説明

2軸ガスタービン

【課題】定格運転時の燃焼温度をシンプルサイクルにおける定格燃焼温度とすると、圧縮機の回転数が定格回転数と比べて過回転となる2軸ガスタービンにおいて、ガスタービンの効率を損ねることなく、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせて信頼性を高めた2軸ガスタービンを提供する。
【解決手段】定格運転時の燃焼温度を、シンプルサイクルにおける定格燃焼温度とすると、圧縮機1の回転数が定格回転数と比べて過回転となる場合に、タービンを駆動する作動流体の一部を、ガスパスに流入させる前に分岐させ、冷却媒体として利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機駆動用高圧タービンと出力用低圧タービンが別軸に構成されており、シンプルサイクルに比べて燃焼器に流入する流体の流量が増加するガスタービンシステム、例えば高湿分空気利用システム,蒸気注入システム,窒素注入システム,低カロリー燃料焚きシステムなどに適用した2軸ガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機を駆動する高圧タービンと、発電機やポンプ等を駆動する低圧タービンが別軸構成となっている2軸ガスタービンが、例えば特許文献1に公開されている。
【0003】
2軸ガスタービンは、ポンプやスクリュー圧縮機などの被駆動機の回転数が低い場合でも、圧縮機と高圧タービンを高速回転させることが可能となるため、低圧タービンの低回転数域でのトルクを大きくすることができる。そのため、2軸ガスタービンはポンプやスクリュー圧縮機などの機械駆動用として用いられるが、低圧タービンで発電機を駆動する発電用として用いることも可能であり、減速機なしで使用する場合には、圧縮機を高速回転させることで高効率化が図れる利点がある。また、減速機を使用する場合でも、減速比を小さくできるため、コスト低減,効率向上に利点がある。
【0004】
一方、ガスタービン作動流体(たとえば空気)に水分を添加して加湿し、この加湿空気によってガスタービン排ガスの持つ熱エネルギーを回収することで、出力および効率の向上を図る高湿分利用ガスタービンシステムが特許文献2に公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−18271号公報
【特許文献2】WO00/25009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高湿分利用ガスタービンシステムは、圧縮機出口の高圧空気中に加湿することによりタービン出力を増加させるものであるが、2軸ガスタービンに適用すると圧縮機を駆動する高圧タービンの出力が大きくなり、そのままでは圧縮機を過大回転させることになる。圧縮機の過大回転は、圧縮機および高圧タービンの翼共振および軸振動と共振して回転部品の破損を招く可能性があり好ましくない。
【0007】
上述した圧縮機の過大回転の防止として、燃料流量を減少させて圧縮機の回転数を所定の値に制御する方法が考えられるが、タービン入口温度の低下によりガスタービンの効率が低下し、高湿分利用システムによる効率向上効果が削減されてしまう。
【0008】
また、上述した圧縮機の過大回転の防止として、圧縮機出口の高圧空気の一部を大気中に放風して圧縮機を駆動する高圧タービンの出力増加を抑制する方法があるが、圧縮動力を費やした高圧空気を大気へ放出する分ガスタービンシステムの効率低下につながる。この圧縮機で昇圧した作動流体は、効率向上の点からタービン上流側に導入してタービン膨張仕事に利用することが望ましい。
【0009】
さらに、圧縮機の過大回転を防止する策として、湿分添加時に高圧タービンと低圧タービンの負荷配分が最適となるように、予め設定しておく方法も考えられる。しかし、起動時など湿分を添加していないときには、逆に高圧タービンの出力が圧縮機駆動に必要な動力よりも小さいため、圧縮機が過小回転となる。圧縮機の過小回転は、過大回転の場合と同様、圧縮機および高圧タービンの翼振動および軸振動と共振して回転部品の破損につながることに加え、回転数一定制御のガスタービンでは燃料流量が増加することによる圧力比の増加と作動流体の流量の減少、圧縮効率の低下で圧縮機がサージングを引き起こす可能性があるため好ましくない。
【0010】
本発明の目的は、定格運転時の燃焼温度をシンプルサイクルにおける定格燃焼温度とすると、圧縮機の回転数が定格回転数と比べて過回転となる2軸ガスタービンにおいて、ガスタービンの効率を損ねることなく、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせて信頼性を高めた2軸ガスタービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の2軸ガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された空気と燃料とを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、該圧縮機と同軸に接続され、該燃焼器で生成された燃焼ガスにより駆動する高圧タービンと、該高圧タービンからの排ガスにより駆動する低圧タービンとを備え、該高圧タービンと該低圧タービンとをそれぞれ独立した軸構造とした、2軸ガスタービンの運転方法において、定格運転時の燃焼温度を、シンプルサイクルにおける定格燃焼温度とすると、圧縮機の回転数が定格回転数と比べて過回転となる場合に、タービンを駆動する作動流体の一部を、ガスパスに流入させる前に分岐させ、冷却媒体として利用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、定格運転時の燃焼温度をシンプルサイクルにおける定格燃焼温度とすると、圧縮機の回転数が定格回転数と比べて過回転となる2軸ガスタービンにおいて、ガスタービンの効率を損ねることなく、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせて信頼性を高めた2軸ガスタービンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1である高湿分利用ガスタービンのシステム構成図。
