説明

2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物、ウレタン成形体、靴底、及び工業部材

【課題】 低温から常温までの広範囲の温度条件及び低湿度条件下でも電気抵抗値の差が小さく、温度依存性が小さく帯電防止性能に優れており、且つ従来の帯電防止剤よりも添加量を低減できるので、ウレタン成形品を製造する際に、発泡挙動の異常、硬度低下、強度低下などの弊害がなく、且つ帯電防止性、耐屈曲性、他素材との接着性に優れた2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物、ウレタン成形体、靴底、及び工業部材を提供する。
【解決手段】 イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤と、イソシアネート基反応性化合物(B)、水(C)、触媒(D)を含有する硬化剤、及び帯電防止剤として、アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)とアルキル置換イミダゾリウム塩(E2)とを含む2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物であって、前記樹脂組成物中の前記塩(E1)と塩(E2)の含有比が19/1〜1/1質量比である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性に優れる2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物、それを用いてなるウレタン成形体、靴底、及び工業部材に関する。
更に詳しくは、低温から常温(20±15℃)までの広範囲の温度条件及び低湿度条件下でも、温度依存性が小さく帯電防止性に優れており、且つ添加量が従来品の帯電防止剤と較べて大幅に低減できるので物性低下を抑制でき、例えば安全靴、作業靴、室内靴等の各種靴底、室内用のスリッパやサンダル等の各種履物の底材質、あるいは安全手袋、安全作業服、安全帽等の各種物品として有用な2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物、それを用いてなるウレタン成形体、靴底、及び工業部材(例えばパッキン、ホース、シート、緩衝材、乗物部材、包装部材等)に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビナート、化学工場、作業現場、危険物取扱場所、実験施設などのような危険物を扱う場所での静電気が原因による火災や爆発災害が後を絶たず、人的及び物的損害の大きさが憂慮されている。
【0003】
このような静電気災害の防止策として、人体に着用する履物や衣料品などに使用される樹脂や繊維などに帯電防止性(制電性ともいう。)を付与することが積極的に検討されており、例えば、静電気帯電防止用安全靴、作業靴、クリーンルーム用靴等の靴底、医療用シューズ、安全手袋、安全作業服、安全帽等の種々の物品に応用されている。
【0004】
従来から、帯電防止性を付与する方法としては、導電性物質、イオン性物質等からなる帯電防止剤を樹脂成形品の表面に塗布又はスプレーする方法や、樹脂中に内部添加する方法などが行われてきた。このような方法をポリウレタン樹脂に応用した事例としては、例えば(1)カーボンブラック、導電フィラー等を添加する方法、あるいは(2)イオン性界面活性剤の塗布又は添加する方法、等が知られていた。
【0005】
しかしながら、導電フィラー等を添加する前記方法(1)では、ポリウレタン樹脂への添加時に樹脂組成物の著しく増粘が起こるため、成形が困難になるという問題があった。また、一般的なイオン性界面活性剤を用いる前記方法(2)では、実用上有効なレベルにまで帯電防止性を向上させることが困難であるという問題があった。そのため、より良好な帯電防止性の付与を目的に検討がなされてきた。
【0006】
例えば、過塩素酸、チオシアン酸又は硝酸等のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を添加する方法(例えば特許文献1及び2参照)、あるいはアルキル硫酸第四級アンモニウムや第四級アンモニウムパークロレートを添加する方法(例えば特許文献3参照)が提案された。
【0007】
しかしながら、前記特許文献1や特許文献2の方法では、記載された特定の化合物を単独使用した場合に、帯電防止効果がある程度早く発現するが、ウレタン成形品の性能は未だ不充分であり実用上問題があった。
【0008】
また、前記特許文献3の方法では、成形直後の制電性の発現が遅すぎて、ウレタン成形品の最終的な性能も湿度依存性が高く、低温低湿度条件下では帯電防止性が充分に発現されず、実用性に極めて劣るという問題があった。
【0009】
更に、イオン性の帯電防止化合物として置換スルホン酸第四級アンモニウム等の非金属系帯電防止化合物及びスルホン酸金属塩等の金属系帯電防止化合物との混合物を用い、ホルムアミドや炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の環状炭酸エステル等の極性有機溶媒を添加した帯電防止剤組成物をポリウレタン中に添加する方法が提案されている(例えば特許文献4参照)。
【0010】
しかしながら、特許文献4の方法では、必須の含有成分として、ホルムアミドや炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の環状炭酸エステル等の極性有機溶媒を用いているため、残存する有機溶剤の悪影響を受けやすく、例えば、得られた樹脂組成物の保存安定性の低下、成形体表面でのブリードアウト、ホルムアミド等の有機溶剤の発生による人体への悪影響など、安全面、衛生面、品質面で種々の問題があった。
【0011】
また、特許文献4の場合、ポリオール中に添加された環状炭酸エステルは、触媒の存在下で加温すると容易に分解するため、発泡原液としてポリオールにプレミックスして使用した場合に、経時的に発泡挙動異常を引き起こし、安定した物性の成形物が得られないことから、ライン生産面及び品質管理面において不具合が起こるという問題もあった。
【0012】
更に、置換スルホン酸第四級アンモニウム系のカチオン系制電性化合物及び金属塩系のアニオン系制電性化合物から選ばれる少なくとも1種である帯電防止剤、及びラクトン系単量体からなる帯電防止助剤を含有するポリウレタン樹脂成形体が提案されている(例えば特許文献5参照)。
【0013】
しかしながら、特許文献5では、帯電防止助剤としてラクトン系単量体を添加することにより、帯電防止性は若干得られるものの実用面では未だ不充分であり、また接着性にも劣るため、例えば安全靴等の靴底や安全手袋などの安全物品などの広範囲の用途には未だ採用し難いという問題があった。
【0014】
また、特許文献5で使用される帯電防止剤は、帯電防止性が温度と湿度に対する依存性が大きく、高温高湿度条件下では大気中の湿気(水)を吸着し水が帯電防止剤として作用して、若干は良好な帯電防止性能を発現できるのに対して、低温低湿度条件下では充分な帯電防止性を発現できず実用的でないという問題があった。
【0015】
以上のように、低温から常温(20±15℃)までの広範囲の温度条件及び低湿度条件下でも、電気抵抗値の差が小さく、温度依存性が小さく帯電防止性能に優れており、且つ従来の帯電防止剤よりも添加量を低減できるので、ウレタン成形品を製造する際に、発泡挙動の異常、硬度低下、強度低下などの弊害がなく、且つ帯電防止性、耐屈曲性、他素材との接着性などの優れた性能を有する2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物、それを用いてなるウレタン成形体、靴底、及び工業部材の開発が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭63−43951号公報
【特許文献2】特開平4−298517号公報
【特許文献3】特開平4−298518号公報
【特許文献4】特開2001−329253号公報
【特許文献5】特開2005−60682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、低温から常温(20±15℃)までの広範囲の温度条件及び低湿度条件下でも、電気抵抗値の差が小さく、温度依存性が小さく帯電防止性に優れており、且つ従来の帯電防止剤よりも添加量を低減できるので、ウレタン成形品を製造する際に、発泡挙動の異常、硬度低下、強度低下などの弊害がなく、且つ帯電防止性、耐屈曲性、他素材との接着性などの優れた性能を有する2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物、それを用いてなるウレタン成形体、靴底、及び工業部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、帯電防止剤として、特定の2種類の塩を特定範囲の量で含む2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を用いてなるウレタン成形体が、低温から常温(20±15℃)までの広範囲の温度条件及び低湿度条件下でも、電気抵抗値の差が小さく、温度依存性が小さく帯電防止性に優れており、且つ従来の帯電防止剤よりも添加量を低減できるので、ウレタン成形品を製造する際に、発泡挙動の異常、硬度低下、強度低下などの弊害がなく、且つ帯電防止性、耐屈曲性、他素材との接着性などの優れた性能を発現できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0019】
