに、当該劣化防止剤を用いる2剤型酸化染毛剤の第1剤の劣化防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、白髪染めをはじめとする染毛剤としては、いわゆる酸化染毛剤(oxidation hair dye)が広く使用されて主流となっている。かかる酸化染毛剤は、酸化染料に酸化剤を作用させて酸化重合をさせるために2剤型式を採用し、主成分の酸化染料、直接染料、アルカリ剤、界面活性剤および香料等を含む第1剤と、過酸化水素等の酸化剤を主成分として含む第2剤とから構成されている。
2剤反応型のこのタイプの染毛剤は、無色の低分子の酸化染料を毛髪中に浸透させ、毛髪中で酸化重合を行なわせることにより色素を生成させ毛髪を染着するものである。
【0003】
酸化染料は、自身の酸化により発色する染料中間体と、この染料との組み合わせにより種々の色調となるカップラーとに分けられ、これらの組み合せにより幅広い色調が得られる。
染料中間体としてはパラフェニレンジアミン、パラトルイレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−パラフェニレンジアミン、N−フェニル−パラフェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、2−クロロパラフェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、オルトトルイレンジアミン、2,6−ジクロロパラフェニレンジアミン、2−(β−ヒドロキシエチル)−パラフェニレンジアミン、ジフェニルアミン、パラアミノフェニルスルファミン酸またはその塩類等が使用されている。
【0004】
また、カップラーとしては、ポリヒドロキシフェノール系、アミノフェノール系、およびジアミン系等に大別されるが、例えば、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、メタアミノフェノール、メタフェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、メタトルイレンジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノオルトクレゾール、フロログルシン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、1−メトキシ−2−アミノ−4−(2−ヒドロキシエチル)アミノベンゼン、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノールまたはその塩類等が使用されている。
【0005】
さらに、染料中間体及びカップラー以外の染料として、染め上がりを向上させる目的で直接染料が配合される場合がある。直接染料としては、例えば、4−ニトロメタフェニレンジアミン、4−ニトロオルトフェニレンジアミン、2−ニトロパラフェニレンジアミン、ピクラミン酸、1−アミノ−4−メチルアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノールまたはその塩等が使用されている。
2剤型酸化染毛剤は、ユーザーの嗜好に応じた種々の色調に毛髪を染色することができ、しかも、その染毛力も優れているので非常に便利であり、業務用のみならず家庭用に広く普及している。そのため、市場から常に高度の品質保持が要求されている。
【0006】
アルカリ剤は髪を膨潤させ、染料を毛髪内へ浸透させやすくするため、また酸化を促進し染料を発色させるため第1剤に配合される。一般的にアンモニアが使用されているが、アンモニアは強い刺激臭を持つため、その刺激臭を押さえるために香料によるアンモニア刺激臭のマスキング、ベースの調合技術によるアンモニアの揮発の抑制などの取り組みがなされている。また、今日一般用のヘアカラーにおいては、より刺激臭の少ない製品が求められ、刺激臭のないアルカリ剤(モノエタールアミンなどを代表とするアルカノールアミン類)が使用されるケースが多くなっている。
【0007】
一方、2−ニトロパラフェニレンジアミンは染毛剤の有効成分に指定され、色調調整剤として配合される。
酸化染毛剤の品質保持という点では、染料の安定性も重要な要因となってくる。酸化染毛剤中の染料の安定性を短期間で評価するためには、しばしば40℃や50℃といった加速条件での評価が行われている。しかし、試作品の中には、加速試験をした保存品が商品設計時に設定した色に染まらない、あるいは色調が変化するという問題が起きることがあった。
本発明者らが、この問題点を調査したところ、酸化染毛剤第1剤中の2−ニトロパラフェニレンジアミンの含有量が変化し、そのため設定した色に染まらない、あるいは色調に変化が生じることが突き止められた。すなわち、何らかの要因で経時的に変化してその含有量が変化しているものと推測された。
【0008】
さらに、この問題点を精査したところ、アルカリ剤としてアルカノールアミン類、特にモノエタノールアミンを配合した製剤にて、2−ニトロパラフェニレンジアミンの変化が顕著であることが分かった。モノエタノールアミンが何らかの化学変化をもたらし、その結果、2−ニトロパラフェニレンジアミンの変化を引き起こすものと推測された。
こうした問題の対応策として、一般に、(1)染毛剤に安定剤を配合して染料の安定性を向上させる、(2)安定性に悪影響を与える可能性のある添加物を除くことにより染毛剤中の染料の安定性を向上させる、などの手段が考えられるが、従来どおりの色合いに染毛し且つ臭いも極力低減した製品をユーザーに提供するためには、2−ニトロパラフェニレンジアミンとアルカノールアミン類とを併用することが必要であり、そのため新たな解決策が求められていた。
【特許文献1】特開2003−201222公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、直接染料として2−ニトロパラフェニレンジアミンが配合されている2剤型酸化染毛剤の第1剤において、2−ニトロパラフェニレンジアミンの経時変化を防ぐ、劣化防止剤および劣化防止方法を提供することである。また、劣化防止処理が施された2剤型酸化染毛剤の第1剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の従来技術における問題点を解決すべく鋭意研究を進めた結果、アルカノールアミン類、特にモノエタノールアミンの存在下であっても、特定のβ−ジメチルケトン構造を有する化合物に、2−ニトロパラフェニレンジアミンの経時変化を防止する効果があることがわかり、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、化学構造中に下記(1)、(2)および(3)からなる群より選ばれたβ−ジメチルケトン構造を有する化合物であることを特徴とする、2−ニトロパラフェニレンジアミンおよびアルカノールアミン類を含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤の劣化防止剤である。
【化1】