【図2】本発明の実施例2である高湿分利用ガスタービンのシステム構成図。
【図3】本発明の実施例3である高湿分利用ガスタービンのシステム構成図。
【図4】本発明の実施例4である高湿分利用ガスタービンのシステム構成図。
【図5】比較例である高湿分利用2軸ガスタービンのシステム構成図。
【図6】本発明の実施例5である2軸ガスタービンのシステム構成図。
【図7】本発明の実施例6である2軸ガスタービンのシステム構成図。
【図8】本発明の実施例7である2軸ガスタービンのシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は特に、定格運転時の燃焼温度をシンプルサイクルにおける定格燃焼温度とすると、圧縮機の回転数が定格回転数と比べて過回転となる2軸ガスタービンに関するものである。以下各実施例にて説明するが、例えば、加湿により作動流体である空気が加湿されて作動流体の流量が増える高湿分利用ガスタービンや、余剰蒸気や窒素を燃焼器や作動媒体に注入するガスタービン、通常用いられる天然ガスよりも発熱量が少ない低カロリーガス焚きガスタービンなどがこれに相当する。
【実施例1】
【0015】
図1を用いて、本発明の実施例1である2軸ガスタービンを適用した高湿分利用ガスタービンシステムについて説明する。図1は本発明の実施例である高湿分利用2軸ガスタービンの全体構成を示すシステム構成図である。
【0016】
発電用の高湿分利用ガスタービンは、圧縮機1,燃焼器2,高圧タービン3H,低圧タービン3L,加湿装置5,再生熱交換器6から構成され、低圧タービン3Lの出力により発電機7を回転させて発電する。圧縮機1と高圧タービン3Hは同一軸20Hで連結され、その回転数は等しい。低圧タービン3Lと発電機7も同一軸20Lで連結され、その回転数は等しい。あるいは、低圧タービン3Lと発電機7は図示されていない減速機を介して連結されていても良く、その場合は低圧タービンの回転数は発電機の回転数に対し、減速機の持つ減速比分だけ大きくなる。高圧タービン側と低圧タービン側の軸20H,20Lは連結されていない。そのため、圧縮機1の回転数と低圧タービン3Lの回転数は自由に設定でき、それぞれの回転数が異なっても運転可能である。
【0017】
このような2軸ガスタービンは、被駆動機の回転数が低い場合でも圧縮機1と高圧タービン3Hを高速回転させられるため、低圧タービン3Lの低回転数域でのトルクを大きくすることができる。そのため発電用だけでなく、ポンプやスクリュー圧縮機などの駆動にも広く用いることができる。
【0018】
次に、実施例1である高湿分利用ガスタービンの作動流体の流れについて説明する。大気空気100が圧縮機1で圧縮される。圧縮機1で生成された高圧空気101は圧縮機1のガスパス出口から全流量抽気される。圧縮機1のガスパス出口から抽気された高圧空気101は冷却器4で冷却される。冷却器4で冷却された高圧空気102は、冷却器4で加熱された水303と、給水加熱器22で加熱された水305とを用いて加湿装置5で加湿される。加湿装置5で加湿された湿分空気103の大部分は再生熱交換器6に供給される。湿分空気103の一部は、高圧タービン3Hの高温部冷却用の冷媒の流路110に設けられた冷媒混合器41,42に供給される。
【0019】
再生熱交換器6に供給された湿分空気103は、低圧タービン3Lからの排気ガス107との熱交換により過熱され高温湿分空気104となる。そして、再生熱交換器6において過熱された高温湿分空気104の大部分は、湿分空気として燃焼器2に供給される。
【0020】
一方、冷媒混合器41,42は、加湿装置5で加湿された湿分空気の一部と、再生熱交換器6で過熱された高温湿分空気の一部とを混合し、高圧タービン3Hの高温部の冷却に最適な冷媒を生成する。燃焼器2に供給された高温湿分空気104は、燃焼器2で燃料と混合燃焼する。そして、燃焼器2で生成された燃焼ガス105は高圧タービン3Hに供給され、高圧タービン3Hを回転駆動させる。高圧タービン3H内のガスパスでは、高圧タービン3Hに供給される燃焼ガスと、高圧タービンの高温部を冷却した、流路112,113を流れた冷却空気とが合流する。合流した冷却空気は燃焼ガスと伴に高圧タービンから排気ガス106として排出される。
【0021】
そして、高圧タービン3Hを出た高圧のタービン排気ガス106は、低圧タービン3Lへ供給され低圧タービン3Lで再膨張して低圧のタービン排気ガス107となる。低圧タービン排気ガス107は再生熱交換器6で熱回収された後、給水加熱器22,排ガス再過熱器23,水回収装置24を経て、排気ガス109として排気塔25から排気される。
【0022】
高湿分利用ガスタービンサイクルの効率向上効果を排気ガスの側から見ると、再生熱交換器6および給水加熱器22で熱エネルギーが回収された結果、効率が向上し、排気塔25から排気される熱エネルギーが減って排気ガスの温度は低くなる。
【0023】
高圧タービン3Hで得られた駆動力は高圧タービン3Hと圧縮機1の連結軸20Hを通じて圧縮機1に伝えられ、空気の加圧に用いられる。また、低圧タービン3Lで得られた駆動力は低圧タービン3Lと発電機7との連結軸20Lを通じて発電機7に伝えられ、発電機7で駆動力を電気的エネルギーに変換する。低圧タービン3Lによって駆動される負荷機器は、ポンプやスクリュー圧縮機など、発電機以外の機械であっても良い。
【0024】
