説明

2,4−ピリミジンジアミン化合物の合成

本発明は、種々の置換2,4−ピリミジンジアミン化合物を大規模量で調製するための経済的で効率的な方法を提供する。本発明は、2,4−ピリミジンジアミン化合物が塩として形成され、これは、有機不純物を除去するために溶媒洗浄し得るという利点を提供する。この単純な精製工程は効率的であり、精製のコストを削減する。さらに、溶媒は、回収および再利用され得る。本発明では、クロマトグラフィーなどの高価で非効率な精製手順が回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願請求は、表題「SYNTHESIS OF 2,4−PYRIMIDINEDIAMINE COMPOUNDS」、2004年9月1日出願の出願第60/606,380号についての米国特許法第119条(e)による利益を請求しており、その内容が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、2,4−ピリミジンジアミン化合物を作製する改善された合成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
2,4−ピリミジンジアミン化合物は、免疫細胞、例えば、マスト細胞、好塩基球、好中球および/または好酸球細胞などの強力な脱顆粒抑制剤であることがわかっている。したがって、2,4−ピリミジンジアミン化合物は、かかる細胞の脱顆粒を調節(特に、抑制)する方法を提供し得る。処置は、一般的に、脱顆粒する細胞を、細胞の脱顆粒を調節または抑制するのに有効な量の2,4−ピリミジンジアミン化合物もしくはそのプロドラッグ、またはその許容され得る塩、水和物、溶媒和物、N−オキシドおよび/または組成物と接触させることを伴う。例としては、アナフィラキシー様反応、花粉症、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、湿疹、じんま疹、粘膜の障害、組織の障害およびある種の胃腸障害が挙げられる。
【0004】
2,4−ピリミジンジアミンの調製は、一般的に、多工程の手順で行われている。例えば、代表的な多工程手順は、エナミノンとのグアニジンの縮合を伴う。適切なグアニジンが、適当なアニリンとシアンアミドとの反応による縮合反応前に調製されなければならない。同様に、エナミノンもまた、アセチル化合物とアセタールの反応により調製されなければならない。結果として、この合成は、アセチルおよびアセタール化合物も、多くの場合、同様に使用前に調製する必要があるという欠点をもつ。
【0005】
また、プロセス開発の専門家には、多くのプロセス、手順および/または反応が、パイロットプラントまたは製造施設で行われるように大規模で行うのは容易(amenable)でないことが認識されよう。規模拡大が問題となり得る状況の一部の例は、有害または毒性の試薬および/または溶媒の使用;高度に発熱性の反応;高圧または高真空プロセス、例えば、ある種の高圧反応または高真空蒸留に必要とされるもの;クロマトグラフィー分離および/または精製を伴い得る。また、規模拡大時に収率の低下を示すプロセスなども煩雑である。大規模操作に関するより最近の考慮事項は、化学的処理工程に由来するある種の排ガスに対して設定された制限ならびに廃棄物の処理である。これらの態様が関与するプロセスは、高レベルの製造コストをもたらす。
【0006】
現行の合成の1つ以上の欠点を克服する、2,4−ピリミジンジアミン化合物を調製するための改善された方法の必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、構造式(I):
【0008】
【化6】

による2,4−ピリミジンジアミン化合物ならびにその塩、水和物、溶媒和物、N−オキシドおよびプロドラッグの合成方法に関し、式中、
およびLは、各々、互いに独立して、直接結合およびリンカーからなる群より選択される;
は、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C3〜C8)シクロアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたシクロヘキシル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された3〜8員環シクロヘテロアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C5〜C15)アリール、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたフェニルおよび同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された5〜15員環ヘテロアリールからなる群より選択される;
は、水素、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C3〜C8)シクロアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたシクロヘキシル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された3〜8員環シクロヘテロアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C5〜C15)アリール、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたフェニルおよび同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された5〜15員環ヘテロアリールからなる群より選択される;
は、R、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C4)アルカニル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C2〜C4)アルケニルおよび同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C2〜C4)アルキニルからなる群より選択される;
各Rは、独立して、水素、電気陰性基、−OR、−SR、(C1〜C3)ハロアルキルオキシ、(C1〜C3)パーハロアルキルオキシ、−NR、ハロゲン、(C1〜C3)ハロアルキル、(C1〜C3)パーハロアルキル、−CF、−CHCF、−CFCF、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR;−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(NH)NR、−OC(O)R、−SC(O)R、−OC(O)OR、−SC(O)OR、−OC(O)NR、−SC(O)NR、−OC(NH)NR、−SC(NH)NR、−[NHC(O)]、−[NHC(O)]OR、−[NHC(O)]NRおよび−[NHC(NH)]NR、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C5〜C10)アリール、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたフェニル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C6〜C16)アリールアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された5〜10員環ヘテロアリールおよび同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された6〜16員環ヘテロアリールアルキルからなる群より選択される;
は、R、R、同じまたは異なるRまたはRの1つ以上で任意選択的に置換されたR、同じまたは異なるRまたはRの1つ以上で任意選択的に置換された−OR、−B(OR、−B(NR、−(CH−R、−(CHR−R、−O−(CH−R、−S−(CH−R、−O−CHR、−O−CR(R、−O−(CHR−R、−O−(CH−CH[(CH]R、−S−(CHR−R、−C(O)NH−(CH−R、−C(O)NH−(CHR−R、−O−(CH−C(O)NH−(CH−R、−S−(CH−C(O)NH−(CH−R、−O−(CHR−C(O)NH−(CHR−R、−S−(CHR−C(O)NH−(CHR−R、−NH−(CH−R、−NH−(CHR−R、−NH[(CH]、−N[(CH、−NH−C(O)−NH−(CH−R、−NH−C(O)−(CH−CHRおよび−NH−(CH−C(O)−NH−(CH−Rからなる群より選択される;
各Rは、独立して、水素、(C1〜C6)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、シクロヘキシル、(C4〜C11)シクロアルキルアルキル、(C5〜C10)アリール、フェニル、(C6〜C16)アリールアルキル、ベンジル、2〜6員環ヘテロアルキル、3〜8員環シクロヘテロアルキル、モルホリニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピペリジニル、4〜11員環シクロヘテロアルキルアルキル、5〜10員環ヘテロアリールおよび6〜16員環ヘテロアリールアルキルからなる群より選択される;
各Rは、独立して、=O、−OR、(C1〜C3)ハロアルキルオキシ、−OCF、=S、−SR、=NR、=NOR、−NR、ハロゲン、−CF、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(NH)NR、−C(NR)NR、−C(NOH)R、−C(NOH)NR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NR、−OC(NH)NR、−OC(NR)NR、−[NHC(O)]、−[NRC(O)]、−[NHC(O)]OR、−[NRC(O)]OR、−[NHC(O)]NR、−[NRC(O)]NR、−[NHC(NH)]NRおよび−[NRC(NR)]NRからなる群より選択される適当な基である;
各Rは、独立して、保護基またはRであるか、あるいはまた、各Rは、結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で1個以上の同じまたは異なるさらなるヘテロ原子を含み得、かつ任意選択で同じもしくは異なるRまたは適当なR基の1つ以上で任意選択的に置換されたものであり得る5〜8員環シクロヘテロアルキルまたはヘテロアリールを形成する;
各Rは、独立して、保護基またはRである;
各mは、独立して、1〜3の整数である;ならびに
各nは、独立して、0〜3の整数である。
【0009】
1つの実施形態では、本発明は、
構造式(Ia):
【0010】
【化7】

(式中、R、R、RおよびRは、構造式(I)について先に規定したとおりである)
による2,4−ピリミジンジアミン化合物(その塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含む)の合成方法に関する。
【0011】
該合成は、構造式(II)
【0012】
【化8】

(式中、YおよびY’は、各々、互いに独立して、OおよびSからなる群より選択される)
による化合物を、工程(a)においてオキシハロゲン化リンにより、N,N−ジアルキルアニリン中、高温で処理し、構造式(III)
【0013】
【化9】

(式中、各Xはハロゲンである)
による化合物を形成することを含む。
【0014】
工程(b)では、化合物(III)を溶媒中、高温で1当量の構造式(IV)
−L−NH(IV)
による化合物で処理し、それにより構造式(V)
【0015】
【化10】

による化合物を形成する。
【0016】
工程(c)では、化合物(V)を1当量の構造式(VI)
−L−NH(VI)
による化合物で、溶媒中、高温にて処理し、
化合物(I)を形成する(式中、R、R、R、R、LおよびLは上記規定のとおりである)。一部の特定の実施形態では、LおよびLは直接結合である。別の実施形態では、Rがフッ化物であり、Rが水素である。さらにまた別の実施形態では、LおよびLが直接結合であり、Rがフッ化物であり、Rが水素である。
【0017】
本発明の合成の反応生成物は塩酸塩である。塩酸塩は、交換法によって他の塩に変換させ得るか、または該塩は、塩基性溶液で処理することにより生成物から取り出し得る。
【0018】
本発明は、2,4−ピリミジンジアミン化合物が塩(slat)として形成され、これは、有機不純物を除去するために溶媒洗浄し得るという利点を提供する。この単純な精製工程は効率的であり、精製のコストを削減する。さらに、溶媒は、回収および再利用され得る。本発明では、クロマトグラフィーなどの高価で非効率な精製手順が回避される。
【0019】
典型的には、工程(a)のオキシハロゲン化リンはオキシ塩化リンであり、N,N−ジアルキルアニリンは、一般的に、N,N−ジメチルアニリンである。工程(a)の反応温度は、一般的に、約80℃〜約85℃の間の範囲で行われる。反応工程(b)および/または(c)の温度は、一般的に、約60℃〜約110℃の間の範囲で行われる。
【0020】
具体的な1つの実施形態において、本発明は、構造式:
【0021】
【化11】

