説明

3次元画像出力装置及び方法

【課題】前景や背景に生じる視差量をその視差量に応じて重み付け調整をする(強弱をつける)ことができ、特に立体表示プリント上でより好ましい立体感のある視差画像を表示可能にする。
【解決手段】複数の視点から同一被写体を撮影した複数の視点画像を取得し、各視点画像のそれぞれ対応する特徴点の座標値から各特徴点における視差量を取得する。この視差量に応じて重み付けが異なる視差量の調整を行う変換テーブル(印刷用テーブル)は、プリントサイズに関わらず、各視点画像から取得した視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値の絶対値よりも奥行き方向の視差量の最大値の絶対値が大きくなるように視差量の変換を行うように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3次元画像出力装置及び方法に係り、特に3次元画像表示デバイスにより良好な3次元画像(立体画像)を表示させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用する立体表示デバイスに応じて立体画像を構成する視点画像の視点位置を自動的に調整し、観察時のクロストークを少なくして自然な立体画像として表示できるようにした立体画像生成方法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1に記載の立体画像生成方法は、立体表示デバイスに関するデバイス情報からその立体表示デバイスに対応した複数の視点を決定し、この決定した複数の視点と複数の第1の視点画像の視差に関する視差情報とから、前記第1の視点画像を前記複数の視点に対応する複数の第2の視差画像に変換するようにしている。
【0004】
また、3次元映像を種々の立体表示デバイスに表示する際に、立体表示デバイスのサイズが大きい場合又は解像度が低くなる場合に、視差量が拡大されるため、立体視できなくなるという問題を解決するために、ある立体表示デバイスにおける立体映像の視差量が、その立体映像の最適な立体表示デバイスにおける視差量よりも大きくなる場合には、立体映像を縮小表示させることにより視差量を変更するようにした立体映像再生装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−115198号公報
【特許文献2】特開2005−73049号公報
【特許文献3】特開2003−209858号公報
【特許文献4】特開平10−40420号公報
【特許文献5】特開平8−331607号公報
【特許文献6】国際公開第2004/082297号
【特許文献7】国際公開第2004/084560号
【特許文献8】特開2004−221700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の立体画像生成方法は、使用する立体表示デバイスのサイズ等の情報により仮想視点を決め、その仮想視点から恰も撮影されたような視差画像を生成するため、観察時のクロストークを少なくすることができ、立体画像として表示させることができるが、被写体の遠近に関係なく一律に視差画像を生成するため、元の複数の視点画像によっては立体感の乏しい立体画像になったり、立体感が強調されすぎた立体画像になるおそれがあり、必ずしも好ましい立体感が得られる立体画像を生成することができない。
【0007】
また、特許文献2に記載の立体映像再生装置は、特許文献1に記載の発明と同様に、より好ましい立体感のある立体映像を再生することができず、更に、ある立体表示デバイスにおける立体映像の視差量が、その立体映像の最適な立体表示デバイスにおける視差量よりも大きくなる場合には、立体映像を縮小表示させるため、立体表示デバイスの表示画面全体を有効に利用することができないという問題がある。
【0008】
即ち、特許文献1、2に記載の発明は、使用する立体表示デバイスに関わらず、立体画像として視認できるように立体画像を生成するものであり、より好ましい立体感が得られる立体画像を生成するための工夫はなされていない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、前景や背景に生じる視差量をその視差量に応じて重み付け調整をする(強弱をつける)ことができ、特に立体表示プリント上でより好ましい立体感のある視差画像を表示させることができる3次元画像出力装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために本発明の一の態様に係る3次元画像出力装置は、複数の視点から同一被写体を撮影した複数の視点画像を取得する視点画像取得手段と、前記取得した複数の視点画像から特徴が一致する複数の組の特徴点における視差量を取得する視差情報取得手段と、前記取得した各特徴点の視差量を立体表示プリント用に調整する視差量調整手段であって、前記視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値の絶対値よりも奥行き方向の視差量の最大値の絶対値が大きくなるように前記視差量に対して重み付けの異なる視差量の調整を行う視差量調整手段と、前記調整後の各特徴点の視差量に対応する視差画像を生成する視差画像生成手段と、前記生成した視差画像を含む複数の視差画像を前記立体表示プリント用として出力する視差画像出力手段と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
本発明の一の態様によれば、特許文献1に記載の発明のように仮想視点を決めることにより被写体の遠近に関係なく一律に視差量を調整する場合に比べて視差量の調整の自由度が高く、前景や背景に対して視差量の調整を自由に行うこと(視差の強弱を自由につけること)ができ、特に複数の視点画像から取得した各特徴点の視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値の絶対値よりも奥行き方向の視差量の最大値の絶対値が大きくなるように視差量に対して重み付けの異なる視差量の調整を行うようにしたため、前景の飛び出し量を抑制し、背景の奥行き感を強調した視差画像を生成することができ、立体表示プリント上でより好ましい立体感のある視差画像を表示させることが可能になる。
【0012】
本発明の他の態様に係る3次元画像出力装置において、前記視差量調整手段は、前記飛び出し方向の視差量が大きくなるにつれて該視差量の変化率が小さくなるように視差量を調整し、前記奥行き方向の視差量が大きくなるにつれて該視差量の変化率が大きくなるように視差量を調整することを特徴としている。
【0013】
本発明の更に他の態様に係る3次元画像出力装置において、前記視差量調整手段は、前記取得した各特徴点の視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値及び奥行き方向の視差量の最大値が、それぞれ予め設定された視差量になるように調整することを特徴としている。
【0014】
本発明の更に他の態様に係る3次元画像出力装置において、前記視差量調整手段は、前記取得した各特徴点の視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値及び奥行き方向の視差量の最大値が、それぞれ3mm及び−8mmの視差量になるように調整することを特徴としている。尚、飛び出し方向の視差量を正とし、奥行き方向の視差量を負としている。