次に、水の循環系統について説明する。水回収装置24は、排ガス再加熱器23から排出された排ガスを冷却水で冷却し、湿分を凝縮させて水分を回収する。水回収装置24から排出された水301は再び冷却器21へ供給されるとともに、水処理装置26にも供給される。水処理装置26より処理された水302は、圧縮機1から抽気された高圧空気101を冷却する冷却器4に供給される。冷却器4に供給された水は冷却器で加熱され、加熱された水303が加湿装置5に供給される。この加湿装置5では、冷却器から供給された高圧空気102に加湿するために水を使用し、使用後の水は再び冷却器に供給されるとともに、給水加熱器22にも供給される。給水加熱器22では、再生熱交換器6で熱回収した後の排気ガス108を熱源として加湿装置5から排出された給水循環系の水304を加熱して加熱水305を生成する。この加熱水305を加湿装置5に供給する。このように加湿装置には、冷却器4からだけではなく給水加熱器22からも加熱された水が加湿装置に供給されている。
〔比較例〕
【0025】
ここで、図5を用いて、比較例である高湿分利用2軸ガスタービンシステムについて説明する。図5はシンプルサイクルの2軸ガスタービンに高湿分利用ガスタービンシステムを適用した場合のシステム構成図である。
【0026】
図1と共通する再生熱交換器6よりも下流の排気ガス系統図は省略してある。まず、加湿装置5に供給される水分流量がゼロの場合について説明する。このケースは再生サイクルに相当する。圧縮機1と高圧タービン3Hの間での作動流体の流量バランスは、2軸ガスタービンのシンプルサイクルの場合と同じである。その動力バランスもシンプルサイクルと同等である。この場合、定格回転数かつ定格燃焼温度の条件で、圧縮機1と高圧タービン3Hの動力がバランスするように設計されている。そして、高圧タービン3Hの高温部の冷却空気401,402は、圧縮機1の中間段から抽気され、配管を介して高圧タービン3H側へ供給される。このときの圧縮機1の抽気段は、圧縮機側とタービン側の差圧分に対応可能な程度に高圧の空気を確保できるように設定されている。
【0027】
この状態から、加湿装置5に供給される水分流量が高湿分利用ガスタービンシステムにおける所定の流量まで増加した場合、湿分添加により流量が増加した作動流量の全量は燃焼器2へ供給され、燃焼して燃焼ガスとなり高圧タービン3Hを駆動する。この場合、シンプルサイクルと比較して高圧タービン3Hの出力が増大して圧縮機1が過回転になる。圧縮機1の過大回転は、圧縮機1および高圧タービン3Hの翼共振および軸振動と共振して回転部品の破損を招く可能性があり好ましくない。
【0028】
湿分添加による圧縮機1の過回転を抑制するために、燃焼器2に供給する燃料流量200を少なくする方法がある。しかし、燃料流量の低減は定格燃焼温度よりも低い燃焼温度で圧縮機1と高圧タービン3Hの動力をバランスさせることになり、ガスタービンの効率が低下してしまう。そうなると2軸ガスタービンを用いて高湿分利用ガスタービンシステムを構成しても、期待される効率向上効果を得ることができない。
【0029】
また、上述した圧縮機1の過大回転の防止策として、圧縮機出口の高圧空気の一部を大気中に放風して圧縮機1を駆動する高圧タービン3Hの出力増加を抑制する方法がある。しかし圧縮動力を費やした高圧空気を大気へ放出する分、ガスタービンシステムの効率低下につながる。更に、加湿装置5へ供給する高圧空気の流量、および再生熱交換器6へ供給される湿分空気流量も低減してしまう。その結果、再生熱交換器6で低圧タービンの排気ガス107との熱交換量も低下し、高湿分利用ガスタービンシステムで期待される効率向上効果が小さくなってしまう。このように効率向上の点から考えると、圧縮機1で昇圧した作動流体は低圧タービンの排熱を回収した後、高圧タービンの上流側に導入してタービン膨張仕事に利用することが望ましいといえる。
【0030】
さらに、上述した圧縮機の過大回転の防止として、湿分添加時に高圧タービン3Hと低圧タービン3Lの負荷配分が最適となるように、予め設定しておく方法も考えられる。しかし、起動時など湿分を作動流体中に添加していないときには、逆に高圧タービン3Hの出力が圧縮機駆動に必要な動力よりも小さくなってしまい、圧縮機1が過小回転となる。圧縮機1の過小回転は、過大回転の場合と同様、圧縮機1および高圧タービン3Hの翼振動および軸振動と共振して回転部品の損傷を招く虞がある。それに加え、回転数一定制御のガスタービンでは、燃料流量が増加することによる圧力比の増加と作動流体の流量の減少,圧縮効率の低下で、圧縮機1がサージングを引き起こす可能性があるため好ましくない。サージングとは、圧力比を上げていくと、ある圧力比において急に強い音響を伴う圧力と流れの激しい脈動と機械の振動を引き起こし、運転が不安定になる現象である。
【0031】
また、高湿分利用ガスタービンシステムを適用した2軸ガスタービンは、シンプルサイクル用に設計された2軸ガスタービンに対してタービン入口温度が相違する。そのため、両者の構成機器、特に高温部品であるタービン翼は高湿分利用ガスタービン専用とせざるを得ず、シンプルサイクル用のタービン翼と共通化できない。
【0032】
次に、実施例1であるガスタービンの、特徴的な部分について説明する。まず、加湿装置5から再生熱交換器6へ供給される湿分空気103の一部を、分岐流路110を介して高圧タービン3Hの高温部の冷却空気として利用する場合を考える。
【0033】
この場合、高圧タービン3Hの高温部の冷却空気として、加湿装置出口の湿分空気103の一部を利用する。圧縮機1の中間段から抽気した空気を利用するのではないため、圧縮機1で吸気した大気空気の全流量が昇圧され、圧縮機1の駆動力は増加する。この駆動力と高圧タービン3Hの出力をバランスさせるために、再生熱交換器6から燃焼器2へ供給される湿分空気104の一部を分岐流路によって分岐させ、分岐流路に設けられた流量調節機構32の制御を行う。高温湿分空気104を流れる作動流体のうち、この制御された分岐流量分が、冷却空気として利用される。高温湿分空気は分岐流路111を通じて、高圧タービン3Hの高温部の冷却媒体流路に設けられた冷媒混合器41,42に導入される。
【0034】