【0012】
また、上記劣化防止剤において、β−ジメチルケトン構造を有する化合物が、α−ダマスコン、β−ダマスコン、γ−ダマスコン、δ−ダマスコン、α−ダマセノン、β−ダマセノン、γ−ダマセノン、オルト−ターシャリ−ブチルシクロヘキサノン、4−シクロヘキシル−4−メチル−2−ペンタノン、2,4−ジ−ターシャリ−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3,3−ジメチルノルボルナン、6,7−ジヒドロ−1,1,2,3,3−ペンタメチル−4(5H)−インダノン、6,6−トリメチル−(1R)−ビシクロ〔3,1,1〕ヘプト−3−エン−2−オン、4−メチル−4−フェニル−2−ペンタノンおよび5−フェニル−5−メチル−3−ヘキサノンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物であることを特徴とし、さらに、β−ジメチルケトン構造を有する化合物が、α−ダマスコン、β−ダマスコン、γ−ダマスコン、δ−ダマスコン、α−ダマセノン、β−ダマセノンおよびγ−ダマセノンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、劣化防止剤として化学構造中に下記(1)、(2)および(3)からなる群より選ばれたβ−ジメチルケトン構造を有する化合物が0.0001〜3000ppm添加されたことを特徴とする、2−ニトロパラフェニレンジアミンおよびアルカノールアミン類を含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤である。
【化2】

【0014】
さらに、本発明は、化学構造中に下記(1)、(2)および(3)からなる群より選ばれたβ−ジメチルケトン構造を有する化合物を0.0001〜3000ppm添加することを特徴とする、2−ニトロパラフェニレンジアミンおよびアルカノールアミン類を含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤の劣化防止方法である。
【化3】

【発明の効果】
【0015】
本発明の劣化防止剤は、2剤型酸化染毛剤の第1剤中に配合された場合、2−ニトロパラフェニレンジアミンの経時変化防止、すなわち第1剤の劣化防止(保存性や貯蔵安定性の向上)に優れる。
また、本発明の劣化防止方法は、β−ジメチルケトン構造を有する化合物を2剤型酸化染毛剤の第1剤に添加するものであるが、同化合物は、市場で入手し易い化合物であり、しかも極微量の添加量で2−ニトロパラフェニレンジアミンの経時変化を効果的に防止可能なので、簡便でありコスト面で有利である。
また、本発明の2剤型酸化染毛剤の第1剤は、直接染料である2−ニトロパラフェニレンジアミンの経時変化防止が有効に図られているので、長期間にわたって所期の染毛力を保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔A〕劣化防止剤
(1)β−ジメチルケトン構造を有する化合物
本発明において、劣化防止剤として使用される化合物は、その化学構造中に下記の構造を有するβ−ジメチルケトン類であることを特徴とする。
【化4】