即ち、本発明は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤と、イソシアネート基反応性化合物(B)、水(C)、触媒(D)を含有する硬化剤、及び帯電防止剤として、アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)とアルキル置換イミダゾリウム塩(E2)とを含む2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物であって、前記塩(E1)と塩(E2)の含有比が19/1〜1/1質量比であることを特徴とする2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物に関するものである。
【0020】
本発明は、前記2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を用いて成形して得られることを特徴とするウレタン成形体に関するものである。
【0021】
また、本発明は、前記2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を用いて成形され、密度が0.3〜1.0g/cmの範囲であることを特徴とする靴底に関するものである。
【0022】
更に、本発明は、記載2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を用いて成形して得られることを特徴とする工業部材に関するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物は、帯電防止剤として、アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)とアルキル置換イミダゾリウム塩(E2)とを必須に含み、それら2つの塩の予想外の相乗効果により、前記塩(E1)又は塩(E2)を単独使用する場合よりも、低温から常温(20±15℃)までの広範囲の温度条件及び低湿度条件下でも、電気抵抗値の差が小さく、温度依存性が小さく帯電防止性に優れる効果を得ることができる。
【0024】
また、本発明のウレタン成形体は、従来よりも帯電防止剤の添加量を低減できるので、発泡成形体を製造する際に、発泡挙動の異常、硬度低下、強度低下などの悪影響がなく、且つ帯電防止性、耐屈曲性、他素材との接着性などの優れた性能を付与でき、特に前記ウレタン成形体の代表例である靴底は、生産面及び品質面で優れる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)>
(1)ポリイソシアネート成分
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)(以下「ウレタンプレポリマー(A)」という。)を含有する主剤と、イソシアネート基反応性化合物(B)(以下「反応性化合物(B)」という。)、水(C)、触媒(D)を含有する硬化剤、及び、帯電防止剤としてアルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)とアルキル置換イミダゾリウム塩(E2)とを配合し得ることができる。
【0026】
前記ウレタンプレポリマー(A)は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分を公知の方法に従い反応させて得ることができ、その反応方法、反応条件は、特に限定しない。
【0027】
尚、前記ポリイソシアネート成分とは、分子中に2以上のイソシアネート基(以下、NCO基とも言う。)を有する化合物をいう。
【0028】
前記ポリイソシアネート成分としては、公知の脂肪族、芳香族、及び脂環式ポリイソシアネートの何れも用いることができ、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(MDI;その4,4’体、2,4’体又は2,2’体、若しくはそれらの混合物、クルードMDI)、カルボジイミド変性MDI(変性MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネ−ト(TDI;その2,4体、又は2,6体、若しくはそれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネ−ト、あるいはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、あるいはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられ、また、市販品としては、例えば、ミリオネート MT(商標:日本ポリウレタン工業株式会社製、4,4’−MDI)、コスモネート LL(商標:三井化学ポリウレタン株式会社製、カルボジイミド変性MDI)などが挙げられる。これらの中でも、ポリオール成分との反応性、湿気(水)との反応性、及び作業性等に優れることから、好ましくはMDI、TDIであり、より好ましくは加熱溶融させて使用する際の蒸気圧が低いMDIである。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0029】
(2)ポリオール成分
前記ポリオール成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、低分子量グリコールなどが挙げられる。
【0030】
前記ポリエステルポリオールの製造に使用するジカルボン酸は、芳香族骨格を有するジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸などのジカルボン酸、あるいは芳香族骨格を有しないジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。これらは、単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記ポリエステルポリオールの製造に使用するジオールは、芳香族骨格を有するジオールとしては、例えば、ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールAF、ビスフェノールSi2、及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等のジオール、あるいは芳香族骨格を有しないジオールとしては、例えば、エチレングリコール(EG)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール類;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環族ジオール類などのジオールが挙げられる。これらは、単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0032】
その他にも、前記ポリエステルポリオールの原料として、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、しょ糖、アコニット糖等のアルコール類;あるいはアミン類なども使用できる。これらは、単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記ポリエステルポリオールの水酸基価は、主剤であるウレタンプレポリマー(A)の目標粘度を考慮して設定することが望ましい。前記ポリエステルポリオールの水酸基価は、好ましくは35〜225の範囲であり、より好ましくは55〜120の範囲である。前記ポリエステルポリオールの水酸基価がかかる範囲であるならば、主剤であるウレタンプレポリマー(A)の極端な粘度上昇が抑えられ、適度な粘度のウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0034】
前記ポリエステルポリオールには、上記以外のカルボン酸、ジオール、ジアミン等を併用して得られるポリエステルジオール、ポリアミドポリエステルジオールなども含まれる。
【0035】
また、前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレンプロピレングリコール(PEPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、2−メチル−1,3−プロパンアジペート、3−メチル−1,5ペンタンアジペート、ポリカーボネートポリオール等が挙げられ、これらの中でも、ポリテトラメチレングリコール(PTMG、水酸基価35〜175)が好ましい。前記ポリエーテルポリオールは、直鎖、分岐、環状の何れの構造を有していてもよい。
【0036】
前記ポリエーテルポリオールの水酸基価は、好ましくは35〜225の範囲、より好ましくは55〜115の範囲である。前記ポリエーテルポリオールの水酸基価がかかる範囲であるならば、ウレタン成形体の脆性の制御が容易にでき、高強度で優れた耐摩耗性を得ることができる。
【0037】
ポリテトラメチレングリコールなどの前記ポリエーテルポリオールにラクトン(例えばε−カプロラクトンなど)が開環付加重合したポリオールなども使用できる。
【0038】
また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸と脂肪族ポリオールとをエステル化反応して得られるもの等を使用することができる。具体的には、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のようなジオールと、ジメチルカーボネートやジフェニルカーボネートやホスゲン等との反応生成物などが挙げられる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記低分子量グリコールとしては、例えば、エチレングリコール(EG)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール類;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環族ジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の水酸基含有化合物などが挙げられ、これらの中でも、ジエチレングリコール(DEG)が好ましい。前記低分子量グリコールは、直鎖、分岐、環状の何れの構造を有していてもよい。