本実施例のガスタービンはこのように、定格運転時の燃焼温度をシンプルサイクルにおける定格燃焼温度とすると、圧縮機1の回転数が定格回転数と比べて過回転となる場合に、高圧タービン3Hを駆動する作動流体である高温湿分空気104の一部を、ガスパスに流入させる前に分岐させ、高圧タービン3Hの翼などの高温部冷却用の冷却媒体として利用するよう構成している。具体的には、圧縮機1で圧縮された圧縮空気を含む作動流体の質量流量を増加させる質量増加手段である加湿装置5を有し、加湿装置5で流量を増加された作動流体である高温湿分空気104を、燃焼器2の手前で流路111に分岐している。
【0035】
このような構成とすることで、圧縮機1の駆動力と高圧タービン3Hの出力をバランスさせ、かつ燃焼温度も定格温度に保持することが可能となる。そのため、ガスタービンの効率を高くすることができる。また、加湿装置5から高圧タービン3Hへ供給される流路110を流れる冷却空気、および再生熱交換器6から分岐して冷媒混合器41,42に導入される流路111を流れる高温湿分空気が高圧タービンの高温部を冷却する。冷却媒体は高圧タービン3Hのガスパス中で燃焼ガス105と混合されるため、高温部冷却後も保有し続ける圧力エネルギーは、最終的に低圧タービン3Lの膨張仕事で回収される。そのため、例えば圧縮機駆動力と高圧タービン3Hをバランスさせるために、圧縮機1の吐出空気の一部を大気中へ放風する場合に比べて、圧縮機1で大気の圧縮に費やした圧縮動力を無駄にすることなく有効利用できる。
【0036】
そして、本実施例のように構成することで、2軸ガスタービンに高湿分利用ガスタービンシステムを適用した場合でも、圧縮機1の過大回転や過小回転を抑制しつつ、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせて2軸ガスタービンを安定に運転することができる。そして、回転部品の翼振動および軸振動に対する信頼性を高め、部品寿命を長くすることもできる。
【0037】
また、タービン入口温度はシンプルサイクルで想定した温度に保持できるため、高湿分利用ガスタービンシステムを適用することによるガスタービンの効率向上効果を2軸ガスタービンでも享受可能となる。
【0038】
さらに、高圧タービン3Hの高温部の冷却に高湿分空気を利用しているため、翼表面のメタル温度の制限値に余裕ができて、高温部品であるタービン翼の信頼性を確保できる。場合によっては、高級材料を用いたタービン翼を用いる必要がなくなるため、コストダウンも期待できる。湿分空気は通常の空気に比べて熱伝達率が大きく、冷却性能が向上するからである。
【0039】
そして、加湿装置5からの湿分空気103を直接タービン翼冷却に適用しないで、再生熱交換器6から燃焼器2へ供給される高温湿分空気の一部と冷媒混合器41,42で混合している。すなわち、タービン被冷却部である高圧タービン3Hに流入する前に、第一の分岐流路である流路111と第二の分岐流路である流路110からの流体を混合させる冷媒混合器41,42とを有している。これにより、翼冷却過程における冷却媒体の凝縮を抑制できる。冷却媒体の飽和蒸気量が実際に冷却媒体に含まれる蒸気量を下回ると、飽和蒸気量が上回った分の冷却媒体に含まれる蒸気は気体では存在できず、凝縮して液体に相変化する。この凝縮した液滴が高圧タービンの翼冷却内部流路を流れると、高速で浮遊する液滴により局所的に内部流路は衝撃を受ける。また、凝縮した液滴が再度流路内部で蒸発すると、蒸発潜熱により局所的に急冷され熱応力が大きくなり翼の信頼性が低下する。そのため、高圧タービン3Hの各段落の冷却媒体経路に冷媒混合器を配備して、そこへ再生熱交換器6からの高温湿分空気104の一部を供給することで、各段落で最適な冷却空気条件に設定することが可能となる。冷却媒体の凝縮を抑制することで、ガスタービンの信頼性を確保することができる。
【0040】
また、高圧タービン3Hや低圧タービン3Lを、シンプルサイクルと他のサイクル(高湿分利用ガスタービンシステム等)で共通にできるため、高温部品であるタービン翼の開発・製作コスト,部品管理コストを低減できる。さらに、設計開発に労力,コスト,期間がかかるタービン翼を共通化して、高湿分利用ガスタービンシステムや蒸気注入ガスタービンシステムなど、出力,効率の異なる製品ラインナップをそろえることが可能である。そのため、タービン翼の寿命などの信頼性評価を一元的に行うことができ、より信頼性の高い製品群が構築できる。なお本実施例では、分岐した流体を高圧タービン3H高温部に供給する例を説明したが、冷却を必要とする部分であれば、これ以外を分岐流体の供給先としても、圧縮機と高圧タービンのバランスを取りガスタービンの信頼性向上効果を得ることができる。
【実施例2】
【0041】
次に、図2を用いて本発明の実施例2について説明する。図2は本発明の実施例2である高湿分利用2軸ガスタービンの全体構成を示すシステム構成図であり、図1と共通する再生熱交換器6よりも下流の排気ガス系統図は省略してある。
【0042】
図2において、図1と異なる点は、圧縮機1と高圧タービン3Hの連結軸20Hと同軸の圧縮機側に、発電機8などの負荷を設けたことである。ガスタービンでは、燃焼温度を上げることと、タービン高温部を冷却する冷却空気量を低減させることによる効率向上に対する寄与が特に大きい。前述した実施例1のガスタービンでは、高圧タービン3Hの高温部の冷却空気は加湿装置5から再生熱交換器6へ供給される湿分空気103の一部と、再生熱交換器6から燃焼器2へ供給される高温湿分空気104の一部を冷媒混合器41,42で混合させた冷媒を用いている。高圧タービン3Hの高温部を湿分を含んだ冷媒で冷却するため、通常の圧縮空気で冷却する場合に比べて冷却効率を向上でき、冷却空気量を低減することができる。これはガスタービンの効率を向上できる一方、高圧タービンの出力の上昇に繋がる。
【0043】
また、圧縮機駆動力と高圧タービン3Hの出力をバランスさせるために冷却空気量を増加させた場合、高圧タービン3Hの高温部材のメタル温度は、シンプルサイクル運転時の高温部材のメタル温度よりも低くなり、許容メタル温度に対して十分な余裕ができる。そこで、ガスタービンの高効率化のため、燃焼温度を増加させて高温部材のメタル温度をシンプルサイクル運転時と同程度まで増加させることが考えられる。この燃焼温度の増加も効率向上するが、高圧タービンの出力上昇に繋がる。このように、冷却空気量の低減や、燃焼温度の増加によって、高圧タービン3Hの出力は増加する。