によるによる2,4−ピリミジンジアミン化合物(その塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含む)の合成方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明で用いる場合、以下の用語は、以下の意味を有するものとする。
【0023】
「アルキル」は、単独または別の置換基の一部として、親アルカン、アルケンまたはアルキンの単一の炭素原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される、記載した数の炭素原子(すなわち、C1 C6は1〜6個の炭素原子を意味する)を有する飽和または不飽和の分枝鎖、直鎖または環式の一価炭化水素残基をいう。典型的なアルキル基としては、限定されないが、メチル;エチル類、例えば、エタニル、エテニル、エチニルなど;プロピル類、例えば、プロパン1イル、プロパン2イル、シクロプロパン1イル、プロプ1エン1イル、プロプ1エン2イル、プロプ2エン1イル、シクロプロプ1エン1イルなど;シクロプロプ2エン1イル、プロプ1イン1イル、プロプ2イン1イルなど;ブチル類、例えば、ブタン1イル、ブタン2イル、2メチルプロパン1イル、2メチルプロパン2イル、シクロブタン1イル、ブト1エン1イル、ブト1エン2イル、2メチルプロプ1エン1イル、ブト2エン1イル、ブト2エン2イル、ブタ1,3ジエン1イル、ブタ1,3ジエン2イル、シクロブト1エン1イル、シクロブト1エン3イル、シクロブタ1,3ジエン1イル、ブト1イン1イル、ブト1イン3イル、ブト3イン1イルなど;などが挙げられる。特定レベルの飽和が意図される場合、名称「アルカニル」、「アルケニル」および/または「アルキニル」を用い、これらを以下に定義する。好ましい実施形態では、アルキル基は(Cl C6)アルキルである。
【0024】
「アルカニル」は、単独または別の置換基の一部として、親アルカンの単一の炭素原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される飽和分枝鎖、直鎖または環式のアルキルをいう。典型的なアルカニル基としては、限定されないが、メタニル;エタニル;プロパニル類、例えば、プロパン1イル、プロパン2イル(イソプロピル)、シクロプロパン1イルなど;ブタニル類、例えば、ブタン1イル、ブタン2イル(sec−ブチル)、2メチルプロパン1イル(イソブチル)、2メチルプロパン2イル(tブチル)、シクロブタン1イルなど;などが挙げられる。好ましい実施形態では、アルカニル基は(Cl C6)アルカニルである。
【0025】
「アルケニル」は、単独または別の置換基の一部として、親アルケンの単一の炭素原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される、少なくとも1個の炭素炭素二重結合を有する不飽和の分枝鎖、直鎖または環状アルキルをいう。該基は、二重結合(1つまたは複数)に関してシス立体配置またはトランス立体配置のいずれかであり得る。典型的なアルケニル基としては、限定されないが、エテニル;プロペニル類、例えば、プロプ1エン1イル,プロプ1エン2イル、プロプ2エン1イル、プロプ2エン2イル、シクロプロプ1エン1イルなど;シクロプロプ2エン1イル;ブテニル類、例えば、ブト1エン1イル、ブト1エン2イル、2メチルプロプ1エン1イル、ブト2エン1イル、ブト2エン2イル、ブタ1,3ジエン1イル、ブタ1,3ジエン2イル、シクロブト1エン1イル、シクロブト1エン3イル、シクロブタ1,3ジエン1イルなど;などが挙げられる。好ましい実施形態では、アルケニル基は(C2 C6)アルケニルである。
【0026】
「アルキニル」は、単独または別の置換基の一部として、親アルキンの単一の炭素原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される、少なくとも1個の炭素炭素三重結合を有する不飽和の分枝鎖、直鎖または環状アルキルをいう。典型的なアルキニル基としては、限定されないが、エチニル;プロピニル類、例えば、プロプ1イン1イル、プロプ2イン1イルなど;ブチニル類、例えば、ブト1イン1イル、ブト1イン3イル、ブト3イン1イルなど;などが挙げられる。好ましい実施形態では、アルキニル基は(C2 C6)アルキニルである。
【0027】
「アルキルジイル」は、単独または別の置換基の一部として、親アルカン、アルケンもしくはアルキンの2つの異なる炭素原子の各々からの1つの水素原子の除去によって、または親アルカン、アルケンもしくはアルキンの単一の炭素原子からの2つの水素原子の除去によって誘導される、記載した数の炭素原子(すなわち、C1 C6は1〜6個の炭素原子を意味する)を有する飽和または不飽和の分枝鎖、直鎖または環状二価炭化水素基をいう。2つの一価残基中心または二価残基中心の各々の結合価が、同じまたは異なる原子と結合を形成し得る。典型的なアルキルジイル基としては、限定されないが、メタンジイル;エチルジイル類、例えば、エタン1,1ジイル、エタン1,2ジイル、エテン1,1ジイル、エテン1,2ジイルなど;プロピルジイル類、例えば、プロパン1,1ジイル、プロパン1,2ジイル、プロパン2,2ジイル、プロパン1,3ジイル、シクロプロパン1,1ジイル、シクロプロパン1,2ジイル、プロプ1エン1,1ジイル、プロプ1エン1,2ジイル、プロプ2エン1,2ジイル、プロプ1エン1,3ジイル、シクロプロプ1エン1,2ジイル、シクロプロプ2エン1,2ジイル、シクロプロプ2エン1,1ジイル、プロプ1イン1,3ジイルなど;ブチルジイル類、例えば、ブタン1,1ジイル、ブタン1,2ジイル、ブタン1,3ジイル、ブタン1,4ジイル、ブタン2,2ジイル、2メチルプロパン1,1ジイル、2メチルプロパン1,2ジイル、シクロブタン1,1ジイルなど;シクロブタン1,2ジイル、シクロブタン1,3ジイル、ブト1エン1,1ジイル、ブト1エン1,2ジイル、ブト1エン1,3ジイル、ブト1エン1,4ジイル、2メチルプロプ1エン1,1ジイル、2 メタニリデンプロパン1,1ジイル、ブタ1.3ジエン1,1ジイル、ブタ1,3ジエン1,2ジイル、ブタ1,3ジエン1,3ジイル、ブタ1,3ジエン1,4ジイル、シクロブト1エン1,2ジイル、シクロブト1エン1,3ジイル、シクロブト2エン1,2ジイル、シクロブタ1,3ジエン1,2ジイル、シクロブタ1,3ジエン1,3ジイル、ブト1イン1,3ジイル、ブト1イン1,4ジイル、ブタ1,3ジイン1,4ジイルなど;などが挙げられる。特定レベルの飽和が意図される場合、名称アルカニルジイル、アルケニルジイルおよび/またはアルキニルジイルを用いる。2つの結合価が同じ炭素原子上にあることが特に意図される場合、名称「アルキリデン」を用いる。好ましい実施形態では、アルキルジイル基は(Cl C6)アルキルジイルである。また、残基中心が末端炭素にある飽和非環式アルカニルジイル基、例えば、メタンジイル(メタノ);エタン1,2ジイル(エタノ);プロパン1,3ジイル(プロパノ);ブタン1,4ジイル(ブタノ);など(また、アルキレノ(以下に定義)ともいう)も好ましい。
【0028】
「アルキレノ」は、単独または別の置換基の一部として、直鎖の親アルカン、アルケンまたはアルキンの2つの末端炭素原子の各々からの1つの水素原子の除去によって誘導される2つの末端一価残基中心を有する直鎖の飽和または不飽和のアルキルジイル基をいう。ある特定のアルキレノ内の二重結合または三重結合(もし、存在する場合)の位置を角かっこで示す。典型的なアルキレノ基としては、限定されないが、メタノ;エチレノ類、例えば、エタノ、エテノ、エチノなど;プロピレノ類、例えば、プロパノ、プロプ[l]エノ、プロパ[l,2]ジエノ、プロプ[l]イノなど;ブチレノ類、例えば、ブタノ、ブト[l]エノ、ブト[2]エノ、ブタ[l,3]ジエノ、ブト[l]イノ、ブト[2]イノ、ブタ[l,3]ジイノなど;などが挙げられる。特定レベルの飽和が意図される場合、名称アルカノ、アルケノおよび/またはアルキノを用いる。好ましい実施形態では、アルキレノ基は(Cl C6)または(Cl C3)アルキレノである。また、直鎖飽和アルカノ基、例えば、メタノ、エタノ、プロパノ、ブタノなども好ましい。
【0029】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルカニル」、「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルキニル」、「ヘテロアルキルジイル」および「ヘテロアルキレノ」は、単独または別の置換基の一部として、それぞれ、炭素原子の1個以上が各々、独立して、同じまたは異なるヘテロ原子またはヘテロ原子基で置き換えられたアルキル、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アルキルジイルおよびアルキレノ基をいう。炭素原子と置き換えられ得る典型的なヘテロ原子および/またはヘテロ原子基としては、限定されないが、O、S、−S−O−、NR’、−PH−、S(O)、S(O)、S(O)NR’、S(O)NR’など(これらの組合せを含み、式中、各R’は、独立して、水素または(Cl C6)アルキルである)が挙げられる。
【0030】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、単独または別の置換基の一部として、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」基の環状の変形体をいう。ヘテロアルキル基では、ヘテロ原子が、分子の残部に結合する位置を占め得る。典型的なシクロアルキル基としては、限定されないが、シクロプロピル;シクロブチル類、例えば、シクロブタニルおよびシクロブテニルなど;シクロペンチル類、例えば、シクロペンタニルおよびシクロペンテニルなど;シクロヘキシル類、例えば、シクロヘキサニルおよびシクロヘキセニル;などが挙げられる。典型的なヘテロシクロアルキル基としては、限定されないが、テトラヒドロフラニル(例えば、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イルなど)、ピペリジニル(例えば、ピペリジン−1−イル、ピペリジン−2−イルなど)、モルホリニル(例えば、モルホリン−3−イル、モルホリン−4−イルなど)、ピペラジニル(例えば、ピペラジン−1−イル、ピペラジン−2−イルなど)などが挙げられる。
【0031】
「非環式ヘテロ原子性結合(bridge)」は、主鎖原子が独占的にヘテロ原子および/またはヘテロ原子基である二価結合をいう。典型的な非環式ヘテロ原子性結合としては、限定されないが、O、S、−S−O−、NR’、−PH−、S(O)、S(O)、S(O)NR’、S(O)NR’など(これらの組合せを含み、式中、各R’は、独立して、水素または(Cl C6)アルキルである)が挙げられる。
【0032】
「親芳香族環系」は、共役パイ電子(p electron)系を有する不飽和環式または多環式の環系をいう。「親芳香環系」の定義に具体的に含まれるものは、環の1個以上が芳香族であり、環の1個以上が飽和または不飽和である縮合環系、例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレン、テトラヒドロナフタレンなどである。典型的な親芳香環系としては、限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、インダセン、s インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ 2,4ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、テトラヒドロナフタレン、トリフェニレン、トリナフタレンなど、ならびにその種々のヒドロ(hydro)異性体が挙げられる。
【0033】
「アリール」は、単独または別の置換基の一部として、親芳香環系の単一の炭素原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される記載した数の炭素原子(すなわち、C5〜C15は5〜15個の炭素原子を意味する)を有する一価の芳香族炭化水素基をいう。典型的なアリール基としては、限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as インダセン、s インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ2,4ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなど、ならびにその種々のヒドロ異性体から誘導される基が挙げられる。好ましい実施形態では、アリール基は(C5 C15)アリールであり、(C5 C10)がさらにより好ましい。特に好ましいアリールは、シクロペンタジエニル、フェニルおよびナフチルである。
【0034】
「アリールアリール」は、単独または別の置換基の一部として、環系の単一の炭素原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される2つ以上の同一または非同一の親芳香環系が単一の結合によって互いに直接連結された(この場合、かかる直接環連結部の数は、関与する親芳香環系の数より1つ少ない)一価炭化水素基をいう。典型的なアリールアリール基としては、限定されないが、ビフェニル、トリフェニル、フェニルナフチル、ビナフチル、ビフェニルナフチルなどが挙げられる。アリールアリール基における炭素原子の数が特定される場合、その数は、各親芳香環を構成する炭素原子をいう。例えば、(C5 C15)アリールアリールは、各芳香環が5〜15個の炭素を含むアリールアリール基、例えば、ビフェニル、トリフェニル、ビナフチル、フェニルナフチルなどである。好ましくは、アリールアリール基の各親芳香環系は、独立して、(C5 C15)芳香族、より好ましくは(C5 C10)芳香族である。また、親芳香環系のすべてが同一であるアリールアリール基、例えば、ビフェニル、トリフェニル、ビナフチル、トリナフチルなども好ましい。
【0035】
「ビアリール」は、単独または別の置換基の一部として、単一の結合によって互いに直接連結された2つの同一の親芳香族系を有するアリールアリール基をいう。典型的なビアリール基としては、限定されないが、ビフェニル、ビナフチル、ビアントラシルなどが挙げられる。好ましくは、該芳香環系は、(C5 C15)芳香環、より好ましくは(C5 C10)芳香環である。特に好ましいビアリール基はビフェニルである。
【0036】
「アリールアルキル」は、単独または別の置換基の一部として、炭素原子に結合している水素原子の1つ、典型的には、末端またはsp3炭素原子がアリール基で置き換えられた非環式アルキル基をいう。典型的なアリールアルキル基としては、限定されないが、ベンジル、2フェニルエタン1イル、2フェニルエテン1イル、ナフチルメチル、2ナフチルエタン1イル、2ナフチルエテン1イル、ナフトベンジル、2ナフトフェニルエタン1イルなどが挙げられる。特定のアルキル部分が意図される場合、名称アリールアルカニル、アリールアルケニルおよび/またはアリールアルキニルを用いる。好ましい実施形態では、アリールアルキル基は(C6 C21)アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニルまたはアルキニル部分が(Cl C6)であり、アリール部分が(C5 C15)である。特に好ましい実施形態では、アリールアルキル基は(C6 C13)であり、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニルまたはアルキニル部分が(Cl C3)であり、アリール部分が(C5 C10)である。
【0037】
「親ヘテロ芳香族環系」は、1個以上の炭素原子が、各々、独立して、同じまたは異なるヘテロ原子またはヘテロ原子基で置き換えられた親芳香環系をいう。炭素原子と置き換えられる典型的なヘテロ原子またはヘテロ原子基としては、限定されないが、N、NH、P、O、S、S(O)、S(O)、Siなどが挙げられる。「親ヘテロ芳香環系」の定義に具体的に含まれるものは、環の1個以上が芳香族であり、環の1個以上が飽和または不飽和である縮合環系、例えば、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどである。また、一般的な(common)置換基を含むもの認識される環、例えば、ベンゾピロンおよび1−メチル−1,2,3,4−テトラゾールなども「親ヘテロ芳香環系」の定義に具体的に含まれる。「親ヘテロ芳香環系」の定義から具体的に除外されるものは、環状のポリアルキレングリコール(環状のポリエチレングリコールなど)と縮合したベンゼン環である。典型的な親ヘテロ芳香環系としては、限定されないが、アクリジン、ベンズイミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール、ベンゾフラン、ベンゾピロン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサジン、ベンズオキサゾール、ベンズオキサゾリン、カルバゾール、b カルボリン、クロマン、クロメン、シノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ピリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが挙げられる。
【0038】
「ヘテロアリール」は、単独または別の置換基の一部として、親ヘテロ芳香環系の単一の原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される記載した数の環内原子(例えば、「5 14員環」は、5〜14個の環内原子を意味する)を有する一価ヘテロ芳香族基をいう。典型的なヘテロアリール基としては、限定されないが、アクリジン、ベンズイミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール(benzodiaxole)、ベンゾフラン、ベンゾピロン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサジン、ベンズオキサゾール、ベンズオキサゾリン、カルバゾール、b カルボリン、クロマン、クロメン、シノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ピリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなど、ならびにその種々のヒドロ異性体から誘導される基が挙げられる。好ましい実施形態では、ヘテロアリール基は5 14員環ヘテロアリールであり、5 10員環ヘテロアリールが特に好ましい。