上記式において、Rは
【化5】

を表し、結合手のそれぞれは別の炭素原子と結合し、場合によってそれらはさらに別の炭素原子と結合して5員環、6員環を形成することができる。
【0017】
より具体的に定義すれば、上記化合物は、その化学構造中に下記(1)、(2)および(3)
からなる群より選ばれたβ−ジメチルケトン構造を有する化合物である。
【化6】

【0018】
上記のβ−ジメチルケトン構造を有する化合物として、
α−ダマスコン(IUPAC名:1−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセニル)−2−ブテン−1−オン)、
β−ダマスコン(IUPAC名:1−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル)−2−ブテン−1−オン)、
γ−ダマスコン(IUPAC名:1−(2,2−ジメチル−6−メチレンシクロヘキシル)−2−ブテン−1−オン)、
δ−ダマスコン(IUPAC名:1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセニル)−2−ブテン−1−オン)、
α−ダマセノン(IUPAC名:1−(2,6,6−トリメチル−2,4−シクロヘキサジエン−1−イル)−2−ブテン−1−オン)、
β−ダマセノン(IUPAC名:1−(2,6,6−トリメチル−1,3−シクロヘキサジエン−1−イル)−2−ブテン−1−オン)、
γ−ダマセノン(IUPAC名:1−(6,6−ジメチル−2−メチレン−3−シクロヘキセニル)−2−ブテン−1−オン)、
【0019】
オルト−ターシャリ−ブチルシクロヘキサノン、
4−シクロヘキシル−4−メチル−2−ペンタノン、
2,4−ジ−ターシャリ−ブチルシクロヘキサノン、
2−アセチル−3,3−ジメチルノルボルナン、
6,7−ジヒドロ−1,1,2,3,3−ペンタメチル−4(5H)−インダノン、
4,6,6−トリメチル−(1R)−ビシクロ〔3,1,1〕ヘプト−3−エン−2−オン、
4−メチル−4−フェニル−2−ペンタノン、および
5−フェニル−5−メチル−3−ヘキサノン、
を例示することができ、これらをそれぞれ単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。これらはいずれも香料としても機能する化合物であり、表1に記載のとおり市場で入手可能である。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
上記の例示されたβ−ジメチルケトン構造を有する化合物の中でも、酸化染毛剤の第1剤に配合した場合、2−ニトロパラフェニレンジアミンの安定性向上の効果、および香調に幅を持たせたり、嗜好性を高めるという観点から、α−ダマスコン、β−ダマスコン、γ−ダマスコン、δ−ダマスコン、α−ダマセノン、β−ダマセノン又はγ−ダマセノンが好適である。
【0024】
(2)β−ジメチルケトン構造を有する化合物の添加量
2剤型酸化染毛剤の第1剤中に2−ニトロパラフェニレンジアミンを配合する際の含有量は、好ましくは0.01〜0.5質量%である。そうした場合を考慮すると、劣化防止効果を得るためにβ−ジメチルケトン構造を有する化合物は、2剤型酸化染毛剤の第1剤に、0.0001〜3000ppm、特に0.01〜2000ppmの量で添加することが好ましい。
0.0001ppm未満では、劣化防止効果が不十分となり、一方、3000ppmを超えると製品に添加される香料の持つイメージを壊してしまう可能性があるからである。
また、2種以上のβ−ジメチルケトン構造を有する化合物を併用する場合においても、その合計の添加量が上記の量的範囲内であることが好ましい。
【0025】
(3)β−ジメチルケトン構造を有する化合物の2剤型酸化染毛剤の第1剤への添加方法
本発明の2−ニトロパラフェニレンジアミンの劣化防止剤のβ−ジメチルケトン構造を有する化合物は、単独または2種以上を配合して2剤型酸化染毛剤に添加することができる。また、後述の香料成分の1種又は2種以上と混合して添加することもできる。
【0026】
〔B〕2剤型酸化染毛剤の第1剤
本発明の酸化染毛剤の第1剤は、上述した劣化防止剤のβ−ジメチルケトン構造を有する化合物以外に下記の成分から構成される。
【0027】
(1)2−ニトロパラフェニレンジアミン
本発明の酸化染毛剤の第1剤に用いられる直接染料である2−ニトロパラフェニレンジアミンは、硫酸塩、塩酸塩などの塩類も含む。
【0028】
(2)アルカノールアミン類
本発明の酸化染毛剤の第1剤に含有されるアルカノールアミン類は、アルカリ剤として単独で配合してもよく、1種又は2種以上の他のアルカリ剤と組み合わせて配合してもよい。
【0029】
