説明

2重壁ブロー成形体

【課題】圧縮初期のクッション性が高く、圧縮荷重によるリブの倒れが防止でき、衝撃吸収性の高い2重壁ブロー成形体を得る。
【解決手段】壁1から壁2に向けて窪んだ凹溝状の第1リブ3と、壁2から壁1に向けて窪んだ凹溝状の第2リブ4が形成され、両リブ3,4は平面視で略直交する。第1リブ3と第2リブ4は、それぞれ底壁12,15が2重壁の略中央部に位置し、交叉部16において底壁12,15同士が互いに溶着している。第1リブ3と第2リブ4は噛み合っていることが望ましい。第1リブ3及び第2リブ4は抜き勾配を有し、2重壁の厚み方向に圧縮荷重が作用してこの2重壁ブロー成形体が圧壊変形するとき、第1リブ3の両側壁10,11、及び第2リブ4の両側壁13,14がそれぞれ凹溝の内側に張り出し、圧壊変形の過程で互いに接触し、相手側の曲げ変形を妨害し圧縮荷重に対する抵抗力を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2重壁の両壁から対向壁に向けて窪んだ補強用のリブが形成された2重壁ブロー成形体に関し、特にクッション性を改良した2重壁ブロー成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1には、2重壁の両壁から対向壁に向けて窪んだ複数個の凹状(筒状)リブが形成された2重壁ブロー成形体が記載されている。2重壁の一方の壁から他方の壁に向けて窪んだ凹状リブと、2重壁の他方の壁から一方の壁に向けて窪んだ凹状リブが対をなし、対をなす凹状リブは2重壁の中央部で互いの頂部が溶着し、又は頂部が近接配置されている。特許文献1の記載によれば、この2重壁ブロー成形体は、圧壊変形の途中で急に剛性が低下することが防止され、高い衝撃吸収性が継続するため、車両の衝撃吸収体として適する。
【0003】
特許文献2の図5には、2重壁の両壁から対向壁に向けて窪み、互いに平行な複数列の凹状(溝状)リブが形成された2重壁ブロー成形体が記載されている。各凹状リブは列の長さ方向に沿って断面が略台形の第1リブと、頂部を含む全部又は大部分が板状をなす第2リブからなる。2重壁の一方の壁から他方の壁に向けて窪んだ凹状リブと、2重壁の他方の壁から一方の壁に向けて窪んだ凹状リブが対をなし、対をなす凹状リブの第1リブの頂部同士が凹状リブの長さ方向に沿って2重壁の中央部で溶着している。特許文献2の記載によれば、この2重壁ブロー成形体は、曲げ荷重、せん断荷重及び圧縮荷重に対する抵抗力が強く座屈が起こりにくいことから、フロアボード、自動車の床材、パレット等として適する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−314647号公報
【特許文献2】特開2003−165152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載された2重壁ブロー成形体は、全ての凹状リブが対向壁から窪む凹状リブと対をなし、2重壁の略中央部で頂部同士が溶着し又は近接して配置されているため、圧縮荷重に対する抵抗力(圧縮剛性)が圧縮初期に高く、圧縮初期のクッション性(衝撃を和らげる機能)が小さい。また、特許文献1の2重壁ブロー成形体では凹状リブが筒状であるため、特許文献2の2重壁ブロー成形体では全ての凹状リブが同一方向に配列しているため、圧縮荷重により厚さ方向に圧壊(潰れ)が進むと、いずれも荷重の向きによっては凹状リブが倒れやすく、その場合、圧縮荷重に対する抵抗力が減少し衝撃吸収性(エネルギー吸収量)も低下する。
【0006】
本発明は、2重壁の両壁から対向壁に向けて窪んだ補強用のリブが形成された2重壁ブロー成形体についてのこのような問題点を解決するためになされたもので、圧縮初期のクッション性が高く、圧縮荷重によるリブの倒れが防止できる2重壁ブロー成形体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る2重壁ブロー成形体は、2重壁の一方の壁から他方の壁に向けて窪んだ凹溝状の第1リブが1列又は複数列形成され、前記他方の壁から前記一方の壁に向けて窪んだ第2リブが1列又は複数列形成され、前記第1,第2リブは平面視で略直交し、それぞれ底壁が2重壁の対向壁に達せず、交叉部において底壁同士が互いに溶着していることを特徴とする。前記第1リブと第2リブは噛み合っていることが望ましい。また、前記第1,第2リブは抜き勾配を有し、2重壁の厚み方向に圧縮荷重が作用して圧壊変形するとき、各リブの両側壁が凹溝の内側に張り出し、圧壊変形の過程で互いに接触することが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る2重壁ブロー成形体は、前記第1,第2リブが平面視で略直交し、底壁が対向壁に溶着せず、かつ両リブが交叉部のみで互いに溶着している。このため、圧縮初期の圧縮荷重に対する抵抗力が従来の2重壁ブロー成形体(特許文献1,2参照)に比べて小さく、圧縮初期のクッション性が高い。また、圧縮荷重によるリブの倒れが防止でき、それに伴い圧壊変形の過程で衝撃吸収性の低下も防止できる。特に、圧壊変形するとき各リブの両側壁が凹溝の内側に張り出し、圧壊変形の過程で互いに接触するようになっていると、圧壊変形に伴って抵抗力が増大し衝撃吸収性も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る2重壁ブロー成形体の斜視図である。