【0039】
「ヘテロアリールヘテロアリール」は、単独または別の置換基の一部として、2つ以上の同一または非同一の親ヘテロ芳香環系が単一の結合によって互いに直接連結された(この場合、かかる直接環連結部の数は、関与する親ヘテロ芳香環系の数より1つ少ない)環系の単一の原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される一価ヘテロ芳香族基をいう。典型的なヘテロアリールヘテロアリール基としては、限定されないが、ビピリジル、トリピリジル、ピリジルプリニル、ビプリニルなどが挙げられる。原子の数が特定される場合、その数は、各親ヘテロ芳香環系を構成する原子の数をいう。例えば、5 15員環ヘテロアリールヘテロアリールは、各親ヘテロ芳香環系が5〜15個の原子で構成されるヘテロアリールヘテロアリール基、例えば、ビピリジル、トリプリジル(tripuridyl)などである。好ましくは、各親ヘテロ芳香環系は、独立して、5 15員環ヘテロ芳香族、より好ましくは、5 10員環ヘテロ芳香族である。また、親ヘテロ芳香環系のすべてが同一であるヘテロアリールヘテロアリール基も好ましい。
【0040】
「ビヘテロアリール」は、単独または別の置換基の一部として、単一の結合によって互いに直接連結された2つの同一の親ヘテロ芳香環系を有するヘテロアリールヘテロアリール基をいう。典型的なビヘテロアリール基としては、限定されないが、ビピリジル、ビプリニル、ビキノリニルなどが挙げられる。好ましくは、ヘテロ芳香環系は5 15員環ヘテロ芳香環、より好ましくは5 10員環ヘテロ芳香環である。
【0041】
「ヘテロアリールアルキル」は、単独または別の置換基の一部として、炭素原子に結合している水素原子の1つ、典型的には、末端またはsp3炭素原子がヘテロアリール基で置き換えられた非環式アルキル基をいう。特定のアルキル部分が意図される場合、名称ヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニルおよび/またはヘテロアリールアルキニルを用いる。好ましい実施形態では、ヘテロアリールアルキル基は、6 21員環ヘテロアリールアルキルであり、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニルまたはアルキニル部分が(Cl C6)アルキルであり、ヘテロアリール部分が5 15員環ヘテロアリールである。特に好ましい実施形態では、ヘテロアリールアルキルは6 13員環ヘテロアリールアルキルであり、例えば、アルカニル、アルケニルまたはアルキニル部分が(Cl C3)アルキルであり、ヘテロアリール部分が5 10員環ヘテロアリールである。
【0042】
「ハロゲン」または「ハロ」は、単独または別の置換基の一部として、特に記載のない限り、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードをいう。
【0043】
「ハロアルキル」は、単独または別の置換基の一部として、水素原子の1つ以上がハロゲンで置き換えられたアルキル基をいう。したがって、用語「ハロアルキル」は、モノハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキルなどパーハロアルキルまでを含むことが意図される。例えば、表現「(Cl C2)ハロアルキル」には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1−フルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチル、1,1,1トリフルオロエチル、パーフルオロエチルなどが含まれる。
【0044】
上記規定の基は、充分認識される(well−recognized)付加的置換基を作出するために当該技術分野で一般に用いられる接頭辞および/または接尾辞を含み得る。一例として、「アルキルオキシ」または「アルコキシ」は、式−OR”の基をいい、「アルキルアミン」は、式−NHR”の基をいい、「ジアルキルアミン」は、式−NR”R”(式中、各R”は、独立してアルキルである)の基をいう。別の例として、「ハロアルコキシ」または「ハロアルキルオキシ」は、式−OR’’’(式中、R’’’はハロアルキルである)の基をいう。
【0045】
「保護基」は、分子の反応性の官能基に結合したとき、官能基の反応性をマスク、低減または抑制する原子の基をいう。典型的には、保護基は、所望により合成過程中に選択的に除去され得る。保護基の例は、GreeneおよびWuts,Protective Groups in Organic Chemistry,第3版,1999,John Wiley & Sons,NYならびにHarrisonら,Compendium of Synthetic Organic Methods,第1〜8巻,1971−1996,John Wiley & Sons,NYに見られ得る。代表的なアミノ保護基としては、限定されないが、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert−ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(「TES」)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)などが挙げられる。代表的なヒドロキシル保護基としては、限定されないが、ヒドロキシル基がアシル化されているか、アルキル化されているかのいずれかであるもの、例えば、ベンジイルおよびトリチルエーテル、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル(例えば、TMSまたはTIPPS基)およびアリルエーテルなどが挙げられる。
【0046】
「プロドラッグ」は、活性な2,4−ピリミジンジアミン薬物が放出されるために、使用条件下(例えば、身体内)での変換が必要とされる活性な2,4−ピリミジンジアミン化合物(薬物)の誘導体をいう。プロドラッグは、高頻度で、活性薬物に変換されるまで薬理学的に不活性であるが、必ずしもそうではない。プロドラッグは、典型的には、変換(例えば、官能基を放出し、したがって活性な2,4−ピリミジンジアミン薬物を放出するための特定の使用条件下での切断)に供されるプロモエティー(promoiety)を形成するためのプロ基(progroup)(以下に定義する)との反応性に一部必要とされると考えられる2,4−ピリミジンジアミン薬物内の官能基をマスクすることにより得られる。プロモエティーの切断は、例えば、加水分解反応などによって自発的にに進行し得るか、または別の薬剤(例えば、酵素)、光、酸もしくは塩基によって、あるいは物理的または環境的パラメータの変化もしくはこれに対する曝露(例えば、温度の変化)によって触媒されるか、もしくは誘導され得る。該薬剤は、使用条件(例えば、プロドラッグが投与される細胞内に存在する酵素または
胃の酸性条件など)に対して内因性のものであり得るか、または外的に供給され得る。
【0047】
プロドラッグをもたらす活性な2,4−ピリミジンジアミン化合物内の官能基をマスクするのに適した多種多様なプロ基、ならびに結果として生じるプロモエティーが、当該技術分野でよく知られている。例えば、ヒドロキシル官能基は、スルホン酸塩、エステルまたは炭酸塩プロモエティーとしてマスクされ得、これらは、ヒドロキシル基を提供するのにインビボで加水分解され得る。アミノ官能基は、アミド、カルバミン酸塩、イミン、ウレア、ホスフェニル、ホスホリルまたはスルフェニルプロモエティーとしてマスクされ得、これらは、アミノ基を提供するのにインビボで加水分解され得る。カルボキシル基は、エステル(シリルエステルおよびチオエステルを含む)、アミドまたはヒドラジドプロモエティーとしてマスクされ得、これらは、カルボキシル基を提供するのにインビボで加水分解され得る。好適なプロ基およびそのそれぞれのプロモエティーの他の具体例は当業者に自明である。
【0048】
「プロ基」は、プロモエティーを形成する活性な2,4−ピリミジンジアミン薬物内の官能基をマスクするために用いたとき、該薬物をプロドラッグに変換する保護基の一類型をいう。プロ基は、典型的には、特定の使用条件下で切断可能な結合を介して該薬物の官能基に結合されている。したがって、プロ基は、特定の使用条件下で切断されて官能基を放出するプロモエティーの部分である。具体例として、式−NH−C(O)CHであるアミドプロモエティーは、プロ基−C(O)CHを含む。
【0049】
「Fc受容体」は、免疫グロブリンのFc部分(特定の定常領域を含有する)に結合する細胞表面分子のファミリーの一員をいう。各Fc受容体は、特定の型の免疫グロブリンと結合する。例えば、Fcα受容体(「FcαR」)はIgAと結合し、FcεRはIgEと結合し、FcγRはIgGと結合する。
【0050】
FcαRファミリーとしては、IgA/IgMの上皮輸送に関与する高分子Ig受容体、脊髄特異的受容体RcαRI(CD89とも呼ばれる)、Fcα/μRおよび少なくとも2つの別の(alternative)IgA受容体が挙げられる(最近の概説は、Monteiro & van de Winkel,2003,Annu.Rev.Immunol,advanced e−publication)。FcαRIは、好中球、好酸球、単球/マクロファージ、樹状細胞およびクップファー細胞上で発現される。FcαRIは、1つのα鎖および細胞質ドメイン内に活性化モチーフ(ITAM)を有するFcRγホモ二量体を含み、およびSykキナーゼをリン酸化する。
【0051】
FcεRファミリーとしては、FcεRIおよびFcεRII(CD23としても知られる)で示される2つの型が挙げられる。FcεRIは、マスト細胞、好塩基球および好酸球細胞上に見られる高親和性受容体であり(IgEと約1010−1の親和性で結合する)、IgE単量体を細胞表面に固定する。FcεRIは、1つのα鎖、1つのβ鎖および上記のγ鎖ホモ二量体を保有する。FcεRIIは、単核食細胞、Bリンパ球、好酸球および血小板上で発現される低親和性受容体である。FcεRIIは、単一のポリペプチド鎖で構成され、γ鎖ホモ二量体を含まない。
【0052】
FcγRファミリーとしては、FcγRI(CD64としても知られる)、FcγRII(CD32としても知られる)およびFcγRIII(CD16としても知られる)で示される3つの型が挙げられる。FcγRIは、マスト細胞、好塩基球、単核、好中球、好酸球、樹状(deudritic)細胞および食細胞上に見られる高親和性受容体であり(IgGlに108M−1の親和性で結合する)、IgG単量体を細胞表面に固定する。FcγRIは、1つのα鎖およびFcαRIとFcεRIによって共有されるγ鎖二量体を含む。
【0053】
FcγRIIは、好中球、単球、好酸球、血小板およびBリンパ球上で発現される低親和性受容体である。FcγRIIは、1つのα鎖を含むが、上記のγ鎖ホモ二量体は含まない。
【0054】
FcγRIIIは、NK細胞、好酸球、マクロファージ、好中球およびマスト細胞上で発現される低親和性である(IgG1に5×10−1の親和性で結合する)。これは、1つのα鎖およびFcαRI、FcεRIおよびFcγRIによって共有されるγホモ二量体を含む。
【0055】
当業者には、これらの種々のFc受容体、これらを発現する細胞型のサブユニット構造および結合特性は完全にキャラクタライズされないことが認識されよう。上記の記載は、単に、これらの受容体に関する現在の技術水準を反映するものであり(例えば、Immunobiology:The Immune System in Health & Disease,第5版,Janewayら編,2001,ISBN 0−8153−3642−x,第371頁の図9.30を参照のこと)、本明細書に記載の化合物により調節され得る無数の受容体シグナル伝達カスケードに関して限定することを意図しない。
【0056】
「Fc受容体媒介性脱顆粒」または「Fc受容体誘導性脱顆粒」は、Fc受容体の架橋によって開始されるFc受容体シグナル伝達カスケードを経由して進行する脱顆粒をいう。
【0057】
「IgE誘導性脱顆粒」または「FcεRI媒介性脱顆粒」は、FceR1結合IgEの架橋によって開始されるIgE受容体シグナル伝達カスケードを経由して進行する脱顆粒をいう。架橋は、IgE特異的アレルゲンまたは他の多価結合因子(例えば、抗IgE抗体など)によって誘導され得る。図2を参照すると、マスト細胞および/または好塩基球細胞において、脱顆粒をもたらすFcεRIシグナル伝達カスケードは、上流および下流の2つの段階に分岐(break)され得る。上流段階は、カルシウムイオン動員(図2において「Ca2+」で示す;図3も参照のこと)の前に起こるプロセスのすべてを含む。下流段階は、カルシウムイオン動員およびその下流のすべてのプロセスを含む。FcεRI媒介性脱顆粒を阻害する化合物は、FcεRI媒介性シグナル伝達カスケードの間の任意の時点で作用し得る。上流FcεRI媒介性脱顆粒を選択的に阻害する化合物は、カルシウムイオン動員が誘導される時点の上流のFcεRIシグナル伝達カスケードの部分を阻害するように作用する。細胞系アッセイでは、上流FcεRI媒介性脱顆粒を選択的に阻害する化合物は、IgE特異的アレルゲンまたは結合因子(例えば、抗IgE抗体など)により活性化または刺激されるマスト細胞または好塩基球細胞などの細胞の脱顆粒を阻害するが、FcεRIシグナル伝達経路を回避する脱顆粒因子(例えば、カルシウムイオノフォアであるイオノマイシンおよびA23187など)により活性化または刺激される細胞の脱顆粒は、認めうるほどには阻害しない。
【0058】
「IgG誘導性脱顆粒」または「FcγRI媒介性脱顆粒」は、FcγRI結合IgGの架橋によって開始されるFcγRIシグナル伝達カスケードを経由して進行する脱顆粒をいう。架橋は、IgG特異的アレルゲンまたは別の多価結合因子(例えば、抗IgGもしくは抗体断片)によって誘導され得る。FcεRIシグナル伝達カスケードと同様、マスト細胞および好塩基球細胞では、FCγIシグナル伝達カスケードもまた、同じ2つの段階:上流および下流に分岐され得る脱顆粒をもたらす。FcεRI媒介性脱顆粒と同様、上流FcγRI媒介性脱顆粒を選択的に阻害する化合物は、カルシウムイオン動員が誘導される時点の上流に作用する。細胞系アッセイでは、上流FcγRI媒介性脱顆粒を選択的に阻害する化合物は、IgG特異的アレルゲンまたは結合因子(例えば、抗IgG抗体もしくは断片)により活性化または刺激されるマスト細胞または好塩基球細胞などの細胞の脱顆粒を阻害するが、FcγRIシグナル伝達経路を回避する脱顆粒因子(例えば、カルシウムイオノフォアであるイオノマイシンおよびA23187など)により活性化または刺激される細胞の脱顆粒は、認めうるほどには阻害しない。
【0059】
「イオノフォア誘導性脱顆粒」または「イオノフォア媒介性脱顆粒」は、カルシウムイオノフォア(例えば、イオノマイシンまたはA23187など)に曝露されると起こるマスト細胞または好塩基球細胞などの細胞の脱顆粒をいう。
【0060】
「Sykキナーゼ」は、B細胞および他の造血細胞において発現されるよく知られた72kDaの非受容体(細胞質性)脾臓プロテインチロシンキナーゼをいう。Sykキナーゼは、リン酸化された免疫(immuno)受容体チロシン系活性化モチーフ(「ITAM」)、「リンカー」ドメインおよび触媒性ドメインに結合する2つのコンセンサスSrc相同2(SH)ドメインをタンデムに含む(Sykキナーゼの構造および機能の概説については、Sadaら,2001,J.Biochem.(Tokyo)130:177−186)を参照;また、Turnerら,2000,Immunology Today 21:148−154も参照のこと)。Sykキナーゼは、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達(Turnerら,2000(前出))のエフェクターとして広く研究されている。Sykキナーゼはまた、免疫受容体から誘導される重要な経路(例えば、Ca2+動員およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)カスケード(例えば、図2を参照のこと)および脱顆粒など)を調節する多数のタンパク質のチロシンリン酸化に不可欠である。Sykキナーゼはまた、好中球におけるインテグリンシグナル伝達に不可欠な役割を果たす(例えば、Mocsaiら 2002,Immunity 16:547−558を参照のこと)。
【0061】
本発明で用いる場合、Sykキナーゼは、任意の動物種、例えば限定されないが、ホモサピエンス、サル、ウシ、ブタ、齧歯類などに由来するキナーゼであって、Sykファミリーに属すると認識されているものを含む。具体的には、天然に存在するものと人工物の両方のアイソフォーム、スプライシングバリアント、対立遺伝子バリアント、変異型が挙げられる。かかるSykキナーゼのアミノ酸配列はよく知られており、GENBANKから入手可能である。ヒトSykキナーゼの異なるアイソフォームをコードするmRNAの具体例は、GENBANK受託番号gi|21361552|ref|NM__003177.2|、
gi|496899|emb|Z29630.1|HSSYKPTK[496899]および
gi|15030258|gb|BC011399.1|BC011399[15030258](これらは、引用により本明細書に組み込まれる)に見られ得る。
【0062】
当業者には、他のファミリーに属するチロシンキナーゼがSykのものと三次元構造が類似する活性部位または結合ポケットを有し得ることが認識されよう。この構造上の類似性の結果、かかるキナーゼ(本明細書において「Syk模倣物」ともいう)は、Sykによってリン酸化される基質のリン酸化触媒することが期待される。したがって、かかるSyk模倣物、かかるSyk模倣物がある役割を果たすシグナル伝達カスケード、およびかかるSyk模倣物およびSyk模倣物依存性シグナル伝達カスケードによってもたらされる生物学的応答が、本明細書に記載の2,4−ピリミジンジアミン化合物によって調節され得ること、特に、阻害され得ることが認識されよう。
【0063】
「Syk依存性シグナル伝達カスケード」は、Sykキナーゼがある役割を果たすシグナル伝達カスケードをいう。かかるSyk依存性シグナル伝達カスケードの非限定的な例としては、FcαRI、FcεRI、FcγRI、FcγRIII、BCRおよびインテグリンシグナル伝達カスケードが挙げられる。
【0064】
本発明は、構造式(I):
【0065】
【化12】

