説明

3相ブラシレスモータの駆動制御装置

【課題】簡易な構成で上位コントローラの位相計数機能を利用してモータ駆動制御を行なえる3相ブラシレスモータの駆動制御装置を提供する。
【解決手段】モータドライバ回路2は、3相分のホールセンサ信号HUHVHWを2相分のエンコーダ出力形式の信号ABに変換して生成した変換信号を上位コントローラ5に出力するセンサ信号変換回路3と、上位コントローラ5から出力されるモータの回転方向及び回転速度指令に基づいて3相ブラシレスモータ1を駆動するモータ駆動回路4と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相ブラシレスモータの駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3相ブラシレスモータを駆動制御する駆動制御装置は、永久磁石からなるロータと、モータコイルと、ロータの位置を検出するための3個のホール素子とを有し、ホール素子により検出されたロータの回転位置に基づいて、モータコイルへの通電が行われ、それによって生ずる回転磁界によってロータが回転されるようになっている。
3相ブラシレスモータを駆動制御する場合、PWM制御により駆動される駆動パルスのデューティ比を変えることでモータの速度制御が行われるようになって打いる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−136993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した3相ブラシレスモータの駆動制御装置においては、ホールセンサによりロータの回転位置検出を行って通電制御する場合、上位コントローラであるマイクロコンピュータの位相計数機能をそのまま使用することができない。即ち、位相計数モードは2相パルスを発生させるエンコーダ出力信号を想定しており、ホールセンサから出力される3相分のセンサ信号では、上位コントローラにおいて位相計数機能を用いることができず、モータの回転数や回転方向などの状態を測ることができない。
また、ホールセンサに代えてモータにエンコーダを設けることは、高価でありしかもモータサイズも大型化する。
【0005】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で上位コントローラの位相計数機能を利用してモータ駆動制御を行なえる3相ブラシレスモータの駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
永久磁石ロータの磁極変化によるロータ位置を検出する3相分のホールセンサ信号を上位コントローラに出力することによってモータドライバ回路より3相ブラスレスモータへ駆動信号を出力する3相ブラシレスモータの駆動制御装置であって、前記モータドライバ回路は、3相分のホールセンサ信号を2相分のエンコーダ出力形式の信号に変換して生成した変換信号を前記上位コントローラに出力するセンサ信号変換回路と、前記上位コントローラから出力されるモータの回転方向及び回転速度指令に基づいて前記3相ブラシレスモータを駆動するモータ駆動回路と、を具備したことを特徴とする。
上記構成によれば、センサ信号変換回路は、3相分のホールセンサ信号を2相分のエンコーダ出力形式の信号に変換して生成した変換信号を上位コントローラに出力するので、上位コントローラの位相計数機能を使用してセンサ信号変換回路の2相分出力信号からモータの回転数と回転方向を検出してモータ駆動回路へ制御信号を出力することができる。
よって、既存の制御装置が有する機能を活用してモータの駆動制御を安価に実現できる。
【0007】
また、前記センサ信号変換回路は、3相分のホールセンサ信号が時系列的に入力される第1のパルス立ち上がりエッジを第1のエンコーダ出力信号の立ち上がりエッジに、ホールセンサ信号の第2のパルス立ち上がりエッジを第1のエンコーダ出力信号の立ち下がりエッジに変換し、ホールセンサ信号の第1のパルス立ち下がりエッジを第2のエンコーダ出力信号の立ち上がりエッジに変換し、ホールセンサ信号の第2のパルス立ち下がりエッジを第2のエンコーダ出力信号の立ち下がりエッジに変換して振り分ける処理を繰り返すことにより、2相分のエンコーダ出力形式の変換信号を生成することが好ましい。
この2相分のエンコーダ出力形式の変換信号により、上位コントローラはモータの回転数、回転方向、回転速度を計測して、モータ駆動回路に必要な制御指令を出力することができる。
【0008】
また、前記センサ信号変換回路は、3相分のホールセンサ信号が時系列的に入力される第1のパルス立ち上がりエッジを第2のエンコーダ出力信号の立ち上がりエッジに、ホールセンサ信号の第2のパルス立ち上がりエッジを第2のエンコーダ出力信号の立ち下がりエッジに変換し、ホールセンサ信号の第1のパルス立ち下がりエッジを第1のエンコーダ出力信号の立ち上がりエッジに変換し、ホールセンサ信号の第2のパルス立ち下がりエッジを第1のエンコーダ出力信号の立ち下がりエッジに変換して振り分ける処理を繰り返すことにより、2相分のエンコーダ出力形式の変換信号を生成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