アルカノールアミン類の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。アルカノールアミン類の中では、特にモノエタノールアミンが汎用される。
【0030】
アルカノールアミン類以外のアルカリ剤としては、アンモニア、アンモニウム塩、有機アミン類(グアニジン等)、無機アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)及びそれらの塩等が挙げられる。
【0031】
アンモニウム塩の具体例としては、ハロゲン化アンモニウム、無機系アンモニウム塩、有機系アンモニウム塩等が挙げられる。ハロゲン化アンモニウムとしては塩化アンモニウム等、無機系アンモニウム塩としては炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等、有機系アンモニウム塩としては乳酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、グリコール酸アンモニウム等が挙げられる。
【0032】
第1剤中におけるアルカリ剤の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.7〜8質量%である。この含有量が0.1質量%未満であると、十分な明度が得られないおそれがある。一方、10質量%を超えて配合すると、仕上り後の毛髪において良好な感触を得ることが困難となるおそれがある。
【0033】
(3)酸化染料
酸化染毛剤の第1剤に含有される酸化染料は、酸化剤による酸化重合によって発色可能な化合物を示す。この酸化染料は、染料中間体及びカップラーに分類され、第1剤には少なくとも染料中間体が含有される。
【0034】
染料中間体としては、フェニレンジアミン類(但し、メタフェニレンジアミンを除く)、アミノフェノール類(但し、メタアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール及びパラメチルアミノフェノールを除く)、トルイレンジアミン類(但し、トルエン−3,4−ジアミン及びトルエン−2,4−ジアミンを除く)、ジフェニルアミン類、ジアミノフェニルアミン類、N−フェニルフェニレンジアミン類、ジアミノピリジン類(但し、2,6−ジアミノピリジンを除く)、それらの塩類等が挙げられる。塩類としては塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
【0035】
カップラーとしては、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、メタアミノフェノール、メタフェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、トルエン−3,4−ジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノオルトクレゾール、パラメチルアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール及びそれらの塩等が挙げられる。
【0036】
これらの酸化染料は単独で配合してもよく、複数を組み合わせて配合してもよい。染料中間体の中でも、染毛力が強いことからパラフェニレンジアミン、パラトルイレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−パラフェニレンジアミン、N−フェニル−パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2−クロロパラフェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノール、2,6−ジクロロパラフェニレンジアミン、パラアミノフェニルスルファミン酸及びそれらの塩類から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0037】
酸化染毛剤の第1剤中における酸化染料の含有量は、好ましくは0.01〜15.0質量%である。この含有量が0.01質量%未満では十分な染毛力は得られにくい。一方、15.0質量%を超えて配合してもそれ以上の染毛力は得られにくい。
酸化染毛剤の第1剤は、使用時に過酸化水素等の酸化剤を含む第2剤と混合して使用される。この際、第1剤と第2剤を質量比で1:3〜2:1の割合で混合するのが好ましく、1:2〜1:1の割合で混合するのがより好ましい。
【0038】
(4)香料成分