【0040】
前記低分子量グリコールの分子量は、好ましくは50〜300の範囲であり、より好ましくは50〜200の範囲である。前記低分子量グリコールの分子量がかかる範囲であるならば、ポリオール成分として併用した場合に、反応性の制御がより効果的にでき、成形性(歩留まり、成形ムラ)がより良好になる。
【0041】
また、ポリオール成分として、例えば、カプロラクトンモノマーの開環重合により得られるポリカプロラクトンポリオール、芳香族ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油系ポリオールなども使用できる。
【0042】
更に、前記ポリオール成分と共に、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他のポリオールを使用してもよい。前記その他のポリオールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の少なくとも3個以上の水酸基を有する出発原料にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合して得られるポリ(オキシアルキレン)グリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール等のポリエーテルポリオール;あるいはアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸等の多価カルボン酸とエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オタンジオール,ネオペンチルグリコール、2,−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリオール;あるいはポリラクトンポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、又はポリブタジエンポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの存在下で、アクリロニトリルやスチレン等のエチレン性不飽和単量体を重合させるポリマーポリオール等が挙げられる。
【0043】
(3)ウレタンプレポリマー(A)
前記ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基当量(以下「NCO当量」という。)は、好ましくは150〜350の範囲であり、より好ましくは200〜300の範囲である。前記ウレタンプレポリマー(A)中のNCO当量がかかる範囲であるならば、粘度の大きな上昇が抑えられ、低圧発泡機で使用しやすい粘度の作業性に優れるウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0044】
尚、本発明でいう「イソシアネート基当量」(単位:g/mol)とは、JIS K1603−2007 プラスチック−ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法第一部:イソシアネート基含有率の求め方に従い測定した値である。
【0045】
前記ウレタンプレポリマー(A)は、ポリイソシアネート成分の有するNCO基がポリオール成分の有する水酸基(以下OH基とも言う。)に対して過剰となる仕込量で、公知の方法により反応させ製造することができる。
【0046】
前記ウレタンプレポリマー(A)を得るための反応方法としては、例えば、反応容器中に仕込んだポリイソシアネート成分に、水分を除去したポリオール成分を滴下、分割、一括など適当な方法にて仕込み、ポリオール成分の有する水酸基が実質的に無くなるまで反応させる方法を採用すればよい。
【0047】
反応中の発熱を穏やかに制御しながら安全且つ正常に反応を進行させるためには、滴下あるいは分割による仕込方法が、好ましい。
【0048】
前記ウレタンプレポリマー(A)の製造は、通常、無溶剤で行なうが、有機溶剤中で反応させ製造してもよい。有機溶剤中で反応させる場合には、反応を阻害しない有機溶剤を使用すればよく、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、メチルエチルケトン、トルエン等が挙げられる。反応に使用した有機溶剤は、反応途中又は反応終了後に、減圧加熱や薄膜留去等の適当な方法により除去することが望ましい。
【0049】
前記ウレタンプレポリマー(A)の反応条件(温度、時間、圧力など)は、反応挙動や製品品質などを正常に制御できる範囲で設定すればよく、特に限定しない。通常は、反応温度50〜90℃で、反応時間2〜24時間の条件にて、行うことが好ましい。圧力は、常圧、加圧、減圧の何れでもよい。
【0050】
反応方式は、例えば、バッチ、半連続、連続など、公知の反応方式を選択することができ、特に限定しない。
【0051】
また、前記ウレタンプレポリマー(A)を製造する際には、必要に応じてウレタン化触媒を使用することができる。前記触媒は、原料仕込工程、反応工程の任意の段階で適宜加えることができる。また、触媒の添加方法は、一括、分割、連続など特に限定しない。
【0052】
前記ウレタン化触媒としては、公知のものが使用でき、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジブチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の含窒素化合物;あるいはチタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド、ジラウリン酸ジブチルスズ、2−エチルカプロン酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルカプロン酸亜鉛、グリコール酸モリブデン、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物;あるいは塩化鉄、塩化亜鉛等の無機化合物などが挙げられる。
【0053】
通常、反応は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、乾燥空気雰囲気下又は密閉条件下などの水分が混入しない条件下で行ってもよい。
【0054】
前記ウレタンプレポリマー(A)の合成において、ポリイソシアネート成分のNCO当量と、前記ポリオール成分のOH当量の合計との比(即ち[NCO/OH])は、目標とする物性、製品品質、反応挙動などを考慮して設定すればよい。
【0055】
前記ポリイソシアネート成分が有するNCO基と、前記ポリオール成分が有するOH基との当量比(即ち[NCO/OH])は、好ましくは2〜20の範囲であり、より好ましくは3〜15の範囲である。前記[NCO/OH]がかかる範囲であれば、作業時の反応の制御が容易にでき、優れた性能バランスを有するウレタン成形体を得ることができ、好ましい。
【0056】
<イソシアネート基反応性化合物(B)>
次いで、前記主剤に組み合わせて、配合し混合する硬化剤について、以下に説明する。
【0057】
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物で用いる硬化剤は、必須成分として、イソシアネート基反応性化合物(B)(以下「反応性化合物(B)」という。)、発泡剤として水(C)、触媒(D)と共に、帯電防止剤としてアルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)とアルキル置換イミダゾリウム塩(E2)を含有する。
【0058】
前記反応性化合物(B)としては、前記ポリオールやポリアミンなどの活性水素原子含有化合物を用いることができる。
【0059】
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分、更に必要に応じて添加するポリアミン等の活性水素原子含有化合物の反応成分全体を、当量比でNCO/活性水素原子含有基(OH基、NH基等)=0.7〜1.2の範囲で反応させることにより得ることができる。
【0060】
前記反応性化合物(B)と共に、その他の反応性化合物も任意成分として、反応及び性能などに悪影響を与えない範囲で用いることができる。前記その他の反応性化合物としては、イソシアネート基を有する化合物に対して良好な反応性を有するものであれば特に限定はしないが、例えば、ポリアミノクロロフェニルメタン化合物、ポリアミノクロロフェニルメタン化合物とポリテトラメチレングリコールの混合物、ポリアミノクロロフェニルメタン化合物の二核体である4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロジフェニルメタン(以下、MBOCAという。)などが挙げられる。これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記反応性化合物(B)の配合量は、前記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、好ましくは40〜170質量部の範囲であり、より好ましくは75〜135質量部の範囲である。前記反応性化合物(B)の配合量がかかる範囲であるならば、低圧発泡機で効率的に攪拌混合でき、均一で微細な形状の発泡セルの形成が可能であり、高硬度で耐摩耗性などの優れた性能が発現可能な靴底等の物品に適した2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0062】
<水(C)>
本発明では、水(C)を水発泡法における発泡剤の役割を果たすために配合する。
【0063】