上述した3相ブラシレスモータの駆動制御装置を用いれば簡易な構成で上位コントローラの位相計数機能を利用してモータ駆動制御を行なえる3相ブラシレスモータの駆動制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】3相ブラシレスモータの駆動制御装置のブロック構成図である。
【図2】センサ信号変換回路において生成される変換信号の生成過程を示すタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る3相ブラシレスモータの駆動制御装置の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。本実施形態では、3相DCブラシレスモータの駆動制御装置のブロック構成について例示する。
【0012】
図1のブロック図を参照して、3相DCブラシレスモータの駆動制御装置の概略構成について説明する。
3相DCブラシレスモータ1は、ロータヨークに永久磁石を設けた永久磁石ロータと、ステータコアの極歯の回りにモータコイルを巻き付けられたステータと、ロータの回転位置を検出するホールセンサ(HU,HV,HW)を備えている。図示しない永久磁石ロータの磁極と対向配置されたステータコアの極歯には、3相(U相,V相,W相)のモータコイルが巻き付けられている。各相モータコイルには、後述するモータ駆動回路により所定のタイミングでモータ電流が流れる。
【0013】
上記ロータ位置を検出する3相分のホールセンサ信号はモータドライバ回路2に出力される。モータドライバ回路2は3相ブラシレスモータ1へ駆動信号を出力する。
モータドライバ回路2は、ホール信号エンコーダ信号出力変換回路3(センサ信号変換回路)及びモータ駆動回路4を備えている。ホール信号エンコーダ信号出力変換回路3は、3相分のセンサ信号を2相分のエンコーダ出力形式の信号に変換して生成した変換信号を上位コントローラ5に出力する。上位コントローラ5は、CPU,ROM,RAMなどの各種制御素子を備えた制御回路により3相ブラシレスモータ1の駆動を制御する。
【0014】
モータ駆動回路4は上位コントローラ5から出力されるモータの回転方向及び回転速度指令に基づいて3相ブラシレスモータ1のモータコイル(U相,V相、W相)へ通電制御する。
具体的には、上位コントローラ5から3相DCブラシレスモータ1の回転開始及び回転停止指令信号、回転方向指令信号、速度指令信号がモータ駆動回路4に出力される。モータ駆動回路4は、かかる上位コントローラ5からのコマンドに応じて3相DCブラシレスモータ1の各相モータコイルに通電制御してモータ駆動を制御するようになっている。
【0015】
上記構成によれば、ホール信号エンコーダ信号出力変換回路3は、3相分のセンサ信号を2相分のエンコーダ出力形式の信号に変換して生成した変換信号を上位コントローラ5に出力するので、上位コントローラ5の位相計数機能を使用してホール信号エンコーダ信号出力変換回路3の2相分出力信号からモータの回転数と回転方向を検出してモータ駆動回路4へ制御信号を出力することができる。
よって、既存の制御装置が有する機能を活用してモータの駆動制御を安価に実現できる。
【0016】
図2に、ホール信号エンコーダ信号出力変換回路3による変換信号の生成動作の一例について説明する。図1に示すようにホール信号エンコーダ信号出力変換回路3には、3相分(HU,HV,HW)のホールセンサ信号が時系列的に入力される。
【0017】
図2において、3相ブラシレスモータ1の回転方向が時計回り方向(CW方向)であれば、ホールセンサ信号から送られるパルスの立ち上がりを第1のエンコーダ出力信号Aを生成するのに用い、パルスの立ち下りを第2のエンコーダ出力信号Bを生成するのに用いる。反時計回り方向(CCW)であれば、これとは反対にパルスの立ち上がりを第2のエンコーダ出力信号Bを生成するのに用い、パルスの立ち下りを第1のエンコーダ出力信号Aを生成するのに用いる。なお、CW方向、CCW方向のどちらに回転しているかは、モータドライバ回路2内の図示しないセンサ信号変換回路で判別する。
【0018】
具体的には、CW方向に回転している場合、3相分のホールセンサ信号のうちHV相のホールセンサ信号の第1のパルス立ち上がりエッジE1を第1のエンコーダ出力信号Aの立ち上がりエッジに変換し、HW相のホールセンサ信号の第2のパルス立ち上がりエッジE2を第1のエンコーダ出力信号Aの立ち下がりエッジに各々変換する。
【0019】
また、HU相のホールセンサ信号の第1のパルス立ち下がりエッジE3を第2のエンコーダ出力信号Bの立ち上がりエッジに変換し、HV相のホールセンサ信号の第2のパルス立ち下がりエッジE4を第2のエンコーダ出力信号Bの立ち下がりエッジに変換して振り分ける処理を繰り返す。
【0020】