通常香料として用いる、脂肪族炭化水素、脂肪族環状炭化水素、テルペン炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類、脂肪族アルコール、脂肪族環状アルコール、テルペンアルコール、芳香族アルコール等のアルコール類、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等のエーテル類、脂肪族オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド類、脂肪族アルデヒド、脂肪族環状アルデヒド、テルペン系アルデヒド、チオアルデヒド、芳香族アルデヒド等のアルデヒド類、脂肪族ケトン、テルペンケトン、脂肪族環状ケトン、非ベンゼン系芳香族ケトン、芳香族ケトン等のケトン類、アセタール類、ケタール類、フェノール類、フェノールエーテル類、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、脂肪族環状カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸類、酸アマイド類、脂肪族ラクトン、大環状ラクトン、テルペン系ラクトン、脂肪族環状ラクトン、芳香族ラクトン等のラクトン類、脂肪族エステル、フラン系カルボン酸族エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、テルペン系カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル類、ニトロムスク類、ニトリル、アミン、ピリジン類、キノリン類、ピロール、インドール等の含窒素化合物などの合成香料及び動物、植物からの天然香料、天然香料及び/又は合成香料を含む調合香料から選ばれる1種又は2種以上を酸化染毛剤の第1剤に使用することができる。
【0039】
(5)その他の成分
酸化染毛剤の第1剤には、更に界面活性剤、油性成分、高分子化合物、溶剤等から選ばれる少なくとも一種を添加することができる。
界面活性剤の具体例としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
油性成分の具体例としては、炭化水素、油脂、ロウ類、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル類、シリコーン誘導体等が挙げられる。
【0040】
高分子化合物としては、カチオン性高分子化合物、両性高分子化合物、アニオン性高分子化合物、非イオン性高分子化合物が挙げられる。
【0041】
溶剤としては、水、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、エチルカルビトール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0042】
更に、その他の添加成分として、コラーゲン、ケラチン、エラスチン、フィブロイン、コンキオリン、大豆蛋白、カゼイン、ゼラチン等の蛋白質を酸、アルカリ、酵素等により加水分解した加水分解物、及びこれらを4級化したカチオン変性蛋白質等のポリペプタイド;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸等の保湿剤;ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ベンジルオキシエタノール、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の染色助剤;パラベン等の防腐剤;EDTA−Na等のキレート剤;フェナセチン、EDTA、8−オキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸尿酸、タンニン酸、フェノキシエタノール等の安定化剤;リン酸、クエン酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸等のpH調整剤;チオグリコール酸、亜硫酸塩等の酸化防止剤;液化石油ガス、ジメチルエーテル、窒素、炭酸ガス等の噴射剤;その他、アミノ酸、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、色素、顔料、紫外線吸収剤等、また「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載されているものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。
【実施例】
【0043】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
〔実施例1〕
下記表2の処方に従い、劣化防止剤としてα−ダマスコン(前記「表1」に記載された商品を使用)0.2質量%(=2000ppm)を添加した本発明の酸化染毛剤の第1剤を調製した。
【表4】