その際、水の配合量は、通常、前記反応性化合物(B)100質量部に対して、好ましくは0.01〜1.50質量部の範囲であり、より好ましくは0.10〜0.60質量部の範囲である。前記水(C)の配合量がかかる範囲であるならば、安定した発泡状態を発現可能な2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0064】
前記主剤と硬化剤とを混合する際の水(C)の添加方法は、特に限定しない。例えば、硬化剤として、反応性化合物(B)、水(C)、触媒(D)、及び前記塩(E1)と前記塩(E2)と、必要に応じて添加剤などを加えて、予め混合しておき、次いで、主剤と硬化剤を混合し成形型に注入、発泡、硬化させる方法などが挙げられる。
【0065】
本発明では、発泡剤として水(C)を使用するが、ウレタン化反応時の発泡に用いられる公知の発泡剤を共に用いてもよい。
【0066】
更に、発泡助剤として、例えば1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、メチレンクロライド、ペンタン等の低沸点の化合物を使用することができる。
【0067】
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物の製造の際には、必要により整泡剤等の添加剤を使用することができる。
【0068】
整泡剤としては、ポリウレタン樹脂発泡成形体の製造用として効果のあるもの全てを使用することができる。例えば、ポリジメチルシロキサンやポリシロキサン−ポリアルキレンオキシドブロック共重合体等のシリコン系化合物、金属石鹸、アルキルフェノールや脂肪酸のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物等の界面活性剤が挙げられる。
【0069】
<触媒(D)>
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物には、触媒(D)を配合する。
【0070】
前記触媒(D)の種類及び添加量は、触媒の混合後から型内に流し込むまでの時間、温度、最終的な発泡体の発泡状態などを考慮して選択すればよく、特に限定はしない。
【0071】
前記触媒(D)としては、特に限定しないが、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、パルミチルジメチルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノエチルエーテル、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−メチルイミダゾール、N−エチルモルフォリン、トルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のアミン化合物、あるいはジオクチルチンジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物、あるいは4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロジフェニルメタン(MBOCAと言う)、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)等のポリアミノクロロフェニルメタン化合物などが挙げられ、これらの中では、泡化特性が比較的強い点から、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノエチルエーテルが好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用してもいい。
【0072】
前記触媒(D)の配合量は、反応性化合物(B)100質量部に対して、好ましくは、0.15〜2.00質量部の範囲であり、より好ましくは、0.30〜1.50質量部の範囲である。前記触媒(D)の配合量がかかる範囲であるならば、安定した発泡状態を発現可能な2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0073】
前記反応性化合物(B)と共に、水(C)や触媒(D)などを必須成分として、好ましくは前記配合量の範囲で配合して混合することにより、硬化剤を調整することができる。
【0074】
前記のように調整した主剤と硬化剤を処方に従い配合し、直ちに充分に混合することにより、本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0075】
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を得るための前記主剤と前記硬化剤の配合比、即ち〔主剤であるウレタンプレポリマー(A)が有するNCO基の全モル数(α)〕/〔反応性化合物(B)と水(C)を含めた硬化剤が有するNCO反応性基(即ち、OH基+NH基)の合計モル数(β)〕は、好ましくはα/β=1/0.7〜1/1.2の範囲、より好ましくは1/0.8〜1/1.0の範囲である。前記主剤と硬化剤の配合比がかかる範囲であるならば、高強度で優れた耐摩耗性を発現可能な2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0076】
<アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)とアルキル置換イミダゾリウム塩(E2)>
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物は、特定の帯電防止剤として、アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)とアルキル置換イミダゾリウム塩(E2)の2種類を共に必須に含む。
【0077】
前記2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物において、前記アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)と前記アルキル置換イミダゾリウム塩(E2)の含有量の比は19/1〜1/1質量比であり、好ましくは含有量の比は4/1〜2/1である。前記含有量の比がかかる範囲であれば、塩(E1)又は塩(E2)を単独使用する場合よりも、両者を併用する場合の方が使用量を低減でき、且つ低温条件下でも遥かに優れた帯電防止性能を発現できる。
【0078】
前記アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)としては、例えば、N−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩、N−エチル−N,N−ジメチル−N−ミリスチルアンモニウムエチル硫酸塩、N−エチル−N,N−ジメチル−N−パルミチルアンモニウムエチル硫酸塩、及びN−エチル−N,N−ジメチル−N−ステアリルアンモニウムエチル硫酸塩などが挙げられ、これらの中では、N−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩が、帯電防止性能や他素材との接着性などの性能がより優れることから、好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用してもいい。
【0079】
前記アルキル置換イミダゾリウム塩(E2)としては、例えば、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムスルホン酸メチル塩、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムチオシアネート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムアセテート、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムスルホン酸メチル塩、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムチオシアネート、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムアセテートなどが挙げられ、これらの中では、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムチオシアネートが、帯電防止性能により優れることから、好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用してもいい。
【0080】
本発明では、前記アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)と前記アルキル置換イミダゾリウム塩(E2)の組み合わせとして、前記塩(E1)がN−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩であり、且つ前記塩(E2)が1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩及び/又は1−エチル−3−メチル−イミダゾリウチオシアネートの組み合わせからなる帯電防止剤が、特に低温から常温(20±15℃)までの広範囲の温度条件及び低湿度条件下でも、電気抵抗値の差が小さく、温度依存性が小さく帯電防止性能に優れており、且つ従来の帯電防止剤よりも添加量を低減できるので、より好ましい。
【0081】
前記2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物において、前記アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)と前記アルキル置換イミダゾリウム塩(E2)からなる帯電防止剤の含有率の和は、帯電防止性能を発現させる観点から、0.5質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましい。また樹脂の機械特性を維持させる観点からは、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。従って、帯電防止剤の含有量は、好ましくは1〜10質量%であり、より好ましくは含有率の和は1.5〜7質量%である。