による2,4−ピリミジンジアミン化合物ならびにその塩、水和物、溶媒和物、N−オキシドおよびプロドラッグの合成方法に関し、式中、
およびLは、各々、互いに独立して、直接結合およびリンカーからなる群より選択される;
は、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C3〜C8)シクロアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたシクロヘキシル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された3〜8員環シクロヘテロアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C5〜C15)アリール、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたフェニルおよび同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された5〜15員環ヘテロアリールからなる群より選択される;
は、水素、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C3〜C8)シクロアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたシクロヘキシル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された3〜8員環シクロヘテロアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C5〜C15)アリール、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたフェニルおよび同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された5〜15員環ヘテロアリールからなる群より選択される;
は、R、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C4)アルカニル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C2〜C4)アルケニルおよび同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C2〜C4)アルキニルからなる群より選択される;
各Rは、独立して、水素、電気陰性基、−OR、−SR、(C1〜C3)ハロアルキルオキシ、(C1〜C3)パーハロアルキルオキシ、−NR、ハロゲン、(C1〜C3)ハロアルキル、(C1〜C3)パーハロアルキル、−CF、−CHCF、−CFCF、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR;−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(NH)NR、−OC(O)R、−SC(O)R、−OC(O)OR、−SC(O)OR、−OC(O)NR、−SC(O)NR、−OC(NH)NR、−SC(NH)NR、−[NHC(O)]、−[NHC(O)]OR、−[NHC(O)]NRおよび−[NHC(NH)]NR、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C5〜C10)アリール、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたフェニル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C6〜C16)アリールアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された5〜10員環ヘテロアリールおよび同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された6〜16員環ヘテロアリールアルキルからなる群より選択される;
は、R、R、同じまたは異なるRまたはRの1つ以上で任意選択的に置換されたR、同じまたは異なるRまたはRの1つ以上で任意選択的に置換された−OR、−B(OR、−B(NR、−(CH−R、−(CHR−R、−O−(CH−R、−S−(CH−R、−O−CHR、−O−CR(R、−O−(CHR−R、−O−(CH−CH[(CH]R、−S−(CHR−R、−C(O)NH−(CH−R、−C(O)NH−(CHR−R、−O−(CH−C(O)NH−(CH−R、−S−(CH−C(O)NH−(CH−R、−O−(CHR−C(O)NH−(CHR−R、−S−(CHR−C(O)NH−(CHR−R、−NH−(CH−R、−NH−(CHR−R、−NH[(CH]、−N[(CH、−NH−C(O)−NH−(CH−R、−NH−C(O)−(CH−CHRおよび−NH−(CH−C(O)−NH−(CH−Rからなる群より選択される;
各Rは、独立して、水素、(C1〜C6)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、シクロヘキシル、(C4〜C11)シクロアルキルアルキル、(C5〜C10)アリール、フェニル、(C6〜C16)アリールアルキル、ベンジル、2〜6員環ヘテロアルキル、3〜8員環シクロヘテロアルキル、モルホリニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピペリジニル、4〜11員環シクロヘテロアルキルアルキル、5〜10員環ヘテロアリールおよび6〜16員環ヘテロアリールアルキルからなる群より選択される;
各Rは、独立して、=O、−OR、(C1〜C3)ハロアルキルオキシ、−OCF、=S、−SR、=NR、=NOR、−NR、ハロゲン、−CF、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(NH)NR、−C(NR)NR、−C(NOH)R、−C(NOH)NR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NR、−OC(NH)NR、−OC(NR)NR、−[NHC(O)]、−[NRC(O)]、−[NHC(O)]OR、−[NRC(O)]OR、−[NHC(O)]NR、−[NRC(O)]NR、−[NHC(NH)]NRおよび−[NRC(NR)]からなる群より選択される適当な基である;
各Rは、独立して、保護基またはRであるか、あるいはまた、各Rは、結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で1個以上の同じまたは異なるさらなるヘテロ原子を含み得、かつ任意選択で同じもしくは異なるRまたは適当なR基の1つ以上で任意選択的に置換されたものであり得る5〜8員環シクロヘテロアルキルまたはヘテロアリールを形成する;
各Rは、独立して、保護基またはRである;
各mは、独立して、1〜3の整数である;ならびに
各nは、独立して、0〜3の整数である。
【0066】
本発明の方法によって調製される構造式(I)を有する化合物において、LおよびLは、互いに独立して、直接結合またはリンカーを表す。したがって、当業者には認識されるように、置換基Rおよび/またはRは、そのそれぞれの窒素原子に直接結合されていてもよく、あるいはまた、そのそれぞれの窒素原子からリンカーによって分断されていてもよい。リンカーが何であるかは重要でなく、典型的で好適なリンカーとしては、限定されないが、(C1〜C6)アルキルジイル、(C1〜C6)アルカノおよび(C1〜C6)ヘテロアルキルジイルが挙げられ、その各々は、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されていてもよく、ここで、Rは構造式(I)について先に規定したとおりである。具体的な1つの実施形態では、LおよびLは、各々、互いに独立して、直接結合、同じまたは異なるR、適当なRまたはR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C3)アルキルジイルおよび同じまたは異なるR、適当なRまたはR基の1つ以上で任意選択的に置換された1〜3員環ヘテロアルキルジイルからなる群より選択され、式中、Rは、(C1〜C3)アルキル、−OR、−C(O)OR、同じまたは異なるハロゲンの1つ以上で任意選択的に置換された(C5〜C10)アリール、同じまたは異なるハロゲンの1つ以上で任意選択的に置換されたフェニル、同じまたは異なるハロゲンの1つ以上で任意選択的に置換された5〜10員環ヘテロアリールおよび同じまたは異なるハロゲンの1つ以上で任意選択的に置換された6員環ヘテロアリールからなる群より選択される;ならびにRおよびRは、構造式(I)について先に規定したとおりである。LおよびLを置換するために使用され得る具体的なR基としては、−OR、−C(O)OR、フェニル、ハロフェニルおよび4−ハロフェニルが挙げられ、ここで、Rは、構造式(I)について先に規定したとおりである。
【0067】
別の具体的な実施形態では、LおよびLは、各々、互いに独立して、メタノ、エタノおよびプロパノ(その各々は、任意選択でR基による一置換であってもよく、ここで、Rは上記で先に規定したとおりである)からなる群より選択される
上記のすべての実施形態において、R基に含まれ得る具体的なR基は、水素、(C1〜C6)アルキル、フェニルおよびベンジルからなる群より選択される。
【0068】
さらに別の具体的な実施形態では、LおよびLは各々、直接結合であり、その結果、本発明の方法によって調製される2,4−ピリミジンジアミン化合物は、
構造式(Ia):
【0069】
【化13】