【0015】
本発明の更に他の態様に係る3次元画像出力装置において、前記視差量調整手段は、正規化された視差量と該視差量の調整後の視差量との入出力関係を示す変換テーブルを有し、前記取得した各特徴点の視差量を正規化し、該正規化した視差量に対応する調整後の視差量を前記変換テーブルから読み出すことを特徴としている。
【0016】
本発明の更に他の態様に係る3次元画像出力方法は、複数の視点から同一被写体を撮影した複数の視点画像を取得する視点画像取得ステップと、前記取得した複数の視点画像から特徴が一致する複数の組の特徴点における視差量を取得する視差情報取得ステップと、前記取得した各特徴点の視差量を立体表示プリント用に調整する視差量調整ステップであって、前記視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値の絶対値よりも奥行き方向の視差量の最大値の絶対値が大きくなるように前記視差量に対して重み付けの異なる視差量の調整を行う視差量調整ステップと、前記調整後の各特徴点の視差量に対応する視差画像を生成する視差画像生成ステップと、前記生成した視差画像を含む複数の視差画像を前記立体表示プリント用として出力する視差画像出力ステップと、を含むことを特徴としている。
【0017】
本発明の更に他の態様に係る3次元画像出力方法において、前記視差量調整ステップは、前記飛び出し方向の視差量が大きくなるにつれて該視差量の変化率が小さくなるように視差量を調整し、前記奥行き方向の視差量が大きくなるにつれて該視差量の変化率が大きくなるように視差量を調整することを特徴としている。
【0018】
本発明の更に他の態様に係る3次元画像出力方法において、前記視差量調整ステップは、前記取得した各特徴点の視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値及び奥行き方向の視差量の最大値が、それぞれ予め設定された視差量になるように調整することを特徴としている。
【0019】
本発明の更に他の態様に係る3次元画像出力方法において、前記視差量調整ステップは、前記取得した各特徴点の視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値及び奥行き方向の視差量の最大値が、それぞれ3mm及び−8mmの視差量になるように調整することを特徴としている。
【0020】
本発明の更に他の態様に係る3次元画像出力方法において、正規化された視差量と該視差量の調整後の視差量との入出力関係を示す変換テーブルを有し、前記視差量調整ステップは、前記取得した各特徴点の視差量を正規化し、該正規化した視差量に対応する調整後の視差量を前記変換テーブルから読み出すことを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被写体の遠近により生じる前景や背景の複数の視差画像間における視差量を、その視差量に応じて重み付して調整したため、前景や背景の視差に所望の強弱をつけた視差画像を生成することができ、特に複数の視点画像から取得した各特徴点の視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値の絶対値よりも奥行き方向の視差量の最大値の絶対値が大きくなるように視差量に対して重み付けの異なる視差量の調整を行うようにしたため、前景の飛び出し量を抑制し、背景の奥行き感を強調した視差画像を生成することができ、立体表示プリント上でより好ましい立体感のある視差画像を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明の第1実施形態の3次元画像出力装置を示す外観図である。
【図2】図2は図1に示した3次元画像出力装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図3は画像内の特徴点の例を示す図である。
【図4】図4は複数の撮像部と視点番号の付与例を示す図である。
【図5】図5は各視点から撮影された4つの視差画像の同じ特徴点l、mの座標値の例を示す図である。
【図6】図6は仮想視点位置と視差調整パラメータΔtとの関係を示す図である。
【図7】図7は視差調整パラメータΔtの例を示すグラフである。
【図8】図8は本発明に係る3D画像出力装置を備えたデジタルカメラの内部構成を示すブロック図である。
【図9】図9は3D画像用の3D画像ファイルのデータ構造を示す図である。
【図10】図10は3D画像用の3D画像ファイル内の視差量メタデータの例を示す図である。
【図11】図11は各視点の代表視差量の例を示す図表である。
【図12】図12は3D画像用の3D画像ファイル内の視差量メタデータの他の例を示す図である。
【図13】図13は視差調整パラメータΔxの一例を示すグラフである。
【図14】図14は各特徴点の視差量と視差調整パラメータΔxとの関係を示す図表である。
【図15】図15は視差調整パラメータΔpの一例を示すグラフである。
【図16】図16は視差量の変換テーブルの一例を示すグラフである。
【図17】図17は視差量の変換テーブルの他の例を示すグラフである。
【図18】図18は表示デバイスにより視差量を調整する実施例を示すフローチャートである。
【図19】図19は視差調整パラメータΔxの他の例を示すグラフである。
【図20】図20は視差調整パラメータΔxの更に他の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に従って本発明に係る3次元画像出力装置及び方法の実施の形態について説明する。
【0024】
[3次元画像出力装置の第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態の3次元画像出力装置を示す外観図である。
【0025】
図1に示すように、この3次元画像出力装置(3D画像出力装置)10は、カラーの3次元液晶ディスプレイ(以下、「3D LCD」という)12を搭載したデジタルフォトフレームであり、前面には電源スイッチ、通常表示・スライドショー等を選択する操作部14が設けられ、側面にはメモリカードスロット16が設けられている。
【0026】
図2は上記3D画像出力装置10の内部構成を示すブロック図である。
【0027】
図2に示すように3D画像出力装置10は、上記3D LCD12、操作部14の他に、中央処理装置(CPU)20、ワークメモリ22、カードインターフェース(カードI/F)24、表示コントローラ26、バッファメモリ28、EEPROM30、及び電源部32を備えている。
【0028】
3D LCD12は、複数の視差画像(右目用画像、左目用画像)をレンチキュラレンズやパララックスバリア等によりそれぞれ所定の指向性をもった指向性画像を表示するものや、偏光メガネ、液晶シャッタメガネなどの専用メガネをかけることで右目用画像と左目用画像とを個別に見ることができるものなどが適用できる。
【0029】
CPU20は、操作部14からの入力に基づき所定の制御プログラムに従って3D画像出力装置10全体の動作を統括制御する制御手段として機能する。尚、CPU20による制御内容については後述する。
【0030】
ワークメモリ22は、CPU20の演算作業用領域及び画像データの一時記憶領域を含んでいる。
【0031】
カードI/F24は、デジタルカメラの記録メディアであるメモリカード34がメモリカードスロット16に装着されると、メモリカード34と電気的に接続され、メモリカード34との間でデータ(画像データ)の送受信を行うための装置である。