【0044】
実施例2のガスタービンでは、この高圧タービン3Hの出力増加に対応するように高圧タービンの出力と圧縮機駆動力をバランスさせるため、圧縮機1側に発電機8などの負荷機器を設置する。これにより高圧タービンの出力の一部が発電機で消費されるため、圧縮機1の過大回転を抑制しつつ、高湿分利用ガスタービンの効率向上と信頼性を確保することができる。
【0045】
ただし、圧縮機側に発電機などの負荷機器を設置すると、機器構造の複雑化およびコスト増大を招く場合もある。そのため、発電機を設けるよりも、再生熱交換器6から燃焼器2へ供給する高温湿分空気の分岐流路111に設けた流量調節機構32を制御することで圧縮機1の駆動力と高圧タービン3Hの出力とをバランスさせることが望ましい。この流量調節機構32の制御は、燃焼器2に供給される燃料の流量に基づいて、制御装置30で行うようにしてもよい。
【0046】
なお、本実施例では、発電機などの負荷機器としているが、高圧タービンの出力を消費できる機器であれば、同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0047】
次に、図3を用いて、本発明の実施例3について説明する。図3は本発明の実施例3である高湿分利用2軸ガスタービンの全体構成を示すシステム構成図であり、図2と同様に再生熱交換器よりも下流の排気ガス系統図は省略してある。
【0048】
図3において、図2と異なる点は、高圧タービン3Hの高温部の冷却に加えて、低圧タービン3Lの高温部に対しても冷却空気を導入していることである。
【0049】
ガスタービンの高効率化のため燃焼温度を上げた場合、高圧タービンの排気ガス106の温度も上昇するため低圧タービン3Lの最上流側に位置する静翼のメタル温度やホイールスペース温度が上昇して冷却空気を供給する必要性が生じる。
【0050】
そこで、高圧タービンの高温部の冷却に加えて、低圧タービンの高温部に対しても加湿装置5から再生熱交換器6へ供給される湿分空気103の一部を冷却媒体として供給し、その冷却媒体供給流路110に冷媒混合器43を設けている。そして、再生熱交換器6から燃焼器2へ供給される高温湿分空気104の一部を、低圧タービン3Lの高温部の冷却用に設けられた冷媒混合器43へ導入できる分岐流路111を設けている。
【0051】
本実施例のガスタービンでは、再生熱交換器6から燃焼器2へ供給される高温湿分空気の一部を低圧タービンの高温部へ導入するので、燃焼温度を上げた場合の高圧タービン3Hの出力増加を抑制することが可能であり、圧縮機の駆動力と高圧タービン出力をバランスさせることができる。このバランスは、再生熱交換器6から燃焼器2へ供給する高温湿分空気の分岐流路111に設けた流量調節機構32を制御することで調整される。さらに、高圧タービン3Hの高温部の冷却に対して、低圧タービン3Lの高温部の冷却は、冷却空気の供給圧力とタービン作動圧力との圧力差が低圧タービン3Lの方が大きくなる。そのため、低圧タービンの高温部の冷却に加湿装置5からの湿分空気103をそのまま導入すると、低圧タービン翼の冷却流路内部で湿分空気が凝縮する可能性が大きくなる。そこで、再生熱交換器6から燃焼器2へ供給される高温湿分空気104の一部を低圧タービンの高温部の冷却用に設置された冷媒混合器43に供給することで相対湿度を下げて、最適条件の冷却空気を生成し、高温部品の信頼性を確保しつつ圧縮機1と高圧タービン3Hの出力のバランスを保持できる。また、図3に示すガスタービンでは図2のものと同様に、圧縮機1に発電機8を設置して高圧タービンの出力を消費できるように構成している。そのため、圧縮機1の駆動力と高圧タービン3Hの出力をバランスさせて2軸ガスタービンを安定に運転することができる。
【0052】
図3で示した本実施例のガスタービンでは、高圧タービン側に関しては、シンプルサイクルガスタービンと高湿分利用ガスタービンシステムで共通化が可能であるため、高温部品であるタービン翼の開発・製作コスト,部品管理コストを低減できる。一方、シンプルサイクルにおいて低圧タービンが無冷却であって、高湿分利用ガスタービンシステムで燃焼温度を上げて出力と効率を向上させて運転する場合、低圧タービンの高温部品は冷却可能な構造に変更する必要がある。
【実施例4】
【0053】
次に、図4を用いて実施例4について説明する。図4は本発明の実施例4である高湿分利用2軸ガスタービンの全体構成を示すシステム構成図である。図1と共通する、再生熱交換器6よりも下流の排気ガス系統図は省略してある。
【0054】
図4のガスタービンにおいて図1のものと異なる点は、高圧タービン3Hの高温部の静止側の冷却に加えて、回転側にも冷却空気を供給していることである。加湿装置5から再生熱交換器6へ供給される湿分空気103の一部を、高圧タービン3Hの冷却媒体として分岐し、さらに静止側に冷却媒体を供給する流路112,113と回転側に供給する流路115とに分配している。各冷却媒体供給流路には、高圧タービン3Hの静止体の高温部に冷媒を供給する冷媒混合器41,42と、高圧タービン3Hの回転体の高温部に冷媒を供給する冷媒混合器44を設置している。再生熱交換器6から燃焼器2へ供給される高温湿分空気104の一部を分岐して、各冷媒混合器へ分岐空気を供給できる分岐流路111も有している。
【0055】
再生熱交換器6から燃焼器2へ供給される高温湿分空気104の一部を分岐流路111により分岐し、分岐流路111に設けられた流量調節機構32を制御することで、高圧タービン3Hの回転側の冷却用に設けられた冷媒混合器44へ供給する流量を制御する。これにより、燃焼器2へ供給される高温湿分空気量を低減させて圧縮機と高圧タービン出力をバランス調節できる。そうすると、2軸ガスタービンでも高湿分利用ガスタービンシステムを安定して運転できる。加えて、再生熱交換器6から燃焼器2へ供給される高温湿分空気の一部を、分岐流路により高圧タービン3Hの回転側の冷却用に設けられた冷媒混合器44へ供給している。このようにすると、高圧タービン3Hの静止側回転体と異なる冷却空気条件に設定することが可能であり、高圧タービン3Hの高温部品の信頼性を確保できる。