【図2】図1の2重壁ブロー成形体のA−A断面図である。
【図3】図1の2重壁ブロー成形体の第1,第2リブが噛み合っている場合のA−A断面図(a)、及びB−B断面図である。
【図4】図1の2重壁ブロー成形体の第1,第2リブが別の形態で噛み合っている場合のA−A断面図(a)、及びB−B断面図である。
【図5】第1リブの他の形態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る2重壁ブロー成形体に圧縮荷重を加えて圧壊変形したときの厚さ−圧縮応力のグラフ、及び対応する変形形態を示す模式図である。
【図7】本発明に係る2重壁ブロー成形体を応用したコーナーパッドであり、展開した平面図(a)、斜視図(b)、及び組立図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜7を参照して、本発明に係る2重壁ブロー成形体について説明する。
図1,2に示す2重壁ブロー成形体は、2重壁の壁1,2と、壁1から壁2に向けて窪んだ凹溝状の第1リブ3と、壁2から壁1に向けて窪んだ凹溝状の第2リブ4と、壁1,2の4周を囲む周壁5〜8からなる。9は金型のパーティングライン、20は加圧エア吹込穴である。
第1リブ3は断面が略台形状で抜き勾配を有し、傾斜した両側壁10,11と底壁12からなり、底壁12は2重壁の厚みのほぼ中央部に位置している。第2リブ4も同じく傾斜した両側壁13,14と底壁15からなり、底壁15は2重壁の厚みのほぼ中央部に位置している。第1リブ3と第2リブ4の凹溝の深さ(底壁12の壁1からの深さ、底壁15の壁2からの深さ)は,第1リブ3及び第2リブ4の長さ方向に沿ってほぼ一定である。第1リブ3と第2リブ4は平面視で直交し、交叉部16において底壁12,15が互いに溶着し一体化している。
【0011】
図3に本発明に係る別の2重壁ブロー成形体を示す。図3において、図1,2に示す2重壁ブロー成形体と実質的に同一部位には同じ番号を付与している。
図3に示す2重壁ブロー成形体(断面図のみ)は、図1,2に示す2重壁ブロー成形体と外観形状がほぼ一致し(従って、斜視図は図1を援用する)、第1リブ3と第2リブ4が凹溝状に窪み、底壁12,15が2重壁の厚みのほぼ中央部に位置している点、及び第1リブ3と第2リブ4が交叉部16において互いに溶着し一体化している点も、図1に示す2重壁ブロー成形体と同じである。
【0012】
しかし、第2リブ4の凹溝の深さ(底壁15の壁2からの深さ)が一定でなく、第2リブ4の長さ方向に沿って異なる点で、図1に示す2重壁ブロー成形体と異なる。具体的には、第2リブ4の凹溝の深さ(底壁15の壁2からの深さ)は、第1リブ3との交叉部16において浅く、交叉部16の両側で深くなっている。従って、前記交叉部16において第1リブ3と第2リブ4は噛み合った状態(第1リブ3が第2リブ4に食い込んだ状態)にあるということができる。この構造により第1リブ3及び第2リブは、圧縮荷重による倒れに対してより強くなる。
【0013】
図4に本発明に係る別の2重壁ブロー成形体を示す。図4において、図1,2に示す2重壁ブロー成形体と実質的に同一部位には同じ番号を付与している。
図4に示す2重壁ブロー成形体(断面図のみ)は、図1,2に示す2重壁ブロー成形体と外観形状がほぼ一致し(従って、斜視図は図1を援用する)、第1リブ3と第2リブ4が凹溝状に窪み、底壁12,15が2重壁の厚みのほぼ中央部に位置している点、及び第1リブ3と第2リブ4が交叉部16において互いに溶着し一体化している点も、図1に示す2重壁ブロー成形体と同じである。
【0014】
しかし、第1リブ3と第2リブ4の凹溝の深さ(底壁12の壁1からの深さ、底壁15の壁2からの深さ)が一定でなく、それぞれ第1リブ3、第2リブ4の長さ方向に沿って異なる点で、図1に示す2重壁ブロー成形体と異なる。具体的には、第1リブ3と第2リブ4の凹溝の深さ(底壁12の壁1からの深さ、底壁15の壁2からの深さ)は、交叉部16において浅く、交叉部16の両側で深くなっている。従って、前記交叉部16において、第1リブ3と第2リブ4は互いに噛み合った状態にあるということができる。この構造により第1リブ3及び第2リブは、圧縮荷重による倒れに対してより強くなる。