また、CCW方向に回転している場合、3相分のホールセンサ信号のうちHW相のホールセンサ信号の第1のパルス立ち上がりエッジE5を第2のエンコーダ出力信号Bの立ち上がりエッジに変換し、HV相のホールセンサ信号の第2のパルス立ち上がりエッジE6を第2のエンコーダ出力信号Bの立ち下がりエッジに各々変換する。
【0021】
また、HU相のホールセンサ信号の第1のパルス立ち下がりエッジE7を第1のエンコーダ出力信号Aの立ち上がりエッジに変換し、HW相のホールセンサ信号の第2のパルス立ち下がりエッジE8を第1のエンコーダ出力信号Aの立ち下がりエッジに変換して振り分ける処理を繰り返す。
【0022】
これにより、3相分のホールセンサの信号を、2相分のエンコーダ出力形式の変換信号A、Bを生成することができる。
【0023】
なお、上記例では、CW方向でパルスの立ち上がりを第1のエンコーダ出力信号Aを生成するのに用い、パルスの立ち下りを第2のエンコーダ出力信号Bを生成するのに用い、CCW方向で、パルスの立ち上がりを第2のエンコーダ出力信号Bを生成するのに用い、パルスの立ち下りを第1のエンコーダ出力信号Aを生成するのに用いているが、これとは逆に、CW方向でパルスの立ち上がりを第2のエンコーダ出力信号Bを生成するのに用い、パルスの立ち下りを第1のエンコーダ出力信号Aを生成するのに用い、CCW方向で、パルスの立ち上がりを第1のエンコーダ出力信号Aを生成するのに用い、パルスの立ち下りを第2のエンコーダ出力信号Bを生成するのに用いてもよい。
【0024】
この2相分のエンコーダ出力形式の変換信号A,Bにより、上位コントローラ5はモータの回転数、回転方向、回転速度を計測して、モータ駆動回路4に必要な制御指令を出力することができる。
【0025】
例えば、エンコーダ出力信号Aの出力レベルがHのときエンコーダ出力信号Bに立ち上がりエッジが発生する場合には、時計回り方向(CW方向)へ回転しているものと判定し、エンコーダ出力信号Aの出力レベルがHのときエンコーダ出力信号Bに立ち下がりエッジが発生する場合には、反時計回り方向(CCW)へ回転しているものと判定する。また、上位コントローラ5は、エンコーダ出力信号A,Bのパルス数を計数することで回転速度を計測することができる。
【0026】
また、本実施例では3相DCブラシレスモータについて説明したが、この3相DCブラシレスモータは、インナーロータ型のDCブラシレスモータであってもアウターロータ型のDCブラシレスモータであってもいずれでもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 3相DCブラシレスモータ
2 モータドライバ回路
3 ホール信号エンコーダ信号出力変換回路
4 モータ駆動回路
5 上位コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石ロータの磁極変化によるロータ位置を検出する3相分のホールセンサ信号を上位コントローラに出力することによってモータドライバ回路より3相ブラスレスモータへ駆動信号を出力する3相ブラシレスモータの駆動制御装置であって、
前記モータドライバ回路は、3相分のホールセンサ信号を2相分のエンコーダ出力形式の信号に変換して生成した変換信号を前記上位コントローラに出力するセンサ信号変換回路と、
前記上位コントローラから出力されるモータの回転方向及び回転速度指令に基づいて前記3相ブラシレスモータを駆動するモータドライブ回路と、を具備したことを特徴とする3相ブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項2】
前記センサ信号変換回路は、3相分のホールセンサ信号が時系列的に入力される第1のパルス立ち上がりエッジを第1のエンコーダ出力信号の立ち上がりエッジに、ホールセンサ信号の第2のパルス立ち上がりエッジを第1のエンコーダ出力信号の立ち下がりエッジに変換し、ホールセンサ信号の第1のパルス立ち下がりエッジを第2のエンコーダ出力信号の立ち上がりエッジに変換し、ホールセンサ信号の第2のパルス立ち下がりエッジを第2のエンコーダ出力信号の立ち下がりエッジに変換して振り分ける処理を繰り返すことにより、2相分のエンコーダ出力形式の変換信号を生成する請求項1記載の3相ブラシレスモータの駆動制御装置。
【請求項3】
前記センサ信号変換回路は、3相分のホールセンサ信号が時系列的に入力される第1のパルス立ち上がりエッジを第2のエンコーダ出力信号の立ち上がりエッジに、ホールセンサ信号の第2のパルス立ち上がりエッジを第2のエンコーダ出力信号の立ち下がりエッジに変換し、ホールセンサ信号の第1のパルス立ち下がりエッジを第1のエンコーダ出力信号の立ち上がりエッジに変換し、ホールセンサ信号の第2のパルス立ち下がりエッジを第1のエンコーダ出力信号の立ち下がりエッジに変換して振り分ける処理を繰り返すことにより、2相分のエンコーダ出力形式の変換信号を生成する請求項1記載の3相ブラシレスモータの駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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