【0082】
尚、前記塩(E1)と前記塩(E2)は吸水性に富むので、前記主剤と混合して貯蔵することはウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基が水と副反応する怖れがあり、好ましくない。そのため、前記塩(E1)と塩(E2)を溶解させた前記硬化剤と前記主剤とは、別々に貯蔵しておき、使用時に必要量を混合して成形を行う。通常は、主剤の調整工程ではなく、硬化剤の調整工程において塩(E1)と塩(E2)を共に添加することが望ましい。
【0083】
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物では、前記塩(E1)と塩(E2)を特定の比率(即ち、含有比19/1〜1/1)で含むことにより、低温から常温(20±15℃)までの広範囲の温度条件及び低湿度条件下でも、電気抵抗値の差が小さく、温度依存性が小さく帯電防止性能に優れており、且つ従来の帯電防止剤よりも添加量を低減できるので、ウレタン成形品を製造する際に、発泡挙動の異常、硬度低下、強度低下などの弊害がなく、且つ帯電防止性、耐屈曲性、他素材との接着性などの優れた性能を得ることができる。
【0084】
前記塩(E1)と塩(E2)をウレタン成形体中に均一に含有させるためには、前記2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物の原料となる前記ポリオール成分や、必要に応じて使用される可塑剤などの添加剤に、予め溶解・混合・分散等させた状態でウレタン成形体の製造時に用いることが好ましい。
【0085】
前記ポリオール成分の中でも、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの低分子量グリコールは、前記(E1)と(E2)との溶解性が良好であり、濃度の高い溶液を作成できる点から好ましく、エチレングリコールがより好ましい。
【0086】
本発明では、必須に用いる前記塩(A1)と塩(A2)と共に、本発明の目的を阻害しない範囲で、公知のその他の帯電防止剤を使用することができる。
【0087】
前記その他の帯電防止剤としては、特に制限はないが、例えば、炭化水素基及びオキシ炭化水素基で置換された置換スルホン酸第四級アンモニウム系のカチオン系制電性化合物、有機酸金属塩系のアニオン系制電性化合物などが挙げられる。
【0088】
前記置換スルホン酸第四級アンモニウムとしては、例えば、ジアルキル硫酸誘導体、メタンスルホン酸エステル誘導体、p−トルエンスルホン酸エステル誘導体等が挙げられる。これらは、単独或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0089】
前記有機酸金属塩系のアニオン系制電性化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド金属塩、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン金属塩、アルキルスルホン酸金属塩、ベンゼンスルホン酸金属塩、又はアルキルベンゼンスルホン酸金属塩等の有機金属塩が挙げられる。これらは、単独或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0090】
また、本発明の目的を阻害しない範囲で、公知の帯電防止助剤を含有してもよく、その含有量は特に限定しない。
【0091】
前記帯電防止助剤としては、例えば、環状ケトン類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ラクトン系単量体類などが挙げられる。前記環状ケトン類としては、例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等及びその誘導体等、あるいはソルビタン脂肪酸エステル類としては、例えばソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等、あるいはラクトン系単量体類としては、例えばβ−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−クロトノラクトン等のラクトンモノマーが挙げられる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0092】
前記帯電防止剤や帯電防止助剤は、ポリウレタン成形体中に均一に含まれるようにするために、前記ポリオール成分や、成形体の柔軟性を調節するために適宜使用される可塑剤(例えば、アジペート系ポリエステル可塑剤、安息香酸系ポリエステル可塑剤等)などに予め溶解させた状態でポリウレタン成形体の製造時に使用することが好ましい。
【0093】
<ウレタン成形体>
本発明のウレタン成形体としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂、注型ポリウレタン樹脂、発泡ポリウレタン(ポリウレタンエラストマーフォーム、硬質・軟質ポリウレタンフォーム等)などのポリウレタン樹脂を用いてなるウレタン成形体が挙げられ、好ましくは、ウレタン発泡成形体である。
【0094】
前記ウレタン(発泡)成形体の製造方法としては、公知の方法を採用できるが、それらの中でも、予め前記ポリイソシアネート成分と前記ポリオール成分を反応させたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を含む主剤と、前記アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)と前記アルキル置換イミダゾリウム塩(E2)の2種類の帯電防止剤の存在下で、イソシアネート基反応性化合物(B)(例えば、ポリアミン系硬化剤等)、水(C)、触媒(D)を含む硬化剤を含有する2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を反応させるプレポリマー法が、好ましい。
【0095】
前記ウレタン成形体を製造する際の前記塩(E1)と塩(E2)の添加方法としては、例えば(1)前記(E1)と(E2)を一緒に又は別個にポリオール成分にプレミックスする方法、(2)前記(E1)と(E2)をプレミックスせずに、夫々を別個に添加する方法等を採用できる。
【0096】
本発明では、前記塩(E1)と塩(E2)をウレタン化触媒の存在下に加温状態で保存しても分解することなく安定に保存することができる。
【0097】
前記(1)の方法は、発泡挙動異常、硬度低下、強度低下などの弊害が生じる恐れがなく、しかも、低温低湿度条件下で優れた帯電防止性能を有する安定したウレタン発泡成形体を製造できる点で、特に好ましい。
【0098】
本発明のウレタン成形体を製造する場合、例えばポリオール成分中に水、ウレタン化触媒、帯電防止剤、あるいは必要に応じて発泡剤、その他添加剤を、予めプレミックスした混合物を使用することが好ましい。そのようなプレミックスした混合物とポリイソシアネート成分とを発泡成形機で高速攪拌することによって混合し発泡させることができる。
【0099】
発泡成形機としては、特に限定せず、例えば低圧発泡成形機、射出発泡成形機等を使用することができる。
【0100】
前記ウレタン成形体の製造方法としては、上述のような水発泡法以外にも、例えば、中空ビーズを添加させる方法、機械的発泡法、化学的発泡法などがあり、特に限定しないが、生産効率面、製造コストなどの点から水発泡法がより好ましい。
【0101】
本発明のウレタン成形体には、帯電防止性や成形性などの性能を損ねない範囲で、例えば、難燃剤、整泡剤、鎖伸長剤、可塑剤、充填剤、着色剤、耐候安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を適宜使用することができる。
【0102】
また、本発明のウレタン成形体の成形方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、成形機より吐出した混合発泡液をモールドにオープン注入するモールド成形方法、成形機の吐出口に直結したクローズドモールドに混合発泡液を直接射出するインジェクション成形方法等を採用できる。
【0103】
本発明に使用される成形型としては、成形体を形成する型として使用されるものであれば特に制限なく使用でき、その形状はいずれでも良い。例えば、通常使用される上型、下型からなるオープン型、平面状型、筒状型、凹型だけでなく、インジェクション成形で使用されるクローズドモールド等も含まれる。また、成形型の材質は、鉄、アルミ、エポキシ樹脂等の一般的に使用されるものであれば何れのものでも良い。
【0104】
本発明のウレタン成形体の密度は、機械的特性、耐久性などの性能を維持させる観点から、0.2〜1.1g/cmが好ましく、0.3〜0.8g/cmがより好ましく、0.4〜0.7g/cmが最も好ましい。
【0105】
本発明のウレタン成形体は、ポリウレタンエラストマーフォームとして、作業場、実験室、危険物倉庫、危険物取扱施設等における静電気爆発の防止、IC工場における微量ホコリやダストの飛散防止、静電気発生防止などの観点から、例えば、静電気帯電防止用の安全靴や作業靴、クリーンルーム用靴の靴底、安全手袋、安全作業服、安全帽等の種々の物品に好適に使用することができる。
【0106】
更に、本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を用いて成形して得られる工業部材は、例えばパッキン、ホース、シート、緩衝材、乗物部材、包装部材等、種々の分野に利用可能である。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。また、本文中の「部」、「%」は全て質量基準である。