【0032】
表示コントローラ26は、表示用の画像データ専用の一時記憶領域であるバッファメモリ28から3D表示用の画像データ(複数の画像データ)を繰り返し読み出し、3D LCD12での3D表示用の信号に変換して3D LCD12に出力する。これにより、3D LCD12に3D画像を表示させる。
【0033】
電源部32は、図示しないバッテリ又は商用電源からの電力を制御して、3D画像出力装置10各部に動作電力を供給する。
【0034】
[3D画像出力装置10の作用]
操作部14の電源スイッチがオンされ、再生モードとしてスライドショー再生が設定されている場合には、CPU20は、メモリカードスロット16に装着されているメモリカード34からカードI/F24を介してファイル番号順に画像ファイルを所定のインターバルで読み出す。尚、この画像ファイルは、1つのファイルに複数の視差画像が格納された3D表示用の3D画像ファイルであるが、この3D画像ファイルのデータ構造の詳細は後述する。
【0035】
CPU20は、読み出した3D画像ファイルから複数の視差画像と、複数の視差画像上で特徴が一致する複数の組の特徴点の座標値と、複数の組の特徴点の座標値の差分である視差量を取得する。尚、3D画像ファイルの付属情報中に、上記複数の組の特徴点の座標値等が含まれていない場合には、複数の視差画像を解析して各特徴点の座標値を取得する。
【0036】
ここで、特徴点は、図3に示すように視差画像内で一意に特定できる特徴のある特徴点l,mであり、他の視差画像との間で同じ特徴点l,mを特定できるものである。
【0037】
図5に示すように、4視点から撮影された4つの視差画像の同じ特徴点l、mの座標値はそれぞれ異なる値をとり、図5に示す例では、特徴点lは、視点番号が大きくなるにしたがって(図4に示すように視点位置が左側に移動する程)、x座標値が小さくなり、特徴点mは、視点番号が大きくなるにしたがってx座標値が大きくなっている。
【0038】
これは、特徴点lを含む被写体は、各撮像部の光軸が交差する位置よりも遠い位置にある遠景であり、特徴点mを含む被写体は、各撮像部の光軸が交差する位置よりも近い位置にある前景であることに基づく。
【0039】
上記特徴点の検出は、従来から様々な手法が提案されており、例えば、ブロックマッチング法、KLT法(Tomasi & Kanade,1991,Detection and Tracking of Point Features)、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)などを用いることができ、また、近年の顔検出技術を特徴点の検出に適用することができる。
【0040】
また、視差画像中の特徴点は、複数の視差画像間でその特徴が一意に特定できる全ての点をとることが望ましい。
【0041】
複数の視差画像間で特徴が一致する特徴点の検出に、ブロックマッチング法を適用する場合には、複数の視差画像のうちの1つの画像(例えば、左画像)から任意の画素を基準に切り出した所定のブロックサイズのブロックと、複数の視差画像のうちの他の視差画像(例えば、右画像)のブロックとの一致度を評価し、ブロック間の一致度が最大となるときの右画像のブロックの基準の画素を、前記左画像の任意の画素に対応する右画像の画素とする。
【0042】
ブロックマッチング法でのブロック間の一致度を評価する関数として、例えば各ブロック内の画素の輝度差の2乗和(SSD)を使用するものがある(SSDブロックマッチング法)。
【0043】
このSSDブロックマッチング法では、両画像のブロック内の各画素f(i,j),g(i,j)について、次式の演算を行う。
【0044】
【数1】

【0045】
上記[数1]式の演算を、右画像上でブロックの位置を所定の探索領域内で移動させながら行い、SSD値が最小となるときの探索領域内の位置の画素を探索対象の画素とする。
【0046】
そして、左画像上の画素の位置と、探索した対応する右画像上の画素との画素間のずれ量及びずれ方向を示す視差(左右の画像が水平状態で撮影されている場合には、ずれ方向は正負で表すことができる)を求める。
【0047】
<視差量の調整の第1実施例>
次に、本発明に係る視差量の調整方法の第1実施例について説明する。
【0048】
CPU20は、取得した各組の特徴点の視差量を調整するが、その視差量の大きさに応じて該視差量に対して重み付けの異なる調整を行う。
【0049】
いま、図6に示すように2枚の視差画像(右目用画像R、左目用画像L)の視点間の距離をSとすると、仮想視点(左目用画像Lの視点からtの距離にある視点)で撮影された点線で示す画像(仮想視点画像)上の任意の特徴点の視差量d'(x,y)は、次式により表すことができる。
【0050】
【数2】

【0051】
ここで、d(x,y)は、上記任意の特徴点の右目用画像R、左目用画像L間の視差量である。
【0052】
特許文献1に記載の発明は、上記のように仮想視点の位置を決定し、その仮想視点位置での視差量d'(x,y)を求めることで、視差量d(x,y)の調整を行っている。
【0053】
これに対し、本発明の実施例では、仮想視点位置での任意の特徴点の視差量d'(x,y)を、次式により算出することにより視差量の調整を行うようにしている。
【0054】
【数3】

【0055】
ここで、Δtは、仮想視点の位置を調整する視差調整パラメータであり、図7のグラフ(1),(2),(3)に示すように、特徴点の視差量の関数である。この視差調整パラメータΔtにより上記仮想視点の位置は一点鎖線で示すように調整される。
【0056】
上記[数3]式の意味するところでは、仮想視点の位置を更に視差調整パラメータΔtにより調整し、例えば、視差調整パラメータΔtによりtが大きくなるように仮想視点の位置を調整すると、視差量d'(x,y)は調整前に比べて大きくなり、逆に視差調整パラメータΔtによりtが小さくなるように仮想視点の位置を調整すると、視差量d'(x,y)は調整前に比べて小さくなる。
【0057】
また、図7のグラフ(1),(2)に示す視差調整パラメータΔtは、視差量が大きい(前景に近い)程、正方向に大きな値をとり、視差量が負方向に大きい(背景に近い)程、負方向に大きな値をとる傾向を示しており、図7のグラフ(3)に示す視差調整パラメータΔtは、上記グラフ(1),(2)とは逆に、視差量が正方向に大きい程、負方向に大きな値をとり、視差量が負方向に大きい程、正方向に大きな値をとる傾向を示している。
【0058】
CPU20は、3D LCD12の少なくともサイズ情報を含む表示部情報に応じて上記グラフ(1),(2),(3)のうちにいずれかのグラフに対応する変換テーブルを、EEPROM30から読み出し、視差画像中の各特徴点ごとに、その特徴点の視差量に対応する視差調整パラメータΔtを読み出し、上記[数3]式により視差量d'(x,y)を算出する。尚、仮想視点の位置は、特許文献1に記載の発明と同様に視点画像サイズ、視点画像間の視差に関する視差情報、及び立体表示デバイスのサイズ等の情報により決定することができる。
【0059】
いま、右目用の視差画像を基準画像とし、左目用の視差画像から視差調整後の視差画像を生成する場合には、左目用の視差画像の各特徴点の基準画像に対する視差量と、この視差量を上記[数3]式により調整した視差量とに基づいて左目用の視差画像の各特徴点の座標値が、前記調整後の視差量をもつ座標値となるように左目用の視差画像を幾何変形される。この幾何変形は、射影変換パラメータを使用した射影変換、アフィン変換パラメータを使用したアフィン変換、ヘルマート変換パラメータを使用したヘルマート変換等によって行うことができる。