【0056】
また、高圧タービン3Hの回転側の冷却空気に湿分空気を適用したことで、熱伝達率が大きくなって冷却効率が向上し、冷却媒体を低減できる。これによりガスタービンの効率向上が可能である。
【実施例5】
【0057】
以下、実施例5−7として、本発明を高湿分ガスタービン以外のガスタービンに適用した例について説明する。
【0058】
まずは図6を用いて本発明の実施例5について説明する。
【0059】
図1に示した先の実施例の高湿分ガスタービンシステムでは、高温部の冷却に使用する流体は高温湿分空気104の一部を分岐させた流路110を流れる空気であった。これに対し、蒸気発生源を近傍に持つガスタービンシステムにおいては、高温湿分空気104の代わりに蒸気を利用することも考えられる。
【0060】
そこで実施例5の2軸式ガスタービンにおいては、蒸気注入手段としてガスタービンとは別置のボイラ160を用いるように構成した。
【0061】
図6にボイラ160によって生成した蒸気を高圧タービン3Hの高温部の冷却に用いるガスタービンシステムの全体構成を表すシステム構成図を示す。同符号は他の実施例と同様の機器を示すものとする。
【0062】
図6に示した2軸式ガスタービンにおいて、圧縮機1で圧縮された圧縮空気204は燃焼器2に供給される。燃焼器2で発生した高温の燃焼ガスは高圧タービン3H及び低圧タービン3Lに順次供給されて前記高圧タービン3H及び低圧タービン3Lを駆動する。
【0063】
別置のボイラ160で生成された蒸気205は燃焼器2へ供給されるが、その一部は分岐流路111を介して、高圧タービン3Hの高温部冷却用の冷媒の流路に設けられた冷媒混合器41,42に供給される。この冷媒混合器41,42には、圧縮機1の吐出空気や抽気空気、ボイラ160とは別の蒸気源からの蒸気などを供給してもよい。冷媒混合器41,42は、ボイラ160からの蒸気を様々な流体と混合させることで、高圧タービン3H高温部の冷却に適した冷媒を供給することができる。
【0064】
本実施例でボイラ160から燃焼器2に供給される蒸気205は、図1に示した実施例1における、高温湿分空気104に一部対応するものである。蒸気205は、実施例1における加湿装置5で加湿された分の水分というとらえ方もできる。
【0065】
ところで本実施例で高圧タービン3Hの高温部に用いられる蒸気は、空気に比べて熱伝達係数が高いため、冷却効果が高くなる。このため、図1に示した先の実施例での流路110を流れる増湿空気の代わりにこの分岐蒸気120を使用することで、高圧タービン3Hを構成する材料として耐熱温度の低い低級材を使用することができ、2軸式ガスタービンの製造コストを低減することができる。
【0066】
本実施例のガスタービンは、燃焼器中に蒸気を注入するシステムを2軸式ガスタービンに適用した場合に、注入蒸気の一部を高圧タービン3Hの高温部に供給可能に構成している。このような構成によりガスタービンの効率向上を図ると共に、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転する信頼性を向上した2軸式ガスタービンが実現できる。
【0067】
また、図6においては、ガスタービンとは別に設置されたボイラ160で発生した蒸気を燃焼器およびガスパスに供給する例を示したが、この蒸気発生源は、ガスタービンの排ガスの熱量を利用した排熱回収ボイラ等でも構わない。蒸気を使用する各種プラント等において、蒸気使用量の変動がある際に、余剰の蒸気をガスタービンに注入することで熱効率を向上させることができるが、2軸式ガスタービンを適用する際には、本発明によって、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転することができる。
【実施例6】
【0068】
次に、本発明を、別のガスタービンシステムに適用した実施例6である2軸式ガスタービンについて図7を用いて説明する。図7は石炭ガス化ガスを発生させる際に生成した窒素を低圧タービン3Lの上流側に注入するガスタービンシステムの全体構成を表すシステムフロー図を示す。
【0069】
図7に示した本実施例の2軸式ガスタービンでは、図6に示した実施例5のガスタービンシステムと共通する構成は説明を省略している。
【0070】
図7に示した2軸式ガスタービンにおいて、圧縮機1とは別の別置圧縮機(図示省略)等で圧縮されたガス化用空気202は空気分離器221に供給され、空気分離器221で酸素222と窒素223に分離される。酸素222はガス化炉224へ導かれ、石炭225とともに、ガス化炉224内で石炭ガス化ガス226を発生する。発生した石炭ガス化ガス226はガスタービンの燃料200として使用される。
【0071】
一方、空気分離器221で分離された窒素223は、燃焼器2へ注入される。これにより、燃焼器内の局所的な火炎温度を低下させ、燃焼器内で生成する窒素酸化物(NOx)の排出量を低減することができる。
【0072】
しかし、本システムでは燃焼器内に窒素を注入することによって、高圧タービン3Hを駆動する作動流体の流量が増加するため、高圧タービン3Hの出力が増加し、このままでは高圧タービンおよび圧縮機1が過回転となってしまう。本実施例では、窒素223の一部が、流量調節弁である分岐流量調節機構19を備えた分岐流路111を通じて分岐窒素227として前記高圧タービン3H高温部に供給されるようになっている。
【0073】
即ち、本実施例で燃焼器2や低圧タービン3Hの高温部に供給される窒素223は、図6に示した実施例5における、ボイラ160から供給される蒸気250に対応するものである。また、窒素223は圧縮空気204に比べて温度が低いので冷却効果が高くなる。したがって、本実施例のガスタービンでも実施例5のガスタービン同様、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転することができる。
【0074】