【0045】
〔実施例2〕〜〔実施例15〕
上記実施例1の酸化染毛剤第1剤におけるα−ダマスコンに代えて、同量の他のβ−ジメチルケトン構造を有する化合物(前記「表1」に記載された商品を使用)をそれぞれ添加した酸化染毛剤の第1剤を調製し実施例2〜15とした(表3参照)。
【表5】

【0046】
〔実施例16〕
前記実施例1の酸化染毛剤の第1剤におけるモノエタノールアミン5.4重量%に代えて、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール7.9重量%を配合し、精製水の配合量79.3重量%を76.8重量%に変更して本発明の酸化染毛剤の第1剤を調製した。
【0047】
〔比較例1〕〜〔比較例12〕
前記実施例1の酸化染毛剤の第1剤におけるα−ダマスコンに代えて、同量の下記香料化合物(いずれも従来の酸化染毛剤の第1剤に配合されている香料)をそれぞれ配合した酸化染毛剤の第1剤を調製し、比較例1〜12とした(「表4」参照)。
【表6】

【0048】
〔参考例1〕
前記実施例1の酸化染毛剤の第1剤におけるα−ダマスコンに代えて、同量の精製水を添加した酸化染毛剤の第1剤を調製し、参考例1とした。
【0049】
〔試験例1〕
上記のとおり調製した酸化染毛剤第1剤中の2−ニトロパラフェニレンジアミンの安定性試験を、以下のとおり行った。
(1)試験方法
実施例1〜16および比較例1〜12で調製された各酸化染毛剤第1剤の試料をそれぞれ30mlずつガラス瓶に入れ50℃の恒温槽に保管した。
4週間後に各試料を恒温槽から取り出して室温に戻し、試料中の2−ニトロパラフェニレンジアミンの安定性を染布試験によって評価した。染布試験は、製品の染毛性能を簡易に評価する試験法で、保存した酸化染毛剤第1剤サンプルと過酸化水素水(過酸化水素濃度5.0%)を1:1の比率で混合した染色液に試験用白布(JIS L0803、染色堅ろう度試験用添付白布、羊毛)を浸漬し、30℃で20分間放置する。その後、よく水洗、乾燥させて白布の染色状態(色調や色の濃淡)を観察するものであり、染料等の含有量に変化があれば、染色状態の差異として確認ができ、評価できるものである。また、染毛剤の実使用に近い条件で評価をするため、製品の使用評価との相関性が高いものである。
【0050】
(2)試験結果
試験後の各試料中の2−ニトロパラフェニレンジアミンの安定性、すなわち劣化防止剤による安定性向上効果に関して以下のとおり評価した。染布試験の染色状態は、経験のある専門パネラー10名が、目視による官能評価を行い, 次の4段階で評価した。なお、比較対照品は、劣化防止剤を一切添加しない参考例1の酸化染毛剤の第1剤(以下、「参考例1」という)の染色布を用いた。また、10名の評価のうち、最も多い評価結果を総合評価とし、表5に記載した。
評価◎:参考例1よりも染色状態が極めて良好で、安定性向上効果が高い。
評価○:参考例1よりも染色状態が良好で、安定性向上効果はやや高い。
評価△:参考例1と同等な染色状態であり、安定性向上効果は低い。
評価×:参考例1よりも染色状態が劣り、安定性向上効果は非常に低い。
【表7】

【0051】
表5に示された結果より、本発明の劣化防止剤を用いた酸化染毛剤第1剤(実施例1〜16)では、2−ニトロパラフェニレンジアミンの安定性に関しては向上が見られ、本発明の劣化防止剤を用いない場合(比較例1〜12、参考例1)に比べて、優れた劣化防止効果を発揮することが明らかとなった。
すなわち、実施例1〜16のβ−ジメチルケトン構造を有する化合物は、いずれも酸化染毛剤第1剤の劣化防止剤として優れた効果をもたらしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学構造中に下記(1)、(2)および(3)からなる群より選ばれたβ−ジメチルケトン構造を有する化合物であることを特徴とする、2−ニトロパラフェニレンジアミンおよびアルカノールアミン類を含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤の劣化防止剤。
【化1】

【請求項2】
β−ジメチルケトン構造を有する化合物が、α−ダマスコン、β−ダマスコン、γ−ダマスコン、δ−ダマスコン、α−ダマセノン、β−ダマセノン、γ−ダマセノン、オルト−ターシャリ−ブチルシクロヘキサノン、4−シクロヘキシル−4−メチル−2−ペンタノン、2,4−ジ−ターシャリ−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3,3−ジメチルノルボルナン、6,7−ジヒドロ−1,1,2,3,3−ペンタメチル−4(5H)−インダノン、6,6−トリメチル−(1R)−ビシクロ〔3,1,1〕ヘプト−3−エン−2−オン、4−メチル−4−フェニル−2−ペンタノンおよび5−フェニル−5−メチル−3−ヘキサノンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする、請求項1記載の劣化防止剤。
【請求項3】
β−ジメチルケトン構造を有する化合物が、α−ダマスコン、β−ダマスコン、γ−ダマスコン、δ−ダマスコン、α−ダマセノン、β−ダマセノンおよびγ−ダマセノンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする、請求項1又は2記載の劣化防止剤。
【請求項4】
劣化防止剤として化学構造中に下記(1)、(2)および(3)からなる群より選ばれたβ−ジメチルケトン構造を有する化合物が0.0001〜3000ppm添加されたことを特徴とする、2−ニトロパラフェニレンジアミンおよびアルカノールアミン類を含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤。
【化2】

【請求項5】
化学構造中に下記(1)、(2)および(3)からなる群より選ばれたβ−ジメチルケトン構造を有する化合物を0.0001〜3000ppm添加することを特徴とする、2−ニトロパラフェニレンジアミンおよびアルカノールアミン類を含有する2剤型酸化染毛剤の第1剤の劣化防止方法。
【化3】


【公開番号】特開2008−69105(P2008−69105A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248804(P2006−248804)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】