【0060】
CPU20により生成された左目用の視差画像は、右目用の視差画像(基準画像)とともにバッファメモリ28に出力され、ここに一時記憶される。
【0061】
表示コントローラ26は、バッファメモリ28から2枚の視差画像(右目用画像と左目用画像)を読み出し、3D表示用の信号に変換して3D LCD12に出力する。これにより、3D LCD12に3D画像(左右の視差画像)を表示させる。
【0062】
尚、この実施の形態の3D画像出力装置10は、3D LCD12を搭載したデジタルフォトフレームであるが、本発明はこれに限らず、種々の画面サイズを有する立体表示デバイス、3Dプラズマディスプレイ、3D有機ELディスプレイ等の種類の異なる立体表示デバイス、立体表示プリントを生成するプリンタ等に視差画像を出力する3D画像出力装置にも適用できる。この場合、立体表示に使用される表示部に関する情報のうちの少なくとも表示部のサイズ情報を含む表示部情報を取得し、その表示部情報に基づいて視差量を調整することが好ましい。
【0063】
例えば、表示サイズが小さい立体表示デバイスの場合には、図7のグラフ(1),(2)に対応する変換テーブルから視差調整パラメータΔtを求め、その視差調整パラメータΔtで調整した視差量となるように視差画像を生成することにより、背景の奥行き感を抑制しつつ、前景がより前方に飛び出して見える立体画像(迫力のある立体感のある立体画像)の表示が可能になる。
【0064】
一方、表示サイズが大きい立体表示デバイスの場合には、図7のグラフ(3)に対応する変換テーブルから視差調整パラメータΔtを求め、その視差調整パラメータΔtで調整した視差量となるように視差画像を生成することにより、前景の飛び出し量を抑制し、背景の奥行き感を強調した立体画像(ソフトな立体感のある立体画像)の表示が可能になる。
【0065】
[3次元画像出力装置の第2実施形態]
図8は本発明に係る3D画像出力装置を備えたデジタルカメラ100の内部構成を示すブロック図である。
【0066】
図8に示すように、デジタルカメラ100は、2つの撮影部112R及び112Lを備えた複眼カメラである。尚、撮影部112は、2つ以上であってもよい。
【0067】
デジタルカメラ100は、複数の撮影部112R及び112Lによって撮影した複数の画像からなる3D画像を1つの3D表示用の3D画像ファイルとして記録することができる。
【0068】
メインCPU114(以下、「CPU114」という)は、操作部116からの入力に基づき所定の制御プログラムに従ってデジタルカメラ100全体の動作を統括制御する。
【0069】
CPU114には、システムバス122を介してROM124、EEPROM126及びワークメモリ128が接続されている。ROM124には、CPU114が実行する制御プログラム及び制御に必要な各種データ等が格納される。EEPROM126には、ユーザ設定情報等のデジタルカメラ100の動作に関する各種設定情報等が格納される。ワークメモリ128は、CPU114の演算作業用領域及び画像データの一時記憶領域を含んでいる。
【0070】
操作部116は、ユーザが各種の操作入力を行うための手段であり、電源/モードスイッチ、モードダイヤル、レリーズスイッチ、十字キー、ズームボタン、MENU/OKボタン、DISPボタン及びBACKボタンを含んでいる。操作用表示部118は、操作部116からの操作入力の結果を表示するための手段であり、例えば、液晶パネル又は発光ダイオード(LED)を含んでいる。
【0071】
電源/モードスイッチは、デジタルカメラ100の電源のオン/オフの切り替え、及びデジタルカメラ100の動作モード(再生モード及び撮影モード)の切り替え手段である。電源/モードスイッチがオンになると、電源部120からデジタルカメラ100の各部への電力の供給が開始され、デジタルカメラ100の各種の動作が開始される。また、電源/モードスイッチがオフになると、電源部120からデジタルカメラ100の各部への電力の供給が停止される。
【0072】
モードダイヤルは、デジタルカメラ100の撮影モードを切り替えるための操作手段であり、モードダイヤルの設定位置に応じて、2Dの静止画を撮影する2D静止画撮影モード、2Dの動画を撮影する2D動画撮影モード、3Dの静止画を撮影する3D静止画撮影モード及び3Dの動画を撮影する3D動画撮影モードの間で撮影モードが切り替えられる。撮影モードが2D静止画撮影モード又は2D動画撮影モードに設定されると、撮影モード管理フラグ130に、2D画像を撮影するための2Dモードであることを示すフラグが設定される。また、撮影モードが3D静止画撮影モード又は3D動画撮影モードに設定されると、撮影モード管理フラグ130に、3D画像を撮影するための3Dモードであることを示すフラグが設定される。CPU114は、撮影モード管理フラグ130を参照して、撮影モードの設定を判別する。
【0073】
レリーズスイッチは、いわゆる「半押し」と「全押し」とからなる2段ストローク式のスイッチで構成されている。静止画撮影モード時には、レリーズスイッチが半押しされると、撮影準備処理(例えば、AE(Automatic Exposure:自動露出)処理、AF(Auto Focus:自動焦点合わせ)処理、AWB(Automatic White Balance:自動ホワイトバランス)処理)が行われ、レリーズスイッチが全押しされると、静止画の撮影・記録処理が行われる。また、動画撮影モード時には、レリーズスイッチが全押しされると動画の撮影が開始され、再度全押しされると動画の撮影が終了する。尚、静止画撮影用のレリーズスイッチ及び動画撮影用のレリーズスイッチを別々に設けるようにしてもよい。
【0074】
3D LCD150は、図1に示した3D画像出力装置10の3D LCD12と同様の3D画像表示器であり、撮影した2D画像又は3D画像を表示するための画像表示部として機能するとともに、各種設定時にGUIとして機能する。また、3D LCD150は、撮影モード時に画角を確認するための電子ファインダとして機能する。
【0075】
縦/横撮り検出回路132は、例えば、デジタルカメラ100の向きを検出するためのセンサを含んでおり、デジタルカメラ100の向きの検出結果をCPU114に入力する。CPU114は、デジタルカメラ100が向きの場合に、縦撮りと横撮りの切り替えを行う。
【0076】
次に、デジタルカメラ100の撮影機能について説明する。尚、図8では、各撮影部112R及び112L内の各部にそれぞれ符号R及びLを付して区別しているが、各部の機能は略同様であるため、以下の説明では、符号R及びLを省略して説明する。
【0077】
撮影レンズ160は、ズームレンズ、フォーカスレンズ及び絞りを備えている。ズームレンズ及びフォーカスレンズは、各撮影部の光軸(図中のLR及びLL)に沿って前後に移動する。CPU114は、測光・測距CPU180を介して不図示のズームアクチュエータの駆動を制御することにより、ズームレンズの位置を制御してズーミングを行い、測光・測距CPU180を介してフォーカスアクチュエータの駆動を制御することにより、フォーカスレンズの位置を制御してフォーカシングを行う。また、CPU114は、測光・測距CPU180を介して絞りアクチュエータの駆動を制御することにより、絞りの開口量(絞り値)を制御し、撮像素子162への入射光量を制御する。