ところで本実施例の分岐窒素127として用いられる、この分岐窒素127が流れる近傍の低圧タービン3Lの材料温度を低下させることができる。また、タービン材の材料として耐熱温度の低い低級材を使用することができ、2軸式ガスタービンの製造コストを低減することができる。
【実施例7】
【0075】
最後に、本発明を、さらに別のガスタービンシステムに適用した第7実施例である2軸式ガスタービンについて図8を用いて説明する。図8に、低カロリーガスをガスタービン燃焼器2の燃料200として使用する際に、圧縮空気の一部を低圧タービン3Lの上流側に注入するガスタービンシステムの全体構成を表すシステムフロー図を示す。
【0076】
図8に示した本実施例の発電用の2軸式ガスタービンでは、図1に示した実施例1の高湿分ガスタービンシステムと共通する構成は説明を省略する。
【0077】
図8に示した発電用の2軸式ガスタービンにおいては、燃料200として低カロリーガスを利用している。低カロリーガスは、天然ガスなどの通常のガス燃料と比べて、発熱量が1/2以下、さらに低いものでは1/10程度しかない。そのため、ガスタービンを所定の定格燃焼ガス温度で運転するためには、燃料を多量に供給しなければならない。
【0078】
しかし、燃焼器2内に燃料200を多量に供給することによって、高圧タービン3Hを駆動する作動流体の流量が増加する。そうすると高圧タービンの出力が増加し、このままでは高圧タービンおよび圧縮機1が過回転となってしまいバランスがくずれてしまう。本実施例では、燃料として低カロリーガスを用いた2軸ガスタービンにおいて、圧縮機1で圧縮された圧縮空気204の一部が、燃焼器2に供給される前に、流量調節弁である分岐流量調節機構32を備えた分岐流路111を通じて高圧タービン3Hに供給するよう構成されている。
【0079】
即ち、本実施例で低圧タービン3Lの上流側からガスパスに供給される圧縮空気204は、図1に示した実施例1において再生熱交換器から燃焼器2や高圧タービン3Hの高温部に供給される高温湿分空気104に対応するものである。
【0080】
かくして上述の各実施例のガスタービン同様、低カロリーガス焚きガスタービンシステムに2軸ガスタービンを使用する際にも、本発明によって、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転することができる。
【0081】
ところで、低カロリーガスは、例えば空気を用いて石炭をガス化するプラントや、製鉄所,製油所などの各種プラントから発生するものが考えられる。また、油田やガス田などから副生的に発生するものも考えられる。これらの低カロリーガスは、その発生源の運転状況や季節変化などによって、燃料発熱量が変動することが考えられる。そのような場合にも、発熱量が大きい場合は分岐弁である分岐流量調節機構32の開度によって、分岐空気229の流量を調整すれば、圧縮機1の駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転することができる。なお、媒体供給手段400から冷媒混合手段41,42に冷媒を供給して分岐圧縮空気229と混合し、適切な性状の冷媒を高温部に供給できるようにしてもよい。
【0082】
以上説明した実施例5−7では、実施例1に対応した作用効果を中心に説明した。しかし、実施例5−7それぞれのガスタービンに、実施例2−4に対応した構成を適宜組み合わせることも有用である。すなわち、実施例5−7のガスタービンにおいても、実施例2−4を用いて説明した作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
高効率ガスタービンとして発電用として利用できるほか、熱と電力を併給可能なコジェネレーションシステム、あるいはポンプ,圧縮機,スクリューなどの機械駆動用エンジンとしても適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 圧縮機
2 燃焼器
3H 高圧タービン
3L 低圧タービン
4 冷却器
5 加湿装置
6 再生熱交換器
7,8 発電機
20H,20L 軸
31 燃料調節機構
32 流量調節機構
41〜44 冷媒混合器
100 大気空気
103 湿分空気
104 高温湿分空気
110,111,112,113,114,115 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機で圧縮された空気と燃料とを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、
該圧縮機と同軸に接続され、該燃焼器で生成された燃焼ガスにより駆動する高圧タービンと、
該高圧タービンからの排ガスにより駆動する低圧タービンとを備え、
該高圧タービンと該低圧タービンとをそれぞれ独立した軸構造とした、2軸ガスタービンの運転方法において、
定格運転時の燃焼温度を、シンプルサイクルにおける定格燃焼温度とすると、圧縮機の回転数が定格回転数と比べて過回転となる場合に、
タービンを駆動する作動流体の一部を、ガスパスに流入させる前に分岐させ、冷却媒体として利用することを特徴とする2軸ガスタービンの運転方法。
【請求項2】
空気を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機で圧縮された空気を含む作動流体の流量を増加させる流量増加手段と、
該増加した作動流体と燃料とを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、
該圧縮機と同軸に接続され、該燃焼器で生成された燃焼ガスにより駆動する高圧タービンと、
該高圧タービンからの排ガスにより駆動する低圧タービンとを備え、
該高圧タービンと該低圧タービンとをそれぞれ独立した軸構造とした2軸ガスタービンにおいて、
該流量増加手段で流量を増加された作動流体の一部を、該燃焼器に供給される前に分岐してタービンの被冷却部に導く分岐流路を備えたことを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項3】