による化合物(その塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含む)であり、式中、R、R、RおよびRは、構造式(I)について先に規定したとおりである。本発明の方法によって調製される2,4−ピリミジンジアミン化合物のさらなる具体的な実施形態を以下に記載する。
【0070】
構造式(I)および(Ia)の化合物の調製のための第1の合成において、R、R、R、R、LおよびLは、そのそれぞれの構造(I)および(Ia)について先に規定したとおりである。ただし、Rは、3,4,5−トリメトキシフェニル、3,4,5−トリ(C1〜C6)アルコキシフェニルまたは
【0071】
【化14】

(式中、R21、R22およびR23は、それぞれ、米国特許第6,235,746号(その開示は引用により本明細書に組み込まれる)にR、RおよびRについて規定されたとおりである。この第1の実施形態の具体的な実施形態において、R21は、水素、ハロ、同じまたは異なるR25基の1つ以上で任意選択的に置換された直鎖または分枝鎖の(C1〜C6)アルキル、ヒドロキシル、同じもしくは異なるフェニルもしくはR25基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルコキシ、チオール(−SH)、同じもしくは異なるフェニルもしくはR25基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルキルチオ、アミノ(−NH)、−NHR26または−NR2626である;R22およびR23は、各々、互いに独立して、同じまたは異なるR25基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)直鎖または分枝鎖のアルキルである;R25は、ハロ、ヒドロキシル、(C1〜C6)アルコキシ、チオール、(C1〜C6)アルキルチオ、(C1〜C6)アルキルアミノおよび(C1〜C6)ジアルキルアミノからなる群より選択される;ならびに各R26は、独立して、同じもしくは異なるフェニルまたはR25基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルキルまたは−C(O)R27(式中、R27は、同じまたは異なるフェニルまたはR25基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルキルである)である。
【0072】
この第1の合成の別の具体的な実施形態では、R21は、同じもしくは異なるハロ基の1つ以上で任意選択的に置換されたメトキシである、および/またはR22とR23は、各々、互いに独立して、同じまたは異なるハロ基の1つ以上で任意選択的に置換されたメチルもしくはエチルである。
【0073】
構造式(I)および(Ia)の化合物の第2の合成において、R、R、RおよびLは、そのそれぞれの構造(I)および(Ia)について先に記載したとおりである。Lは直接結合であり、Rは水素である。ただし、Rは、3,4,5−トリメトキシフェニル、3,4,5−トリ(C1〜C6)アルコキシフェニルまたは
【0074】
【化15】

(式中、R21、R22およびR23は、第1の調製に関して上記規定のとおりである)
である。
【0075】
第3の合成において、本発明の方法によって調製される2,4−ピリミジンジアミン化合物は、構造式(I)および(Ia)を含み、以下の化合物:
N2,N4ビス(4エトキシフェニル)5フルオロ2,4ピリミジンジアミン;
N2,N4ビス(2メトキシフェニル)5フルオロ−2,4−ピリミジンジアミン;
N2,N4ビス(4メトキシフェニル)5フルオロ2,4ピリミジンジアミン;
N2,N4ビス(2クロロフェニル)5フルオロ2,4ピリミジンジアミン;
N2,N4ビスフェニル5フルオロ2,4ピリミジンジアミン;
N2,N4ビス(3メチルフェニル)5フルオロ2,4ピリミジンジアミン;
N2,N4ビス(3クロロフェニル)5フルオロ2,4ピリミジンジアミン;
N2,N4ビス(2,5ジメチルフェニル)5フルオロ2,4ピリミジンジアミン;
N2,N4ビス(3,4ジメチルフェニル)5フルオロ2,4ピリミジンジアミン;
N2,N4ビス(4クロロフェニル)5フルオロ2,4ピリミジンジアミン;
N2,N4ビス(2,4ジメチルフェニル)5フルオロ2,4ピリミジンジアミン;
N2,N4ビス(3−ブロモフェニル)−5−フルオロ−2,4−ピリミジンジアミン;
N2,N4ビス(フェニル)5フルオロ2,4ピリミジンジアミン;
N2,N4ビス(モルホリノ)5フルオロ2,4ピリミジンジアミン;および
N2,N4−ビス[(3−クロロ−4−メトキシフェニル)]−5−フルオロ−2,4−ピリミジンジアミン
が挙げられる。
【0076】
本発明の第4の合成方法において、構造式(I)および(Ia)の化合物としては、下記構造式(Ib):
【0077】
【化16】

(式中、R24は(C1〜C6)アルキルである;ならびにR21、R22およびR23は、第1の実施形態に関して先に規定のとおりである)
による化合物が挙げられる。
【0078】
本発明の第5の合成方法において、構造式(I)および(Ia)の化合物としては、米国特許第6,235,746号(その開示は、引用により本明細書に組み込まれる)の実施例1〜141に記載の化合物が挙げられる。
【0079】
本発明の第6の合成方法において、構造式(I)および(Ia)の化合物としては、米国特許第6,235,746号の式(1)または式1(a)によって規定される化合物が挙げられる(例えば、第1欄、第48行〜第7欄、第49行および第8欄、第9〜36行の開示を参照のこと。その本開示は、引用により本明細書に組み込まれる)。
【0080】
本発明の第7の合成方法において、構造式(I)および(Ia)の化合物としては、Rがシアノまたは−C(O)NHRである(ここで、Rが置換フェニルであるとき、Rは水素または(C1〜C6)アルキルである);Rが置換もしくは非置換(C1〜C6)アルキル、(C〜C)シクロアルキル、3〜8員環シクロヘテロアルキルまたは5〜15員環ヘテロアリールである;ならびにRが水素である化合物が挙げられる。
【0081】
本発明の第8の合成方法において、構造式(I)および(Ia)の化合物としては、WO 02/04429(その開示は、引用により本明細書に組み込まれる)の式(I)および(X)によって規定される化合物、またはWO 02/04429に開示された任意の化合物が挙げられる。
【0082】
本発明の第9の合成方法において、該化合物は構造式(I)および(Ia)を含み、Rがシアノまたは−C(O)NHRである(式中、Rは水素または(C1〜C6)アルキルである);およびRが水素であるとき、Rは置換フェニル基以外である。
【0083】
本発明の第10の合成方法において、構造式(I)および(Ia)の化合物としては、RおよびRが各々、独立して、その環内窒素原子によって分子の残部に結合している置換または非置換ピロールまたはインドール環である化合物が挙げられる。
【0084】
本発明の第11の合成方法において、構造式(I)および(Ia)の化合物としては、米国特許第4,983,608号(その開示は、引用により本明細書に組み込まれる)の式(I)および(IV)によって規定される化合物、または米国特許第4,983,608号に開示された任意の化合物が挙げられる。
【0085】
当業者には、式(I)および(Ia)の化合物において、RおよびR同じであっても異なっていてもよく、広く異なり得ることが認識されよう。Rおよび/またはRが任意選択的に置換された環、例えば、任意選択的に置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリールおよびヘテロアリールなどである場合、該環は、分子の残部に任意の利用可能な炭素またはヘテロ原子を介して結合したものであり得る。任意選択の置換基は、任意の利用可能な炭素原子および/またはヘテロ原子に結合され得る。
【0086】
本発明の第12の合成方法において、構造式(I)および(Ia)を有する化合物であって、Rおよび/またはRは、任意選択的に置換されたフェニルまたは任意選択的に置換された(C5〜C15)アリールである、ただし、(1)Rが水素であるとき、Rは3,4,5−トリメトキシフェニルもしくは3,4,5−トリ(C1〜C6)アルコキシフェニルである;(2)Rが3,4,5三置換フェニルであるとき、3−および4−位における置換基は同時にメトキシもしくは(C1〜C6)アルコキシである;または(3)Rが水素であり、Rが(C1〜C6)アルキル、(C〜C)シクロアルキル、3〜8員環シクロヘテロアルキルもしくは5〜15員環ヘテロアリールであるとき、Rはシアノであるものとする化合物が提供される。あるいはまた、Rは、第1または第2の実施形態に関して記載した但し書き条件下にあるものとする。任意選択的に置換されたアリールまたはフェニル基は、任意の利用可能な炭素原子を介して分子の残部に結合され得る。任意選択的に置換されたフェニルの具体例としては、任意選択で同じまたは異なるR基による一置換、二置換または三置換であり、ここで、Rは、構造式(I)について先に規定したとおりであり、上記の但し書き条件下にあるものとするフェニルが挙げられる。フェニルが一置換であるとき、R置換基は、オルト、メタまたはパラ位のいずれかに位置し得る。オルト、メタまたはパラ位に位置する場合、Rは、好ましくは、(C1〜C10)アルキル、(C1〜C10)分枝鎖アルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された−OR、−O−C(O)OR、−O−(CH−C(O)OR、−C(O)OR、−O−(CH−NR、−O−C(O)NR、−O−(CH−C(O)NR、−O−C(NH)NR、−O−(CH−C(NH)NRおよび−NH−(CH−NR(式中、m、RおよびRは、構造式(I)について先に規定したとおりである)からなる群より選択される。これらの化合物の1つの実施形態では、−NRは、任意選択で1個以上の同じまたは異なるさらなるヘテロ原子を含む5〜6員環ヘテロアリールである。かかる5〜6員環ヘテロアリールの具体例としては、限定されないが、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、テトラゾリルおよびイソキサゾリルが挙げられる。
【0087】
これらの化合物の別の合成調製方法では、−NRは、任意選択で1個以上の同じまたは異なるヘテロ原子を含む5〜6員環の飽和シクロヘテロアルキル環である。かかるシクロヘテロアルキルの具体例としては、限定されないが、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルおよびモルホリニルが挙げられる。
【0088】
これらの化合物のさらに別の合成調製では、各Rは、独立して、(C1〜C6)アルキルである、および/または各−NRは、−NHR(式中、Rは(C1〜C6)アルキルである)である。具体的な1つの実施形態では、Rは−O−CH−C(O)NHCHである。別の具体的な実施形態では、Rは−OHである。
【0089】
フェニルが二置換または三置換であるとき、置換基Rは、任意の組合せの位置に位置し得る。例えば、置換基Rは、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、2,5,6−または3,4,5−位に位置し得る。非置換フェニルを含む化合物の1つの実施形態では、置換基は3,4以外に位置する。別の実施形態では、これらは3,4に位置する。三置換フェニルを含む化合物の1つの実施形態では、置換基は3,4,5以外に位置するか、あるいはまた、置換基の2つは3,4に位置しない。別の実施形態では、置換基は3,4,5に位置する。
【0090】
かかる二置換および三置換フェニルにおける置換基Rの具体例としては、オルト、メタおよびパラ置換フェニルに関する上記の種々の置換基Rが挙げられる。
【0091】
別の具体的な実施形態では、本発明の方法によって調製され得る化合物は、かかる二置換および三置換フェニルを置換するのに有用な置換基Rを含み、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、メトキシ、ハロ、クロロ、(C1〜C6)パーハロアルキル、−CF、(C1〜C6)パーハロアルコキシおよび−OCFを含む。好ましい実施形態では、かかる置換基Rは、3,4または3,5に位置する。好ましい二置換フェニル環の具体例としては、3−クロロ−4−メトキシ−フェニル、3−メトキシ−4−クロロフェニル、3−クロロ−4−トリフルオロメトキシ−フェニル、3−トリフルオロメトキシ−4−クロロ−フェニル、3,4−ジクロロ−フェニル、3,4−ジメトキシフェニルおよび3,5−ジメトキシフェニルが挙げられる。好適な例としては、(1)Rが上記のフェニルの1つであり、RとRが各々、水素であるとき、Rは3,4,5−トリ(C1〜C6)アルコキシフェニルもしくは3,4,5−トリメトキシフェニルであり得る;(2)Rが3,4−ジメトキシフェニルであり、RとRが各々、水素であるとき、Rは、3−(C1〜C6)アルコキシフェニル、3−メトキシフェニル、3,4−ジ−(C1〜C6)アルコキシフェニルもしくは3,4−ジメトキシフェニルであり得る;(3)Rが3−クロロ−4−メトキシフェニルであり、Rがハロもしくはフルオロであり、任意選択でRが水素であるとき、Rは、3−クロロ−4−(C1〜C6)アルコキシフェニルもしくは3−クロロ−4−メトキシフェニルであり得る;(4)Rが3,4−ジクロロフェニルであり、Rが水素、(C1〜C6)アルキル、メチル、ハロもしくはクロロであり、任意選択でRが水素であるとき、Rは、パラ位が、同じまたは異なるRの1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルコキシ基、−OHまたは−NR基(式中、RおよびRは、構造式(I)について先に記載したとおりである)で一置換されたフェニルであり得る;および/または(5)Rおよび/またはRが、3,4,5−トリ(C1〜C6)アルコキシフェニルもしくは3,4,5−トリメトキシフェニル(特に、RとRが各々、水素であるとき)であり得る場合が挙げられる。
【0092】
三置換フェニルを含む化合物を調製するのに有用な別の合成方法では、三置換フェニルは、式:
【0093】
【化17】