【0078】
CPU114は、3Dモード時に複数の画像を撮影する場合に、各撮影部112R及び112Lの撮影レンズ160R及び160Lを同期させて駆動する。即ち、撮影レンズ160R及び160Lは、常に同じ焦点距離(ズーム倍率)に設定される。また、常に同じ入射光量(絞り値)となるように絞りが調整される。更に、3Dモード時には、常に同じ被写体にピントが合うように焦点調節が行われる。
【0079】
フラッシュ発光部176は、例えば、放電管(キセノン管)により構成され、暗い被写体を撮影する場合や逆光時等に必要に応じて発光される。充電/発光制御部178は、フラッシュ発光部176を発光させるための電流を供給するためのメインコンデンサを含んでいる。CPU114は、測光・測距CPU180にフラッシュ発光指令を送信して、メインコンデンサの充電制御、フラッシュ発光部176の放電(発光)のタイミング及び放電時間の制御等を行う。尚、フラッシュ発光部176としては、発光ダイオードを用いてもよい。
【0080】
撮影部112は、被写体に光を照射するための距離用発光素子186(例えば、発光ダイオード)と、上記距離用発光素子186により光が照射された被写体の画像(測距用画像)を撮影する距離用撮像素子184とを備えている。
【0081】
測光・測距CPU180は、CPU114からの指令に基づいて、所定のタイミングで距離用発光素子186を発光させるとともに、距離用撮像素子184を制御して測距用画像を撮影させる。
【0082】
距離用撮像素子184によって撮影された測距用画像は、A/D変換器196によりデジタルデータに変換されて、距離情報処理回路198に入力される。
【0083】
距離情報処理回路198は、距離用撮像素子184から取得した測距用画像を用いて、いわゆる三角測距の原理に基づいて、撮影部112R及び112Lによって撮影された被写体とデジタルカメラ100との間の距離(被写体距離)を算出する。距離情報処理回路198によって算出された被写体距離は、距離情報記憶回路103に記録される。
【0084】
尚、被写体距離の算出方法としては、距離用発光素子186が発光してから、距離用発光素子186によって照射された光が被写体によって反射され、距離用撮像素子184に届くまでの光の飛行時間(遅れ時間)と光の速度から被写体距離を算出するTOF(Time of Flight)法を用いてもよい。
【0085】
また、撮影部112は、間隔/輻輳角駆動回路188及び間隔/輻輳角検出回路190を備えている。
【0086】
間隔/輻輳角駆動回路188R及び188Lは、それぞれ撮影部112R及び112Lを駆動する。CPU114は、間隔/輻輳角制御回路192を介して間隔/輻輳角駆動回路188R及び188Lを動作させて、撮影レンズ160Rと160Lとの間隔及び輻輳角を調整する。
【0087】
間隔/輻輳角検出回路190R及び190Lは、例えば、電波を送受信する手段を含んでいる。CPU114は、間隔/輻輳角制御回路92を介して間隔/輻輳角検出回路190R及び190Lを動作させて、電波を相互に送受信させることにより、撮影レンズ160Rと160Lとの間隔及び輻輳角を測定する。撮影レンズ160Rと160Lとの間隔及び輻輳角の測定結果は、レンズ間隔・輻輳角記憶回路102に記憶される。
【0088】
撮像素子162は、例えば、カラーCCD固体撮像素子により構成されている。撮像素子162の受光面には、多数のフォトダイオードが2次元的に配列されており、各フォトダイオードには所定の配列で3原色(R、G、B)のカラーフィルタが配置されている。撮影レンズ160によって撮像素子62の受光面上に結像された被写体の光学像は、このフォトダイオードによって入射光量に応じた信号電荷に変換される。各フォトダイオードに蓄積された信号電荷は、CPU114の指令に従ってTG164から与えられる駆動パルスに基づいて信号電荷に応じた電圧信号(R、G、B信号)として撮像素子162から順次読み出される。撮像素子162は、電子シャッタ機能を備えており、フォトダイオードへの電荷蓄積時間を制御することにより、露光時間(シャッタ速度)が制御される。
【0089】
尚、撮像素子162としては、CMOSセンサ等のCCD以外の撮像素子を用いることもできる。
【0090】
アナログ信号処理部166は、撮像素子162から出力されたR、G、B信号に含まれるリセットノイズ(低周波)を除去するための相関2重サンプリング回路(CDS)、R、G、B信号を増幅して一定レベルの大きさにコントロールするためのAGS回路を含んでいる。撮像素子162から出力されるアナログのR、G、B信号は、アナログ信号処理部166によって相関2重サンプリング処理されるとともに増幅される。アナログ信号処理部166から出力されたアナログのR、G、B信号は、A/D変換器168によってデジタルのR、G、B信号に変換されて、画像入力コントローラ(バッファメモリ)170に入力される。
【0091】
デジタル信号処理部172は、同時化回路(単板CCDのカラーフィルタ配列に伴う色信号の空間的なズレを補間して色信号を同時式に変換する処理回路)、ホワイトバランス調整回路、階調変換処理回路(ガンマ補正回路)、輪郭補正回路、輝度・色差信号生成回路等を含んでいる。画像入力コントローラ170に入力されたデジタルのR、G、B信号は、デジタル信号処理部172によって、同時化処理、ホワイトバランス調整、階調変換及び輪郭補正等の所定の処理が施されるとともに、輝度信号(Y信号)及び色差信号(Cr、Cb信号)からなるY/C信号に変換される。
【0092】
ライブビュー画像(スルー画)を3D LCD150に表示する場合、デジタル信号処理部172において生成されたY/C信号がバッファメモリ144に順次供給される。表示コントローラ142は、バッファメモリ144に供給されたY/C信号を読み出してYC−RGB変換部146に出力する。YC−RGB変換部146は、表示コントローラ142から入力されたY/C信号をR、G、B信号に変換してドライバ148を介して3D LCD150に出力する。これにより、3D LCD150にスルー画が表示される。
【0093】
ここで、カメラのモードが撮影モードであり、2Dモードの場合には、所定の1つの撮影部(例えば、112R)により記録用の画像が撮影される。2Dモード時に、撮影部112Rによって撮影された画像は、圧縮・伸張処理部174Rによって圧縮される。この圧縮画像データは、メモリコントローラ134及びカードI/F138を介して、所定形式の画像ファイルとしてメモリカード34に記録される。例えば、静止画についてはJPEG(Joint Photographic Experts Group)、動画についてはMPEG2又はMPEG4、H.264規格に準拠した圧縮画像ファイルとして記録される。
【0094】
また、カメラのモードが撮影モードであり、3Dモード時には、撮影部112R及び112Lによって同期して画像が撮影される。尚、3Dモード時には、AF処理及びAE処理は、撮影部112R及び112Lのいずれか一方によって取得された画像信号に基づいて行われる。3Dモード時に、各撮影部112R及び112Lによって撮影された2視点の画像は、それぞれ圧縮・伸張処理部174R及び174Lによって圧縮され、1つの3D画像ファイルに格納されてメモリカード34に記録される。また、3D画像ファイルには、2視点の圧縮画像データとともに、被写体距離情報、撮影レンズ160R及び160Lの間隔及び輻輳角に関する情報等が格納される。