【0108】
〔帯電防止性の評価と判定〕
(1)測定試料(ウレタン成形体)の作成
実施例及び比較例で得た2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を用い、下記の〔工程1〕〜〔工程4〕を含む一連の水発泡法による操作を行い、ウレタン成形体を作成した。
・〔工程1〕主剤の調整工程
窒素導入管、冷却コンデンサー、温度計、冷却機を備えた反応装置に、ポリイソシアネート成分及びポリオール成分を夫々仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら内温60〜90℃で反応させ、ウレタンプレポリマー(A)を合成し、前記ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤を得た。
・〔工程2〕主剤と硬化剤の混合工程
次いで、前記ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤、及びイソシアネート基反応性化合物(B)、水(C)、及び触媒(D)を含有する硬化剤と帯電防止剤であるアルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)とアルキル置換イミダゾリウム塩(E2)とを、2液混合用低圧発泡機の別個のタンクに入れて適温(例えば40〜50℃)に調整し、使用時に前記主剤と硬化剤の所定量を混合攪拌して発泡反応液を調整する。
・〔工程3〕注型工程
前記発泡反応液を予め加温しておいた金型内に注入する。
・〔工程4〕硬化工程。
金型内に注入された状態で発泡反応液を適切な温度範囲(例えば40〜50℃)にて加熱保持し、発泡、硬化させ、40〜50℃の金型内で3〜15分間放置させた後、ウレタン成形品を取り出す。靴底を得る場合は、切削加工などの適当な加工を施し、靴底の形状に整えればよい。
【0109】
(2)帯電防止性の評価方法
電池式絶縁抵抗計(横河電機株式会社製、2604 01型)を使用し、上記で作成した測定試料(75mm×75mm×10tmm)の下面に鉄板(300mm×200mm×1tmm)を、上面に鉄板(75mm×75mm×3tmm)をそれぞれ接触させて、成形後7日経過時点の電気抵抗値を測定し、帯電防止性を評価した。
なお、成形後の試料は温度23℃、相対湿度65%の室内環境下で保存し、次いで常温条件(23℃、相対湿度65%)、及び低温低湿度条件(0℃、相対湿度40%)の2条件にて電気抵抗値(単位:MΩ)を測定した。
【0110】
(3)判定基準
帯電防止性能の判定は、下記の基準AとBの2つを基にした総合判定基準に従った。
<基準A>
○:低温低湿度条件(0℃、40%RH)の電気抵抗値が20MΩ以下。
×:低温低湿度条件(0℃、40%RH)の電気抵抗値が20MΩを超える。
<基準B>
○:常温条件と低温低湿度条件の電気抵抗値の差が20MΩ以下。
×:常温条件と低温低湿度条件の電気抵抗値の差が20MΩを超える。
<総合判定基準>
合格 :基準AとBが共に「○」である場合。
不合格:基準A又はBの一方のみ、あるいは基準A及びBの両方共に「×」の場合。
【0111】
〔ウレタン成形体の密度の測定方法〕
得られたウレタン成形体の質量を体積で割ることにより、密度(g/cm)を算出した。
【0112】
〔ウレタン成形体の硬度の測定方法〕
得られたウレタン成形体の硬度を日本工業規格 JIS K 7312−1996(硬さ試験)に準拠して、スプリング硬さ試験(タイプC)にて評価した。
【0113】
〔主剤(X)の調整〕
反応容器に、イソシアネート成分として、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「4,4’MDI」と略称。商標:ミリオネート MT、日本ポリウレタン工業株式会社製。)543部と、カルボジイミド変性MDI(商標:コスモネート LL、三井化学ポリウレタン株式会社製。)28.6部を仕込み、攪拌を開始した。
次いで、ポリオール成分として、ポリオールa(エチレングリコール(EG)/1,4−ブチレングリコール(1,4BG)とアジピン酸(AA)から合成された水酸基価56.1mgKOH/gのポリエステルポリオール。EG/1,4BG=5/5モル比のもの。)443.5部を分割で仕込み混合し、窒素気流下60℃で8時間反応を行い、NCO当量250のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤(X)を得た。
【0114】
〔硬化剤(Y)の調整〕
イソシアネート基反応性化合物(B)としてポリオールb(EG/1,4BGとAAから合成された水酸基価66のポリエステルポリオール。EG/1,4BG=5/5モル比のもの。)91.5部と、ポリオールc(ジエチレングリコール(DEG)/トリメチロールプロパン(TMP)とAAから合成された水酸基価60のポリエステルポリオール。DEG/TMP=15/1モル比のもの。)4.8部と、EG8.8部、発泡剤として水(C)0.37部、触媒(D)としてトリエチレンジアミン(TEDA)0.33部を配合し、充分に撹拌、混合して、硬化剤(Y)を調整した。
【0115】
〔実施例1〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P1)の製造≫
混合容器に、前記硬化剤(Y)105.8部、帯電防止剤としてN−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)8.75部と1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩(E2)1.25部を配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y)と帯電防止剤を含むポリオールコンパウンド(PC1)を得た。
次いで、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PC1)を、(X)/(PC1)=100/96質量比で配合し攪拌、混合して、本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P1)を調整して、40℃に予め加熱した金型(290mm×120mm×10mm)中に200gを注入し、直ちに金型の蓋をした後、40℃で5分間放置し、その後に、できあがった発泡成形品を取り出した。
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P1)を用いてなる発泡成形品は、第1表に示した如く、優れた帯電防止性能及び特性を有していた。
【0116】
〔実施例2〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P2)の製造≫
混合容器に、前記硬化剤(Y)105.8部、帯電防止剤としてN−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)7.50部と1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩(E2)2.50部を配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y)と帯電防止剤を含むポリオールコンパウンド(PC2)を得た。
次いで、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PC2)を、(X)/(PC2)=100/96質量比で配合し攪拌、混合して、本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P2)を調整して、実施例1と同様の操作にて成形し、発泡成形品を取り出した。
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P2)を用いてなる発泡成形品は、第1表に示した如く、優れた帯電防止性能及び特性を有していた。
【0117】
〔実施例3〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P3)の製造≫
混合容器に、前記硬化剤(Y)105.8部、帯電防止剤としてN−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)6.25部と1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩(E2)3.75部を配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y)と帯電防止剤を含むポリオールコンパウンド(PC3)を得た。
次いで、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PC3)を、(X)/(PC3)=100/96質量比で配合し攪拌、混合して、本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P3)を調整して、実施例1と同様の操作にて成形し、発泡成形品を取り出した。
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P3)を用いてなる発泡成形品は、第1表に示した如く、優れた帯電防止性能及び特性を有していた。
【0118】
〔実施例4〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P4)の製造≫