(式中、R31はメチルまたは(C1〜C6)アルキルである;R32は水素、メチルまたは(C1〜C6)アルキルである;ならびにR33はハロ基である)
を有する。
【0094】
本発明の第13の合成方法において、化合物は構造式(I)および(Ia)を含み、Rおよび/またはRは、任意選択的に置換されたヘテロアリールである。この第13の実施形態による典型的なヘテロアリール基は、5〜15個、より典型的には5〜11個の環内原子を含み、N、NH、O、S、S(O)およびS(O)からなる群より選択される1、2、3または4個の同じまたは異なるヘテロ原子またはヘテロ原子基を含む。任意選択的に置換されたヘテロアリールは、そのそれぞれのC2〜C4窒素原子またはリンカーLもしくはLに、任意の利用可能な炭素原子もしくはヘテロ原子を介して結合され得るが、典型的には、炭素原子を介して結合される。任意選択の置換基は同じであっても異なっていてもよく、任意の利用可能な炭素原子またはヘテロ原子に結合され得る。これらの化合物の1つの実施形態では、Rは、ブロモ、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノまたは−C(O)NHR(式中、Rは水素もしくは(C1〜C6)アルキルである)以外である。これらの化合物の別の実施形態では、RおよびRが各々、置換または非置換ピロールまたはインドールであるとき、該環は、環内炭素原子を介して分子の残部に結合している。任意選択的に置換されたヘテロアリール基を含む化合物のさらに別の実施形態では、ヘテロアリール非置換であるか、または1〜4個の同じまたは異なるR基(式中、Rは、構造式(I)について先に規定したとおりである)で置換されている。かかる任意選択的に置換されたヘテロアリールの具体例としては、限定されないが、以下のヘテロアリール基:
【0095】
【化18】

【0096】
【化19】

(式中、
pは、1〜3の整数である;
−−−は、独立して、単結合または二重結合を表す;
35は、水素またはR(式中、Rは、構造式(I)について先に規定したとおりである)である;
Xは、CH、NおよびN−Oからなる群より選択される;
各Yは、独立して、O、SおよびNHからなる群より選択される;
各Yは、独立して、O、S、SO、SO、SONR36、NHおよびNR37からなる群より選択される;
各Yは、独立して、CH、CH、O、S、N、NHおよびNR37からなる群より選択される;
36は、水素またはアルキルである;
37は、水素およびプロ基からなる群より選択され、好ましくは、水素またはアリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、R、R−CR−O−C(O)R、−CR−O−PO(OR、−CH−O−PO(OR、−CH−PO(OR、−C(O)−CR−N(CH、−CR−O−C(O)−CR−N(CH、−C(O)R、−C(O)CFおよび−C(O)−NR−C(O)Rからなる群より選択されるプロ基である;
Aは、O、NHおよびNR38からなる群より選択される;
38は、アルキルおよびアリールからなる群より選択される;
、R10、R11およびR12は、各々、互いに独立して、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルコキシ、アミノアルキルおよびヒドロキシアルキルからなる群より選択されるか、あるいはまた、RとR10および/またはR11とR12は、一緒になってケタールを形成する;
各Zは、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、エステル、カルバミン酸塩およびスルホニルからなる群より選択される;
Qは、−OH、OR、−NR、−NHR39−C(O)R、−NHR39−C(O)OR、−NR39−CHR40−R、−NR39−(CH−Rおよび−NR39−C(O)−CHR40−NRからなる群より選択される;
39およびR40は、各々、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルおよびNHRからなる群より選択される;ならびに
、RおよびRは、構造式(I)について先に規定したとおりである。Qの好ましい置換基Rは、−C(O)OR、−O−C(O)R、−O−P(O)(ORおよび−P(O)(ORから選択される)
が挙げられる。
【0097】
上記のヘテロアリール、ならびに本発明のこの実施形態による他の5〜15員環ヘテロアリールの1つの実施形態では、各Rは、独立して、R、−NR、−(CH−NR、−C(O)NR、−(CH−C(O)NR、−C(O)OR、−(CH−C(O)ORおよび−(CH−OR(式中、m、RおよびRは、構造式(I)について先に規定したとおりである)からなる群より選択される。
【0098】
具体的な合成の一例において、Rおよび/またはRは、Rおよび同じまたは異なるヒドロキシル、アミノまたはカルボキシル基の1つ以上で任意選択的に置換された(C3〜C8)シクロアルキルからなる群より選択される。
【0099】
上記のヘテロアリールの別の合成では、各R35または水素または(C1〜C6)エチルまたはメチルである。
【0100】
上記のヘテロアリールのさらに別の合成では、芳香環の連結性は、5または6位のいずれかである。RまたはRのいずれかが、本明細書全体において記載しているヘテロアリール基に利用され得ることを理解されたい。
【0101】
構造式(I)および(Ia)の化合物の第14の合成において、RおよびRは、各々、互いに独立して、任意選択的に置換されたフェニル、アリールまたはヘテロアリールであるが、(1)Lが直接結合であり、Rおよび任意選択でRが水素であるとき、Rは3,4,5−トリメトキシフェニルまたは3,4,5−トリ(C1〜C6)アルコキシフェニルであり得る;(2)LおよびLが各々、直接結合であり、Rが水素であり、Rがハロであるとき、RおよびRは各々、同時に3,4,5−トリメトキシフェニルまたは3,4,5−トリ(C1〜C6)アルコキシフェニルであり得る;(3)Rが3−メトキシフェニルまたは3−(C1〜C6)アルコキシフェニルであり、Rが3,4,5−三置換フェニルであるとき、3および4位に位置する置換基はともに、同時にメトキシまたは(C1〜C6)アルコキシであり得る;(4)Rが置換フェニルであり、Rが水素であるとき、Rはシアノまたは−C(O)NHR(式中、Rは水素または(C1〜C6)アルキルである)であり得る;および/または(5)RおよびRが各々、独立して、置換または非置換ピロールまたはインドールであるとき、ピロールまたはインドールは、環内炭素原子を介して分子の残部に結合するものとする。あるいはまた、Rは、第1または第2の実施形態に関して記載した但し書き条件下にあるものとする。
【0102】
本発明の第14の合成では、RおよびR置換基は同じであっても異なっていてもよい。具体的な任意選択的に置換されたフェニル、アリールおよび/またはヘテロアリールとしては、第12および第13の実施形態に関して上記に例示したものが挙げられる。
【0103】
上記の第1〜第14の実施形態を含む構造式(I)および(Ia)の化合物の第15の合成では、Rは水素であり、Rは電気陰性基である。当業者には認識され得るように、電気陰性基は、電子を自身に引き付ける傾向が比較的大きい原子または原子基である。この第14の実施形態による電気陰性基の具体例としては、限定されないが、−CN、−NC、−NO、ハロ、ブロモ、クロロ、フルオロ、(C1〜C3)ハロアルキル、(C1〜C3)パーハロアルキル、(C1〜C3)フルオロアルキル、(C1〜C3)パーフルオロアルキル、−CF、(C1〜C3)ハロアルコキシ、(C1〜C3)パーハロアルコキシ、(C1〜C3)フルオロアルコキシ、(C1〜C3)パーフルオロアルコキシ、−OCF、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)CFおよび−C(O)OCFが挙げられる。具体的な1つの実施形態では、電気陰性基は、−OCF、−CF、ブロモ、クロロまたはフルオロなどのハロゲン含有電気陰性基である。別の具体的な実施形態では、Rはフルオロであるが、該化合物は、第3の実施形態による化合物でないものとする。
【0104】
第16の合成では、構造式(I)および(Ia)の化合物は、構造式(Ib):
【0105】
【化20】

による化合物ならびにその塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドであり、式中、R11、R12、R13およびR14は、各々、互いに独立して、水素、ヒドロキシ、(C1〜C6)アルコキシおよび−NRからなる群より選択される;ならびにR、RおよびRは、構造式(I)について先に規定したとおりである。ただし、R13、RおよびRが各々、水素であるとき、R11およびR12は、同時にメトキシ、(C1〜C6)アルコキシまたは(C1〜C6)ハロアルコキシでないものとする。
【0106】
第17の合成では、構造式(I)および(Ia)の化合物は、構造式(Ic):
【0107】
【化21】