【0095】
一方、カメラの動作モードが再生モード時には、メモリカード34に記録されている最終の画像ファイル(最後に記録された画像ファイル)が読み出されて、圧縮・伸張処理部174によって非圧縮のY/C信号に伸張された後、バッファメモリ144に入力される。表示コントローラ142は、バッファメモリ144に供給されたY/C信号を読み出してYC−RGB変換部146に出力する。YC−RGB変換部146は、表示コントローラ142から入力されたY/C信号をR、G、B信号に変換してドライバ148を介して3D LCD150に出力する。これにより、メモリカード34に記録されている画像ファイルの画像が3D LCD150に表示される。
【0096】
ここで、メモリカード34から読み出された画像ファイルが3D画像ファイルの場合には、前述した3D画像出力装置10と同様に、視差量を調整した視差画像が生成され、調整後の視差画像を含む2枚の視差画像が3D LCD150に表示される。
【0097】
[3D画像ファイルのデータ構造]
図9はデジタルカメラ100によりメモリカード34に記録される3D表示用の3D画像ファイルのデータ構造の一例を示す図である。
【0098】
図9に示すように3D画像ファイルFは、Exif規格のファイルフォーマットを利用し、複数の画像を一体化して記録するファイル形式を採っており、視点画像(1)(先頭画像)A1、視点画像(2)A2,視点画像(2)A2、…、視点画像(n)Anが連結されて構成されている。
【0099】
各視点画像の領域は、各視点画像の開始位置を示すSOI(Start of Image)と終了位置を示すEOI(End of Image)とにより区分されており、SOIの次に視点画像のExif付属情報が記録されるAPP1マーカセグメントと、多視点付属情報が記録されるAPP2マーカセグメントが設けられ、その次に視点画像が記録される。
【0100】
尚、APP1マーカセグメントには、Exif識別情報、TIFFヘッダ、IFD(Image file directory)領域(IFD0領域(0th IFD)及びIFD1領域(1st IFD))が設けられている。IFD1領域(1st IFD)には、視点画像から生成されたサムネイル画像が格納される。また、APP2マーカセグメントには、個別情報IFDが含まれる。
【0101】
個別情報IFDには、視点画像の枚数、視点画像番号、輻輳角、基線長等が含まれるが、この実施の形態では、図10に示すように、基準視点番号のタグ値と前景代表視差量、背景代表視差量のタグ値が更に記録される。
【0102】
前景代表視差量は、基準視点(図10の例では、「1」)と、視点画像の視点(i)間の前景の視差を代表する値であり、AF合焦時の視差、最近接位置視差、顔認識位置中心の視差などを表す値を使用することができる。
【0103】
背景代表視差量は、基準視点(図10の例では、「1」)と、視点画像の視点(i)間の背景の視差を代表する値であり、例えば、視差量が最も小さい値(負値を含む)を表す値を使用することができる。
【0104】
尚、図10に示した前景代表視差量、背景代表視差量の数値の例は、視差画像の左右方向の視差量に相当する画素数(負は視差方向が逆)を示している。また、視差画像の左右方向の画素数は1000画素である。
【0105】
図11は図4に示した4視点の場合の各視点の代表視差量(前景代表視差量、背景代表視差量)の例を示す図表である。
【0106】
また、図12に示すように、3D画像ファイルの個別情報IFDには、視点画像内の各特徴点1、2、3、…、kの座標値が更に記録されている。
【0107】
尚、各視差画像間の特徴点の抽出、前景代表視差量、背景代表視差量の算出等は、デジタルカメラ100により行われ、3D画像ファイルの作成時に視差画像の付属情報として記録される。
【0108】
<視差量の調整の第2実施例>
図13は視差量を調整する視差調整パラメータΔxの一例を示すグラフである。
【0109】
図7に示した第1実施例の視差調整パラメータΔtは、仮想視点位置を調整するパラメータであるが、図13のグラフ(1),(2)に示す視差調整パラメータΔxは、視差量に加算されることにより該視差量を調整するパラメータである。
【0110】
いま、図14に示すように視差画像からn個の特徴点が抽出され、各特徴点別に視差量が求められている場合、その視差量に基づいて図13のグラフ(1)に対応する変換テーブルから対応する視差調整パラメータΔxを読み出す。図13のグラフ(1)によれば、視差調整パラメータΔxは、視差量が正方向に大きい(前景に近い)程、及び視差量が負方向に大きい(背景に近い)程、正方向に大きな値をとるようになっている。
【0111】
上記視差量に対応する視差調整パラメータΔxを各特徴点別の視差量に加算することにより、視差量を調整することができる。
【0112】
図13のグラフ(1)に示した視差調整パラメータΔxによれば、近くに見える特徴点の視差量(正方向に大きい視差量)をより大きくする重み付け調整が行われ、一方、遠くに見える特徴点の視差量(負方向に大きくなる視差量)を小さくする重み付け調整が行われることになる。
【0113】
そして、上記のように視差量が調整された特徴点をもつように視差画像を幾何変形させた視差画像を生成することにより、背景の奥行き感を抑制しつつ、前景がより前方に飛び出して見える視点画像を生成することができ、より迫力のある立体感のある立体画像の表示が可能になる。
【0114】
尚、図13のグラフ(1)とは逆の特性をもったグラフ(2)の視差調整パラメータΔxによれば、上記とは逆に前景の飛び出し量を抑制し、背景の奥行き感を強調した視差画像を生成することができ、ソフトな立体感のある立体画像の表示が可能になる。
【0115】
<視差量の調整の第3実施例>
図15は視差量を調整する視差調整パラメータΔpの一例を示すグラフである。
【0116】
図15のグラフ(1),(2)に示す視差調整パラメータΔpは、視差量に乗算されることにより該視差量を調整するパラメータであり、グラフ(1)によれば、視差調整パラメータΔpは、視差量が大きい(前景に近い)程、1よりも大きな値をとり、視差量が負方向に大きい(背景に近い)程、1よりも小さい値をとるようになっている。
【0117】
上記視差量に対応する視差調整パラメータΔpを各特徴点別の視差量に乗算することにより、視差量を調整することができる。
【0118】
図15のグラフ(1)に示した視差調整パラメータΔpによれば、近くに見える特徴点の視差量(正方向に大きい視差量)をより大きくする重み付け調整が行われ、一方、遠くに見える特徴点の視差量(負方向に大きくなる視差量)をより小さくする重み付け調整が行われることになり、背景の奥行き感を抑制しつつ、前景がより前方に飛び出して見える視点画像を生成することができ、より迫力のある立体感のある立体画像の表示が可能になる。
【0119】
一方、図15のグラフ(1)とは逆の特性をもったグラフ(2)の視差調整パラメータΔpによれば、上記とは逆に前景の飛び出し量を抑制し、背景の奥行き感を強調した視差画像を生成することができ、ソフトな立体感のある立体画像の表示が可能になる。
【0120】
<視差量の調整の第4実施例>
図15は入力する視差量を所望の視差量に変換して出力する変換テーブルの一例を示す
グラフである。
【0121】