混合容器に、前記硬化剤(Y)105.8部、帯電防止剤としてN−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)5.00部と1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩(E2)5.00部を配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y)と帯電防止剤を含むポリオールコンパウンド(PC4)を得た。
次いで、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PC4)を、(X)/(PC4)=100/96質量比で配合し攪拌、混合して、本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P4)を調整して、実施例1と同様の操作にて成形し、発泡成形品を取り出した。
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P4)を用いてなる発泡成形品は、第1表に示した如く、優れた帯電防止性能及び特性を有していた。
【0119】
〔実施例5〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P5)の製造≫
実施例5では、帯電防止剤であるアルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)として、N−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩に換えて、N−エチル−N,N−ジメチル−N−ミリスチルアンモニウムエチル硫酸塩を用いて行った。
混合容器に、前記硬化剤(Y)105.8部、帯電防止剤としてN−エチル−N,N−ジメチル−N−ミリスチルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)7.50部と1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩(E2)2.50部を配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y)と帯電防止剤を含むポリオールコンパウンド(PC5)を得た。
次いで、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PC5)を、(X)/(PC5)=100/96質量比で配合し攪拌、混合して、本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P5)を調整して、実施例1と同様の操作にて成形し、発泡成形品を取り出した。
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P5)を用いてなる発泡成形品は、第1表に示した如く、優れた帯電防止性能及び特性を有していた。
【0120】
〔実施例6〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P6)の製造≫
実施例6及び実施例7では、帯電防止剤であるアルキル置換イミダゾリウム塩(E2)として、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩に換えて、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウチオシアネートを用いて行った。
混合容器に、前記硬化剤(Y)105.8部、帯電防止剤としてN−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)7.50部と1−エチル−3−メチル−イミダゾリウチオシアネート(E2)2.50部を配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y)と帯電防止剤を含むポリオールコンパウンド(PC6)を得た。
次いで、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PC6)を、(X)/(PC6)=100/96質量比で配合し攪拌、混合して、本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P6)を調整して、実施例1と同様の操作にて成形し、発泡成形品を取り出した。
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P6)を用いてなる発泡成形品は、第1表に示した如く、優れた帯電防止性能及び特性を有していた。
【0121】
〔実施例7〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P7)の製造≫
混合容器に、前記硬化剤(Y)105.8部、帯電防止剤としてN−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)6.65部と1−エチル−3−メチル−イミダゾリウチオシアネート(E2)3.35部を配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y)と帯電防止剤を含むポリオールコンパウンド(PC7)を得た。
次いで、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PC7)を、(X)/(PC7)=100/96質量比で配合し攪拌、混合して、本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P7)を調整して、実施例1と同様の操作にて成形し、発泡成形品を取り出した。
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P7)を用いてなる発泡成形品は、第1表に示した如く、優れた帯電防止性能及び特性を有していた。
【0122】
〔比較例1〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P8)の製造≫
比較例1は、アルキル置換イミダゾリウム塩(E2)を用いずに行った。
混合容器に、前記硬化剤(Y)105.8部、及び帯電防止剤としてN−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)10部のみを配合して、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y)と帯電防止剤(E1)を含むポリオールコンパウンド(PC8)を得た。
次いで、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PC8)を、(X)/(PC8)=100/96質量比で配合し攪拌、混合して、2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P8)を調整して、40℃に予め加熱した金型(290mm×120mm×10mm)中に200gを注入し、直ちに金型の蓋をした後、40℃で5分間放置し、その後に、できあがった発泡成形品を取り出した。
前記2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P8)を用いてなる発泡成形品は、第2表に示した如く、帯電防止性能及び物性に劣っていた。
【0123】
〔比較例2〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P9)の製造≫
比較例2は、アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)を用いずに行った。
混合容器に、前記硬化剤(Y)105.8部、及び帯電防止剤として1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩(E2)10部のみを配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y)と帯電防止剤(E2)を含むポリオールコンパウンド(PC9)を得た。
次いで、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PC9)を、(X)/(PC9)=100/96質量比で配合し攪拌、混合して、2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P9)を調整して、実施例1と同様の操作にて成形し、発泡成形品を取り出した。
前記2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P9)を用いてなる発泡成形品は、第2表に示した如く、帯電防止性能及び物性に劣っていた。
【0124】
〔比較例3〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P10)の製造≫
混合容器に、前記硬化剤(Y)105.8部、帯電防止剤としてN−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)9.6部と1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩(E2)0.40部を配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y)と帯電防止剤を含むポリオールコンパウンド(PC10)を得た。
次いで、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PC10)を、(X)/(PC10)=100/96質量比で配合し攪拌、混合して、2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P10)を調整して、実施例1と同様の操作にて成形し、発泡成形品を取り出した。
前記2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P10)を用いてなる発泡成形品は、第2表に示した如く、帯電防止性能及び物性に劣っていた。