による化合物ならびにその塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドであり、式中、
は、5〜10員環ヘテロアリールおよび3−ヒドロキシフェニルからなる群より選択される;
は、Fまたは−CFである;ならびに
は、−O(CH−R(式中、mおよびRは、構造式(I)について先に規定したとおりである)である。具体的な1つの実施形態では、Rが−O−CH−C(O)NH−CHである、および/またはRが、第13の実施形態によるヘテロアリールである。
【0108】
当業者には、本明細書に記載する2,4−ピリミジンジアミン化合物の合成調製物が、プロドラッグをもたらすプロ基でマスクされていてもよい官能基を含み得ることが認識されよう。かかるプロドラッグは、通常、活性薬物形態に変換されるまで薬理学的に不活性であるが、そうである必要はない。実際、米国特許出願第10/335,543号(その内容は、引用により本明細書に組み込まれる)の表1に記載の活性な2,4−ピリミジンジアミン化合物の多くは、使用条件下で加水分解可能であるか、あるいは切断可能であるプロモエティーを含む。例えば、エステル基は、一般に、胃の酸性条件に曝露されると、酸触媒型加水分解を受けて親カルボン酸を生成させるか、または腸もしくは血液の塩基性条件に曝露されると塩基触媒型加水分解を受ける。したがって、被験体に経口投与される場合、エステル部分を含む2,4−ピリミジンジアミンは、該エステル形態が薬理学的に活性であるか否かに関わらず、その対応するカルボン酸のプロドラッグであるとみなされ得る。米国特許出願第10/335,543号の表1を参照すると、該発明の数多くのエステル含有2,4−ピリミジンジアミンは、そのエステル「プロドラッグ」形態において活性である。
【0109】
本発明の方法によって調製されるプロドラッグでは、任意の利用可能な機能性部分は、プロドラッグをもたらすプロ基でマスクされていてもよい。プロモエティー内に含めるためプロ基でマスクされていてもよい2,4−ピリミジンジアミン化合物内の官能基としては、限定されないが、アミン(第1級および第2級)、ヒドロキシル、スルファニル(チオール)、カルボキシルなどが挙げられる。所望の使用条件下で切断可能なプロモエティーをもらたすかかる官能基のマスクに適した数多くのプロ基が当該技術分野で知られている。これらのプロ基はすべて、単独または組合せで、本発明のプロドラッグ内に含まれ得る。
【0110】
例示的な1つの実施形態では、本発明の方法によって調製されるプロドラッグは、構造式(I)による化合物であり、式中、RおよびRは、先に規定した選択肢に加え、プロ基であり得る。
【0111】
構造式(I)の2,4−ピリミジンジアミン内のN2およびN4に結合している水素は、プロモエティーで置換されたものであり得る。当業者には理解され得るように、これらの窒素は、使用条件下で切断されて構造式(I)による2,4−ピリミジンジアミンをもたらすプロモエティー内に含まれ得る。したがって、別の実施形態では、本発明のプロドラッグは、構造式(ii):
【0112】
【化22】

による化合物(その塩、水和物、溶媒和物およびN−オキシドを含む)であり、式中、R、R、R、R、LおよびLは、構造式(I)について先に規定したとおりであり、R2bおよびR4bは、各々、互いに独立して、プロ基である。本発明のこの実施形態によるプロ基の具体例としては、限定されないが、(C1〜C6)アルキル、−C(O)CH、−C(O)NHR36および−S(O)36(式中、R36は、(C1〜C6)アルキル、(C5〜C15)アリールおよび(C3〜C8)シクロアルキルである)が挙げられる。
【0113】
構造式(ii)のプロドラッグにおいて、種々の置換基は、構造式(I)および(Ia)の化合物について先に記載した種々の第1〜第20の実施形態またはかかる実施形態の組合せに記載のとおりであり得る。
【0114】
当業者には、本発明の方法によって調製される化合物およびプロドラッグならびに本明細書に具体的に記載および/または例示した種々の化合物種の多くは、互変異性、立体配座異性、幾何異性および/または光学異性の現象を示し得ることが認識されよう。例えば、本発明の化合物およびプロドラッグは、1つ以上のキラル中心および/または二重結合を含み得、その結果、立体異性体、例えば、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)など、エナンチオマーおよびジアステレオマーならびにその混合物、例えば、ラセミ混合物として存在し得る。別の例として、本発明の化合物およびプロドラッグは、いくつかの互変異性型、例えば、エノール形態、ケト形態およびその混合物で存在し得る。種々の化合物名として、本明細書お特許請求の範囲内の式および化合物の図は、考えられ得る互変異性、立体配座異性、光学異性または幾何異性の形態の一例のみを示すものであり得、本発明は、本明細書に記載した有用性の1つ以上を有する化合物またはプロドラッグの任意の
互変異性、立体配座異性、光学異性および/または幾何異性の形態、ならびにこれらの種々の異なる異性体形態の混合物を包含することを理解されたい。2,4−ピリミジンジアミンコア構造の周りの回転が制限される場合、回転異性体もまた考えられ得、これもまた、本発明の方法によって調製される化合物に具体的に含まれる。
【0115】
またさらに、当業者には、置換基の選択肢のリストが、結合価の要件または他の理由により、特定の基を置換するために使用され得ない構成員を含む場合、そのリストは、文脈において、そのリストの構成員の該特定の基を置換するのに適したものを含むと読ことが意図されることが認識されよう。例えば、当業者には、Rの列挙した選択肢のすべてがアルキル基を置換するのに使用され得るが、選択肢の一部は、(例えば、=Oなど)は、フェニル基を置換するのに使用され得ないことが認識されよう。置換基のペアの可能な組合せのみが意図されることを理解されたい。
【0116】
本発明の方法によって調製される化合物および/またはプロドラッグは、その化学構造またはその化学名のいずれかによって識別され得る。化学構造とその化学名が矛盾する場合、化学構造が、その特定の化合物の識別を決定する。
【0117】
種々の置換基の性質に応じて、本発明の方法によって調製される2,4−ピリミジンジアミン化合物およびプロドラッグは、塩の形態であり得る。かかる塩としては、医薬用途に適した塩(「薬学的に許容され得る塩」)、獣医学的用途に適した塩などが挙げられる。かかる塩は、酸または塩基に由来するものであり得、これらは、当該技術分野でよく知られている。
【0118】
1つの実施形態では、該塩は薬学的に許容され得る塩である。一般的に、薬学的に許容され得る塩は、親化合物の所望の薬理学的活性の1つ以上を実質的に保持しており、かつヒトへの投与に適した塩である。薬学的に許容され得る塩としては、無機酸または有機酸と形成される酸付加塩が挙げられる。薬学的に許容され得る酸付加塩の形成に適した無機酸としては、一例であって限定されないが、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸など)、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。薬学的に許容され得る酸付加塩の形成に適した有機酸としては、一例であって限定されないが、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、パルミチン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、アルキルスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸など)、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸など)、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−l−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第3級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などが挙げられる。
【0119】
また、薬学的に許容され得る塩としては、親化合物内に存在する酸性プロトンが、金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアルミニウムイオン)で置き換えられるか、または有機塩基(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミン、モルホリン、ピペリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミンなど)に配位されるか、のいずれかときに形成される塩が挙げられる。
【0120】
本発明の方法によって調製される2,4−ピリミジンジアミン化合物、ならびにその塩はまた、水和物、溶媒和物およびN−オキシドの形態であり得、これらは、当該技術分野でよく知られている。
【0121】
本発明の方法によって調製される化合物およびプロドラッグは、市販の出発材料および/または慣用の合成方法によって調製される出発材料を用いて合成され得る。本発明の化合物、ならびにその中間体の合成を示す具体例を、実施例のセクションに提供する。構造式(I)、(Ia)および(ii)の化合物はすべて、これらの方法の常套的な適合によって調製され得る。
【0122】
本発明の化合物は、自己免疫疾患の処置に使用され得る。
【0123】
本発明は、構造式(II)
【0124】
【化23】

(式中、YおよびY’は、各々、互いに独立して、OおよびSからなる群より選択され、RおよびRは上記規定のとおりである)
による化合物をハロゲン化剤で処理することを含む、合成を提供する。例えば、化合物(II)を、第1の工程(a)において、ハロゲン化剤、例えば、PX(PCl、PBr)、オキシハロゲン化リン(POCl、POBr)またはその混合物などにより、高温(例えば、還流条件までなど)で処理する。
【0125】
1つの実施形態では、化合物(II)を、過剰のPOClで、約60℃〜約150℃の間、より特別には約80℃〜約120℃の間、特に約110℃の温度にて、約30分間〜約12時間の間、より特別には約2時間〜約10時間の間、特に約8時間の間処理し、次いで、室温まで冷却する。次いで、過剰のPClを添加し、約60℃〜約150℃の間、より特別には約80℃〜約120℃の間、特に還流温度に、ある時間、一般的に、約30分間〜約18時間の間、より特別には約2時間〜約14時間の間、特に約12時間加熱する。次いで、混合物を、室温まで冷却し、塩化ナトリウムを有する氷水中に注入し、生成物(II)を溶液から沈殿させる。生成物を、さらなる処理のために濾過によって回収する。
【0126】
別の実施形態では、化合物(II)を、第3級アミン溶媒、例えば、N,N−ジアルキルアニリンなどの存在下で、ハロゲン化剤またはハロゲン化剤の組合せにより処理する。好適なN,N−ジアルキルアニリンとしては、ジメチルアニリン、ジエチルアニリンなどが挙げられる。該方法の一例では、過剰のPOX、すなわちPOClは、蒸留によって、水中でクエンチされた生成物とともに除去され、有機溶媒(例えば、塩化メチレン、四塩化炭素、酢酸エチルまたはエーテルなど)中に抽出され得る。あるいはまた、POXの混合物、すなわち、POClおよび生成物は、酸性水溶液(例えば、3M HClおよび塩化メチレンなど)中で直接クエンチされ得る。工程(a)の生成物は、化合物(III)
【0127】
【化24】

(式中、各Xはハロゲンである)
である。
【0128】
化合物(III)は、有機層、すなわち塩化メチレン層中に抽出され、オフホワイト固形物として95%に近い収率で単離され得る。あるいはまた、化合物(III)は、工程(b)において単離または精製なしで処理され得る。好都合には、塩化メチレンなどの抽出溶媒は、さらなる調製方法において再利用および再使用され得る。
【0129】
第3級アミンの使用は、反応からのHCl副生成物の除去を補助し、PXの使用の必要性を排除する。PXおよび/またはPOXハロゲン化剤は、失活させるのが困難である。溶媒の使用もまた、過剰のハロゲン化剤(1種類または複数種類)の失活を改善した。典型的には、溶媒の存在なしでの反応混合物のクエンチは、制御するのが困難である発熱性の反応をもたらした。溶媒の使用は、好都合には、クエンチ工程の発熱性の性質の低減を補助した。
【0130】
工程(b)では、化合物(III)を、溶媒中、高温にて1当量の構造式(IV)
−L−NH(IV)
による化合物で処理し、それにより構造式(V)
【0131】
【化25】