図16のグラフ(1),(2)に示す変換テーブルは、入力画像の各特徴点の視差量を、その視差量の大きさに応じて適宜の視差量に変換する変換テーブルであり、グラフ(1)に示す変換テーブルによれば、近くに見える特徴点の視差量(正方向に大きい視差量)をより大きくする変換が行われ、一方、遠くに見える特徴点の視差量(負方向に大きくなる視差量)をより小さくする変換が行われることになる。
【0122】
一方、図16のグラフ(2)に示す変換テーブルによれば、近くに見える特徴点の視差量(正方向に大きい視差量)をより小さくする変換が行われ、遠くに見える特徴点の視差量(負方向に大きくなる視差量)をより大きくする変換が行われることになる。
【0123】
<視差量の調整の第5実施例>
図17は入力する視差量を所望の視差量に変換して出力する変換テーブルの他の例を示すグラフである。
【0124】
図17に示す変換テーブルは、プリント用紙(表示部)に視差画像を印刷する際に使用される変換テーブルであり、入力画像上の最大の視差量(max)がプリント用紙上で3mmの視差量となり、入力画像上の負方向の最大の視差量(min)がプリント用紙上で−8mmの視差量となるように変換する。
【0125】
例えば、入力する視差画像の各特徴点の視差量のうちの最大値(前景代表値)及び負方向の最大値(背景代表値)を求め、これらの前景代表値及び背景代表値により各特徴点の視差量を正規化し(例えば前景代表値が1、背景代表値が−1となるように正規化し)、この正規化した視差量を、図17に示す変換テーブルによりプリント用紙上での視差量に変換する。
【0126】
上記のように視差量が調整された視差画像が印画されたプリント用紙の表面には、レンチキュラーシートが貼付され、これにより立体視が可能な写真プリントになる。
【0127】
立体視が可能な写真プリントでは、そのプリント上の各視差画像の最大の視差量(max)が3mm、負方向の最大の視差量(min)が−8mmのときに、より好ましい立体画像を視認することができることが実験により確認されている。
【0128】
[表示デバイスにより視差量を調整する実施例]
図18は表示デバイスにより視差量を調整する実施例を示すフローチャートである。
【0129】
まず、複数の視差画像を読み込み(ステップS10)、各視差画像における特徴点(対応点)の視差量を取得する(ステップS12)。尚、図12に示したように3D画像ファイルの個別情報に各特徴点の座標値が含まれている場合には、その座標値から視差量を演算することができ、一方、3D画像ファイルの個別情報に各特徴点の座標値が含まれていない場合には、各視差画像から特徴点の抽出を行い、視点の座標値を取得して視差量を算出する。
【0130】
次に、表示デバイスの情報を取得する(ステップS14)。この表示デバイスの情報の取得は、本発明に係る3D画像出力装置を表示デバイスに接続することにより、表示デバイス側から自動的に表示デバイスの情報を取得してもよいし、マニュアルで表示デバイスの情報を入力してもよい。
【0131】
続いて、取得した表示デバイスの情報からデバイスの種別(ディスプレイ、プリンタ)を判別し(ステップS16)、更にディスプレイと判別されると、ディスプレイの画面サイズが、所定のサイズ(水平方向の長さが65mm)以上か否かを判別する(ステップS18)。尚、65mmは、人の左右の目の間隔である。
【0132】
ここで、デバイス種別がディスプレイで、その画面サイズが65mm以上と判別されると、視差量を変換する変換テーブルとして大画面用テーブルが選択され(ステップS20)、画面サイズが65mm未満と判別されると、変換テーブルとして大画面用テーブルが選択され(ステップS22)。
【0133】
一方、デバイス種別がプリンタと判別されると、変換テーブルとして印刷用テーブルが選択され(ステップS24)。
【0134】
例えば、上記大画面用テーブルとしては、図16のグラフ(2)に示した変換テーブルを適用し、小画面用テーブルとしては、図16のグラフ(1)に示した変換テーブルを適用することが考えられる。
【0135】
これによれば、大画面の表示ディスプレイの場合には、前景の飛び出し量を抑制し、背景の奥行き感を強調した視差画像を生成することができ、ソフトな立体感のある立体画像の表示が可能になり、観察者の疲労感を軽減させることができる。また、小画面の表示ディスプレイの場合には、背景の奥行き感を抑制しつつ、前景がより前方に飛び出して見える視点画像を生成することができ、より迫力のある立体感のある立体画像の表示が可能になる。
【0136】
一方、印刷用テーブルとしては、図17に示した変換テーブルを使用する。これによれば、より好ましい立体視が可能な写真プリントを印刷することができる。尚、この実施の形態では、デバイス種別がプリンタの場合には、更にプリントサイズにより変換テーブルを切り替えていない。これは、図17に示した変換テーブルによれば、写真プリントのプリントサイズに関わらず、好ましい立体視が可能な写真プリントが得られることが確認されているからである。
【0137】
上記のようにして変換テーブルが選択されると、選択された変換テーブルにより入力する各視差量を変換し、その変換後(視差調整後)の各特徴点の視差量に対応する視差画像を生成する(ステップS26)。このようにして生成した各視差画像を3Dの表示デバイスに出力し、3D画像の立体視を可能にする(ステップS28)。
【0138】
<視差量の調整の第6実施例>
図19は視差量を調整する視差調整パラメータΔxの他の例を示すグラフである。
【0139】
図19のグラフ(1)-1は、グラフ(1)(図13のグラフ(1)に相当)を視差量の正方向にシフトしたグラフであり、図19のグラフ(1)-2は、グラフ(1)を視差量の負方向にシフトしたグラフである。
【0140】
従って、グラフ(1)-1に示す視差調整パラメータΔxによって視差画像の視差量が調整されると、グラフ(1)に示す視差調整パラメータΔxによって視差量が調整される視差画像に比べて、前景の飛び出し量が低減されるとともに、背景の奥行き感も低減された視差画像が生成される。
【0141】
一方、グラフ(1)-2に示す視差調整パラメータΔxによって視差画像の視差量が調整されると、グラフ(1)に示す視差調整パラメータΔxによって視差量が調整される視差画像に比べて、前景の飛び出し量が強調されるとともに、背景の奥行き感も強調された視差画像が生成される。
【0142】
また、上記グラフ(1)-1,(1),(1)-2に示す視差調整パラメータΔxを、3Dディスプレイの画面サイズに応じて選択するようにしてもよい。この場合、大画面、中画面、及び小画面に応じて、それぞれグラフ(1)-1,(1),及び(1)-2に示す視差調整パラメータΔxを適用することが考えられる。
【0143】
また、3Dディスプレイの画面サイズに限らず、視距離に応じて上記グラフ(1)-1,(1),及び(1)-2を選択するようにしてもよく、視距離が近いときはグラフ(1)-1,遠いときはグラフ(1)-2を選択することが考えられる。尚、視距離は、3Dディスプレイ又はその近傍に配設した測距手段により自動的に取得してもよいし、マニュアルで視距離を入力するようにしてもよい。
【0144】
<視差量の調整の第7実施例>
図20は視差量を調整する視差調整パラメータΔxの更に他の例を示すグラフである。
【0145】
図20のグラフ(1)-3,(1)-4に示す視差調整パラメータΔxは、視差が正方向に一定以上大きくなる場合には、その視差を強調しないように制限されている。
【0146】