【0125】
〔比較例4〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P11)の製造≫
混合容器に、前記硬化剤(Y)105.8部、帯電防止剤としてN−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)2.50部と1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩(E2)7.50部を配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y)と帯電防止剤を含むポリオールコンパウンド(PC11)を得た。
次いで、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PC11)を、(X)/(PC11)=100/96質量比で配合し攪拌、混合して、2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P11)を調整して、実施例1と同様の操作にて成形し、発泡成形品を取り出した。
前記2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P11)を用いてなる発泡成形品は、第2表に示した如く、帯電防止性能及び物性に劣っていた。
【0126】
〔比較例5〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P12)の製造≫
混合容器に、前記硬化剤(Y)105.8部、帯電防止剤としてN−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)9.0部とビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム塩1.0部を配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y)と帯電防止剤を含むポリオールコンパウンド(PC12)を得た。
次いで、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PC12)を、(X)/(PC12)=100/96質量比で配合し攪拌、混合して、2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P12)を調整して、実施例1と同様の操作にて成形し、発泡成形品を取り出した。
前記2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P12)を用いてなる発泡成形品は、第2表に示した如く、帯電防止性能及び物性に劣っていた。
【0127】
尚、実施例及び比較例に記載の略号と名称は下記のとおりである。
4,4’MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
EG :エチレングリコール
1,4BG :1,4−ブチレングリコール
AA :アジピン酸
DEG :ジエチレングリコール
TMP :トリメチロールプロパン
TEDA :トリエチレンジアミン
アンモニウム塩(E1) :アルキル置換第4級アンモニウム塩
イミダゾリウム塩(E2):アルキル置換イミダゾリウム塩
AM1塩:N−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩
AM2塩:N−エチル−N,N−ジメチル−N−ミリスチルアンモニウムエチル硫酸塩
IM1塩:1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩
IM2塩:1−エチル−3−メチル−イミダゾリウチオシアネート
Li塩;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム塩
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

【0131】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物は、帯電防止剤としてアルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)とアルキル置換イミダゾリウム塩(E2)とを必須に含み、それら2つの塩の相乗効果により、前記塩(E1)又は塩(E2)を単独使用する場合よりも、低温から常温(20±15℃)までの広範囲の温度条件及び低湿度条件下でも、電気抵抗値の差が小さく、温度依存性が小さく帯電防止性能に優れており、且つ従来の帯電防止剤よりも添加量を低減できるので、ウレタン成形品を製造する際に、発泡挙動の異常、硬度低下、強度低下などの弊害がなく、且つ帯電防止性、耐屈曲性、他素材との接着性などの優れた性能を発現できる。また、本発明のポリウレタン成形体は、従来よりも帯電防止剤の添加量が低減できるので、発泡成形体を製造する際に、発泡挙動異常、硬度低下、強度低下などの悪影響がなく、且つ帯電防止性、耐屈曲性、他素材との接着性などの優れた性能を付与でき、特に前記ポリウレタン成形体の代表例である靴底は、生産面及び品質面で優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤と、イソシアネート基反応性化合物(B)、水(C)、触媒(D)を含有する硬化剤、及び帯電防止剤として、アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)とアルキル置換イミダゾリウム塩(E2)とを含む2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物であって、前記樹脂組成物中の前記塩(E1)と塩(E2)の含有比が19/1〜1/1質量比であることを特徴とする2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)が、N−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩、N−エチル−N,N−ジメチル−N−ミリスチルアンモニウムエチル硫酸塩、N−エチル−N,N−ジメチル−N−パルミチルアンモニウムエチル硫酸塩、及びN−エチル−N,N−ジメチル−N−ステアリルアンモニウムエチル硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルキル置換イミダゾリウム塩(E2)が、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムスルホン酸メチル塩、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムチオシアネート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムアセテート、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムスルホン酸メチル塩、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムチオシアネート、及び1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムアセテートからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)がN−エチル−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩であり、前記アルキル置換イミダゾリウム塩(E2)が1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチル硫酸塩及び/又は1−エチル−3−メチル−イミダゾリウチオシアネートである請求項1に記載の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物において、前記アルキル置換第4級アンモニウム塩(E1)と前記アルキル置換イミダゾリウム塩(E2)の含有率の和が、1〜10質量%である請求項1記載の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基当量が、150〜350である請求項1記載の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記イソシアネート基反応性化合物(B)100質量部に対して、水(C)の配合量が0.01〜1.50質量部であり、触媒(D)の配合量が0.15〜2.00質量部である請求項1記載の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか一項に記載の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を用いて成形して得られることを特徴とするウレタン成形体。
【請求項9】
請求項1〜6の何れか一項に記載の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を用いて成形され、密度が0.3〜1.0g/cmの範囲であることを特徴とする靴底。
【請求項10】
請求項1〜6の何れか一項に記載の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物を用いて成形して得られることを特徴とする工業部材。

【公開番号】特開2013−53265(P2013−53265A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193806(P2011−193806)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】