による化合物を形成する。
【0132】
典型的には、工程(b)で用いられる溶媒は、C1〜C7直鎖または分枝鎖のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、ヘキサノールなどである。一般的に、工程(b)の混合物は、約60℃〜約150℃の間、より特別には約80℃〜約120℃の間、特に還流条件の温度範囲にわたって、約30分間〜約12時間、より特別には約2時間〜約10時間の間、特に、約6〜約8時間の間、加熱される。化合物Vは、単離および精製され得るか、または単離および精製の必要なく次の工程(c)で処理され得る。
【0133】
工程(c)では、化合物(V)を、1当量の構造式(VI)
−L−NH(VI)
(式中、R、R、R、R、LおよびLは上記規定のとおりである)
による化合物で、溶媒中、高温で処理し、化合物(I)を形成する。
【0134】
典型的には、工程(c)で用いられる溶媒もまた、アルコール(例えば、上記のものなど)であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。一般的に、工程(c)の混合物は、約60℃〜約150℃の間、より特別には約80℃〜約120℃の間、特に還流条件の温度範囲にわたって、約30分間〜約12時間、より特別には約2時間〜約10時間の間、特に約6〜約8時間の間、加熱される。
【0135】
一部の特定の実施形態では、工程(b)および(c)を合わせて一工程にされ得、このとき、化合物(VI)は、化合物(IV)を化合物(III)と反応させた後に、反応混合物に添加する。化合物(VI)は工程(b)で添加され得、化合物(IV)は工程(c)で添加され得る、これらは、添加を行うときに関して互換的であり、種々のRおよびR置換基を有する化合物を調製するために利用され得ることを理解されたい。さらに、化合物(IV)および(VI)は同一であってもよく、対称な2,4−ピリミジンジアミン化合物が提供される。
【0136】
別の合成手順では、工程(a)の反応生成物である化合物(III)を単離しないが、2−プロパノールなどのアルコールで交換され得る。次いで、アルコール性溶液を、工程(b)および(c)において上記のようにして処理し得る。得られるHCl塩は、例えば濾過によって容易に回収され、溶媒でリンス処理し、単離され得る。これは、HCl塩をリンス処理して不純物(あれば)を除去し得るという利点を提供する。(I)のHCL塩は、この塩を水に溶解し、適当な塩基(例えば、水酸化ナトリウムなど)によってpHを約5.5に調整することにより、遊離塩基に変換され得る。塩を単離した後、変換することにより、高価で時間のかかり得るクロマトグラフィーおよび/または再結晶による精製が回避される。
【0137】
温度範囲、加熱時間、溶媒などは、反応の容量/サイズおよび所望される時間に依存することを理解されたい。当業者には、特定の結果(例えば、反応温度を上げることによる過熱時間の縮小)を達成するために種々のパラメータを修正し得ることが認識されよう。これらの修正の選択は当業者の通常の技量の範囲内である。
【0138】
代表的な合成方法をスキーム1および図1に提供する。
【0139】
【化26】

(式中、R、R、LおよびLは、上記規定のとおりである)。
【0140】
一部の特定の実施形態では、LおよびLは直接結合である。2当量の(IV)または2当量の(VI)が合成方法において使用され得ることを理解されたい。あるいはまた、(IV)または(VI)を第1の工程で反応させ得、次いで、(VI)または(IV)を後続の工程で反応させ、(IX)または(X)のいずれかを提供し得る。スキーム1の合成の利点の1つは、中間体(VIII)が単離を必要としないことである。
【0141】
図1は、式(IX)または(X)を有する化合物、好ましくは、LおよびLが直接結合である化合物の調製のためのフローチャートである。図1は、有機溶媒(塩化メチレン)中に溶解された生成物は、アルコール(イソプロパノール)で交換され得ることを示す。好都合には、中間体は、適当なアミン(1種類または複数種類)で処理され、生成物として最終の医薬活性成分がもたらされ得る。
【実施例】
【0142】
(N2,N4−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−5−フルオロ−2,4−ピリミジンジアミンHCl塩の調製)
スキーム2に示すように、5−フルオロウラシル(2000g)(XI)、N,N−ジメチルアニリン(3720g)およびオキシ塩化リン(12L)の混合物を、窒素下で3時間還流した。得られた混合物を室温まで冷却した。中間体(XII)は単離せず、以下のようにして使用した。ジクロロメタン、塩酸および水を、およそ3時間にわたって10〜30℃の間で添加した。混合物をおよそ1時間10〜30℃で攪拌し、次いで、およそ30分間沈降させ、分離した。水層をジクロロメタンで抽出し、有機層と合わせた。合わせた有機層を水で洗浄し、ジクロロメタンをイソプロパノールと交換した。3−アミノフェノール(4853g)(XIII)を添加し、混合物を80〜85℃でおよそ7時間還流した。0〜5℃まで冷却した後、固形物(XIV)を濾過によって回収し、冷イソプロパノールで洗浄した。湿った粉末を真空下で、一定重量が得られるまで乾燥させた。最終生成物(XIV)が、固形物(1657g)として得られた。
【0143】
【化27】

上記の合成スキームの多くでは、保護基の使用を示していないが、当業者には、場合によっては、置換基R、R、R、R、Lおよび/またはLが、保護に必要とされる官能基を含み得ることが認識されよう。使用される保護基が正確にどれであるかは、特に、保護される官能基が何であるか、および特定の合成スキームで使用される反応条件に依存し、当業者に自明である。特定の適用用途に適した保護基ならびにその結合および除去のための化学反応の選択の指針は、例えば、Greene & Wuts(前出)に見られ得る。
【0144】
構造式(ii)によるプロドラッグは、上記の方法の常套的な変形によって調製され得る。あるいはまた、かかるプロドラッグは、保護された構造式(I)の2,4−ピリミジンジアミンを適当なプロ基と好適に反応させることにより調製され得る。かかる反応を行うため、および生成物を脱保護して式(ii)のプロドラッグを生成させるための条件は、よく知られている。
【0145】
前述の本発明は、理解を容易にするために、ある程度詳細に記載したが、一定の変更および修正が添付の特許請求の範囲の範囲内で行われ得ることは明白である。したがって、記載の実施形態は、例示的であって限定的とみなされるべきでなく、本発明は、本明細書に示す詳細事項に限定されず、添付の特許請求の範囲の範囲内および均等物において修正され得る。
【0146】
本出願書類全体に引用したすべての文献および特許の参考文献は、あらゆる目的のために、引用により本出願書類に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】図1は、2,4−ピリミジンジアミン化合物を調製するのに有用な一般的な本発明の合成方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は、マスト細胞および/または好塩基球細胞の脱顆粒をもたらすFcεRlシグナル伝達カスケードを示すイラストを提供する。
【図3】図3は、上流でFcεRI媒介性脱顆粒を選択的に阻害する化合物、およびFcεRI媒介性およびイオノマイシン誘導型脱顆粒の両方を阻害する化合物の推定作用点を示す挿絵を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I):
【化1】

による2,4−ピリミジンジアミン化合物ならびにその塩、水和物、溶媒和物、N−オキシドおよびプロドラッグの合成方法であって、式中、
およびLは、各々、互いに独立して、直接結合およびリンカーからなる群より選択される;
は、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C3〜C8)シクロアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたシクロヘキシル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された3〜8員環シクロヘテロアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C5〜C15)アリール、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたフェニルおよび同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された5〜15員環ヘテロアリールからなる群より選択される;
は、水素、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C3〜C8)シクロアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたシクロヘキシル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された3〜8員環シクロヘテロアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C5〜C15)アリール、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたフェニルおよび同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された5〜15員環ヘテロアリールからなる群より選択される;
は、R、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C6)アルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C1〜C4)アルカニル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C2〜C4)アルケニルおよび同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C2〜C4)アルキニルからなる群より選択される;
各Rは、独立して、水素、電気陰性基、−OR、−SR、(C1〜C3)ハロアルキルオキシ、(C1〜C3)パーハロアルキルオキシ、−NR、ハロゲン、(C1〜C3)ハロアルキル、(C1〜C3)パーハロアルキル、−CF、−CHCF、−CFCF、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR;−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(NH)NR、−OC(O)R、−SC(O)R、−OC(O)OR、−SC(O)OR、−OC(O)NR、−SC(O)NR、−OC(NH)NR、−SC(NH)NR、−[NHC(O)]、−[NHC(O)])]OR、−[NHC(O)]NRおよび−[NHC(NH)]NR、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C5〜C10)アリール、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換されたフェニル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された(C6〜C16)アリールアルキル、同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された5〜10員環ヘテロアリールおよび同じまたは異なるR基の1つ以上で任意選択的に置換された6〜16員環ヘテロアリールアルキルからなる群より選択される;
は、R、R、同じまたは異なるRまたはRの1つ以上で任意選択的に置換されたR、同じまたは異なるRまたはRの1つ以上で任意選択的に置換された−OR、−B(OR、−B(NR、−(CH−R、−(CHR−R、−O−(CH−R、−S−(CH−R、−O−CHR、−O−CR(R、−O−(CHR−R、−O−(CH−CH[(CH]R、−S−(CHR−R、−C(O)NH−(CH−R、−C(O)NH−(CHR−R、−O−(CH−C(O)NH−(CH−R、−S−(CH−C(O)NH−(CH−R、−O−(CHR−C(O)NH−(CHR−R、−S−(CHR−C(O)NH−(CHR−R、−NH−(CH−R、−NH−(CHR−R、−NH[(CH]、−N[(CH、−NH−C(O)−NH−(CH−R、−NH−C(O)−(CH−CHRおよび−NH−(CH−C(O)−NH−(CH−Rからなる群より選択される;
各Rは、独立して、水素、(C1〜C6)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、シクロヘキシル、(C4〜C11)シクロアルキルアルキル、(C5〜C10)アリール、フェニル、(C6〜C16)アリールアルキル、ベンジル、2〜6員環ヘテロアルキル、3〜8員環シクロヘテロアルキル、モルホリニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピペリジニル、4〜11員環シクロヘテロアルキルアルキル、5〜10員環ヘテロアリールおよび6〜16員環ヘテロアリールアルキルからなる群より選択される;
各Rは、独立して、=O、−OR、(C1〜C3)ハロアルキルオキシ、−OCF、=S、−SR、=NR、=NOR、−NR、ハロゲン、−CF、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)R”、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(NH)NR、−C(NR)NR、−C(NOH)R、−C(NOH)NR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NR、−OC(NH)NR、−OC(NR)NR、−[NHC(O)]、−[NRC(O)]、−[NHC(O)]OR、−[NRC(O)]OR、−[NHC(O)]NR、−[NRC(O)]NR、−[NHC(NH)]および−[NRC(NR)]NRからなる群より選択される適当な基である;
各Rは、独立して、保護基またはRであるか、あるいはまた、各Rは、結合している窒素原子と一緒になって、任意選択で1個以上の同じまたは異なるさらなるヘテロ原子を含み得、かつ任意選択で同じもしくは異なるRまたは適当なR基の1つ以上で任意選択的に置換されたものであり得る5〜8員環シクロヘテロアルキルまたはヘテロアリールを形成する;各Rは、独立して、保護基またはRである;各mは、独立して、1〜3の整数である;ならびに
各nは、独立して、0〜3の整数であり、
(a)構造式(II)
【化2】

(式中、YおよびY’は、各々、互いに独立して、OおよびSからなる群より選択される)
による化合物をオキシハロゲン化リンにより、N,N−ジアルキルアニリン中高温で処理し、それにより構造式(III)
【化3】

(式中、各Xはハロゲンである)
による化合物を形成する工程
(b)化合物(III)を溶媒中、高温で1当量の構造式(IV)
【化4】

による化合物で処理し、それにより構造式(V)
−L−NH(IV)
による化合物を形成する工程;および
(c)化合物(V)を溶媒中、高温で1当量の構造式(VI)
−L−NH (VI)
による化合物で処理し、それにより化合物(I)
(式中、R、R、R、R、LおよびLは上記規定のとおりである)
を形成する工程
を包含する、合成方法。
【請求項2】
工程(b)の温度が約80℃〜約85℃の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)の温度が約80℃〜約85℃の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オキシハロゲン化リンがオキシ塩化リンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記N,N−ジアルキルアニリンが、N,N−ジエチルアニリンおよびN,N−ジメチルアニリンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(c)の溶媒がイソプロパノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(IV)および(VI)がいずれも3−アミノフェノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)において、オキシハロゲン化リンおよびN,N−ジアルキルアニリンを還流する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)の反応生成物を溶媒に溶解し、酸および水でさらに処理する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒がジクロロメタンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸が塩酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ジクロロメタンをイソプロパノールと交換する工程をさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)において、前記溶媒がイソプロパノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
化合物(II)のRがFである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
YおよびY’がともにOである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
およびRが各々
【化5】

であり、LおよびLが各々直接結合である、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−511659(P2008−511659A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530294(P2007−530294)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/030913
【国際公開番号】WO2006/028833
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(504294145)ライジェル ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (63)
【Fターム(参考)】