【0015】
図1〜4に示した第1リブ3は略台形状であったが、図5に示すように、第1リブ3は他の抜き勾配の形態をとることができる。図示しないが第2リブ4も同様である。図5において、図2に示す第1リブ3と実質的に同一部位には同じ番号を付与している。
図5(a)に示す第1リブ3は、両側壁10,11が凹溝の内側に張り出す湾曲形状を有する。図5(b)に示す第1リブ3は、両側壁10,11が凹溝の内側に凸となる折れ部17,18を有する。
【0016】
図6は、本発明に係る2重壁ブロー成形体に圧縮荷重を加えて圧壊変形したときの2重壁の厚さ(元の厚さを1としたときの変形後の比率)−圧縮応力のグラフと対応する変形形態を示す模式図である。なお、2重壁ブロー成形体は、ブロー成形後、加圧エア吹込口20(図1参照)を閉じて、中空内部を密閉しておくことが望ましい。その場合、圧縮変形が進むにつれて2重壁ブロー成形体の内圧が上昇し、それにより圧縮荷重が増大し衝撃吸収性も向上する。
【0017】
2重壁ブロー成形体の厚み方向に圧縮荷重が加わると、圧縮初期は比較的低い圧縮荷重で、第1,第2リブ3,4の側壁10,11,13,14、及び周壁5〜8が湾曲し、2重壁ブロー成形体は厚み方向に圧縮変形する。2重壁ブロー成形体の中空内部を密閉した場合も、圧縮初期は内圧の上昇が少ないので、密閉に伴う圧縮荷重の増加は少なく、圧縮初期のクッション性は阻害されない。圧縮初期の圧縮荷重は、第1リブ3と壁1のコーナーR及び第2リブ4と壁2のコーナーR(図2に矢印19で示す)の大きさで調整(コーナーRが大きいほど圧縮荷重が小さくなる)することができる。
【0018】
この圧縮変形の過程で、第1リブ3の側壁9と側壁11、及び第2リブ4の側壁13と側壁14は、それぞれ凹溝の内側に張り出すように曲げ変形し、さらに圧縮変形が進むと、第1リブ3,第2リブ4の長さ方向に沿って互いに接触する。接触した第1リブ3の側壁10と側壁11、及び第2リブ4の側壁13と側壁14は、互いに相手側の曲げ変形を妨害する形になり、その結果、圧縮荷重に対する抵抗力が低下せずむしろ増大する。なお、各リブの側壁同士の接触がない場合、座屈により抵抗力が急激に低下する可能性がある。
【0019】
図7は,本発明に係る2重壁ブロー成形体からなる製品保護用のコーナーパッドを示す。この種のコーナーパッドは、ダンボールに製品を収納するとき,ダンボールのコーナー部に配置されて製品を保護するためのもので、従来は発泡スチロールで形成されている。
図7のコーナーパッドは、3つの2重壁ブロー成形体21,22,23が一体成形されたもので、2重壁ブロー成形体22,23が平面視矩形の2重壁ブロー成形体21の隣接する辺にそれぞれ薄肉で屈曲自在のヒンジ部24,25を介して接続されている。コーナーパッドとして使用するときは、図7(c)に示すように、2重壁ブロー成形体22,23を2重壁ブロー成形体21に対し垂直に立ち上げる。
このコーナーパッドは軽量で、初期のクッション性が高く衝撃吸収力が高い。また、輸送時は図7(a)に示すように平らにして嵩を減らすことができる。
【符号の説明】
【0020】
1,2 2重壁の壁
3 第1リブ
4 第2リブ
9,11,13,14 リブの側壁
12,15 リブの底壁
16 第1,第2リブの交叉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2重壁の一方の壁から他方の壁に向けて窪んだ凹溝状の第1リブが1列又は複数列形成され、前記他方の壁から前記一方の壁に向けて窪んだ凹溝状の第2リブが1列又は複数列形成され、前記第1,第2リブは平面視で略直交し、それぞれ底壁が2重壁の対向壁に達せず、交叉部において底壁同士が互いに溶着していることを特徴とする2重壁ブロー成形体。
【請求項2】
前記第1リブと第2リブが噛み合っていることを特徴とする請求項1に記載された2重壁ブロー成形体。
【請求項3】
前記第1,第2リブは抜き勾配を有し、2重壁の厚み方向に圧縮荷重が作用して圧壊変形するとき、各リブの両側壁が凹溝の内側に張り出し、圧壊変形の過程で互いに接触することを特徴とする請求項1又は2に記載された2重壁ブロー成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−83310(P2013−83310A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223700(P2011−223700)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(390040958)みのる化成株式会社 (36)
【Fターム(参考)】