空気を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機で圧縮された空気を含む作動流体の流量を増加させる加湿装置と、
該加湿装置で流量が増加した作動流体と該低圧タービンを駆動した排ガスとを熱交換させる再生熱交換器を備え、
該増加した作動流体と燃料とを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、
該圧縮機と同軸に接続され、該燃焼器で生成された燃焼ガスにより駆動する高圧タービンと、
該高圧タービンからの排ガスにより駆動する低圧タービンとを備え、
該高圧タービンと該低圧タービンとをそれぞれ独立した軸構造とした2軸ガスタービンにおいて、
該加湿装置で流量を増加された作動流体の一部を、該燃焼器に供給される前に分岐してタービンの被冷却部に導く第一の分岐流路を備えたことを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項4】
請求項3に記載の2軸ガスタービンにおいて、
該加湿装置で質量が増加した作動流体を該再生熱交換に流入する前に分岐する第二の分岐流路を有し、
該タービン被冷却部に流入する前に、該第一の分岐流路と該第二の分岐流路からの流体を混合させる冷媒混合器とを有することを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項5】
請求項1−4に記載の2軸ガスタービンにおいて、
該第一の分岐流路を流れる流体の流量を調節する流量調節機構を有することを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項6】
請求項1−5に記載の2軸ガスタービンにおいて、
該タービン被冷却部とは、該高圧タービンの翼であることを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項7】
請求項1−6に記載の2軸ガスタービンにおいて、
該圧縮機と高圧タービンと同軸で該圧縮機側に、負荷を有することを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項8】
請求項5に記載の2軸ガスタービンにおいて、
該燃焼器に供給される燃料の流量に基づいて該流量調節機構を制御する制御装置を備えたことを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項9】
請求項4に記載の2軸ガスタービンにおいて、
高圧タービンの回転体の高温部に流体を供給する第一の冷媒混合器と、高圧タービンの静止体の高温部に流体を供給する第二の冷媒混合器とを有することを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項10】
空気を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機で圧縮された空気を含む作動流体の流量を増加させる流量増加手段と、
該増加した作動流体と燃料とを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、
該燃焼器に蒸気を供給する蒸気注入手段と
該圧縮機と同軸に接続され、該燃焼器で生成された燃焼ガスにより駆動する高圧タービンと、
該高圧タービンからの排ガスにより駆動する低圧タービンとを備え、
該高圧タービンと該低圧タービンとをそれぞれ独立した軸構造とした2軸ガスタービンにおいて、
該蒸気注入手段から該燃焼器に供給される蒸気の一部を、該燃焼器に供給される前に分岐してタービンの被冷却部に導く分岐流路を備えたことを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項11】
空気を圧縮する圧縮機と、
空気を酸素と窒素に分解する空気分離器と、
該空気分離器で分離された酸素と石炭とから石炭ガス化ガスを生成するガス化炉と、
該ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスと該圧縮機で圧縮された空気とを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、
該ガス化炉で生成された窒素を該燃焼器に注入する窒素注入経路と、
該圧縮機と同軸に接続され、該燃焼器で生成された燃焼ガスにより駆動する高圧タービンと、
該高圧タービンからの排ガスにより駆動する低圧タービンとを備え、
該高圧タービンと該低圧タービンとをそれぞれ独立した軸構造とした2軸ガスタービンにおいて、
該窒素注入経路を流れる窒素の一部を分岐してタービンの被冷却部に導く分岐流路を備えたことを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項12】
空気を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機で圧縮された空気と燃料とを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、
該圧縮機と同軸に接続され、該燃焼器で生成された燃焼ガスにより駆動する高圧タービンと、
該高圧タービンからの排ガスにより駆動する低圧タービンとを備え、
該高圧タービンと該低圧タービンとをそれぞれ独立した軸構造とした2軸ガスタービンにおいて、
該燃料は低カロリーガスであり、
該圧縮機で圧縮された空気の一部を、該燃焼器に供給される前に分岐してタービンの被冷却部に導く分岐流路を備えたことを特徴とする2軸ガスタービン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−209808(P2010−209808A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57278(P2009−57278)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)