即ち、図20のグラフ(1)-3,(1)-4に示す入出力関係を示す変換テーブルでは、変換後の視差量が、予め設定された最大視差量を越えないように制限されている。これは、視差をつけすぎると、3Dとして視認できなくなるからである。
【0147】
また、図20のグラフ(1)-3, (1)-4に示す視差調整パラメータΔxを、3Dディスプレイの画面サイズに応じて選択するようにしてもよい。この場合、小画面、大画面に応じて、それぞれグラフ(1)-3,及び(1)-4に示す視差調整パラメータΔxを適用することが考えられる。
【0148】
尚、図19及び図20に示した第6実施例及び第7実施例は、図13のグラフ(1)に示す視差調整パラメータの変形例であるが、図13のグラフ(2)に示す視差調整パラメータ、図15に示した視差調整パラメータΔp、及び図16に示した視差量の変換テーブルを変形させる場合にも適用できる。
【0149】
[その他]
この実施の形態の3D画像出力装置(デジタルフォトフレーム、デジタルカメラ)は、3Dディスプレイが一体化されたものであるが、これに限らず、本発明は、表示デバイスを備えていない装置(例えば、パソコン本体)にも適用できる。また、本発明に係る3D画像出力装置は、ハードウエアで実現してもよいし、パソコン本体にインストールするソフトウエアで実現するようにしてもよい。
【0150】
3Dディスプレイは、実施の形態の3D LCDに限らず、3Dプラズマディスプレイ、3D有機ELディスプレイ等の他の3Dディスプレイでもよい。
【0151】
更に、本発明は上述した実施形態に限定されず、被写体の遠近に関係なく、視差量の調整を自由に行うことができるものであればよく、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0152】
10…3次元画像出力装置(3D画像出力装置)、12、150…3次元液晶ディスプレイ(3D LCD)、20、114…中央処理装置(CPU)、22、128…ワークメモリ、26、142…表示コントローラ、28、136…バッファメモリ、30、126…EEPROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の視点から同一被写体を撮影した複数の視点画像を取得する視点画像取得手段と、
前記取得した複数の視点画像から特徴が一致する複数の組の特徴点における視差量を取得する視差情報取得手段と、
前記取得した各特徴点の視差量を立体表示プリント用に調整する視差量調整手段であって、前記視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値の絶対値よりも奥行き方向の視差量の最大値の絶対値が大きくなるように前記視差量に対して重み付けの異なる視差量の調整を行う視差量調整手段と、
前記調整後の各特徴点の視差量に対応する視差画像を生成する視差画像生成手段と、
前記生成した視差画像を含む複数の視差画像を前記立体表示プリント用として出力する視差画像出力手段と、
を備えたことを特徴とする3次元画像出力装置。
【請求項2】
前記視差量調整手段は、前記飛び出し方向の視差量が大きくなるにつれて該視差量の変化率が小さくなるように視差量を調整し、前記奥行き方向の視差量が大きくなるにつれて該視差量の変化率が大きくなるように視差量を調整することを特徴とする請求項1に記載の3次元画像出力装置。
【請求項3】
前記視差量調整手段は、前記取得した各特徴点の視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値及び奥行き方向の視差量の最大値が、それぞれ予め設定された視差量になるように調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の3次元画像出力装置。
【請求項4】
前記視差量調整手段は、前記取得した各特徴点の視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値及び奥行き方向の視差量の最大値が、それぞれ3mm及び−8mmの視差量になるように調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の3次元画像出力装置。
【請求項5】
前記視差量調整手段は、正規化された視差量と該視差量の調整後の視差量との入出力関係を示す変換テーブルを有し、前記取得した各特徴点の視差量を正規化し、該正規化した視差量に対応する調整後の視差量を前記変換テーブルから読み出すことを特徴とするとする請求項1から4のいずれか1項に記載の3次元画像出力装置。
【請求項6】
複数の視点から同一被写体を撮影した複数の視点画像を取得する視点画像取得ステップと、
前記取得した複数の視点画像から特徴が一致する複数の組の特徴点における視差量を取得する視差情報取得ステップと、
前記取得した各特徴点の視差量を立体表示プリント用に調整する視差量調整ステップであって、前記視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値の絶対値よりも奥行き方向の視差量の最大値の絶対値が大きくなるように前記視差量に対して重み付けの異なる視差量の調整を行う視差量調整ステップと、
前記調整後の各特徴点の視差量に対応する視差画像を生成する視差画像生成ステップと、
前記生成した視差画像を含む複数の視差画像を前記立体表示プリント用として出力する視差画像出力ステップと、
を含むことを特徴とする3次元画像出力方法。
【請求項7】
前記視差量調整ステップは、前記飛び出し方向の視差量が大きくなるにつれて該視差量の変化率が小さくなるように視差量を調整し、前記奥行き方向の視差量が大きくなるにつれて該視差量の変化率が大きくなるように視差量を調整することを特徴とする請求項6に記載の3次元画像出力方法。
【請求項8】
前記視差量調整ステップは、前記取得した各特徴点の視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値及び奥行き方向の視差量の最大値が、それぞれ予め設定された視差量になるように調整することを特徴とする請求項6又は7に記載の3次元画像出力方法。
【請求項9】
前記視差量調整ステップは、前記取得した各特徴点の視差量のうちの飛び出し方向の視差量の最大値及び奥行き方向の視差量の最大値が、それぞれ3mm及び−8mmの視差量になるように調整することを特徴とする請求項6又は7に記載の3次元画像出力方法。
【請求項10】
正規化された視差量と該視差量の調整後の視差量との入出力関係を示す変換テーブルを有し、前記視差量調整ステップは、前記取得した各特徴点の視差量を正規化し、該正規化した視差量に対応する調整後の視差量を前記変換テーブルから読み出すことを特徴とするとする請求項6から9のいずれか1項に記載の3次元画像出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−211717(P2011−211717A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101713(P2011−101713)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2009−274451(P2009−274451)の分割
【原出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】